JP2013255599A - 超音波診断装置及び方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コンベックスプローブの場合や走査線が屈折する場合でも正しい局所音速を求めることができるようにする。
【解決手段】超音波探触子から被検体内の2以上の深さの異なる点(格子点B1i,Ai+1)に超音波を送信フォーカスし、各格子点で反射した超音波の各素子受信信号を取得する。2以上の深さの異なる点のうちの浅い点(Ai+1)の空間位置(深さD[0])を算出し、取得した各素子受信信号と算出した浅い点の空間位置とに基づいて、深い点から浅い点までの領域の平均音速(局所音速)を算出する。
【選択図】 図6
【解決手段】超音波探触子から被検体内の2以上の深さの異なる点(格子点B1i,Ai+1)に超音波を送信フォーカスし、各格子点で反射した超音波の各素子受信信号を取得する。2以上の深さの異なる点のうちの浅い点(Ai+1)の空間位置(深さD[0])を算出し、取得した各素子受信信号と算出した浅い点の空間位置とに基づいて、深い点から浅い点までの領域の平均音速(局所音速)を算出する。
【選択図】 図6
Description
本発明は超音波診断装置及び方法に係り、特に被検体内の一部(診断部位)における音速(以下、「局所音速」という)を精度よく算出する技術に関する。
音速が一定の媒質からなる被検体OBJ1内の音速Vは、リニアプローブの場合、下記のようにして算出することができる。図13(a)に示すように、被検体OBJ1内の反射点(領域)X1ROIから超音波探触子300Aまでの距離をLとすると、反射点X1ROIで超音波が反射されてから反射点X1ROIの直下の超音波トランスデューサ(素子)302Aoで受信されるまでの経過時間Tは、T=L/Vである。素子302AoからX方向(素子302Aの配列方向)に距離X離れた位置にある素子302Aiで受信されるまで経過時間をT+ΔTとすると、素子302Aoと302Aiとの間の遅延時間ΔTは、下記の[数1A]式により表される。
従って、超音波が送波されて反射点X1ROIで時間T後に反射された後、各素子により受信されるまでの経過時間[2T,2T+ΔT]を測定することにより、反射点X1ROIまでの距離Lと速度Vを一意に求めることができる。コンベックスプローブの場合も、TおよびΔTは反射点X1ROIまでの距離Lおよび速度Vで一意に表されるため、TおよびΔTからLおよびVを一意に求めることができる。
上記のように、被検体内の音速が一定の場合には、音速Vを求めることが可能であるが、図13(b)に示す被検体OBJ2のように、内部の音速が一定でない場合には、上記の方法では、反射点(領域)X2ROIまでの距離L及び音速V,V´を求めることは困難である。
これに対し、被検体内の音速が一定でない場合であっても、局所音速を精度よく算出することができる超音波診断方法が提案されている(特許文献1)。
この超音波診断方法は、超音波探触子から超音波走査線を所定の間隔で被検体に出射し、被検体によって反射される超音波を受信して得た受信信号のうち、着目する走査線上の深さの異なる2つ以上の格子点での反射の各素子受信信号に基づいて着目領域における局所音速を求める方法が開示されている。例えば、その1実施例として着目領域に設定された格子点(上格子点)での反射の受信信号に基づいて上格子点から超音波探触子までの領域の平均音速である環境音速及び受信時刻(上格子点が乗る走査線位置に対応する素子における受信時刻)を算出するとともに、前記上格子点と前記超音波探触子との間に設定された各走査線上の格子点(下格子点)での反射の受信信号に基づいて、各下格子点から超音波探触子までの領域の平均音速である環境音速及び受信時刻(格子点が乗る走査線位置に対応する素子における受信時刻)を算出し、一方、前記着目領域における仮定音速を仮定し、上格子点から各下格子点までの伝播時間を算出する。
また、各下格子点から各素子までの伝播時間を各下格子点での反射に関連して算出した環境音速及び受信時刻に基づいて算出する。
そして、フェルマーの原理「波は最短時間で到達する経路を選ぶ」に基づき、上格子点から各々の素子までの伝播時間として、上格子点から各下格子点までの伝播時間と各下格子点から各々の素子までの伝播時間の和が最小となる時間を採用する。一方、前記上格子点での反射に関連して算出した環境音速及び受信時刻に基づいて上格子点から各素子までの伝播時間を算出する。この2種類の方法で算出した上格子点から各素子までの伝播時間の誤差が最小になるように前記仮定音速を修正し、その修正した仮定音速を着目領域における局所音速として算出するようにしている。
また、特許文献2には、超音波画像におけるフォーカス精度に基づき、浅い領域から局所的な音速を順次決定することにより音速分布を求める方法が開示されている。
特許文献1では、上格子点での反射の各素子受信信号を2種類の方法で取得する。つまり、実際の上格子点での反射の各素子受信信号と、着目領域における仮定音速と各下格子点での反射の各素子受信信号に基づき仮想的な上格子点反射の各素子受信信号を取得する。これら2種類の方法で取得した上格子点での反射の各素子受信信号に基づいて局所音速を求めている。ここで仮想的な上格子点反射の各素子受信信号を取得するためには、各下格子点での反射の各素子受信信号と共に、仮定音速を仮定する事により上格子点と各下格子点との相対的な空間位置関係が与えられなければならない。特許文献1ではリニアプローブを用いる事で各格子点が乗る走査線のスキャン方向(超音波探触子の各素子の配列方向)の間隔を深さによらず一定で既知とし、また各下格子点の深さを同じとして、上格子点と各下格子点との相対空間位置関係を得る事を可能としている。
しかしながら、プローブ種や屈折によって、この相対空間位置関係を得る事が困難となる。例えば、コンベックスプローブの場合、走査線が平行でなく扇状に広がるため、走査線のスキャン方向の各格子点の間隔は、深さと共に広がる。この場合、下格子点のスキャン方向の位置を決めるために下格子点の深さ情報が必要となる。下格子点の深さを、下格子点が乗る走査線位置に対応する素子における受信時刻(下格子点直下の素子における受信時刻)に暫定的な音速を掛ける事により暫定的に得ることができるものの、真の深さと異なるため、結果正しいスキャン方向位置を得る事ができず、正しい局所音速を求める事ができない。また、リニアプローブの場合であっても、走査線が屈折すると、各格子点の深さやスキャン方向の位置が変わってしまう。この場合も正しい局所音速を求めることができない。
また、特許文献2に記載の方法においても、超音波画像におけるフォーカスは音速のみでなく屈折にも依存するため、正しい音速分布を求めることはできない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、コンベックスプローブの場合や走査線が屈折する場合でも正しい局所音速を求めることができる超音波診断装置及び方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために本発明の一の態様に係る超音波診断装置は、超音波を被検体に送信するとともに、被検体によって反射される超音波を受信して受信信号を出力する複数の素子を含む超音波探触子と、超音波探触子から被検体内の2以上の深さの異なる点で反射した超音波の受信信号を取得する受信信号取得手段と、受信信号取得手段により取得された受信信号に基づいて2以上の深さの異なる点のうちの浅い点の空間位置を算出する第1の空間位置算出手段と、受信信号取得手段により取得された受信信号と第1の空間位置算出手段により算出された浅い点の空間位置とに基づいて浅い点から浅い点よりも深い深い点までの領域の平均音速である局所音速を算出する局所音速算出手段と、を備え、第1の空間位置算出手段は、浅い点で反射した超音波の受信信号に基づいて、浅い点から超音波探触子までの領域の平均音速である環境音速を算出する環境音速算出手段を有し、算出した環境音速と浅い点で反射した超音波の受信信号とに基づいて浅い点の空間位置を算出するようにしている。
本発明の一の態様によれば、2以上の深さの異なる点のうちの浅い点の空間位置を算出し、その算出した空間位置と取得された受信信号とに基づいて局所音速を算出するようにしたため、走査線が平行でないコンベックスプローブの場合や走査線が屈折する場合でも正しい局所音速を求めることができる。また、浅い点の空間位置は、浅い点から超音波探触子までの領域の平均音速である環境音速を算出し、算出した環境音速と浅い点で反射した超音波の受信信号とに基づいて算出するようにしている。
本発明の他の態様に係る超音波診断装置において、第1の空間位置算出手段は、浅い点に対応して算出した環境音速と浅い点で反射した超音波の受信信号とに基づいて浅い点の深さ方向の位置を算出し、浅い点から最短時間で受信信号を受信すべき超音波探触子の素子の位置と、浅い点から最短時間で受信信号を受信した超音波探触子の素子の位置とに基づいて浅い点の深さ方向と直交する方向の位置を算出することが好ましい。これにより浅い点の空間位置を深さ方向の空間位置だけでなく、深さ方向と直交する方向の空間位置も算出することができ、特に走査線が屈折する場合に局所音速を精度よく算出することができる。
本発明の更に他の態様に係る超音波診断装置において、局所音速算出手段は、算出された浅い点の空間位置と、深い点と浅い点との間の仮定音速を仮定したときの仮定音速と、受信信号取得手段により取得された受信信号とに基づいて深い点の空間位置を算出する第2の空間位置算出手段と、第1、第2の空間位置算出手段により算出した浅い点及び深い点の空間位置、及び仮定音速に基づいて深い点で反射した超音波が浅い点に到達するまでの第1の伝播時間を算出する手段と、スネルの法則により深い点から浅い点に入射する超音波の入射角と、仮定音速と浅い点に対応して算出した環境音速とに基づいて浅い点から出射する超音波の出射角を算出する手段と、算出した出射角で浅い点から出射する超音波が入射する超音波探触子の素子の位置と素子に入射するまでの第2の伝播時間とを算出する手段と、超音波探触子の素子の位置における超音波の受信時刻を、第1の伝播時間と第2の伝播時間とを加算して算出する手段と、を有し、深い点で反射した超音波の超音波探触子の素子の位置における受信時刻と算出した受信時刻との誤差が最小となる仮定音速を局所音速として算出している。このようにして局所音速が算出されると、浅い点の空間位置を基準にした深い点の空間位置も精度よく算出されることになる。また、深い点よりも更に深い点に対しては、算出された深い点の空間位置は浅い点の空間位置として使用することができる。
本発明の更に他の態様に係る超音波診断装置において、局所音速算出手段は、算出された浅い点の空間位置と、深い点と浅い点との間の仮定音速を仮定したときの仮定音速と、受信信号取得手段により取得された受信信号とに基づいて深い点の空間位置を算出する第2の空間位置算出手段と、第1、第2の空間位置算出手段により算出した浅い点及び深い点の空間位置、及び仮定音速に基づいて深い点で反射した超音波が浅い点に到達するまでの伝播時間を算出する手段と、受信信号取得手段により取得した深い点で反射した超音波の受信信号に基づいて深い点を反射点としたときの第1の受信波を取得する第1の受信波取得手段と、受信信号取得手段により取得した浅い点で反射した超音波の受信信号及び算出した伝播時間に基づいて深い点を反射点とし、浅い点を通過する第2の受信波を取得する第2の受信波取得手段と、を備え、取得した第1の受信波と第2の受信波との誤差が最小となる仮定音速を、局所音速として算出している。
本発明の更に他の態様によれば、上記と同様に深い点で反射した超音波が浅い点に到達するまでの伝播時間を算出する。深い点で反射した超音波の受信信号に基づいて深い点を反射点としたときの第1の受信波と、浅い点で反射した超音波の受信信号及び算出した伝播時間に基づいて深い点を反射点とし、浅い点を通過する第2の受信波とを取得し、取得した第1の受信波と第2の受信波との誤差が最小となる仮定音速を、局所音速として算出するようにしている。これは、ホイヘンスの原理により、深い点からの受信波と、深い点から浅い点を通過する受信波とが一致することを利用している。
本発明の更に他の態様に係る超音波診断装置において、環境音速算出手段は、深い点で反射した超音波の受信信号に基づいて、深い点から超音波探触子までの領域の平均音速である環境音速を更に算出し、第1の受信波取得手段は、深い点を反射点としたときの第1の受信波を、深い点で反射した超音波の受信信号及び深い点に対応して算出した環境音速に基づいて算出し、第2の受信波取得手段は、深い点を反射点とし、浅い点を通過する第2の受信波を、算出した伝播時間、浅い点で反射した超音波の受信信号及び浅い点に対応して算出した環境音速に基づいて算出することが好ましい。これにより、第1の受信波及び第2の受信波を精度よく算出することができる。
本発明の更に他の態様に係る超音波診断装置において、第2の空間位置算出手段は、算出された浅い点の空間位置と、深い点と浅い点との間の仮定音速を仮定したときの仮定音速と、受信信号取得手段により取得された受信信号とに基づいて深い点の深さ方向の位置を算出し、深い点から最短時間で受信信号を受信すべき超音波探触子の素子の位置と、深い点から最短時間で受信信号を受信した超音波探触子の素子の位置とに基づいて深い点の深さ方向と直交する方向の位置を算出することが好ましい。これにより深い点の空間位置を深さ方向の空間位置だけでなく、深さ方向と直交する方向の空間位置も算出することができ、特に走査線が屈折する場合に局所音速を精度よく算出することができる。
本発明の更に他の態様に係る超音波診断装置において、局所音速算出手段により算出された局所音速に基づいて被検体の領域ごとの局所音速を示す音速マップを作成する音速マップ作成手段を更に備えることが好ましい。
本発明の更に他の態様に係る超音波診断装置において、超音波探触子から出力される受信信号の振幅を点の輝度により表す振幅画像を作成する振幅画像作成手段を更に備えることが好ましい。
本発明の更に他の態様に係る超音波診断装置において、局所音速算出手段により算出された局所音速に基づいて被検体の領域ごとの局所音速を示す音速マップを作成する音速マップ作成手段と、超音波探触子から出力される受信信号の振幅を点の輝度により表す振幅画像を作成する振幅画像作成手段と、作成された音速マップ及び振幅画像を表示する表示手段と、を備えることが好ましい。
本発明の他の態様に係る超音波診断方法は、複数の素子を含む超音波探触子から被検体内の2以上の深さの異なる点に超音波を送信し、深さの異なる点で反射した超音波の受信信号を取得する工程と、取得された受信信号に基づいて2以上の深さの異なる点のうちの浅い点の空間位置を算出する工程と、取得した受信信号と算出した浅い点の空間位置とに基づいて浅い点から浅い点よりも深い深い点までの領域の平均音速である局所音速を算出する工程と、を含み、浅い点の空間位置を算出する工程は、浅い点で反射した超音波の受信信号に基づいて、浅い点から超音波探触子までの領域の平均音速である環境音速を算出する工程を含み、算出した環境音速と浅い点で反射した超音波の受信信号とに基づいて浅い点の空間位置を算出するようにしている。
本発明によれば、2以上の深さの異なる点のうちの浅い点の空間位置を、浅い点から超音波探触子までの領域の平均音速である環境音速と浅い点で反射した超音波の受信信号とに基づいて算出し、その算出した浅い点の空間位置と取得された受信信号とに基づいて局所音速を算出するようにしたため、走査線が平行でないコンベックスプローブの場合や走査線が屈折する場合でも正しい局所音速を求めるこができる。
以下、添付図面に従って本発明に係る超音波診断装置及び方法の好ましい実施の形態について説明する。
[装置構成]
図1は本発明に係る超音波診断装置の実施形態を示すブロック図である。
図1は本発明に係る超音波診断装置の実施形態を示すブロック図である。
図1に示す超音波診断装置10は、超音波探触子300から被検体OBJに超音波ビームを送信して、被検体OBJによって反射された超音波ビーム(超音波エコー)を受信し、超音波エコーの検出信号から超音波画像を作成・表示する装置である。
CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)100は、操作入力部200からの操作入力に応じて超音波診断装置10の各ブロックの制御を行う。
操作入力部200は、オペレータからの操作入力を受け付ける入力デバイスであり、操作卓202とポインティングデバイス204とを含んでいる。操作卓202は、文字情報(例えば、患者情報)の入力を受け付けるキーボードと、振幅画像(Bモード画像)を単独で表示するモードと局所音速の判定結果を表示するモードとの間で表示モードを切り替える表示モード切り替えボタンと、ライブモードとフリーズモードとの切り替えを指示するためのフリーズボタンと、シネメモリ再生を指示するためのシネメモリ再生ボタンと、超音波画像の解析・計測を指示するための解析・計測ボタンとを含んでいる。ポインティングデバイス204は、表示部104の画面上における領域の指定の入力を受け付けるデバイスであり、例えば、トラックボール又はマウスである。尚、ポインティングデバイス204としては、タッチパネルを用いることも可能である。
格納部102は、CPU100により超音波診断装置10の各ブロックの制御を制御するための制御プログラム、パラメータ及び本発明に係る局所音速等を算出するためのプログラムを格納する記憶装置であり、例えば、ハードディスク又は半導体メモリである。
表示部104は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ又は液晶ディスプレイであり、超音波画像(動画及び静止画)の表示、本発明に係る音速マップ、及び各種の設定画面を表示する。
超音波探触子300は、被検体OBJに当接させて用いるプローブであり、1次元又は2次元の超音波トランスデューサアレイを構成する複数の素子302を備えている。尚、超音波探触子300は、コンベックスプローブ、リニアプローブ、セクタプローブのいずれでもよい。
複数の素子302は、送信回路402から印加される駆動信号に基づいて超音波ビームを被検体OBJに送信するとともに、被検体OBJから反射される超音波エコーを受信して検出信号を出力する。
超音波探触子300の各素子302は、圧電性を有する材料(圧電体)の両端に電極が形成されて構成された振動子を含んでいる。上記振動子を構成する圧電体としては、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb (lead) zirconate titanate)のような圧電セラミック、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinylidene difluoride)のような高分子圧電素子を用いることができる。上記振動子の電極に電気信号を送って電圧を印加すると圧電体が伸縮し、この圧電体の伸縮により各振動子において超音波が発生する。例えば、振動子の電極にパルス状の電気信号を送るとパルス状の超音波が発生し、振動子の電極に連続波の電気信号を送ると連続波の超音波が発生する。そして、各振動子において発生した超音波が合成されて超音波ビームが形成される。また、各振動子により超音波が受信されると、各振動子の圧電体が伸縮して電気信号を発生する。各振動子において発生した電気信号は、超音波の検出信号として受信回路404に出力される。
尚、超音波探触子300の素子302としては、超音波変換方式の異なる複数種類の素子を用いることも可能である。例えば、超音波を送信する素子として上記圧電体により構成される振動子を用いて、超音波を受信する素子として光検出方式の超音波トランスデューサを用いるようにしてもよい。ここで、光検出方式の超音波トランスデューサとは、超音波信号を光信号に変換して検出するものであり、例えば、ファブリーペロー共振器又はファイバブラッググレーティングである。
次に、ライブモード時における超音波診断処理について説明する。ライブモードは、被検体OBJに超音波探触子300を当接させて超音波の送受信を行うことによって得られた超音波画像(動画)の表示、解析・計測を行うモードである。
超音波探触子300が被検体OBJに当接されて、操作入力部200からの指示入力により超音波診断が開始されると、CPU100は、送受信部(受信信号取得手段)400に制御信号を出力して、超音波ビームの被検体OBJへの送信、及び被検体OBJからの超音波エコーの受信を開始させる。CPU100は、素子302毎に超音波ビームの送信方向と超音波エコーの受信方向とを設定する。
また、CPU100は、超音波ビームの送信方向に応じて送信遅延パターンを選択するとともに、超音波エコーの受信方向に応じて受信遅延パターンを選択する。ここで、送信遅延パターンとは、複数の素子302から送信される超音波によって所望の方向に超音波ビームを形成するために駆動信号に与えられる遅延時間のパターンデータであり、受信遅延パターンとは、複数の素子302によって受信される超音波によって所望の方向からの超音波エコーを抽出するために検出信号に与えられる遅延時間のパターンデータである。上記送信遅延パターン及び受信遅延パターンは予め格納部102に格納されている。CPU100は、格納部102に格納されているものの中から送信遅延パターン及び受信遅延パターンを選択し、選択した送信遅延パターン及び受信遅延パターンに従って、送受信部400に制御信号を出力して超音波の送受信制御を行う。これにより、所望の深さの点に音圧を集中させる送信フォーカスや、受信フォーカスを行うことができる。
送信回路402は、CPU100からの制御信号に応じて駆動信号を生成して、該駆動信号を素子302に印加する。ここで、送信回路402は、各素子302に駆動信号を印加するタイミングを調整(遅延)し、複数の素子302から送信される超音波が所望の深さの点に集中するように送信フォーカスさせたり、超音波ビームの方向(ステア角)を調整する。尚、複数の素子302から一度に送信される超音波が被検体OBJの撮像領域全体に届くように、駆動信号を印加するタイミングを調節するようにしてもよい。
受信回路404は、超音波探触子300の各素子302から出力される超音波検出信号を受信して増幅する。上記のように、各素子302と被検体OBJ内の超音波反射源との間の距離がそれぞれ異なるため、各素子302に反射波が到達する時間が異なる。受信回路404は遅延回路を備えており、CPU100によって選択された音速(以下、「仮定音速」という)又は音速の分布に基づいて設定される受信遅延パターンに従って、反射波の到達時刻の差(遅延時間)に相当する分、各検出信号を遅延させる。
次に、受信回路404は、遅延時間を与えた検出信号を整合加算することにより受信フォーカス処理を行う。超音波反射源XROIと異なる位置に別の超音波反射源がある場合には、別の超音波反射源からの超音波検出信号は到達時刻が異なるので、上記加算回路で加算することにより、別の超音波反射源からの超音波検出信号の位相が打ち消し合う。これにより、超音波反射源XROIからの受信信号が最も大きくなり、フォーカスが合う。上記受信フォーカス処理によって、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号(以下、「RF信号」という)が形成される。
A/D変換器406は、受信回路404から出力されるアナログのRF信号をデジタルRF信号(以下、「RFデータ」という)に変換する。ここで、RFデータは、受信波(搬送波)の位相情報を含んでいる。A/D変換器406から出力されるRFデータは、信号処理部502とシネメモリ602にそれぞれ入力される。
シネメモリ602は、A/D変換器406から入力されるRFデータを順次格納する。また、シネメモリ602は、CPU100から入力されるフレームレートに関する情報(例えば、超音波の反射位置の深度、走査線の密度、視野幅を示すパラメータ)を上記RFデータに関連付けて格納する。
信号処理部502は、上記RFデータに対して、STC(Sensitivity Time gain Control)によって、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正をした後、包絡線検波処理を施し、Bモード画像データ(超音波エコーの振幅を点の明るさ(輝度)により表した画像データ)を生成する。
信号処理部502によって生成されたBモード画像データは、通常のテレビジョン信号の走査方式と異なる走査方式によって得られたものである。このため、DSC(Digital Scan Converter)504は、上記Bモード画像データを通常の画像データ(例えば、テレビジョン信号の走査方式(NTSC方式)の画像データ)に変換(ラスター変換)する。画像処理部506は、DSC504から入力される画像データに、各種の必要な画像処理(例えば、階調処理)を施す。
画像メモリ508は、画像処理部506から入力される画像データを格納する。D/A変換器510は、画像メモリ508から読み出された画像データをアナログの画像信号に変換して表示部104に出力する。これにより、超音波探触子300によって撮影された超音波画像(動画)が表示部104に表示される。
尚、本実施形態では、受信回路404において受信フォーカス処理が施された検出信号をRF信号としたが、受信フォーカス処理が施されていない検出信号をRF信号としてもよい。この場合、複数の素子302から出力される複数の超音波検出信号が、受信回路404において増幅され、増幅された検出信号、即ち、RF信号が、A/D変換器406においてA/D変換されることによってRFデータが生成される。そして、上記RFデータは、信号処理部502に供給されるとともに、シネメモリ602に格納される。受信フォーカス処理は、信号処理部502においてデジタル的に行われる。
次に、シネメモリ再生モードについて説明する。シネメモリ再生モードは、シネメモリ602に格納されているRFデータに基づいて超音波診断画像の表示、解析・計測を行うモードである。
操作卓202のシネメモリ再生ボタンが押下されると、CPU100は、超音波診断装置10の動作モードをシネメモリ再生モードに切り替える。シネメモリ再生モード時には、CPU100は、オペレータからの操作入力により指定されたRFデータの再生をシネメモリ再生部604に指令する。シネメモリ再生部604は、CPU100からの指令に従って、シネメモリ602からRFデータを読み出して、画像信号生成部500の信号処理部502に送信する。シネメモリ602から送信されたRFデータは、信号処理部502、DSC504及び画像処理部506において所定の処理(ライブモード時と同様の処理)が施されて画像データに変換された後、画像メモリ508及びD/A変換器510を経て表示部104に出力される。これにより、シネメモリ602に格納されたRFデータに基づく超音波画像(動画又は静止画)が表示部104に表示される。
ライブモード又はシネメモリ再生モード時において、超音波画像(動画)が表示されているときに操作卓202のフリーズボタンが押下されると、フリーズボタン押下時に表示されている超音波画像が表示部104に静止画表示される。これにより、オペレータは、着目領域(ROI:Region of Interest)の静止画を表示させて観察することができる。
操作卓202の計測ボタンが押下されると、オペレータからの操作入力により指定された解析・計測が行われる。データ解析計測部106は、各動作モード時に計測ボタンが押下された場合に、A/D変換器406又はシネメモリ602から、画像処理が施される前のRFデータを取得し、当該RFデータを用いてオペレータ指定の解析・計測(例えば、組織部の歪み解析(硬さ診断)、血流の計測、組織部の動き計測、又はIMT(内膜中膜複合体厚:Intima-Media Thickness)値計測)を行う。データ解析計測部106による解析・計測結果は、画像信号生成部500のDSC504に出力される。DSC504は、データ解析計測部106による解析・計測結果を超音波画像の画像データに挿入して表示部104に出力する。これにより、超音波画像と解析・計測結果とが表示部104に表示される。
また、CPU100又はデータ解析計測部106は、空間位置算出手段、環境音速算出手段及び局所音速算出手段として機能するが、その詳細については後述する。
また、表示モード切り替えボタンが押下されると、Bモード画像を単独で表示するモード、Bモード画像に局所音速の算出結果を重畳して表示するモード(例えば、局所音速に応じて色分け又は輝度を変化させる表示、又は局所音速が等しい点を線で結ぶ表示)、Bモード画像と局所音速値の判定結果の画像を並べて表示するモードの間で表示モードが切り替わる。これにより、オペレータは、局所音速の算出結果を観察することで、例えば、病変を発見することができる。尚、局所音速の算出結果に基づいて、送信フォーカス処理及び受信フォーカス処理の少なくとも一方を施すことにより得られたBモード画像を表示部104に表示してもよい。
[局所音速測定]
被検体の音速(局所音速)を算出する処理の前提として、被検体の着目領域を設定する。この着目領域は、超音波探触子300が接する被検体の体表面から所望の深さまでの領域を、表示部104に表示される超音波画像の静止画上で、オペレータがポインティングデバイスにより設定してもよいし、制御プログラムが自動的に所定位置、所定サイズにて設定してもよいし、超音波画像を二値化処理するとともに、白の部分(又は黒の部分)が連続した画素に同じ番号を割り振るラベリング処理を行い、ラベリングした番号順に自動的に設定してもよい。
被検体の音速(局所音速)を算出する処理の前提として、被検体の着目領域を設定する。この着目領域は、超音波探触子300が接する被検体の体表面から所望の深さまでの領域を、表示部104に表示される超音波画像の静止画上で、オペレータがポインティングデバイスにより設定してもよいし、制御プログラムが自動的に所定位置、所定サイズにて設定してもよいし、超音波画像を二値化処理するとともに、白の部分(又は黒の部分)が連続した画素に同じ番号を割り振るラベリング処理を行い、ラベリングした番号順に自動的に設定してもよい。
続いて、前記設定した着目領域内に複数の格子点を設定する。
ここで、超音波探触子300がコンベックスプローブの場合の格子点の設定方法について説明する。
図2に示すように、コンベックスプローブの曲率中心をOとし、この曲率中心Oを中心とする曲率半径(深さ)の異なる複数の円弧を設定する。図2上で、コンベックスプローブ面Pからのそれぞれの深さを浅い側から0、1、2…Iとする。
コンベックスプローブから放射状に送信されるそれぞれ走査線を1〜nとする。そして、深さの異なる円弧と、各走査線1〜nとが交わる点を格子点A1〜An,B11〜B1n,B21〜B2n,…,B(I-1)1〜B(I-1)n, B(I)1〜B(I)nとする。尚、格子点A1〜Anは、着目領域内に設定される最も浅い格子点を示している。
各格子点は、走査線位置と受信時刻によって、その位置が定義される。即ち、コンベックスプローブから上記のように設定した最も浅い格子点A1〜Anに送信フォーカスし、その受信時刻が同一の反射点であり、同様に格子点B11,B12,B13,…,B1n、格子点B21,B22,B23,…,B2n、…もそれぞれ各走査線1,2,…,n上の受信時刻が同一の反射点である。ここでいう受信時刻とは、各格子点が乗る走査線位置に対応する素子における受信時刻、つまり最小受信時刻を示す。
尚、図2上では、格子点A1〜An,格子点B11〜B1n,…は、同じ深さの格子点として図示されているが、実際には各格子点とコンベックスプローブとの間の領域の音速は均一でないため、空間上では異なる深さの反射点となる。
各格子点の範囲及び個数は予め決めておく。ここで、各格子点のスキャン方向の間隔は、分解能と処理時間の兼ね合いで決定される。格子点のスキャン方向の間隔は、一例で1mmから1cmであり、コンベックスプローブの場合、図2に示すように深さに応じて間隔が広がる。また、各格子点の深さ方向の間隔が狭いと誤差計算における誤差が大きくなり、広いと局所音速の誤差が大きくなる。格子点の深さ方向の間隔は、超音波画像の画像分解能の設定に基づいて決定され、一例で1cmである。
上記のように設定した深さの異なる各格子点で反射した超音波の各素子受信信号(各素子受信時刻情報)を各走査線1〜n別に取得し、シネメモリ602に記憶させる。
[局所音速測定の全体の流れ]
図3は被検体の局所音速を算出する処理の全体の流れを示すフローチャートである。
図3は被検体の局所音速を算出する処理の全体の流れを示すフローチャートである。
図3に示すように、プローブ面からの被検体の深さのパラメータIを0に設定する(ステップS100,図2参照)。続いて、深さIの局所音速を算出する(ステップS200)。この深さIの局所音速の算出方法については、後述する。
深さIの局所音速の算出が終了すると、着目領域の全ての深さの局所音速の算出が完了したか否かを判別する(ステップS300)。
ステップS300において、全ての深さの局所音速の算出が完了していないと判別されると(「No」の場合)、深さのパラメータIを1だけインクリメントし(I=I+1)、ステップS200に戻り、次の深さの局所音速の算出を行う。
一方、ステップS300において、全ての深さの局所音速の算出が完了したと判別されると(「Yes」の場合)、局所音速を測定する本処理を終了する。
[局所音速測定の第1の実施形態]
まず、コンベックスプローブの場合(図2の格子点設定を参照)の局所音速算出方法を説明する。図4は、図3のステップS200における深さIの局所音速の算出処理を示すフローチャートである。
まず、コンベックスプローブの場合(図2の格子点設定を参照)の局所音速算出方法を説明する。図4は、図3のステップS200における深さIの局所音速の算出処理を示すフローチャートである。
図4において、まず、深さIの環境音速を算出する(ステップS202)。ここで、環境音速とは、コンベックスプローブ面から深さIまでの領域の平均音速をいう。
<環境音速の算出>
図5に示すように、ある反射点(格子点)Xからコンベックスプローブ面Pまでの距離をLとすると、格子点Xで超音波が反射されてから格子点Xの直下(最短伝播時間)の素子302A0で受信されるまでの経過時間Tは、環境音速をVとすると、T=L/Vである。素子302A0から、コンベックスプローブの曲率中心Oから中心角θだけ離れたスキャン方向の位置にある素子302Aiで受信されるまで経過時間をT+ΔTとすると、素子302A0と302Aiとの間の遅延時間ΔTは、次式により表される。
図5に示すように、ある反射点(格子点)Xからコンベックスプローブ面Pまでの距離をLとすると、格子点Xで超音波が反射されてから格子点Xの直下(最短伝播時間)の素子302A0で受信されるまでの経過時間Tは、環境音速をVとすると、T=L/Vである。素子302A0から、コンベックスプローブの曲率中心Oから中心角θだけ離れたスキャン方向の位置にある素子302Aiで受信されるまで経過時間をT+ΔTとすると、素子302A0と302Aiとの間の遅延時間ΔTは、次式により表される。
従って、超音波が送波されて格子点Xで時間T後に反射された後、各素子により受信されるまでの経過時間[2T,2T+ΔT]を測定することにより、格子点Xまでの距離Lと環境速度Vを一意に求めることができる。
ここで、ある格子点の環境音速Vとは、その格子点から超音波探触子までの領域の平均音速であり、画像のコントラスト、シャープネスが最も高くなる音速である。従って、環境音速の判定方法としては、例えば、画像のコントラスト、スキャン方向の空間周波数、分散などから判定する方法(例えば、特開平8-317926号公報)を適用することができる。
図4に戻って、上記のようにして深さIの格子点に対応する環境音速が算出されると、その環境音速と格子点で反射した超音波の受信信号(受信時刻情報)とに基づいて格子点の空間位置(深さD[I])を算出する(ステップS204)。
即ち、深さD[I]の算出は、深さIの格子点で超音波が反射されてから格子点Iの直下(最短伝播時間)の素子で受信されるまでの時間をT[I]/2とすると、ステップS202で算出した環境音速Vと、時間T[I]/2とに基づいて次式により行うことができる。
[数2]
D[I]=V×T[I]/2
尚、ステップS202における環境音速の算出及びステップS204における深さD[I]の算出は、コンベックスプローブ面からの深さIの同心円上の格子点毎に算出してもよいし、スキャン方向の被検体の媒質は均一と仮定して1つの格子点に対する環境音速及び深さのみを算出し、他の格子点についてはその算出した値を適用してもよい。
D[I]=V×T[I]/2
尚、ステップS202における環境音速の算出及びステップS204における深さD[I]の算出は、コンベックスプローブ面からの深さIの同心円上の格子点毎に算出してもよいし、スキャン方向の被検体の媒質は均一と仮定して1つの格子点に対する環境音速及び深さのみを算出し、他の格子点についてはその算出した値を適用してもよい。
続いて、深さIが0(即ち、着目領域内で最も浅い格子点Aの深さ(図2参照))か否かを判別する(ステップS206)。I=0の場合(「Yes」の場合)には、ステップS208に遷移する。ステップS208では、コンベックスプローブ面から深さI(I=0)までの深さD[0]が、十分に浅い場合(例えば、格子点Bの深さ方向の間隔程度の場合)には、コンベックスプローブ面と格子点Aとの間の領域も着目領域と判断し、ステップS202で算出した環境音速を格子点Aに対応する局所音速V[0]とし、一方、深さD[0]が深い場合には、コンベックスプローブ面と格子点Aとの間の領域は着目領域ではないと判断して格子点Aに対応する局所音速の測定は行わない。
一方、ステップS206において、I≠0の場合(「No」の場合)には、ステップS210に遷移し、ここで、深さIの格子点とこの格子点よりも1段浅い格子点との間の各々の領域において平均音速である局所音速V[I]を、浅い格子点の空間位置(深さD[I-1])と各格子点で反射した超音波の受信信号とに基づいて算出する。
以下、図6を参照しながら局所音速V[I]の算出方法について説明する。
いま、図6に示すように深さI=1の格子点B1iと、深さI=0の格子点Ai+1とに着目する。また、格子点A1〜Anと格子点B1iとの間の領域の局所音速V[1]を、音速VAと仮定する。
格子点A1〜Anの空間位置(深さD[0])は、ステップS204にて算出されており、既知である。また、仮定音速VAの下で、格子点B1iの空間位置を算出することができる。つまり、格子点B1iと同一走査線上の格子点Aiとの、同一走査線位置の素子における受信時刻(最小受信時刻)の差分をTとすると、格子点B1iは格子点Aiに対して走査線方向にVA×T/2だけ深くに位置する事となる。格子点B1iと各格子点A1〜Anの空間位置及び仮定音速VAに基づいて、格子点B1iから各格子点A1〜Anへの伝播時間を求める事ができる。例えば、格子点B1iから格子点Ai+1への伝播時間は、次式で与えられる伝播距離をVAで除することによって求められる。ここで、d=VA×T/2である。
一方、各格子点A1〜Anから各素子への伝播時間は、予め測定されている。つまり各格子点A1〜Anにおける環境音速(局所音速V[0])および同一走査線位置の素子における受信時刻(最小受信時刻)から与えられる。又は、各格子点の空間位置と環境音速(局所音速V[0])から求めても良い。
以上、格子点B1iから各格子点A1〜Anへの伝播時間、および各格子点A1〜Anから各素子への伝播時間を求めた後に、フェルマーの原理「波は最短時間で到達する経路を選ぶ」に基づき、格子点B1iから各々の素子までの伝播時間として、格子点B1iから各格子点A1〜Anまでの伝播時間と各格子点A1〜Anから各々の素子までの伝播時間の和が最小となる時間を採用する。例えば、図6において格子点B1iから素子Eiまでの伝播時間として「・・・格子点B1i→格子点Ai+l-1→素子Ei、点B1i→格子点Ai+l→素子Ei、点B1i→格子点Ai+l+1→素子Ei、・・・」の各経路の伝播時間の内、最小となる伝播時間を採用する。ここで、最短時間の経路探索を十分に細かい間隔で実施するために、各格子点A1〜Anの空間位置および環境音速から、より細密間隔の格子点A’1〜A’mの空間位置および環境音速を補間演算により求め、格子点A1〜Anの代わりに用いて格子点B1iから各素子までの伝播時間を求めても良い。
一方、格子点B1iから各素子への伝播時間は、実際の格子点B1iでの反射の各素子受信信号から得られる。つまり、格子点B1iでの反射の各素子受信信号から、既に述べた方法で環境音速を求めることができ、これと格子点B1iの同一走査線位置の素子における受信時刻(最小受信時刻)から得る事ができる。これら2種類の方法で求めた格子点B1iから各素子への伝播時間の誤差が最小となるときの仮定音速VAを、真の音速(局所音速V[1])として算出することができる。
同様にして、他の各格子点B11, B12, …,についても局所音速V[1]を算出する。格子点A1〜AnとB11〜B1nとの間の媒質が不均一の場合、それぞれ算出される局所音速V[1]も異なる速度になることは言うまでもない。
また、上記のようにして任意の深さIの格子点B(I)の局所音速V[I]が算出されると、格子点B(I)の空間位置(深さD[I])は、次式により算出することができる。
[数4]
D[I]=D[I-1]+V[I]×(T[I]−T[I-1])/2
尚、T[I],T[I-1]は、2つの格子点B(I)、B(I-1)からの受信時刻(B(I-1)およびB(I-2)と同一走査線位置の素子における受信時刻(最小受信時刻))である。また、ステップS210では、同心円状の深さの各格子点B(I)1, B(I)2,…,B(I)nのうちの1つの深さD[I]を算出し、これを他の格子点に適用してもよいし、深さD[I]1,D[I]2,…,D[I]nをそれぞれ算出するようにしもよい。このようにして、格子点B(I)の深さD[I]が求まると、格子点B(I)の空間位置(図2に示すようにコンベックスプローブの曲率中心Oを原点とするxy座標上の位置)を算出することができる。
D[I]=D[I-1]+V[I]×(T[I]−T[I-1])/2
尚、T[I],T[I-1]は、2つの格子点B(I)、B(I-1)からの受信時刻(B(I-1)およびB(I-2)と同一走査線位置の素子における受信時刻(最小受信時刻))である。また、ステップS210では、同心円状の深さの各格子点B(I)1, B(I)2,…,B(I)nのうちの1つの深さD[I]を算出し、これを他の格子点に適用してもよいし、深さD[I]1,D[I]2,…,D[I]nをそれぞれ算出するようにしもよい。このようにして、格子点B(I)の深さD[I]が求まると、格子点B(I)の空間位置(図2に示すようにコンベックスプローブの曲率中心Oを原点とするxy座標上の位置)を算出することができる。
上記のように深さの異なる格子点間の領域の局所音速を算出する際に、浅い側の格子点の空間位置(深さ)を、浅い側の格子点の環境音速に基づいて算出するようにしたが、これに限らず、上記[数4]式により格子点B(I)の空間位置(深さD[I])が算出されると、次の深さの格子点の局所音速を算出する場合には、[数4]式により算出した格子点B(I)の空間位置(深さD[I])を、浅い側の格子点の空間位置として使用してもよい。
[局所音速測定の第2の実施形態]
次にリニアプローブの場合の局所音速算出方法を図7を参照して説明する。
次にリニアプローブの場合の局所音速算出方法を図7を参照して説明する。
以下の説明では、超音波探触子300の各素子302が配置された素子面S2に平行な方向をX方向とし、X方向に垂直な方向(被検体OBJの深さ方向)をY方向とする。
図7に示すように、被検体OBJ内の領域A内の着目領域ROIを代表する格子点をBROIとし、最も浅い格子点をA1,A2,…,Anとする。
第1の実施形態と同様に格子点A1〜Anから超音波探触子300の素子面S2に至る領域Bの環境音速を各々算出し、算出した環境音速に基づいて格子点A1〜Anの空間位置(深さ)を算出する。
図7に示すように、格子点BROIと格子点A1,A2,…との間の領域Aにおける局所音速をVAと仮定する。仮定音速VAと格子点A1,A2,…での反射の各素子302における受信信号に基づき、格子点BROIから各素子302までの伝播時間を仮想的に求める。
具体的には、まず仮定音速VAと、格子点BROIおよび同一走査線上の格子点Anからの受信時刻(同一走査線位置の素子における受信時刻(最小受信時刻))の差分Tに基づいて格子点BROIのAnに対する深さをVA×T/2として求める。次に格子点A1,A2,…の各々の深さを、格子点での反射の各素子受信信号から求めた環境音速VBおよび受信時刻TA(最小受信時刻)に基づいてVB×TA/2として求める。すると格子点BROIと格子点A1,A2,…の深さおよびスキャン方向の位置関係と仮定音速VAに基づいて、格子点BROIから格子点A1,A2,…への伝播時間を算出する事ができる。
また、格子点A1,A2,…から各素子への伝播時間を、各々格子において環境音速VBおよび受信時刻TA(最小受信時刻)から算出する。
以上、格子点BROIから格子点A1,A2,…への伝播時間、および格子点A1,A2,…から各素子への伝播時間を求めた後に、フェルマーの原理「波は最短時間で到達する経路を選ぶ」に基づき、格子点BROIから各々の素子までの伝播時間として、格子点BROIから格子点A1,A2,…までの伝播時間と格子点A1,A2,…から各々の素子までの伝播時間の和が最小となる時間を採用する。例えば図7において格子点BROIから素子X’’までの伝播時間として「・・・格子点BROI→格子点X’-1→素子X’’、 格子点BROI→格子点X’→素子X’’、 格子点BROI→格子点X’+1→素子X’’・・・」の各経路の伝播時間の内、最小となる伝播時間を採用する。ここで、最短時間の経路探索を十分に細かい間隔で実施するために、格子点A1,A2,…の空間位置および環境音速から、より細密間隔の格子点A’1,A’2,…の空間位置および環境音速を補間演算により求め、格子点A1,A2,…の代わりに用いて格子点BROIから各素子までの伝播時間を求めても良い。
一方、格子点BROIから各素子までの伝播時間は、実際の格子点BROIでの反射の各素子受信信号から得られる。つまり、格子点BROIでの反射の各素子受信信号から環境音速を求めることができ、これとBROIの同一走査線位置の素子における受信時刻(最小受信時刻)から得ることができる。これら2種類の方法で求めた格子点BROIから各素子への伝播時間の誤差が最小となるときの仮定音速VAを、真の音速(局所音速)として算出することができる。領域Aにおける局所音速が求められると、格子点BROIの空間位置(深さ)も求められる([数5]式参照)。格子点BROIの位置を同じ深さ(同じ受信時刻(最小受信時刻))で走査線位置をずらしながら、それぞれ局所音速及び実空間上の深さを上記の様にして算出する。
次に、格子点の深さを深い方にずらして設定する。つまり図7において格子点A1,A2,…として格子点B11,B12,…、格子点BROIとして格子点B21,B22,…の各々の格子点を設定する。そして同様にして各々の格子点B21,B22,…に対して局所音速及び実空間上の深さを算出する。この時、浅い側の格子点B11,B12,…の空間位置(深さ)は、第1の実施形態と同様に各格子点B11,B12,…の環境音速Vと、各格子点と同一走査線位置の素子における受信時刻(最小受信時刻)T[1]から前記[数2]式によって算出するが、その代わりに、既に[数5]式により算出した各格子点B11,B12,…の空間位置(深さ)を使用しても良い。この様にして、浅い方から深い方に向かって順次、各格子点に対して局所音速の算出と空間位置の算出とを繰り返す。
ここで、深さIの各格子点の実空間の深さを、D[I][J]とすると、深さD[I][J]は、次式により算出することができる。
[数5]
D[I][J]=D[I-1][J]+V[I][J]×(T[I]−T[I-1])/2
V[I][J]はスキャン方向位置Jにおいて深さIと深さI-1の格子点間で求めた局所音速、T[I]とT[I-1]は各々深さIと深さI-1の格子点の反射の受信時刻(最小受信時刻)を示す。
D[I][J]=D[I-1][J]+V[I][J]×(T[I]−T[I-1])/2
V[I][J]はスキャン方向位置Jにおいて深さIと深さI-1の格子点間で求めた局所音速、T[I]とT[I-1]は各々深さIと深さI-1の格子点の反射の受信時刻(最小受信時刻)を示す。
図8は、上記のようにして算出された各格子点の空間位置(深さ)の一例を示している。
図8に示すようにスキャン方向の位置が異なる各格子点において、超音波が伝播する媒質が異なる場合(局所音速が異なる場合)には、受信時刻(最小受信時刻)が同じ格子点の実空間上の位置(深さ)も異なることとなる。そこで、浅い側の格子点の深さを環境音速の測定により算出し、その浅い側の格子点の深さを使用して浅い側の格子点と深い側の格子点との間の領域の局所音速を算出する。
[局所音速測定の第3の実施形態]
図8に示す例では、各走査線は平行と仮定して深さの異なる各格子点の深さ、及び上下の格子点間の局所音速を求めるようにしたが、実際には、媒質の音速がスキャン方向に均一でない場合、走査線は屈折により平行ではない。
図8に示す例では、各走査線は平行と仮定して深さの異なる各格子点の深さ、及び上下の格子点間の局所音速を求めるようにしたが、実際には、媒質の音速がスキャン方向に均一でない場合、走査線は屈折により平行ではない。
本実施形態では、走査線が屈折する事により図9に示すように予め設定した受信時刻が同じ格子点の実空間上の深さのみでなくスキャン方向の位置も変化してしまう事を考慮して、格子点の空間位置を正しく求める方法について説明する。
ここで格子点は超音波送信によって反射を生じる点、つまり超音波送信によって音圧が高くなる点である事、また走査線とはその軌跡である事を踏まえ、走査線上の各格子点からの反射の各素子受信信号(各素子受信時刻)が満たす特徴を考察する。格子点つまり送信音圧が高くなる点とは、各素子にある送信遅延パターンを与えて送信した各素子送信波の位相が一致する点であり、従ってこの点から各素子に向けて同時に出射される反射波が各素子に到着する受信遅延パターンは送信遅延パターンを反転したパターンに似ることとなる。そして送信遅延パターンにおいて送信素子群の中心素子の送信時刻を最も遅く設定すると、逆に受信信号においては中心素子の受信時刻が最も速くなることとなる。実空間において走査線が屈折して、その上の各格子点の空間位置が変わってしまうとしても、各格子点での反射の各素子受信信号において中心素子の受信時刻が最も速いという特徴は変わらない。逆に、走査線上に無い点からの反射の各素子受信信号において最も速い受信時刻の素子は中心素子とは異なることとなる。図10はこの事を模式的に示している。簡単のため超音波探触子300の素子iを中心に、周囲素子程速い遅延設定の送信により、素子面と直交する方向に走査線が形成される(屈折しない)としている。走査線上の深さIの格子点B(I)からの反射の各素子受信時刻は、図10の破線で示すようになり送信の中心素子i(走査線位置の素子)で最短時間となる。
一方、走査線上に無い深さIの格子点からの反射の各素子受信時刻は図10の実線で示すようになり、最短時間の素子位置が送信中心とずれる(ΔXだけスキャン方向にずれている)。
この特徴「格子点が走査線上にある場合、その反射の受信時刻が最短となる素子位置が送信中心素子(走査線位置の素子)と一致し、逆に走査線上に無い場合、受信時刻が最短となる素子位置が送信中心素子とずれる」に着目する。具体的には深さI-1の各格子の各素子受信信号に基づいて深さIの格子点の各素子受信信号を再現した時の、中心ずれに着目し、走査線の屈折方向を求める。
具体的に説明する。まず、図11の様に深さIの格子点B(I)iと深さI-1の格子点・・・B(I-1)i-1,B(I-1)i,B(I-1)i+1・・・の間の局所音速V[I]を仮定し、また格子点B(I)iおよびB(I-1)iが乗る深さIにおける走査線(図11に点線で示す)の方向θ(θはプローブ面垂直方向とのなす角度)を仮定する。格子点B(I-1)iの空間位置(深さX及びスキャン方向位置Y)は既知のため、V[I]とθを仮定する事で格子点B(I)iの空間位置も求まる([数6]式参照)。また格子点・・・B(I-1)i-1,B(I-1)i,B(I-1)i+1・・・の空間位置および各素子受信時刻は既知のため格子点B(I)iから各素子までの伝播時間は前述したフェルマーの原理に基づく方法で求まる。
この格子点B(I)iから各素子までの伝播時間の内、最短伝播時間となる素子を判定し、それが送信中心の素子(走査線位置の素子)とずれる場合、仮定したθは誤りと判断する。最短伝播時間となる素子が送信中心の素子と一致するθを探索し、求める。θの初期値を格子点B(I-1)iが乗る深さI-1における走査線方向としても良い。
次に、この方向の走査線(点線)の上に格子点B(I)iがある前提の下、局所音速V[I]を仮定して[数6]式に従ってB(I)iの空間位置を求め、前述したフェルマーの原理に基づく方法で格子点B(I)iから各素子までの伝播時間を求める。これと格子点B(I)iでの反射の各素子受信信号から得られる格子点B(I)iから各素子までの伝播時間との誤差が最小となるように局所音速V[I]を探索し、求める。ここではθを求めた後V[I]を求めたが、「最短伝播時間の素子の送信中心素子との一致」および「各素子伝播時間の誤差最小」を評価基準としてθとV[I]を同時に振って探索し、求めても良い。深さIの格子点の空間位置(X[I],Y[I])は、次式に示すように局所音速V[I]、走査線の方向θ[I](プローブ面垂直方向とのなす角度)及び深さIと深さI-1の各格子点の受信時刻(最小受信時刻)T[I]とT[I-1]から求められる。
[数6]
X[I]=X[I-1]+sinθ[I]×V[I]×(T[I]−T[I-1])/2
Y[I]=Y[I-1]+cosθ[I]×V[I]×(T[I]−T[I-1])/2
ここで、浅い側の格子点・・・B(I-1)i-1,B(I-1)i,B(I-1)i+1・・・の空間位置は第1および第2の実施形態と同様に各格子点・・・B(I-1)i-1,B(I-1)i,B(I-1)i+1・・・の環境音速Vと、各格子点と同一走査線位置の素子における受信時刻(最小受信時刻)T[I-1]から前記[数2]式によって算出するが、その代わりに、既に前記[数6]式により算出した各格子点・・・B(I-1)i-1,B(I-1)i,B(I-1)i+1・・・の空間位置を使用しても良い。環境音速Vから前記[数2]式によって算出される空間位置は深さである一方、前記[数6]式によって算出される空間位置は深さ及びスキャン方向位置となる。このようにして走査線の屈折も考慮して格子点の空間位置を求めることにより局所音速を精度よく算出することができる。
X[I]=X[I-1]+sinθ[I]×V[I]×(T[I]−T[I-1])/2
Y[I]=Y[I-1]+cosθ[I]×V[I]×(T[I]−T[I-1])/2
ここで、浅い側の格子点・・・B(I-1)i-1,B(I-1)i,B(I-1)i+1・・・の空間位置は第1および第2の実施形態と同様に各格子点・・・B(I-1)i-1,B(I-1)i,B(I-1)i+1・・・の環境音速Vと、各格子点と同一走査線位置の素子における受信時刻(最小受信時刻)T[I-1]から前記[数2]式によって算出するが、その代わりに、既に前記[数6]式により算出した各格子点・・・B(I-1)i-1,B(I-1)i,B(I-1)i+1・・・の空間位置を使用しても良い。環境音速Vから前記[数2]式によって算出される空間位置は深さである一方、前記[数6]式によって算出される空間位置は深さ及びスキャン方向位置となる。このようにして走査線の屈折も考慮して格子点の空間位置を求めることにより局所音速を精度よく算出することができる。
[局所音速測定の第4の実施形態]
図12は、特許文献1に開示されたホイヘンスの原理を利用して局所音速を算出する方法を模式的に示した図である。
図12は、特許文献1に開示されたホイヘンスの原理を利用して局所音速を算出する方法を模式的に示した図である。
図12(b)に示すように下格子点A1,A2,…からの受信波(それぞれWA1,WA2,…)の(伝播時間T及び遅延時間ΔT)を既知として、上格子点BROIにおける局所音速を仮定して決めたBROIとA1,A2,…の位置関係から、ホイヘンスの原理に基づき下格子点A1,A2,…からの受信波を仮想的に合成した受信波WSUMと上格子点BROIからの受信波WXとが一致することを利用して、上格子点BROIにおける局所音速を求める。
ここで、下格子点A1,A2,…の空間座標は、前述した手法により与えられている。
図12に示すように、上格子点BROIでの反射の各素子受信信号に基づいて上格子点BROIを反射点としたときの受信波WXを算出する。また、上格子点BROIから各下格子点A1,A2,…までの伝播時間をそれぞれ算出する。これらの伝播時間は仮定音速VAを仮定することにより上格子点BROIと各下格子点A1,A2,…との距離を求めることができるため、算出することができる。上格子点BROIと各下格子点A1,A2,…との距離は、既に測定された下格子点の空間位置と、仮定音速VAの下で算出された上格子点の空間位置とから算出することができる。
各格子点A1,A2,……での反射の各素子受信信号に基づいて下格子点A1,A2,…を反射点としたときの受信波WA1,WA2,…を算出する。そして、これらの受信波WA1,WA2,…を、各格子点A1,A2,…毎に算出した伝播時間だけ遅延させて合成することにより、仮想的な合成受信波WSUMを算出する。
次に、上記受信波WXと合成受信波WSUMの誤差を算出する。受信波WXと合成受信波WSUMの誤差は、互いの相互相関をとる方法、受信波WXに合成受信波WSUMから得られる遅延を掛けて位相整合加算する方法、又は逆に合成受信波WSUMに受信波WXから得られる遅延を掛けて位相整合加算する方法により算出される。ここで、受信波WXから遅延を得るには、格子点BROIを反射点とし、格子点BROIにおける環境音速Vで伝播した超音波が各素子に到着する時刻を遅延とすればよい。また、合成受信波WSUMから遅延を得るには、隣り合う素子間での合成受信波の位相差から等位相線を抽出し、その等位相線を遅延とするか、又は単に各素子の合成受信波の最大(ピーク)位置の位相差を遅延としてもよい。また、各素子からの合成受信波の相互相関ピーク位置を遅延としてもよい。位相整合加算時の誤差は、整合加算後の波形のpeak to peakとする方法、又は包絡線検波した後の振幅の最大値とする方法により求められる。
上記受信波WXと合成受信波WSUMの誤差は、仮定音速VAによって変化する。そして、誤差が最小となるときの仮定音速を、着目領域における真の音速(局所音速)として判定する。そして、着目領域における局所音速が求まると同時に前述した式により上格子点BROIの空間位置も求まる。格子点BROIの位置をスキャン方向にずらしながら、それぞれの格子点位置において上述した方法によって局所音速および空間位置を算出し、更に格子点BROIの位置を浅い方から深い方にずらしながら、それぞれの格子点位置において局所音速および空間位置を算出する事で、各格子点位置において正確な局所音速を取得することができる。
<その他の実施形態>
本発明によれば、被検体の各領域における局所音速を精度よく算出することができ、被検体の局所音速の分布を示す局所音速マップを作成することができる。そして、表示部には、振幅画像(Bモード画像)を単独で表示したり、Bモード画像に替えて局所音速マップの画像(音速に応じて輝度や色分けした画像)を表示したり、Bモード画像と音速マップの画像とを並べて、又は重ねて表示させることができる。
本発明によれば、被検体の各領域における局所音速を精度よく算出することができ、被検体の局所音速の分布を示す局所音速マップを作成することができる。そして、表示部には、振幅画像(Bモード画像)を単独で表示したり、Bモード画像に替えて局所音速マップの画像(音速に応じて輝度や色分けした画像)を表示したり、Bモード画像と音速マップの画像とを並べて、又は重ねて表示させることができる。
尚、この実施形態では、リニアプローブの走査線が屈折する場合において、各格子点の空間位置を算出する方法について説明したが、コンベックスプローブの走査線が屈折する場合にも同様にして各格子点の空間位置を算出することができ、その算出結果に基づいて局所音速を精度よく求めることができる。
また、ここで提示した実施形態のみでなく、特許文献1に開示されている何れの局所音速算出方法に対しても本発明の手法は有効である。例えば「上格子点から各素子への伝播時間について、下格子点での反射の各素子受信信号を用いてスネルの法則により求めた伝播時間と実測の伝播時間の誤差を評価する方法」や「下格子点からの受信波を合成して生成した遅延に基づき上格子点付近の画像生成し、先鋭度を評価する方法」などの実施形態においても各格子点の空間位置を求める本発明の手法は有効である。つまり、これらの実施形態においても上格子点から各素子への伝播時間や遅延を下格子点からの各素子受信信号を用いて仮想的に生成する上で上格子点と各下格子点との位置関係を知る必要があり、コンベックスプローブの場合やリニアプローブでも音速がスキャン方向に均一でなく走査線が屈折してしまう場合には誤差を生ずるため、本発明の手法によって上格子点と各下格子点との正確な位置関係を求める事で局所音速を精度よく算出することができる。
また、これらの実施形態において上格子点や各下格子点から各素子への伝播時間を各格子点での反射の実測の各素子受信信号に基づいて求める方法としては種々の方法がある。
一つの方法は、まず格子点での反射の各素子受信信号から環境音速を求めた後に、これと前記格子点での反射の最小受信時刻(格子点が乗る走査線位置の素子における受信時刻)に基づいて求める方法であるが、他に、前記格子点での反射の各素子受信信号に位相収差解析を実施して求めた各素子受信時刻に基づいて求めても良い。ここで位相収差解析は公知の方法、例えば特開平6−105841に開示されている方法で良い。または、前記格子点での反射の環境音速を求め、これと前記格子点での反射の最小受信時刻に基づいて前記格子点での反射の仮の各素子受信時刻を求めた後に、この受信時刻を基点として各素子受信信号に位相収差解析を実施して真の各素子受信時刻を求めても良い。各格子点から各素子への伝播時間を求めるために環境音速の代わりに、各素子受信時刻を用いる事によって、被検体の音速が不均一で各素子受信時刻を環境音速で近似しきれない場合でも精度良く局所音速を求めることができる。また、これらの実施形態において上格子点や各下格子点からの各素子受信波を各格子点での反射の実測の各素子受信信号に基づいて求める方法にも種々の方法がある。一つの方法は、格子点での反射の各素子受信信号から環境音速を求めた後に、これと格子点での反射の最小受信時刻に基づいて求める方法であるが、他の方法として、直接、格子点での反射の各素子受信信号を用いても良いし、各素子受信信号から、格子点での反射を想定した受信時刻の範囲のみを抽出した信号を用いても良い。
また、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
10…超音波診断装置、100…中央処理装置(CPU)、102…格納部、104…表示部、106…データ解析計測部、200…操作入力部、202…操作卓、204…ポインティングデバイス、300…超音波探触子、302…超音波トランスデューサ(素子)、400…送受信部、402…送信回路、404…受信回路、500…画像信号生成部、502…信号処理部、506…画像処理部、508…画像メモリ、510…D/A変換器、600…再生部
Claims (11)
- 超音波を被検体に送信するとともに、該被検体によって反射される超音波を受信して受信信号を出力する複数の素子を含む超音波探触子と、
前記超音波探触子から被検体内の2以上の深さの異なる点で反射した超音波の受信信号を取得する受信信号取得手段と、
前記受信信号取得手段により取得された受信信号に基づいて前記2以上の深さの異なる点のうちの浅い点の空間位置を算出する第1の空間位置算出手段と、
前記受信信号取得手段により取得された受信信号と前記第1の空間位置算出手段により算出された前記浅い点の空間位置とに基づいて前記浅い点から該浅い点よりも深い深い点までの領域の平均音速である局所音速を算出する局所音速算出手段と、を備え、
前記第1の空間位置算出手段は、前記浅い点で反射した超音波の受信信号に基づいて、該浅い点から前記超音波探触子までの領域の平均音速である環境音速を算出する環境音速算出手段を有し、前記算出した環境音速と前記浅い点で反射した超音波の受信信号とに基づいて前記浅い点の空間位置を算出する超音波診断装置。 - 前記被検体内の2以上の深さの異なる点で反射した超音波の受信信号とは、2以上の位置の異なる素子における受信信号である請求項1に記載の超音波診断装置。
- 前記被検体内の2以上の深さの異なる点で反射した超音波の受信信号を取得する際に、前記被検体内の2以上の異なる深さに対して前記超音波をそれぞれ送信フォーカスする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
- 前記局所音速算出手段は、
前記算出された前記浅い点の空間位置と、前記深い点と前記浅い点との間の仮定音速を仮定したときの当該仮定音速と、前記受信信号取得手段により取得された受信信号とに基づいて前記深い点の空間位置を算出する第2の空間位置算出手段と、
前記第1、第2の空間位置算出手段により算出した前記浅い点及び前記深い点の空間位置、及び前記仮定音速に基づいて前記深い点で反射した超音波が前記浅い点に到達するまでの第1の伝播時間を算出する手段と、
前記受信信号取得手段により取得した前記浅い点で反射した超音波の受信信号に基づいて前記浅い点から各素子に到達するまでの第2の伝播時間を算出する手段と、
前記深い点で反射した超音波が各々の素子に到達するまでの伝播時間として、前記第1の伝播時間と第2の伝播時間とを加算した伝播時間の内、最小となる伝播時間を採用する手段と、を有し、
前記受信信号取得手段により取得した前記深い点で反射した超音波の受信信号に基づいて前記深い点で反射した超音波が各々の素子に到達するまでの伝播時間を算出し、この伝播時間と前記算出した伝播時間との誤差が最小となる前記仮定音速を前記局所音速として算出する請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波診断装置。 - 前記局所音速算出手段は、
前記算出された前記浅い点の空間位置と、前記深い点と前記浅い点との間の仮定音速を仮定したときの当該仮定音速と、前記受信信号取得手段により取得された受信信号とに基づいて前記深い点の空間位置を算出する第2の空間位置算出手段と、
前記第1、第2の空間位置算出手段により算出した前記浅い点及び前記深い点の空間位置、及び前記仮定音速に基づいて前記深い点で反射した超音波が前記浅い点に到達するまでの伝播時間を算出する手段と、
前記受信信号取得手段により取得した前記深い点で反射した超音波の受信信号に基づいて前記深い点を反射点としたときの第1の受信波を取得する第1の受信波取得手段と、
前記受信信号取得手段により取得した前記浅い点で反射した超音波の受信信号及び前記算出した伝播時間に基づいて前記深い点を反射点とし、前記浅い点を通過する第2の受信波を取得する第2の受信波取得手段と、を備え、
前記取得した第1の受信波と第2の受信波との誤差が最小となる前記仮定音速を、前記局所音速として算出する請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波診断装置。 - 前記環境音速算出手段は、前記深い点で反射した超音波の受信信号に基づいて、該深い点から前記超音波探触子までの領域の平均音速である環境音速を更に算出し、
前記第1の受信波取得手段は、前記深い点を反射点としたときの第1の受信波を、前記深い点で反射した超音波の受信信号及び前記深い点に対応して算出した環境音速に基づいて算出し、
前記第2の受信波取得手段は、前記深い点を反射点とし、前記浅い点を通過する第2の受信波を、前記算出した伝播時間、前記浅い点で反射した超音波の受信信号及び前記浅い点に対応して算出した環境音速に基づいて算出する請求項5に記載の超音波診断装置。 - 前記第2の空間位置算出手段は、前記算出された前記浅い点の空間位置と、前記深い点と前記浅い点との間の仮定音速を仮定したときの当該仮定音速と、前記受信信号取得手段により取得された受信信号とに基づいて前記深い点の深さ方向の位置を算出し、前記深い点から最短時間で受信信号を受信すべき前記超音波探触子の素子の位置と、前記深い点から最短時間で受信信号を受信した前記超音波探触子の素子の位置とに基づいて前記深い点の深さ方向と直交する方向の位置を算出する請求項4から6のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
- 前記局所音速算出手段により算出された局所音速に基づいて前記被検体の領域ごとの局所音速を示す音速マップを作成する音速マップ作成手段を更に備えた請求項1から7のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
- 前記超音波探触子から出力される受信信号の振幅を点の輝度により表す振幅画像を作成する振幅画像作成手段を更に備えた請求項1から8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
- 前記局所音速算出手段により算出された局所音速に基づいて前記被検体の領域ごとの局所音速を示す音速マップを作成する音速マップ作成手段と、
前記超音波探触子から出力される受信信号の振幅を点の輝度により表す振幅画像を作成する振幅画像作成手段と、
前記作成された音速マップ及び振幅画像を表示する表示手段と、
を備えた請求項1から7のいずれか1項に記載の超音波診断装置。 - 複数の素子を含む超音波探触子から被検体内の2以上の深さの異なる点に超音波を送信し、前記深さの異なる点で反射した超音波の受信信号を取得する工程と、
前記取得された受信信号に基づいて2以上の深さの異なる点のうちの浅い点の空間位置を算出する工程と、
前記取得した受信信号と前記算出した前記浅い点の空間位置とに基づいて前記浅い点から該浅い点よりも深い深い点までの領域の平均音速である局所音速を算出する工程と、を含み、
前記浅い点の空間位置を算出する工程は、前記浅い点で反射した超音波の受信信号に基づいて、該浅い点から前記超音波探触子までの領域の平均音速である環境音速を算出する工程を含み、前記算出した環境音速と前記浅い点で反射した超音波の受信信号とに基づいて前記浅い点の空間位置を算出する超音波診断方法。
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WO2017056566A1 (ja) * | 2015-09-29 | 2017-04-06 | 富士フイルム株式会社 | 音速算出システムおよび音速算出方法 |
-
2012
- 2012-06-11 JP JP2012132246A patent/JP2013255599A/ja active Pending
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WO2017056566A1 (ja) * | 2015-09-29 | 2017-04-06 | 富士フイルム株式会社 | 音速算出システムおよび音速算出方法 |
JPWO2017056566A1 (ja) * | 2015-09-29 | 2018-04-12 | 富士フイルム株式会社 | 音速算出システムおよび音速算出方法 |
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