特許文献1に係る自動ドア駆動装置によれば、モーターの動力で引戸を自動的に開放操作でき、停電時には引戸を手動で軽快に開閉操作できる。しかし、モーター、選択伝達機構、駆動プーリー、および従動プーリーなどの開閉機構の全体を収容するために、大型の鴨居を引戸の上側に設ける必要がある。従って、一般住宅の居室や、高齢者施設の個室などに適用される、軽量で小形の戸パネルを備えた引き戸に自動ドア駆動装置を適用することはできない。因みに、軽量で小形の戸パネルの厚み、および戸パネルを支持するガイドレールの断面の縦横寸法は40mm前後しかないため、上記の自動ドア駆動装置を組込む余地はない。また、装置全体が大掛かりであるため、扉体の開閉構造の導入コストが高くつく。特許文献2の引戸クローザー装置も、特許文献1の自動ドア駆動装置と同様に、引戸の上方に大きなスペースを確保しなければならず、軽量で小形の戸パネルと幅狭のガイドレールを備えた引き戸に適用するのが難しい。
特許文献3の自動ドア装置では、ドア本体の内部にモーター、バッテリー、制御部などを設け、ドア本体の上側にプーリーおよびワイヤーを配置するので、軽量で小形の戸パネルにも応用できる可能性がある。しかし、特許文献3の自動ドア装置は、原理構造的にはドア本体を自動開閉できるとしても、実用化するのは難しい。特許文献3の自動ドア装置では、ドアの開き動作が完了すると駆動手段がドア本体を自動的に閉じ操作するが、ユーザーの入退室が終了したか否かを確認する手段がないため、入退室時の安全性に問題がある。また、実用上は、開放途中(または閉じ途中)にドア本体が障害物に衝突した場合の安全対策や、停電時や非常時の対応策を考慮しておく必要がある。さらに、開放移動(または閉じ移動)しているドア本体が、戸口枠に衝突するのを確実に避ける必要がある。こうした実用上の必要性を満たさない限りは、自動引き戸を商品化することはできない。プーリーが戸口枠(開口枠)の内部に位置しているので、戸パネルの施工の手間が面倒になる問題もある。
本発明の目的は、一般住宅の居室や、高齢者施設の個室などで使用される、比較的軽量で小形の戸パネルとガイドレールを備えた引き戸に好適に適用できる、実用性に優れた自動引き戸を提供することにある。
本発明に係る自動引き戸は、開口枠1に設けたガイドレール2に沿って開閉移動可能に案内支持される戸パネル3と、戸パネル3に設けられて同パネル3をモーター動力で移動操作する駆動ユニット17を備える。駆動ユニット17は、戸パネル3に埋設固定されるユニットベース27と、同ベース27に収容されるモーター28、およびクラッチ29と、クラッチ29を経た動力で回転駆動される走行プーリー31と、開口枠1の閉じ端と開放端に固定されて、その中途部が走行プーリー31に巻掛けられるガイド体32を備える。戸パネル3には、電源用電池24を備えた電源ユニット18と、モーター28を起動するスイッチ体20と、モーター28の駆動状態を制御する制御装置19が設けられている。開口枠1と戸パネル3の間に、戸パネル3の移動位置を検知する位置センサー70が設けられている。制御装置19は、スイッチ体20の出力信号に基づきモーター28を起動し、位置センサー70の出力信号に基づきモーター28の駆動状態を制御して、戸パネル3を自動的に開閉移動操作する。
駆動ユニット17のモーター28は、正転駆動と逆転駆動が可能な正逆転モーター28aと減速機構28bを一体に備えたギヤードモーターで構成されている。クラッチ29はモーター28の正逆双方向の回転動力は走行プーリー31へ伝動するが、走行プーリー31からモーター28へ伝わろうとする回転動作は遮断する双方向クラッチで構成されている。上記の自動引き戸においては、戸パネル3を駆動ユニット17で開閉双方向へ自動的に移動操作できる全電動式の自動引き戸となる。
戸パネル3をモーター動力で移動操作する駆動ユニット17と、戸パネル3に埋設されて、移動操作された戸パネル3を復帰操作する復帰ユニット77と、戸パネル3の復帰移動を制動する制動構造78を備えている。駆動ユニット17のモーター28は、正転駆動と逆転駆動が可能な正逆転モーター28aと減速機構28bを一体に備えたギヤードモーターで構成されている。クラッチ29は、モーター28の正逆双方向の回転動力は走行プーリー31へ伝動するが、走行プーリー31からモーター28へ伝わろうとする回転動作は遮断する双方向クラッチで構成されている。図14に示すように、復帰ユニット77は、駆動ドラム81と、同ドラム81から繰出されて、繰出し端がガイドレール2に固定される閉じワイヤー82と、閉じワイヤー82を巻込む向きに駆動ドラム81を回転付勢する蓄力体85を備えている。上記の自動引き戸においては、戸パネル3はモーター28の回転動力で自動的に移動操作され、移動操作された戸パネル3を復帰ユニット77で復帰移動させながら制動構造78で制動する半電動式の自動引き戸となる。
ワイヤーケーブルで形成したガイド体32の一端は、開口枠1の閉じ端と開放端のいずれか一方の端部に固定され、他端がテンションばね46と、同ばね46のばね力を調整するテンション調整構造47を介して開口枠1の他方の端部に固定されている。図6に示すように、ガイド体32は、走行プーリー31のシーブ体31aに1周回状に巻き掛けられる巻回部48を備えている。開閉途中の戸パネル3が障害物で受け止められて停止した状態において、走行プーリー31が巻回部48に対してスリップして巻送り動作を停止するように、ガイド体32の張力をテンション調整構造47で調整している。
クラッチ29と走行プーリー31の間にトルクリミッターが配置されている。開閉途中の戸パネル3が障害物で受け止められて停止した状態において、トルクリミッターが作動して走行プーリー31の巻送り動作を停止する。
戸パネル3に設けた吊車型のランナー4がガイドレール2で開閉自在に案内支持されている。戸パネル3の上面はガイドレール2の下面と隙間Eを介して上下に正対している。前記隙間Eにガイド体32と走行プーリー31のシーブ体31aが配置されている。
位置センサー70が、戸パネル3の側に設けられる第1、第2の磁気センサー71・72と、開口枠1の側に設けられる第1、第2の磁石73・74を備えている。第1磁気センサー71は戸パネル3の閉じ端寄りの上隅に配置され、第2磁気センサー72は戸パネル3の開放端寄りの上隅に配置されている。第1磁石73と第2磁石74は、開口枠1の上枠の中央付近に、一定距離離れた状態で配置されている。制御装置19は、第1・第2の両磁気センサー71・72の出力信号に基づきモーター28の駆動状態を制御して、戸パネル3を開閉端寄りにおいて減速させる。
戸パネル3が駆動ユニット17で開放端と閉じ端のいずれか一方へ移動操作されて、モーター28が駆動を停止した状態において、クラッチ29に噛込みが生じていることを利用して、戸パネル3の復帰移動を阻止している。制御装置19はモーター28を一瞬だけそれまでの回転方向とは逆向きに回転駆動してクラッチ29の噛込みを解除し、復帰ユニット77で戸パネル3を復帰移動させる。
制動構造78が、シリンダー本体87と、ピストンロッド88を備えたシリンダー型のエアーダンパーで構成されている。ガイドレール2の内部に、吊車型のランナー4と、駆動ドラム81から繰出された閉じワイヤー82と、シリンダー本体87およびピストンロッド88が配置されている。
本発明に係る自動引き戸は、戸パネル3を駆動ユニット17のモーター動力で移動操作できるようにした。また、駆動ユニット17は、ユニットベース27に収容されるモーター28およびクラッチ29と、回転駆動される走行プーリー31と、中途部が走行プーリー31に巻掛けられるガイド体32などで構成した。戸パネル3が開閉するときの制御装置19は、スイッチ体20の出力信号に基づきモーター28を起動し、位置センサー70の出力信号に基づきモーター28の駆動状態を制御して、戸パネル3を開閉移動するようにした。
こうした自動引き戸によれば、従来のこの種の自動引き戸に比べて、構成部品点数を著しく少なくして駆動ユニット17を小形化し、さらにコンパクト化できる。従って、従来装置において必要不可欠であった大形の鴨居やガイドレールを設ける必要がなく、一般住宅の居室や、高齢者施設の個室などで使用される、比較的軽量で小形の戸パネル3とガイドレール2を備えた引き戸であっても、駆動ユニット17を支障なく戸パネル3に埋設できる。また、ユーザーはスイッチ体20をオン操作するだけで、戸パネル3を自動的に移動できるので、例えば車椅子を常用する介助が必要なユーザーの利便性を向上するのに適した自動引き戸を提供できる。
モーター28は、正転駆動と逆転駆動が可能な正逆転モーター28aと減速機構28bを一体に備えたギヤードモーターで構成し、クラッチ29はモーター28の正逆双方向の回転動力を出力できる双方向クラッチで構成するようにした。こうした自動引き戸は、閉じ位置にあった戸パネル3をモーター動力で開放操作し、あるいは開放位置にあった戸パネル3をモーター動力で閉じ操作して、全電動式の自動引き戸とすることができる。従って、ユーザーはスイッチ体20をオン操作するだけで、部屋への出入りを簡便に行うことができる。また、クラッチ29が双方向クラッチで構成してあるので、必要時には戸パネル3を手動で開放することができ、停電時等でも部屋への出入りを支障なく行うことができる。
駆動ユニット17とは別に、移動操作された戸パネル3を復帰操作する復帰ユニット77と制動構造78を備える自動引き戸では、全電動式の自動引き戸と同様に戸パネル3の開閉を自動的に行いながら、モーター28の駆動機会を概ね半減できる。従って、電源用電池24の消耗を抑えて、その充電間隔や交換間隔を拡大できる。さらに、クラッチ29を双方向クラッチで構成したので、全電動式の自動引き戸と同様に、必要に応じて戸パネル3を手動で開放でき、停電時等にも戸パネル3で区分されたスペースへの出入りを支障なく行うことができる。制御装置19による、モーター28の制御を簡素化できる利点もある。
ガイド体32は開口枠1の閉じ端と開放端の間に張り渡すが、その一方をテンションばね46とテンション調整構造47を介して開口枠1に固定し、その中途部を走行プーリー31のシーブ体31aに巻き掛けて巻回部48とした。こうした走行構造によれば、ガイド体32の張力をテンション調整構造47で調整することにより、モーター28に過大な負荷が掛かるような場合、例えば、開閉途中の戸パネル3が障害物で受け止められて停止した場合などに、走行プーリー31を巻回部48に対してスリップさせて巻送り動作を停止することができる。従って、人や物などの何らかの障害物が戸パネルの開閉領域にあった場合でも、モーター28に大きな負荷が作用して損傷するのを確実に解消できる。また、ガイド体32をシーブ体31aに1周回状に巻き掛けるだけであるので、上記のような非常時には走行プーリー31を巻回部48に対して確実にスリップさせることができる。
クラッチ29と走行プーリー31の間にトルクリミッターを配置して、開閉途中の戸パネル3が障害物で受け止められて停止した状態において、トルクリミッターが作動して走行プーリー31の巻送り動作を停止できるようにした。こうした走行構造によれば、モーター28に過負荷が作用するのをトルクリミッターで遮断できるので、シーブ体31aを巻回部48に対してスリップさせる場合に比べて、より確実にしかも安定した状態で過負荷を遮断できる。
ガイド体32と走行プーリー31のシーブ体31aを、戸パネル3の上面とガイドレール2の下面の間の隙間Eに配置すると、例えば、走行プーリー31がガイドレール2の内部に配置してある場合に比べて、施工作業を著しく簡素化してその手間を省くことができる。また、シーブ体31aやガイド体32が、戸パネル3の前後から視認されるのを防止して、自動引き戸の外観の印象をすっきりさせることができる。
第1、第2の磁気センサー71・72と、第1、第2の磁石73・74で位置センサー70を構成し、第1磁気センサー71を戸パネル3の閉じ端寄りの上隅に配置し、第2磁気センサー72を戸パネル3の開放端寄りの上隅に配置するようにした。また、第1磁石73と第2磁石74を開口枠1の上枠の中央付近に、一定距離離れた状態で配置するようにした。また、制御装置19は、第1・第2の両磁気センサー71・72の出力信号に基づきモーター28の駆動状態を制御して、戸パネル3を開閉端寄りにおいて減速させるようにした。こうした自動引き戸によれば、戸パネル3が閉じ端寄りや開放端寄りまで移動したのちは、戸パネル3がゆっくりと全閉じ位置や全開放位置まで移動されるので、戸パネル3が閉じ移動時の運動慣性力で開口枠1に衝突するのを防止できる。
戸パネル3が駆動ユニット17で開放端と閉じ端のいずれか一方へ移動操作されて、モーター28が駆動を停止した状態においては、クラッチ29に噛込みが生じていることを利用して、戸パネル3の復帰移動を阻止できるようにした。また、制御装置19はモーター28を一瞬だけ逆向きに回転駆動してクラッチ29の噛込みを解除し、復帰ユニット77で戸パネル3を復帰移動させるようにした。こうした駆動構造は、半電動式の自動引き戸に適用することにより、復帰ユニット77が作動して戸パネル3を復帰移動させるタイミングを、制御装置19で正確に設定できる。従って、半電動式の自動引き戸でありながら、戸パネル3の開閉を全電動式の自動引き戸と同様に的確に行うことができる。
ガイドレール2の内部に、吊車型のランナー4と、駆動ドラム81から繰出された閉じワイヤー82と、シリンダー本体87およびピストンロッド88を配置するようにした。こうした引戸によれば、先の各部材4・82・87・88をガイドレール2で隠蔽して、引戸の外観の印象が煩雑化するのを解消できる。また、戸パネル3を開閉する毎に繰出され、あるいは巻き戻される閉じワイヤー82をガイドレール2で保護できる。
(実施例1) 図1ないし図10に、本発明の自動引き戸を全電動式の自動引き戸に適用した実施例1を示す。本発明における前後、左右、上下とは、図2に示す交差矢印と、交差矢印の近傍の前後・左右・上下の表記に従う。図2において、符号1は開口枠、符号2は開口枠1の上枠に固定したガイドレール、符号3は戸パネルである。図3に示すように戸パネル3は、その上部左右に装着したランナー4で吊下げ支持されて、ガイドレール2で開閉移動可能に案内支持される。戸パネル3は、建材メーカーが市販している全厚寸法が38mmの木質系のパネルからなり、縦長四角形状の枠体3aと、枠体3aの内部に配置される芯材3bと、枠体3aおよび芯材3bの表裏に固定される表装材3cなどで構成されている(図4参照)。戸パネル3の表裏(前後面)にはドアハンドル5が設けられており、戸パネル3の下部は床面に固定した振止めローラー6で案内されて、前後の揺れ動きが規制されている(図2参照)。
図3に示すように、ガイドレール2は下向きに開口する断面C字状のアルミニウム条材からなり、開口枠1の閉じ端から開放端にわたって配置されている。ガイドレール2の下面前後には、ランナー4を案内するレール壁7が設けられており、レール内面の前後壁および上壁にはランナーの遊動を規制するリブが設けられている。ランナー4は、戸パネル3の上隅に固定したホルダー10に装着されるランナー台11と、前後一対のローラー12と、ローラー12を回転自在に支持するローラー枠13と、ランナー台11とローラー枠13を連結するランナー軸14などで構成されている。ガイドレール2の断面の縦横寸法は39mmである。
戸パネル3を自動的に開閉操作するために、戸パネル3と開口枠1の間に開閉構造を設けている。図4に示すように開閉構造は、戸パネル3をモーター動力で開閉操作する駆動ユニット17と、ドアハンドル5の近傍に配置される電源ユニット18、制御装置19、および起動スイッチ(スイッチ体)20などで構成される。駆動ユニット17および電源ユニット18が、それぞれ戸パネル3の内部に埋設されるのに対して、起動スイッチ20は、ドアハンドル5の下方に位置する状態で戸パネル3の表裏に配置されている(図2参照)。
駆動ユニット17は戸パネル3の開放端側の枠体3aの上部に形成した装着部21の内部に配置されている。また、ドアハンドル5の下方に設けた電装品装着部22に、電源ユニット18が配置されている。電装品装着部22は戸パネル3の左側面に向かって開口しており、その内部に電源ユニット18が開口の側から差込み装着されて戸パネルに締結固定されている。電源ユニット18の内部には、後述するモーター28の駆動状態を制御する制御装置19が収容されている。
図1、および図5において、駆動ユニット17は、戸パネル3に埋設固定されるユニットベース27と、同ベース27に収容されるモーター28、クラッチ29、および軸受ユニット30と、走行プーリー31、およびガイド体32などで構成される。ユニットベース27は、縦に長いチャンネル材状の鋼板製のプレス成形品からなり、その後面にはモーター28を支持するモーターブラケット33と、クラッチ29を支持するクラッチブラケット34が固定されている。モーターブラケット33とクラッチブラケット34は、ユニットベース27の上壁に挿通したボルト35およびナット36と、ボルト35に外嵌した左右一対のディスタンスカラー37で締結固定されている。符号38は駆動ユニット17の前面を覆うカバーであり、ユニットベース27に対して着脱可能に締結されている。駆動ユニット17は、ユニットベース27を装着部21の上方から差込み装着したのち、ユニットベース27の左右に張出した締結座27aをビス56で締結することにより戸パネル3と一体化される。
モーター28は、正転駆動と逆転駆動が可能な正逆転モーター28aと減速機構28bを一体に備えた市販品のギヤードモーター(ツカサ電工株式会社、TG01H−EU相当品)からなり、減速機構28bの出力軸とクラッチ29が、カップリング40を介して連結されている。また、クラッチ29の出力側には、軸受ユニット30で回転自在に軸支したプーリー軸41が連結されて、プーリー軸41に走行プーリー31が固定されている。クラッチ29は市販品の双方向クラッチ(オリジン電気株式会社、OSC−F相当品)からなる。双方向クラッチは、カップリング40を介して伝動された正逆双方向の回転動力は走行プーリー31へ伝動できるが、走行プーリー31からモーター28へ伝わろうとする回転動作は遮断する。これにより、戸パネル3の手動による開閉が可能となる。軸受ユニット30は市販品であり、軸受けブロックの内部に2個の転がりベアリング42が組込まれている。
走行プーリー31は、ガイド体32が巻掛けられるフランジ付の溝を備えたシーブ体31aと、シーブ体31aを支持するボス31bを一体に備えたアルミニウム製の旋削品からなり、シーブ体31aがユニットベース27の上面側に露出する状態で、ボス31bがプーリー軸41に固定されている。ガイド体32は、ステンレス製のワイヤーケーブルの表面にポリアミド樹脂をコーティングして形成されており、その両端は開口枠1の閉じ端と開放端に固定されて、中途部がシーブ体31aの溝部分に1周回だけ巻掛けられている。詳しくは図1に示すように、ガイド体32の一端は、開口枠1の閉じ端に固定した掛止金具44に連結されている。また、ガイド体32の他端は、開口枠1の開放端に固定した変向ローラー45で下向きに変向案内されたのち、引張りばねからなるテンションばね46と、同ばね46の張力を調整するテンション調整構造47を介して開口枠1の縦枠に固定されている。図6にシーブ体31aに巻掛けられたガイド体32の巻回部を符号48で示している。
テンション調整構造47は、縦枠に固定したブラケット50と、ブラケット50の貫通孔に挿通した調整ボルト51と、調整ボルト51にねじ込んだ2個のナット52で構成される。調整ボルト51のブラケット50に対する高さ位置を調整することにより、テンションばね46の伸縮量を大小に調整して、ガイド体32に作用する張力を調整することができる。また、ガイド体32の張力を調整することにより、シーブ体31aと巻回部48の間の摩擦力を所定の状態に調整できる。このように、シーブ体31aと巻回部48の間の摩擦力を所定の状態に調整するのは、後述するように、走行プーリー31を巻回部48に対してスリップさせて巻送り動作を停止するためである。ブラケット50の下方複数個所には、戸パネル3がばね力調整構造47に衝突するのを防ぐゴム製のストッパー53が固定されている。
図4において中空の電源ユニット18の内部には、制御装置19が配置されており、その下部に箱状の電池ケース23を設けて、同ケース23に10個の2次電池(電源用電池)24が着脱自在に収容されている。2次電池24は市販されている筒形のリチウムイオン電池からなり、その電圧仕様は1.2V、電力容量は900mAhである。
開口枠1と戸パネル3の間には、戸パネル3の移動位置(開閉状態)を検知する位置センサー70が設けられている。図3および図7に示すように位置センサー70は、戸パネル3の側に設けられる第1、第2の磁気センサー71・72と、開口枠1の側に設けられる第1、第2の磁石73・74からなる。第1磁気センサー71は戸パネル3の閉じ端寄りの上隅に配置されており、第2磁気センサー72は戸パネル3の開放端寄りの上隅に配置されている。また、第1磁石73と第2磁石74は、開口枠1の上枠の中央付近に、一定距離離れた状態で配置されている。
戸パネル3を閉じた状態では、図10に示すように、第2磁気センサー72が第1磁石73と対向しており、この状態から戸パネル3が開放移動して、第2磁気センサー72が第2磁石74の下方を通過する際に検知信号を出力する。また、第1磁気センサー71は、戸パネル3が開放移動するとき、第1磁石73の下方を通過するときと、第2磁石74の下方を通過するときに検知信号を出力する。戸パネル3を開放した状態では、第1磁気センサー71が対応する第2磁石74と対向しており、この状態から戸パネル3が閉じ移動して、第1磁気センサー71が第1磁石73の下方を通過する際に検知信号を出力する。また、第2磁気センサー72は、戸パネル3が閉じ移動するとき、第2磁石74の下方を通過するときと、第1磁石73の下方を通過するときに検知信号を出力する。制御装置19は、これらの磁気センサー71・72の検知信号に基づいて、モーター28の駆動状態を制御する
以上のように構成した自動引き戸は、例えば以下の手順で施工することができる。まず、ガイド体32を全体が弛んだ状態でその両端を開口枠1に仮固定しておく。また、駆動ユニット17、電源ユニット18および起動スイッチ20などを戸パネル3に組込んでおく。ローラー12およびローラー枠13が収容された状態のガイドレール2を開口枠1の上枠に締結固定して、ランナー台11をガイドレール2の下面に露出させておく。次に、戸パネル3を起立保持して振止めローラー6に係合し、左右いずれか一方のランナー台11をホルダー10に嵌込んで、戸パネル3の片側をガイドレール2で吊下げ支持する。この状態で走行プーリー31にガイド体32の中途部を巻付け、残りのランナー台11をホルダー10に嵌込んで、戸パネル3の全体をガイドレール2で吊下げ支持する。最後に、テンション調整構造47のナット52を締込んで、ガイド体32の張力を所定の状態に調整して一連の施工作業を終了する。図1および図3に示すように、施工後の走行プーリー31のシーブ体31aとガイド体32は、戸パネル3の上面とガイドレール2の下面の間の隙間Eに位置している。
上記のように、走行プーリー31およびガイド体32を上記の隙間Eを利用して配置すると、例えば、走行プーリー31がガイドレール2の内部に配置されている構成に比べて、施工作業を著しく簡素化してその手間を省くことができる。これは、駆動ユニット17が組み付けられた戸パネル3を起立保持してガイドレール2に吊り込むだけで、戸パネル3の施工作業の殆どを終了でき、以後は、戸パネル3を開閉移動させながら、ガイド体32の張力を調整すればよいからである。また、走行プーリー31およびガイド体32が隙間Eを利用して配置されていると、シーブ体31aやガイド体32が、戸パネル3の前後から視認されるのを防止して、自動引き戸の外観の印象をすっきりさせることができる利点もある。
次に、自動引き戸の開閉動作を、図8ないし図9に示すフローチャートに基づき説明する。図10(a)に示すように、戸パネル3が閉じ位置にあるとき起動スイッチ20がオン操作されると、制御装置19がモーター28を正転駆動させ(S1)、その回転動力がクラッチ29を介して走行プーリー31に伝動される。モーター28を正転駆動したのちタイマーの計時を開始する(S2)。この状態では図6に示すように、ガイド体32はシーブ体31aの周囲に時計回転方向へ巻き込まれるので、戸パネル3は開放方向へ移動する。戸パネル3が開放移動するのに伴って、図10(d〜e)に示すように、第1磁気センサー71が第1磁石73に接近してオン状態に切換ると(S3でYES)、制御装置19は戸パネル3が開放端寄りまで開放されたとみなして、モーター28に印加される電圧をそれまでの50%に減らしてモーター28を減速させる(S4)。
モーター28を減速させたのちは、タイマーの計時を停止(S5)したうえで、再びタイマーの計時を開始し(S6)、第1磁気センサー71がオン状態に切換ったことを確認して(S7でYES)、戸パネル3が図10(g)に示す位置になる直前でモーター28を停止させる(S8)。このように、戸パネル3が開放端寄りまで開放されたのちは、戸パネル3をゆっくりと全開放位置まで移動させるので、戸パネル3が開放時の運動慣性力で開口枠に衝突するのを防止できる。全開放位置における戸パネル3の開放端はストッパー53で受け止められている。モーター28が停止したのちの制御装置19は、タイマーの計時を停止(S9)したうえで、再びタイマーの計時を開始し(S10)、タイマーの計時開始から所定の時間(T1)が経過したことを確認して(S11でYES)、戸パネル3を自動的に閉じ操作するためのA系統の制御へ移行する。つまり、S11では所定の時間(T1)が経過した時点で、ユーザーの入退室が完了したとみなして、A系統の制御へ移行する。なお、タイマーの計時を停止(S9)するのは、モーター28を停止する直前であってもよい。
図8に示す制御系統において、モーター28を正転駆動したのち、第1磁気センサー71がオン状態に切換わらないまま(S3でNO)一定時間(T2)が経過した場合(S12でYES)には、人や物などの何らかの障害物が戸パネル3の開放領域にあることが想定されるので、モーター28を停止し(S13)、異常状態であることを報知し(S14)、A系統のS32の前段に制御を移行する。異常状態の報知手段としては、スピーカーやブザーなどの発音体、発光表示体、ディスプレイなどの表示体のいくつかを組み合わせて構成することができる。
図8に示す制御系統において、モーター28を減速したのち、第1磁気センサー71がオン状態に切換わらないまま(S7でNO)一定時間(T3)が経過した場合(S15でYES)には、図10(f)に示すように戸パネル3が開放端寄りまで開放された位置で起動スイッチ20がオン操作されて、既に戸パネル3が開放端に到達していることが想定されるので、モーター28を停止する(S8)。
上記のように、人や物などの何らかの障害物が戸パネル3の開閉領域にあった場合には、正逆転モーター28aに大きな負荷が作用し、その時間が長引くと損傷するおそれがある。こうした場合でも、正逆転モーター28aが損傷するのをさらに確実防ぐために、開閉途中の戸パネル3が障害物で受止められて停止した状態では、走行プーリー31がガイド体32の巻回部48に対してスリップして、走行プーリー31による巻回部48の巻送り動作を停止できるようにしている。具体的には、テンションばね46の伸縮量をばね力調整構造47で調整して、ガイド体32の張力を好適化し、シーブ体31aとガイド体32の巻回部48との摩擦力が、所定の値を越えることのないようにしている。また、上記のような非常時に、走行プーリー31を巻回部48に対して確実にスリップさせるために、ガイド体32をシーブ体31aに1周回状に巻き掛けて巻回部48としている。なお、巻回部48におけるガイド体32の巻き掛け回数が多いほど、走行プーリー31を巻回部48に対してスリップさせるのに時間が掛かりやすい。
図9に示すA系統の制御では、制御装置19はモーター28を逆転駆動して(S21)全開放位置にあった戸パネル3を閉じ移動させて、タイマーの計時を停止(S22)したうえで、再びタイマーの計時を開始(S23)する。タイマーの計時停止(S22)は、モーター28を逆転駆動する(S21)直前であってもよい。図10(f〜c)に示すように戸パネル3が閉じ移動して、第2磁気センサー72が第2磁石74に近接してオン状態に切換ったら(S24でYES)、制御装置19は戸パネル3が閉じ端寄りまで閉じ移動されたとみなして、モーター28に印加される電圧をそれまでの50%に減らしてモーター28を減速させる(S25)。モーター28を減速させたのちは、タイマーの計時を停止(S26)したうえで、第2磁気センサー72がオン状態に切換ったことを確認して(S27でYES)、戸パネル3が図10(a)に示す位置になる直前でモーター28を停止させて(S28)一連の制御を終了し、制御装置19はスリープ状態へ移行する。
図9に示すA系統の制御において、モーター28を逆転駆動したのち、第2磁気センサー72がオン状態に切換わらないまま(S24でNO)一定時間(T4)が経過した場合(S29でYES)には、人や物などの何らかの障害物が戸パネル3の閉じ領域にあることが想定されるので、モーター28を停止し(S30)、異常状態であることを報知し(S31)、タイマーの計時を停止して(S32)、制御を終了する。
2次電池24の電圧が降下した場合などには、戸パネル3を手動で開閉操作することができる。例えば戸パネル3を閉じ位置から開放操作すると、走行プーリー31が回転してガイド体32を巻送り操作する。このときの走行プーリー31の回転動作は双方向クラッチからなるクラッチ29で遮断されるので、回転動作がモーター28の側へ伝わることはなく、従って、戸パネル3を軽快に開放操作でき、同様に閉じ操作できる。戸パネル3が手動で急開閉される場合には、走行プーリー31のシーブ体31aとガイド体32の巻回部48の間に大きな摩擦力が作用するが、その場合にも走行プーリー31がガイド体32の巻回部48に対してスリップし空転するので、それ以上戸パネル3が急開閉することはなく、従って戸パネル3が開口枠1の開放端あるいは閉じ端に衝突するのを抑止して安全性を向上できる。
以上のように全電動式の自動引き戸では、正逆転が可能で減速機構を一体に備えたモーター28と、双方向クラッチからなるクラッチ29と、走行プーリー31と、走行プーリー31に巻掛けられるガイド体32などで駆動ユニット17を構成した。こうした自動引き戸によれば、従来のこの種の自動引き戸に比べて、構成部品点数を著しく少なくして駆動ユニット17を小形化し、さらにコンパクト化できる。従って、従来装置において必要不可欠であった大形の鴨居やガイドレールを設ける必要がなく、一般住宅の居室や、高齢者施設の個室などで使用される、比較的軽量で小形の戸パネル3とガイドレール2を備えた引き戸であっても、駆動ユニット17を支障なく戸パネル3に埋設できる。
また、ユーザーは起動スイッチ20をオン操作するだけで、戸パネル3を自動的に開放移動させ、さらに自動的に閉じ移動できるので、部屋への出入りを簡便に行うことができる。従って戸パネル3を開閉する手間を一切省くことができ、例えば車椅子を常用する介助が必要なユーザーの利便性を向上するのに適した自動引き戸を提供できる。また、クラッチ29が双方向クラッチで構成してあるので、必要時には戸パネル3を手動で開放することができ、停電時等でも部屋への出入りを支障なく行うことができる。
(実施例2) 図11ないし図15は、本発明の自動引き戸を半電動式の自動引き戸に適用した実施例2を示している。図11および図12において、半電動式の自動引き戸は、戸パネル3をモーター動力で開放移動操作する駆動ユニット17とは別に、開放された戸パネル3を閉じ操作(復帰操作)する復帰ユニット77と、戸パネル3の閉じ移動を制動する制動構造78を備える点が実施例1の自動引き戸と大きく異なる。駆動ユニット17は実施例1で説明した駆動ユニット17と同じであり、モーター28は正逆転駆動可能なギヤードモーターからなり、クラッチ29は双方向クラッチからなる。
図12に示すように、復帰ユニット77は、四角形状のユニットケース79と、ユニットケース79に固定したドラム軸80で回転自在に支持した駆動ドラム81と、同ドラム81から繰出される閉じワイヤー82を備えている。閉じワイヤー82の繰出し端は、ガイドレール2の中途部に固定したフック状の固定金具83に分離不能に掛止されている。駆動ドラム81から繰出した閉じワイヤー82の中途部は、後述するローラー枠91に設けたガイドプーリー94で案内されている。閉じワイヤー82は、ステンレス製のワイヤーの表面にポリアミド樹脂をコーティングして形成されている。
図14、図15においてユニットケース79は、前後一対の金属ケース79aと、上下の樹脂ケース79b・79cで中空箱状に形成されており、全体が駆動ユニット17に隣接する装着凹部に収容されて、その上面が金属板製の装着板84で塞がれている。ユニットケース79は、装着板84に対して前後・左右・上下に遊動不能に係合固定されている。プラスチック製の駆動ドラム81は円筒状の胴部およびフランジを備えており、胴部内に閉じワイヤー82を巻込むためのぜんまいばね(蓄力体)85が収容されている。
図12において、制動構造78は、シリンダー型のエアーダンパーで構成されており、シリンダー本体87と、ピストンロッド88と、図示していない速度コントローラーなどで構成されている。シリンダー本体87の一端は、閉じ端側のランナー4に連結金具89を介して連結されており、シリンダー本体87の開放端側は、前後一対のローラー90でローラー枠91を介して支持されている。従って、シリンダー本体87は、戸パネル3の開閉移動に同行して移動する。図13に示すように、ピストンロッド88の一部はローラー枠13の内部を通っている。
ピストンロッド88の突端には磁石92が固定されており、ガイドレール2の閉じ端には鉄板93が固定されている。戸パネル3を閉じた状態においては、磁石92が鉄板93に吸着してピストンロッド88の移動が規制されている。この状態から戸パネル3がモーター動力で開放操作されると、シリンダー本体87のみが戸パネル3に同行して移動し、ピストンロッド88が限界位置まで抜出されたのちに、磁石92が鉄板93から離れて、ピストンロッド88も戸パネル3に同行して全開放位置まで移動する。他は実施例1の自動引き戸と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
次に、半電動式の自動引き戸の開閉動作を説明する。なお、この実施例における制御装置19は、実施例1で説明した制御装置19と概ね同等の制御を行うので、主な動作のみを簡単に説明するにとどめる。
戸パネル3が閉じ位置にあるとき、閉じワイヤー82の大半の部分は、駆動ドラム81に巻き込まれている。この状態で表側の起動スイッチ20をオン操作するとモーター28が正転駆動され、モーター28の動力が減速機構28bおよびクラッチ29を介して走行プーリー31に伝動されて、走行プーリー31がガイド体32を巻送り操作し、戸パネル3を開放位置へ向かって開放移動させる。同時に、閉じワイヤー82が徐々に駆動ドラム81から繰出されて行く。先に説明したように、戸パネル3が開放移動する過程で、ピストンロッド88とシリンダー本体87が伸張操作される。
戸パネル3が所定の開放位置まで開放移動したら、実施例1と同様に制御装置19はモーター28に印加される電圧をそれまでの50%に減らしてモーター28を減速させ、戸パネル3をゆっくりと全開放位置まで移動させて、モーター28を停止させる。従って、戸パネル3が開放時の運動慣性力で開口枠に衝突するのを防止できる。モーター28を停止させた状態ではクラッチ29に噛込みが生じているので、モーター28が停止されるのと同時に走行プーリー31が逆回転することはなく、従って、戸パネル3が復帰ユニット77のぜんまいばね85の付勢力でいきなり閉じ方向へ移動することはない。この状態では、復帰ユニット77の閉じワイヤー82の大部分が駆動ドラム81から繰り出され、ぜんまいばね85は十分に巻締められている。
モーター28が停止したのちの制御装置19はタイマーの計時を開始し、タイマーの計時開始から所定に時間が経過した時点で、入退室が完了したとみなしてタイマーをオフさせる。戸パネル3を閉じ操作する過程では、制御装置19はモーター28を短時間(約0.5秒)だけ逆転駆動させて、クラッチ29の噛込みを解除する。制御装置19によるモーター28の駆動制御はこの時点で終了する。この状態では、駆動ドラム81はぜんまいばね85の付勢力を受けて閉じワイヤー82を巻込みながら、戸パネル3を閉じ移動させる。戸パネル3が閉じ移動するのに伴い、ピストンロッド88の突端の磁石92が鉄板93に吸着し、以後は、シリンダー本体87のみが戸パネル3に同行移動して、シリンダー本体87内の空気を押出しながら戸パネル3の閉じ移動動作を制動する。従って、戸パネル3をゆっくりと閉じ端まで移動できる。
上記の状態から、戸パネル3の裏側に配置した起動スイッチ20をオン操作することにより、上記と同様にして戸パネル3をモーター28の動力で自動的に開放操作できる。また、戸パネル3が全開放位置まで移動したのち、一定の時間が経過した状態で、モーター28を短時間だけ逆転駆動してクラッチ29の噛込みを解除することにより、復帰ユニット77を作動させ、全開放された戸パネル3を閉じ位置まで移動操作することができる。以上のように、クラッチ29の噛込みを利用した駆動構造は、半電動式の自動引き戸に適用することにより、復帰ユニット77が作動して戸パネル3を復帰移動させるタイミングを、制御装置19で正確に設定できる。従って、半電動式の自動引き戸でありながら、戸パネル3の開閉を全電動式の自動引き戸と同様に的確に行うことができる。
全開放された戸パネル3が閉じ位置まで移動する間の駆動ユニット17と、復帰ユニット77および制動構造78の作動状況は、先に説明した通りであるのでその説明を省略する。なお、戸パネル3がモーター動力で開放操作されるとき、人や物などの何らかの障害物が戸パネル3の開放領域にある場合には、実施例1で説明したB系統の制御を行って、モーター28を緊急停止させる。この状態で、障害物を除去して再び起動スイッチ20をオン操作すると、戸パネル3をモーター28の動力で開放操作できる。
2次電池24の電圧が降下した場合などには、実施例1と同様に戸パネル3を手動で開閉操作することができる。例えば戸パネル3を閉じ位置から開放操作すると、走行プーリー31が回転してガイド体32を巻送り操作する。このときの走行プーリー31の回転動作は双方向クラッチからなるクラッチ29で遮断されるので、回転動作がモーター28の側へ伝わることはなく、従って、戸パネル3を必要に応じて自由に開放操作できる。
以上のように構成した半電動式の自動引き戸によれば、モーター28および双方向クラッチからなるクラッチ29と、走行プーリー31およびガイド体32などで駆動ユニット17を構成するので、従来のこの種の自動引き戸に比べて、構成部品点数を著しく少なくして駆動ユニット17を小形化し、さらにコンパクト化できる。従って、実施例1の自動引き戸と同様に、従来装置において必要不可欠であった大形の鴨居やガイドレールを設ける必要がなく、一般住宅の居室や、高齢者施設の個室などで使用される、比較的軽量で小形の戸パネル3とガイドレール2を備えた引き戸であっても、駆動ユニット17を支障なく戸パネル3に埋設できる。
また、ぜんまいばね85を駆動源にする復帰ユニット77で戸パネル3を閉じ操作するので、全電動式の自動引き戸に比べてモーター28の駆動機会を概ね半減でき、2次電池24の消耗を抑えて、その充電間隔や交換間隔を拡大できる。クラッチ29を双方向クラッチで構成したので、全電動式の自動引き戸と同様に、必要に応じて戸パネル3を手動で開放でき、2次電池24の電圧が降下した場合等にも戸パネル3で区分されたスペースへの出入りを支障なく行うことができる。制御装置19による、モーター28の駆動制御を簡素化できる利点もある。
さらに、半電動式の自動引き戸では、ガイドレール2の内部にエアーダンパーと、吊車型のランナー4と、閉じワイヤー82を配置するようにした。こうした引戸によれば、ランナー4、制動構造78、閉じワイヤー82などをガイドレール2で隠蔽して、引戸の外観の印象が煩雑化するのを解消できる。また、戸パネル3を開閉する毎に繰出され、あるいは巻き戻される閉じワイヤー82をガイドレール2で保護できる。
(実施例3) 図16に本発明に係る自動引き戸の実施例3を示す。この実施例3では、戸パネル3が閉じ位置にあるとき、2次電池24の充電を自動的に行うことができる。
図16では、開口枠1の側に家庭用の商用電源に接続される制御回路96と、整流回路97と、給電端子98を設け、給電端子98と正対する戸パネル3の側枠部分にコネクター99を配置して、ばね100で押し出し付勢するようにした。コネクター99は2次電池24の出力端子に接続してある。このように開口枠1の側に充電装置が設けてあると、戸パネル3が閉じられた状態において2次電池24を自動的に充電できるので、電源用電池を交換する手間を省いて、ユーザーの利便性を向上できる。
(実施例4) 図17に本発明に係る自動引き戸の実施例4を示す。この実施例4では、開口枠1と戸パネル3の間に充電装置を設けて、戸パネル3が閉じられた状態において2次電池24を非接触状態で充電できるようにした。充電装置は、開口枠1の側に設けられる送電装置102と、戸パネル3の側に設けられる受電装置103を備えている。送電装置102は、家庭用の商用電源に接続される制御回路104と、商用の電流を高周波電流に変換する発振回路105と、発振回路105で調整された高周波電流を受けて誘導磁界を生成する1次コイル106、および1次側コンデンサー107などを備えている。受電装置103は、1次コイル106に対応する2次コイル108および2次側コンデンサー109と、受電した高周波電流を整流する整流回路110と、レギュレータ回路111などを備えている。受電装置103は、電源ユニット18の近傍に設けておくとよい。以上のように、開口枠1と戸パネル3の間に充電装置が設けてあると、戸パネル3が閉じられた状態において2次電池24を非接触状態で充電できるので、電源用電池を交換する手間を省いて、ユーザーの利便性をさらに向上できる。
上記以外に、走行プーリー31の巻回部48の巻送り動作を停止する手段としては、クラッチ29と走行プーリー31の間にトルクリミッターを配置して、走行プーリー31に異常な回転トルクが作用するとき同プーリー31を空転させるようにしてもよい。このように、モーター28に過負荷が作用するのをトルクリミッターで遮断すると、シーブ体31aを巻回部48に対してスリップさせる場合に比べて、より確実にしかも安定した状態で過負荷を遮断できる。また、トルクリミッターを併用する場合には、ガイド体32の張力を強めに設定できるので、走行プーリー31の回転動作を巻回部48に対してより確実に伝動して、戸パネル3をきびきびと開閉移動させることができる。また、ガイド体32はシーブ体31aに対して2周回以上巻き掛けてあってもよい。
本発明の自動引き戸は、吊車型の引き戸以外に戸車型の引き戸にも支障なく適用できる。また、自動引き戸は、隣接する戸パネル3を片方ずつ逆向きに開放操作する引戸にも適用でき、その場合には、各戸パネル3が全電動式、あるいは半電動式の自動引き戸として構成してあればよい。半電動式の自動引き戸におけるクラッチ29は、一方向クラッチであってもよい。ガイド体32は、ワイヤーケーブルで形成する以外に、幅狭で厚みが薄いテープ状のベルトで形成してあってもよい。位置センサー70は赤外線センサーや、超音波センサーで構成することができ、これらのセンサーは、戸パネル3の開放端側のパネル枠の上下複数個所に埋設しておくことにより、開口枠1までの距離の変化から戸パネル3が所定の開放位置まで開放されたことを検知することができる。制動構造78としては、シリンダー型のエアーダンパー以外にロータリーダンパーを適用できる。蓄力体85としては、ぜんまいばね以外にN型の定荷重ばねユニットを適用できる。必要があれば、電源用電池24は1次電池で構成してあってもよい。