以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
1つの局面において、本発明は、食品添加物である高度サラシ粉を原料として用い、有効塩素を減少させずに所望レベル以上に維持し、原料中のカルシウム成分を除去し、カルシウム塩の反応を示さない透明液体を製造する方法を提供する。
別の局面において、本発明は食品添加物である高度サラシ粉を原料として用い、カルシウム成分を除去し、長期保管においてもカルシウム成分を析出させない、清澄な塩素酸化物液体製剤の開発を提供する。
さらに別の局面において、本発明は、食品添加物である高度サラシ粉を原料として用い、塩素臭の少ない塩素酸化物液体製剤の開発を提供する。
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を適宜説明する。
本明細書において「有効塩素」とは、サラシ粉に含まれる、漂白作用に有効な塩素をいう。有効塩素は例えば、試料の次亜塩素酸ナトリウムにヨウ化カリウムを加え、Cl2+KI→I2+KCl (1)式により遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで酸化還元滴定(I2+2Na2S2O3→2NaI+Na2S4O6 (2)式)して有効塩素を定量することができる。
本明細書において有効塩素の「所望レベル」とは、任意に設定することができるが、例えば、3.0%〜15.0%の範囲が通常用いられ、好ましくは6.0%〜12.0%が使用される。所望レベルの有効塩素が含まれるよう高度サラシ粉を水に溶解する場合、そのような高度サラシ粉の量は、計算することができる。
本明細書において「実質的に含まない」とは、ある物質について言及するとき、その物質が含まれないか、あるいはある目的について有害とならないような含量である物質が含まれてもよいことをいう。
本明細書において「塩素酸化物」とは、塩素の任意の酸化物をいう。例えば、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸およびそれらの塩などを挙げることができる。
本明細書において「高度サラシ粉」(High test bleaching powder)とは、サラシ粉のうち、高品質のものであり、その主成分は、Ca(ClO)2・3H2O(式量187.07)である。白色粉末で吸湿性である。水に溶解して遊離石灰を残すとされる(CAS No.7778−54−3、JISK 1425-59)。有効塩素濃度は60〜70%である。好ましくは、公的な認証を受けたものをいう。代表的に石灰乳に塩素を反応して作られる。高度サラシ粉は、赤リトマス試験紙が青変し、その後退色する。カルシウム塩の反応がある(化学品便覧「高度サラシ粉」参照)。サラシ粉については、原料由来水酸化カルシウムを含有する次亜塩素酸カルシウムの製品をいう。次亜塩素酸カルシウムは、化学式CaCl(ClO)・H2OまたはCa(ClO)2の粉末である。
本明細書において「非カルシウム無機アルカリ剤」とは、カルシウム以外の陽イオンを有する無機のアルカリ物質を有する(薬)剤をいう。カルシウム以外の陽イオンを有する無機のアルカリ物質を有するものであれば、どのようなものであっても使用することができることが理解される。例えば、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウム、および水酸化ナトリウムを挙げることができるがこれらに限定されない。
本明細書において「二価以上の無機アルカリ剤」は、非カルシウム無機アルカリ剤のうち、価数が二価以上のものをいう。ナトリウム含有アルカリ剤が好ましいがこれに限定されない。好ましい二価以上の無機アルカリ剤としては、pHを10以下にすることができる能力を有するものが有利である。高度サラシ粉のpHを下げることができるからである。そのような例としては、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、および硫酸ナトリウムを挙げることができるがそれらに限定されない。ただし、二価未満の無機アルカリ剤、例えば、水酸化ナトリウムも場合により使用することができることが本発明において示されている。また、硫酸ナトリウム等を加えることが有利であり得る。理論に束縛されるものではないが、硫酸ナトリウムを加えると、反応後の沈殿槽が固化しやすく、浮遊しづらくなるため、作業性が向上するため好ましい。硫酸ナトリウムの投入量は、通常他の無機アルカリ剤の投入量1に対して0.1前後であり、目的を達成することができる限り、その他の量でもよく、10%以下、好ましくは5%以下、2%以下、1%以下等を挙げることができる。
本明細書において「T.AL」とは試料中のアルカリ度を測定する為に、試料をpH4.0になるまで0.1mol/L塩酸−酸標準液を滴定し、試料100gのpHを4.0にする為に必要な0.1mol/L塩酸が1mLの時、アルカリ度(T.AL)を1とする。pH4.0は炭酸ナトリウムの第二中和点である。なお、高度サラシ粉は、規格が広く、各社でpH調整剤などの配合で異なることから、通常は、T.ALは規格に記載されないことが多い。但し、塩素が含まれるため、一般には、高アルカリである。
本明細書において「低塩素臭」とは、高度サラシ粉の塩素臭よりも低減されている塩素臭である。代表的には、低塩素臭の場合の塩素酸化物含有液の塩素ガス濃度は0.1ppm以下であり、好ましくは0.09ppm以下、0.08ppm以下、0.07ppm以下、0.06ppm以下、0.05ppm以下、0.04ppm以下、0.03ppm以下、0.025ppm以下、0.02ppm以下、0.01ppm以下、0.00ppmである。
本明細書において「極微塩素臭」とは、使用時に塩素臭が人にまったく感じられないレベルの塩素臭である。代表的には、極微塩素臭の場合の塩素酸化物含有液の塩素ガス濃度は0.05ppm以下であり、好ましくは0.04ppm以下、0.03ppm以下、0.02ppm以下、0.01ppm以下、0.00ppmである。
本明細書において、「微塩素臭」とは、使用時に塩素臭が人にほとんど感じられないレベルの塩素臭である。代表的には、微塩素臭の場合の塩素酸化物含有液の塩素ガス濃度は0.1ppm以下であり、好ましくは0.09ppm以下、0.08ppm以下、0.07ppm以下、0.06ppm以下である。
本明細書において、「塩素臭」とは、使用時に人に感じられるレベルの塩素臭である。代表的には、塩素酸化物含有液の塩素ガス濃度は0.1ppmより高い。
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本発明の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
1つの局面において、本発明は、カルシウム成分を実質的に含まない、有効塩素が所望レベル以上に維持された塩素酸化物液体を生産する方法を提供する。この方法は:(a)該所望レベルの有効塩素が含まれるよう高度サラシ粉を水に溶解する工程;および
(b)該高度サラシ粉が溶解された水に、pHを10.0以上維持しつつ非カルシウム無機アルカリ剤を加える工程を包含する。
1つの実施形態では、前記無機アルカリ剤は、二価以上の無機アルカリ剤を含む。二価以上の無機アルカリ剤を含むことによって、カルシウム除去が効率よく行えるからである。
さらなる実施形態では、前記無機アルカリ剤は、ナトリウム含有アルカリ剤を含む。なお、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と塩化ナトリウム(NaCl)は反応しないとされているが、塩化ナトリウムの添加量に応じて水和量が減少し、多少の沈殿が見られることもあり得る。また、中性では反応を起こさないとされている。
さらに別の実施形態では、前記無機アルカリ剤は、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、および水酸化ナトリウム(NaOH)からなる群より選択される少なくとも1つの無機アルカリ剤を含む。このように無機アルカリ剤としては、二価であり、pHが10以下のものを有利に使用することができる。水酸化ナトリウムは一価なので添加量が多量になっており、単独で用いるのには、現実的ではないことがあり得るため、好ましいのは二価以上で、かつpHが10以上の無機アルカリ剤である。ただし、水酸化ナトリウムでもある程度は可能であることが理解される。
別の実施形態では、本発明において採用されるpHは、10.1以上、10.2以上10.3以上、10.4以上、10.5以上、10.6以上、10.7以上、10.9以上、10.9以上または11.0以上に維持されることが好ましい。
さらに別の実施形態では、前記無機アルカリ剤は二価以上の無機アルカリ剤を含み、前記pHは10.5以上に維持される。理論に束縛されることを望まないが、このような条件を用いることで有利にカルシウム分を除去し、塩素臭を抑えることができることが示されているからである。
好ましい実施形態では、前記無機アルカリ剤は炭酸ナトリウムを含む。
1つの実施形態では、前記無機アルカリ剤はさらに硫酸ナトリウムを含む。理論に束縛されることを望まないが、硫酸ナトリウムを追加の成分として含めることによって、後処理が楽になる。硫酸ナトリウムを添加することで、回収液の上澄みの回収率を1〜2%向上させることができ、また、沈殿物が固化しやすくなり、回収時の沈殿物の浮遊を防止することができるなどの効果が奏されるからである。
1つの好ましい実施形態では、前記無機アルカリ剤は炭酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムを含む。有利な実施形態では、炭酸ナトリウムが主成分であり、硫酸ナトリウムは微量加えられることが理解される。その好ましい比率としては10:0.5〜2.0を挙げることができるが、これに限定されず、有利な効果が奏されるのであれば、10:0.5未満であっても10:2.0より多くてもよい。また、その比率の範囲としては、上限、下限とも0.5、2.0に限定されず、例えば、下限としては、10:0.1、10:0.2、10:0.3、10:0.4、10:0.5、10:0.6、10:0.7、10:0.8、10:0.9、10:1.0であってもよく、上限として10:2.0、10:1.9、10:1.8、10:1.7、10:1.6、10:1.5、10:1.4、10:1.3、10:1.2、10:1.1であってもよい。
本発明の1つの実施形態では、さらに、得られた液をろ過する工程をさらに包含する。ろ過することによって明清な液体を得ることができ、その後の利用において有利に使用され得るからである。
本発明において、回収液を得る工程は、高度サラシ粉を溶解した液に、非カルシウム無機アルカリ剤を添加して得られた液において上澄み液を回収する工程を包含する。「上澄み液を回収する」とは、固液混合相から液相のみを取り出すことが公知のいかなる手段も本発明に従って使用してもよいことをここで意味する。従って、上澄み液は、ポンプでの吸い上げおよび/またはデカンテーションによって取り出してもよい。好ましくは、ポンプでの吸い上げによるものである。
本発明において、回収液を得る工程は、得られた液において形成される沈殿を分離する工程を包含する。「形成される沈殿を分離する」とは、液相から固相を除去することが既知のいかなる手段も本発明に従って使用してもよいことをここで意味する。従って、形成される沈殿は、沈降および/またはろ過および/または遠心分離によって本発明の組成物から除去してもよい。好ましくは、ろ過である。
本発明に係る方法で使用するのに好適なろ過器としては、市販されており、カートリッジろ過器、メッシュろ過器、ろ過ケークなどを含めて傾瀉ろ過器として既知のいかなるろ過器が挙げられる。好適なろ紙としては、市販されており、例えば、[JIS P3801(ろ紙)化学分析用]に規定されるろ紙が挙げられる。
本発明において、回収液を得る工程は、得られた液において上澄み液をポンプで吸い上げ、その後得られた液において形成される沈殿を分離する工程を包含する。好ましくは、得られた液において上澄み液をポンプで吸い上げ、その後ろ過する工程である。
1つの実施形態では、本発明において、カルシウム分は、有利には、0.00%であることが特徴である。カルシウム分の定量方法は、本明細書の別の箇所に記載されている。陽イオンの機器分析でも行うことができる。必ずしも0である必要がない場合、実用的な透明度で実質的なカルシウム分がないと判断して使用することができる。なお、定量法については、実施例に記載される食品、添加物等の規格基準「第2添加物 B 一般試験法 25.定性反応試験法 カルシウム塩」を例示することができる。また、特定の定量法に限定されるものではなく、実用的な「透明度」が得られる許容量で本発明を使用することができる。そのような実用的な許容量としては、例えば、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、0.01%以下、あるいは約0.00%等を挙げることができる。カルシウム成分は、分光光度計を用いて、蒸留水、イオン交換水を測定した場合、吸光度λ620nmで判断することができる。水であれば、0である。本発明でもまた、水と同様の濁度、透明度を獲得することが確認されている(実施例参照)。
1つの実施形態では、本発明の方法は、さらにpHを所望の値に調整する工程を包含する。pHの調整は、任意の酸またはアルカリを用いることができるが、カルシウム分や塩化物イオンを含むものは回避されることが好ましい。
本発明の好ましい実施形態では、最終製品のpHをpH10より下げることが好ましい。そのようなpHとしては、7.5〜10の間が例示されるが、これに限定されず、例えば、下限としては、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5等を挙げることができる。上限としては、10、9.9、9.8、9.7、9.6、9.5、9.4、9.3、9.2、9.1、9.0、8.9、8.8、8.7、8.6、8.5を挙げることができるがこれらに限定されない。
1つの実施形態では、本発明の方法によって、高度サラシ粉からカルシウム塩を除き液体化したものを原料として用いてもよい。高度サラシ粉とは、本明細書において別途説明されるように、高含有量の次亜塩素酸カルシウムであり、好ましくは、添加物公的試験に合致したもの(例えば、本部三慶製の「ネオクリーンCL」等)を用いることができる。高度サラシ粉中に含まれる高濃度のカルシウム塩を除き液体化したものは塩素臭が少なく、殺菌対象食品に塩素臭が着香しないため、有利であり得る。また、この液体は、通常使用されるサラシ液とは異なる。サラシ液は、カルシウム塩を含む、有効塩素8%以上のものをいうところ、本発明で使用される液体は、カルシウム塩が除去されているため、サラシ液とは異なるからである。
別の局面では、本発明は、Ca塩を除去した状態の液体の段階でのT.ALの値が原液であれば塩素力価1%あたり330以下である、すなわち塩素臭気のしない塩素酸化物含有液を提供する。原液のT.ALの値は、別の実施形態では、塩素力価1%あたり320以下、310以下、300以下、290以下、280以下、270以下、260以下、250以下、240以下、230以下、220以下、210以下、200以下、190以下、180以下、170以下、160以下、150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下、10以下等であってもよい。
1つの実施形態において、最終製品を提供する場合、T.ALの値は、塩素力価1%あたり50以下である、本発明の塩素酸化物含有液を用いて製造される製品を提供する。カルシウム塩を除去した状態の液体の段階を更に原料に用いて製造する最終製品のT.ALは、塩素力価1%あたり40以下、30以下、20以下、10以下であり得る。
一つの実施形態では、本発明の塩素酸化物含有液または製品はカルシウム成分を実質的に含まないことを特徴としうる。本明細書において「実質的に含まない」ことは「実用的な透明度」かどうかで判定することができる。そのような透明度としては、ネスラー管を用いた濁度試験法<精製水1L中に標準カオリン1mgを含む時の濁りに相当するものを1度とする。0度〜5度>の値が、濁度0、つまり、精製水と変わらない澄明な透明度であるものを挙げることができる。
1つの実施形態では、本発明の塩素酸化物含有液または製品は高度サラシ粉液から製造される。
別の実施形態では、本発明の塩素酸化物含有液または製品の前記カルシウム成分は、0.00%である。定量法については、実施例に記載される食品、添加物等の規格基準「第2添加物 B 一般試験法 25.定性反応試験法 カルシウム塩」を例示することができる。また、特定の定量法に限定されるものではなく、実用的な「透明度」が得られる許容量で本発明を使用することができる。そのような実用的な許容量としては、0.00%に代えて、0.01%が挙げられる(実施例で記載されるように、試験結果の表から、僅かに白色沈殿を生じているのは、24ppm超〜59ppmであった。試験区22、37であったため、好ましい値としては59ppmを四捨五入して0.01%としている)。0.02%以上(例えば、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%等)では、透明では無くなりうることからそれほど好ましくはないが目的に応じ使用することができる。他方、24ppm以下であれば、実質的にカルシウム成分を含まないとともに、本明細書において説明されているように、塩素臭が実質的に感じられないレベル(例えば、微塩素臭ないし極微塩素臭、例えば、塩素ガステック検知管を用いて測定する場合0.2ppm未満、あるいは0.1ppm未満等)にまで低減することができ、従来技術では達成できなかった塩素臭のしない液体塩素酸化物を製造することができた。
別の実施形態では、塩素ガス濃度は、塩素ガステック検知管を用いて測定する場合に0.2ppm未満である。
別の実施形態では、塩素ガス濃度は、塩素ガステック検知管を用いて測定する場合に0.1ppm未満である。
さらに別の実施形態では、塩素ガス濃度は、塩素ガステック検知管を用いて測定する場合に0.05ppm以下である。さらに別の実施形態では、塩素ガス濃度は、塩素ガステック検知管を用いて測定する場合に0.025ppm以下である。
高度サラシ粉からCaを除いた回収液の段階のT.ALは、原料として用いた高度サラシ粉や、使用する無機アルカリ剤によって範囲があり、有効塩素8%設定である場合、炭酸ナトリウムを除去剤として使用したとき、170〜1100以内であり、350以下が好ましく、水酸化ナトリウムを除去剤として使用したとき、1850〜4100以内であり、2000以下が好ましい。ただし、炭酸ナトリウムを無機アルカリ剤として使用した方が、カルシウム塩の除去効果が優れているばかりではなく、回収液のT.ALを低く抑える事が言えるため好ましい。上述のように、カルシウム塩を除去した状態の液体の段階を更に原料に用いて製造する最終製品のT.ALは、200以下、180以下、150以下、120以下、100以下であり得る。T.ALは塩素力価1%で計算すると、上述した数値となり得る。
さらに別の実施形態では、本発明の塩素酸化物含有液または製品のpHはpH7.5〜10であることが好ましい。この含有液のpHとしては、7.5〜10の間が例示されるが、これに限定されず、例えば、下限としては、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5等を挙げることができる。上限としては、10、9.9、9.8、9.7、9.6、9.5、9.4、9.3、9.2、9.1、9.0、8.9、8.8、8.7、8.6、8.5を挙げることができるがこれらに限定されない。
(高度サラシ粉からのカルシウム塩の除去)
1つの局面において、本発明は、カルシウム成分を実質的に含まない、有効塩素が所望レベル以上に維持された塩素酸化物液体を生産する方法であって、該方法は:(a)該所望レベルの有効塩素が含まれるよう高度サラシ粉を水に溶解する工程;および(b)該高度サラシ粉が溶解された水に、pHを10.0以上維持しつつ非カルシウム無機アルカリ剤を加える工程を包含する、方法を提供する。
別の局面において、本発明は、高度サラシ粉を原料に用いて、塩素酸化物含有液を製造する方法であって、該方法は:(a)高度サラシ粉を水に溶解してpH10.0以上の溶液を調製する工程;(b)工程(a)で調製した溶液のpHを10.0以上に維持しつつ、該溶液に非カルシウム無機アルカリ剤を加える事でカルシウム塩を沈殿させて、液相とカルシウム塩を含む固相を含む、該液相中のカルシウムイオン濃度を11.78ppm以下とする固液混合相を形成する工程;および(c)工程(b)で形成された固液混合相から液相のみを取り出して、塩素酸化物含有液を得る工程を包含する、方法を提供する。
1つの実施形態では、本発明は、工程(c)が、(c1)前記固液混合相を静置する工程をさらに包含する、方法を提供する。
1つの実施形態では、本発明は、工程(c)が、(c2)工程(c1)でカルシウム塩を沈降させた前記固液混合相から、上澄み液を回収する工程をさらに包含する、方法を提供する。
1つの実施形態では、本発明は、工程(c)が、(c3)前記上澄み液を濾過する工程を包含する、方法を提供する。
1つの実施形態では、本発明は、(d)工程(c)の後にpHを所望の値に調整する工程をさらに包含する、方法を提供する。
1つの実施形態では、本発明は、(a’)工程(a)の前に前記高度サラシ粉中のカルシウムイオン濃度を測定する工程をさらに包含する、方法を提供する。
本発明者は、高度サラシ粉を溶液化し、この液中からカルシウム成分を取り除き、清澄な液体を得て、その後においても、カルシウムの析出が発生しないような液体を得るために、まず、高度サラシ粉中のカルシウムと、各種の無機物を添加し、反応させ、沈殿生成を行うこととした。また、この選定の際には、カルシウムの除去効果とともに、有効塩素を減少させない無機アルカリ剤であることが好ましい。
1つの実施形態では、本発明で使用され得る一般的な無機凝集剤としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の方が知られているが、酸性域のものでは有効塩素の減少につながることから、候補とする無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムを使用することができる。
特定の実施形態では、本発明の方法において、各種の無機アルカリ剤によって、各々の効果差が確認され、沈殿生成物と上澄み液を分離しやすく、好ましい無機アルカリ剤としては炭酸ナトリウムであったが、添加量によっては、溶液のpHが低下してしまいやすく、有効塩素の減少につながる懸念があるため、原料である高度サラシ粉の成分を考慮しながら、多少のpH調整を行う必要があることが判明した。
また、水酸化ナトリウムでも効果は確認され、溶液のpHも安定していたが、現実的ではない、非常に大量の添加量を必要とすると言うことが判り、その上、カルシウムイオンが残ってしまうことも判明し、高度サラシ粉中からカルシウム塩を除去するには、水酸化ナトリウムを高濃度添加しなければならない必要があるため、無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム以外を用いることも1つの選択肢としてある。
別の実施形態において、硫酸ナトリウムについては、溶液のpHを低下させやすく、長期間の処理においては、有効塩素の減少につながる懸念が判明し、かつ、カルシウム塩の除去効果も思わしくはなかったため、無機アルカリ剤としては、硫酸ナトリウム以外を用いることも1つの選択肢としてある。
また、リン酸水素二ナトリウムは、炭酸ナトリウムと同様に、二価の無機アルカリ剤であるが、沈殿物が結晶化せず、液中で浮遊しやすいと言うことや、カルシウムイオンを除去するまでの添加量を使用した場合、溶液のpHが低下し、かつ、塩素力価の低下や、塩素臭の発生が生じたことから、そのような副反応が許容される場合かあるいはそのような副反応が生じない範囲で用いることが好ましい。
以上のことから、高度サラシ粉中に大量に含まれるカルシウムを除去し、尚且つ、有効塩素を維持させつつ、しかも、その後、流通してもカルシウムを析出させない清澄液体を得るには、有効塩素を維持させやすいpH域が重要な特徴の一つであり、そのpHを維持することができ、かつ、効率よくカルシウムを析出させることができる無機アルカリ剤の選定や組み合わせと、反応させる方法を選択することが有利である。
1つの実施形態では、本発明において、高度サラシ粉中の有効塩素を維持させる最適な下限のpH域は10.0以上であり、このpH域を下回ると塩素が分解されてくるためか塩素臭が放出されてくる。好ましい実施形態では、pHは10.5以上が有利である。
1つの実施形態では、高度サラシ粉からカルシウム成分を除去しやすい無機アルカリ剤としては、炭酸ナトリウムを挙げることができる。但し、炭酸ナトリウムでは、使用する高度サラシ粉と、炭酸ナトリウムの添加量の組み合わせによっては、pHが低下し、有効塩素の減少を招く懸念もあることから、好ましくは、水酸化ナトリウム等で適量加えてpHを調整し、その結果、最終製品を清澄な液体として長く保持させることができる。また、硫酸ナトリウム自体には、溶液中のカルシウム成分を除去する能力は低いが、沈殿生成物が硬化しやすく、液中から分離しやすくなることから、製造効率を向上させる為に微量添加する副剤としての効果も期待できる。
また、リン酸水素二ナトリウムは、炭酸ナトリウムと同様に、二価の無機アルカリ剤であるが、炭酸ナトリウムに比べ、水溶液のpHが低くなる傾向があり、炭酸ナトリウムとは違った液性になり、カルシウム塩を除去できないと言う訳ではなかったが、そのような実施形態が好ましくない場合は、使用を回避することができる。
特定の実施形態では、本発明において、高度サラシ粉から清澄な透明液体を得るには、使用する高度サラシ粉の性質に応じて、カルシウム除去を目的として、主に炭酸ナトリウムの添加量を調整(作業性の為に、微量の硫酸ナトリウムを添加する場合もある)すれば、カルシウム塩の定性反応がなく、カルシウムイオン濃度も0.00%となる液体を得ることができる。なお、炭酸ナトリウムの添加量によっては、pHが低下し、pHが10を下回るになることもある為、その場合には、事前に水酸化ナトリウム等でアルカリ調整することが好ましい。
次に、本発明の方法ででき上がった高度サラシ粉の液体製剤は、塩素臭についても、一般的な次亜塩素酸ナトリウム液等に比べて、特異性がある。これは、同塩素濃度の次亜塩素酸ナトリウム液と比較して、明らかに塩素臭が少なく、使用する際に問題であった塩素臭についても解消されており、本発明によってでき上がる高度サラシ粉液体製剤自体もまた、非常に優れた特長を有している。
理論に束縛されるものではないが、本発明の高度サラシ粉の液体製剤が、一般的な高度サラシ粉や次亜塩素酸ナトリウム液等に比べて低塩素臭である理由は、カルシウム塩を除去する反応を終えた事によって、安定性が高まり、塩素が分解されず、その結果塩素臭が放出されないからである。
好ましくは、塩素酸化物含有液中のカルシウム濃度は、24ppm以下である。あるいは、塩素酸化物含有液中のカルシウム濃度は、より好ましくは、23ppm以下、22ppm以下、21ppm以下、20ppm以下、19ppm以下、18ppm以下、17ppm以下、16ppm以下、15ppm以下、14ppm以下、13ppm以下、12ppm以下、11ppm以下、10ppm以下、9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.9ppm以下、0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下、0.2ppm以下、0.1ppm以下、あるいは0.01ppm以下である。これらの濃度が達成されると、予想外にも塩素臭が問題のないレベルに低減し、好ましくは塩素臭が実質的に感じられないレベル(微塩素臭、例えば下記に規定するレベル(例えば0.1ppm以下等))の状態を達成することができたことが本発明において明らかとなった。
好ましくは、塩素酸化物含有液の塩素ガス濃度は0.1ppm以下であり、より好ましくは、0.09ppm以下、0.08ppm以下、0.07ppm以下、0.06ppm以下、0.05ppm以下、0.04ppm以下、0.03ppm以下、0.025ppm以下、0.02ppm以下、あるいは0.01ppm以下である。
(製造方法)
本発明の高度サラシ粉の液体製剤の代表的な製造フローを以下に示す。
製造フロー
この代表的な製造フロー中、主要な工程は以下のとおりである。
A)高度サラシ粉に非カルシウム無機アルカリ剤を添加し、Caイオンを沈降させ、上澄み液を得る。
B)静置後の上澄み液をろ過し、ろ過液(=回収液)を得る。
C)回収液に、リン酸水素二ナトリウム等を加え調整し、最終製品となる、高度サラシ粉液体製剤として完成させることができる。
なお、本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma、和光純薬、ナカライテスク等)の同等品でも代用可能である。
本発明は、食品添加物高度サラシ粉には試薬が存在しておらず、高度サラシ粉の公定規格内において、各社の規格が存在する事から、原料中のカルシウムイオンを測定し、カルシウムイオンを除去する方法を検討する必要があると考えた。
また、求められるカルシウムイオンの量については、異物混入として問題にならないように液性として無色透明液体であり、目安として、カルシウム塩の定性反応試験法において呈さない状態にまで除去する必要があると考えた。
また、カルシウム塩の定性反応試験法において呈さない状態が、カルシウムイオンとしてどの程度含有されているかを確認する必要があると考えた。
また、高度サラシ粉からカルシウムイオンを除去した液体は、塩素酸化物含有液としての機能を損なわずに、流通販売する事が可能となる必要があると考えた。
本発明では、まずは高度サラシ粉に対して、各種の無機アルカリ剤を添加し、カルシウムイオンの除去性能を判断する為に、カルシウム塩を沈殿させる為の期間、カルシウム塩としての沈殿後の上澄み液の収率、また、塩素酸化物としての塩素濃度が減少しない事の確認を行った。
(実施例1:高度サラシ粉から有効塩素濃度を維持しつつカルシウム分を除去すること)
(方法)
(1)原料をすりつぶし、粉末状にした上で、有効塩素濃度の測定を行った。
(2)(1)ですりつぶした原料を、有効塩素濃度として6.0%になるようイオン交換水で希釈溶解した。
(3)(2)の希釈溶液に、20.0%〜40.0%に希釈調整した無機アルカリ剤を添加した。(4)(3)で調整した溶液を、冷蔵庫内で静置保管した。
(5)下記の項目について確認を行った。
(沈殿槽と上澄み液の分離期間の確認)
24時間毎に沈殿槽と上澄み液の高さを測定し、必要期間を確認した。
(回収液の確認)
静置期間が終了した時点で、沈殿槽を吸い込まないように上澄み液を回収し、ろ過した後、得られたものを回収液とし、この重量を測定し、歩留まりを確認した。
(回収液のカルシウム塩の反応の確認)
ろ過後の回収液に対して、カルシウム塩の反応が見られるのかどうかについて確認した。
なお、食品、添加物等の規格基準については、「第2添加物 B 一般試験法 25.定性反応試験法 カルシウム塩」(平成19年3月30日付け 厚生労働省告示第73号)に基づいた。
(回収液のカルシウムイオン濃度の確認)
ろ過後の回収液に対して、カルシウムイオンが存在しているのかどうかについて確認した。
なお、食品、添加物等の規格基準については、「第2添加物 B 一般試験法 8.カルシウム塩定量法 第1法」(平成19年3月30日付け 厚生労働省告示第73号)に基づいた。
(回収液のpHと有効塩素濃度の測定)
pHの測定と、有効塩素濃度の測定を行い、有効塩素としての回収率を確認した。
表1には使用した高度サラシ粉、表2〜8にはそれぞれの高度サラシ粉と各無機アルカリ剤との配合表を示した。高度サラシ粉としては、発明者の企業が製造している高度サラシ粉と、一般的に入手可能な南海化学製の高度サラシ粉の2品を用い、一価の無機アルカリ剤である水酸化ナトリウムと、二価の無機アルカリ剤である炭酸ナトリウムと、リン酸水素二ナトリウムにおけるカルシウムの除去効果について、沈殿層の形成と上澄み液の回収における静置期間と液性の確認を行ったところ、表9〜11から、各無機アルカリ剤によって回収出来る上澄み液が異なる事が示され。但し、静置期間としては、いずれの無機アルカリ剤であっても2日間で変化が終了すると言う判断を出来る事が示された。
但し、リン酸水素二ナトリウムの場合には、沈殿層と上澄み液の分離性が悪く、上澄み液の回収量が少なく、濃度によってはゲル化してしまうことがわかり、また、表14のとおり、溶液のpHが低下し、塩素臭、塩素力価の低下が発生しており、元となる高度サラシ粉が塩素酸化物と言う事から、実用には適さない事が示された。
(カルシウムイオン濃度)
先の(カルシウム塩の反応)試験結果から、抜粋し、定性反応試験の結果で良かったもの等を含め、各検体のカルシウムイオン濃度の測定を行った。表16において、先の結果が「○」とは、カルシウム塩の反応が無い、すなわち所望の回収液を得たことを意味する。
上記の結果から、更に、試験区として17、18、19、20、21、30区が評価された。
(水酸化Na、炭酸Na、リン酸水素二Naの比較)
次に、表2〜8の配合表に基づき配合し、静置後の上澄み液を得て、濾過した回収液を、カルシウム塩の定性反応「第2添加物 B 一般試験法 25.定性反応試験法 カルシウム塩」(平成19年3月30日付け 厚生労働省告示第73号)に基づき実施したところ、カルシウム塩の反応を呈さない検体が得られたが、各無機アルカリ剤をモル濃度比で比較したところ、最も効果的と見られる炭酸ナトリウムを1とした場合、リン酸水素二ナトリウムは炭酸ナトリウムの1.1倍であり、ほぼ同程度のカルシウムイオンの除去効果があることが示されたが、前述の弊害の為、塩素酸化物の場合には実用性に欠ける事が示された。他方、水酸化ナトリウムの場合には、約8.8〜10.6倍の量を必要としており、カルシウム塩の除去効果が低いと言うことが示されたが、カルシウム塩の反応が見られない検体を作成する事は可能である事が示された。
また、表16に示すように、カルシウム塩の反応が見られなかった検体15〜21、23、30および38のカルシウムイオン濃度は、0.00ppmから11.78ppmであり、微量のカルシウムイオンが検出されても目的とする検体は作成可能である事が判明した。但し、検体22のように、カルシウムイオン濃度が24.22ppmの場合には、僅かにカルシウム塩の反応である白色沈殿が見られた為、カルシウム塩の反応が見られない検体とは、カルシウムイオン濃度で11.78ppm以下である事がわかった。
(塩素臭の検証)
この高度サラシ粉中から、カルシウム成分を除去する方法を正確に評価する為に、一般的に入手可能な南海化学製の高度サラシ粉を用いて、本方法を実施し、最終完成品の塩素臭を比較した。Ca塩の反応が「×」とは、カルシウム塩の反応が有る、すなわち所望の回収液を得なかったことを意味し、「○」とは、カルシウム塩の反応が無い、すなわち所望の回収液を得たことを意味する。
検体23および30は、塩素臭が十分に低減されたと評価できる(極微塩素臭〜微塩素臭)。検体22は、カルシウム塩の反応は起こっているものの、カルシウムイオン濃度は境界量であり、塩素臭は十分抜けていることが分かった(極微塩素臭)。検体11、12および29は、少なからず塩素臭がするという結果になった。したがって、これらの結果から、Caイオンが24ppm以下であれば、塩素臭が低減された(低塩素臭(極微塩素臭〜微塩素臭)の)液体塩素酸化物を得ることができることが実証された。
上記の結果から、カルシウム塩の反応が見られず、カルシウムイオン濃度が検出されない試験区30は、次亜塩素酸ナトリウム液と比較して明らかに塩素臭が低減されていた。
また、次亜塩素酸ナトリウム液と同等の塩素臭をもった試験区29は、pH10付近であり、本方法において、pHを低下させる行為は、塩素臭気を放出させやすくしてしまい、目的とした商品の品質から逸脱してしまうことが示された。
また、先ほど塩素臭が劇的に改善された試験区30と、カルシウムイオンは検出されたが臭気面で良好であった試験区23、また、一般的に流通している次亜塩素酸ナトリウム液、更に、弊社の高度サラシ粉を原料に用いた試験区5の検体を用いて、塩素臭測定の為、塩素のガステック検知管を用いて分析を行った。
一般的に流通している次亜塩素酸Na液の塩素ガス濃度が0.2ppmであったものに対し、試験区30は50%の塩素臭気の減少があり、試験区23はカルシウムイオンが検出されてはいたが75.0%の塩素臭気の減少があり、更に、弊社の高度サラシ粉製剤を原料に用いた場合であれば、87.5%の塩素臭気の減少を行うことができていたと言うデータが得られた。
(T.ALの測定結果)
メーカー各社において、高度サラシ粉の副成分の構成は異なるが、本実施例では、原料である高度サラシ粉が持つT.ALを測定し、使用する無機アルカリ剤を選定することで、おおよその使用量を推定し、かつ、最終的な塩素酸化物液体製剤のT.ALを範囲内に設定することができることを実証した。
(1)原料のT.AL
(2)高度サラシ粉からCa塩を除去する配合
(3)各測定値
viii区は、7日以上の静置保管を行っても、沈殿槽と上澄み液(回収液)は分離しなかったため「未実施」としている。
(4)塩素力価1%あたりの上澄み液(回収液)のT.ALの計算
高度サラシ粉のメーカーと、使用する無機アルカリ剤の組み合わせが同じであれば、塩素力価に関わらず、塩素力価1%あたりのT.ALはほぼ同じになる。
(硫酸ナトリウム使用による作業性の向上)
硫酸ナトリウム自体には、Ca塩を除去する効果は乏しいが、作業性を向上させやすいと言う効果が得られる。例えば、炭酸ナトリウム:硫酸ナトリウムの添加重量比を10:0.5〜2.0程度の範囲にすることで、沈殿物が固化することで浮遊することがなくなり、回収することができる上澄み液の量が1.0%〜2.0%向上する。
(1)炭酸ナトリウムと硫酸ナトリウムの重量比検証の配合
(2)上澄み液(回収液)の向上度
(濁度の測定結果)
また、高度サラシ粉からカルシウム塩を除去する方法において、濁度の改善目安として、分光光度計による比濁法(イオン交換水λ620nm)を用いて、測定を行った。
検体(1)高度サラシ粉「ネオクリーンCL」をイオン交換水に溶解させた液
検体(2)高度サラシ粉「ネオクリーンCL」に20%炭酸ナトリウム溶液を加え、カルシウム成分を除去した液
結果、表27のとおり、視覚的だけでは無く、機器分析においても、透明性が向上しており、カルシウムイオンを除去し、透明液体を製造出来る事が示された。
(高度サラシ粉『ネオクリーンCL』を原料に用いた製剤開発)
そこで、次に、本発明を利用し、この方法で得られた塩素酸化物含有液から、最終製品となる、塩素酸化物製剤の商品化を検討した。原料の高度サラシ粉としては、発明者である本部三慶株式会社製の高度サラシ粉『ネオクリーンCL』を原料に用いて、上記の製造方法でカルシウムイオンを除去し、得られた回収液を更に原料として用いた塩素酸化物液体の商品化について検討した。
更に、塩素酸化物は、高pH域の方が安定した保管や、流通が可能であるが、使用する段階では、低pH域の方が殺菌効果は高く、殺菌剤本来の望まれる姿である。そこで、高度サラシ粉(A)(商品名『ネオクリーンCL』)を原料に用いて、最終製品の有効塩素を標準的な6.0%に設定した上で、カルシウムイオンを除去し、カルシウム塩の定性反応を呈さない状態を実現し、また、有効塩素の維持が可能なpHの下限を確認し、透明度や塩素臭の検証試験を実施した。
(試験方法(液体原料の製造))
まず、表28の配合を用いて、最終有効塩素6%の商品化の為の液体原料を作製し、各種測定を行い、カルシウムイオンを除去し、カルシウム塩の定性反応を呈さず、かつ、原料として使用可能な有効塩素濃度を維持している事を確認し、これを回収液(1)とした。
(静置期間)
(回収液の収率)
(pHの推移)
(回収液)
(カルシウム塩の反応)
(カルシウム塩の定量)
(塩素力価の回収率)
上記の結果で得られた液体原料を、製品開発の為の原料とし、“回収液(1)”とした。
(液体製剤のpHの検討)
上記の配合で、設定したpHに調整できていることを確認した。
(pH調整後の性状)
次に、表36の配合を用いて、回収液(1)を原料に用いて、有効塩素の維持が可能なpHの下限を確認し、透明度や塩素臭の検証試験を実施した。
結果表37から、配合直後は色調が一時的に黄色傾向に変化していたが、翌日から製造後2日目には、ほぼ無色に近い、微淡黄色透明液体に戻っており、回収液のpHを7.0までに調整しても、急激な塩素力価の低減は見られず、ほぼ100%に近い回収率が得られていた。
そこで、表36の配合中のpHを7.5に調整した試験F区を商品開発用の配合とし、高度サラシ粉からカルシウムイオンを除去し、カルシウム塩の定性反応が見られず、かつ、淡黄色透明液体であり、更に、pHを7.5に設定した塩素酸化物液体製剤「ネオクリーンPAS」とした。
(塩素力価の回収率)
回収液のpHを7.0に調整しても、急激な塩素力価の低減は見られず、ほぼ、100%に近い回収率が得られていた。
(塩素臭の確認(製剤の塩素ガス濃度))
次に、この「ネオクリーンPAS」を用いて、塩素臭の低減における優位性を確認する為に試験を実施した。
まず、一般的に販売し、広範囲に使用されている次亜塩素酸Naの塩素臭をコントロールとする為に、各濃度、明暗所条件における塩素ガス濃度の測定を行い、合わせて、pHを7.5に調整した塩素酸化物液体製剤「ネオクリーンPAS」との塩素ガス濃度の比較を行った。
<試験区>
・次亜塩素酸ナトリウム 200ppm 1000ppm
・高度サラシ粉液体製剤「ネオクリーンCL」 200ppm 1000ppm
上記の希釈液を作製し密閉の上、1時間静置後の塩素ガスの測定を実施した。
保管温度 25℃
結果、表39に示すとおり、回収液(1)を更にpH調整を行い、pH7.5にまで低下させても、急激に塩素ガスが発生する事が無い事が判った。但し、コントロールとして用いた次亜塩素酸Naについては、塩素ガス濃度が変化するようであり、本来、次亜塩素酸Naは反応性が高く、不安定な化学物質である事から、次亜塩素酸Naそのものの平均的な塩素ガス濃度については、ばらつきがあるようである。
次に、回収液(1)を原料に用い、pHを7.5に調整した塩素酸化物液体製剤「ネオクリーンPAS」を用いて、有機物であるキャベツに浸漬接触させ、発生する塩素ガス濃度の比較を行った。
(塩素臭の確認(食品との接触による塩素ガス濃度))
次に、回収液(1)を原料に用い、pHを7.5に調整した塩素酸化物液体製剤「ネオクリーンPAS」を用いて、カットしたキャベツに浸漬接触を行い、塩素ガスの発生を確認した。
<試験区>
・次亜塩素酸ナトリウム 200ppm 1000ppm
・高度サラシ粉液体製剤「ネオクリーンCL」 200ppm 1000ppm
上記の各液50gを測り取り、カットキャベツ5g(液比 10:1)の条件で浸漬し、密閉した。
その後、25℃で1時間浸漬を行い、塩素ガスの測定を実施した。
表40の結果が示すとおり、同濃度の次亜塩素酸ナトリウム液と比較して、はるかに塩素臭が少ないと言うことがわかり、高度サラシ粉液体製剤「ネオクリーンPAS」は、有機物であるカットキャベツと浸漬接触させても、急激に塩素ガスを発生させる事無く、この事は、キャベツ自体に対する塩素臭の低減効果にも付与している事となり、本発明で得られた回収液の特長を損なっていない事が判明した。
(実施例2:高度サラシ粉中のカルシウムイオン濃度と非カルシウム無機アルカリ剤との関係について)
高度サラシ粉に非カルシウム無機アルカリ剤を添加し、上澄み液と沈殿物を得る際の関係式を試験データからまとめた。表41中、「カルシウム塩の反応」の欄に記載の「×(有)」とは、カルシウム塩の反応が有る、すなわち所望の回収液を得なかったことを意味し、「○(無)」とは、カルシウム塩の反応が無い、すなわち所望の回収液を得たことを意味する。
そこで、もっともカルシウムイオンの除去効果が高く、かつ、有効塩素を低下させない無機アルカリ剤として炭酸ナトリウムが好ましい事がわかり、この炭酸ナトリウムと各社の高度サラシ粉に含まれるカルシウムイオン濃度との関係式を見出す事によって、各社の高度サラシ粉に含まれるカルシウムイオン濃度を測定すれば、カルシウム塩の定性反応を示さない検体を作成する為の炭酸ナトリウムの濃度を決定する事を検討した。
そこで、各高度サラシ粉に炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを添加した配合案として表41を作成し、カルシウム塩の定性反応を呈さない検体を元にグラフを作成した。
また、表41で作成した各検体については、カルシウム塩の定性反応試験を行い、反応を呈する物、呈さない物とに区分けを行い、反応を呈さないとされた実験の結果について、高度サラシ粉の添加量を(X)、非カルシウム無機アルカリ剤を(Y)としてプロットして表42のグラフを作成し、表42に示すように各高度サラシ粉における添加量の関係式を得た。
次に、各社の高度サラシ粉中のカルシウム濃度を測定し、表43とした。
更に、表41中の「カルシウム塩の反応」において「○(無)」と記載された実験の結果について、カルシウムイオン濃度を(X)とし、非カルシウム無機アルカリ剤の添加量を(Y)としてプロットしてグラフを作成し、下記の関係式を得た(表44)。ここで、カルシウムイオン濃度(X)は、本部三慶(株)の場合、表41中の高度サラシ粉(A)の量に表42中のカルシウムイオン濃度(7.29%、すなわち0.0729)を掛けた値であり、南海化学(株)の場合、表41中の高度サラシ粉(B)の量に表42中のカルシウムイオン濃度(21.84%、すなわち0.2184)を掛けた値である。また、非カルシウム無機アルカリ剤の添加量(Y)は、水酸化Naの場合、表41中の40%水酸化Na液の量に40%、すなわち0.4を掛けた値であり、炭酸Naの場合、表41中の20%炭酸Na液の量に20%、すなわち0.2を掛けた値である。
図2より、カルシウムイオンが検出されない検体を得る為の非カルシウム無機アルカリ剤の添加量は、高度サラシ粉中のカルシウムイオン量に依存しており、特に、炭酸ナトリウムを使用した場合には、高度サラシ粉のメーカー種別に関わらず、高度サラシ粉中のカルシウムイオン濃度と炭酸ナトリウムの関係式は、ほぼ一直線上であり、すなわちカルシウムイオン濃度で無機アルカリ剤の添加量が直線的に決まっているということであり、したがって、事前に、高度サラシ粉中のカルシウムイオン濃度がわかれば、非カルシウム無機アルカリ剤の添加量は求められるということが判った。
(実施例3:高度サラシ粉中のカルシウムイオン濃度と非カルシウム無機アルカリ剤との関係について)
カルシウムイオンが検出されない最終製品である高度サラシ粉液体製剤を得る為の関係式を試験データからまとめた。
上記表45において、有効塩素濃度の回収率の平均値は、表14に示される回収率をそれぞれ平均した値である。また、カルシウム成分除去工程時の消失分を考慮した仕込係数1は、回収液の有効塩素が100%になるように決定した。例えば、6%塩素液を作製する際に、6%の塩素液が所望の量(g)得られるような値である。
次に、高度サラシ粉と非カルシウム無機アルカリ剤の関係式(1)と上記表45の仕込係数1から、目的とする有効塩素濃度を含む回収液を得る為の高度サラシ粉の濃度を求める計算式と、その際に必要とされる非カルシウム無機アルカリ剤の濃度を求める計算式を2式にまとめた(表46)。
更に、最終製品である高度サラシ粉液体製品としての有効塩素濃度を所望する為に、表47に示されるpH調整剤の添加や、その際の有効塩素の回収率から、最終的に必要とされる高度サラシ粉の濃度と、その際に必要とされる非カルシウム無機アルカリ剤の濃度を式にまとめた(表48)。表47の実験においては、本部三慶(株)高度サラシ粉と、炭酸水素Naを用いた。なお、pH調整剤の添加時の希釈を考慮した仕込係数2は、以下のとおり決定した:試験では、回収液(サラシ粉からCaを除いた液)を100%添加に固定して、pH調整剤を添加する事で、100%+αになるが、この際、有効塩素が例えば6%を下回り、希望する最終製品の有効塩素6%を維持できないこと、また、設定pHによって、pH調整剤の添加量は増加すること、を考慮して値を決定し、仕込係数2とした。
また、pH調整剤を添加した工程での有効塩素の回収率の平均値は100.21%であったので、消失しないものとして1とした上で、最終的な添加式を以下の通り求めた。ここで、有効塩素の回収率の平均値とは、表38に示される塩素力価の回収率を平均した計算値である。平均値が100.21%ということから、有効塩素が実質的に100%回収されていることが当業者には理解される。
実施例3の関係式より、回収液または最終製品である塩素化物液体における有効塩素濃度(A)は、高度サラシ粉の有効塩素濃度(B)および高度サラシ粉をイオン交換水に溶解させる際の添加量(C)から導き出せることが分かった。また、非カルシウム無機アルカリ剤溶液の添加量(D)は、高度サラシ粉中のカルシウムイオン濃度および高度サラシ粉をイオン交換水に溶解させる際の添加量(C)から導き出せることが分かった。
実施例2および3の結果を鑑みると、本発明は化学的な根拠から、実際のデータを得て、更に商業化を考えた最終製品である高度サラシ粉液体製品を得るものであり、再現性が高く、関係式どおりの配合と、これらの製造方法で目的を達成させることができる。
そこで、本発明の目的は各社の様々な規格も持った高度サラシ粉であっても、高度サラシ粉中のカルシウムイオン濃度を測定する事で、カルシウム塩の定性反応を示さない検体を作成する為に必要とする無機アルカリ剤を求め、回収液を得て、かつ塩素臭の低い塩素酸化物含有液を製造する事であり、本製法を確立する為の検証試験を実施する為に、まずは、カルシウムイオン濃度に対する無機アルカリ剤溶液(20%炭酸水素Na液と40%水酸化Na液)の関係式を求める事にし、これまでの試験結果から、高度サラシ粉(本部三慶製と南海化学製)中からカルシウムイオンを除去する為に必要な無機アルカリ剤溶液の添加量をプロットし、図3に表される関係式を求めた。
図3から、高度サラシ粉中のカルシウムイオン濃度(%)<X>と、20%炭酸水素Na液の添加量(g)<Y1>の関係式(1)は、Y1=14.042X+0.0185となった。また、同じく、40%水酸化Na液の添加量(g)の関係式(2)は、Y2=12.636X+2.8916となった。
次に、図3の検証試験として、高度サラシ粉(本部三慶製と南海化学製)と、カルシウム塩の比較として水酸化カルシウムを用意し、それぞれのカルシウムイオン濃度を測定し、その結果から、カルシウムイオン濃度を1%に調整した検体を作成した。その上で、図3の関係式Y1とY2から求めた無機アルカリ剤を添加し、静置し、上澄み液を回収し、カルシウム塩の定性反応を示さない検体が得られる事の確認と、その時のカルシウムイオン濃度の測定を行う事にした。
また、表49は、関係式からカルシウムイオン濃度1%を計算上、完全にカルシウム塩の定性反応を示さない検体を製造出来るとした配合表であったが、表50は関係式からカルシウムイオン濃度1%のうち、約0.5%は残存し、カルシウム塩の定性反応を示す検体が製造されるように設定した配合であり、関係式の正確性を確認する事とした。
更に、表51は、関係式からカルシウムイオン濃度1.2%を計算上、約0.2%過剰にカルシウム塩の定性反応を呈さない検体を製造出来るとした配合表であり、この配合表においても、カルシウム塩の定性反応を呈さない検体が製造出来るものとした。
上記の結果について、表52と表53に示した。この結果から、事前に高度サラシ粉中のカルシウムイオン濃度を測定し、関係式に基づいて無機アルカリ剤を添加する事によって、カルシウム塩の反応を呈さない検体を作成出来ると言う事が確認する事が出来た。また、高度サラシ粉中のカルシウム塩と、水酸化カルシウムの除去効果を比較した所、明らかに水酸化カルシウムの方が除去しやすく、高度サラシ粉中のカルシウムイオンの除去に必要となる無機アルカリ剤の添加量とは異なる事が示唆され、本発明で示されている関係式は、高度サラシ粉中のカルシウムイオンの除去に基づいたものである事が判った。
よって、図3で示された関係式を用いれば、水酸化カルシウムは勿論の事、高度サラシ粉中に含有しているカルシウムイオン濃度についても除去出来る事がデータとして示された。
そこで、これまでの結果から、各社の高度サラシ粉であっても、高度サラシ粉中のカルシウムイオン濃度を測定する事で、必要とする無機アルカリ剤を求め、回収液を得る製法を確立する為の確認試験を行う事とし、表54の手順で実施した。
1 各社の高度サラシ粉の有効塩素濃度を測定(A)
2 各社の高度サラシ粉中のカルシウムイオン濃度を測定(B)
3 最終製品に設定したい有効塩素濃度を決定(今回は6%、12%)しておく(C)
4 図3の結果からイオン交換水に溶解させる高度サラシ粉の濃度を求める関係式を20%炭酸水素Na用(D1)と40%水酸化Na用(D2)とし以下とする。
D1=100.0815C/(A−0.14042×B×C)・・・関係式(3)
D2=102.8916C/(A−0.12636×B×C)・・・関係式(4)
5 1〜3の内容と4の関係式(3)(4)からイオン交換水に溶解する高度サラシ粉の濃度(%)を算出し(D)とする。
6 イオン交換水に高度サラシ粉を添加した液中のカルシウムイオン濃度を求め(E)とする。
E=B×D/100・・・関係式(5)
7 高度サラシ粉を溶解した液100gに添加する無機アルカリ剤液の添加量を求める関係式を20%炭酸水素Na用(F1)と40%水酸化Na用(F2)とし以下とする。
F1=14.042×E+0.0185・・・関係式(6)
F2=12.636×E+2.8916・・・関係式(7)
関係式から図55に配合を決定し、その結果について図56に示した。このように各社の高度サラシ粉であっても、高度サラシ粉中のカルシウムイオン濃度を測定し、関係式を用いる事によって、カルシウム塩の反応を呈さない回収液を得る事が出来、製造方法として確立された。また、カルシウム塩の反応を呈さない時のカルシウムイオン濃度については、これまでの試験結果から、およそ20ppm以下であろうと推察される。
さらに、図55の配合を用いて製造した検体のうち、有効塩素濃度を12%に設定した検体については、塩素ガス濃度の測定を行った。
図57の結果から、高度サラシ粉をイオン交換水に溶解した時点での塩素ガス濃度から見て、無機アルカリ剤を添加し、濾過後回収液を得た時点での塩素ガス濃度は約83%〜93%低減出来ている事が確認出来、更に、同結果中に記載した参考データから、次亜塩素酸Naに炭酸Na液を添加しても、塩素ガスが低減するばかりか、逆に上昇している事から見ても、単に無機アルカリ剤に塩素ガスを低減する効果があるのでは無く、高度サラシ粉からカルシウム塩を除去する結果が、塩素ガス濃度の低減に繋がっている事が判明し、更に、表58では、各溶液のpHを測定しているが、pHにも塩素ガス濃度の低減効果には依存していない事が判明している。
以上のように、本発明を用いる事で、各社の高度サラシ粉を原料に用いても原料中のカルシウムイオン濃度(%)を測定する事によって、各種無機アルカリ剤の添加量が決定し、その結果として、得られた回収液からはカルシウムイオン濃度がおよそ20ppm以下となり、目標として設定したカルシウム塩の定性反応を呈さない状態を実現する事が出来る製法が確立する事が出来た。そこで、原料である高度サラシ粉に無機アルカリ剤を加えカルシウム塩として沈殿させ、静置、濾過し、回収液を得るまでの製造フローを表59−1および59−2に示す。
本発明によって得られた塩素酸化物含有液である回収液は、カルシウム塩の定性反応を呈さないばかりか、カルシウム塩を除去する行為によって、塩素臭が低減する事も判明した。このように、高度サラシ粉からカルシウムイオンを除去する事は、利便性を向上させるだけでは無く、塩素臭が低減する事によって、対象食品への塩素臭付着の低減効果や、周囲の環境や、使用者への健康配慮など、末端の消費者に取っても有意性がある事が判った。
(試験の解説)
単に高度サラシ粉を溶液化し、沈殿生成物と上澄み液の分離を行っても、清澄な上澄み液を得ることはできず、無論、カルシウム塩の定性反応が見られてしまうということが確認され、高度サラシ粉を溶液化した液中からカルシウムイオンを除去する為には、何がしかの処理が必要であることが示された。
そこで、無機アルカリ剤を添加し、反応させ、カルシウム塩を沈殿させる方法について確認してみた。
その結果、高度サラシ粉と無機アルカリ剤の組合せにより、沈殿生成物と上澄み液の分離が完了するまでの期間や、沈殿生成物の量が異なることが確認されたが、分離が完了するまでの期間とカルシウム成分の除去効果との間に関係性は見られず、分離が完了するまでの期間が長ければ、カルシウム成分の除去効果が高い訳ではないと言うことが示された。
また、同様に、この沈殿生成物の量とカルシウム成分の除去効果との間にも関係性は見られず、沈殿生成物の量が多ければ、カルシウム成分の除去効果が高い訳でもないと言うことが示された。
次に、カルシウム塩の定性反応が見られない検体を作成するためには、高度サラシ粉と各種の無機アルカリ剤の組合せにより、必要となる無機アルカリ剤の添加量が決まっていることが判り、本試験に使用した2品の高度サラシ粉を比較すると、南海化学(株)製の高度サラシ粉よりも、三慶グループ自社製の高度サラシ粉(ネオクリーンCL)の方が、カルシウムイオン濃度が低く、無機アルカリ剤の添加量を抑えられることが確認された事から、使用する高度サラシ粉のメーカーのカルシウムイオン濃度に合わせて、無機アルカリ剤の添加量を計算し、添加する方法を明確にする必要があると言うことが示された。
また、無機アルカリ剤の種類で比較すると、カルシウム塩の定性反応を示さない検体を作成するためには、炭酸ナトリウムの場合、代表的に、20.0%に溶液化した液を10.0g〜30.0g添加する必要があり、水酸化ナトリウムの場合には、代表的に、40%に溶液化した液を20.0g〜50.0gと多量に添加する必要があり、モル濃度比で比較しても、実現可能であっても実用的では無い事が示された。
次に、高度サラシ粉溶液に、水酸化ナトリウムを添加することで得られた液中には、カルシウム塩の定性反応では確認できない、代表的に、3.61ppm〜11.78ppmと言う微量のカルシウム成分が残存していると言うことが示され、炭酸ナトリウムの場合には、カルシウムイオンも検出されていないことから、炭酸ナトリウムの方がカルシウム成分の除去効果が高いことが確認された。
また、カルシウム塩の定性反応が見られず、カルシウムイオン濃度が0.00%となる液体の回収液量比を比較すると、水酸化ナトリウムを添加した場合には、37.02%〜62.80%であり、炭酸ナトリウムを添加した場合には、代表的に、66.22%〜71.81%であり、カルシウム成分を除去した高度サラシ粉の液体を、効率よく回収すると言う点でも炭酸ナトリウムの方が好ましいと言うことが確認された。
尚、硫酸ナトリウムの場合、20%に溶液化した液を30.0g添加しても、カルシウム塩の定性反応が見られず、カルシウムイオン濃度が0.00%となる液体を得ることができず、硫酸ナトリウムはカルシウム成分を除去すると言う点では、炭酸ナトリウムや、水酸化ナトリウムよりも効果が乏しいと言うことが判ったが、沈殿生成物は結晶状であり、固化し易いことが示され、沈殿生成物と、上澄み液を分離した後に、その液体を回収し易くなると言う作業性を向上させる効果が見られた。
そこで、カルシウム成分の除去効果が高い炭酸ナトリウムと、上澄み液を分離し易く作業性の向上効果がみられた硫酸ナトリウムを組み合わせてみた所、炭酸ナトリウムのみを添加した場合と比較して、回収することができる上澄み液の割合は約1.0%〜2.0%程度向上させることができると言うことが示された。
但し、硫酸ナトリウムを添加するタイミングや、その添加量では回収することができる上澄み液の割合に大きな変化は見られない為、添加する硫酸ナトリウムは少量で十分であることが判り、あくまでも、作業性向上レベルに留まる行為であることが示された。
更に、リン酸水素二ナトリウムでは、カルシウム塩の除去効果は炭酸ナトリウムに近い数値であったが、カルシウムイオンを除去するまでの添加量を加えると、液性がゲル化したり、pHが低下し、塩素臭の発生や、塩素力価の消失などが起こり、単品での使用は難しいと言うことが示されたが、少なくとも、一価の水酸化ナトリウムよりは、二価の無機アルカリ剤の方がカルシウムの除去効果が高く、かつ、溶液のpHを6以下に低下させない無機アルカリ剤があれば、選択候補に挙げることができると言うことが示された。
また、完成した高度サラシ粉の透明液体を原料に用いて、塩素の効果を発揮させる為に、中性域に緩衝させた液体製剤を製造してみたところ、同濃度の次亜塩素酸ナトリウム液と比較して、はるかに塩素臭が少ないと言うことも示され、一般的に流通している次亜塩素酸ナトリウム液で感じられる塩素臭気よりも、微塩素臭に仕上がっており、更に、有機物と接触させても、急激な塩素ガスの発生が無く、大幅な改善ができていることが確認された。
このことから、本発明により生み出された塩素酸化物液体品は、市場にとってもメリットが大きく、かつ、食品への塩素臭の付着と言う弊害が無く、使用者への負担も軽減できると言う点から、安全や健康面にも配慮した商品であると考える。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。