JP6724896B2 - ガラスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラスの製造方法、特にガラス繊維の製造方法に関する。
ガラス原料を溶融する際に、ガラス融液表面に泡層が発生することがある。泡層は、ガラス原料に含まれる硫黄化合物や清澄剤として添加した硫酸塩の分解により発生するSOガス等に起因して生成する。泡層はガラス溶融の安定化に寄与するものであり、ガラス融液表面の早流れを防止して脈理やブツのないガラスを得易くする効果がある。
詳述すると、ガラス融液表面の泡層が薄すぎる場合、ガラス融液と炉内雰囲気の接触頻度が高くなるため、ガラス融液から特定成分が蒸発しやすくなる。その結果、ガラス融液の均質性が低くなり、製品欠陥の原因となることがある。ガラス融液表面の泡層が厚すぎる場合、バーナーによる熱がガラス融液に伝わりにくくなり、ガラス溶融のために多量のエネルギーが必要になり、ひいてはコストアップとなる。ガラス融液表面の泡層の厚みが変動すると、ガラス融液への熱伝達が変化するためガラス品質の変化をもたらすばかりでなく、泡層と炉内雰囲気の界面の位置が変動するため、耐火物/泡層/雰囲気の界面が激しく浸食されたり、耐火物表面の付着物片が剥離し流出することでブツが発生したりする。
泡層の調整を目的として、化学的酸素要求量(COD)が300ppm以上であるガラス製造用カオリン原料を使用することが特許文献1で提案されている。
特開2015−193522号公報
CODの分析には手間及び時間がかかることから、実生産中にCODの変動を監視し、適正範囲内に維持することが難しい。つまりCODの多い原料はその変動量が大きく、泡層を変動させる可能性がある。ところが特許文献1では、カオリン原料自体のCODの変動を把握しようとするものではないため、カオリン原料のCODが変動した場合に対応できず、泡層の変動を引き起こす。
本技術の課題は、泡層の変動を事前に抑制し、泡層の状態を変化させることなく一定に維持することが可能なガラスの製造方法を提供することにある。
本発明者等は種々の検討を行った結果、泡層に大きな影響を及ぼす還元性炭素量に着目した。図1は、原料バッチ中の還元性炭素の量と溶融窯中の泡層の関係を示すグラフである。図1から理解されるように、原料バッチの還元性炭素の量が一定であれば、泡層の厚みが一定になる。
さらに本発明者等は、ガラス原料として使用する粘土鉱物は還元性炭素を多く含み、またその変動が大きいこと、及び粘土鉱物の還元性炭素量に基づき原料バッチの還元性炭素量を補正することにより、泡層の変動を抑制し一定に維持できることを見出し、本発明として提案するものである。
本発明のガラスの製造方法は、硫黄成分を含む原料バッチを溶融し、成形してガラスを連続的に製造するガラスの製造方法であって、原料バッチの少なくとも一部を粘土鉱物で構成するとともに、使用する粘土鉱物の還元性炭素量を分析する工程と、分析結果に応じて原料バッチの還元性炭素量を補正する工程と、を含むことを特徴とする。なお粘土鉱物を複数種含む場合は、そのうちの少なくとも1種について還元性炭素量を分析すればよい。
本発明において「粘土鉱物」とは、カオリナイト(AlSi(OH))、パイロフィライト(AlSi10(OH))のように、岩石が風化作用や熱水作用を受けて形成される鉱物であり、主な構成元素はSi、Al、OおよびOH基であるが、これらの構成成分に限定されることはなく、他の鉱物由来の不純物を含有する。なお原料バッチに用いられる粘土鉱物は純粋なカオリナイトやパイロフィライトではなく、それらや石英などの他の鉱物との混合物である場合が多い。また、「還元性炭素量」とは炭素のうち炭酸塩および二酸化炭素を除く炭素の量である。
還元性炭素量の分析は、間接加熱方式の炭素分析装置で求めることができる。炭素分析装置は試料を酸素ガス含有雰囲気で加熱し、放出されたCOを赤外線吸収法で求める装置である。試料から放出されたCOと評価に供した試料量から試料の炭素量を求めることができる。試料の炭素は、遊離炭素、グラファイト、炭化水素のような還元性を持つ炭素と、還元性を持たない炭酸塩の炭素に区分される。本発明における「還元性炭素」は前者である。還元性炭素の加熱時の酸化によるCO放出温度は炭酸塩の分解によるCO放出温度よりも低いことから、還元性炭素と炭酸塩を区別することができる。還元性炭素量は、例えば堀場製作所製炭素硫黄分析装置EMIA−810Wにて、620℃300秒の熱処理で検出することができる。該条件では、試料中の炭酸塩および二酸化炭素は検出せず、還元性炭素のみを検出することができる。
還元性炭素量の分析は、CODの分析と比べれば簡単に行うことができる。よって泡層が一定となるように、還元性炭素量を常時補正することが可能になる。
本発明においては、硫黄成分の含有量の合量が、SOとして100ppm以上含む原料バッチを使用することが好ましい。「硫黄成分」とは、硫酸塩、硫化物、硫黄、硫黄成分を含む混合物や複合物、不純物として含まれる硫黄等、原料バッチに含まれる全ての硫黄を指す。
上記構成を採用すれば、原料バッチの溶融の際に、泡層を形成させるSOガスを十分に放出させることができ、本発明の効果が顕著になる。
本発明においては、還元性炭素量の異なる複数のガラス原料で構成された原料バッチを使用する場合において、還元性炭素量が異なるガラス原料の使用割合を変更することによって、原料バッチの還元性炭素量を補正することができる。
上記構成を採用すれば、原料バッチの還元性炭素量の補正が容易になる。
本発明においては、原料バッチの還元性炭素量の変動の範囲が300ppm以下となるように、原料バッチの還元性炭素量を補正することが好ましい。
上記構成を採用すれば、泡層の変動を抑制でき、生産性の悪化を効果的に防止することができる。
本発明においては、原料バッチの還元性炭素量が100〜1000ppmとなるように、原料バッチの還元性炭素量を補正することが好ましい。
上記構成を採用すれば、原料バッチが融液化した後に放出されるSOガス量の変動を抑制することが容易になり、ガラス溶融炉内の泡層を安定させ易くなる。その結果、泡層と雰囲気の界面に存在する未溶解ブツや失透、あるいは耐火物表面の付着物の流出によるブツ不良を効果的に抑制できる。
本発明においては、粘土鉱物の還元性炭素量の変動の範囲が600ppm以下となるように、粘土鉱物の還元性炭素量を調整することが好ましい。
上記構成を採用すれば、原料バッチの還元性炭素の変動に対する影響が大きい原料を優先して補正するため、還元性炭素の測定頻度を抑制しつつ、効果的に泡層の変動を抑制できる。
本発明においては、還元性炭素量を増加させる炭素化合物又は炭素をバッチに添加することによって、原料バッチの還元性炭素量を補正することができる。なお「還元性炭素量を増加させる炭素化合物」とは、二酸化炭素および炭酸塩を除く炭素化合物である。
上記構成を採用すれば、原料バッチの還元性炭素量の補正が容易になる。特に還元性炭素量の不足を補う手段として好適である。
本発明においては、Alとして換算したアルミニウム量が5質量%以上である粘土鉱物を原料バッチに含むことが好ましい。
本発明においては、ガラスを繊維状に成形することが好ましい。
本発明においては、酸化物基準の質量%で、SiO 42〜67%、Al 8〜26%、CaO 9〜25%、及びRO(但し、Rは、Li,Na及びKのうちの少なくともひとつ) 0〜2%含有するガラス組成となるように原料バッチを調製することが好ましい。
本発明においては、Eガラス組成となるように原料バッチを調製することが好ましい。なお「Eガラス」とは、ASTM D578−05 4.2.2で定義される組成を意味する。
本発明のガラス繊維の製造方法は、硫黄成分を含む原料バッチを溶融し、成形してガラス繊維を連続的に製造するガラス繊維の製造方法であって、原料バッチの少なくとも一部を粘土鉱物及びガラス繊維カレットで構成するとともに、使用する粘土鉱物の還元性炭素量を予め分析する工程と、分析結果に応じて原料バッチの還元性炭素量を補正する工程とを含むことを特徴とする。
本発明のガラス繊維の製造方法は、硫黄成分を含む原料バッチを溶融し、成形してガラス繊維を連続的に製造するガラス繊維の製造方法であって、原料バッチの少なくとも一部を粘土鉱物及びガラス繊維カレットで構成するとともに、原料バッチの還元性炭素量の変動の範囲を300ppm以下に調整する工程を含むことを特徴とする。
本発明においては、溶融したガラスをブッシングに供給し、ブッシング底面に設けられた多数のブッシングノズルからフィラメント状に連続的に引き出した後、引き出されたモノフィラメントに処理剤を塗布して集束することによって、溶融ガラスを繊維状に成形することが好ましい。
原料バッチの還元性炭素量と溶融窯の泡層の厚みの関係を示すグラフである。
本発明のガラスの製造方法は、粘土鉱物の還元性炭素量を分析する工程(分析工程)と、分析結果に基づいて原料バッチの還元性炭素量を補正する工程(補正工程)とを含むことを特徴とする。より具体的には、ガラスを連続的に製造する過程で、分析工程及び補正工程を繰り返せばよい。また分析工程と補正工程の間に、補正の要否を判定する工程(判定工程)を独立して設けても良い。判定工程を設けた場合について、以下に詳述する。
(1)分析工程
原料バッチを構成する原料のうち、粘土鉱物は他の原料に比べて還元性炭素量が多く含まれる。また還元性炭素量の変動が大きい。また例えばEガラスを製造する場合、原料バッチに占める粘土鉱物の使用割合が大きいので、粘土鉱物中の還元性炭素量が変動するとバッチの還元性炭素の変動は大きくなる。それゆえ粘土鉱物の還元性炭素量について定期的或いは不定期に分析を行い、使用する粘土鉱物の還元性炭素量を把握する。なお使用する粘土鉱物が複数種類ある場合、各粘土鉱物について還元性炭素量を測定することが望ましいが、これに限定されるものではない。例えばバッチ全体の還元性炭素量に大きな影響を与える粘土鉱物(例えばクレー、カオリン等)のみについて分析してもよい。
なお還元性炭素量の分析対象は、粘土鉱物のみに限定されない。粘土鉱物以外のガラス原料についても、定期的或いは不定期に還元性炭素量を分析することが望ましい。このようにすれば、粘土鉱物以外のガラス原料に含まれる還元性炭素量の変動に起因して、原料バッチ全体の還元性炭素量が大きく変動する、といった事態を回避することができる。
(2)判定工程
次に粘土鉱物(及び他の原料)の還元性炭素量の分析値を利用して、原料バッチの還元性炭素量の補正の要否を判定する。補正の要否を判定するに当たっては、(A)分析した粘土鉱物の還元性炭素量そのものから直接的に判定してもよいし、(B)分析した粘土鉱物の還元性炭素量と、予め求めておいた他のガラス原料の還元性炭素量の値とを合算して判定してもよいし、(C)分析した粘土鉱物の還元性炭素量の値が所定範囲外となった場合に、原料バッチの還元性炭素量を実際に分析し、その結果に基づいて補正の要否を判定してもよい。
なお原料バッチの還元性炭素量を分析する場合は、原料バッチそのものを直接分析して求めてもよい。しかし分析する粘土鉱物以外のガラス原料の還元性炭素量の変動の影響が少ないと見込まれる場合は、粘土鉱物以外の原料の還元性炭素量を判定の度に分析する必要はない。つまり還元性炭素量の少ない原料、還元性炭素量の変動が小さい原料、或いはバッチに占める割合が低い原料は、原料バッチ全体の還元性炭素量の変動に与える影響が小さい。それゆえこれらの原料に関しては、前もって分析しておいた還元性炭素量の代表値を使用し、都度の分析を省略することができる。
(3)補正工程
原料バッチの還元性炭素量の補正が必要であると判定した場合、原料バッチの還元性炭素量を補正する。一方、原料バッチの還元性炭素量の補正が不要であると判定した場合、原料バッチの還元性炭素量の補正は行わない。
原料バッチの還元性炭素量を補正する方法は特に限定されず、例えば以下に示す方法を単独又は組み合わせて使用することができる。
原料バッチの還元性炭素量を補正する方法の一つとして、還元性炭素量が異なるガラス原料の使用割合を変更する方法がある。この方法では、同一種類別銘柄のガラス原料について、還元性炭素量の多い銘柄と少ない銘柄をあらかじめ用意しておき、その使用比率を変更することで、原料バッチの還元性炭素量を調整することができる。或いは還元性炭素量が異なる別種の原料、粘土鉱物(例えばクレーとカオリン)、ホウ酸原料(例えばホウ酸とコレマナイト(2CaO・3B・5HO))の使用比率を変更することで、原料バッチの還元性炭素量を調整することができる。この場合、還元性炭素量が異なる原料間での還元性炭素量の差は100ppm以上、300ppm以上、特に500ppm以上であることが好ましい。一方で、原料の還元性炭素量が多いと、その変動量も多くなるため、原料間の還元性炭素量の差は2000ppm以下、1500ppm以下、特に1000ppm以下であることが好ましい。
原料バッチの還元性炭素量を補正する別の方法として、還元性炭素量を増加させる炭素化合物又は炭素をバッチに添加する方法がある。例えば木屑、カーボン等を加えることができる。ただしこれらは、還元性炭素の含有割合が高く、原料の秤量誤差等によりこれら原料の使用量が変動した場合、泡層は大きく変動する。そのため、積極的に使用しない方がよい。
原料バッチの還元性炭素量の変動の範囲は、300ppm以下に調整することが好ましい。原料バッチの還元性炭素量の変動範囲が大きいと泡層厚みの変動が大きくなり、均質性が低下したガラス生地により生産性が悪化する。よって原料バッチの還元性炭素の変動の範囲は300ppm以下、200ppm以下、特に100ppm以下とすることが好ましい。
原料バッチの還元性炭素量の好ましい範囲(目標範囲)は100〜1000ppmである。原料バッチの還元性炭素は原料バッチに含まれるSOの分解挙動に影響する。還元性炭素量が少なすぎると、原料バッチに含まれるSO量に対する、原料バッチ融液化後に放出されるSOガスの割合が多くなるため泡層が厚くなりすぎる。その結果、バーナーによる雰囲気加熱の際に、泡層を介した熱伝達が制限され、ガラス融液へ熱が伝わりにくくなり、ガラス溶融のために多量のエネルギーが必要となる。また原料バッチの還元性炭素量を極端に少なくしようとすると、天然原料の場合は還元性炭素量の少ない箇所から採取しなければならず、原料供給量が制限されかつ原料コストが増大する。また、天然原料、化成品のいずれの場合も原料の精製工程が煩雑となり、ガラス原料のコストが増大する。よって、原料バッチの還元性炭素量は100ppm以上、300ppm以上、400ppm以上、特に500ppm以上とすることが好ましい。一方、原料バッチの還元性炭素量が多すぎると、放出されるSOのうち原料バッチ融液化後に放出される割合が少なくなり、泡層が薄くなりすぎる。その結果、ガラス融液表面からの特定成分の蒸発が促進され、均質性が低くなりやすく、ひいてはガラス製造コストが増大する。また、SOが原料バッチの融液化前に放出されるため、泡層維持のためSO使用量を増加させる必要があり、環境負荷が大きくなる。よって原料バッチの還元性炭素量は900ppm以下、800ppm以下、特に700ppm以下とすることが好ましい。
粘土鉱物の還元性炭素量の変動の範囲は、600ppm以下に調整することが好ましい。粘土鉱物の還元性炭素量の変動範囲を調整する方法として、例えば粘土鉱物の銘柄、使用量、使用割合等を変更すればよい。粘土鉱物の還元性炭素量の変動範囲が大きいと、原料バッチの還元性炭素量の補正が不安定になる。粘土鉱物の還元性炭素量の変動範囲は、好ましくは600ppm以下、400ppm以下、特に200ppm以下である。
次に、本発明の方法をガラス繊維の製造に適用した例について説明する。ただし本発明の方法はこれに制限されるものではない。
まず目標組成となるようにガラス原料を調合して原料バッチを得る。原料バッチを得るに当たり、既述した通り、粘土鉱物の還元性炭素量を分析する工程と、分析結果に基づいて原料バッチの還元性炭素量を補正する工程とを実施する。なお分析結果から原料バッチの還元性炭素量の補正の要否を判定する判定工程を、分析工程と補正工程の間に独立して設けても良い。
目標組成としては、例えば酸化物基準の質量%で、SiO 42〜67%、Al 8〜26%、及びRO(但し、Rは、Li,Na及びKのうちの少なくともひとつ) 0〜2%含有するガラス組成、特にSiO 52〜62%、Al 10〜16%、B 0〜8%、MgO 0〜5%、CaO 16〜25%及びRO(但し、Rは、Li,Na及びKのうちの少なくともひとつ) 0〜2%、SO 0.01〜1%含有するガラス組成、またはASTM D578−05 4.2.2で定義されるEガラス組成となるように調合することが好ましい。以下に各成分を上記の範囲に限定した理由を述べる。なお以下の説明において「%」は質量%を意味する。
SiOは、ガラスのネットワークフォーマーである。その含有量は42〜67%であり、好ましくは52〜62%、より好ましくは53〜60%、特に好ましくは55〜60%である。SiOの含有率が低すぎると、ガラス繊維の機械的強度が低くなりすぎる場合がある。SiOの含有率が高すぎると、ガラス融液の粘度が高くなりすぎるため、溶融及び成形が困難となる場合がある。
Alは、ガラス繊維の耐候性や機械的強度を向上させる成分である。その含有量は8〜26%であり、好ましくは10〜18%、より好ましくは13〜16%、特に好ましくは12〜16%である。Alの含有率が低すぎると、ガラス融液が失透しやすくなる場合がある。Alの含有率が高すぎると、ガラス融液の粘度が高くなりすぎるため、溶融及び成形が困難となる場合がある。
は、ガラス融液の粘度を低下させると共に、ガラスの溶融温度、紡糸温度を低下させる成分である。その含有量は好ましくは0〜25%であり、0〜10%、1〜10%、特に5〜9%である。Bの含有率が高すぎると、ガラス繊維の化学的耐久性が低くなりすぎる場合がある。また、ガラス融液からの揮発量が多くなるため、安定した組成でガラス繊維を製造することが困難となる。
MgO,CaOは、ガラスの溶融性を改善する成分である。MgOの含有量は好ましくは0〜15%であり、0〜10%、0〜5%、特に0.1〜4%である。またCaOの含有量は好ましくは9〜35%であり、16〜25%、特に18〜25%である。CaOの含有率が低すぎると、ガラス融液の粘度が高くなりすぎ、溶融や紡糸が困難となる場合がある。CaOの含有率が高すぎると、ウォラストナイト(CaO・SiO)の結晶が析出しやすくなる場合がある。MgOの含有率が高くなりすぎると、ディオプサイド(CaO・MgO・2SiO)の結晶が析出しやすくなる場合がある。
O(但し、Rは、Li,Na及びKのうちの少なくともひとつ)は、ガラスの溶融性や紡糸性を向上させる成分である。ROの含有量は合量で0〜2%、好ましくは0.3〜2%である。ROの含有率が高すぎると、ガラス繊維の機械的強度が低くなりすぎる場合がある。また、ガラス繊維の電気抵抗値が下がり、電気絶縁用途としては、不適切となる。
SOは清澄成分であり、かつガラス溶融炉で泡層を形成させる成分である。バッチに含まれるSOは清澄ガスあるいは泡層形成ガスとしてガラス融液から放出されるが、一部はガラス中に残存する。ガラス中のSO量は0.01〜1%であり、好ましくは0.01〜0.5%、より好ましくは0.02〜0.2%である。SOの含有量が多すぎたり、少なすぎたりすると、ガラスが充分に清澄されず、泡が多くなって製品不良を引き起こす場合がある。
また上記以外にも、種々の成分を含有することができる。例えばSrO,BaO,ZrO,TiO,Fe,As,SnO,ZnO,Sb,Cl,HO,He,Ni等を含有していてもよい。
次に使用するガラス原料を例示する。なおガラス原料中には、粘土鉱物を必須成分として含む。また原料バッチ中には硫黄成分が含まれる。なお原料バッチはこれらの原料のみで構成してもよいが、ガラスカレットを併用してもよい。
ケイ素源としてクレー、カオリン等の粘土鉱物やシリカ等を使用することができる。
アルミニウム源として、クレー、カオリン等の粘土鉱物やアルミナ等のアルミニウム化成品が使用できる。特に粘土鉱物は、アルミニウム化成品と比べて安価であり、原料バッチコスト低減の観点から有利である。粘土鉱物としてAlに換算したアルミニウム量が5質量%以上、8質量%以上、特に10質量%以上であるものを使用することが好ましい。一方、粘土鉱物中のAl含有量が多すぎる場合、ガラスに溶解せず欠陥となる可能性がある。よって、アルミニウム含有粘土鉱物のAl含有量は80質量%以下、60質量%以下、特に50質量%以下であることが好ましい。
ホウ素源として、コレマナイト(別名:灰ホウ石、2CaO・3B・5HO)、ホウ酸(B・3HO)、5水硼砂(NaO・2B・5HO)等が使用できる。
アルカリ土類金属源として、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、ドロマイト(MgO・CaO・2CO)等が使用できる。
アルカリ金属源として、炭酸ナトリウム(NaCO)等のアルカリ金属の炭酸塩等が使用できる。
原料バッチ中の硫黄成分は、既述の通り、種々の形態で含まれる。原料として含む場合、硫酸塩、硫黄化合物等が使用できる。なお硫黄成分は、原料中に含まれる不純物であってもよい。
硫酸塩としては、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の硫酸塩等が挙げられる。
硫黄化合物としては、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の硫酸塩や硫化鉄(FeS,FeS2)等の金属硫化物、および硫黄が挙げられる。
次いで、調合した原料バッチをガラス溶融炉に投入してガラス化し、溶融、均質化する。溶融温度は1500〜1600℃程度が好適である。
続いて溶融ガラスを紡糸してガラス繊維に成形する。詳述すると、溶融ガラスをブッシングに供給する。ブッシングに供給された溶融ガラスは、その底面に設けられた多数のブッシングノズルからフィラメント状に連続的に引き出される。このようにして引き出されたモノフィラメントに各種処理剤を塗布し、所定本数毎に集束することによってガラス繊維を得る。
このようにして成形されたガラス繊維は、チョップドストランド、ヤーン、ロービング等に加工され、種々の用途に供される。なおチョップドストランドとは、ガラスモノフィラメントを集束したガラス繊維(ストランド)を所定長の長さに切断したものである。ヤーンとは、ストランドに撚りをかけたものである。ロービングとは、ストランドを複数本合糸し、円筒状に巻き取ったものである。
以下、実施例に基づき、本発明を説明する。
(実施例1)
まず粘土鉱物、硫酸塩等のガラス原料を用いてEガラス(質量%でSiO 53.2
%、Al 15%、B 7%、MgO 3%、CaO 20%、TiO 0.3%、NaO 1%,KO 0.2%,Fe 0.1%、SO 0.2%)組成となるように原料バッチを調製した(試料No.1〜5)。ここでクレーの使用割合の合計は、バッチ全体の45質量%とした。
試料No.1〜5で用いた粘土鉱物は、主たる成分としてパイロフィライトとシリカを含む同一種類同銘柄のクレー(クレーAという)であるが、ロットの異なるものを用いた。表1にクレーA及び原料バッチの還元性炭素量の分析値を示す。
なお還元性炭素量の分析は、間接加熱方式の炭素硫黄分析装置(堀場製作所製EMIA−810W)にて行い、サンプル0.1gを保持温度620℃、分析時間300秒の条件で分析される炭素量を還元性炭素量とした。なお、該温度時間条件は、試料の炭素のうち、還元性を有する炭素由来のCOのみを検出し、炭酸塩由来のCOを検出しないように設定した。
表1から明らかなように、クレーAの還元性炭素量がロット毎に異なっており、それに伴い、原料バッチ全体の還元性炭素量が大きく変動した。それゆえクレーAを用いてガラスを長期間連続的に生産すると、泡層の厚みが変動し、操業が不安定になると考えられる。
次に還元性炭素量が200ppmおよび1000ppmである別銘柄のクレー(主たる成分はクレーAと同じくパイロフィライトおよびシリカである。以下クレーB及びクレーC)を、補正用原料として用意し、同様にして原料バッチを調製した(試料No.6〜10)。なお試料No.6〜10では、表2に示すように、クレーAの還元性炭素量に応じてクレーAの一部をクレーB又はクレーCに置き換えることによって、原料バッチの還元性炭素量が450ppmとなるように補正した。
表2から明らかなように、クレーAの還元性炭素量に変動が生じても、クレーAの還元性炭素量を事前に分析、把握し、その量に応じて原料バッチの還元性炭素量を補正すれば、ガラス溶融炉に投入される原料バッチの還元性炭素量を一定に保つことができる。その結果、泡層の厚みを一定にすることができ、長期間に亘る安定操業が可能になる。
(実施例2)
まず粘土鉱物、硫黄化合物等のガラス原料を用いてEガラス(質量%でSiO 53.2%、Al 15%、B 7%、MgO 3%、CaO 20%、TiO 0.3%、NaO 1%,KO 0.2%,Fe 0.1%、SO 0.2%)組成となるように原料バッチを調製した。なお粘土鉱物としてクレーAを用いた。クレーAの使用料は、バッチ全体の45質量%とした。また原料バッチの還元性炭素量の目標範囲は650〜750ppmに設定した。
次に原料バッチを連続溶融炉に投入して、1500〜1600℃でガラスを溶融した。続いて溶融ガラスをブッシングに供給し、ブッシングノズルから溶融ガラスをフィラメント状に連続的に引き出した。このようにして引き出された2000本のモノフィラメントに各種処理剤を塗布し、集束することによってガラス繊維を連続的に製造した。
本実施例においては、原料バッチの調合を毎日行った。また原料バッチに用いるクレーAはロットごとに還元性炭素量を測定し、原料バッチの調合ごとに原料バッチの還元性炭素量を求めた。なおクレーA以外のガラス原料の還元性炭素量は、予め分析した値を使用した。
分析したクレーAの還元性炭素量から求めた原料バッチの還元性炭素量が目標範囲内である場合、クレーB又はクレーCによる還元性炭素量の補正は行わなかった。一方、クレーAの還元性炭素量から求めた原料バッチの還元性炭素量が目標範囲から外れる場合、クレーB又はクレーCを用いて還元性炭素量を補正した。なおクレーB及びクレーCの還元性炭素量も、ロットごとに分析し、確認した。
本発明の方法は、ガラス繊維、特にEガラス繊維の製造方法として好適である。

Claims (14)

  1. 硫黄成分を含む原料バッチを溶融し、成形してガラスを連続的に製造するガラスの製造方法であって、原料バッチの少なくとも一部を粘土鉱物で構成するとともに、使用する粘土鉱物の還元性炭素量を分析する工程と、分析結果に応じて原料バッチの還元性炭素量を補正する工程と、を含むことを特徴とするガラスの製造方法。
  2. 硫黄成分の含有量の合量が、SOとして100ppm以上含む原料バッチを使用することを特徴とする請求項1に記載のガラスの製造方法。
  3. 還元性炭素量の異なる複数のガラス原料で構成された原料バッチを使用する請求項1又は2に記載のガラスの製造方法であって、還元性炭素量が異なるガラス原料の使用割合を変更することによって、原料バッチの還元性炭素量を補正することを特徴とするガラスの製造方法。
  4. 原料バッチの還元性炭素量の変動の範囲が300ppm以下となるように、原料バッチの還元性炭素量を補正することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のガラスの製造方法。
  5. 原料バッチの還元性炭素量が100〜1000ppmとなるように、原料バッチの還元性炭素量を補正することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のガラスの製造方法。
  6. 粘土鉱物の還元性炭素量の変動の範囲が600ppm以下となるように、粘土鉱物の還元性炭素量を調整することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のガラスの製造方法
  7. 還元性炭素量を増加させる炭素化合物又は炭素をバッチに添加することによって、原料バッチの還元性炭素量を補正することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のガラスの製造方法。
  8. Alとして換算したアルミニウム量が5質量%以上である粘土鉱物を原料バッチに含むことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のガラスの製造方法。
  9. ガラスを繊維状に成形することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のガラスの製造方法。
  10. 酸化物基準の質量%で、SiO 42〜67%、Al 8〜26%、CaO 9〜25%、及びRO(但し、Rは、Li,Na及びKのうちの少なくともひとつ) 0〜2%含有する組成となるように原料バッチを調製することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のガラスの製造方法。
  11. Eガラス組成となるように原料バッチを調製することを特徴とする請求項1〜10の何れかに1項に記載のガラスの製造方法。
  12. 硫黄成分を含む原料バッチを溶融し、成形してガラス繊維を連続的に製造するガラス繊維の製造方法であって、原料バッチの少なくとも一部を粘土鉱物及びガラス繊維カレットで構成するとともに、使用する粘土鉱物の還元性炭素量を予め分析する工程と、分析結果に応じて原料バッチの還元性炭素量を補正する工程とを含むことを特徴とするガラス繊維の製造方法。
  13. 硫黄成分を含む原料バッチを溶融し、成形してガラス繊維を連続的に製造するガラス繊維の製造方法であって、原料バッチの少なくとも一部を粘土鉱物及びガラス繊維カレットで構成するとともに、原料バッチの還元性炭素量の変動の範囲を300ppm以下に調整する工程を含むことを特徴とするガラス繊維の製造方法。
  14. 溶融したガラスをブッシングに供給し、ブッシング底面に設けられた多数のブッシングノズルからフィラメント状に連続的に引き出した後、引き出されたモノフィラメントに処理剤を塗布して集束することによって、溶融ガラスを繊維状に成形することを特徴とする請求項12又は13に記載のガラス繊維の製造方法。
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