図1は部品実装装置10の構成の概略を示す構成図であり、図2は部品実装装置10の制御に関するブロック図であり、図3はパラレルリンク機構40の構成図であり、図4はヘッドユニット60の構成図である。また、図5は部品供給位置Pの説明図であり、図6はフィーダユニット31の作動の様子を示す説明図であり、図7は旋回キャスター18と固定機構80の構成図であり、図8は固定機構80の作動の様子を示す説明図である。なお、図1,図3の左右方向がX軸方向であり、前後方向がY軸方向であり、上下方向がZ軸方向である。
部品実装装置10は、平板状の基板Sに部品を実装する装置であり、図1に示すように、基板搬送装置20と、部品供給装置30と、パラレルリンク機構40と、ヘッドユニット60と、旋回キャスター18と、固定機構80と、制御装置100とを備える。また、部品実装装置10は、各構成要素を支持する支持構造体11を備える。支持構造体11は、矩形状の底板12と、底板12に立設する4本の短支柱13と、短支柱13に四隅が支持され前後左右の枠材14a〜14dにより矩形枠状に枠組みされた矩形枠14と、底板12の後方側に立設し短支柱13よりも長い2本の長支柱15と、長支柱15の上端に支持される天板16とを備える。底板12は、上面に制御装置100が搭載され、下面に旋回キャスター18や固定機構80が取り付けられる。矩形枠14は、基板搬送装置20や部品供給装置30が取り付けられる。天板16は、パラレルリンク機構40やパラレルリンク機構40を介してヘッドユニット60が取り付けられる。
基板搬送装置20は、図1に示すように、サイドフレーム22と、サイドフレーム22に設けられたベルトコンベア24と、ベルトコンベア24を駆動させる図示しない駆動装置とを備える。サイドフレーム22は、矩形枠14の前後の枠材14a,14bの上に前後一対に設けられている。ベルトコンベア24は、一対のサイドフレーム22の各々に設けられているから、前後方向に間隔を空けて並列に配置されるものとなる。この基板搬送装置20は、ベルトコンベア24の駆動により基板Sを図1の左右方向に沿って搬送するものであり、例えば基板Sを左から右へ搬送する。
部品供給装置30は、図1,図5,図6に示すように、基板搬送装置20の下方に配置されるように枠材14a,14bの下に固定されるフィーダユニット31を備える。フィーダユニット31は、複数のテープフィーダ32と、フィーダ台34とを有する。各テープフィーダ32は、複数の部品が収容されたテープが巻き付けられたリールから、フィーダによりテープを長手方向に送り出すことで部品を供給する。フィーダ台34は、複数のテープフィーダ32が長手方向に沿って着脱可能にセットされる。このフィーダ台34は、矩形枠14の下方にテープフィーダ32の長手方向が左右方向となるように、即ち長手方向が基板Sの搬送方向と平行となるように配置されている。このため、各テープフィーダ32は、左右方向(ここでは、右から左)に部品を送り出し、図5に示すように、部品の供給位置Pが矩形枠14の開口14kの下方に位置することになる。なお、図5の基板Sは、基板搬送装置20により部品を実装する際の位置まで搬送されたものである。このため、供給位置Pは、基板Sに覆われない範囲のうち基板Sの搬送方向(左右方向)において、基板Sに隣接する位置となっている。即ち、テープフィーダ32により供給位置Pに送り出された部品と、実装する際の位置にある基板Sとは、左右方向に隣接するように位置することになる。
本実施形態のフィーダ台34は、テープフィーダ32における部品送り方向の前方に位置する前壁と、前壁の両側から図1中の左右方向に延びる側壁とを有しており、図1中の前方に位置する側壁を側壁35とする。フィーダ台34は、前壁と側壁35との間に、矩形枠14の前方の枠材14aに支持されるヒンジ36が設けられており、このヒンジ36を支点として回動可能となっている(図5,図6参照)。なお、フィーダ台34の図5に示す位置は、各テープフィーダ32が開口14k内の供給位置Pに部品を供給可能であるから、供給用位置という。また、側壁35には、図示しないスプリングにより上方に付勢されて上端が側壁35の上面から突出するロックピン37が配置されている。ロックピン37は、側壁35の図1中の前面側に形成された長孔35aから突出するつまみを介して作業者による下降操作が可能となっている。ロックピン37は、作業者による下降操作がなされていない場合には、スプリングの付勢力により上端が側壁35の上面から突出して、枠材14aの下面に形成された図示しない孔に嵌合する。これにより、フィーダ台34が図5の供給用位置でロックされる。また、作業者による下降操作がなされている場合には、スプリングの付勢力に抗してロックピン37が下降して側壁35内に収まる。これにより、ロックピン37と枠材14aの下面の孔との嵌合が解除されるから、フィーダ台34は、ヒンジ36を支点として図6の矢印方向に回動可能となる。作業者は、フィーダ台34を図6に実線で示す位置、即ち供給用位置から手前側に90度回動した着脱用位置まで回動させることで、各テープフィーダ32の着脱方向が基板Sの搬送方向に直交する方向となる。これにより、作業者は、部品実装装置10の前方からテープフィーダ32の着脱を行うことができる。このように、本実施形態では、作業者がテープフィーダ32の着脱を容易に行うことができるようフィーダユニット31(フィーダ台34)が水平方向に90度回動可能となっている。
フィーダユニット31の左側の位置では、図1,図5,図6に示すように、矩形枠14の前後の枠材14a,14bの下面に取付板29が掛け渡されており、この取付板29にパーツカメラ28が取り付けられている。パーツカメラ28は、供給位置Pに供給された部品を吸着した吸着ノズル61がパーツカメラ28の上方に位置する際に、吸着ノズル61に吸着された部品Pを下方から撮像し、その画像を制御装置100へ出力する。
パラレルリンク機構40は、図3に示すように、ヘッドユニット60を支持する可動部41と、天板16に固定される筐体42と、筐体42に支持され可動部41をXYZ方向に移動させる3つのリンク機構43,44,45とを備える。即ち、パラレルリンク機構40は、可動部41を3軸で移動させるものである。リンク機構43は、筐体42内に配置されるアクチュエータとしてのサーボモータ43a(図2参照)と、サーボモータ43aにより駆動される駆動リンク43bと、駆動リンク43bの駆動に従動すると共に可動部41に接続される従動リンク43cとを備える。駆動リンク43bと従動リンク43cとは、ボールジョイントなどを介して接続されており、従動リンク43cと可動部41とは、ユニバーサルジョイントなどを介して接続されている。リンク機構44,45は、リンク機構43と同様に、それぞれサーボモータ44a,45a(図2参照)と、駆動リンク44b,45bと、従動リンク44c,45cとを備える。また、本実施形態のパラレルリンク機構40は、筐体42の外周面に片持ち梁構造の動吸振器50が取り付けられている。
動吸振器50は、図3に示すように、固定部51と、板バネ53と、錘固定部55とを備える。固定部51は、筐体42の外周面にボルト52により固定されており、上下方向に延びる弾性体としての板バネ53を片持ち支持する。なお、固定部51は、上下方向に延びる長孔51aが形成されており、この長孔51aにボルト52が挿通されている。板バネ53は、基端部が固定部51に固定されると共に先端部に質量体としての錘固定部55および錘板56が取り付けられている。錘固定部55は、複数の矩形板状の錘板56が上方から着脱可能となっている。錘板56は、図3の向きで、下辺中央から上方に切り欠かれたスリット56aが形成されており、このスリット56aに挿通されたボルト57が錘固定部55内の図示しないボルト孔に締結されることで、錘板56が錘固定部55に固定される。このため、作業者は、錘固定部55に着脱する錘板56の枚数を容易に変更することができる。この動吸振器50は、錘板56の枚数を変更して質量体としての錘板56と錘固定部55との重さを変えたり、長孔51aにおけるボルト52の位置を変えたりすることで、振動周波数を調整することが可能となっている。また、本実施形態の筐体42には、筐体42の加速度を検出する加速度センサ49(図2参照)が取り付けられている。この加速度センサ49は、検出した加速度情報を制御装置100に出力する。
ヘッドユニット60は、図4に示すように、ロータリヘッド62と、R軸アクチュエータ65と、Z軸アクチュエータ71と、Q軸アクチュエータ75とを備える。ロータリヘッド62は、吸着ノズル61を保持する複数のノズルホルダ63が回転軸と同軸の円周上に所定角度間隔(例えば45度や60度など)で配置されている。各ノズルホルダ63は、図示しないスプリングによって上方に付勢されている。なお、ヘッドユニット60は、図示は省略するが、真空ポンプなどの負圧源に接続されたエア配管を介して負圧源からの負圧を吸着ノズル61に供給することで、吸着ノズル61に部品Pを吸着させる。
R軸アクチュエータ65は、サーボモータ66a(図2参照)により駆動されるR軸駆動ロッド66と、ユニバーサルジョイントを介して上端がR軸駆動ロッド66に接続されるインデックス軸67とを備える。R軸アクチュエータ65のサーボモータ66aは、パラレルリンク機構40の筐体42内に配置される。インデックス軸67は、下端がロータリヘッド62に接続されている。R軸アクチュエータ65は、サーボモータ66aを間欠的に駆動してR軸駆動ロッド66を介してインデックス軸67を回転させることで、ロータリヘッド62を所定角度ずつ間欠的に回転させる。これにより、R軸アクチュエータ65は、ロータリヘッド62に配置された各吸着ノズル61を、周方向に所定角度ずつ旋回移動させる。なお、R軸アクチュエータ65は、インデックス軸67の回転角を検出するR軸エンコーダ67a(図2参照)を備える。
Z軸アクチュエータ71は、サーボモータ72a(図2参照)により駆動されるZ軸駆動ロッド72と、上端がユニバーサルジョイントを介してZ軸駆動ロッド72に接続されるボールネジ軸73とを備える。ボールネジ軸73は、ネジ部に螺合するZ軸スライダ74がZ軸方向に昇降可能に取り付けられている。このZ軸スライダ74は、ノズルホルダ63の上端部64に当接するレバー部74aを備えている。Z軸アクチュエータ71は、サーボモータ72aを駆動してZ軸駆動ロッド72を介してボールネジ軸73を回転させることで、Z軸スライダ74をZ軸方向に移動させる。これにより、Z軸アクチュエータ71は、スプリングの付勢に抗してノズルホルダ63(吸着ノズル61)をZ軸方向に移動させる。なお、Z軸アクチュエータ71は、Z軸スライダ74の移動位置を検出するZ軸エンコーダ73a(図2参照)を備える。
Q軸アクチュエータ75は、サーボモータ76a(図2参照)により駆動されるQ軸駆動ロッド76と、上端がユニバーサルジョイントを介してQ軸駆動ロッド76に接続される回転軸77とを備える。回転軸77の下端には駆動ギヤ77bが取り付けられている。ここで、R軸アクチュエータ65のインデックス軸67には、駆動ギヤ77bに噛合する従動ギヤ78aが形成された回転体78が回転可能に支持されている。回転体78の従動ギヤ78aは、ノズルホルダ63の上端部64に形成されたノズルギヤ64aにも噛合している。Q軸アクチュエータ75は、サーボモータ76aを駆動してQ軸駆動ロッド76を介して回転軸77を回転させることで、駆動ギヤ77bと従動ギヤ78aとの噛合により回転体78を回転させると共に従動ギヤ78aとノズルギヤ64aとの噛合により各ノズルホルダ63を軸回りに回転させる。これにより、Q軸アクチュエータ75は、ノズルホルダ63(吸着ノズル61)を軸回り(Q方向)にそれぞれ回転させる。なお、Q軸アクチュエータ75は、回転軸77の回転角を検出するQ軸エンコーダ77a(図2参照)を備える。
旋回キャスター18は、図1,図7,図8に示すように、底板12の下面の四隅に固定される4つのベース19のそれぞれに旋回可能に取り付けられている。作業者は、部品実装装置10が設置される工場などの床面FLを旋回キャスター18が転動することで、底板12を含む支持構造体11を移動させることができる。即ち、部品実装装置10は、旋回キャスター18により移動方向を任意に変更しながら移動可能となっている。
固定機構80は、図7,図8に示すように、吸盤90と、吸盤90を昇降させる昇降機構82とを備える。固定機構80は、旋回キャスター18による部品実装装置10の移動が可能なアンロック状態(図7参照)と、旋回キャスター18による部品実装装置10の移動が不能なロック状態(図8参照)とに切り替わる。固定機構80は、底板12の下面において、四隅の旋回キャスター18の近傍位置に計4つ設けられる。
昇降機構82は、筒状体83と、ロッド84と、アジャスターボルト85と、ナット86,86と、ロックペダル87と、アンロックペダル88とを備える。筒状体83は、上端のフランジ部が底板12の下面に固定される円筒状の部材であり、側面に上下方向に延びる長孔83aが径方向に対向する位置に一対形成されている。ロッド84は、筒状体83内を昇降可能に配置され、図示しないスプリングにより筒状体83に対して図中上方に付勢される円柱状の部材である。このロッド84は、下端側の軸中心に図示しない雌ネジ孔が形成されている。アジャスターボルト85は、ロッド84の雌ネジ孔に螺合する雄ネジが形成され、下端が吸盤90に接合されている。ナット86,86は、アジャスターボルト85に螺合しており、上側のナット86がアジャスターボルト85(吸盤90)のロッド84に対する位置決め用として機能し、下側のナット86が緩み止め用として機能する。ロックペダル87は、筒状体83を挟むように平行に延びる2枚のプレートと、一端側で両プレートを筒状体83に回動可能に軸支する回動軸87aと、他端側で両プレートを連結する押下板87bとを有する。アンロックペダル88は、筒状体83を挟むように平行に延びる2枚のプレートと、一端側で両プレートを筒状体83の長孔83a内にスライド可能に軸支するスライド軸88aと、他端側で両プレートを連結する押下板88bとを有する。なお、図7,図8には、ロックペダル87とアンロックペダル88とにおける手前側のプレートのみを図示する。アンロックペダル88の2枚のプレートは、ロックペダル87の2枚のプレートの内側に配置されている。また、ロックペダル87とアンロックペダル88とは、プレートの略中央に取り付けられた連結軸89を介して互いに回動可能に連結されている。また、スライド軸88aは、ロッド84に連結されており、スライド軸88aの昇降に伴ってロッド84も昇降する。
吸盤90は、下面中央が下側に凹状に形成された略円盤状のゴム材91と、ゴム材91を覆うように形成されゴム材91に接合された金属製のカバー92と、カバー92の上部に形成された開口92a内に配置されるレバー93とを備える。カバー92は、上面中央でアジャスターボルト85の下端に接合されている。レバー93は、ゴム材91の上部に接続されると共に回動軸93aを支点として起立状態(図7参照)と傾倒状態(図8参照)とに回動可能であり、傾倒状態でゴム材91の上部を引き上げ、起立状態でゴム材91の上部の引き上げを解除する。このため、ゴム材91が床面FLなどに密着している状態で、レバー93を傾倒状態とすることで、ゴム材91の凹部内の負圧を高めて床面FLに確実に吸着させることができる。
固定機構80は、図7に示すアンロック状態でロックペダル87の押下板87bが作業者に押し下げられると、ロックペダル87が回動軸87aを支点に時計回りに回動する。ロックペダル87の回動に伴って、アンロックペダル88は、スライド軸88aが長孔83a内を下降しながら、連結軸89を支点に反時計回りに回動する。また、ロッド84は、スライド軸88aの下降に伴ってスプリングの付勢力に抗して筒状体83から押し出され、図8に示す下端位置まで移動する。これにより、固定機構80は、図8のロック状態で固定される。なお、図8に示すロック状態では、アンロックペダル88の押下板88bがロックペダル87の間から露出して、作業者による押し下げが可能となる。
ここで、ロッド84の移動量(昇降量)であるストローク量Stは、図7に示すように、アンロック状態の吸盤90のゴム材91の下端から旋回キャスター18の下端(床面FL)までの距離よりも若干長い距離に設定されている。このため、ロッド84が下端位置まで移動すると、旋回キャスター18は床面FLから僅かに持ち上げられる(図8参照)。また、ロッド84が下端位置まで移動すると、吸盤90のゴム材91が床面FLに押し付けられて床面FLに密着した状態となる。この状態で、作業者が吸盤90のレバー93を傾倒状態とすることで、ゴム材91の凹部内の負圧を高めて吸盤90を床面FLに確実に吸着させることができる。これにより、作業者は、底板12を含む支持構造体11を床面FLに固定することができる。即ち、部品実装装置10は、固定機構80により床面FLに固定される。
また、固定機構80は、図8に示すロック状態で、吸盤90のレバー93を起立状態とすることで吸盤90の吸着が解除される。そして、アンロックペダル88の押下板88bが作業者に押し下げられると、アンロックペダル88は連結軸89を支点に時計回りに回動し、ロックペダル87は回動軸87aを支点に反時計回りに回動する。また、アンロックペダル88の回動に伴ってスライド軸88aが長孔83a内を上方に移動するため、スプリングの付勢力と相まってロッド84は上昇して筒状体83内に引き込まれる。これにより、固定機構80は、図7に示すアンロック状態となり、部品実装装置10は、旋回キャスター18による移動が可能となる。
制御装置100は、図2に示すように、CPU101を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶するROM102と、各種データを記憶するHDD103と、作業領域として用いられるRAM104とを備える。制御装置100は、パーツカメラ28からの画像信号や加速度センサ49からの加速度情報、ヘッドユニット60内のR軸エンコーダ67a,Z軸エンコーダ73a,Q軸エンコーダ77aからの回転角情報などを入力する。また、制御装置100は、基板搬送装置20やパーツカメラ28、部品供給装置30、パラレルリンク機構40のサーボモータ43a,44a,45a、ヘッドユニット60のサーボモータ66a,72a,76aや吸着ノズル61への駆動信号などを出力する。制御装置100は、加速度センサ49からの加速度情報に基づいて筐体42の振動周波数を演算する。なお、加速度センサ49を筐体42に着脱可能に構成し、加速度センサ49が検出した加速度情報を制御装置100とは別の計測装置に出力するものとしてもよい。そのようにする場合、別の計測装置が、加速度センサ49からの加速度情報に基づいて筐体42の振動周波数を演算すればよい。
こうして構成された部品実装装置10の各種作業や各種動作は、次のように行われる。部品実装装置10の設置作業では、作業者は、まず、固定機構80の各アンロックペダル88を操作して固定機構80をアンロック状態として、旋回キャスター18により部品実装装置10を所望の設置位置に移動させる。部品実装装置10を設置位置まで移動させると、作業者は、固定機構80の各ロックペダル87を操作して、各昇降機構82により各吸盤90を床面FLまで下降させると共に各旋回キャスター18を僅かに上昇させる。このとき、作業者は、底板12や矩形枠14,天板16などの水平度を確認し、傾きが生じている場合にはその傾きが減少するようにアジャスターボルト85とナット86とにより吸盤90の高さ位置を調整する。そして、作業者は、各吸盤90のそれぞれのレバー93を傾倒状態として各吸盤90を床面FLに吸着させる。これにより、固定機構80がロック状態となり、部品実装装置10が所望の設置位置で確実に床面FLに固定されることになる。このように、本実施形態の部品実装装置10は、移動可能に構成されつつ、床面FLに確実に固定されることで部品実装中に過大な振動が生じるのを抑制することができる。なお、図示は省略するが、作業者は、複数台の部品実装装置10を基板搬送装置20同士で基板Sの受け渡しが可能となるように隣接して設置する。これにより、複数台の部品実装装置10を有する生産ラインが構成される。なお、部品実装装置10が移動可能に構成されているから、作業者は、生産形態に合わせて容易にライン構成を変更することができる。即ち、複数台の部品実装装置10を有する生産ラインは、生産ニーズの変化に柔軟に対応することができる。
また、作業者は、部品供給装置30へのテープフィーダ32のセット作業を行う。このセット作業では、作業者は、まず、フィーダ台34をロックピン37による供給用位置でのロックを解除して着脱用位置まで回動させる。そして、作業者は、生産に不要なテープフィーダ32をフィーダ台34から取り外し、生産に必要なテープフィーダ32をフィーダ台34に取り付ける。作業者は、必要なテープフィーダ32をフィーダ台34に取り付けると、フィーダ台34を着脱用位置から供給用位置まで回動させ、ロックピン37を枠材14aの下面の孔に嵌合させてフィーダ台34をロックする。このように、作業者は、フィーダ台34を回動させることで、部品実装装置10の前方からテープフィーダ32の着脱を容易に行うことができる。
また、作業者は、パラレルリンク機構40の制振作業を行う。この制振作業は、部品実装装置10を新たな設置位置に固定した場合などに試運転を伴って行われる。試運転としては、例えば、パラレルリンク機構40を駆動してヘッドユニット60を部品の供給位置Pと基板S上の部品の実装位置との間を移動させることなどが行われる。制御装置100は、試運転中に加速度センサ49により検出された加速度情報に基づいて筐体42の振動周波数を演算し、その振動周波数を図示しないモニタなどを介して作業者に報知する。また、作業者は、動吸振器50の振動周波数が筐体42の振動周波数に一致するか最も近くなるように錘固定部55に取り付ける錘板56の枚数を決定する。なお、作業者は、例えば、錘板56の枚数と動吸振器50の振動周波数との関係を予め実験などにより求めておき、求めた関係と筐体42の振動周波数とに基づいて錘板56の枚数を決定する。そして、作業者は、決定した枚数の錘板56を錘固定部55にセットしてボルト57で固定する。なお、上述したように、動吸振器50の固定部51は、上下方向に延びる長孔51aに挿入されるボルト52の締め付けにより筐体42に取り付けられる。このため、作業者は、錘板56の枚数の調整と共に、固定部51の上下方向の締め付け位置を調整することによって動吸振器50の振動周波数を調整してもよい。これにより、部品実装装置10は、可動部41(ヘッドユニット60)の移動に伴って筐体42に生じる振動を抑えることができるから、ヘッドユニット60の位置精度が低下するのを抑制することができる。
こうして準備が整った部品実装装置10の実装作業は、次のように行われる。まず、制御装置100は、基板Sを所定位置(図5参照)まで搬送するよう基板搬送装置20を制御し、必要な部品を供給位置Pに供給するよう部品供給装置30を制御する。また、制御装置100は、供給位置Pに供給された部品を吸着ノズル61で吸着するようパラレルリンク機構40とヘッドユニット60とを制御する。各吸着ノズル61が部品を吸着すると、制御装置100は、ヘッドユニット60がパーツカメラ28上を経由して基板Sの実装位置上まで移動するようパラレルリンク機構40を制御する。ヘッドユニット60がパーツカメラ28上にあるときに、制御装置100は、画像を撮像するようパーツカメラ28を制御し、その撮像画像に基づいて吸着ノズル61に吸着されている部品のずれ量を算出する。そして、制御装置100は、算出したずれ量に基づいて部品の実装位置を補正し、補正した実装位置に部品を実装するようパラレルリンク機構40とヘッドユニット60とを制御する。部品実装装置10は、動吸振器50により筐体42に生じる振動を抑えることができるから、パラレルリンク機構40やヘッドユニット60の振動も抑えることができる。このため、振動に起因して部品の吸着精度や実装精度が低下するのを抑制することができる。また、ヘッドユニット60が供給位置Pや実装位置に移動してから振動が減衰するのを待って部品を吸着したり実装したりする必要がないから、部品を速やかに吸着したり実装したりすることができる。さらに、部品実装装置10は、部品供給装置30が基板搬送装置20の下方に配置されたコンパクトな構成となっており、供給位置Pに送り出された部品と基板Sとが左右方向に隣接するように位置している。このため、部品の供給位置Pから基板S上の部品の実装位置までのヘッドユニット60の移動距離を短くすることができる。また、パーツカメラ28が基板搬送装置20の下方に配置されているから、画像の撮像のためにヘッドユニット60が移動する移動距離を短くすることができる。したがって、部品実装装置10は、ヘッドユニット60を効率よく移動させることができるから、部品の実装作業を効率よく行うことができる。
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の部品実装装置10が本開示の作業装置に相当し、ヘッドユニット60がヘッドに相当し、パラレルリンク機構40がパラレルリンク機構に相当し、筐体42が筐体に相当し、動吸振器50が動吸振器に相当する。また、加速度センサ49が検知器に相当する。
以上説明したように、本実施形態の部品実装装置10は、パラレルリンク機構40のサーボモータ43a,44a,45aを収容する筐体42に基端部が固定される板バネ53と、板バネ53の先端部に取り付けられる錘固定部55および錘板56とを有する動吸振器50を備える。このため、筐体42の振動を吸収して、パラレルリンク機構40により移動するヘッドユニット60の振動を抑えることができるから、振動の影響によりヘッドユニット60の位置精度が低下して部品の吸着精度や実装精度が低下するのを抑制することができる。
また、部品実装装置10は、動吸振器50の錘固定部55に複数の錘板56が着脱可能に取り付けられるから、動吸振器50の振動周波数を筐体42の振動周波数に合わせるための質量体の重さを容易に調整して筐体42の振動を適切に抑えることができる。
また、部品実装装置10は、筐体42の加速度を検知する加速度センサ49を備え、動吸振器50は、検知された加速度情報から演算された筐体42の振動周波数に応じた振動周波数とする重さとなるように錘板56の枚数が調整される。このため、筐体42の実際の振動周波数に応じた適切な重さの質量体を取り付けることができ、筐体42の振動を適切に抑えることができる。
なお、本開示の発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、筐体42に加速度センサ49を設け、加速度センサ49の加速度情報に基づく筐体42の振動周波数に応じた振動周波数とするための錘板56が動吸振器50に取り付けられるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、部品実装装置10の使用条件を考慮したシミュレーションなどで導出された振動周波数とするための錘板56が動吸振器50に取り付けられるものなどとしてもよい。
上述した実施形態では、動吸振器50が錘板56の枚数、即ち質量体の重さを調整可能としたが、これに限られず、質量体の重さを調整不能として所定の重さの質量体が取り付けられるものとしてもよい。そのようにする場合、部品実装装置10のいくつかの使用条件を想定した実験などから筐体42の振動周波数の代表値を求め、その代表値に応じた振動周波数とするための質量体の重さを所定の重さとすればよい。
上述した実施形態では、パラレルリンク機構40の可動部41に、部品を吸着(採取)して基板に実装する実装作業を行うヘッドが取り付けられるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、基板にクリームハンダなどの粘性流体を塗布する塗布作業を行うものなど、基板に対して作業を行うヘッドが取り付けられるものであってもよい。あるいは、基板に対する作業を行うヘッドが取り付けられるものに限られず、作業対象物を組み立てる組立作業や作業対象物に加工を施す加工作業、作業対象物に検査を行う検査作業など、作業対象物に作業を行うヘッドが取り付けられるものであればよい。
上述した実施形態では、旋回キャスター18により移動可能な支持構造体11が、ヘッドユニット60を移動させるパラレルリンク機構40だけでなく、基板搬送装置20や部品供給装置30、制御装置100を支持するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、旋回キャスター18により移動可能な支持構造体11が、ヘッドユニット60を移動させるパラレルリンク機構40だけを支持し、別の支持構造体が基板搬送装置や部品供給装置,制御装置などを支持してもよい。
上述した実施形態では、ロックペダル87とアンロックペダル88とを有する昇降機構82により吸盤90が昇降するものとしたが、これに限られるものではない。即ち、旋回キャスター18により移動可能となるよう吸盤90が床面FLから離間する位置と、吸盤90が床面FLに吸着可能となるよう吸盤90が床面FLに接触する位置とに吸盤90を昇降させる機構であればよい。
上述した実施形態では、床面FLへの吸着と支持構造体11の支持とを吸盤90が行うものとしたが、これに限られず、吸盤は床面FLへの吸着のみを行い支持構造体11の支持は別部材が行うものとしてもよい。例えば、ロックペダル87とアンロックペダル88とを有する昇降機構82には、吸盤機能のない円盤状の支持プレートを取り付け、その支持プレートが支持構造体11の支持を行うものとしてもよい。また、吸盤は、支持プレートに連動して上下に昇降するものとし、床面FLに接触して床面FLに吸着することで支持プレートが動かないように固定するものとしてもよい。
上述した実施形態では、アジャスターボルト85とナット86とにより各吸盤90の高さ位置を調整可能としたが、これに限られず、各吸盤90の高さ位置を調整不能とし吸盤90の高さ位置が一定のものとしてもよい。
上述した実施形態では、旋回キャスター18により部品実装装置10が移動可能なものとしたが、これに限られず、部品実装装置10が移動せずに固定されるものとしてもよい。そのようにする場合、支持構造体11を吸盤90で床面FLに固定するものに限られず、アンカーボルトなどで床面FLに固定するものなどとしてもよい。
上述した実施形態では、フィーダユニット31のフィーダ台34がヒンジ36を支点に水平方向に90度回動するものとしたが、これに限られず、テープフィーダ32の着脱が容易となる位置まで回動可能であればよい。また、フィーダ台34が水平方向に回動するものに限られず、前後方向にスライドするものなど、フィーダ台34が供給用位置から供給用位置よりもテープフィーダ32の着脱が容易な着脱用位置に移動可能であればよい。
上述した実施形態では、フィーダユニット31のフィーダ台34が矩形枠14に回動可能に取り付けられるものとしたが、これに限られず、回動不能に取り付けられるものとしてもよい。このようにする場合、フィーダ台34を、セットされるテープフィーダ32の長手方向が前後方向となるように配置するもの、即ち、テープフィーダ32の部品の送り方向が基板搬送装置20の基板Sの搬送方向に直交するよう配置するものとしてもよい。こうすれば、フィーダ台34が回動しなくても、作業者が部品実装装置10の前方からテープフィーダ32をフィーダ台34に容易に着脱することができる。
上述した実施形態では、フィーダユニット31による部品の供給位置Pを実装時の基板Sに左右方向に隣接する位置としたが、これに限られず、供給位置Pを実装時の基板Sに覆われない位置であればよく、実装時の基板Sから離間した位置であってもよい。
上述した実施形態では、部品供給装置30がフィーダユニット31のみを備えるものを例示したが、これに限られず、部品が並べられたトレイにより部品を供給するトレイユニットなど他の方式により部品を供給する部品供給ユニットを備えるものとしてもよい。このようにする場合、いずれの部品供給ユニットも基板搬送装置20の下方から部品を供給可能となるように配置してもよい。あるいは、一部の部品供給ユニットは基板搬送装置20よりも上方から部品を供給可能となるように配置してもよい。
上述した実施形態では、基板搬送装置20の下方に部品供給装置30が配置されるものとしたが、これに限られず、パラレルリンク機構40により移動するヘッドユニット60の吸着ノズル61が吸着可能な供給位置に部品を供給するよう部品供給装置が配置されるものであればよい。
上述した実施形態では、パーツカメラ28が基板搬送装置20の下方で、フィーダユニット31に隣接する位置に配置されるものとしたが、これに限られず、パーツカメラ28が基板搬送装置20の下方に配置されるものであればよい。あるいは、パーツカメラ28が基板搬送装置20の下方に配置されるものに限られず、基板搬送装置20よりも上方に配置されるものとしてもよい。この場合の変形例の部品実装装置10Bを図9に示す。図9の変形例では、上述した実施形態と同じ構成に同じ符号を付し詳細な説明は省略する。
図9の変形例の部品実装装置10Bでは、パーツカメラ28Bが、基板搬送装置20の後方側のサイドフレーム22の背面から上方に立設した取付板29Bに取り付けられている。この変形例では、供給位置P(図5参照)の後方位置にパーツカメラ28Bが配置されるものとした。また、上述した実施形態と異なり、パラレルリンク機構40Bが、3つのリンク機構43,44,45に加えて、さらに3つのリンク機構46,47,48を備える。このパラレルリンク機構40Bは、3つのリンク機構43,44,45によるXYZ方向の位置調整と、3つのリンク機構46,47,48による各軸周りの回転角(ピッチ角,ロール角,ヨー角)の角度調整とが可能な6軸の機構である。また、ヘッドユニット60Bは、R軸アクチュエータ65,Z軸アクチュエータ71,Q軸アクチュエータ75の各サーボモータ66a,72a,76aが可動部41B内に収容されている。このため、上述した実施形態と異なり、筐体42と可動部41Bとの間にR軸駆動ロッド66,Z軸駆動ロッド72,Q軸駆動ロッド76は設けられていない。なお、可動部41B内の各サーボモータ66a,72a,76aは、図示しない配線により制御装置100と電気的に接続される。これらのことから、変形例の部品実装装置10Bでは、可動部41Bを移動させるだけでなく、可動部41Bの姿勢を変えることができる。例えば、ヘッドユニット60Bは、ロータリヘッド62の下面が下向きとなる下向き姿勢から下面が横向きとなる横向き姿勢に姿勢を変えることができる。したがって、部品実装装置10Bは、ヘッドユニット60Bが下向き姿勢で各吸着ノズル61に部品を吸着した後、パラレルリンク機構40Bの駆動によりヘッドユニット60Bを横向き姿勢に変化させることで、パーツカメラ28Bで撮像することができる。そして、部品実装装置10Bは、画像撮像後に再びヘッドユニット60Bを下向き姿勢に変化させながら、基板S上の実装位置に移動させて、部品を基板Sに実装することができる。
このように、変形例の部品実装装置10Bのパラレルリンク機構40Bは、ヘッドユニット60Bが部品を採取または実装する際の向きとは異なる向きにヘッドユニット60Bの姿勢を変更可能である。また、パーツカメラ28Bが基板搬送装置20よりも上方に配置されており、ヘッドユニット60Bが姿勢を変えることで撮像可能であるから、パーツカメラ28Bの撮像のためにヘッドユニット60Bが移動する必要がない。したがって、ヘッドユニット60Bが部品の供給位置から部品の実装位置まで速やかに移動することができるから、部品の実装作業を効率よく行うことができる。
以上説明したように、本開示の作業装置は、所定の作業を行うヘッドと、複数のリンク機構により前記ヘッドを移動させるパラレルリンク機構と、前記パラレルリンク機構のアクチュエータを収容する筐体と、前記筐体に基端部が固定される弾性体と、該弾性体の先端部に取り付けられる質量体とを有し、前記筐体の振動を吸収する動吸振器と、を備えることを要旨とする。
本開示の作業装置において、前記動吸振器は、前記質量体として複数の錘が前記弾性体の先端部に着脱可能に取り付けられるものとしてもよい。こうすれば、動吸振器の振動周波数を、筐体の振動周波数に合わせるための質量体の重さの調整を容易に行うことができるから、振動を適切に抑えることができる。
本開示の作業装置において、前記筐体の加速度を検知する検知器を備え、前記動吸振器は、前記検知された加速度に基づく前記筐体の振動周波数に応じた振動周波数となるように前記錘が取り付けられるものとしてもよい。こうすれば、筐体の実際の振動周波数に合わせた適切な重さの錘を動吸振器に取り付けることができる。このため、例えば作業装置の使用状況によって筐体の振動周波数が異なるものとなる場合でも、振動を適切に抑えることができる。