JP6724858B2 - 搬送容器引当計画作成方法、搬送容器引当計画作成装置、および製鉄所の操業方法 - Google Patents

搬送容器引当計画作成方法、搬送容器引当計画作成装置、および製鉄所の操業方法 Download PDF

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Description

本発明は、搬送容器引当計画作成方法、搬送容器引当計画作成装置、および製鉄所の操業方法に関するものである。
製鉄所では、高炉からの出銑や転炉での出鋼などのタイミングで、溶銑や溶鋼を溶銑鍋や溶鋼鍋などの搬送容器で受け、次工程に搬送するバッチ的な操業が行われている。
例えば、高炉では、炉底部に溜まった溶銑を定期的に出銑するが、その際、複数の溶銑鍋で溶銑を受け、次工程に搬送される。また、転炉では、溶銑から所定の成分の溶鋼とする工程が、鍋単位で実施され、溶鋼鍋によって二次精錬設備や連続鋳造機に搬送される。
このようなバッチ的に処理された溶銑および溶鋼を搬送容器である鍋に入れて次工程に搬送する場合、搬送物である溶銑や溶鋼を装入する鍋をどのように計画的に使用するかが問題となる。つまり、鍋数は有限であり、鍋の利用方法に関して、鍋ごとに制約がある場合や、溶銑や溶鋼の温度変化などを考慮する必要も生じる。
特に、製鋼工場内における溶鋼処理では、転炉から出鋼された溶鋼は、内壁面が耐火物で覆われた溶鋼鍋に注がれ、二次精錬設備において溶鋼鍋に入れたまま、目的の成分および温度に調整された後、溶鋼鍋から連続鋳造設備に注がれてスラブやビレット等の中間製品に鋳造される。そして、溶鋼が空けられた溶鋼鍋は整備された後に再び転炉に搬送され、同様の作業が繰り返し行われる。
このような溶鋼処理では、溶鋼の出鋼から鋳造までのリードタイム、すなわち溶鋼鍋が占有されている時間が出鋼チャージ毎に同じであれば、溶鋼鍋を連続的に使用できることから、溶鋼処理に必要な溶鋼鍋数やどの溶鋼鍋を引き当てられるかを容易に把握することができる。出鋼チャージとは、転炉における吹錬を1単位とするバッチプロセスの処理単位、換言すれば、1回の出鋼工程によって転炉から出鋼される溶鋼を意味する。
しかしながら、実際の溶鋼処理では、多品種の鉄鋼製品を製造するために、二次精錬設備や連続鋳造設備における処理内容が出鋼チャージによって異なる。このため、溶鋼が二次精錬設備や連続鋳造設備を通過するために要する時間は出鋼チャージによって異なり、溶鋼の出鋼から鋳造までのリードタイムは出鋼チャージによって変化する。そのため、例えば1日に必要な溶鋼鍋数の把握や、どの溶鋼鍋を引き当てるとよいか判断が困難であった。
また、溶鋼鍋の引当計画には、溶鋼を空けた後の溶鋼鍋(空鍋)を可能な限りすばやく高温のまま、次出鋼チャージに引当ることも求められる。これは、引当られる溶鋼鍋が高温であれば有るほど、出鋼温度を下げることができ、転炉でのエネルギー削減、転炉の寿命延長等によるメリットが生じるためである。
例えば、特許文献1には、遺伝的アルゴリズムにより出鋼チャージに溶鋼鍋を引き当て方法が開示されている。この方法によれば、溶鋼鍋が空になってから次出鋼チャージに引き当てられるまでの空鍋時間が短い引当計画を作成することができる。
特許文献2〜4には、ヒューリスティックスにより出鋼チャージに溶鋼鍋を引き当て方法が開示されている。この方法によれば、溶鋼鍋が空になってから次出鋼チャージに引き当てられるまでの空鍋時間が短い引当計画を作成することができる。
特許文献5には、制約論理プログラミングや数理計画法等により一部制約を考慮した引当計画を複数作成し、残りの制約を満たす計画のみを抽出する方法が開示されている。
特許文献6には、出鋼時刻が早い出鋼チャージ順に引当可能な溶鋼鍋を列挙することで最適な引当計画を作成する方法が開示されている。この方法では、引当可能な溶鋼鍋を列挙することによる計算の長時間化を抑えるために、探索途中で枝刈り等の工夫がなされている。
特開平10−143567号公報 特開2012−92400号公報 特開2012−123772号公報 特開2012−173838号公報 特許第5867662号公報 特開2016−015122号公報
しかしながら、特許文献1に記載の遺伝的アルゴリズムでは、交叉や突然変異の変異箇所や発生確率といったパラメータの調整が必要であり、調整次第で望むレベル以上の最適な計画が作成できるか否かが左右される。また、操業状況や設備制約の追加・変更のたびに、パラメータの調整を行う必要がある。
また、特許文献2〜4に記載の方法では、出鋼時刻順に引当られる溶鋼鍋を選択する操作を繰り返して実行可能解を1つ導出するにすぎず、その実行可能解が最適解であるとはいえない。
さらに、特許文献5に記載の方法では、制約論理プログラミングや数理計画法は、制約を数式で表現する必要があり、制約の内容によっては数式で表現しがたいものがある。その場合、数式による制約の表現は複雑になり、保守性が悪くなるため、操業変更による制約の追加や変更が柔軟にできなくなる恐れがある。一方で、制約論理プログラミングや数理計画法等により考慮する制約の範囲を狭くすると、残りの制約の充足を満たさない解が多く生成されてしまうため、最終的にすべての制約を満たす解の数が減り、最適な解の導出が難しくなってしまう。
特許文献6に記載の方法では、枝刈りをした先の探索領域に良い解がある可能性があるため、計算の高速化を優先した結果、最良な解の発見の可能性を低くしている恐れがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、最適解のレベルを左右するパラメータの調整を必要とせずにバッチプロセスの処理単位に搬送容器を効率よく引き当てることが可能な搬送容器引当計画作成方法、搬送容器引当計画作成装置、および製鉄所の操業方法を提供することを目的とする。
本発明に係る搬送容器引当計画作成方法は、バッチプロセスの処理単位ごとの生成物を搬送する搬送容器を、該処理単位ごとに引き当てる搬送容器引当計画作成方法において、各搬送容器に対してバッチプロセスの処理単位に引き当てるか否かを表した搬送容器引当ルートを作成するとともに、各搬送容器単独で考慮可能な制約を充足する前記搬送容器引当ルートを搬送容器毎に列挙する搬送容器引当ルート作成ステップと、少なくとも、使用する搬送容器数の最小化の目的関数と、複数の搬送容器間で考慮が必要な制約と、を含む数理モデルを作成する搬送容器引当モデル作成ステップと、前記数理モデルに含まれる制約を充足し、かつ目的関数が最小となる前記搬送容器引当ルートを搬送容器毎に選択するとともに、当該選択された前記搬送容器引当ルートを解とする複数の最適解を出力する搬送容器引当最適化計算ステップと、前記出力された複数の最適解について、定量化された最終評価基準に基づき、当該最終評価基準が最良となる前記最適解を最終解として出力する最終解出力ステップとを含むことを特徴とする。
本発明に係る搬送容器引当計画作成方法は、上記発明において、前記搬送容器引当最適化計算ステップにより選択された複数の最適解について、前記搬送容器引当モデル作成ステップでは考慮しなかった複数の搬送容器間で考慮が必要な制約を満たしているか否かを確認するとともに、当該制約を充足する前記最適解に対して複数の評価基準を定量的に評価する残りの搬送容器間の制約充足および評価確認ステップ、をさらに含み、前記最終解出力ステップは、前記搬送容器引当最適化計算ステップにより選択された複数の最適解について、前記残りの搬送容器間の制約充足および評価確認ステップにて評価される各評価基準が定量化されたものを組み合わせることにより求まる前記最終評価基準に基づき、前記最終解を出力することが好ましい。
本発明に係る搬送容器引当計画作成方法は、上記発明において、前記バッチプロセスは、精錬であり、前記処理単位は、出鋼チャージであり、前記生成物は、溶鋼であり、前記搬送容器は、溶鋼鍋であることが好ましい。
本発明に係る搬送容器引当計画作成装置は、バッチプロセスの処理単位ごとの生成物を搬送する搬送容器を、該処理単位ごとに引き当てる搬送容器引当計画作成装置において、各搬送容器に対してバッチプロセスの処理単位に引き当てるか否かを表した搬送容器引当ルートを作成するとともに、各搬送容器単独で考慮可能な制約を充足する前記搬送容器引当ルートを搬送容器毎に列挙する搬送容器引当ルート作成手段と、少なくとも、使用する搬送容器数の最小化の目的関数と、複数の搬送容器間で考慮が必要な制約と、を含む数理モデルを作成する搬送容器引当モデル作成手段と、前記数理モデルに含まれる制約を充足し、かつ目的関数が最小となる前記搬送容器引当ルートを搬送容器毎に選択するとともに、当該選択された前記搬送容器引当ルートを解とする複数の最適解を出力する搬送容器引当最適化計算手段と、前記出力された複数の最適解について、定量化された最終評価基準に基づき、当該最終評価基準が最良となる前記最適解を最終解として出力する最終解出力手段とを有することを特徴とする。
本発明に係る搬送容器引当計画作成装置は、上記発明において、前記搬送容器引当最適化計算手段により選択された複数の最適解について、前記搬送容器引当モデル作成手段では考慮しなかった複数の搬送容器間で考慮が必要な制約を満たしているか否かを確認するとともに、当該制約を充足する前記最適解に対して複数の評価基準を定量的に評価する残りの搬送容器間の制約充足および評価確認手段、をさらに有し、前記最終解出力手段は、前記搬送容器引当最適化計算手段により選択された複数の最適解について、前記残りの搬送容器間の制約充足および評価確認手段にて評価される各評価基準が定量化されたものを組み合わせることにより求まる前記最終評価基準に基づいて、前記最終解を出力することが好ましい。
本発明に係る搬送容器引当計画作成装置は、上記発明において、前記バッチプロセスは、精錬であり、前記処理単位は、出鋼チャージであり、前記生成物は、溶鋼であり、前記搬送容器は、溶鋼鍋であることが好ましい。
本発明に係る製鉄所の操業方法は、上記発明に係る搬送容器引当計画作成方法により作成された搬送容器引当計画を用いて製鉄所の操業を行うことを特徴とする。
本発明によれば、最適な引当計画が作成できるかどうかを左右するパラメータの調整を必要としないので、パラメータ調整の手間がかからない。また、各搬送容器単独で考慮可能な制約を予め考慮してから数理計画法等の最適化手法で計算するため、最適化手法の計算に必要な数理モデルで考慮すべき制約の数は少なくて済み、数理モデルの保守性がよい。さらに、枝刈り等の処理を実施していないため、探索範囲を狭めることなく最適な解を導出することができる。
図1は、製鋼工場における溶鋼処理の流れを説明するための模式図である。 図2は、引当計画作成装置の構成例を模式的に示すブロック図である。 図3は、出鋼チャージデータの構成例を示す図である。 図4は、溶鋼鍋データの構成例を示す図である。 図5は、交換時間データの構成例を示す図である。 図6Aは、制約条件を説明するための図である。 図6Bは、制約条件を説明するための図である。 図7Aは、制約条件を説明するための図である。 図7Bは、制約条件を説明するための図である。 図8Aは、制約条件を説明するための図である。 図8Bは、制約条件を説明するための図である。 図9は、引当計画作成処理手順を示すフローチャートである。 図10は、ある溶鋼鍋について列挙された溶鋼鍋引当ルートの集合データ例を示す図である。 図11は、引当ルート毎の出鋼チャージの有無および冷鍋数を示す図である。 図12は、引当計画の一例を示す図である。 図13Aは、オペレータにより作成された引当計画を示す図である。 図13Bは、実施例により作成された引当計画を示す図である。 図14は、図13Aおよび図13Bに示された引当計画の空鍋状態の時間分布を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。なお、以下に説明する実施形態では、製鋼工場での転炉における溶鋼鍋の運用を例として挙げる。
[1.溶鋼処理の流れ]
図1は、製鋼工場における溶鋼処理の流れを説明するための模式図である。なお、図1では、説明を簡略化するために、製鋼工場100で実施される主要な工程のみを図示している。
図1に示すように、製鋼工場100における溶鋼処理では、始めに、転炉1から出鋼された溶鋼2は、内壁面が耐火物で覆われた溶鋼鍋3に注がれる。次に、溶鋼鍋3に注がれた溶鋼2は、二次精錬設備110において目的の成分および温度に調整される(二次精錬)。このように、本実施形態では、精錬がバッチプロセスであり、出鋼チャージがバッチプロセスの処理単位であり、溶鋼2はバッチプロセスの処理単位ごとの生成物であり、溶鋼鍋3は搬送容器である。
二次精錬設備110では、出鋼成分や規格等に応じて、導入管4を介して成分調整用の合金鉄や薬剤等の添加物が溶鋼2に加えられる。本実施形態の二次精錬設備110には複数の設備が存在し、例えば真空脱ガス設備(RH)111、取鍋精錬設備(LF)112が含まれる。図示しないが、2基の真空脱ガス設備111と、1基の取鍋精錬設備112とからなる設備群により構成された二次精錬設備110でもよい。つまり、二次精錬では目標成分に応じて設備を使い分けるため、溶鋼鍋3を二次精錬設備110のどの設備を通過させるか(通過処理工程)を選択可能である。さらに、通過処理工程は、二次精錬設備110のどの設備を使うかだけではなく、どの順番でどの設備を通過させるのかという組み合わせも可能であり、これらを識別するための通過工程コードによって管理されている。
次に、二次精錬設備110にて目的の成分および温度に調整された溶鋼2は、溶鋼鍋3に入れられた状態で連続鋳造設備120に搬送され、連続鋳造設備120に注がれてスラブやビレット等の中間製品に鋳造される(連続鋳造)。
そして、連続鋳造設備120で溶鋼2が空けられた溶鋼鍋3は、鍋センター130に搬送される。鍋センター130は、溶鋼鍋3を整備する設備であり、溶鋼鍋3の内壁面の養生や、プレート5、ノズル6、およびポーラス7の交換等の整備(空鍋整備)が行われる。空鍋整備された溶鋼鍋3は、再び転炉1に搬送される。その後、上述した工程と同様の作業が繰り返し行われる。
[2.引当計画作成装置]
図2は、引当計画作成装置の構成例を模式的に示すブロック図である。本実施形態の引当計画作成装置10は、製鋼工場100の溶鋼処理に溶鋼鍋3を効率よく引き当てることが可能な引当計画(搬送容器引当計画)を作成する装置である。図2に示すように、引当計画作成装置10は、ワークステーション等の情報処理装置によって構成され、製鋼データベース(製鋼DB)11と、端末インターフェイス12と、演算部13とを備えている。
製鋼DB11は、製鋼工場100において計画された出鋼計画データを格納する記憶部である。出鋼計画データには、1日等の所定時間毎の出鋼チャージ数と各出鋼チャージに関するデータ(出鋼チャージデータ)と、溶鋼鍋数と各溶鋼鍋に関するデータ(溶鋼鍋データ)とが含まれる。さらに、製鋼DB11には、溶鋼鍋3の各部品(プレート5、ノズル6、ポーラス7)の交換に要する交換時間に関するデータ(交換時間データ)が格納されている。ここで、出鋼チャージデータの構成例を図3に示し、溶鋼鍋データの構成例を図4に示し、交換時間データの構成例を図5に示す。
図3に示すように、出鋼チャージデータは、出鋼チャージNo.に対応づけられたレコードを有するデータテーブルであり、そのレコードには、少なくとも出鋼開始時刻、鋳造終了時刻、鋼種コード、通過工程コード、チタン成分(ppm)、クロム成分(ppm)、他成分、に関する情報が含まれる。出鋼チャージNo.は、出鋼チャージを識別する情報である。出鋼開始時刻は、転炉1から溶鋼2が出鋼される時刻である。鋳造終了時刻は、溶鋼2の鋳造が終了する時刻である。鋼種コードは、転炉1から出鋼された溶鋼2の合金成分(鋼種成分)の組み合わせを識別する情報である。通過工程コードは、転炉1から出鋼された溶鋼2に対して二次精錬設備110で行われる通過処理工程を識別する情報である。チタン成分(ppm)、クロム成分(ppm)、および他成分は、各鋼種成分の含有量を意味する。
図4に示すように、溶鋼鍋データは、溶鋼鍋No.に対応づけられたレコードを有するデータテーブルであり、そのレコードには、少なくともポーラス使用回数、プレート使用回数、ノズル使用回数、次引当可能時刻、に関する情報が含まれる。溶鋼鍋No.は、溶鋼鍋3を識別する情報である。ポーラス使用回数は、ポーラス7を使用した回数である。プレート使用回数は、プレート5を使用した回数である。ノズル使用回数は、ノズル6を使用した回数である。各部品の使用回数は、溶鋼鍋3が出鋼チャージを受ける度に増加し、各部品が交換されるとゼロにリセットされる。溶鋼鍋3の各部品は、使用回数が所定回数を超えると整備/交換される。また、次引当可能時刻は、該当の溶鋼鍋3を次に出鋼チャージに引き当てることができる時刻を意味する。つまり、次引当可能時刻とは、現在受鋼中もしくは直近に受鋼済みの出鋼チャージの鋳造終了時刻に、連続鋳造設備120から鍋センター130までの搬送時間と、鍋センター130での整備時間と、鍋センター130から転炉1下までの搬送時間と、を加えた時刻のことである。その搬送時間は定数で与えられる。そして、整備時間には、通常の空鍋整備時間と、部品の交換時間と、が含まれる。通常の空鍋整備時間は、溶鋼鍋底の異変の確認やノズル6内の詰まりの除去、ノズル6に蓋をする砂の投入等、常に毎回行う整備(通常の空鍋整備)に要する時間である。一方、交換時間は、溶鋼鍋3の部品交換時に発生する時間である。なお、交換時間は、後述するように、交換対象となる部品毎に異なる時間が設定されている。
図5に示すように、交換時間データは、交換する各部品(プレート5、ノズル6、ポーラス7)の組み合わせと、それらの交換に要する交換時間(分)の合計とを対応づけしたデータテーブルである。例えば、プレート5のみを交換する場合の交換時間は30分に設定され、プレート5およびノズル6を交換する場合の交換時間は40分に設定されている。そして、ポーラス7、ノズル6、プレート5の3つの部品を交換する場合の交換時間は70分に設定されている。なお、図5では、部品交換の有無を識別する情報として、部品を交換する場合は「○」、交換不要な場合は「−」が示されている。
演算部13は、CPU等の演算処理装置によって構成されている。その演算部13は、図示しないROMに格納されている引当計画作成プログラムをRAM内へとロードし実行することによって、溶鋼処理に必要な溶鋼鍋3を出鋼チャージに引き当てる処理を実行する。図2に示すように、演算部13は、端末インターフェイス12を介して端末装置21と情報の送受信が可能に接続されている。そのため、演算部13の演算結果は、端末インターフェイス12を介して端末装置21の表示装置や出力装置に出力される。また、端末装置21はオペレータにより操作される入力端末でもある。
[3.制約条件]
ここで、出鋼チャージに溶鋼鍋3を引き当てる際の制約条件について説明する。なお、制約条件は、以下に列記する4つに限定されない。また、引当計画作成装置10が引当計画を作成する際にこれら制約条件が考慮される。
[3−1.制約条件1]
まず、「溶鋼鍋は受鋼した出鋼チャージの鋳造処理後、引当可能時刻まで、次の出鋼チャージを受鋼することができない」という制約条件が挙げられる。引当可能時刻は、上述した次引当可能時刻と同義である。
図6Aに示す例では、出鋼チャージC2の出鋼開始は、溶鋼鍋N1が引き当てられている出鋼チャージC1の鋳造終了よりも後、かつ溶鋼鍋N1の整備が終了する時刻よりも先である。この場合、上記制約条件により、溶鋼鍋N1を出鋼チャージC2に引き当てることはできない。そこで、図6Bに示すように、出鋼チャージC2には、出鋼チャージC1に引き当てられていた溶鋼鍋N1とは別の溶鋼鍋N2を引き当てる。これにより、上記制約条件を満たしたうえで、出鋼チャージに溶鋼鍋を効率よく引き当てることができる。
[3−2.制約条件2]
次に、「特定の出鋼チャージには、一定時間、空の状態で冷えた溶鋼鍋(冷鍋という)を使えない」という制約条件が挙げられる。特定の出鋼チャージであるか否かは、二次精錬設備110の通過処理工程(通過工程コード)および二次精錬での目標成分に基づいて判断される。また、溶鋼鍋が空の状態で冷えたか否か(冷鍋であるか否か)は、その溶鋼鍋について空の状態が続いた時間が閾値を超えたか否かを判定することにより判断される。なお、この閾値は予め定められた所定値でもよい。
図7Aおよび図7Bには、「出鋼チャージC3には、空鍋になってから時間T以上が経過して冷鍋になった溶鋼鍋を引き当てることができない」という制約条件がある場合が例示されている。この場合、時間Tを閾値として冷鍋であるか否かが判定される。図7Aに示す例では、出鋼チャージC1に引き当てられた溶鋼鍋N1の整備が完了する時刻は、出鋼チャージC2に引き当てられた溶鋼鍋N2の整備完了時刻よりも先、かつ出鋼チャージC3の出鋼開始時刻よりも前である。しかしながら、特定の出鋼チャージC3の出鋼開始は、溶鋼鍋N1における先の出鋼チャージC1の鋳造終了から時間T以上が経過するため、この溶鋼鍋N1を出鋼チャージC3に引き当てることはできない。そこで、図7Bに示すように、出鋼チャージC3には、先の出鋼チャージC2の鋳造終了から出鋼チャージC3の出鋼開始までの時間が時間T未満である溶鋼鍋N2を引き当てる。これにより、上記制約条件を満たしたうえで、特定の出鋼チャージに効率よく溶鋼鍋を引き当てることができる。
[3−3.制約条件3]
また、「特定の出鋼チャージを受鋼した溶鋼鍋は、溶鋼成分の関係上、次に受鋼できる出鋼チャージが限られる」という制約条件が挙げられる。
図8Aおよび図8Bには、「チタン成分がX%以上の出鋼チャージC1に引き当てられた溶鋼鍋N1は、次に受鋼できる出鋼チャージはチタン成分がX%以上でなければならない」という制約条件がある場合が例示されている。図8Aに示す例では、溶鋼鍋N1は、出鋼チャージC2の出鋼開始よりも前に整備が完了しているものの、チタン成分がX%以上の出鋼チャージC1に引き当てられた後であるため、出鋼チャージC1に続けて、チタン成分がX%未満の出鋼チャージC2を受鋼することはできない。一方、出鋼開始時刻が出鋼チャージC2よりも後の出鋼チャージC3は、チタン成分がX%以上である。そこで、図8Bに示すように、溶鋼鍋N1を、チタン成分がX%以上の出鋼チャージC1に後続して、チタン成分がX%以上の出鋼チャージC3に引き当てることが可能である。これにより、上記制約条件を満たしたうえで、特定の出鋼チャージに効率よく溶鋼鍋を引き当てることができる。
[3−4.制約条件4]
さらに、「溶鋼鍋の整備時間は交換される部品によって異なる」という制約条件が挙げられる。ポーラス使用回数、ノズル使用回数、プレート使用回数の増加数は、出鋼チャージの通過工程コード毎に異なり、その分が加算される。そして、使用回数が所定回数に達したタイミングで溶鋼鍋が整備(部品交換)され、その整備内容に応じた整備の時間を要する。交換に必要な時間は部品毎に異なるため、整備時間は交換される部品に応じて変化する。例えば、整備時間は、演算部13が製鋼DB11の交換時間データ(図5に示す)を参照して設定される。
[4.引当計画作成処理]
図9は、引当計画作成処理手順を示すフローチャートである。なお、図9に示す引当計画作成処理は引当計画作成装置10によって実施される。
まず、引当計画の作成に必要な出鋼チャージデータと溶鋼鍋データとが読み込まれる(ステップS1)。ステップS1の処理では、例えば演算部13が製鋼DB11に格納されている出鋼計画データから処理対象の所定数の出鋼チャージデータ(例えば図3に示すデータ)および溶鋼鍋データ(例えば図4に示すデータ)を取得する。このステップS1は「データ読み込みステップ」であり、ステップS1を実施する処理手段を「データ読み込み手段」と称する。
ステップS1によりデータが読み込まれると、溶鋼鍋引当ルートが複数作成される(ステップS2)。溶鋼鍋引当ルートとは、搬送容器引当ルートに含まれるものであって、ある溶鋼鍋をどの出鋼チャージに引き当てるかを表したデータ(レコード)である。このステップS2は「搬送容器引当ルート作成ステップ」であり、ステップS2を実施する処理手段を「搬送容器引当ルート作成手段」と称する。なお、以下の説明では「溶鋼鍋引当ルート」を単に「引当ルート」と記載する場合がある。
ステップS2の処理では、引当可能な出鋼チャージを組み合わせた複数の引当ルートを作成する際に、上述した制約条件1〜4の制約等、各溶鋼鍋単独で考慮が可能な制約のみを考慮する。すなわち、他の溶鋼鍋の引当内容の影響を受けない制約のみが考慮される。この引当計画生成処理で最終的に考慮される制約には、他の溶鋼鍋の引当内容の影響を受ける制約(各溶鋼鍋単独では考慮が不可能な制約)と、他の溶鋼鍋の引当内容の影響を受けない制約(各溶鋼鍋単独で考慮が可能な制約)とが含まれる。
具体的には、ステップS2では、溶鋼鍋毎に複数の溶鋼鍋引当ルートを列挙する。ステップS2で作成される溶鋼鍋引当ルートの一例を図10に示す。図10は、ある溶鋼鍋nについて列挙された溶鋼鍋引当ルートの集合データ例を示す図である。図10に示す例では、8つの出鋼チャージ(出鋼チャージNo.1〜8)に対して、全部でK個の引当ルート(溶鋼鍋引当ルート1〜K)が列挙されている。各溶鋼鍋引当ルートは、どの出鋼チャージに引き当てられるか否かを識別可能な情報として「1」,「0」を含む。「1」は該当出鋼チャージに引き当てられること、「0」はその出鋼チャージには引き当てられないことを意味する。例えば、溶鋼鍋引当ルート1は、溶鋼鍋nを出鋼チャージNo.1に引き当てるものの、それ以外の出鋼チャージNo.2〜8には引き当てないことを意味する引当ルートである。また、溶鋼鍋引当ルートkや溶鋼鍋引当ルートk+1のように、溶鋼鍋nを複数の出鋼チャージに引き当てる引当ルートも作成される。さらに、引当ルートKのように、どの出鋼チャージにも溶鋼鍋nを引き当てない引当ルートも作成される。
また、図10に示す各引当ルートについて、引き当てられる出鋼チャージの有無と、溶鋼鍋nが冷鍋となってしまう回数(冷鍋数)との関係を図11に示す。図11に示す例では、引き当てる出鋼チャージの有無を識別可能な情報として「1」,「0」を含み、「1」は引き当てられる出鋼チャージがあること、「0」は引き当てられる出鋼チャージがないことを意味する。冷鍋数は、対応する引当ルートが選択された際に溶鋼鍋nが冷鍋となってしまう回数を意味する。例えば、溶鋼鍋引当ルートk+1では、図10に示すデータによれば出鋼チャージに引き当てられる回数が「4回」であるものの、図11に示す出鋼チャージの有無としては「1」となる。そして、冷鍋数は、その「4回の引き当て」に対して溶鋼鍋nが「2回」冷鍋となってしまうことを表している。なお、上述した図11に示すデータは、ステップS2で複数の引当ルートを列挙する際に作成されてもよい。また、ステップS2で作成された溶鋼鍋引当ルートの集合データ(図10に示す)や、図11に示すデータは、引当計画作成装置10のRAMに一時記憶される。
図9の説明に戻り、ステップS2により複数の溶鋼鍋引当ルートが作成されると、その複数の溶鋼鍋引当ルートの中から溶鋼鍋毎に1つの溶鋼鍋引当ルートを選択する数理モデル(溶鋼鍋引当モデル)が作成される(ステップS3)。溶鋼鍋引当モデルは、搬送容器引当モデルに含まれる。このステップS3は「搬送容器引当モデル作成ステップ(溶鋼鍋引当モデル作成ステップ)」であり、ステップS3を実施する処理手段を「搬送容器引当モデル作成手段(溶鋼鍋引当モデル作成手段)」と称する。
ステップS3の処理では、複数の溶鋼鍋間で考慮が必要な制約(他の溶鋼鍋の引当内容の影響を受ける制約)を考慮する。すなわち、ステップS2では考慮されていなかった制約が、ステップS3で初めて考慮される。この引当計画作成処理では、各溶鋼鍋単独で考慮可能な制約はステップS2で考慮し、複数の溶鋼鍋間で考慮が必要な制約はステップS3で考慮するといったように、段階的に制約を考慮する。これにより、ステップS3で数理モデルを作成する際、各溶鋼鍋単独で考慮が可能な制約については引当ルート作成時(ステップS2の実施時)に既に充足されているため、数理モデルの制約式を減らすことができる。
具体的には、ステップS3で作成される数理モデルは、下式(1)〜(3)により表される。
上式(1)は、使用する溶鋼鍋数および冷鍋数の合計の重み付き和を目的関数とし、その値の最小化を表している。上式(1)中、Nは使用可能な溶鋼鍋の数、Kは溶鋼鍋nの引当ルート数である。UseNabenkは、溶鋼鍋nについての引当ルートkが出鋼チャージに1つも引き当てられない場合には「0」、引き当てられる場合には「1」となる。ColdNabeNnkは、溶鋼鍋nの引当ルートkに含まれる冷鍋数である。useRoutenkは、溶鋼鍋nの引当ルートkを選択する場合には「1」、それ以外ならば「0」となる。なお、N、K、UseNabenk、ColdNabeNnkは、いずれも定数である。一方、useRoutenkは変数である。つまり、この数理モデルでは、引当ルート毎にバイナリの変数が設けられており、「1」ならばその引当ルートを選択すること、「0」ならばその引当ルートを選択しないことを意味する。
上式(2)は、溶鋼鍋毎にステップS2で作成した複数の溶鋼鍋引当ルートの中から1つのみを選択するという制約を表す制約式である。この数理モデルによれば、制約式が上式(2),(3)の2式と非常に少なく済んでいる。
上式(3)は、同じ出鋼チャージに同時に2つ以上の溶鋼鍋を引き当てることはできないという制約を表す制約式である。上式(3)中、ChargeAssignnkcは溶鋼鍋nの引当ルートkにおいて出鋼チャージcに引き当てられる場合には「1」、それ以外ならば「0」となる。なお、ChargeAssignnkcは、定数である。
つまり、上式(1)〜(3)に示すように、ステップS3では、使用する溶鋼鍋数の最小化の目的関数と、複数の溶鋼鍋間で考慮が必要な制約とを少なくも含む数理モデルが作成される。
図9の説明に戻り、ステップS3により数理モデルが作成されると、その数理モデルに含まれる制約を充足し、かつ目的関数が最小値となる最適解の計算および出力が行われる(ステップS4)。このステップS4は「搬送容器引当最適化計算ステップ(溶鋼鍋引当最適化計算ステップ)」であり、ステップS4を実施する処理手段を「搬送容器引当最適化計算手段(溶鋼鍋引当最適化計算手段)」と称する。
ステップS4での数理モデルの計算手法として、混合整数線形計画法や、制約プログラミング等の最適化手法などを用いる。具体的には、ステップS4では、上述した数理モデルに含まれる制約を充足し、かつ目的関数が最小となる溶鋼鍋引当ルートを溶鋼鍋毎に計算および選択する。そして、選択された解(溶鋼鍋引当ルート)を最適解として複数出力する。つまり、ステップS4によって求まる最適解(目的関数が最小となる解)は複数存在する。そのため、ステップS4では、最適解の数が予め指定された上限数に達するまで、もしくは計算時間の合計が上限時間に達するまで解を求め、全ての最適解を出力する。なお、その上限数および上限時間は予め定められた所定値である。
ステップS4による最適解の計算および出力が行われると、複数の溶鋼鍋間で考慮が必要である制約のうちステップS3では考慮されていなかった制約(残りの制約)および評価基準が考慮される(ステップS5)。このステップS5は「残りの溶鋼鍋間の制約充足および評価確認ステップ」であり、ステップS5を実施する処理手段を「残りの溶鋼鍋間の制約充足および評価確認手段」と称する。
ステップS5で考慮される制約および評価基準は、ステップS3で数理モデルとして表現が難しい場合や、仮にその表現が容易だとしてもステップS3に続くステップS4で計算時間(処理負荷)が掛かる場合など、ステップS3とは別で考慮することが効果的な制約および評価基準を含む。
例えば、ステップS5で考慮される制約として、鍋センター130で同時に整備できる溶鋼鍋数には上限があるという制約が挙げられる。また、ステップS5で考慮される評価基準としては、鍋センター130で先に整備を終えた溶鋼鍋3から順に極力引き当てたいという評価基準(第1評価基準)や、オペレータの整備作業負荷を軽減したいという評価基準(第2評価基準)などが挙げられる。オペレータの整備作業負荷には、鍋センター130でオペレータが溶鋼鍋3の部品交換を行う作業負荷が含まれる。つまり、鍋センター130において、ある特定の時間に部品交換の作業が集中すると、オペレータの整備作業負荷が増大することが考慮される。
具体的には、ステップS5では、ステップS4により出力された複数の最適解について、ステップS5における制約を満たしているか否かを確認したうえで、その制約を充足する最適解に対して評価基準を定量的に評価する。評価基準の定量化について第1評価基準を例にすると、ある溶鋼鍋nが先に整備を終えていた状態で、溶鋼鍋nよりも後に整備を終えた溶鋼鍋n+1が、溶鋼鍋nよりも先に出鋼チャージに引き当てられる回数をカウントする。そして、その回数が少ないほど評価を高くし、その回数が少ない引当計画を採用する。また、第2評価基準を例にすると、所定の期間(例えば1時間)当たりに発生する部品交換作業の回数を算出し、計算対象の期間内における最大値をオペレータの整備作業負荷の評価指標とする。その最大値が小さいほど評価を高くし、その評価指標が低い引当計画を採用する。これにより、オペレータの整備作業負荷の集中を抑えた引当ルートを選択することができる。
そして、ステップS5において制約を満たした複数の最適解について、ステップS5で考慮された各評価基準の重み付き線形和の値が計算され、その値が最良となる一つの最適解が最終解として出力される(ステップS6)。このステップS6は「評価順並び替えおよび最終解出力ステップ」であり、ステップS6を実施する処理手段を「評価順並び替えおよび最終解出力手段」と称する。
例えば、ステップS6では、各評価基準の重み付き線形和の値を算出し、算出された値が最小となる最適解を、最終解として出力する。ステップS6の処理により、最終解に応じた引当計画が出力される。
なお、ステップS5で考慮された複数の評価基準について、評価基準の優先度を設定し、ステップS6において、優先度の高い評価基準から順に最適解を並び替えるとともに、上位の最適解から評価を高くしてもよい。また、優先度に応じた評価基準の並び替え処理は、ステップS6ではなくステップS5で実施されてもよい。さらに、ステップS1〜S6を実施する処理手段は、引当計画作成装置10の演算部13に含まれる処理手段である。
さらに、上述した例では、ステップS6において、最終解を得る評価基準を重み付き線形和としたが、これに限定されない。つまり、最終解を得るためにステップS6で用いる評価基準としては、複数の定量化された評価基準を適宜に組み合わせて演算して得られるもの、すなわち最終評価基準であって、最終解を得るのに適切な形式であればよく、各評価基準の重み付き線形和の値に限らず、各評価基準の積、絶対値荷重和、その他の合成関数のいずれであっても構わない。例えば、「定量化された最終評価基準」として「各評価基準の積」を用いる場合、上述したステップS6の説明について「各評価基準の重み付き線形和の値」を「各評価基準の積」または「定量化された最終評価基準」と読み替えることが可能である。要するに、ステップS6では、各評価基準の積など、定量化された最終評価基準が演算されるとともに、この最終評価基準の値が最良となる一つの最適解が最終解として出力されればよい。
ここで、上述した引当計画作成処理により作成された引当計画(ステップS6により出力される引当計画)の一例を図12に示す。図12に示す引当計画は、処理対象の複数の出鋼チャージのスケジュール(出鋼開始時刻、鋳造終了時刻、整備完了時刻)と各出鋼チャージに引き当てられる溶鋼鍋3に関する情報との関係が示されたデータテーブル(引当計画データ)である。この引当計画データは、各出鋼チャージNo.に対応づけられたレコードを有し、そのレコードには出鋼開始時刻、鋳造終了時刻、整備完了時刻、溶鋼鍋No.、ポーラス交換、ノズル交換、プレート交換、整備時間(分)、空鍋時間(分)が含まれる。溶鋼鍋No.は、引き当てられる溶鋼鍋3を特定する識別情報である。整備時間は、各部品の交換時間を含む時間を意味する。空鍋時間は、溶鋼鍋3が空鍋となっている経過時間を意味し、整備時間が含まれている。なお、ポーラス交換、ノズル交換、プレート交換は、上述した図5の説明と同様である。
[5.実施例]
ここで、上述した実施形態により引当計画(図13Bに示す)を作成した実施例と、比較例としてのオペレータによる引当計画(図13Aに示す)を作成した従来例とを比較説明する。
図13Aおよび図13Bには、1日分の溶鋼鍋引当計画(搬送容器引当計画)を作成した結果が示されている。各図の横軸は時間(時間軸)であり、縦軸は溶鋼鍋No.である。また、各図中に示された四角形のブロックは、溶鋼鍋No.に対応する溶鋼鍋3が出鋼チャージに引き当てられていることを表し、その左端から右端までが出鋼チャージの出鋼から鋳造終了までの時刻に対応している。また、時間軸で破線よりも左側は既に完了した実績を表し、破線よりも右側の計画対象が今回作成された引当計画を表す。なお、引当対象で使用される溶鋼鍋3のボックスにはドットが付されている。また、実施例の説明では、計画対象の時間内に出鋼する出鋼チャージのみを対象に溶鋼鍋3の引当を考慮し、オペレータ(比較例)と実施例とを比較する。
まず、出鋼チャージに引き当てられる溶鋼鍋3の数を比較する。図13Aに示すように、オペレータにより作成された引当計画では、全部で9鍋の溶鋼鍋3を使用する。一方、図13Bに示すように、実施例により作成された引当計画では、全部で8鍋の溶鋼鍋3を使用する。実施例の引当計画では、オペレータによる引当計画では使用した溶鋼鍋No.24の溶鋼鍋3が使用されず、必要な溶鋼鍋数がオペレータによる引当計画よりも少なく済むことが分かる。この結果から、実施例の引当計画によれば、オペレータの引当計画よりも少ない溶鋼鍋数で効率よく運用できることが確認された。
次に、図14を参照して、空鍋時間について比較する。図14は、図13Aおよび図13Bに示された引当計画の空鍋状態の時間分布を示す図である。なお、図14では、実施例の空鍋時間を表す棒グラフにはドット、オペレータの空鍋時間を表す棒グラフには斜線が付されている。
図14に示す結果から、オペレータにより作成された引当計画の平均空鍋時間は2時間26分であった。一方、実施例により作成された引当計画の平均空鍋時間は1時間49分であった。実施例の引当計画によればオペレータの引当計画よりも37分も平均空鍋時間を短縮できる。この結果から、溶鋼鍋3が空になってから次出鋼チャージを引き当てるまでの空鍋時間がオペレータの引当計画よりも短い引当計画を作成可能であることが確認された。
以上説明した通り、上述した実施形態によれば、引当計画を作成する際に、最適な引当計画が作成できるか否かを左右するパラメータの調整を必要としないので、パラメータ調整の手間がかからない。また、各溶鋼鍋単独で考慮可能な制約を予め考慮してから数理計画法等の最適化手法で計算するため、最適化手法の計算に必要な数理モデルで考慮すべき制約の数が少なくて済む。そのため、数理モデルの保守性がよい。さらに、枝刈り等の処理を実施していないので、探索範囲を狭めることなく最適な解を導出できる。これにより、最適解のレベルを左右するパラメータの調整を必要とせずに、出鋼計画にしたがった製鋼工場100の溶鋼処理に溶鋼鍋3を効率よく引き当てることが可能な引当計画を作成できる。すなわち、この引当計画作成処理方法により作成された引当計画を用いて製鋼工場100の操業を行う操業方法を実施することにより、溶鋼鍋3を効率よく引き当てることが可能な溶鋼処理を実現できる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、製鋼DB11に格納されている情報のうち、例えば出鋼開始時刻や鋳造終了時刻等のデータは、引当計画作成装置10の端末インターフェイス12を介して接続された端末装置21をオペレータが操作することによって書き換えることが可能である。
また、図9に示す引当計画作成処理は、オペレータが端末装置21を操作することによって引当計画作成処理の実行を指示したタイミングで開始されてもよい。この場合、オペレータは始業時等に引当計画作成処理の実行を指示することが可能である。
さらに、図9に示すステップS5で考慮される評価基準は、上述した第1評価基準および第2評価基準に限定されず、他の評価基準を用いてもよい。要するに、複数の評価基準を設け、ステップS6では、各評価基準の重み付き線形和の値や、各評価基準の積など、複数の定量化された評価基準を組み合わせて最終評価基準が算出されるように構成されていればよい。
また、二次精錬設備110は、上述した真空脱ガス設備111および取鍋精錬設備112の組み合わせに限定されない。
さらに、本発明は、上述した実施形態のように転炉1における溶鋼2を入れる溶鋼鍋3の運用に限定されず、製鉄所においてバッチ的に処理された溶融金属を入れる搬送容器、例えば溶銑を入れる溶銑鍋の運用にも適用可能である。この場合、個々の制約条件や、鍋条件は、上述して転炉1の場合とは異なるものの、技術的思想としては、高炉における溶銑鍋の運用などに上述した実施形態を転用することも可能である。そのため、製鉄所においてバッチ的に処理される生成物を複数の搬送容器で搬送する際の搬送容器の引き当てに対して適用可能である。そして、高炉に転用する場合には、上述した実施形態の説明について、溶鋼を溶銑、溶鋼鍋を溶銑鍋、溶鋼鍋引当ルートを溶銑鍋引当ルート、溶鋼鍋引当モデルを溶銑鍋引当モデルと読み替えることが可能である。
1 転炉
2 溶鋼
3 溶鋼鍋
5 プレート
6 ノズル
7 ポーラス
10 引当計画作成装置
11 製鋼データベース(製鋼DB)
13 演算部
21 端末装置
100 製鋼工場
110 二次精錬設備
111 真空脱ガス設備(RH)
112 取鍋精錬設備(LF)
120 連続鋳造設備
130 鍋センター

Claims (7)

  1. バッチプロセスの処理単位ごとの生成物を搬送する搬送容器を、該処理単位ごとに引き当てる搬送容器引当計画作成方法において
    送容器毎にバッチプロセスの処理単位に引き当てるか否かを表した搬送容器引当ルートを作成するとともに、各搬送容器単独で考慮可能な制約を充足する前記搬送容器引当ルートを搬送容器毎に列挙する搬送容器引当ルート作成ステップと、
    少なくとも、使用する搬送容器数の最小化の目的関数と、複数の搬送容器間で考慮が必要な制約と、を含む数理モデルを作成する搬送容器引当モデル作成ステップと、
    前記数理モデルに含まれる制約を充足し、かつ目的関数が最小となる前記搬送容器引当ルートを搬送容器毎に選択するとともに、当該選択された前記搬送容器引当ルートを解とする複数の最適解を出力する搬送容器引当最適化計算ステップと、
    前記出力された複数の最適解について、定量化された最終評価基準に基づき、当該最終評価基準が最良となる前記最適解を最終解として出力する最終解出力ステップと
    を含むことを特徴とする搬送容器引当計画作成方法。
  2. 前記搬送容器引当最適化計算ステップにより選択された複数の最適解について、前記搬送容器引当モデル作成ステップでは考慮しなかった複数の搬送容器間で考慮が必要な制約を満たしているか否かを確認するとともに、当該制約を充足する前記最適解に対して複数の評価基準を定量的に評価する残りの搬送容器間の制約充足および評価確認ステップ、をさらに含み、
    前記最終解出力ステップは、前記搬送容器引当最適化計算ステップにより選択された複数の最適解について、前記残りの搬送容器間の制約充足および評価確認ステップにて評価される各評価基準が定量化されたものを組み合わせることにより求まる前記最終評価基準に基づき、前記最終解を出力する
    ことを特徴とする請求項1に記載の搬送容器引当計画作成方法。
  3. 前記バッチプロセスは、精錬であり、
    前記処理単位は、出鋼チャージであり、
    前記生成物は、溶鋼であり、
    前記搬送容器は、溶鋼鍋である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の搬送容器引当計画作成方法。
  4. バッチプロセスの処理単位ごとの生成物を搬送する搬送容器を、該処理単位ごとに引き当てる搬送容器引当計画作成装置において
    送容器毎にバッチプロセスの処理単位に引き当てるか否かを表した搬送容器引当ルートを作成するとともに、各搬送容器単独で考慮可能な制約を充足する前記搬送容器引当ルートを搬送容器毎に列挙する搬送容器引当ルート作成手段と、
    少なくとも、使用する搬送容器数の最小化の目的関数と、複数の搬送容器間で考慮が必要な制約と、を含む数理モデルを作成する搬送容器引当モデル作成手段と、
    前記数理モデルに含まれる制約を充足し、かつ目的関数が最小となる前記搬送容器引当ルートを搬送容器毎に選択するとともに、当該選択された前記搬送容器引当ルートを解とする複数の最適解を出力する搬送容器引当最適化計算手段と、
    前記出力された複数の最適解について、定量化された最終評価基準に基づき、当該最終評価基準が最良となる前記最適解を最終解として出力する最終解出力手段と
    を有することを特徴とする搬送容器引当計画作成装置。
  5. 前記搬送容器引当最適化計算手段により選択された複数の最適解について、前記搬送容器引当モデル作成手段では考慮しなかった複数の搬送容器間で考慮が必要な制約を満たしているか否かを確認するとともに、当該制約を充足する前記最適解に対して複数の評価基準を定量的に評価する残りの搬送容器間の制約充足および評価確認手段、をさらに有し、
    前記最終解出力手段は、前記搬送容器引当最適化計算手段により選択された複数の最適解について、前記残りの搬送容器間の制約充足および評価確認手段にて評価される各評価基準が定量化されたものを組み合わせることにより求まる前記最終評価基準に基づいて、前記最終解を出力する
    ことを特徴とする請求項4に記載の搬送容器引当計画作成装置。
  6. 前記バッチプロセスは、精錬であり、
    前記処理単位は、出鋼チャージであり、
    前記生成物は、溶鋼であり、
    前記搬送容器は、溶鋼鍋である
    ことを特徴とする請求項4または5に記載の搬送容器引当計画作成装置。
  7. 請求項1から3のいずれか1項に記載の搬送容器引当計画作成方法により作成された搬送容器引当計画を用いて製鉄所の操業を行うことを特徴とする製鉄所の操業方法。
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