JP6715096B2 - 非水電解液およびそれを用いた非水電解液二次電池 - Google Patents

非水電解液およびそれを用いた非水電解液二次電池 Download PDF

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Description

本発明は非水電解液二次電池およびその非水電解液に関する。
リチウムイオン二次電池は、スマートフォンやパーソナルコンピューター用の電源、さらには自動車用電源として用いられている。これらの用途に使用される電池では、高出力化、高エネルギー密度化、サイクル特性やレート特性の改善といった各種特性の向上を目的とした研究が重ねられている。
従来のリチウムイオン電池は電解液としてエチレンカーボネートのような環状カーボネートおよびジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネートを主な構成成分としている。このうち、エチレンカーボネートは黒鉛負極上で分解することにより、SEIと呼ばれる保護被膜を形成し、負極へのLiイオンの脱挿入を可能にすることが報告されており、炭素系負極を用いた一般的なリチウムイオン電池においては必須の成分とされている。
スルホランは高誘電率でありかつ電気化学的にも安定で高い沸点を有していることから、非水電解液の溶媒として用いることにより、電池の性能向上に寄与することが期待される。しかしながらスルホランは炭素負極上で分解しやすく、主溶媒として用いると充放電時の容量が小さくなることが知られている。
例えば、特許文献1においては炭素材料を活物質とする負極とリチウム金属複合酸化物を活物質とする正極とからなる非水電解液二次電池において、非水電解液の溶媒としてスルホランとエチルメチルカーボネートの混合溶媒を用いることにより、ジメチルカーボネートを使用するよりもサイクル特性が改善することが開示されている。しかしながらさらなるサイクル特性の改善の余地があった。また、エチルメチルカーボネートと併用することにより、スルホランが元来持っている電気化学的な安定性や高い沸点という特性を十分に発揮できていない。
特許文献2においては、非水溶媒全体に対して10〜70体積%の環状スルホン化合物及び不飽和結合を有するカーボネート、ハロゲン原子を有するカーボネート、モノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有することを特徴とする非水系電解液が高容量、高電流密度での特性を改善できることが開示されている。しかしながら、環状スルホン化合物:エチルメチルカーボネート=3:7の溶媒を用いており、スルホラン化合物の特性を十分に発揮できておらず、改善の余地があった。また、添加剤としてVCやFECを用いていることから、低温特性の低下という問題もあった。
特開2000−12078号公報 特開2008−269980号公報
本発明は上記の従来の実情に鑑みてなされたものであり、高サイクル特性、高容量、高エネルギー密度を示す非水電解液二次電池とその非水電解液を提供することを課題としている。
上記目的を達成し得た本発明の非水電解液は、一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド化合物(式(1)中、Mはアルカリ金属イオンを表し、Xはフッ素原子または炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表す)と、一般式(2)で表されるスルホン化合物(R1及びR2は、それぞれ同一もしくは独立して炭化水素基を表し、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)を含むところに特徴を有する。
Figure 0006715096
Figure 0006715096
本発明の非水電解液に含まれる一般式(2)で表されるスルホン化合物のR1とR2は互いに結合して環状構造を形成していることが好ましい。このスルホン化合物の濃度が、非水電解液中、30〜95質量%であることが好ましい。
上記非水電解液には、さらに、下記一般式(3)で表されるオキサラト化合物が含まれていてもよい。
Figure 0006715096
(一般式(3)中、M1はBまたはP、Aa+は金属イオン、水素イオン、又はオニウムイオン、aは1〜3、bは1〜3、pはb/a、qは1〜3、mは0〜4、nは0または1をそれぞれ表し、R3はフッ素、シアノ基又はC1〜C10のフッ素化アルキル基、R4はC1〜C10のアルキレン基またはC1〜C10のハロゲン化アルキレン基、X1、X2はそれぞれ独立でOまたはSを表す。)
本発明には、上記非水電解液を有する非水電解液二次電池を含む。また非水電解液二次電池は、負極が炭素材料を含むことが好ましく、特に波長532nmのレーザーで励起させたときのラマンスペクトルの強度比R(1350cm-1のピーク強度/1580cm-1のピーク強度)が0.1≦R≦0.5である炭素材料を含むことが好ましい形態である。
本発明の非水電解液によれば、スルホン化合物を溶媒として用いることにより、電圧が高く、高容量かつ高いサイクル特性を示す炭素系負極を用いた非水電解液二次電池を提供することができる。従来の炭素系負極を用いた非水電解液二次電池では必須成分であった環状カーボネートを必須成分とせずとも、当該非水電解液二次電池を提供することができる。
実施例1、比較例1,2の電池評価結果(2サイクル目の充電曲線)を示す図である。 1.5mol/LのLiFSIを含むスルホラン溶液のDSCチャートである。 1mol/kgのLiFSIを含むスルホラン溶液と、1mol/kgのLiPF6を含むエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート(体積比3/7)混合溶液のDSCチャートである。
本発明の非水電解液は、一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド化合物(式(1)中、Mはアルカリ金属イオンを表し、Xは、フッ素原子、炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表す)と、一般式(2)で表されるスルホン化合物(R1及びR2は、それぞれ同一もしくは独立して炭化水素基を表し、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)を含むところに特徴を有する。一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド化合物はLiTFSI等のイミド化合物と比較して分子サイズが小さく、形成されるコンタクトイオンペアのサイズも小さくなると考えられる。また一般式(2)で表されるスルホン化合物は通常リチウムイオン電池に用いられるカーボネート系溶媒とは異なる配位状態をとると考えられる。このようにフルオロスルホニルイミド化合物(1)とスルホン化合物(2)とを含む非水電解液中では、アルカリ金属イオンは他のイミド化合物や溶媒の使用時とは異なる配位状態にあると考えられる。一方、炭素系負極へのアルカリ金属イオン挿入時には配位している溶媒やアニオンが脱離するが、通常の電解質塩を用いた場合は、炭素系負極へのアルカリ金属イオンの挿入時に溶媒が脱離せず、共挿入が起こり、炭素系負極の破壊が生じると言われている。そのため、炭素系負極を用いる際には、エチレンカーボネート等のSEIを形成する溶媒を併用し、溶媒やアニオンの共挿入を抑制することによって、アルカリ金属イオンの脱挿入を可能としている。本発明の非水電解液は、アルカリ金属イオンが通常のイミド化合物や溶媒とは異なる配位状態にあるため、エチレンカーボネートを必要とすることなく、アルカリ金属イオンを炭素系負極に対して良好に脱挿入でき、良好な容量およびサイクル特性を示すと考えられる。以下、本発明の非水電解液について詳細に説明する。
1.非水電解液
1−1.スルホニルイミド塩
本発明の非水電解液は、下記一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド化合物(フルオロスルホニルイミド化合物(1)と称する場合がある。)を含む。
Figure 0006715096
一般式(1)中、Xはフッ素原子(F)、又は炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表す。炭素数1〜6のフルオロアルキル基とは、炭素数1〜6のアルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素で置換されたものである。フルオロアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、又はこれらの内2以上の構造を合わせ持ったものでもよいが、直鎖状、又は分岐状のフルオロアルキル基が好ましく、直鎖状のフルオロアルキル基がより好ましい。具体的なフルオロアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、フルオロプロピル基、フルオロブチル基、フルオロペンチル基、フルオロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、フッ素原子、及び炭素数1〜3のフルオロアルキル基がXとして好ましい。
一般式(1)中、Mで表されるアルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンが好ましく、より好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンであり、さらに好ましくはリチウムイオンである。
具体的なフルオロスルホニルイミド化合物(1)としては、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミド等のフルオロスルホニルイミドのリチウム塩;ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ナトリウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ナトリウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ナトリウム(フルオロスルホニル)(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミド等のフルオロスルホニルイミドのナトリウム塩;カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、カリウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、カリウム(フルオロスルホニル)(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミド等のフルオロスルホニルイミドのカリウム塩;等が挙げられる。好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ナトリウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミドであり、より好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである。
本発明の非水電解液には1種のフルオロスルホニルイミド化合物(1)が単独で含まれていてもよく、また、2種以上のフルオロスルホニルイミド化合物(1)が含まれていてもよい。また、フルオロスルホニルイミド化合物(1)は、市販品を使用してもよいし、従来公知の方法により合成した物を用いてもよい。
非水電解液中のフルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度は0.1mol/L以上であるのが好ましく、より好ましくは0.15mol/L以上であり、さらに好ましくは0.2mol/L以上であり、飽和濃度以下であるのが好ましく、より好ましくは4mol/L以下であり、さらに好ましくは3mol/L以下であり、最も好ましくは2mol/L以下である。フルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度が高すぎると電解液の粘度が上昇し電池性能を低下させるおそれがあり、一方フルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度が低すぎるとリチウムイオン電池中のリチウムイオン濃度が不足し、電池の性能を低下させるおそれがある。
非水電解液中のフルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度は0.1mol/kg以上であるのが好ましく、より好ましくは0.15mol/kg以上であり、さらに好ましくは0.2mol/kg以上であり、飽和濃度以下であるのが好ましく、より好ましくは4mol/kg以下であり、さらに好ましくは3mol/kg以下であり、最も好ましくは2mol/L以下である。フルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度が高すぎると電解液の粘度が上昇し電池性能を低下させるおそれがあり、一方フルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度が低すぎるとリチウムイオン電池中のリチウムイオン濃度が不足し、電池の性能を低下させるおそれがある。
1−2.他の電解質塩
本発明の非水電解液は、フルオロスルホニルイミド化合物(1)とは異なる他の電解質塩を含んでいてもよい。他の電解質塩としては非水電解液二次電池の電解質塩として通常用いられるものを使用することができる。好ましい電解質塩はリチウム塩およびナトリウム塩である。好適なリチウム塩の例は、LiPF6、LiPF3(CF2CF33、LiBF4、Li[C242B(LiBOB)、Li(CF3SO22N(LiTFSI)、Li(C25SO22N(LiBETI)、LiC24BF2(LiDFOB)、LiC24B(CN)2、LiC24B(CN)F、LiSCN、LiCF3SO3、LiAlF4、LiClO4、LiN(NO22、LiB1212-xx及びこれらの混合物である。好ましいリチウム塩として、LiPF6、LiBF4、LiBOB、LiTFSI、LiBETI、LiDFOB等が挙げられる。さらに好ましくは、LiPF6、LiBOB、LiTFSI、LiDFOBである。
好適なナトリウム塩としては、ナトリウムイオン二次電池の電解質塩として用いられるナトリウム塩を使用することができる。ナトリウム塩の具体例としては、NaPF6、NaPF3(CF2CF33、NaBF4、Na[C242B、NaTFSI、NaBETI、Na[C24]BF2、Na[C24]B(CN)2、Na[C24]B(CN)Fなどが挙げられる。好ましいナトリウム塩としては、NaPF6、NaBF4、NaTFSI等が挙げられる。これらの他の電解質塩は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
非水電解液中の他の電解質塩の濃度は0.001mol/L以上であるのが好ましく、より好ましくは0.005mol/L以上であり、さらに好ましくは0.01mol/L以上であり、飽和濃度以下であるのが好ましく、より好ましくは2mol/L以下であり、さらに好ましくは1.2mol/L以下である。非水電解液中の他の電解質塩の濃度が高すぎると非水電解液の粘度が上昇してイオン伝導度が低下する虞がある。一方、他の電解質塩の濃度が低すぎると所望のイオン伝導度が得られ難くなる虞がある。
非水電解液中の他の電解質塩の濃度は0.001mol/kg以上であるのが好ましく、より好ましくは0.005mol/kg以上であり、さらに好ましくは0.01mol/kg以上であり、飽和濃度以下であるのが好ましく、より好ましくは2mol/kg以下であり、さらに好ましくは1.2mol/kg以下である。非水電解液中の他の電解質塩の濃度が高すぎると非水電解液の粘度が上昇してイオン伝導度が低下する虞がある。一方、他の電解質塩の濃度が低すぎると所望のイオン伝導度が得られ難くなる虞がある。
本発明の非水電解液がフルオロスルホニルイミド化合物(1)とは異なる他の電解質塩を含む場合には、フルオロスルホニルイミド化合物(1)と他の電解質塩の合計量100mol%に対して他の電解質塩を0.1mol%以上含むものであるのが好ましい。より好ましくは0.2mol%以上であり、さらに好ましくは0.5mol%以上であり、50mol%以下であるのが好ましく、より好ましくは30mol%以下であり、さらに好ましくは20mol%以下である。非水電解液中の他の電解質塩の含有量が多過ぎると、イミド塩の特長を阻害するおそれがある。
また、本発明の非水電解液がフルオロスルホニルイミド化合物(1)とは異なる他の電解質塩を含む場合には、本発明の非水電解液は、当該非水電解液中に含まれるフルオロスルホニルイミド化合物(1)と他の電解質塩を含む全ての電解質塩の濃度の合計が0.5mol/L以上、飽和濃度以下となる範囲で使用するのが好ましい。より好ましくは0.7mol/L以上、より一層好ましくは0.8mol/L以上であり、より好ましくは4mol/L以下であり、より一層好ましくは3mol/L以下であり、さらに好ましくは2mol/L以下である。
本発明の非水電解液がフルオロスルホニルイミド化合物(1)とは異なる他の電解質塩を含む場合には、本発明の非水電解液は、当該非水電解液中に含まれるフルオロスルホニルイミド化合物(1)と他の電解質塩を含む全ての電解質塩の濃度の合計が0.5mol/kg以上、飽和濃度以下となる範囲で使用するのが好ましい。より好ましくは0.7mol/kg以上、より一層好ましくは0.8mol/kg以上であり、より好ましくは4mol/kg以下であり、より一層好ましくは3mol/kg以下であり、さらに好ましくは2mol/kg以下である。
1−3.スルホン化合物
本発明の非水電解液において、前記スルホン化合物は、下記一般式(2)で表される(以下、スルホン化合物(2)と称する場合がある)。
Figure 0006715096
本発明の非水電解液に含まれる一般式(2)のR1及びR2は、それぞれ同一もしくは独立して炭化水素基を表し、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。好ましくは、R1及びR2は、それぞれ同一もしくは独立して飽和脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、R1とR2は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。より好ましくは、R1及びR2は、それぞれ同一もしくは独立して1価もしくは2価の飽和脂肪族炭化水素基又は1価もしくは2価の芳香族炭化水素基であり、RとRは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R1とR2はその一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。
一般式(2)において、R1とR2が互いに結合して環状構造を形成し、環状スルホン化合物である場合は、環状構造は炭化水素基であることが好ましい。より好ましくは、炭素数3〜8のアルキレン基であることが好ましい。この場合の炭素数とは、R1とR2が互いに結合した環状構造の炭素数を意味する。より好ましくは、炭素数3〜6のアルキレン基であり、最も好ましくは炭素数4のアルキレン基、すなわちテトラメチレン基である。上記2価の脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基が挙げられる。上記ハロゲン原子のうち、最も好ましいハロゲン原子はフッ素原子である。アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜2である。ハロゲン原子で置換されたアルキル基としては、好ましくはフッ素原子で置換された炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜2がより好ましい。
一般式(2)において、R1、R2が1価の飽和脂肪族炭化水素基又は1価の芳香族炭化水素基である場合にはスルホン化合物(2)は鎖状のスルホン化合物であり、R1、R2が2価の飽和脂肪族炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基である場合にはスルホン化合物(2)は環状のスルホン化合物となる。一価の飽和脂肪族炭化水素基としては、炭素数は1〜8であることが好ましい。R1、R2は好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。R1、R2が一価の芳香族炭化水素基の場合には、炭素数は6〜14であることが好ましい。好ましくは、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などを挙げることができる。また、R1及びR2の水素の一部がハロゲン原子で置換されている場合は、ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。
一般式(2)において、R1とR2が互いに結合して環状構造を形成し、環状スルホン化合物である場合は、R1、R2は2価の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。より好ましくは、炭素数3〜8のアルキレン基であることが好ましい。この場合の炭素数とは、R1とR2が互いに結合した環状構造の炭素数を意味する。より好ましくは、炭素数3〜6のアルキレン基であり、最も好ましくは炭素数4のアルキレン基、すなわちテトラメチレン基である。上記2価の脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基が挙げられる。上記ハロゲン原子のうち、最も好ましいハロゲン原子はフッ素原子である。アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜2である。ハロゲン原子で置換されたアルキル基としては、好ましくはフッ素原子で置換された炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜2がより好ましい。
上述の通り環状スルホン化合物としては、メチレン基が4個であるスルホラン及び/又は置換基を有するスルホラン(以下、スルホラン化合物と称する場合がある)が好ましい。
一般式(2)で表される鎖状のスルホン化合物の具体例としては、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジブチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチルプロピルスルホン、メチルイソプロピルスルホン、エチルプロピルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン、ジベンジルスルホン、ベンジルフェニルスルホン、ジキシリルスルホン、メチルフェニルスルホン、エチルフェニルスルホン、ベンジルメチルスルホン、ベンジルエチルスルホン、ジフルオロメチルフェニルスルホン、ジフルオロフェニルメチルスルホン、エチニル−p−トリルスルホン、4−フルオロフェニルメチルスルホン等が挙げられる。
一般式(2)で表される環状スルホン化合物の具体例としては、トリメチレンスルホン;スルホラン、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン、2−エチルスルホラン、3−エチルスルホラン、3−プロピルスルホラン、3−ブチルスルホラン、3−ペンチルスルホラン、3−イソプロピルスルホラン、3−イソブチルスルホラン、3−イソペンチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、2−フェニルスルホラン、3−フェニルスルホラン、ジベンゾスルホラン等のスルホラン化合物;3−スルホレン、3−メチルスルホレン等の二重結合を有する環状スルホン等が挙げられる。
上記スルホン化合物(2)の中でも、より好ましくは、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、メチルエチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、スルホランであり、さらに好ましくはジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホランである。上記スルホン化合物(2)は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、スルホランの比誘電率は43.3である。
上記スルホン化合物(2)は、本発明の非水電解液中の濃度が30質量%〜95質量%の範囲で用いるのが好ましい。より好ましくは40質量%〜92質量%、さらに好ましくは50質量%〜90質量%の範囲で用いるのが好ましい。スルホン化合物(2)の使用量が少なすぎるときには、電解液の粘度が上昇し十分なイオン伝導度が得られず、電池として十分な性能が得られない。一方、多量にスルホン化合物(2)を使用すると、電解液中の電解質塩濃度が低下し、十分な電池性能が得られない虞がある。
1−4.オキサラト化合物
本発明の非水電解液には、下記一般式(3)で表されるオキサラト化合物(以下、オキサラト化合物(3)と称する場合がある。)が含まれていてもよい。
Figure 0006715096
(一般式(3)中、M1はBまたはP、Aa+は金属イオン、水素イオン、又はオニウムイオン、aは1〜3、bは1〜3、pはb/a、qは1〜3、mは0〜4、nは0または1をそれぞれ表し、R3はフッ素、シアノ基又はC1〜C10のフッ素化アルキル基、R4はC1〜C10のアルキレン基またはC1〜C10のハロゲン化アルキレン基、X1、X2はそれぞれ独立でOまたはSを表す。)
フルオロスルホニルイミド化合物(1)およびスルホン化合物(2)を含む電解液を用いたリチウムイオン二次電池は、容量が若干低下することがわかった。本発明者らが検討を加えたところ、フルオロスルホニルイミド化合物(1)とスルホン化合物(2)を用いた電解液では、フルオロスルホニルイミド化合物(1)が負極上で分解し、SEIを形成することによりリチウムイオンの黒鉛への脱挿入が可能となったが、このSEIにはまだ改善の余地があり、さらに検討を続けたところ、上記オキサラト化合物(3)を電解液に添加することで電池容量およびサイクル特性が向上することを突き止めた。これは、上記オキサラト化合物(3)が初回充電時に負極で還元分解を起こし、負極上に被膜を形成するため、スルホン化合物(2)が黒鉛に共挿入されずに、リチウムイオンが黒鉛に挿入されるようになったと推測される。さらにフルオロスルホニルイミド化合物(1)とオキサラト化合物(3)の複合SEIが、サイクル試験中の電解液の分解を抑制するため、サイクル特性も向上した。
上記一般式(3)中の金属イオンとしては、Li+、Na+、Mg2+、Ca2+が好ましく、さらに好ましくはLi+、Na+であり、特にLi+が好ましい。したがって、a、b、pは1であることが好ましい。
上記一般式(3)中のオニウムカチオンとしては、一般式:L+−Rs(式中、Lは、C、Si、N、P、S又はOを表し、Rは、同一若しくは異なる有機基であり、互いに結合していてもよい。sはLに結合するRの数を表し、3又は4である。なお、sは、元素Lの価数及びLに直接結合する二重結合の数によって決まる値である)で表されるオニウムカチオンが好適である。
上記Rで示される「有機基」としては、水素原子、フッ素原子、又は炭素原子を少なくとも1個有する基を意味する。上記「炭素原子を少なくとも1個有する基」は、炭素原子を少なくとも1個有してさえいればよく、また、ハロゲン原子やヘテロ原子等の他の原子や、置換基等を有していてもよい。置換基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル結合を有する基、チオエーテル結合を有する基、エステル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、ジスルフィド基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホニル基等が挙げられる。
一般式(3)中のR4のC1〜C10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカレン基が挙げられ、これらは分岐状であってもよい。C1〜C10のハロゲン化アルキレン基としては、C1〜C10のアルキレン基の水素の一部又は全部が、F、Cl、Br又はIに置き換わった基(中でも、Fが好ましく、例えば、フルオロメチレン基やフルオロエチレン基)が挙げられる。R4としては、炭素数1〜4のアルキレン基又はアルキレン基の水素の一部がフッ素で置換された炭素数1〜4のフッ素化アルキレン基が好ましい。より好ましくは炭素数1〜2のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。nは0又は1であり、nが0の場合はカルボニル基の直接結合を表し、一般式(3)の化合物はオキサラトボレート又はオキサラトホスホニウムとなる。nは0であることが好ましい。
3はフッ素原子、シアノ基又はC1〜C10のフッ素化アルキル基であり、C1〜C10のフッ素化アルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、フルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。R3としては、炭素数1〜2のフッ素化アルキル基、シアノ基又はフッ素原子であることが好ましく、より好ましくはフッ素原子である。
1、X2はそれぞれ独立して、O又はSを表すが、入手のしやすさからはいずれもがOであることが好ましい。
上記一般式(3)中、MがBのときは、qは1又は2であることがより好ましく、qが1のとき、mは2であり、このときのR3はFであることが好ましい。また、qが2のとき、mは0である。また、MがPのときは、qは1〜3であり、qが1のときはmが4、qが2のときはmが2、qが3のときはmが0である。
一般式(3)で示されるオキサラト化合物の具体例としては、ジフルオロオキサラトボレート塩、ジシアノオキサラトボレート塩、シアノフルオロオキサラトボレート塩、ビスオキサラトボレート塩、テトラフルオロオキサラトホスホニウム塩、ジフルオロビス(オキサラト)ホスホニウム塩、トリス(オキサラト)ホスホニウム塩が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記一般式(3)で表されるオキサラト化合物は、非水電解液100質量%中、0.01〜10質量%の範囲で用いることが好ましい。0.01質量%よりも少ないと、電解液の分解を抑制する効果が不充分となることがあり、10質量%を超えて添加すると、被膜形成による抵抗上昇が大きくなって電池性能そのものが低下するおそれがあり好ましくない。より好ましくは、0.1〜5質量%である。
オキサラト化合物は、スルホニルイミド化合物(1)の量を100mol%としたときに、0.1mol%以上であることが好ましい。より好ましくは1mol%以上であり、さらに好ましくは3mol%以上である。また、オキサラト化合物は、スルホニルイミド化合物(1)の量を100mol%としたときに、100mol%以下であることが好ましく、より好ましくは80mol%以下であり、さらに好ましくは50mol%以下である。オキサラト化合物の量が0.1mol%より少ないと、電解液の分解を抑制する効果が不充分となることがあり、100mol%を超えて添加すると、被膜形成による抵抗上昇が大きくなって電池性能そのものが低下するおそれがある。
1−5.溶媒
本発明の非水電解液は、スルホニルイミド化合物(1)、スルホン化合物(2)、必要に応じて用いられるオキサラト化合物(3)の他に、溶媒を含んでいてもよい。本発明の非水電解液に用いることのできる溶媒としてはフルオロスルホニルイミド化合物(1)、他の電解質塩、スルホン化合物(2)、オキサラト化合物(3)及び後述する任意で用いられる添加剤等を溶解、分散させられるものであれば特に限定されず、有機溶媒、溶媒に代えて用いられるポリマー、ポリマーゲル等の媒体等、非水電解液二次電池、リチウムイオン二次電池に用いられる従来公知の溶媒はいずれも使用できる。
有機溶媒としては、誘電率が大きく、電解質塩、及び任意で用いられる添加剤の溶解性が高く、沸点が60℃以上であり、且つ、電気化学的安定範囲が広い溶媒が好適である。より好ましくは、含有水分量が低い有機溶媒(非水系溶媒)である。このような有機溶媒としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、2,3−ジメチルエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等のフッ素を含有する環状カーボネート類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,6−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類;リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリトリル、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)等のリン酸エステル類;ヘキサメトキシホスファゼン 、ヘキサキス(2,2−ジフルオロエトキシ)ホスファゼン、ヘキサキス(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)ホスファゼン等のホスファゼン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、バレロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル等のモノニトリル類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,5−ジシアノペンタン、1,6−ジシアノヘキサン、2−メチルグルタロニトリル等のジニトリル類;ニトロメタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン等を挙げることができる。
これらの中でも、鎖状カーボネート類、環状カーボネート類等の炭酸エステル類、フッ素を含有する環状カーボネート類、ラクトン類、エーテル類が好ましく、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等がより好ましく、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等のカーボネート系溶媒がさらに好ましい。また、比誘電率が30〜100の範囲にあるものが特に好ましく、このような溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができる。上記非水系溶媒は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記溶媒は、スルホン化合物(2)と溶媒の合計量100vol%中、70vol%以下であることが好ましい。より好ましくは60vol%以下であり、さらに好ましくは50vol%以下であり、最も好ましくは40vol%以下である。
上記溶媒は、上記スルホン化合物(2)と溶媒の合計量100質量%中、70質量%以下であることが好ましい。より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下であり、最も好ましくは40質量%以下である。
ポリマーやポリマーゲルを有機溶媒に代えて用いる場合は次の方法を採用すればよい。すなわち、従来公知の方法で成膜したポリマーに、上述の非水系溶媒に電解質塩等を溶解させた溶液を滴下して、電解質塩並びに非水系溶媒を含浸、担持させる方法;ポリマーの融点以上の温度でポリマーと電解質塩等とを溶融、混合した後、成膜し、ここに非水系溶媒を含浸させる方法;モノマー、電解液及び重合開始剤を混合した溶液を用いて電池を作成後、熱によりモノマー重合する方法、モノマー、電解液、光重合開始剤を混合した溶液を電極シート上に塗工し、UV硬化する方法;(以上、ゲル電解質)、予め電解質塩等を有機溶媒に溶解させた非水電解液とポリマーとを混合した後、これをキャスト法やコーティング法により成膜し、有機溶媒を揮発させる方法;ポリマーの融点以上の温度でポリマーと電解質塩等とを溶融し、混合して成形する方法(真性ポリマー電解質)等が挙げられる。
有機溶媒に代えて用いられるポリマーとしては、エポキシ化合物(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アリルグリシジルエーテル等)の単独重合体又は共重合体であるポリアルキレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の(メタ)アクリル系ポリマー、ポリアクリロニトリル(PAN)等のニトリル系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系ポリマー、及びこれらの共重合体等が挙げられる。またこれらのポリマーは架橋剤によって架橋し、ゲル状であることも好ましい形態の一つである。
1−6.添加剤
本発明の非水電解液は、非水電解液二次電池の各種特性の向上を目的とする添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、メチルビニレンカーボネート(MVC)、エチルビニレンカーボネート(EVC)等の不飽和結合を有する環状カーボネート;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,3−プロパ−1−エンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブサルファン、スルホレン、テトラメチルチウラムモノスルフィド、トリメチレングリコール硫酸エステル等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩等のリン酸塩;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素化合物;等が挙げられる。これらの中でもビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)等の不飽和結合を有する環状カーボネート、1,3−プロパンスルトンを用いることが好ましい。さらに好ましくはビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)等の不飽和結合を有する環状カーボネートである。
上記添加剤は、本発明の非水電解液100質量%中、0.1質量%〜10質量%の範囲で用いるのが好ましい。より好ましくは0.2質量%〜8質量%、さらに好ましくは0.3質量%〜5質量%である。添加剤の使用量が少なすぎるときには、添加剤に由来する効果が得られ難い場合があり、一方、多量に他の添加剤を使用しても、添加量に見合う効果は得られ難く、また、非水電解液の粘度が高くなり伝導率が低下する虞がある。なお、非水電解液100質量%とは、フルオロスルホニルイミド化合物(1)およびスルホン化合物(2)に加え、必要に応じ用いられる他の電解質塩、オキサラト化合物(3)、他の媒体、添加剤等、非水電解液に含まれる全ての成分の合計を意味する。
2.非水電解液二次電池
2−1.非水電解液二次電池
本発明の非水電解液を用いる非水電解液二次電池は、正極、負極、セパレーター、電解液、外装材等から構成される。また非水電解液二次電池は本発明の非水電解液を用いる二次電池である。好ましくはリチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、非水電解液を用いる金属空気二次電池等であり、より好ましくはリチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、さらに好ましくはリチウムイオン二次電池である。
2−2.正極
本発明の非水電解液二次電池においては、正極活物質としては、リチウムイオンやナトリウムイオンを吸蔵・放出可能であれば良く、従来公知のリチウムイオン二次電池やナトリウムイオン二次電池で使用される正極活物質を用いることができる。リチウムイオン二次電池の活物質としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、LiNi1-x-yCoxMny2やLiNi1-x-yCoAly2(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される三元系酸化物などの遷移金属酸化物、LiAPO4(A=Fe、Mn、Ni、Co)などのオリビン構造を有する化合物、遷移金属を複数取り入れた固溶材料(電気化学的に不活性な層状のLi2MnO3と、電気化学的に活性な層状のLiMO2(M=Co、Niなどの遷移金属)との固溶体)、LiCoxMn1-x2(0≦x≦1)、LiNixMn1-x2(0≦x≦1)、Li2APO4F(A=Fe、Mn、Ni、Co)などのフッ化オリビン構造を有する化合物、硫黄などを用いることができる。これらを単独で使用してもよく、複数組み合わせて使用してもよい。
ナトリウムイオン二次電池の活物質としては、NaNiO2、NaCoO2、NaMnO2、NaVO2、NaFeO2、Na(NixMn1-x)O2(0<X<1)、Na(FexMn1-x)O2(0<X<1)、NaVPO4F、Na2FePO4F、Na32(PO43等が挙げられる。
正極は、正極活物質、導電助剤及び結着剤等を含む正極合剤が正極集電体に担持されてなるものであり、通常、シート状に成形されている。
正極の製造方法は特に限定されないが、例えば、(i)分散用溶媒に正極合剤を溶解又は分散させた正極活物質組成物を正極集電体にドクターブレード法等で塗工したり、正極集電体を正極活物質組成物に浸漬した後、乾燥する方法;(ii)正極活物質組成物を混練成形し乾燥して得たシートを正極集電体に導電性接着剤を介して接合し、プレス、乾燥する方法;(iii)液状潤滑剤を添加した正極活物質組成物を正極集電体上に塗布又は流延して、所望の形状に成形した後、液状潤滑剤を除去し、次いで、一軸又は多軸方向に延伸する方法;等が挙げられる。また、必要に応じて乾燥後の正極合剤層を加圧してもよい。これにより正極集電体との接着強度が増し、電極密度も高められる。
正極集電体の材料、正極活物質、導電助剤、結着剤、正極活物質組成物に用いられる溶媒(正極合剤を分散または溶解する溶媒)は特に限定されず、従来公知の材料を用いればよい。例えば、特開2014−13704号公報に記載の各材料を用いることができる。
正極活物質の使用量は、正極合剤100質量部に対して75質量部以上、99質量部以下とするのが好ましく、より好ましくは85質量部以上であり、さらに好ましくは90質量部以上であり、好ましくは98質量部以下であり、より好ましくは97質量部以下である。
導電助剤を用いる場合の、正極合剤中の導電助剤の含有量としては、正極合剤100質量%に対して、0.1質量%〜10質量%の範囲で用いるのが好ましい(より好ましくは0.5質量%〜10質量%、さらに好ましくは1質量%〜10質量%)。導電助剤が少なすぎると、導電性が極端に悪くなり、負荷特性及び放電容量が劣化する虞がある。一方、多すぎると正極合剤層のかさ密度が高くなり、結着剤の含有量をさらに増やす必要があるため好ましくない。
結着剤を用いる場合の正極合剤中の結着剤の含有量としては、正極合剤100質量%に対して0.1質量%〜10質量%が好ましい(より好ましくは0.5質量%〜9質量%、さらに好ましくは1質量%〜8質量%)。結着剤が少なすぎると良好な密着性が得られず、正極活物質や導電助剤が集電体から脱離してしまう虞がある。一方、多すぎると内部抵抗の増加を招き電池特性に悪影響を及ぼしてしまう虞がある。
導電助剤及び結着剤の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視等)、イオン伝導性等を考慮して適宜調整することができる。
2−3.負極
負極は、負極活物質、分散用溶媒、結着剤及び必要に応じて導電助剤等を含む負極活物質組成物が負極集電体に担持されているものであり、通常、シート状に成形されている。
負極活物質としては、リチウムイオン電池やナトリウムイオン二次電池等の非水二次電池で使用される従来公知の負極活物質を用いることができ、リチウムイオンやナトリウムイオン等のアルカリ金属を吸蔵・放出可能なものであればよい。具体的には、黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛)、石炭,石油ピッチから作られるメソフェーズ焼成体、難黒鉛化性炭素等の炭素材料;Li、Na等のアルカリ金属;Si、Si合金、SiO等のSi系負極材料;Sn合金等のSn系負極材料;リチウム金属、リチウム−アルミニウム合金等のリチウム合金等のリチウム系材料;Li4Ti512等のチタン系負極を用いることができる。
好ましくは 人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛材料、石炭,石油ピッチから作られるメソフェーズ焼成体、難黒鉛化性炭素等の炭素材料等の炭素材料であり、より好ましくは、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛材料および難黒鉛化炭素であり、さらに好ましくは人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛材料である。
黒鉛材料の中でも、ラマン分光法により測定されたラマンスペクトルから得られる強度比Rが0.1以上、0.5以下の炭素材料(黒鉛)を用いると、スルホン化合物が負極上で分解するのを抑制することができる。ラマンスペクトルは波長532nmのレーザーで励起させたラマン光で測定する。強度比Rはグラファイト構造に起因する1580cm-1のピーク強度IGとグラファイト構造の欠陥に起因する1350cm-1のピーク強度IDの比率(ID/IG)である。なおピークは、±10cm-1程度は、ずれたところに出ていても構わない。強度比Rが上記範囲にあれば、スルホランの分解を抑制し、電池の容量を高めることができる。なお、ラマンスペクトルの測定方法の詳細は後述する。
上記の範囲の強度比Rを持つ黒鉛としては、日本黒鉛社製のCGB10、CGB20Timcal社製のSLP50、日立化成社製のSMG等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができるが、これらに限定されない。
黒鉛の平均粒径(D50)は、3μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上40μm以下がより好ましく、8μm以上30μm以下がさらに好ましい。なお、平均粒径は、JIS M8511:2014に準拠し、レーザー回折/散乱法により測定することが好ましい。
また、黒鉛の比表面積は、0.5m2/g〜20m2/gが好ましく、1m2/g〜15m2/gがより好ましく、2m2/g〜10m2/gがさらに好ましい。なお、比表面積は、JIS M8511:2014に準拠し、BET法により測定することが好ましい。
タップ密度は、0.1g/cm3〜2g/cm3が好ましく、0.3g/cm3〜1.5g/cm3が好ましく、密度は、0.1g/cm3〜2g/cm3が好ましく、0.3g/cm3〜1.5g/cm3がより好ましく、0.5g/cm3〜1.2g/cm3がさらに好ましい。なお、タップ密度は、容器内に所定量の粉末を入れ、タッピング装置を用いて粉末の体積がそれ以上減少しないところまでタップし、粉末の質量をタップ後の粉末体積で除することにより測定する。
また、負極には、Si、SiO等のケイ素系負極が含まれていてもよい。
負極の製造方法としては、正極の製造方法と同様の方法を採用することができる。また、負極の製造時に使用する導電助剤、結着剤、材料分散用の溶媒も、正極で用いられるものと同様のものが用いられる。
負極集電体の材料としては、銅、鉄、ニッケル、銀、ステンレス鋼(SUS)等の導電性金属を用いることができる。なお、薄膜への加工が容易である観点からは、銅が好ましい。
2−4.セパレーター
セパレーターは正極と負極とを隔てるように配置されるものである。セパレーターには特に制限がなく、本発明では、従来公知のセパレーターはいずれも使用することができる。具体的なセパレーターとしては、例えば、非水電解液を吸収・保持し得るポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレーターやセルロース系セパレーターなど)、不織布セパレーター、多孔質金属体等が挙げられる。
上記多孔性シートの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造を有する積層体、セルロース等が挙げられる。
上記不織布セパレーターの材質としては、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、アラミド、ガラス等が挙げられ、非水電解液層に要求される機械的強度等に応じて、上記例示の材質を単独で、又は、混合して用いることができる。
また、ゲル電解質を用いる場合には必ずしもセパレーターは必要ではないが、ゲル電解質の支持体として上記の多孔性シート、不織布セパレーターをゲル電解質と併用することも可能である。これらセパレーターを併用することにより、ゲル電解質の性能が向上し、電池の性能を向上させることができる。
2−5.外装材
正極、負極、セパレーター及び非水電解液等を備えた電池素子は、リチウムイオン二次電池使用時の外部からの衝撃、環境劣化等から電池素子を保護するため電池外装材に収容される。本発明では、電池外装材の素材は特に限定されず従来公知の外装材はいずれも使用することができる。
2−6.その他の構成
本発明に係るリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されず、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等、リチウムイオン二次電池の形状として従来公知の形状はいずれも使用することができる。また、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に搭載するための高電圧電源(数10V〜数100V)として使用する場合には、個々の電池を直列に接続して構成される電池モジュールとすることもできる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(LiFSIとスルホランからなる電解液の検討)
(電解液1)
LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、日本触媒製)9.35gに35℃で溶解させたスルホラン(キシダ化学社製)を加え、1mol/LのLiFSIのスルホラン溶液(電解液1)を作製した。
評価に用いたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドは、合成により得られたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドのイソブチロニトリル溶液に、1,1,2,2−テトラクロロエタンを添加しながら、イソブチロニトリルを徐々に留去し、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドが析出した1,1,2,2−テトラクロロエタン溶液を得て、それを濾過、乾燥することで合成した。なお、合成に用いる溶媒、析出に用いる溶媒は適宜選択できる。
(電解液2)
LiTFSI(キシダ化学社製)14.35gに35℃で溶解させたスルホラン(キシダ化学社製)を加え、1mol/LのLiTFSIのスルホラン溶液(電解液2)を作製した。
(電解液3)
LiPF6(森田化学社製)7.60gに35℃で溶解させたスルホラン(キシダ化学社製)を加え、1mol/LのLiPF6のスルホラン溶液(電解液3)を作製した。
(電池評価:黒鉛負極ハーフセル評価)
コインセル型リチウムイオン二次電池について、充放電試験装置(ACD−01、アスカ電子株式会社製)を用いて、25℃にて、充電速度0.2Cでの0.05V定電流定電圧充電を電流量0.02Cまで行った。次いで放電速度0.2Cで電圧が2.0Vになるまで放電を行った。2サイクル目の放電容量を初期容量とした。なお、本評価は負極のハーフセルで行っているため、電圧が下がる操作を充電、電圧が上がる操作を放電としている。
実施例1
市販の負極シート(活物質:天然黒鉛)を正極、Liメタルを負極とし、セパレーターとしてガラスフィルター(ワットマン社製 GF/F)を、それぞれ円形(正極φ12mm、負極φ14mm、セパレーターφ16mm)に打ち抜いた。宝泉株式会社より購入したCR2032コイン型電池用部品(正極ケース(SUS316L製)、負極キャップ(SUS316L製)、スペーサー(1mm厚、SUS316L製)、ウェーブワッシャー(SUS316L製)、ガスケット(ポリプロピレン製))および、電解液1、正極、負極、セパレーターを用いてコインセル型リチウムイオン二次電池(負極ハーフセル)を作製した。得られたコインセル型リチウムイオン二次電池を、上述の電池評価条件にて評価を行った。
比較例1
電解液1の代わりに電解液2を用いた以外は実施例1と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、電池評価を行った。
比較例2
電解液1の代わりに電解液3を用いた以外は実施例1と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、電池評価を行った。
図1に2サイクル目の充電曲線を示す。実施例1(実線)と、比較例1(点線)及び比較例2(破線)の対比から、フルオロスルホニルイミド化合物(1)であるLiFSIとスルホン化合物であるスルホランを組み合わせて用いることにより、黒鉛のステージ構造が明確に出ており、炭素系負極である天然負極にLiが円滑に挿入できていることがわかる。また、実施例1の電圧が高く、抵抗が低いこともわかる。実施例1ではスルホランの負極での分解が抑制されていることが原因であると考えられる。
表1に初期容量を示す。実施例1の放電容量が比較例1及び2よりも大きく、フルオロスルホニルイミド化合物であるLiFSIの効果が確認できた。
Figure 0006715096
(電池評価:フルセル評価)
前述の黒鉛負極ハーフセル評価と同様に試験を行った。充放電条件は25℃にて、充電速度0.2Cでの4.2V定電流定電圧充電を電流量0.02Cまで行った。次いで放電速度0.2Cで電圧が3.0Vになるまで放電を行った。2サイクル目の放電容量を初期容量とした。
実施例2
市販の正極シート(活物質:コバルト酸リチウム)と、市販の負極シート(活物質:天然黒鉛)と、セパレーターとしてガラスフィルター(ワットマン社製 GF/F)を、それぞれ円形(正極φ12mm、負極φ14mm、セパレーターφ16mm)に打ち抜いた。宝泉株式会社より購入したCR2032コイン型電池用部品(正極ケース(アルミクラッドSUS304L製)、負極キャップ(SUS316L製)、スペーサー(1mm厚、SUS316L製)、ウェーブワッシャー(SUS316L製)、ガスケット(ポリプロピレン製))および、電解液1、正極、負極、セパレーターを用いてコインセル型リチウムイオン二次電池(フルセル)を作製した。得られたコインセル型リチウムイオン二次電池を、上述のフルセル評価の電池評価条件にて評価を行った。
比較例3
電解液1の代わりに電解液2を用いた以外は実施例2と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、電池評価を行った。
比較例4
電解液1の代わりに電解液3を用いた以外は実施例2同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、電池評価を行った。
表2に初期容量を示す。実施例2の放電容量が比較例3及び4よりも大きく、フルオロスルホニルイミド化合物であるLiFSIの効果が確認できた。
Figure 0006715096
(電解液4)
上記で合成したLiFSI0.94gに35℃で溶解したスルホラン(キシダ化学社製)を5.00g加え、1mol/kgのLiFSIのスルホラン溶液(電解液4)を作製した。
(電解液5)
スルホランに代えて45℃で溶解したエチルメチルスルホン(東京化成工業社製)を用いた以外は電解液4と同様にして1mol/kgのLiFSIのエチルメチルスルホン溶液(電解液5)を作製した。
(電解液6)
LiTFSIを1.44g用いた以外は電解液4と同様にして1mol/kgのLiTFSIのスルホラン溶液(電解液6)を作製した。
(電解液7)
スルホランに代えて45℃で溶解したエチルメチルスルホン(東京化成工業社製)を用いた以外は電解液6と同様にして1mol/kgのLiTFSIのエチルメチルスルホン溶液(電解液7)を作製した。
(電池評価:フルセル評価)と同様に0.2Cで5サイクル充放電を行った後、1Cにレートを上げて合計200サイクル充放電を行った。200サイクル後の放電容量を比較した。
実施例3
電解液1の代わりに電解液4を用いた以外は実施例2と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、上述の(電池評価2)の条件にて評価を行った。
実施例4
電解液4の代わりに電解液5を用いた以外は実施例3と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、評価を行った。
比較例5
電解液4の代わりに電解液6を用いた以外は実施例3と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、評価を行った。
比較例6
電解液4の代わりに電解液7を用いた以外は実施例3と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、評価を行った。
表3に200サイクル後の放電容量を示す。LiFSIを電解質塩に用いた実施例3および4は、LiTFSIを用いた比較例5および比較例6と比較して大きな放電容量を示した。このようにフルオロスルホニルイミド化合物であるLiFSIの効果が長期サイクルにおいても確認された。
Figure 0006715096
実施例5〜11と比較例7
LiFSI(日本触媒社製)とLiPF6(森田化学工業社製)を用いて、表4に示した組成の1.0mol/LのLi塩の電解液(溶媒はスルホラン)8種類を調製した。各電解液を用いて、コインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、充放電試験装置(ACD−01、アスカ電子株式会社製)を用いて、25℃にて、0.2Cで5サイクルエージングし、その後1Cでサイクル特性を評価した。1Cでの1サイクル目の容量を初期放電容量、100サイクル後の容量を1サイクル目の容量で除した数値を維持率とし、結果を表4に示した。また、0.2Cで5サイクルエージングした後、0.2Cで充電後、5Cで放電したときの放電容量も併せて示す。なお、1.0mol/LのLiPF6を含む電解液に関しては、初期容量が非常に低かったため、1Cサイクル特性及び5C放電は行わなかった。
Figure 0006715096
1.0mol/LのLiPF6を含む電解液を用いた電池は初期放電容量が非常に低いが、LiFSIが20mol%含まれている実施例11では、初期容量、維持率ともに、LiFSIが100mol%である実施例5とほぼ同等であった。すなわち、LiFSIが20mol%以上含まれていれば、高いサイクル特性を示すことが確認された。5C放電においては、LiFSI量が多いほど、放電容量が大きいことがわかる。
実施例12〜16と比較例8
LiFSI(日本触媒社製)とLiBF4(キシダ化学社製)を用いて、表5に示した組成の1.0mol/LのLi塩の電解液(溶媒はスルホラン)6種類を調製した。各電解液を用いて、コインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、充放電試験装置(ACD−01、アスカ電子株式会社製)を用いて、25℃にてサイクル特性を評価した。結果を表5に示した。LiFSIが20mol%以上含まれていれば、高いサイクル特性を示すことがわかる。
Figure 0006715096
(凝固点の測定)
LiFSI(日本触媒社製)とLiPF6(森田化学工業社製)を用いて、表6に示した組成の1.5mol/LのLi塩の電解液(溶媒はスルホラン)9種類を調製した。DSCを用いて得られた電解液の凝固点を測定した。凝固点が−40℃以下であれば○、−40℃を超える場合は×とした。結果を表6に示した。なお、LiFSIが1.5mol/Lの電解液(溶媒はスルホラン)のDSCのチャートを図2に示した。
Figure 0006715096
(LiFSIの濃度の検討)
LiFSI(日本触媒社製)とスルホラン(キシダ化学社製)を用いて、LiFSIの濃度が、0.8mol/L、1.0mol/L、1.2mol/L、1.5mol/L、2.0mol/Lの5種類の電解液を作製した。得られた電解液を用いてセパレーターとしてセルロースセパレータを用いた以外は実施例2と同様にコインセルを作製した。0.2Cにて5サイクル充放電した後、1Cにてサイクル特性を評価した。初期放電容量と100サイクル後の容量維持率を表7に示した。
また、0.2Cで充電した後、5Cで放電したときの放電電流容量および放電電力容量を表8に示した。なお、測定例15〜19における溶媒はスルホラン(SL)であるが、測定例20は、LiPF6を電解質とし、溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を体積比3:7で用いた例である。
Figure 0006715096
Figure 0006715096
(電池の低温特性評価)
下記組成の電解液を用いてコインセルの低温評価を行った。電池を25℃、0.2Cで充電した後、−20℃で放電を行ったときの放電電力容量及び放電容量を表9に示した。電解液の凍結が観測されなかった測定例22の1.5mol/LのLiFSI/SLでは、放電容量が大きいだけでなく、放電電力容量も大きいことが確認できた。
Figure 0006715096
(電解液の熱安定性評価)
電解液の熱安定性をDSCにて評価した。測定装置はNETZSCH社製DSC3500、測定用のパンは金蒸着CrNi鋼高圧試料容器(27μl)を用いた。これらの装置を用い、25℃から400℃まで10℃/分で昇温を行った。電解液は電解液4(1mol/kg LiFSIのスルホラン溶液)および1mol/kg LiPF6のEC/EMC(体積比3/7)溶液を用いた。得られたDSCチャートを図3に示す。1mol/kg LiPF6のEC/EMC溶液は250℃付近で吸熱を示したのち、大きな発熱が観測されたのに対し、1mol/kg LiFSIのスルホラン溶液は大きな発熱は観測されなかった。1mol/kg LiFSIのスルホラン溶液は熱安定性の高い電解液であり、電池の熱暴走を起こしにくいと考えられる。
(他の溶媒の効果)
1.0mol/LのLiFSI/SL(スルホランの比誘電率は43.3(30℃))系電解液9容量部に対し、下記表に示した溶媒を容量部添加した。得られた電解液を用いてコインセルを作製し、エージング後、1Cにて25サイクル行った後の放電容量を表10に示した。なお、表中で用いた略語は以下のとおりである。
DOL:1.3−ジオキソラン
DME:ジメトキシエタン
GBL:γ−ブチルラクトン
FEC:フルオロエチレンカーボネート
EC:エチレンカーボネート
PC:プロピレンカーボネート
AcOBu:酢酸ブチル
DMC:ジメチルカーボネート
DEC:ジエチルカーボネート
また、放電容量は、以下の基準で評価した。
◎:1.9mAh以上
○:1.4mAh以上、1.9mAh未満
△:0.2mAh以上、1.4mAh未満
×:0.2mAh未満
Figure 0006715096
比誘電率が30以上であるGBL、FEC、EC、PCを添加した電解液を用いた場合に、放電容量が高く、効果があることが確認された。
(オキサラト化合物を含む電解液の検討)
(電解液2−1)
下式で表されるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;LiFSI(日本触媒社製)0.94gに、35℃で溶解させたスルホラン(キシダ化学社製)を5.00g加え、1mol/kgのLiFSIのスルホラン溶液(電解液2−1)を調製した。
Figure 0006715096
(電解液2−2)
電解液2−1と同様に1mol/kgのLiFSIのスルホラン溶液を調製し、この溶液に対して、0.100gのリチウムビス(オキサラト)ボレート(下記)(LiBOB)を加え、電解液2−2を調製した。
Figure 0006715096
(電解液2−3)
電解液2−1と同様に1mol/kgのLiFSIのスルホラン溶液を調製し、この溶液に対して、0.100gのリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(下記)(LiDFOB)を加え、電解液2−3を調製した。
Figure 0006715096
(電解液2−4)
電解液2−1と同様に1mol/kgのLiFSIのスルホラン溶液を調製し、この溶液に対して、0.100gのビニレンカーボネート(VC)を加え、電解液2−4を調製した。
(正極シート)
正極活物質(LiCoO2)、導電助剤1(アセチレンブラック、AB)、導電助剤2(グラファイト)及び結着剤(ポリフッ化ビニリデン、PVdF)を92:2:2:4の質量比で混合し、N−メチルピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとし、アルミニウム箔(正極集電体)上に塗工し、乾燥して、正極シートを作製した。
(負極シート)
負極活物質(天然黒鉛)、導電助剤(炭素繊維、「VGCF(登録商標)」、昭和電工社製)、及び結着剤(ポリフッ化ビニリデン、PVdF)を95.7:0.5:3.8の質量比で混合した負極合剤スラリーを銅箔(負極集電体)上に塗工し、乾燥して、負極シートを作製した。
(コインセル型リチウムイオン二次電池の作製)
正極シート、負極シートおよびガラス繊維ろ紙(ワットマン社製、GF/F)を、それぞれ円形(正極φ12mm、負極φ14mm、ガラス繊維ろ紙φ16mm)に打ち抜いた。宝泉株式会社より購入したCR2032コイン型電池用部品(正極ケース(アルミクラッドSUS304L製)、負極キャップ(SUS316L製)、スペーサー(1mm厚、SUS316L製)、ウェーブワッシャー(SUS316L製)、ガスケット(ポリプロピレン製))を用いてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製した。具体的には、ガスケットを装着した負極キャップ、ウェーブワッシャー、スペーサー、負極シート(負極の銅箔側がスペーサーと対向するように設置)、セパレーターをこの順で重ねた後、100μLの非水電解液をポリエチレン製のセパレーターに含浸させた。次いで、正極合剤塗布面が負極活物質層側と対向するように正極シートを設置し、その上に正極ケースを重ね、カシメ機でかしめることによりコインセル型リチウムイオン二次電池を作製した。
(電池評価:フルセル評価)
充放電試験装置(ACD−01、アスカ電子株式会社製)を使用して、温度25℃の環境下、コインセル型リチウムイオン二次電池の放電容量測定を行った。充放電条件は、充電速度0.2Cでの4.35V定電流定電圧充電を電流量0.02Cまで行い、次いで放電速度0.2Cで電圧が3.0Vになるまで放電を行った。この0.2Cでの充放電を5回繰り返したのち、充電速度1C、放電速度1Cにした以外は0.2Cの時と同じ条件で300回充放電を繰り返した。表11に300サイクル後の放電容量を示す。
Figure 0006715096
(電池の安全性)
DSCの測定
DSCの測定装置および測定条件は、電解液の熱安定性評価と同様にした。電解液2−2および1.2mol/LのLiPF6のEC/EMC(体積比3/7)溶液を用いて、実施例2−1と同様にしてコインセルを作製し、0.2Cでの充放電を5回繰り返した後、0.2Cで4.35Vまで充電した。得られた電池をグローブボックスで解体し、正極および負極を約2mgずつ削り取り、それぞれをDSCのパンに詰め、電解液を2μl添加した。パンを封止後、DSCを測定した。正極および負極での発熱量を表12に示す。正極、負極とも本発明の電解液を用いることにより、充電状態の正極および負極との反応による発熱を大幅に減少することが確認された。本発明の電解液は電池の熱暴走を抑制できるといえる。
Figure 0006715096
(特定のR値を有する黒鉛の検討)
実施例で用いた測定方法は、以下のとおりである。
ラマンスペクトル測定
JASCO NR−3100(日本分光社製)を用いて、以下の条件にてラマンスペクトルを測定した。得られたラマンスペクトルについて、1580cm-1付近のピーク強度をIG、1360cm-1付近のピーク強度をIDとし、強度比R(R=ID/IG)を算出した。
レーザー波長:532nm
露光時間:10秒×5回
中心波数:1400cm-1
スリット:φ0.05mm
減光器:オープン
対物レンズ:20倍
データ間隔:1cm-1
スムージング処理:ベースライン補正(872cm-1〜1873cm-1の間で直線補正)
スムージング処理、単純平均移動(コンボリューション幅 5)
(電解液3−1の調製)
LiPF6(キシダ化学社製)を1.52gのエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒(EC:EMC=3:7(体積比)キシダ化学社製)に溶解させ、1mol/LのLiPF6が含まれた電解液3−1を得た。
(電解液3−2の調製)
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI:日本触媒社製)2.805gに、35℃で溶解したスルホラン(キシダ化学社製)を加え、1.5mol/Lのスルホラン溶液(電解液3−2)を得た。
(負極シートの作製)
負極活物質及び結着剤(ポリフッ化ビニリデン、PVdF)を92:8の質量比で混合した負極合剤スラリーを銅箔(負極集電体)上に塗工し、乾燥して、負極シートを作製した。負極活物質としては以下の黒鉛を用いた。
実施例3−1:CGB10(日本黒鉛社製)
実施例3−2:SLP50(Timcal社製)
実施例3−3:SMG(日立化成社製)
参考例3−1:MAGE(日立化成社製)
(コインセル型リチウムイオン二次電池の作製)
負極シート、リチウム箔及び、ガラスフィルター(ワットマン社製 GF/F)を、それぞれ円形(負極φ12mm、リチウム箔φ14mm、ガラスフィルターφ16mm)に打ち抜いた。宝泉株式会社より購入したCR2032コイン型電池用部品(正極ケース(アルミクラッドSUS304L製)、負極キャップ(SUS316L製)、スペーサー(1mm厚、SUS316L製)、ウェーブワッシャー(SUS316L製)、ガスケット(ポリプロピレン製))を用いてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製した。具体的には、ガスケットを装着した負極キャップ、ウェーブワッシャー、スペーサー、リチウム箔、セパレーターをこの順で重ねた後、電解液1または電解液2をガラスフィルターに含浸させた。次いで、負極シートを設置し、その上に正極ケースを重ね、カシメ機でかしめることによりコインセル型リチウムイオン二次電池のハーフセルを作製した。
(電池評価:フルセル評価)
充放電試験装置(ACD−01、アスカ電子株式会社製)を使用して、温度25℃の環境下、コインセル型リチウムイオン二次電池の放電容量測定を行った。充放電条件は、充電速度0.2Cでの2.0V定電流定電圧充電を行い、次いで放電速度0.2Cで電圧が0.05Vになるまで放電を行った。3サイクル目の放電容量を記した。
Figure 0006715096
本発明の非水電解液は、非水電解液二次電池の非水電解液として有用であり、本発明のリチウムイオン二次電池は、スマートフォンやパーソナルコンピューター用の電源、自動車用電源等として有用である。

Claims (5)

  1. 一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド化合物(式(1)中、Mはアルカリ金属イオンを表し、Xはフッ素原子または炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表す)と、一般式(2)で表されるスルホン化合物(R1及びR2は、それぞれ同一もしくは独立して炭化水素基を表し、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)を含み、
    上記スルホン化合物の濃度が、非水電解液中、30〜95質量%であることを特徴とする非水電解液(但し、ジメトキシエタンを含むものを除く)
    Figure 0006715096
    Figure 0006715096
  2. 上記スルホン化合物が、環状スルホン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液。
  3. 更に、γ−ブチロラクトン、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートから選択される溶媒を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解液。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液を用いたことを特徴とする非水電解液二次電池。
  5. 負極が負極活物質として炭素材料を含むことを特徴とする請求項4に記載の非水電解液二次電池。
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