JP6693346B2 - 厚み位相差(Rth)が制御された積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献3、4の方法では、固有複屈折が正の樹脂に、固有複屈折が負の樹脂を積層することで、光学異方性を制御することが可能であるが、2種類以上の材料を準備することが必要であり、層間の屈折率差が光学特性に影響を与える懸念があった。また、通常、各層を構成する樹脂は相溶性が低く、フィルム端部などトリミングした部材を再度各層に添加すると白濁し易いという課題もあった。さらに、固有複屈折が負の樹脂は、実質的にアクリル系樹脂かスチレン系樹脂であり耐衝撃性や耐熱性に劣り、得られる積層フィルムの性能が限定されるという問題もあった。
式(1): Rth(積層)<|Rth(I)|
式(2): Rth(積層)<|Rth(II)|
層(I)は該組成物を加熱溶融してシート状に押出す溶融押出工程、冷却ロール(A)とタッチロール(B)とで前記押出されたシート状物を挟圧させる挟圧工程により得られ、
前記タッチロール(B)が軸体とこの軸体の外周に沿って形成されたベース層とを備えた構造を有し、該ベース層が内層(B−1)と外層(B−2)の少なくとも二層を有し、20℃における内層及び外層の貯蔵弾性率E´(B−1)及びE´(B−2)が式(3)の関係を満たし、
厚み位相差(Rth)の値が負である層(I)と、厚み位相差(Rth)の値が正である層(II)とを押出ラミネート法により積層する積層フィルムの製造方法であって、
厚み位相差(Rth)の値が負である層(I)と厚み位相差(Rth)の値が正である層(II)とを有することを特徴とする積層フィルムの製造方法。
式(3): 100MPa≧E´(B−2)>E´(B−1)
本発明の積層フィルムは、層(I)と層(II))とを有すればよく他の層については特に制限されるものではない。ここで、層(I)と層(II))の間に接着層(S)や他の層(Q)を配することができる。接着層(S)や他の層(Q)は、各層界面での光の反射や屈折などの光学特性への影響があるためできるだけ配しない方が好ましい。
具体的には、層(I)/層(II)の2層構成や層(I)/層(II)/層(I)、層(II)/層(I)/層(II)、層(I)/接着層(S)/層(II)の3層構成や、層(I)/接着層(S)/層(II)/接着層(S)/層(I)、層(II)/接着層(S)/層(I)/接着層(S)/層(II)、層(I)/他の層(Q)/層(II)/接着層(S)/層(I)、層(I)/他の層(Q)/層(II)/他の層(Q)/層(I)などの5層構成を挙げることができる。
本発明においては、積層フィルムのカール抑制、光学特性や製造の容易さなどの観点から層(I)/層(II)の2層構成や層(I)/層(II)/層(I)、層(II)/層(I)/層(II)の3層構成が好ましい。
本発明の積層フィルムの厚みは、特に制限されるのではないが、軽量化などの観点から、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下が特に好ましい。一方、ハンドリング性や強度の観点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
本発明の積層フィルムにおいて、層(I)と層(II)の積層比は特に制限されるものではないが、積層フィルム全体の厚み位相差の値をRth(積層)とし、各層(I)及び層(II)の厚み位相差(Rth)の合計値の絶対値をそれぞれ|Rth(I)|及び|Rth(II)|としたとき、式(1)および式(2)を満足するようにすることが好ましい。該範囲であれば、液晶表示の画質改善に有効であり好ましい。
式(1): Rth(積層)<|Rth(I)|
式(2): Rth(積層)<|Rth(II)|
本発明の積層フィルムの厚み位相差(Rth)は、30nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましく、5nm以下がさらに好ましく、3nm以下が特に好ましい。厚み位相差(Rth)が30nm以下である場合、光学異方性が小さいため光学フィルムとして適する。また、本発明の積層フィルムの面内位相差(Ro)は、30nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましく、5nm以下がさらに好ましく、3nm以下が特に好ましい。
なお、厚み位相差(Rth)と面内位相差(Ro)の下限については特に定めないが、−30nm以上が好ましく、−10nm以上がより好ましく、−5nm以上がさらに好ましく、−3nm以上が特に好ましい。
なお、位相差の測定方法は、後述の実施例の項に記載されるとおりである。
本発明の積層フィルムの光弾性係数(絶対値)は、10×10−12Pa−1以下が好ましく、8×10−12Pa−1以下がより好ましく、5×10−12Pa−1以下が特に好ましい。光弾性係数が10×10−12Pa−1より大きいと、応力による位相差の変化が大きくなり、光漏れなどの原因となることがある。
光弾性係数とは、弾性体が外力を受けたとき一時的に光学的異方体となって複屈折を生じ、外力を除いたあと元に戻る光弾性効果を示す物質において複屈折差の応力依存性を表す定数である。即ち、複屈折差(Δn)と光弾性係数との関係は次式で表される。
Δn=C・σ (Cは光弾性係数、σは応力を表す)
本発明の積層フィルムの全光線透過率は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、91%以上がさらに好ましく、92%以上が特に好ましい。また、ヘイズは1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.3%以下がさらに好ましい。
固有複屈折の正である樹脂とは、重合体の分子鎖が一軸配向した層(例えば、フィルム)において、当該層の主面に垂直に入射した光のうち、当該層における分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な振動成分に対する層の屈折率n1から、配向軸に垂直な振動成分に対する層の屈折率n2を引いた値(n1−n2)が正である樹脂である。固有複屈折の値は、各々の重合体について、その分子構造に基づく計算により求めることができる。なお、樹脂組成物の固有複屈折の正負は、当該樹脂組成物に含まれる各重合体によって生じる複屈折の総計により決定される。また、本発明において主成分とは、層中の組成物成分として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含むことをいう。
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、国際公開第2007/148604号公報に記載の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する単量体単位を挙げることができる。本発明においては、耐熱性や光学特性から5員環構造又は6員環構造を含むものが好ましい。6員環構造は共有結合によって椅子形又は舟形に固定されていてもよい。中でも、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールを好適に例示することができる。これらの中でも、シクロヘキサンジメタノール又はトリシクロデカンジメタノールが経済性および耐熱性などからより好ましい。
上記の脂環式構造含有重合体樹脂は、例えば特開2002−321302号公報等に開示されている公知の重合体から選択することができる。
次に、本発明の積層フィルムの製造方法について説明する。
本発明の実施形態の一例に係る積層フィルムの製造方法(以下、「本フィルム製造方法」と称することがある)は、層(I)および層(II)が、ガラス転移温度が80℃以上でかつ、固有複屈折が正である樹脂を主成分とする組成物からなり、層(I)は該組成物を加熱溶融してシート状に押出す溶融押出工程、冷却ロール(A)と特定のタッチロール(B)とで前記押出されたシート状物を挟圧させる挟圧工程により得られ、厚み位相差(Rth)の値が負である層(I)と、厚み位相差(Rth)の値が正である層(II)とを押出ラミネート法により積層する積層フィルムの製造方法であって、厚み位相差(Rth)の値が負である層(I)と厚み位相差(Rth)の値が正である層(II)とを有する積層フィルムの製造方法である。
ここで面内位相差(Ro)とはフィルムの遅相軸方向、進相軸方向の屈折率を、それぞれnx、nyとし、d(nm)をフィルムの厚みとしたとき、Ro=(nx−ny)×dによって求められるものである。なお遅相軸とは面内の屈折率の最大となる方向をいう。また、厚み位相差(Rth)とは、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dによって求められるものである。
本工程では、ガラス転移温度が80℃以上でかつ、固有複屈折が正である樹脂、その他の原料を、例えばタンブラーミキサー、オムニミキサー等の混合機でプレブレンドした後、必要に応じて、得られた混合物を押出混練して樹脂組成物を調製すればよい。
また、設備構造および必要性に応じて、ベント口に減圧機を接続し、水分や低分子量物質を除去してもよい。
本工程では、前記溶融押出工程で押出されたシート状物を冷却ロール(A)と特定のタッチロール(B)とで挟圧し、冷却ロールに密着させながら引き取り、連続したシート状物に成形するのが好ましい。図1に本発明の厚み位相差(Rth)の値が負である層(I)(フィルム)を製造するために用意した製造装置の概略構成図を示した。また、図2に本発明の一実施形態であるタッチロール(B)の断面模式図を示した。
冷却ロール(A)のサイズについては特に制限されるものではないが、通常、直径が100mm〜2500mmであり、200mm〜1000mmが好ましく、250mm〜600mmがより好ましい。また、通常、幅は、5000mm以下であり、800mm〜2500mmが好ましく、1000〜1800mmがより好ましい。
図1では、冷却ロール4の後段に、さらに第2の冷却ロール5が配置されている。冷却ロールの数は、採取するフィルムの材質や成形温度および厚み等に応じて適宜選択すればよい。
式(3): 100MPa≧E´(B−2)>E´(B−1)
ここで、E´(B−1)は、内層(B−1)の20℃における貯蔵弾性率(MPa)、E´(B−2)は、外層(B−2)の20℃における貯蔵弾性率(MPa)を示している。なお、貯蔵弾性率は、粘弾性測定装置を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、昇温速度3℃/分で測定した値である。
一方、内層(B−1)の貯蔵弾性率が外層(B−2)の貯蔵弾性率よりも大きい場合、外層が軟らかくなるため、製造されるフィルムの表面のフラット性を確保するのが困難となる。さらに、軟らかいタッチロール外層が直接フィルムに接触すると、タッチロール側にフィルムが引っ張られるトラレ現象が起こるおそれもある。
次に層(I)と層(II)の積層方法について説明する。上記したように各層に用いるフィルムを別々に準備し接着層や接着剤により積層することも可能であるが、本発明においては、どちらかの層のフィルムをフィルムロール等の形態で予め準備しておき、押出ラミネート法により積層フィルムとする方法がエネルギー効率や生産性およびマスキングフィルムの削減などの観点から好ましい。
本フィルムの用途には特に制限はないが、光学異方性が非常に小さく、また引裂強度等の機械的強度にも優れることから、特に、本フィルムを偏光膜の少なくとも片面に配することで、偏光板の偏光膜の保護フィルムとして好適に用いることができる。
接着剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリビニルアルコール系やウレタン化合物等の水系接着剤、アクリル系化合物やエポキシ系化合物、オキサゾリン化合物等の活性エネルギー線硬化系接着剤が挙げられる。
本フィルムは、光学特性や、引裂強度等の機械的強度に優れ、偏光膜に対して密着性よく接着させることができ、偏光板を液晶から剥す際のハンドリング性にも優れることから、このような本フィルムを用いた本発明の偏光板は、偏光膜の保護効果、機能維持性に優れ、テレビ、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の液晶表示装置の偏光板として高品質な表示画面を実現することができ、また、液晶表示装置製造時の作業性にも優れる。
(株)パーキンエルマー製の示差走査熱量計、商品名「Pyris1 DSC」を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムからガラス転移温度(Tg)(℃)を求めた。なお、Tgの値は、少数第一位を四捨五入して記載した。
得られたフィルムについて、JIS K7105に準じてヘーズメーター(日本電色工業(株)社製、商品名:NDH−5000)を用いて、全光線透過率およびヘイズを測定した。また、下記の基準で判定した結果も記載した。
(全光線透過率)
◎:全光線透過率が92%以上
○:全光線透過率が90%以上、92%未満
△:全光線透過率が85%以上、90%未満
×:全光線透過率が85%未満
(ヘイズ)
◎:ヘイズが0.3%以下
○:ヘイズが0.3%を超え、1.0%以下
×:ヘイズが1.0%を超える
アイティ計測(株)製の粘弾性測定装置、商品名「粘弾性スペクトロメーターDVA−200」を用いて、試料(MD方向4mm、TD方向60mm)を振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間25mmで横方向について、−100℃から150℃まで測定し、得られたデータから20℃における貯蔵弾性率(E´)(MPa)を求めた。
得られたフィルムについて、位相差測定装置(王子計測機器(株)製、商品名:KOBRA−WR)を用いて測定した。また、下記の基準で判定した結果も記載した。なお、Rthは、入射角度0°の時と、40°のときの位相差より算出した。
◎:Rthの絶対値が3nm以下
○:Rthの絶対値が3nmを超え、10nm以下
×:Rthの絶対値が10nmより大きい
(樹脂:P−1)
特開2008−024919号公報に準じた方法により得られた、ジヒドロキシ化合物であるイソソルビドに由来する単量体単位とトリシクロデカンジメタノールに由来する単量体単位のモル比率がイソソルビド/トリシクロデカンジメタノール=70/30モル%であるポリカーボネート共重合体。密度:1.36g/cm3、Tg:130℃、MFR(温度:230℃、荷重:37.3N):9.6g/10min、平均屈折率:1.5102、固有複屈折:0.03、光弾性係数:12×10−12Pa−1
(固有複屈折の値が正でかつ、厚み位相差(Rth)の値が負である層(I)の準備)
ガラス転移温度が80℃以上でかつ、固有複屈折が正である樹脂として樹脂(P−1)100質量部をベント機能を有する同方向二軸押出機に供給し、樹脂温度220〜255℃で溶融混練し、ギアポンプとフィルターパック(リーフディスクフィルター、メッシュサイズ5μm)を経由して255℃のTダイにてフィルム状の溶融体を作製し、エアギャップ65mmでステンレス製の冷却ロール(φ300mm、温度100℃)とタッチロール(φ200mm、外層;鏡面シリコーンゴム、E´=9.0MPa、厚み3mm、内層;シリコーン系スポンジゴム、E´=0.26MPa、厚み7mm)とで挟圧することで厚みが40μmのフィルムを作製し、後工程でマスキングフィルム(フタムラ化学(株)製、自己粘着OPPフィルム、商品名;太閤FSA、グレード;010M、厚み;30μm)をラミネートし、フィルム両端部をスリットしてフィルムロール(幅1370mm、長さ1100m)を得た(以下、FR−1と略記することがある)。タッチ圧は、0.8MPaであった。得られたフィルムは外観が良好であり、また平面性にも優れており、これを層(I)用のフィルムとした。該フィルムの厚み位相差(Rth)は、−7.4nmであった。
(積層フィルムの作製)
ガラス転移温度が80℃以上でかつ、固有複屈折が正である樹脂として樹脂(P−1)100質量部をベント機能を有する同方向二軸押出機に供給し、樹脂温度220〜255℃で溶融混練し、ギアポンプとフィルターパック(リーフディスクフィルター、メッシュサイズ5μm)を経由して255℃のTダイにてフィルム状の溶融体を作製し、先に準備しておいた層(I)用のFR−1をマスキングフィルムがラミネートされた状態でタッチロール側から巻出し、ステンレス製の冷却ロール(φ300mm、温度100℃)とタッチロール(φ200mm、全層;鏡面シリコーンゴム、E´=9.0MPa)とで挟圧することで各層(層(I)/層(II))の厚みが各々40μmの積層フィルムを作製し、フィルム両端部をスリットしてフィルムロール(幅1330mm、長さ1000m)を得た。該積層フィルムを用いて評価した結果を表1に示す。
(積層フィルムの作製)
実施例1の積層フィルムの作製において、フィルム両端部をスリットしたトリミング部材を樹脂(P−1)100質量部に対して15質量部の割合で再生添加した以外は、同様にして積層フィルムを得た。該積層フィルムを用いて評価した結果を表1に示す。
(固有複屈折の値が正でかつ、厚み位相差(Rth)の値が正である層(II)の準備)
ガラス転移温度が80℃以上でかつ、固有複屈折が正である樹脂として樹脂(P−1)100質量部をベント機能を有する同方向二軸押出機に供給し、樹脂温度220〜255℃で溶融混練し、ギアポンプとフィルターパック(リーフディスクフィルター、メッシュサイズ5μm)を経由して255℃のTダイにてフィルム状の溶融体を作製し、エアギャップ65mmでステンレス製の冷却ロール(φ300mm、温度100℃)とタッチロール(φ200mm、全層;鏡面シリコーンゴム、E´=9.0MPa)とで挟圧することで厚みが40μmのフィルムを作製し、後工程でマスキングフィルム(フタムラ化学(株)製、自己粘着OPPフィルム、商品名;太閤FSA、グレード;010M、厚み;30μm)をラミネートし、フィルム両端部をスリットしてフィルムロール(幅1370mm、長さ1100m)を得た(以下、FR−2と略記することがある)。タッチ圧は、0.8MPaであった。得られたフィルムは外観が良好であり、また平面性にも優れており、これを層(II)用のフィルムとした。該フィルムの厚み位相差(Rth)は、7.2nmであった。
(積層フィルムの作製)
ガラス転移温度が80℃以上でかつ、固有複屈折が正である樹脂として樹脂(P−1)100質量部をベント機能を有する同方向二軸押出機に供給し、樹脂温度220〜255℃で溶融混練し、ギアポンプとフィルターパック(リーフディスクフィルター、メッシュサイズ5μm)を経由して255℃のTダイにてフィルム状の溶融体を作製し、先に準備しておいた層(II)用のFR−2をマスキングフィルムがラミネートされた状態でタッチロール側から巻出し、ステンレス製の冷却ロール(φ300mm、温度100℃)とタッチロール(φ200mm、外層;鏡面シリコーンゴム、E´=9.0MPa、厚み3mm、内層;シリコーン系スポンジゴム、E´=0.26MPa、厚み7mm)とで挟圧することで各層(層(I)/層(II))の厚みが各々40μmの積層フィルムを作製し、フィルム両端部をスリットしてフィルムロール(幅1330mm、長さ1000m)を得た。該積層フィルムを用いて評価した結果を表1に示す。
(固有複屈折の値が正でかつ、厚み位相差(Rth)の値が正である層(II)の準備)
実施例3において、採取するフィルムの厚みを40μmから20μmに変更し、採取する本数を2本にした以外は、同様にしてマスキングフィルム付きフィルムロールを得た(以下、FR−3と略記することがある)。得られたフィルムは外観が良好であり、また平面性にも優れており、これを層(II)用のフィルムとした。該フィルムの厚み位相差(Rth)は、3.8nmであった。
(積層フィルムの作製)
実施例3の積層フィルムの作製において、採取するフィルムの層構成を層(II)/層(I)/層(II)=20μm/40μm/20μmに変更した以外は、同様にして積層フィルムを得た。該積層フィルムを用いて評価した結果を表1に示す。
実施例4において採取するフィルムの層構成を層(II)/層(I)/層(II)=10μm/40μm/10μmに変更した以外は、同様にして積層フィルムを得た。該積層フィルムを用いて評価した結果を表1に示す。
(固有複屈折の値が正でかつ、厚み位相差(Rth)の値が正である層(II)の準備)
実施例3に記載の方法と同様にして、固有複屈折の値が正でかつ、厚み位相差(Rth)の値が正である層(II)用のフィルムロールを得た(以下、FR−2と略記することがある)。
ガラス転移温度が80℃以上でかつ、固有複屈折が正である樹脂として樹脂(P−1)100質量部をベント機能を有する同方向二軸押出機に供給し、樹脂温度220〜255℃で溶融混練し、ギアポンプとフィルターパック(リーフディスクフィルター、メッシュサイズ5μm)を経由して255℃のTダイにてフィルム状の溶融体を作成し、先に準備しておいた層(II)用のFR−2をマスキングフィルムがラミネートされた状態でタッチロール側から巻出し、ステンレス製の冷却ロール(φ300mm、温度100℃)とタッチロール(φ200mm、全層;鏡面シリコーンゴム、E´=9.0MPa)とで狭圧することで各層(層(II)/層(II´))の厚みが各々40μmの積層フィルムを作製し、フィルム両端部をスリットしてフィルムロール(幅1330mm、長さ1000m)を得た。該積層フィルムを用いて評価した結果を表1に示す。
固有複屈折が負の樹脂である樹脂としては、アクリル系樹脂またはスチレン系樹脂が挙げられ、これらの樹脂より厚み位相差が負である層を作製すると、耐衝撃性や耐熱性に劣る積層体が得られるが、本発明のフィルムはアクリル系樹脂またはスチレン系樹脂を用いなくても、厚み位相差を制御でき、かつ、透明性に優れたフィルムであるため有用性が高い。
さらに、フィルム両端部をスリットしたトリミング部材を再生添加しても透明性はほとんど低下しないことが確認できる(実施例2)。
1a・・・フィルターパック
1b・・・Tダイ
2・・・フィルム
3・・・タッチロール
4,5・・・冷却ロール
6・・・軸体
7・・・内層(B−1)
8・・・外層(B−2)
Claims (7)
- 層(I)および層(II)が、ガラス転移温度が80℃以上でかつ、固有複屈折が正である脂環式構造含有重合体樹脂を主成分とする組成物からなり、厚み位相差(Rth)の値が負である層(I)と厚み位相差(Rth)の値が正である層(II)とを有する積層フィルム。
- 層(I)と層(II)の主成分が同一の樹脂であることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
- 積層フィルムの厚み位相差の合計値をRth(積層)とし、各層(I)及び層(II)の厚み位相差(Rth)の合計値の絶対値をそれぞれ|Rth(I)|及び|Rth(II)|としたとき、式(1)および式(2)を満足することを特徴とする請求項1または2記載の積層フィルム。
式(1): Rth(積層)<|Rth(I)|
式(2): Rth(積層)<|Rth(II)| - 層(I)と層(II)とが直接に接していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
- 層(I)又は層(II)のどちらか一方の層のガラス転移温度は、100℃以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
- 厚み位相差(Rth)の絶対値が、30nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層フィルム。
- 層(I)および層(II)が、ガラス転移温度が80℃以上でかつ、固有複屈折が正である樹脂を主成分とする組成物からなり、
層(I)は該組成物を加熱溶融してシート状に押出す溶融押出工程、冷却ロール(A)とタッチロール(B)とで前記押出されたシート状物を挟圧させる挟圧工程により得られ、
前記タッチロール(B)が軸体とこの軸体の外周に沿って形成されたベース層とを備えた構造を有し、該ベース層が内層(B−1)と外層(B−2)の少なくとも二層を有し、20℃における内層及び外層の貯蔵弾性率E´(B−1)及びE´(B−2)が式(3)の関係を満たし、
厚み位相差(Rth)の値が負である層(I)と、厚み位相差(Rth)の値が正である層(II)とを押出ラミネート法により積層する積層フィルムの製造方法であって、
厚み位相差(Rth)の値が負である層(I)と厚み位相差(Rth)の値が正である層(II)とを有する積層フィルムの製造方法。
式(3): 100MPa≧E´(B−2)>E´(B−1)
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