JP6715584B2 - 採光フィルム - Google Patents
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Description
採光の方法としては、例えば、光線透過性板の表面に凹レンズの一部を使った同一非対称形レンズ素子によって、縦方向に鋸歯形の長い傾斜面を凹曲面となし、その鋸歯形の底面を水平でなく凹曲面の円弧内に向けて光の透過方向に向かって傾斜底面として交互に平行して形成配列してなる光線屈折型採光板(特許文献1)、さらに太陽の水平移動を考慮し、鉛直方向に平行配列された複数の凹状形状素子を片面に有する屈折採光フィルム(特許文献2)が提案されている。また、複数の単位プリズムを有する透光性の支持体を備え、各単位プリズムの一部の面に、光を反射可能な反射層が設けられた採光フィルム(特許文献3)等も提案されている。
より簡易的な方法として、表面をマット調に加工したり、拡散剤を塗布、または練り込んだ光拡散フィルムを窓に設置することも知られているが、拡散効果が高いが故に採光効率が低下してしまうという問題がある。また、光拡散フィルムの場合、拡散した光が直接目に入るため不快感を与える。
また、これらの採光フィルムは光を様々な方向に屈折させるため視認性がなく外部を見ることができない。視認性がない採光フィルムは窓全面に貼ると圧迫感があるため、オフィス等においては窓上部のみに貼られており、未装着部は太陽光を遮るためにブラインド等で遮光しなくてはならず、結果的に窓の視認性はなくなってしまう。
これらの光学フィルムは、ビルや家屋の窓に設置されて、屋外からの太陽光を反射あるいは屈折して、採光シートや板として利用される。
しかしながら、これらは微細加工が不要であるが、同一フィルムを大量に積層してカットし、表面の平滑性を得るために研磨を行うなど製造に非常に手間がかかるため、コスト面ではやはり不利である。また、採光の方法としてはフィルム表面の反射を利用しているが、全て反射によるものであり、入射角と同じ角度で反射するため、屋内へ採光できる角度が限定され、特に夏場は十分な採光が行えない。さらに、これを改善するため反射面を調節した採光板も提案されているが(特許文献4)、間隔、角度調整に手間が掛かり、現実的ではない。
なお、このようなクレイズフィルムは例えば、図5に示すように、樹脂フィルムAを支持体Bを基点にして角θ方向に折り曲げることによってクレイズCが形成されることにより得られる。
1.フィルム面に垂直方向に周期的にクレイズが形成されてなり、平行光線透過率が15%以上、かつ全光線透過率が80%以上である樹脂フィルムからなる光透過性採光フィルム。
2.1に記載のフィルムを該光透過性採光フィルムの厚さ方向に少なくとも1回湾曲してなる光透過性採光フィルム。
3.1又は2に記載のフィルムの少なくとも2枚を、互いにクレイズが直交する状態に積層されてなることを特徴とする光透過性採光フィルム。
4.紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤の少なくとも一つを含有もしくはコーティングした1〜3のいずれかに記載の光透過性採光フィルム。
5.1〜4のいずれかに記載の層を含む光透過性採光フィルム。
6.片面に接着剤層を付与した1〜5のいずれかに記載の光透過性採光フィルム。
7.1〜5のいずれかに記載の複数の光透過性採光フィルムを、互いに上下方向に間隔をおいて平行かつ回転自在に取り付けられた羽根として配置した採光ブラインド。
従って、クレイズ部分と非クレイズ部分の割合を制御することにより、太陽光を反射しつつ、外界の視認性も併せ持つ、光透過性採光フィルムを得ることができる。
このような光透過性採光フィルムである本発明によれば、窓に取り付けた際に太陽光線が入射する角度とほぼ同じ角度で太陽光を天井に反射させることができる。また、クレイズ自体の拡散効果により、反射光を一部拡散することにより部屋全体を明るくできると共に、光透過性採光フィルムはその厚さ方向に透明であるため、室内から室外を、かつ室外から室内を目視することができ、視認性に優れる。
クレイズとは破壊初期に見られるボイドとフィブリルで構成されたスポンジ様の構造であり、樹脂フィルムの表面あるいはその下に、その表面に対して垂直方向、つまりフィルムの深さ方向に形成される。その構造は微細であり、顕微鏡下では亀裂のように観察され、クレイズあるいはクレイズが発達した結果生じるクラックとの識別は容易ではない。また、破壊の前兆現象であることから、クラックとクレイズが共存することが多い。本発明では、樹脂の強度よりも、クレイズ、あるいはクラック部分とフィルム樹脂との境界での空気層との屈折率の差から生じる反射現象が重要と考えられることから、クレイズにはクラックも含めるものとする。
これらの熱可塑性高分子樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、環状オレフィン及びそのコポリマー(COC)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリ乳酸が例示でき、熱硬化性高分子樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル・エポキシ樹脂、ポリオール・イソシアネートウレタン系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂が例示できる。これらの樹脂を1種または2種以上を混合して使用することも可能である。
クレイズが形成された樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、特に制限がなく、結晶性あるいは非晶性の熱可塑性高分子樹脂フィルム、熱硬化性高分子樹脂フィルムが使用できる。
採光性を得るためにはクレイズが形成される樹脂フィルムは光透過性樹脂からなることが必要であり、クレイズ形成後の全光線透過率は80%以上、好ましくは85%以上である。
またクレイズが形成された樹脂フィルムの平行光線透過率は15%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは40%以上である。
なお、本発明における全光線透過率とは、JIS K7361−1で規定されている試験片の平行入射光束に対する全透過光束の割合であり、平行光線透過率とは、試験片の平行入射光束に対して試験片を平行に透過した光束(全透過光束−試験片で拡散した光束)の割合である。これらは市販の濁度計(例えば日本電色工業株式会社製 NDH5000等)で容易に測定可能である。
クレイズが形成された樹脂フィルムの厚さは特に制限がなく、5〜1000μm、好ましくは10〜300μm、さらに好ましくは20〜100μmである。
また形成されたクレイズは、その幅が0.02μm〜30μm、好ましくは0.05〜20μm、さらに好ましくは0.1〜10μmである。これらの値はクレイズ形成後の樹脂フィルムに求める反射や拡散等の光学特性の程度によって任意に決定できる。また厚さ方向に貫通するクレイズを設けてもよい。
いずれにしても、これらの添加剤を添加しても、クレイズを形成した後のフィルムの面に垂直方向に入射する平行光線透過率が15%以上であることが必要である。平行光線透過率が15%未満であると、部屋の窓に貼付したときに室内から室外の様子を、室外から室内の様子を目視にて確認することが困難になる。
またガラス等の窓材料に対して、本発明の光透過性採光フィルムを、粘着剤や接着剤から形成した接着剤層により直接貼付したり、単に積層させたりしてもよい。
また本発明の光透過性採光フィルムの少なくとも一方の面に対して、樹脂フィルムを積層させることによりクレイズの保護や、光透過性採光フィルムの強度、耐光性や耐候性等を向上させることもできる。
しかしながら、窓に本発明の光透過性採光フィルムを貼付した場合、なお、このときには光透過性採光フィルムに形成されているクレイズが、窓の上下方向に垂直に向くように貼付される。そして、それぞれの角度の日光は、A、B、及びCで示す光となって部屋内に入ることになり、それらの光は部屋の天井を照射することになる。天井を照射した光は天井で反射してさらに部屋内を明るくしたり、部屋に机等が設置されている場合には、机上を明るくしたりすることもできる。このように天井を明るく照らすことによって、天井に設けた照明器具と同様にその反射光は部屋内を明るくすることができる。
また、クレイズが直行する方向に少なくとも2枚のフィルムを重ねることにより、太陽の水平移動に対しても、部屋内の広い範囲に採光することが可能である。
上記のように本発明の光透過性採光フィルムを直接又は間接的に窓に貼付する場合の他に、図2に示すような、窓に設置して部屋内に入る日光を調整するための羽根を有する公知のブラインドの構造と同様のブラインドを設け、その羽根に代えて本発明の光透過性採光フィルム又は光透過性採光フィルムを担持する透明部材を採用して、互いに上下方向に間隔をおいて平行かつ回転自在に取り付けられた羽根として配置した採光ブラインドとすることができる。
このようにして得たブラインドは、光透過性採光フィルムの窓ガラスに対する角度が任意に可変であるため、季節、時間、天気、日光の照度等の任意の条件に応じて、その角度を変更することができる。ブラインドを閉めたときには、窓部材に光透過性採光フィルムを貼付した場合により近い効果を得ることができ、ブラインドを開けたときには、クレイズによる反射光を部屋内に導入する効果を低下させることができる。
その結果、部屋内に透過する日光、及びクレイズに反射して部屋の天井に導光される日光の照度を調整することによって、部屋内の明るさを調整することができる。
なお、このとき、ブラインドの羽根は平面を有する板状もしくは曲面を有する板状のいずれでもよいが、平面を有する板状のほうがよりクレイズを設けた効果を発揮できる。
表1のフィルムを実施例及び比較例として用いた。比較例1、2は、クレイズを効率よく形成させるためにPMMA粒子(10μm)を10wt%充填したPPフィルムであり、比較例3は、表面をマット加工した光拡散PET、比較例4はクレイズ加工を施していないPEフィルムである。濁度計(日本電色工業株式会社製「NDH5000」)を用いて測定した全光線透過率及び平行光線透過率を合わせて表1に示す。
光透過性採光フィルムの一方に10cm離して、ゴシック体10.5ptで「アイセロ」と印刷した紙を置き、光透過性採光フィルムの他方から光透過性採光フィルムを介して文字を読める場合は視認性ありとした。
表2に結果を示す。平行光線透過率が高いほど視認性が良好であったが、平行光線透過率の低い比較例1、2やクレイズ加工をしていない比較例3、4では視認性を得られなかった。
本発明の光透過性採光フィルムは、フィルム表面に概垂直形成されたクレイズを、フィルム表面に概縞状に繰り返し形成されたクレイズフィルムであり、この光透過性採光フィルムを窓に貼ることにより、その窓から入射した太陽光をクレイズ部分で部屋の天井面に正反射すると同時に、一部の光をクレイズ内で若干拡散させることで天井面全体を照らして間接的に屋内を明るくする、すなわち窓に貼った採光フィルムにより窓に入射する太陽光がクレイズ部分で反射し、天井面全体を照らし、日光が直接目に入ることを防ぎながら効率よく採光する。
本件では採光フィルムに対して入射光と線対称に反射する光を正反射光とし、線対称にならない反射光を拡散反射光と区別する。
採光性を評価するため、光透過性採光フィルムによる反射光の強度及び拡散光の強度を測定した。その測定原理を図3に示す。
図3に示すように、サンプル取付部に対して入射角60度の光源を配し、同様に反射角60度に受光部を配す光学系からなるグロスメーター(日本電色工業株式会社製「VG7000」)を使用し、光透過性採光フィルムをサンプル取付部に対して垂直90度に設置する。光透過性採光フィルムに対して入射角60°の光源と線対称の位置に受光部を配し、光透過性フィルムを介した正反射光の強度を測定した。
さらに、光透過性採光フィルムを垂直より10度傾けて入射光を70度として採光フィルムに対して入射光と線対称から20度ずれた50度の拡散反射光を、同様に光透過性採光フィルムを20度傾けて80度の入射光に対する40度の拡散反射光を、同じく50度入射光に対する70度の拡散反射光を、40度入射光に対する80度の拡散反射光を測定した。
フィルム内で光を反射する場合には正反射の数値が大きくなり、拡散フィルムあるいは透過する場合には正反射の数値は非常に低くなる。
実施例及び比較例の正反射光及び正反射光と拡散反射光の合計(以降「照り返し」と表記)を表3に示す。正反射光が10%以上となるものを採光性○、以下となるものを×とした。
表3の結果によれば、クレイズフィルムでは全光線透過率が低い場合は採光性が低下する。一方、クレイズ加工していないフィルムでは、全光線透過率が高くても採光性が低く、採光フィルムとして使用できない。
部屋をモデル化した暗箱において、図4に示すようにして、光源(日本ピー・アイ株式会社製「PICL−NEX」)からの天井への反射光の照度を、照度計(日置電機株式会社製「LUX HiTESTER 3421」)で測定した。なおブランクは、どのフィルムも使用しなかった例である。
尚、測定では最も採光効率が悪くなると考えられる夏場の太陽高度(東京:77°)で行った。表4の結果によると表3で正反射光数値の高いものほど暗箱の天井照度が高いという結果になった。
Claims (7)
- フィルム面に垂直方向にクレイズが形成されてなり、かつ該クレイズはフィルム面に周期的に形成されており、平行光線透過率が15%以上、かつ全光線透過率が80%以上で、入射角60度の入射光に対する正反射光が10%以上であるクレイズ形成樹脂フィルムからなる光透過性採光フィルム。
- 請求項1に記載のクレイズ形成樹脂フィルムを該光透過性採光フィルムの厚さ方向に少なくとも1回湾曲してなる光透過性採光フィルム。
- 請求項1又は2に記載のクレイズ形成樹脂フィルムの少なくとも2枚を、互いにクレイズが直交する状態に積層されてなることを特徴とする光透過性採光フィルム。
- 上記クレイズ形成樹脂フィルムに紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤の少なくとも一つを含有もしくはコーティングした請求項1〜3のいずれかに記載の光透過性採光フィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のクレイズ形成樹脂フィルムを含む光透過性採光フィルム。
- 片面に接着剤層を付与した請求項1〜5のいずれかに記載の光透過性採光フィルム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の複数の光透過性採光フィルムを、互いに上下方向に間隔をおいて平行かつ回転自在に取り付けられた羽板として配置した採光ブラインド。
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