JP6720565B2 - 絶縁電線およびケーブル - Google Patents

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本発明は、絶縁電線およびケーブルに関する。
絶縁電線やケーブルには、その表面に被覆層(例えば絶縁層やシースなど)が設けられている。被覆層を形成する被覆材料は、絶縁電線やケーブルの用途によって異なっており、特に可とう性が求められる場合にはゴム材料が用いられる。このようなゴム材料としては、塩素系ポリマがあり、その中でも機械特性や耐油性に優れることから塩素化ポリエチレンが用いられている。
一般に、ゴム材料を用いて被覆層を形成する場合、被覆層においてゴム弾性や耐熱性を発現させるため、被覆材料に架橋処理が施される。架橋処理としては、例えば、シラン化合物(いわゆるシランカップリング剤)を用いるシラン架橋が広く行われている(例えば、特許文献1を参照)。
具体的には、被覆層は以下のようにシラン架橋させることにより形成される。すなわち、まず、ゴム材料である塩素化ポリエチレンにシラン化合物を添加し、グラフト重合させることにより、シラングラフト塩素化ポリエチレンを調製する。続いて、シラングラフト塩素化ポリエチレンを押し出して被覆層を形成し、その後、被覆層を水分に曝すことによりシラン架橋させる。
特公昭50−35540号公報
しかしながら、絶縁電線やケーブルにおいて、被覆層をシラン架橋させる場合、被覆層が変形してしまうことがある。一般に、被覆層のシラン架橋は、ゴム材料を押し出して未架橋のままの絶縁電線やケーブルをドラム状に巻き取った後に、水分に曝すことにより行われる。そのため、未架橋の被覆層は、架橋によりゴム弾性を発現する前に、ケーブルなどの自重や張力によって潰れて変形してしまう。その結果、被覆層は、変形した状態でシラン架橋されることとなり、表面の外観が損なわれる。
一方、絶縁電線やケーブルは、例えば車両のエンジン周りで使用されることがあるため、その被覆層には、エンジンオイル等との接触により容易に劣化せず、耐油性に優れていることが求められている。
また、絶縁電線やケーブルは、温暖地だけでなく、寒冷地でも使用されることがあるため、その被覆層には、低温度で割れにくいような脆化温度特性(耐寒性)が求められている。
本発明は、上記課題を解決し、絶縁電線やケーブルにおける被覆層の変形を抑制するとともに、耐油性および耐寒性を向上させる技術を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置され、内層材料からなる内層および外層材料からなる外層を有する絶縁層を備え、
前記内層材料は、
ゴム成分にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトゴム成分を含み、
前記外層材料は、
塩素化ポリエチレン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(A)と、
ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリエチレン(B)と、
エチレン−酢酸ビニル共重合体(c)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)と、を含み、
前記絶縁層は、前記内層および前記外層が一体的にシラン架橋されるように構成されている、絶縁電線が提供される。
本発明の他の態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置される絶縁層と、
前記絶縁層の外周に配置され、内層材料からなる内層および外層材料からなる外層を有するシースと、を備え、
前記内層材料は、
ゴム成分にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトゴム成分を含み、
前記外層材料は、
塩素化ポリエチレン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(A)と、
ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリエチレン(B)と、
エチレン−酢酸ビニル共重合体(c)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)と、を含み、
前記シースは、前記内層および前記外層が一体的にシラン架橋されるように構成されている、ケーブルが提供される。
本発明によれば、絶縁電線やケーブルにおける被覆層の変形を抑制するとともに、耐油性および耐寒性を向上させることができる。
本発明の一実施形態に係るケーブルの断面の概略図である。
実施形態の説明に先立ち、本発明者らにより得られた知見について説明する。
本発明者らの検討によると、被覆層として、塩素化ポリエチレンを含むゴム材料を押し出し、シラン架橋させる場合、未架橋の被覆層が、架橋によりゴム弾性を発現する前に、ケーブルなどの自重や張力によって潰れて変形することが分かった。この対策について検討したところ、ゴム材料にプラスチック材料を混合するとよいことが見出された。プラスチック材料は、一般にゴム材料と比べて結晶成分が多く(高結晶性であり)、融点が高いので、未架橋でも変形しにくい。そのため、プラスチック材料をゴム材料に混合することにより、未架橋状態の被覆層において硬度を増加させ、潰れなどの変形を抑制することができる。
そして、このようなプラスチック材料としては、ポリエチレンがよいことが見出された。ポリエチレンは、塩素化ポリエチレンと同様にシラン化合物をグラフト重合でき、シラン架橋させることができる。つまり、塩素化ポリエチレンにポリエチレンを混合し、水分と反応させることにより、これらを一体的にシラン架橋させることができる。したがって、ポリエチレンによれば、塩素化ポリエチレンに混合した場合であっても、混合物の架橋度を低下させることなく、塩素化ポリエチレンのみをシラン架橋させたときと同等の架橋度を得ることができる。
ただし、ポリエチレンは、極性基を持たないため、塩素化ポリエチレンと比べて耐油性に劣るといった問題がある。すなわち、塩素化ポリエチレンにポリエチレンを混合してシラン架橋させる場合、被覆層の変形を抑制できる反面、耐油性を高く維持することが困難となる。ポリエチレンの混合比率を調整することも考えられるが、混合比率の調整だけでは、被覆層の変形を抑制しつつ、耐油性を高く維持するには限度がある。
本発明者らは、まず、被覆層における変形の抑制と耐油性とを両立する方法について検討を行った。その結果、被覆層を、単層ではなく、内層および外層を有する積層構造で構成し、その外層を、塩素化ポリエチレンおよびポリエチレンを含む混合物をシラン架橋させて形成するとともに、その内層を、ゴム成分をシラン架橋させて形成するとよいことが見出された。ポリエチレンを混合した外層によれば、未架橋状態でも硬度が高いので、シラン架橋させてゴム弾性を発現させるまでの間に被覆層が変形してしまうことを抑制できる。また、ポリエチレンを含む外層を被覆層の一部として構成することにより、被覆層に占めるポリエチレンの割合を低くして、ポリエチレンの混合による耐油性の低下を抑制することができる。
一方、被覆層の内層については、上記外層との密着性の観点から、ゴム成分をシラン架橋させて形成するとよいことが見出された。内層を外層と同様にシラン架橋させることにより、内外層間での架橋反応を発現させ、これらを一体的に架橋させることができるので、高い密着性を得ることができる。
次に、ポリエチレンの混合による耐寒性の低下について検討したところ、ポリエチレンは塩素化ポリエチレンとの相溶性が良好ではないことから、ポリエチレンの混合比率を増やすことでポリエチレンと塩素化ポリエチレンとの界面が起点となって低温下では割れやすくなっているものと考えられる。この対策について検討したところ、塩素化ポリエチレンおよびポリエチレンにエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、単にEVAともいう)を混合するとよいことが見出された。EVAは、化学構造中の酢酸ビニル成分が塩素化ポリエチレンに、エチレン主鎖骨格がポリエチレンに、それぞれ高い相溶性を示すことから、塩素化ポリエチレンとポリエチレンの界面に分布することで、これらの密着性を高め、ポリエチレンを配合する外層の耐寒性を向上させることができる。
このように、塩素化ポリエチレンに、プラスチック材料であるポリエチレンと、これらの密着性を高めるEVAとを混合し、シラン架橋させて、被覆層の外層として形成することにより、被覆層の変形を抑制しつつ、その耐油性および耐寒性を高く維持することができる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。
〔本発明の一実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るケーブルの断面の概略図である。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
<ケーブルの概略構成>
図1に示すように、本実施形態のケーブル1は、導体11と、絶縁層12と、シース13とを備えて構成されており、シース13は、内層14および外層15を有している。
(導体)
導体11としては、低酸素銅や無酸素銅等からなる銅線、銅合金線、アルミニウムや銀等からなる金属線、又は金属線を撚り合わせた撚り線を用いることができる。導体11の外径は、ケーブル1の用途に応じて適宜変更することができる。
(絶縁層)
導体11の外周を被覆するように、電気絶縁性の絶縁層12が設けられている。絶縁層12は、従来公知の樹脂組成物、例えばエチレンプロピレンゴムを含む樹脂組成物で形成されている。絶縁層12の厚さは、ケーブル1の用途に応じて適宜変更することができる。
(シース)
絶縁層12の外周を被覆するように、電気絶縁性のシース13が設けられている。本実施形態では、シース13において変形を抑制しつつ、高い耐油性および耐寒性を得るために、シース13を、導体11側に位置する内層14と表面側に位置する外層15とを積層させて構成している。上述したように、外層15は、塩素化ポリエチレン、ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル(EVA)を含む成分をシラン架橋させて形成され、内層14は、ゴム成分をシラン架橋させて形成され、内層14および外層15が一体的にシラン架橋されている。以下、内層14および外層15それぞれについて詳述する。
(内層)
内層14は、内層材料を絶縁層12の外周に押し出してシラン架橋させることで形成されており、内層材料のシラン架橋物からなる。
内層材料は、ゴム成分にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトゴム成分を含む。シラングラフトゴム成分は、例えば、ゴム成分とシラン化合物と過酸化物とを加熱しながら混練することにより、過酸化物の熱分解で生じるラジカルによりゴム成分にシラン化合物をグラフト重合させて得られる。
内層材料に含まれるゴム成分としては、特に限定されないが、内層14と外層15との密着性の観点からは、塩素系ポリマであることが好ましい。塩素系ポリマとしては、例えば、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴムおよびクロロスルホン化ポリエチレンの少なくとも1つを用いることができる。これら塩素系ポリマによれば、分子構造中に塩素を含み、外層15を形成する外層材料との相溶性に優れるため、内層14と外層15との間で高い密着性を得ることができる。
ゴム成分にグラフト重合されるシラン化合物は、不飽和結合性基と、加水分解性のシラン基とを有している。シラン化合物は、いわゆるシランカップリング剤として機能しうるものであり、過酸化物の分解で生じるラジカルにより塩素系ポリマにグラフト重合されることで、塩素系ポリマにシラン基を導入する。
不飽和結合性基としては、塩素系ポリマにシラン化合物をグラフト重合できるようなものであれば限定されず、例えば、ビニル基、メタクリル基およびアクリル基などが挙げられる。これらの中でもメタクリル基が好ましい。メタクリル基を有するシラン化合物(メタクリルシラン)は、塩素系ポリマとの相溶性がよく、塩素系ポリマ中に架橋構造を均一に導入することができる。
加水分解性のシラン基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、フェノキシ基などの加水分解可能な構造を有するものが挙げられる。これらの加水分解可能な構造を有するシラン基として、例えばハロシリル基、アルコキシシリル基、アシロキシシリル基、フェノキシシリル基などが挙げられる。
メタクリルシランとしては、具体的には、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランや3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が好ましく、これらを単独で用いてもよく、併用してもよい。
塩素系ポリマにグラフト重合させるシラン化合物の量は、内層14の架橋度、もしくは架橋させるときの反応条件(例えば温度、時間など)によって適宜変更するとよい。具体的には、シラン化合物の配合量は、塩素系ポリマ100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。上記範囲よりも少ないと、シラン架橋させたときに十分な架橋度が得られないおそれがある。一方、上記範囲よりも多くなると、シラン架橋させる前に早期架橋が生じてしまい、内層14においては架橋による異物(ツブ)が形成されることで、外観が不良となるおそれがある。
過酸化物としては、ゴム成分にシラン化合物をグラフト重合できるようなものであれば特に限定されない。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5ジメチル2,5ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネートなどを用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(外層)
外層15は、外層材料を内層14の外周に押し出してシラン架橋させることで形成されており、外層材料のシラン架橋物からなる。
外層材料は、塩素化ポリエチレン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(A)と、ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリエチレン(B)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体(c)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)と、を含む。これら(A)成分〜(C)成分は、例えば、各ポリマ成分とシラン化合物と過酸化物とを加熱しながら混練することにより、過酸化物の熱分解で生じるラジカルにより各ポリマ成分にシラン化合物をグラフト重合させて得られる。
シラングラフト塩素化ポリエチレン(A)は、過酸化物を用いて塩素化ポリエチレン(a)にシラン化合物をグラフト重合させたものであり、外層15のベースとなるものである。(A)成分は、主に外層15の機械特性や耐油性に寄与する。
塩素化ポリエチレン(a)は、例えば、線状ポリエチレン(低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなど)を水に懸濁分散させた水性懸濁液に塩素ガスを吹き込むことにより得られるものである。塩素化ポリエチレン(a)の塩素化度は、例えば25%以上45%以下であると好ましく、30%以上40%以下であるとより好ましい。このような塩素化ポリエチレン(a)によれば、シラン化合物を好適にグラフト重合させることができ、架橋させたときに架橋度を所望の範囲に調整しやすい。
なお、塩素化ポリエチレン(a)にグラフト重合させるシラン化合物としては、上述したものを用いることができ、メタクリル基を有するシラン化合物(メタクリルシラン)が好ましい。また、過酸化物としては、上述したものを用いることができる。
塩素化ポリエチレン(a)にグラフト重合させるシラン化合物の量は、外層15の架橋度、もしくは架橋させるときの反応条件(例えば温度、時間など)によって適宜変更するとよい。外層15において、シラン架橋させたときに高い架橋度を得るとともに、早期架橋による外観不良を抑制する観点からは、シラン化合物の配合量は、塩素化ポリエチレン(a)100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。
シラングラフトポリエチレン(B)は、過酸化物を用いてポリエチレン(b)にシラン化合物をグラフト重合させたものであり、外層材料の硬度を高め、未架橋の状態での外層15の変形を抑制する。
ポリエチレン(b)としては、シラン化合物をグラフト重合できるものであれば、特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いることができる。外層材料の未架橋状態での耐変形性をより向上させる観点からは、ポリエチレン(b)としては、密度が高いものを用いるとよい。その理由は、ポリエチレン(b)は、密度が高くなるほど結晶成分が多くなり、硬度が高くなるからである。具体的には、密度が0.90g/ml以上であることが好ましい。一方、密度が高すぎると、外層材料の硬度が過度に高くなるので、シース13の可とう性が損なわれるおそれがある。そのため、密度の上限値は、0.95g/ml以下であることが好ましい。
なお、ポリエチレン(b)にグラフト重合させるシラン化合物としては、上述したものを用いることができ、メタクリル基を有するシラン化合物(メタクリルシラン)が好ましい。また、過酸化物としては、上述したものを用いることができる。
ポリエチレン(b)にグラフト重合させるシラン化合物の量は、上述した塩素化ポリエチレン(a)の場合と同様に、外層15の架橋度、もしくは架橋させるときの反応条件(例えば温度、時間など)によって適宜変更するとよい。シラン化合物の配合量は、ポリエチレン(b)100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましい。
シラングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)(以下、シラングラフトEVA(C)ともいう)は、過酸化物を用いてEVA(c)にシラン化合物をグラフト重合させたものであり、外層15の耐寒性を向上させる。
EVA(c)としては、シラングラフト塩素化ポリエチレン(A)およびシラングラフトポリエチレン(B)の両者に対する相溶性、シラン化合物のグラフト重合反応性やべたつき等の取扱い性を考慮すると、酢酸ビニル成分が5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。
なお、EVA(c)にグラフト重合させるシラン化合物としては、上述したものを用いることができ、メタクリル基を有するシラン化合物(メタクリルシラン)が好ましい。また、過酸化物としては、上述したものを用いることができる。
EVA(c)にグラフト重合させるシラン化合物の量は、上述した塩素化ポリエチレン(a)の場合と同様に、外層15の架橋度、もしくは架橋させるときの反応条件(例えば温度、時間など)によって適宜変更するとよい。シラン化合物の配合量は、EVA(c)100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましい。
外層材料は、シース13の未架橋状態での変形を抑制しつつ、耐油性および耐寒性を高い水準で両立させる観点からは、上記(A)成分〜(C)成分を以下に示す割合で含有することが好ましい。すなわち、外層材料は、シラングラフト塩素化ポリエチレン(A)を60質量%と、シラングラフトポリエチレン(B)を35質量%以上39質量%以下と、シラングラフトEVA(C)を1質量%以上5質量%以下とを、合計が100質量%となるように含有することが好ましい。言い換えると、外層材料は、塩素化ポリエチレン(a)の含有量が34.1質量%、ポリエチレン(b)の含有量が34.4質量%以上38.4質量%以下、EVA(c)の含有量が1.0質量%以上4.9質量%以下となるように、上記(A)成分〜(C)成分を含むことが好ましい。
外層15の厚さは、特に限定されないが、外層15を形成するときに、未架橋の外層材料の変形を抑制する観点からは、少なくとも0.2mm以上であることが好ましい。一方、外層15の厚さが過度に大きくなると、シース13に占める比率が高くなり、シース13全体としての耐油性が低くなるおそれがあるので、1.0mm以下であることが好ましい。
外層材料の調製方法は、特に限定されない。例えば、塩素化ポリエチレン(a)、ポリエチレン(b)およびEVA(c)のそれぞれにシラン化合物をグラフト重合させ、シラングラフト塩素化ポリエチレン(A)、シラングラフトポリエチレン(B)およびシラングラフトEVA(C)をそれぞれ調製した後、これらの成分を混合することにより調製するとよい。各成分を別々にグラフト反応させることで、それぞれに最適な条件でシラン化合物をグラフト重合させることができる。なお、グラフト反応条件(温度や時間など)は、特に限定されず、ポリマの種類や架橋度に応じて適宜変更するとよい。
なお、外層材料や内層材料には、必要に応じて、シラノール縮合触媒を配合してもよい。シラノール縮合触媒によれば、シラン架橋の反応を促進させ、効率的に架橋させることができる。
シラノール縮合触媒としては、例えば、マグネシウムやカルシウム等のII族元素、コバルトや鉄等のVIII族元素、錫、亜鉛およびチタン等の金属元素やこれらの元素を含む金属化合物を用いることができる。また、オクチル酸やアジピン酸の金属塩、アミン系化合物、酸などを用いることができる。具体的には、金属塩として、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクタエート、酢酸第一錫、カブリル酸第一錫、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト等を用いることができる。アミン系化合物として、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン等を用いることができる。酸として、硫酸や塩酸などの無機酸、トルエンスルホン酸や酢酸、ステアリン酸、マレイン酸などの有機酸を用いることができる。
また、外層材料や内層材料には、可塑剤、酸化防止剤(老化防止剤を含む)、カーボンブラック等の充填剤、難燃剤、滑剤、銅害変色防止剤、架橋助剤、安定剤などのその他の添加剤を配合してもよい。
また、内層材料のゴム成分、外層材料に含まれる塩素化ポリエチレン(a)、ポリエチレン(b)およびEVA(c)のそれぞれにグラフト重合させるシラン化合物の種類は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
<ケーブルの製造方法>
本実施形態のケーブル1の製造方法は、導体11の外周上に絶縁層12を形成する絶縁層形成工程と、絶縁層12の外周上に内層材料および外層材料を積層させて押し出す押出工程と、内層材料および外層材料を水分に曝して同時にシラン架橋させる架橋工程と、を有する。
まず、導体11の外周に、例えばエチレンプロピレンゴムを押し出して被覆させ、絶縁層12を形成する。
続いて、絶縁層12の外周上に、内層材料および外層材料を、この順番で押し出して被覆させる。
続いて、押し出した内層材料および外層材料を、例えば大気中に曝して水分に接触させる。これにより、内層材料に含まれるシラングラフトゴム成分と、外層材料に含まれるシラングラフト塩素化ポリエチレン(A)、シラングラフトポリエチレン(B)およびシラングラフトEVA(C)は、それぞれの分子鎖中のシラン基が加水分解によりシラノール基となり、このシラノール基同士が脱水縮合して架橋構造を形成することで、シラン架橋する。シラン架橋は、内層材料および外層材料のそれぞれで生じるだけでなく、これらの層間でも生じるため、シース13においては、内層14および外層15が一体的にシラン架橋されることになる。
以上により、本実施形態のケーブル1が得られる。
<本実施形態にかかる効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
本実施形態では、シース13を、内層14および外層15を有する積層構造で構成し、外層15を、シラングラフトポリエチレン(B)を含む外層材料を用いて形成している。外層材料に、硬度が高いシラングラフトポリエチレン(B)を配合することにより、外層材料の未架橋状態での硬度を向上させることができる。これにより、外層材料が潰れ等の変形を受けた状態で硬化してしまうことを抑制し、外観の良好な外層15を形成することができる。
シラングラフトポリエチレン(B)は、極性基を持たず、シース13の耐油性を低下させるおそれがあるが、本実施形態では、シース13の積層構造の一部である外層15に用いることで、シース13に占める比率を減らすことができる。これにより、シース13全体としての耐油性を大きく低下させることなく、高く維持することができる。
シラングラフトポリエチレン(B)は、シラングラフト塩素化ポリエチレン(A)との密着性が低く、外層15の低温度での脆化特性(耐寒性)を低下させるおそれがあるが、本実施形態では、シラングラフトEVA(C)をさらに配合することにより、(A)成分と(B)成分との密着性を高め、耐寒性を高く維持することができる。
具体的には、後述の実施例に示すように、外層15の脆化開始温度を−40℃以下とすることができ、耐寒性を高くすることができる。
シース13は、内層材料および外層材料をそれぞれシラン架橋させて形成され、内層14と外層15とが一体的にシラン架橋されるように構成されている。そのため、シース13において内層14と外層15とは密着性に優れている。
外層15を形成する外層材料は、シラングラフト塩素化ポリエチレン(A)を34.1質量%と、シラングラフトポリエチレン(B)を34.4質量%以上38.4質量%以下と、シラングラフトEVA(C)を1.0質量%以上4.9質量%以下とを、合計が100質量%となるように含有することが好ましい。このような配合によれば、外層15において、未架橋状態での変形を抑制しつつ、耐油性および耐寒性を高い水準で両立させることができる。
シラングラフトEVA(C)におけるEVA(c)は、酢酸ビニル含量が5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。このようなEVA(c)によれば、シラングラフト塩素化ポリエチレン(A)およびシラングラフトポリエチレン(B)の両者に対する相溶性に優れるので、これらの密着性をより向上させて外層15の耐寒性を向上させることができる。しかも、外層材料のべたつきを抑え、取り扱い性を維持することができる。
シラングラフト塩素化ポリエチレン(A)における塩素化ポリエチレン(a)は、塩素過度が25質量%以上45質量%以下であることが好ましい。このような塩素化ポリエチレン(a)によれば、シラン架橋により外層15を形成したときに、所望の強度を示すような架橋度が得られる。
シラングラフトポリエチレン(B)におけるポリエチレン(b)は、密度が0.90g/ml以上0.95g/ml以下であることが好ましい。このようなポリエチレン(b)によれば、外層材料の未架橋状態での変形を良好に抑えることができる。
上記(A)成分〜(C)成分にグラフト重合されるシラン化合物は、メタクリル基を有することが好ましい。メタクリル基を有するシラン化合物は、ビニル基を有するものと比べて、塩素化ポリエチレン(a)などとの相溶性がよく、これらに対して架橋構造を均一に導入することが可能となる。
内層材料に含まれるゴム成分は、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴムおよびクロロスルホン化ポリエチレンの少なくとも1つであることが好ましい。このような塩素系ポリマを用いることにより、外層材料との相溶性を高め、内層14と外層15との密着性をさらに向上させることができる。
〔本発明の他の実施形態〕
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
上述の実施形態では、絶縁層12の外周上に内層材料および外層材料を押し出した後に、これらを同時にシラン架橋させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、内層材料を押し出し、シラン架橋させて内層14を形成した後、内層14の外周上に外層材料を押し出し、シラン架橋させて外層15を形成するようにしてもよい。この場合、内層14の外周上に押し出した外層材料をシラン架橋させる際に、内層14と外層材料との層間でのシラン架橋が進行し、内層14と外層15との間で高い密着性を得られる。
上述の実施形態では、ケーブル1が、導体11の外周に絶縁層12が設けられた1本の絶縁電線を備える場合について説明したが、ケーブル1は、2本以上の絶縁電線を撚り合わせた撚り線を備えてもよい。
上述の実施形態では、ケーブル1において、シース13を、内層14および外層15を有する積層構造とする場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、導体の外周上に絶縁層が形成された絶縁電線において、絶縁層を、内層および外層を有する積層構造としてもよい。
次に、本発明について実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例および比較例では、以下の材料を用いた。
ポリマ成分として、以下を用いた。
・塩素化ポリエチレン(121℃でのムーニー粘度(ML1+4):55):杭州科利化工株式会社製「CM352L」
・クロロプレンゴム(非加硫変性タイプ、100℃でのムーニー粘度(ML1+4):48):昭和電工株式会社製「ショウプレンW」
・低密度ポリエチレン(密度d:0.922g/ml、MFR:2.3g/10min):プライムポリマ−株式会社製「エボリューSP2030」
・エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル(VA)含量:28質量%、密度d:0.950g/ml、MFR:6g/10min):三井デュポンポリケミカル株式会社製「エバウレックスEV260」
シラン化合物として、以下を用いた。
・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製「KBM−503」
・ビニルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製「KBM−1003」
・3−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製「KBM−903」
過酸化物として、以下を用いた。
・ジクミルパーオキサイド:日本油脂株式会社製「DCP」
その他の添加剤として、以下を用いた。
・安定剤(ハイドロタルサイト):協和化学工業株式会社製「マグセラー1」
・安定剤(エポキシ化大豆油):日本油脂株式会社製「ニューサイザー510R」
・安定剤(酸化マグネシウム):協和化学工業株式会社「キョーワマグ30」
・滑剤(ポリエチレンワックス):三井化学株式会社製「ハイワックスNL200」
・可塑剤(ナフテン系プロセスオイル):出光興産株式会社製「NP−24」
・カーボン(FEFカーボンブラック):旭カーボン株式会社製「旭60G」
・難燃剤(三酸化アンチモン):住友金属鉱山株式会社製「三酸化アンチモン」
・酸化防止剤(4,4´−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)):大内新興化学工業株式会社製「ノクラック300R」
・酸化防止剤(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物):大内新興化学工業株式会社製「ノクラック224」
・シラノール縮合触媒(ジオクチル錫ジネオデカノエート):日東化学株式会社製「ネオスタンU−830」
まず、下記表1に示すように各成分を配合し、内層材料および外層材料を調製するための材料(A1)〜材料(D)と、触媒マスターバッチとを調製した。
(材料(A1)の調製)
まず、表1に示すように、粉末状の塩素化ポリエチレン100質量部に対して、過酸化物を0.5質量部と、安定剤(ハイドロタルサイト)を6質量部と、安定剤(エポキシ化大豆油)を6質量部と、滑剤(ポリエチレンワックス)を3質量部と、を添加し、8インチロール機を用いて混練した。このとき、過酸化物を熱分解させずにポリマ中に分散させるために、ロールの表面温度を100℃とし、混練時間を、安定剤等を添加し終えてから5分とした。その後、混練して得られたシートを5mm角の形状にペレタイズし、塩素化ポリエチレンを含むペレットを得た。ペレット同士の粘着を防止するため、ペレットにタルク1質量部をまぶした。
続いて、得られたペレットにグラフト処理を施した。
具体的には、まず、得られたペレットにシラン化合物としてのメタクリルシランを、塩素化ポリエチレン100質量部に対してメタクリルシランが5質量部となるように、含浸させた。その後、メタクリルシランを含浸させたペレットを単軸押出機にて加熱しながら混練し、塩素化ポリエチレンにメタクリルシランをグラフト重合させることで、シラングラフト塩素化ポリエチレンを生成した。そして、単軸押出機からシラングラフト塩素化ポリエチレンをストランドとして押し出し、長さ150cmの水槽に導入して水冷した後、ペレタイズした。
なお、グラフト処理では、スクリュ径40mmの単軸押出機を用いた。また、スクリュ直径Dとスクリュ長さLとの比率L/Dを25とした。また、設定温度は、シリンダのホッパー側を80℃、シリンダのヘッド側を200℃、ヘッドを200℃とした。また、スクリュの回転数を20rpm(押出量約120g/分)、スクリュの形状をフルフライト形状とした。また、ダイスとして、穴径直径5mm、穴数3つのダイスを用いた。また、圧縮比は2.0とした。
続いて、シラングラフト塩素化ポリエチレンを含むペレットに可塑剤、酸化防止剤、カーボンブラック、難燃剤および滑剤を、表1に示す配合で添加し、8インチロール機を用いて混練した。このとき、ロールの表面温度を100℃とし、混練時間を、安定剤等を添加し終えてから5分間とした。混練後のシートは約5mm角の形状にペレタイズした後にペレット同士の粘着を防止するためにタルクを1重量部まぶした。以上により、メタクリルシランがグラフト重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレンを含む材料(A1)を調製した。
Figure 0006720565
(材料(A2)の調製)
表1に示すように、シラン化合物の種類をメタクリルシランからビニルシランに変更し、塩素化ポリエチレンに対して材料(A1)と同様にグラフト処理を施すことにより、ビニルシランがグラフト重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレンを含む材料(A2)を調製した。
(材料(B)の調製)
表1に示すように、ポリマの種類を低密度ポリエチレンに変更し、これに対して材料(A1)と同様にグラフト処理を施すことにより、シラングラフトポリエチレンを含む材料(B)を調製した。
(材料(C)の調製)
表1に示すように、ポリマの種類をエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)に変更し、これに対して材料(A1)と同様にグラフト処理を施すことにより、シラングラフトEVAを含む材料(C)を調製した。
(材料(D)の調製)
表1に示すように、ポリマの種類をクロロプレンゴムに変更し、これに対して材料(A1)と同様にグラフト処理を施すことにより、シラングラフトクロロプレンゴムを含む材料(D)を調製した。
(触媒マスターバッチの調製)
続いて、上記材料(A1)〜材料(D)とは別に、シラノール縮合触媒を含む触媒マスターバッチを調製した。
具体的には、粉末状の塩素化ポリエチレン100質量部に対して、ハイドロタルサイトを6質量部と、エポキシ化大豆油を6質量部と、ポリエチレンワックスを3質量部と、さらに、シラノール縮合触媒としてのジオクチル錫ジネオデカノエートを2質量部と、を添加し、8インチロール機を用いて混練した。このとき、ロールの表面温度を100℃とし、シラノール縮合触媒を添加してから3分間混練した。その後、混練物からなるシートを5mm角の形状にペレタイズし、触媒マスターバッチを調製した。
<実施例1>
(ケーブルの作製)
下記表2に示すように、材料(A1)〜材料(D)と触媒マスターバッチとを混合し、内層材料および外層材料を調製した。
内層材料は、メタクリルシランのシラングラフト塩素化ポリエチレンを含む材料(A1)に触媒マスターバッチを添加してドライブレンドすることにより調製した。
外層材料は、メタクリルシランのシラングラフト塩素化ポリエチレンを含む材料(A1)と、シラングラフトポリエチレンを含む材料(B)と、シラングラフトEVAを含む材料(C)とを60:39:1で混合し、これに触媒マスターバッチを添加してドライブレンドすることにより調製した。
なお、触媒マスターバッチの添加量は、内層材料および外層材料のそれぞれに対して20分の1の質量分とした。
次に、調製した内層材料および外層材料を用いてケーブルを作製した。
具体的には、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)からなる絶縁層が導体の表面に形成されたEPゴム絶縁体コア(導体断面積8mm、ゴム絶縁体厚さ1mm、外径3.7mm)の外周に内層材料を厚さが1.5mmとなるように押出被覆した後、外層材料を厚さが0.5mmとなるように押出被覆した。その後、温度60℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中に24時間保管して、内層材料および外層材料をシラン架橋させることにより、内層および外層を有するシースを備えるケーブルを作製した。
なお、内層材料は、スクリュ径75mm、比率L/D20の単軸押出機を用いて、外層材料は、スクリュ径40mm、比率L/D20の単軸押出機を用いて、それぞれ押し出した。
また、内層材料の押出条件は以下のようにした。シリンダ内の温度をネック側に向かって100℃−110℃−115℃−120℃−130℃とし、ネックの温度を130℃、クロスヘッドの温度を130℃、ダイスの温度を130℃とした。スクリュの回転数を15rpm、スクリュの形状をフルフライト形状とした。ケーブルの引取速度を10m/minとした。
また、外層材料の押出条件は以下のようにした。シリンダ内の温度をネック側に向かって100℃−110℃−115℃−120℃−130℃、ネックの温度を130℃、ノズルの温度を130℃とした。スクリュの回転数を25rpm、スクリュの形状をフルフライト形状とした。ケーブルの引取速度を10m/minとした。
Figure 0006720565
(ケーブルの評価方法)
作製したケーブルを、以下の方法により評価した。
(架橋処理前の硬度)
本実施例では、架橋処理前の外層材料の変形度合いを評価するため、架橋処理前であって未架橋状態での硬度を測定した。具体的には、JIS Aタイプの硬度計を用いて、架橋処理前の外層材料の硬度を測定し、その値が80以上であれば耐変形性に優れ、架橋処理前に巻き取ったとしても変形する可能性が低いものと判断して合格「○」、80未満であれば変形する可能性が高いものとして不合格「×」とした。
(耐油性)
架橋処理後のケーブルからシースを剥離し、剥離したシースを6号ダンベルで打ち抜いて試験サンプルを作製し、IRM902号試験油に100℃、24時間の条件で浸漬させた。浸漬前後の試験サンプルについて引張試験を行い、下記式に示すように、破断引張強さの浸漬後の残率を算出した。この残率が65%以上であれば、十分な耐油性を有しているものとして「◎」、60%以上65%未満であれば「○」、60%未満であれば「×」とした。
(破断引張強さの浸漬後残率)=(浸漬後の試験サンプルの引張強さ/浸漬前の試験サンプルの引張強さ)×100
(耐寒性)
シースの耐寒性を評価するため、シースの脆化温度を測定した。本実施例では、架橋処理後のシースをJISC3005(耐寒)に準拠して試験片を作製の上、打撃試験を実施した(温度は整数(1℃)刻みで変量)。本実施例では、試験片を3つ準備して、2つ以上で破壊が発生し始めるときの温度を脆化温度として、脆化温度が−40℃以下であるものを合格「○」、−40℃を超える温度であるものを不合格「×」とした。
(評価結果)
評価結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例1では、外層材料の架橋処理前の硬度が84と高く、架橋処理前にケーブルをドラム状に巻き取ったとしても、ケーブル表面(外層)に潰れ等の変形が生じる可能性が低いことが確認された。また、架橋処理後のシースの、耐油試験後の引張強さ残率が69%と高く、耐油性に優れることが確認された。また、シースの脆化温度が−44℃であり、十分な耐寒性を有することが確認された。
<実施例2,3>
実施例2,3では、外層材料に含まれる、シラングラフト塩素化ポリエチレン、シラングラフトポリエチレンおよびシラングラフトEVAの混合比率を、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に外層材料を調製し、ケーブルを作製した。
実施例2,3によると、外層材料においてシラングラフトEVAの割合を増やすことにより、脆化温度を低くすることができ、耐寒性を向上できることが確認された。
<実施例4,5>
実施例4,5では、内層材料として用いる材料を、材料(A2)もしくは材料(D)に変更した以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
実施例4,5によると、内層材料に用いる材料を変更しても、実施例1と同様に、外層の変形を抑制しつつ、耐油性および耐寒性を高い水準で両立できることが確認された。
<比較例1>
比較例1では、外層材料に材料C(シラングラフトEVA)を配合しない以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
表2に示すように、比較例1では、外層材料の未架橋状態での硬度を高くして外層での変形を抑制するとともに、耐油性を高く維持できることが確認された。しかし、脆化温度が高く、耐寒性が不十分であることが確認された。これは、シラングラフトEVAを配合せず、シラングラフト塩素化ポリエチレンとシラングラフトポリエチレンとの密着性を高くできないためと考えられる。
<比較例2,3>
比較例2,3では、外層材料に含まれる、シラングラフト塩素化ポリエチレン、シラングラフトポリエチレンおよびシラングラフトEVAの混合比率を、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に外層材料を調製し、ケーブルを作製した。
比較例2では、シラングラフトEVAの割合を過度に小さくしたためか、シラングラフトEVAの配合による効果を得られず、脆化温度が高くなってしまうことが確認された。
一方、比較例3では、シラングラフトEVAの割合を過度に高くしたために、シラングラフトポリエチレンの割合が低くなり、未架橋状態での硬度が低くなってしまうことが確認された。そればかりか、シラングラフトEVAの増量により、耐油性までが低下してしまうことが確認された。
<比較例4,5>
比較例4,5では、表2に示すように、内層材料として用いる材料を変更するとともに、外層材料に材料C(シラングラフトEVA)を配合しない以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
比較例4,5では、シラングラフトEVAを配合しないために、比較例1と同様に脆化温度が高く、耐寒性が不十分であることが確認された。
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
[付記1]
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置され、内層材料からなる内層および外層材料からなる外層を有する絶縁層を備え、
前記内層材料は、
ゴム成分にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトゴム成分を含み、
前記外層材料は、
塩素化ポリエチレン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(A)と、
ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリエチレン(B)と、
エチレン−酢酸ビニル共重合体(c)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)と、を含み、
前記絶縁層は、前記内層および前記外層が一体的にシラン架橋されるように構成されている、絶縁電線が提供される。
[付記2]
付記1の絶縁電線において、好ましくは、
前記外層材料は、前記シラングラフト塩素化ポリエチレン(A)を60質量%と、前記シラングラフトポリエチレン(B)を35質量%以上39質量%以下と、前記シラングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)を1質量%以上5質量%以下とを、合計が100質量%となるように含有する。
[付記3]
付記1又は2の絶縁電線において、好ましくは、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(c)は、酢酸ビニル含量が5質量%以上50質量%以下である。
[付記4]
付記1〜3のいずれかの絶縁電線において、好ましくは、
前記塩素化ポリエチレン(a)は、塩素過度が25質量%以上45質量%以下である。
[付記5]
付記1〜4のいずれかの絶縁電線において、好ましくは、
前記ポリエチレン(b)は、密度が0.90g/ml以上0.95g/ml以下である。
[付記6]
付記1〜5のいずれかの絶縁電線において、好ましくは、
前記シラン化合物は、メタクリル基を有する。
[付記7]
付記1〜6のいずれかの絶縁電線において、好ましくは、
前記絶縁層は、脆化開始温度が−40℃以下となるように構成されている。
[付記8]
付記1〜7のいずれかの絶縁電線において、好ましくは、
前記内層材料に含まれる前記ゴム成分が、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴムおよびクロロスルホン化ポリエチレンの少なくとも1つである。
[付記9]
本発明の他の態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置される絶縁層と、
前記絶縁層の外周に配置され、内層材料からなる内層および外層材料からなる外層を有するシースと、を備え、
前記内層材料は、
ゴム成分にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトゴム成分を含み、
前記外層材料は、
塩素化ポリエチレン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(A)と、
ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリエチレン(B)と、
エチレン−酢酸ビニル共重合体(c)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)と、を含み、
前記シースは、前記内層および前記外層が一体的にシラン架橋されるように構成されている、ケーブルが提供される。
1 ケーブル
11 導体
12 絶縁層
13 シース
14 内層
15 外層

Claims (8)

  1. 導体と、
    前記導体の外周に配置され、内層材料からなる内層および外層材料からなる外層を有する絶縁層を備え、
    前記内層材料は、
    ゴム成分にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトゴム成分を含み、
    前記外層材料は、
    塩素化ポリエチレン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(A)と、
    ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリエチレン(B)と、
    エチレン−酢酸ビニル共重合体(c)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)と、を含み、
    前記シラングラフト塩素化ポリエチレン(A)、前記シラングラフトポリエチレン(B)及び前記シラングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)の合計100質量%中、前記シラングラフトポリエチレン(B)の含有量が35質量%以上39質量%以下、前記シラングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)の含有量が1質量%以上5質量%以下であり、
    前記絶縁層は、前記内層および前記外層が一体的にシラン架橋されるように構成されている、絶縁電線。
  2. 前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(c)は、酢酸ビニル含量が5質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記塩素化ポリエチレン(a)は、塩素過度が25質量%以上45質量%以下である、請求項1又は2に記載の絶縁電線。
  4. 前記ポリエチレン(b)は、密度が0.90g/ml以上0.95g/ml以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁電線。
  5. 前記シラン化合物は、メタクリル基を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の絶縁電線。
  6. 前記絶縁層は、脆化開始温度が−40℃以下となるように構成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の絶縁電線。
  7. 前記内層材料に含まれる前記ゴム成分が、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴムおよびクロロスルホン化ポリエチレンの少なくとも1つである、請求項1〜6のいずれかに記載の絶縁電線。
  8. 導体と、
    前記導体の外周に配置される絶縁層と、
    前記絶縁層の外周に配置され、内層材料からなる内層および外層材料からなる外層を有するシースと、を備え、
    前記内層材料は、
    ゴム成分にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトゴム成分を含み、
    前記外層材料は、
    塩素化ポリエチレン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(A)と、
    ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリエチレン(B)と、
    エチレン−酢酸ビニル共重合体(c)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)と、を含み、
    前記シラングラフト塩素化ポリエチレン(A)、前記シラングラフトポリエチレン(B)及び前記シラングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)の合計100質量%中、前記シラングラフトポリエチレン(B)の含有量が35質量%以上39質量%以下、前記シラングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)の含有量が1質量%以上5質量%以下であり、
    前記シースは、前記内層および前記外層が一体的にシラン架橋されるように構成されている、ケーブル。
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