以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
なお、以下の説明において、単位であることを明確にするために単位としての記号や文字を〔 〕で括って表記する場合がある。
図1乃至図5に、本発明の太陽光発電設備の異常診断方法、異常診断装置、及び異常診断プログラムの実施形態の一例を示す。
本実施形態では、図4に回路構成を示す太陽電池モジュール20に本発明の太陽光発電設備の異常診断方法の一例が適用された場合を例に挙げて説明する。なお、図4において、矢印は回路における電流の流れの向きを表す。
なお、太陽光発電装置全体としては、例えば、複数の太陽電池モジュール20が直列接続されて構成される態様(太陽電池ストリングとも呼ばれる)が想定され得る。
また、複数の太陽電池モジュール20からの(言い換えると、太陽電池ストリングとしての)発電電力はパワーコンディショナ(または系統連系用インバータ;図示されていない)へと出力され、当該パワーコンディショナにおいて直流電力から交流電力へと変換される。
本実施形態では、複数の太陽電池セル22が直列接続されて太陽電池クラスタ21が構成され、そして、複数の太陽電池クラスタ21が直列接続されて太陽電池モジュール20が構成される。また、太陽電池クラスタ21のそれぞれに対して並列にバイパスダイオード23が接続される。
図4に示す例では、複数の太陽電池クラスタ21A,21B,21C,…,21X(但し、個数は任意)が直列接続されて太陽電池モジュール20が構成され、太陽電池クラスタ21A,21B,21C,…,21Xのそれぞれに対して並列にバイパスダイオード23A,23B,23C,…,23Xが接続される。
バイパスダイオード23A,23B,23C,…,23Xは、それぞれ、各々が並列に接続された太陽電池クラスタ21A,21B,21C,…,21Xの発電電力が低下して隣りの他の太陽電池クラスタ21若しくは他の太陽電池モジュール(図示されていない)からの印加電圧が所定の順方向電圧に達した場合に、順方向に電流を流すことにより、各々が並列に接続された太陽電池クラスタ21A,21B,21C,…,21Xに対するバイパス経路を形成するものである。
これにより、複数の太陽電池クラスタ21のうちの一部が例えば故障したり日陰に入ったりなどして発電電力が低下した場合に、バイパスダイオード23によって形成されるバイパス経路を介し、前記発電電力が低下した太陽電池クラスタ21を挟んで隣り合う他の太陽電池クラスタ21同士が接続され、若しくは、前記発電電力が低下した太陽電池クラスタ21を挟んで隣り合う他の太陽電池クラスタ21と他の太陽電池モジュール(図示されていない)とが接続され、故障や日陰化などの影響を回避しつつ複数の太陽電池モジュール20からの(太陽電池ストリングからの)発電電力のパワーコンディショナ(図示されていない)への出力が行われる。
図5に示す例では、太陽電池クラスタ21Bの太陽電池セル22が故障して(符号29)当該太陽電池クラスタ21Bの発電電力が低下したため、当該太陽電池クラスタ21Bに並列に接続されているバイパスダイオード23Bに電流が流れている(なお、図5において、矢印は回路における電流の主な流れの向きを表す)。これにより、発電電力が低下した太陽電池クラスタ21Bを挟んで隣り合う太陽電池クラスタ21Aと太陽電池クラスタ21Cとが接続され、太陽電池クラスタ21Bにおける太陽電池セル22の故障の影響を回避しつつ発電電力の出力が行われる。
そして、太陽光発電設備としての太陽電池モジュール20に適用される本実施形態の太陽光発電設備の異常診断方法は、太陽光発電設備から発生する音が採取されて取得された音データについて周波数成分毎のスペクトル値が計算され(S1,S2)、当該周波数成分毎のスペクトル値が用いられて太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無が判定される(S3)と共に異常・故障が発生していると判定された場合には異常通知信号が出力される(S4)ようにしている(図1参照)。
また、本実施形態の太陽光発電設備の異常診断装置10は、太陽光発電設備から発生する音を採取して音データを出力する手段としての音検知部1と、音データについて周波数成分毎のスペクトル値を計算する手段としての変換部2と、周波数成分毎のスペクトル値を用いて太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無を判定すると共に異常・故障が発生していると判定した場合には異常通知信号を出力する手段としての判定部3と、異常通知信号に従って警報を発令する手段としての警報出力部4とを有する(図2参照)。
そして、太陽光発電設備の異常診断方法の実施として、まず、太陽光発電設備から発生する音の採取が行われて音データの取得が行われる(S1)。
具体的には、音採取機能を備える音検知部1が診断対象の太陽光発電設備に対して設置され、当該太陽光発電設備から発生する音が音検知部1の音採取機能によって採取される(言い換えると、音の音圧信号が採取される、或いは、音の音圧レベルが測定される)。
音検知部1の音採取機能を構成する具体的な機序は、特定の機器や装置に限定されるものではなく、太陽光発電設備から発生する作動音(ただし、作動音の発生に起因したり関連したりする種々の物理量を含む)を採取(言い換えると、集音,収音)することに適切な機器や装置が適宜選択される。音検知部1の音採取機能を構成する具体的な機序として、例えば音センサ(マイクロホン)や振動センサ(振動の変位検出型センサ,速度検出型センサ,若しくは加速度検出型センサ)が用いられ得る。
音検知部1の設置の態様は、特定の態様に限定されるものではなく、診断対象の太陽光発電設備から発生する作動音を採取(集音,収音)し得るように適切な場所や設置・固定の仕方などが適宜選択される。
ここで、音検知部1は、太陽光発電設備に関する診断単位(言い換えると、太陽光発電設備における異常・故障の検出単位)としてのユニットやモジュールのそれぞれから発生する音を個別に採取するようにし、診断単位としてのユニット等のそれぞれに対応させて設置・配置されるようにしても良い。
具体的には、太陽光発電設備の例えば太陽電池クラスタ21,太陽電池セル22,バイパスダイオード23,或いはパワーコンディショナ(図示されていない)などのそれぞれを対象としてこれらの各々から発生する音を個別に採取し得るように設置・配置されるようにしても良い。この場合、音検知部1が、携帯可能であるように構成され、診断単位としてのユニット等のそれぞれに対応させて順番に配置されるようにしても良い。あるいは、音検知部1として指向性マイクロホンが用いられ、診断単位としてのユニット等のそれぞれをターゲットとして順番に指向されるようにしても良い。またあるいは、診断単位としてのユニット等のそれぞれに対して個別の音検知部1が、つまり複数の音検知部1が、配設されるようにしても良い。
なお、音検知部1は、太陽光発電設備を構成している筐体やケース等の外側に離間して若しくは前記筐体やケース等の外面に接触して配置されるようにしても良く、或いは、太陽光発電設備を構成している筐体やケース等の内部に配置されるようにしても良い。
また、音検知部1に、必要に応じ、聴診器や聴音棒(若しくは、聴診器や聴音棒と同様の機能を有する機序)が備えられるようにしても良い。
ここで、本発明は、太陽光発電設備の構成部品に電流が流れた際に生成される磁界の作用によって力が発生し、当該力によって物体が振動して発生する音を採取して利用するものである。しかしながら、太陽光発電設備によっては、構成部品に電流が流れた際に発生する音が非常に小さかったり音が発生しなかったりすることもあり得る。そこで、電流が流れた際に構成部品が振動し易くなるように磁界を意図的に生成することにより、音波を増幅させたり発生させたりするように、すなわち太陽光発電設備から発生する音が採取され易くするようにしても良い。
具体的には、太陽光発電設備に対して外部から磁界を印加するようにしたり、太陽光発電設備に対して磁性材料を接近させるようにしたりすることが考えられる。
太陽光発電設備に対して外部から磁界を印加する場合には、具体的には、永久磁石や電磁石などが、太陽光発電設備の近傍に、必要に応じて診断単位としてのユニットやモジュールのそれぞれの特に近傍に、また、場合によっては音検知部1の近傍に(言い換えると、音検知部1と共に)、配置された状態で音の採取が行われるようにすることが考えられる。なお、永久磁石としては、具体的には例えばフェライト磁石やネオジム磁石が使用され得る。
太陽光発電設備に対して磁性材料を接近させる場合には、具体的には、鉄板などの磁性体が、太陽光発電設備の近傍に、必要に応じて診断単位としてのユニットやモジュールのそれぞれの特に近傍に、また、場合によっては音検知部1の近傍に(言い換えると、音検知部1と共に)、配置された状態で音の採取が行われるようにすることが考えられる。なお、磁性材料を太陽光発電設備の近傍に配置することによっても、構成部品の周囲に発生する磁界に引き寄せられて振動して音が発生する。
音検知部1は、音採取機能に加え、増幅機能を必要に応じて備え、また、A/D変換機能を備えるものとして構成される。
そして、音検知部1により、診断対象の太陽光発電設備から発生する音が音響(言い換えると、音圧、或いは、音圧レベル)として採取され、必要に応じて増幅され、また、デジタル信号に変換された上で出力される。ここで、音検知部1から出力されるデジタル信号のことを「音データ」と呼ぶ。
なお、音検知部1が音採取機能,必要に応じての増幅機能,A/D変換機能,及び信号出力機能を一体の機器・装置として備えるようにすることは本発明において必須の構成ではなく、これらの機能を有する別々の機器・装置の集まり・組み合わせとして音検知部1が構成されるようにしても良い。
また、一つの太陽光発電設備の異常診断装置10が複数の音検知部1を備えるようにしても良い。この場合には、複数の音検知部1から出力される音データのそれぞれに対して以下のS2以降の処理が行われる。
次に、S1の処理によって取得された音データについて周波数強度の計算が行われる(S2)。
具体的には、S1の処理において音検知部1から出力された音データが変換部2に入力され、当該変換部2により、本実施形態では、音データに対してフーリエ変換処理若しくはウェーブレット変換処理が施されて周波数成分毎のスペクトル値として周波数f〔Hz〕における周波数強度P(f)が計算される。なお、フーリエ変換処理若しくはウェーブレット変換処理が施された場合には周波数強度は時間の情報(T)を含むので「P(f,T)」と表され得るものの、本発明の説明においては、フーリエ変換処理やウェーブレット変換処理が施されたものとしてどちらも「P(f)」と表す。
ここで、音データの周波数成分毎のスペクトル値の計算の仕方は、フーリエ変換処理やウェーブレット変換処理に限定されるものではなく、周波数成分毎のスペクトル値として周波数f〔Hz〕における周波数強度P(f)が計算され得る適当な方法が適宜選択される。
そして、変換部2により、計算された周波数強度P(f)が周波数f〔Hz〕と対応づけられて(言い換えると、周波数f〔Hz〕と周波数強度P(f)との組み合わせデータとして)出力される。
ここで、太陽光発電設備から発生する音を採取して取得された音データについて得られた、周波数f〔Hz〕における周波数強度P(f)(言い換えると、周波数f〔Hz〕と周波数強度P(f)との組み合わせデータ)のことを「判定データ」と呼ぶ。
次に、S2の処理によって計算された周波数強度の値が用いられて太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無の判定が行われる(S3)。
具体的には、S2の処理において変換部2から出力された周波数f〔Hz〕と周波数強度P(f)との組み合わせデータが判定部3に入力され、当該判定部3によって診断対象の太陽光発電設備において異常や故障が発生しているか否かが判定される。
太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無の判定の仕方は、大きく分けると、以下の三つに区分される。以降に、下記(1)乃至(3)のそれぞれについて説明する。
(1)診断対象の太陽光発電設備に関する所定の周波数の周波数強度に着目する。
(2)診断対象の太陽光発電設備に関する複数時点の周波数強度に着目する。
(3)複数台の太陽光発電設備のそれぞれに関する周波数強度に着目する。
(1)診断対象の太陽光発電設備に関する所定の周波数の周波数強度に着目する方法
この方法では、診断対象の太陽光発電設備に関する判定データのうちの所定の周波数の周波数強度の強弱に基づいて、太陽光発電設備に異常・故障が発生しているか否かが判定される。
具体的には、以下の場合に、太陽光発電設備において異常・故障が発生していると判定される。
ア)判定データのうちの所定の周波数の周波数強度が予め定められた閾値を超えた場合(言い換えると、所定の周波数の音が所定の水準を上回って採取された場合)
イ)判定データのうちの所定の周波数の周波数強度が予め定められた閾値を下回った場合(言い換えると、所定の周波数の音が所定の水準以上では採取されなくなった場合)
なお、上記アの場合には、正常な状態では電流が流れないので所定の周波数では音が発生しない若しくは殆ど発生しない(即ち、音が採取されない若しくは殆ど採取されない)ところ、所定の閾値を超える大きさの音が前記所定の周波数で採取されるようになったのは異常・故障が発生したため(具体的には例えば、異常・故障の発生に伴って電流が流れるようになったため)であると推定される。
上記アの場合には、また、正常な状態では電流が流れるので特定の周波数で音が発生する(即ち、音が採取される)ところ、所定の閾値を超える大きさの音が前記特定の周波数で採取されたり(即ち、前記特定の周波数の音が正常時と比べて大きくなったり)前記特定の周波数とは異なる所定の周波数で採取されたり(即ち、採取される音の周波数が変化したり)するようになったのは異常・故障が発生したため(具体的には例えば、異常・故障の発生に伴って電流の流れ方が変化したため)であると推定される。
また、上記イの場合には、正常な状態では電流が流れるので特定の周波数で音が発生する(即ち、音が採取される)ところ、前記特定の周波数において採取される音の大きさが所定の閾値を下回るようになったのは異常・故障が発生したため(具体的には例えば、異常・故障の発生に伴って電流が流れなくなった若しくは殆ど流れなくなったため)であると推定される。
ここで、判定データとしての周波数f別の周波数強度P(f)のうちの着目する所定の周波数は、特定の周波数に限定されるものではなく、診断対象の太陽光発電設備において異常・故障が生じた際に発生,消失,若しくは変化する又は発生,消失,若しくは変化すると考えられる音の周波数に対応する適当な周波数に、必要に応じて事前の分析・検討結果などを踏まえ、適宜設定される。
なお、着目する所定の周波数は、或る特定の周波数f〔Hz〕でも良く、或いは、或る特定の周波数f〔Hz〕を中心とする周波数帯域でも良い。付け加えると、S1の処理において採取対象とされた周波数帯域の全体、或いは、S2の処理において計算対象とされた周波数帯域の全体が所定の周波数とされても良い。
また、(1)の方法において用いられる周波数強度に関する閾値も、特定の値に限定されるものではなく、診断対象の太陽光発電設備において異常・故障が生じた際に発生する音の大きさ(言い換えると、音圧,スペクトル値)や正常な状態のときに発生している音の大きさに対応する適当な値に、必要に応じて事前の分析・検討結果などを踏まえ、適宜設定される。
具体的には例えば、診断対象の太陽光発電設備において用いられているものと同種・同型の部品や機構が故意に故障させられて当該部品・機構が故障している状態での音が採取されて音データが取得され、当該音データについて得られた周波数成分毎のスペクトル値が分析されることによって太陽光発電設備の部品・機構が故障しているときの音の周波数若しくは周波数帯域と周波数強度とが特定され、そして、当該故障時の音に関して特定された周波数/周波数帯域と周波数強度とに基づいて、着目する所定の周波数が設定されたり、周波数強度に関する閾値が設定されたりするようにしても良い。
あるいは、診断対象の太陽光発電設備自体の正常な状態若しくは診断対象の太陽光発電設備と同種・同型の太陽光発電設備の正常な状態での音が採取されて音データが取得され、当該音データについて得られた周波数成分毎のスペクトル値が分析されることによって太陽光発電設備が正常な状態であるときの音の周波数若しくは周波数帯域と周波数強度とが特定され、そして、当該正常時の音に関して特定された周波数/周波数帯域と周波数強度とが考慮されて、着目する所定の周波数が設定されたり、周波数強度に関する閾値が設定されたりするようにしても良い。
判定データとしての周波数f別の周波数強度P(f)のうちの(1)の方法において着目する所定の周波数として、或いは、具体的には例えば以下のものが挙げられる。
i)パワーコンディショナにおけるスイッチング周波数の整数倍の周波数
診断対象の太陽光発電設備のパワーコンディショナ(図示されていない)における直流電力から交流電力への変換の際のスイッチング周波数の整数倍の周波数の、判定データの周波数強度P(f)が用いられる。この場合、スイッチング周波数の整数倍の周波数のうち、或る一つの整数倍の周波数のみが用いられるようにしても良く、或いは、複数の整数倍の周波数が用いられるようにしても良い。
ii)パワーコンディショナにおけるスイッチング周波数の整数倍以外の周波数
診断対象の太陽光発電設備のパワーコンディショナにおける直流電力から交流電力への変換の際のスイッチング周波数の整数倍以外の周波数の、判定データの周波数強度P(f)が用いられる。この場合、スイッチング周波数の整数倍以外の周波数のうち、或る一つの周波数のみが用いられるようにしても良く、或いは、複数の周波数が用いられるようにしても良い。
上記における周波数強度P(f)は、或る特定の周波数f〔Hz〕における周波数強度の値であるようにしても良く、或いは、或る特定の周波数f〔Hz〕を中心とする所定の周波数帯域における周波数強度の平均値や分散値などの特徴量であるようにしても良い。なお、この場合の所定の周波数帯域としての周波数帯域の幅(即ち、周波数f1〔Hz〕からf2〔Hz〕までとして表される範囲)は、特定の大きさに限定されるものではなく、例えば事前の分析・検討結果などが考慮されて、適当な大きさに適宜設定される。前記のことを踏まえ、P(f)は、或る特定の周波数fにおける周波数強度の値と、周波数fを中心とする所定の周波数帯域における周波数強度に関する特徴量とのどちらをも含む(言い換えると、どちらかを表す)ものとする。
なお、着目する所定の周波数の値や周波数強度に関する閾値は、判定部3によって参照され得るように、言い換えると、判定部3が読み込むことができるように、例えば判定部3内に適当な記憶回路が設けられて当該記憶回路に記憶される。
そして、診断対象の太陽光発電設備に関して取得された判定データの、着目する所定の周波数での周波数強度が、予め定められた周波数強度に関する閾値と比較される。
なお、着目する所定の周波数は、一つでも良く、或いは、複数でも良い。複数の周波数(前述した通り、周波数帯域を含む)に着目する場合には、例えば、第一の周波数faについては閾値以下であり且つ第二の周波数fbについては閾値を超えた場合や第一の周波数faについても第二の周波数fbについても閾値を超えた場合には太陽光発電設備に異常・故障が発生していると判定され、一方で、第一の周波数faについても第二の周波数fbについても閾値以下の場合には太陽光発電設備に異常・故障は発生していないと判定される、のように、複数の周波数についての閾値との比較結果の組み合わせによって太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無が判定されるようにしても良い。念のために付け加えると、上記では第一及び第二の二つの周波数に着目する例を挙げているが、三つ以上の周波数に着目することも考えられる。
また、複数時点の判定データが用いられて把握される、周波数強度と閾値との間の関係の複数時点における継続性や断続性なども考慮された上で太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無が判定されるようにしても良い。
(2)診断対象の太陽光発電設備に関する複数時点の周波数強度に着目する方法
この方法では、診断対象の太陽光発電設備に関する基準データと判定データとが比較され、これら基準データのうちの所定の周波数の周波数強度と判定データのうちの所定の周波数の周波数強度との間の差違に基づいて、太陽光発電設備に異常・故障が発生しているか否かが判定される。
基準データとは、異常・故障の発生の有無の判定処理を開始する前に、太陽光発電設備から発生する音を採取して取得された音データについて得られた(即ち、上述のS1及びS2の処理と同様の処理によって得られた)、周波数f〔Hz〕における周波数強度Po(f)(言い換えると、周波数f〔Hz〕と周波数強度Po(f)との組み合わせデータ)である。
基準データの取得は、例えば、診断対象の太陽光発電設備の試験運転の際や実機としての本格運転の初期段階に行われる。この場合には、太陽光発電設備が健全で安定した状態であることが期待され、即ち、太陽光発電設備において異常や故障が未だ発生していない正常状態であることが期待されるので、このような基準データと比較することによって正常状態と比較しての装置状態が診断されることになる。
基準データの取得は、或いは、当該太陽光発電設備が診断対象に選定されてから行われるようにしても良い。この場合には、太陽光発電設備が初期状態とは言えないものの作動しているので、即ち、太陽光発電設備が実機本格運転としては問題なく作動している状態であるので、このような基準データと比較することによって正常運転状態と比較しての装置状態が診断されることになる。
基準データは、診断対象の太陽光発電設備の各々に対して個別に設定されるようにしても良く、或いは、太陽光発電設備の種別・機種毎に設定されるようにしても良い。
なお、基準データである周波数f〔Hz〕と周波数強度Po(f)との組み合わせデータは、判定部3によって参照され得るように、言い換えると、判定部3が読み込むことができるように、例えば判定部3内に適当な記憶回路が設けられて当該記憶回路に記憶される。
基準データや判定データとしての周波数f別の周波数強度Po(f),P(f)のうちの着目する所定の周波数は、特定の周波数に限定されるものではなく、診断対象の太陽光発電設備において異常・故障が生じた際に発生,消失,若しくは変化する又は発生,消失,若しくは変化すると考えられる音の周波数に対応する適当な周波数に、必要に応じて事前の分析・検討結果などを踏まえ、適宜設定される。
なお、着目する所定の周波数は、或る特定の周波数f〔Hz〕でも良く、或いは、或る特定の周波数f〔Hz〕を中心とする周波数帯域でも良い。付け加えると、S1の処理において採取対象とされた周波数帯域の全体、或いは、S2の処理において計算対象とされた周波数帯域の全体が所定の周波数とされても良い。
着目する所定の周波数は、具体的には例えば、上述の(1)の方法において着目する所定の周波数の設定の仕方として説明した方法によって設定されたり、同じく上述の(1)の方法において着目する所定の周波数の具体例として挙げられたi),ii)が用いられたりすることが考えられる。
そして、診断対象の太陽光発電設備に関して取得された基準データ及び判定データの、着目する所定の周波数での周波数強度Po(f)とP(f)とが比較される。
その結果、これら二つの周波数強度Po(f)とP(f)との間に差違がある場合に、太陽光発電設備に異常・故障が発生していると判定される。
上記における周波数強度Po(f),P(f)は、或る特定の周波数f〔Hz〕における周波数強度の値であるようにしても良く、或いは、或る特定の周波数f〔Hz〕を中心とする所定の周波数帯域における周波数強度の平均値や分散値などの特徴量であるようにしても良い。なお、この場合の所定の周波数帯域としての周波数帯域の幅(即ち、周波数f1〔Hz〕からf2〔Hz〕までとして表される範囲)は、特定の大きさに限定されるものではなく、例えば事前の分析・検討結果などが考慮されて、適当な大きさに適宜設定される。前記のことを踏まえ、Po(f)やP(f)は、或る特定の周波数fにおける周波数強度の値と、周波数fを中心とする所定の周波数帯域における周波数強度に関する特徴量とのどちらをも含む(言い換えると、どちらかを表す)ものとする。
なお、着目する所定の周波数(前述の通り、周波数帯域を含む)は、一つでも良く、或いは、複数でも良い。
二つの周波数強度Po(f)とP(f)との間に差違があるか否かを判断するための指標としては、例えば、絶対誤差(即ち、|P(f)−Po(f)|),相対誤差(即ち、|P(f)−Po(f)|/Po(f)),または比率(即ち、P(f)/Po(f) 若しくは Po(f)/P(f))などが用いられ得る。しかしながら、差違有無の判断指標はこれらに限られるものではなく、他の指標が用いられるようにしても良い。
そして、上記に一例として挙げたような指標の値が、各指標に対応して予め定められた閾値以下のときには二つの周波数強度Po(f)とP(f)との間に差違は無いと判断され、一方、前記閾値よりも大きいときには二つの周波数強度Po(f)とP(f)との間に差違があると判断される。
なお、指標毎の閾値は、特定の値に限定されるものではなく、例えば事前の分析・検討結果などが考慮されて、適当な値に適宜設定される。
また、一種類の指標値のみが用いられて当該一種類の指標値に関する閾値との比較によって二つの周波数強度Po(f)とP(f)との間に差違があるか否かが判断されるようにしても良く、或いは、複数種類の指標値が用いられてこれら複数種類の指標値のそれぞれに関する閾値との比較によって二つの周波数強度Po(f)とP(f)との間に差違があるか否かが判断されるようにしても良い。
また、基準データと判定データとのそれぞれについて複数時点の周波数強度が用いられるようにしても良い。例えば、基準データとしての一時点の周波数強度Po(f)と判定データとしての複数時点の周波数強度P(f)とが比較されるようにしたり、基準データとしての複数時点の周波数強度Po(f)と判定データとしての複数時点の周波数強度P(f)とが比較されるようにしても良い。そして、二つの周波数強度Po(f)とP(f)との間の差違の複数時点における継続性や断続性なども考慮された上で、これらPo(f)とP(f)との間に差違があるか否かが判断されるようにしても良い。
また、基準データと判定データとの比較による太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無の判定において、機械学習(パターン学習とも呼ばれる)が利用されるようにしても良い。
この場合には、基準データの周波数強度Po(f)と判定データの周波数強度P(f)とが用いられ、或いは、前記周波数強度Po(f)から求められる特徴量と前記周波数強度P(f)から求められる特徴量とが用いられ、前記周波数強度P(f)若しくはこれに関する特徴量が、機械学習における教師データに該当する前記周波数強度Po(f)若しくはこれに関する特徴量と異なるパターンであるときに太陽光発電設備に異常・故障が発生していると判定される。
また、基準データの代わりに、太陽光発電設備において異常・故障が発生している状態で発生する音を採取して取得された音データについて得られた、周波数f〔Hz〕における周波数強度Pw(f)(言い換えると、周波数f〔Hz〕と周波数強度Pw(f)との組み合わせデータ;「故障データ」と呼ぶ)が用いられるようにしても良い。
この場合には、故障データの周波数強度Pw(f)と判定データの周波数強度P(f)とが用いられ、或いは、前記周波数強度Pw(f)から求められる特徴量と前記周波数強度P(f)から求められる特徴量とが用いられ、前記周波数強度P(f)若しくはこれに関する特徴量が、機械学習における教師データに該当する前記周波数強度Pw(f)若しくはこれに関する特徴量と同一(言い換えると、差違が無い)若しくは似ているパターンであるときに太陽光発電設備に異常・故障が発生していると判定される。
(3)複数台の太陽光発電設備のそれぞれに関する周波数強度に着目する方法
この方法では、診断対象の太陽光発電設備を少なくとも含む複数台の太陽光発電設備(即ち、全てが診断対象である複数台の太陽光発電設備であっても良い)毎の判定データが相互に比較され、これら複数の判定データのうちの所定の周波数の周波数強度を横並びで比較したときの或る一つの判定データの周波数強度と他の(言い換えると、残りの)判定データの周波数強度との間の差違に基づいて、前記或る一つの判定データが取得された太陽光発電設備に異常・故障が発生しているか否かが判定される。
この方法における太陽光発電設備に関する「複数台」は、具体的には3台以上のことである。
この方法の場合には、S1の処理が複数台の太陽光発電設備のそれぞれにおいて行われると共にS2の処理が太陽光発電設備別の音データのそれぞれに関して行われ、各太陽光発電設備に対応してS2の処理において変換部2から出力される複数の周波数強度Pn(f)(但し、nは複数台の太陽光発電設備を区別するために太陽光発電設備各々に付与される識別子であって当該周波数強度に関する音データが取得された太陽光発電設備に付与された識別子を表す)が判定部3に入力される。
判定データとしての周波数f別の周波数強度Pn(f)のうちの着目する所定の周波数は、特定の周波数に限定されるものではなく、診断対象の太陽光発電設備において異常・故障が生じた際に発生,消失,若しくは変化する又は発生,消失,若しくは変化すると考えられる音の周波数に対応する適当な周波数に、必要に応じて事前の分析・検討結果などを踏まえ、適宜設定される。
なお、着目する所定の周波数は、或る特定の周波数f〔Hz〕でも良く、或いは、或る特定の周波数f〔Hz〕を中心とする周波数帯域でも良い。付け加えると、S1の処理において採取対象とされた周波数帯域の全体、或いは、S2の処理において計算対象とされた周波数帯域の全体が所定の周波数とされても良い。
着目する所定の周波数は、具体的には例えば、上述の(1)の方法において着目する所定の周波数の設定の仕方として説明した方法によって設定されたり、同じく上述の(1)の方法において着目する所定の周波数の具体例として挙げられたi),ii)が用いられたりすることが考えられる。
そして、複数台の太陽光発電設備のそれぞれに関して取得された判定データの、着目する所定の周波数での周波数強度Pn(f)同士が相互に横並びで比較される。
その結果、或る一つの判定データの周波数強度と他の(残りの)判定データの周波数強度との間に差違がある場合に、前記或る一つの判定データが取得された太陽光発電設備に異常・故障が発生していると判定される。
上記における周波数強度Pn(f)は、或る特定の周波数f〔Hz〕における周波数強度の値であるようにしても良く、或いは、或る特定の周波数f〔Hz〕を中心とする所定の周波数帯域における周波数強度の平均値や分散値などの特徴量であるようにしても良い。なお、この場合の所定の周波数帯域としての周波数帯域の幅(即ち、周波数f1〔Hz〕からf2〔Hz〕までとして表される範囲)は、特定の大きさに限定されるものではなく、例えば事前の分析・検討結果などが考慮されて、適当な大きさに適宜設定される。前記のことを踏まえ、Pn(f)は、或る特定の周波数fにおける周波数強度の値と、周波数fを中心とする所定の周波数帯域における周波数強度に関する特徴量とのどちらをも含む(言い換えると、どちらかを表す)ものとする。
なお、着目する所定の周波数(前述の通り、周波数帯域を含む)は、一つでも良く、或いは、複数でも良い。
或る一つの周波数強度と他の(残りの)周波数強度との間に差違があるか否かを判断するための手法は、特定の手法に限定されるものではなく、例えば、或る一つの周波数強度の値と他の周波数強度の平均値等の特徴量とが比較されて判断されるようにしても良く、或いは、或る一つの周波数強度の値と他の周波数強度の値の一つずつとが個別に比較された上で判断されるようにしても良い。当該(3)の方法における差違有無の判断指標(指標値)やこれら判断指標毎の閾値に纏わる考え方は、上述の(2)の方法における判断指標(指標値)やこれら判断指標毎の閾値に纏わる考え方と同様である。
また、複数台の太陽光発電設備毎の判定データのそれぞれについて複数時点の周波数強度Pn(f)が用いられて複数時点における比較が行われるようにしても良い。そして、或る一つの周波数強度と他の周波数強度との間の差違の複数時点における継続性や断続性なども考慮された上で、これら或る一つの周波数強度と他の周波数強度との間に差違があるか否かが判断されるようにしても良い。
また、複数台の太陽光発電設備毎の判定データに対して機械学習(パターン学習)が適用されて、他のパターンと異なるパターンの判定データが取得された太陽光発電設備に異常・故障が発生していると判定されるようにしても良い。
以上が、判定部3による、太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無の判定の仕方に関する(1)乃至(3)の説明である。
そして、診断対象の太陽光発電設備に異常・故障が発生しているとの判定が為されなかった場合には(S3:No)、当該の太陽光発電設備に関する診断を終了したり、必要に応じてS1の処理に戻ってS1乃至S3の処理が繰り返し行われたりする。
一方、診断対象の太陽光発電設備に異常・故障が発生しているとの判定が為された場合には(S3:Yes)、判定部3により、診断対象の太陽光発電設備に異常・故障が発生していることを通知する所定の信号(「異常通知信号」と呼ぶ)が出力される。
そして、S3の処理によって異常通知信号が出力された場合には、警報が発令される(S4)。
具体的には例えば、太陽光発電設備の異常診断装置10の判定部3から警報出力部4に対して異常通知信号が出力され、これによって警報出力部4から外部(具体的には例えば、太陽光発電設備に関わる作業員や管理者など)に向けて警報が発令される。
警報出力部4は、判定部3からの異常通知信号に従い、具体的には例えば、スピーカやブザー等によって音を発したり、警光灯や回転灯等によって光を灯したり、ディスプレイ等に警告メッセージを表示したり、バイブレーション機能を備えて振動したりすることによって警報を発令する。
ここで、太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無の判定処理は、例えば、所定の間隔で定期的に又は不定期に保守点検等として実施されるようにしても良く、或いは、連続的に常時監視として実施されるようにしても良い。
また、上述の太陽光発電設備の異常診断装置10は、各部が全て一体のものとして構成されて携帯可能な大きさの機器として構成されたり診断対象の太陽光発電設備の内部や近傍に設置されたりするようにしても良く、或いは、各部が複数の箇所に分散されて設置されるようにしても良い。
また、太陽光発電設備の異常診断装置10を構成する各部のうち接続していることが必要とされる各部が、データや制御指令等の信号の送受信(即ち、出入力)が可能であるように電気的に接続される。
具体的には、太陽光発電設備の異常診断装置10を構成する各部が一体のものとして構成される場合は、接続が必要な各部が適宜に、例えばバス等の信号回線によって接続される。
また、太陽光発電設備の異常診断装置10を構成する各部が別体のものとして構成される場合(さらに、各部が複数の場所に分散し離れて設置される場合)は、接続が必要な各部が適宜に、例えば、各々に接続されて敷設されたケーブル等が用いられる有線による信号送受の仕組みによって接続されたり、各々に接続された無線信号送受信機が用いられる無線による信号送受の仕組みによって接続されたり、或いは、これら信号送受の仕組みが組み合わされて接続されたりする。
<太陽光発電設備の異常診断プログラムがコンピュータ上で実行される場合>
上述の変換部2,判定部3,及び警報出力部4は、太陽光発電設備の異常診断プログラムがコンピュータ上で実行されることによって当該コンピュータによって実現されるようにしても良い。
太陽光発電設備の異常診断プログラム17を実行するためのコンピュータ19の全体構成を図3に示す。
このコンピュータ19は制御部11,記憶部12,入力部13,表示部14,及びメモリ15を備え、これらが相互にバス等の信号回線によって接続されている。
制御部11は、記憶部12に記憶されている太陽光発電設備の異常診断プログラム17によってコンピュータ19全体の制御並びに太陽光発電設備の異常・故障の診断や検出に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
記憶部12は、少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
入力部13は、少なくとも作業者の命令や種々の情報を制御部11に与えるためのインターフェイス(即ち、情報入力の仕組み)であり、例えばキーボードやマウス或いはタッチパネルである。なお、例えばキーボードとマウスとの両方のように複数種類のインターフェイスを入力部13として有するようにしても良い。
表示部14は、制御部11の制御によって文字や図形或いは画像等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
メモリ15は、制御部11が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
また、コンピュータ19には、音検知部1が、データや制御指令等の信号の送受信(即ち、出入力)が可能であるように、具体的には例えば上述のような有線による信号送受の仕組みや無線による信号送受の仕組み或いはこれら信号送受の仕組みが組み合わされることにより、電気的に接続される。
そして、コンピュータ19の制御部11には、太陽光発電設備の異常診断プログラム17が実行されることにより、太陽光発電設備から発生する音を採取する音検知部1から出力される音データの入力を受ける処理を行うデータ受部11aと、音データについて周波数成分毎のスペクトル値を計算する処理を行う変換部11bと、周波数成分毎のスペクトル値を用いて太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無を判定すると共に異常・故障が発生していると判定した場合には異常通知信号を出力する処理を行う判定部11cと、異常通知信号に従って警報を発令する処理を行う警報出力部11dとが構成される。
そして、音検知部1によって上述したS1の処理が行われて音データが出力され、当該音データがコンピュータ19のデータ受部11aに入力されてメモリ15に記憶され、当該メモリ15に記憶された音データが用いられて変換部11bによってS2の処理として上述した変換部2と同様の処理が行われると共に判定部11cによってS3の処理として上述した判定部3と同様の処理が行われ、診断対象の太陽光発電設備において異常・故障が発生していると判定された場合には異常通知信号が出力されて警報出力部11dによってS4の処理として上述した警報出力部4と同様の処理が行われる。
なお、データ受部11aへの音データの入力は、音検知部1から出力された音データが記録される記憶媒体を介して行われるようにしても良い。
また、コンピュータ19は警報出力部11dを備えないようにしても良い。この場合には、コンピュータ19は、当該コンピュータ19とは別体として設けられた警報出力部に対して異常通知信号を出力するようにしたり、或いは、診断対象の太陽光発電設備の作動を制御する制御装置・制御部に対して異常通知信号を出力するようにしたりしても良い。
<太陽光発電設備のバイパスダイオードに着目した異常・故障の発生の有無の判定>
本発明者らは、音を利用しての太陽光発電設備の異常診断の手法を検討する中で、太陽光発電設備における太陽電池クラスタ21の故障の模擬として一部の太陽電池クラスタ21の表面(言い換えると、太陽電池パネルの表面の一部)に覆いを被せて太陽光を遮断することによって前記一部の太陽電池クラスタ21の発電電力を低下させてバイパスダイオード23に電流が流れるようにした上で音を採取する試験を行い、太陽電池クラスタ21の発電電力が低下してバイパスダイオード23に電流が流れている状態では当該バイパスダイオード23から音が発生し、この音を検知することによって当該太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無を判定し得ることを知見した。
この場合、音検知部1の設置の態様として、診断対象の太陽光発電設備のバイパスダイオード23に電流が流れているときに当該バイパスダイオード23から発生する作動音を採取(集音,収音)し得るように適切な場所や設置・固定の仕方などが適宜選択される。
なお、音検知部1は、バイパスダイオード23を覆っている筐体やケース等の外側に離間して若しくは前記筐体やケース等の外面に接触して配置されるようにしても良く、或いは、バイパスダイオード23を覆っている筐体やケース等の内部に配置されるようにしても良い。
なお、実際の太陽光発電設備(太陽電池モジュール20)によっては、バイパスダイオード23A,23B,23C,…,23Xが一箇所若しくは複数箇所に纏められて配設されている場合と個別に配設されている場合とがある。複数のバイパスダイオード23が一箇所若しくは複数箇所に纏められて配設されている場合には、前記一箇所が音の採取対象(言い換えると、採取単位)とされたり前記複数箇所のそれぞれが音の採取対象(採取単位)とされたりする。一方、複数のバイパスダイオード23が個別に配設されている場合には、これら複数のバイパスダイオード23のそれぞれが音の採取対象(採取単位)とされる。
また、太陽光発電設備のうちの特にバイパスダイオード23に対し、例えば永久磁石や電磁石を配設するなどして外部から磁界を印加するようにしたり、鉄板などの磁性材料を接近させるようにしたりしても良い。
そして、上述の説明におけるS1に対応する処理として、音検知部1により、診断対象の太陽光発電設備のバイパスダイオード23から発生する音が音響(言い換えると、音圧、或いは、音圧レベル)として採取され、必要に応じて増幅され、また、デジタル信号に変換された上で音データとして出力される。
次に、上述の説明におけるS2に対応する処理として、変換部2により、バイパスダイオード23についての音データについて周波数強度の計算が行われ、計算された周波数強度P(f)が周波数f〔Hz〕と対応づけられて判定データ(即ち、周波数f〔Hz〕と周波数強度P(f)との組み合わせデータ)として出力される。
次に、上述の説明におけるS3に対応する処理として、判定部3により、バイパスダイオード23についての判定データが用いられて太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無の判定が行われる。
バイパスダイオード23に着目する場合の、太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無の判定においても、上述の説明における(1)乃至(3)の方法が用いられ得る。
上述の説明における(1)の方法が用いられる場合には、診断対象の太陽光発電設備のバイパスダイオード23に関する判定データのうちの所定の周波数の周波数強度の強弱に基づいて太陽光発電設備に異常・故障が発生しているか否かが判定される。
バイパスダイオード23に着目する場合には、具体的には、判定データのうちの所定の周波数の周波数強度が予め定められた閾値を超えた場合(言い換えると、所定の周波数の音が所定の水準を上回って採取された場合)に、太陽光発電設備において異常・故障が発生していると判定される。
なお、上記の場合には、太陽光発電設備が正常な状態ではバイパスダイオード23には電流が流れないので所定の周波数では音が発生しない若しくは殆ど発生しない(即ち、音が採取されない若しくは殆ど採取されない)ところ、所定の閾値を超える大きさの音が前記所定の周波数で採取されるようになったのは異常・故障が発生したため(具体的には例えば、太陽電池クラスタ21における異常・故障の発生に伴ってバイパスダイオード23に電流が流れるようになったため)であると推定される。
ただし、一部の太陽電池クラスタ21若しくは太陽電池セル22が日陰に入ったりなどした場合にも当該一部の太陽電池クラスタ21又は当該一部の太陽電池セル22を含む太陽電池クラスタ21からの発電電力の出力が低下してバイパスダイオード23に電流が流れるようになるので、太陽電池クラスタ21や太陽電池セル22が日陰に入ったりなどしていないことが確認される。
ここで、判定データとしての周波数f別の周波数強度P(f)のうちの(1)の方法において着目する所定の周波数は、バイパスダイオード23に着目する場合も、特定の周波数に限定されるものではなく、診断対象の太陽光発電設備において異常・故障が生じた際にバイパスダイオード23から発生する音の周波数に対応する適当な周波数に、必要に応じて事前の分析・検討結果などを踏まえ、適宜設定される。
また、(1)の方法において用いられる周波数強度に関する閾値についても、バイパスダイオード23に着目する場合も、特定の値に限定されるものではなく、診断対象の太陽光発電設備において異常・故障が生じた際にバイパスダイオード23から発生する音の大きさ(言い換えると、音圧,スペクトル値)に対応する適当な値に、必要に応じて事前の分析・検討結果などを踏まえ、適宜設定される。
具体的には、例えば、診断対象の太陽光発電設備の一部の太陽電池クラスタ21(若しくは太陽電池セル22)の表面(言い換えると、太陽電池パネルの表面の一部)に覆いを被せて太陽光を遮断することによって前記一部の太陽電池クラスタ21の発電電力を低下させてバイパスダイオード23に電流が流れるようにしたときの音が採取されて音データが取得され、或いは、診断対象の太陽光発電設備において用いられているものと同種・同型のバイパスダイオード23に電流が流れているときの音が採取されて音データが取得され、当該音データについて得られた周波数成分毎のスペクトル値が分析されることによってバイパスダイオード23に電流が流れているときに発生する音(以下、「バイパスダイオード23の作動音」ともいう)の周波数若しくは周波数帯域と周波数強度とが特定され、そして、当該バイパスダイオード23の作動音に関して特定された周波数/周波数帯域と周波数強度とに基づいて、着目する所定の周波数が設定されたり、周波数強度に関する閾値が設定されたりするようにしても良い。
判定データとしての周波数f別の周波数強度P(f)のうちの(1)の方法において着目する所定の周波数として、或いは、バイパスダイオード23に着目する場合も、上述の(1)の方法において着目する所定の周波数の具体例として挙げられたi),ii)が用いられるようにしても良い。
なお、バイパスダイオード23に電流が流れているときに当該バイパスダイオード23から発生する音の周波数は、太陽光発電設備の種類・型式によって異なり様々であるが、あくまで一例として挙げると、本発明者らの試験では具体的には例えば周波数が4 kHz である音が発生した事例があった。
バイパスダイオード23に着目する場合も、上記における周波数強度P(f)は或る特定の周波数f〔Hz〕における周波数強度の値でも良いし或る特定の周波数f〔Hz〕を中心とする所定の周波数帯域における周波数強度の平均値や分散値などの特徴量でも良いこと、並びに、着目する所定の周波数は或る特定の周波数f〔Hz〕でも良いし或る特定の周波数f〔Hz〕を中心とする周波数帯域でも良いこと、また、着目する所定の周波数は一つでも良いし複数でも良いこと、さらに、複数時点の判定データが用いられても良いことは、上述の(1)の方法における説明と同様である。
また、上述の説明における(2)の方法が用いられる場合には、診断対象の太陽光発電設備のバイパスダイオード23に関する基準データと判定データとが比較され、これら基準データのうちの所定の周波数の周波数強度と判定データのうちの所定の周波数の周波数強度との間の差違に基づいて、太陽光発電設備に異常・故障が発生しているか否かが判定される。
バイパスダイオード23に着目する場合には、具体的には、所定の周波数での基準データの周波数強度Po(f)と判定データの周波数強度P(f)との間に、Po(f)<P(f)という関係が成立し、且つ、差違がある場合に、太陽光発電設備において異常・故障が発生していると判定される。この場合における二つの周波数強度Po(f)とP(f)との間に差違があるか否かを判断するための指標や当該指標毎の閾値の考え方は、上述の(1)の方法における説明と同様である。
なお、上記の場合には、太陽光発電設備が正常な状態ではバイパスダイオード23には電流が流れないので所定の周波数では音が発生しない若しくは殆ど発生しない(即ち、音が採取されない若しくは殆ど採取されない)ところ、正常な状態を基本とする基準データと診断時における判定データとの差違が前記所定の周波数で生じるようになったのは異常・故障が発生したため(具体的には例えば、太陽電池クラスタ21における異常・故障の発生に伴ってバイパスダイオード23に電流が流れるようになったため)であると推定される。
ただし、一部の太陽電池クラスタ21若しくは太陽電池セル22が日陰に入ったりなどした場合にも当該一部の太陽電池クラスタ21又は当該一部の太陽電池セル22を含む太陽電池クラスタ21からの発電電力の出力が低下してバイパスダイオード23に電流が流れるようになるので、太陽電池クラスタ21や太陽電池セル22が日陰に入ったりなどしていないことが確認される。
ここで、基準データや判定データとしての周波数f別の周波数強度Po(f),P(f)のうちの(2)の方法において着目する所定の周波数は、バイパスダイオード23に着目する場合も、特定の周波数に限定されるものではなく、診断対象の太陽光発電設備において異常・故障が生じた際にバイパスダイオード23から発生する音の周波数に対応する適当な周波数に、必要に応じて事前の分析・検討結果などを踏まえ、適宜設定される。
具体的には例えば、バイパスダイオード23に着目した上で上記(1)の方法が用いられる場合と同様に、バイパスダイオード23の作動音の周波数若しくは周波数帯域と周波数強度とが特定され、そして、当該バイパスダイオード23の作動音に関して特定された周波数/周波数帯域と周波数強度とに基づいて、着目する所定の周波数が設定されるようにしても良い。
基準データや判定データとしての周波数f別の周波数強度Po(f),P(f)のうちの(2)の方法において着目する所定の周波数として、或いは、バイパスダイオード23に着目する場合も、上述の(1)の方法において着目する所定の周波数の具体例として挙げられたi),ii)が用いられるようにしても良い。
また、バイパスダイオード23に着目する場合も、上記における周波数強度Po(f),P(f)は或る特定の周波数f〔Hz〕における周波数強度の値でも良いし或る特定の周波数f〔Hz〕を中心とする所定の周波数帯域における周波数強度の平均値や分散値などの特徴量でも良いこと、並びに、着目する所定の周波数は或る特定の周波数f〔Hz〕でも良いし或る特定の周波数f〔Hz〕を中心とする周波数帯域でも良いこと、また、着目する所定の周波数は一つでも良いし複数でも良いことは、上述の(1)の方法における説明と同様である。
さらに、バイパスダイオード23に着目する場合も、二つの周波数強度Po(f)とP(f)との間に差違があるか否かが判断される際の差違有無の判断指標(指標値)やこれら判断指標毎の閾値に纏わる考え方、並びに、基準データと判定データとのそれぞれについて複数時点の周波数強度が用いられるようにしても良いことは、上述の(2)の方法における説明と同様である。
また、基準データと判定データとの比較による太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無の判定において機械学習が利用されるようにしても良いこと、並びに、基準データの代わりに故障データが用いられても良いことも、上述の(2)の方法における説明と同様である。
また、上述の説明における(3)の方法が用いられる場合には、診断対象の太陽光発電設備に設けられている複数のバイパスダイオード23毎又は複数台の太陽光発電設備のそれぞれに設けられているバイパスダイオード23毎の判定データが相互に比較され、これら複数の判定データのうちの所定の周波数の周波数強度を横並びで比較したときの或る一つの判定データの周波数強度と他の(言い換えると、残りの)判定データの周波数強度との間の差違に基づいて、前記或る一つの判定データが取得されたバイパスダイオード23に関連する部品等(具体的には例えば太陽電池クラスタ21)に異常・故障が発生しているか否かが判定される。
バイパスダイオード23に着目する場合には、具体的には、所定の周波数での或る一つの判定データの周波数強度Pa(f)と他の判定データの周波数強度Pr(f)との間に(但し、Pr(f)は複数個)、Pa(f)>Pr(f)という関係が成立し、且つ、差違がある場合に、前記或る一つの判定データが取得されたバイパスダイオード23に関連する部品等に異常・故障が発生していると判定される。この場合における二つの周波数強度Pa(f)とPr(f)との間に差違があるか否かを判断するための指標や当該指標毎の閾値の考え方は、上述の(1)の方法における説明と同様である。
なお、上記の場合には、太陽光発電設備が正常な状態ではバイパスダイオード23には電流が流れないので所定の周波数では音が発生しない若しくは殆ど発生しない(即ち、音が採取されない若しくは殆ど採取されない)ところ、或る一つの判定データと他の(残りの)判定データとの差違が前記所定の周波数で生じるようになったのは前記或る一つの判定データが取得されたバイパスダイオード23に関連する部品等に異常・故障が発生したため(具体的には例えば、太陽電池クラスタ21における異常・故障の発生に伴ってバイパスダイオード23に電流が流れるようになったため)であると推定される。
ただし、一部の太陽電池クラスタ21若しくは太陽電池セル22が日陰に入ったりなどした場合にも当該一部の太陽電池クラスタ21又は当該一部の太陽電池セル22を含む太陽電池クラスタ21からの発電電力の出力が低下してバイパスダイオード23に電流が流れるようになるので、太陽電池クラスタ21や太陽電池セル22が日陰に入ったりなどしていないことが確認される。
ここで、判定データとしての周波数f別の周波数強度Pa(f),Pr(f)のうちの(3)の方法において着目する所定の周波数は、バイパスダイオード23に着目する場合も、特定の周波数に限定されるものではなく、診断対象の太陽光発電設備において異常・故障が生じた際にバイパスダイオード23から発生する音の周波数に対応する適当な周波数に、必要に応じて事前の分析・検討結果などを踏まえ、適宜設定される。
具体的には例えば、バイパスダイオード23に着目した上で上記(1)の方法が用いられる場合と同様に、バイパスダイオード23の作動音の周波数若しくは周波数帯域と周波数強度とが特定され、そして、当該バイパスダイオード23の作動音に関して特定された周波数/周波数帯域と周波数強度とに基づいて、着目する所定の周波数が設定されるようにしても良い。
判定データとしての周波数f別の周波数強度Pa(f),Pr(f)のうちの(3)の方法において着目する所定の周波数として、或いは、バイパスダイオード23に着目する場合も、上述の(1)の方法において着目する所定の周波数の具体例として挙げられたi),ii)が用いられるようにしても良い。
また、バイパスダイオード23に着目する場合も、上記における周波数強度Pa(f),Pr(f)は或る特定の周波数f〔Hz〕における周波数強度の値でも良いし或る特定の周波数f〔Hz〕を中心とする所定の周波数帯域における周波数強度の平均値や分散値などの特徴量でも良いこと、並びに、着目する所定の周波数は或る特定の周波数f〔Hz〕でも良いし或る特定の周波数f〔Hz〕を中心とする周波数帯域でも良いこと、また、着目する所定の周波数は一つでも良いし複数でも良いことは、上述の(1)の方法における説明と同様である。
さらに、バイパスダイオード23に着目する場合も、周波数強度Pa(f)とPr(f)との間に差違があるか否かが判断される際の差違有無の判断手法や差違有無の判断指標(指標値)及びこれら判断指標毎の閾値に纏わる考え方、並びに、複数の判定データのそれぞれについて複数時点の周波数強度が用いられるようにしても良いことは、上述の(3)の方法における説明と同様である。
また、複数台の太陽光発電設備毎の判定データに対して機械学習(パターン学習)が適用されるようにしても良いことは、上述の(3)の方法における説明と同様である。
以上が、バイパスダイオード23に着目する場合の、判定部3による、太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無の判定の仕方に関する(1)乃至(3)の方法の説明である。
そして、バイパスダイオード23に着目しての異常・故障の発生の有無の判定の後の処理(具体的には、S3:No,S3:Yes,及びS4)は、上述の説明と同様である。
<バイパスダイオードの検査>
上述のバイパスダイオードに着目する異常・故障の発生の有無の判定では、S3の処理において、判定データの周波数強度が変化・変動した場合に、例えば太陽電池クラスタ21に異常・故障が発生したためにバイパスダイオード23に電流が流れているのであり、したがって太陽光発電設備に異常・故障が発生していると判定されるようにしている。
この処理に関し、診断対象の太陽光発電設備に設けられているバイパスダイオード23自体が故障している場合には、例えば太陽電池クラスタ21に異常・故障が発生していたとしてもバイパスダイオード23に電流は流れないので、判定データの周波数強度が変化・変動することは無く、したがって太陽光発電設備に異常・故障が発生しているにも拘わらず異常・故障が発生していると判定され得ない。
このため、バイパスダイオード23自体が故障しているか否かが検査されることにより、太陽光発電設備における異常・故障の発生の検出洩れが防止される。
そこで、所定の閾値を超える音がバイパスダイオード23から発生していない(言い換えると、採取されていない)状態で、太陽電池クラスタ21の表面(言い換えると、太陽電池パネルの表面)に覆いを被せて太陽光を遮断することによって前記太陽電池クラスタ21の発電電力を低下させてバイパスダイオード23に電流が流れるようにした上で音の採取が行われる。
そして、上記の状況において所定の閾値を超える音がバイパスダイオード23から発生している(言い換えると、採取される)場合にはバイパスダイオード23は故障していないと判定され、一方で、上記の状況において所定の閾値を超える音がバイパスダイオード23から発生していない(言い換えると、採取されない)場合にはバイパスダイオード23が故障していると判定される。
このように、バイパスダイオード23自体の検査を行うことにより、太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無が一層確実に判定される。
なお、具体的には例えば、バイパスダイオード23自体の検査が独自に定期的に行われつつ太陽光発電設備の異常・故障の発生の有無の判定が行われるようにしたり、太陽光発電設備の異常・故障の発生の有無の判定に引き続いて一緒にバイパスダイオード23自体の検査が行われるようにしたりすることが考えられる。
なお、意図的にバイパスダイオード23に電流を流すための作為は、バイパスダイオード23における電流の流れを制御し得る方法であれば、上述のような太陽電池クラスタ21の表面に覆いを被せることに限定されるものではない。
<所定の周波数の電流を注入することによる異常・故障の発生の有無の判定>
本発明では、太陽光発電設備から発生する音が採取される処理(S1)が、当該太陽光発電設備に纏わる回路(具体的には、太陽電池モジュール20や太陽電池クラスタ21を構成する複数の太陽電池セル22が直列接続されている回路)に所定の周波数の電流を注入しながら行われるようにしても良い。
具体的には例えば、図4に示す太陽電池モジュール20の回路構成図における符号25の箇所から所定の周波数の電流が継続的に注入されている状態若しくは断続的に注入されている状態で、太陽光発電設備から発生する音の採取が行われるようにすることが考えられる。この場合、上述の(1)乃至(3)の方法において着目する所定の周波数が前記太陽光発電設備に纏わる回路に注入される電流の所定の周波数に設定されることが考えられる。
ここで、太陽光発電設備に纏わる回路に注入される電流の所定の周波数は、特定の周波数に限定されるものではなく、適当な周波数が適宜選択される。例えば、あくまで一例として挙げると、診断対象の太陽光発電設備が送電・配電系統に連系されている場合に、当該系統に係る商用周波数と異なる周波数が選択され得る。
そして、この場合には、太陽光発電設備の異常診断装置10が、太陽光発電設備に纏わる回路に電流を注入する電流変成器と、当該電流変成器に対して所定の周波数の電流を供給する電源部とを更に有するものとして構成されるようにしても良い。あるいは、太陽光発電設備とは独立した別途の電流変成器が用意される代わりに、太陽光発電設備の機能・機序の一部が利用されて所定の周波数の電流が注入されるようにしても良い。具体的には例えば、パワーコンディショナ(系統連系用インバータ)のソフトウェアが変更されて、所定の周波数成分の電流が重畳されるようにしても良い。
<異常・故障の種類の識別>
本発明では、診断対象の太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無の判定処理に加えて異常・故障が検出された場合に当該異常・故障の種類の識別処理が行われるようにしても良い。
異常・故障の種類が識別される場合には、具体的には例えば、異常・故障の種類毎にどのような周波数成分でスペクトル値が大きくなるのかという属性データとして周波数f〔Hz〕における周波数強度(「異常音データ」と呼ぶ)が予め整備され、S2の処理において得られる判定データと異常音データとが比較され、判定データと異常音データとの類似の程度に基づいて異常・故障の種類が識別される。
なお、判定データと異常音データとの類似の程度を評価する手法は、特定の方法に限定されるものではなく、複数のデータ群の特徴の相似・相関の度合いを判定したり計量したりし得る適当な手法が適宜選択される。
以上の構成を有する太陽光発電設備の異常診断方法、異常診断装置、及び異常診断プログラムによれば、太陽光発電設備から発生する音を採取することによって当該太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無の判定が行われるようにしているので、太陽光発電設備が通常の運転を行いながら診断を行うことができ、すなわち、太陽光発電設備の稼働を停止させたり一部を切り離したり或いは太陽光発電設備に電気的に直接接触(つまり、設備回路に結線)したりすること無く診断を行うことができ、このため、太陽光発電設備の診断を随時適宜に且つ容易に行うことが可能になり、延いては太陽光発電設備の異常・故障の検出手法としての有用性の向上を図ることが可能になる。
以上の構成を有する太陽光発電設備の異常診断方法、異常診断装置、及び異常診断プログラムによれば、さらに、太陽光発電設備から発生する音に基づいて当該太陽光発電設備における異常・故障の発生の有無の判定が行われるようにしているので、太陽光発電設備からの発電電力の外部への出力の変化の監視では発見が困難な(例えば、バイパスダイオードの働きにより、発電電力の外部への出力の変化としては顕れない)異常・故障でも捕捉することができ、このため、太陽光発電設備における異常・故障の検出洩れを防ぐことが可能になり、延いては太陽光発電設備の異常・故障の検出手法としての有用性及び信頼性の向上を図ることが可能になる。
以上の構成を有する太陽光発電設備の異常診断方法、異常診断装置、及び異常診断プログラムによれば、また、太陽光発電設備の箇所・部品のそれぞれを対象として各々から発生する音が個別に採取されるようにした場合には、故障が発生している箇所・部品を容易に特定することが可能になり、延いては太陽光発電設備の異常・故障の検出手法としての有用性の向上を図ることが可能になる。
なお、上述の形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態では図4に回路構成を示す太陽電池モジュール20に本発明が適用されるようにしているが、本発明が適用され得る太陽電池モジュールの構成態様は上述の実施形態におけるものに限定されるものではない。本発明は、太陽光発電設備から発生する音を採取することを特徴とするものであり、設備の音が採取され得るという条件を満たすものであれば、種々の太陽光発電設備に適用され得る。
また、上述の実施形態では太陽光発電設備の異常診断方法として異常通知信号に従って警報が発令される(S4)ようにした上で太陽光発電設備の異常診断装置10として警報出力部4が備えられるようにしたり太陽光発電設備の異常診断プログラム17が実行されることによってコンピュータ19の制御部11に警報出力部11dが構成されるようにしたりしているが、警報の発令或いは警報出力部4,11dが備えられることは本発明において必須の構成ではなく、診断対象の太陽光発電設備に異常・故障が発生しているとの判定結果の利用の仕方は様々なものが検討されてそれによって種々の機器や装置が組み合わされて用いられるようにしても良い。