JP6706504B2 - 親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法 - Google Patents
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(1)水中に分散した状態でパルスNMRのCPMG法により測定される1H核のスピンースピン緩和時間T2が500ms以下であり、
水中に分散した状態におけるアグロメレートの平均粒径Dupa50%が70nm〜200nmである
ことを特徴とする親水化カーボンブラック、
(2)上記(1)に記載の親水化カーボンブラックを含むことを特徴とする親水化カーボンブラック水性分散体、
(3)固形分濃度が3質量%〜25質量%である上記(2)に記載の親水化カーボンブラック水性分散体、
(4)pHが6.0〜9.0である上記(2)または(3)に記載の親水化カーボンブラック水性分散体、
(5)固形分濃度15質量%における電気伝導度が3mS/cm以下である上記(2)〜(4)の何れかに記載の親水化カーボンブラック水性分散体、
(6)インクジェットプリンターインク用である上記(2)〜(5)のいずれかに記載の親水化カーボンブラック水性分散体、
(7)水性媒体中で、カーボンブラック100質量部に対し、30〜500質量部の親水化剤を少量ずつ順次添加することにより親水化処理して親水化処理物を得た後、
得られた親水化処理物を遠心分離して、
水中に分散した状態でパルスNMRのCPMG法により測定される1H核のスピンースピン緩和時間T2が500ms以下であり、
水中に分散した状態におけるアグロメレートの平均粒径Dupa50%が70nm〜200nmである
親水化カーボンブラックの水性分散体を得る
ことを特徴とする親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法、
を提供するものである。
本発明に係る親水化カーボンブラックは、水中に分散した状態でパルスNMRのCPMG法により測定される1H核のスピンースピン緩和時間T2が500ms以下であり、水中に分散した状態におけるアグロメレートの平均粒径Dupa50%が70nm〜200nmであることを特徴とするものである。
パルス法NMRは、近年その使用が急速に広がっており、パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法、ソリッドエコー法、CPMG法あるいは90°パルス法などが挙げられ、いずれも好適に用いることができるが、本発明における緩和時間T2はCPMG法により測定される1H核のスピンースピン緩和時間T2を意味する。
上記緩和時間T2の下限値は特に制限されないが、緩和時間T2は、通常、0.01ms以上である。
上記アグロメレートの平均粒径Dupa50%は水性媒体に分散した状態における親水化カーボンブラック粒子の凝集体の大きさに関連する特性と考えられる。上記親水化カーボンブラックのアグロメレートの平均粒径Dupa50%が70nm未満であると、インクジェットプリンターインク等の水性黒色インクに用いた場合に、粒径が小さく、紙の繊維間に沈降して印字濃度が低くなり易くなり、カーボンブラックのアグロメレートの平均粒径Dupa50%が200nmを超えると、水性媒体中で親水化カーボンブラックのアグロメレートが接触する確率が高くなり、水性分散体中で親水化カーボンブラックが凝集し易くなることから、インクジェットプリンターインク等の水性黒色インクに用いた場合に、印刷時にインクジェットプリンターのヘッド等から吐出することが困難になり易く、ノズル閉塞等のインク詰まりを生じ易くなる。
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体は、本発明に係る親水化カーボンブラックを含むことを特徴とするものである。
水性媒体を構成する水としては、イオン交換水(脱イオン水)や蒸留水等の精製水が挙げられる。
親水化カーボンブラック水性分散体のpHが6.0未満であると、親水化カーボンブラック表面に付与した酸性官能基の解離が妨げられ、粒子表面の電気的な反発作用が失われ凝集しやすくなるとともに、インクジェットプリンターインク等の水性インクに使用した場合に酸性度が高いために、印刷機のヘッド等が損耗し易くなる。
また、親水化カーボンブラック水性分散体のpHが9.0を超えると、分散体中のイオン濃度が過剰となり、塩析により凝集しやすくなるとともに、空気中の炭酸ガスを吸引し易くなって、分散体のpHが不安定になり易くなる。
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体において、固形分濃度15質量%における電気伝導度の下限は特に制限されないが、通常、0.5mS/cm以上である。
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体において、上記電気伝導度は、水性媒体中に分散した状態における分散液中のイオン濃度に関連する特性であると考えられ、本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体は、固形分濃度15質量%における電気伝導度が3mS/cmを超えると、分散液中のイオン濃度が過剰となり、分散体中に共存する雑塩の影響で、塩析によるフロック(凝集体)を形成し易くなる。
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法は、水性媒体中で、カーボンブラック100質量部に対し、30〜500質量部の親水化剤を少量ずつ順次添加することにより親水化処理して親水化処理物を得た後、得られた親水化処理物を遠心分離して、水中に分散した状態でパルスNMRのCPMG法により測定される1H核のスピンースピン緩和時間T2が500ms以下であり、水中に分散した状態におけるアグロメレートの平均粒径Dupa50%が70nm〜200nmである親水化カーボンブラックの水性分散体を得ることを特徴とするものである。
例えば、東海カーボン(株)製シースト5H、3H、NH、116HM、116、トーカブラック#5500、#4500、#4400や、旭カーボン(株)製F−200、SUNBLACK 270や、三菱化学(株)製ダイヤブラックSA、N234、II(IISAF)、N(N339)、SH(HAF)、MA600、#20、#3050、#3230や、キャボット社製ショウブラック N234、N339、MAF、VULCAN XC 72、BLACK PEARLS 480や、新日化カーボン(株)製ニテロン#200IS、#10や、デンカ(株)製デンカブラックFX−35、HS−100や、エボニックデグサ社製Colour Black FW200、FW2、FW285、FW1、FW18、S170、S160、Special Black 6、5、4、4A、Printex U、V、140U、140V、L6、3、HIBLACK 40B1、40B2、420B、150B、Corax HP1107、HP130、N234、N339、N351、MAF、N550、Purex HS55、HS45や、コロンビアン社製Raven 820、Conductex 7055ULTRA等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
また、カーボンブラックの親水化処理方法としては、過酸化水素、オゾン、オゾン水あるいはM2O2(Mはアルカリ金属)、重クロム酸塩、過マンガン酸塩等の酸化剤で処理する方法を挙げることができる。
さらに、カーボンブラックの親水化処理方法としては、ジアゾカップリング処理を実行する方法等を挙げることができ、例えば、p−ニトロ安息香酸を亜硝酸でアゾ化し、それをカーボンブラックの表面にアゾ化して結合させるアゾ化剤を用いた方法を挙げることができる。
その他、カーボンブラックの親水化処理方法としては、カーボンブラックを界面活性剤で処理する界面活性剤を用いた方法や、カーボンブラックの表面に高分子をマイクロカプセル化して水中に分散させるマイクロカプセルを用いた方法等を挙げることができる。
カーボンブラックの親水化処理方法は、得られる親水化処理物を水性媒体中に良好に分散させ得るものであればいずれの親水化方法であってもよく、酸化剤で酸化する方法が好ましい。
水性媒体を構成する水としては、イオン交換水(脱イオン水)や蒸留水等の精製水が挙げられる。
界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系いずれのものも使用することができる。
カーボンブラック100質量部に対する親水化剤の添加量は、30〜500質量部であり、100〜500質量部であることが好ましく、150〜500質量部であることがより好ましい。
親水化剤は、カーボンブラックに対し、少量ずつ連続して加えてもよいし、少量ずつ時間間隔を空けて(断続的に)添加してもよい。
親水化剤は、上述したように少量ずつ連続して加えてもよいが、少量ずつ断続的に添加する場合は、添加する総量の1/10〜1/2ずつ加えることが好ましく、添加する総量の1/10〜1/3ずつ加えることがより好ましく、添加する総量の1/10〜1/5ずつ加えることがさらに好ましい。
上記親水化剤は、上述したように少量ずつ連続して添加してもよいが、少量ずつ断続的に添加する場合は、5〜90分間毎に1回添加することが好ましく、5〜60分間毎に1回添加することがより好ましく、5〜30分間毎に1回添加することがさらに好ましい。
なお、さらに濃縮処理を施すことにより、本発明に係る親水化カーボンブラックを単離することもできる。
これに対して本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法においては、製造後にパルスNMRおよびレーザー回折・散乱方式粒子径分布測定装置等の光学的手段を用いた装置により、分散性に影響する因子である1H核のスピンースピン緩和時間T2やアグロメレートの平均粒径Dupa50%を迅速かつ的確に測定することができる。
このため、本発明によれば、水性媒体中で優れた分散性を発揮して、インクジェットプリンターインクに好適に使用することができる酸化カーボンブラック水性分散体を簡便かつ迅速に製造する方法を提供することができる。
これらの水溶性有機溶剤は、水とともに単独もしくは複数混合して用いることができる。
純水660Lに対し、東海カーボン(株)製カーボンブラック(窒素吸着比表面積135m2/g、DBP吸収量140cm3/100g)を50kg投入し、攪拌速度100rpmで攪拌混合したのち、過硫酸ナトリウムを10kg投入して65℃まで加温し、65℃に到達した後、温度を保持しながら30分毎に過硫酸ナトリウムを10kgずつ計10回投入して、合計で100kgの過硫酸ナトリウムを投入した後、65℃で6時間保持することにより酸化処理を施した。
上記酸化処理を施した処理液を、限外濾過膜(旭化成(株)製、AHP−1010、分画分子量 50000)にて残塩分離処理を施し、次いで水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH10に調整した。
上記pH10に調整した処理液において、処理液中の凝集体の平均粒径の調整を行うため、遠心分離機(三菱化工機(株)製、SJ−30F)へ3.0kg/分間の流量で送液して遠心分離し、上澄み液を回収した。
得られた上澄み液中の余剰の塩類の除去精製と水分除去による濃縮を行うため、再度上記限外濾過膜による処理を行い、固形分濃度(酸化カーボンブラック濃度)21質量%の分散液を得た。得られた分散液に精製水を添加して固形分濃度を20質量%に調整することにより目的とする酸化カーボンブラック水分散体を得た。
遠心分離機への送液量を3.0kg/分間から5.0kg/分間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で酸化カーボンブラック水分散体を得た。
過硫酸ナトリウムを10kgずつ計10回投入することに代えて、過硫酸ナトリウムを15kgずつ計10回投入して、合計で150kgの過硫酸ナトリウムを投入した以外は、実施例1と同様の方法で酸化カーボンブラック水分散体を得た。
遠心分離機への送液量を3.0kg/分間から5.0kg/分間に変更した以外は実施例3と同様の方法で酸化カーボンブラック水分散体を得た。
過硫酸ナトリウムを10kgずつ計10回投入することに代えて、過硫酸ナトリウムを12.5kgずつ計10回投入して、合計で125kgの過硫酸ナトリウムを投入するとともに、遠心分離機への送液量を3.0kg/分間から4.0kg/分間に変更した以外は実施例1と同様の方法でカーボンブラック水分散体を得た。
純水660Lに対し、東海カーボン(株)製カーボンブラック(窒素吸着比表面積135m2/g、DBP吸収量140cm3/100g)を50kg投入し、攪拌速度100rpmで攪拌混合したのち、酸化剤として過硫酸ナトリウムを100kg投入して65℃まで加温し、65℃で6時間保持することにより酸化処理を施した。
上記酸化処理を施した処理液を、限外濾過膜(旭化成(株)製、AHP−1010、分画分子量 50000)にて残塩分離処理を施し、次いで水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH10に調整した。
上記pH10に調整した処理液において、処理液中の凝集体の平均粒径の調整を行うため、遠心分離機(三菱化工機(株)製、SJ−30F)へ3.0kg/分の流量で送液して遠心分離し、上澄み液を回収した。
得られた上澄み液中の余剰の塩類の除去精製と水分除去による濃縮を行うため、再度上記限外濾過膜による処理を行い、固形分濃度(酸化カーボンブラック濃度)21質量%の分散液を得た。得られた分散液に精製水を添加して固形分濃度を20質量%に調整することにより目的とする酸化カーボンブラック水分散体を得た。
遠心分離機への送液量を3.0kg/分間から5.0kg/分間に変更した以外は、比較例1と同様の方法で酸化カーボンブラック水分散体を得た。
遠心分離機への送液量を3.0kg/分間から5.5kg/分間に変更した以外は、比較例1と同様の方法で酸化カーボンブラック水分散体を得た。
過硫酸ナトリウムの投入量を100kgから50kgに変更し、遠心分離機への送液量を3.0kg/分間から2.0kg/分間に変更した以外は、比較例1と同様の方法で酸化カーボンブラック水分散体を得た。
得られた各酸化カーボンブラック水分散体から所定量を測定試料として採取し、XiGo Nanotools社製「Acron Area」を用いて、測定核を水素核とし、測定温度30℃、周波数13MHzの測定条件で、CPMG法からスピン−スピン緩和時間T2を求めた。
各酸化カーボンブラック水分散体において、ヘテロダインレーザードップラー方式粒度分布測定装置「マイクロトラック社製、UPA model 9340」を用いてカーボンブラック粒子凝集体の粒径を測定して累積度数分布曲線を作成し、この累積度数分布曲線から50%累積度数の値をカーボンブラック粒子凝集体の平均粒径(D50)として求めた。
各酸化カーボンブラック水分散体の液温を25℃に保ち、東亜ディーケーケー(株)製「電気伝導率計 CM−30G」を用いて電気伝導度を測定した。
各酸化カーボンブラック水分散体の液温を25℃に保ち、東亜ディーケーケー(株)製「pH Meter HM−30G」を用いてpHを測定した。
各酸化カーボンブラック水分散体100gを測定試料とし、直径25mmのセルロース混合エステルメンブレンフィルター(膜孔径1μm)を用いて、2666.4Paの減圧下でろ過試験を行い、濾過通過量を測定した。
表3に示す含有割合になるように、各酸化カーボンブラックに対し、さらに、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、アセチルグリコール、ベンゾトリアゾール、防腐剤(アビシア(株)製プロキセルXL−2)、トリエタノールアミンを加えることにより、インクジェットプリンター用水性インクを各々調製し、インクジェットプリンターエプソン社製「EM−930C」用カートリッジに充填し、印字試験を行った。印字メディアは普通紙(Xerox4024)を用いた。
印字後、各印字濃度をマクベス濃度計「コールモーゲン社製、RD-927」を用いて反射光学濃度(O.D.値)を測定した。
また、表5より、水中に分散した状態におけるアグロメレートの平均粒径Dupa50%が70nm〜200nmの範囲外である場合(比較例3および比較例4)、印字自体不可能なものであったり(比較例3)、印字濃度が非常に低い(比較例4)ことが分かる。
表2および表5より、比較例1〜比較例4では、カーボンブラックに対し酸化剤を一回で投入したため、反応温度が急激に上昇し、カーボンブラックを酸化する前に自己分解する量が大半を占めてしまい、カーボンブラック表面に酸性官能基を均一に付与し得ず、緩和時間が500ms超になったと考えられる。
また、表2および表5より、比較例3および比較例4においては、分級条件を厳しくしたためにDupa50%が70〜200nmの範囲外になったと考えられる。
Claims (2)
- 水性媒体中で、カーボンブラック100質量部に対し、200〜300質量部の親水化剤を、前記カーボンブラック100質量部に対し20〜30質量部ずつ時間間隔を空けて断続的に添加することにより親水化処理して親水化処理物を得た後、
得られた前記親水化処理物を遠心分離して、
水中に分散した状態でパルスNMRのCPMG法により測定される1H核のスピンースピン緩和時間T2が200〜500msであり、
水中に分散した状態におけるアグロメレートの平均粒径Dupa50%が70nm〜200nmである
親水化カーボンブラックの水性分散体を得る
ことを特徴とする親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法。 - 前記時間間隔が5〜90分間である請求項1に記載の親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法。
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