JP6720711B2 - ケーブル - Google Patents
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Description
導体の外周に絶縁層が形成される絶縁電線と、
前記絶縁電線の外周に形成されるシースと、を備え、
前記シースは、ゴムにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトゴムおよびシラノール縮合触媒を含有するシラングラフト材料から形成され、前記シラン化合物に対する前記シラノール縮合触媒の配合量の比率として求められる触媒濃度が、表面から内部に向かって厚さ方向に高くなるように形成されている、ケーブルが提供される。
具体的には、シースを、ゴムをシラン架橋させた触媒濃度の異なる複数のゴム層をシースの厚さ方向のシース表面からシースの内側のシース内部に向かって触媒濃度が段階的に高くなるように積層させて形成するとよい。
このようにシースを形成することにより、触媒濃度を高くしたシース内部は少ない水分量でも十分に架橋反応が進む一方、触媒濃度を低くしたシース表面は十分に供給される水分で過剰に架橋反応が進行しないようにすることができる。すなわち、シース内部とシース表面との間でのシラン架橋のばらつきを抑制し、シースを厚さ方向で均一にシラン架橋することができる。
しかも、触媒濃度の低いゴム層では、意図しない架橋反応が進行しにくく、異物としてのツブが生じにくいので、このようなゴム層をシース表面に設けることで、シースの表面外観を良好にすることができる。
また、触媒濃度の高いゴム層上に触媒濃度の低いゴム層を積層させてシースを形成するときに、触媒濃度が高く、流動性の低い(成形性の良くない)材料の上に、触媒濃度が低く、成形性の良い材料を積層させているため、触媒濃度の高い材料により外径変動が生じたとしても、その変動分を触媒濃度の低い材料で吸収してシース全体での外径変動を抑制することができる。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
まず、本発明の一実施形態にかかるケーブルについて図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかるケーブルの長さ方向に垂直な断面図である。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
コア30は3本の絶縁電線10で形成され、絶縁電線10は導体11とその外周に形成される絶縁層12とを備えている。
コア30の外周を被覆するように、電気絶縁性のシース20が設けられている。本実施形態では、シース20は、2つのゴム層を積層させて形成されており、厚さ方向に向かって内側に位置するゴム層として最内層21を、最内層21の外周に設けられて表面に位置するゴム層として最外層22を、備えている。
また、最内層21および最外層22の厚さもシース20の厚さに応じて適宜変更するとよい。最内層21の厚さとしては1.5mm以上7mm以下であることが好ましく、最外層22の厚さとしては0.1mm以上3mm以下であることが好ましい。なお、最内層21および最外層22の厚さは、それぞれにおける厚さが最も薄い部分(最薄部)での厚さを示す。
本実施形態のケーブル1の製造方法は、コア30を準備する準備工程と、コア30の外周上に内層材料と外層材料を積層させて押し出す押出被覆工程と、各材料を水分に曝して同時にシラン架橋させる架橋工程と、を有する。
このとき、内層材料は、外層材料に被覆されているため、外層材料に比べて水分が浸透しにくく、架橋反応が進行しにくい条件となっているが、本実施形態では、内層材料の触媒濃度が外層材料よりも高くなるようにすることで、少ない水分であっても十分に架橋させることができる。
一方、外層材料は、表面に位置するため、内層材料に比べて水分が浸透しやすく、架橋反応が進行しやすい条件となっているが、本実施形態では、外層材料の触媒濃度を内層材料よりも低くなるようにすることで、外層材料が過剰に架橋反応しないようにしている。
これにより、内層材料と外層材料との架橋速度を同程度とし、最内層21と最外層22との間でのシラン架橋のバラつきを小さく抑制し、シース20全体で厚さ方向に均一にシラン架橋させることができる。
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
・塩素化ポリエチレン(121℃でのムーニー粘度(ML1+4):55):杭州科利化工株式会社製「CM352L」
・シラン化合物(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン):信越化学工業株式会社製「KBM−503」
・シラノール縮合触媒(ジオクチル錫ジネオデカノエート):日東化学株式会社製「ネオスタンU−830」
・ジクミルパーオキサイド:日本油脂株式会社製「DCP」
・安定剤(ハイドロタルサイト):協和化学工業株式会社製「マグセラー1」
・安定剤(エポキシ化大豆油):日本油脂株式会社製「ニューサイザー510R」
・滑剤(ポリエチレンワックス):三井化学株式会社製「ハイワックスNL200」
・可塑剤(フタル酸ジイソノニル):新日本理化株式会社製「DINP」
・カーボン(FEFカーボンブラック):旭カーボン株式会社製「旭60G」
・酸化防止剤(4,4´−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)):大内新興化学工業株式会社製「ノクラック300R」
・酸化防止剤(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物):大内新興化学工業株式会社製「ノクラック224」
本実施例では、まず、グラフト処理の前処理を行い、ゴムにシラン化合物をグラフト重合させてシラングラフトゴムを得た後、その他の添加剤を配合することにより、シラングラフトゴムを含むグラフト材料を得た。
まず、グラフト重合の前処理を行った。
表1に示すように、粉末状の塩素化ポリエチレン100質量部に対して、過酸化物を0.65質量部と、安定剤(ハイドロタルサイト)を6質量部と、安定剤(エポキシ化大豆油)を6質量部と、滑剤(ポリエチレンワックス)を3質量部と、を添加し、8インチロール機を用いて混練した。このとき、過酸化物を熱分解させずにポリマ中に分散させるために、ロールの表面温度を100℃とし、混練時間を、安定剤等を添加し終えてから5分とした。その後、混練して得られたシートを5mm角の形状にペレタイズし、塩素化ポリエチレンを含むペレットを得た。
続いて、前処理で得られたペレットにグラフト処理を施した。
表1に示すように、まず、得られたペレットにシラン化合物としてのメタクリルシランを、塩素化ポリエチレン100質量部に対してメタクリルシランが5質量部となるように、含浸させた。その後、メタクリルシランを含浸させたペレットを単軸押出機にて加熱しながら混練し、塩素化ポリエチレンにメタクリルシランをグラフト重合させることで、シラングラフト塩素化ポリエチレンを生成した。そして、単軸押出機からシラングラフト塩素化ポリエチレンをストランドとして押し出し、長さ150cmの水槽に導入して水冷した後、ペレタイズした。
なお、グラフト処理では、スクリュ径40mmの単軸押出機を用いた。また、スクリュ直径Dとスクリュ長さLとの比率L/Dを25とした。また、設定温度は、シリンダをホッパー側から80℃、200℃、ヘッドを200℃、ダイスを200℃とした。また、スクリュの回転数を20rpm(押出量約120g/分)、スクリュの形状をフルフライト形状とした。また、ダイスとして、穴径直径5mm、穴数3つのストランド用ダイスを用いた。また、圧縮比は2.0とした。
続いて、シラングラフト塩素化ポリエチレンを含むペレットに可塑剤、酸化防止剤、カーボンブラックおよび滑剤を、表1に示す配合で添加し、8インチロール機を用いて混練した。このとき、ロールの表面温度を100℃とし、混練時間を、安定剤等を添加し終えてから5分間とした。混練後のシートは約5mm角の形状にペレタイズした。以上により、メタクリルシランがグラフト重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレンを含むグラフト材料を調製した。
続いて、グラフト材料にシラノール縮合触媒を配合するための触媒マスターバッチを調製した。本実施例では、シラノール縮合触媒の配合量が異なる複数の触媒マスターバッチB1〜B10を調製した。
具体的には、下記表2に示すように、粉末状の塩素化ポリエチレン100質量部に対してシラノール縮合触媒を0.05質量部〜25質量部の範囲で添加し、8インチロール機を用いて混練した。このとき、ロールの表面温度を100℃とし、シラノール縮合触媒を添加してから3分間混練した。その後、混練物からなるシートを5mm角の形状にペレタイズすることで、シラノール縮合触媒の配合量が異なる複数の触媒マスターバッチB1〜B10を調製した。
下記表3に示すように、グラフト材料と触媒マスターバッチB1〜B7とを適宜組み合わせて混合し、内層材料および外層材料を調製した。
内層材料は、グラフト材料のペレットに触媒マスターバッチB7のペレットを、グラフト材料に含まれる塩素化ポリエチレン100質量部に対して2.5質量部となるように配合してドライブレンドすることで調製した。内層材料に含まれるシラノール縮合触媒の量は塩素化ポリエチレン100質量部に対して0.23質量部であり、その触媒濃度は4.6×10−2であった。
外層材料は、グラフト材料のペレットに触媒マスターバッチB2のペレットを、グラフト材料に含まれる塩素化ポリエチレン100質量部に対して2.5質量部となるように配合してドライブレンドすることで調製した。外層材料に含まれるシラノール縮合触媒の量は塩素化ポリエチレン100質量部に対して2.5×10−3質量部であり、その触媒濃度は0.05×10−2であった。
具体的には、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)からなる絶縁層が導体の表面に形成された絶縁電線(導体断面積38mm2、導体外径9.1mm、EPゴム絶縁層の厚さ1.2mm)を3本撚り合わせ、コア(最大外径24.4mm)を形成した。このコアの外周に、内層材料を厚さ(最薄部厚さ)が4mmとなるように押出被覆した後、外層材料を厚さが1.5mmとなるように押出被覆した。その後、温度50℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中に24時間保管して、内層材料および外層材料をシラン架橋させることにより、内層および外層を有するシースを備えるケーブルを作製した。
なお、内層材料および外層材料の押出成形は、スクリュ径90mm、比率L/D20の単軸押出機を用いて行った。押出条件は以下のようにした。シリンダ内の温度をホッパー側からネック側に向かって20℃、100℃、110℃、115℃、120℃、130℃とし、ネックの温度を130℃、クロスヘッドの温度を130℃、ダイスの温度を130℃とした。スクリュの回転数を32rpm、スクリュの形状をフルフライト形状とした。
実施例2〜4、比較例1,2では、外層材料を調製するときに、グラフト材料に配合する触媒マスターバッチの種類をB2からB1,B3〜B6に適宜変更し、外層材料の触媒濃度を変化させた以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
実施例5〜8、比較例3,4では、下記表4に示すように、グラフト材料と触媒マスターバッチB1,B5〜B10とを適宜組み合わせて混合し、内層材料および外層材料を調製した以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
作製したケーブルを、以下の方法により評価した。
外層材料を押し出した後、その外観を目視にて評価した。本実施例では、ツブ(径が0.5mm以上のもの)、その他の異物が存在せず、ケーブルの外観上に問題がない(おおむね平滑)と判断したものを合格(○)、ツブ(径が0.5mm以上のもの)、その他の異物が発生し、外観上に問題があると判断したものを不合格(×)とした。
内層材料および外層材料をそれぞれ押し出した後のケーブルについて外径を測定し、実際の外径と設計値との対応を評価した。本実施例では、内層材料を押出被覆した後の外径について、実際の測定値が設計値(32.4mm)に対して±1.0%以内であり、かつ、外層材料を押出被覆した後の外径について、実際の測定値が設計値(35.4mm)に対して±0.5%以内であったものを合格、そうでないものを不合格とした。
架橋処理後の最内層および最外層について架橋度を評価するため、それぞれのゲル分率を測定した。具体的には、架橋処理後の最内層および最外層からそれぞれ、試料0.5gを採取し、これらの試料を40メッシュの真鍮製金網に入れた。続いて、各試料を110℃のオイルバス中でキシレンにより抽出処理した。抽出処理後、残存した試料をキシレンから取り出して80℃で4時間真空乾燥した。そして、残存した試料の乾燥後の質量を秤量し、キシレン抽出前の試料の質量aとキシレン抽出後の残存した試料の質量bとから、下記式により試料のゲル分率Rを算出した。
R(%)=b/a×100
本実施例では、最内層および最外層ともに架橋処理後のゲル分率が60%以上である場合を十分な架橋度を有していると判断して合格「○」、そうでなければ不合格「×」とした。
すべての評価項目にて合格であったものを合格(○)、一項目でも不合格があれば不合格(×)とした。
各実施例、比較例の評価結果を表3,4にまとめた。
実施例1〜8によれば、シース内部に位置する最内層の触媒濃度を高く、シース表面に位置する最外層の触媒濃度を低くすることにより、ケーブル外観の悪化や外径変動を抑制しつつ、最内層および最外層を均一にシラン架橋できることが確認された。具体的には、最内層に含まれるシラノール縮合触媒の量を、塩素化ポリエチレン100質量部に対して0.17質量部〜0.42質量部として、触媒濃度を3.4×10−2以上8.4×10−2以下とするとよく、最外層に含まれるシラノール縮合触媒の量を、塩素化ポリエチレン100質量部に対して2.5×10−3質量部〜0.12質量部として、触媒濃度を0.05×10−2以上2.4×10−2以下とするとよいことが確認された。
また、実施例5〜8によれば、最内層に含まれるシラノール縮合触媒の量を増やすほど、最外層のゲル分率が高くなることが確認された。これは、架橋処理をする前の内層材料に含まれるシラノール縮合触媒が外層材料へと移行するため、と考えられる。
比較例2では、最外層に含まれるシラノール縮合触媒の量が多すぎるためか、最外層においてツブが発生し、ケーブル外観が悪化することが確認された。
比較例4では、最内層に含まれるシラノール縮合触媒の量が多すぎるためか、最内層において外径変動が大きくなることが確認された。
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
本発明の一態様によれば、
導体の外周に絶縁層が形成される絶縁電線と、
前記絶縁電線の外周に形成されるシースと、を備え、
前記シースは、ゴムにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトゴムおよびシラノール縮合触媒を含有するシラングラフト材料から形成され、前記シラン化合物に対する前記シラノール縮合触媒の配合量の比率として求められる触媒濃度が、表面から内部に向かって厚さ方向に高くなるように形成されている、ケーブルが提供される。
付記1のケーブルにおいて、好ましくは、
前記シースは、前記シラングラフト材料から形成される前記触媒濃度の異なる複数のゴム層を、前記シースの厚さ方向の表面から内側に向かって前記触媒濃度が段階的に高くなるように積層させて形成されている。
付記1のケーブルにおいて、好ましくは、
前記シースは、前記シラングラフト材料から形成される前記触媒濃度の異なる複数のゴム層を積層させてなり、厚さ方向の内側に位置するゴム層の前記触媒濃度が、それと隣接する外側のゴム層の前記触媒濃度よりも高くなるように構成されている。
付記2又は3のケーブルにおいて、好ましくは、
前記シースを形成する前記複数のゴム層のうち、厚さ方向の内側に位置するゴム層を最内層、表面に位置するゴム層を最外層としたとき、
前記最内層における前記触媒濃度が3.4×10−2以上8.4×10−2以下であり、
前記最外層における前記触媒濃度が0.05×10−2以上2.4×10−2以下である。
付記1〜4のいずれかのケーブルにおいて、好ましくは、
前記シースの厚さが2mm以上7.5mm以下である。
付記1〜5のいずれかのケーブルにおいて、好ましくは、
前記ゴムが塩素化ポリエチレンを含む。
付記1〜6のいずれかのケーブルにおいて、好ましくは、
前記シラン化合物がメタクリル基を有する。
付記1〜7のいずれかのケーブルにおいて、好ましくは、
前記シースの架橋度がゲル分率で60%以上である。
10 絶縁電線
11 導体
12 絶縁層
20 シース
21 最内層
22 最外層
30 コア
Claims (7)
- 導体の外周に絶縁層が形成される絶縁電線と、
前記絶縁電線の外周に形成されるシースと、を備え、
前記シースは、ゴムにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトゴムおよびシラノール縮合触媒を含有するシラングラフト材料から形成され、前記シラン化合物に対する前記シラノール縮合触媒の配合量の比率として求められる触媒濃度が、表面から内部に向かって厚さ方向に高くなるように形成されている、ケーブル。 - 前記シースは、前記シラングラフト材料から形成される複数のゴム層を、前記シースの厚さ方向の表面から内側に向かって前記触媒濃度が段階的に高くなるように積層させて形成されている、請求項1に記載のケーブル。
- 前記触媒濃度は、前記ゴム100質量部に対する前記シラン化合物の配合量(質量部)をx、前記シラノール縮合触媒の配合量(質量部)をyとしたときに、y/xで求められ、
前記シースを形成する前記複数のゴム層のうち、厚さ方向の最も内側に位置するゴム層を最内層、表面に位置するゴム層を最外層としたとき、
前記最内層における前記触媒濃度が3.4×10-2以上8.4×10-2以下であり、
前記最外層における前記触媒濃度が0.05×10-2以上2.4×10-2以下である、請求項2に記載のケーブル。 - 前記シースの厚さが2mm以上7.5mm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のケーブル。
- 前記ゴムが塩素化ポリエチレンを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のケーブル。
- 前記シラン化合物がメタクリル基を有する、請求項1〜5のいずれかに記載のケーブル。
- 前記シースの架橋度がゲル分率で60%以上である、請求項1〜6のいずれかに記載のケーブル。
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