JP6693256B2 - 画像形成装置 - Google Patents
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Description
たとえば特許文献2には、この複数化による突入電流の抑制が開示されている。ハロゲンヒーターの定格電力が高いほど昇温は速い。しかし、定格電力の上昇は、ヒーターの通電開始時に生じる突入電流を増大させる。過大な突入電流には、外部の電源電圧を一時的に急落させる危険性がある。特許文献2に開示された画像形成装置は、抵抗値の異なる2本のヒーターを定着部に実装し、通電開始時にはそのうちの1本にのみ、電流を流す。これにより突入電流が抑えられる。その後、加熱ローラーの温度が所定値まで上昇した時点で両方のヒーターに並列に電流を流し、昇温を加速させる。
特許文献4に開示された画像形成装置は、定格電力の異なる2本のハロゲンヒーターを定着部に実装し、シートの搬送速度に応じてヒーター間での点灯時間の比率を変えることにより、シートに対する加熱量を最適化する。ハロゲンヒーターの複数化により加熱量の範囲が拡大し、かつ加熱量が精細に設定されるので、加熱効率が向上する。
[画像形成装置の外観]
図1の(a)は、本発明の実施形態による画像形成装置100の外観を示す斜視図である。この画像形成装置100は電子写真方式のカラープリンター、すなわちカラーレーザープリンターである。プリンター100の筐体の上面には排紙トレイ41が設けられ、その奥に開いた排紙口42から排紙されたシートを収容する。排紙トレイ41の前方には操作パネル51が取り付けられている。操作パネル51には、各種の機械的な押しボタンに加え、タッチパネル内蔵のディスプレイが配置されている。ディスプレイは、操作画面、各種情報の入力画面等のグラフィックスユーザーインターフェース(GUI)画面を表示する。タッチパネルは、アイコン、仮想ボタン、メニュー、ツールバー等、GUI画面の含むガジェットを通してユーザーの入力操作を受け付ける。プリンター100の底部には給紙カセット11が引き出し可能に取り付けられ、その中にシートの束が収容される。「シート」とは、紙製もしくは樹脂製の薄膜状もしくは薄板状の材料、物品、または印刷物をいう。給紙カセット11に収容可能なシートの種類すなわち紙種は、普通紙、上質紙、カラー用紙、または塗工紙であり、サイズは、A3、A4、A5、またはB4である。さらに、シートの姿勢は縦置きと横置きとのいずれにも設定可能である。
図1の(b)は、図1の(a)の示す直線b−bに沿ったプリンター100の模式的な断面図である。この図が示すようにプリンター100は、給送部10、作像部20、定着部30、および排紙部40を含む。
給送部10は、給紙ローラー12を利用して、給紙カセット11からシートSH1を1枚ずつ作像部20へ給送する。
[定着部の構造]
図2の(a)は、定着部30の含むローラー対31、32とそれらの駆動機構との模式的な斜視図であり、(b)は、(a)が示す直線b−bに沿ったローラー対31、32の断面図である。これらの図が示すように定着部30は、加熱ローラー31、加圧ローラー32、2本のハロゲンヒーター331、332、温度センサー35、モーター36、およびトルク伝達機構37を含む。
加熱ローラー31は、芯金311、弾性体層312、および離型層313を含む。芯金311はたとえば直径数十mmの円筒部材であり、主に、アルミ、鉄等の金属から成る。弾性体層312は、芯金311の外側を覆う、主にシリコーンゴム等、高弾性の耐熱性樹脂から成る層であり、その厚さはたとえば1mm未満である。離型層313は、弾性体層312の外側を覆うフッ素樹脂等の薄膜であり、加熱ローラー31の外周面を形成している。離型層313は、加熱ローラー31による加熱で溶融したトナーがシートSH2の表面から加熱ローラー31の外周面へ転移する現象(オフセット現象)を防止する。
−構造−
図3の(a)は、第1ハロゲンヒーター331の側面図である。この図が示す構造は、第2ハロゲンヒーター332についても同様である。この図が示すように、第1ハロゲンヒーター331は、ガラス管33A、フィラメント33B、封入ガス33C、封止部33D、および口金33Eを含む。ガラス管33Aはたとえば石英ガラス製の細長い円管であり、ヒーター331の放射する高熱に伴う摂氏数百度の高温に耐えうる。フィラメント33Bはたとえばコイル状のタングステン線であり、ガラス管33Aの内部空間を長手方向に伸びている。封入ガス33Cは不活性ガスと微量のハロゲンガスとの混合ガスである。たとえば不活性ガスは、窒素、アルゴン、またはクリプトンであり、ハロゲンガスは、ヨウ素、臭素、塩素、またはそれらの化合物である。ハロゲンガスは、フィラメント33Bから蒸発により気化したタングステン原子と循環型連鎖反応(ハロゲンサイクル)を繰り返すことにより、それらのタングステン原子をフィラメント33Bへ戻す。ハロゲンサイクルの存在がハロゲンランプのフィラメントを白熱電球のものよりも長寿命化する。封止部33Dは、ガラス管33Aの長手方向の各端部であり、気密に封じられている。封止部33Dにはモリブデン箔33Fが埋め込まれ、その一端がガラス管33Aの内部空間に露出してフィラメント33Bに接続されている。モリブデン箔33Fの他端は封止部33Dの中で口金33Eと導通している。口金33Eはたとえばセラミックまたは耐熱性の高い金属で形成され、ガラス管33Aの両端を固定すると共に、モリブデン箔33Fを通してフィラメント33Bを外部電源に導通させる。
図3の(b)は、ガラス管33Aの内部空間においてハロゲンガス分子とタングステン原子との間に生じるハロゲンサイクルを表すガラス管33Aの模式的断面図である。この図が示すように、ヒーター331の通電中、摂氏数千度のフィラメント33Bと、外気で摂氏数百度に冷却されるガラス管33Aとの間に挟まれていることにより、ガラス管33Aの内部空間はフィラメント33B近傍の高温域HTRとガラス管33Aの内壁近傍の低温域LTRとに分けられる。高温域HTRでは、ハロゲン分子Xに加え、フィラメント33Bから気化したタングステン原子Wが飛び交っている。タングステン原子Wは、拡散により高温域HTRから低温域LTRまで移動すると周囲のガスに冷却されて2個のハロゲン分子Xと結合し、タングステンハライド分子WX2を形成する。タングステンハライドは揮発性であるので、ガラス管33Aの内壁が十分に高温であれば、タングステンハライド分子WX2はその内壁に付着することなく低温域LTRを浮遊し続ける。タングステンハライド分子WX2は封入ガス33Cの対流に伴い、低温域LTRから高温域HTRへ移動すると周囲のガスまたはフィラメント33Bから加熱されてタングステン原子Wとハロゲン分子Xとに解離する。解離後のタングステン原子Wはフィラメント33Bに沈着する。
図4は、プリンター100の電子制御系統の構成を示すブロック図である。この制御系統ではプリンター100の各要素10、20、30、40に加え、操作部50と主制御部60とがバス90を通して互いに通信可能に接続されている。
−駆動部−
プリンター100の各要素10、…、40は駆動部10D、20D、30D、40Dを含む。図4は示していないが各駆動部10D、…は、搬送ローラー12、21、24R、25、31、32、43、PCドラム21Y、…等の可動部材に対する、アクチュエーター、制御回路、および駆動回路の組み合わせを含む。アクチュエーターはたとえばBLDCモーターである。制御回路は、マイクロプロセッサ(MPU/CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはプログラム可能な集積回路(FPGA)等の電子回路であり、アクチュエーターからフィードバックされる実際の制御量、たとえばモーターであれば回転速度に基づいてそのアクチュエーターに対する印加電圧の目標値を駆動回路に指示する。駆動回路はスイッチングコンバーターであり、電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等のパワートランジスタをスイッチング素子として利用して、アクチュエーターに対して電圧を印加する。これらの制御回路と駆動回路とによるフィードバック制御を利用して、各駆動部10D、…はアクチュエーターの制御量を、主制御部60から指示された目標値に制御する。
操作部50は、プリンター100に実装されたユーザーと外部の電子機器とに対するインタフェースの全体であり、ユーザーの操作または外部の電子機器との通信を通してジョブ処理の要求と印刷対象の画像データとを受け付け、それらを主制御部60へ伝える。図4が示すように操作部50は操作パネル51と外部インタフェース(I/F)52とを含む。操作パネル51は、図1の(a)が示すように、押しボタン、タッチパネル、およびディスプレイを含む。このディスプレイに操作パネル51はGUI画面を表示する。操作パネル51はまた、押しボタンの中からユーザーが押下したものを識別し、またはタッチパネルの中からユーザーが触れた位置を検出し、その識別または検出に関する情報を操作情報として主制御部60へ伝える。特に印刷ジョブの入力画面がディスプレイに表示されている場合、操作パネル51は、印刷対象のシートのサイズ、紙種、姿勢(縦置きと横置きとの別)、部数、画質等、印刷に関する条件をユーザーから受け付けて、これらの条件を示す項目を操作情報に組み込む。外部I/F52はUSBポートまたはメモリカードスロットを含み、それらを通してUSBメモリーまたはハードディスクドライブ(HDD)等の外付けの記憶装置から直に印刷対象の画像データを取り込む。外部I/F52は更に、外部のネットワークNTWに有線または無線で接続された通信ポートを含み、そのネットワークNTWを通して他の電子機器から印刷対象の画像データを受信する。
主制御部60は、プリンター100の内部に設置された1枚の印刷回路基板に実装された集積回路である。図4が示すように、主制御部60は、CPU61、RAM62、およびROM63を含む。CPU61はMPUで構成され、各種ファームウェアを実行する。RAM62は、DRAM、SRAM等の揮発性半導体メモリー装置であり、CPU61がファームウェアを実行する際の作業領域をCPU61に提供すると共に、操作部50が受け付けた印刷対象の画像データを保存する。ROM63は書き込み不可の不揮発性記憶装置と書き換え可能な不揮発性記憶装置との組み合わせで構成されている。前者はファームウェアを格納し、後者は、EEPROM、フラッシュメモリー、SSD等の半導体メモリー装置、またはHDDを含み、CPU61に環境変数等の保存領域を提供する。
プリンター100の動作モードにはたとえば、「稼働」、「待機(低電力)」、「スリープ」が含まれる。「稼働モード」は、プリンター100が印刷ジョブを処理する動作モードをいう。たとえば、給送部10は操作情報の示す枚数のシートを連続して給送し、作像部20はトナー像の形成とシートへの転写とを繰り返し、定着部30はシートへの加熱と加圧とを継続する。「待機モード」は、プリンター100がジョブを実行可能な状態で待機する動作モードをいう。具体的には、給送部10と作像部20とは停止し、定着部30は加熱ローラー31をハロゲンヒーター331、332で予熱して適正な温度に保つ。「スリープモード」とは、プリンター100が電力消費を必要最小限に抑える動作モードをいう。たとえば、給送部10と作像部20とに加えて定着部30も停止し、特にハロゲンヒーター331、332への電源供給が遮断される。
定着部30の制御系統は、主制御部60とは別の印刷回路基板に実装された、MPU/CPU、ASIC、FPGA等の集積回路である。この制御系統は駆動部30Dに加え、パルス幅変調(PWM)制御部30Cとスイッチング変換部30Sとを含む。
PWM制御部30Cは、MPU/CPU、ASIC、FPGA等の電子回路であり、加熱ローラー31の実温度を監視し、その実温度と目標温度との間の差に応じて、第1ハロゲンヒーター331と第2ハロゲンヒーター332との一方または両方を、一定周波数(たとえば20kHz。以下、「PWM周波数」という。)のパルス電圧の印加対象として選択する。PWM制御部30Cは更に、加熱ローラー31の実温度と目標温度との間の差の経時変化に合わせてパルス電圧のデューティ比を経時的に変更する。具体的には、PWM制御部30Cは、温度センサー35からフィードバックされる加熱ローラー31の温度の計測値とその温度の目標値との間の差を求め、その差が狭まるようにパルス電圧のデューティ比を変更し、変更後のデューティ比をスイッチング変換部30Sへ通知する。
−回路構成−
図5は、スイッチング変換部30Sの回路図である。この図が示すように、スイッチング変換部30Sは、整流部381、ノイズフィルター382、降圧チョッパ383、IGBT駆動回路384、およびスイッチ部385を含む。
ノイズフィルター382はたとえばπ型の3端子LCフィルターであり、リアクトルL1と2個のコンデンサーC1、C2とを含む。リアクトルL1の一端は整流部381の第1出力端子1Aの一方に接続されている。各コンデンサーC1、C2はリアクトルL1の異なる端と整流部381の出力端子の他方との間に接続されている。ノイズフィルター382はローパスフィルターであり、主に降圧チョッパ383の発する高周波ノイズが外部電源OPSへ向かって伝搬するのを防ぐ。
図6は、スイッチング変換部30Sの各部分における電流/電圧の波形を示すグラフである。(a)は整流部381の入力電圧VIの波形を示し、(b)は整流部381の出力電圧VRの波形を示し、(c)は、スイッチング素子SWのゲートに対してIGBT駆動回路384が印加するパルス信号VPの波形を示す。(d)は、降圧チョッパ383がハロゲンヒーター331、332の少なくとも一方に接続されている場合における回生ダイオードD1の両端間電圧VDの波形を示し、(e)は、同じ場合における降圧チョッパ383の出力電流IOの波形を示す。いずれのグラフも横軸は時間を表す。
降圧チョッパ383は、上記のとおり、電流不連続モードで動作するように設計されている。これにより、スイッチング素子SWのオン期間では出力電流IOが維持されるのでハロゲンヒーター331、332から熱が放射され、オフ期間では出力電流IOが途絶えるのでハロゲンヒーター331、332からの熱放射が止まる。オフ期間に対するオン期間の時間長の割合、すなわちスイッチング素子SWのオンオフのデューティ比が高いほどハロゲンヒーター331、332の発熱量は多い。したがって、そのデューティ比が調節されることにより、ハロゲンヒーター331、332の発熱量が制御される。
「スイッチングノイズ」とは主に、スイッチング素子SWのオンオフに伴うサージ電流/電圧をいう。スイッチングノイズは十分に小さければノイズフィルター382で除去される。しかし、スイッチングノイズがノイズフィルター382で除去しきれないほど過大であり、外部電源OPSまで伝搬した場合、その電源OPSを通して外部機器に誤動作を起こさせかねない。過大なスイッチングノイズはまた、スイッチング変換部30Sと外部電源OPSとの接続部を通して、搬送部10、作像部20等、プリンター100の他の要素の電源系統にまで侵入しうる。この場合、侵入先の動作が不安定化し、搬送不良、画質劣化等の不具合が生じる危険性もある。
上記のとおり、スイッチング素子SWのオンオフのデューティ比が調節されることにより、ハロゲンヒーター331、332の発熱量が制御される。したがって、スイッチング素子SWのオンオフのデューティ比が設定可能な範囲により、ハロゲンヒーター331、332の発熱量の使用可能な範囲が決まる。
デューティ比の上限は、降圧チョッパ383が電流不連続モードで動作可能であるという条件で決まり、特に降圧チョッパ383のリアクトルL2のインダクタンスとPWM周期とに大きく影響される。図7の(a)の示すデューティ比の上限70%は、リアクトルL2のインダクタンス20μHとPWM周波数20kHzとから算定された許容上限の一例であり、特に制御の簡単化を目的として両ヒーター331、332に対して共通化されている。
図8の(a)は、プリンター100の起動時刻t0以降における加熱ローラー31の温度の経時変化を示すグラフである。プリンター100の起動に応じて定着部30は加熱ローラー31の温度制御を開始する。具体的には、プリンター100のウォームアップ期間WUPにおいてPWM制御部30Cが昇温制御を行う。PWM制御部30Cはまず加熱ローラー31の目標温度をプリント時の値Ttg、たとえば180℃に設定する。PWM制御部30Cは次に、この目標温度Ttgと温度センサー35の出力が起動時刻t0で示す加熱ローラー31の初期温度T0との間の差から、ハロゲンヒーター331、332に対する制御パターンを選択する。
図9は、定着部30による加熱ローラー31の温度制御のフローチャートである。この制御は、定着部30が主制御部60から稼働モードへの移行指示を受けたときに開始される。
ステップS101では、プリンター100が稼働モードへの移行に伴い、ウォームアップまたはリカバリーを行う。この期間WUP、RCVにおいてPWM制御部30Cは昇温制御を行う。具体的には、PWM制御部30Cはまず、加熱ローラー31の目標温度をプリント時の値Ttgに設定し、目標温度Ttgと温度センサー35の出力が示す加熱ローラー31の初期温度T0との間の差からハロゲンヒーター331、332に対する制御パターンを選択する。PWM制御部30Cは次に、選択した制御パターンに従ってパルス電圧の印加対象を選択する。すなわち、スイッチ部385の含む4対の2連スイッチS1、…のオンオフの組み合わせを選択する。この組み合わせをPWM制御部30Cはスイッチ部385に開閉信号SSWで指示する。第1制御パターンTY1を選択した場合、PWM制御部30Cはスイッチ部385に第1スイッチS1と第2スイッチS2とをオフさせ、第3スイッチS3と第4スイッチS4とをオンさせるので、いずれのハロゲンヒーター331、332も全点灯する。第1制御パターンTY1以外を選択した場合、PWM制御部30Cは続いて、温度センサー35の出力が示す加熱ローラー31の温度と目標温度Ttgとの間の差に基づいてパルス電圧のデューティ比を算定し、その算定値を通知信号NTFでスイッチング変換部30Sに指示する。これ以降、PWM制御部30Cは温度センサー35を通して加熱ローラー31の温度と目標温度Ttgとの間の差を監視し、その差に応じてデューティ比を更新し、更新後のデューティ比を通知信号NTFでスイッチング変換部30Sに指示する。その後、処理はステップS102へ進む。
ステップS103では、加熱ローラー31の温度が目標温度Ttgに到達しているのでPWM制御部30Cは昇温制御を温調制御に変更する。この際、PWM制御部30Cはプリンター100の動作モードを確認し、その動作モードに応じて加熱ローラー31の目標温度とハロゲンヒーター331、332に対する制御パターンとを選択する。たとえば、稼働モードではプリントが開始されるので、加熱ローラー31と加圧ローラー32との間のニップにシートSH2が通紙される度に加熱ローラー31からシートSH2に多量の熱が奪われる。したがって、その奪われた熱量を加熱ローラー31に補填することが可能な程度に発熱量の多い制御パターン、たとえば、第3制御パターンTY3、第4制御パターンTY4、または第5制御パターンTY5が選択される。一方、待機モードでは加熱ローラー31から熱が逃げにくいので、補填すべき熱量が比較的少ない。したがって、発熱量が比較的少ない制御パターン、たとえば第5制御パターンTY5または第6制御パターンTY6が選択される。温調制御では昇温制御と同様に、PWM制御部30Cは温度センサー35を通して加熱ローラー31の温度と目標温度Ttgとの間の差を監視し、その差に応じてデューティ比を更新し、更新後のデューティ比を通知信号NTFでスイッチング変換部30Sに指示する。その後、処理はステップS104へ進む。
ステップS105では、定着部30の停止を主制御部60から指示されているので、PWM制御部30Cはスイッチ部385にすべてのスイッチS1、…、S4をオフさせてハロゲンヒーター331、332を消灯させる。その後、処理は終了する。
図10は、図9が示すステップS103による温調制御のうち、待機モードにおける制御のフローチャートである。
ステップS201では、プリンター100が待機モードであるか否かをPWM制御部30Cが確認する。待機モードであれば処理はステップS202へ進み、他のモードであれば処理は図9の示すメインルーチンへ戻る。
ステップS203では、変更後のデューティ比が許容下限30%を下回ったか否かをPWM制御部30Cが確認する。下回っていれば処理はステップS204へ進み、以上であれば処理はステップS201を繰り返す。
ステップS205では、変更後のデューティ比が許容下限30%を下回った状態の持続時間が閾値以上に達しているので、プリンター100が待機モードであるか否かをPWM制御部30Cは確認する。待機モードであれば処理はステップS206へ進み、他のモードであれば処理は図9の示すメインルーチンへ戻る。
ステップS208では、変更後のデューティ比が許容上限70%を超えているので、その状態の持続時間が閾値10秒以上に達したか否かをPWM制御部30Cは確認する。閾値以上に達していれば処理はステップS201を繰り返し、未満であれば処理はステップS205を繰り返す。
ステップS208に続くステップS202では、プリンター100が待機モードであるので温調制御が継続される。しかし、第6制御パターンTY6ではデューティ比が許容上限を超えるので、PWM制御部30Cは第6制御パターンTY6を、より発熱量の多い第5制御パターンTY5に切り換える。すなわち、第2ハロゲンヒーター332に代えて第1ハロゲンヒーター331のみをPWM制御により点滅させ、第2ハロゲンヒーター332は消灯させる。その後、処理はステップS203へ進む。
図11は、各ハロゲンヒーター331、332に対するPWM制御のフローチャートである。この制御は、PWM制御部30Cが第1制御パターンTY1以外の制御パターンを選択した場合に開始され、他の制御パターンに切り換えられるまで繰り返される。
ステップS301では、温度センサー35が内蔵のサーモパイルの出力から加熱ローラー31の温度を計測し、その計測値をPWM制御部30Cにフィードバックする。その後、処理はステップS302へ進む。
ステップS303では、ステップS302での算定値をPWM制御部30Cは通知信号NTFでスイッチング変換部30SのIGBT駆動回路384へ通知する。この通知信号NTFに応じてIGBT駆動回路384は、その通知信号NTFからデューティ比を解読し、その比でパルス信号VPをスイッチング素子SWのゲートに対して印加する。その後、処理は図9の示すメインルーチンへ戻る。
本発明の実施形態によるプリンター100では、上記のとおり、定着部30が定格電力の異なる2本のハロゲンヒーター331、332を用いて加熱ローラー31の温度を制御する。特に、待機モードにおける温調制御では、PWM制御部30Cはまず第5制御パターンTY5を選択し、定格電力の高い第1ハロゲンヒーター331のみをPWM制御により点滅させ、定格電力の低い第2ハロゲンヒーター332は消灯させる。このとき、パルス電圧のデューティ比の許容下限30%は、第1ハロゲンヒーター331の発熱量がハロゲンサイクルを維持可能であるという条件を満たすように実験またはシミュレーションで決定され、PWM制御部30Cの内蔵するメモリ素子に保存されている。加熱ローラー31の温度と目標温度Twtとの間の差が縮まるにつれて、PWM制御部30Cが算出するデューティ比は低下する。デューティ比が許容下限30%を下回った場合、PWM制御部30Cはパルス電圧の印加対象を第1ハロゲンヒーター331から第2ハロゲンヒーター332へ切り換える。第2ハロゲンヒーター332は第1ハロゲンヒーター331よりも定格電力が低いので、必要な発熱量が共通であっても、それに対応するパルス電圧のデューティ比が高い。したがって、デューティ比を許容下限以上に維持したまま、PWM制御を連続させることができる。こうして、プリンター100は、ハロゲンヒーター331、332にハロゲンサイクルを維持させたまま、外部の電源系統に過大なノイズを与えることなくPWM制御を連続させて、加熱ローラー31に与える熱量を更に少ない値に安定化させることができる。
(A)上記の実施形態による画像形成装置100はカラーレーザープリンターである。本発明の実施形態による画像形成装置はその他に、モノクロレーザープリンター、ファクシミリ、コピー機、複合機(MFP)等、シート上のトナー像を熱定着させるもののいずれであってもよい。
(C)図7の(a)では、デューティ比の許容上限と許容下限とがいずれも、2本のハロゲンヒーター331、332の間で共通である。これは、スイッチ部385の構造の単純化等、温度制御の簡単化を目的とする設定に過ぎない。実際には、ハロゲンヒーターの発熱量がハロゲンサイクルを維持可能であるという条件、すなわち、ヒーターからの熱がその管壁温度を下限250℃以上に維持可能であるという条件を満たすデューティ比は、ガラス管の熱容量等、ハロゲンヒーターの熱的特性に応じて異なる。同様に、降圧チョッパ383が電流不連続モードで動作可能であるという条件を満たすデューティ比は、抵抗等、ハロゲンヒーターの電気的特性に応じて異なる。したがって、たとえば、異なるハロゲンヒーターに対するPWM制御が異なる降圧チョッパで実行されることにより、デューティ比の許容上限または許容下限がハロゲンヒーターごとに異なる値であってもよい。
10 給送部
20 作像部
30 定着部
40 排紙部
31 加熱ローラー
32 加圧ローラー
331 第1ハロゲンヒーター
332 第2ハロゲンヒーター
35 温度センサー
30S スイッチング変換部
381 整流部
382 ノイズフィルター
383 降圧チョッパ
SW スイッチング素子
384 IGBT駆動回路
VP パルス信号
385 スイッチ部
S1、S2、S3、S4 2連スイッチ
30C PWM制御部
SSW 開閉信号
NTF 通知信号
Claims (7)
- シートにトナー像を形成する作像部と、
前記シートに前記トナー像を熱定着させる定着部と、
を備えた画像形成装置であって、
前記定着部は、
前記シートに接触して熱を伝える伝熱部材と、
前記伝熱部材を加熱する第1ハロゲンヒーターと、
前記第1ハロゲンヒーターよりも定格電力が低く、前記伝熱部材を加熱する第2ハロゲンヒーターと、
前記伝熱部材の実温度を監視し、当該実温度と目標温度との間の差に応じて、前記第1ハロゲンヒーターと前記第2ハロゲンヒーターとの一方または両方をパルス電圧の印加対象として選択し、当該差の経時変化に合わせてパルス電圧のデューティ比を経時的に変更するパルス幅変調(PWM)制御部と、
前記PWM制御部が選択したパルス電圧の印加対象にパルス電圧を、前記PWM制御部が変更したデューティ比で印加するスイッチング変換部と、
を有し、
前記PWM制御部は、前記第1ハロゲンヒーターをパルス電圧の印加対象として選択している場合において、
前記第1ハロゲンヒーターの発熱量がハロゲンサイクルを維持可能であるという条件を満たすパルス電圧のデューティ比の下限を、変更後のデューティ比が下回るか否かを確認し、
変更後のデューティ比が前記下限を下回れば、パルス電圧の印加対象を前記第1ハロゲンヒーターから前記第2ハロゲンヒーターへ切り換え、
さらに、前記PWM制御部は、前記第1ハロゲンヒーターをパルス電圧の印加対象として選択している場合において、
前記スイッチング変換部が電流不連続モードで動作可能であるという条件を満たすパルス電圧のデューティ比の第1上限を、変更後のデューティ比が超えるか否かを確認し、
変更後のデューティ比が前記第1上限を超えれば、前記第2ハロゲンヒーターをパルス電圧の印加対象に追加する
ことを特徴とする画像形成装置。 - 前記PWM制御部は、変更後のデューティ比が前記第1上限を超えるか否かの確認を、前記作像部と前記定着部とのウォームアップ期間、リカバリー期間、またはプリント期間の少なくともいずれかの期間中に行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
- シートにトナー像を形成する作像部と、
前記シートに前記トナー像を熱定着させる定着部と、
を備えた画像形成装置であって、
前記定着部は、
前記シートに接触して熱を伝える伝熱部材と、
前記伝熱部材を加熱する第1ハロゲンヒーターと、
前記第1ハロゲンヒーターよりも定格電力が低く、前記伝熱部材を加熱する第2ハロゲンヒーターと、
前記伝熱部材の実温度を監視し、当該実温度と目標温度との間の差に応じて、前記第1ハロゲンヒーターと前記第2ハロゲンヒーターとの一方または両方をパルス電圧の印加対象として選択し、当該差の経時変化に合わせてパルス電圧のデューティ比を経時的に変更するパルス幅変調(PWM)制御部と、
前記PWM制御部が選択したパルス電圧の印加対象にパルス電圧を、前記PWM制御部が変更したデューティ比で印加するスイッチング変換部と、
を有し、
前記PWM制御部は、前記第1ハロゲンヒーターをパルス電圧の印加対象として選択している場合において、
前記第1ハロゲンヒーターの発熱量がハロゲンサイクルを維持可能であるという条件を満たすパルス電圧のデューティ比の下限を、変更後のデューティ比が下回るか否かを確認し、
変更後のデューティ比が前記下限を下回れば、パルス電圧の印加対象を前記第1ハロゲンヒーターから前記第2ハロゲンヒーターへ切り換え、
さらに、前記PWM制御部は、前記第2ハロゲンヒーターをパルス電圧の印加対象として選択している場合において、
前記スイッチング変換部が電流不連続モードで動作可能であるという条件を満たすパルス電圧のデューティ比の第2上限を、変更後のデューティ比が超えるか否かを確認し、
変更後のデューティ比が前記第2上限を超えれば、パルス電圧の印加対象を前記第2ハロゲンヒーターから前記第1ハロゲンヒーターへ切り換える
ことを特徴とする画像形成装置。 - 前記PWM制御部は、変更後のデューティ比が前記第2上限を超えるか否かの確認を、前記作像部と前記定着部とのウォームアップ期間、リカバリー期間、またはプリント期間の少なくともいずれかの期間中に行うことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
- 前記PWM制御部は、変更後のデューティ比が前記下限を下回るか否かの確認を、前記作像部と前記定着部との待機期間中に行うことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の画像形成装置。
- 前記スイッチング変換部は、
前記PWM制御部が変更したデューティ比でパルス信号を生成する駆動回路と、
前記パルス信号に応じてオンオフするスイッチング素子を含み、前記PWM制御部が変更したデューティ比でパルス電圧を出力する降圧チョッパと、
前記降圧チョッパからのパルス電圧の出力先を、前記PWM制御部が選択したパルス電圧の印加対象へ切り換えるスイッチ部と、
を有し、
前記PWM制御部は、前記降圧チョッパのスイッチング素子をオフさせている間に、前記スイッチ部に前記降圧チョッパからのパルス電圧の出力先を切り換えさせる
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の画像形成装置。 - 前記スイッチ部は、
前記PWM制御部からの信号に応じて前記降圧チョッパと前記第1ハロゲンヒーターとの間の接点を開閉し、かつ前記降圧チョッパと前記第2ハロゲンヒーターとの間の接点を開閉する電磁リレー
を含む請求項6に記載の画像形成装置。
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