JP6693487B2 - 保護シートおよび保護シート付積層体 - Google Patents
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Description
なお、本開示においては、「シート」および「フィルム」を同義として用いる場合がある。
本開示の保護シートは、粘着層と、上記粘着層の一方の面に配置された基材とを有し、上記粘着層は、エネルギー線の照射により初期粘着力から粘着力が低下する特性を有し、上記粘着層は、フッ素樹脂を含有する部材である。
また、近年、各種電子部材等の精密化や複雑化に伴い、被保護部材の薄膜化、機能の集積化や微細化が図られている。そのため、被保護部材自身や被保護部材の表面が破壊しやすい傾向にあり、被保護部材を保護する目的から保護シートが必要とされている。一方、被保護部材自身や被保護部材の表面が破壊しやすい傾向にある場合、仮に保護シートにより被保護部材を保護したとしても、被保護部材から保護シートを剥離する際に、被保護部材に負荷が掛かり、被保護部材が破壊されてしまうといった問題がある。
これに対し、本開示によれば、粘着層が疎水性を有するフッ素樹脂を含有することで、被保護部材に保護シートを貼付した後に、被保護部材から保護シートを剥離する際、粘着層の粘着力をより良好に低下させることができ、良好な剥離性を発揮することが可能となる。そのため、被保護部材において保護シートを貼付する側の面が幅広の広面積である場合であっても、被保護部材に貼付した保護シートを剥離する際に、被保護部材から保護シートを剥離するのに要する力の増大を抑制し、被保護部材から容易に保護シートを剥離することができる。また、被保護部材自身や被保護部材の表面が破壊しやすい場合であっても、被保護部材から保護シートを剥離する際に、被保護部材への負荷を抑え、被保護部材の破壊を抑制することができる。
これは、粘着層にフッ素樹脂を含有することで、粘着層の表面自由エネルギーが低下することに起因すると考えられる。
本開示における粘着層は、基材の一方の面に配置される部材である。また、粘着層は、被保護部材の表面と密着する部材である。ここで、「粘着」とは、「接着」に含まれる概念である。粘着は一時的な接着現象の意味として用いられるのに対し、接着は永久的な接着現象の意味として用いられる点で区別されることがある(岩波書店 理化学事典第5版)。「粘着性」および「粘着力」とは、感圧により接着する性質およびそのときの接着力を指す。
本開示における粘着層は、保護シートを被保護部材に貼付するための層である。また、粘着層は、エネルギー線の照射により初期粘着力から粘着力が低下する特性を有する。換言すると、粘着層は、エネルギー線の照射により、被保護部材から剥離する再剥離性を有する。ここで、粘着層が再剥離性を示すとは、粘着層により被保護部材に保護シートを粘着および密着して固定することができ、かつ、被保護部材から保護シートを剥離する際に、被保護部材を破壊せず、被保護部材表面への糊残りの発生を抑えて剥離可能であることをいう。
本開示における粘着層の組成は、フッ素樹脂を含有し、エネルギー線照射前後で所定の粘着力を示すものであればよい。このような粘着層としては、例えば、フッ素樹脂の他に、樹脂(粘着主剤)、エネルギー線重合性オリゴマー、および重合開始剤を少なくとも含む組成とすることができる。フッ素樹脂を有することで、被保護部材に保護シートを貼付した後に、保護シートにおける粘着層にエネルギー照射をした際、粘着力を十分に低下させ、良好な剥離性を得ることが可能となる。また、エネルギー線の照射により本開示における粘着層に含まれるエネルギー線重合性オリゴマーが硬化して、粘着力を低下させることができ、また、このとき凝集力が高まるため、被保護部材への転着が生じにくくなり、剥離が容易になる。
本開示における「フッ素樹脂」とは、少なくともフッ素を含む樹脂を指す。このようなフッ素樹脂としては、例えば、ポリオール樹脂の骨格中にフッ素基を有する樹脂が挙げられる。上記フッ素基としては、例えば、フルオロアルキレン基が挙げられる。フッ素樹脂のフッ素含有率、すなわちポリオール樹脂の骨格中のフッ素基の含有率は、例えば、0.5質量%以上であることが好ましく、中でも1質量%以上であることが好ましい。ポリオール樹脂の骨格中のフッ素基の含有率が上記下限を有することで、被保護部材に保護シートを貼付した後に、保護シートにおける粘着層にエネルギー照射をした際に、粘着力を十分に低下させ、良好な剥離性を得ることが可能となる。また、フッ素樹脂のフッ素含有率、すなわちポリオール樹脂の骨格中のフッ素基の含有率は、例えば、100質量%以下であることが好ましく、中でも80質量%以下であることが好ましい。ポリオール樹脂の骨格中のフッ素基の含有率が上記上限を有することで、後述するその他の組成物との相溶性の低下を抑制することができる。
粘着主剤として用いられる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂については、特に限定されず、例えば(メタ)アクリル酸エステルを単独重合させた(メタ)アクリル酸エステル重合体、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させた(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられるが、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルおよび他の単量体の具体例としては、例えば特開2012−31316号公報に開示されるものが挙げられる。他の単量体は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ここでの主成分とは、共重合割合が51質量%以上であることを意味し、好ましくは65質量%以上である。
エネルギー線重合性オリゴマーは、エネルギー線の照射を受けて重合するものであれば特に限定されず、例えば、光ラジカル重合性、光カチオン重合性、光アニオン重合性等のオリゴマーが挙げられる。中でも、光ラジカル重合性オリゴマーが好ましい。硬化速度が速く、また、多種多様な化合物から選択することができ、更には、硬化前の粘着性や硬化後の剥離性等の物性を容易に制御することができるからである。光ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば特開2012−31316号公報に開示されるものが挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記重合開始剤は、一般的な光重合開始剤を用いることができる。例えば、基材の種類や粘着層に照射されるエネルギー線の種類に応じて、その波長に合った任意の重合開始剤中を選択することができる。被保護部材が光学部材である場合には、保護シートに対して光学特性が要求されるため、例えば、イエローインデックス値(YI値)が低い光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤のYI値としては、例えば2.0以下であることが好ましい。なお、YI値は、分光色差計(日本電色社製、SE6000)を用いて測定することができる。このような重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE184(BASF ジャパン社製)等が挙げられる。
架橋剤は、少なくともアクリル系樹脂間を架橋するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤の具体例としては、特開2012−31316号公報に開示されるものが挙げられる。架橋剤は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができ、アクリル系樹脂の種類等に応じて、適宜選択することができる。
架橋剤の含有量が上記範囲に満たないと、本開示における粘着層と被保護部材との密着性が劣る場合や、被保護部材から保護シートを剥離する際に、本開示における粘着層が凝集破壊を起こして被保護部材側へ糊残りが生じる場合がある。一方、架橋剤の含有量が上記範囲を超えると、エネルギー線照射後の本開示における粘着層中に上記架橋剤が未反応モノマーとして残留することで、凝集力の低下により糊残りの発生の原因となる場合がある。
粘着剤組成物は、上述のエネルギー線重合性オリゴマーに加えてエネルギー線重合性モノマーを含有してもよい。エネルギー線を照射した際に、粘着剤組成物を3次元架橋により硬化させて粘着力を低下させるとともに、粘着剤組成物の凝集力を高めて被保護部材側へ転着させないようにすることができるからである。エネルギー線重合性モノマーとしては、光ラジカル重合性モノマーが好ましく、中でも一分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能性アクリレートや多官能性メタクリレートが好ましい。具体的には、特開2010−173091号公報に記載のエネルギー線重合性モノマーが挙げられる。
本開示における粘着層の厚さとしては、十分な粘着力が得られ、且つ、エネルギー線が内部まで透過することが可能な大きさであればよく、具体的には3μm以上125μm以下、中でも5μm以上100μm以下であることが好ましい。
本開示の保護シートは、粘着層の一方の面に基材を有する。基材は、粘着層を支持できる層であることが好ましい。本開示における基材は、保護シートに耐熱性や耐薬品性等を付与することができる部材である。そのため、例えば、被保護部材の製造工程において、被保護部材の表面が製造過程における加熱や薬品により劣化や汚染されることを抑制するために、被保護部材の表面に基材を有する保護シートを貼付したとき、被保護部材を熱や薬品から良好に保護することができる。
本開示の保護シートは、上述した粘着層および基材を有していればよいが、必要に応じてその他の構成を有していてもよい。例えば、本開示の保護シートは、粘着層および基材の間にその他の構成を有していてもよく、基材の粘着層とは反対側の面にその他の構成を有していてもよい。その他の構成としては、例えば、セパレータが挙げられる。なお、セパレータは、通常、基材の粘着層とは反対側の面に配置される。以下、それぞれの構成について説明する。
本開示の保護シートは、被保護部材を保護するための部材として用いることができる。具体的には、被保護部材の加工の際の保護を目的として用いることができる。その他にも、本開示の保護シートは、被保護部材の搬送用の部材として用いても良く、あるいは支持フィルムとして用いても良い。すなわち、本開示の保護シートは、キャリアフィルムとしての用途もある。
本開示の保護シート付積層体は、保護シートと、被保護部材とが積層されてなる積層体であって、上記保護シートは、粘着層と、上記粘着層の一方の面に配置された基材とを有し、上記粘着層は、エネルギー線の照射により初期粘着力から粘着力が低下する特性を有し、上記粘着層は、フッ素樹脂を含有する積層体である。
本開示における保護シートは、被保護部材に積層される部材である。また、保護シートは、粘着層と、上記粘着層の一方の面に配置された基材とを有し、上記粘着層は、エネルギー線の照射により初期粘着力から粘着力が低下する特性を有し、上記粘着層は、フッ素樹脂を含有する部材である。
本開示における被保護部材は、上述した保護シートを積層することができる部材であり、特に限定されない。中でも、FPCやPCB等、製造工程において表面の保護が必要となる製品であることが好ましい。その他にも、端子を有するものが好ましく、例えば、ICチップ、LSIチップなどの半導体チップ、半導体パッケージ、チップコンデンサ、チップ抵抗、トランジスタ、インダクタ等が挙げられ、また、画像表示装置等の電子機器、建材や自動車等が挙げられる。本開示においては、被保護部材が、広面積な表面を有する製品であることが好ましい。広面積な表面を有する被保護部材の場合、当該表面に貼付される保護シートは、より良好な剥離性が求められる。そのため、上述した本開示における保護シートを用いることで得られる効果が顕著となる。
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系粘着剤(綜研化学株式会社製 商品名:SKダイン 1811L)100質量部に対して、エネルギー線重合性オリゴマー(新中村化学工業株式会社製 商品名:NKオリゴ U−10PA)50質量部、重合開始剤(BASFジャパン株式会社製 商品名:IRGACURE819)1.5質量部、フッ素樹脂(T&K TOKA株式会社製 商品名:ZX−022)3質量部、架橋剤(綜研化学株式会社製 商品名:L−45)3質量部を、トルエンおよびメチルエチルケトンの混合溶媒(DICグラフィックス株式会社製 商品名:KT−11)で固形分比30%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレータ(東洋紡株式会社製 商品名:E7304 厚み:50μm)に、乾燥後の厚みが75μmとなるように、上述した粘着剤組成物をコンマコートにより塗工し、粘着層を形成した。粘着層の乾燥後、基材(東洋紡株式会社製 商品名:A4100 厚み:50μm)をラミネートし、本開示の保護シートを得た。
粘着剤組成物にフッ素樹脂を含有しなかったこと以外は、実施例と同様にして保護シートを得た。
実施例および比較例で得られた保護シートの剥離力について評価した。剥離力の評価は、被保護部材としてカプトン200Hを用い、JIS Z0237に準拠して行った。結果は表1に示す。
2 …基材
10…保護シート
20…被保護部材
100…保護シート付積層体
Claims (2)
- 粘着層と、
前記粘着層の一方の面に配置された基材と、を有し、
前記粘着層は、エネルギー線の照射により初期粘着力から粘着力が低下する特性を有し、かつ、前記エネルギー線の照射後の粘着力が、2.0N/25mm以下であり、
前記粘着層は、フッ素樹脂、粘着主剤である樹脂、エネルギー線重合性オリゴマー、および重合開始剤を含有し、
前記フッ素樹脂が、官能基含有フッ素樹脂であり、
前記官能基含有フッ素樹脂が、フッ素樹脂とシロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーであり、
前記粘着主剤である樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、かつ質量平均分子量(Mw)が、20万〜80万の範囲内であり、
前記粘着層は、JIS K−7136に準拠したヘイズ値が、5%以下である保護シート。 - 保護シートと、被保護部材とが積層されてなる保護シート付積層体であって、
前記保護シートは、粘着層と、前記粘着層の一方の面に配置された基材と、を有し、
前記粘着層は、エネルギー線の照射により初期粘着力から粘着力が低下する特性を有し、かつ、前記エネルギー線の照射後の粘着力が、2.0N/25mm以下であり、
前記粘着層は、フッ素樹脂、粘着主剤である樹脂、エネルギー線重合性オリゴマー、および重合開始剤を含有し、
前記フッ素樹脂が、官能基含有フッ素樹脂であり、
前記官能基含有フッ素樹脂が、フッ素樹脂とシロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーであり、
前記粘着主剤である樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、かつ質量平均分子量(Mw)が、20万〜80万の範囲内であり、
前記粘着層は、JIS K−7136に準拠したヘイズ値が、5%以下である保護シート付積層体。
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