JP6707811B2 - 化粧シート及び化粧材 - Google Patents
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Description
特許文献1及び2のコーティングシートは、特許文献1及び2の実施例の評価項目であるテーバー摩耗試験においては、良好な試験結果を示している。しかし、特許文献1及び2のコーティングシートを被着材表面に貼着した場合、日常生活で表面が徐々に傷つき、耐摩耗性を満足し得るものではなかった。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[11]のコーティングシート、化粧シート及び化粧材を提供する。
3.0T≦D+1/4P (1)
[2]前記条件(1)が3.0T≦D+1/4P≦6.0Tである、上記[1]に記載のコーティングシート。
[3]前記粒子径分布の存在比率が2/4Pを示す粒子径のうち大きい側の粒子径をD+2/4Pとした際に、D+2/4P及びTが下記条件(2)を満たす、上記[1]又は[2]に記載のコーティングシート。
2.3T≦D+2/4P (2)
[4]前記粒子径分布の存在比率が3/4Pを示す粒子径のうち大きい側の粒子径をD+3/4Pとした際に、D+3/4P及びTが下記条件(3)を満たす、上記[1]〜[3]の何れかに記載のコーティングシート。
1.7T≦D+3/4P (3)
[5]前記粒子径分布の存在比率がPを示す粒子径をDPとした際に、DP及びTが下記条件(4)を満たす、上記[1]〜[4]の何れかに記載のコーティングシート。
1.5T≦DP (4)
[6]前記コート層の厚みTが5〜15μmである上記[1]〜[5]の何れかに記載のコーティングシート。
[7]前記粒子がモース硬度4〜8の無機粒子である上記[1]〜[6]の何れかに記載のコーティングシート。
[8]前記バインダー樹脂が多官能ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物である上記[1]〜[7]の何れかに記載のコーティングシート。
[9]前記基材と前記コート層との間、又は前記基材の前記コート層とは反対側に意匠層を有してなる上記[1]〜[8]の何れかに記載のコーティングシート。
[10]上記[1]〜[9]の何れかに記載のコーティングシートからなる化粧シート。
[11]被着材と、上記[10]に記載の化粧シートのコート層とは反対側の面とを積層し、一体化してなる化粧材。
[コーティングシート]
本発明のコーティングシートは、基材上に、バインダー樹脂及び粒子を含有するコート層を備えたコーティングシートであって、該粒子の体積基準の粒子径分布の存在比率のピーク値をP、該粒子径分布の存在比率が1/4Pを示す粒子径のうち大きい側の粒子径をD+1/4P、該コート層の厚みをTとした際に、D+1/4P及びTが下記条件(1)を満たすものである。
3.0T≦D+1/4P (1)
3.0T≦D+1/4P (1)
このように、テーバー摩耗試験の結果と、日常生活における耐摩耗性とが相関しない原因は、以下のように考えられる。
まず、コーティングシートに傷が生じる原因は、コート層の粒子が存在しない箇所に摩擦材が到達し、該箇所が摩耗するためと考えられる。そして、テーバー摩耗試験では摩擦材として研磨紙又は摩耗輪を用いている。研磨紙又は摩耗輪は柔軟性が低く、コーティングシートの表面形状に追従しないため、摩擦材である研磨紙又は摩耗輪がコート層の粒子が存在しない箇所に到達しにくく、試験結果が良好になると考えられる。
一方、日常生活において、各種被着材(壁、天井、床等の建築物の内装材;窓枠、扉、手すり等の建具;家具;家電製品、OA機器等の筐体;玄関ドア等の外装材等)を清掃する際は、雑巾、モップ、ドライシート、ウェットシート等の清掃用具が用いられる。これら清掃用具は研磨紙に比べて柔軟性があり、コーティングシートの表面形状に追従しやすいため、コート層の粒子が存在しない箇所に摩擦材である清掃用具が到達しやすく、徐々に傷が生じてしまう。
また、テーバー摩耗試験は単純な回転運動であるため、コーティングシート上の任意の箇所では常に一定の方向から力がかかることになる。このため、テーバー摩耗試験においてコーティングシート上の任意の箇所では、一定の方向にのみ傷が生じる。一方、清掃時の清掃用具の動きはランダムである。このため、清掃では、コーティングシート上の任意の箇所では様々な方向に徐々に傷が生じ、傷が目立ちやすくなる。
さらに、清掃用具の多くは繊維から形成されている。そして、繊維の長さは様々であることから、コート層の粒子が存在しない箇所に摩擦材(清掃用具の繊維)が到達しやすく、徐々に傷が生じてしまう。
以上のように、テーバー摩耗試験の試験結果が良好であったとしても、日常生活で被着材の表面が徐々に傷つくことを抑制できず、耐摩耗性を良好にすることができない場合がある。
条件(1)を満たすことは、コート層の厚みの3倍以上の粒子径の大きい粒子を、1/4Pという高い存在比率で有していることを意味している。すなわち、本発明のコーティングシートは、コート層の厚みの3倍以上の粒子径の大きい粒子を高い存在比率で有することにより、コート層の粒子が存在しない箇所に摩擦材が到達することをブロックできる。このため、本発明のコーティングシートは、日常生活で表面が徐々に傷つくことを大幅に抑制でき、耐摩耗性を極めて良好にすることができ、ひいては意匠性の低下を抑制できる。
日常生活における耐摩耗性との相関が高い試験方法としては、JIS L1096:2010のE法(マーチンデール法)が挙げられる。マーチンデール法による摩耗試験は、摩擦材として、布、ポリウレタンフォーム等の柔軟性のある材料を用い、運動方式も様々な方向から摩耗を行うリサジュー図形運動であるため、日常生活における耐摩耗性との相関が高くなっている。
このため、条件(1)は、3.0T≦D+1/4P≦6.0Tであることが好ましく、3.5T≦D+1/4P≦5.0Tであることがより好ましく、3.5T≦D+1/4P≦4.5Tであることがさらに好ましい。
また、本発明において、コート層の厚みTは、コート層の粒子が存在しない箇所の厚みを20箇所測定した際の平均値である。コート層の粒子が存在しない箇所の厚みは、コーティングシートの断面写真から測定できる。
(1)最小粒子径を0.03μm、最大粒子径を1000μmとする。
(2)上記最大粒子径の底を10とする対数、及び上記最小粒子径の底を10とする対数をとり、その差分を算出し、さらに該差分を100で除する。
(3)任意の一区間の粒子径の下限値及び上限値を、Rn、Rn+1(nは1以上100以下の整数、R1=0.03μm、R101=1000μm)とした際に、Rn+1の底を10とする対数と、Rnの底を10とする対数との差が、上記除数と常に同一となるようにRn及びRn+1を決定する。(1)〜(3)は、下記式(A)で表すことができる。
log10Rn+1−log10Rn=[log101000−log100.03]/100 (A)
(4)任意の一区間の幅は、Rn+1−Rnで表すことができる。
2.3T≦D+2/4P (2)
1.7T≦D+3/4P (3)
したがって、条件(2)及び/又は条件(3)を満たすことにより、コート層の粒子が存在しない箇所に摩擦材が到達することをよりブロックしやすくできる。また、コート層が摩擦を受けると、粒子径の大きな粒子から順に欠落していく傾向にある。このため、条件(2)及び/又は条件(3)を満たすことにより、条件(1)を満たすような大きな粒子が欠落しても、条件(2)及び/又は条件(3)を満たす粒子の存在によって、コート層の粒子が存在しない箇所に摩擦材が到達することをブロックしやすくできる。
したがって、条件(2)及び/又は条件(3)を満たすことにより、コーティングシートの耐摩耗性をさらに良好にすることができる。
このため、条件(2)は、2.5T≦D+2/4P≦5.0Tであることがより好ましく、2.8T≦D+2/4P≦4.5Tであることがさらに好ましく、3.0T≦D+2/4P≦4.0Tであることがよりさらに好ましい。
また、条件(3)は、2.0T≦D+3/4P≦4.0Tであることがより好ましく、2.0T≦D+3/4P≦3.5Tであることがさらに好ましく、2.1T≦D+3/4P≦3.0Tであることがよりさらに好ましい。
1.5T≦DP (4)
したがって、条件(4)を満たすことにより、大部分の粒子がコート層の表面から突出し、耐摩耗性の基本性能を満足しやすくできる。
このため、条件(4)は、1.5T≦DP≦2.5Tであることがより好ましく、1.6T≦DP≦2.3Tであることがより好ましい。
条件(5)〜(7)は、粒子の粒子径分布が狭すぎず広すぎないことを意味している。
粒子径分布が揃いすぎている場合、摩擦時に粒子が一挙に欠落してしまう場合がある。このため、条件(5)〜(7)を満たして粒子径分布を狭すぎないようにすることにより、摩擦時に粒子が徐々に欠落し、コート層の粒子が存在しない箇所に摩擦材が到達することをブロックして耐摩耗性をより良好にするとともに、コート層内の粒子の充填率を高くでき、塗膜の硬度を上げることができる。
また、任意の柔軟性を有する摩擦材がコート層の表面に到達することをブロックするためには、該摩擦材をブロックし得る大きさの粒子を一定量有することが好ましい。粒子径分布が広すぎる場合、個々の大きさの粒子の量が少なくなり、摩擦材を十分にブロックできない場合がある。このため、条件(5)〜(7)を満たして粒子径分布を広すぎないようにすることにより、耐摩耗性をより良好にすることができる。
条件(5)は、0.4T≦D+1/4P−D+2/4P≦1.3Tであることがより好ましく、0.4T≦D+1/4P−D+2/4P≦1.1Tであることがさらに好ましい。
条件(6)は、0.4T≦D+2/4P−D+3/4P≦1.3Tであることがより好ましく、0.4T≦D+2/4P−D+3/4P≦1.1Tであることがさらに好ましい。
条件(7)は、0.4T≦D+3/4P−DP≦1.3Tであることがより好ましく、0.5T≦D+3/4P−DP≦1.1Tであることがさらに好ましい。
以上の観点から、粒子径分布の存在比率が1/4Pを示す粒子径のうち小さい側の粒子径をD−1/4P、粒子径分布の存在比率が2/4Pを示す粒子径のうち小さい側の粒子径をD−2/4P、粒子径分布の存在比率が3/4Pを示す粒子径のうち小さい側の粒子径をD−3/4Pとした際に、D−1/4P、D−2/4P及びD−3/4Pが下記条件(8)〜(10)の一以上を満たすことが好ましい。
条件(8)は、0.3T≦D−1/4P≦1.0Tであることが好ましく、0.4T≦D−1/4P≦0.9Tであることがよりに好ましい。
条件(9)は、0.6T≦D−2/4P≦1.3Tであることがより好ましく、0.7T≦D−2/4P≦1.2Tであることがさらに好ましい。
条件(10)は、0.8T≦D−3/4P≦1.3Tであることがより好ましく、0.7T≦D−3/4P≦1.2Tであることがさらに好ましい。
基材は特に制限されないが、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム、紙類、あるいはこれらの複合体等が挙げられる。基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、傷つきに対する基材強度の観点からポリエステル系フィルムが好ましい。
基材は、意匠性の観点から着色されていてもよい。
基材がプラスチックフィルム又はプラスチックフィルム及び紙類の複合体の場合、機械的強度及び取り扱い性の観点から、厚みが20〜200μmであることが好ましく、40〜160μmがより好ましく、40〜100μmがさらに好ましい。また、基材が紙類の場合、同様の観点から、坪量が20〜80g/m2であることが好ましく、30〜50g/m2であることがさらに好ましい。
これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙、又は紙の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等、建材分野で使われることの多い各種紙が挙げられる。さらには、事務分野や通常の印刷、包装等に用いられるコート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙等を用いることもできる。また、これらの紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ各種繊維の織布や不織布も基材として使用することができる。各種繊維としてはガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維等の無機質繊維、又はポリエステル繊維、アクリル繊維、若しくはビニロン繊維等の合成樹脂繊維が挙げられる。
コート層は、バインダー樹脂及び粒子を含有する。また、コート層は、コーティングシートの最表面に位置する。
コート層の厚みは、粒子の保持力、耐摩耗性及び費用対効果の観点から、5〜15μmであることが好ましく、8〜13μmであることがより好ましい。
コート層のバインダー樹脂は特に制限されないが、耐摩耗性をより良好にするとともに粒子の脱落を抑制するために、熱硬化性樹脂組成物又は電離放射線硬化性樹脂組成物等の硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、その中でも電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがより好ましく、さらにその中でも電子線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがさらに好ましい。
コート層中の硬化性樹脂組成物の硬化物は、バインダー樹脂の全量に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、なかでも多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーであればよく、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられる。これらの(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
以上の重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの内、多官能ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましく、多官能ウレタンアクリレート系オリゴマーがより好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、優れた表面保護特性を付与することができ、また製造過程においてコーティングシートの収縮を抑制できるためである。
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数は2以上であれば特に制限はないが、表面保護特性及び製造時の収縮抑制の観点から、2〜8が好ましく、より好ましくは2〜6である。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、ベンゾイン系、アセトフェノン系、フェニルケトン系、ベンゾフェノン系、アントラキノン系等の光重合用開始剤が好ましく挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等を用いることができる。
粒子は上記条件(1)を満たすものであれば、有機粒子及び無機粒子の何れも用いることができるが、耐摩耗性の観点から無機粒子が好ましい。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びチタニア等からなる粒子が挙げられる。これら無機粒子の中でも、耐摩耗性と、コーティングマシンや印刷版の劣化の抑制の観点から、モース硬度4〜8の無機粒子が好ましく、モース硬度5〜7の無機粒子がより好ましい。特許文献1及び2のコーティングシートは、実施例では硬化膜中にアルミナを含有させることによって耐摩耗性を得ようとしているが、アルミナはモース硬度が9であり極めて硬いことからコーティングマシンや印刷版の劣化を引き起こしやすい。一方、本発明では条件(1)を満たすことにより、アルミナ等の超高硬度の粒子を用いずとも良好な耐摩耗性を得ることができ、生産上有利である。特に、前記モース硬度の範囲を満たすシリカは屈折率が低くコート層の白化を抑制できるため、コーティングシートが後述する意匠層を有する場合、該意匠層の見栄えを維持しやすい点で好適である。
また、有機粒子としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂等からなる樹脂ビーズが挙げられる。
意匠層は、コーティングシートの意匠性を高めることを目的として、必要に応じて設けられる。意匠層は、例えば、基材とコート層との間や、基材のコート層とは反対側に設けられる。
意匠層としては、着色層、絵柄層等が挙げられる。これらの層は、同一種または異種の層を積層する等して、適宜組み合わせて用いてもよい。
着色層の形成に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
バインダーとしては特に制限はなく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
着色剤としては、コーティングシートの用途や絵柄層との色の相性等から適宜選択すればよいが、例えばカーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
基材として、紙類等の含浸性のある基材を用いる場合、基材にコート層塗布液が含浸することを防止するために、基材とコート層との間にシーラー層を有することが好ましい。
基材とコート層との間に上述した意匠層を有する場合、シーラー層は、基材と意匠層との間に位置してもよいし、意匠層とコート層との間に位置してもよい。
硬化性樹脂組成物の硬化物の含有量はシーラー層の全固形分の50質量%以上であることが好ましく、65〜95質量%であることがより好ましい。
シーラー層の熱硬化性樹脂組成物及び電離放射線硬化性樹脂組成物は、コート層で例示したものと同様のものが挙げられる。また、熱硬化性樹脂組成物としては、ポリオールとイソシアネートとの2液硬化性樹脂が好ましく、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとの2液硬化性樹脂がより好ましい。
シーラー層の粒子は、コート層で例示したものと同様のものが挙げられる。また、該粒子としては無機粒子が好ましく、その中でもシリカが好ましい。
該粒子は、平均粒子径が0.1〜2.0μmであることが好ましく、0.2〜1.5μmであることがより好ましい。
本発明のコーティングシートは、基材上、あるいは、基材とコート層との間に位置する何れかの層上に盛上部を有していてもよい。コーティングシートが基材とコート層との間に意匠層を有する場合、図3のように、意匠層上に盛上部を有することが好ましい。
盛上部は、コーティングシートに触感(例えば木目模様であれば、木の触感)を付与し、高級感を高める役割を有する。
また、盛上部の占有面積比はコーティングシートの平面の面積に対して、2〜25%の範囲であることが好ましく、さらに5〜25%の範囲であることが好ましい。
このような盛上部の高さ及び占有面積比の範囲を選択することにより、コーティングシートに、特に好適な触感を付与することができ、例えば木目模様の場合には、実物の木の触感に近づけることができる。
なお、盛上部の占有面積比は、[盛上部の底面の面積/化粧シートの平面の面積]×100、で表される比率をいう。
また、盛上部の材料としては、特に限定されず、熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂組成物等を用いることができる。これらのうち、特に、ベヒクル成分として、アクリル系、ポリエステル系、アクリルウレタン系、ウレタン系の樹脂で水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の官能基を有する樹脂に、硬化剤としてポリイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂が表面性能維持及びコストの点から望ましい。
裏面プライマー層は、各種の被着材との接着性を向上させる目的で好ましく設けられる層であり、コーティングシートのコート層とは反対側の最表面に設けられる。
裏面プライマー層の形成に用いられる材料としては特に限定されず、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂等が挙げられ、被着材の材質によって、適宜選択すればよい。
また、裏面プライマー層の厚さは、1〜5μmであることが好ましく、1〜3μmであることがより好ましい。
本発明のコーティングシートは、上述したように耐摩耗性に極めて優れるものである。
一般的に、艶が高い物や、黒色度が高い物は、摩耗により表面が傷ついた際に、傷が目立ちやすい。このため、本発明のコーティングシートは、艶が高い場合や、黒色度が高い場合の効果がより際立ったものとなる。
具体的には、本発明のコーティングシートは、コート層側の表面のJIS Z8741:1997の60度における鏡面光沢度が2%以上のものが好ましく、3%以上のものがより好ましい。なお、鏡面光沢度の上限は30%程度である。
鏡面光沢度は、任意の20箇所で測定を行った際の平均値をいうものとする。
本発明の化粧シートは、上述した本発明のコーティングシートからなるものである。
かかる化粧シートは、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装材;窓枠、扉、手すり等の建具;家具;家電製品、OA機器等の筐体;玄関ドア等の外装材等の被着材の表面材(化粧シート)として用いることにより、これら被着材に極めて良好な耐摩耗性を付与できる。特に、内装材、建具、家具等の頻繁に清掃される被着材の表面材(化粧シート)として用いることが好ましい。
本発明の化粧材は、被着材と、上述した本発明の化粧シートのコート層とは反対側の面とを積層し、一体化してなるものである。
被着材の材質は、例えば、木材単板、木材合板、パーチクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質板;石膏板、石膏スラグ板等の石膏系板;珪酸カルシウム板、石綿スレート板、軽量発泡コンクリート板、中空押出セメント板等のセメント板;パルプセメント板、石綿セメント板、木片セメント板等の繊維セメント板;陶器、磁器、土器、硝子、琺瑯等のセラミックス板;鉄板、亜鉛メッキ鋼板、ポリ塩化ビニルゾル塗布鋼板、アルミニウム板、銅板等の金属板;ポリオレフィン樹脂板、アクリル樹脂板、ABS板、ポリカーボネート板等の熱可塑性樹脂板;フェノール樹脂板、尿素樹脂板、不飽和ポリエステル樹脂板、ポリウレタン樹脂板、エポキシ樹脂板、メラミン樹脂板等の熱硬化型樹脂板;フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の樹脂を、硝子繊維不織布、布帛、紙、その他の各種繊維質基材に含浸硬化して複合化したいわゆるFRP板等が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、これらの2種以上を積層した複合基板として用いてもよい。
接着剤は、被着材の種類等に応じて公知の接着剤から適宜選択すれば良い。例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン−アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
実施例及び比較例で作製したコーティングシートについて、以下の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
粒子径分布測定装置(島津製作所社製、商品名SALD−2200、測定方式:レーザ回折散乱法)を用いて、以下の条件で実施例及び比較例で用いたコート層のシリカの体積基準の粒子径分布及び平均粒子径を測定し、測定結果からD+1/4P、D+2/4P及びD+3/4P、DP、D−1/4P、D−2/4P及びD−3/4Pを導いた。なお、粒子径分布の存在比率を算出する際の1区間の幅は、上述の定義に従った。
テーバー摩耗試験機の回転盤にコーティングシートを水平に固定して、以下の条件により摩耗試験を行った。試験後の木目柄の残存率が50%以上のものを「○」、試験後の木目柄の残存率が50%未満のものを「×」とした。
(試験条件)
回転盤の素材:JAS特殊合板
摩耗基材:ゴム製円板(JIS A1453:1973に規定するもの)に摩耗紙(S42)を巻き付けたものを2つ使用
荷重:摩耗基材の質量を含め500g(250g×2)
試験時間:50回転が完了するまで
マーチンデール試験機を用い、JIS L1096:2010のE法(マーチンデール法)に準拠して、以下の条件により摩耗試験を行った。試験後の表面変化がほとんど見られないものを「◎」、試験後の表面に軽微な艶の変化が見られるが実用上気にならない程度であるものを「○」、試験後の表面に傷が確認されるものを「×」とした。
(試験条件)
摩耗基材:スリーエム社製の商品名スコッチブライト7446
荷重:6N
摩擦台運動方式:リサジュー円形運動
試験時間:摩擦回数100回完了するまで
JIS Z8741:1997に準拠して、コーティングシートのコート層側の表面の60度鏡面光沢度を測定した。
[実施例1]
白色薄紙原紙(王子エフテックス社製、商品名TプリントS30、坪量30g/m2)上に、グラビア印刷法により、厚み2μmの着色層及び厚み2μmの木目柄の絵柄層を順に形成した。なお、着色層には、ポリエステル系ウレタンを主鎖とするポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートとからなる2液硬化ウレタン樹脂に、着色剤が配合された混合物を用いた。また、絵柄層には、アクリル樹脂とニトロセルロース系樹脂に着色剤が混合された混合物を用いた。
次いで、絵柄層上に厚みが2μmのシーラー層を形成した。なお、シーラー層は、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとからなる2液硬化アクリルウレタン樹脂、及びシリカ(平均粒子径1μm)を含むシーラー層塗布液(2液硬化アクリルウレタン樹脂とシリカとの質量比=75:25)を塗布、乾燥することにより形成した。
次いで、ウレタンアクリレートオリゴマーからなる電子線硬化性樹脂組成物、及びシリカ(モース硬度7.0)を含むコート層塗布液(電子線硬化性樹脂組成物とシリカとの質量比=85:15)を、乾燥後の厚みが9μmとなるように塗布し、電子線(加速電圧:165keV、照射量:3Mrad)を照射して電子線硬化性樹脂組成物を架橋硬化させ、さらに70℃で24時間養生して、実施例1のコーティングシート(化粧シート)を得た。
コート層のシリカを表1の粒子径分布のものに変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティングシート(化粧シート)を得た。
一方、条件(1)を満たさない比較例1〜4のコーティングシート(化粧シート)は、耐摩耗性の評価手法として主流であるテーバー摩耗試験では良好な結果を示すものの、日常生活での耐摩耗性と相関の高いマーチンデール試験では傷が生じてしまい、耐摩耗性が良好ではなかった。
20:シーラー層
30:意匠層
31:着色層
32:絵柄層
40:盛上部
50:コート層
51:粒子
52:バインダー樹脂
100:コーティングシート
Claims (9)
- 基材上に、バインダー樹脂及び粒子を含有するコート層を備えた化粧シートであって、該粒子の体積基準の粒子径分布の存在比率のピーク値をP、前記粒子径分布の存在比率がPを示す粒子径をDP、該粒子径分布の存在比率が1/4Pを示す粒子径のうち大きい側の粒子径をD+1/4P、前記粒子径分布の存在比率が2/4Pを示す粒子径のうち大きい側の粒子径をD+2/4P、前記粒子径分布の存在比率が3/4Pを示す粒子径のうち大きい側の粒子径をD+3/4P、前記粒子径分布の存在比率が1/4Pを示す粒子径のうち小さい側の粒子径をD −1/4P 、該コート層の厚みをTとした際に、DP、D+1/4P、D+2/4P、D+3/4P 、D −1/4P 及びTが下記条件(1)〜(3),(5)〜(8)を満たす、化粧シート。
3.0T≦D+1/4P (1)
2.3T≦D+2/4P (2)
1.7T≦D+3/4P (3)
0.3T≦D+1/4P−D+2/4P≦1.5T (5)
0.3T≦D+2/4P−D+3/4P≦1.5T (6)
0.3T≦D+3/4P−DP≦1.5T (7)
0.3T≦D −1/4P ≦1.0T (8) - 前記条件(1)が3.0T≦D+1/4P≦6.0Tである、請求項1に記載の化粧シート。
- 前記DP及びTが下記条件(4)を満たす、請求項1又は請求項2記載の化粧シート。
1.5T≦DP (4) - 前記コート層の厚みTが5〜15μmである請求項1〜3の何れか1項に記載の化粧シート。
- 前記粒子がモース硬度4〜8の無機粒子である請求項1〜4の何れか1項に記載の化粧シート。
- 前記バインダー樹脂が多官能ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物である請求項1〜5の何れか1項に記載の化粧シート。
- 前記基材と前記コート層との間、又は前記基材の前記コート層とは反対側に意匠層を有してなる請求項1〜6の何れか1項に記載の化粧シート。
- 前記基材が、紙類である、請求項1〜7の何れか1項に記載の化粧シート。
- 被着材と、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化粧シートの前記コート層とは反対側の面とを積層し、一体化してなる化粧材。
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