JP6701898B2 - 磁気特性測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気特性測定装置に関し、特に、磁性材料の磁気特性を測定するために用いて好適なものである。
電磁鋼板等の磁性材料は、モータ、トランス、リアクトル等の電気機器の鉄心として用いられている。これらの電気機器において、入力エネルギーの一部は有効な仕事を行わずに磁性材料内で消費され、鉄損と呼ばれる損失が発生する。この鉄損を可能な限り小さくすることで電気機器の高効率化を実現することが求められている。
磁性材料の正確な磁気特性を把握することができれば、それを、数値解析の入力データとしたり、理論計算の前提となる物性値として用いたりすることで、数値解析や理論計算の結果を電機機器の設計に活用し、電機機器の高効率化を実現することができる。また、磁性材料の開発においても、磁性材料の正確な磁気特性を把握することで、低損失材料の開発に向けた製造プロセスの改善を行うことができる。したがって、磁性材料の正確な磁気特性を測定することが重要になる。
磁性材料の磁気特性を測定する手法として、非特許文献1(JIS C 2556)に記載されている電磁鋼板単板磁気特性試験方法がある。電磁鋼板単板磁気特性試験方法では、1枚の電磁鋼板(単板)を試料とする。試料とヨークとコイル(励磁コイル、Bコイル、Hコイル等)とを用いて単ヨーク枠または複ヨーク枠を構成する。励磁コイルに商用周波数の交流電圧を印加することにより、励磁コイルに交流電流が流れ、相互に磁気的に結合されているヨークおよび試料を励磁し、Bコイルに誘起される電圧により磁束密度を、Hコイルに誘起される電圧または励磁コイルの電流により磁界の大きさを求める。
また、このような電磁鋼板単板磁気特性試験方法における試料の内部の磁束の分布を均一にするための技術として特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載の技術では、試料とヨークとの接触力をヨーク調節機構により調節することが記載されている。
また、特許文献2には、このような電磁鋼板単板磁気特性試験方法において実使用条件に則した形で磁気特性を測定するために、ヨークの磁極面を試料幅の5〜90%の領域で直接接触させることが記載されている。
特開2013−50391号公報 特開2010−236882号公報
日本工業規格 電磁鋼板単板磁気試験方法、財団法人日本規格協会、平成8年10月31日 発行 北尾純士、外6名、「プレイモデルのヒステリシス磁界解析への適用に関する検討」、電気学会静止器・回転機合同研究会資料、SA-12-016、RM-12-016、pp.89-94 山崎克巳、外2名:「電磁鋼板の渦電流を直接考慮した回転機の損失解析」、電学論D、128巻11号、pp.1298-1307
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、励磁周波数の適用範囲は、商用周波数(50[Hz]または60[Hz])のみであり、磁束密度(最大磁束密度)の適用範囲は、方向性電磁鋼板では1.0[T]〜1.8[T]、無方向性電磁鋼板では0.8[T]〜1.5[T]である。従って、これらの条件から外れると正確な測定ができないと考えられる。特許文献1、2においても、励磁周波数や磁束密度についての検討はなされておらず、非特許文献1に記載の範囲から外れた条件での測定については記載されていない。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、磁性材料の磁気特性を測定する際の励磁周波数および磁束密度が大きくなっても、磁性材料の磁気特性を正確に測定できるようにすることを目的とする。
本発明の磁気特性測定装置は、単板の磁性体からなる試料の磁気特性を測定する磁気特性測定装置であって、2つの脚部を有するヨークを有し、前記2つの脚部の先端面は、前記試料の板面と対向するように配置され、前記2つの脚部の基端は、磁気的に相互に結合され、前記ヨークには、低透磁率部が形成され、前記低透磁率部の比透磁率は、前記試料および前記ヨークの比透磁率未満であり、前記試料を励磁することによって前記ヨークおよび前記試料に形成される閉磁路に沿うように前記ヨークを切断した場合の断面において、前記ヨークの内周側の磁気抵抗と外周側の磁気抵抗との差が、前記低透磁率部が形成されていない場合よりも小さくなるように、前記ヨークに前記低透磁率部が形成されており、前記ヨークは、前記試料の一方の板面側に配置され、前記2つの脚部を有する第1のヨークと、前記試料の他方の板面側に配置され、前記2つの脚部を有する第2のヨークと、を有し、前記第1のヨークと前記第2のヨークの前記2つの脚部は、前記第1のヨークが前記試料の一方の板面側となり前記第2のヨークが前記試料の他方の板面側となるように前記試料の板面を介して相互に対向する位置に配置され、前記第1のヨークと前記第2のヨークのそれぞれに前記低透磁率部が形成されており、前記第1のヨークの内周側に形成される閉磁路の磁気抵抗と、前記第1のヨークの外周側に形成される閉磁路の磁気抵抗と、前記第2のヨークの内周側に形成される閉磁路の磁気抵抗と、前記第2のヨークの外周側に形成される閉磁路の磁気抵抗とは、それぞれ略同じであり、前記第1のヨークの内周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の一方の板面の領域と前記第1のヨークの一方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗と、前記第1のヨークの内周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の一方の板面の領域と前記第1のヨークの他方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗と、前記第2のヨークの内周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の他方の板面の領域と前記第2のヨークの一方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗と、前記第2のヨークの内周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の他方の板面の領域と前記第2のヨークの他方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗とは、それぞれ略同じであり、前記第1のヨークの外周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の一方の板面の領域と前記第1のヨークの一方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗と、前記第1のヨークの外周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の一方の板面の領域と前記第1のヨークの他方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗と、前記第2のヨークの外周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の他方の板面の領域と前記第2のヨークの一方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗と、前記第2のヨークの外周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の他方の板面の領域と前記第2のヨークの他方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗とは、それぞれ略同じであることを特徴とする。
本発明によれば、磁性材料の磁気特性を測定する際の励磁周波数および磁束密度が大きくなっても、磁性材料の磁気特性を正確に測定することができる。
磁気特性測定装置の外観構成の概略の一例を示す図である。 磁気特性測定装置の断面の一例を示す図である。 磁気特性測定装置の上ヨーク、下ヨーク、および試料に形成される閉磁路の一例を概念的に示す図である。 上ヨーク・下ヨークの内周端と外周端における磁気抵抗の違いの一例を説明する図である。 磁束密度および励磁周波数を異ならせたときの無方向性電磁鋼板の表皮深さの一例を示す図である。 図2(b)の一点鎖線で囲んでいる領域を拡大して示す図である。 図6のI−I断面図である。 発明例と比較例とにおける、上ヨーク・下ヨークの内周端と外周端の磁気抵抗の違いを示す図である。 発明例と比較例のそれぞれにおける、試料の板厚方向の磁束密度の分布を示す図である。 発明例と比較例のそれぞれにおける、試料の損失を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。尚、各図に示すXYZ座標は、各図の向きの関係を示すものである。また、各図では、説明の都合上、説明に必要な部分のみを必要に応じて簡略化して示す。
(磁気特性測定装置の基本構成)
図1は、磁気特性測定装置の外観構成の概略の一例を示す図である。
図1において、磁気特性試験装置は、1枚の磁性体板(単板)を試料Sとし、試料Sの磁気特性として鉄損を測定するためのものである。試料Sとしては、例えば、JIS規格等の規格で定められている方向性電磁鋼板や無方向性電磁鋼板を使用することができる。本実施形態では、無方向性電磁鋼板を試料Sとして用いる場合を例に挙げて説明する。
磁気特性測定装置は、上ヨーク11と、下ヨーク12と、コイル群20とを有する。上ヨーク11および下ヨーク12には、それぞれ、低透磁率部30a〜30dが形成されている。
上ヨーク11および下ヨーク12は、試料Sの板面を介して相互に略対向する位置に配置される。上ヨーク11および下ヨーク12は、同じものであり、配置される位置のみが異なる。
上ヨーク11および下ヨーク12は、2つの脚部と(1つの)胴部とを有する。2つの脚部と胴部は、同じ磁性体材料を用いて一体で形成されている。本実施形態では、方向性電磁鋼板を積層させることにより、上ヨーク11および下ヨーク12を構成する場合を例に挙げて説明する。
2つの脚部の形状および大きさは同じであり、概ね直方体形状を有する。ただし、2つの脚部の先端面は、後述する低透磁率部30a〜30dを形成する部分が基端側に後退している(凹んでいる)。胴部も概ね直方体形状を有する。胴部の両端は2つの脚部の基端に連結される。2つの脚部の先端面(の後退していない領域)は磁極面になる。上ヨーク11および下ヨーク12は、2つの脚部の先端面(の後退していない領域)が、試料Sの板面と接触し、2つの脚部の間の領域が試料Sの板面上に位置するように配置される。このとき、上ヨーク11の2つの脚部の先端面と、下ヨーク12の2つの脚部の先端面とを試料Sの板面を介して相互に略対向させる。
このように本実施形態の上ヨーク11および下ヨーク12は、非特許文献1に記載されている縦形ヨーク構造における上ヨークおよび下ヨークから、後述する低透磁率部30a〜30dが形成される領域を除いたものとなる。
ただし、上ヨーク11および下ヨーク12の形状は、2つの脚部を有し、当該2つの脚部の基端側が磁気的に結合され、低透磁率部を形成する領域が設けられていれば、必ずしも前述した形状でなくてもよい。すなわち、試料Sの磁気特性を測定する際にヨーク内で発生する損失が充分に小さくなる条件を満たしていれば良く、例えば、脚部と胴部の連結部に曲率を設けても良い。
図2は、磁気特性測定装置の断面の一例を示す図である。図2(a)は、図1において、磁気特性測定装置の中心を通るように、X軸およびZ軸に沿って切断した断面図であり、図2(b)は、図1において、磁気特性測定装置の中心を通るように、Y軸およびZ軸に沿って切断した断面図である。
図2(a)および図2(b)において、コイル群20は、励磁コイル21と、Bコイル22と、Hコイル23とを有する。
励磁コイル21は、試料Sに対して金属線(例えば銅線)を巻回すことにより構成される。励磁電源より、励磁コイル21に励磁電流が流されることにより、試料S、上ヨーク11および下ヨーク12は励磁される。
Bコイル22は、励磁コイル21の内側において試料Sに対して金属線(例えば銅線)を巻回すことにより構成される。Bコイル22は、試料S、上ヨーク11および下ヨーク12が励磁されることにより発生する磁界に基づく誘導起電力を測定するためのものである。この誘導起電力に基づいて試料S内の磁束密度が測定される。
Hコイル23は、金属線(例えば銅線)を巻回すことにより構成され、その巻き回されている部分により構成される面(所謂コイル面)が、試料Sの板面と近接した状態で対向するように配置される。Hコイル23は、試料S、上ヨーク11および下ヨーク12が励磁されることにより試料Sに作用している磁界を測定するためのものである。Hコイル23に誘起される電圧に基づいて試料S内の磁界の大きさが測定される。
励磁コイル21、Bコイル22、およびHコイル23は、例えば、非特許文献1に記載のものと同じもので実現することができる。尚、図2では、1つのHコイル23を用いる場合(1Hコイル法を用いる場合)を例に挙げて示すが、非特許文献1に記載されているように、2つのHコイル(2Hコイル法)を用いてもよい。また、非特許文献1に記載されているように、Hコイル法ではなく励磁電流法を採用してもよい。励磁電流法を採用する場合には、Hコイル23は不要になる。また、磁気特性測定装置における磁気特性(鉄損)の測定方法としては、非特許文献1に記載の方法を採用することができるので、ここでは、詳細な説明を省略する。
(経緯)
次に、低透磁率部30a〜30dを形成するに至った経緯について説明する。
図3は、磁気特性測定装置の上ヨーク11、下ヨーク12、および試料Sに形成される閉磁路の一例を概念的に示す図である。図3は、図2(b)と同様に、磁気特性測定装置の中心を通るように、Y軸およびZ軸に沿って切断した断面図である。尚、図3では、後述する低透磁率部30a〜30dが形成されていないものとする(上ヨーク11、下ヨーク12の2つの脚部の先端面(磁極面)は平らであり、当該先端面の全体が試料Sと接触しているものとする)。
前述したように上ヨーク11、下ヨーク12、および試料Sが励磁されると、上ヨーク11および試料Sを通る閉磁路301a、302aと、下ヨーク12および試料Sを通る閉磁路301b、302bとが形成される。図3に示すように、磁気特性測定装置の中心を通るように、Y軸およびZ軸に沿って切断した断面(閉磁路301a、301b、302a、302bに沿うように切断した断面)において、相対的に外周側に形成される閉磁路302a、302bの方が、相対的に内周側に形成される閉磁路301a、301bよりも磁路長が長くなる。このように、磁気特性測定装置の中心を通るように、Y軸およびZ軸に沿って切断した断面(閉磁路301a、301b、302a、302bに沿うように切断した断面)において、内周側から外周側に向かって磁路長は長くなる。尚、以下の説明において、磁気特性測定装置の中心を通るように、Y軸およびZ軸に沿って切断した断面における内周、外周を、必要に応じて、単に、内周、外周と称する。
磁気抵抗Rm[A/Wb]は、以下の(1)式で表される。
m=L/(μ0・μr・A) ・・・(1)
ここで、Lは、素材内の磁路長[m]であり、Aは、磁路の断面積[m2]であり、μ0は、真空の透磁率[H/m]であり、μrは、素材の比透磁率である。
従って、磁路長Lが長くなると磁気抵抗Rmが大きくなる。このように、内周側と外周側において磁気抵抗Rmに差異が生じる。
図2(b)に示すように寸法L1、L2、H1、H2、ΔLを定める。試料Sの比透磁率をμrs、上ヨーク11・下ヨーク12の比透磁率をμryとする。磁路の断面積Aを内周と外周とで同じであるとする。そうすると、上ヨーク11・下ヨーク12の内周端(内周面の位置)における磁気抵抗Rm_内周に、磁路の断面積Aを掛けた値は、以下の(2)式で表される。また、上ヨーク11・下ヨーク12の外周端(外周面の位置)における磁気抵抗Rm_外周に、磁路の断面積Aを掛けた値は、以下の(3)式で表される。
m_内周×A={L1/μrs+(L1+2×H1)/μry}/μ0 ・・・(2)
m_外周×A={L2/μrs+(L2+2×H2)/μry}/μ0 ・・・(3)
(3)式から(2)式を引くことにより、上ヨーク11・下ヨーク12の外周端における磁気抵抗Rm_外周に、磁路の断面積Aを掛けた値と、上ヨーク11・下ヨーク12の内周端における磁気抵抗Rm_内周に、磁路の断面積Aを掛けた値との差ΔRm×Aは、以下の(4)式で表される。
ΔRm×A=[(L2−L1)/μrs+{(L2−L1)+2×(H2−H1)}/μry]/μ0=2×{ΔL/μrs+(ΔL+H2−H1)/μry}/μ0 ・・・(4)
図4は、以上のようにしてRm_内周×A、Rm_外周×Aを求めた結果を示す図である。図4は、上ヨーク11・下ヨーク12の内周端と外周端における磁気抵抗Rmの違いの一例を説明するための図である。ここでは、励磁周波数を50[Hz]とし、ΔL=4[mm]とし、試料Sを無方向性電磁鋼板(JIS C 2552に規定されている35A360)とし、上ヨーク11・下ヨーク12を方向性電磁鋼板(JIS C 2553に規定されている30G130)とした。また、上ヨーク11・下ヨーク12内の磁束密度は、上ヨーク11・下ヨーク12のそれぞれにBコイルを巻き回して誘導起電力を測定した結果から算出した。尚、図4において、「Rm×A」の欄の上段にRm_内周×Aを示し、下段にRm_外周×Aを示す。また、図4の内外周の差異は、以下の(5)式で得られるものである。
内外周の差異={(Rm_外周×A−Rm_内周×A)/Rm_内周×A}×100 ・・・(5)
図4に示すように、試料Sの磁束密度が大きくなると、Rm_内周×AとRm_外周×Aとの差(即ち、Rm_内周とRm_外周との差)が大きくなる。また、上ヨーク11・下ヨーク12の(磁路に垂直な方向の)断面積は、試料Sの(磁路に垂直な方向の)断面積よりも大きい。このため、試料Sの磁束密度が1.7[T](非特許文献1では適用範囲外の磁束密度)になると、μrsは、大きく低下することが分かる。
このように、上ヨーク11・下ヨーク12の内周側よりも外周側の方が、磁気抵抗Rmが高くなるため、磁束は、上ヨーク11・下ヨーク12の内周側(即ち、試料Sの表層側)に集中する。これにより試料Sの板厚方向において磁束密度の分布に偏りが生じ、渦電流損が増大する。
図5は、磁束密度および励磁周波数を異ならせたときの無方向性電磁鋼板の表皮深さδ[mm]の一例を示す図である。尚、表皮深さδ[mm]は、以下の(6)式で表される。
δ={1/(π×σ×f×μ)}1/2 ・・・(6)
σは、素材の導電率[S/m]、fは、周波数[Hz]、μは、素材の透磁率[H/m]である。
試料Sとして用いた無方向性電磁鋼板の板厚は、主に0.35[mm]または0.5[mm]である。励磁周波数が100[Hz]以下の条件では、何れの磁束密度においても、表皮深さδは、概ねこの板厚(0.35[mm])と同等か、それ以上である。従って、励磁周波数が100[Hz]以下の条件では、板厚方向に磁束の分布に偏りが生じていない状態で磁気特性の測定を行うべきである。それにも関わらず、図4を参照しながら説明したように、非特許文献1等に記載の従来の測定では、試料Sの板厚方向において磁束密度の分布に偏りが生じた状態で測定を行っていることになる。
以上の知見の下、本発明者らは、励磁周波数が、商用周波数を上回っても、試料S内の磁束の板厚方向の均一性を保つことができれば、磁気特性を高精度に測定することができることに着目した。そして、上ヨーク11・下ヨーク12において、磁路長が相対的に短い内周側の領域の磁気抵抗Rmを増大させ、内周側の領域と外周側の領域の磁気抵抗Rmの差を小さくするという思想に至った。このようにすることにより、試料Sの板厚方向における磁束の分布の偏りを低減し、磁気特性を正確に測定することができる。そのために、上ヨーク11・下ヨーク12において、磁路長が相対的に長い外周側の領域の磁気抵抗Rmと、磁路長が相対的に短い内周側の領域の磁気抵抗Rmとの差が小さくなるように、少なくとも、磁路長が相対的に短い内周側の領域に、上ヨーク11・下ヨーク12および試料Sよりも比透磁率が低い領域を形成する。この領域が低透磁率部30a〜30dになる。
(低透磁率部30a〜30dの具体例)
図6は、図2(b)の一点鎖線で囲んでいる領域201を拡大して示す図である。図6(a)は、低透磁率部30a〜30dの第1の例を示し、図6(b)は、低透磁率部30a〜30dの第2の例を示し、図6(c)は、低透磁率部30a〜30dの第3の例を示し、図6(d)は、非特許文献1に記載の構成(比較例)を示す。
図7は、図6のI−I断面図である。図7(a)は、図6(a)のI−I断面図であり、図7(b)は、図6(b)のI−I断面図であり、図7(c)は、図6(c)のI−I断面図であり、図7(d)は、図6(d)のI−I断面図である。
図3を参照しながら説明したように、非特許文献1に記載の技術では、上ヨーク11・下ヨーク12の先端面は、平らであり、当該先端面の全体が試料Sに接触する(図6(d)、図7(d)を参照)。
これに対し、本実施形態の磁気特性測定装置では、上ヨーク11・下ヨーク12の先端面のうち、少なくとも相対的に内周側の領域については、X軸方向(Y軸およびZ軸に沿う面(閉磁路301a、301b、302a、302bに沿う面)に垂直な方向)の全体に亘って試料Sに接触させず、試料Sとの間に隙間が形成されるようにする。この領域が、低透磁率部30a〜30dである。低透磁率部30a〜30dを、空隙としても、上ヨーク11・下ヨーク12および試料Sの比透磁率未満の比透磁率を有する材料で構成してもよい。
低透磁率部30a〜30dを構成する材料として、非磁性の材料を用いることができる。磁気抵抗Rmを同じだけ増加させるためには、比透磁率が小さい材料であるほど、低透磁率部30a〜30dの厚み(Z軸方向の長さ)を小さくする必要がある。そこで、完全に非磁性の材料を用いずに、比透磁率が10以下の材料を、低透磁率部30a〜30dを構成する材料とするのが好ましい。このようにすれば、低透磁率部30a〜30dの厚みを大きくすることができ、上ヨーク11・下ヨーク12および低透磁率部30a〜30dを構成する材料の設計および製作を容易にすることができるからである。また、低透磁率部30a〜30dを構成する材料として、比透磁率が1より大きく磁性を有する材料を用いる場合には、当該材料内に磁束が進入し渦電流損が発生するが、電気抵抗率が大きい材料を選定すれば、この損失を小さくすることができる。低透磁率部30a〜30dで発生する損失が大きくなるほど、磁気特性の測定精度が低下するため、この損失が可及的に小さくなる材料を選定するのが好ましい。
低透磁率部30a〜30dを構成する材料として、比透磁率が1の非磁性の材料を用いる場合には、例えば、ベークライト板や、ポリエチレンフィルム等で構成された絶縁シート等を用いることができる。また、磁性および電気伝導性を有しない高分子化合物等を用いてもよい。低透磁率部30a〜30dを構成する材料として、磁性および電気伝導性を有する材料を用いる場合には、比透磁率が10以下であり、電気抵抗率が10[μΩm]以上である材料を用いるのが好ましい。
<低透磁率部30a〜30dの形状の第1の例>
図6(a)および図7(a)に示す例では、上ヨーク11・下ヨーク12の外周側の領域になるほど、低透磁率部30a〜30dの厚みを小さくすることにより、磁路に関わらず、磁気抵抗Rmを略同じにすることができるようにしている。
上ヨーク11・下ヨーク12の内周端において、上ヨーク11・下ヨーク12の外周端と内周端の磁気抵抗Rmの差ΔRmだけ磁気抵抗Rmを大きくすれば、上ヨーク11・下ヨーク12の外周端と内周端の磁気抵抗Rmの差ΔRmを0(ゼロ)にすることができる。そして、以下の(7)式を満たすように、低透磁率部30a〜30dの厚み(閉磁路に沿う方向の長さ)の最大値(即ち、上ヨーク11・下ヨーク12の内周端における低透磁率部30a〜30dの厚み)Xmaxと、低透磁率部30a〜30dの比透磁率μrxを定める。
max=[(μrs+μry)×μrx/{(μry−μrx)×μrs}]×ΔL+{μrx/(μry−μrx)}×(H2−H1) ・・・(7)
(7)式は、以下の(8)式の「2×Xmax×(1/μrx−1/μry)/μ0」と(4)式の「2×{ΔL/μrs+(ΔL+H2−H1)/μry}/μ0」とが等しくなるXmaxを求めることにより得られる。
ΔRm×A={2×Xmax/μrx−2×Xmax/μry}/μ0=2×Xmax×(1/μrx−1/μry)/μ0 ・・・(8)
ここで、2倍をしているのは、図6(a)および図7(a)に示す例では、磁路の2箇所に低透磁率部30a・30b、30c・30dがあるからである。上ヨーク11・下ヨーク12の内周端には、厚みがXmax、比透磁率がμrxの低透磁率部30a・30b、30c・30dが2つあるので、上ヨーク11・下ヨーク12の内周端では、上ヨーク11・下ヨーク12の外周端に比べ、上ヨーク11・下ヨーク12を構成する材料(電磁鋼板)を低透磁率部30a・30b、30c・30dに替えた分だけ、磁気抵抗Rmが増加する。このように(8)式のΔRmは、上ヨーク11・下ヨーク12の磁気抵抗Rmを基準としたときの、低透磁率部30a・30b、30c・30dを形成することによる磁気抵抗Rmの増加分を表す。
そして、上ヨーク11・下ヨーク12の外周端における厚みが0(ゼロ)になるように、上ヨーク11・下ヨーク12の内周端から外周端に向けて線形で厚みが小さくなるように、低透磁率部30a〜30dの厚みを定める。このようにすれば、磁路に関わらず、磁気抵抗Rmを略同じにすることができる。これは、(4)式を変形すると、以下の(9)式が成立し、上ヨーク11・下ヨーク12の外周端と内周端の磁気抵抗Rmの差ΔRmは、ΔLに比例するからである。
ΔRm×A=2×{ΔL/μrs+(ΔL+H2−H1)/μry}/μ0=2×(1/μrs+1/μry)/μ0×ΔL+2×(H2−H1)/μry/μ0 ・・・(9)
また、図4に示したように、上ヨーク11・下ヨーク12の内周と外周との磁気抵抗Rmの差が大きくなる高磁束密度の条件においては、試料Sの比透磁率μrsに対して、上ヨーク11・下ヨーク12の比透磁率μryが十分に大きい(1/μrsが、1/μryよりも十分に大きい)。このため、(7)式において、「(μrs+μry)/(μry−μrx)」を「1」、「μrx/(μry−μrx)」を「0」と見なせば、(7)式の替わりに簡易的に以下の(10)式により、上ヨーク11・下ヨーク12の内周端における低透磁率部30a〜30dの厚みXmaxと比透磁率μrxを定めてもよい。
max=μrx/μrs×ΔL ・・・(10)
試料Sと上ヨーク11・下ヨーク12の比透磁率μrs、μryは、試料Sの磁束密度の大きさによって変化する。また、試料Sの種類によって、その比透磁率は変化する。従って、試料Sの種類(比透磁率μrs)および磁束密度に応じて、その都度、前述したようにして、上ヨーク11・下ヨーク12および低透磁率部30a〜30dを設計してもよいが、実際の測定に際し、このようにするのは手間がかかる。
そこで、磁気特性測定装置の測定対象として想定される試料Sの種類毎・磁束密度毎に、上ヨーク11・下ヨーク12の内周端における低透磁率部30a〜30dの厚みXmaxの候補値を導出する。そして、導出した候補値に基づいて、上ヨーク11・下ヨーク12の内周端における低透磁率部30a〜30dの厚みXmaxを決定するのが好ましい。例えば、上ヨーク11・下ヨーク12の内周端における低透磁率部30a〜30dの厚みXmaxとして、前述した候補値の平均値や中央値を採用することができる。また、測定頻度に応じた重みをつけて、前述した候補値の加重平均値を、上ヨーク11・下ヨーク12の内周端における低透磁率部30a〜30dの厚みXmaxとして求めてもよい。また、測定頻度が最も高い試料Sの種類に対する候補値と、測定頻度が最も高い試料Sの磁束密度に対する候補値の平均値を、上ヨーク11・下ヨーク12の内周端における低透磁率部30a〜30dの厚みXmaxとして求めてもよい。更に、磁気特性測定装置の測定対象として想定される試料Sの種類・磁束密度から定まる試料Sの比透磁率μrsのうち、上ヨーク11・下ヨーク12の外周端における磁気抵抗Rmと内周端における磁気抵抗Rmとの差ΔRm((4)式を参照)が最小になるものを求める。そして、求めた試料Sの比透磁率μrsを、(7)式または(9)式に与えることにより、上ヨーク11・下ヨーク12の内周端における低透磁率部30a〜30dの厚みXmaxを求めてもよい。
<低透磁率部30a〜30dの形状の第2の例>
図6(a)および図7(a)に示す低透磁率部30a〜30dの第1の例では、上ヨーク11・下ヨーク12の先端面の全体に、低透磁率部30a〜30dを形成する例を示した。
図6(b)および図7(b)に示す例では、相対的に外周側の領域については、X軸方向の全体に亘って試料Sに接触させ、相対的に内周側の領域については、X軸方向の全体に亘って試料Sに接触させず、当該内周側の領域に試料Sとの間に隙間が形成されるようにする。ここでは、内周側の半分の領域(上ヨーク11・下ヨーク12のY軸方向の長さの半分の領域)において、試料Sとの間に隙間が形成されるようにした。ただし、試料Sとの間に形成する隙間のY軸方向の長さは、上ヨーク11・下ヨーク12のY軸方向の長さの半分に限定されない。
また、低透磁率部30a〜30dの厚みを一定にする。低透磁率部30a〜30dの厚みとしては、例えば、第1の例で説明したXmaxを採用することができる。このようにすれば、図6(a)および図7(a)に示した例のように、磁路に関わらず、磁気抵抗Rmを略同じにすることはできない。しかしながら、低透磁率部30a〜30dを形成しない場合に比べ、上ヨーク11・下ヨーク12の内周側の領域の磁気抵抗Rmと外周側の領域の磁気抵抗Rmとの差を小さくすることができる。また、上ヨーク11・下ヨーク12および低透磁率部30a〜30dを構成する材料の設計及び製作を、図6(a)および図7(a)に示した例よりも容易にすることができる。
<低透磁率部30a〜30dの形状の第3の例>
図6(c)および図7(c)に示す低透磁率部30a〜30dの第3の例は、図6(a)および図7(a)に示す低透磁率部30a〜30dの第1の例と、図6(b)および図7(b)に示す低透磁率部30a〜30dの第2の例とを組み合わせたものである。即ち、第2の例のように、上ヨーク11・下ヨーク12の相対的に外周側の領域については、X軸方向の全体に亘って試料Sに接触させ、相対的に内周側の領域については、X軸方向の全体に亘って試料Sに接触させないようにする。そして、当該内周側の領域と試料Sとの間に形成される隙間の形状を、第1の例のように、外周側の領域になるほど、低透磁率部30a〜30dの厚みが小さくなるようにする。これは、図2(b)に示すヨーク寸法においてL1よりL2が充分に大きい場合などに、試料S内の磁束密度を均一化しても磁束の通過する最外周のY軸方向の長さがL2より小さい場合に採用できる。このとき、低透磁率部30a〜30dの厚みは、第1の例で説明したのと同様にして定めることができる。ただし、ΔLは、L2ではなく、磁束が通過する最外周のY軸方向の長さとL1との差から求めれば良い。このようにすることで、第1の例と同様に、磁路に関わらず(位置によらずに)、磁気抵抗Rmを略同じにすることができる。
以上のように本実施形態では、上ヨーク11・下ヨーク12の先端面に低透磁率部30a〜30dを形成する。従って、磁気特性の測定に際しては、試料Sと上ヨーク11・下ヨーク12・低透磁率部30a〜30dとの接触部の状態が起磁力に影響を及ぼしやすい励磁電流法よりもHコイル法を用いるのが好ましい。
(実施例)
次に、実施例を説明する。
本実施例では、図6(b)および図7(b)に示す第2の例の形状を有する低透磁率部30a〜30dを形成した上ヨーク11・下ヨーク12を用いたものを発明例とした。ここで、低透磁率部30a〜30dの厚みを20[μm]とし、低透磁率部30a〜30dにおける比透磁率を1とした。また、図6(d)および図7(d)に示すように低透磁率部30a〜30dを形成していない上ヨーク11・下ヨーク12を用いたものを比較例とした。低透磁率部30a〜30dの有無以外は、発明例と比較例とで異なる点はない。
試料Sには、板厚が0.35[mm]の無方向性電磁鋼板(JIS C 2552に規定されている35A360)を用いた。基本周波数が50[Hz]の交流電源により電流を励磁した。また、最大磁束密度を1.7[T]とした。この値は、非特許文献1に記載の適用磁束密度(0.8[T]〜1.5[T])を上回る。試料Sと上ヨーク11・下ヨーク12の比透磁率を、図4の試料の磁束密度が1.7[T]の欄の値とした。図8は、発明例と比較例とにおけるRm_内周×A、Rm_外周×Aを示す図である。図8は、図4に対応するものである。図8に示す「隙間」は、試料Sと上ヨーク11・下ヨーク12の先端面との隙間(低透磁率部30a〜30dの厚み)を示す。図8に示すように、発明例は比較例に比べ、上ヨーク11・下ヨーク12の内周側の領域と外周側の領域の磁気抵抗Rmの差が小さい。
以上の条件で、発明例と比較例とのそれぞれについて、試料Sの鉄損を、マックスウェルの方程式に基づく電磁場解析を行うことにより導出した。電磁場解析に際し、非特許文献2に記載のようにして試料SのBH特性(ヒステリシス特性)を求め、古典的渦電流損は、各材料の抵抗率からジュール損を計算することにより求めた上で、非特許文献3に記載のようにして異常渦電流損を含んだ渦電流損を計算した。
図9、図10は、その結果を示す。
図9は、発明例と比較例のそれぞれにおける、試料Sの板厚方向の磁束密度の分布を示す図である。図9では、正規化した磁束密度を示している。また、図9では、試料Sの渦電流損が最大のときの磁束密度の大きさの、板厚方向の分布を示す。図9の板表層とは、試料Sの表面を示し、板厚中心とは、試料Sの板厚方向の中心の位置を示し、1/4厚は、試料Sの表面と、試料Sの板厚方向の中心の位置との中間の位置を示す。図10は、発明例と比較例のそれぞれにおける、試料Sの損失(ヒステリシス損、渦電流損、およびそれらの和で表される鉄損)を示す図である。
図9に示すように、発明例では、比較例に比べ、試料Sの板厚方向における磁束密度が均一に分布していることが分かる。そして、図10に示すように、発明例では、比較例に比べ、試料Sの渦電流損が小さくなり、試料Sの鉄損も小さくなる。従って、上ヨーク11・下ヨーク12の内周側の領域と外周側の領域の磁気抵抗Rmの差を小さくすることによって、試料Sの板厚方向における磁束密度が均一に分布している状態で、試料Sの磁気特性を測定でき、正しい鉄損を求めることができていることが分かる。
(まとめ)
以上のように本実施形態では、低透磁率部30a〜30dを形成しない場合よりも、上ヨーク11・下ヨーク12の内周側の領域と外周側の領域の磁気抵抗Rmの差が小さくなるように、上ヨーク11・下ヨーク12の先端面の少なくとも相対的に内周側の領域に低透磁率部30a〜30dを形成する。従って、非特許文献1に記載の適用磁束密度範囲(方向性電磁鋼板については1.8[T]、無方向性電磁鋼板については1.5[T])を上回る磁束密度と、商用周波数を上回る励磁周波数を適用して試料Sの磁気特性を測定しても、試料Sの板厚方向における磁束密度の分布の偏りを低減することができる。その結果、試料Sの磁気特性(鉄損等)を正確に測定することができる。よって、例えば、このような磁気特性の測定結果を、数値解析の入力データとしたり、理論計算の前提となる物性値として用いたりすることで、数値解析や理論計算の結果を、モータ等の電機機器の設計に活用することができ、高効率の電機機器を設計することができる。また、このような磁気特性の測定結果を用いることで、製造プロセスによる磁性材料の磁気特性の差異を明確化することができ、低損失材料の開発のための有用なデータを得ることができる。
尚、磁束密度および励磁周波数について、非特許文献1に記載の範囲(方向性電磁鋼板については1.8[T]、無方向性電磁鋼板については1.5[T]、商用周波数)を上回る範囲で、本実施形態の磁気特性測定装置を用いれば、前述した効果が顕著に得られるようになるので好ましい。ただし、本実施形態の磁気特性測定装置では、非特許文献1に記載の範囲以下でも、試料Sの磁気特性を高精度に測定することができることは勿論である。
また、励磁周波数が高くなると、磁気抵抗Rmの分布は、表皮効果に大きく依存するようになるため((6)式を参照)、低透磁率部30a〜30dを形成しても、磁気抵抗Rmの分布を均一化する効果が小さくなる。よって、励磁周波数が100[Hz]以下の範囲で、本実施形態の磁気特性測定装置を用いるのが好ましい。
(変形例)
本実施形態では、上ヨーク11・下ヨーク12の2つのヨークを用いる場合(非特許文献1の複ヨーク枠に対応する構成)を例に挙げて示した。しかしながら、上ヨーク11・下ヨーク12の何れか一方のみを用いる構成(非特許文献1の単ヨーク枠に対応する構成)としてもよい(上ヨーク11・下ヨーク12の何れか一方はなくてもよい)。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
11:上ヨーク、12:下ヨーク、20:コイル群、21:励磁コイル、22:Bコイル、23:Hコイル、30a〜30d:低透磁率部

Claims (10)

  1. 単板の磁性体からなる試料の磁気特性を測定する磁気特性測定装置であって、
    2つの脚部を有するヨークを有し、
    前記2つの脚部の先端面は、前記試料の板面と対向するように配置され、
    前記2つの脚部の基端は、磁気的に相互に結合され、
    前記ヨークには、低透磁率部が形成され、
    前記低透磁率部の比透磁率は、前記試料および前記ヨークの比透磁率未満であり、
    前記試料を励磁することによって前記ヨークおよび前記試料に形成される閉磁路に沿うように前記ヨークを切断した場合の断面において、前記ヨークの内周側の磁気抵抗と外周側の磁気抵抗との差が、前記低透磁率部が形成されていない場合よりも小さくなるように、前記ヨークに前記低透磁率部が形成されており、
    前記ヨークは、前記試料の一方の板面側に配置され、前記2つの脚部を有する第1のヨークと、
    前記試料の他方の板面側に配置され、前記2つの脚部を有する第2のヨークと、を有し、
    前記第1のヨークと前記第2のヨークの前記2つの脚部は、前記第1のヨークが前記試料の一方の板面側となり前記第2のヨークが前記試料の他方の板面側となるように前記試料の板面を介して相互に対向する位置に配置され、
    前記第1のヨークと前記第2のヨークのそれぞれに前記低透磁率部が形成されており、
    前記第1のヨークの内周側に形成される閉磁路の磁気抵抗と、前記第1のヨークの外周側に形成される閉磁路の磁気抵抗と、前記第2のヨークの内周側に形成される閉磁路の磁気抵抗と、前記第2のヨークの外周側に形成される閉磁路の磁気抵抗とは、それぞれ略同じであり、
    前記第1のヨークの内周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の一方の板面の領域と前記第1のヨークの一方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗と、前記第1のヨークの内周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の一方の板面の領域と前記第1のヨークの他方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗と、前記第2のヨークの内周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の他方の板面の領域と前記第2のヨークの一方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗と、前記第2のヨークの内周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の他方の板面の領域と前記第2のヨークの他方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗とは、それぞれ略同じであり、
    前記第1のヨークの外周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の一方の板面の領域と前記第1のヨークの一方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗と、前記第1のヨークの外周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の一方の板面の領域と前記第1のヨークの他方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗と、前記第2のヨークの外周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の他方の板面の領域と前記第2のヨークの一方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗と、前記第2のヨークの外周側に形成される閉磁路のうち、前記試料の他方の板面の領域と前記第2のヨークの他方の脚部の前記低透磁率部が形成されていない領域との間に形成される磁路の磁気抵抗とは、それぞれ略同じであることを特徴とする磁気特性測定装置。
  2. 前記低透磁率部は、少なくとも、前記ヨークの前記内周側の領域において、前記断面に垂直な方向の全体に亘って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気特性測定装置。
  3. 前記低透磁率部は、前記ヨークの前記内周側の領域において、前記断面に垂直な方向の全体に亘って形成されており、当該領域よりも前記ヨークの前記外周側の領域には形成されていないことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気特性測定装置。
  4. 前記低透磁率部の前記閉磁路に沿う方向の長さが一定であることを特徴する請求項3に記載の磁気特性測定装置。
  5. 前記低透磁率部の前記閉磁路に沿う方向の長さは、前記ヨークの前記内周側の領域であるほど長いことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の磁気特性測定装置。
  6. 前記低透磁率部は、前記脚部の先端面に形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の磁気特性測定装置。
  7. 前記低透磁率部は、空隙または比透磁率が1の非磁性の材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の磁気特性測定装置。
  8. 前記低透磁率部は、比透磁率が10以下であり、且つ、電気抵抗率が10[μΩm]以上の材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の磁気特性測定装置。
  9. 励磁周波数が100[Hz]以下、前記試料の最大磁束密度が1.5[T]を上回る条件で前記試料の磁気特性を測定することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の磁気特性測定装置。
  10. Hコイル法で前記試料の磁気特性を測定することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の磁気特性測定装置。
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