JP6699343B2 - 接合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
前記ピンが挿入された前記鋼線強化樹脂板と鋼板とを、前記第2の表面と前記鋼板の第3の表面とが向かい合うように重ね合わせる工程と、
第1の電極及び第2の電極を、前記第1の電極が前記第1の表面側で前記ピンの一端と接触し、前記第2の電極が前記鋼板の第4の表面と接触するように配置する工程と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に圧縮応力を印加する工程と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間を通電し、前記ピンの一部、前記鋼線の一部及び前記鋼板の一部を溶融させる工程と、
溶融した前記ピンの一部、前記鋼線の一部及び前記鋼板の一部を凝固させてナゲットを形成する工程と、
を含み、
前記通電を行う際に、前記第1の電極又は第2の電極が前記鋼線と電気的に接続されていることを特徴とする接合体の製造方法。
前記鋼線強化樹脂板に挿入されたピンと、
前記鋼線強化樹脂板と重ね合わされた鋼板と、
前記鋼線の一部、前記ピンの一部及び前記鋼板の一部の溶融凝固物を含むナゲットとを備え、
前記鋼線の形態が、単線又は撚り線であり、前記鋼線が、網目状又は略平行に配置されることを特徴とする接合体。
(8) 前記鋼線の成分組成であるC含有量が0.3質量%〜1.2質量%であり、前記鋼線の引張り強さが3000MPa〜5000MPaであり、前記鋼線の直径が0.20mm〜1.0mmであり、前記鋼線の平均間隔が前記鋼線の直径の0.30倍〜2.00倍であり、前記鋼線強化樹脂板の厚さが前記鋼線群の最大厚さの1.10倍〜2.00倍であることを特徴とする(7)に記載の接合体。
まず、本発明の第1の実施形態に係る接合体について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る接合体を示す断面図である。第1の実施形態に係る接合体10は、複数の鋼線11からなる鋼線群が樹脂12に覆われた鋼線強化樹脂板13と、鋼線強化樹脂板13に挿入されたピン15と、鋼線強化樹脂板13と重ね合わされた鋼板14と、鋼線11の一部、ピン15の一部及び鋼板14の一部の溶融凝固物を含むナゲット16とを備える。
<鋼線11の成分組成>
C: Cは鋼線11の引張り強度を高めるために有効な成分である。しかし、その含有量が0.3%未満の場合には、引張り強さで3000MPaといった高い強度を安定して鋼線11に付与させることが困難である。さらに、高強度の最終製品を安定して得るためには、C含有量を高めることが有効であり、3500MPa以上の引張り強さを得るためには、例えば、C含有量を0.6%以上にすることが望ましい。一方、C含有量が多すぎれば、鋼材が硬質化して伸線時の断線あるいは延性の低下を招く。特に、C含有量が1.2%を超えれば、その影響が顕著になり、安定した量産が工業的に困難になる。そこで、C含有量は0.3質量%〜1.2質量%であることが好ましく、0.6質量%〜1.2質量%であることがより好ましい。
鋼材のみで製造される板状部品で最も高強度なものの引張り強さは、約1500MPaである。したがって、その部品に対して高強度化と軽量化で大きなメリットを得るためには、鋼線11の引張り強さが3000MPa以上であることが好ましい。一方、引張り強さが5000MPaを超える鋼線11を得るためには、伸線加工量が大きくなって、伸線中の断線頻度が大きくなる。そこで、鋼線11の引張り強さは3000MPa〜5000MPaであることが好ましく、3500MPa〜5000MPaであることがより好ましい。
鋼線11の引張り強さを3000MPa以上としつつ、伸線中の断線を抑制して、安定的に製造するためには、鋼線11の直径は1.0mm以下であることが好ましい。一方、鋼線11の直径を0.20mm未満にすると、鋼線11の生産性の低下、あるいは、伸線中の断線頻度の増加が顕著になる。また、鋼線11の直径が0.20mm未満になると、鋼線11を直線状に平行に並べる際の鋼線強化樹脂の生産性の低下も顕著になる。そのため、鋼線11の直径は0.20mm〜1.0mmであることが好ましく、0.30mm〜0.60mmであることがより好ましい。
鋼線11の表面にめっきを施さなくてもよいが、伸線時の摩擦抵抗の低減あるいは部品の使用環境によって、めっきを施してもよい。めっきの例としては、ブラス(Cu−Zn)、Zn、Cu、Niのそれぞれを主体としたものが挙げられる。
次に、鋼線強化樹脂板13について説明する。鋼線強化樹脂板13は、複数の鋼線11からなる鋼線群11cが樹脂12に埋め込まれたものである。なお、樹脂12については後述する。
鋼線11と樹脂12との接着力を高めるためには、鋼線11同士が密着しない部分を大きくすることが好ましく、さらに鋼線11の直径に対して、樹脂12が所定以上の厚さを有することが好ましい。
樹脂12の種類は、鋼線強化樹脂板13の使用環境に応じて選択すればよいが、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を使用することができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ、ウレタン、不飽和ポリエステルを使用することができ、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンを使用することができる。このような樹脂12から選ばれる1種または2種以上を主成分として使用することが好ましい。本明細書において、「主成分」とは、樹脂全体を100質量%とした場合に、50質量%以上を占める成分をいう。
鋼板14の種類は特に限定されない。例えば、鋼板14は熱延鋼板であってもよく、冷延鋼板であってもよい。また、溶融めっき処理や電気めっき処理等が施されためっき鋼板であってもよい。自動車用途で使用される場合は、溶融亜鉛めっき処理が施された溶融亜鉛めっき鋼板であってもよい。特に、合金化処理が施された合金化溶融亜鉛めっき鋼板が好ましい。
ピン15は、スポット溶接を行う際、鋼線強化樹脂板13の表面に挿入される。ピン15は、後述するナゲット16を形成する観点から、好ましくは鋼製である。ピン15の形態は、スポット溶接の観点からピン15の頭が大きいことが望ましく、好ましくは釘又はドリルねじである。
ナゲット16は、鋼線11の一部、ピン15の一部及び鋼板14の一部の溶融凝固物を含む。このようなナゲット16により鋼線11及び鋼板14が一体化されているため、優れた強度を得ることができる。
次に、本発明の第2の実施形態に係る接合体について説明する。図5は、第2の実施形態における鋼線群の構成を示す模式図である。
鋼線と樹脂との接着力を高めるためには、鋼線同士が密着させないようにすることが好ましく、さらに鋼線の直径に対して、樹脂が所定以上の厚さを有することが好ましい。
樹脂に鋼線を埋め込む前に、鋼線同士を結合させていなくてもよいが、埋め込む前に結合させることで、鋼線の間隔のばらつきが低減し、また樹脂に埋め込むときの生産性が向上する。鋼線同士の接着には熱硬化樹脂、有機繊維を用いるとよい。
本実施例1では、線径が0.2mm、長さが平面視で100mmである単線の鋼線を用いた。この鋼線同士の平均間隔が0.5mmになるように平織りにした、網状の鋼線群を作製した。樹脂にはエポキシ樹脂を用いた。作製した鋼線群をエポキシ樹脂に埋め込み、寸法が100mm×100mm×1.0mmである鋼線強化樹脂板を得た。鋼板には、寸法が100mm×100mm×1.0mmである普通炭素鋼を用いた。ピンとして、円盤型で頭付きの鋼製のピンを用いた。ピンの足部分の直径は2.0mm、長さは1.0mmであり、ピンの頭部分の直径は5mmであった。そして、これら鋼線強化樹脂板、ピン及び鋼板を用いてスポット溶接により接合体を製造した。
本実施例2では、鋼線同士の平均間隔が0.5mmになるように略平行に配置した鋼線群を用いたこと以外、上記実施例1と同様の鋼線強化樹脂板及び鋼板を用いた。また、ピンとして、円盤型で頭付きの鋼製のピンを用いた。ピンの足部分の直径は2.0mm、長さは1.0mmであり、ピンの頭部分の直径は5mmであった。
比較例1では、鋼線同士の平均間隔を2.0mmとしたこと以外は、上記実施例1と同様の鋼線強化樹脂板及び鋼板を用いた。また、ピンとして、円盤型で頭付きの鋼製のピンを用いた。ピンの足部分の直径は1.0mm、長さは1.0mmであり、ピンの頭部分の直径は5mmであった。
比較例2では、寸法が100mm×100mm×1.0mmで、多数の炭素繊維が樹脂中に分散した炭素繊維強化樹脂(CFRP)板を用いた。鋼板には、寸法が100mm×100mm×1.0mmである普通炭素鋼を用いた。ピンとして、円盤型で頭付きの鋼製のピンを用いた。ピンの足部分の直径は1.0mm、長さは1.0mmであり、ピンの頭部分の直径は5mmであった。
11 鋼線
11a 第1の鋼線群
11b 第2の鋼線群
11c 鋼線群
12 樹脂
13 鋼線強化樹脂板
13a 第1の表面
13b 第2の表面
14 鋼板
14a 第3の表面
14b 第4の表面
15 ピン
16 ナゲット
17 一対の電極
17a 第1の電極
17b 第2の電極
18 溶融物
21 鋼線
Claims (8)
- 複数の鋼線からなる鋼線群が樹脂に覆われた鋼線強化樹脂板の第1の表面から第2の表面に向かって、前記鋼線強化樹脂板の厚さ方向にピンを挿入する工程と、
前記ピンが挿入された前記鋼線強化樹脂板と鋼板とを、前記第2の表面と前記鋼板の第3の表面とが向かい合うように重ね合わせる工程と、
第1の電極及び第2の電極を、前記第1の電極が前記第1の表面側で前記ピンの一端と接触し、前記第2の電極が前記鋼板の第4の表面と接触するように配置する工程と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に圧縮応力を印加する工程と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間を通電し、前記ピンの一部、前記鋼線の一部及び前記鋼板の一部を溶融させる工程と、
溶融した前記ピンの一部、前記鋼線の一部及び前記鋼板の一部を凝固させてナゲットを形成する工程と、
を含み、
前記通電を行う際に、前記第1の電極又は第2の電極が前記鋼線と電気的に接続されていることを特徴とする接合体の製造方法。 - 前記ピンを挿入する工程は、前記ピン若しくは前記樹脂又はこれらの両方を加熱する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の接合体の製造方法。
- 前記樹脂は、不燃性無機物粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の接合体の製造方法。
- 前記鋼線の形態が、単線又は撚り線であり、前記鋼線が、網目状又は略平行に配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
- 前記ピンが、鋼製の釘又はドリルねじであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
- 前記ピンの直径が、前記鋼線の間隔の1.0倍〜10倍であり、前記ピンの長さが、前記鋼線強化樹脂板の厚さの0.60倍〜1.2倍であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
- 複数の鋼線からなる鋼線群が樹脂に覆われた鋼線強化樹脂板と、
前記鋼線強化樹脂板に挿入されたピンと、
前記鋼線強化樹脂板と重ね合わされた鋼板と、
前記鋼線の一部、前記ピンの一部及び前記鋼板の一部の溶融凝固物を含むナゲットとを備え、
前記鋼線の形態が、単線又は撚り線であり、前記鋼線が、網目状又は略平行に配置されることを特徴とする接合体。 - 前記鋼線の成分組成であるC含有量が0.3質量%〜1.2質量%であり、前記鋼線の引張り強さが3000MPa〜5000MPaであり、前記鋼線の直径が0.20mm〜1.0mmであり、前記鋼線の平均間隔が前記鋼線の直径の0.30倍〜2.00倍であり、前記鋼線強化樹脂板の厚さが前記鋼線群の最大厚さの1.10倍〜2.00倍であることを特徴とする請求項7に記載の接合体。
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