JP6692526B2 - ルツボ検査装置、ルツボ検査方法、シリカガラスルツボの製造方法、シリコンインゴットの製造方法、ホモエピタキシャルウェーハの製造方法 - Google Patents

ルツボ検査装置、ルツボ検査方法、シリカガラスルツボの製造方法、シリコンインゴットの製造方法、ホモエピタキシャルウェーハの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ルツボ検査装置、ルツボ検査方法、シリカガラスルツボの製造方法、シリコンインゴットの製造方法に関し、特にルツボの割れやすさを検査するルツボ検査装置、ルツボ検査方法、シリカガラスルツボの製造方法、シリコンインゴットの製造方法、ホモエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
<シリコン単結晶の製造>
シリコン単結晶(シリコンインゴット)の製造は、シリカガラスルツボを用いたチョクラルスキー法(CZ法:Czochralski)により行われる。CZ法では、まず、シリカガラスルツボの内部に多結晶シリコンを充填する。続いて、シリカガラスルツボの周囲に配置されたカーボンヒーターなどの加熱により、多結晶シリコンをシリコン融液に熔融する。そして、熔融したシリコン融液にシリコン単結晶の種結晶を接触させ、回転させながら徐々に引き上げる。これにより、シリコン単結晶の種結晶を核として成長させ、シリコン単結晶を製造する。シリコン単結晶の引き上げは1450〜1500℃ほどの状態で行われる。これは、シリカガラスルツボの軟化点である1200〜1300℃を超える温度である。
<シリカガラスルツボ>
上記シリコン単結晶を製造する際に用いられるシリカガラスルツボは、円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、側壁部と底部とを連結し且つ底部よりも曲率が高いコーナー部と、を備えた形状であり、シリカガラスルツボの側壁部の上端面は、円環状の平坦な面として形成されている。また、シリカガラスルツボは、例えば、当該シリカガラスルツボの内面から外面に向かって、目視や画像データなどに基づいて気泡が観察できない透明層と気泡が観察される気泡含有層とを備えるなど、複数の層を備えて構成されている。シリカガラスルツボは、直径が28インチ(約71cm)、32インチ(約81cm)、36インチ(約91cm)、40インチ(約101cm)など様々な大きさで製造されている。
上記のように、シリコン単結晶の引き上げは、シリカガラスの軟化点を超える温度で行われる。そのため、シリコン単結晶の引き上げを行うとシリカガラスルツボは変形してしまうことになる。従って、一般に、シリカガラスルツボは、シリコン単結晶の引き上げごとに用いられる。つまり、シリカガラスルツボは、シリコン単結晶の引き上げごとに別途用意することが必要となる。
<シリカガラスルツボの製造方法>
上記のようなシリカガラスルツボは、例えば、回転モールド法を用いて製造する。つまり、シリカガラスルツボは、回転している(カーボン製の)モールドの内表面にシリカ粉を堆積させてシリカ粉層を形成し、当該堆積させたシリカ粉層を減圧しながらアーク熔融することで製造する。アーク熔融を行う際に、アーク熔融の初期段階でシリカ粉を強く減圧し、その後、減圧を弱くすることで、透明層と気泡含有層とを有するシリカガラスルツボを製造することが出来る。
<先行文献>
シリカガラスルツボは、上記のように回転モールド法により製造する。このような製造方法のため、シリカガラスルツボは設計図通りに製造することが出来ない。従って、製造されたシリカガラスルツボの形状や内表面の特性などは設計図からずれているおそれがある。また、上記のようにシリカガラスルツボはシリコン単結晶の引き上げ毎に別途用意することが必要となるが、製造されたシリカガラスルツボに欠陥が存在すると、シリコン単結晶引き上げの際に単結晶率の悪化を引き起こす原因となるおそれがある。このように、シリカガラスルツボを設計図通りに製造することは出来ず、また、製造されたシリカガラスルツボには単結晶率の悪化を引き起こす原因となる欠陥が存在するおそれがある。そこで、製造されたシリカガラスルツボを検査することが行われている。
シリカガラスルツボを検査するための技術として、例えば、特許文献1がある。特許文献1には、シリカガラスルツボの内表面上の測定点において赤外吸収スペクトルとラマンスペクトルの少なくとも一方を測定し、得られたスペクトルに基づいてブラウンリングなどの異常サイトが発生するかどうかを判断する工程を備えるシリカガラスルツボの検査方法が記載されている。特許文献1によると、上記のような構成により、異常サイトが発生しやすいシリカガラスルツボを出荷前に把握することが可能となる。
また、同様にシリカガラスルツボを検査するための技術として、例えば、特許文献2がある。特許文献2には、内部測距部によりシリカガラスルツボの内表面の三次元形状を測定する工程と、(1)異物の三次元形状測定工程と(2)歪みの三次元分布測定工程とのいずれかの工程と、を有するシリカガラスルツボの評価方法が記載されている。具体的には、(1)異物の三次元形状測定工程では、複数の測定点において画像を取得し、得られた画像中に異物が存在していると判断した場合、画像を取得した位置においてシリカガラスルツボの厚さ方向の焦点位置を変化させて複数枚の画像を取得する。これにより、異物の三次元位置を特定する。また、(2)歪みの三次元分布測定工程では、内表面三次元形状上の複数の測定点において歪み画像を取得することで、歪みの三次元分布を測定する。特許文献2によると、上記構成を有することで、ルツボの内表面又は内部に存在する異物の三次元位置を特定することができるか又はルツボの歪みの三次元分布を決定することが出来るシリカガラスルツボの評価方法を提供することが出来る。
また、同様にシリカガラスルツボを検査するための技術として、例えば、特許文献3がある。特許文献3には、波長365nmの紫外光をシリカガラスルツボの側面に照射し、シリカガラスルツボ壁面に発生する420nm乃至600nmの範囲内の波長の蛍光斑点の個数を計測するシリカガラスルツボの検査方法が記載されている。特許文献4によると、上記構成により、シリカガラスルツボ中に局在する不純物を容易に検出することが出来る。
特許文献4には、ガラス基板の生産効率を高めつつ、ガラス基板の破損を低減することができるガラス基板の製造方法が開示される。このガラス基板の製造方法は、ダウンドロー法により成形されたガラス基板の熱処理工程を含む。熱処理工程では、ガラス基板の上端部を把持部材で把持することでガラス基板を吊り下げ、ガラス基板を搬送方向に沿って搬送しながら、ガラス基板を熱処理する。熱処理工程では、ガラス基板は、搬送方向に沿って突出するように湾曲している主表面を有する。
特許文献5には、磁気記録媒体用ガラス基板の主表面において、短波長の表面うねり及び中波長の表面うねりを十分に小さくできる磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法が開示される。この製造方法は、測定波長2.5〜80μmにおける表面粗さRaが0.40〜1.40μmであり、かつ、測定波長2.5〜800μmにおける表面粗さRaが0.40〜2.00μmである、研磨面を有する軟質研磨パッドを用いてガラス基板の主表面を研磨する研磨工程を含んでいる。
特許文献6には、鉄筋コンクリート構造物の鉄筋腐食量をアコースティックエミッションを利用して定量的に評価する方法が開示される。この方法は、鉄筋コンクリート構造物に圧電素子センサーを設置し、コンクリート構造物が受ける外部負荷に伴い発生するアコースティックエミッションを検出する。そして、アコースティックエミッションを処理して得られるピーク周波数fが、任意の周波数f1、f2、f3、f4(f1<f2≦f3<f4)に対して、f1≦f<f2を満たすヒット数Hlowと、f3≦f<f4を満たすヒット数Hhighとの比で評価を行っている。
特許文献7には、配管等の被検査体のセンサ設置箇所のみ保温材を除去して欠陥部位の位置情報を明確化し得るアコースティックエミッション法を用いた欠陥部位検出装置が開示される。この装置は、時間周波数解析部と、解析波形記憶部と、演算部とを有する波形解析装置を備える。時間周波数解析部は、センサで検出した音の原波形から時間周波数解析を用いて抽出できる最高周波数成分をある周波数帯域で抽出した後、それより低い周波数帯域で周波数成分を抽出する操作を順次行うことにより波形分離する。解析波形記憶部は、波形分離した各周波数帯域の成分の波形を記憶する。演算部は、記憶された各周波数帯域の波形の伝播時間を読み取り、その差と各周波数帯域における伝播速度とに基づき音源となる欠陥部位とセンサとの間の距離を算出する。
特許文献8には、荷重の大小や回転機の回転態様の如何にかかわらず、どのような軸受の診断も行なうことができるAEを用いた回転機軸受診断装置が開示される。この装置において、AEセンサの検出信号は増幅、検波され、実効値回路で実効値が算出され、コンパレータからエレベータ巻上機の定速期間を定めるゲート信号がゲート回路へ出力される。制御部は、ゲート信号期間中の定められた期間において、実効値回路で算出された実効値に基づいてしきい値を算出し、これをD/A変換器を介してコンパレータヘ出力する。コンパレータはゲート回路を通過した信号のうちしきい値以上の信号があるとき信号を出力し、この信号により波形整形回路からパルスが出力される。このパルスの数により軸受の可否が診断される。
特許文献9には、板ガラスの高速切断が可能で、かつ、板ガラスの品質の精度低下を防止することができる板ガラスの切断方法及び装置が開示される。この方法は、板ガラスの切線を加工中に、カッタホイールの押付力を圧電素子等の検出部で検出することにより、カッタホイールの押付力をタイムラグなしに検出する。また、リニアモータ等の加圧手段の作動で板ガラスの凹凸に追従するようにカッタホイールの上下移動を制御するので、コントロール部からの制御信号に対して高速応答するようにカッタホイールを上下移動する。
特許文献10には、複合容器の検査方法及び検査システムが開示される。この複合容器の検査方法は、容器を形成するライナー、及びライナーに繊維を巻き付けることで形成される強化層を備える複合容器の検査方法である。この検査方法は、複合容器に取り付けられたアコースティックエミッションセンサからアコースティックエミッション信号を取得する信号取得工程と、信号取得工程によって取得されたアコースティックエミッション信号に基づいて、ライナーの疲労破壊の兆候を示す第1の条件を満たすか否かを判定する第1の判定工程と、を備える。第1の条件は、アコースティックエミッションのエネルギーに基づいて定められる条件である。
ここで、超音波探傷による傷の検査方法がある。超音波探傷では、超音波を対象物に伝搬させて戻ってくる超音波から対象物の傷を見つけている。しかし、クラックが成長するかどうかは判断できない。このため、超音波探傷をシリカガラスルツボに適用しても、シリカガラスルツボの割れを伴うような成長するクラックを見つけ出すことはできず、シリカガラスルツボの検査には不向きである。
特開2013−139353号公報 特開2014−91640号公報 特開平8−283092号公報 特開2016−169136号公報 特開2014−154187号公報 特開2011−133448号公報 特開2003−232782号公報 特開平09−210859号公報 特開平08−225333号公報 国際公開第2014/057987号 特表2014−528643号公報 特開2008−219002号公報
<クラックの問題>
シリカガラスルツボにおいて、成長するクラックを有するシリカガラスルツボに応力が加わると、そのクラックが成長して最終的にシリカガラスルツボが割れてしまう。特に、シリコン単結晶の引き上げを行う場合にはシリカガラスルツボの内部に約400kgもの多結晶シリコンを充填することから、シリカガラスルツボには内側から多結晶シリコンによって押される力が働く。シリコン単結晶の引き上げの工程などにおいて、シリカガラスルツボにひびや割れが生じてルツボ内のシリコン融液が漏れ出してしまうことがある。このようなガラスの破壊は、割れの起点となるクラックが存在することによって起こることが知られている。
シリコン単結晶の引き上げ中にクラックが成長してシリカガラスルツボにひびや割れが発生すると、溶融した多結晶シリコンの漏れを引き起こす原因となる。
上記のような割れの起点となるクラックは、シリカガラスルツボに多結晶シリコンを充填する段階で形成される場合があるが、シリカガラスルツボの製造過程で形成されてしまう場合もある。そのため、上記のようなシリカガラスルツボが割れてしまう事態を防ぐためには、シリカガラスルツボが製造された段階で、当該製造されたシリカガラスルツボを検査して、シリカガラスルツボに形成されているクラックの有無などを検査しておくことが必要となる。
特に、シリカガラスルツボの割れに繋がるようなクラック(マイクロクラックを含む)を、シリコン単結晶の引き上げを行う前(使用前)の段階で的確に見つけ出すことは、非常に重要である。
しかしながら、上記特許文献1乃至3に記載されている技術では、特に目視や画像データからは確認できない微小なクラックの存在を検査することは出来なかった。その結果、シリコン単結晶引き上げを行うシリカガラスルツボにマイクロクラックが存在しており、当該マイクロクラックがシリカガラスルツボの破損の原因となるおそれがあった。
ここで、シリカガラスルツボの表面にある大きなクラックは目視、画像検査では見つけることができるが、マイクロクラックやルツボ壁の内部に存在しているクラックは目視・画像検査で見つけることはできない。このように、割れの起点となるおそれのあるクラックの存在を十分に検査することが出来ない、という問題が生じていた。
また、特許文献4に記載されている技術では、熱処理前の平面状のガラス基板が所定の強度を有しているか、AE法により検査しているだけであり、ルツボ特有の形状や気泡層に関しては考慮されていない。また、特許文献5に記載されている技術では、製造した磁気記録媒体用ガラス基板(平面)が所定の品質かどうかを検査のために、AEセンサを利用しているに過ぎない。
また、特許文献6に記載されている技術では、単純な直方体の鉄筋コンクリート構造物の中の鉄筋腐食量を、AEを利用して検査しているだけであり、ルツボ特有の形状や気泡層に関しては考慮されていない。また、特許文献7に記載されている技術では、配管等の検査にAEを利用しているだけである。
また、特許文献8に記載されている技術では、エレベータの軸受けの検査にAEを利用しているだけである。また、特許文献9に記載されている技術では、板ガラスの凹凸の検出にAEセンサを利用しているだけである。また、特許文献10に記載されている技術では、鋼製容器の疲労破壊の検査にAEセンサを利用しているだけである。
このように、特許文献4〜10に記載されている技術では、ルツボ特有の形状や気泡層に関しては考慮されていないため、ルツボを対象としたセンサ位置や外圧の加え方を変えるなど、AE発生位置を考慮に入れてルツボの割れやすさを評価することはできない。
そこで、本発明の目的は、割れの起点となるおそれのあるクラックの存在を検査することが出来ない、という問題を解決することが出来るルツボ検査装置、ルツボ検査方法、シリカガラスルツボ、シリカガラスルツボの製造方法、シリコンインゴットの製造方法、ホモエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することにある。
シリカガラスルツボの割れの起点となるおそれのあるマイクロクラックを検査するという目的のため、本発明の一形態であるルツボ検査装置は、
円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記側壁部と前記底部との間に設けられ前記底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナー部と、を備えるシリカガラスルツボの割れやすさを検査するシリカガラスルツボ検査装置であって、
シリカガラスルツボの表面に設置され、当該シリカガラスルツボに所定の外力を加えた際に生じるAE(Acoustic Emission)波を検出するAE波検出手段を有する
という構成を採る。
ここで、従来のAEを利用した検査対象物は、常温で使用するものであるが、本発明の検査対象物シリコン単結晶引き上げ時の高温(シリコン融液が1400℃以上、シリカガラスルツボの温度は1600℃)と長時間(100時間以上)にも耐えられるシリカガラスルツボである。
このシリカガラスルツボは、引き上げ装置におけるカーボンサセプタ内に嵌合した状態で使用される。したがって、1600℃であってもシリカガラスルツボの外側にあるカーボンサセプタによって外側には倒れず、ルツボとして使用可能である。一方、石英ガラス単体では1200℃程度で変形してしまう。つまり、シリカガラスルツボは一般的な石英ガラスとは使用環境が全く異なり、常温で使用する対象物とは比較できないくらい微小なマイクロクラックを検出する必要がある。
高温長時間の使用状況によっては、シリカガラスルツボ内で曲部的に応力が集中することもあり、それに耐えるためにも微小なマイクロクラックを検出する必要がある。
また、従来のAE波を利用した検査対象物は、ブロック、配管など単純な形状で単一材料で構成されているが、シリカガラスルツボは側壁部、コーナー部、底部を有し、曲面で構成され、また透明層と気泡層の層構造にもなっている。このため、従来の手法をそのまま適用することはできない。
また、AE波を利用してマイクロクラックを検査することで、シリカガラスルツボからサンプル片を切り出したりせずに、非破壊で実際に高温長時間のシリコン単結晶引き上げに使用するシリカガラスルツボを検査し選別することができる。それにより、シリコン単結晶引き上げ時に割れたり、孔が開いたりするなどして、高温のシリコン融液がシリコン単結晶引き上げ炉(CZ炉)内に漏れ出すなどのトラブルを防止できる。
また、本発明の他の形態であるルツボ検査方法は、
AE波を検査するAE波検査手段をシリカガラスルツボの表面に設置し、
シリカガラスルツボに所定の外力を加え、
シリカガラスルツボに前記所定の外力を加えた際に生じるAE(Acoustic Emission)波を検出する、
という構成を採る。
また、本発明の他の形態であるシリカガラスルツボは、
外力を加えられた際にAE波を生じる欠陥の数が予め定められた閾値以下である
という構成を採る。
また、本発明の他の形態であるシリカガラスルツボの製造方法は、
AE波を検査するAE波検査手段をシリカガラスルツボの表面に設置し、シリカガラスルツボに所定の外力を加え、シリカガラスルツボに前記所定の外力を加えた際に生じるAE(Acoustic Emission)波を検出する工程を有する
という構成を採る。
また、本発明の他の形態であるシリコンインゴットの製造方法は、
上述したシリカガラスルツボの製造方法により製造されたシリカガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行う工程を有する
という構成を採る。
また、本発明の他の形態であるホモエピタキシャルウェーハは、上記方法によって製造したシリコンインゴットを切り出して形成されたウェーハによる基板部を形成する工程と、基板部の上にシリコン単結晶のホモエピタキシャル層を形成する工程と、を備える。
本発明は、以上のように構成されることにより、割れの起点となるおそれのあるクラックの存在を検査することが出来ない、という問題を解決することが出来る。これにより、目視・画像検査では見えないマイクロクラックやルツボ壁の内部に存在しているマイクロクラックであっても、AE波を利用して検査することで、これらのシリカガラスルツボ内表面と壁部内部のマイクロクラックを見つけることができる。
本発明の第1の実施形態において検査の対象となるシリカガラスルツボの構成の一例を示す図である。 本発明の第1の実施形態におけるルツボ検査装置の構成の一例を示す図である。 図2で示すAEセンサの構成の一例を示す図である。 図2で示すAEセンサをシリカガラスルツボに設置した際の様子の一例を示す図である。 図2で示すAE波解析装置の構成の一例を示す図である。 図5で示すAE波強さ測定部による測定の一例を説明するための図である。 図5で示すAE波発生回数計測部によるAE波の計測の一例を説明するための図である。 図5で示すAE波発生位置算出部による発生位置の算出の一例を説明するための図である。 第1の実施形態におけるルツボ検査装置の動作の一例を示すフローチャートである。 (a)〜(c)は、本実施形態に係るシリカガラスルツボを用いたシリコン単結晶の製造方法を説明する模式図である。 シリコン単結晶のインゴットを例示する模式図である。 (a)〜(c)は引き上げ制御を説明する模式図である。 ルツボの内径の変動量を示す図である。 ボロンコフ理論に基づいて各種の欠陥が発生する状況を説明する模式図である。 単結晶育成時の引き上げ速度と欠陥分布との関係を示す模式図である。 エピタキシャルウェーハを例示する模式断面図である。 ルツボ製造からウェーハ製造までの工程を例示するフローチャートである。 AE波発生数と最大エネルギー値との関係を示す図である。
[実施形態1]
本発明の第1の実施形態におけるルツボ検査装置2、ルツボ検査方法、シリカガラスルツボ1、シリカガラスルツボの製造方法、シリコンインゴットの製造方法を、図1乃至図9を参照して説明する。図1は、シリカガラスルツボ1の構成の一例を示す図である。図2は、ルツボ検査装置2の構成の一例を示す図である。図3は、AEセンサ21の構成の一例を示す図である。図4は、AEセンサ21をシリカガラスルツボ1に設置した際の様子の一例を示す図である。図5は、AE波解析装置23の構成の一例を示す図である。図6は、AE波強さ測定部231による測定の一例を説明するための図である。図7は、AE波発生回数計測部232によるAE波の計測の一例を説明するための図である。図8は、AE波発生位置算出部233によるAE波の発生位置の算出の一例を説明するための図である。図9は、ルツボ検査装置2の動作の一例を示すフローチャートである。
本発明の第1の実施形態では、シリカガラスルツボ1の割れやすさを検査・評価するルツボ検査装置2について説明する。後述するように、本実施形態におけるルツボ検査装置2は、AE(Acoustic Emission)センサ21を有しており、シリカガラスルツボ1に所定の外力を加えた際に生じるAE波を検出する。このように構成することで、ルツボ検査装置2は、AEセンサ21によるAE波の検出結果に基づいて、シリカガラスルツボ1の割れやすさを検査・評価する。
<1.シリカガラスルツボ1>
図1で示すように、本実施形態におけるルツボ検査装置2による検査・評価の対象となるシリカガラスルツボ1は、円筒状の側壁部11と、湾曲した底部12と、側壁部11と底部12とを連結し且つ底部12よりも曲率が高いコーナー部13と、を備えた形状を有している。また、シリカガラスルツボ1の側壁部11の上端面は、円環状の平坦な面として形成されている。
シリカガラスルツボ1は、当該シリカガラスルツボ1の内面から外面に向かって、目視や画像データなどに基づいて気泡が観察されない透明層111と気泡が観察される気泡含有層112とを備えている。シリカガラスルツボ1は、直径が28インチ(約71cm)、32インチ(約81cm)、36インチ(約91cm)、40インチ(約101cm)など様々な大きさを有している。
このようなシリカガラスルツボ1は、例えば、回転モールド法を用いて製造される。つまり、シリカガラスルツボ1は、回転している(カーボン製の)モールドの内表面にシリカ粉を堆積させてシリカ粉層を形成し、当該堆積させたシリカ粉層を減圧しながらアーク熔融することで製造する。アーク熔融を行う際に、アーク熔融の初期段階でシリカ粉を強く減圧し、その後、減圧を弱くすることで、内表面側に透明層111を有し外表面側に気泡含有層112を有するシリカガラスルツボ1を製造することが出来る。なお、シリカガラスルツボ1は例えば上記のような方法で製造されるため、シリカガラスルツボ1の外面層には未溶融のシリカ粉が付着した状態である。つまり、シリカガラスルツボ1の外面層は、ざらざらとした粗さを有している。
シリカガラスルツボ1の製造に用いられるシリカ粉には、天然石英を粉砕して製造される天然シリカ粉と化学合成によって製造される合成シリカ粉とがある。天然シリカ粉は不純物を含んでいるが、合成シリカ粉は高純度である。一方で、合成シリカ粉を熔融して得られる合成シリカガラスは、天然シリカ粉を熔融して得られるシリカガラスよりも高温における粘度が低くなる。このように、天然シリカ粉と合成シリカ粉とはその性質において複数の差異を有している。シリカガラスルツボ1を製造する際には、天然シリカ粉と合成シリカ粉とを使い分けることが出来る。
<2.ルツボ検査装置2>
図2で示すように、本実施形態におけるルツボ検査装置2は、AEセンサ21(AE波検出手段)と、増幅器22と、AE波解析装置23と、を有している。AEセンサ21と増幅器22とは、電気信号を送信可能なよう接続されている。また、増幅器22とAE波解析装置23とも電気信号を送信可能なよう接続されている。なお、図2では、ルツボ検査装置2の構成の一例として、ルツボ検査装置2が1つのAEセンサ21を有する場合を示している。しかしながら、ルツボ検査装置2が有するAEセンサ21の数は一つに限定されない。ルツボ検査装置2は、2以上の任意の数のAEセンサ21を有していても構わない。
<2−1.AEセンサ21>
AEセンサ21は、シリカガラスルツボ1の表面に設置され、シリカガラスルツボ1に所定の外力を加えた際に生じるAE波を検出する。なお、AEセンサ21は、AE波を検出した際の時間を判別可能なようにAE波を検出するよう構成することが出来る。
図3を参照すると、AEセンサ21は、例えば、圧電素子211と、受信板212と、コネクタ213と、を有している。図3で示すように、受信板212の一方の面に圧電素子211が設けられており、圧電素子211とコネクタ213とは電流を流すことが可能なよう接続されている。また、図4で示すように、受信板212は、他方の面(圧電素子211が設けられている側とは反対側の面)でシリカガラスルツボ1と接することになる。
具体的には、本実施形態におけるAEセンサ21は、シリカガラスルツボ1の内表面に設置される。つまり、AEセンサ21のうちの受信板212は、シリカガラスルツボ1の透明層111と接するようシリカガラスルツボ1の内表面に設置されている。上述したように、シリカガラスルツボ1の外面層は、ざらざらとした粗さを有している。AE波の検出精度を上げるためには設置面に粗さを有していない方が望ましいため、上記のようにAEセンサ21をシリカガラスルツボ1の内表面に設置することで、AEセンサ21をシリカガラスルツボ1の外表面に設置した場合と比較して、より高い精度でAE波を検出することが可能となる。
圧電素子211は、自身に加えられた力を電圧に変換する。具体的には、本実施形態における圧電素子211は、AE波の伝播によるシリカガラスルツボ1の歪みを検出して当該歪みを電圧に変換する。つまり、圧電素子211は、AE波を検出して当該AE波に応じた電気信号(AE信号)を生成する。本実施形態における圧電素子211は例えば圧電セラミックスであり、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)により構成されている。
受信板212は、一方の面に圧電素子211が設けられており、他方の面でシリカガラスルツボ1と接することになる。受信板212は、シリカガラスルツボ1を伝播するAE波により歪む。このように受信板212が歪むことで、シリカガラスルツボ1に生じたAE波が圧電素子211に伝わることになる。受信板212は、例えばセラミックスである。
コネクタ213は、圧電素子211と外部装置である増幅器22とを接続する。上記のように、圧電素子211はコネクタ213と接続されており、圧電素子211により生じたAE信号は、コネクタ213を介して増幅器22へと送信されることになる。
<2−1−1.AEセンサ21の設置個数>
本実施形態においては、上記説明したAEセンサ21を少なくとも3つシリカガラスルツボ1に設置するものとする。後述するように、少なくとも3つのAEセンサ21を用いることで、立体的なシリカガラスルツボ1を平面に展開した際の平面上のAEの発生位置の位置を特定することが可能となる。
また、AEセンサ21は、例えば、側壁部11と底部12とコーナー部13とに、それぞれ、少なくとも3つずつ設置する。このように設置することで、より確実にAEの発生位置を特定することが可能となる。
例えば、円筒状の側壁部11については、円筒の周方向に等間隔となるように複数個のAEセンサ21を配置する。また、シリカガラスルツボ1のうち内部残留応力が蓄積しやすいコーナー部13や、シリコン単結晶の引き上げを行う際の材料(多結晶シリコン)を充填する際に圧力が加わりやすい底部12にAEセンサ21を配置することが好ましい。
特に、シリカガラスルツボ1のうち湾曲したコーナー部13や底部12にマイクロクラックが存在すると、シリコン単結晶引き上げの際にシリカガラスルツボ1が割れやすくなる。そのため、コーナー部13と底部12との接続部分の周辺にAEセンサ21を設置してシリカガラスルツボ1の割れやすさを検査することが望ましい。
<2−2.増幅器22>
増幅器22は、AEセンサ21から受信したAE信号を増幅する。増幅器22が増幅したAE信号はAE波解析装置23へと送信される。なお、本実施形態においては、増幅器22の構成については特に限定しない。
<2−3.AE波解析装置23>
AE波解析装置23は、増幅器22が増幅したAE信号を受信する。そして、AE波解析装置23は、受信したAE信号に基づいて、AE波の強さを測定したり、AE波を検出した回数をカウントしたり、検出結果に基づくシリカガラスルツボ1の割れやすさの評価を行ったりする。
AE波解析装置23は、例えば図示しないフィルタや装置内増幅器、包絡線検波手段などを有している。AE波解析装置23は、増幅器22から受信したAE信号のうち検査に不必要な周波数の信号を、フィルタを用いて除去する。そして、AE波解析装置23は、除去後のAE信号を装置内増幅器で増幅する。その後、AE波解析装置23は、増幅後のAE信号を用いて測定などの処理を行う。また、AE波解析装置23は、包絡線検波手段により増幅後のAE信号の包絡線を抽出する(具体的には、例えば、AE信号の負の部分を半波整流した後、包絡線検波を行う)。AE波解析装置23は、抽出した包絡線を用いて測定などの処理を行うことも出来る。
図5は、AE波解析装置23が有する主な構成の一例である。図5を参照すると、AE波解析装置23は、例えば、AE波強さ測定部231と、AE波発生回数計測部232と、AE波発生位置算出部233(位置特定手段)と、ルツボ評価部234(ルツボ評価手段)と、計測結果記憶部235と、を有している。なお、AE波解析装置23は図示しない中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)と記憶装置とを有しており、記憶装置が記憶するプログラムをCPUが実行することで上記各部を実現する。AE波解析装置23は、上記例示した以外の構成を有していても構わないし、上記例示したうちの一部により構成されていても構わない(例えば、AE波解析装置23は、AE波強さ測定部231とルツボ評価部234とから構成されていても構わない)。
<2−3−1.AE波強さ測定部231>
AE波強さ測定部231は、AEセンサ21が検出したAE波の強さを測定する。例えば、AE波強さ測定部231は、装置内増幅器による増幅後のAE信号波形に基づいて、AE波の強さを測定する。図6は、装置内増幅器による増幅後のAE信号波形の一例である。図6で示すように、例えば、AE波強さ測定部231は、AE信号波形のうちもっとも大きい振幅である最大振幅をAE波の強さとして測定する。なお、最大振幅は、AE波のエネルギーの大きさ(dB)を表している。AEセンサ21とAEの発生位置との間の距離が等しい場合、最大振幅が大きいほどAEの発生源で開放されたエネルギーが大きいことを示している。
なお、AE波強さ測定部231は、最大振幅の代わりにAE平均値をAE波の強さとして測定するよう構成しても構わない。AE平均値は、例えば、包絡線検波により抽出された包絡線波形を平均化することで算出することが出来る。また、AE波強さ測定部231は、AE実効値(effective value, root mean square value, RMS)をAE波の強さとして測定するよう構成しても構わない。
<2−3−2.AE波発生回数計測部232>
AE波発生回数計測部232は、AEセンサ21が検出したAE波の検出回数を計測する。例えば、AE波発生回数計測部232は、包絡線検波により抽出された包絡線波形と予め定められた閾値(ノイズ信号よりも大きな値とする)とに基づいて、AE波の検出回数を計測する。図7は、包絡線検波により抽出された包絡線波形の一例である。図7で示すように、例えば、AE波発生回数計測部232は、包絡線波形のうち閾値を超えた回数をカウントすることによりAE波の検出回数を計測する。例えば、図7の場合、AE波発生回数計測部232は、AE波が2回検出された旨を計測することになる。
なお、AE波発生回数計測部232は、例えば、計測された回数を計測時間で除算した単位時間あたりのAE波発生回数を算出するよう構成しても構わない。
<2−3−3.AE波発生位置算出部233>
AE波発生位置算出部233は、AE波の発生位置を算出する。例えば、AE波発生位置算出部233は、シリカガラスルツボ1に設置した複数のAEセンサ21がAE波を検出した際の検出時間の差に基づいて、AE波の発生位置を算出する。具体的には、AE波発生位置算出部233は、それぞれのAEセンサ21がAE波を検出した際の検出時間の差とシリカガラスルツボ1中の音速Vとに基づいて、AE波の発生位置を算出する。
図8は、AE波発生位置算出部233によるAE波の算出の一例を説明するための図である。図8では、AE波の発生位置の算出方法を説明するための例として1次元におけるAE波の発生位置の算出を行う際の1例を示しており、AEセンサ21−1とAEセンサ21−2とを既知の座標に設置して、未知の座標x上に存在するクラック3より生じたAE波を検出する場合を示している。図8で示すように、例えば、AEセンサ21−1を座標k1に設置し、AEセンサ21−2を座標k2に設置したとする。また、AEセンサ21−1がクラック3より生じたAE波を時間t1に検出し、AEセンサ21−2がクラック3より生じたAE波を時間t2に検出したとする。この場合、AEセンサ21−1による検出時間t1とAEセンサ21−2による検出時間t2との時間差t1−t2は、AEセンサ21−1とクラック3との間の距離であるx−x1とAEセンサ21−1とクラック3との間の距離であるx−x2との差に起因して生じていることになる。従って、AE波発生位置算出部233は、V(t1−t2)=|x−x1|―|x−x2|の式を解くことで、クラック3の位置を割り出すことが出来る。なお、シリカガラスルツボ1中の音波の速度は、縦波が約5700〜5900m/sであり、横波が約3700m/sである。
AE波発生位置算出部233は、上記と同様の理由により、3つのAEセンサ21を用いることで、3つのAEセンサの位置関係と検出時間の差に基づいて、クラック3の2次元位置を算出することが出来る。ここで、2次元位置は、立体的なシリカガラスルツボ1を平面に展開した場合の平面上の座標である。一方、実際のシリカガラスルツボ1は立体的な形状(円筒状の側壁部11、湾曲した底部12、側壁部11と底部12との間に設けられ底部12よりも高い曲率を有するコーナー部13)である。そこで、AE波発生位置算出部233は、算出したクラック3の2次元位置を実際のシリカガラスルツボ1の3次元形状に戻して(逆変換して)、クラック3の3次元位置を算出してもよい。これにより、シリカガラスルツボ1の3次元形状とクラック3の位置とを正確に把握することができる。
<2−3−4.ルツボ評価部234>
ルツボ評価部234は、AE波強さ測定部231やAE波発生回数計測部232、AE波発生位置算出部233による測定、計測、算出結果に基づいて、シリカガラスルツボ1の割れやすさを評価する。
例えば、ルツボ評価部234は、AE波強さ測定部231による測定結果の値と予め記憶されている強さ閾値(任意に調整された値)とを比較する。そして、測定結果の値が強さ閾値を超えている場合、ルツボ評価部234は、シリカガラスルツボ1を割れやすいと評価する。このように、ルツボ評価部234は、例えば、シリカガラスルツボ1に所定の外力を加えた際に生じるAE波の強さに基づいて、シリカガラスルツボ1の割れやすさを評価する。
AE波強さ測定部231による測定の結果が予め設定した閾値以上であった場合、当該シリカガラスルツボ1を用いて実際にシリコン単結晶を引き上げると、途中でシリカガラスルツボ1が割れてしまうおそれが強くなる。
また、例えば、ルツボ評価部234は、AE波発生回数計測部232による計測結果の値と予め記憶されている回数閾値(任意に調整された値)とを比較する。そして、計測結果の値が回数閾値を超えている場合、ルツボ評価部234は、シリカガラスルツボ1を割れやすいと評価する。このように、ルツボ評価部234は、例えば、シリカガラスルツボ1に所定の外力を加えた際に生じるAE波の回数に基づいて、シリカガラスルツボ1の割れやすさを評価する。
AE波発生回数計測部232による計測結果、予め設定した回以上のAE波が計測された場合、当該シリカガラスルツボ1を用いて実際にシリコン単結晶を引き上げると、途中でシリカガラスルツボ1が割れてしまうおそれが強くなる。
また、例えば、ルツボ評価部234は、AE波発生位置算出部233による算出結果に基づいて、シリカガラスルツボ1の割れやすさを評価することが出来る。例えば、シリカガラスルツボ1に生じているクラックの位置によって、シリカガラスルツボ1の割れやすさが変化することが考えられる。そこで、ルツボ評価部234は、AE波発生位置算出部233による算出結果に基づいて、シリカガラスルツボ1の割れやすさを評価する。
例えば、シリカガラスルツボ1の湾曲したコーナー部13や底部12にマイクロクラックが存在する場合、当該シリカガラスルツボ1を用いて実際にシリコン単結晶を引き上げると、途中でシリカガラスルツボ1が割れてしまうおそれが強い。そこで、ルツボ評価部234は、特に湾曲したコーナー部13や底部12、コーナー部13と底部12との接続部分マイクロクラックが存在するか否かに基づいて、シリカガラスルツボ1の割れやすさを評価することが望ましい。
ルツボ評価部234は、上記例示した方法の複数を組み合わせてシリカガラスルツボ1の割れやすさを評価するよう構成することも出来る。例えば、ルツボ評価部234は、AE波強さ測定部231による測定の結果が予め設定した所定の閾値以上であり、かつ、予め設定した所定回以上のAE波が計測された場合に、対象のシリカガラスルツボ1が割れやすいと評価することが出来る。また、ルツボ評価部234は、例えば、AE波の発生位置に応じて、AE波強さ測定部231による測定結果の値と比較する閾値の値を変えても構わない。また、ルツボ評価部234は、シリカガラスルツボ1の場所ごとに許容可能なAE波の数を変更しても構わない。ルツボ評価部234は、上記例示した以外の組み合わせにより、シリカガラスルツボ1の割れやすさを評価しても構わない。
<2−3−5.計測結果記憶部235>
計測結果記憶部235は、半導体メモリやハードディスクなどの記憶装置である。計測結果記憶部235は、AE波強さ測定部231やAE波発生回数計測部232、AE波発生位置算出部233による測定、計測、算出結果を記憶する。また、計測結果記憶部235は、ルツボ評価部234による評価結果を記憶する。計測結果記憶部235には、例えば、シリカガラスルツボ1ごとの測定、計測、算出結果や評価結果が記憶されている。
以上が、ルツボ検査装置2の構成の一例についての説明である。
<3.外力について>
AE波は、シリカガラスルツボ1に外力が加わるか内力変動が生じたことによる、シリカガラスルツボ1中のクラックの発生、成長などにより生じる。そのため、上記ルツボ検査装置2によりAE波を検出するためには、シリカガラスルツボ1に外力を加えるか内力変動を生じさせることが必要になる。
本実施形態においては、エアーか水圧を使用してシリカガラスルツボ1に対して外力を加えることでAE波の発生を誘発する。具体的には、例えば、圧縮された空気をシリカガラスルツボ1に対してぶつけ、当該圧縮された空気をぶつけた際に生じるAE波をルツボ検査装置2により検出する。また、例えば、ルツボ検査装置2は、水圧を利用して生じるAE波を検出する。このようにエアーや水圧を使用することで、シリカガラスルツボ1を破壊することなく非破壊でAE波を誘発し、シリカガラスルツボ1の割れやすさを検査・評価することが出来る。
特に、シリカガラスルツボ1は、円筒状の側壁部11と、湾曲した底部12と、側壁部11と底部12とを連結し且つ底部12よりも曲率が高いコーナー部13と、を備えた器状の形状を有している。このため、シリカガラスルツボ1の内側に水(液体)を充填することができる。水の充填によって、円筒状の側壁部11や湾曲した底部12、所定の曲率を有するコーナー部13のそれぞれの内面に均一に外力(ルツボ内側の中央から外方に向けた力)を与えることができる。
また、充填する水の量によって、ルツボ内面の外力を与えたい位置を容易に選択することができる。例えば、底部12だけに水を充填すれば底部12のみに外力を与えることができ、コーナー部13まで水を充填すれば底部12からコーナー部13まで外力を与えることができる。また、側壁部11の所定の高さまで水を充填すれば、底部12、コーナー部13および側壁部11の水が充填された高さまで外力を与えることができる。
さらに、水の充填を行いながらAE波を検出するようにすると、ルツボ内面の外力を与える位置を連続的に変えながらAE波の検査を行うことができるようになる。
一般に、AE波検出における外力の与え方として水を利用する場合、対象物を水中に沈めるようにしている。しかし、器状のシリカガラスルツボ1を水中に沈めた場合、水からの圧力はシリカガラスルツボ1の内面や外面の全体に加わることになる。
一方、シリカガラスルツボ1の内側に水を溜めるように充填すれば、シリカガラスルツボ1の内面のみに均一な力を与えることができる。これにより、外圧力印加のばらつきを抑制して、精度の高いAE波検出を行うことができる。
また、所望の高さまで水を充填したり、充填しながら検査したりすることで、検査に適した外圧のかけ方を選択することができ、AE波検出の安定性を高めることができる。
このように、シリカガラスルツボ1の特有の形状を利用して内側に水を充填することでAE波検査に必要が外力を与えることで、一般的な対象物とは異なり精度の高いAE波検出を安定して行うことが可能となる。
なお、ルツボ検査装置2の用途は、非破壊でシリカガラスルツボ1を検査する場合に限定されない。ルツボ検査装置2は、例えば、シリカガラスルツボ1に対する破壊検査によって生じるAE波を検出するよう構成しても構わない。
<4.ルツボ検査装置2の動作>
続いて、ルツボ検査装置2を用いたルツボ検査方法の一例について、図9を参照して説明する。なお、本実施形態におけるルツボ検査装置2のAEセンサ21は、シリカガラスルツボ1の表面に設置される。具体的には、AEセンサ21は、例えば、シリカガラスルツボ1の内表面に設置される。そして、シリカガラスルツボ1に対して所定の外力を加えることで、シリカガラスルツボ1にAE波を発生させる。
図9を参照すると、ルツボ検査装置2のAEセンサ21は、シリカガラスルツボ1に所定の外力を加えた際に生じるAE波を検出する(ステップS001)。具体的には、AEセンサ21は、AE波を検出し、AE波に応じてAE信号を生成する。AEセンサ21が生成したAE信号は増幅器22で増幅され、増幅されたAE信号をAE波解析装置23が受信する。
AE波解析装置23は、受信したAE信号に基づいて、シリカガラスルツボ1の割れやすさを評価する(ステップS002)。具体的には、AE波解析装置23のAE波強さ測定部231は、受信したAE信号に基づいてAE波の強さを測定する。また、AE波解析装置23のAE波発生回数計測部232は、受信したAE信号に基づいてAE波の発生回数を計測する。また、AE波解析装置23のAE波発生位置算出部233は、AE波の発生位置を算出する。そして、AE波解析装置23のルツボ評価部234が、AE波強さ測定部231やAE波発生回数計測部232、AE波発生位置算出部233による測定、計測、算出結果に基づいて、シリカガラスルツボ1の割れやすさを評価する。
以上が、ルツボ検査装置2の動作の一例についての説明である。
<5.構成・作用・効果>
このように、本実施形態におけるルツボ検査装置2は、AEセンサ21とAE波解析装置23とを有している。このような構成により、ルツボ検査装置2は、シリカガラスルツボ1に外力を加えた際に生じるAE波を検出することが出来る。その結果、ルツボ検査装置2は、検出結果に基づいて、シリカガラスルツボ1の割れやすさを評価することが出来る。
また、AE波を検出した回数からマイクロクラックの伸展のしやすさを評価できる。マイクロクラックの伸展のしやすさからルツボの割れと変形に影響するか評価できる。
AE波の強さからマイクロクラックの大きさを推測できる。マイクロクラックの大きさがルツボの割れと変形に影響するか評価できる。
AE波の発生位置からマイクロクラックの位置を推測できる。ルツボ内で原料充填することにより圧力が加わる位置、及びシリコン単結晶引き上げ中の液面位置を考慮して、マイクロクラックの存在する位置がルツボの割れと変形に影響するか評価できる。
また、これらを組み合わせて評価することにより、ルツボ内のマイクロクラックのそれぞれの伸展しやすさ、大きさ、位置を把握することができる。それにより、シリコン単結晶引き上げ条件(引き上げ時間の長さや原料充填量など)を考慮して、マイクロクラックが引き上げ中のルツボ割れと変形に影響するか評価できる。
<6.その他の構成>
なお、本実施形態においては、AEセンサ21が圧電素子211と受信板212とコネクタ213とを有するとした。しかしながら、AEセンサ21の構成は上記場合に限定されない。例えば、AEセンサ21は、ダンパ材を有していても構わない。
また、本実施形態においては、AEセンサ21はシリカガラスルツボ1の内表面に設置するとした。しかしながら、AEセンサ21はシリカガラスルツボ1の外表面など内表面以外に設置しても構わない。
また、シリカガラスルツボ1を製造する際の工程(シリカガラスルツボ1の製造方法)として、本実施形態において説明したルツボ検査装置2を用いたルツボ検査方法を行うことが出来る。このようにシリカガラスルツボ1を製造することで、製造されたシリカガラスルツボ1にクラックなどのAE波の発生源が存在するか否かを検査することが出来る。その結果、例えば、外力を加えられた際にAE波を生じるクラックなどの欠陥の数が予め定められた閾値以下であるシリカガラスルツボ1を実現することが出来る。また、外力を加えられた際に生じるAE波の強さが予め定められた閾値以下であるシリカガラスルツボ1を実現することが出来る。また、上述したシリカガラスルツボ1の製造方法により製造されたシリカガラスルツボ1を用いて、例えばチョクラルスキー法によりシリコンインゴットの引き上げを行うことで、引き上げの途中でクラックが生じることのない、確実なシリコンインゴットの引き上げを実現することが出来る。
<シリコン単結晶の製造方法>
図10(a)〜(c)は、本実施形態に係るシリカガラスルツボを用いたシリコン単結晶の製造方法を説明する模式図である。
図10(a)に示すように、シリコン単結晶の引き上げ時には、シリカガラスルツボ1内に多結晶シリコンを充填し、この状態でシリカガラスルツボ1の周囲に配置されたヒータで多結晶シリコンを加熱して熔融させる。これにより、シリコン融液230を得る。この際、本発明のシリカガラスルツボを用いることにより、充填中のルツボの破損を防止することができる。
シリコン融液230の体積は、多結晶シリコンの質量によって定まる。したがって、シリコン融液230の液面23aの初期の高さ位置H0は、多結晶シリコンの質量とシリカガラスルツボ1の内表面の三次元形状によって決まる。すなわち、シリカガラスルツボ1の内表面の三次元形状が定まると、シリカガラスルツボ1の任意の高さ位置までの容積が特定され、これにより、シリコン融液230の液面23aの初期の高さ位置H0が決定される。
シリコン融液230の液面23aの初期の高さ位置H0が決定された後は、種結晶24の先端を高さ位置H0まで下降させてシリコン融液230に接触させる。そして、ワイヤケーブル561を回転させながらゆっくりと引き上げることによって、シリコン単結晶25を成長させる。この際、シリカガラスルツボ1は、ワイヤケーブル561の回転とは反対に回転される。
図10(b)に示すように、シリコン単結晶25の直胴部(直径が一定の部位)を引き上げているときに、液面23aがシリカガラスルツボ1の側壁部11に位置している場合には、一定の速度で引き上げると液面23aの降下速度Vmはほぼ一定になるので、引き上げの制御は容易である。
しかし、図10(c)に示すように、液面23aがシリカガラスルツボ1のコーナー部13に到達すると、液面23aの下降に伴ってその面積が急激に縮小するので、液面23aの降下速度Vmが急激に大きくなる。降下速度Vmは、コーナー部13の内表面形状に依存している。
シリカガラスルツボ1の内表面の三次元形状を正確に測定しておくことで、コーナー部13の内表面形状が分かり、したがって、降下速度Vmがどのように変化するのかを正確に予測することができる。そして、この予測に基づいて、シリコン単結晶25の引き上げ速度等の引き上げ条件が決定される。この際、本実施形態のシリカガラスルツボ1を使用することにより、予測した形状から変形することが少ないので、降下速度Vmの予測精度がより向上する。これにより、コーナー部13においても有転移化を防止し、かつ引き上げを自動化することが可能になる。
本実施形態に係るシリコン単結晶の製造方法では、シリコン単結晶25の引き上げ時にシリカガラスルツボ1の加熱による変形(側壁部11の倒れ、歪み、底部12の盛り上がりなど)が抑制されるため、シリカガラスルツボ1の内表面の三次元形状から求めた液面23aの降下速度Vmのずれが抑制され、結晶化率の高いシリコン単結晶25を歩留まり良く製造することが可能になる。なお、アルゴン雰囲気、減圧下(約660Pa〜13kPa程度)にてシリコン単結晶の引き上げは行なわれている。
<シリコン単結晶のインゴット>
本実施形態において製造したシリカガラスルツボ1を引き上げ装置にセットして、シリコン単結晶を引き上げることでシリコンインゴットを製造してもよい。
図11は、シリコン単結晶のシリコンインゴットを例示する模式図である。
シリコン単結晶のインゴット600は、本発明のシリカガラスルツボ1を引き上げ装置にセットして、上記のシリコン単結晶の製造方法によって引き上げることで製造される。
インゴット600は、種結晶24側の肩部610と、肩部610から連続する直胴部620と、直胴部620から連続する尾部630とを有する。なお、インゴット600において種結晶24は除去される。肩部610の径は、種結晶24側から直胴部620にかけて漸増する。直胴部620の径はほぼ一定である。尾部630の径は、直胴部620から離れるに従い漸減していく。
インゴット600の品質は、引き上げを行うシリカガラスルツボ1の品質と密接に関連する。例えば、シリカガラスルツボ1の不純物(例えば、ガラス中の不純物金属元素)や異物の混入は、インゴット600におけるシリコン単結晶の有転位化に繋がる。また、シリカガラスルツボ1の内表面の滑らかさ(見た目で分かるような凹凸)、表面付近の気泡の量、大きさによっては、ルツボ表面の欠け、気泡の割れ、潰れによるシリコン内への微小な破片(ルツボから剥離した粒子など)がシリコン融液へ脱落すると、これがインゴット中に混入して有転位化することに繋がる。
また、インゴット600の品質は、インゴット600の製造における引き上げ制御にも大きく左右される。以下に、インゴット600の品質と引き上げ制御との関係の具体例を説明する。
図12(a)〜(c)は引き上げ制御を説明する模式図である。
図12(a)に示すように、シリコン単結晶の成長速度をVg、シリコン単結晶の引き上げ速度をV、シリコン融液の液面の低下速度をVm、ルツボの上昇速度をC、とした場合、次の関係が成り立つ。
Vg=V+Vm−C
このうち液面低下速度Vmは、ルツボ内容積とシリコン単結晶の成長速度Vgとの関数fによって決まる(図12(b)参照)。従来の技術においては、この関数fを用いた計算によって液面低下速度Vmを求めている。また、引き上げ速度Vおよびルツボ上昇速度Cは引き上げ装置の条件として既知であるため、これによりシリコン単結晶の成長速度Vg=V+Vm−Cを求めている。
しかしながら、実際の引き上げにおいては、高温に曝されるためルツボの内面形状が変形し、内容積も変化することになる(図12(c)参照)。引き上げ装置では、シリカガラスルツボはカーボンサセプタに内挿される。したがって、シリカガラスルツボの外周面はカーボンサセプタに嵌合している状態になる。このため、シリカガラスルツボは外側には変形せず、内側のみに変形することになる。ルツボの内容積が変化してしまうと、液面低下速度Vmの計算が不正確になってしまい、シリコン単結晶の成長速度Vgを正確に定めることができなくなる。この成長速度Vgは、結晶欠陥の発生における重要な要素である。したがって、成長速度Vgを正確に制御できないと、インゴット600の品質に大きな影響を与えることになる。
シリコン融液液面位置のルツボ内半径をR、シリコン単結晶(インゴット)の直径をr、シリコン融液の密度をρL、シリコン単結晶の密度をρsとすると、液面がルツボ直胴部にある場合、以下の式が成り立つ。
Vg=ρL/ρs・(R/r)・Vm
Vg/Vm=ρL/ρs・(R/r)=k
ルツボの内側の半径の変動率をαとすると、以下の式が成り立つ。
Vg=ρL/ρs・(αR/r)・Vm
Vg=α・{ρL/ρs・(αR/r)・Vm}
このことから、Vgのずれにはαの2乗が寄与する。したがって、Rが1%変動すると、Vgは約2%変動することになる。
R=0.797m、r=0.3m、ρL=2570kg/m、ρs=2300kg/mとすると、k=7.95、1/k=0.126となる。
例えば、シリコンウェーハの厚さ1mm分に相当するシリコン単結晶(インゴット)を製造する場合、シリコン融液の液面の低下は0.126mmとなる。インゴットからシリコンウェーハを切り出す際の切断幅(ブレード等の幅)や切り出した後の研磨を考慮すると、シリコンウェーハの厚さは700μm〜800μm程度となる。インゴットのどこを切り出してもCOPが実質的にゼロとなるようにするためには、インゴットの直胴部の全域において、COPが実質的にゼロとなるようにする必要がある。また、後述する3次元構造の半導体デバイスなど、構造部がシリコンウェーハの厚さの1/10〜1/100以下の範囲に収まる場合、シリコン単結晶の引き上げにおいては、シリコンウェーハの厚さの1/10〜1/100以下の引き上げ制御(COPを実質的にゼロにするための引き上げ制御)が必要である。この場合、シリコン融液の液面の低下をコントロールするためには、0.01mm以下の精度のコントロールする必要がある。
このように、シリカガラスルツボ1の内側の径が1%変動すると、シリコン単結晶の成長速度Vgは2%変動することになる。また、シリカガラスルツボ1のコーナー部13におけるシリコン融液の液面の低下速度Vmは、シリカガラスルツボ1の直胴部におけるシリコン融液の液面の低下速度よりも高くなる。したがって、ルツボ内径の変動が液面低下の変動に与える影響は、ルツボ直胴部よりもコーナー部13のほうが大きい。
本実施形態では、実際に引き上げに使用するシリカガラスルツボ1の厚さ方向における内部残留応力を正確に測定できるため、この内部残留応力と、使用後のルツボ内径の変化との関係(操業実績に基づくルツボ内径変動量のシミュレーション)によって、使用前(シリコン単結晶の引き上げを行う前)のシリカガラスルツボ1の段階で、使用中のルツボの内径変動量を推定することができる。これにより、従来技術のように、全くルツボの変形を考慮しない場合に比べ、シリコン単結晶の成長速度Vgの目標値からのずれを低減することができ、インゴット600の直胴部620の全長にわたり欠陥を抑制(実質的にゼロに)することができる。
図13は、ルツボの内径の変動量を示す図である。
図13において横軸はルツボの内径の変動量を示し、縦軸はルツボの底部からの高さを示している。
図13のプロットは測定値である。また、線Lは、各高さでの測定値の平均を繋いだものである。
線Lで示すように、ルツボ内径の変動(すなわち、ルツボ内容積の変動)が平均的に起こることが分かる。本実施形態のように、ルツボの内面形状を基準にシリコン単結晶の上昇速度Aを変えればシリコン単結晶の全長にわたって欠陥のできない範囲に収まるようシリコン単結晶の成長速度Vgをコントロールすることが可能になる。
一方、従来技術では、CZ単結晶育成中のフィードバック制御を、ADC(自動直径制御)と液面制御との組み合わせのみで行っている。すなわち、従来技術では、実際の使用におけるルツボの形状については全く考慮されておらず、しかもルツボの形状変化を正確に把握できていないため、シリコン単結晶の引き上げにおいて成長速度Vgを正確にコントロールすることができない。すなわち、従来技術では、上記のような液面降下速度Vmが0.01mm以下の精度に対応したVgのコントロールには全く対応しておらず、半導体デバイス、特に3次元構造のデバイスの性能を十分に引き出すためのシリコン単結晶(インゴット)を製造することができるシリカガラスルツボにはなっていない。
ここで、今までのルツボの製造履歴・検査結果・使用結果からルツボの挙動をシミュレーション技術によって推定することは可能である(ルツボの挙動の例)。ここからルツボの変形について以下のことが分かる。
(1)肉厚が薄めの部分での変動量が大きい。
(2)重量の大きいルツボほど変形量が多い。
(3)外径の小さいルツボほど内面の変形量が大きい。
(4)偏心している部分での変形量が多い。
(5)カーボンサセプタの対称形でない部分でルツボの変形が生じやすい。
(6)シリカガラスルツボはセラミックでもあり、ルツボ内周面は完全な真円にはなっていない。
上記のように、Vg=V+Vm−Cによってシリコン単結晶の成長速度Vgを制御するためには、ルツボの情報を正確に把握していることが必要である。したがって、過去からのすべてのルツボの情報を関連づけて記録しておき、検索可能な状態にしておくことが望まれる。
また、シリコン単結晶の成長速度(Vg)と、固液界面付近での引き上げ軸方向の温度勾配(G)との関係を規定することがインゴット600の結晶欠陥の発生を抑制する上で重要となる。ここで、引き上げ軸方向の温度勾配(G)は、固体側よりも融液側の方が高い(言い換えると、融液側よりも固体側の方が低い)。また、引き上げ軸と直交する方向(径方向)の面内(径方向の断面の面内)の温度勾配は一定である。
本発明のシリカガラスルツボ1は、シリコン単結晶の引き上げの際の変形や倒れが抑制されるため、シリコン融液の液面と熱遮蔽部材の先端との高さHを安定させることができる。このようなシリカガラスルツボ1を用いてシリコン単結晶の引き上げを行い、得られたインゴット600においては、直胴部620における結晶欠陥は実質的にゼロである。例えば、直胴部620におけるCOP(Crystal Originated Particle)が実質的にゼロとなる。COPは、結晶欠陥の一つで、単結晶の格子点にシリコン原子がない(空孔が集まった)微細な欠陥のことを言う。COPがあることで、半導体装置の電気的特性(リーク電流、抵抗値分布、キャリア移動度など)を劣化させる原因となる。
ここで、COPの発生について説明する。
図14は、ボロンコフ理論に基づいて各種の欠陥が発生する状況を説明する模式図である。
図14に示すように、ボロンコフ理論では、引き上げ速度をV(mm/min)、インゴット(シリコン単結晶)の固液界面近傍における引き上げ軸方向の温度勾配をG(℃/mm)としたとき、それらの比であるV/Gを横軸にとり、空孔型点欠陥の濃度と格子間シリコン型点欠陥の濃度を同一の縦軸にとって、V/Gと点欠陥濃度との関係を模式的に表現している。そして、空孔型点欠陥の発生する領域と格子間シリコン型点欠陥の発生する領域の境界となる臨界点が存在することを示している。
V/Gが臨界点を下回ると、格子間シリコン型点欠陥濃度が優勢な単結晶が育成される。V/Gが臨界点より小さい(V/G)Iを下回る範囲では、単結晶内で格子間シリコン型点欠陥が支配的であって、格子間シリコン点欠陥の凝集体が存在する領域[I]が出現する。
一方V/Gが臨界点を上回ると、空孔型点欠陥濃度が優勢な単結晶が育成される。V/Gが臨界点より大きい(V/G)vを上回る範囲では、単結晶内で空孔型点欠陥が支配的であって、空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域[V]が出現し、COPが発生する。
図15は、単結晶育成時の引き上げ速度と欠陥分布との関係を示す模式図である。
図15に示す欠陥分布は、引き上げ速度Vを徐々に低下させながらシリコン単結晶を育成し、育成した単結晶を中心軸(引き上げ軸)に沿って切断して板状試片とし、その表面の欠陥の発生状況を示したものである。欠陥分布は、板状試片の表面にCuデコレーションさせ、熱処理を施した後、その板状試片をX線トポグラフ法により観察し、欠陥の発生状況を評価した結果である。
図15に示すように、引き上げ速度を高速にして育成を行った場合、単結晶の引き上げ軸方向と直交する面内全域にわたり、空孔型点欠陥の凝集体(COP)が存在する領域[V]が発生する。引き上げ速度を低下させていくと、単結晶の外周部からOSF領域がリング状に出現する。このOSF領域は、引き上げ速度の低下に伴ってその径が次第に縮小し、引き上げ速度がV1になると消滅する。これに伴い、OSF領域に代わって無欠陥領域[P](領域[PV])が出現し、単結晶の面内全域が無欠陥領域[P]で占められる。そして、引き上げ速度がVまでに低下すると、格子間シリコン型点欠陥の凝集体(LD)が存在する領域[I]が出現し、ついには無欠陥領域[P](領域[PI])に代わって単結晶の面内全域が領域[I]で占められる。
本実施形態において、上記に示すCOPが実質的にゼロとは、COPの検出数が実質的に0個であることをいう。COPはパーティクルカウンタによって検出される。パーティクルカウンタでは0.020μm以上のパーティクルがウェーハ表面(半導体デバイス形成面)に30個以下しか検出されない場合に実質的に0個となる。本明細書において「0.020μmのCOP」とは、例えばTencor社製のSPシリーズ、またはこの装置と同等性能を有する半導体用およびシリコンウェーハ用のパーティクルカウンタ装置で測定した場合に、0.020μmのパーティクルサイズとして検出されるCOPのことをいう。
上記説明したように、直胴部620のCOPが実質的にゼロとなるインゴット600は、例えば直径300mm、厚さ約1mmにスライスされてシリコンウェーハとなる。インゴット600から切り出したシリコンウェーハを用いて製造した半導体装置では、電気的特性の安定化、劣化抑制を図ることができる。
なお、COPを検出する方法はパーティクルカウンタ以外であってもよい。例えば、表面欠陥検査装置を用いる方法、ウェーハの表面に所定厚さの酸化膜を形成した後、外部電圧を印加して、ウェーハ表面の欠陥部位で酸化膜を破壊するとともに銅を析出させ、この析出した銅を肉眼、透過電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)などで観察することにより欠陥(COP)を検出する方法などが挙げられる。インゴット600の直胴部620では、このような検出方法ではCOPが検出されない(実質的にゼロとなる)。
本発明のインゴット600におけるより好ましい形態は、直胴部620の全てにおいて、ベーカンシーと呼ばれる点欠陥(空孔)が凝集した領域(COPが存在するV−Rich領域)がなく、OSF(Oxidation Induced Stacking Fault)が検出されず、インタースティシャルと呼ばれる格子間型の点欠陥が存在する領域(I−Rich領域)がないこと、すなわち直胴部620の全てがニュートラル領域になっていることである。ここで、ニュートラル領域は、欠陥が全くない領域のほか、僅かにベーカンシーやインタースティシャルが含まれていても凝集した欠陥として存在しないか、検出不可能なほど小さい領域を含む。
このように、直胴部620の結晶欠陥がゼロになっていることで、インゴット600から切り出したウェーハを用いて製造した半導体装置の電気的特性の安定化および劣化抑制を図ることができる。
<ホモエピタキシャルウェーハ>
また、このインゴット600から切り出したウェーハを基板部としてホモエピタキシャルウェーハ(以下、単に「エピタキシャルウェーハ」とも言う。)を構成してもよい。図16は、エピタキシャルウェーハを例示する模式断面図である。エピタキシャルウェーハ700は、インゴット600から切り出したウェーハの基板部710と、基板部710の上に設けられたシリコン単結晶のエピタキシャル層720と、を備えている。本実施形態において、エピタキシャル層720はシリコンのホモエピタキシャル層である。エピタキシャル層720の厚さは、約0.5μm〜20μmである。
エピタキシャルウェーハ700の製造方法の一例を示す。先ず、基板部710をエピタキシャル炉の中で約1200℃まで加熱する。次に、炉内に気化した四塩化珪素(SiCl)、三塩化シラン(トリクロルシラン、SiHCl)を流す。これにより、基板部710の表面上にシリコン単結晶の膜が気相成長(エピタキシャル成長)し、エピタキシャル層720が形成される。
結晶欠陥が実質的にゼロであるインゴット600から切り出したウェーハを用いてエピタキシャルウェーハ700を構成することにより、結晶欠陥が実質的にゼロとなるエピタキシャル層720を形成することができる。
近年、半導体集積回路の微細化が進み、従来のプレーナ型トランジスタでは限界に近づいてきている。そこで、Fin型のFET(フィン型電界効果トランジスタ)構造と呼ばれているトランジスタが提唱されるようになった(例えば、特許文献11、12参照)。
従来のプレーナ型では、シリコンウェーハ表面の内部に、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)構造が構成される。
プレーナ型では、ソース、ドレインを2次元的に構成している。ところが、Fin型のFETは、シリコン表面の上層にFINと呼ばれるチャネル領域を有し、シリコンウェーハと接しており三次元構造のMOSFETとなっている。
プレーナ型はゲート長で微細化を進めたが、Fin型のFETではフィン(Fin)幅を最少寸法として管理される。フィン幅が20nm程度、つまりCOPと同程度のFin型FETもある。
そこで、フィン(Fin)直下のシリコンウェーハの表面品質として、COPのサイズを極限まで低減することを求められている。
このような3次元構造は、Fin型FETのほか、3次元NAND型のフラッシュメモリでも採用される。
このような半導体デバイスを製造するためには、品質を向上させたホモエピタキシャルウェーハが要望されている。
シリコンウェーハを用いてホモエピタキシャル層を成膜する際、シリコンウェーハのCOPのサイズをより小さく、より少なくする必要がある。シリコンウェーハ上のCOPを抑制するために熱処理する方法もあるが、シリコン単結晶のインゴットの段階でCOPを実質的にゼロにするために、引き上げ時におけるシリコン融液のコントロールをすることが重要である。本願発明者らは、シリコン融液の液面変動とシリカガラスルツボとの関係に着目して、シリコン融液をコントロールできることを見出した。
本実施形態では、AE波の検出結果に基づいてシリカガラスルツボを評価し、引き上げ中に割れや変形に影響するマイクロクラックが存在しないルツボを選択することができる。シリカガラスルツボにマイクロクラックが存在すると、シリコン単結晶引き上げ中の高温長時間でルツボが変形しやすくなる。シリコン単結晶引き上げ中に、シリカガラスルツボが変形すると、シリコン融液液面が擾乱し、引き上げ速度等の各種引き上げ条件が制御することができなくなる。引き上げ中に割れや変形に影響するマイクロクラックが存在しないルツボを使用してシリコン単結晶を引き上げることで、より引き上げ中の引き上げ速度などの条件制御が高精度に可能になり、それによって結晶欠陥が実質的にゼロになるインゴットを製造することが出来るようになる。またそのインゴットを用いたウェーハによる基板部にエピタキシャル層を形成することで、高品質なエピタキシャルウェーハを提供することができる。
なお、エピタキシャル層720は、基板部710の表面の全面に形成されていても、部分的に形成されていてもよい。これにより、結晶の完全性が求められる場合や、抵抗率の異なる多層構造を必要とする場合に対応できる高品質なエピタキシャルウェーハ700を提供することができる。
<ルツボ製造からシリコン単結晶製品製造までの工程>
図17は、ルツボ製造からウェーハ製造までの工程を例示するフローチャートである。
図17に示すステップS201〜S206まではルツボの製造工程であり、ステップS207〜S214まではインゴットの製造工程であり、ステップS215〜S221まではシリコンウェーハの製造工程であり、ステップS222〜S227まではエピタキシャルウェーハの製造工程である。
ステップS201〜S214に示すルツボ製造からインゴット製造までの一連の工程を、ルツボ−インゴット製造工程と言うことにする。
ステップS201〜S221に示すルツボ製造からシリコンウェーハ製造までの一連の工程を、ルツボ−シリコンウェーハ製造工程と言うことにする。
ステップS201〜S227に示すルツボ製造からエピタキシャルウェーハ製造までの一連の工程を、ルツボ−エピウェーハ製造工程と言うことにする。
ルツボ−インゴット製造工程、ルツボ−シリコンウェーハ製造工程およびルツボ−エピウェーハ製造工程のそれぞれにおいて、一貫した製造条件の制御および品質管理を行うため、本実施形態では、各工程を一括管理する一貫制御システムが用いられる。
本実施形態では、ルツボ製造に起因してシリコン単結晶製品(インゴット、シリコンウェーハ、エピタキシャルウェーハ)の品質までを想定した生産管理を一貫制御システムが用いられる。
従来では、例えばシリコン単結晶の引き上げによってインゴットを製造する場合、ADC(自動直径制御)で直胴部の直径を一定に制御している。直径約300mmの直胴部を全長2000mmまで引き上げる時間は、0.5mm/分として約4000分必要となる。また、シリコンインゴット製造における全体としては、(1)シリカガラスルツボへの多結晶シリコンの充填時にシリカガラスルツボが割れないように慎重に装填する作業、(2)多結晶シリコンの溶融、(3)Dashネッキング(転位除去)工程、(4)シリコンインゴットの肩部の形成、(5)直胴部全長2000mmの引き上げ、(6)シリコンインゴットに転位が入らないようにテール絞りを行い、(7)炉を冷却してシリコンインゴットの回収、を行う。このような一連の処理を行い、直径300mm、直胴部の全長2000mmのシリコンインゴットを1本製造するためには、約7日程度を費やすことになる。
この間の制御は、主に引き上げ速度と重量の関係のみで、直胴部の直径の一定、全長でのCOPフリーの引き上げを目指している。引き上げにおいて重要なシリコン融液の液面とコーン部571との高さHは、引き上げ速度が速いと高く、引き上げ速度が遅いと低くなる。従来では、高さHの制御を引き上げ装置ごとの個体差とオペレータの経験で行っている。
本実施形態では、ルツボの内面変形量を予測することによって、引き上げ時の高さHをより一定に制御できるようにしている。すなわち、引き上げ装置においてルツボはカーボンサセプタ520内に収められ、多結晶シリコンの充填によって例えば500kgの重量となる。また、引き上げ中のルツボは約1600℃の高温となり、シリコン融液によって外側に押され、カーボンサセプタ520との隙間がなくなる。カーボンサセプタ520は変形しないため、結果としてルツボはカーボンサセプタ520からの反力で内側に変形しやすくなる。
本実施形態の一貫制御システムでは、今まで使用してきたルツボの製造履歴・使用前の内部残留応力の測定結果、使用後の形状変化などの情報を蓄積し、引き上げ装置、引き上げ条件との関係から、引き上げ時のルツボの挙動、変形を使用前に事前に計算しておく。これにより、予測される引き上げ中のルツボの変形から、ルツボの内容積の変動が分かり、引き上げ中の高さHを厳密に制御することができる。したがって、結晶欠陥が実質的にゼロとなるインゴットの製造、このインゴットからのシリコンウェーハの製造、およびこのシリコンウェーハを用いたエピタキシャルウェーハの製造へと一貫した制御を行うことが可能となる。
[実施例]
(製造例)
回転モールド法に基づいて、シリカガラスルツボを製造した。具体的には、32インチの回転しているモールドの内表面に平均15mmの厚さのシリカ粉を堆積させてシリカ粉層を形成し、3相交流電流3本電極によりアーク放電を行った。アーク溶融工程の通電時間は90分、出力2500kVA、通電開始から10分間はシリカ粉層の真空引きを行った。上記のような方法により、8個のシリカガラスルツボを製造した。
(検査例1)
製造したシリカガラスルツボの内表面のうち、側壁部、コーナー部、底部、のそれぞれの所定箇所に、それぞれ3個のAEセンサ21を当てて、製造したシリカガラスルツボに水を充填してルツボ内面に向けて外力を与えた。その結果生じるAE波をそれぞれのAEセンサ21で測定した。
試験条件および計測条件を以下に示す。
(A)計測条件
(a−1)試験機クロスヘッド速度:3mm/秒
(a−2)目標負荷荷重:500ニュートン(N)
(B)計測条件
(b−1)プリアンプゲイン:40デシベル(dB)
(b−2)フィルタ:20〜400kHzバンドパスフィルタ
(b−3)荷重アナログ信号:500N/V
図18は、AE波発生数と最大エネルギー値との関係を示す図である。
図18には、上記製造した8個のシリカガラスルツボについて上記試験条件および計測条件によりAE波を検出した結果が示される。横軸はAE波発生数(個/cm)であり、縦軸はAE波の最大エネルギー値(dBs)である。
また、AEセンサ21で測定した後、当該シリカガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行い、シリカガラスルツボの割れの有無を検査した。
図18の丸印のプロットで示すシリカガラスルツボについては割れは発生していない。一方、図18の三角印のプロットで示すシリカガラスルツボについては割れが発生していた。
このことから、AE波の発生個数の閾値を6個/cmに設定し、AE波の最大エネルギー値の閾値を10dBsに設定した。
次に、上記8個のシリカガラスルツボと同様な製造方法によって別のシリカガラスルツボを5個製造した。これら5個のシリカガラスルツボについて、側壁部、コーナー部および底部でのAE波を測定し、上記AE波発生個数の閾値と、最大エネルギー値の閾値と、シリコン単結晶の引き上げ後のシリカガラスルツボの割れの有無の関係を調べた。以下、測定結果とシリカガラスルツボの割れとの関係は以下のようになった。
以上からすると、AE波測定の結果から、側壁部、コーナー部および底部のいずれかでAE波発生個数および最大エネルギー値の閾値のいずれかを超えている場合、シリカガラスルツボが割れやすいことが分かる。また、AE波測定の結果から、側壁部、コーナー部および底部のいずれにおいてもAE波発生個数および最大エネルギー値の閾値を超えていない場合、シリカガラスルツボが割れないことが分かる。
以上、上記実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることが出来る。
なお、本発明は、日本国にて2015年12月25日に特許出願された特願2015−254651の特許出願に基づく優先権主張の利益を享受するものであり、当該特許出願に記載された内容は、全て本明細書に含まれるものとする。
1 シリカガラスルツボ
11 側壁部
12 底部
13 コーナー部
111 透明層
112 気泡含有層
2 ルツボ検査装置
21 AEセンサ
211 圧電素子
212 受信板
213 コネクタ
22 増幅器
23 AE波解析装置
231 AE波強さ測定部
232 AE波発生回数計測部
233 AE波発生位置算出部
234 ルツボ評価部
235 計測結果記憶部
3 クラック
600 インゴット
700 エピタキシャルウェーハ

Claims (14)

  1. 円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記側壁部と前記底部との間に設けられ前記底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナー部と、を備えるシリカガラスルツボの割れやすさを検査するルツボ検査装置であって、
    シリカガラスルツボの表面に設置され、当該シリカガラスルツボに所定の外力を加えた際に生じるAE(Acoustic Emission)波を検出する複数のAE波検出手段と、
    複数の前記AE波検出手段からの検出結果に基づいてAE波発生位置を特定する位置特定手段と、を有し、
    前記位置特定手段は、前記AE波発生位置について、立体的な前記シリカガラスルツボを平面に展開した場合の2次元位置を算出し、前記2次元位置を前記シリカガラスルツボの3次元位置に逆変換する、
    ルツボ検査装置。
  2. 請求項1に記載のルツボ検査装置であって、
    前記AE波検出手段は、シリカガラスルツボの内表面に設置される
    ルツボ検査装置。
  3. 請求項1又は2に記載のルツボ検査装置であって、
    少なくとも3つの前記AE波検出手段を有しており、
    前記位置特定手段は、少なくとも3つの前記AE波検出手段からの検出結果に基づいてAE波発生位置を特定する
    ルツボ検査装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載のルツボ検査装置であって、
    前記AE波検出手段の検出結果に基づいてシリカガラスルツボの割れやすさを評価するルツボ評価手段を有する
    ルツボ検査装置。
  5. 請求項4に記載のルツボ検査装置であって、
    前記ルツボ評価手段は、前記AE波検出手段が前記AE波を検出した回数に基づいてシリカガラスルツボの割れやすさを評価する
    ルツボ検査装置。
  6. 請求項4又は5に記載のルツボ検査装置であって、
    前記ルツボ評価手段は、前記AE波検出手段が検出した前記AE波の強さに基づいてシリカガラスルツボの割れやすさを評価する
    ルツボ検査装置。
  7. 請求項4乃至6のいずれかに記載のルツボ検査装置であって、
    前記ルツボ評価手段は、前記位置特定手段が特定した前記AE波発生位置に基づいてシリカガラスルツボの割れやすさを評価する
    ルツボ検査装置。
  8. 前記ルツボ評価手段は、請求項5乃至7のいずれかに記載されている手法を少なくとも2つ以上組み合わせてシリカガラスルツボの割れやすさを評価する
    ルツボ検査装置。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載のルツボ検査装置であって、
    前記AE波検出手段は、シリカガラスルツボに対して圧縮された空気をぶつけた際に生じるAE波を検出する
    ルツボ検査装置。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載のルツボ検査装置であって、
    前記AE波検出手段は、前記シリカガラスルツボに充填した水によるルツボ内面への水圧を利用して生じるAE波を検出する
    ルツボ検査装置。
  11. 円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記側壁部と前記底部との間に設けられ前記底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナー部と、を備えるシリカガラスルツボの割れやすさを検査するルツボ検査方法であって、
    シリカガラスルツボの表面に設置され、当該シリカガラスルツボに所定の外力を加えた際に生じる複数のAE(Acoustic Emission)波を検出し、
    検出した複数のAE波に基づき特定したAE波発生位置について、立体的な前記シリカガラスルツボを平面に展開した場合の2次元位置を算出し、前記2次元位置を前記シリカガラスルツボの3次元位置に逆変換する、
    ルツボ検査方法。
  12. 円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記側壁部と前記底部との間に設けられ前記底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナー部と、を備えるシリカガラスルツボの製造方法であって、
    AE波を検査するAE波検査手段をシリカガラスルツボの表面に設置し、シリカガラスルツボに所定の外力を加え、シリカガラスルツボに前記所定の外力を加えた際に生じる複数のAE(Acoustic Emission)波を検出する工程と、
    検出した複数のAE波に基づき特定したAE波発生位置について、立体的な前記シリカガラスルツボを平面に展開した場合の2次元位置を算出し、前記2次元位置を前記シリカガラスルツボの3次元位置に逆変換する工程と、を有する
    シリカガラスルツボの製造方法。
  13. 請求項12に記載のシリカガラスルツボの製造方法により製造されたシリカガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行う工程を有する
    シリコンインゴットの製造方法。
  14. 請求項13記載の方法によって製造したシリコンインゴットを切り出して形成されたウェーハによる基板部を形成する工程と、
    前記基板部の上にシリコン単結晶のホモエピタキシャル層を形成する工程と、を備えたホモエピタキシャルウェーハの製造方法。
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