JP2010234013A - 超音波診断装置及び超音波診断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被検体内の音速値(環境音速)を高精度で算出することが可能な超音波診断装置及び超音波診断方法を提供する。
【解決手段】格子点X(x,z)=(0,0)における音速値をV(0)、音速の変化率をkとすると、領域Aにおける音速V(z)は、V(z)=V(0)+k×zにより表される。格子点Xから出射角をθ0で出射される超音波が境界面S1上の格子点Anに到達するまでの伝播時間Tを求めることにより、領域Aにおける超音波の遅延が求められる。局所音速値に基づいて求めた格子点Xからの仮想的な受信波WXと上記遅延を掛けた格子点Xからの仮想的な合成受信波WSUM比較することにより、領域Aにおける環境音速を求めることができる。
【選択図】図3
【解決手段】格子点X(x,z)=(0,0)における音速値をV(0)、音速の変化率をkとすると、領域Aにおける音速V(z)は、V(z)=V(0)+k×zにより表される。格子点Xから出射角をθ0で出射される超音波が境界面S1上の格子点Anに到達するまでの伝播時間Tを求めることにより、領域Aにおける超音波の遅延が求められる。局所音速値に基づいて求めた格子点Xからの仮想的な受信波WXと上記遅延を掛けた格子点Xからの仮想的な合成受信波WSUM比較することにより、領域Aにおける環境音速を求めることができる。
【選択図】図3
Description
本発明は超音波診断装置及び超音波診断方法に係り、特に超音波を用いて被検体の超音波画像を撮影して表示する超音波診断装置及び超音波診断方法に関する。
従来、超音波を用いて被検体内の任意の診断部位における音速値を測定する試みがなされている。例えば、送信用と受信用の2個の振動子を向かい合わせて配置し、振動子間の距離と超音波の伝播時間から被検体内における音速値を求める方法や、所定の距離間隔で配置された2組の振動子をそれぞれ送信用・受信用として、振動子間の超音波の伝播時間と送波・受波角度と各組の振動子間の距離とから超音波の伝播速度を求める方法が提案されている。
特許文献1には、操作者が操作入力装置から入力した超音波音速値に対応するフォーカスで超音波を送受信して、操作者が画像表示器に表示される超音波画像を見ながら最もフォーカスの合う超音波音速値を選ぶ超音波断層装置が開示されている。
また、特許文献2には、下記のような局所音速値の測定方法が開示されている。特許文献2では、送波振動子から被検体内に出射角度を変えながら超音波を送波し、受波振動子により入射角度を変えながら受波して、送波から受波までの経過時間をすべてメモリに格納しておく。次に、仮想的な音速分布を設定し、その音速分布に基づいて各出射角度・入射角度ごとに経過時間を計算する。そして、経過時間の計算値と実測値の差が最小になるように仮想的な音速分布を修正し、最終的に得られた音速分布によって被検体内の音速値を求める。
音速値が一定の媒質からなる被検体OBJ1内の音速値Vは下記のようにして算出することができる。図8(a)に示すように、被検体OBJ1内の反射点(領域)X1ROIから超音波探触子300Aまでの距離をLとすると、反射点X1ROIで超音波が反射されてから反射点X1ROIの直下の素子302A0で受信されるまでの経過時間Tは、T=L/Vである。素子302A0からX方向(素子302Aの配列方向)に距離X離れた位置にある素子302Aiで受信されるまで経過時間をT+ΔTとすると、素子302A0と302Aiとの間の遅延時間ΔTは下記の式(A)により表される。
従って、超音波が送波されて反射点X1ROIで時間T後に反射された後、各素子により受信されるまでの経過時間[2T,2T+ΔT]を測定することにより、反射点X1R
OIまでの距離Lと速度Vを一意に求めることができる。
OIまでの距離Lと速度Vを一意に求めることができる。
なお、反射点X1ROIからの超音波が明確に判別できる場合には、位置関係が既知の異なる2素子において測定された経過時間からLとVを求めることができる。しかしながら、一般に各素子302Aから出力される超音波検出信号は無数の反射点からの信号が干渉した結果であり、特定の反射点からの信号のみを弁別することが困難である。このため、実際には、反射点X1ROI近傍の着目領域における再構築画像の空間周波数、シャープネス及びコントラストから、反射点X1ROIまでの距離L、遅延時間ΔT及び音速値Vを一意に求めることとなる。
上記のように、被検体内の音速が一定の場合には、音速値を求めることが可能であるが、図8(b)に示す被検体OBJ2のように、内部の音速が一定でない場合には、上記の方法では、反射点(領域)X2ROIまでの距離L及び音速値V,V´を求めることは困難である。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、被検体内の音速値(環境音速)を高精度で算出することが可能な超音波診断装置及び超音波診断方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る超音波診断装置は、超音波を被検体に送信するとともに、該被検体によって反射される超音波を受信して超音波検出信号を出力する複数の超音波トランスデューサを含む超音波探触子と、前記超音波検出信号に基づいて、前記被検体内の着目領域の浅い側の境界面に配置された格子点と、前記着目領域内の着目格子点における最適音速値を判定する最適音速値判定手段と、前記着目格子点における最適音速値に基づいて、前記超音波を前記着目格子点に送信したときに前記着目格子点から受信される受信波を演算する受信波演算手段と、前記着目領域において音速が線型に変化すると仮定して、前記着目格子点から出射した超音波が、前記格子点よりも浅い領域に設定された複数の格子点に到着するまでの伝播時間を算出し、前記伝播時間と前記複数の格子点における最適音速値に基づいて、前記超音波を前記着目格子点に送信したときに前記複数の格子点から受信される受信波を求め、前記複数の格子点の受信波を合成して合成受信波を算出する合成受信波演算手段と、前記受信波と前記合成受信波に基づいて前記着目格子点における局所音速値と前記着目領域における音速の変化率を求めて、前記着目格子点における局所音速値と前記着目領域における音速の変化率から前記着目領域における環境音速を求める環境音速演算手段とを備える。
上記第1の態様によれば、被検体内の音速場が不均一な場合に、着目格子点を含む着目領域を音速が線型に変化する音速場と近似することにより、着目格子点における局所音速値及び着目領域における音速の変化率を求めることができる。これにより、被検体内の着目領域の音速値(環境音速)を高精度で算出することができる。
本発明の第2の態様に係る超音波診断装置は、上記第1の態様において、前記環境音速演算手段が、前記受信波と前記合成受信波の間の誤差が最小になる合成受信波から前記着目領域における環境音速を求めるようにしたものである。
本発明の第3の態様に係る超音波診断装置は、上記第1の態様において、前記着目格子点と前記超音波探触子との間の領域を、前記被検体の深さ方向に垂直な境界面で分割される複数の領域に分割し、前記合成受信波演算手段による浅い方の領域から順に前記合成受信波の演算と、前記環境音速演算手段による前記合成受信波に基づいて前記環境音速を求める処理とを繰り返し実行することにより、前記着目領域における環境音速を求めるようにしたものである。
上記第3の態様によれば、被検体内の浅い層から順に局所音速値を判定することにより、被検体内の着目領域における音速値(環境音速)を高精度で判定することができる。
本発明の第4の態様に係る超音波診断装置は、上記第1の態様において、前記合成受信波演算手段が、前記着目領域において音速が線型変化する線型変化軸を変化させて、前記線型変化軸ごとに前記合成受信波を算出し、前記環境音速演算手段が、前記線型変化軸ごとに前記合成受信波のうち、前記受信波との誤差が最小になる合成受信波から前記着目領域における環境音速を求めるようにしたものである。
上記第4の態様によれば、音速が線型変化する線型変化軸を被検体の深さ方向に対して傾けて繰り返し求めて、得られる合成受信波を比較することにより、環境音速の判定精度をより高めることができる。
本発明の第5の態様に係る超音波診断装置は、上記第1から第3の態様において、前記環境音速の判定結果を表示する表示手段を更に備える。
本発明の第6の態様に係る超音波診断装置は、上記第5の態様において、前記超音波検出信号に基づいて、前記受信波の振幅を点の輝度により表す振幅画像を作成する振幅画像作成手段を更に備え、前記表示手段が、前記環境音速を、前記振幅画像に重畳させるか、又は前記振幅画像と並べて表示するようにしたものである。
本発明の第7の態様に係る超音波診断装置は、上記第5の態様において、前記超音波検出信号に基づいて、前記超音波エコーの振幅を点の輝度により表す振幅画像を作成する振幅画像作成手段を更に備え、前記表示手段が、前記振幅画像の輝度又は色を変化させることにより、前記環境音速を表示するようにしたものである。
本発明の第8の態様に係る超音波診断装置は、上記第6又は第7の態様において、前記振幅画像を単独で表示する第1の表示モードと、前記環境音速を表示する第2の表示モードとの間で表示モードを切り替える表示モード切替手段を更に備える。
本発明の第9の態様に係る超音波診断方法は、超音波を被検体に送信するとともに、該被検体によって反射される超音波を受信して超音波検出信号を出力する複数の超音波トランスデューサを含む超音波探触子から出力される前記超音波検出信号に基づいて、前記被検体内の着目領域の浅い側の境界面に配置された格子点と、前記着目領域内の着目格子点における最適音速値を判定する最適音速値判定工程と、前記着目格子点における最適音速値に基づいて、前記超音波を前記着目格子点に送信したときに前記着目格子点から受信される受信波を演算する受信波演算工程と、前記着目領域において音速が線型に変化すると仮定して、前記着目格子点から出射した超音波が、前記格子点よりも浅い領域に設定された複数の格子点に到着するまでの伝播時間を算出し、前記伝播時間と前記複数の格子点における最適音速値に基づいて、前記超音波を前記着目格子点に送信したときに前記複数の格子点から受信される受信波を求め、前記複数の格子点の受信波を合成して合成受信波を算出する合成受信波演算工程と、前記受信波と前記合成受信波に基づいて前記着目格子点における局所音速値と前記着目領域における音速の変化率を求めて、前記着目格子点における局所音速値と前記着目領域における音速の変化率から前記着目領域における環境音速を求める環境音速演算工程とを備える。
本発明の第10の態様に係る超音波診断方法は、上記第9の態様の前記環境音速演算工程において、前記受信波と前記合成受信波の間の誤差が最小になる合成受信波から前記着目領域における環境音速を求めるようにしたものである。
本発明の第11の態様に係る超音波診断方法は、上記第9の態様において、前記着目格子点と前記超音波探触子との間の領域を、前記被検体の深さ方向に垂直な境界面で分割される複数の領域に分割し、前記合成受信波演算工程による浅い方の領域から順に前記合成受信波の演算と、前記環境音速演算工程による前記合成受信波に基づいて前記環境音速を求める処理とを繰り返し実行することにより、前記着目領域における環境音速を求めるようにしたものである。
本発明の第12の態様に係る超音波診断方法は、上記第9の態様の前記合成受信波演算工程において、前記着目領域において音速が線型変化する線型変化軸を変化させて、前記線型変化軸ごとに前記合成受信波を算出し、前記環境音速演算工程において、前記線型変化軸ごとに前記合成受信波のうち、前記受信波との誤差が最小になる合成受信波から前記着目領域における環境音速を求めるようにしたものである。
本発明によれば、被検体内の音速場が不均一な場合に、着目格子点を含む着目領域を音速が線型に変化する音速場と近似することにより、着目格子点における局所音速値及び着目領域における音速の変化率を求めることができる。これにより、被検体内の着目領域の音速値(環境音速)を高精度で算出することができる。
以下、添付図面に従って本発明に係る超音波診断装置及び超音波診断方法の好ましい実施の形態について説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
図1に示す超音波診断装置10は、超音波探触子300から被検体OBJに超音波ビームを送信して、被検体OBJによって反射された超音波ビーム(超音波エコー)を受信し、超音波エコーの検出信号から超音波画像を作成・表示する装置である。
CPU(Central Processing Unit)100は、操作入力部200からの操作入力に応じて超音波診断装置10の各ブロックの制御を行う。
操作入力部200は、オペレータからの操作入力を受け付ける入力デバイスであり、操作卓202とポインティングデバイス204とを含んでいる。操作卓202は、文字情報(例えば、患者情報)の入力を受け付けるキーボードと、振幅画像(Bモード画像)を単独で表示するモードと、被検体OBJ内の音速値(環境音速及び局所音速値)の判定結果を表示するモードとの間で表示モードを切り替える表示モード切り替えボタンと、ライブモードとフリーズモードとの切り替えを指示するためのフリーズボタンと、シネメモリ再生を指示するためのシネメモリ再生ボタンと、超音波画像の解析・計測を指示するための解析・計測ボタンとを含んでいる。ポインティングデバイス204は、表示部104の画面上における領域の指定の入力を受け付けるデバイスであり、例えば、トラックボール又はマウスである。なお、ポインティングデバイス204としては、タッチパネルを用いることも可能である。
格納部102は、CPU100に超音波診断装置10の各ブロックの制御を制御するための制御プログラムが格納する記憶装置であり、例えば、ハードディスク又は半導体メモリである。
表示部104は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ又は液晶ディスプレイであり、超音波画像(動画及び静止画)の表示、及び各種の設定画面を表示する。
超音波探触子300は、被検体OBJに当接させて用いるプローブであり、1次元又は2次元のトランスデューサアレイを構成する複数の超音波トランスデューサ302を備えている。超音波トランスデューサ302は、送信回路402から印加される駆動信号に基づいて超音波ビームを被検体OBJに送信するとともに、被検体OBJから反射される超音波エコーを受信して検出信号を出力する。
超音波トランスデューサ302は、圧電性を有する材料(圧電体)の両端に電極が形成されて構成された振動子を含んでいる。上記振動子を構成する圧電体としては、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb (lead) zirconate titanate)のような圧電セラミック、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinylidene difluoride)のような高分子圧電素子を用いることができる。上記振動子の電極に電気信号を送って電圧を印加すると圧電体が伸縮し、この圧電体の伸縮により各振動子において超音波が発生する。例えば、振動子の電極にパルス状の電気信号を送るとパルス状の超音波が発生し、振動子の電極に連続波の電気信号を送ると連続波の超音波が発生する。そして、各振動子において発生した超音波が合成されて超音波ビームが形成される。また、各振動子により超音波が受信されると、各振動子の圧電体が伸縮して電気信号を発生する。各振動子において発生した電気信号は、超音波の検出信号として受信回路404に出力される。
なお、超音波トランスデューサ302としては、超音波変換方式の異なる複数種類の素子を用いることも可能である。例えば、超音波を送信する素子として上記圧電体により構成される振動子を用いて、超音波を受信する素子として光検出方式の超音波トランスデューサを用いるようにしてもよい。ここで、光検出方式の超音波トランスデューサとは、超音波信号を光信号に変換して検出するものであり、例えば、ファブリーペロー共振器又はファイバブラッググレーティングである。
次に、ライブモード時における超音波診断処理について説明する。ライブモードは、被検体OBJに超音波探触子300を当接させて超音波の送受信を行うことによって得られた超音波画像(動画)の表示、解析・計測を行うモードである。
超音波探触子300が被検体OBJに当接されて、操作入力部200からの指示入力により超音波診断が開始されると、CPU100は、送受信部400に制御信号を出力して、超音波ビームの被検体OBJへの送信、及び被検体OBJからの超音波エコーの受信を開始させる。CPU100は、超音波トランスデューサ302ごとに超音波ビームの送信方向と超音波エコーの受信方向とを設定する。
更に、CPU100は、超音波ビームの送信方向に応じて送信遅延パターンを選択するとともに、超音波エコーの受信方向に応じて受信遅延パターンを選択する。ここで、送信遅延パターンとは、複数の超音波トランスデューサ302から送信される超音波によって所望の方向に超音波ビームを形成するために駆動信号に与えられる遅延時間のパターンデータであり、受信遅延パターンとは、複数の超音波トランスデューサ302によって受信される超音波によって所望の方向からの超音波エコーを抽出するために検出信号に与えられる遅延時間のパターンデータである。上記送信遅延パターン及び受信遅延パターンは予め格納部102に格納されている。CPU100は、格納部102に格納されているものの中から送信遅延パターン及び受信遅延パターンを選択し、選択した送信遅延パターン及び受信遅延パターンに従って、送受信部400に制御信号を出力して超音波の送受信制御を行う。
送信回路402は、CPU100からの制御信号に応じて駆動信号を生成して、該駆動信号を超音波トランスデューサ302に印加する。このとき、送信回路402は、CPU100によって選択された送信遅延パターンに基づいて、各超音波トランスデューサ302に印加する駆動信号を遅延させる。ここで、送信回路402は、複数の超音波トランスデューサ302から送信される超音波が超音波ビームを形成するように、各超音波トランスデューサ302に駆動信号を印加するタイミングを調整する(遅延させる)。なお、複数の超音波トランスデューサ302から一度に送信される超音波が被検体OBJの撮像領域全体に届くように、駆動信号を印加するタイミングを調節するようにしてもよい。
受信回路404は、各超音波トランスデューサ302から出力される超音波検出信号を受信して増幅する。上記のように、各超音波トランスデューサ302と被検体OBJ内の超音波反射源との間の距離がそれぞれ異なるため、各超音波トランスデューサ302に反射波が到達する時間が異なる。受信回路404は遅延回路を備えており、CPU100によって選択された受信遅延パターンに基づいて設定される音速又は音速の分布に従って、反射波の到達時刻の差(遅延時間)に相当する分、各検出信号を遅延させる。次に、受信回路404は、遅延時間を与えた検出信号を整合加算することにより受信フォーカス処理を行う。超音波反射源XROIと異なる位置に別の超音波反射源がある場合には、別の超音波反射源からの超音波検出信号は到達時刻が異なるので、上記加算回路で加算することにより、別の超音波反射源からの超音波検出信号の位相が打ち消し合う。これにより、超音波反射源XROIからの受信信号が最も大きくなり、フォーカスが合う。上記受信フォーカス処理によって、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号(以下、RF信号という。)が形成される。
A/D変換器406は、受信回路404から出力されるアナログのRF信号をデジタルRF信号(以下、RFデータという。)に変換する。ここで、RFデータは、受信波(搬送波)の位相情報を含んでいる。A/D変換器406から出力されるRFデータは、信号処理部502とシネメモリ602にそれぞれ入力される。
シネメモリ602は、A/D変換器406から入力されるRFデータを順次格納する。また、シネメモリ602は、CPU100から入力されるフレームレートに関する情報(例えば、超音波の反射位置の深度、走査線の密度、視野幅を示すパラメータ)を上記RFデータに関連付けて格納する。
信号処理部502は、上記RFデータに対して、STC(Sensitivity Time gain Control)によって、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正をした後、包絡線検波処理を施し、Bモード画像データ(超音波エコーの振幅を点の明るさ(輝度)により表した画像データ)を生成する。
信号処理部502によって生成されたBモード画像データは、通常のテレビジョン信号の走査方式と異なる走査方式によって得られたものである。このため、DSC(Digital Scan Converter)504は、上記Bモード画像データを通常の画像データ(例えば、テレビジョン信号の走査方式(NTSC方式)の画像データ)に変換(ラスター変換)する。画像処理部506は、DSC504から入力される画像データに、各種の必要な画像処理(例えば、階調処理)を施す。
画像メモリ508は、画像処理部506から入力される画像データを格納する。D/A変換器510は、画像メモリ508から読み出された画像データをアナログの画像信号に変換して表示部104に出力する。これにより、超音波探触子300によって撮影された超音波画像(動画)が表示部104に表示される。
なお、本実施形態では、受信回路404において受信フォーカス処理が施された検出信号をRF信号としたが、受信フォーカス処理が施されていない検出信号をRF信号としてもよい。この場合、複数の超音波トランスデューサ302から出力される複数の超音波検出信号が、受信回路404において増幅され、増幅された検出信号、即ち、RF信号が、A/D変換器406においてA/D変換されることによってRFデータが生成される。そして、上記RFデータは、信号処理部502に供給されるとともに、シネメモリ602に格納される。受信フォーカス処理は、信号処理部502においてデジタル的に行われる。
次に、シネメモリ再生モードについて説明する。シネメモリ再生モードは、シネメモリ602に格納されているRFデータに基づいて超音波診断画像の表示、解析・計測を行うモードである。
操作卓202のシネメモリ再生ボタンが押下されると、CPU100は、超音波診断装置10の動作モードをシネメモリ再生モードに切り替える。シネメモリ再生モード時には、CPU100は、オペレータからの操作入力により指定されたRFデータの再生をシネメモリ再生部604に指令する。シネメモリ再生部604は、CPU100からの指令に従って、シネメモリ602からRFデータを読み出して、画像信号生成部500の信号処理部502に送信する。シネメモリ602から送信されたRFデータは、信号処理部502、DSC504及び画像処理部506において所定の処理(ライブモード時と同様の処理)が施されて画像データに変換された後、画像メモリ508及びD/A変換器510を経て表示部104に出力される。これにより、シネメモリ602に格納されたRFデータに基づく超音波画像(動画又は静止画)が表示部104に表示される。
ライブモード又はシネメモリ再生モード時において、超音波画像(動画)が表示されているときに操作卓202のフリーズボタンが押下されると、フリーズボタン押下時に表示されている超音波画像が表示部104に静止画表示される。これにより、オペレータは、着目領域(ROI:Region of Interest)の静止画を表示させて観察することができる。
操作卓202の計測ボタンが押下されると、オペレータからの操作入力により指定された解析・計測が行われる。データ解析計測部106は、各動作モード時に計測ボタンが押下された場合に、A/D変換器406又はシネメモリ602から、画像処理が施される前のRFデータを取得し、当該RFデータを用いてオペレータ指定の解析・計測(例えば、組織部の歪み解析(硬さ診断)、血流の計測、組織部の動き計測、又はIMT(内膜中膜複合体厚:Intima-Media Thickness)値計測)を行う。データ解析計測部106による解析・計測結果は、画像信号生成部500のDSC504に出力される。DSC504は、データ解析計測部106による解析・計測結果を超音波画像の画像データに挿入して表示部104に出力する。これにより、超音波画像と解析・計測結果とが表示部104に表示される。
また、表示モード切り替えボタンが押下されると、Bモード画像を単独で表示するモード、Bモード画像に音速値の判定結果を重畳して表示するモード(例えば、音速値に応じて色分け又は輝度を変化させる表示、又は音速値が等しい点を線で結ぶ表示)、Bモード画像と音速値の判定結果の画像を並べて表示するモードの間で表示モードが切り替わる。これにより、オペレータは、音速値の判定結果を観察することで、例えば、病変を発見することができる。
なお、音速値の判定結果に基づいて、送信フォーカス処理及び受信フォーカス処理の少なくとも一方を施すことにより得られたBモード画像を表示部104に表示してもよい。
[環境音速の演算処理]
図2は、本発明の第1の実施形態に係る音速値の演算処理を模式的に示す図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る音速値の演算処理を模式的に示す図である。
以下の説明では、超音波探触子300の素子面に平行な方向をX方向とし、x方向に垂直な方向(被検体OBJの深さ方向)をz方向とする。また、超音波探触子300に近づく向きを+z方向とする。
図2(b)に示すように、被検体OBJ内の着目領域ROIを代表する格子点Xと超音波探触子300の素子面S2との間の領域を領域AとBに分ける。領域Aは、格子点Xを含む領域であり、領域Bは領域Aよりも浅い(即ち、超音波トランスデューサ302に近い)領域とする。領域AとBの境界面S1に、格子点Xよりも浅い位置にx方向に等間隔で配置された格子点をA0,A1,…,An,…,A−1,…とする。
本実施形態では、格子点Xと格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…の間の領域Aは音速が線型に変化する音速場であり、領域Bは音速が一様な音速場と仮定する。そして、ホイヘンスの原理により、格子点Xからの受信波WXと格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…からの受信波を仮想的に合成した受信波WSUMが一致することを利用して、格子点Xにおける局所音速値V(0)と、領域Aにおける音速の変化率kを求め、領域A内における音速(環境音速)を求める。
ここで、格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…の範囲及び個数は予め決めておく。格子点の範囲が広いと局所音速値の誤差が大きくなり、狭いと仮想受信波との誤差が大きくなるため、格子点の範囲はこれらの兼ね合いで決める。
格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…のX方向の間隔は、分解能と処理時間の兼ね合いで決定される。格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…のX方向の間隔は、一例で1mmから1cmである。
格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…のY方向の間隔が狭いと誤差計算における誤差が大きくなり、広いと局所音速値の誤差が大きくなる。格子点Xと格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…のz方向の間隔は、超音波画像の画像分解能の設定に基づいて決定される。上記z方向の間隔は、一例で1cmである。
なお、格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…の間隔が広い場合、合成波の演算(後述)が困難になるため、補間によって細かい格子点を生成するようにすればよい。
図3は、音速が線型に変化する音速場を模式的に示す図である。
本実施形態では、図3に示すように、被検体OBJ内の格子点Xと境界面S1との間の領域Aにおいて、音速が線型に変化すると近似する。具体的には、領域Aにおける音速が深さzの1次関数により表されると仮定する。
格子点X(x,z)=(0,0)における音速値をV(0)、音速の変化率をkとすると、領域Aにおける音速V(z)は、下記の式(1)により表される。
V(z)=V(0)+k×z …(1)
格子点Xから出射角をθ0で出射され、領域A内を伝播する超音波の音線Lがz軸となす角をθとすると、スネル(Snell)の法則から下記の式(2)が得られる。
格子点Xから出射角をθ0で出射され、領域A内を伝播する超音波の音線Lがz軸となす角をθとすると、スネル(Snell)の法則から下記の式(2)が得られる。
V(0) / sin(θ0) = V(z) / sin(θ) …(2)
式(2)に式(1)を代入してzについて解くと下記の式(3)が得られる。
式(2)に式(1)を代入してzについて解くと下記の式(3)が得られる。
z = V(0) / k×((sin(θ) - sin(θ0)) / sin(θ0)) …(3)
式(3)をθで微分すると下記の式(4)が得られる。
式(3)をθで微分すると下記の式(4)が得られる。
dz = V(0) / k×(cos(θ) / sin(θ0))×dθ …(4)
また、式(4)とdx=dz×tanθから下記の式(5)が得られる。
また、式(4)とdx=dz×tanθから下記の式(5)が得られる。
dx = dz×tanθ = V(0) / k×(sin(θ) / sin(θ0))×dθ …(5)
格子点Xから出射角をθ0で出射される超音波が境界面S1上の格子点Anに到達するまでの伝播時間Tは下記の式(6)により表される。ここで、θnは、格子点An(Xn,Zn)において超音波の音線Lとz軸のなす角である。
格子点Xから出射角をθ0で出射される超音波が境界面S1上の格子点Anに到達するまでの伝播時間Tは下記の式(6)により表される。ここで、θnは、格子点An(Xn,Zn)において超音波の音線Lとz軸のなす角である。
式(6)の積分演算を実行することにより、下記の式(7)が得られる。
T = 1 / k×(log(tan(θn / 2)) - log(tan(θ0 / 2)));(但し、θn< π)…(7)
式(7)において、θn及びθ0が未知数である。以下、音線Lが格子点X及び点Anを通る条件に基づいて未知数θn及びθ0を求める。
式(7)において、θn及びθ0が未知数である。以下、音線Lが格子点X及び点Anを通る条件に基づいて未知数θn及びθ0を求める。
式(4)を格子点X(0,0)から点(x,z)まで積分すると、下記の式(8)が得られる。
z = V(0)×sin(θ) / k / sin(θ0) - V(0)/k …(8)
同様に、式(5)を格子点X(0,0)から点A(x,z)まで積分すると、下記の式(9)が得られる。
同様に、式(5)を格子点X(0,0)から点A(x,z)まで積分すると、下記の式(9)が得られる。
x = - V(0)×cos(θ) / k / sin(θ0) + V(0) / k / tan(θ0) …(9)
上記の式(8)及び(9)から音線L(x,z)は、中心(x,z)=(V(0)/k/tan(θ0),−V(0)/k)、半径V(0)/k/sin(θ0)の円弧の軌跡を描くことが分かる。
上記の式(8)及び(9)から音線L(x,z)は、中心(x,z)=(V(0)/k/tan(θ0),−V(0)/k)、半径V(0)/k/sin(θ0)の円弧の軌跡を描くことが分かる。
音線L(x,z)は、格子点An(Xn,Zn)を通り、格子点Anにおいて超音波の音線Lとz軸のなす角がθnである。式(8)及び(9)に、(x、z)=(Xn,Zn)、θ=θnを代入して、θ0について解くと、下記の式(10)が得られる。
θ0= arctan(2×Xn×V(0) / (k×Zn 2+ 2×V(0)×Zn + k×Xn 2)) …(10)
また、式(8)から(10)をθnについて解くと、下記の式(11)が得られる。
また、式(8)から(10)をθnについて解くと、下記の式(11)が得られる。
θn= arctan(2×Xn×(k×Zn+ V(0)) / (k×Zn 2 + 2×V(0)×Zn - k×Xn 2))…(11)
式(10)及び(11)のθ0とθnを式(7)に代入することにより、格子点Xから出射角をθ0で出射される超音波が境界面S1上の格子点Anに到達するまでの伝播時間Tを求めることができる。
式(10)及び(11)のθ0とθnを式(7)に代入することにより、格子点Xから出射角をθ0で出射される超音波が境界面S1上の格子点Anに到達するまでの伝播時間Tを求めることができる。
なお、θ0が0の場合の伝播時間、即ち、格子点Xと深さ方向(z方向)に並ぶ格子点A0(0,Zn)に超音波が到達するまでの伝播時間Tは、式(7)の代わりに下記の式(12)及び(13)を用いることにより求めることができる。
T = 1 / k×(log(V(0)+k×Zn) - log(V(0))) …(13)
なお、格子点Xを発した音波が格子点Anに到着するまでの伝播時間を求める代わりに、格子点Anを発した音波が格子点Xに到着するまでの伝播時間を求めても同様の式が得られる。
なお、格子点Xを発した音波が格子点Anに到着するまでの伝播時間を求める代わりに、格子点Anを発した音波が格子点Xに到着するまでの伝播時間を求めても同様の式が得られる。
また、図3において、格子点Xに対して左側の格子点A−1,A−2,…に対する伝播時間を求めるときには、x軸を図3の逆向きにすることにより、常にθ0及びθnを0〜π/2の範囲で計算することができる。
以下、本発明の第1の実施形態に係る環境音速の演算処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
まず、領域A内の格子点Xにおける音速V(0)と音速の変化率kの初期値が設定される(ステップS10)。そして、音速V(0)と音速の変化率kが1ステップ変更される(ステップS12)。なお、音速V(0)又は変化率kのいずれか一方を設定すれば、他方は領域BにおけるV(0)との連続性から求められる。このため、音速V(0)又は変化率kのいずれか一方を更新すればよい。ここで、最適音速値とは、画像のコントラスト、シャープネスが最も高くなる音速値であり、格子点における実際の局所音速値とは必ずしも一致しない。最適音速値の判定方法としては、例えば、画像のコントラスト、スキャン方向の空間周波数、分散などから判定する方法(例えば、特開平8-317926号公報)を適用することができる。
次に、格子点Xから格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…に超音波が到達するまでの伝播時間T1R,T2R,…,TnR,…,T−1R,…が算出される(ステップS14)。ステップS14において、伝播時間T1R,T2R,…,TnR,…,T−1R,…は、下記のようにして求められる。まず、格子点Xと、その深さ方向(z方向)に並ぶ格子点A0との時間間隔の2分の1(超音波が格子点Xから格子点A0に伝播するのに要する時間)を式(13)のTに代入して、領域AとBの境界面S1から格子点X間での距離Znを求める。次に、格子点A1,…,An,…,A−1,…のX座標X1,…,Xn,…,X−1,…と、Znを式(7)、(10)及び(11)にそれぞれ代入することにより、伝播時間T1R,T2R,…,TnR,…,T−1R,…が求められる。
次に、格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…からの受信波WA0,WA1,…,WAn,…,WA−1,…にそれぞれ遅延TT+T1R,TT+T2R,…,TT+TnR,…,TT+T−1R,…を掛けて重ね合わせることにより、格子点Xからの仮想的な合成受信波WSUMが作成される(ステップS16)。なお、ステップS16では、超音波が格子点Xまで伝播するのに要する時間TTは、格子点Xにおける受信時刻の2分の1に設定することが可能である。
次に、格子点Xにおける最適音速値に基づいて、格子点Xを反射点としたときの仮想的な受信波WXの波形が算出され、格子点Xからの受信波Wxと合成受信波WSUMとの誤差が算出される(ステップS18)。ステップS18では、受信波WXと合成受信波WSUMの誤差は、例えば、互いの相互相関をとる方法により算出される。
次に、ステップS12からステップS20の処理が繰り返されて、すべての音速V(0)及び変化率kについて演算が終了すると(ステップS20のYes)、格子点Xにおける音速V(0)と変化率kが判定される(ステップS22)。ステップS22では、上記受信波WXと合成受信波WSUMの誤差が最小となるような音速V(0)と変化率kが求められる。
本実施形態によれば、被検体OBJ内の音速場が不均一な場合に、着目格子点Xを含む領域Aを音速が線型に変化する音速場と近似することにより、格子点Xにおける局所音速値V(0)及び領域Aにおける音速の変化率kを求めることができる。更に、本実施形態によれば、被検体OBJ内の音速値(領域Aにおける環境音速)を高精度で算出することができる。
なお、本実施形態では、格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…が並ぶx方向に対して垂直なz方向に線型に変化する音速場について、任意の方向に音速変化する場について伝播時間を求めることも可能である。つまり、音速が変化する方向にz方向をとり、その座標系において格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…を設定すれば、上記の式(7)、(10)、(11)及び(13)によって伝播時間を求めることができる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る音速値の演算処理を模式的に示す図である。
本実施形態は、図5に示すように、超音波探触子300の素子面S2と格子点Xとの間の領域を、被検体OBJの深さ方向(z方向)に複数の領域B,A0,A1,…,ANに分割する。
次に、領域A0における音速場がzの1次関数(V1(z)=V0+k1×z)で表されると仮定する。そして、上記図4の処理が実行され、領域A0とA1との間の境界面S11上の格子点A11,A21,…における音速値V1及びk1がそれぞれ求められる。これにより、領域A0における環境音速が求められる。
以下、同様にして、領域A1,A2,…における環境音速が順次求められる。
本実施形態によれば、被検体OBJ内の浅い層から順に局所音速値を判定することにより、被検体内の領域Aにおける音速値(環境音速)を高精度で判定することができる。
以下、本発明の第2の実施形態に係る環境音速の演算処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。
本実施形態では、図6に示す環境音速の演算処理を浅い層の格子点から順に実施してゆく。局所音速値の演算するときには、ある深さの格子点の音速値判定のために、それより浅い深さの格子点からの受信波が必要である。従って、深さNの領域ANにおける環境音速(格子点(A1N,A2N,…)における局所音速値と、領域ANにおける音速の変化量kN)を判定するために深さN−1の全格子点(A1N−1,A2N−1,…)からの受信波をメモリ(格納部102)に保持しておく。深さNの全格子点の処理終了した後に深さN−1の受信波を破棄し、代わりに深さNの全格子点の受信波を保持する。
なお、一番浅い層の領域A0における環境音速の格子点(A10,A20,…)における受信波及び局所音速値は単純な方法で求められる。
環境音速の演算に用いる格子点の範囲、及び格子点のXY方向の間隔は、上記第1の実施形態と同様に予め決めておく。なお、異なる間隔、異なる範囲の格子点を用いて、局所音速値の判定を複数回行うようにしてもよい。
まず、領域A内の格子点Xにおける音速V(0)と音速の変化率kの初期値が設定される(ステップS30)。そして、音速V(0)と音速の変化率kが1ステップ変更される(ステップS32)。なお、音速V(0)又は変化率kのいずれか一方を設定すれば、他方は領域BにおけるV(0)との連続性から求められる。このため、音速V(0)又は変化率kのいずれか一方を更新すればよい。ここで、最適音速値とは、画像のコントラスト、シャープネスが最も高くなる音速値であり、格子点における実際の局所音速値とは必ずしも一致しない。最適音速値の判定方法としては、例えば、画像のコントラスト、スキャン方向の空間周波数、分散などから判定する方法(例えば、特開平8-317926号公報)を適用することができる。
次に、格子点Xから格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…に超音波が到達するまでの伝播時間T1R,T2R,…,TnR,…,T−1R,…が算出される(ステップS34)。ステップS14において、伝播時間T1R,T2R,…,TnR,…,T−1R,…は、下記のようにして求められる。まず、格子点Xと、その深さ方向(z方向)に並ぶ格子点A0との時間間隔の2分の1(超音波が格子点Xから格子点A0に伝播するのに要する時間)を式(13)のTに代入して、領域AとBの境界面S1から格子点X間での距離Znを求める。次に、格子点A1,…,An,…,A−1,…のX座標X1,…,Xn,…,X−1,…と、Znを式(7)、(10)及び(11)にそれぞれ代入することにより、伝播時間T1R,T2R,…,TnR,…,T−1R,…が求められる。
次に、格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…からの受信波WA0,WA1,…,WAn,…,WA−1,…にそれぞれ遅延TT+T1R,TT+T2R,…,TT+TnR,…,TT+T−1R,…を掛けて重ね合わせることにより、格子点Xからの仮想的な合成受信波WSUMが作成される(ステップS36)。なお、ステップS36では、超音波が格子点Xまで伝播するのに要する時間TTは、格子点Xにおける受信時刻の2分の1に設定することが可能である。
次に、仮想的な受信波WSUMに基づいて、格子点Xの周辺における遅延カーブが算出される(ステップS38)。
次に、遅延カーブに基づいて格子点X周辺の超音波画像(Bモード画像)が生成され(ステップS40)、格子点X周辺の画像から音速判定指数が算出される(ステップS42)。ここで、音速判定指数とは、画像のコントラスト、スキャン方向空間周波数及び分散のうち少なくとも1つ基づいて求めた音速を判定するための指数である。なお、音速判定指数の計算は、全仮定音速の画像生成後(ステップS44の後)に行ってもよい。
次に、ステップS32からステップS44の処理が繰り返されて、すべての音速V(0)及び変化率kについて演算が終了すると(ステップS44のYes)、上記音速判定指数に基づいて格子点Xにおける格子点Xにおける音速V(0)と変化率kが判定される(ステップS46)。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る音速値の演算処理を模式的に示す図である。
本実施形態は、図7に示すように、被検体OBJの深さ方向(z′方向)に対して音速が線型変化する線型変化軸(z方向)をφ(0<φ<π/2)傾けた場合の格子点Xから格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…までの超音波の伝播時間が、上記の式(7)、(10)、(11)及び(13)によって求められる。そして、0<φ<π/2の範囲で、角度φが変更されて超音波の伝播時間の演算処理が繰り返される。これにより、角度φに応じた領域Aの音速V(z)=V(0)+k×z、z=z′tanφと、格子点Xから格子点A0,A1,…,An,…,A−1,…までの超音波の伝播時間とが求められる。
次に、角度φごとの合成受信波WSUMが算出され、格子点Xを反射点としたときの仮想的な受信波WXとの誤差が算出される。また、音速が均一と仮定して最適音速値から求めた領域Aの環境音速V(0)に基づく合成受信波と、受信波WXとの誤差が算出される。そして、受信波WXとの誤差が最小となるような合成受信波WSUMが抽出されて、該合成受信波WSUMに対応する音速V(0)、変化率k及び角度φが求められる。
本実施形態によれば、音速が線型変化する線型変化軸を被検体OBJの深さ方向に対して傾けることにより、環境音速の判定精度をより高めることができる。
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
本実施形態は、上記第2及び第3の実施形態を組み合わせたものである。本実施形態では、まず、上記図5において、領域A0における音速場がzの1次関数(V(z)=V(0)+k×z、z=z′tanφ)で表されると仮定する。そして、上記第3の実施形態と同様にして、パラメータφ,V0及びk1を変更しながら、仮想的な受信波WXとの誤差を算出する。これにより、領域A0とA1との間の境界面S11上の格子点A11,A21,…における音速値V1及びk1がそれぞれ求められ、領域A0における環境音速が求められる。以下、同様の演算を繰り返すことにより、領域A1,A2,…における環境音速が順次求められる。
本実施形態によれば、上記第2の実施形態において、音速場の線形変化軸を変化させることにより、被検体OBJ内の環境音速をより精確に求めることが可能になる。
10…超音波診断装置、100…CPU、102…格納部、104…表示部、106…データ解析部、200…操作部、202…操作卓、204…ポインティングデバイス、300…超音波探触子、302…超音波トランスデューサ(素子)、400…送受信部、402…送信回路、404…受信回路、406…A/D変換器、500…画像信号生成部、502…信号処理部、504…DSC、506…画像処理部、508…画像メモリ、510…D/A変換器、600…再生部、602…シネメモリ、604…シネメモリ再生部
Claims (12)
- 超音波を被検体に送信するとともに、該被検体によって反射される超音波を受信して超音波検出信号を出力する複数の超音波トランスデューサを含む超音波探触子と、
前記超音波検出信号に基づいて、前記被検体内の着目領域の浅い側の境界面に配置された格子点と、前記着目領域内の着目格子点における最適音速値を判定する最適音速値判定手段と、
前記着目格子点における最適音速値に基づいて、前記超音波を前記着目格子点に送信したときに前記着目格子点から受信される受信波を演算する受信波演算手段と、
前記着目領域において音速が線型に変化すると仮定して、前記着目格子点から出射した超音波が、前記格子点よりも浅い領域に設定された複数の格子点に到着するまでの伝播時間を算出し、前記伝播時間と前記複数の格子点における最適音速値に基づいて、前記超音波を前記着目格子点に送信したときに前記複数の格子点から受信される受信波を求め、前記複数の格子点の受信波を合成して合成受信波を算出する合成受信波演算手段と、
前記受信波と前記合成受信波に基づいて前記着目格子点における局所音速値と前記着目領域における音速の変化率を求めて、前記着目格子点における局所音速値と前記着目領域における音速の変化率から前記着目領域における環境音速を求める環境音速演算手段と、
を備える超音波診断装置。 - 前記環境音速演算手段が、前記受信波と前記合成受信波の間の誤差が最小になる合成受信波から前記着目領域における環境音速を求める請求項1記載の超音波診断装置。
- 前記着目格子点と前記超音波探触子との間の領域を、前記被検体の深さ方向に垂直な境界面で分割される複数の領域に分割し、前記合成受信波演算手段による浅い方の領域から順に前記合成受信波の演算と、前記環境音速演算手段による前記合成受信波に基づいて前記環境音速を求める処理とを繰り返し実行することにより、前記着目領域における環境音速を求める請求項1記載の超音波診断装置。
- 前記合成受信波演算手段が、前記着目領域において音速が線型変化する線型変化軸を変化させて、前記線型変化軸ごとに前記合成受信波を算出し、
前記環境音速演算手段が、前記線型変化軸ごとに前記合成受信波のうち、前記受信波との誤差が最小になる合成受信波から前記着目領域における環境音速を求める請求項1記載の超音波診断装置。 - 前記環境音速の判定結果を表示する表示手段を更に備える請求項1から3のいずれか1項記載の超音波診断装置。
- 前記超音波検出信号に基づいて、前記受信波の振幅を点の輝度により表す振幅画像を作成する振幅画像作成手段を更に備え、
前記表示手段が、前記環境音速を、前記振幅画像に重畳させるか、又は前記振幅画像と並べて表示する請求項5記載の超音波診断装置。 - 前記超音波検出信号に基づいて、前記超音波エコーの振幅を点の輝度により表す振幅画像を作成する振幅画像作成手段を更に備え、
前記表示手段が、前記振幅画像の輝度又は色を変化させることにより、前記環境音速を表示する請求項5記載の超音波診断装置。 - 前記振幅画像を単独で表示する第1の表示モードと、前記環境音速を表示する第2の表示モードとの間で表示モードを切り替える表示モード切替手段を更に備える請求項6又は7記載の超音波診断装置。
- 超音波を被検体に送信するとともに、該被検体によって反射される超音波を受信して超音波検出信号を出力する複数の超音波トランスデューサを含む超音波探触子から出力される前記超音波検出信号に基づいて、前記被検体内の着目領域の浅い側の境界面に配置された格子点と、前記着目領域内の着目格子点における最適音速値を判定する最適音速値判定工程と、
前記着目格子点における最適音速値に基づいて、前記超音波を前記着目格子点に送信したときに前記着目格子点から受信される受信波を演算する受信波演算工程と、
前記着目領域において音速が線型に変化すると仮定して、前記着目格子点から出射した超音波が、前記格子点よりも浅い領域に設定された複数の格子点に到着するまでの伝播時間を算出し、前記伝播時間と前記複数の格子点における最適音速値に基づいて、前記超音波を前記着目格子点に送信したときに前記複数の格子点から受信される受信波を求め、前記複数の格子点の受信波を合成して合成受信波を算出する合成受信波演算工程と、
前記受信波と前記合成受信波に基づいて前記着目格子点における局所音速値と前記着目領域における音速の変化率を求めて、前記着目格子点における局所音速値と前記着目領域における音速の変化率から前記着目領域における環境音速を求める環境音速演算工程と、
を備える超音波診断方法。 - 前記環境音速演算工程において、前記受信波と前記合成受信波の間の誤差が最小になる合成受信波から前記着目領域における環境音速を求める請求項9記載の超音波診断方法。
- 前記着目格子点と前記超音波探触子との間の領域を、前記被検体の深さ方向に垂直な境界面で分割される複数の領域に分割し、前記合成受信波演算工程による浅い方の領域から順に前記合成受信波の演算と、前記環境音速演算工程による前記合成受信波に基づいて前記環境音速を求める処理とを繰り返し実行することにより、前記着目領域における環境音速を求める請求項9記載の超音波診断方法。
- 前記合成受信波演算工程において、前記着目領域において音速が線型変化する線型変化軸を変化させて、前記線型変化軸ごとに前記合成受信波を算出し、
前記環境音速演算工程において、前記線型変化軸ごとに前記合成受信波のうち、前記受信波との誤差が最小になる合成受信波から前記着目領域における環境音速を求める請求項9記載の超音波診断方法。
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