以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図面において、同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面において、各部材の大きさや比率は、実施形態の理解を容易にするために誇張し、実際の大きさや比率とは異なる場合がある。
図において、X、Y、およびZによって表す矢印は、方向を示している。Xによって表す矢印は、表示フィルム112等における第1の励起光EL11等の伝搬方向を示している。Yによって表す矢印は、Xによって表す方向と直交し、表示フィルム112等における第2の励起光EL12等の伝搬方向を示している。Zによって表す矢印は、表示フィルム112等の厚み方向を示している。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の蛍光発光ディスプレイ100の使用方法の一例を模式的に示す図である。
図1を参照して、蛍光発光ディスプレイ100は、一例として、車両10のフロントガラス11の室内側に貼り付けて使用する。蛍光発光ディスプレイ100は、例えば、車両10の速度等に関する情報を文字によって表示することができる(図1中のG1)。蛍光発光ディスプレイ100は、車両10の現在地から目的地までの道順に関する情報を地図によって表示することができる(図1中のG2)。蛍光発光ディスプレイ100は、車両10の進行方向に存在する歩行者等の情報を人型の図形で表示することができる(図1中のG3)。
図2は、図1の蛍光発光ディスプレイ100の構成を模式的に示す斜視図である。図3Aは、図2の蛍光発光ディスプレイ100の要部を示す斜視図である。図3Bは、図3Aの蛍光発光ディスプレイ100を示す側面図である。図3では、蛍光体微粒子111の図示を省略している。
図2および図3を参照して、第1実施形態に係る蛍光発光ディスプレイ100(表示装置に相当する)は、概説すれば、表示フィルム112(表示媒体に相当する)と、第1の光源121と、第1のプリズム124(第1の導入部材に相当する)と、第2の光源131と、第2のプリズム134(第2の導入部材に相当する)と、制御ユニット140(制御部材に相当する)と、を有する。
具体的には、表示フィルム112は、第1の励起光EL11(赤外光である波長1550nmの光)と第2の励起光EL12(赤外光である波長850nmの光)とを含む複数の励起光によって励起されると複数の励起光よりも波長が短い第1の蛍光RL1(可視光である緑色)を発する蛍光体微粒子111(第1の発光体に相当する)を分散させて保持し、第1の蛍光RL1を表示させる表示面(第1表示面112a)を備えた。第1の光源121は、第1の励起光EL11を発する。第1のプリズム124は、第1の励起光EL11を表示フィルム112に導入する。第2の光源131は、第2の励起光EL12を発する。第2のプリズム134は、第1の励起光EL11と交差させるように第2の励起光EL12を表示フィルム112に導入する。制御ユニット140は、表示フィルム112の特定の位置において第1の励起光EL11と第2の励起光EL12とを交差させるように第1の光源121および第2の光源131を制御する。ここで、少なくとも、第1のプリズム124は、第1表示面112aに当接し第1の励起光EL11を第1表示面112aから表示フィルム112に導入し第1表示面112aに沿って伝搬させる。
蛍光発光ディスプレイ100は、図2に示すように、表示フィルム112を車両10のフロントガラス11に貼り付けた状態において、表示フィルム112の端面(第1端面112cおよび第2端面112d)およびフロントガラス11の端面(第1端面11cおよび第2端面11d)に対して、接合部材20をモールドしている。接合部材20は、フロントガラス11の端面と車両の筐体(不図示)とを接合する接着剤である。
フロントガラス11と車両の筐体との間に接合部材20(構造物に相当する)を充填して硬化させることによって互いに接合するような構成の場合、フロントガラス11に表示フィルム112を貼り付けて、その表示フィルム112の端面(例えば第1端面112c)から励起光を導入するようなことは、接合部材20が干渉することから困難である。
以下、第1実施形態に係る蛍光発光ディスプレイ100について詳述する。
蛍光発光ディスプレイ100は、図2に示すように、可視光である緑色の第1の蛍光RL1によって情報を表示する表示ユニット110、表示ユニット110に赤外光の第1の励起光EL11を供給する第1光源ユニット120、表示ユニット110に赤外光の第2の励起光EL12を供給する第2光源ユニット130、および第1光源ユニット120と第2光源ユニット130を制御する制御ユニット140から構成している。
なお、図2では、表示フィルム112について、X方向およびY方向に対してZ方向を誇張している。すなわち、表示フィルム112は、本来シート状に形作られているが、フロントガラス11に対して分厚く誇張して図示している。また、図2では、表示フィルム112について、一例として正方形状として図示しているが、図1に示すように車両10のフロントガラス11の全面に貼り付けて用いる場合には、横長の長方形状として形作ってもよい。
図2を参照して、表示ユニット110は、蛍光体微粒子111を均一かつ密に分散させて保持する表示フィルム112を含んでいる。
表1に、蛍光体微粒子111の光学特性を示す。
蛍光体微粒子111は、それぞれ赤外光である第1の励起光EL11および第2の励起光EL12によって励起されると、可視光である緑色の第1の蛍光RL1を発する微粒子である。蛍光体微粒子111は、第1の励起光EL11または第2の励起光EL12のみでは蛍光を発しない。
蛍光体微粒子111は、例えば、母材のハロゲン化物のフッ化ナトリウムイットリウム(NaYF4)に対して発光材のエルビウム(Er)をドープして構成している。蛍光体微粒子111は、第1の励起光EL11と第2の励起光EL12によって励起されると、Er3+イオンのエネルギー準位からの遷移に伴い、緑色の波長の光に相当する第1の蛍光RL1を発する。
蛍光体微粒子111の大きさは、表示フィルム112を伝搬する第1の励起光EL11および第2の励起光EL12のスポット径よりも十分に小さい。蛍光体微粒子111から発せられる第1の蛍光RL1の波長は、母材にドープする発光材の種類に依存する。
表示フィルム112は、互いに対向した第1表示面112aと第2表示面112bを備えている。第1表示面112aまたは第2表示面112bは、第1の蛍光RL1によって、様々な情報(図1中のG1、G2およびG3)を表示する。表示フィルム112は、第1表示面112aと比較して第1端面112cが十分に小さく、フィルム状に形成している。
表示フィルム112は、第1のプリズム124を介して、第1の励起光EL11を第1表示面112aから内部に入射させる。表示フィルム112は、第2のプリズム134を介して、第2の励起光EL12を第1表示面112aから内部に入射させる。第1の励起光EL11および第2の励起光EL12は、表示フィルム112の第1表示面112aと第2表示面112bとの間で交互に反射しつつ、第1表示面112aに沿って伝搬する。
表示フィルム112は、可視光(紫色〜赤色)の全域において透明な材質から構成している。したがって、表示フィルム112を車両10のフロントガラス11に貼り付けた状態において、車両10の乗員が表示フィルム112越しに車両10の前方を視認できる。
表示フィルム112中の蛍光体微粒子111から発光される第1の蛍光RL1は、可視光である緑色である。ここで、人の視感度のピークは、明所では約555nmであって、暗所では約507nmである。第1の蛍光RL1は、500nm〜560nmの波長に相当する緑色の光であることから、乗員にとって非常に視認し易い。一方、表示フィルム112を伝搬する第1の励起光EL11および第2の励起光EL12は、赤外光であることから、乗員が視認することがない。
図2及び図3を参照して、第1光源ユニット120は、第1の励起光EL11を発する第1の光源121、第1の励起光EL11を第1のコリメータレンズ123に向かって伝搬する複数の第1の光ファイバ122、対応する各々の第1の光ファイバ122から入射した第1の励起光EL11をコリメートしつつ第1のプリズム124に伝搬する複数の第1のコリメータレンズ123を含んでいる。また、第1光源ユニット120は、第1表示面112aに当接し第1の励起光EL11を表示フィルム112に導入する第1のプリズム124、および第1の光源121と制御ユニット140を中継する電線125を含んでいる。
第1の光源121は、例えば、第1の励起光EL11の波長に相当する光を発するレーザダイオードと、第1の励起光EL11を集光する集光レンズをユニット化して構成している。具体的には、第1の光源121は、例えば、発振波長が1550nmのレーザダイオードをマウントし、窓板が集光レンズからなるCAN(窓を備えた金属筒)パッケージの赤外光源から構成している。
第1の光源121のレーザダイオードには、例えば、光通信用の赤外線レーザダイオードを用いている。光通信用の赤外線レーザは、一般的に、光の発振に対する信頼性が高く、堅牢であって、かつ廉価である。CANパッケージの窓板である集光レンズは、光源から出射した第1の励起光EL11を集光して、第1の光ファイバ122に入射させるものである。
第1の光ファイバ122は、第1の励起光EL11を第1のコリメータレンズ123に向かって伝搬するものである。第1の光ファイバ122には、例えば波長が1550nmに対応した光通信用のシングルモードファイバ(Single Mode optical Fiber:SMF)を用いている。光通信用の光ファイバは、一般的に、光の伝搬に対する信頼性が高く、堅牢であって、かつ廉価である。第1の光ファイバ122には、入射する光の最大受光角を表す開口数(Numerical Aperture:NA)が、例えば0.1以下のものを用いている。
第1のコリメータレンズ123は、対応する第1の光ファイバ122から入射した第1の励起光EL11をコリメートしつつ第1のプリズム124に伝搬するものである。複数の第1のコリメータレンズ123は、第1のプリズム124の入射面124aに沿って一列に配列している。
第1のコリメータレンズ123は、非球面レンズや球面レンズから構成する。第1のコリメータレンズ123は、第1の光ファイバ122から出射される第1の励起光EL11の発散角と波長、および第1のプリズム124に伝搬させる第1の励起光EL11のスポット径等によって、その仕様を決定する。第1のコリメータレンズ123の仕様は、その材質や入射面および出射面の曲率、かつ、第1のコリメータレンズ123の入射面と第1の光ファイバ122との作動距離に関するものである。
第1のコリメータレンズ123は、複数のコリメータレンズを一体に形成した1個のアレイレンズによって構成してもよい。1個のアレイレンズを用いれば、複数のコリメータレンズ同士を精度良く配置する必要もなく、かつ、各々のコリメータレンズを密集させるようにして形成することが容易である。
第1のコリメータレンズ123は、デッドインデックス(Graded index:GI)によって構成してもよい。GIレンズは、光の伝搬方向に沿って円柱形状であって、径方向に沿って屈折率が連続的に変化したレンズである。GIレンズは、入射した発散光をコリメートしつつ出射する。GIレンズは、第1の光ファイバ122の出射部分に接合することによって、第1の光ファイバ122と一体的に構成することができる。
第1のプリズム124は、図2および図3に示すように、第1の励起光EL11を第1表示面112aから表示フィルム112に導入し、その第1の励起光EL11を第1表示面112aに沿ってX方向に伝搬させるものである。第1のプリズム124は、図3Bに示すように側面が三角形からなり、図2および図3Aに示すようにY方向に沿って延在する長方体によって形成している。
第1のプリズム124は、第1表示面112aと交差するようにX方向に傾斜した平面状の入射面124aと、表示フィルム112の第1表示面112aに密着する平面状の出射面124bを備えている。第1のプリズム124は、表示フィルム112と同一の材料から構成している。第1のプリズム124は、表示フィルム112の第1端面112cの上縁に沿うように、第1表示面112aに接合している。第1のプリズム124は、図3Bに示すように、表示フィルム112の内部を反射して伝搬する第1の励起光EL11の光路K1から離間した部分B1の第1表示面112aに当接している。
第1のプリズム124は、表示フィルム112と同一の材料から構成している。第1のプリズム124は、表示フィルム112と異なる材料から構成する場合であっても、少なくとも第1の励起光EL11および第2の励起光EL12の波長において、表示フィルム112と同様の屈折率を備えた材料から構成する。
第1のプリズム124は、図3Bに示すように、X方向に沿って伝搬する第1の励起光EL11を入射面124aから入射させて、その第1の励起光EL11をZ方向の下方およびX方向に向かって伝搬させつつ、出射面124bから表示フィルム112の第1表示面112aに対して導入(斜入射)する。第1の励起光EL11は、表示フィルム112の第1表示面112aと第2表示面112bとの間で交互に反射しつつ、第1表示面112aに沿ってX方向に伝搬する。
電線125は、第1の光源121に対して制御ユニット140を介して電力を供給するものである。電線125は、第1の光源121の駆動電流および駆動電圧の仕様を満たすものを選択して用いている。
図2を参照して、第2光源ユニット130は、第2の励起光EL12の波長に相当する光を発する第2の光源131、第2の励起光EL12を第1の励起光EL11と交差するように第2のコリメータレンズ133に向かって伝搬する複数の第2の光ファイバ132、対応する各々の第2の光ファイバ132から入射した第2の励起光EL12をコリメートしつつ第2のプリズム134に伝搬する複数の第2のコリメータレンズ133を含んでいる。また、第2光源ユニット130は、第1表示面112aに当接し第2の励起光EL12を表示フィルム112に導入する第2のプリズム134、および第2の光源131と制御ユニット140を中継する電線135を含んでいる。
第2の光源131は、第2の励起光EL12に相当する発振波長が850nmの光通信用の赤外線レーザダイオードを用いていることを除いて、第1の光源121と同様の構成からなる。
第2の光ファイバ132は、第2の励起光EL12に相当する850nmの波長の光に対応した光通信用のSMFを用いていることを除いて、第1の光ファイバ122と同様の構成からなる。
第2のコリメータレンズ133は、第2の励起光EL12に相当する850nmの波長の光に対応していることを除いて、第1のコリメータレンズ123と同様の構成からなる。複数の第2のコリメータレンズ133は、第2のプリズム134の入射面134aに沿って一列に配列している。
第2のプリズム134は、図2に示すように、第1の励起光EL11と交差させるように、第2の励起光EL12を第1表示面112aから表示フィルム112に導入し、その第2の励起光EL12を第1表示面112aに沿ってY方向に伝搬させるものである。第2のプリズム134は、入射面134aの角度が第2の励起光EL12に相当する850nmの波長の光に対応していることを除いて、第1のプリズム124と同様の構成からなる。
第2のプリズム134は、表示フィルム112の第2端面112dの上縁に沿うように、第1表示面112aに接合している。第2のプリズム134は、第1のプリズム124と同様に、第2の励起光EL12を第1表示面112aに対してY方向に傾斜した入射面134aから入射させて、その第2の励起光EL12を出射面134bから表示フィルム112の第1表示面112aに導入する。第2のプリズム134は、表示フィルム112と同一の材料から構成している。
電線135は、第2の光源131に対して制御ユニット140を介して電力を供給するものである。電線135は、電線125と同様の構成からなる。
図2を参照して、制御ユニット140は、第1の光源121および第2の光源131を制御する。
制御ユニット140は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)を含んでいる。CPUは、蛍光発光ディスプレイ100に関する制御プログラムを実行する。ROMは、プログラムを格納している。プログラムは、例えば外部の機器から受信した表示に関する情報に基づき、第1の光源121および第2の光源131の発光のタイミングを制御するものである。外部の機器は、例えば、車両10を制御する制御機器、車両10のカーナビゲーションシステムに備えられた無線機器、および車両10に搭載され歩行者等を認識するカメラ機器である。RAMは、CPUによって実行される演算の結果を一時的に記憶する。
図4は、図1の蛍光発光ディスプレイ100の表示方法を模式的に示す正面図である。
図4を参照して、蛍光発光ディスプレイ100は、表示フィルム112の特定の位置において、第1のコリメータレンズ123によって伝搬された第1の励起光EL11と、第2のコリメータレンズ133によって伝搬された第2の励起光EL12を交差させる。第1の励起光EL11と第2の励起光EL12が交差した部分に存在する蛍光体微粒子111は、第1の蛍光RL1を発して、所定の情報を表示する。蛍光体微粒子111は、第1の励起光EL11または第2の励起光EL12のみの照射では発光することがなく、第1の励起光EL11および第2の励起光EL12の両方の照射によって発光する。
図4では、一例として、表示フィルム112の1つの画素を第1の蛍光RL1によって表示している。実際には、制御ユニット140は、1列に並んだ第1のコリメータレンズ123と、第1のコリメータレンズ123と交差するようにして1列に並んだ第2のコリメータレンズ133を介して、様々な情報(図1中のG1、G2およびG3)を表示する。すなわち、制御ユニット140は、表示フィルム112において格子状に存在する表示画素のうち、所定の表示画素を同時に発光させることによって、文字や図形等からなる情報を表示する。
以上説明した第1実施形態の作用効果を説明する。
蛍光発光ディスプレイ100は、第1のプリズム124が、第1表示面112aに当接し第1の励起光EL11を表示フィルム112の第1表示面112aから表示フィルム112に導入し第1表示面112aに沿って伝搬させる。さらに、蛍光発光ディスプレイ100は、第2のプリズム134が、第1表示面112aに当接し第2の励起光EL12を表示フィルム112の第1表示面112aから表示フィルム112に導入し第1表示面112aに沿って伝搬させる。
蛍光発光ディスプレイ100の制御方法では、第1の励起光EL11を第1表示面112aに当接した第1のプリズム124を介して第1表示面112aから表示フィルム112に導入し第1表示面112aに沿って伝搬させて情報を表示するように制御する。さらに、蛍光発光ディスプレイ100の制御方法では、第2の励起光EL12を第1表示面112aに当接した第2のプリズム134を介して第1表示面112aから表示フィルム112に導入し第1表示面112aに沿って伝搬させて情報を表示するように制御する。
かかる蛍光発光ディスプレイ100および蛍光発光ディスプレイ100の制御方法によれば、プリズム(第1のプリズム124および第2のプリズム134)を介して、励起光(第1の励起光EL11および第2の励起光EL12)を第1表示面112aから表示フィルム112に導入することによって、表示フィルム112の端面(第1端面112cおよび第2端面112d)に隣接して接合部材20を設けることができる。
ここで、これまでの蛍光発光デバイスは、励起光を表示フィルムに対して直接的に入射させて、その励起光を表示フィルム内に伝搬させていた。一方、第1実施形態の蛍光発光ディスプレイ100は、励起光をプリズム(第1のプリズム124および第2のプリズム134)を介して第1表示面112aから表示フィルム112に導入し、その励起光を第1表示面112aに沿わせるように表示フィルム112の内部を伝搬させることができる。具体的には、蛍光発光ディスプレイ100は、第1表示面112aに当接したプリズムを備えていることによって、励起光が第1表示面112aに沿って表示フィルム112の内部を十分な距離にわたって伝搬できるように、励起光の光軸を第1表示面112aに対して十分に傾斜させることができる。すなわち、励起光は、プリズムが無ければ表示フィルム112の界面(第1表示面112a)において全反射してしまい表示フィルム112の内部に伝搬させることができないような入射角度であっても、第1表示面112aに当接したプリズムを介することによって、第1表示面112aを透過して表示フィルム112の内部を伝搬することができる。
特に、蛍光発光ディスプレイ100は、励起光をプリズムを介して第1表示面112aから表示フィルム112の内部に導入し、その励起光を第1表示面112aと第2表示面112bとの間で交互に反射させつつ第1表示面112aに沿わせるように表示フィルム112の内部を伝搬させることができる。このような構成であれば、励起光を表示フィルム112の一端から他端まで十分に伝搬させることができる。本来、表示フィルム112の第1表示面112aと第2表示面112bとの間で交互に反射しつつ伝搬するような励起光は、表示フィルム112の第1表示面112aから内部に導入しようとしても界面(第1表示面112a)において全反射してしまい表示フィルム112の内部に伝搬させることができない。ところが、蛍光発光ディスプレイ100は、第1表示面112aに当接したプリズムを介することによって、励起光を第1表示面112aから透過させて表示フィルム112の内部に導入しつつ、その励起光を第1表示面112aと第2表示面112bとの間で交互に反射させつつ第1表示面112aに沿うように伝搬させることができる。
また、蛍光発光ディスプレイ100は、励起光を平坦な第1表示面112aから表示フィルム112の内部に導入する。仮に、表示フィルム112の厚みが薄く(例えば0.1mm以下)、端面(第1端面112cおよび第2端面112d)を平坦に形成し難いような場合であっても、その端面の状態に全く影響を受けることなく、励起光を表示フィルム112の内部に導入することができる。すなわち、蛍光発光ディスプレイ100は、励起光を平坦な第1表示面112aから表示フィルム112の内部に導入することから、第1表示面112aにおける乱反射等を防止して、励起光の入射ロスを十分に抑制することができる。したがって、蛍光発光ディスプレイ100は、表示フィルム112に情報を十分に表示することができる。
また、蛍光発光ディスプレイ100は、プリズムの入射面を、Z方向に沿って十分に大きく形成することによって、励起光にZ方向に沿った位置ずれが発生しても、その励起光を入射面からプリズムの内部に伝搬させることができる。したがって、蛍光発光ディスプレイ100は、励起光のZ方向に沿った位置ずれの影響を抑制し、表示フィルム112に情報を十分に表示することができる。
また、蛍光発光ディスプレイ100は、表示フィルム112の端面(第1端面112cおよび第2端面112d)に接合部材20を設ける場合、その接合部材20の変形(高温時に膨張し低温時に収縮)等に影響を受けることなく、励起光を表示フィルム112に導入して伝搬させることができる。したがって、蛍光発光ディスプレイ100は、接合部材20の形状の変化に寄らず、表示フィルム112に情報を十分に表示することができる。
また、蛍光発光ディスプレイ100は、励起光を表示フィルム112に導入して伝搬させる光学部材(プリズムに加えて、例えば光ファイバまたはコリメータレンズ等)を、表示フィルム112の端面に隣接させていない。したがって、蛍光発光ディスプレイ100は、表示フィルム112の端面(第1端面112cおよび第2端面112d)に接合部材20を充填して使用する場合、光学部材の交換や修理を行う際に、表示フィルム112から接合部材20を除去する必要がない。そもそも、仮に光学部材を表示フィルム112の端面に隣接させた状態において接合部材20を充填するような場合、光学部材の周囲を保護部材によって保護しておかなければ、接合部材20によって光学部材を伝搬する励起光の光路が変わったり励起光が大きく減衰したりする。
なお、蛍光発光ディスプレイ100は、情報を表示する緑色等の可視光よりも相対的に波長が長く光強度が小さい赤外光を励起光として用いると、表示フィルム112に入射するときの減衰や、表示フィルム112の内部を伝搬するときの減衰を、十分に抑制することができる。
蛍光発光ディスプレイ100によれば、第1のプリズム124は、第1表示面112aと交差するように延在し第1の励起光EL11を表示面に向かって屈折させつつ伝搬させる入射面124aを備えることが好ましい。さらに、蛍光発光ディスプレイ100によれば、第2のプリズム134は、表示面と交差するように延在し第2の励起光EL12を表示面に向かって屈折させつつ伝搬させる入射面134aを備えることが好ましい。
かかる蛍光発光ディスプレイ100によれば、プリズム(第1のプリズム124および第2のプリズム)の入射面を用いた簡便な構成によって、励起光(第1の励起光EL11および第2の励起光EL12)を第1表示面112aから表示フィルム112に導入することができる。表示フィルム112に導入された励起光は、第1表示面112aと第2表示面112bとの間を交互に反射しつつ十分に伝搬する。
また、蛍光発光ディスプレイ100は、プリズムの入射面のZ方向に対する長さを十分に長くすれば、表示フィルム112の端面のZ方向に沿った縦幅よりも大きなスポット径を有する励起光を、入射面を介して表示フィルム112に導入することができる。
蛍光発光ディスプレイ100によれば、第1の光源121と第1のプリズム124との間に第1のコリメータレンズ123を有することが好ましい。さらに、蛍光発光ディスプレイ100によれば、第2の光源131と第2のプリズム134との間に第2のコリメータレンズ133を有することが好ましい。
かかる蛍光発光ディスプレイ100によれば、表示フィルム112を伝搬する励起光(第1の励起光EL11および第2の励起光EL12)のビーム形状が一定になることから、表示フィルム112における表示画素の大きさを、励起光の伝搬方向に沿って一定にすることができる。したがって、蛍光発光ディスプレイは、表示フィルム112における表示画素の大きさを、表示フィルム112の位置に依存することなく均一にすることができる。
蛍光発光ディスプレイ100によれば、第1のプリズム124は、表示フィルム112と屈折率が同一であることが好ましい。さらに、蛍光発光ディスプレイ100によれば、第2のプリズム134は、表示フィルム112と屈折率が同一であることが好ましい。
かかる蛍光発光ディスプレイ100によれば、プリズム(第1のプリズム124および第2のプリズム134)と表示フィルム112との界面における、励起光(第1の励起光EL11および第2の励起光EL12)の反射ロスを最小限に抑えることができる。したがって、蛍光発光ディスプレイ100は、励起光を表示フィルム112の内部に十分に伝搬させることができる。
蛍光発光ディスプレイ100によれば、第1の励起光EL11は、表示フィルム112の内部を反射して伝搬し、第1のプリズム124は、反射して伝搬する第1の励起光EL11の光路K1から離間した部分B1の第1表示面112aに当接している事が好ましい。さらに、蛍光発光ディスプレイ100によれば、第2の励起光EL12は、表示フィルム112の内部を反射して伝搬し、第2のプリズム134は、反射して伝搬する第2の励起光EL12の光路から離間した部分B1の第1表示面112aに当接している事が好ましい。
かかる蛍光発光ディスプレイ100によれば、表示フィルム112の内部で反射して伝搬する励起光(第1の励起光EL11および第2の励起光EL12)が、プリズム(第1のプリズム124および第2のプリズム134)に入射する(戻ってしまう)ことを防止できる。
蛍光発光ディスプレイ100によれば、第1の光源121は、複数備え、第2の光源131は、複数備え、制御ユニット140は、表示フィルム112の特定の位置に対応する特定の第1の光源121および第2の光源131を制御する。
かかる蛍光発光ディスプレイ100によれば、非常に簡便な構成によって、第1の励起光EL11および第2の励起光EL12を表示フィルム112の特定の位置において交差させつつ蛍光を発生させて情報を表示することができる。
蛍光発光ディスプレイ100によれば、一例として、表示フィルム112を車両10のフロントガラス11に貼り付けて用いることができる。
かかる蛍光発光ディスプレイ100によれば、車両10の運転者が、車両10の前方を十分に視認しながら、表示フィルム112に表示される様々な情報(図1中のG1、G2およびG3)を確認することができる。
第1実施形態では、蛍光発光ディスプレイ100およびその制御方法について、第1の励起光EL11を第1のプリズム124を介して第1表示面112aから表示フィルム112に導入し、かつ、第2の励起光EL12を第2のプリズム134を介して第1表示面112aから表示フィルム112に導入する構成として説明したが、このような構成に限定されることはない。蛍光発光ディスプレイ100は、少なくとも、第1の励起光EL11を第1のプリズム124を介して第1表示面112aから表示フィルム112に導入する構成として、表示フィルム112の第1端面112cに隣接して接合部材20を設けてもよい。
(第1実施形態の変形例1)
図5は、第1実施形態の変形例1に係る蛍光発光ディスプレイの要部を模式的に示す側面図である。
第1実施形態の変形例1に係る蛍光発光ディスプレイは、表示フィルム112から励起光が漏れ出さないように、表示フィルム112に透明な被覆部材211を貼り付けた点において、上述した第1実施形態に係る蛍光発光ディスプレイ100と相違する。
第1実施形態の変形例1に係る蛍光発光ディスプレイでは、上述した第1実施形態の構成とは異なる表示ユニット210の構成について説明する。
図5を参照して、表示ユニット210において、被覆部材211は、表示フィルム112よりも薄いフィルム状に形成している。被覆部材211は、可視光(紫色〜赤色)の全域において透明な材質から構成している。被覆部材211は、第1の励起光EL11および第2の励起光EL12の波長の光において表示フィルム112よりも屈折率が小さい材質から構成している。被覆部材211は、例えば一対からなり、表示フィルム112の両面に対して密着させるようにして接着している。
被覆部材211は、第1光源ユニット120の第1のプリズム124に当接されていない。すなわち、第1のプリズム124は、被覆部材211と干渉することなく、表示フィルム112に当接している。被覆部材211は、第1の励起光EL11における第1のプリズム124から表示フィルム112に入射するまでの光路K2から離間した部分B2の表示フィルム112に当接している。このように構成することによって、第1の励起光EL11は、第1のプリズム124から表示フィルム112に入射した後に、表示フィルム112の内部を反射しながら伝搬することができる。
被覆部材211は、第1光源ユニット120の第1のプリズム124と同様に、第2光源ユニット130の第2のプリズム134に当接されていない。
表示フィルム112と被覆部材211は、いわゆる光ファイバのコアとクラッド(コアよりも屈折率が小さい)の関係に対応している。すなわち、第1の励起光EL11および第2の励起光EL12は、表示フィルム112の第1表示面112aと被覆部材211との界面、および表示フィルム112の第2表示面112bと被覆部材211との界面で反射しつつ、表示フィルム112の内部を伝搬する。
以上説明した第1実施形態の変形例1の作用効果を説明する。
蛍光発光ディスプレイは、被覆部材211を有する。被覆部材211は、第1の励起光EL11における第1のプリズム124から表示フィルム112に入射するまでの光路K2、および第2の励起光EL12における第2のプリズム134から表示フィルム112に入射するまでの光路から離間した部分B2の第1表示面112aに当接する。被覆部材211は、第1の励起光EL11および第2の励起光EL12の波長の光において表示フィルム112よりも屈折率が小さい。
かかる蛍光発光ディスプレイによれば、表示フィルム112の内部を伝搬する第1の励起光EL11および第2の励起光EL12が、表示フィルム112と被覆部材211との界面で反射することによって、表示フィルム112から外部に出射することを防止できる。したがって、蛍光発光ディスプレイは、表示フィルム112において適切に情報を表示させることができる。すなわち、被覆部材211は、表示フィルム112の任意の面に当接させることによって、その面から第1の励起光EL11および第2の励起光EL12が外部に出射してしまうことを防止する部材として用いることができる。
ここで、蛍光発光ディスプレイは、表示フィルム112の片面に被覆部材211を備えている場合、フロントガラス11の側に被覆部材211が対向するようにして、例えばフロントガラス11に貼り付けて用いる。このように構成すれば、表示フィルム112の内部を伝搬する第1の励起光EL11および第2の励起光EL12は、表示フィルム112からフロントガラス11に入射することなく、表示フィルム112と被覆部材211との界面で反射して、表示フィルム112の内部を伝搬し続ける。したがって、蛍光発光ディスプレイは、フロントガラス11に阻害されることなく、表示フィルム112において適切に情報を表示させることができる。
また、蛍光発光ディスプレイが、表示フィルム112の両面に被覆部材211を備えている場合、フロントガラス11の側に加えて、車両10の室内の側にも被覆部材211を対向させて用いることができる。このように構成すれば、表示フィルム112を伝搬する第1の励起光EL11および第2の励起光EL12が、車両10の室内の側に位置する被覆部材211に付着した水滴や油膜に入射することなく、表示フィルム112と被覆部材211との界面で反射して、表示フィルム112の内部を伝搬し続ける。したがって、蛍光発光ディスプレイは、車両10の室内の側から付着した水滴や油膜に阻害されることなく、表示フィルム112において適切に情報を表示させることができる。
(第1実施形態の変形例2)
図6は、第1実施形態の変形例2に係る蛍光発光ディスプレイの要部を模式的に示す斜視図である。
第1実施形態の変形例2に係る蛍光発光ディスプレイは、情報をフルカラー表示する点において、上述した第1実施形態およびその変形例1に係る蛍光発光ディスプレイと相違する。
第1実施形態の変形例2に係る蛍光発光ディスプレイは、情報をフルカラー表示するための構成を具現化させた「一の形態」である。
蛍光発光ディスプレイにおいて、表示フィルム112は、蛍光(緑色)とは波長が異なる他の蛍光(赤色および青色)を発する1つ以上の他の発光体(蛍光体微粒子311および蛍光体微粒子312の2つ)を、さらに分散させて保持している。
この蛍光発光ディスプレイでは、蛍光体微粒子111(緑色の蛍光を発する)と蛍光体微粒子311(赤色の蛍光を発する)および蛍光体微粒子312(青色の蛍光を発する)とによって、赤色、緑色および青色の波長の光の蛍光を発する。
第1実施形態の変形例2に係る蛍光発光ディスプレイについては、上述した第1実施形態およびその変形例1の構成とは異なる表示ユニット310、第1光源ユニット320および第2光源ユニット330の構成について説明する。
図6を参照して、表示ユニット310において、表示フィルム112は、蛍光体微粒子111に加えて、蛍光体微粒子311および蛍光体微粒子312を均一かつ密に分散させて保持している。
表2に、蛍光体微粒子111に加えて蛍光体微粒子311および蛍光体微粒子312の光学特性を示す。
蛍光体微粒子311は、母材のNaYF4に対して発光材のプラセオジウム(Pr)をドープして構成している。蛍光体微粒子311は、第3の励起光EL21(赤外光である波長1014nmの光)と第4の励起光EL22(赤外光である波長840nmの光)によって励起されると、Pr3+イオンのエネルギー準位からの遷移に伴い、可視光である赤色の第2の蛍光RL2を発する。蛍光体微粒子311は、第3の励起光EL21または第4の励起光EL22のみでは蛍光を発しない。
蛍光体微粒子312は、母材のNaYF4に対して発光材のツリウム(Tm)をドープして構成している。蛍光体微粒子312は、第5の励起光EL31(赤外光である波長800nmの光)と第6の励起光EL32(赤外光である波長1120nmの光)によって励起されると、Tm3+イオンのエネルギー準位からの遷移に伴い、可視光である青色の第3の蛍光RL3を発する。蛍光体微粒子312は、第5の励起光EL31または第6の励起光EL32のみでは蛍光を発しない。
図6を参照して、第1光源ユニット320は、上述した第1光源ユニット120の構成に加えて、第3の光源321と第5の光源323等を含んでいる。
第3の光源321は、第3の励起光EL21を発する。第3の光源321は、発振波長に係る光学素子の仕様を除き、第1の光源121と同様の構成からなる。第3の光源321は、第3の励起光EL21を、その波長に適した配光用光ファイバ322に伝搬する。
第5の光源323は、第5の励起光EL31を発する。第5の光源323は、発振波長に係る光学素子の仕様を除き、第1の光源121と同様の構成からなる。第5の光源323は、第5の励起光EL31を、その波長に適した配光用光ファイバ324に伝搬する。
第1の光源121、第3の光源321および第5の光源323の発光のタイミングは、制御ユニット140によって制御する。
合波器325は、例えば、配光用光ファイバ221、配光用光ファイバ322および配光用光ファイバ324の各々の出射部分を加熱して溶融しつつ延伸して構成している。合波器325は、配光用光ファイバ221、配光用光ファイバ322および配光用光ファイバ324から出射された各々の励起光(第1の励起光EL11、第3の励起光EL21および第5の励起光EL31)を合波する。
中継用光ファイバ326は、合波器325によって合波された各々の励起光を配光器327に伝搬する。中継用光ファイバ326は、各々の励起光に対応している。
配光器327は、中継用光ファイバ326から伝搬された各々の励起光を分岐しつつ、複数の第1の光ファイバ328に対して選択的に伝搬する。配光器327は、制御ユニット140の制御に基づき、複数の第1の光ファイバ328に対して独立して第1の励起光EL11、第3の励起光EL21および第5の励起光EL31を伝搬する。
配光器327は、例えば、いわゆるメムス(Micro Electronic Mechanical Systems:MEMS)から構成する。配光器327は、微小なミラーを備え、中継用光ファイバ326から出射された第1の励起光EL11、第3の励起光EL21および第5の励起光EL31を、複数の第1の光ファイバ328に対して選択的に伝搬する。
配光器327は、中継用光ファイバ326から出射した第1の励起光EL11、第3の励起光EL21および第5の励起光EL31を、いわゆる導波路によって複数回にわたって枝分かれさせつつ、複数の第1の光ファイバ328に対して同時に伝搬させるように構成してもよい。この場合、配光器327は、複数の第1の光ファイバ328の各々に対してそれぞれ光学的なシャッタを設けて、第1の励起光EL11、第3の励起光EL21および第5の励起光EL31を選択的に通過させる。シャッタは、例えば、光スイッチとして機能する液晶素子から構成する。
複数の第1の光ファイバ328から出射された第1の励起光EL11、第3の励起光EL21および第5の励起光EL31は、対応する各々の第1のコリメータレンズ123を介して第1のプリズム124に入射する。
図6を参照して、第2光源ユニット330は、上述した第2光源ユニット130に加えて、第4の光源331と第6の光源333等を含んでいる。
第4の光源331は、第4の励起光EL22を発する。第4の光源331は、発振波長に係る光学素子の仕様を除き、第2の光源131と同様の構成からなる。第4の光源331は、第4の励起光EL22を配光用光ファイバ332に伝搬する。
第6の光源333は、第6の励起光EL32を発する。第6の光源333は、発振波長に係る光学素子の仕様を除き、第2の光源131と同様の構成からなる。第6の光源333は、第6の励起光EL32を配光用光ファイバ334に伝搬する。
第2の光源131、第4の光源331および第6の光源333の発光のタイミングは、制御ユニット140によって制御する。
合波器335は、例えば、配光用光ファイバ231、配光用光ファイバ332および配光用光ファイバ334の各々の出射部分を加熱して溶融しつつ延伸して構成している。合波器335は、配光用光ファイバ231、配光用光ファイバ332および配光用光ファイバ334から出射された各々の励起光(第2の励起光EL12、第4の励起光EL22および第6の励起光EL32)を合波する。
中継用光ファイバ336は、合波器335によって合波された各々の励起光を配光器337に伝搬する。中継用光ファイバ336は、各々の励起光に対応している。
配光器337は、中継用光ファイバ336から伝搬された各々の励起光を分岐しつつ、複数の第2の光ファイバ338に対して選択的に伝搬する。配光器337は、上述した配光器327と同様の仕様であるが、各々の励起光に対応した構成からなる。複数の第2の光ファイバ338は、第2の励起光EL12、第4の励起光EL22および第6の励起光EL32を、それぞれ第2のコリメータレンズ133に向かって伝搬させる。
以上説明した第1実施形態の変形例2の作用効果を説明する。
蛍光発光ディスプレイにおいて、表示フィルム112は、蛍光(緑色)とは波長が異なる他の蛍光(赤色および青色)を発する1つ以上の他の発光体(蛍光体微粒子311および蛍光体微粒子312の2つ)をさらに分散させて保持する。蛍光体微粒子111(緑色の蛍光を発する)と蛍光体微粒子311(赤色の蛍光を発する)および蛍光体微粒子312(青色の蛍光を発する)とによって、赤色、緑色および青色の波長の光の蛍光を発する。
かかる蛍光発光ディスプレイによれば、表示フィルム112に表示させる情報を、赤色、緑色および青色の3色を混色することによって、紫から赤色に至るいわゆるフルカラーによって表すことができる。
蛍光発光ディスプレイによれば、合波器325を有することが好ましい。合波器325は、第1の励起光EL11、第3の励起光EL21および第5の励起光EL31を合波して(中継用光ファイバ326、配光器327、第1の光ファイバ328および第1のコリメータレンズ123を介して)第1のプリズム124に入射させる。
かかる蛍光発光ディスプレイによれば、3種類の波長の励起光を独立して伝搬する場合と比較して、3種類の波長の励起光を密に伝搬させることができる。すなわち、赤色、緑色および青色を互いに独立して伝搬する場合と比較して、赤色、緑色および青色の光を合波して伝搬した方が、1画素の大きさを小さくすることができる。したがって、アップコンバージョン蛍光発光ディスプレイは、表示フィルム112の解像度をさらに向上させることができる。
ここで、蛍光発光ディスプレイは、第2の励起光EL12、第4の励起光EL22および第6の励起光EL32を合波して(中継用光ファイバ336、配光器337、第2の光ファイバ338および第2のコリメータレンズ133を介して)第2のプリズムに入射する合波器335を有している。したがって、蛍光発光ディスプレイは、合波器335においても、上述した合波器325と同様の作用効果を奏する。
(第1実施形態の変形例3)
図7は、第1実施形態の変形例3に係る蛍光発光ディスプレイの要部を模式的に示す斜視図である。
第1実施形態の変形例3に係る蛍光発光ディスプレイは、より少ない蛍光体微粒子と光源の組み合わせによって情報をフルカラー表示する点において、上述した第1実施形態の変形例2に係る蛍光発光ディスプレイと相違する。すなわち、第1実施形態の変形例3では、2種類の蛍光体微粒子と4種類の光源を用いる。上述した第1実施形態の変形例2では、3種類の蛍光体微粒子と6種類の光源を用いていた。
第1実施形態の変形例3に係る蛍光発光ディスプレイは、情報をフルカラー表示するための構成を具現化させた「他の形態」である。
蛍光発光ディスプレイにおいて、表示フィルム112は、蛍光(緑色)とは波長が異なる他の蛍光(青色)を発する1つ以上の他の発光体(蛍光体微粒子312の1つ)をさらに分散させて保持している。
この蛍光発光ディスプレイでは、蛍光体微粒子111(赤色および緑色の蛍光を発する)と蛍光体微粒子312(青色の蛍光を発する)とによって、赤色、緑色および青色の波長の光の蛍光を発する。
第1実施形態の変形例3に係る蛍光発光ディスプレイでは、上述した第1実施形態およびその変形例1と2の構成とは異なる表示ユニット410、第1光源ユニット420および第2光源ユニット430の構成について説明する。
図7を参照して、表示ユニット410において、表示フィルム112は、蛍光体微粒子111に加えて、蛍光体微粒子312を均一かつ密に分散させて保持している。
表3に、蛍光体微粒子111および蛍光体微粒子312の光学特性を示す。
上述した蛍光体微粒子111は、それぞれ第1の励起光EL11(赤外光である波長1550nmの光)と第7の励起光EL42(赤外光である波長1120nmの光)によって励起されると、Er3+イオンのエネルギー準位からの遷移に伴い、可視光である赤色の波長の光に相当する第4の蛍光RL4を発する。蛍光体微粒子111は、第1の励起光EL11または第7の励起光EL42のみでは蛍光を発しない。
上述した蛍光体微粒子312は、第8の励起光EL51(赤外光である波長800nmの光)と第7の励起光EL42によって励起されると、Tm3+イオンのエネルギー準位からの遷移に伴い、可視光である青色の第5の蛍光RL5を発する。蛍光体微粒子312は、第8の励起光EL51または第7の励起光EL42のみでは蛍光を発しない。
図7を参照して、第1光源ユニット420は、上述した第1光源ユニット120の構成に加えて、第8の光源421等を含んでいる。
第8の光源421は、上述した第8の励起光EL51を発する。第8の光源421は、発振波長に係る光学素子の仕様を除き、第1の光源121と同様の構成からなる。第8の光源421は、第8の励起光EL51を、その波長に適した配光用光ファイバ422に伝搬する。
第1の光源121および第8の光源421の発光のタイミングは、制御ユニット140によって制御する。
合波器423は、例えば、配光用光ファイバ221および配光用光ファイバ422の各々の出射部分を加熱して溶融しつつ延伸して構成している。合波器423は、配光用光ファイバ221および配光用光ファイバ422から出射された各々の励起光(第1の励起光EL11および第8の励起光EL51)を合波する。
中継用光ファイバ424は、合波器423によって合波された各々の励起光を配光器425に伝搬する。中継用光ファイバ424は、各々の励起光に対応している。
配光器425は、中継用光ファイバ424から伝搬された各々の励起光を分岐しつつ、複数の第1の光ファイバ426に対して選択的に伝搬する。配光器425は、上述した配光器327と同様の仕様であるが、各々の励起光に対応した構成からなる。複数の第1の光ファイバ426は、第1の励起光EL11および第8の励起光EL51を、それぞれ第1のコリメータレンズ123に向かって伝搬させる。
図7を参照して、第2光源ユニット430は、上述した第2光源ユニット130の構成に加えて、第7の光源431等を含んでいる。
第7の光源431は、上述した第7の励起光EL42を発する。第7の光源431は、発振波長に係る光学素子の仕様を除き、第2の光源131と同様の構成からなる。第7の光源431は、第7の励起光EL42を、その波長に適した配光用光ファイバ432に伝搬する。
第2の光源131および第7の光源431の発光のタイミングは、制御ユニット140によって制御する。
合波器433は、例えば、配光用光ファイバ231および配光用光ファイバ432の各々の出射部分を加熱して溶融しつつ延伸して構成している。合波器433は、配光用光ファイバ231および配光用光ファイバ432から出射された各々の励起光(第2の励起光EL12および第7の励起光EL42)を合波する。
中継用光ファイバ434は、合波器433によって合波された各々の励起光を配光器435に伝搬する。中継用光ファイバ434は、各々の励起光に対応している。
配光器435は、中継用光ファイバ434から伝搬された各々の励起光を分岐しつつ、複数の第2の光ファイバ436に対して選択的に伝搬する。配光器435は、上述した配光器337と同様の仕様であるが、各々の励起光に対応した構成からなる。複数の第2の光ファイバ436は、第2の励起光EL12および第7の励起光EL42を、それぞれ第2のコリメータレンズ133に向かって伝搬させる。
以上説明した第1実施形態の変形例3の作用効果を説明する。
蛍光発光ディスプレイにおいて、表示フィルム112は、蛍光(緑色)とは波長が異なる他の蛍光(青色)を発する1つ以上の他の発光体(蛍光体微粒子312の1つ)をさらに分散させて保持している。蛍光体微粒子111(赤色および緑色の蛍光を発する)と蛍光体微粒子312(青色の蛍光を発する)とによって、赤色、緑色および青色の波長の光の蛍光を発する。
かかる蛍光発光ディスプレイによれば、2種類の蛍光体微粒子と4種類の光源を用いた場合においても、表示フィルム112に表示させる情報を、赤色、緑色および青色の3色を混色することによって、紫から赤色に至るいわゆるフルカラーによって表すことができる。
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の蛍光発光ディスプレイの要部を示す側面図である。図8では、蛍光体微粒子111の図示を省略している。
第2実施形態に係る蛍光発光ディスプレイは、例えば、第1のシリンドリカルレンズ526によってビーム形状を縮小した第1の励起光EL11を第1のプリズム124を介して表示フィルム512(表示フィルム112よりも薄い)に導入する点において、上述した第2実施形態に係る蛍光発光ディスプレイと相違する。
第2実施形態に係る蛍光発光ディスプレイでは、上述した第1実施形態の構成とは異なる表示ユニット510および光源ユニット(特に第1光源ユニット520)の構成について説明する。
表示ユニット510において、表示フィルム512は、表示フィルム112と比較して、Z方向に沿った厚みを薄く形成している。すなわち、表示フィルム512の第1端面512cは、表示フィルム112の第1端面112cよりも縦方向(Z方向)の長さが短い。表示フィルム512は、厚みを除いて、表示フィルム112と同様の構成からなる。
第1光源ユニット520は、第1のシリンドリカルレンズ526を備えていることを除いて、第1光源ユニット120と同様の構成からなる。第1のシリンドリカルレンズ526は、図8に示すように、第1のコリメータレンズ123と第1のプリズム124の入射面124aとの間に配置している。第1のシリンドリカルレンズ526は、Y方向に沿って延在した凸状の入射面526aを第1のコリメータレンズ123に対向させている。第1のシリンドリカルレンズ526は、Y方向に沿って延在した平面状の出射面526bを第1のプリズム124の入射面124aに対向させている。第1のシリンドリカルレンズ526は、第1の励起光EL11を表示フィルム512の厚み方向である上下(Z方向)に対して集光するようにして縮小させる。第2光源ユニットのシリンドリカルレンズは、第1光源ユニット520の第1のシリンドリカルレンズ526と同様の構成からなる。
以上説明した第2実施形態の作用効果を説明する。
蛍光発光ディスプレイにおいて、第1の光源121と第1のプリズム124との間に第1のシリンドリカルレンズ526を有する。さらに、蛍光発光ディスプレイにおいて、第2の光源131と第2のプリズム134との間に第2のシリンドリカルレンズを有する。
かかる蛍光発光ディスプレイによれば、シリンドリカルレンズ(第1のシリンドリカルレンズ526および第2のシリンドリカルレンズ)によって、励起光(第1の励起光EL11および第2の励起光EL12)の形状が表示フィルム512の厚み方向である上下(Z方向)に対して縮小する。したがって、蛍光発光ディスプレイは、励起光を相対的に厚みの薄い表示フィルム512に対して導入させることができる。
ここで、第1光源ユニット520の第1のシリンドリカルレンズ526は、第1の励起光EL11を表示フィルム512の横幅(Y方向)に対して縮小しない。同様に、第2光源ユニットの第2のシリンドリカルレンズは、第2の励起光EL12を表示フィルム512の横幅(X方向)に対して縮小しない。したがって、蛍光発光ディスプレイは、励起光を表示フィルム512の厚み方向である上下(Z方向)に沿って縮小しつつ、表示フィルム512上における表示画素を均一に維持することができる。
また、蛍光発光ディスプレイは、シリンドリカルレンズ(第1のシリンドリカルレンズ526および第2のシリンドリカルレンズ)によって、励起光が表示フィルム512の厚み方向に沿って縮小することから、励起光のエネルギー密度が増加して、表示フィルム512における第1の蛍光RL1の輝度が高くなる。したがって、蛍光発光ディスプレイは、第1の蛍光RL1によって表示する情報の視認性を向上させることができる。
また、蛍光発光ディスプレイは、相対的に薄い表示フィルム512を用いることができることから、表示フィルム512の透過率が向上する。したがって、蛍光発光ディスプレイは、表示フィルム512越しに前方を視認し易くすることができる。
また、蛍光発光ディスプレイは、相対的に薄い表示フィルム512を用いることができることから、表示フィルム512を湾曲させて使用することが容易になる。したがって、蛍光発光ディスプレイは、汎用性を高めることができる。例えば、表示フィルム512は、湾曲したフロントガラス11に対して容易に貼り付けることができる。
(第2実施形態の変形例)
図9は、第2実施形態の変形例の蛍光発光ディスプレイの要部を示す側面図である。図9では、蛍光体微粒子111の図示を省略している。
第2実施形態の変形例に係る蛍光発光ディスプレイは、例えば、第1の励起光EL11を第1のプリズム624によって縮小して表示フィルム512(表示フィルム112よりも薄い)に導入する点において、上述した第2実施形態に係る蛍光発光ディスプレイと相違する。
第2実施形態の変形例に係る蛍光発光ディスプレイでは、上述した第2実施形態の構成とは異なる光源ユニット(特に第1光源ユニット620)の構成について説明する。
第1光源ユニット620は、第1のプリズム624を除いて、第1光源ユニット120と同様の構成からなる。第1のプリズム624は、図9に示すように、その入射面624aが、Y方向に沿って延在した凸状のシリンドリカル面からなる。第1のプリズム624は、第1実施形態の第1のプリズム124の入射面124aの側に、第2実施形態の第1のシリンドリカルレンズ526の一部(Z方向に沿った上部)を合体させた構成に相当する。第1のプリズム624は、入射面624aの形状を除いて、第1のプリズム124と同様の構成からなる。
第1のプリズム624の入射面624aは、第1の励起光EL11を表示フィルム512の厚み方向である上下(Z方向)に対して集光するようにして縮小させて、その第1の励起光EL11を出射面624bから表示フィルム512の第1表示面512aに導入する。第2光源ユニットの第2のプリズムは、第1光源ユニット620の第1のプリズム624と同様の構成からなる。
以上説明した第2実施形態の変形例の作用効果を説明する。
蛍光発光ディスプレイにおいて、第1のプリズム624の入射面624aは、凸状のシリンドリカル面からなる。さらに、蛍光発光ディスプレイにおいて、第2のプリズムの入射面は、凸状のシリンドリカル面からなる。
かかる蛍光発光ディスプレイによれば、プリズムの入射面(第1のプリズム624の入射面624aおよび第2のプリズムの入射面)によって、励起光(第1の励起光EL11および第2の励起光EL12)の形状が表示フィルム512の厚み方向である上下(Z方向)に沿って縮小する。したがって、蛍光発光ディスプレイは、励起光を相対的に厚みの薄い表示フィルム512に対して導入させることができる。
ここで、プリズムは、第2実施形態のシリンドリカルレンズと同様に、励起光を表示フィルム512の横幅(Y方向およびX方向)に対して縮小しないことから、表示フィルム512上における表示画素の大きさを均一に維持することができる。
また、蛍光発光ディスプレイは、プリズムの入射面を凸状のシリンドリカル面から構成することによって、部品点数を増加させることなく、励起光を表示フィルム512の厚み方向に沿って縮小することができる。すなわち、蛍光発光ディスプレイは、製造コストを増大させることなく、励起光を縮小することができる。
また、プリズムは、第2実施形態のシリンドリカルレンズと同様に、励起光を縮小して励起光のエネルギー密度を増加させることによって、表示フィルム512における第1の蛍光RL1の輝度を高めて、表示する情報の視認性を向上させることができる。また、プリズムは、第2実施形態のシリンドリカルレンズと同様に、相対的に薄い表示フィルム512を用いることによって、表示フィルム512の透過率を向上させて、表示フィルム512越しに前方を視認し易くすることができる。また、プリズムは、第2実施形態のシリンドリカルレンズと同様に、相対的に薄い表示フィルム512を用いることによって、湾曲させ易くして、汎用性を高めることができる。
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態の蛍光発光ディスプレイの要部を示す側面図である。図10では、蛍光体微粒子111の図示を省略している。
第3実施形態に係る蛍光発光ディスプレイは、例えば、第1の励起光EL11を第1のプリズム724によって反射して表示フィルム112に導入する点において、上述した第1および第2実施形態に係る蛍光発光ディスプレイと相違する。
第3実施形態に係る蛍光発光ディスプレイでは、上述した第1および第2実施形態の構成とは異なる光源ユニット(特に第1光源ユニット720)の構成について説明する。
第1のプリズム724は、図10に示すように、第1の励起光EL11を第1表示面112aから表示フィルム112に導入し、その第1の励起光EL11を第1表示面112aに沿ってX方向に伝搬させるものである。第1のプリズム724は、図10に示すように側面が四角形の一端(図中左下)が欠けた台形形状からなり、Y方向に沿って延在する長方体によって形成している。
第1のプリズム724は、上面に相当し第1表示面112aに沿った平面状の入射面724aと、上記の四角形の一端が欠けた部分に相当し外側が第1表示面112aと交差するように傾斜した平面状の反射面724bと、下面に相当し表示フィルム112の第1表示面112aに密着する平面状の出射面724cを備えている。
第1のプリズム724は、表示フィルム112と同一の材料から構成している。第1のプリズム724は、反射面724bの外側の部分に反射膜724dをコーティングしている。反射膜724dは、金属の薄膜からなり、第1の励起光EL11を反射する。
第1のプリズム724は、その反射面724bが表示フィルム112の第1端面112cの上縁に沿って対向するように、第1表示面112aに接合している。第1の光ファイバ122の出射部分および第1のコリメータレンズ123は、第1のプリズム724の入射面724aに対向するように、Z方向の上方から下方に向かって垂直に配置している。
第1のプリズム724は、図10に示すようにZ方向の下方に沿って伝搬する第1の励起光EL11を入射面724aから入射させた後、反射面724bによってZ方向の下方およびX方向に向かって反射させて伝搬させつつ、出射面724cから表示フィルム112の第1表示面112aに対して導入(斜入射)する。第1の励起光EL11は、表示フィルム112の第1表示面112aと第2表示面112bとの間で交互に反射しつつ、第1表示面112aに沿ってX方向に伝搬する。第2光源ユニットの第2のプリズムは、第1光源ユニット720の第1のプリズム724と同様の構成からなる。
以上説明した第3実施形態の作用効果を説明する。
蛍光発光ディスプレイは、第1のプリズム724が、第1表示面112aと交差するように延在し第1の励起光EL11を第1表示面112aに向かって反射させつつ伝搬させる反射面724bを備えている。さらに、蛍光発光ディスプレイは、第2のプリズムが、第1表示面112aと交差するように延在し第2の励起光EL12を第1表示面112aに向かって反射させつつ伝搬させる反射面を備えている。
かかる蛍光発光ディスプレイによれば、プリズム(第1のプリズム724および第2のプリズム)の反射面を用いた簡便な構成によって、励起光(第1の励起光EL11および第2の励起光EL12)を第1表示面112aから表示フィルム112に導入することができる。表示フィルム112に導入された励起光は、第1表示面112aと第2表示面112bとの間を交互に反射しつつ十分に伝搬する。
また、蛍光発光ディスプレイは、プリズムの反射面のZ方向に対する長さを十分に長くすれば、表示フィルム112の端面のZ方向に沿った縦幅よりも大きなスポット径を有する励起光を、反射面を介して表示フィルム112に導入することができる。
また、蛍光発光ディスプレイは、プリズムの反射面によって励起光を反射させて伝搬させることから、例えば第1実施形態の変形例2や変形例3のように、波長が異なる複数の励起光を同一の反射面によって伝搬させることによって、色収差の影響を回避することができる。すなわち、蛍光発光ディスプレイは、複数の励起光を伝搬させるときに、各々の励起光が波長に依存して相対的に異なる形状に変化することを防止できる。
また、蛍光発光ディスプレイは、プリズムの反射面が平面(曲率半径が無限大で規定される面)である場合、反射面に対する励起光の照射角度に寄らず、反射面で反射した励起光のビーム形状が拡大することがない。すなわち、蛍光発光ディスプレイは、反射面で反射して表示フィルム512に導入される励起光が、ビーム形状の拡大に伴う光の蹴られ等によって減少することを防止できる。
(第4実施形態)
図11は、第4実施形態の蛍光発光ディスプレイの要部を示す側面図である。図11では、蛍光体微粒子111の図示を省略している。
第4実施形態に係る蛍光発光ディスプレイは、例えば、第1の励起光EL11を第1のプリズム824によって縮小しつつ反射して表示フィルム512(表示フィルム112よりも薄い)に導入する点において、上述した第3実施形態に係る蛍光発光ディスプレイと相違する。
第4実施形態に係る蛍光発光ディスプレイでは、上述した第1〜第3実施形態の構成とは異なる光源ユニット(特に第1光源ユニット820)の構成について説明する。
第1光源ユニット820は、第1のプリズム824を除いて、第1光源ユニット720と同様の構成からなる。第1のプリズム824は、図11に示すように、その反射面824bが、Y方向に沿って延在した凹状のシリンドリカル面からなる。第1のプリズム824は、反射面824bの形状を除いて、第1のプリズム724と同様の構成からなる。反射面824bは、入射面824aから入射した第1の励起光EL11を表示フィルム512の厚み方向である上下(Z方向)に対して集光するようにして縮小させて、その第1の励起光EL11を出射面824cから表示フィルム512の第1表示面512aに導入する。第2光源ユニットの第2のプリズムは、第1光源ユニット820の第1のプリズム824と同様の構成からなる。
以上説明した第4実施形態の作用効果を説明する。
蛍光発光ディスプレイにおいて、第1のプリズム824の反射面824bは、凹状のシリンドリカル面からなる。さらに、蛍光発光ディスプレイにおいて、第2のプリズムの反射面は、凹状のシリンドリカル面からなる。
かかる蛍光発光ディスプレイによれば、プリズム(第1のプリズム824および第2のプリズム)の凹状のシリンドリカル面からなる反射面によって、励起光(第1の励起光EL11および第2の励起光EL12)の形状が表示フィルム512の厚み方向である上下(Z方向)に沿って縮小する。したがって、蛍光発光ディスプレイは、励起光を相対的に厚みの薄い表示フィルム512に対して導入させることができる。
ここで、プリズムは、第1〜第3実施形態と同様に、励起光を表示フィルム512の横幅(Y方向およびX方向)に対して縮小しないことから、表示フィルム512上における表示画素の大きさを均一に維持することができる。
また、反射面を備えたプリズムは、第3の実施形態と同様に、波長が異なる複数の励起光を同一の反射面によって伝搬させる場合であっても、色収差の影響を受けることがなく、各々の励起光が波長に依存して相対的に異なる形状に変化することを防止できる。
また、プリズムの反射面を凹状のシリンドリカル面から構成したプリズムは、第2実施形態の変形例のプリズムと同様に、部品点数(製造コスト)を増加させることなく、励起光を縮小することができる。
また、プリズムは、第2実施形態およびその変形例と同様に、励起光を縮小して励起光のエネルギー密度を増加させることによって、表示フィルム512における第1の蛍光RL1の輝度を高めて、表示する情報の視認性を向上させることができる。また、プリズムは、第2実施形態およびその変形例と同様に、相対的に薄い表示フィルム512を用いることによって、表示フィルム512の透過率を向上させて、表示フィルム512越しに前方を視認し易くすることができる。また、プリズムは、第2実施形態およびその変形例と同様に、相対的に薄い表示フィルム512を用いることによって、湾曲させ易くして、汎用性を高めることができる。
そのほか、本発明は、特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
例えば、実施形態において、蛍光発光ディスプレイは、光源から出射された励起光を、光ファイバ、コリメータレンズ等を介して、プリズムに伝搬させる構成として説明したが、このような構成に限定されることはない。例えば、蛍光発光ディスプレイは、光源から出射された励起光を直接的にプリズムに伝搬させる構成としてもよい。
また、実施形態において、蛍光発光ディスプレイは、表示フィルムの第1表示面から入射させた励起光を、第1表示面と第2表示面との間で交互に反射させつつ伝搬させる構成として説明したが、このような構成に限定されることはない。例えば、蛍光発光ディスプレイは、表示フィルムの第1表示面から入射させた励起光を、第1表示面と第2表示面との間において1回も反射させずに伝搬させる構成としてもよい。このような構成は、励起光を表示フィルムの第1表示面から非常に小さい角度(例えば第1表示面に対する入射角度が1度程度)で入射させたり、表示面の厚み(Z方向)を十分に厚くしたり、表示面のサイズ(X方向およびY方向)を十分に小さくしたりすることによって、具現化する。
また、実施形態において、蛍光発光ディスプレイは、複数の第1の励起光と複数の第2の励起光を表示フィルムにおいて格子状に交差させて蛍光を発することによって様々な情報を面状(2次元)に表示する構成として説明したが、このような構成に限定されることはない。例えば、一の第1の励起光と複数の第2の励起光を表示フィルムにおいて交差させて蛍光を発することによって情報を線状(1次元)に表示する構成としてもよい。線状(1次元)で表示する情報は、例えば、バーの長短によって表す情報であって、車両の速度に比例するようにバーの長さを長くして表示する車両の速度の情報である。また、一の第1の励起光と一の第2の励起光を表示フィルムにおいて交差させて蛍光を発することによって情報を点状に表示する構成としてもよい。この場合、1画素の大きさを十分に大きく構成する。点状に表示する情報は、例えば、通常は消灯しておき、緊急時に点灯することによって、車両の乗員に対して歩行者の飛び出し等の危険を報知する情報である。
また、実施形態において、蛍光発光ディスプレイは、車両10に用いる表示装置として説明したが、このような構成に限定されることはない。例えば、蛍光発光ディスプレイは、いわゆるテレビとして様々な情報を表示したり、屋外に設置して交通や広告に関する情報を表示したりする構成としてもよい。
また、実施形態において、蛍光発光ディスプレイをフロントガラス11に貼り付けて用いる構成として説明したが、このような構成に限定されることはない。例えば、蛍光発光ディスプレイを車両10のダッシュボードの運転席に対向する側面に貼り付けて用いる構成としてもよい。
また、実施形態において、蛍光発光ディスプレイは、表示フィルムの片面(第1表示面)から情報を表示させる構成として説明したが、このような構成に限定されることはない。例えば、蛍光発光ディスプレイは、フロントガラス11等に貼り付けることなく公共施設等に設置された台座に起立するようにして配置し、表示フィルムの両面(第1表示面および第2の表示面)から情報を表示させる構成としてもよい。情報は、例えば、太陽、雲および雨のマークによって表す天気予報である。