本発明に係る超音波診断装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置10の一構成例を示す外観図である。また、図2は、超音波診断装置10の一構成例を示すブロック図である。
超音波診断装置10は、図1および図2に示すように、超音波プローブ11、ケーブル12、操作パネル20、ディスプレイ30および装置本体40を有する。
超音波プローブ11は、複数の超音波振動子(圧電振動子)を有する。これら複数の超音波振動子は、装置本体40から供給される駆動信号にもとづいて超音波を発生させる。超音波プローブ11は、複数の超音波振動子から発生する超音波を集束させることでビーム状の超音波(超音波ビーム)を被検体Pの体内へ送信し、さらに、被検体Pからのエコー信号を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ11は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
超音波プローブ11から被検体Pに超音波ビームが送信されると、送信された超音波ビームは、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波がエコー信号として複数の超音波振動子にて受信される。受信されるエコー信号の振幅は、超音波ビームが反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
なお、本実施形態は、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである超音波プローブ11により、被検体Pを3次元でスキャンする場合であっても、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである超音波プローブ11により、被検体Pを2次元でスキャンする又はこれら複数の超音波振動子を回転させることで被検体Pを3次元でスキャンする場合であっても、1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブ11であっても、適用可能である。以下の説明では、超音波プローブ11が、たとえば48個×50個など、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである場合の例について示す。
本実施形態に係る超音波プローブ11は、TEEプローブである。TEEプローブである超音波プローブ11は、被検体Pの体内に経口で挿入される。そして、超音波プローブ11は、被検体Pの食道や胃等の上部消化管に当接されて所定の位置に位置決めされ、検査対象部位の任意の断面および3次元の超音波画像データ(ボリュームデータ)を撮像する。
操作パネル20は、タッチパネル21およびハードキー22を有する。タッチパネル21は、タッチコマンドスクリーンとして機能し、ディスプレイ23と、ディスプレイ23の近傍に設けられたタッチ入力回路24とを有する。タッチパネル21のディスプレイ23は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成される。タッチ入力回路24は、ユーザによるタッチ入力回路上の指示位置の情報を装置本体40に与える。たとえば投影型の静電容量方式のパネルにより構成される場合、タッチセンサは、縦横に配置した電極列を有する。この場合、タッチセンサは、接触物の接触位置付近の静電容量の変化に応じた電極列の出力変化にもとづいて接触位置を取得することができる。ハードキー22は、キーボード、マウス、フットスイッチ、トラックボール、各種ボタン等である。
タッチパネル21のタッチ入力回路24およびハードキー22は入力回路を構成し、それぞれ、超音波診断装置10のユーザからの各種指示を受け付け、装置本体40に対して受け付けた各種指示を転送する。具体的には、タッチ入力回路24およびハードキー22は、たとえばユーザからモード切り替え指示やビュー切り替え指示、表示中のビューの角度調整の指示などを受け付け、ユーザの操作に対応した操作入力信号を装置本体40に出力する。
ここで、モード切り替え指示とは、複数の2次元超音波画像のいずれかをリアルタイムな動画として又は静止画として表示させる2Dモードと、リアルタイムに取得されている3次元超音波画像を動画として表示させる4Dモードと、のいずれか一方から他方のモードに切り替えるべき旨の指示をいう。また、ビュー切り替え指示とは、複数の2次元超音波画像の間でいずれかの画像から他の画像へと画像を切り替えるべき旨の指示をいう。複数の2次元超音波画像のそれぞれは、互いに異なる断面位置に対応する画像である。以下の説明では、複数の2次元超音波画像のそれぞれをビューというものとする。
ディスプレイ30は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、装置本体40において生成された超音波画像を表示する。また、ディスプレイ30は、たとえば超音波診断装置10のユーザが操作パネル20を用いて各種指示を入力するための画像を表示する。
装置本体40は、TEE法により、超音波プローブ11が受信した被検体からのエコー信号にもとづいて超音波画像を生成する。装置本体40は、2次元の信号にもとづいて2次元の超音波画像を生成可能であり、また3次元のエコー信号にもとづいて3次元の超音波画像を生成可能である。
装置本体40は、図2に示すように、送受信回路50、Bモード処理回路51、ドプラ処理回路52、画像生成回路53、画像メモリ54、タイマ55、記憶回路56、処理回路57および表示処理回路58を有する。
送受信回路50は、送信回路50aおよび受信回路50bを有し、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。
送信回路50aは、トリガ発生回路、送信遅延回路およびパルサ回路などを有し、ケーブル12を介して超音波プローブ11に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延回路は、超音波プローブ11から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスにもとづくタイミングで、超音波プローブ11に駆動パルス信号を印加する。遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
また、送信回路50aは、処理回路57に制御されて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧などを瞬時に変更可能な機能を有する。送信駆動電圧の変更機能は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
受信回路50bは、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波プローブ11が受信したエコー信号をケーブル12を介して受け、このエコー信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、エコー信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換し、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理されたエコー信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
本実施形態では、超音波プローブ11は3次元走査可能に構成される。このため、送信回路50aは、超音波プローブ11から被検体Pに対して3次元の超音波ビームを送信させることができる。また、受信回路50bは、超音波プローブ11が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成することができる。
Bモード処理回路51は、受信回路50bから反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
ドプラ処理回路52は、受信回路50bから受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
なお、本実施形態に係るBモード処理回路51およびドプラ処理回路52は、2次元の反射波データおよび3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理回路51は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成可能であるとともに、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成することも可能である。また、ドプラ処理回路52は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成することも可能であるし、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成することも可能である。
画像生成回路53は、たとえば被検体Pの食道Eの内部の所定位置に位置決めされた超音波プローブ11が受信した反射波にもとづいて超音波画像を生成する。すなわち、画像生成回路53は、Bモード処理回路51およびドプラ処理回路52が生成したデータから超音波画像を生成する。具体的には、画像生成回路53は、Bモード処理回路51が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像データを生成する。また、画像生成回路53は、ドプラ処理回路52が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、または、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像データを生成する。
ここで、画像生成回路53は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像を生成する。具体的には、画像生成回路53は、超音波プローブ11による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像を生成する。また、画像生成回路53は、超音波画像に対し、種々のパラメータの文字情報などを合成する。
さらに、本実施形態に係る画像生成回路53は、3次元の超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成回路53は、Bモード処理回路51が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のBモード画像データを生成することも可能である。また、画像生成回路53は、ドプラ処理回路52が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のカラードプラ画像データを生成することも可能である。
画像メモリ54は、画像生成回路53が生成した画像データを記憶する記憶回路である。また、画像メモリ54は、Bモード処理回路51やドプラ処理回路52が生成したデータを記憶してもよい。
タイマ55は、処理回路57により制御され、所定の時間をセットされて起動される。たとえば、タイマ55は、タイマ閾値Tthをセットされて起動されて計時開始後にタイマ閾値Tthだけ時間が経過すると、処理回路57に対してタイムアウト信号を出力し計時を停止する。
記憶回路56は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介した通信によりダウンロードされるように構成してもよい。
記憶回路56は、あらかじめ被検体Pの複数の断面位置の情報を記憶する。また、断面位置の情報が修正されると、あらかじめ記憶されていた断面位置の情報を修正後の断面位置の情報で更新し、この修正後の断面位置の情報を被検体Pの情報と関連付けて記憶する。僧帽弁を観察する場合には、断面位置の情報は、少なくとも僧帽弁を観察するための典型的なビューに対応する複数の角度(たとえば4つ)の設定情報(以下、角度設定情報という)を含む。以下の説明では、僧帽弁を観察するための典型的なビューに対応する角度設定情報が記憶回路56にあらかじめ記憶されている場合の例について示す。僧帽弁を観察するための典型的なビューに対応する4つの角度については、図6を用いて後述する。
また、記憶回路56は、タイマ閾値Tthを記憶しておいてもよい。また、記憶回路56は、超音波診断装置10を用いた検査が開始された際に最初にディスプレイ30に表示すべき画像の情報としての初期表示態様を記憶しておいてもよい。初期表示態様は、たとえば、複数の2次元超音波画像のそれぞれ、および4D超音波画像のいずれかから選択された1つの画像である。
処理回路57は、記憶回路56に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、ユーザにより調整された断面位置に対応する2次元超音波画像を容易に再表示するための処理を実行するプロセッサである。
表示処理回路58は、処理回路57により制御されて、ディスプレイ30および操作パネル20のディスプレイ23のそれぞれの表示領域を必要に応じて分割し、処理回路57から表示出力要求のあった画像を表示させる。
図3は、処理回路57のプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図である。図3に示すように、処理回路57のプロセッサは、設定機能61、画像出力機能62、更新機能63および切替機能64を実現する。これらの各機能61−64は、それぞれプログラムの形態で記憶回路56に記憶されている。
設定機能61は、被検体Pの複数の断面位置の1つを画像出力機能62に設定する。
画像出力機能62は、設定機能61により被検体Pの複数の断面位置の1つを設定され、設定された断面位置に対応するエコー信号にもとづく2次元超音波画像をディスプレイ30や操作パネル20のディスプレイ23に表示させる。以下の説明では、超音波画像がディスプレイ30に表示される場合の例について示す。
更新機能63は、ディスプレイ30に表示された2次元超音波画像に対応する断面位置がユーザにより操作パネル20を介して修正されると、修正された断面位置の情報と被検体Pの情報とを関連付けて記憶回路56に記憶させる。
切替機能64は、ディスプレイ30に表示させる超音波画像を、2次元超音波画像を含む複数の2次元超音波画像間で切り替えるよう、画像出力機能62を制御する
設定機能61は、切替部による切り替え先の画像が被検体Pの2次元超音波画像であると、被検体Pに関連付けられて記憶回路56に記憶された修正された断面位置を画像出力機能62に設定する。
次に、本実施形態に係る超音波診断装置10の動作の一例について説明する。
図4は、本実施形態に係る超音波プローブ11がTEE法により被検体Pの心臓Hの超音波画像を生成する際の様子の一例を示す説明図である。また、図5は図4のA部の拡大図である。
たとえば被検体Pの検査対象部位をTEE法で撮像する場合、ユーザは、超音波プローブ11を被検体Pの食道Eに挿入し、超音波プローブ11を食道Eや胃などの所定の位置に位置決めし、検査対象部位の2次元走査や3次元走査を行なう。以下の説明では、検査対象部位が心臓Hの僧帽弁である場合の例について示す(図5参照)。
図6(a)は、僧帽弁の典型的なビューと各ビューに対応する角度との関係の一例を示す説明図であり、(b)は、食道E、心臓H、超音波プローブ11および4腔断面の位置関係の一例を示す説明図である。
図6(a)に示すように、僧帽弁を観察するための典型的なビューとして、4腔断面の2次元超音波画像(以下、4chビューという)、交連の2次元超音波画像(以下、commissuralビューという)、2腔断面の2次元超音波画像(以下、2chビューという)、長軸断面の2次元超音波画像(以下、LAXビューという)などがある。これらのビューは、食道E内の所定の位置に位置決めされた超音波プローブ11と僧帽弁とを通る軸で互いに交差している。また、これらのビューは、4chビューの断面位置の角度をゼロ度とし、交差軸中心の回転角度で表わされることがある。たとえば、commissuralビューは45度、2chビューは90度、LAXビューは135度にそれぞれ対応する(図6(a)参照)。すなわち、角度調整が行われる前の初期角度は、4chビューがゼロ度、commissuralビューは45度、2chビューは90度、LAXビューは135度である。記憶回路56には、あらかじめこれらの初期角度設定情報が記憶される。
僧帽弁を観察する場合には、ビュー切り替え指示は、たとえばこれらの4つのビューのいずれかからから他のビューへとビューを切り替えるべき旨の指示である。たとえば、ユーザは、操作パネル20を介してこれらの4つのビューの1つを選択することにより、選択した1つのビューをディスプレイ30に表示させることができる。
図7は、2Dモードと4Dモードとを切り替えるモード切り替えについて説明するための図である。図7には、2Dモードにおいて2つのビューが表示される場合の例を示した。この例において、左側の2次元超音波画像は、ユーザにより選択された典型的なビューのいずれか1つであり、右側の2次元超音波画像は、左側のビューに付随して自動的に表示されるビューであって、たとえば左側のビューの角度に90度を加えたビューである。
超音波プローブ11として複数の超音波振動子が格子状に2次元で配置されたTEEプローブを用いる場合は、検査対象部位の3次元超音波画像が生成される。この場合、ユーザは、ビュー切り替えに加え、2Dモードと4Dモードとを切り替えるモード切り替えを行なうことができる。
4Dモードは、たとえば検査対象部位が僧帽弁である場合は、一般に大動脈が画面12時の方向にくるように表示される(図7の4Dモードの上部左寄りの切り欠き参照)。この4Dモードで表示される画像は、被検体Pに対して施術を行う外科医にとって直感的に理解しやすい画像である。このため、4Dモードは、Surgeonビューと呼ばれることがある。一方、外科医とともに検査に立ち会う内科医は、超音波プローブ11の位置決めを正確に行うために、2Dモードで表示される画像を繰り返し確認する。また、2Dモードは、施術の効果を確認する際に、たとえば血流の逆流を確認するためにカラードップラ画像などを表示するために利用される。また、2Dモードのほうが4Dモードよりもフレームレートが高い場合には、たとえば検査対象部位の小さな穴がふさがっているか否かを確認するためには、2Dモードで表示される画像が好適である。
このため、検査中には、モード切り替えによるモード遷移が頻繁に行われる。
図8(a)は、2chビューの角度が70度に修正された場合におけるディスプレイ30の表示例を示す説明図であり、(b)は、2chビューの角度が70度に修正された場合における断面位置を示す概念図である。
ここで、検査対象部位が観察しやすい断面は、検査対象部位の形状や食道の形状などに応じて異なるため、被検体Pに応じて異なる。このため、ユーザは、たとえば2chビューを表示させた後、検査対象部位がより観察しやすい画像となるように、2chビューの角度をたとえば90度から70度などに調整することがある。なお、図8(a)に示されたビューの角度の情報は、記憶回路56を参照して表示されるものでなくともよく、たとえば画像生成回路53が生成した現在の断面の角度の情報がそのまま表示されるものである。
しかし、調整された断面位置の情報は、表示画像を他のビューに切り替えると、失われてしまう場合がある。この場合、他のビューを表示させてから、もう一度自らが先ほど調整した70度のビューを表示させたい場合、ユーザは、また90度のビューを表示させてから角度調整を行わなければならず煩雑である。
また、モード切り替え可能な場合には、調整された断面位置の情報は、4Dモードに切り替えてもまた、失われてしまう場合がある。この場合、上記例でいえば、4Dモードからもう一度自らが先ほど調整した70度のビューを表示させたい場合もやはり、ユーザは、また90度のビューを表示させてから角度調整を行わなければならない。検査中には、モード切り替えによるモード遷移が頻繁に行われるため、モード切り替えするたびにビューの角度調整を行わなければならないのでは、ユーザの利便性を著しくそこなってしまう。
図9は、検査の行われるタイミングの一例を示す説明図である。図9に示すように、検査は術中に限られず、さまざまなタイミングで行われる。このすべてのタイミングにおいて、被検体Pにあわせて毎回ビューの角度調整を行なうことは煩雑にすぎる。
そこで、本実施形態に係る超音波診断装置10は、ディスプレイ30に表示された2次元超音波画像に対応する断面位置が修正されると、修正された断面位置の情報と被検体Pの情報とを関連付けて記憶回路56に記憶させておく。このため、ビュー切り替えやモード切り替えを経て、再度先ほどの2次元超音波画像を表示するための指示を受けた場合に、被検体Pに関連付けられた修正後の断面位置を記憶回路56から読み出して用いることができ、断面位置の再度の調整を必要としない。
図10(a)は、ビューの角度が修正された場合における表示画像の選択用画像の表示例を示す説明図であり、(b)は、ビューの角度が修正された場合における表示画像の選択用画像の他の表示例を示す説明図である。
また、図11は、記憶回路56に記憶された角度設定情報の一例を示す説明図である。図11において、数字の後ろの「U」はユーザにより修正された角度であることを示し、「A」はユーザにより修正された角度に応じて自動修正された角度であることを示す。
画像出力機能62は、切替機能64による切り替え対象となる複数の2次元超音波画像のそれぞれに対応する断面位置の情報を示す画像を、当該2次元超音波画像を表示させる選択を入力するためのソフトキーとともに、ディスプレイ30およびディスプレイ23の少なくとも一方に表示させる。たとえば、画像出力機能62は、検査対象部位が僧帽弁である場合は、4つの典型的なビューを表示させるためのソフトキーに各ビューに対応する角度を示す文字列を重畳してディスプレイ23に表示させる。切替機能64は、ソフトキーの1つが押下されると、当該ソフトキーに対応するビューをディスプレイ30に表示させる。
更新機能63は、1つのビューの角度がユーザにより修正されると、この修正された角度のみと被検体Pの情報とを関連付けて記憶回路56に記憶させてもよい。たとえば、図11の患者ID「yyy」の検査中に、4chのビューがユーザによりマイナス20度に修正された場合には、更新機能63は、この4chのビューの角度のみを更新してもよい(図11の患者ID「yyy」の「−20U」、患者ID「zzz」の「50U」、「95U」参照)。また、この場合、画像出力機能62は、表示画像の選択用画像に表示する角度を修正するとよい(図10(a)参照)。
また、更新機能63は、1つのビューの角度がユーザにより修正されると、さらに、この修正の程度に応じて、他のビューの角度をも自動修正して更新し、被検体Pの情報と関連付けて記憶回路56に記憶させてもよい。たとえば、図11の患者ID「xxx」の検査中に、4chのビューがユーザによりゼロ度から10度に修正された場合には、更新機能63は、この4chのビューの角度に加え、他のビューの角度を全てプラス10度するよう自動修正して更新してもよい(図11の患者ID「xxx」の「55A」等参照)。また、この場合も、画像出力機能62は、表示画像の選択用画像に表示する角度を修正するとよい(図10(b)参照)。
図10(a)および(b)に示すように、表示画像の選択用画像に表示する角度が更新されていれば、ユーザは、自らが修正した角度がしっかりと反映されていること確認できるとともに、ソフトキーの押下により、極めて容易に修正した角度のビューを再度表示することができる。
また、図11に示すように、更新機能63は、修正された角度設定情報を被検体Pの情報と関連付けて記憶回路56に記憶させておく。このため、被検体Pの検査中にビューの角度調整を行い、検査が一度終了した後に、被検体Pの予後検査などの検査が開始された場合にも、設定機能61は、被検体Pに関連付けられた修正された角度設定情報を記憶回路56から読み出して利用することができる。したがって、ユーザは角度の再調整を行なう必要なく、被検体Pに応じて修正した角度のビューを容易に再度表示させることができる。
また、修正された角度の情報は、図10に示したようにディスプレイ23に提示するほか、4Dモードを表示中のディスプレイ30に表示してもよい。
図12−14は、それぞれ4Dモードを表示中のディスプレイ30の部分領域に表示するビュー候補の第1−3例を示す図である。
画像出力機能62は、4Dモードにおいて、ディスプレイ30の部分領域をビュー候補の表示領域として利用してもよい。検査対象部位が僧帽弁である場合には、たとえば図6(a)に示す4つの典型的なビューがビュー候補となる。この場合、ビュー候補表示領域には、4つのビュー全てを並べて表示してもよいし、初期設定またはユーザ設定によって4つのビューの一部のビューを表示してもよい。全てのビューを並べて表示する場合は、ユーザは1つの画面から全てのビュー候補を確認することができる。一方、一部のビュー候補を表示する場合は、ビュー候補表示領域を狭くして4Dモードの表示領域を大きく取ることができる。図12、13、14には、それぞれ2つ、1つ、2つのビュー候補が表示される場合の例を示した。
また、ビュー候補として表示される画像は、3次元超音波画像を利用した画像でもよいし(図12参照)、模式的な解剖図を利用した画像でもよいし(図13参照)、2次元超音波画像を利用した画像でもよい。また、ビュー候補表示領域には、僧帽弁におけるビューの断面位置を示すマーカ(図14の2点鎖線参照)を表示してもよい。このとき、各マーカの近傍に各マーカに対応するビューを示す情報として4ch、2chなどを表示し、またビューの角度を示す文字列を表示しておくとよい。また、ビューの角度が修正されている場合は、マーカの位置も修正された角度に対応する位置とするとともに、ビューの角度を示す文字列も修正するとよい。
図15は、図3に示す処理回路57のプロセッサにより、ユーザにより調整された断面位置に対応する2次元超音波画像を容易に再表示する際の手順の一例を示すフローチャートである。図15において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。以下の説明では、検査対象部位が僧帽弁である患者が被検体Pである場合の例について示す。
まず、ステップS1において、設定機能61は、検査対象となる患者情報を取得する。
次に、ステップS2において、設定機能61は、記憶回路56に患者情報に関連付けられた角度設定情報があるか否かを判定する。図15に示す手順が過去に実行された場合は、すでに記憶回路56に患者情報に関連付けられた角度設定情報がある可能性がある。
記憶回路56に患者情報に関連付けられた角度設定情報がある場合には、設定機能61は、ステップS3で患者に応じた角度設定情報を取得し、ステップS5に進む。一方、記憶回路56に患者情報に関連付けられた角度設定情報がない場合は、設定機能61は、ステップS4で記憶回路56から初期角度設定情報を取得し、ステップS5に進む。
次に、ステップS5において、画像出力機能62は、記憶回路56に記憶された初期表示態様の情報を取得する。初期表示態様は、たとえば、4chなどの2Dビューのいずれか、および4Dビューのいずれかから選択された1つの画像である。そして、画像出力機能62は、初期表示態様にもとづいてディスプレイ30に超音波画像を表示する。
次に、ステップS6において、切替機能64は、現在4Dモードで表示中か否かを判定する。4Dモードではなく2Dモードである場合は、ステップS7に進む。一方、現在4Dモードで表示中である場合はステップS8に進む。
次に、ステップS7において、切替機能64は、4Dモードへの切り替え指示を受け付けたか否かを判定する。4Dモードへの切り替え指示を受け付けた場合は、ステップS8に進む。一方、4Dモードへの切り替え指示がなく2Dモードを継続すべき場合は、ステップS9に進む。
次に、ステップS8において、切替機能64は、2Dモードへの切り替え指示を受け付けたか否かを判定する。2Dモードへの切り替え指示を受け付けた場合は、ステップS9に進む。一方、2Dモードへの切り替え指示がなく4Dモードを継続すべき場合は、ステップS12に進む。
次に、ステップS9において、設定機能61は、2Dモードで表示するビューの現在の角度設定情報を記憶回路56から取得する。次に、ステップS10において、設定機能61は、取得した角度情報を用いて、ビューを表示する。
次に、ステップS11において、更新機能63は、表示中のビューの角度設定情報の更新処理を行なう。
次に、ステップS12において、画像出力機能62は、現在の角度設定情報に応じた各ビューの角度の情報を、操作パネル20のディスプレイ23に表示する(図10(a)および(b)参照)。また、ステップS8からこのステップS12に遷移した場合、すなわち4Dモードの場合は、現在の角度設定情報に応じた各ビューの角度の情報を、さらにディスプレイ30にも表示する(図12−14のビュー候補表示領域参照)。
次に、ステップS13において、切替機能64は、ビュー切り替え指示を受け付けたか否かを判定する。ビュー切り替え指示は、たとえばユーザによりタッチパネル21を介して行われる(図10(a)および(b)参照)。ビュー切り替え指示があった場合は、ステップS9に戻る。一方、ビュー切り替え指示がない場合は、終了判定を行い(ステップS14)、検査を終了すべきでない場合は、ステップS6にもどる。一方、ユーザにより検査を終了すべき旨の指示があった場合など終了すべき場合は一連の手順は終了となる。
以上の手順により、ユーザにより調整された断面位置に対応する2次元超音波画像を容易に再表示することができる。たとえば、ステップS13からステップS9に遷移した場合であって、ステップS11において角度が更新されている場合には、ステップS10では更新後の角度情報を用いてビューが表示されることになる。
図16は、図15のステップS11で更新機能63により実行される、表示中のビューの角度設定情報の更新処理の一例を示すサブルーチンフローチャートである。
ステップS21において、更新機能63は、表示中のビューの角度の修正指示をユーザから受け付け、画像出力機能62に修正後の角度でビューを表示させる。
次に、ステップS22において、更新機能63は、角度が修正されてからタイマ閾値Tthだけ時間が経過したか否かを判定する。この判定は、たとえばタイマ55のタイムアウト信号を用いて行なうことができる。タイマ閾値Tth以上時間が経過した場合は、ステップS23において更新機能63は、表示中のビューの角度設定情報を修正後の角度設定情報で更新し、被検体Pの情報と関連付けて記憶回路56に記憶させ(図11参照)、図15のステップS12に進む。一方、角度が修正されてからの経過時間がタイマ閾値Tthに満たない場合は、図15のステップS12に進む。
図16に示す手順によれば、ユーザによりビューの角度が修正されてから所定のタイマ閾値Tthの時間が経過した場合に、自動的に記憶回路56に修正後の角度設定情報を被検体Pの情報と関連付けて記憶させることができる。
また、図16に示す更新処理において、ユーザによる更新の確認ステップを追加してもよい。たとえば、角度が修正されてから所定のタイマ閾値Tthの時間が経過した場合に、ディスプレイ30やディスプレイ23に角度設定情報を更新してもよいかを確認するための確認画像を表示し、ユーザにより操作パネル20を介して更新してよい旨の許可指示があった場合にのみ、修正後の角度設定情報を被検体Pの情報と関連付けて記憶回路56に記憶させるようにしてもよい。
また、ユーザによる更新の確認ステップは、図16のステップS22およびS23にかえて実行されてもよい。すなわち、ユーザが手動で操作パネル20を介して指示した場合にのみ、修正後の角度設定情報を被検体Pの情報と関連付けて記憶回路56に記憶させるようにしてもよい。
本実施形態に係る超音波診断装置10は、修正された角度設定情報を被検体Pの情報と関連付けて記憶回路56に記憶させておく。このため、ユーザは、ビュー切り替えやモード切り替えによって、角度を修正したビューから他の画像に表示画像を切り替えたあとであっても、修正した角度のビュー、すなわちユーザが見たいと思う方向から見た画像を極めて容易かつ瞬時に再度表示することができる。このため、ユーザは、検査時間を大幅に短縮することができる。また、検査時間の短縮により、たとえば食道Eに超音波プローブ11を挿入される被検体Pに与えてしまう苦痛を低減することができる。
また、本実施形態に係る超音波診断装置10は、被検体Pの検査中にビューの角度調整を行い、検査が一度終了した後場合にも、修正された角度設定情報は被検体Pの情報と関連付けて記憶回路56に記憶されている。このため、超音波診断装置10によれば、被検体Pの予後検査などの検査が開始された場合にも、被検体Pに関連付けられた修正された角度設定情報を記憶回路56から読み出して利用することができる。したがって、ユーザは角度の再調整を行なう必要なく、被検体Pに応じて修正した角度のビューを容易に再度表示させることができる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、ユーザにより調整された断面位置に対応する2次元超音波画像を容易に再表示することができる。
なお、本実施形態における処理回路57の設定機能61、画像出力機能62、更新機能63および切替機能64は、特許請求の範囲における設定部、画像出力部、更新部および切替部にそれぞれ対応する。また、本実施形態におけるタッチパネル21のタッチ入力回路24およびハードキー22は、特許請求の範囲における入力回路に対応する。
また、上記実施形態に係る「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。
また、記憶回路にプログラムを保存するかわりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成してもよい。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで各種機能を実現する。また、上記実施形態では単一の処理回路が各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶媒体は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶回路が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
また、本発明の実施形態では、フローチャートの各ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理の例を示したが、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別実行される処理をも含むものである。