以下、本発明における好ましい光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
(1)単一側波帯光変調器(SSBM:SSB変調器)を用いない光ファイバ特性測定装置
図1において、1は単一側波帯光変調器(SSBM:SSB変調器)を用いていない本発明による光ファイバ特性測定装置を示す。この図1では、強度周期変調器(IM)16が設けられた光ファイバ特性測定装置1と、別の実施の形態となる、位相周期変調器(PM)17が設けられた光ファイバ特性測定装置1との2つの実施の形態を1つの図面に示したものである。ここでは、先ず始めに強度周期変調器16が設けられた光ファイバ特性測定装置1について説明した後、別の実施の形態である、位相周期変調器17が設けられた光ファイバ特性測定装置1について順に説明する。
(1−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置
(1−1−1)光ファイバ特性測定装置の構成
強度周期変調器16が設けられた光ファイバ特性測定装置1には、信号発生器3aと半導体レーザ3とにより構成された光源2が設けられている。半導体レーザ3は、例えば小型でスペクトル幅の狭いレーザ光を出射する分布帰還型レーザダイオード(DFB LD)が用いられる。信号発生器3aは、DC(直流)電流にAC(交流)電流を重畳させた所望の変調信号を、半導体レーザ3に注入電流として出力し得る。これにより信号発生器3aは、半導体レーザ3から出射される中心周波数がfoのレーザ連続光を、例えば周波数fmの正弦波状に繰り返して周波数変調(位相変調を含む)し得る。因みに、光ファイバ特性測定装置1には、半導体レーザ3からのレーザ光が通過するアイソレータ(図示せず)が設けられている。このアイソレータは、半導体レーザ3への不必要な戻り光により、当該半導体レーザ3の動作が不安定になるのを防止し得る。
4は、半導体レーザ3からアイソレータを通過したレーザ光を、適当な強度比に二分する第1の光分岐器である。第1の光分岐器4で分岐された一方のレーザ光は、エルビウム添加光ファイバ増幅器(以下、EDFAという)などでなる光増幅器5により増幅された後、別の第2の光分岐器7を介して、所定の長さの光ファイバからなる光遅延器8を通過して被測定光ファイバFUTの一端からポンプ光として入射される。一方、第1の光分岐器4で分岐された他方のレーザ光は、所定の長さの光ファイバからなる他の光遅延器14と、エリアER1に設けた強度周期変調器16とを順次介して、光ヘテロダイン検波の参照光として後述する光カプラ13から光ヘテロダイン受信器(Balanced PD)19へと出射される。なお、光遅延器8,14はポンプ光と参照光との間に所定の遅延時間を設定するためのもので、光ファイバ長を変えることで、遅延時間を適宜調整できる。
前記被測定光ファイバFUTの一端からポンプ光を入射すると、光ファイバ材料の硝子分子が熱振動することにより発生している超音波のうち、波長が入射光(ポンプ光)波長の半分となる超音波により、後方にブリルアン散乱を発生させる。すなわち、この超音波がもたらす硝子の周期的な屈折率の変化は、入射光に対してブラッグ回折格子として作用し、光を後方に反射する。この現象がいわゆる自然ブリルアン散乱であり、図1に示す光ファイバ特性測定装置1では、被測定光ファイバFUT内のブリルアン散乱(基本的には自然ブリルアン散乱)により生じた反射光が、ストークス光として被測定光ファイバFUTの一端から出射される。このストークス光は、第2の光分岐器(サーキュレータ)7と可変帯域光フィルタ(TBF:Optical Band-Pass Filter)11と光カプラ13とを介して、光ヘテロダイン受信器19に出射される。
前記ブリルアン散乱においては、音響フォノンが時間とともに指数関数的に減衰することから、ブリルアンゲインスペクトル(BGS)として知られているブリルアン散乱による光スペクトルが、ローレンツ型関数の形状を呈する。また、超音波の速度に依存して、反射光であるストークス光はドップラーシフトを受けるので、前記スペクトルにおいて取得されるストークス光のピークパワーの周波数(中心周波数)は、入射光であるポンプ光の中心周波数foに対して11GHz程度ダウンシフトする。この周波数シフトの量は、ブリルアン周波数シフトfBと呼ばれるもので、被測定光ファイバFUTに加わる伸縮歪みや温度によって変動する。したがって、光ヘテロダイン受信器19が受信するストークス光の中心周波数は、ポンプ光ひいては半導体レーザ3からのレーザ光の中心周波数foよりも、ブリルアン周波数シフトfB分下がることになる(fo−fB)。
ここで、本発明の光ファイバ特性測定装置1では、第1の光分岐器4と光カプラ13との間に強度周期変調器16が設けられており、当該強度周期変調器16によって、参照光に対して、強度変調(変化)を施す期間と、参照光に対して強度変調(変化)を施さない期間とを所定の変調周期1/fL(fLは、ロックイン周波数)で繰り返す周期的強度変調を与え、周期変調参照光を生成し得る。実際上、この実施の形態の場合、強度周期変調器16は、参照光に対して強度変調(変化)を施さないでそのまま参照光を出射する期間(1/2・(変調周期1/fL))と、参照光を遮断または低減させる期間(1/2・(変調周期1/fL))とを、変調周期1/fLで繰り返す周期変調参照光を生成し、この周期変調参照光を光カプラ13を介して光ヘテロダイン受信器19に出射し得る。
周期変調参照光とストークス光をそれぞれ受ける光ヘテロダイン受信器19は、図示しない2個のバランスフォトダイオード(PD:以下、バランスPDという)と検波部とからなる光ヘテロダイン方式の検出(検波)手段で構成される。ここでの周期変調参照光は、光ヘテロダイン受信器19に対する光学的な局部発振器からの発振信号と見なすことができ、光ヘテロダイン受信器19は、ストークス光と、このストークス光と周波数の異なる周期変調参照光とを重ね合わせ、両光の周波数差に等しい電気的なビート信号を生成する。とりわけ、周期変調参照光とストークス光との間では、ブリルアン周波数シフトfBに相当する周波数差が有る。
20は、光ヘテロダイン受信器19から出力する電気的なビート信号を周波数特性として観測する周波数解析器である。前述したように、被測定光ファイバFUTに伸縮歪みや温度変化が生じると、こうした歪みや温度変化に比例して、ブリルアン周波数シフトfBが変動する。周波数解析器20は、こうしたブリルアン周波数シフトfBの変動を、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号のピーク周波数変動として測定するものである。
ここで、特許文献1に示す従来の光ファイバ特性測定装置で用いていた電気スペクトラムアナライザでは、光ヘテロダイン受信器からのビート信号をピーク周波数変動として測定する際、スペクトラム形状測定やスペクトラム解析を行うために周波数混合や演算処理(例えば、高速フーリエ変換演算処理)を繰り返し行うことにより、雑音を除去してSN比が向上したピーク周波数を、電気的なビート信号から生成していた。そのため、雑音を除去してSN比が向上したピーク周波数が生成されるまでの時間として、電気スペクトラムアナライザによるスペクトラム形状の測定能力や演算処理能力に依存した時間を要していた。
一方、本発明の光ファイバ特性測定装置1における周波数解析器20は、掃引周波数発振器(Sweep Generator)23と、ミキサ22と、フィルタ(Filter)24等で構成されている。この周波数解析器20は、光ヘテロダイン受信器19から出力された電気的なビート信号に、掃引周波数発振器23からの掃引周波数信号(例えば9.5〜10.5GHzまでの掃引周波数帯域)をミキサ22でかけ合わせた後、フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ(中心周波数1.0GHz))24と検波器とを通過させることにより、光ヘテロダイン受信器19からの電気的なビート信号の中から掃引周波数帯域に対応する周波数帯域でのブリルアン散乱スペクトラムが得られ、そのピークからブリルアン周波数シフトfBを得る。このように周波数解析器20は、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動(掃引周波数帯域でのブリルアン散乱スペクトラムのピークfBの変動)として測定している。なお、変調周期1/fLのロックイン周波数fLは、バンドパスフィルタであるフィルタ24の帯域以下に設定されている。
ここで、周波数解析器20では、電気スペクトラムアナライザとは異なり、雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理等を行っておらず、単に光ヘテロダイン受信器19からのビート信号を、掃引周波数帯域を用いてピーク周波数変動として測定しているだけであることから、従来、電気スペクトラムアナライザで行われていたスペクトラム形状測定演算処理の処理時間を不要とし、その分、短時間で光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動として測定し得る。なお、周波数解析器20では、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動として測定する際、雑音を除去するためのスペクトラム演算処理を行っていないことから、雑音が存在したSN比の低いピーク周波数変動として測定している。
周波数解析器20の測定結果は、ロックイン検出器26を通ることにより、強度周期変調器16で参照光を強度変調したときのロックイン周波数fLで同期検波され、2次の高調波が除去されて直流ないし低周波数成分としてブリルアン周波数シフトfBを生成し得、これを最終的なデータとしてオシロスコープ等の観測データ処理手段32に出力され得る。実際上、この実施の形態の場合、ロックイン検出器26は、周波数解析器20からの測定結果がピーク周波数変動信号として2つのミキサ27a,27bにそれぞれ送出され得る。ロックイン検出器26は、一方のミキサ27aで例えばsin(2π・fL・t)(fLはロックイン周波数、tは時間)の参照周波数信号をピーク周波数変動信号にかけ合わし、2次の高調波と、直流ないし低周波数成分とが合わさった出力信号を得、ローパスフィルタ28aによって出力信号の2次の高調波を除去することにより、残った直流ないし低周波数成分を算出器30に送出する。また、ロックイン検出器26は、このとき他方のミキサ27bで例えばcos(2π・fL・t)の他の参照周波数信号をピーク周波数変動信号にかけ合わし、2次の高調波と、直流ないし低周波数成分とが合わさった出力信号を得、ローパスフィルタ28bによって出力信号の2次の高調波を除去することにより、残った直流ないし低周波数成分を算出器30に送出する。
ロックイン検出器26は、一方のミキサ27aとローパスフィルタ28aとを介して得られた直流ないし低周波数成分Xと、他方のミキサ27aとローパスフィルタ28bとを介して得られた直流ないし低周波数成分Yとから、算出器30によって、算出式√(X2+Y2)により観測データRを算出し、これを雑音が抑制されたピーク周波数変動信号として観測データ処理手段32に出力し得る。このようにしてロックイン検出器26は、強度周期変調器16で参照光を周期的に強度変調したときのロックイン周波数fLで同期検波して、2次の高調波が除去された直流ないし低周波数成分を得ることで、雑音が抑制されSN比が向上したブリルアン周波数シフトfBを生成し得るようになされている。
(1−1−2)作用及び効果
以上の構成において、「光ファイバブリルアン散乱光相関領域リフレクトメトリ法(Brillouin Optical Correlation Domain Reflectometry:以下、BOCDR法という)」を利用した光ファイバ特性測定装置1では、被測定光ファイバFUTの両側から光を入射するのではなく、被測定光ファイバFUTの片端から光を入射するだけで、被測定光ファイバFUTの診断を可能にする。これを実現するために、BOCDR法では、第1の光分岐器(ポンプ光生成手段)4によって生成したポンプ光を被測定光ファイバFUTの片端のみから入射し、被測定光ファイバFUT内の全ての位置で発生するブリルアン散乱(基本的には自然ブリルアン散乱)を、ストークス光として光ヘテロダイン受信器19で受光する。ここで、強度周期変調器16により生成した周期変調参照光と、ストークス光とを干渉させると、両光の周波数差に相当するビート周波数としてブリルアン周波数シフトfBが分かる。このブリルアン周波数シフトfBがどの程度変化しているのかを、周波数解析器20で観測すれば、被測定光ファイバFUT中の歪みや温度の変化を測定できる。
また、BOCDR法を用いた光ファイバ特性測定装置1では、光源2からの連続発振光の周波数を信号発生器3aで変調して、受光器である光ヘテロダイン受信器19内に設けた2つのバランスPD(図示せず)上でのストークス光と周期変調参照光との干渉状態を制御することで、被測定光ファイバFUT内の全ての位置で発生したブリルアン散乱の中から、ある位置で発生した散乱のみを光ヘテロダイン受信器19で抽出する。つまり、半導体レーザ3からの出力光に信号発生器3aで周波数変調を施すことにより、前記ある位置を除く殆ど全ての位置から発生する自然ブリルアン散乱光と周期変調参照光との周波数差は変動するため、これを周波数解析器20で観測すると、その信号強度は周波数軸上で拡がったものとなる。
一方、特別なある位置からの散乱光は、周期変調参照光と同期して周波数が変化しており、両光の周波数差が一定となり、これがブリルアン周波数シフトfBを与える。そのため、この特別な位置からの散乱光による信号強度は、周波数解析器20で雑音が含まれているもののピーク状に現われ、このピーク周波数を基に、被測定光ファイバFUT内のある位置での特性情報を得ることができる。
さらにBOCDR法を用いた光ファイバ特性測定装置1では、前記被測定光ファイバFUT内の特別なある位置が、信号発生器3aによる出力光の変調周波数により決められる。したがって、信号発生器3aでこの変調周波数を変化させることにより、被測定光ファイバFUT内の決められた位置のみではなく、被測定光ファイバFUT内に沿った様々な位置で発生したブリルアン散乱のピーク周波数を、観測データとして周波数解析器20から観測データ処理手段32に出力できる。なお、観測データ処理手段32では、信号発生器3aでどのような周波数で光源2からの出力光に対し周波数変調を施しているのかを把握させてもよく、この場合、取得した観測データが被測定光ファイバFUT内のどの位置に相当するものなのかを判断できる。そのため、被測定光ファイバFUT内のある範囲に渡る特性情報を、観測データ処理手段32により正確に処理解析できる。
これに加えて、この際、光ファイバ特性測定装置1に設けた周波数解析器20では、雑音を除去せずに、ブリルアン周波数シフトfBの変動について、単に光ヘテロダイン受信器19からのビート信号を掃引周波数帯域でピーク周波数変動として測定するだけであるため、電気スペクトラムアナライザで行われているような雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を一切行っておらず、その分、短時間で光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動として測定し得る。
また、本発明の光ファイバ特性測定装置1では、周波数解析器20にて雑音を抑制し得ないものの、後段のロックイン検出器26によって、強度周期変調器16にて参照光を周期的に強度変調させたときのロックイン周波数fLで同期検波することで、2次の高調波が除去された直線ないし低周波数成分を得、雑音が抑制されたブリルアン周波数シフトfBを生成できる。
以上の構成によれば、周期変調参照光の変調周期1/fLのロックイン周波数fLを基準に、ロックイン検出器26によって、周波数解析器20からの出力から雑音を除去した直流ないし低周波数成分だけを抽出して、当該直流ないし低周波数成分から、ある位置でのブリルアン周波数シフトfBを検出できる。これにより、光ファイバ特性測定装置1では、周波数解析器20において、電気スペクトラムアナライザが備える機能のうち雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を繰り返し行う機能が必要なくなり、その分、被測定光ファイバFUTの特性分布を短時間に測定できる。かくして、被測定光ファイバFUTの片端から光を入射するだけで、当該被測定光ファイバFUTの特性分布を短時間に測定でき、なおかつ雑音を除去してSN比が向上したブリルアン周波数シフトfBを生成し得る。
(1−1−3)実験例
次に、上記図1に示す光ファイバ特性測定装置1を用いた実験例と、その結果について説明する。この実験例では、光源2の半導体レーザ3として1550nmの分布帰還型レーザダイオード(DFB LD)を利用し、試験用の被測定光ファイバFUT内で相関ピークを発生させるために、信号発生器3aにより正弦波周波数変調を与えた。半導体レーザ3からの出力光の周波数変調周波数fmは、940〜960kHzに設定し、変調度〜4GHzに設定した。よって、特許文献1に示された数式1(特許文献1の明細書段落[0051])から測定の空間分解能Δzは約25cmと計算される。半導体レーザ3からの出力は、カプラである第1の光分岐器4によって2つの光ビームに分割され、一方の光ビームは、周期的に発生する相関ピークの次数を制御するために、光遅延器14としての1.5kmの遅延用ファイバを通過した後、強度周期変調器16に出力した。
強度周期変調器16では、ロックイン周波数fLを232.7kHzとして、参照光の光強度をそのままとした期間(1/2・(変調周期1/fL))と、参照光を遮断または低減させた期間(1/2・(変調周期1/fL))とが変調周期1/fLで繰り返す周期的強度変調を参照光に与えて周期変調参照光を生成した。そして、これを光ヘテロダイン検出の参照光として直接用いた。また、他方の光ビームは、光増幅器5としてエルビウムドープ光ファイバ増幅器(EDFA)を用いて23dBmに増幅した後、ポンプ光として被測定光ファイバFUTに入射した。
前記被測定光ファイバFUTからの後方散乱による弱いストークス光は、別の光増幅器10(エルビウムドープ光ファイバ増幅器(EDFA))を用いて再度増幅した後、被測定光ファイバFUT内における周波数fmで周波数変調されたレイリー散乱とフレネル反射を抑圧するために可変帯域光フィルタ(TBF:Optical Band-Pass Filter)11を通過させて、光カプラ13を介して光ヘテロダイン受信器19に出射した。
周期変調参照光とストークス光との光学的なビート信号を、光ヘテロダイン受信器19により検出し、電気信号に変換した。この電気信号は、電気プリアンプに相当する電気アンプによって40dB増幅し、その後、当該信号を周波数解析器20で観測した。また、周波数解析器20では、掃引周波数発振器23から10.4〜11.0GHzの掃引周波数帯域を、光ヘテロダイン受信器19からの電気的な出力信号(ビート信号)にかけ合わせて、バンドパスフィルタ24を通し、検波した。ロックイン検出器26では、強度周期変調器16で参照光を強度変調させたときのロックイン周波数fLで同期検波し、2次の高調波を除去した直流ないし低周波数成分を得て、ブリルアン散乱スペクトラムを取得し、そのピーク周波数としてブリルアン周波数シフトfBを求めた。
被測定光ファイバFUTは、100mの全長を有する一般的なファイバ(SMF:単一モード光ファイバ)の所定位置に、約7000με(7000×10-6)の歪みに相当するBFS(ブリルアン周波数シフト)の違いがある20cm,2mの分散シフトファイバ(Dispersion Shifted Fiber:DSF)を設けた。そして、この被測定ファイバFUTに沿うブリルアンゲインスペクトラム(BGS)の分布を計測し、さらに一般的なファイバであるSMFでの位置Aと、20cmの分散シフトファイバでの位置Bと、2mの分散シフトファイバでの位置Cとについてブリルアン周波数シフトfBを調べた。その結果、図2A及び図2Bに示すような結果が得られた。
図2Aから、歪みが生じている位置B,Cでのブリルアン周波数シフトfBが、歪みが生じていない位置Aでのブリルアン周波数シフトfBよりも高くなっており、このシフト量から、被測定光ファイバFUTのどの領域でどの程度の歪みが生じているのかを測定できた。また、図2Aに示すように、位置A,B,Cでの各ブリルアン散乱スペクトラムの幅が比較的狭く表れていることから、雑音が抑制されてピークの位置が認識し易くなっていることが確認できた。さらに、図2Bでは、位置A、位置B、および位置Cで得られたスペクトル形状を示しており、雑音が抑制され、ブリルアン周波数シフトfBのピークの位置が認識し易くなっていることが確認できた。
(1−2)位相周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置
(1−2−1)光ファイバ特性測定装置の構成
次に、図1において、エリアER2に位相周期変調器17が設けられた光ファイバ特性測定装置1について説明する。この光ファイバ特性測定装置1は、上述した「(1−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」にて説明したエリアER1の強度周期変調器16に替えて、エリアER2に位相周期変調器17を設けた点のみが相違している。なお、ここでは、説明の重複を避けるため、位相周期変調器17に着目して以下説明する。
図1に示すように、この光ファイバ特性測定装置1には、光遅延器14と光カプラ13との間に位相周期変調器17が設けられており、第1の光分岐器4から光遅延器14を介して位相周期変調器17に参照光が出射され得る。位相周期変調器17は、参照光に所定の位相変調を施す期間と、参照光に当該位相変調を施さない期間とを、変調周期1/fL(fLは、ロックイン周波数)で繰り返す周期的位相変調を参照光に与えて、周期変調参照光を生成し得る。
実際上、この実施の形態の場合、位相周期変調器17は、参照光に例えば9MHzの正弦波で位相変調を施して参照光の位相が変調された位相変調参照光を出射する期間(1/2・(変調周期1/fL))と、参照光に当該位相変調を施さずに第1の光分岐器4からの参照光をそのまま出射する期間(1/2・(変調周期1/fL))とを、変調周期1/fLで繰り返す周期的位相変調を参照光に与え、周期変調参照光を生成し、これを光カプラ13を介して光ヘテロダイン受信器19に出射する。
これによりロックイン検出器26は、位相周期変調器17で参照光を周期的に位相変調させたときのロックイン周波数fLで同期検波することで、2次の高調波が除去されて直流ないし低周波数成分としてブリルアン散乱スペクトラムが形成され、そのピークとしてブリルアン周波数シフトfBを生成し得、これを最終的なデータとしてオシロスコープ等の観測データ処理手段32に出力し得る。この場合、上述した実施の形態と同様に、ロックイン検出器26は、周波数解析器20からのピーク周波数変動を与え得る出力がピーク周波数変動信号として2つのミキサ27a,27bにそれぞれ送出され得る。ロックイン検出器26は、一方のミキサ27aで例えばsin(2π・fL・t)(fLはロックイン周波数、tは時間)の参照周波数信号をピーク周波数変動信号にかけ合わし、2次の高調波と、直流ないし低周波数成分とが合わさった出力信号を得、ローパスフィルタ28aによって出力信号の2次の高調波を除去することにより、残った直流ないし低周波数成分を算出器30に送出する。また、ロックイン検出器26は、このとき他方のミキサ27bで例えばcos(2π・fL・t)の他の参照周波数信号をピーク周波数変動信号にかけ合わし、2次の高調波と、直流ないし低周波数成分とが合わさった出力信号を得、ローパスフィルタ28bによって出力信号の2次の高調波を除去することにより、残った直流ないし低周波数成分を算出器30に送出する。
ロックイン検出器26は、一方のミキサ27aとローパスフィルタ28aとを介して得られた直流ないし低周波数成分Xと、他方のミキサ27aとローパスフィルタ28bとを介して得られた直流ないし低周波数成分Yとから、算出器30によって、算出式√(X2+Y2)により観測データRをブリルアン散乱スペクトラムを形成するために得て、そのピークからブリルアン周波数シフトfBを生成し、これを観測データ処理手段32に出力し得る。このようにしてロックイン検出器26は、位相周期変調器17で参照光を周期的に位相変調させたときのロックイン周波数fLで同期検波し、2次の高調波が除去されて雑音が抑制された直流ないし低周波数成分を得て、ブリルアン散乱スペクトラムを取得し、そのピークからブリルアン周波数シフトfBを生成し得るようになされている。
(1−2−2)作用及び効果
以上の構成において、位相周期変調器17を設け、BOCDR法を利用した光ファイバ特性測定装置1でも、「(1−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」と同様の原理によって、位相周期変調器17により生成した周期変調参照光と、反射光であるストークス光とを干渉させると、両光の周波数差に相当するビート周波数としてブリルアン周波数シフトfBが分かる。かくして、このブリルアン周波数シフトfBがどの程度変化しているのかを、周波数解析器20で観測すれば、被測定光ファイバFUT中の歪みや温度の変化を測定できる。
また、位相周期変調器17を設けた光ファイバ特性測定装置1でも、光源2からの連続発振光の周波数を信号発生器3aで変調して、受光器である光ヘテロダイン受信器19内に設けた2つのバランスPD(図示せず)上でのストークス光と周期変調参照光との干渉状態を制御することで、被測定光ファイバFUT内の全ての位置で発生したブリルアン散乱の中から、ある位置で発生した散乱のみを光ヘテロダイン受信器19で抽出できる。つまり、半導体レーザ3からの出力光に信号発生器3aで周波数変調を施すことにより、前記ある位置を除く殆ど全ての位置から発生する自然ブリルアン散乱光と周期変調参照光との周波数差は変動するため、これを周波数解析器20で観測すると、その信号強度は周波数軸上で拡がったものとなる。
一方、特別なある位置からの散乱光は、周期変調参照光と同期して周波数が変化しており、両光の周波数差が一定となり、これがブリルアン周波数シフトfBを与える。そのため、この特別な位置からの散乱光による信号強度は、周波数解析器20で雑音が含まれているもののピーク状に現われ、このピーク周波数を基に、被測定光ファイバFUT内のある位置での特性情報を得ることができる。
さらに、位相周期変調器17を設けた光ファイバ特性測定装置1でも、前記被測定光ファイバFUT内の特別なある位置が、信号発生器3aにより出力光を変調した変調周波数により決められることから、この変調周波数を信号発生器3aで変化させることにより、被測定光ファイバFUT内の決められた位置のみではなく、被測定光ファイバFUT内に沿った様々な位置で発生したブリルアン散乱のピーク周波数を、観測データとして周波数解析器20から観測データ処理手段32に出力できる。なお、観測データ処理手段32では、信号発生器3aでどのような周波数で光源2からの出力光に対し周波数変調を施しているのかを把握させてもよく、この場合、取得した観測データが被測定光ファイバFUT内のどの位置に相当するものなのかを判断できる。そのため、被測定光ファイバFUT内のある範囲に渡る特性情報を、観測データ処理手段32により正確に処理解析できる。
これに加えて、この際、光ファイバ特性測定装置1に設けた周波数解析器20では、雑音を除去せずに、ブリルアン周波数シフトfBの変動について、単に光ヘテロダイン受信器19からのビート信号を掃引周波数帯域でピーク周波数変動信号として測定するだけであるため、電気スペクトラムアナライザで行われているような雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を一切行っておらず、その分、短時間で光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動信号として測定し得る。
また、位相周期変調器17を設けた光ファイバ特性測定装置1でも、ロックイン検出器26によって、位相周期変調器17により参照光を周期的に位相変調させたときのロックイン周波数fLで同期検波することにより、2次の高調波が除去されて雑音が抑制された直流ないし低周波数成分としてブリルアン周波数シフトfBを生成できる。
そして、このような位相周期変調器17を設けた光ファイバ特性測定装置1では、上述した強度周期変調器16を設けた光ファイバ特性測定装置1に比べて電気的な雑音のみならず、BOCDR法に特徴的な測定点である相関ピーク位置の前後に生じる背景光雑音スペクトラムもを除去し得るという長所を有しており、ブリルアン周波数シフトfBのピーク位置を、より明確に認識できることが、後述する実験例によって確認できている。
以上の構成によれば、周期変調参照光の変調周期1/fLのロックイン周波数fLを基準に、ロックイン検出器26によって、周波数解析器20からの出力から雑音を除去した直流ないし低周波数成分だけを抽出して、当該直流ないし低周波数成分から、ある位置でのブリルアン周波数シフトfBを検出できる。これにより、光ファイバ特性測定装置1では、周波数解析器20において、電気スペクトラムアナライザが備える機能のうち雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を繰り返し行う機能が必要なくなり、その分、被測定光ファイバFUTの特性分布を短時間に測定できる。さらに、位相周波数変調を施しつつ、ロックイン検波を行う本手法では、BOCDR法に特有の相関ピーク位置前後に生じる不要な背景光雑音スペクトラムも有効に除去できる。かくして、被測定光ファイバFUTの片端から光を入射するだけで、当該被測定光ファイバFUTの特性分布を短時間に測定でき、なおかつ電気的な雑音並びに背景光雑音を除去してSN比が一段と向上したブリルアン周波数シフトfBを生成し得る。
(1−2−3−1)実験例1
次に、上記図1に示す位相周期変調器17を有する光ファイバ特性測定装置1を用いた実験例と、その結果について説明する。この実験例では上述した「(1−1−3)実験例」とは、位相周期変調器17に関する実験条件が異なるのみで、その他の実験条件について全て同じとした。すなわち、光源2の半導体レーザ3として1550nmの分布帰還型レーザダイオード(DFB LD)を利用し、試験用の被測定光ファイバFUT内で相関ピークを発生させるために、信号発生器3aにより正弦波周波数変調を与えた。半導体レーザ3からの出力光の周波数変調周波数fmは、940〜960kHzに設定し、変調度〜4GHzに設定した。よって、特許文献1に示された数式1(特許文献1の明細書段落[0051])から測定の空間分解能Δzは約25cmと計算される。
光遅延器14として1.5kmの遅延用ファイバを使用し、当該光遅延器14を通過した参照光を位相周期変調器17に出力した。位相周期変調器17では、ロックイン周波数fLを232.7kHzとして、第1の光分岐器4からの参照光と同じ位相の参照光を出射する期間(1/2・(変調周期1/fL))と、参照光の位相を9MHzに変調した位相変調参照光を出射する期間(1/2・(変調周期1/fL))とが変調周期1/fLで繰り返す周期的位相変調を参照光に与えて周期変調参照光を生成した。そして、これを光ヘテロダイン検出の参照光として直接用いた。また、他方の光ビームは、光増幅器5としてエルビウムドープ光ファイバ増幅器(EDFA)を用いて23dBmに増幅した後、ポンプ光として被測定光ファイバFUTに入射した。
前記被測定光ファイバFUTからの後方散乱による弱いストークス光は、別の光増幅器10(エルビウムドープ光ファイバ増幅器(EDFA))を用いて再度増幅した後、被測定光ファイバFUT内における周波数fmで周波数変調されたレイリー散乱とフレネル反射を抑圧するために可変帯域光フィルタ(TBF:Optical Band-Pass Filter)11を通過させて、光カプラ13を介して光ヘテロダイン受信器19に出射した。
周期変調参照光とストークス光との光学的なビート信号を、光ヘテロダイン受信器19により検出し、電気信号に変換した。この電気信号は、電気プリアンプに相当する電気アンプによって40dB増幅し、その後、当該信号を周波数解析器20で観測した。また、周波数解析器20では、掃引周波数発振器23から10.4〜11.0GHzの掃引周波数帯域を、光ヘテロダイン受信器19からの電気的な出力信号(ビート信号)にかけ合せて、バンドパスフィルタ24を通し、検波した。ロックイン検出器26では、位相周期変調器17で参照光を周期的に位相変調させたときのロックイン周波数fLで同期検波し、2次の高調波を除去した直流ないし低周波数成分を得て、ブリルアン散乱スペクトラムを取得し、そのピーク周波数としてブリルアン周波数シフトfBを求めた。
被測定光ファイバFUTは、100mの全長を有する一般的なファイバ(SMF:単一モード光ファイバ)の所定位置に、約7000με(7000×10-6)の歪みに相当するBFSの違いがある20cm,2mの分散シフトファイバ(Dispersion Shifted Fiber:DSF)を設けた。そして、この被測定ファイバFUTに沿うブリルアンゲインスペクトラム(BGS)の分布を計測し、さらに一般的なファイバであるSMFの位置Aと、20cmの分散シフトファイバの位置Bと、2mの分散シフトファイバの位置Cとについてブリルアン周波数シフトfBを調べた。その結果、図2C及び図2Dに示すような結果が得られた。
図2Cから、歪みが生じている位置B,Cでのブリルアン周波数シフトfBが、歪みが生じていない位置Aでのブリルアン周波数シフトfBよりも高くなっており、このシフト量から、被測定光ファイバFUTのどの領域でどの程度の歪みが生じているのかを測定できた。また、図2Cに示すように、強度周期変調器16を用いた場合に得られた図2Aと比較して、被測定ファイバFUTに沿う全ての位置でブリルアン散乱スペクトラムの幅が狭く表れた。このことから、強度周期変調器16よりも位相周期変調器17を用いたときは、電気的な雑音のみならず、BOCDR法に特有な、相関ピーク前後で発生する不要な背景光雑音スペクトラムも大きく抑制されてピーク位置が更に明確に認識し易くなっていることが確認できた。さらに、図2Dでは、強度周期変調器16を用いたときの図2Bよりも、ブリルアン散乱スペクトラムの形状において背景光雑音に相当する裾部分の広がりが一段と抑制され、ブリルアン周波数シフトfBのピーク位置が更に明確に認識し易くなっていることが、より明確に確認できた。
(1−2−3−2)実験例2
次に、図1との対応部分に同一符号を付して示す図3に示す光ファイバ特性測定装置35を実験例として、どのようなブリルアン散乱スペクトラム形状やブリルアン周波数シフトfBが検出できるかについて調べた。図3に示す光ファイバ特性測定装置35は、位相周期変調器17を設けた構成であり、図1に示した光ファイバ特性測定装置1とは被測定光ファイバFUTを変え、半導体レーザ3からの出力光の周波数変調周波数fmを、944.5kHz付近で変化させ、変調度〜20GHzに設定した。よって、特許文献1に示された数式1(特許文献1の明細書段落[0051])から測定の空間分解能Δzは約5cmと計算される。
ここでは、被測定光ファイバFUTとして、100mの全長を有する一般的なファイバ(SMF:単一モード光ファイバ)の6cmと4mとの長さに亘り、0.2%の歪みを与えて、被測定光ファイバFUTに沿うブリルアン散乱スペクトラム(BGS)の分布計測を行い、さらに、6cm部分に加えた歪みを変化させて、BGSの移動と、ブリルアン周波数シフトfBの変化について調べた。ところ、図4Aは、BGSの被測定光ファイバFUTに沿う分布を示している。図4Aに示すように、歪みが生じている位置A,Bでのブリルアン周波数シフトfBが、歪みが生じていない領域でのブリルアン周波数シフトfBよりも低くなっており、このシフト量から、被測定光ファイバFUTのどの領域でどの程度の歪みが生じているのかを測定できた。また、図4Aからも、被測定光ファイバFUTの全長に亘り、ブリルアン散乱スペクトラムの幅が比較的狭く表れていることから、背景光雑音が抑制されてピークの位置が認識し易くなっていることが確認できた。
また、6cm部分に加える歪みを変えて、ブリルアン散乱スペクトラム形状と、そのピーク周波数fBについて調べたところ、図4Bに示すような結果が得られた。図4Bからも、ブリルアン散乱スペクトラムの幅が狭くなり、BOCDR法に特有の背景光雑音が抑制され、ブリルアン散乱スペクトラムの形状が比較的鋭角になっていて、背景光雑音が抑制された結果、ブリルアン周波数シフトfBが認識し易くなることが確認できた。
(2)単一側波帯光変調器(SSBM:SSB変調器)を用いた光ファイバ特性測定装置
図1との対応部分に同一符号を付して示す図5において、41は単一側波帯光変調器(SSBM:SSB変調器)を用いた本発明による光ファイバ特性測定装置を示す。この図5では、強度周期変調器16が設けられた光ファイバ特性測定装置41と、別の実施の形態となる、位相周期変調器17が設けられた光ファイバ特性測定装置41との2つの実施の形態を1つの図面に示したものである。ここでは、先ず始めに強度周期変調器16が設けられた光ファイバ特性測定装置41について説明した後、別の実施の形態である、位相周期変調器17が設けられた光ファイバ特性測定装置41について順に説明する。
(2−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置
(2−1−1)光ファイバ特性測定装置の構成
図5に示すように、強度周期変調器16が設けられた光ファイバ特性測定装置41は、SSB変調器43が設けられている点と、固定周波数変調器50を備えた周波数解析器47を用いている点とで、図1に示した光ファイバ特性測定装置1とは構成が相違している。ここでは、説明の重複を避けるため、強度周期変調器16と、SSB変調器43と、周波数解析器47とに着目して以下説明する。この場合、光ファイバ特性測定装置41には、エリアER1に設けた強度周期変調器16と、光カプラ13との間に、SSB変調器43と光増幅器46とが設けられている。
なお、強度周期変調器16は、上述した「(1−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」と同様に、参照光に対して強度変調(変化)を施す期間と、参照光に対して強度変調(変化)を施さない期間とを変調周期1/fL(fLはロックイン周波数)で繰り返す周期的強度変調を参照光に与え、周期変調参照光を生成し得る。SSB変調器43は、掃引周波数発振器44からの掃引周波数信号(例えば約4.5GHz〜5.5GHzまでの掃引周波数帯域)の周波数だけ参照光を周波数シフトし、これを光増幅器46により増幅させた後、光カプラ13を介して光ヘテロダイン受信器19に送出する。
周期変調参照光とストークス光をそれぞれ受ける光ヘテロダイン受信器19は、ストークス光と、このストークス光と周波数の異なる周期変調参照光とを重ね合わせ、両光の周波数差に等しい電気的なビート信号を生成する。とりわけ、周期変調参照光とストークス光との間では、ブリルアン周波数シフトfBと、上記掃引周波数信号の周波数との差に相当する周波数差が有る。
47は、光ヘテロダイン受信器19から出力する電気的なビート信号を周波数特性として観測する周波数解析器である。前述したように、被測定光ファイバFUTに伸縮歪みや温度変化が生じると、こうした歪みや温度変化に比例して、ブリルアン周波数シフトfBが変動する。周波数解析器47は、こうしたブリルアン周波数シフトfBの変動を、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号のピーク周波数変動として測定するものである。
この場合、周波数解析器47は、固定周波数発振器(Fixed Generator)50と、ミキサ49と、フィルタ(Filter)51等で構成されている。この周波数解析器47は、光ヘテロダイン受信器19から出力された電気的なビート信号に、固定周波数発振器50からの固定周波数信号(例えば約5GHzの固定周波数)をミキサ49でかけ合わせ、フィルタ(例えば、バントパスフィルタ(中心周波数1GHz))51を通過させた後、検波する。光ヘテロダイン受信器19からの電気的なビート信号からブリルアン散乱スペクトラムを得て、ブリルアン周波数シフトfBの変動を得る。このように周波数解析器47は、光ヘテロダイン受信器19からの電気的なビート信号をピーク周波数fBの変動として測定している。なお、バンドパスフィルタであるフィルタ51では、変調周期1/fLのロックイン周波数fLが含まれるように、フィルタ帯域幅が設定される。
ここで、この実施の形態における周波数解析器47でも、電気スペクトラムアナライザとは異なり、雑音を除去するためのスペクトラム演算処理を一切行っておらず、単に光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動信号として測定しているだけであることから、従来、電気スペクトラムアナライザで行われていたスペクトラム演算処理時間を不要とし、その分、短時間で光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動信号として測定し得る。なお、周波数解析器47では、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動信号として測定する際、雑音を除去するためのスペクトラム演算処理を行っていないことから、雑音が存在したSN比の低いピーク周波数変動として測定し得る。
周波数解析器47の測定結果は、上述した実施の形態と同様に、ロックイン検出器26を通ることにより、強度周期変調器16で参照光を強度変調したときのロックイン周波数fLで同期検波され、2次の高調波が除去されて直流ないし低周波数成分としてブリルアン散乱スペクトラムを生成し、これからブリルアン周波数シフトfBが求められ、これらが最終的なデータとしてオシロスコープ等の観測データ処理手段32に出力され得る。
(2−1−2)作用及び効果
以上の構成において、SSB変換器43を備えた光ファイバ特性測定装置41でも、上述した「(1−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」と同様の原理によって、強度周期変調器16により生成され、かつSSB変調器43により周波数シフトされた周期変調参照光と、ストークス光とを干渉させると、両光の周波数差に相当するビート周波数信号からブリルアン散乱スペクトラムが分かる。かくして、ブリルアン周波数シフトfBがどの程度変化しているのかを、周波数解析器47で観測すれば、被測定光ファイバFUT中の歪みや温度の変化を測定できる。
また、強度周期変調器16を設けた光ファイバ特性測定装置41では、光源2からの連続発振光の周波数を信号発生器3aで変調して、受光器である光ヘテロダイン受信器19内に設けた2つのバランスPD(図示せず)上でのストークス光と周期変調参照光との干渉状態を制御することで、被測定光ファイバFUT内の全ての位置で発生したブリルアン散乱の中から、ある位置で発生した散乱のみを光ヘテロダイン受信器19で抽出できる。つまり、半導体レーザ3からの出力光に信号発生器3aで周波数変調を施すことにより、前記ある位置を除く殆ど全ての位置から発生する自然ブリルアン散乱光と周期変調参照光との周波数差は変動するため、これを周波数解析器47で観測すると、その信号強度は周波数軸上で拡がったものとなる。
一方、特別なある位置からの散乱光は、周期変調参照光と同期して周波数が変化しており、両光の周波数差が一定となり、これがブリルアン周波数シフトfBを与える。そのため、この特別な位置からの散乱光による信号強度は、周波数解析器47で雑音が含まれているもののピーク状に現われ、このピーク周波数を基に、被測定光ファイバFUT内のある位置での特性情報を得ることができる。
さらに、強度周期変調器16を設けた光ファイバ特性測定装置41では、前記被測定光ファイバFUT内の特別なある位置が、信号発生器3aによる出力光の変調周波数により決められることから、信号発生器3aでこの変調周波数を変化させることにより、被測定光ファイバFUT内の決められた位置のみではなく、被測定光ファイバFUT内に沿った様々な位置で発生したブリルアン散乱のピーク周波数を、観測データとして周波数解析器47から観測データ処理手段32に出力できる。なお、観測データ処理手段32では、信号発生器3aでどのような周波数で光源2からの出力光に対し周波数変調を施しているのかを把握させてもよく、この場合、取得した観測データが被測定光ファイバFUT内のどの位置に相当するものなのかを判断できる。そのため、被測定光ファイバFUT内のある範囲に渡る特性情報を、観測データ処理手段32により正確に処理解析できる。
これに加えて、この際、光ファイバ特性測定装置41に設けた周波数解析器47では、雑音を除去せずに、ブリルアン周波数シフトfBの変動について、単に光ヘテロダイン受信器19からのビート信号から測定するだけであるため、電気スペクトラムアナライザで行われているような雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を一切行っておらず、その分、短時間で光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動として測定し得る。
また、強度周期変調器16を設けた光ファイバ特性測定装置41では、ロックイン検出器26によって、強度周期変調器16により参照光を周期的に強度変調させたときのロックイン周波数fLで同期検波することにより、2次の高調波が除去されて雑音が抑制された直流ないし低周波数成分としてブリルアン周波数シフトfBを生成できる。
以上の構成によれば、周期変調参照光の変調周期1/fLのロックイン周波数fLを基準に、ロックイン検出器26によって、周波数解析器47からの出力から雑音を除去した直流ないし低周波数成分だけを抽出して、当該直流ないし低周波数成分から、ある位置でのブリルアン周波数シフトfBを検出できる。これにより、光ファイバ特性測定装置41では、周波数解析器47において、電気スペクトラムアナライザが備える機能のうち雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を繰り返し行う機能が必要なくなり、その分、被測定光ファイバFUTの特性分布を短時間に測定できる。かくして、被測定光ファイバFUTの片端から光を入射するだけで、当該被測定光ファイバFUTの特性分布を短時間に測定でき、なおかつ雑音を除去してSN比が向上したブリルアン周波数シフトfBを生成し得る。
(2−2)位相周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置
(2−2−1)光ファイバ特性測定装置の構成
次に、図5において、SSB変調器43が設けられ、かつエリアER2に位相周期変調器17が設けられた光ファイバ特性測定装置41について説明する。この光ファイバ特性測定装置41は、上述した「(2−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」にて説明した強度周期変調器16に替えて、エリアER2に位相周期変調器17を設けた点のみが相違している。なお、ここでは、説明の重複を避けるため、位相周期変調器17に着目して以下説明する。
図5に示すように、この光ファイバ特性測定装置41には、光遅延器14とSSB変調器43との間に位相周期変調器17が設けられており、第1の光分岐器4から光遅延器14を介して位相周期変調器17に参照光が出射され得る。位相周期変調器17は、参照光に対して所定の位相変調を施す期間と、参照光に対して当該位相変調を施さない期間とを、変調周期1/fLで繰り返す周期的位相変調を参照光に与えて、周期変調参照光を生成し得る。
実際上、この実施の形態の場合、位相周期変調器17は、参照光に対して例えば9MHzの正弦波で位相変調を施して位相が変調された位相変調参照光を出射する期間(1/2・(変調周期1/fL))と、参照光に対して位相変調を施さずに第1の光分岐器4からの参照光をそのまま出射する期間(1/2・(変調周期1/fL))とを、変調周期1/fLで繰り返す周期変調参照光を生成し、当該周期変調参照光をSSB変調器43に出射する。
SSB変調器43は、掃引周波数発振器44からの掃引周波数信号(例えば約4.5GHz〜5.5GHzまでの掃引周波数帯域)の周波数だけ参照光を周波数シフトし、これを光増幅器46により増幅させた後、光カプラ13を介して光ヘテロダイン受信器19に送出する。周期変調参照光とストークス光をそれぞれ受ける光ヘテロダイン受信器19は、ストークス光と、このストークス光と周波数の異なる周期変調参照光とを重ね合わせ、両光の周波数差に等しい電気的なビート信号を生成する。とりわけ、周期変調参照光とストークス光との間では、ブリルアン周波数シフトfBと、上記掃引周波数信号の周波数との差に相当する周波数差が有る。
周波数解析器47は、光ヘテロダイン受信器19から出力された電気的なビート信号に、固定周波数発振器50からの固定周波数信号(例えば約5GHzの固定周波数)をミキサ49でかけ合わせ、フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ(中心周波数1GHz))51を通過させた後、検波することにより、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号からブリルアン散乱スペクトラムを得て、ブリルアン周波数シフトfBを得る。なお、バンドパスフィルタであるフィルタ51では、変調周期1/fLのロックイン周波数fLが含まれるように、フィルタ帯域幅が設定されている。
ここで、この実施の形態における周波数解析器47でも、電気スペクトラムアナライザとは異なり、雑音を除去するためのスペクトラム演算処理を一切行っておらず、単に光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動信号として測定しているだけであることから、従来、電気スペクトラムアナライザで行われていたスペクトラム演算処理時間を不要とし、その分、短時間で光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動信号として測定し得る。なお、周波数解析器47では、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号からピーク周波数変動信号として測定する際、雑音を除去するためのスペクトラム演算処理を行っていないことから、雑音が存在したSN比の低いピーク周波数変動として測定し得る。
周波数解析器47の測定結果は、上述した実施の形態と同様に、ロックイン検出器26を通ることにより、位相周期変調器16で参照光を位相変調したときのロックイン周波数fLで同期検波され、2次の高調波が除去されて直流ないし低周波数成分としてブリルアン周波数シフトfBを生成し得、これを最終的なデータとしてオシロスコープ等の観測データ処理手段32に出力され得る。
(2−2−2)作用及び効果
以上の構成において、位相周期変調器17を設け、BOCDR法を利用した光ファイバ特性測定装置41でも、上述した「(1−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」と同様の原理によって、位相周期変調器17により生成した周期変調参照光と、ストークス光とを干渉させると、両光の周波数差に相当するビート周波数としてブリルアン周波数シフトfBが分かる。かくして、このブリルアン周波数シフトfBがどの程度変化しているのかを、周波数解析器47で観測すれば、被測定光ファイバFUT中の歪みや温度の変化を測定できる。
また、位相周期変調器17を設けた光ファイバ特性測定装置41でも、光源2からの連続発振光の周波数を信号発生器3aで変調して、受光器である光ヘテロダイン受信器19内に設けた2つのバランスPD(図示せず)上でのストークス光と周期変調参照光との干渉状態を制御することで、被測定光ファイバFUT内の全ての位置で発生したブリルアン散乱の中から、ある位置で発生した散乱のみを光ヘテロダイン受信器19で抽出できる。つまり、半導体レーザ3からの出力光に信号発生器3aで周波数変調を施すことにより、前記ある位置を除く殆ど全ての位置から発生する自然ブリルアン散乱光と周期変調参照光との周波数差は変動するため、これを周波数解析器47で観測すると、その信号強度は周波数軸上で拡がったものとなる。
一方、特別なある位置からの散乱光は、周期変調参照光と同期して周波数が変化しており、両光の周波数差が一定となり、これがブリルアン周波数シフトfBを与える。そのため、この特別な位置からの散乱光による信号強度は、周波数解析器47で雑音が含まれているもののピーク状に現われ、このピーク周波数を基に、被測定光ファイバFUT内のある位置での特性情報を得ることができる。
さらに、位相周期変調器17を設けた光ファイバ特性測定装置41でも、前記被測定光ファイバFUT内の特別なある位置が、信号発生器3aにより出力光を変調した変調周波数により決められることから、この変調周波数を信号発生器3aで変化させることにより、被測定光ファイバFUT内の決められた位置のみではなく、被測定光ファイバFUT内に沿った様々な位置で発生したブリルアン散乱のピーク周波数を、観測データとして周波数解析器47から観測データ処理手段32に出力できる。なお、観測データ処理手段32では、信号発生器3aでどのような周波数で光源2からの出力光に対し周波数変調を施しているのかを把握させてもよく、この場合、取得した観測データが被測定光ファイバFUT内のどの位置に相当するものなのかを判断できる。そのため、被測定光ファイバFUT内のある範囲に渡る特性情報を、観測データ処理手段32により正確に処理解析できる。
これに加えて、この際、光ファイバ特性測定装置41に設けた周波数解析器47では、雑音を除去せずに、ブリルアン周波数シフトfBの変動について、単に光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動信号として測定するだけであるため、電気スペクトラムアナライザで行われているような雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を一切行っておらず、その分、短時間で光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動として測定し得る。
また、位相周期変調器17を設けた光ファイバ特性測定装置41でも、ロックイン検出器26によって、位相周期変調器17により参照光を周期的に位相変調させたときのロックイン周波数fLで同期検波することにより、2次の高調波が除去されて雑音が抑制された直流ないし低周波数成分としてブリルアン周波数シフトfBを生成できる。
以上の構成によれば、周期変調参照光の変調周期1/fLのロックイン周波数fLを基準に、ロックイン検出器26によって、周波数解析器47からの出力から雑音を除去した直流ないし低周波数成分だけを抽出して、当該直流ないし低周波数成分から、ある位置でのブリルアン周波数シフトfBを検出できる。これにより、光ファイバ特性測定装置41では、周波数解析器47において、電気スペクトラムアナライザが備える機能のうち雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を繰り返し行う機能が必要なくなり、その分、被測定光ファイバFUTの特性分布を短時間に測定できる。さらに、位相周波数変調を施しつつ、ロックイン検波を行う本手法では、BOCDR法に特有の相関ピーク位置前後に生じる不要な背景光雑音スペクトラムも有効に除去できる。かくして、被測定光ファイバFUTの片端から光を入射するだけで、当該被測定光ファイバFUTの特性分布を短時間に測定でき、なおかつ電気的な雑音のみならず、背景光雑音も除去してSN比が一段と向上したブリルアン周波数シフトfBを生成し得る。
(3)他の実施の形態
因みに、上記構成において、第1の光分岐器4や第2の光分岐器7は、サーキュレータ,ビームスプリッタ,ハーフミラーなどを用いてもよい。さらに、上述した実施の形態においては、ポンプ光生成手段及び参照光生成手段として第1の光分岐器4を設け、当該第1の光分岐器4によって、光源2からの出力光を分岐してポンプ光と参照光とを生成した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、光源部として、参照光とポンプ光とでそれぞれ独立した別の光源部を設けるようにしてもよく、その場合は各光源からのレーザ光を同じ周波数および同じ振幅で周波数変調させて、ポンプ光と参照光とを生成することが好ましい。
また、上述した実施の形態においては、光遅延器14と光カプラ13との間に、強度周期変調器16又は位相周期変調器17を設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、第1の光分岐器4と光カプラ13との間の所定位置に、強度周期変調器16又は位相周期変調器17を配置させるようにしてもよい。
また、他の実施の形態として、ポンプ光が通過する第1の光分岐器4と光遅延器8との間に、強度周期変調器16又は位相周期変調器17を配置させるようにしてもよく、この場合、ポンプ光に対して、所定の変調(強度変調又は位相変調)を施す期間と、ポンプ光に対して当該変調を施さない期間とを所定の変調周期1/fLで繰り返す変調周期を与え、周期変調ポンプ光を生成させ得る。これにより、光ヘテロダイン受信器19は、周期変調ポンプ光により周期的な変調が与えられたストークス光と、参照光とを重ね合わせ、両光の周波数差に等しい電気的なビート信号を生成する。
さらに、他の実施の形態としては、ストークス光が通過する第2の光分岐器7と光カプラ13との間に、強度周期変調器16又は位相周期変調器17を配置させるようにしてもよく、この場合、ストークス光に対して、所定の変調(強度変調又は位相変調)を施す期間と、ストークス光に対して当該変調を施さない期間とを所定の変調周期1/fLで繰り返す変調周期を与え、周期変調ストークス光を生成し得る。これにより、光ヘテロダイン受信器19は、周期変調ストークス光と、参照光とを重ね合わせ、両光の周波数差に等しい電気的なビート信号を生成する。
さらに、上述した実施の形態においては、図5に示すように、強度周期変調器16又は位相周期変調器17と、光増幅器46との間にSSB変調器43を設けた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、第1の光分岐器4と光カプラ13との間にSSB変調器43を設けたり、或いは、ストークス光が通過する、第2の光分岐器7と光カプラ13との間にSSB変調器43を設けるようにしてもよい。
なお、他の実施の形態としては、周波数解析器20,47として、一般的な電気スペクトラムアナライザを用い、当該電気スペクトラムアナライザが備える機能のうち雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を繰り返し行う機能を使用せずに、電気スペクトラムアナライザの掃引周波数帯域又は固定周波数の生成機能を用いて周波数解析器20,47を実現してもよい。この場合であっても、電気スペクトラムアナライザによる複雑なスペクトラム演算処理を繰り返し行う機能を用いない分、被測定光ファイバFUTの特性分布を短時間に測定できる。かくして、被測定光ファイバFUTの片端から光を入射するだけで、当該被測定光ファイバFUTの特性分布を短時間に測定でき、なおかつ雑音を除去してSN比が向上したブリルアン周波数シフトfBを生成し得る。
(4)単一側波帯光変調器(SSBM:SSB変調器)を用いた他の実施形態による光ファイバ特性測定装置
図5との対応部分に同一符号を付して示す図6において、55は単一側波帯光変調器(SSBM:SSB変調器)を用いた他の実施形態による光ファイバ特性測定装置を示す。この図6は、強度周期変調器16が設けられた光ファイバ特性測定装置55と、これとは別の実施形態となる、位相周期変調器17が設けられた光ファイバ特性測定装置55との2つの実施形態を1つの図面に示したものである。
図6に示した光ファイバ特性測定装置55は、主に、(i)被測定光ファイバとして偏波保持特性を有した被測定光ファイバ(以下、偏波保持型被測定光ファイバとも呼ぶ)PFUTを用いている点と、(ii)ポンプ光となるx偏波光に対して強度周期変調器16または位相周期変調器17により周期的な強度変調処理が行われている点と、(iii)周期的に変調するx偏波光のポンプ光により偏波保持型被測定光ファイバPFUT内にブリルアンダイナミックグレーティングを形成し、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内で当該ブリルアンダイナミックグレーティングによりy偏波光のリード光が反射して得られるストークス光(反射光)を検出して偏波保持型被測定光ファイバPFUTの特性を測定する点で、上述した図5の光ファイバ特性測定装置41とは構成が相違している。
ここでは、先ず始めに強度周期変調器16が設けられた光ファイバ特性測定装置55について説明した後、別の実施形態である、位相周期変調器17が設けられた光ファイバ特性測定装置55について順に説明する。
(4−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置
(4−1−1)光ファイバ特性測定装置の構成
この場合、光ファイバ特性測定装置55は、第1の光分岐器4aで分岐された一方のレーザ光を、光強度変調器(IM1)56a、光増幅器5a及び偏光コントローラ58aを順次介して他の光強度変調器(IM2)56bに出射する。光強度変調器(IM1)56aは、RF(Radio Frequency)信号発生器(RF1)57aからのRF信号を基に、半導体レーザ3からのレーザ光を強度変調して、例えば周波数成分を24[GHz]下げた出力光を生成する。偏光コントローラ58aは、光増幅器5aで増幅された出力光を、例えばx軸方向に揃えてx偏波光のポンプ光とし、これを光強度変調器56bに出射する。
光強度変調器56bは、RF信号発生器(RF2)57bからのRF信号を基に、x偏波光を強度変調して、例えば-18〜20[GHz]の帯域で波長を掃引させ、これを可変帯域フィルタ(TBF1)60aに出射する。所定帯域で波長が掃引するx偏波光は、可変帯域フィルタ60aによりx偏波光に含まれた余分な周波数成分が除去された後、偏光コントローラ58bを介して、エリアER1の強度周期変調器16に出射される。
強度周期変調器16は、x偏波光のポンプ光に対して強度変調(変化)を施す期間と、x偏波光のポンプ光に対して強度変調(変化)を施さない期間とを所定の変調周期1/fL(fLは、ロックイン周波数)で繰り返す周期的強度変調を与え、x偏波光の周期変調ポンプ光を生成し得る。実際上、この実施の形態の場合、強度周期変調器16は、x偏波光に対して強度変調(変化)を施さないでそのままx偏波光を出射する期間(1/2・(変調周期1/fL))と、x偏波光を遮断または低減させる期間(1/2・(変調周期1/fL))とを、変調周期1/fLで繰り返す周期変調ポンプ光を生成する。x偏波光の周期変調ポンプ光(X)は、光増幅器5b、偏光ビームスプリッタ62a、及び第2の光分岐器(サーキュレータ)7を順次介して、被測定光ファイバPFUTの一端に入射される。
一方、第1の光分岐器4aで分岐された他方のレーザ光は、さらに第3の光分岐器4bで2つのレーザ光に分岐され、そのうち一方のレーザ光がリード光として光遅延器8aに出射される。リード光は、光遅延器8aで遅延された後、偏光コントローラ58cでy軸方向に揃ったy偏波光となる。y偏波光のリード光は、光増幅器5cにより増幅された後、偏光ビームスプリッタ62a、及び第2の光分岐器(サーキュレータ)7を順次介して、被測定光ファイバPFUTの一端に入射される。なお、ここで、ポンプ光となる第1偏波光としてのx偏波光と、リード光となる第2偏波光としてのy偏波光は、光の進行方向に垂直な面内で、互いに直角方向(x軸方向、y軸方向)に振動する2つの直線偏光成分をいう。
偏波保持特性を有した被測定光ファイバPFUT内では、x偏波光のポンプ光が伝搬することにより音響波が形成される。ここで、ブリルアン散乱に関連した現象であって、このような音響波によって形成された屈折率の周期構造をブリルアンダイナミックグレーティングと呼ぶ。この場合、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内では、x偏波面に入射されたx偏波光のポンプ光で励振された音響波がy偏波面に入射されたy偏波光のリード光を反射させストークス光が生成され、当該偏波保持型被測定光ファイバPFUTの一端から当該ストークス光が出射し得る。なお、この際、偏波保持型被測定光ファイバPFUTの一端からは、周期変調したy偏波光のストークス光だけでなく、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内のブリルアン散乱(基本的には自然ブリルアン散乱)により生じた、周期変調したx偏波光のストークス光も出射され得る。
偏波保持型被測定光ファイバPFUTの一端から出射したストークス光(周期変調ストークス光(X偏光およびY偏光))は、第2の光分岐器7を介して偏光ビームスプリッタ62aに出射される。ストークス光は、偏光ビームスプリッタ62aによりx偏波光のストークス光(X)とy偏波光のストークス光(Y)とに分けられ、一方のy偏波光のストークス光は、光増幅器5dで増幅された後、可変帯域光フィルタ(TBF2)60b、偏光コントローラ58d、及び光カプラ13を順次介して、光ヘテロダイン受信器19に出射される。なお、x偏波光のストークス光については後述する。
一方、第3の光分岐器4bで分岐された他方のレーザ光は、参照光として、SSB変調器43、光遅延器8b、光増幅器46、可変帯域光フィルタ(TBF3)60c、偏光コントローラ58e及び光カプラ13を順次介して、光ヘテロダイン受信器19に出射される。SSB変調器43は、発振器(SG)44からの信号(例えば約-11.26GHzだけ参照光を周波数シフトし、これを光遅延器8bで遅延させた後、光増幅器46を介して可変帯域光フィルタ(TBF3)60cに出射させる。参照光は、可変帯域光フィルタ(TBF3)60cにより余分な周波数成分が除去された後、偏光コントローラ58eにより、例えばy軸方向に揃ったy偏波光にされ、光カプラ13を介して光ヘテロダイン受信器19に出射される。
y偏波光の参照光と、周期変調したy偏波光のストークス光とをそれぞれ受ける光ヘテロダイン受信器19は、ストークス光と、このストークス光と周波数の異なる参照光とを重ね合わせ、両光の周波数差に等しい電気的なビート信号を生成する。
周波数解析器47は、光ヘテロダイン受信器19から出力する電気的なビート信号の強度を観測する。上述したように、偏波保持型被測定光ファイバPFUTに伸縮歪みや温度変化が生じると、こうした歪みや温度変化によって、ブリルアンダイナミックグレーティング(BDGと表記)スペクトラムのピーク周波数fBDGが変動する。光強度変調器56bをRF信号発生器(RF2)57bからのRF信号を基に、強度変調して、例えば-18〜20[GHz]の帯域で波長を掃引させて上記ビート信号を観測することにより、BDGスペクトラムを得る。この掃引は、リード光光路に設けたSSB変調器43によって、発振器(SG)44の信号を掃引して行ってもよい。周波数解析器47およびロックイン検出器26は、こうしたBDGスペクトラムを、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号から測定するものである。
周波数解析器47は、光ヘテロダイン受信器19から出力された電気的なビート信号に、固定周波数発振器50からの固定周波数信号(例えば約400MHzの固定周波数)をミキサ49でかけ合わせ、フィルタ(例えば、バントパスフィルタ(バンド幅8MHz))51を通過させた後に検波する。光強度変調器56bをRF信号発生器(RF2)57bからのRF信号を基に、強度変調して、例えば-18〜20[GHz]の帯域で波長を掃引させて光ヘテロダイン受信器19からの電気的なビート信号からBDGスペクトラムを得て、BDGスペクトラムのピーク値を得る。この掃引は、リード光光路に設けたSSB変調器43によって、発振器(SG)44の信号を掃引して行ってもよい。このように周波数解析器47は、光ヘテロダイン受信器19からの電気的なビート信号強度を測定している。なお、バンドパスフィルタであるフィルタ51では、変調周期1/fLのロックイン周波数fLが含まれるように、フィルタ帯域幅が設定される。
ここで、この実施の形態における周波数解析器47でも、電気スペクトラムアナライザとは異なり、雑音を除去するためのスペクトラム演算処理を一切行っておらず、単に光ヘテロダイン受信器19からのビート信号強度を測定しているだけであるため、従来、電気スペクトラムアナライザで行われていたスペクトラム演算処理時間を不要とし、その分、短時間で光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動信号として測定し得る。なお、周波数解析器47では、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動信号として測定する際、雑音を除去するためのスペクトラム演算処理を行っていないことから、雑音が存在したSN比の低いピーク周波数変動として測定し得る。
周波数解析器47の測定結果は、上述した実施の形態と同様に、ロックイン検出器26を通ることにより、強度周期変調器16でポンプ光を強度変調したときのロックイン周波数fLで同期検波され、雑音成分が抑制された直流ないし低周波数成分としてBDGスペクトラムを生成し、これからBDGシフトfBDGが求められ、これらが最終的なデータとしてオシロスコープ等の観測データ処理手段32に出力され得る。
なお、この際、光ファイバ特性測定装置55は、偏光ビームスプリッタ62bにより分岐したx偏波光のストークス光に対しても、図6に示したように、SSB変調器43等を経由して、当該ストークス光と周波数が異なりx偏波光となった参照光と重ね合わせる。そして、光ファイバ特性測定装置55は、x偏波光のストークス光と、x偏波光の参照光の両光の周波数差に等しい電気的なビート信号を光ヘテロダイン受信器19で生成し、図6に示した実施形態と同様に、周波数解析器47及びロックイン検出器26によりブリルアン周波数シフトfBを生成する。
このようにして、光ファイバ特性測定装置55は、ブリルアンダイナミックグレーティングBDGにより反射したy偏波光のストークス光からブリルアンダイナミックグレーティング(BDG)シフトfBDGの変動を測定するだけでなく、x偏波光のストークス光からもブリルアン周波数シフトfBの変動を測定し得るようになされている。ここで、y偏波光のストークス光から測定したBDGシフトfBDGと、x偏波光のストークス光から測定したブリルアン周波数シフトfBとは、温度と歪への依存性を調べると、互いに符号が逆になることが知られていることから、光ファイバ特性測定装置55では、所定の演算(例えば、「Complete discrimination of strain and temperature using Brillouin frequency shift and birefringence in a polarization-maintaining fiber」2 February 2009 / Vol. 17, No. 3 / OPTICS EXPRESS 1248 参照)を行うことで、偏波保持型被測定光ファイバPFUTにおける温度と歪とを同時に分離して測定し得る。
ここで、図7Aの左側のグラフは、光ファイバ特性測定装置55において、y偏波光でなるストークス光を基に求めたスペクトルを示しており、縦軸がパワーを示し、横軸が周波数を示す。図7AにおけるW1は、強度周期変調器16によりx偏波光のポンプ光を遮断したときに得られるy偏波光のストークス光を基に求めたスペクトルを示す。一方、W2は、強度周期変調器16により強度変調(変化)を施さずにx偏波光のポンプ光をそのまま出射したときに得られるy偏波光のストークス光を基に求めたスペクトルを示す。
因みに、RBW(Resolution Band-Width)は分解能帯域を示している。ここで、波形W1と波形W2は、帯域幅は同じであるものの、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内にポンプ光を入射することで偏波保持型被測定光ファイバPFUT内でのリード光の反射が増えることから、波形W2のほうが波形W1よりもパワーが増加する。そして、波形W1と波形W2との差が、ブリルアンダイナミックグレーティングにより増加したBDGスペクトルであり、矢印A1で示す図7A右側に示すような波形W3となり得る。このように波形W1,W2,W3のピーク周波数を基に、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内のある位置での特性情報を得ることができる。
なお、図7Bは、バックグラウンドノイズも考慮したときの波形W4,W5を示す。W4は、強度周期変調器16によりx偏波光のポンプ光を遮断したときに得られるy偏波光のストークス光を基に求めたブリルアンゲインスペクトルを示し、W5は、強度周期変調器16により強度変調(変化)を施さずにx偏波光のポンプ光をそのまま出射したときに得られるy偏波光のストークス光を基に求めたBDGスペクトルを示す。
図7Bに示したように、バックグラウンドノイズもブリルアンダイナミックグレーティングの影響を受け、パワーが増加しているが、このようなバックグラウンドノイズが含まれている場合でも、波形W4,W5のいずれにおいてもBDGスペクトルがピーク状に現われ、このピーク周波数を基に、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内のある位置での特性情報を得ることができる。
(4−1−2)作用及び効果
以上の構成において、BOCDR法を利用した光ファイバ特性測定装置55では、偏波保持型被測定光ファイバPFUTの片側から光を入射するだけで、偏波保持型被測定光ファイバPFUTの診断を可能にする。これを実現するために、光ファイバ特性測定装置55では、強度周期変調器16により周期変調したx偏波光のポンプ光と、y偏波光のリード光とを、偏波保持型被測定光ファイバPFUTの片端のみから入射し、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内で発生するブリルアンダイナミックグレーティングにより反射したy偏波光のストークス光を、光ヘテロダイン受信器19で受光する。
ここで、強度周期変調器16で周期変調したポンプ光によって生じるブリルアンダイナミックグレーティングにより反射したy偏波光のストークス光と、SSB変調器43により周波数シフトされたy偏波光の参照光とを干渉させると、両光の周波数差に相当するビート周波数にBDGにより反射された光のパワーが現れる。このとき光強度変調器56bをRF信号発生器(RF2)57bからのRF信号を基に、強度変調して、例えば-18〜20[GHz]の帯域で波長を掃引しながらこのパワーを測定すれば、BDGスペクトルを得ることができる。またこの掃引は、リード光光路に設けたSSB変調器43によって、発振器(SG)44の信号を掃引して行ってもよい。このBDGスペクトルのピーク値fBDGがどの程度変化しているのかを、周波数解析器47及びロックイン検出器26で観測すれば、偏波保持型被測定光ファイバPFUT中の歪みや温度の変化に関する情報を測定できる。
また、強度周期変調器16を設けた光ファイバ特性測定装置55では、光源2からの連続発振光の周波数を信号発生器3aで変調して、受光器である光ヘテロダイン受信器19内に設けた2つのPD(図示せず)上で、周期変調したストークス光と、参照光との干渉状態を制御することで、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内の全ての位置で発生したブリルアン散乱の中から、ある位置で発生した散乱のみを光ヘテロダイン受信器19で抽出できる。つまり、半導体レーザ3からの出力光に信号発生器3aで周波数変調を施すことにより、前記ある位置を除く殆ど全ての位置から発生する自然ブリルアン散乱光と参照光との周波数差は変動するため、これを周波数解析器47で観測すると、その信号強度は周波数軸上で拡がったものとなる。
一方、特別なある位置からの散乱光は、参照光と同期して周波数が変化し、両光の周波数差が一定となり、これがBDGシフトfBDGを与える。そのため、この特別な位置からの散乱光による信号強度は、周波数解析器47で雑音が含まれているもののピーク状に現われ、このピーク周波数を基に、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内のある位置での特性情報を得ることができる。
さらに、強度周期変調器16を設けた光ファイバ特性測定装置41では、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内の特別なある位置が、信号発生器3aによる出力光の変調周波数により決められることから、信号発生器3aでこの変調周波数を変化させることにより、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内の決められた位置のみではなく、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内に沿った様々な位置で発生したBDGスペクトルのピーク周波数を、観測データとして周波数解析器47から観測データ処理手段32に出力できる。
なお、観測データ処理手段32では、信号発生器3aでどのような周波数で光源2からの出力光に対し周波数変調を施しているのかを把握させてもよく、この場合、取得した観測データが偏波保持型被測定光ファイバPFUT内のどの位置に相当するものなのかを判断できる。そのため、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内のある範囲に渡る特性情報を、観測データ処理手段32により正確に処理解析できる。
これに加えて、この際、光ファイバ特性測定装置55に設けた周波数解析器47では、雑音を除去せずに、BDGからの反射信号を単に光ヘテロダイン受信器19からのビート信号として測定するだけであるため、電気スペクトラムアナライザで行われているような雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を一切行っておらず、その分、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号からBDGスペクトルを短時間で測定し得る。
また、強度周期変調器16を設けた光ファイバ特性測定装置55では、ロックイン検出器26によって、強度周期変調器16によりポンプ光を周期的に強度変調させたときのロックイン周波数fLで同期検波することにより、雑音成分が抑制された直流ないし低周波数成分としてBDGによる反射光パワーを測定できる。
さらに、これに加えて、光ファイバ特性測定装置55では、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内で反射したx偏波光のストークス光についても、上述と同様に、SSB変調器43により周波数シフトされたx偏波光の参照光と干渉させることで、両光の周波数差に相当するビート周波数として他のブリルアン周波数シフトfBが分かる。
従って、この光ファイバ特性測定装置55では、y偏波光のストークス光から測定したブリルアンダイナミックグレーティング(BDG)シフトfBDGと、x偏波光のストークス光から測定したブリルアン周波数シフトfBとの両方を得ることができるので、公知の演算式を用いた所定の演算処理を行うことにより、偏波保持型被測定光ファイバPFUTにおける温度と歪とを同時に分離して測定できる。
以上の構成によれば、ポンプ光の変調周期1/fLのロックイン周波数fLを基準に、ロックイン検出器26によって、周波数解析器47からの出力から雑音を除去した直流ないし低周波数成分だけを抽出して、当該直流ないし低周波数成分から、ある位置でのブリルアンダイナミックグレーティング(BDG)シフトfBDG及びブリルアン周波数シフトfBを検出できる。これにより、光ファイバ特性測定装置55でも、周波数解析器47において、電気スペクトラムアナライザが備える機能のうち雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を繰り返し行う機能が必要なくなり、その分、偏波保持型被測定光ファイバPFUTの特性分布を短時間に測定できる。かくして、偏波保持型被測定光ファイバPFUTの片端から光を入射するだけで、当該偏波保持型被測定光ファイバPFUTの特性分布を短時間に測定でき、なおかつ雑音を除去してSN比が向上したブリルアンダイナミックグレーティング(BDG)シフトfBDG及びブリルアン周波数シフトfBを生成し得る。
(4−1−3)実験例
次に、図6に示す強度周期変調器16を有する光ファイバ特性測定装置55を用いた実験例と、その結果について説明する。この実験例では、光源2の半導体レーザ3として1550nmの分布帰還型レーザダイオード(DFB LD)を利用し、試験用の偏波保持型被測定光ファイバPFUT内で相関ピークを発生させるために、信号発生器3aにより正弦波周波数変調を与えた。半導体レーザ3からの出力光の周波数変調周波数fmは、940〜960kHzに設定し、変調振幅〜4GHzに設定した。半導体レーザ3からの出力は、カプラである第1の光分岐器4aによって2つの光ビームに分割し、一方の光ビームからポンプ光を生成し、他方の光ビームからリード光及び参照光を生成した。
ポンプ光として用いる一方の光ビームは、光強度変調器(IM1)56aで周波数成分を24GHz下げた後、光増幅器(EDFA)5aで増幅し、さらに偏光コントローラ58aでx軸方向に揃えてx偏波光とした後、光強度変調器56bにより-18〜20[GHz]の帯域で波長を掃引した。さらに、これを可変帯域フィルタ(TBF1)60aでx偏波光に含まれた余分な周波数成分を除去し、再び偏光コントローラ58bでx軸方向に揃えたポンプ光を生成し、これを強度周期変調器16に出射した。
強度周期変調器16では、ロックイン周波数fLを232.7kHzとして、x偏波光でなるポンプ光の光強度をそのままとした期間(1/2・(変調周期1/fL))と、当該ポンプ光を遮断または低減させた期間(1/2・(変調周期1/fL))とが、変調周期1/fLで繰り返す周期的強度変調をポンプ光に与え、x偏波光の周期変調ポンプ光を生成した。次いで、周期変調ポンプ光を光増幅器(EDFA)5bで増幅させた後、偏光ビームスプリッタ62a及び第2の光分岐器(サーキュレータ)7を順次介して、偏波保持型被測定光ファイバPFUTの片端に入射した。
第1の光分岐器4aによって分岐された他方の光ビームは、さらに第2の光分岐器4bによって2つの光ビームに分岐され、一方の光ビームからリード光を生成し、他方の光ビームから参照光を生成した。リード光となる一方の光ビームは、41mの遅延用ファイバ(光遅延器8a)を通過させ、偏光コントローラ58cでy偏波光とした。一方、参照光となる他方の光ビームは、SSB変調器43によって、約11.26GHz周波数シフトさせた後、10kmの遅延用ファイバ(光遅延器8b)を通過させ、偏光コントローラ58eでy偏波光の参照光とした。
偏波保持型被測定光ファイバPFUTとして、全長300mの一般的な偏波保持特性を有したファイバEと、全長500mの一般的な偏波保持特性を有した他のファイバFと、全長500mの一般的な偏波保持特性を有した他のファイバGの3種類の偏波保持型被測定光ファイバを用意し、これらをファイバE,F,Gの順に一直線状に繋げたものを使用した。
そして、上述した光ファイバ特性測定装置55を用いて、ファイバE,F,Gにおけるブリルアン周波数シフトfBを調べたところ、図8に示すような結果が得られた。図8では、縦軸にブリルアン周波数シフト(BFS:Brillouin Frequency Shift)fBを示し、横軸に偏波保持型被測定光ファイバPFUTの長さを示した。図8から、ファイバE,F,Gでそれぞれ異なるブリルアン周波数シフトfBを測定でき、そのシフト量から、偏波保持型被測定光ファイバPFUTのどの領域でどのファイバE,F,Gであるかを確認できた。
次に、上述した光ファイバ特性測定装置55を用いて、上記の偏波保持型被測定光ファイバPFUTにおけるブリルアンダイナミックグレーティング(BDG)スペクトル(反射スペクトル)の分布を計測したところ、図9に示すような結果が得られた。図9は、縦軸に信号強度を示し、横軸に偏波保持型被測定光ファイバPFUTの長さを示し、奥行軸に、光強度変調器56bにより-18〜20[GHz]の帯域で波長を掃引したときの反射スペクトルを示した。図9から、反射スペクトルのピークがどの周波数にあるのか明確に認識でき、このピーク周波数を基に、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内のある位置での特性情報を得られることが確認できた。
(4−2)位相周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置
(4−2−1)光ファイバ特性測定装置の構成
次に、図6において、SSB変調器43が設けられ、かつエリアER2に位相周期変調器17が設けられた光ファイバ特性測定装置55について説明する。この光ファイバ特性測定装置55は、上述した「(4−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」にて説明した強度周期変調器16に替えて、エリアER2に位相周期変調器17を設けた点のみが相違している。なお、ここでは、説明の重複を避けるため、位相周期変調器17に着目して以下説明する。
図6に示すように、この光ファイバ特性測定装置55には、ポンプ光を生成する経路(例えば偏光コントローラ58aと光増幅器5bとの間)に位相周期変調器17が設けられており、第1の光分岐器4aで分岐された一方の光ビームが、位相周期変調器17に出射され得る。位相周期変調器17は、x偏波光のポンプ光に対して所定の位相変調を施す期間と、当該ポンプ光に対して当該位相変調を施さない期間とを、変調周期1/fLで繰り返す周期的位相変調をポンプ光に与えて、x偏波光の周期変調ポンプ光を生成し得る。
具体的に、位相周期変調器17は、x偏波光のポンプ光に対して例えば9MHzの正弦波で位相変調を施して位相が変調された位相変調ポンプ光を出射する期間(1/2・(変調周期1/fL))と、ポンプ光に対して位相変調を施さずに第1の光分岐器4aからのポンプ光をそのまま出射する期間(1/2・(変調周期1/fL))とを、変調周期1/fLで繰り返すx偏波光の周期変調ポンプ光を生成し、当該周期変調ポンプ光を偏波保持型被測定光ファイバPFUTに出射する。
(4−2−2)作用及び効果
以上の構成において、位相周期変調器17を設け、BOCDR法を利用した光ファイバ特性測定装置55でも、上述した「(4−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」と同様の原理によって、位相周期変調器17により生成されたx偏波光の周期変調ポンプ光を偏波保持型被測定光ファイバPFUT内に入射し、これにより偏波保持型被測定光ファイバPFUT内に形成されたブリルアンダイナミックグレーティングによってy偏波光のリード光を反射させて周期的に変調したストークス光を得る。
光ファイバ特性測定装置55では、周期的に変調したy偏波光のストークス光と、y偏波光の参照光とを干渉させると、両光の周波数差に相当するビート周波数としてブリルアンダイナミックグレーティング(BDG)シフトfBDGが分かる。
また、光ファイバ特性測定装置55でも、上述した「(4−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」と同様に、BDGシフトfBDGの変動について、単に光ヘテロダイン受信器19からのビート信号を測定するだけであるため、電気スペクトラムアナライザで行われているような雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を一切行っておらず、その分、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号からBDGスペクトルを短時間で測定し得る。
さらに、位相周期変調器17を設けた光ファイバ特性測定装置55でも、ロックイン検出器26によって、位相周期変調器17によりポンプ光を周期的に位相変調させたときのロックイン周波数fLで同期検波することにより、雑音が抑制された直流ないし低周波数成分としてBDGシフトfBDGを生成できる。
また、この光ファイバ特性測定装置55でも、y偏波光のストークス光から測定したBDGシフトfBDGと、x偏波光のストークス光から測定したブリルアン周波数シフトfBとの両方を得ることができるので、公知の演算式を用いた所定の演算処理を行うことにより、偏波保持型被測定光ファイバPFUTにおける温度と歪とを同時に分離して測定できる。
以上の構成によれば、ポンプ光の変調周期1/fLのロックイン周波数fLを基準に、ロックイン検出器26によって、周波数解析器47からの出力から雑音を除去した直流ないし低周波数成分だけを抽出して、当該直流ないし低周波数成分から、ある位置でのブリルアンダイナミックグレーティング(BDG)シフトfBDG及びブリルアン周波数シフトfBを検出できる。これにより、光ファイバ特性測定装置55でも、周波数解析器47において、電気スペクトラムアナライザが備える機能のうち雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を繰り返し行う機能が必要なくなり、その分、偏波保持型被測定光ファイバPFUTの特性分布を短時間に測定できる。かくして、偏波保持型被測定光ファイバPFUTの片端から光を入射するだけで、当該偏波保持型被測定光ファイバPFUTの特性分布を短時間に測定でき、なおかつ雑音を除去してSN比が向上したブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGとブリルアン周波数シフトfBを生成し得る。
(5)単一側波帯光変調器(SSBM:SSB変調器)を用いない他の実施形態による光ファイバ特性測定装置
図6との対応部分に同一符号を付して示す図10において、65は単一側波帯光変調器(SSBM:SSB変調器)を用いない他の実施形態の光ファイバ特性測定装置を示しており、上述と同様に偏波保持型被測定光ファイバPFUTが設けられた構成を有する。図10は、強度周期変調器16が設けられた光ファイバ特性測定装置65と、これとは別の実施形態となる、位相周期変調器17が設けられた光ファイバ特性測定装置65との2つの実施形態を1つの図面に示したものである。ここでは、先ず始めに強度周期変調器16が設けられた光ファイバ特性測定装置65について説明した後、別の実施の形態である、位相周期変調器17が設けられた光ファイバ特性測定装置65について順に説明する。
(5−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置
(5−1−1)光ファイバ特性測定装置の構成
この光ファイバ特性測定装置65は、(i)SSB変調器43が設けられていない点と、(ii)周波数解析器47に替えて、掃引周波数発振器(Sweep Generator)23を有した周波数解析器20が設けられている点で、図6に示した光ファイバ特性測定装置65の構成と相違している。この場合、第3の光分岐器4bで分岐された参照光となる他方の光レーザは、光遅延器8b、光増幅器46及び可変帯域光フィルタ(TBF3)60cを順次介して偏光コントローラ58eに出射され、当該偏光コントローラ58eによりy軸方向に揃ったy偏波光にされた後、光カプラ13を介して光ヘテロダイン受信器19に出射される。
光ヘテロダイン受信器19は、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内で反射した周期的に変調するy偏波光のストークス光と、このストークス光と周波数の異なるy偏波光の参照光とを重ね合わせ、両光の周波数差に等しい電気的なビート信号を生成する。
ここで、偏波保持型被測定光ファイバPFUTに伸縮歪みや温度変化が生じると、こうした歪みや温度変化に比例して、ブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGが変動する。上述したように、周波数解析器20は、こうしたブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGの変動を、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号から測定するものである。
周波数解析器20は、光ヘテロダイン受信器19から出力された電気的なビート信号に、掃引周波数発振器23からの掃引周波数信号(例えば9.5〜10.5GHzまでの掃引周波数帯域)をミキサ22でかけ合わせた後、フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ(中心周波数1.0GHz))24と検波器とを通過させることにより、光ヘテロダイン受信器19からの電気的なビート信号の中から掃引周波数帯域に対応する周波数帯域でのブリルアンダイナミックグレーティングスペクトラムが得られ、そのピークからブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGを得る。
このように周波数解析器20は、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号をピーク周波数変動(掃引周波数帯域でのブリルアンダイナミックグレーティングスペクトラムのピークfBDGの変動)として測定している。なお、変調周期1/fLのロックイン周波数fLは、バンドパスフィルタであるフィルタ24の帯域以下に設定されている。
このように、光ファイバ特性測定装置65においても、周波数解析器20は、電気スペクトラムアナライザとは異なり、雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理等を一切行っておらず、単に光ヘテロダイン受信器19からのビート信号の強度を、掃引周波数帯域を用いて測定しているだけであることから、従来、電気スペクトラムアナライザで行われていたスペクトラム形状測定演算処理の処理時間を不要とし、その分、短時間で光ヘテロダイン受信器19からのビート信号を測定し得る。なお、上述したように、周波数解析器20では、光ヘテロダイン受信器19からのビート信号の強度を測定する際、雑音を除去するためのスペクトラム演算処理を行っていないことから、出力は雑音が存在したSN比の低いものとなる。
周波数解析器20の測定結果は、ロックイン検出器26を通ることにより、強度周期変調器16でポンプ光を強度変調したときのロックイン周波数fLで同期検波され、雑音が低減されて直流ないし低周波数成分としてブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGを生成し得、これを最終的なデータとしてオシロスコープ等の観測データ処理手段32に出力され得る。
(5−1−2)作用及び効果
以上の構成において、強度周期変調器16を設け、BOCDR法を利用した光ファイバ特性測定装置65でも、上述した「(4−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」と同様に、強度周期変調器16により生成されたx偏波光の周期変調ポンプ光と、y偏波光のリード光とを偏波保持型被測定光ファイバPFUT内に入射し、これにより偏波保持型被測定光ファイバPFUT内に形成されたブリルアンダイナミックグレーティングによって、y偏波光のリード光を反射させて周期的に変調したストークス光を得る。
光ファイバ特性測定装置65では、周期的に変調したy偏波光のストークス光と、y偏波光の参照光とを干渉させると、両光の周波数差に相当するビート周波数としてブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGが分かる。かくして、このブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGがどの程度変化しているのかを、周波数解析器20で観測すれば、偏波保持型被測定光ファイバPFUT中の歪みや温度の変化を測定できる。
また、光ファイバ特性測定装置65でも、上述した「(4−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」と同様に、雑音を除去せずに、ブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGの変動について、単に光ヘテロダイン受信器19からのビート信号の強度を測定するだけであるため、電気スペクトラムアナライザで行われているような雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を一切行っておらず、その分、短時間で光ヘテロダイン受信器19からのビート信号を測定し得る。
さらに、強度周期変調器16を設けた光ファイバ特性測定装置65では、ロックイン検出器26によって、強度周期変調器16によりポンプ光を周期的に位相変調させたときのロックイン周波数fLで同期検波することにより、雑音が抑制された直流ないし低周波数成分としてブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGを生成できる。
また、この光ファイバ特性測定装置65では、y偏波光のストークス光から測定したブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGと、x偏波光のストークス光から測定したブリルアン周波数シフトfBとの両方を得ることができるので、公知の演算式を用いた所定の演算処理を行うことにより、偏波保持型被測定光ファイバPFUTにおける温度と歪とを同時に分離して測定できる。
以上の構成によれば、ポンプ光の変調周期1/fLのロックイン周波数fLを基準に、ロックイン検出器26によって、周波数解析器20からの出力から雑音を除去した直流ないし低周波数成分だけを抽出して、当該直流ないし低周波数成分から、ある位置でのブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGおよびブリルアン周波数シフトfBを検出できる。これにより、光ファイバ特性測定装置65でも、周波数解析器20において、電気スペクトラムアナライザが備える機能のうち雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を繰り返し行う機能が必要なくなり、その分、偏波保持型被測定光ファイバPFUTの特性分布を短時間に測定できる。かくして、偏波保持型被測定光ファイバPFUTの片端から光を入射するだけで、当該偏波保持型被測定光ファイバPFUTの特性分布を短時間に測定でき、なおかつ雑音を除去してSN比が向上したブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGおよびブリルアン周波数シフトfBを生成し得る。
(5−2)位相周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置
(5−2−1)光ファイバ特性測定装置の構成
次に、図10において、エリアER2に位相周期変調器17が設けられた光ファイバ特性測定装置65について説明する。この光ファイバ特性測定装置65は、上述した「(5−1)強度周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」にて説明した強度周期変調器16に替えて、エリアER2に位相周期変調器17を設けた点のみが相違している。なお、ここでは、説明の重複を避けるため、位相周期変調器17に着目して以下説明する。
図10に示すように、この光ファイバ特性測定装置65には、ポンプ光を生成する経路(例えば偏光コントローラ58aと光増幅器5bとの間)に位相周期変調器17が設けられており、第1の光分岐器4aで分岐された一方の光ビームが、位相周期変調器17に出射され得る。位相周期変調器17は、x偏波光のポンプ光に対して所定の位相変調を施す期間と、当該ポンプ光に対して当該位相変調を施さない期間とを変調周期1/fLで繰り返す周期的位相変調をポンプ光に与えて、x偏波光の周期変調ポンプ光を生成し得る。
具体的に、位相周期変調器17は、x偏波光のポンプ光に対して例えば9MHzの正弦波で位相変調を施して位相が変調された位相変調ポンプ光を出射する期間(1/2・(変調周期1/fL))と、ポンプ光に対して位相変調を施さずに第1の光分岐器4aからのポンプ光をそのまま出射する期間(1/2・(変調周期1/fL))とを、変調周期1/fLで繰り返すx偏波光の周期変調ポンプ光を生成し、当該周期変調ポンプ光を偏波保持型被測定光ファイバPFUTに出射する。
(5−2−2)作用及び効果
以上の構成において、位相周期変調器17を設け、BOCDR法を利用した光ファイバ特性測定装置65でも、上述した「(4−2)位相周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」と同様に、位相周期変調器17により生成されたx偏波光の周期変調ポンプ光と、y偏波光のリード光とを、偏波保持型被測定光ファイバPFUT内に入射し、これにより偏波保持型被測定光ファイバPFUT内に形成されたブリルアンダイナミックグレーティングによってy偏波光のリード光を反射させて周期的に変調したストークス光を得る。
光ファイバ特性測定装置65では、周期的に変調したy偏波光のストークス光と、y偏波光の参照光とを干渉させると、両光の周波数差に相当するビート周波数としてブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGが分かる。かくして、このブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGがどの程度変化しているのかを、周波数解析器20で観測すれば、偏波保持型被測定光ファイバPFUT中の歪みや温度の変化を測定できる。
また、光ファイバ特性測定装置65でも、上述した「(4−2)位相周期変調器が設けられた光ファイバ特性測定装置」と同様に、雑音を除去せずに、単に光ヘテロダイン受信器19からのビート信号の強度を測定するだけであるため、電気スペクトラムアナライザで行われているような雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を一切行っておらず、その分、短時間で光ヘテロダイン受信器19からのビート信号の強度を測定し得る。
さらに、位相周期変調器17を設けた光ファイバ特性測定装置65でも、ロックイン検出器26によって、位相周期変調器17によりポンプ光を周期的に位相変調させたときのロックイン周波数fLで同期検波することにより、雑音が抑制された直流ないし低周波数成分としてブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGを生成できる。
また、この光ファイバ特性測定装置65でも、y偏波光のストークス光から測定したブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDGと、x偏波光のストークス光から測定したブリルアン周波数シフトfBとの両方を得ることができるので、公知の演算式を用いた所定の演算処理を行うことにより、偏波保持型被測定光ファイバPFUTにおける温度と歪とを同時に分離して測定できる。
以上の構成によれば、ポンプ光の変調周期1/fLのロックイン周波数fLを基準に、ロックイン検出器26によって、周波数解析器20からの出力から雑音を除去した直流ないし低周波数成分だけを抽出して、当該直流ないし低周波数成分から、ある位置でのブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDG及びブリルアン周波数シフトfBを検出できる。これにより、光ファイバ特性測定装置65でも、周波数解析器20において、電気スペクトラムアナライザが備える機能のうち雑音を除去するための複雑なスペクトラム演算処理を繰り返し行う機能が必要なくなり、その分、偏波保持型被測定光ファイバPFUTの特性分布を短時間に測定できる。かくして、偏波保持型被測定光ファイバPFUTの片端から光を入射するだけで、当該偏波保持型被測定光ファイバPFUTの特性分布を短時間に測定でき、なおかつ雑音を除去してSN比が向上したブリルアンダイナミックグレーティングシフトfBDG及びブリルアン周波数シフトfBを生成し得る。
(6)x偏波光及びy偏波光を偏波保持型被測定光ファイバに入射する光ファイバ特性測定装置について
因みに、上述した「(4)単一側波帯光変調器(SSBM:SSB変調器)を用いた他の実施形態による光ファイバ特性測定装置」と、「(5)単一側波帯光変調器(SSBM:SSB変調器)を用いない他の実施形態による光ファイバ特性測定装置」においては、第1偏波光のポンプ光として、x偏波光のポンプ光を生成し、第2偏波光のリード光及び参照光として、y偏波光のリード光及び参照光を生成した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、第1偏波光のポンプ光として、y偏波光のポンプ光を生成し、第2偏波光のリード光及び参照光として、x偏波光のリード光及び参照光を生成してもよい。
また、本発明の光ファイバ特性測定装置としては、上述した「(3)他の実施の形態」の内容を、上述した「(4)単一側波帯光変調器(SSBM:SSB変調器)を用いた他の実施形態による光ファイバ特性測定装置」や、「(5)単一側波帯光変調器(SSBM:SSB変調器)を用いない他の実施形態による光ファイバ特性測定装置」に適用した構成としてもよい。