JP6695080B2 - 半自動式の引戸 - Google Patents

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本発明は、戸パネルをモーター動力で開放でき、開放された戸パネルを閉じ復帰構造で閉じ操作でき、さらに戸パネルを手動で開放できる半自動式の引戸に関する。
この種の引戸構造は特許文献1の自閉式の引戸装置に見ることができる。そこでは、扉体を開放操作する電動駆動装置と、扉体を開放位置から閉止操作する自閉装置で引戸装置を構成している。電動駆動装置は電動モーターと減速機を備えており、減速機の出力軸にタイミングプーリーが固定されている。自閉装置は、タイミングプーリーを兼ねる回転ドラムと、同ドラムの内部に収容したぜんまいばねを備えている。電動駆動装置側のタイミングプーリーと、自閉装置側のタイミングプーリーには有端ベルトが巻掛けられており、有端ベルトの各端部が、扉体の両端に設けたブラケットに固定されている。特許文献1の引戸は、病院、老人ホームなどに適用されて、例えば防炎扉として使用される。
特許文献1の引戸装置において起動スイッチをオン操作すると、電動モーターの動力でタイミングプーリーが回転駆動されて扉体が開放操作される。扉体が所定の位置まで開放されたことが近接スイッチで検知されると電動モーターが停止され、同時に、電磁石が励磁されて扉体に設けたブラケットを吸着して、扉体が開放位置に保持される。扉体が閉じ位置から開放移動する間に、回転ドラム内のぜんまいばねが巻締められて畜力される。この状態から一定時間が経過し、あるいは起動スイッチがオフ操作されると、電磁石が消磁されて扉体の拘束を解除し、これにて、自閉装置側のタイミングプーリーがぜんまいばねの張力で逆向きに回転駆動されて扉体が閉じ操作される。また、停電時に扉体を手動で開放操作した場合には、扉体を自閉装置で閉じ操作して扉体を防煙扉として使用できる。
特許文献2には、引戸を駆動機構で自動的に開閉でき、停電時には手動で引戸を開閉できる自動ドア駆動装置が開示されている。そこでは、モーターと、選択伝達機構と、駆動プーリーおよび従動プーリー、および両プーリーに架け渡されるワイヤーなどで、ドア駆動装置を構成している。選択伝達機構は、モーターの出力軸に固定される駆動歯車と、駆動プーリーのプーリー軸に固定されるプーリー歯車と、モーターの出力軸で揺動自在に支持される一対の揺動板と、揺動板で軸支されて駆動歯車と選択的に噛合う一対の切替え歯車とで構成されている。駆動歯車が時計回りに回転駆動されるときは、揺動板が時計回りに傾動して、傾動下端に位置する切替え歯車がプーリー歯車と噛合って、時計回りのモーター動力をプーリー歯車に伝動する。また、駆動歯車が反時計回りに回転駆動されるときは、先の切替え歯車とは異なる切替え歯車がプーリー歯車と噛合って、反時計回りのモーター動力をプーリー歯車に伝動する。停電時には、切替え歯車がプーリー歯車の回転力を受けてプーリー歯車から離間し、駆動プーリーおよび従動プーリーとプーリー歯車が空転するので、引戸を手動で開閉操作できる。
本発明に係る引戸においては、任意の位置まで開放操作された戸パネルを自閉装置(閉じ復帰構造)で自動的に閉じ操作するが、この種の自閉装置は、本出願人の提案に係る特許文献3に公知である。特許文献3の自閉装置は、定荷重ばねユニットとワイヤーおよびワイヤードラムを備えた閉じ構造と、閉じ端の近傍において戸パネルの閉じ動作を制動するエアーシリンダ(ダンパー)などで構成されている。
特許第3740568号公報(段落番号0010〜0019、図1) 特許第4987651号公報(段落番号0017〜0019、図2、図3) 特許第5851058号公報(段落番号0033、図4)
特許文献1に係る自閉式の引戸装置によれば、電動モーターの動力で扉体を自動的に開放操作でき、しかも開放された扉体をぜんまいばねの張力で閉じ操作できる。しかし、扉体の開閉機構が大掛かりであるため、全ての開閉機構を収容できる大型のガイドレールを扉体の上に設ける必要がある。従って、一般住宅の居室や、高齢者施設の個室を開閉する、軽量で小形の戸パネルを支持するガイドレールに先の開閉機構を適用することはできない。また、扉体の開閉機構が大掛かりであるため、扉体の開閉構造の導入コストが高くつくのを避けられない。さらに、商用電源を電源にして電動モーターを駆動するので、大掛かりな電気工事が必要であり、病院、高齢者施設、ホテルなどの規模が大きな施設でないと導入するのは難しい。特許文献1の引戸では、減速機構として、ウォームギヤユニットと同等程度の大きな減速比が得られるハイポイドギヤ(登録商標)を使用している。そのため、停電時には、ぜんまいばねを巻締めて畜力しながら、従動プーリーを介して減速機および電動モーターを空転させる必要があり、扉体を開放するのに大きな力が必要で、健常者であっても扉体を開放するのは困難である。
その点、特許文献2に係る自動ドア駆動装置は、停電時には、切替え歯車がプーリー歯車の回転力を受けてプーリー歯車から離間し、駆動プーリーの回転動作を選択伝達機構で遮断できるので、モーターを空転させる必要がなく、引戸をより小さな力で開閉操作できる。しかし、モーター、選択伝達機構、駆動プーリー、および従動プーリーなどの開閉機構の全体を鴨居(ガイドレール)の内部に収容するため、特許文献1の引戸と同様に、引戸の開閉機構を収容できる大型の鴨居を引戸の上に設ける必要がある。従って、特許文献2の自動ドア駆動装置を、一般住宅の居室や高齢者施設の個室を開閉する軽量で小形の戸パネルを支持するガイドレールに適用することはできない。また、引戸を手動で開閉する場合には、切替え歯車をプーリー歯車から離間させて駆動プーリーの回転動作を遮断するが、切替え歯車とプーリー歯車が噛合し、離間する動作を繰り返えして騒音を生じやすい。
本発明は、以上のような従来の半自動式の引戸の抱える問題を解決するためになされたものであり、一般住宅の居室や高齢者施設の個室を開閉する軽量で小形の戸パネルを支持するガイドレールに適用することが可能であり、車椅子を常用するユーザーの利便性を向上できる半自動式の引戸を提供することを目的とする。
本発明に係る半自動式の引戸は、図2に示すように、開口枠の上枠に固定したガイドレール1と、ガイドレール1に沿って開閉移動できる戸パネル2と、戸パネル2をモーター動力で開放操作する駆動ユニット17と、開放された戸パネル2を閉じ操作する閉じ復帰構造18と、電源用電池103を備えた電源ユニット19と、戸パネル2に配置されて駆動ユニット17を起動させる電源スイッチ21と、モーター25の駆動状態を制御する制御ユニット20とを備える。図1に示すように、駆動ユニット17は、モーター25および減速機構26と、減速動力を受けて回転駆動される開放駆動ドラム27と、同ドラム27から繰出されて、繰出し端が開口枠の開放端側に固定される開放ワイヤー28とを備える。駆動ユニット17、電源ユニット19、及び制御ユニット20は、戸パネル2内に配置固定されていることを特徴とする。
図3に示すように、閉じ復帰構造18は、戸パネル2内に配置固定される閉じ復帰ユニット76を備えている。閉じ復帰ユニット76は、閉じ駆動ドラム80と、閉じ駆動ドラム80から繰出されて、繰出し端が開口枠の閉じ端側に固定される閉じワイヤー81と、閉じワイヤー81を巻込む向きに閉じ駆動ドラム80を回転付勢する畜力機構90とを備える。
駆動ユニット17の減速機構26は、図1に示すように、モーター25の出力軸に固定されるウォームギヤ32と、ウォームギヤ32と噛み合うウォームホイール33を含む。ウォームホイール33の回転動力はギヤトレイン34を介して開放駆動ドラム27に伝動される。開放駆動ドラム27は、畜力機構49で開放ワイヤー28を巻込む向きに回転付勢される。戸パネル2が閉じ復帰構造18で閉じ操作されて、開放ワイヤー28が開放駆動ドラム27から繰出される状態において、開放駆動ドラム27の回転動作が減速機構26に伝動するのを遮断する動力遮断構造52を、ギヤトレイン34の初段ギヤ36から終段ギヤ39に至る間に設ける。
ギヤトレイン34は、ウォームホイール33と同行回転する初段ギヤ36と、開放駆動ドラム27と同行回転する終段ギヤ39と、終段ギヤ39と常時噛合っている中間ギヤ38と、初段ギヤ36と中間ギヤ38に噛み合う切換ギヤ37で構成する。動力遮断構造52は切換ギヤ37と、同ギヤ37を回転自在に支持するギヤ支持体53と、ギヤ支持体53を変位操作するアクチュエーター54で構成する。ギヤ支持体53は、切換ギヤ37が初段ギヤ36および中間ギヤ38と同時に噛合う動力伝動位置と、切換ギヤ37が初段ギヤ36および中間ギヤ38から分離する動力遮断位置の間で往復変位可能に支持されている。戸パネル2が閉じ復帰ユニット76で閉じ操作されて、開放ワイヤー28が開放駆動ドラム27から繰出される状態において、ギヤ支持体53をアクチュエーター54で動力遮断位置に切換えて、開放駆動ドラム27の回転動作がウォームホイール33に伝動するのを遮断する(図10参照)。
戸パネル2が閉じた状態において、アクチュエーター54は待機状態に切換って、切換ギヤ37が初段ギヤ36および中間ギヤ38と噛合っている。ギヤトレイン34の初段ギヤ36から開放駆動ドラム27に至る間に、ウォームホイール33の回転動力を開放駆動ドラム27へ向かって伝動するが、開放駆動ドラム27が畜力機構49で回転操作されて開放ワイヤー28を巻込むときの回転動作は遮断する、ワンウェイクラッチ58を配置する(図9参照)。つまり、ワンウェイクラッチ58は、モーター25の回転動力を開放駆動ドラム27に伝動するが、開放駆動ドラム27が畜力機構49で回転操作されるときの回転動力は、初段ギヤ36側へ伝動しない構造になっている。
戸パネル2に、戸パネル2が所定の開放位置まで開放されたことを検知するパイロットセンサー112と、戸パネル2が開放経路上の障害物と衝突したことを検知する衝撃センサー116とを設ける。制御ユニット20に設けた制御回路111は、電源スイッチ21のオン信号を受けてモーター25を起動し、パイロットセンサー112の出力信号を受けてモーター25を減速したのち停止させ、モーター25が起動したのちの衝撃センサー116の出力信号に基づきモーター25の駆動を停止するように構成する。
モーター25が駆動を停止したのち、制御回路111はモーター25を短時間だけ逆転駆動し、次いでアクチュエーター54を駆動するように構成する。
図5に示すように、戸パネル2の開放端側の側面上部に、駆動ユニット17および制御ユニット20を収容する装着部22が形成され、その装着口23が戸パネル2の開放端に開口されている。戸パネル2の開放端に締結されて装着口23を塞ぐユニットベース66の内面に、駆動ユニット17と制御ユニット20を固定する。
駆動ユニット17の駆動部ケース24の内部に、開放駆動ドラム27から繰出された開放ワイヤー28を、駆動部ケース24の外部へ向かって移行案内する複数のガイドプーリー63・64を配置する。複数のガイドプーリー63・64の間に、開放ワイヤー28の弛みを吸収するテンション機構を設ける。図1に示すようにテンション機構は、開放ワイヤー28に外接するテンションプーリー65と、同プーリー65を回転自在に支持し、かつ開放ワイヤー28に対して接離移動可能に支持されるプーリー支持枠69と、プーリー支持枠69を開放ワイヤー28に向かって押付け付勢するテンションばね72を備えている。
戸パネル2に設けた吊車型のランナー3が、開口枠に設けたガイドレール1で開閉自在に案内支持されている。閉じ復帰構造18は、閉じ復帰ユニット76と戸パネル2の閉じ動作を制動するシリンダー型のエアーダンパー77を備えている。ガイドレール1の内部に、エアーダンパー77と、吊車型のランナー3と、閉じ駆動ドラム80から繰出された閉じワイヤー81と、開放駆動ドラム27から繰出された開放ワイヤー28とが配置されている。
本発明に係る別の半自動式の引戸は、開口枠の上枠に固定したガイドレール1と、ガイドレール1に沿って開閉移動できる戸パネル2と、戸パネル2をモーター動力で開放操作する駆動ユニット17と、電源用電池103を備えた電源ユニット19と、戸パネル2に配置されて駆動ユニット17を起動させる電源スイッチ21と、モーター25の駆動状態を制御する制御ユニット20を備えている。駆動ユニット17は、モーター25および減速機構26と、減速動力を受けて回転駆動される開放駆動ドラム27と、同ドラム27から繰出されて、繰出し端が開口枠の開放端側に固定される開放ワイヤー28とを備えている。駆動ユニット17、電源ユニット19、及び制御ユニット20が、戸パネル2内に配置固定されていることを特徴とする。
本発明においては、半自動式の引戸の開閉構造の主要部材となる駆動ユニット17と、電源ユニット19と、制御ユニット20を、戸パネル2内に配置した。こうした引戸によれば、従来装置において必要不可欠であった、先の主要部材を収容するための大形のガイドレールを設ける必要がなく、小形のガイドレール1で戸パネル2を開閉案内することができる。従って、一般住宅の居室や高齢者施設の個室を開閉する軽量で小形の戸パネルを支持するガイドレールに適用することが可能となり、車椅子を常用するユーザーの利便性を向上できる。
閉じ復帰ユニット76を備える閉じ復帰構造18において、閉じ復帰ユニット76が、閉じ駆動ドラム80と、閉じワイヤー81と、閉じ駆動ドラム80を回転付勢する畜力機構90を備えるようにした。こうした閉じ復帰構造18によれば、戸パネル2が駆動ユニット17で開放操作されて、閉じ移動が可能な状態になるのと同時に、畜力機構90で閉じ駆動ドラム80を速やかに回転駆動して、戸パネル2を閉じ操作できる。従って、開放操作された戸パネル2を遅滞なく閉じ操作して、戸パネル2の開閉サイクルを短縮できる。例えば、ガイドレール1が閉じ端側へ向かって下り傾斜させてあって、戸パネル2の自重によるランナー3の転動作用で、戸パネル2を閉じ移動させる閉じ復帰構造18の場合には、戸パネル2の閉じ速度の立ち上がりが緩慢になるので、戸パネル2の開閉サイクルが長くなる。
駆動ユニット17の減速機構26をウォームギヤ32とウォームホイール33で構成し、減速動力をギヤトレイン34で開放駆動ドラム27に伝動する。このような動力伝動構造によれば、開放ワイヤー28を開放駆動ドラム27に巻込むことで、戸パネル2を所定の速度で確実に開放操作することができる。しかし、戸パネル2が閉じ復帰ユニット76で閉じ操作されて、開放ワイヤー28が開放駆動ドラム27から繰出される場合には、開放駆動ドラム27の回転動作がウォームギヤ32でブロックされてしまう。そこで、本発明においては、ギヤトレイン34の初段ギヤ36から終段ギヤ39に至る間に動力遮断構造52を設け、開放駆動ドラム27の回転動作が減速機構26の側に伝動するのを動力遮断構造52で遮断して、開放駆動ドラム27が開放ワイヤー28を繰出す向きに回転できるようにする。これによれば、戸パネル2が閉じ復帰ユニット76で閉じ操作されるのに先行して、動力遮断構造52を作動させることができるので、開放駆動ドラム27が開放ワイヤー28を繰出す向きに回転するのを許して、戸パネル2を円滑に閉じ操作することが可能となる。また、戸パネル2を開放するときに限ってモーター25を駆動すればよいので、例えばモーター動力で閉じ駆動ドラム80を駆動して戸パネル2を自動的に閉じ操作する場合に比べて、駆動ユニット17の構造を著しく簡素化し小形化できる。従って、半自動式の開閉構造を導入する際の全体コストを抑えることができるうえ、電源用電池103の消耗を抑えて、その交換間隔を拡大できる。
初段ギヤ36、切換ギヤ37、中間ギヤ38と、終段ギヤ39で構成したギヤトレイン34において、切換ギヤ37を利用して動力遮断構造52を構成すると、切換ギヤ37を利用する分だけ動力遮断構造52の構造を簡素化でき、例えば電磁クラッチで動力遮断を行う場合に比べて低コスト化できる。また、ソレノイド54でギヤ支持体53を動力遮断位置に切換え、切換ギヤ37を初段ギヤ36と中間ギヤ38から分離して動力伝動経路を遮断するので、開放ワイヤー28が繰出されるときのギヤトレイン34側の回転抵抗を軽減して、閉じ復帰構造18による戸パネル2の閉じ操作を円滑にしかも軽快に行える。
初段ギヤ36から開放駆動ドラム27に至る間に、ウォームホイール33の回転動力を開放駆動ドラム27へ向かって伝動するが、開放駆動ドラム27が畜力機構49で回転操作されて開放ワイヤー28を巻込むときの回転動作は遮断するワンウェイクラッチ58を設けるようにした。こうした開閉構造によれば、戸パネル2を人手で開放操作する場合に、動力遮断構造52が動力伝動位置に切換っていても、開放駆動ドラム27の回転動作をワンウェイクラッチ58で遮断できる。従って、戸パネル2が人手で開放操作されるとき、開放駆動ドラム27を蓄力機構49で回転操作して、開放ワイヤー28を開放駆動ドラム27に整然と巻戻すことができる。また、戸パネル2が開放操作された状態において、開放ワイヤー28が戸パネル2と開口枠の間に垂れ下がるのを解消できる。さらに、動力遮断構造52を動力遮断位置に切換える必要もなく、戸パネル2を単に開放操作すればよいので、人手による戸パネル2の開放を簡便に行える。
戸パネル2にパイロットセンサー112と衝撃センサー116を設け、制御回路111が、電源スイッチ21のオン信号を受けてモーター25を起動し、パイロットセンサー112の出力信号を受けてモーター25を減速したのち停止させるようにした。こうした開閉構造によれば、所定の開放位置まで開放された戸パネル2を減速した状態で、ゆっくりと開放位置まで移動できる。従って、戸パネル2が開放時の運動慣性力で開口枠に衝突するのを防止できる。モーター動力を伝動するギヤトレイン34に無理な力が加わることもない。また、制御回路111は、モーター25が起動したのちの衝撃センサー116の出力信号に基づきモーター25の駆動を停止して、人や物が戸パネル2と開口枠の間に挟まれるのを防止するので、戸パネル2を自動的に開放操作する開閉構造の安全性を向上できる。
モーター25が駆動を停止した状態では、ウォームギヤ32から終段ギヤ39に至るギヤの噛合い部分で噛込みを生じていることがあり、その場合の各ギヤは逆回転できない。また、アクチュエーター54を作動させて、切換ギヤ37を動力遮断状態に切換えようとしても、切換ギヤ37を初段ギヤ36や中間ギヤ38から分離できないことがある。こうした各ギヤの噛込みを解消するために、制御回路111は、モーター25を短時間だけ逆転駆動させる。また、各ギヤ36・37・38・39の噛込みと、ウォームギヤ32とウォームホイール33の噛込みを解消した状態で、制御回路111がアクチュエーター54を作動させることにより、切換ギヤ37を確実に動力遮断状態に切換えることができる。こうした開閉構造によれば、動力遮断構造52の切換動作を常に安定した状態で行えるうえ、アクチュエーター54による電源用電池103の無駄な消耗を解消できる。
戸パネル2の開放端側の側面上部に、駆動ユニット17および制御ユニット20を収容する装着部22を形成し、装着口23を塞ぐユニットベース66の内面に、駆動ユニット17と制御ユニット20を固定するようにした。こうした開閉構造によれば、駆動ユニット17および制御ユニット20を装着口23から装着部22の内部に差込み装着し、ユニットベース66の上下端を例えばビス73で固定することにより、駆動ユニット17および制御ユニット20とユニットベース66の3者を戸パネル2に組むことができる。また、ビス73を取外してユニットベース66を装着口23から分離することで、駆動ユニット17および制御ユニット20を戸パネル2の外へ取出して、これら両者17・20の保守および点検を簡便に行える。
駆動ユニット17の駆動部ケース24の内部に、複数のガイドプーリー63・64を配置し、複数のガイドプーリー63・64の間に、開放ワイヤー28の弛みを吸収するテンション機構を設けるようにした。テンション機構は、テンションプーリー65と、プーリー支持枠69と、テンションばね72で構成するようにした。このように、駆動ユニット17にテンション機構を設けると、戸パネル2が閉じ復帰構造18で開放位置から閉じ位置へ閉じ操作されるとき、あるいは戸パネル2が手動で開放操作されるとき、開放駆動ドラム27から繰出された開放ワイヤー28が弛むのを防止して、開放ワイヤー28を開放駆動ドラム27に整然と巻戻すことができる。
ガイドレール1の内部にエアーダンパー77と、吊車型のランナー3と、閉じワイヤー81と、開放ワイヤー28を配置すると、これらの部材3・28・77・81をガイドレール1で隠蔽して、引戸の外観の印象が煩雑化するのを解消できる。また、戸パネル2を開閉する毎に繰出され、あるいは巻き戻される開放ワイヤー28をおよび閉じワイヤー81をガイドレール1で保護できる。
本発明に係る別の半自動式の引戸は、開閉構造の主要部材となる駆動ユニット17と、電源ユニット19と、制御ユニット20を、戸パネル2内に配置した。こうした引戸によれば、従来装置において必要不可欠であった、先の主要部材を収容するための大形のガイドレールを設ける必要がなく、小形のガイドレール1で戸パネル2を開閉案内することができる。また、戸パネル2の開放動作を自動化するので、電源スイッチ21をオン操作するだけで戸パネル2を閉じ位置から自動的に開放操作できる。なお、開放操作された戸パネル2は開放位置に保持されるので、戸パネル2の閉じ位置への復帰操作は人手で行う。こうした引戸は、例えば犬や猫などの愛玩動物を屋内と屋外の間で出入りさせる引き戸に適用することにより、犬や猫の欲求に応じて戸パネル2を開放操作する際の手間を省くことができる。また、自動開放された戸パネル2が、開放されて一定時間が経過した後に閉じ操作されて、犬や猫が締め出されてしまうのを解消できる。
本発明に係る駆動ユニットの概略構造を示す一部破断正面図である。 半自動式の引戸の正面図である。 本発明に係る閉じ復帰構造を示す縦断正面図である。 本発明に係る引戸の吊車構造を示す縦断側面図である。 半自動式の開閉構造を示す縦断正面図である。 戸パネルにおける開閉構造の配置構造を示す一部破断正面図である。 図5におけるA−A線断面図である。 開放駆動ドラムの横断平面図である。 図8におけるB−B線断面図である。 動力遮断構造を示す正面図である。 図5におけるC−C線断面図である。 閉じ復帰ユニットの縦断正面図である。 図12におけるD−D線断面図である。 電源ユニットの装着構造を示す正面図である。 駆動ユニットにおける制御手順を示すフローチャートである。 駆動ユニット17の別の実施例を示す横断平面図である。 電源ユニットの別の実施例を示す電気回路図である。
(実施例) 図1ないし図15は、本発明に係る半自動式の引戸の実施例を示している。本発明における前後、左右、上下とは、図2に示す交差矢印と、交差矢印の近傍の前後・左右・上下の表記に従う。図2において、符号1は開口枠の上枠に固定したガイドレール、符号2は戸パネルである。図3に示すように戸パネル2は、その上部左右に装着したランナー3で吊下げ支持されて、ガイドレール1に沿って開閉移動できる。戸パネル2は、建材メーカーから市販されている、全厚寸法が30mmの木質系のパネルからなり、縦長四角形状の枠体2aと、枠体2aの内部に配置される芯材2bと、枠体2aおよび芯材2bの表裏に固定される表装材2cなどで構成されている(図6参照)。戸パネル2の表裏(前後面)にはドアハンドル4が設けられており、戸パネル2の下部は床面に固定した振止めローラー5で案内されて、前後の揺れ動きが規制されている(図2参照)。
図4に示すように、ガイドレール1は下向きに開口する断面C字状のアルミニウム条材からなり、その下面前後にランナー3を案内するレール壁6が設けられており、レール内面の前後壁および上壁にランナーの遊動を規制するリブ7が設けられている。ガイドレール1は、開口枠の閉じ端から開放端にわたって配置されている。ランナー3は、戸パネル2の上隅に固定したホルダー10に装着されるランナー台11と、前後一対のローラー12と、ローラー12を回転自在に支持するローラー枠13と、ランナー台11とローラー枠13を連結するランナー軸14などで構成されている。ガイドレール1の断面の縦横寸法は40mm弱である。
戸パネル2を自動的に開放操作し、開放された戸パネル2を閉じ操作し、必要時には戸パネル2を手動で開閉できるようにするために、戸パネル2とガイドレール1の間に半自動式の開閉構造が設けられている。半自動式の開閉構造は、戸パネル2をモーター動力で開放操作する駆動ユニット17と、開放された戸パネル2を閉じ操作する閉じ復帰構造18と、駆動ユニット17のモーター25に駆動電流を供給する電源ユニット19と、モーター25の駆動状態を制御する制御ユニット20と、駆動ユニット17を起動させる電源スイッチ21などで構成される。電源スイッチ21は、ドアハンドル4の下方に位置する状態で戸パネル2の表裏に配置されている(図2参照)。
図6に示すように、戸パネル2の開放端側の側面上部に装着部22が設けられ、装着部22の内部に駆動ユニット17と制御ユニット20とが収容されている。また、後述するように、閉じ復帰構造18の閉じ復帰ユニット76が、戸パネル2の上端に凹み形成した装着凹部83に収容されている。装着部22は枠体2aの一部を切断して形成されており、図5に示すように、その装着口23は戸パネル2の開放端で開口されている。駆動ユニット17と制御ユニット20は、装着口23の開口面を塞ぐユニットベース66の内面に固定されている。そのため、駆動ユニット17および制御ユニット20を装着口23から装着部22の内部に差込み装着し、ユニットベース66の上下端をビス73で固定することにより、駆動ユニット17および制御ユニット20とユニットベース66の3者を戸パネル2に組むことができる。また、ビス73を取外してユニットベース66を装着口23から分離することで、駆動ユニット17および制御ユニット20を戸パネル2の外へ取出して、両ユニット17・20の保守および点検を簡便に行うことができる。
図5、図7において、駆動ユニット17は、前後一対の鋼板製の駆動部ケース24と、同ケース24に組付けられる正逆転駆動が可能な小形のモーター25および減速機構26と、減速動力を受けて回転駆動される開放駆動ドラム27と、同ドラム27から繰出されて、繰出し端がガイドレール1の開放端側に固定される開放ワイヤー28とを備えている。モーター25は市販の平型モーター(マブチモーター株式会社、型番FC−280PC相当品)からなり、その前後厚みは戸パネル2の前後厚み寸法の半分強でしかない(図7参照)。駆動ユニット17の駆動部ケース24は、後述するユニットベース66に固定されている。開放ワイヤー28の繰出し端は、ガイドレール1の開放端に固定した逆L字状の固定金具29に分離不能に固定されている(図3参照)。つまり、開放ワイヤー28の繰出し端は、開口枠の開放端側に固定されている。開放ワイヤー28は、ステンレス製のワイヤーの表面にポリアミド樹脂をコーティングして形成されている。駆動ユニット17の前後幅は、戸パネル2の表装材2cの対向間隔より僅かに小さく設定されている。
図1および図5に示すように減速機構26は、モーター25の出力軸に固定されるウォームギヤ32と、ウォームギヤ32と噛み合うウォームホイール33からなり、ウォームホイール33の回転動力を、ギヤトレイン34を介して開放駆動ドラム27に伝動する。モーター25およびウォームギヤ32は、駆動部ケース24に固定したモーターブラケット35に組付けられてユニット部品化されている。ギヤトレイン34は、ウォームホイール33と同行回転する初段ギヤ36と、初段ギヤ36に噛合う切換ギヤ37と、切換ギヤ37に噛合う中間ギヤ38と、中間ギヤ38と噛合う終段ギヤ39からなり、これらのギヤ群は駆動部ケース24で支持されている。
開放駆動ドラム27は終段ギヤ39と同行回転して、同ドラム27から繰出された開放ワイヤー28を巻戻す。切換ギヤ37は、初段ギヤ36と噛合う大径の従動ギヤ37aと、中間ギヤ38と噛合う小径の駆動ギヤ37bとを備えており、駆動部ケース24で回転自在に支持されている。ギヤトレイン34は、初段ギヤ36の回転動力を駆動ギヤ37bと中間ギヤ38の間で2分の1に減速するが、中間ギヤ38と終段ギヤ39の間で2分の3に増速する。その結果、初段ギヤ36の回転動力は、ギヤトレイン34において4分の3まで減速された状態で開放駆動ドラム27へ伝動される。図5において符号41はウォームホイール33および初段ギヤ36を支持する第1ギヤ軸、42は中間ギヤ38を支持する第2ギヤ軸、43は終段ギヤ39および開放駆動ドラム27を支持する第3ギヤ軸である。
図8に示すように、開放駆動ドラム27は、円筒状の胴部およびフランジを備えたドラム本体46と、胴部の開口面の側に締結固定されるフランジ体47で構成されており、胴部の内面のばね室48に、開放ワイヤー28を巻込むためのぜんまいばね(畜力機構)49が収容されている。このように、開放駆動ドラム27はモーター25の回転動力によって開放ワイヤー28を巻込む向きに回転駆動されるとともに、ぜんまいばね49で開放ワイヤー28を巻込む向きに回転付勢されている。
上記構成の駆動ユニット17においては、モーター25の回転動力をウォームギヤ32とウォームホイール33で減速している。そのため、ウォームホイール33に逆向きの回転力が作用するとき、ウォームホイール33がウォームギヤ32に噛込んで回転不能となる。具体的には、戸パネル2が閉じ復帰ユニット76で閉じ操作されて、時計回転方向へ回転する開放駆動ドラム27から開放ワイヤー28が繰出される場合に、開放駆動ドラム27の回転動作が減速機構26でブロックされてしまう。そこで、初段ギヤ36と中間ギヤ38の間に動力遮断構造52を設けて、開放駆動ドラム27の回転動作が減速機構26の側へ伝動するのを動力遮断構造52で遮断できるようにしている。
図1に示すように、動力遮断構造52は、切換ギヤ37と、同ギヤ37を回転自在に支持するギヤ支持体53と、ギヤ支持体53を変位操作するソレノイド(アクチュエーター)54で構成する。ギヤ支持体53は逆へ字状に形成されて、その中途部がギヤ枠40に固定した支軸55で上下揺動可能に支持されており、その一端に切換ギヤ37のギヤ軸37cが軸支されている。また、ギヤ支持体53の他端に設けた長穴を、ソレノイド54のプランジャー56にピンで連結している。ソレノイド54は、図示していないばねの付勢力を受けて、プランジャー56がケースの外へ突出する待機状態と、プランジャー56がばねの付勢力に抗して電磁作用でケース内へ引込まれる作動状態に切換えることができる。
ソレノイド54に駆動電流が供給されていない状態では、図1、図5に示すようにプランジャー56がばねの付勢力を受けてケースの外へ突出し、切換ギヤ37を動力伝動位置に位置保持している。この状態の切換ギヤ37は、初段ギヤ36と中間ギヤ38に同時に噛み合って、モーター動力を開放駆動ドラム27側へ伝動する。ソレノイド54に駆動電流が供給された状態では、図10に示すようにプランジャー56がばねの付勢力に抗して電磁作用でケース内へ引込まれて、切換ギヤ37を動力遮断位置に位置保持する。この状態の切換ギヤ37は、初段ギヤ36および中間ギヤ38から分離するので、開放駆動ドラム27が開放ワイヤー28を繰出す向き(時計回転方向)に回転するときの回転力を、中間ギヤ38が空転することで遮断して、開放駆動ドラム27の回転動作がウォームギヤ32でブロックされるのを解消できる。
電池切れの場合や、健常者が戸パネル2を人手で開閉操作する場合の動力遮断構造52は、切換ギヤ37が動力伝動位置に切換っている。そのため、戸パネル2を人手で開放操作する場合には、上記と同様に開放駆動ドラム27の巻戻し動作がブロックされることになる。こうした不具合を解消するために、終段ギヤ39とフランジ体47の間にワンウェイクラッチ58を設けている。図9に示すように、ワンウェイクラッチ58は、第3ギヤ軸43で支持されるフランジ体47のボス部内面の3個所に形成したローラー穴59と、ローラー穴59に収容したクラッチローラー60と、同ローラー60を反時計回転方向へ押付け付勢するばね61で構成する。
上記と同様に、電池切れの際に後述する2次電池(電源用電池)103を充電するまでの間、開放された戸パネル2を人手で閉じ操作する場合にも、開放ワイヤー28を繰出す向きに回転しようとする開放駆動ドラム27の回転動作が減速機構26でブロックされる。こうした場合でも、切換ギヤ37を強制的に動力遮断位置へ切換え操作するために、プランジャー56の突端とユニットベース66の間に、手動切換構造を設けている。図5に示すように手動切換構造は、クランク状の切換えロッド62からなり、ユニットベース66側の端部に受動部62aが設けられており、切換えロッド62の中途部がガイドボスで左右スライド自在に案内支持されている。ロッド左端の操作部62bはプランジャー56に正対させてある。受動部62aを図示していない操作ピンやドライバーなどで押し込み操作すると、切換えロッド62が図5に向かって左側へスライド移動し、操作部62bがばねの付勢力に抗してプランジャー56を押し込んで、切換ギヤ37を動力遮断位置へ切換える。これにより、開放駆動ドラム27は開放ワイヤー28を繰出す向きに回転できるので、人手で戸パネル2を閉じ操作することが可能となる。なお、戸パネル2を閉じ位置まで移動したのち、操作ピンやドライバーを受動部62aのガイド穴から抜外すことにより、切換ギヤ37は再び動力伝動位置へ切換る。
戸パネル2が人手で開放操作される状態では、ぜんまいばね49の付勢力を受けた開放駆動ドラム27が、反時計回転方向へ回転して開放ワイヤー28を巻込み操作する。この状態では、開放駆動ドラム27のフランジ体47が反時計回転方向へ回動するので、クラッチローラー60は第3ギヤ軸43との摩擦によって、ローラー穴59の内奥から離れる向きに保持される。その結果、開放ワイヤー28を巻込み操作するときの開放駆動ドラム27の回転動作が終段ギヤ39に伝わるのを防止して、開放駆動ドラム27の回転動作がブロックされるのを解消できる。なお、第3ギヤ軸43がモーター動力を受けて反時計回転方向へ駆動されるときは、クラッチローラー60は第3ギヤ軸43の回転摩擦を受けてローラー穴59の内奥へ押し付けられるので、第3ギヤ軸43の回転動力を開放駆動ドラム27に伝動して、開放ワイヤー28を巻戻すことができる。
図5に示すように、開放駆動ドラム27から繰出された開放ワイヤー28は、2個のガイドプーリー63・64と、両プーリー63・64の間に配置したテンションプーリー65に案内されて、駆動部ケース24の外へ導出されている。さらに、開放ワイヤー28はユニットベース66の外面に設けた下変向プーリー67と、戸パネル2の開放端側の側面上部に固定した上変向プーリー68で変向案内されて、ガイドレール1の内部へ導出されている。図11に示すように、テンションプーリー65はプーリー支持枠69に固定したプーリー軸70で回転自在に支持されており、プーリー支持枠69は、その基端がガイドプーリー51のプーリー軸71で上下揺動可能に支持され、その揺動先端に掛止したテンションばね72で開放ワイヤー28に向かって押下げ付勢(押付け付勢)されている。テンションばね72の他端は、第2ギヤ軸42に掛止されている(図5参照)。駆動部ケース24には、プーリー軸70を案内するガイド溝74が形成されている(図11参照)。
上記のテンション機構を設けることにより、戸パネル2が閉じ復帰構造18で開放位置から閉じ位置へ閉じ操作されるとき、あるいは戸パネル2が手動で開放操作されるとき、開放駆動ドラム27から繰出された開放ワイヤー28が弛むのを防止して、開放ワイヤー28を開放駆動ドラム27に整然と巻戻すことができる。
図3において閉じ復帰構造18は、閉じ復帰ユニット76と戸パネル2の閉じ動作を制動するシリンダー型のエアーダンパー(ダンパー)77を備えている。図12および図13に示すように、閉じ復帰ユニット76は、四角形状のユニットケース78と、ユニットケース78に固定したドラム軸79で回転自在に支持した閉じ駆動ドラム80と、同ドラム80から繰出されて、繰出し端がガイドレール1の中途部に固定される閉じワイヤー81とを備えている。閉じワイヤー81の繰出し端は、ガイドレール1に固定したフック状の固定金具82に分離不能に掛止されている(図3参照)。つまり、閉じワイヤー81の繰出し端は、開口枠の閉じ端側に固定されている。また、閉じ駆動ドラム80から繰出した閉じワイヤー81の中途部は、後述するローラー枠97に設けたガイドプーリー100で案内されている。閉じワイヤー81は、ステンレス製のワイヤーの表面にポリアミド樹脂をコーティングして形成されている。
図13においてユニットケース78は、プレス成形品からなる前後一対の金属ケース78aと、金属ケース78aの上部および下部に固定される樹脂ケース78b・78cで中空箱状に形成されており、戸パネル2の上端に凹み形成した装着凹部83内に収容されている。装着凹部83の開口面は、プレス金具からなる装着板84で塞がれており、同板84の板面に形成した装着開口85にユニットケース78を嵌込んだのち、同ケース78を図12に向かって左側へスライドして装着開口85に係合装着することにより、前後・左右・上下に遊動不能に固定される。
閉じ駆動ドラム80は、円筒状の胴部およびフランジを備えたドラム本体87と、胴部の開口面の側に締結固定されるフランジ体88で構成されており、胴部の内面のばね室89に、閉じワイヤー81を巻込むためのぜんまいばね(畜力機構)90が収容されている。ぜんまいばね90の張力は、戸パネル2を閉じ操作する必要上、開放ワイヤー28を巻込み操作するぜんまいばね49の張力に比べて充分に大きく設定されている。
図3において、シリンダー型のエアーダンパー77は、シリンダー本体93と、ピストンロッド94と、図示していない速度コントローラーなどで構成されている。シリンダー本体93の一端は、閉じ端側のランナー3に連結金具95を介して連結されており、シリンダー本体93の開放端側は、前後一対のローラー96でローラー枠97を介して支持されている。従って、シリンダー本体93は、戸パネル2の開閉移動に同行して移動する。図3に示すように、ピストンロッド94の突端には磁石98が固定されており、ガイドレール1の閉じ端には鉄板99が固定してある。戸パネル2を閉じた状態においては、磁石98が鉄板99に吸着してピストンロッド94の移動を規制している。この状態から戸パネル2がモーター動力で開放操作されると、シリンダー本体93のみが戸パネル2に同行して移動し、ピストンロッド94が限界位置まで抜出されたのちに、磁石98が鉄板99から離れて、ピストンロッド94も戸パネル2に同行して全開放位置まで移動する。
上記の閉じ復帰構造18においては、断面の縦横寸法が40mm弱しかないガイドレール1の内部に、エアーダンパー77と、吊車型のランナー3と、閉じ駆動ドラム80から繰出された閉じワイヤー81と、開放駆動ドラム27から繰出された開放ワイヤー28を配置した。こうした引戸によれば、エアーダンパー77とランナー3、および開放ワイヤー28と閉じワイヤー81をガイドレール1で隠蔽して、引戸の外観の印象が煩雑化するのを解消できる。また、戸パネル2を開閉する毎に繰出され、あるいは巻き戻される開放ワイヤー28をおよび閉じワイヤー81をガイドレール1で保護できる。
図14において電源ユニット19は、箱状の電源部ケース102と、同ケース102に着脱自在に組付けられる4個の2次電池103を備えている。2次電池103は市販されている単3形のニッケル水素電池からなり、各電池は直列に接続されている。電源部ケース102は、戸パネル2に設けた装着開口104に組付けられて、ビス105で固定されている。電源ユニット19の外面は、戸パネル2に固定した電源スイッチ21で覆われている。電源スイッチ21は、スイッチベース106と、押しボタン型のスイッチボタン107を備えた市販品からなる。スイッチボタン107の直径が大きいので、車椅子に座った状態のままでも電源スイッチ21は容易に押し込み操作することができる。スイッチベース106を装着開口104の外面にあてがい、その四隅をビス108で戸パネル2に締結することにより、電源ユニット19を覆い隠すことができる。2次電池103の交換は、電源スイッチ21を戸パネル2から取外した状態で行う。
図5において制御ユニット20は、制御部ケース110と、同ケースに固定した制御回路基板に実装される制御回路111を備える。制御回路111は、電源スイッチ21と、パイロットセンサー112(図2参照)、および制御回路基板に設けた衝撃センサー116(図5参照)の出力信号を受けてモーター25とソレノイド54の作動状態を制御する。パイロットセンサー112は赤外線センサーからなり、図2に示すように、戸パネル2の開放端側のパネル枠の上下3個所に埋設されている。パイロットセンサー112は、開口枠までの距離の変化から戸パネル2が所定の開放位置まで開放されたことを検知することができる。衝撃センサー116は、戸パネル2が開放経路上の障害物と衝突したことを検知でき、例えば、人や物が戸パネル2と開口枠の間に挟まれた場合の衝撃を検知する。図5において、符号113は電源ユニット19と制御回路基板111を接続するリード線、114は電源スイッチ21と制御回路基板111を接続するリード線、115はパイロットセンサー112と制御回路基板111を接続するリード線である。
次に、半自動式の引戸の開閉動作を、図15に示すフローチャートに基づき説明する。戸パネル2が閉じ位置にあるとき、開放ワイヤー28の大半の部分は、開放駆動ドラム27から繰出されており、閉じワイヤー81の大半の部分は、閉じ駆動ドラム80に巻き込まれている。この状態で電源スイッチ21をオン操作するとモーター25が正転駆動され(S1)、モーター25の動力が減速機構26およびギヤトレイン34を介して開放駆動ドラム27に伝動されて、開放ワイヤー28が徐々に開放駆動ドラム27に巻戻される。同時に、閉じワイヤー81が徐々に閉じ駆動ドラム80から繰出されながら、戸パネル2が開放位置へ向かって開放移動する。
戸パネル2が所定の開放位置(開放端から約5cm手前)まで開放移動したことをパイロットセンサー112が検知した時点(S3でイエス)で、制御回路111はモーター25に印加される電圧をそれまでの50%に減らしてモーター25を減速させ(S4)、タイマーをオン(S5)させたうえで、戸パネル2をゆっくりと全開放位置まで移動させる。従って、戸パネル2が開放時の運動慣性力で開口枠に衝突するのを防止できる。タイマーをオンしてから一定時間(T1)が経過したら(S6でイエス)、戸パネル2が全開放位置まで移動したとみなしてモーター25を停止させ(S7)、さらにタイマーをオン(S5)してから一定時間(T2)が経過した時点(S8でイエス)で、入退室が完了したとみなしてタイマーをオフさせる(S9)。
この状態では、閉じ復帰ユニット76の閉じワイヤー81の大部分が閉じ駆動ドラム80から繰出され、ぜんまいばね90は十分に巻締められている。そのため、戸パネル2はぜんまいばね90から閉じ方向のばね力を受けるが、ウォームギヤ32とウォームホイール33の間の減速比が高く大きなトルクを伝動する関係で、ウォームギヤ32から終段ギヤ39に至る全てのギヤの噛合い部分で噛込みが生じており、各ギヤが逆回転できないのはもちろん、切換ギヤ37を動力遮断状態に切換えることができない状態になっている。
上記のような各ギヤの噛込みを解消するために、制御回路111はモーター25を短時間(約0.5秒)だけ逆転駆動させて(S10)、ギヤトレイン34における各ギヤ36・37・38・39の噛込みと、ウォームギヤ32とウォームホイール33の噛込みを解消する。この後、ソレノイド54に駆動電流を供給して(S11)、図10に示すように、ギヤ支持体53をソレノイド54の側へ引き寄せ操作し、切換ギヤ37を動力伝動位置から動力遮断位置に切換え、再びタイマーをオンさせる(S12)。このように、各ギヤの噛込みを解消した状態でソレノイド54に駆動電流を供給する開閉構造によれば、動力遮断構造52の切換動作を常に安定した状態で行えるうえ、ソレノイド54による電源用電池103の無駄な消耗を解消できる。
切換ギヤ37が動力遮断位置に切換わった状態では、中間ギヤ38が自由に回転できる状態になっており、開放駆動ドラム27が開放ワイヤー28を繰出す向きに回転したとしても、その回転動作が初段ギヤ36へ伝わることはない。そのため、閉じ駆動ドラム80はぜんまいばね90の付勢力を受けて閉じワイヤー81を巻込みながら、戸パネル2を軽快に閉じ操作できる。戸パネル2が閉じ操作されるのに伴い、戸パネル2の移動量に相当する開放ワイヤー28が開放駆動ドラム27から繰出されて、開放駆動ドラム27が図8において時計回転方向へ回転する。この状態のワンウェイクラッチ58は、開放駆動ドラム27の時計回転方向の回転力を受けて、第3ギヤ軸43および終段ギヤ39を同行回転させる。しかし、切換ギヤ37が動力遮断位置に切換えられているので、開放駆動ドラム27の回転動作は中間ギヤ38が空転することで遮断され、それ以上回転動作が伝動することはない。
戸パネル2が閉じ移動するのに伴い、ピストンロッド94の突端の磁石98が鉄板99に吸着し、以後は、シリンダー本体93のみが戸パネル2に同行移動して、シリンダー本体93内の空気を押出しながら戸パネル2の閉じ移動動作を制動する。従って、戸パネル2をゆっくりと閉じ端まで移動できる。この状態では、開放ワイヤー28の大部分が開放駆動ドラム27から繰出されて伸びきっており、ぜんまいばね49は十分に巻き締められている。(S12)から一定時間(T3)が経過したら(S13でイエス)、戸パネル2が閉じ位置まで移動したとみなして、ソレノイド54に対する駆動電流の供給を停止(S14)し、切換ギヤ37を動力伝動位置に戻して、制御ユニット20を初めの停止待機状態に戻す。さらにタイマーをオフする(S15)。
上記の状態から、戸パネル2の裏側に配置した電源スイッチ21をオン操作することにより、上記と同様にして戸パネル2をモーター25の動力で自動的に開放操作できる。また、戸パネル2が全開放位置まで移動したのち、一定の時間が経過した状態で、モーター25を逆転駆動してギヤの噛込みを解消し、さらに動力遮断構造52のソレノイド54に駆動電流を供給することにより、切換ギヤ37を動力遮断位置に切換えて閉じ復帰構造18を作動させ、全開放された戸パネル2を閉じ位置まで移動操作することができる。その間の駆動ユニット17と、閉じ復帰構造18の作動状況は、先に説明した通りであるのでその説明を省略する。
モーター25が戸パネル2を開放する向きの駆動(正転駆動)を開始したのち(S1)、衝撃センサー116が衝撃を検知した場合(S2でイエス)には、駆動電流の供給を停止してモーター25を停止させ(S16)、タイマーをオンする(S17)。タイマーをオンしてから一定時間(T4)が経過したら(S18でイエス)、タイマーをオフして(S19)、モーター25を短時間(約0.5秒)だけ逆転駆動させ(S10)、ギヤトレイン34における各ギヤの噛込みを解消する。以後は、ソレノイド54に駆動電流を供給して(S11)、ギヤ支持体53をソレノイド54の側へ引き寄せ操作し、切換ギヤ37を動力伝動位置から動力遮断位置に切換え、再びタイマーをオンさせる(S12)。
切換ギヤ37が動力遮断位置に切換わった状態では、中間ギヤ38が自由に回転できる状態、つまり開放駆動ドラム27が開放ワイヤー28を繰出す向きに回転できる状態になる。そのため、閉じ駆動ドラム80はぜんまいばね90の付勢力を受けて閉じワイヤー81を巻込みながら、戸パネル2を閉じ操作できる。(S12)から一定時間(T3)が経過したら(S13でイエス)、戸パネル2が閉じ位置まで移動したとみなして、ソレノイド54に対する駆動電流の供給を停止(S14)することにより、切換ギヤ37を動力伝動位置に切換えて停止待機状態に戻す。さらにタイマーをオフする(S15)。この状態で、衝撃の発生要因であった障害物を除去して、再び電源スイッチ21をオン操作すると、戸パネル2をモーター25の動力で開放操作できる。
以上の説明から理解できるように制御回路111は、電源スイッチ21のオン信号を受けてモーター25を起動する。また制御回路111は、パイロットセンサー112の出力信号を受けてモーター25を減速したのち停止させる。このように、モーター25の駆動状態を制御回路111で制御すると、戸パネル2を所定の開放位置まで一定速度で開放移動させたのち、戸パネル2の移動速度を減速してゆっくりと開放位置まで移動できるので、戸パネル2が開放時の運動慣性力で開口枠に衝突するのを防止できる。また、モーター動力を伝動するギヤトレイン34に無理な力が加わるのを避けることができる。さらに、制御回路111は、モーター25が起動したのちの衝撃センサー116の出力信号に基づきモーター25の駆動を停止して、人や物が戸パネル2と開口枠の間に挟まれるのを防止するので、戸パネル2を自動的に開放操作する開閉構造の安全性を向上できる。
停電時、あるいは2次電池103の電圧が所定の値より低下した電池切れ時には、モーター25およびソレノイド54を作動させることはできない。また、動力遮断構造52の切換ギヤ37は動力伝動位置に切換っていて、開放駆動ドラム27の回転動作をウォームホイール33側へ伝導できる状態になっている。しかし、終段ギヤ39と開放駆動ドラム27の間にワンウェイクラッチが設けてあるので、人手で戸パネル2を開放操作すると、戸パネル2が開放移動した分だけ、開放駆動ドラム27がぜんまいばね49の付勢力で、図9において反時計回転方向へ回転されて、開放ワイヤー28を巻込み操作する。このとき、戸パネル2の開放操作に要する力は、閉じ駆動ドラム80に設けたぜんまいばね90の付勢力と、ランナー3の走行抵抗と、シリンダー本体93の移動抵抗などの総和に等しく、従って、比較的軽快に戸パネル2を開放操作できる。
また、電池切れの際に、開放された戸パネル2を人手で閉じ操作する場合には、切換えロッド62の受動部62aを操作ピンなどで押し込み操作すると、切換えロッド62がプランジャー56をケース内へと押し込んで、切換ギヤ37を動力遮断位置へ切換えることができる。従って、開放駆動ドラム27の回転動作が減速機構26でブロックされるのを解消して、開放ワイヤー28を繰出すことができ、人手による戸パネル2の閉じ操作を軽快に行うことができる。
以上のように構成した開閉構造によれば、モーター25および減速機構26と、減速動力で回転駆動される開放駆動ドラム27および開放ワイヤー28などで駆動ユニット17を構成して、2次電池103で駆動される小形のモーター25の動力で、戸パネル2を開放操作できる。さらに、閉じ駆動ドラム80および閉じワイヤー81と、閉じ駆動ドラム80を回転付勢するぜんまいばね90などで閉じ復帰ユニット76を構成して、ぜんまいばね90を駆動源にして戸パネル2を閉じ操作できる。また、開閉構造の主要部材となる駆動ユニット17と、閉じ復帰ユニット76と、電源ユニット19と、制御ユニット20を、戸パネル2の厚み範囲内に埋設固定するので、従来装置において必要不可欠であった、大型のガイドレールを設ける必要がなくなる。従って、レール断面の縦横寸法が40mm弱しかないガイドレール1を備えた比較的小形で軽量の戸パネル2を備えた引戸であるにも拘らず、半自動式の開閉構造を問題なく適用して、車椅子を常用するユーザーの利便性を向上できる。また、必要に応じて戸パネル2を手動で軽快に開放できるので、停電時や電池切れ時であっても、戸パネル2で区分されたスペースへの出入りを支障なく行うことができる。
ギヤトレイン34の初段ギヤ36と中間ギヤ38の間に動力遮断構造52を設け、同構造52を動力遮断位置に切換えることにより、戸パネル2の閉じ移動に応じて開放ワイヤー28を繰出す際に、開放駆動ドラム27の回転動作が減速機構26でブロックされるのを解消した。こうした開閉構造によれば、戸パネル2が閉じ復帰ユニット76で閉じ操作されるとき、開放駆動ドラム27が開放ワイヤー28を繰出す向きに回転するのを許して、戸パネル2を円滑に閉じ操作できる。また、戸パネル2を開放するときに限ってモーター25を駆動すればよいので、例えば、モーター動力で閉じ駆動ドラム80を駆動して戸パネル2を自動的に閉じ操作する場合に比べて、駆動ユニット17の構造を著しく簡素化し小形化できる。従って、比較的小形で軽量の戸パネル2を備えた引戸において、半自動式の開閉構造を導入する際の全体コストを抑えることができる。また、2次電池103の消耗を抑えて、その交換間隔を拡大できる。
ギヤトレイン34を構成する切換ギヤ37と、ギヤ支持体53と、ソレノイド54で動力遮断構造52を構成すると、切換ギヤ37を利用する分だけ動力遮断構造52の構造を簡素化でき、例えば電磁クラッチで動力遮断を行う場合に比べて低コスト化できる。また、ソレノイド54でギヤ支持体53を動力遮断位置に切換え、切換ギヤ37を初段ギヤ36と中間ギヤ38から分離して動力伝動経路を遮断するので、開放ワイヤー28が繰出されるときのギヤトレイン34側の回転抵抗を軽減して、閉じ復帰構造18による戸パネル2の閉じ操作を円滑にしかも軽快に行える。
終段ギヤ39とフランジ体47の間に、ウォームホイール33の回転動力を開放駆動ドラム27へ向かって伝動するが、開放駆動ドラム27が開放ワイヤー28を巻込むときの回転動作は遮断するワンウェイクラッチ58を設けるようにした。こうした開閉構造によれば、戸パネル2を人手で開放操作する場合に、動力遮断構造52が動力伝動位置に切換っていても、開放駆動ドラム27がぜんまいばね49で開放ワイヤー28を巻込む向きに回転操作されるのを許して、開放ワイヤー28を開放駆動ドラム27に整然と巻き戻すことができる。また、戸パネル2が開放操作された状態において、開放ワイヤー28が戸パネル2と開口枠の間に垂れ下がるのを解消できる。動力遮断構造52を動力遮断位置に切換える必要もなく戸パネル2を開放操作できるので、人手による戸パネル2の開放を簡便に行える。終段ギヤ39とフランジ体47の間にワンウェイクラッチ58を設けているので、開放駆動ドラム27がぜんまいばね49で開放ワイヤー28を巻込む向きに回転操作されるときの、回転抵抗を小さくできる。
上記の実施例で説明した半自動式の引戸は、以下の形態で実施することができる。
プランジャー56の突端とユニットベース66の間に、電池切れの際に切換ギヤ37を強制的に動力伝動位置から動力遮断位置へ切換え操作する切換えロッド62が設けてある半自動式の引戸。
図16は駆動ユニット17の別の実施例を示している。そこでは、初段ギヤ36を皿ばね(摩擦ばね)119でウォームホイール33に押付け付勢して、ウォームホイール33と初段ギヤ36の側端面の間の摩擦伝動部118の摩擦力によって、ウォームホイール33の回転動力を初段ギヤ36に伝動できるようにしている。こうした動力伝動構造によれば、モーター25に一定以上の負荷が作用する状態において、初段ギヤ36がウォームホイール33に対してスリップして、モーター25の回転動力を遮断できるので、モーター内部のコイルが焼損するのを防止できる。モーター25に一定以上の負荷が作用する状態としては、例えば、人や物が戸パネル2にもたれ掛った状態でモーター25が起動された場合や、パイロットセンサー112が故障して、戸パネル2が開口枠に押しつけられた場合などがある。なお、モーター25に一定以上の負荷が作用してから一定時間が経過したら、制御回路111はモーター25の駆動を停止し、さらに異常な状態であることを音声や発光表示体で通報し、再びスイッチボタン107が押込み操作されるのを待って、初めの停止待機状態に戻す。
図17は、電源ユニット19の電源用電池を2次電池103で構成し、開口枠と戸パネル2の間に充電装置を設けて、戸パネル2が閉じられた状態において2次電池103を非接触状態で充電できるようにした。充電装置は、開口枠の側に設けられる送電装置122と、戸パネル2の側に設けられる受電装置123を備えており、送電装置122は家庭用の商用電源に接続されている。送電装置122は、制御回路124と、商用電源の電流を高周波電流に変換する発振回路125と、発振回路125で調整された高周波電流を受けて誘導磁界を生成する1次コイル126、および1次側コンデンサー127などを備えている。受電装置123は、1次コイル126に対応する2次コイル128および2次側コンデンサー129と、受電した高周波電流を整流する整流回路130と、レギュレータ回路131などを備えている。受電装置123は、電源ユニット19の近傍に設けておくとよい。以上のように、開口枠と戸パネル2の間に充電装置が設けてあると、戸パネル2が閉じられた状態において2次電池103を非接触状態で充電できるので、電源用電池を交換する手間を省いて、ユーザーの利便性を向上できる。
上記の実施例では、閉じ復帰構造18を、ぜんまいばね90を駆動源とする閉じ復帰ユニット76とエアーダンパー77で構成したがその必要はない。例えば、ガイドレール1が閉じ端側へ向かって下り傾斜させてあって、戸パネル2の自重によるランナー3の転動作用で、戸パネル2を閉じ移動させる構造であってもよい。同様に、戸パネル2を釣合い錘で閉じ操作する構造や、引張りばねや圧縮ばねのばね力を駆動源にして、戸パネル2を閉じ操作する構造であってもよい。
本発明に係る別の半自動式の引戸は、閉じ復帰構造18を省略して、戸パネル2の開放動作のみを自動化できるようにした。半自動式の引戸は、開口枠の上枠に固定したガイドレール1と、ガイドレール1に沿って開閉移動できる戸パネル2と、戸パネル2をモーター動力で開放操作する駆動ユニット17と、2次電池103を備えた電源ユニット19と、戸パネル2に配置されて駆動ユニット17を起動させる電源スイッチ21と、モーター25の駆動状態を制御する制御ユニット20を備えている。駆動ユニット17は、モーター25および減速機構26と、減速動力を受けて回転駆動される開放駆動ドラム27と、同ドラム27から繰出されて、繰出し端が開口枠の開放端側に固定される開放ワイヤー28とを備えている。駆動ユニット17、電源ユニット19、および制御ユニット20が、戸パネル2内に配置固定されていることを特徴とする。なお、駆動ユニット17や制御ユニット20などの詳細構造は、既に説明したとおりである。
以上のように、戸パネル2の開放動作のみを自動化できるようにした引戸によれば、電源スイッチ21をオン操作するだけで、戸パネル2を自動的に開放操作できる。開放操作された戸パネル2は開放位置に保持されるので、戸パネル2の閉じ位置への復帰操作は人手で行う。こうした引戸は、例えば犬や猫などの愛玩動物を屋内と屋外の間で出入りさせる引き戸に適用することにより、犬や猫の欲求に応じて戸パネル2を開放操作する際の手間を省くことができる。また、自動開放された戸パネル2が、開放されて一定時間が経過した後に閉じ操作されて、犬や猫が締め出されてしまうのを解消できる。なお、実際には、戸パネル2は犬や猫が出入りできる幅だけ開放できればよいので、電源スイッチ21がオン操作されている間だけモーター25が駆動されるように、モーター25を制御ユニット20で制御すればよい。以上のように、閉じ復帰構造18を省略した半自動式の引戸は、任意の位置まで開放された戸パネル2が、ユーザーの意図とは無関係に閉じ操作されてしまうのを防止したい引戸に好適である。
上記以外に、減速機構26はウォームギヤ機構以外に、内接式遊星歯車機構やハイポイドギヤ(登録商標)機構を適用できる。アクチュエーター54はソレノイド以外に、電動シリンダーやリニアモーターを適用できる。ワンウェイクラッチ58は、初段ギヤ36から終段ギヤ39に至る間に設けてもよい。パイロットセンサー112は超音波センサーで構成することができる。ダンパー77としては、シリンダー型のエアーダンパー以外にロータリーダンパーを適用できる。蓄力機構49・90としては、ぜんまいばね以外にN型の定荷重ばねユニットを適用できる。必用があれば、電源用電池103は1次電池で構成してあってもよい。
1 ガイドレール
2 戸パネル
17 駆動ユニット
18 閉じ復帰構造
19 電源ユニット
20 制御ユニット
21 電源スイッチ
25 モーター
26 減速機構
27 開放駆動ドラム
28 開放ワイヤー
32 ウォームギヤ
33 ウォームホイール
34 ギヤトレイン
37 切換ギヤ
49 蓄力機構(ぜんまいばね)
52 動力遮断構造
54 アクチュエーター(ソレノイド)
76 閉じ復帰ユニット
77 ダンパー(エアーダンパー)
80 閉じ駆動ドラム
81 閉じワイヤー
90 蓄力機構(ぜんまいばね)
103 電源用電池(2次電池)
111 制御回路

Claims (11)

  1. 開口枠の上枠に固定したガイドレール(1)と、ガイドレール(1)に沿って開閉移動できる戸パネル(2)と、戸パネル(2)をモーター動力で開放操作する駆動ユニット(17)と、開放された戸パネル(2)を閉じ操作する閉じ復帰構造(18)と、電源用電池(103)を備えた電源ユニット(19)と、戸パネル(2)に配置されて駆動ユニット(17)を起動させる電源スイッチ(21)と、モーター(25)の駆動状態を制御する制御ユニット(20)とを備えている半自動式の引戸であって、
    駆動ユニット(17)は、モーター(25)および減速機構(26)と、減速動力を受けて回転駆動される開放駆動ドラム(27)と、同ドラム(27)から繰出されて、繰出し端が開口枠の開放端側に固定される開放ワイヤー(28)とを備えており、
    駆動ユニット(17)、電源ユニット(19)、及び制御ユニット(20)が、戸パネル(2)内に配置固定されていることを特徴とする半自動式の引戸。
  2. 閉じ復帰構造(18)が、戸パネル(2)内に配置固定される閉じ復帰ユニット(76)を備えており、
    閉じ復帰ユニット(76)が、閉じ駆動ドラム(80)と、閉じ駆動ドラム(80)から繰出されて、繰出し端が開口枠の閉じ端側に固定される閉じワイヤー(81)と、閉じワイヤー(81)を巻込む向きに閉じ駆動ドラム(80)を回転付勢する畜力機構(90)を備えている請求項1に記載の半自動式の引戸。
  3. 駆動ユニット(17)の減速機構(26)が、モーター(25)の出力軸に固定されるウォームギヤ(32)と、ウォームギヤ(32)と噛み合うウォームホイール(33)を含み、ウォームホイール(33)の回転動力がギヤトレイン(34)を介して開放駆動ドラム(27)に伝動されており、
    開放駆動ドラム(27)は、畜力機構(49)で開放ワイヤー(28)を巻込む向きに回転付勢されており、
    戸パネル(2)が閉じ復帰構造(18)で閉じ操作されて、開放ワイヤー(28)が開放駆動ドラム(27)から繰出される状態において、開放駆動ドラム(27)の回転動作が減速機構(26)に伝動するのを遮断する動力遮断構造(52)が、ギヤトレイン(34)の初段ギヤ(36)から終段ギヤ(39)に至る間に設けられている請求項1または2に記載の半自動式の引戸。
  4. ギヤトレイン(34)が、ウォームホイール(33)と同行回転する初段ギヤ(36)と、開放駆動ドラム(27)と同行回転する終段ギヤ(39)と、終段ギヤ(39)と常時噛合っている中間ギヤ(38)と、初段ギヤ(36)と中間ギヤ(38)に噛み合う切換ギヤ(37)とで構成されており、
    動力遮断構造(52)が、切換ギヤ(37)と、同ギヤ(37)を回転自在に支持するギヤ支持体(53)と、ギヤ支持体(53)を変位操作するアクチュエーター(54)とで構成されており、
    ギヤ支持体(53)は、切換ギヤ(37)が初段ギヤ(36)および中間ギヤ(38)と同時に噛合う動力伝動位置と、切換ギヤ(37)が初段ギヤ(36)および中間ギヤ(38)から分離する動力遮断位置との間で往復変位可能に支持されており、
    戸パネル(2)が閉じ復帰ユニット(76)で閉じ操作されて、開放ワイヤー(28)が開放駆動ドラム(27)から繰出される状態において、ギヤ支持体(53)がアクチュエーター(54)で動力遮断位置に切換えられて、開放駆動ドラム(27)の回転動作がウォームホイール(33)に伝動するのを遮断している請求項3に記載の半自動式の引戸。
  5. 戸パネル(2)が閉じた状態においてアクチュエーター(54)は待機状態に切換って、切換ギヤ(37)が初段ギヤ(36)および中間ギヤ(38)と噛合っており、
    ギヤトレイン(34)の初段ギヤ(36)から開放駆動ドラム(27)に至る間に、ウォームホイール(33)の回転動力を開放駆動ドラム(27)へ向かって伝動するが、開放駆動ドラム(27)が畜力機構(49)で回転操作されて開放ワイヤー(28)を巻込むときの回転動作は遮断するワンウェイクラッチ(58)が配置されている請求項3、又は4に記載の半自動式の引戸。
  6. 戸パネル(2)に、戸パネル(2)が所定の開放位置まで開放されたことを検知するパイロットセンサー(112)と、戸パネル(2)が障害物と衝突したことを検知する衝撃センサー(116)が設けられており、
    制御ユニット(20)に設けた制御回路(111)が、電源スイッチ(21)のオン信号を受けてモーター(25)を起動し、パイロットセンサー(112)の出力信号を受けてモーター(25)を減速したのち停止させ、モーター(25)が起動したのちの衝撃センサー(116)の出力信号に基づきモーター(25)の駆動を停止するように構成されている請求項1から5のいずれかひとつに記載の半自動式の引戸。
  7. モーター(25)が駆動を停止したのち、制御回路(111)がモーター(25)を短時間だけ逆転駆動し、次いでアクチュエーター(54)を駆動するように構成されている請求項3から6のいずれかひとつに記載の半自動式の引戸。
  8. 戸パネル(2)の開放端側の側面上部に、駆動ユニット(17)および制御ユニット(20)を収容する装着部(22)が形成されて、その装着口(23)が戸パネル(2)の開放端に開口されており、
    戸パネル(2)の開放端に締結されて装着口(23)を塞ぐユニットベース(66)の内面に、駆動ユニット(17)と制御ユニット(20)が固定されている請求項1から7のいずれかひとつに記載の半自動式の引戸。
  9. 駆動ユニット(17)の駆動部ケース(24)の内部に、開放駆動ドラム(27)から繰出された開放ワイヤー(28)を、駆動部ケース(24)の外部へ向かって移行案内する複数のガイドプーリー(63・64)が配置されており、
    複数のガイドプーリー(63・64)の間に、開放ワイヤー(28)の弛みを吸収するテンション機構が設けられており、
    テンション機構が、開放ワイヤー(28)に外接するテンションプーリー(65)と、同プーリー(65)を回転自在に支持し、かつ開放ワイヤー(28)に対して接離移動可能に支持されるプーリー支持枠(69)と、プーリー支持枠(69)を開放ワイヤー(28)に向かって押付け付勢するテンションばね(72)とを備えている請求項1から8のいずれかひとつに記載の半自動式の引戸。
  10. 戸パネル(2)に設けた吊車型のランナー(3)が、開口枠に設けたガイドレール(1)で開閉自在に案内支持されており、
    閉じ復帰構造(18)が、閉じ復帰ユニット(76)と、戸パネル(2)の閉じ動作を制動するシリンダー型のエアーダンパー(77)とを備えており、
    ガイドレール(1)の内部に、エアーダンパー(77)と、吊車型のランナー(3)と、閉じ駆動ドラム(80)から繰出された閉じワイヤー(81)と、開放駆動ドラム(27)から繰出された開放ワイヤー(28)が配置されている請求項2から9のいずれかひとつに記載の半自動式の引戸。
  11. 開口枠の上枠に固定したガイドレール(1)と、ガイドレール(1)に沿って開閉移動できる戸パネル(2)と、戸パネル(2)をモーター動力で開放操作する駆動ユニット(17)と、電源用電池(103)を備えた電源ユニット(19)と、戸パネル(2)に配置されて駆動ユニット(17)を起動させる電源スイッチ(21)と、モーター(25)の駆動状態を制御する制御ユニット(20)を備えている半自動式の引戸であって、
    駆動ユニット(17)は、モーター(25)および減速機構(26)と、減速動力を受けて回転駆動される開放駆動ドラム(27)と、同ドラム(27)から繰出されて、繰出し端が開口枠の開放端側に固定される開放ワイヤー(28)とを備えており、
    駆動ユニット(17)、電源ユニット(19)、及び制御ユニット(20)が、戸パネル(2)内に配置固定されていることを特徴とする半自動式の引戸。
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