以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、排気処理装置および熱処理装置として広く適用することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る熱処理装置1の模式図である。図2は、熱処理装置1の排気処理装置4の主要部の模式的な斜視図である。
図1および図2を参照して、熱処理装置1は、被処理物100を熱処理するために設けられている。この熱処理として、還元処理、その他の熱処理を例示することができる。本実施形態では、熱処理装置1が、ベルト式連続炉である場合を例に説明する。また、本実施形態では、被処理物100は、金属部品である。熱処理装置1は、複数の被処理物100を、連続的に熱処理するように構成されている。
熱処理装置1は、搬送装置2と、処理室ユニット3と、排気処理装置4(41,42)と、排気処理装置41,42からの排気を熱処理装置1の外部に排出するためのフード5(51,52)と、制御部6と、を有している。
搬送装置2は、被処理物100を進行方向X1に沿って処理室ユニット3の外部から処理室ユニット3内に搬送し、さらに、当該被処理物100を処理室ユニット3の外部に搬送するために設けられている。
搬送装置2は、無端状のベルト7と、複数のローラ8と、を有している。
ベルト7は、たとえば、メッシュベルトであり、可撓性を有している。このベルト7の各部は、処理室ユニット3の内部と外部とを循環するようにローラ8によって駆動される。ローラ8は、ベルト7のたとえば内周面に接触しており、ベルト7を支持している。ローラ8は、複数設けられている。ローラ8が回転することにより、ベルト7は、複数のローラ8の周囲を回転する。
上記の構成を有する搬送装置2によって搬送される被処理物100は、処理室ユニット3において、加熱処理を施される。処理室ユニット3は、当該処理室ユニット3における被処理物100の入口および出口が開放された構成を有している。
処理室ユニット3は、熱処理室11と、熱処理用ガス供給部12と、不活性ガス供給部13,14と、処理室ガス検出部15,16と、を有している。
熱処理室11は、被処理物100に還元処理(熱処理)を施すための熱処理空間を形成しており、被処理物100が熱処理される際に当該被処理物100が通過するように構成されている。熱処理室11は、中空に形成された筐体部である。熱処理室11は、入口部11aと、中間部11bと、出口部11cと、排気ガス出口11d,11eと、を有しており、進行方向X1に沿って入口部11a、中間部11bおよび出口部11cの順に並んでいる。中間部11bに、排気ガス出口11d,11eが設けられている。
入口部11aは、熱処理室11への被処理物100の入口として設けられており、熱処理室11の外部に常時開放されている。また、出口部11cは、熱処理室11内からの被処理物100の出口として設けられており、熱処理室11の外部に常時開放されている。中間部11bは、被処理物100が通過する空間を有している。ベルト7および当該ベルト7に載せられた被処理物100は、入口部11a、中間部11bおよび出口部11cを通って、熱処理室11の外部から熱処理室11の内部に搬送され、さらに、熱処理室11の外部に搬出されるように構成されている。
中間部11bでは、加熱された熱処理用ガスによって、被処理物100に還元処理が施される。この熱処理用ガスは、熱処理用ガス供給部12から中間部11b内の空間に供給される。熱処理用ガス供給部12は、中間部11bに接続された配管12aを有している。配管12aは、水素タンク18および窒素タンク19に接続されている。熱処理用ガス供給部12は、熱処理用ガスとして、水素および窒素(H2およびN2)が混合された混合ガスを、中間部11b内に供給するように構成されている。熱処理用ガス供給部12の配管12aは、ポンプ12b,12c、水素タンク18および窒素タンク19に接続されている。ポンプ12bの動作によって、水素(水素ガス)が熱処理室11に供給される。また、ポンプ12cの動作によって、窒素(窒素ガス)が熱処理室11に供給される。
なお、熱処理装置1の異常発生時には、熱処理用ガス供給部12は、水素の供給を停止し、不活性ガスとして窒素を供給することで、緊急用パージガス供給部としても機能する。
熱処理室11の入口部11aおよび出口部11cには、それぞれ、不活性ガスとしての窒素ガスを供給するための不活性ガス供給部13,14が設けられている。これにより、熱処理室11の入口部11aと出口部11cのそれぞれにおいて、熱処理室11の外部の空気(酸素)が熱処理室11内に過度に進入することを抑制されている。
不活性ガス供給部13は、入口部11aに接続された配管13aを有しており、この配管13aは、ポンプ13bおよび窒素タンク20に接続されている。不活性ガス供給部14は、出口部11cに接続された配管14aを有しており、この配管14aは、ポンプ14bおよび窒素タンク20に接続されている。不活性ガス供給部13,14に隣接して、処理室ガス検出部15,16が設けられている。
処理室ガス検出部15,16は、熱処理室11の入口部11aおよび出口部11cにおける可燃性ガスとしての水素および助燃性ガスとしての酸素の濃度を検出するために設けられている。
処理室ガス検出部15は、熱処理室11の入口部11aに配置されており、水素検知器15aおよび酸素検知器(酸素濃度センサ)15bを有している。水素検知器15aおよび酸素検知器15bは、それぞれ、熱処理室11の入口部11aにおける水素濃度および酸素濃度を検出するセンサである。水素検知器15aおよび酸素検知器15bの検出結果は、それぞれ、制御部6に出力される。
処理室ガス検出部16は、熱処理室11の出口部11cに配置されており、水素検知器16aおよび酸素検知器(酸素濃度センサ)16bを有している。水素検知器16aおよび酸素検知器16bは、それぞれ、熱処理室11の出口部11cにおける水素濃度および酸素濃度を検出するセンサである。水素検知器16aおよび酸素検知器16bの検出結果は、それぞれ、制御部6に出力される。なお、水素検知器15a,16aの何れかが省略されてもよい。また、酸素検知器15b,16bの何れかが省略されてもよい。
熱処理室11の中間部11b内において還元処理が行われることで生じた排気ガスは、排気ガス出口11d,11eの何れかから、対応する排気処理装置41,42へ排気される。
排気処理装置4(41,42)は、熱処理室11からの、可燃性ガスを含む排気ガスを希釈処理する装置として設けられている。排気処理装置4は、熱処理室11の上方に配置されている。前述したように、熱処理用ガスは、可燃性ガスとしての水素を含んでいる。このため、排気ガスは、還元反応に使われなかった水素を含んでいる。排気処理装置4は、排気ガスのうち、特に水素を希釈することで、当該排気ガスを処理するように構成されている。
排気処理装置41は、排気ガス出口11dに接続されている。また、排気処理装置42は、排気ガス出口11eに接続されている。
排気処理装置4は、排気ガスを、多段階(本実施形態では、2段階)で希釈することで、排気ガス中の水素濃度を低減するように構成されている。本実施形態では、後述するように、排気処理装置4は、水素を含む排気ガスを、まず、窒素を含む第1希釈用ガスで希釈する。そして、排気処理装置4は、第1希釈用ガスで希釈された排気ガスを、空気を含む第2希釈用ガスで希釈する。このように、排気処理装置4は、比較的高価ではあるけれども水素の不用意な燃焼をより確実に抑制できる窒素を先に排気ガスに混合し、その後、空気を排気ガスに混合することで排気ガスを一層希釈する。その結果、排気処理装置4は、より少ないコストで、より確実に排気ガスを無害化処理できる。
また、排気処理装置4は、入口部11aおよび出口部11cが外部に開放された構成を有する、トンネル状の熱処理室11に接続されている。このため、熱処理室11内の雰囲気を乱す排気方式では、入口部11aおよび出口部11cから熱処理室11内に新鮮な空気が多量に進入し、熱処理室11内の水素と反応して意図しない火災現象を生じる可能性がある。このため、本実施形態の排気処理装置4は、入口部11aおよび出口部11cの外部から中間部11b内へ空気が多量に進入することを抑制するための構成が採用されている。また、排気処理装置4から排出された排気ガスが排気処理装置4に逆流することを抑制するための構成が設けられている。
なお、各排気処理装置4(41,42)は、互いに同様の構成を有している。よって、以下では、主に排気処理装置41の構成を説明し、排気処理装置42の詳細な説明は省略する。
排気処理装置4は、調整バルブ25と、排気導入管26と、排気ボックス27と、可燃性ガス検出器としての水素検出器28と、温度センサ29と、希釈用ガス供給部33と、を有している。なお、水素検出器28および温度センサ29は、図1では図示しているけれども、図2では図示を省略している。
調整バルブ25は、排気ガス出口11dに接続されたバルブである。この調整バルブ25は、弁体の開度に応じて、排気ガス出口11dからの排気ガスの流量を調整可能に構成されている。調整バルブ25は、排気導入管26に接続されている。
排気導入管26は、熱処理室11内の排気ガスを第1ボックス31に導入するために設けられている。排気導入管26は、上下方向に延びる配管であり、調整バルブ25を通過した排気ガスを排気ボックス27に導入するように構成されている。調整バルブ25の上方に排気導入管26が設けられ、この排気導入管26の上側に排気ボックス27が配置されている。
排気ボックス27は、排気ガスに希釈用ガスが混合される部分として設けられている。本実施形態では、排気ボックス27においては、鉛直方向に沿って上側に進む方向(上方向)が、排気ガスの主な進行方向(主方向X2)として規定されている。排気ボックス27内では、排気ガスは、旋回しながら上方向に進むことで、フード51へ排出される。また、排気ボックス27内では、排気ガスの一部は、排気ボックス27内で旋回しつつ、上方向および当該上方向とは反対の下方向に沿って循環する。
排気ボックス27は、筒形状に形成されており、本実施形態では、排気導入管26と同軸に配置されている。排気ボックス27は、上方に進むに従い、上方向と直交する断面における断面積が多段階(本実施形態では、2段階)に大きくされている。排気ボックス27は、たとえば、金属板などの耐熱性を有する材料を用いて形成されている。
本実施形態では、排気ボックス27は、複数の金属板部材を溶接することにより、筒状に形成されている。そして、本実施形態では、排気ボックス27を構成する部材同士の溶接を、全周溶接によって形成することで、溶接箇所からの外気の進入を抑制する構造が採用されている。この構成により、排気ボックス27内に意図しないガスが進入することを抑制し、その結果、排気ボックス27内での火災発生を抑制している。
排気ボックス27は、多段ボックスとしての第1ボックス31および第2ボックス32を有している。
第1ボックス31は、熱処理室11からの排気ガスが排気導入管26を介して導入されるボックス部として設けられている。また、第2ボックス32は、第1ボックス31を通過した排気ガスが導入されるボックス部として設けられている。
第1ボックス31および第2ボックス32は、それぞれ、筒状(本実施形態では、円筒状)に形成されている。第1ボックス31は、第2ボックス32に直接接続されている。第1ボックス31の内径は、第2ボックス32の内径よりも小さく設定されている。また、本実施形態では、上下方向において、第1ボックス31の全長は、第2ボックス32の全長よりも長く設定されている。また、第2ボックス32内の空間の容積は、第1ボックス31内の空間の容積よりも大きく設定されている。
このように、第1ボックス31は、上方向に細長い円筒状に形成され、第2ボックス32は、扁平な円筒状に形成されている。上記の構成により、第1ボックス31内での排気ガスは、第2ボックス32へスムーズに進入する。また、第2ボックス32から第1ボックス31への排気ガスの逆流が生じ難くされている。その結果、排気ボックス27内の排気ガスは、熱処理室11へ逆流することを抑制されている。第1ボックス31の底壁31aは、環状に形成されており、排気導入管26の上部に接続されている。
第1ボックス31は、第1希釈ガスとしての不活性ガス(本実施形態では、窒素ガス)と排気ガスとを混合するために設けられている。
第1ボックス31は、底壁31aと、周壁31bと、入口部31cと、出口部31dと、を有している。入口部31cは、第1ボックス31の内部へ向けて排気ガスを導入するための部分である。入口部31cは、排気ボックス27における排気ガスの入口部でもある。入口部31cは、第1ボックス31の底壁31aおよび第1ボックス31の周壁31bのうちの底壁31a側部分を含んでいる。入口部31cは、第1ボックス31の内部へ向けて排気ガスを導入するための部分である。入口部31cにおける第1ボックス31の底壁31aを、排気導入管26が貫通している。
出口部31dは、第1ボックス31の上端部の縁部によって形成されている。この出口部31dは、第1ボックス31の外部(第2ボックス32)へ向けて排気ガスを排出するための部分である。出口部31dにおける排気ガスの通路の直径は、入口部31cにおける排気ガスの通路の直径(排気導入管26の内径)よりも大きく設定されている。これにより、第1ボックス31から第2ボックス32へ排気ガスが流れ易くされている。排気導入管26から第1排気ボックス31内に導かれた排気ガスは、主に、第1ボックス31の周壁31bの内周面に沿って出口部31d側に流れる。出口部31dは、第2ボックス32の後述する入口部32cに連続している。
第2ボックス32は、第2希釈ガスとしての空気(第1希釈ガスの単価よりも低い単価の希釈用ガス)と排気ガスとを混合するために設けられている。第2ボックス32には、第1ボックス31を通過した排気ガスが導入される。
第2ボックス32は、底壁32aと、周壁32bと、入口部32cと、出口部32dと、を有している。入口部32cは、第2ボックス32の底壁32aおよび第2ボックス32の周壁32bのうちの底壁32a側部分を含んでいる。入口部32cは、第2ボックス32の内部へ向けて排気ガスを導入するための部分である。入口部32cにおける第2ボックス32の底壁32aを、第1ボックス31が貫通している。
上記の構成により、排気導入管26の出口部26a(先端)が第1ボックス31側へ突出している。また、第1ボックス31の出口部31d(先端)が第2ボックス32側へ突出している。第1ボックス31の出口部31dから第2ボックス32内に導かれた排気ガスは、主に、第2ボックス32の周壁32bの内周面に沿って出口部32d側に流れる。そして、第2ボックス32の出口部32dに到達した排気ガスの大部分は、出口部32dから上方に流れてフード5内の空間に進入し、このフード5から熱処理装置1の外部に排出される。なお、フード5には、図示しないファンが備えられており、このファンの風量を調整可能に構成されている。これにより、第2ボックス32からの排気ガスの吸引量を調整可能に構成されている。
出口部32dは、第2ボックス32の上端部の縁部によって形成されており、第2ボックス32の外部(排気ボックス27の外部)へ向けて排気ガスを排出するための部分である。出口部32dは、フード5(51)側(上方)を向いており、フード5側に向けて開放されている。
上記の構成により、第2ボックス32内において、第2ボックス32からフード5に導入されず、対流によって第2ボックス32内の空間の中心部側(第2ボックス32内の空間のうち径方向中心側)に到達した排気ガスは、第2ボックス32の径方向における第2ボックス32内の空間の中心側を、下側に向けて降下する。そして、この排気ガスは、第1ボックス31の出口部31dを通過した排気ガスと混ざり合い、再度、第2ボックス32の周壁32bに沿って上昇する。
排気ボックス27内を通過する排気ガスに希釈用ガスを供給するための希釈用ガス供給部33は、第1ボックス31および第2ボックス32の双方に接続されている。
希釈用ガス供給部33は、第1ボックス31内の排気ガスに向けて不活性ガス(前述した窒素ガス)を含む第1希釈ガスを供給するための第1希釈用ガス供給部34と、第2ボックス32内の排気ガスに向けて空気を含む第2希釈用ガスを供給するための第2希釈用ガス供給部35と、第2ボックス32内の排気ガスに向けて不活性ガスを含む緊急用希釈ガスを供給するための緊急用パージガス供給部36と、を有している。
なお、本実施形態では第1希釈用ガスは実質的に窒素からなる。また、本実施形態では、第2希釈用ガスは空気からなる。また、本実施形態では、緊急用希釈用ガスは実質的に窒素からなる。
第1希釈用ガス供給部34は、第1ボックス31の周壁31bに接続された配管としての第1配管34aを有している。本実施形態では、第1配管34aの一端部34bは、第1ボックス31に接続されており、第1ボックス31内の空間に向けて開放されている。第1配管34aの他端部は、ポンプ34cおよび窒素タンク20に接続されている。第1配管34aの内径は、第1ボックス31の内径よりも小さく設定されている。また、第1希釈用ガス供給部34は、第1ボックス31内において旋回流を生じるように構成されている。具体的には、第1配管34aの一端部34bは、上下方向とは異なる方向を向いており、上方向に沿って流れる排気ガスに対して、第1ボックス31の周方向に沿う流れを与えるように第1希釈用ガス(窒素ガス)を供給する。本実施形態では、第1配管34aの一端部34bは、第1ボックス31の中心軸線L1を向いている。
なお、第1配管34aの一端部34bは、第1希釈用ガスが排気ガスの旋回流を生じさせることができればよく、第1ボックス31に対する具体的な向きは限定されない。たとえば、第1配管34aの一端部34bは、第1ボックス31との接続部における第1ボックス31の周壁31bの接線方向に沿った方向を向くように配置されてもよい。
また、本実施形態では、上下方向における第1配管34aの一端部34bの向きは、水平であるけれども、この通りでなくてもよい。第1配管34aの一端部34bは、水平面に対して傾斜した方向を向いていてもよい。この場合において、第1配管34aの一端部34bの向きは、第1ボックス31内における排気ガスと第1希釈用ガスとの混合の度合いなどを調整するために、適宜設定される。
また、本実施形態では、第1配管34aの一端部34bは、第1ボックス31の周壁31bの下部に接続されていることで、第1ボックス31内のより広い領域において、旋回流が生じるように構成されている。また、第1配管34aの一端部34bにおける第1希釈用ガスの気圧は、第1ボックス31内における排気ガスの圧力よりも高く設定されている。これにより、第1ボックス31内において、排気ガスと第1希釈用ガスとの混合度合いをより大きくできる。第1希釈用ガス供給部34は、排気ガス中の水素濃度を、たとえば、17%以下となるように第1希釈用ガスを供給する。水素濃度が17%以下であれば、水素爆発の可能性をより確実に低減できる。
本実施形態では、上下方向において、第1希釈用ガス供給部34の第1配管34aの一端部34bの位置は、排気導入管26の出口部26aの位置よりも低く設定されている。これにより、第1ボックス31内において、底壁31aと排気導入管26の出口部26aとの間の空間に排気ガスが滞留することを抑制できる。
第2希釈用ガス供給部35は、第2ボックス32の周壁32bに接続された配管としての第2配管35aを有している。本実施形態では、第2配管35aの一端部35bは、第2ボックス32に接続されており、第2ボックス32内の空間に向けて開放されている。第2配管35aは、空気圧縮機35cおよび圧力計35eに接続されている。圧力計35eは、第2配管35a内の第2希釈用ガスの気圧(空気圧)を計測しており、この圧力計35eの検出結果は、制御部6へ出力される。第2配管35aの内径は、第2ボックス32の内径よりも小さく設定されている。
また、第2希釈用ガス供給部35は、第2ボックス32内において旋回流を生じるように構成されている。具体的には、第2配管35aの一端部35bは、上方向とは異なる方向を向いており、上方向に沿って流れる排気ガスに対して、第2ボックス32の周方向に沿う流れを与えるように第2希釈用ガス(空気)を供給する。本実施形態では、第2配管35aの一端部35bは、第2ボックス32の中心軸線L1を向いている。
なお、第2配管35aの一端部35bは、第2希釈用ガスによって排気ガスの旋回流を生じさせることができればよく、第2ボックス32に対する具体的な向きは限定されない。たとえば、第2配管35aの一端部35bは、第2ボックス32との接続部における第2ボックス32の周壁32bの接線方向に沿った方向を向くように配置されてもよい。
また、本実施形態では、上下方向における第2配管35aの一端部35bの向きは、水平であるけれども、この通りでなくてもよい。第2配管35aの一端部35bは、水平面に対して傾斜した方向を向いていてもよい。この場合において、第2配管35aの一端部35bの向きは、第2ボックス32内における排気ガスと第2希釈用ガスとの混合の度合いなどを調整するために、適宜設定される。
また、本実施形態では、第2配管35aの一端部は、第2ボックス32の周壁32bの下部に接続されていることで、第2ボックス32内のより広い領域において、旋回流が生じるように構成されている。また、第2配管35aの一端部35bにおける第2希釈用ガスの気圧は、第2ボックス32内における排気ガスの圧力よりも高く設定されている。これにより、第2ボックス32内において、排気ガスと第2希釈用ガスとの混合度合いをより大きくできる。第2希釈用ガス供給部35は、排気ガス中の水素濃度を、たとえば、1%以下となるように第2希釈用ガスを供給する。
本実施形態では、上下方向において、第2希釈用ガス供給部35の第2配管35aの一端部35bの位置は、第1ボックス31の出口部31dの位置よりも低く設定されている。これにより、第2ボックス32内において、底壁32aと第1ボックス31の出口部31dとの間の空間に排気ガスが滞留することを抑制できる。
また、本実施形態では、排気ボックス27の中心軸線L1回りの周方向において、第1配管34aの一端部34bの位置と、第2配管35aの一端部35bの位置とが揃えられている。これにより、第1ボックス31から第2ボックス32に到達した旋回流をさらに加速させることができる。これにより、第2ボックス32内の排気ガスをよりスムーズに出口部32dに導くことができる。
本実施形態では、フード5(熱処理装置1の外部)から第2ボックス32へ排気ガスが逆流することを抑制するために、第2希釈用ガスの流速が適正化されている。より具体的には、第2希釈用ガス供給部35の第2配管35aの一端部35bから第2ボックス32へ供給される第2希釈用ガスの流速V35が、第2ボックス32の出口部32dにおける排気ガスの流速V32d以上(V35≧V32d)に設定されている。好ましくは、第2希釈用ガスの流速V35が、排気ガスの流速V32dと実質的に同じ(V35≒V32d)に設定される。
本実施形態において、「実質的に同じ」とは、たとえば、数%以内の差をいう。
また、本実施形態では、熱処理室11の入口部11aおよび出口部11cから熱処理室11内に空気(酸素)が進入することを抑制するため、換言すれば、排気ボックス27が熱処理室11内のガスを単位時間当たりに過度に吸引することを抑制するための構成が採用されている。より具体的には、第1希釈用ガス供給部34の第1配管34aの一端部34bから第1ボックス31内へ供給される第1希釈用ガスの流速V34と、第2希釈用ガス供給部35の第2配管35aの一端部35bから第2ボックス32内へ供給される第2希釈用ガスの流速V35とが、実質的に同じに設定されている。すなわち、V34≒V35に設定されている。
また、本実施形態では、第1ボックス31(第1ボックス31の周壁31bの内周面)における排気ガスの流速V31と、第2ボックス32(第2ボックス32の周壁32bの内周面)における排気ガスの流速V32が実質的に同じに設定されている。すなわち、V31≒V32に設定されている。このような流速を実現するために、第1ボックス31の内径、および、第2ボックス32の内径などが適宜設定されている。
さらに、本実施形態では、排気導入管26(排気導入管26の内周面)における排気ガスの流速V26、第1ボックス31における排気ガスの流速V31、および、第2ボックス32における排気ガスの流速V32が、実質的に同じに設定されている。すなわち、V26≒V31≒V32に設定されている。
上記の構成により、第1希釈用ガス供給部34および第2希釈用ガス供給部35の少なくとも一方(本実施形態では、双方)は、対応する第1ボックス31および第2ボックス32において旋回流を生じさせるように、対応する第1希釈用ガスおよび第2希釈用ガスを噴射するように構成されている。
緊急用パージガス供給部36は、第2ボックス32内の水素濃度が所定の値以上になったときに、不活性ガス(本実施形態では、窒素ガス)を含む緊急用パージガスを、第2ボックス32に供給するために設けられている。緊急用パージガス供給部36は、第2ボックス32の周壁32bに接続された配管としての第3配管36aを有している。本実施形態では、第3配管36aの一端部36bが、第2ボックス32に接続されており、第2ボックス32内の空間に向けて開放されている。
第3配管36aの他端部は、ポンプ36cおよび窒素タンク20に接続されている。本実施形態では、緊急用パージガス供給部36の第3配管36aの内径は、第2希釈用ガス供給部35の第2配管35aの内径よりも小さく設定されている。
また、緊急用パージガス供給部36は、第2ボックス32内において旋回流を生じるように構成されている。具体的には、第3配管36aの一端部36bは、上下方向とは異なる方向を向いており、上方向に沿って流れる排気ガスに対して、第2ボックス32の周方向に沿う流れを与えるように緊急用パージガス(窒素)を供給する。本実施形態では、第3配管36aの一端部36bは、第2配管35aと略平行に並んでいる。
なお、第3配管36aの一端部36bは、緊急用パージガスを排気ガスに混合させることができればよく、第2ボックス32に対する具体的な向きは限定されない。本実施形態では、上下方向における第3配管36aの一端部36bの向きは、水平であるけれども、この通りでなくてもよい。
上記の構成を有する排気ボックス27には、前述したように、水素検出器28および温度センサ29が設けられている。水素検出器28は、第1ボックス31および第2ボックス32における水素ガス(可燃性ガス)の濃度を検出するために設けられている。水素検知器28の検出結果は、制御部6に出力される。
温度センサ29は、排気ボックス27の第1ボックス31および第2ボックス32の温度を計測する。温度センサ29の検出結果は、制御部6に出力される。
フード5は、排気ボックス27の第2ボックス32の出口部32dから上方向に沿って排出された排気ガスが通過する通路として設けられている。フード5は、出口部32dの上方に配置されている。フード5を通過した排気ガスは、フード5の上方から熱処理装置1の外部に排出される。
また、本実施形態では、熱処理装置1は、警報器39を有している。警報器39は、ブザーなどであり、警報音を発生するように構成されている。警報器39は、制御部6に接続されており、制御部6の制御によって警報音を発生可能である。
制御部6は、たとえば、PLC(Programmable Logic Controller)などを用いて形成されており、所定の入力信号に基づいて、所定の出力信号を出力する構成を有している。なお、制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含むコンピュータを用いて形成されていてもよい。
制御部6は、熱処理室11の水素検出器15a,16aおよび酸素検出器15b,16bと、排気ボックス27の水素検出器28および温度センサ29と、圧力計35eと、に接続されている。また、制御部6は、ポンプ12b,12c,13b,14b,34c,35c,36cに接続されている。制御部6は、これらのポンプ12b,12c,13b,14b,34c,35c,36cの動作を制御するように構成されている。
すなわち、制御部6は、ポンプ12b,12c,13b,14b,34c,35c,36cの制御を通じて、熱処理用ガス供給部12における熱処理用ガス(窒素および水素)供給制御と、不活性ガス供給部13,14における不活性ガスの供給制御と、第1希釈用ガス供給部34における第1希釈用ガスの供給制御と、第2希釈用ガス供給部35における第2希釈用ガスの供給制御と、緊急用パージガス供給部36における緊急用パージガスの供給制御と、を行うように構成されている。
次に、熱処理装置1における動作の一例について説明する。図3は、熱処理装置1における動作例を説明するための図である。なお、図3を参照しながら説明する場合、図3以外の図も適宜参照しながら説明する。
図3を参照して、まず、熱処理装置1における熱処理動作の前後のそれぞれにおいて、パージ動作が行われる(ケースC1)。ケースC1において、制御部6は、熱処理用ガス供給部12のポンプ12cを動作させることで、熱処理用ガスのうちの窒素(不活性ガス)のみを供給させ、水素は供給させない。また、制御部6は、不活性ガス供給部13,14のポンプ13b,14bを動作させることで、熱処理室11の入口部11aおよび出口部11cのそれぞれに窒素ガスを供給させる。さらに、制御部6は、ポンプ34c,35cを動作させることで、第1希釈用ガス供給部34から第1ボックス31に第1希釈ガスを供給させるとともに、第2希釈用ガス供給部35から第2ボックス32に第2希釈ガスを供給させる。この際、制御部6は、緊急用パージガス供給部36を動作させない。
熱処理動作の前にパージ動作が行われる場合、熱処理室11内に不活性ガスが供給されるとともに、排気ボックス27内にも不活性ガス(第1希釈用ガス)が供給されるので、排気ボックス27からの排気ガスの組成が安定することとなる。
なお、パージ動作が熱処理動作の後に行われる場合には、熱処理室11内をパージするための不活性ガス供給部13,14の動作停止後に、希釈用ガス供給部33の第1希釈用ガス供給部34からのガスの供給が停止される。
パージ動作が完了した後、制御部6は、被処理物100の熱処理のための動作を行う(ケースC2)。このケースC2において、制御部6は、熱処理用ガス供給部12のポンプ12b,12cを動作させて熱処理用ガスを供給させることで、熱処理室11内に熱処理用ガスを供給する。この熱処理用ガス供給部12の動作制御以外の制御部6による動作制御は、パージ動作(ケースC1)と同じである。すなわち、ケースC1では熱処理用ガス供給部12から水素が供給されなかったのに対して、ケースC2では熱処理用ガス供給部12から水素が供給される。このように、熱処理動作時には、熱処理室11において熱処理用ガス供給部12からの熱処理用ガスの供給、および、不活性ガス供給部13,14から不活性ガスの供給が行われるとともに、排気処理装置4において、第1希釈用ガス供給部34からの第1希釈用ガスの供給および第2希釈用ガス供給部35からの第2希釈用ガスの供給が行われる。
通常の熱処理動作時(ケースC2)では、図4に示すような旋回流Rが、排気ボックス27内で生じる。図4は、排気ボックス27内での排気ガスの流れを説明するための模式的な斜視図であり、排気ボックス27の図示は省略している。また、図4では、排気ボックス27内の旋回流Rのうちの周方向の略半分の領域を示している。図4に示すように、排気ガスは、第1ボックス31内において旋回流R1を生じている。また、排気ガスは、第2ボックス32内において旋回流R2を生じている。
排気ガスは、第1ボックス31の入口部31cの周囲の領域において、たとえば、1(m/s)以下の低い流速で第1ボックス31内に進入する。そして、排気ガスは、第1希釈用ガスの第1配管34aが接続されている領域において、第1希釈用ガスと混合され、旋回流R1を生じる。この旋回流R1のうち、第1配管34aの周囲の領域R11は、たとえば、5(m/s)程度の高い流速を有している。そして、旋回流R1は、旋回しながら第2ボックス32へ向けて上昇する。旋回流R11のうち、第1ボックス31の出口部31dの領域R12は、第1ボックス31の出口部31dから第2ボックス32へ向かう。
そして、排気ガスが第2ボックス32の入口部32cに到達すると、排気ガスは、第2希釈用ガスの第2配管35aが接続されている領域において、第2希釈用ガスと混合され、旋回流R2を生じる。この旋回流R2のうち、第2配管35aの周囲の領域R21は、たとえば、5(m/s)程度の高い流速を有している。すなわち、第1希釈ガスが混合されたときの排気ガスの流速と、第2希釈ガスが混合されたときの排気ガスの流速とは、実質的に等しくなるように構成されている。そして、旋回流R2は、旋回しながら第2ボックス32の出口部32dへ向けて上昇する。
図5は、排気ボックス27を側面視したときにおける排気ガスの速度分布を示す図である。図5では、排気ガスの旋回流Rのうち、排気ボックス27の側面視における各部での速度について、水平方向の成分と垂直方向の成分とを合成したものを示している。図5に示すように、排気ボックス27に進入した排気ガスは、矢印A1に示すように、第1ボックス31の周壁31bおよび第2ボックス32の周壁32bに沿って上昇する。そして、排気ガスの一部は、第2ボックス32の出口部32dから排気ボックス27の上方のフード5に排気される。
一方、残りの一部の排気ガスは、矢印A2に示すように、第2ボックス32の中心軸線L1側に巻き込まれて落下し、第1ボックス31にまで到達する。第1ボックス31まで落下した排気ガスは、熱処理室11から第1ボックス31に導入された排気ガスに巻き込まれ、再び上方に進む。
次に、図1〜図3を参照して、熱処理装置1に異常が生じた場合(ケースC3〜ケースC9)における熱処理装置1の動作について、説明する。
まず、熱処理装置1における熱処理動作中に、熱処理室11の入口部11aおよび出口部11cにおいて、酸素濃度がたとえば2%を超えた場合、すなわち、酸素検出器15b,16bで検出される酸素濃度がたとえば2%を超えた場合、制御部6は、酸素濃度上昇時モードを実行する(ケースC3)。酸素濃度上昇時モードでは、制御部6は、熱処理室11内への熱処理用ガスのうちの水素ガスの供給を停止するとともに、緊急用パージガス(窒素ガス)を排気ボックス27の第2ボックス32に供給する。すなわち、制御部6は、熱処理動作時の制御と異なる制御として、熱処理用ガス供給部12から熱処理室11への水素ガスの供給を停止するとともに、緊急用パージガス供給部36からの緊急用パージガスの供給を開始する制御を行う。このとき制御部6は、警報器39に、酸素濃度が上昇した旨の警報を発信させる。
一方、熱処理装置1における熱処理動作中に、排気ボックス27の第2ボックス32の出口部32dにおける水素濃度が、所定の第1濃度(たとえば、1%)に到達した場合(ケースC4)、制御部6は、熱処理動作を継続しつつ、警報器39に、水素濃度が第1濃度に到達した旨の警報を発信させる。
そして、排気ボックス27の第2ボックス32の出口部32dにおける水素濃度が、所定の第2濃度(たとえば、3%)に到達した場合、制御部6は、水素濃度上昇時モードを実行する(ケースC5)。水素濃度上昇時モードでは、制御部6は、警報器39に、水素濃度が第2濃度に到達した旨の警報を発信させる点以外、酸素濃度上昇時モード(ケースC3)と同じ制御を行う。これにより、熱処理動作時の制御に対して、熱処理室11への水素の供給が停止されるとともに第2ボックス32への緊急用パージガスの供給が行われるという変化が生じる。
一方、停電により、電力会社から熱処理装置1に供給される電力が停止した場合、制御部6は、停電時モードを実行する(ケースC6)。停電時モードでは、制御部6は、熱処理室11内への熱処理用ガスのうちの水素ガスの供給を停止するとともに、排気ボックス27の第2ボックス32への第2希釈用ガス(空気)の供給を停止し、さらに、緊急用パージガス(窒素ガス)を第2ボックス32に供給する。すなわち、制御部6は、熱処理動作時の制御に対して、熱処理用ガス供給部12から熱処理室11への水素ガスの供給を停止し、且つ、第2希釈用ガス供給部35から第2ボックス32への第2希釈用ガスの供給を停止し、且つ、緊急用パージガス供給部36からの第2ボックス32への緊急用パージガスの供給を開始する変更を行う。
一方、不活性ガス供給部13,14から供給される窒素ガスの流量、および、第1希釈用ガス供給部34から供給される窒素ガスの流量の少なくとも一方が所定値以上低下した場合、制御部6は、不活性ガス量低下時モードを実行する(ケースC7)。なお、たとえば、制御部6は、各ポンプ13b,14b,35cの駆動モータの動作量を監視することで、窒素ガスの流量低下を検出することができる。不活性ガス量低下時モードでは、制御部6は、警報器39に、窒素ガス流量が低下した旨の警報を発信させる。また、制御部6は、水素濃度が第2濃度に上昇したとき(ケースC5)と同じ態様のガス供給制御を行う。
一方、第2希釈用ガス供給部35から供給される第2希釈用ガス(空気)の流量が所定値以上低下した場合、制御部6は、第2希釈用ガス量低下時モードを実行する(ケースC8)。制御部6は、たとえば、第2希釈用ガス供給部35のポンプ35cの駆動モータの動作量を監視することで、第2希釈用ガスの流量低下を検出することができる。第2希釈用ガス量低下時モードでは、制御部6は、警報器39に、第2希釈用ガス流量が低下した旨の警報を発信させる。また、制御部6は、水素濃度が第2濃度に上昇したとき(ケースC5)と同じ態様のガス供給制御を行う。
一方、排気ボックス27に設けられた温度センサ29で検出された排気ボックス27の温度が所定の温度以上である場合、制御部6は、高温時モードを実行する(ケースC9)。高温時モードでは、制御部6は、警報器39に、排気ボックス27が過熱している旨の警報を発信させる。また、制御部6は、水素濃度が第2濃度に上昇したとき(ケースC5)と同じ態様のガス供給制御を行う。
以上の次第で、排気処理装置4によると、第1ボックス31において、排気ガスは、不活性ガスを含む第1希釈用ガスによって希釈される。これにより、排気ガスにおける可燃性ガスの濃度が低下する。次いで、排気ガスは、第2ボックス32において、第2希釈用ガスによって希釈される。これにより排気ガスにおける可燃性ガスの濃度がさらに低下する。このような構成であれば、可燃性ガスを燃焼する処理を伴わなくて済むので、排気処理装置4に負荷を与える火災の発生をより確実に抑制できる。また、高価な不活性ガスのみを用いて可燃性ガスを希釈する場合と比べて、不活性ガス(窒素ガス)の使用量をより少なくできるので、可燃性ガスの希釈にかかるコストをより低減できる。また、不活性ガスで希釈された排気ガスであれば、第2ボックス32において助燃性ガス(酸素)を含む空気(第2希釈用ガス)を短時間で大量に排気ガスに混合した場合でも、可燃性ガスが燃焼作用を生じることを抑制できる。よって、第2ボックス32において、火災を生じることなく、可燃性ガスをより迅速に希釈できる。さらに、第2希釈用ガス供給部35から第2ボックス32へ供給される第2希釈用ガスの流速V35が、第2ボックス32の出口部32dにおける排気ガスの流速V32d以上に設定されている。これにより、外部の空気が出口部32dから第2ボックス32および第1ボックス31に逆流することを抑制できる。よって、排気処理装置4の外部からのガス(空気など)などが可燃性ガスに意図せずに混合して火災が生じることを、より確実に抑制できる。以上の次第で、より安価且つ迅速に可燃性ガスを希釈することができ、且つ、排気処理装置4に負荷を与える火災をより確実に抑制することのできる、排気処理装置4を実現できる。
また、排気処理装置4によると、第1希釈用ガス供給部34から第1ボックス31へ供給される第1希釈用ガスの流速V34と、第2希釈用ガス供給部35から第2ボックス32へ供給される第2希釈用ガスの流速V35とが、実質的に同じ(V34≒V35)に設定されている。この構成によると、第1ボックス31内における排出ガスの流れと、第2ボックス32内における排出ガスの流れとを、より揃った状態にすることができる。これにより、第1ボックス31内の排気ガスが第2ボックス32内に向けて過度に吸引されることを抑制できる。その結果、第1ボックス31内の排気ガスは、排気処理装置4に接続されている熱処理室11内のガスを過度に吸引することを抑制できる。よって、空気(酸素)が熱処理室11の外部から入口部11aまたは出口部11cを通って熱処理室11の内部へ流入することを抑制できる。よって、熱処理室11内での火災の発生を、より確実に抑制できる。
また、排気処理装置4によると、第1ボックス31と第2ボックス32のそれぞれにおける排気ガスの流速V31,V32が実質的に同じ(V31≒V32)に設定されている。この構成によると、第1ボックス31内の気流と、第2ボックス32内の気流とをより均衡させることができる。その結果、排気ガスが排気処理装置4内に過度に吸引されることを抑制できるとともに、排気処理装置4から排出された排気ガスが排気処理装置4に逆流することを、より確実に抑制できる。
また、排気処理装置4によると、第1希釈用ガス供給部34および第2希釈用ガス供給部35は、それぞれ、対応する第1ボックス31および第2ボックス32において旋回流Rを生じさせるように対応する第1希釈用ガスおよび第2希釈用ガスを噴射する。この構成によると、排気ガスと、対応する第1希釈用ガスおよび第2希釈用ガスと、が混ざり合う度合いを、より大きくできる。よって、対応する第1ボックスおよび第2ボックスをより小型にしつつ、排気ガスと対応する第1希釈用ガスおよび第2希釈用ガスを、より確実に混合できる。その結果、より小型で且つ十分な排気処理能力を有する排気処理装置4を実現できる。
また、排気処理装置4によると、排気導入管26における排気ガスの流速V26、第1ボックス31における排気ガスの流速V31、および、第2ボックス32における排気ガスの流速V32が、実質的に同じ(V26≒V31≒V32)に設定されている。この構成によると、熱処理室11内から排気処理装置4内にかけて排気ガスに速度差が生じることを抑制できる。その結果、第1ボックス31内および第2ボックス32内の排気ガスは、熱処理室11内の排気ガスを過度に吸引することを、より確実に抑制できる。その結果、熱処理室11から排気処理装置4の第1ボックス31への急激な排気ガスの流入をより確実に抑制できる。これにより、熱処理室11の外部の空気(酸素)が、熱処理室11の入口11aおよび出口11cから熱処理室11に進入することを抑制できる。したがって、熱処理室11内において可燃性ガスによる火災が生じることをより確実に抑制できる。
また、熱処理装置1によると、熱処理室11には、入口部11aおよび出口部11cにおいて酸素濃度を検出する酸素検出器15b,16bが設けられている。この構成によると、熱処理室11から排気処理装置4への排気ガスの気流の乱れなどによって、入口部11aまたは出口部11cから多くの空気が熱処理室11内に進入したとき、熱処理室11内の酸素濃度が高くなったことを、酸素検出器15b,16bによって検出できる。これにより、可燃性ガスによる火災が生じることを抑制するための処置を行うことができるので、熱処理室11内において可燃性ガスによる火災が生じることをより確実に抑制できる。
また、排気処理装置4によると、第2ボックス32内の空間の容積は、第1ボックス31内の空間の容積よりも大きく設定されている。この構成によると、まず、第1ボックス31内の比較的小さな空間において、第1希釈用ガスと排気ガスとの混合の度合いをより多くできる。よって、第1希釈用ガスの使用量をより小さくできる。また、第1ボックス31内の排気ガスを、第2ボックス32内によってより確実に第2ボックス32へ導入することができる。よって、排気処理装置4内における排気ガスの逆流を、より確実に抑制できる。
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られない。本発明は、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と異なる点について主に説明し、同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
(1)たとえば、図6および図7に示すように、第1希釈用ガス供給部34の第1配管34aの一端部34bが、水平面に対して数度の勾配で上側を向くように配置されていてもよい。同様に、第2希釈用ガス供給部35の第2配管35aの一端部35bが、水平面に対して数度の勾配で上側を向くように配置されていてもよい。なお、第1配管34aの一端部34bおよび第2配管35aの一端部35bの何れか一方のみが、水平面に対して傾斜していてもよい。
また、各希釈用ガス供給部34,35の配管34a,35aは、対応するボックス31,32の周壁31b,32bとの接続箇所において、周壁31b,32bの接線方向に沿って接続されてもよい。さらに、各ボックス31,32の周壁31b,32bの内周面には、螺旋状のガイド部材31f,32fが設けられていてもよい。ガイド部材31f,32fは、対応する配管34a,35aの一端部34b,35bから、対応する出口部31d,32d側に向けて螺旋状に延びている。各ガイド部材31f,32fの幅(排気ボックス27の径方向の長さ)は、たとえば、対応するボックス31,32の半径の半分未満に設定されている。上記の構成により、第1希釈用ガスおよび第2希釈用ガスは、排気ガスと螺旋状に流れ、排気ガスとより均等に混合される。また、排気ガスが逆流することを、ガイド部材31f,32fによって抑制できる。
また、第1ボックス31から排気導入管26への排気ガスの逆流を抑制するための逆流抑制部55が設けられていてもよい。逆流抑制部55は、排気導入管26の出口部26aに設けられている。逆流抑制部55は、排気導入管26の出口部26aの内周面に取り囲まれるように配置されている。また、本実施形態では、逆流抑制部55は、排気導入管26のうち第1ボックス31内に配置された箇所に配置されている。すなわち、逆流抑制部55は、排気導入管26および第1ボックス31の双方に収容された配置となっている。
逆流抑制部55は、ブロック状に形成されており、本変形例では、下向きに凸となる円錐形状に形成されている。逆流抑制部55は、図示しないステーなどを用いて排気導入管26によって支持されている。逆流抑制部55は、排気導入管26と同軸に配置されている。これにより、逆流抑制部55は、第1ボックス31から排気導入管26へ逆流しようとする排気ガスを、逆流抑制部55で受けることができる。
逆流抑制部55の形状は、略円錐状に設定されている。なお、逆流抑制部55の形状は、本実施形態で説明した形状に限定されず、排気導入管26から第1ボックス31への排気ガスの流れを許容しつつ、第1ボックス31から排気導入管26への排気ガスの逆流を抑制できる形状であればよい。
この構成によると、排気ボックス27内において気流の巻き返しによって出口部32d側から逆流する気流が生じた場合、この気流が排気導入管26内に進入することを、逆流抑制部55によって抑制できる。これにより、排気処理装置4において排気ガスが処理室11へ逆流することをより確実に抑制できる。
(2)また、上述の実施形態では、第1ボックス31および第2ボックス32には逆流抑制部55が設けられていない形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。第1ボックス31および第2ボックス32の少なくとも一方に逆流抑制部55が設けられてもよい。
図8は、実施例1,2および比較例1,2について説明するための図である。図8に示すように、実施例1,2および比較例1,2について、計算を用いて評価を行った。実施例1,2は、上記した排気処理装置4と同じ構成の排気処理装置である。実施例1,2の違いは、第1希釈用ガスとしての窒素ガスの流量である。実施例1では、第1希釈用ガスとしての窒素ガスの流量が240(L/min)であるのに対して、実施例2では、第1希釈用ガスとしての窒素ガスの流量が120(L/min)である。なお、実施例1,2は、何れも、第2希釈用ガスとしての空気の流量が4300(L/min)である。
比較例1は、第2希釈用ガスが用いられない点以外は、実施例1,2と同様の構成である。ただし、比較例1では、第1希釈用ガスとしての窒素ガスの流量が4300(L/min)と、実施例2における窒素ガスの流量の約35倍となっている。
比較例2は、熱処理室からの排気ガスを、クーラ(熱交換器)で冷却するとともに空気で希釈する構成を有する排気処理装置である。比較例2では、希釈用ガスとしての空気の流量が5000(L/min)である。また、よって、比較例2では、排気ガスの冷却のために、冷却水の補給(給水)が必要である。
上記比較例1,2および実施例1,2について、排気ガスの温度を37℃、水素濃度を1%まで低下させる際における排気ガスの希釈の態様を計算した。
比較例1では、窒素ガスが排気ガスを希釈することにより、排気ガスの温度が37℃まで低下し、水素濃度が1%まで低下した。一方、実施例1では、排気ガスは、第1希釈用ガスとしての窒素ガスによって280℃、水素濃度17%まで低下し、その後、第2希釈用ガスとしての空気によって、37℃、水素濃度1%まで低下した。実施例2では、排気ガスは、第1希釈用ガスとしての窒素ガスによって435℃、水素濃度27%まで低下し、その後、第2希釈用ガスとしての空気によって、37℃、水素濃度1%まで低下した。比較例2では、排気ガスは、クーラおよび空気によって、37℃、水素濃度1%まで低下した。
次に、実施例1,2および比較例1,2のそれぞれについて、耐トラブル性能を検証した。具体的には、4つのトラブル事例として、(1)排気ガスを希釈する窒素ガス(第1希釈用ガス)の供給圧力低下が生じる事例と、(2)排気ガスを希釈する空気(第2希釈用ガス)の供給圧力低下が生じる事例と、(3)クーラのラジエータに供給される冷却水の圧力低下が生じる事例と、(4)停電が生じる事例と、を検証した。なお、上記(3)の事例は、比較例2にのみ生じ得る事例である。
検証結果において、○は、排出ガスの処理能力低下の度合いが問題とならない場合を示している。一方、×は、排出ガスの処理能力低下の度合いが問題となる場合を示している。図8に示されているように、比較例1および実施例1,2においては、上記(1),(2),(4)の何れの事例においても、排出ガスの処理能力低下の度合いが問題とならない結果となった。一方、比較例2では、上記(2)〜(4)の何れの事例においても、排出ガスの処理能力低下の度合いが問題となる結果となった。
以上(1)〜(4)の事例の検証結果を踏まえて、実施例1,2および比較例1,2について、排気処理装置のロバスト性を評価した。ロバスト性については、比較例1および実施例1が◎の評価となり、実施例2については、○の評価となった。一方、比較例2については、×の評価となった。
次に、実施例1,2および比較例1,2について、経済性(コストの低さ)を評価した。結果は、高価な窒素ガスを大量に消費する比較例1が×の評価となった。一方、窒素ガスの消費量の小さい実施例1,2は、○の評価となり、窒素ガスを用いない比較例2は◎の評価となった。
以上を踏まえ、実施例1,2および比較例1,2について総合判定を行った。比較例1は、ロバスト性に優れるけれども運営コストが高く、総合評価としては○に至らず△に終わった。一方、比較例2については、運営コストは低いもののロバスト性が低く、総合判定としては×となった。
これに対し、実施例1,2は、ロバスト性および経済性の何れもが優れており、実施例2は総合判定として○となり、実施例1については総合判定で◎となった。