<内燃機関の全体構成>
図1に燃料蒸気排出防止システムの全体図を示す。図1を参照すると、1は機関本体、2はサージタンク、3は吸気ダクト、4はスロットル弁、5は燃料タンク、6はキャニスタを夫々示す。燃料タンク5には、燃料タンク5内の燃料液面の高さを検出するための燃料レベルゲージ7と、燃料タンクの燃料の温度を検出するための温度センサ8が取付けられている。一方、キャニスタ6は、活性炭層9と、活性炭層9の両側に夫々配置された燃料蒸気室10と大気圧室11とを有する。なお、図1では、燃料蒸気室10が第1の燃料蒸気室10aと第2の燃料蒸気室10bから形成されているが、この燃料蒸気室10は共通の一つの燃料蒸気室から構成することもできる。
図1に示されるように、第1の燃料蒸気室10aは、燃料蒸気流通管12を介して燃料タンク5の燃料液面上方の内部空間に連通しており、第2の燃料蒸気室10bは燃料蒸気流通管13を介してサージタンク2内に、即ち、吸気通路内に連結される。この燃料蒸気流通管13内には、パージ制御弁14が配置されている。一方、大気圧室11は小容積の活性炭層15および吸引ポンプモジュール16を介して大気連通管17に連結される。
図1において20は、機関の運転および燃料蒸気排出防止システムを制御するための電子制御ユニットを示している。図1に示されるように、電子制御ユニット20はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス21によって互いに接続された記憶装置22、即ち、メモリ22と、CPU(マイクロプロセッサ)23と、入力ポート24および出力ポート25を具備する。入力ポート24には、燃料レベルゲージ7の出力信号、温度センサ8の出力信号、大気圧を検出するための大気圧センサ30の出力信号、および運転開始停止スイッチ31の出力信号が、夫々対応するAD変換器26を介して入力される。
駆動源として電気モータを備えたハイブリッドエンジンでは、運転開始停止スイッチ31がオンにされるとエンジン又は電気モータによる車両の運転が開始され、運転開始停止スイッチ31がオフにされるとエンジン又は電気モータによる車両の運転が停止される。一方、駆動源としての電気モータを備えていないエンジンでは、運転開始停止スイッチ31がオンにされるとエンジンが始動されて車両の運転が開始され、運転開始停止スイッチ31がオフにされるとエンジンが停止されて車両の運転が停止される。
また、図1に示されるように、アクセルペダル32にはアクセルペダル32の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ33が接続され、負荷センサ33の出力電圧は対応するAD変換器26を介して入力ポート24に入力される。更に入力ポート24にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ34が接続される。CPU33内ではクランク角センサ34の出力信号に基づいて機関回転数が算出される。一方、出力ポート25は対応する駆動回路27を介してパージ制御弁14、吸引ポンプモジュール16およびスロットル弁4のアクチュエータに接続される。
図2Aおよび図2Bは、図1に示される吸引ポンプモジュール16を図解的に表した拡大図を示している。図2Aおよび図2Bを参照すると、吸引ポンプモジュール16は、吸引ポンプ40と、アクチュエータ41によって駆動される流路切換弁42とを具備している。更に、吸引ポンプモジュール16は、小容積の活性炭層15を介して大気圧室11に連結された大気圧室連結路43と、大気連通管17を介して大気に連結された大気連通管連結路44と、大気連通管連結路44から流路切換弁42に向けて延びる大気連通路45と、吸引ポンプ40から流路切換弁42に向けて延びる吸引通路46とを有し、吸引通路46内に圧力センサ47が取付けられている。
流路切換弁42内には、図2Aに示されるように大気圧室連結路43と大気連通路45とを連結可能な第1通路48と、図2Bに示されるように大気圧室連結路43と吸引通路46とを連結可能な第2通路49とが形成されている。流路切換弁42は、通常、図2Aに示されるように、大気圧室連結路43が第1通路48を介して大気連通路45に連結される位置に保持されており、このとき大気圧室11は小容積の活性炭層15、大気圧室連結路43、第1通路48、大気連通路45、大気連通管連結路44および大気連通管17を介して大気に連通している。図2Aに示されるように大気圧室11が大気に連通せしめられている流路切換弁42の切換位置を、通常位置と称す。
一方、燃料蒸気排出防止システムの異常検出を行うときには、流路切換弁42は、図2Bに示されるように、大気圧室連結路4が第2通路49を介して吸引通路46に連結される位置に切換得られる。図2Bに示されるように、大気圧室11が吸引通路46に連結される位置を、テスト位置と称す。このとき、吸引ポンプ40を作動すると、大気圧室11内の空気が、小容積の活性炭層15、大気圧室連結路4、第2通路49および吸引通路46を介して吸引され、このとき、パージ制御弁14が閉弁していると、燃料タンク5内、キャニスタ6内、燃料蒸気流通管12内、およびキャニスタ6とパージ制御弁14間の燃料蒸気流通管13内の圧力が低下する。なお、以下、燃料タンク5内、キャニスタ6内、燃料蒸気流通管12内、およびキャニスタ6とパージ制御弁14間の燃料蒸気流通管13内の圧力を、単に、燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力と称する。また、本発明による実施例では、圧力センサ47により検出され圧力を、燃料蒸気排出防止システム内の圧力、即ち、システム内圧と称する。従って、燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力が圧力センサ47により検出されているときには、燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力がシステム内圧となる。
次に、図3および図4を参照しつつ、燃料タンク5内の燃料の残量の正確な求め方について、重力センサを用いた場合を例にとって、簡単に説明する。図3に示されるように、重力センサ60は、正方形状のフレーム61と、フレーム61により支持された4本の板状アーム62を有する十字状薄板63と、十字状薄板63の中央部に取り付けられた錘64からなり、十字状薄板63の各アーム62には夫々歪ゲージが取付けられている。この重力センサ60は、車両が水平面上で停止しているときに、フレーム61が水平面内に位置するように、車両に取り付けられている。
錘64には鉛直方向の重力が作用するので、十字状薄板63の中央には鉛直方向下向きの力が作用する。このときフレーム61が水平面内に位置していれば、各アーム62の歪量は同一であり、従って、車両が水平面上で停止しているときには、各アーム62の歪量は同一となる。これに対し、車両が水平面に対して傾いて停止していると、各アーム62の歪量が異なった値となり、各アーム62の歪量の差異から水平面に対する車両の傾き方向および傾き量がわかる。一方、車両が水平面内に位置しているときの燃料タンク5内の燃料液面の高さは燃料レベルゲージ7の検出値からわかる。
従って、燃料タンク5がどのような形状であろうとも、燃料レベルゲージ7の検出値と、重力センサ60により検出された水平面に対する車両の傾き方向および傾き量から、燃料タンク5内の燃料の残量がわかることになる。そこで、この例では、図4に示されるように、重力センサ60により検出された車両の前後方向の傾き量Fと、車両の横方向の傾き量Sと、燃料レベルゲージ7の検出値Hと、燃料タンク5内の燃料の残量Mとの関係を予め実験により求めておき、図4に示される関係に基づいて、燃料タンク5内の燃料の残量Mが求められる。
次に、本発明の基本的な考え方について説明する。図1および図2Bからわかるように、パージ制御弁14を閉弁し、流路切換弁42をテスト位置に切換えた状態で、吸引ポンプ40を作動すると、燃料タンク5内、キャニスタ6内、燃料蒸気流通管12内、およびキャニスタ6とパージ制御弁14間の燃料蒸気流通管13内の圧力、即ち、システム内圧が低下する。このときのシステム内圧の変化が図5に示されている。なお、図5においてA点は、吸引ポンプ40による吸引作用を開始したときを示しており、B点は、圧力低下が生じなくなったときを示している。
さて、図5において、実線は燃料蒸気排出防止システムが正常の場合を示しており、破線は、例えば、燃料蒸気流通管12管壁に穴が開いた場合、或いはキャニスタ6とパージ制御弁14間の燃料蒸気流通管13の管壁に穴が開いた場合を示している。燃料蒸気流通管12又は13の管壁に穴が開くと、穴から外気が流入するので、B点における圧力は、破線で示されるように、実線で示される正常時よりも高くなる。従って、B点における圧力の大きさから燃料蒸気流通管12又は13の管壁に穴が開いたか否かの判別が可能となる。
一方、図5の一点鎖線は、燃料蒸気流通管12又は13の管壁には穴が開いていないが、何らかの要因により、燃料タンク5内における単位時間当たりの燃料の蒸発量が増大したとき、例えば、実線に示される場合に比べて、燃料タンク5内の燃料の温度が高い場合を示している。この場合にも、破線で示される燃料蒸気流通管12又は13の管壁に穴が開いた場合と同様に、B点における圧力が、実線で示される正常時よりも高くなる。従って、B点における圧力が実線で示される正常時よりも高くなったからといって、燃料蒸気流通管12又は13の管壁に穴が開いたと判別すると誤判断を生ずることになる。
しかしながら、燃料蒸気流通管12又は13の管壁に穴が開いた場合、即ち、破線で示される場合には、実線および一点鎖線で示される場合と比較して、圧力の下降の途中において、圧力の下降の度合いが小さくなり、破線で示される場合と、実線および一点鎖線で示される場合とでは、下降曲線の全体形状が異なる。従って、圧力下降曲線の全体形状を求めると、圧力下降曲線の全体形状の差異から、燃料蒸気流通管12又は13の管壁に穴が開いたか否かを正確に判別できることになる。そこで本発明では、システム内圧を一定時間毎に検出し、検出された一定時間毎のシステム内圧に基づき、ニューラルネットワークを用いて、燃料蒸気排出防止システムに異常が生じているか否かを判別するようにしている。
<ニューラルネットワークの概要>
上述したように、本発明による実施例では、ニューラルネットワークを用いて、燃料蒸気排出防止システムに異常が生じているか否かを判別するようにしている。そこで最初にニューラルネットワークについて簡単に説明する。図6は簡単なニューラルネットワークを示している。図6における丸印は人工ニューロンを表しており、ニューラルネットワークにおいては、この人工ニューロンは、通常、ノード又はユニットと称される(本願では、ノードと称す)。図6においてL=1は入力層、L=2および L=3は隠れ層、L=4は出力層を夫々示している。また、図6において、x1およびx2 は入力層 ( L=1) の各ノードからの出力値を示しており、y1 およびy2 は出力層 ( L=4) の各ノードからの出力値を示しており、z(2) 1、z(2) 2 およびz(2) 3 は隠れ層 ( L=2) の各ノードからの出力値を示しており、z(3) 1、z(3) 2 およびz(3) 3は隠れ層 ( L=3) の各ノードからの出力値を示している。なお、隠れ層の層数は、1個又は任意の個数とすることができ、入力層のノードの数および隠れ層のノードの数も任意の個数とすることができる。また、出力層のノードの数は1個とすることもできるし、複数個とすることもできる。
入力層の各ノードでは入力がそのまま出力される。一方、隠れ層 ( L=2) の各ノードには、入力層の各ノードの出力値x
1およびx
2 が入力され、隠れ層 ( L=2) の各ノードでは、夫々対応する重みwおよびバイアスbを用いて総入力値uが算出される。例えば、図
6において隠れ層 ( L=2) のz
(2) k(k=1,2,3)で示されるノードにおいて算出される総入力値u
kは、次式のようになる。
次いで、この総入力値u
kは活性化関数fにより変換され、隠れ層 ( L=2) のz
(2) kで示されるノードから、出力値z
(2) k(= f (u
k)) として出力される。一方、隠れ層 ( L=3) の各ノード には、隠れ層 ( L=2) の各ノードの出力値z
(2) 1、z
(2) 2 およびz
(2) 3が入力され、隠れ層 ( L=3 ) の各ノードでは、夫々対応する重みwおよびバイアスbを用いて総入力値u(Σz・w+b)が算出される。この総入力値uは同様に活性化関数により変換され、隠れ層 ( L=3 ) の各ノードから、出力値z
(3) 1、z
(3) 2 およびz
(3) 3として出力される、この活性化関数としては、例えば、シグモイド関数σが用いられる。
一方、出力層 ( L=4) の各ノード には、隠れ層 ( L=3) の各ノードの出力値z(3) 1、z(3) 2 およびz(3) 3が入力され、出力層 の各ノードでは、夫々対応する重みwおよびバイアスbを用いて総入力値u(Σz・w+b)が算出されるか、又は、夫々対応する重みwのみを用いて総入力値u(Σz・w)が算出される。例えば、回帰問題では、出力層のノードでは恒等関数が用いられ、従って、出力層のノードからは、出力層のノードにおいて算出された総入力値uが、そのまま出力値yとして出力される。
<ニューラルネットワークにおける学習>
さて、ニューラルネットワークの出力値yの正解値を示す教師データ、即ち、正解データをy
tとすると、ニューラルネットワークにおける各重みwおよびバイアスbは、出力値yと教師データ、即ち、正解データy
tとの差が小さくなるように、誤差逆伝播法を用いて学習される。この誤差逆伝播法は周知であり、従って、誤差逆伝播法についてはその概要を以下に簡単に説明する。なお、バイアスbは重みwの一種なので、以下、バイアスbも含めて重みwと称する。さて、図
6に示すようなニューラルネットワークにおいて、L=2,L=3又は L=4の各層のノードへの入力値u
(L)における重みをw
(L)で表すと、誤差関数Eの重みw
(L)による微分、即ち、勾配∂E/∂w
(L)は、書き換えると、次式で示されるようになる。
ここで、z
(L−1)・∂w
(L)= ∂u
(L)であるので、(∂E/∂u
(L))=δ
(L)とすると、上記(1)式は、次式でもって表すことができる。
ここで、u
(L)が変動すると、次の層の総入力値u
(L+1)の変化を通じて誤差関数Eの変動を引き起こすので、δ
(L)は、次式で表すことができる。
ここで、z
(L)=f(u
(L)) と表すと、上記(3)式の右辺に現れる入力値u
k (L+1)は、次式で表すことができる。
ここで、上記(3)式の右辺第1項(∂E/∂u
(L+1))はδ
(L+1)であり、上記(3)式の右辺第2項(∂u
k (L+1) /∂u
(L))は、次式で表すことができる。
従って、δ
(L)は、次式で示される。
即ち、δ
(L+1)が求まると、δ
(L)を求めることができることになる。
さて、出力層 ( L=4) のノードが一個であって、或る入力値に対して教師データ、即ち、正解データy
tが求められており、この入力値に対する出力層からの出力値がyであった場合において、誤差関数として二乗誤差が用いられている場合には、二乗誤差Eは、E=1/2(y−y
t)
2で求められる。この場合、出力層(L=4)のノードでは、出力値y= f(u
(L)) となり、従って、この場合には、出力層(L=4)のノードにおけるδ
(L)の値は、次式で示されるようになる。
この場合、回帰問題では、前述したように、f(u
(L)) は恒等関数であり、f’(u
(Ll)) = 1となる。従って、δ
(L)=y−y
t となり、δ
(L)が求まる。
δ(L)が求まると、上式(6)を用いて前層のδ(L−1)が求まる。このようにして順次、前層のδが求められ、これらδの値を用いて、上式(2)から、各重みwについて誤差関数Eの微分、即ち、勾配∂E/∂w(L)か求められる。勾配∂E/∂w(L)か求められると、この勾配∂E/∂w(L)を用いて、誤差関数Eの値が減少するように、重みwが更新される。即ち、重みwの学習が行われることになる。
一方、分類問題では、学習時には、出力層 ( L=4) からの各出力値y
1、y
2・・・がソフトマックス層に入力され、ソフトマックス層からの出力値をy
1‘、y
2’・・・、対応する正解ラベルをy
t1、y
t2・・・とすると、誤差関数Eとして、次の交差エントロピー誤差Eが用いられる。
この場合も、出力層 ( L=4) の各ノードにおけるδ
(L)の値は、δ
(L)=y
k
−y
tk (k=1,2・・・n)となり、これらδ
(L)の値から上式(6)を用いて前層のδ
(L−1)が求まる。
<本発明による実施例>
最初に、図7を参照しつつ、車両の運転停止時に、燃料蒸気排出防止システムに異常が生じているか否かを判別するために行われる異常検出処理について説明する。図7には、
パージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令およびパージ制御弁14を開弁させる開弁指令と、流路切換弁42を通常位置に切換える切換指令および流路切換弁42をテスト位置に切換える切換指令と、吸引ポンプ40の作動指令および吸引ポンプ40の停止指令と、圧力センサ47により検出されたシステム内圧の変化が示されている。なお、この例では、システム内圧は、燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力を示している。
図7においてt0は、車両の運転停止時を示しており、このときにはパージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令、流路切換弁42を通常位置に切換える切換指令、および吸引ポンプ40の停止指令が発せられている。図7はこれらの指令に基づいて、パージ制御弁14、流路切換弁42および吸引ポンプ40が正常に作動しているときを示している。従って、車両の運転停止時には、パージ制御弁14は閉弁せしめられており、流路切換弁42は通常位置に切換えられており、吸引ポンプ40は停止せしめられている。この状態は、車両の運転停止時から時刻t1までの一定期間継続される。この一定期間中は、吸引ポンプ40が停止され続けるので、吸引ポンプ40による吸引作用は行われず、従って、圧力センサ47により検出されているシステム内圧は大気圧となっている。
次いで、時刻t1に達すると、流路切換弁42をテスト位置に切換える切換指令、および吸引ポンプ40の作動指令が発せられる。一方、パージ制御弁14には閉弁指令が継続して発せられている。このとき、燃料タンク5内、キャニスタ6内、燃料蒸気流通管12内、およびキャニスタ6とパージ制御弁14間の燃料蒸気流通管13内は、外気から隔離された閉鎖空間となり、このような状態で吸引ポンプ40が作動せしめられるので、この閉鎖空間内の空気は吸引ポンプ40により徐々に吸引され、その結果、燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力、即ち、圧力センサ47により検出されているシステム内圧は徐々に低下する。次いで、時刻t2に達する頃になると、圧力低下が生じなくなり、システム内圧は低下した状態で停滞する。
時刻t2に達すると、パージ制御弁14を開弁させる開弁指令が発せられる。一方このとき、流路切換弁42はテスト位置に維持され、吸引ポンプ40は作動し続けられる。従って、このときには、吸引ポンプ40による吸引作用は続行されるが、パージ制御弁14を開弁せしめられるために、システム内圧は急上昇し、大気圧となる。次いで、時刻t3に達すると、パージ制御弁14、流路切換弁42および吸引ポンプ40は、車両の運転停止時の状態に戻される。即ち、時刻t3に達すると、パージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令、流路切換弁42を通常位置に切換える切換指令、および吸引ポンプ40の停止指令が発せられる。
一方、燃料蒸気排出防止システムに異常が生じると、圧力センサ47により検出されているシステム内圧の変化パターンが、図7に示される正常時のシステム内圧の変化パターンと異なる変化パターンとなる。次に、このことについて、図8から図10を参照しつつ説明する。なお、図8から図10には、図7と同様に、パージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令およびパージ制御弁14を開弁させる開弁指令と、流路切換弁42を通常位置に切換える切換指令および流路切換弁42をテスト位置に切換える切換指令と、吸引ポンプ40の作動指令および吸引ポンプ40の停止指令と、圧力センサ47により検出されたシステム内圧の変化が示されている。また、図8から図10において、破線は、図7に示される正常時のシステム内圧の変化パターンを示している。
図8の実線は、例えば、燃料蒸気流通管12又は13の管壁に小さな穴が開いた場合のシステム内圧の変化パターンを示している。この場合には、小さな穴を介して外気がシステム内に流入し続けるため、システム内圧は正常時のシステム内圧まで低下せず、従って、この場合のシステム内圧の変化パターンは、正常時のシステム内圧の変化パターンと異なる変化パターンとなる。
一方、図9の実線は、パージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令が発せられてもパージ制御弁14が開弁し続ける開弁異常を生じているときを示している。このときには、システム内は、パージ制御弁14を介して大気に連通され続けているので、図9の実線で示されるように、システム内圧は大気圧に維持される。また、図10の実線は、パージ制御弁14を開弁させる開弁指令が発せられてもパージ制御弁14が閉弁し続ける閉弁異常を生じているときを示している。このときには、図9の実線で示されるように、時刻t2を過ぎてもシステム内圧は負圧のまま維持される。
このように、システム内圧の変化パターンは、異常が生ずると、正常時のシステム内圧の変化パターンと異なる変化パターンとなる。そこで本発明による実施例では、システム内圧の変化パターンの差異を学習するために、システム内圧を一定時間毎に検出するようにしている、次に、このことについて、図11を参照しつつ説明する。なお、図11には、図7と同様に、パージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令およびパージ制御弁14を開弁させる開弁指令と、流路切換弁42を通常位置に切換える切換指令および流路切換弁42をテスト位置に切換える切換指令と、吸引ポンプ40の作動指令および吸引ポンプ40の停止指令と、圧力センサ47により検出されたシステム内圧の変化が示されている。また、図11における実線は、図7に示される正常時のシステム内圧の変化パターンを示している。
図11を参照すると、時刻t1から時刻t3の期間xtにおいて、一定時間Δt毎に、圧力センサ47によってシステム内圧が検出される。図11において、x1、x2・・・xn−1、xnは、圧力センサ47により一定時間Δt毎に検出されたシステム内圧を示している。圧力センサ47により検出された一定時間Δt毎のシステム内圧x1、x2・・・xn−1、xnは、一旦、記憶装置に記憶される。本発明による実施例では、この一旦、記憶装置に記憶された一定時間Δt毎のシステム内圧x1、x2・・・xn−1、xnに基づき、ニューラルネットワークを用いて、燃料蒸気排出防止システムに異常が生じているか否かを推定することのできる異常判定推定モデルが作成される。なお、この実施例では、圧力センサ47により検出しているのは、燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力である。従って、この実施例では、圧力センサ47を必ずしも吸引通路46内に配置する必要がなく、燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力を検出し得る任意の場所に配置することができる。
次に、この異常判定推定モデルの作成に用いられるニューラルネットワークについて図12を参照しつつ説明する。図12を参照すると、このニューラルネットワーク70においても、図6に示されるニューラルネットワークと同様に、L=1は入力層、L=2および L=3は隠れ層、L=4は出力層を夫々示している。図14に示されるように、入力層 ( L=1) がn+k個のノードからなり、n個の入力値x1、x2・・・xn−1、xnとk個の入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkが、入力層 ( L=1) の各ノードに入力されている。この場合、n個の入力値x1、x2・・・xn−1、xnは、図11に示される一定時間Δt毎のシステム内圧x1、x2・・・xn−1、xnである。
一方、図12には隠れ層 ( L=2)および隠れ層 ( L=3)が記載されているが、これら隠れ層の層数は、1個又は任意の個数とすることができ、またこれら隠れ層のノードの数も任意の個数とすることができる。また、この実施例では、出力層 ( L=4) のノードの数は4個とされており、出力層 ( L=4) のノードからの出力値がy1’、 y2’、y3’、y4’で示されている。これら出力値y1’、 y2’、y3’、y4’は、ソフトマックス層SMに送り込まれて、夫々対応する出力値y1、 y2、y3、y4に変換される。これら出力値y1、 y2、y3、y4の合計は1であり、各出力値y1、 y2、y3、y4は1に対する割合を表している。
次に、図12における入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkについて、図13に示される一覧表を参照しつつ説明する。さて、上述したように、本発明による実施例では、一定時間Δt毎のシステム内圧x1、x2・・・xn−1、xnに基づき、ニューラルネットワークを用いて、燃料蒸気排出防止システムに異常が生じているか否かが推定される。ところが、システム内圧は、例えば、大気圧等の外部因子および燃料タンク5内の燃料の残量等の内部因子の影響を受けて変化し、従って、燃料蒸気排出防止システムの異常が生じているか否かを推定する際には、これら因子の影響を考慮する必要がある。
図13には、これら因子となるニューラルネットワーク70への入力パラメータが列挙されている。なお、図13には、システム内圧の変化に強い影響を与える入力パラメータが、必須の入力パラメータとして列挙されており、必須の入力パラメータほどではないが、システム内圧の変化に強い影響を与える入力パラメータが、影響大な入力パラメータとして列挙されており、影響大な入力パラメータほどではないが、システム内圧の変化に影響を与える入力パラメータが、補助的な入力パラメータとして列挙されている。
図13に示されるように、システム内圧x1、x2・・・xn−1、xnおよび大気圧xx1が必須の入力パラメータとされている。この場合、システム内圧x1、x2・・・xn−1、xnが必須の入力パラメータであることは、当然である。一方、大気圧が変化すれば、それに応じてシステム内圧も変化する。従って、大気圧xx1は必須の入力パラメータとされている。
一方、吸引ポンプ40による吸引作用によってシステム内圧が負圧になっているときには、燃料タンク5内の燃料が蒸発するとシステム内圧が上昇し、この場合、燃料の単位時間当たりの蒸発量が多いほどシステム内圧の変化量は大きくなる。一方、燃料の単位時間当たりの蒸発量は、燃料タンク5内の燃料の残量に比例する。従って、燃料タンク5内の燃料の残量が多くなるほど、システム内圧に与える影響が大きくなる。従って、図13に示されるように、燃料タンク5内の燃料の残量xx2は、影響大の入力パラメータとされる。
また、燃料タンク5内の燃料温度が高くなると燃料の単位時間当たりの蒸発量が増大するので、燃料タンク5内の燃料温度もシステム内圧に影響を与える。しかしながら、システム内圧に与える影響は、燃料タンク5内の燃料の残量よりも小さいので、図13に示されるように、燃料タンク5内の燃料温度xx3は補助的な入力パラメータとされる。また、吸引ポンプ40の性能も少なからずシステム内圧に影響を与え、従って、図13に示されるように、吸引ポンプ40の流量特性値xx4は補助的な入力パラメータとされる。
図14には、この吸引ポンプ40の流量特性値と吸引ポンプ40の最大ポンプ流量との関係が示されている。図14に示されるように、吸引ポンプ40の流量特性値は、或る基準となる吸引ポンプ40の最大ポンプ流量がGであるときに1.0とされており、各吸引ポンプ40の最大ポンプ流量に応じて吸引ポンプ40の流量特性値が決定される。この吸引ポンプ40の流量特性値は、吸引ポンプ40の能力を示す指標を示しており、吸引ポンプ40の能力が高いと吸引ポンプ40の流量特性値が高くなり、吸引ポンプ40の能力が低いと吸引ポンプ40の流量特性値が低くなる。
図15は、図12に示される出力値y1’、 y2’、y3’、y4’および出力値y1、 y2、y3、y4がどのような状態を表しているかの一覧表を示している。図15からわかるように、出力値y1’および出力値y1は、燃料蒸気流通管12又は13の管壁に小さな穴が開いている穴あき異常を示しており、出力値y2’および出力値y2は、パージ制御弁14が開弁し続ける開弁異常を示しており、出力値y3’および出力値y3は、パージ制御弁14が閉弁し続ける閉弁異常を示しており、出力値y4’および出力値y4は、正常時を示している。
さて、図12に示されるニューラルネットワーク70の入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkとして、図13に示される必須の入力パラメータのみの値、即ち、システム内圧x1、x2・・・xn−1、xnおよび大気圧xx1のみを用いることができる。無論、必須の入力パラメータの値に加えて、影響大の入力パラメータの値を入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkとすることができるし、必須の入力パラメータの値に加えて、影響大の入力パラメータの値および補助的な入力パラメータの値を入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkとすることもできる。なお、以下、必須の入力パラメータの値に加えて、影響大の入力パラメータの値および補助的な入力パラメータの値も入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxk(この例では、k=4)とした場合を例にとって、本発明による実施例について説明する。
図16は、入力値x1、x2・・・xn−1、xnと、入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkと、教師データ、即ち、正解ラベルytとを用いて作成された訓練データセットを示している。この図16において、入力値x1、x2・・・xn−1、xnは、一定時間Δt毎のシステム内圧を示しており、このシステム内圧は、圧力センサ47により検出される。また、図16において、入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkは、即ち、入力値xx1、xx2、xx3、xx4は、夫々、大気圧、燃料タンク5内の燃料の残量、燃料タンク5内の燃料温度、および吸引ポンプ40の流量特性値、即ち、吸引ポンプ40の能力を表す指標を示している。この場合、大気圧は大気圧センサ30により検出され、燃料タンク5内の燃料の残量は、燃料レベルゲージ7および重力センサ60により検出され、燃料タンク5内の燃料温度は温度センサ8により検出され、吸引ポンプ40の流量特性値は図14に示される関係に基づいて算出される。
一方、図16において、yt1・・・ytS (この例では、s=4)は、夫々図15に示される出力値y1’、 y2’、y3’、y4’および出力値y1、 y2、y3、y4に対する教師データ、即ち、正解ラベルを示している。即ち、図16において、yt1は、燃料蒸気流通管12又は13の管壁に小さな穴が開いている穴あき異常が生じているときの正解ラベルを示しており、yt2は、パージ制御弁14が開弁し続ける開弁異常が生じているときの正解ラベルを示しており、yt3は、パージ制御弁14が閉弁し続ける閉弁異常が生じているときの正解ラベルを示しており、yt4は、正常時であるときの正解ラベルを示している。
この場合、例えば、蒸気流通管12又は13の管壁に小さな穴が開いている穴あき異常が生じているときには、正解ラベルyt1のみが1とされ、残りの正解ラベルyt2、yt3、yt4は全て零とされる。同様に、パージ制御弁14が開弁し続ける開弁異常が生じているときには、正解ラベルyt2のみが1とされると共に、残りの正解ラベルyt1、yt3、yt4は全て零とされ、パージ制御弁14が閉弁し続ける閉弁異常が生じているときには、正解ラベルyt3のみが1とされると共に、残りの正解ラベルyt1、yt2、yt4は全て零とされ、正常時であるときには、正解ラベルyt4のみが1とされると共に、残りの正解ラベルyt1、yt2、yt3は全て零とされる。
一方、図16に示されるように、この訓練データセットでは、入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkと、正解ラベルytとの関係を表すm個のデータが取得されている。例えば、2番目のデータ(No. 2)には、取得された入力値x12、x22・・・xn−12、xn2と、入力値xx12、xx22・・・xxk−12、xxk2と、正解ラベルyt12・・・ytS2とが列挙されており、m−1番目のデータ(No. m−1)には、取得された入力パラメータの入力値x1m−1、x2m−1・・・xn−1m−1、xnm−1と、入力値xx1m−1、xx2m−1・・・xxk−1m−1、xxkm−1と、正解ラベルytSm−1が列挙されている。
次に、図16に示される訓練データセットの作成方法について説明する。図17に、訓練データセットの作成方法の一例が示されている。図17を参照すると、図1に示される機関本体1、燃料タンク5、キャニスタ6等が、内圧の調整可能な密閉試験室80内に設置され、試験制御装置81により、燃料蒸気排出防止システムに異常が生じているか否かを推定するために、パージ制御弁14、流路切換弁42および吸引ポンプ40を予め定められた操作順序に従って操作する異常検出処理が行われる。このとき、燃料蒸気排出防止システムの状態が、燃料蒸気流通管12又は13の管壁に小さな穴が開いている穴あき異常が生じている状態、パージ制御弁14が開弁し続ける開弁異常が生じている状態、パージ制御弁14が閉弁し続ける閉弁異常が生じている状態、および正常状態に順次変更され、変更された各状態において、大気圧、燃料タンク5内の燃料の残量、燃料タンク5内の燃料温度、および吸引ポンプ40の流量特性値の組み合わせを順次変更しつつ、繰り返し異常検出処理が行われる。
この異常検出処理が行われている間に、訓練データセットを作成するのに必要なデータが取得される。図18は、この異常検出処理を行うために試験制御装置81内において実行される異常検出処理ルーチンを示している。この異常検出処理ルーチンは、図11に示される一定時間Δt毎の割り込みによって実行される。なお、図18に示すルーチンにおいて、tは、図17において機関の運転が停止されたときの時刻t0を零とし、この時刻t0を起点として求められた時刻を表している。
図18を参照すると、まず初めに、ステップ100において、時刻tが、図11に示される時刻t1前であるか否かが判別される。時刻tが、図11に示される時刻t1前であるときには処理サイクルを終了する。これに対し、時刻tが、図11に示される時刻t1前でないと判別されたときには、ステップ101に進んで、時刻tが、図11に示される時刻t1に達したか否かが判別される。時刻tが、図11に示される時刻t1に達したときにはステップ102に進んで、流路切換弁42をテスト位置に切換える切換指令が発せられ、次いでステップ103に進んで、吸引ポンプ40の作動指令が発せられる。次いで、ステップ104では、圧力センサ47により検出されたシステム内圧xnの取得および記憶が開始される。このときシステム内圧xnは試験制御装置81内に記憶される。
一方、ステップ101において、時刻tが、図11に示される時刻t1ではないと判別されたときにはステップ105に進んで、システム内圧xnの取得および試験制御装置81内への記憶が行われる。即ち、図11に示されるように、システム内圧xnが一定時間Δt毎に取得され、一定時間Δt毎に取得されたシステム内圧xnが試験制御装置81内に記憶される。次いで、ステップ106では、時刻tが、図11に示される時刻t2になったか否かが判別される。時刻tが、図11に示される時刻t2になったときにはステップ107に進んでパージ制御弁14を開弁させる開弁指令が発せられる。
一方、ステップ106において、時刻tが、図11に示される時刻t2ではないと判別されたときにはステップ108に進んで、時刻tが、図11に示される時刻t3になったか否かが判別される。時刻tが、図11に示される時刻t3ではないときには処理サイクルを終了する。これに対し、時刻tが、図11に示される時刻t3になったと判別されたときには、ステップ109に進んで、パージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令が発せられる。
次いで、ステップ110では、流路切換弁42を通常位置に切換える切換指令が発せられる。次いで、ステップ111では、吸引ポンプ40の停止指令が発せられる。次いで、ステップ112では、圧力センサ47により検出されたシステム内圧xnの取得および記憶作用が停止される。次いで、ステップ113において、異常検出処理が終了される。図17に示される試験制御装置81では、異常検出処理が終了すると次の異常検出処理が開始される。
このようにして、燃料蒸気流通管12又は13の管壁に小さな穴が開いている穴あき異常が生じている状態、パージ制御弁14が開弁し続ける開弁異常が生じている状態、パージ制御弁14が閉弁し続ける閉弁異常が生じている状態、および正常状態の各状態において、大気圧、燃料タンク5内の燃料の残量、燃料タンク5内の燃料温度、および吸引ポンプ40の流量特性値の組み合わせが変更されたときの一定時間Δt毎のシステム内圧xnが試験制御装置81に記憶される。即ち、図16に示される訓練データセットのNo.1からNo.mの入力値x1m、x2m・・・xnm−1、xnmと、入力値xx1m、xx2m・・・xxkm−1、xxkmと、正解ラベルytsm(m=1,2,3・・・m)とが試験制御装置81内に記憶される。
このようにして図16に示されるような訓練データセットが作成されると、作成された訓練データセットの電子データを用いて、図12に示されるニューラルネットワーク70の重みの学習が行われる。図17に示される例では、ニューラルネットワークの重みの学習を行うための学習装置82が設けられている。この学習装置82としてパソコンを用いることもできる。図17に示されるように、この学習装置82は、CPU(マイクロプロセッサ)83と、記憶装置、即ち、メモリ84とを具備している。図17に示される例では、図12に示されるニューラルネットワークのノード数、および作成された訓練データセットの電子データが学習装置82のメモリ84に記憶され、CPU83においてニューラルネットワークの重みの学習が行われる。
図19は、学習装置82において行われるニューラルネットワークの重みの学習処理ルーチンを示す。
図19を参照すると、まず初めに、ステップ200において、学習装置82のメモリ84に記憶されているニューラルネットワーク70に対する訓練データセットの各データが読み込まれる。次いで、ステップ201において各ニューラルネットワーク70の入力層 ( L=1) のノード数、隠れ層 ( L=2)および隠れ層 ( L=3)のノード数および出力層 ( L=4) のノード数が読み込まれ、次いで、ステップ202において、これらノード数に基づき、図12に示されるようなニューラルネットワーク70が作成される。
次いで、ステップ203では、ニューラルネットワーク70の重みの学習が行われる。このステップ203では、最初に、図16の1番目(No. 1)の入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkが、ニューラルネットワーク70の入力層 ( L=1) の各ノードに入力される。このときニューラルネットワーク70の出力層の各ノードからは、出力値がy1’、 y2’、y3’、y4’出力されて、これら出力値y1’、 y2’、y3’、y4’は、ソフトマックス層SMに送り込まれて、夫々対応する出力値y1、 y2、y3、y4に変換される。次いで、これらの出力値y1、 y2、y3、y4と、正解ラベルyt1・・・ytS により、前述した交差エントロピー誤差Eが算出され、交差エントロピー誤差Eが小さくなるように、前述した誤差逆伝播法を用いて、ニューラルネットワーク70の重みの学習が行われる。
図16の1番目(No. 1)のデータに基づくニューラルネットワーク70の重みの学習が完了すると、次に、図16の2番目(No. 2)のデータに基づくニューラルネットワーク70の重みの学習が、誤差逆伝播法を用いて行われる。同様にして、図16のm番目(No. m)まで順次、ニューラルネットワーク70の重みの学習が行われる。図16の1番目(No. 1)からm番目(No. m)までの全てについてニューラルネットワーク70の重みの学習が完了すると、ステップ204に進む。
ステップ204では、交差エントロピー誤差Eが、予め設定された設定誤差以下になったか否かが判別される。交差エントロピー誤差Eが、予め設定された設定誤差以下になっていないと判別されたときには、ステップ203に戻り、再度、図16に示される訓練データセットに基づいて、ニューラルネットワーク70の重み学習が行われる。次いで、交差エントロピー誤差Eが、予め設定された設定誤差以下になるまで、ニューラルネットワーク70の重みの学習が続行される。ステップ204において、交差エントロピー誤差Eが、予め設定された設定誤差以下になったと判別されたときには、ステップ205に進んで、ニューラルネットワーク70の学習済み重みが学習装置82のメモリ84に記憶される。このようにして燃料蒸気排出防止システムに異常が生じているか否かを推定することのできる異常判定推定モデルが作成される。
本発明による実施例では、このようにして作成された燃料蒸気排出防止システムの異常判定推定モデルを用いて、市販車両における燃料蒸気排出防止システムの故障診断が行われる、そのためにこの燃料蒸気排出防止システムの異常判定推定モデルが市販車両の電子制御ユニット20に格納される。図20は、この燃料蒸気排出防止システムの異常判定推定モデルを市販車両の電子制御ユニット20に格納するために、電子制御ユニット20において行われる電子制御ユニットへのデータ読み込みルーチンを示している。
図20を参照すると、まず初めに、ステップ300において、図12に示されるニューラルネットワーク70の入力層 ( L=1) のノード数、隠れ層 ( L=2)および隠れ層 ( L=3)のノード数および出力層 ( L=4) のノード数が電子制御ユニット20のメモリ22に読み込まれ、次いで、ステップ301において、これらノード数に基づき、図21に示されるようなニューラルネットワーク71が作成される。図21からわかるように、このニューラルネットワーク71では、ソフトマックス層が除去されている。なお、この場合、ニューラルネットワーク71には、図12に示されるように、ソフトマックス層SMを設けてもよい。次いで、ステップ302において、ニューラルネットワーク70の学習済み重みが電子制御ユニット20のメモリ22に読み込まれる。それにより燃料蒸気排出防止システムの異常判定推定モデルが市販車両の電子制御ユニット20に格納される。
次に、図22を参照しつつ、市販車両において実行される燃料蒸気排出防止システムの異常検出ルーチンについて説明する。このルーチンも一定時間毎の割り込みによって実行される。図22を参照すると、まず初めに、ステップ400において、運転開始停止スイッチ31の出力信号に基づいて、車両の運転が停止されたか否かが判別される。車両の運転が停止されていないときには処理サイクルを終了する。これに対し、車両の運転が停止されたと判別されたときには、ステップ401に進んで、燃料蒸気排出防止システムの異常検出を許可する検出許可フラグがセットされているか否かが判別される。車両の運転が停止された後、最初にステップ401に進んだときには、検出許可フラグがセットされていないので、ステップ402に進む。ステップ402では、図18に示される異常検出処理が実行される。
この異常検出処理が実行されると、システム内圧xnが一定時間Δt毎に取得され、一定時間Δt毎に取得されたシステム内圧xnが電子制御ユニット20のメモリ22に記憶される。次いでステップ403では、異常検出処理が終了したか否かが判別される。異常検出処理が終了していないときには処理サイクルを終了する。これに対し、異常検出処理が終了したと判別されたときにはステップ404に進んで検出許可フラグがセットされる。検出許可フラグがセットされると次の処理サイクルでは、ステップ401からステップ405に進む。
ステップ405では、電子制御ユニット20のメモリ22内に記憶されている一定時間Δt毎のシステム内圧x1、x2・・・xn−1、xnが読み込まれる。次いで、ステップ406では、電子制御ユニット20のメモリ22内に記憶されている入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkが読み込まれる。次いでステップ407では、一定時間Δt毎のシステム内圧xnx1、x2・・・xn−1、xnおよび入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkが、図21に示されるニューラルネットワーク71の入力層 ( L=1) の各ノードに入力される。このときニューラルネットワーク70の出力層の各ノードからは、出力値y1’、 y2’、y3’、y4’が出力され、それにより、ステップ408おいて、出力値y1’、 y2’、y3’、y4’が取得される。
次いで、ステップ409では、取得された出力値y1’、 y2’、y3’、y4’の内から最大の出力値yi’が選定される。このとき、この最大の出力値yi’に対応した図15に示される異常状態が生じていると推定される。従って、ステップ410では、この最大の出力値yi’に対応した図15に示される異常状態が生じていると判定され、例えば、最大の出力値yi’に対応した図15に示される異常状態が生じていることを示す警告灯が点灯される。次いでステップ411において、異常検出が終了される。
このように本発明に係る燃料蒸気排出防止システムの異常検出装置では、燃料蒸気排出防止システムが、活性炭層9の両側に夫々燃料蒸気室10と大気圧室11が形成されているキャニスタ6を具備しており、燃料蒸気室10が一方では燃料タンク5の燃料液面上方の内部空間に連通していると共に、他方ではパージ制御弁14を介して機関の吸気通路内に連結されている。更に、燃料蒸気排出防止システムが、大気圧室11を大気と吸引ポンプ40に選択的に連結可能な流路切換弁42と、燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力を検出する圧力センサ47とを具備している。車両の運転停止時に、パージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令と、流路切換弁42の切換位置を、大気圧室11が吸引ポンプ40に連結される切換位置に切換える切換指令と、燃料タンク内およびキャニスタ6内を負圧にするために吸引ポンプ40を作動させるポンプ作動指令とを発生させる異常検出処理が行われる。この異常検出処理が行われているときに、圧力センサ40により一定時間毎に検出された燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力が記憶装置に記憶され、記憶装置に記憶された一定時間毎の燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力および異常検出処理が行われたときの少なくとも大気圧をニューラルネットワークの入力パラメータとし、上述のシステムに燃料蒸気を漏洩させる穴あきが生じているときを正解ラベルとして、重みの学習が行われた学習済みニューラルネットワークが記憶されており、車両の運転停止時に、学習済みニューラルネットワークを用いて、上述の入力パラメータから、燃料蒸気を漏洩させる穴あき異常が検出される。
この場合、本発明による実施例では、上述の記異常検出処理が、パージ制御弁14の閉弁指令の発生後、パージ制御弁14を開弁させる開弁指令を発生させる処理を含んでおり、記憶装置に記憶された一定時間毎の燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力および異常検出処理が行われたときの少なくとも大気圧をニューラルネットワークの入力パラメータとし、上述のシステムに燃料蒸気を漏洩させる穴あきが生じているとき、パージ制御弁14が開弁し続ける開弁異常を生じているとき、およびパージ制御弁14が閉弁し続ける閉弁異常を生じているときを夫々正解ラベルとして、重みの学習が行われた学習済みニューラルネットワークが記憶されており、車両の運転停止時に、学習済みニューラルネットワークを用いて、上述の入力パラメータから、燃料蒸気を漏洩させる穴あき異常、パージ制御弁14の開弁異常およびパージ制御弁14の閉弁異常が検出される。
また、本発明による実施例では、上述の入力パラメータが、記憶装置に記憶された一定時間毎の燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力および異常検出処理が行われたときの大気圧と、異常検出処理が行われたときの燃料タンク5の燃料の残量とからなる。また、本発明による実施例では、上述の入力パラメータが、記憶装置に記憶された一定時間毎の燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力および異常検出処理が行われたときの大気圧と、異常検出処理が行われたときの燃料タンク5の燃料の残量と、燃料タンク5の燃料の温度と、吸引ポンプ40の能力を示す指標からなる。
図23Aから図38は、更に多くの異常状態を検出するようにした別の実施例を示している。この別の実施例では、図1に示される吸引ポンプモジュール16として、図23Aおよび図23Bに図解的に表された吸引ポンプモジュール16が用いられている。図23Aおよび図23Bを参照すると、図23Aおよび図23Bに示される吸引ポンプモジュール16では、図2Aおよび図2Bに示される吸引ポンプモジュール16に対して、大気圧室連結路43と吸引通路46とを連結する基準圧検出通路50が追加されており、この基準圧検出通路50内には絞り部51が設けられている。
次に、図23Aおよび図23Bに示される吸引ポンプモジュール16を用いて車両の運転停止時に行われる異常検出処理について説明する。図24には、図7と同様な、パージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令およびパージ制御弁14を開弁させる開弁指令と、流路切換弁42を通常位置に切換える切換指令および流路切換弁42をテスト位置に切換える切換指令と、吸引ポンプ40の作動指令および吸引ポンプ40の停止指令と、圧力センサ47により検出されたシステム内圧の変化が示されている。
図24においてt0は、車両の運転停止時を示しており、このときにはパージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令、流路切換弁42を通常位置に切換える切換指令、および吸引ポンプ40の停止指令が発せられている。図24はこれらの指令に基づいて、パージ制御弁14、流路切換弁42および吸引ポンプ40が正常に作動しているときを示している。従って、車両の運転停止時には、パージ制御弁14は閉弁せしめられており、流路切換弁42は通常位置に切換えられており、吸引ポンプ40は停止せしめられている。この状態は、車両の運転停止時から時刻t1までの一定期間継続される。この一定期間中は、吸引ポンプ40が停止され続けるので、吸引ポンプ40による吸引作用は行われず、従って、圧力センサ47により検出されているシステム内圧は大気圧となっている。
次いで、時刻t1に達すると、吸引ポンプ40の作動指令が発せられる。このとき流路切換弁42は、図23Aに示される通常位置に切換えられており、従って、吸引ポンプ40が作動すると、外気が大気連通管17から大気連通管連結路44、大気連通路45、第1通路48、大気連通室連結路43、絞り部51を有する基準圧検出通路50、および吸引通路46を介して吸引される。このとき絞り部51が設けられているために、吸引通路46内は負圧となり、従って、圧力センサ47により検出されるシステム内圧は、図24に示されるように低下する。
この場合、圧力センサ47により検出されたシステム内圧の変化は、絞り部51の径と同じ径の穴が開いたときのシステム内圧の変化を表しており、従って、このときのシステム内圧の変化は、燃料蒸気排出防止システムにおいて穴が開いたか否かを判断する際の基準となる。従って、通路50は基準圧検出通路と称される。次いで、時刻t2に達すると、流路切換弁42を、図23Bに示されるテスト位置に切換える切換指令が発せられる。流路切換弁42がテスト位置に切換えられると、このとき燃料タンク5内およびキャニスタ6内は大気圧となっているので、吸引通路46内の圧力が上昇する。従って、圧力センサ47により検出されるシステム内圧は、時刻t2に達すると、図24に示されるように、上昇し、次いで、時刻t3に達すると、吸引ポンプ40による燃料タンク5内およびキャニスタ6内からの空気の吸引作用により、低下し始める。次いで、時刻t4に達する頃になると、圧力低下が生じなくなり、システム内圧は低下した状態で停滞する。
時刻t4に達すると、パージ制御弁14を開弁させる開弁指令が発せられる。一方このとき、流路切換弁42はテスト位置に維持され、吸引ポンプ40は作動し続けられる。従って、このときには、吸引ポンプ40による吸引作用は続行されるが、パージ制御弁14を開弁せしめられるために、システム内圧は急上昇し、大気圧となる。次いで、時刻t5に達すると、パージ制御弁14、流路切換弁42および吸引ポンプ40は、車両の運転停止時の状態に戻される。即ち、時刻t5に達すると、パージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令、流路切換弁42を通常位置に切換える切換指令、および吸引ポンプ40の停止指令が発せられる。
一方、この実施例では、図24に示されるように、車両の運転停止時から、即ち、時刻t0から時刻t5の期間xtにおいて、一定時間Δt毎に、圧力センサ47によってシステム内圧が検出される。図24において、x1、x2・・・xn−1、xnは、圧力センサ47により一定時間Δt毎に検出されたシステム内圧を示している。圧力センサ47により検出された一定時間Δt毎のシステム内圧x1、x2・・・xn−1、xnは、一旦、記憶装置に記憶される。この実施例でも、この一旦、記憶装置に記憶された一定時間Δt毎のシステム内圧x1、x2・・・xn−1、xnに基づき、ニューラルネットワークを用いて、燃料蒸気排出防止システムに異常が生じているか否かを推定することのできる異常判定推定モデルが作成される。
この実施例においても、燃料蒸気排出防止システムに異常が生じると、圧力センサ47により検出されるシステム内圧の変化パターンが、図24に示される正常時のシステム内圧の変化パターンと異なる変化パターンとなる。次に、このことについて、図25から図32を参照しつつ説明する。なお、図25から図32には、図24と同様に、パージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令およびパージ制御弁14を開弁させる開弁指令と、流路切換弁42を通常位置に切換える切換指令および流路切換弁42をテスト位置に切換える切換指令と、吸引ポンプ40の作動指令および吸引ポンプ40の停止指令と、圧力センサ47により検出されるシステム内圧の変化が示されている。また、図25から図32において、破線は、図24に示される正常時のシステム内圧の変化パターンを示している。
図25の実線は、圧力センサ47に異常が生じた場合に圧力センサ47により検出されるシステム内圧の変化パターンを示している。圧力センサ47に異常が生じて圧力センサ47の出力が安定しなくなると、時刻t0と時刻t1の間におけるように、圧力センサ47により検出されたシステム内圧は、大気圧に維持されることなく、変動を繰り返す。従って、この場合のシステム内圧の変化パターンは、正常時のシステム内圧の変化パターンと異なる変化パターンとなる。
図26の実線は、吸引ポンプ40に停止指令が発せられても、吸引ポンプ40が作動し続ける吸引ポンプ40の作動継続異常が生じた場合に圧力センサ47により検出されるシステム内圧の変化パターンを示している。図26からわかるように、時刻t0と時刻t2の間では、流路切換弁42は、図23Aに示される通常位置に切換えられており、従って、このとき吸引ポンプ40が作動せしめられていると、外気が大気連通管17から大気連通管連結路44、大気連通路45、第1通路48、大気連通室連結路43、絞り部51を有する基準圧検出通路50、および吸引通路46を介して吸引される。このとき吸引通路46内は負圧となり、従って、このとき圧力センサ47により検出されるシステム内圧は、図26に示されるように低い値を示す。従って、この場合のシステム内圧の変化パターンも、正常時のシステム内圧の変化パターンと異なる変化パターンとなる。
図27の実線は、吸引ポンプ40に作動指令が発せられても、吸引ポンプ40が停止し続ける吸引ポンプ40の作動停止異常が生じた場合に圧力センサ47により検出されるシステム内圧の変化パターンを示している。このときには燃料蒸気排出防止システム内の全体が大気圧となるため、図27に示されるように、圧力センサ47により検出されるシステム内圧は大気圧に維持される。従って、この場合のシステム内圧の変化パターンも、正常時のシステム内圧の変化パターンと異なる変化パターンとなる。
図28の実線は、流路切換弁42が、図23Bに示されるテスト位置に固定され続ける流路切換弁42のテスト位置固着異常が生じた場合に圧力センサ47により検出されるシステム内圧の変化パターンを示している。この場合には、時刻t1において吸引ポンプ40が作動せしめられると、外気が大気連通管17から大気連通管連結路44、大気連通路45、第1通路48、大気連通室連結路43、絞り部51を有する基準圧検出通路50、および吸引通路46を介して吸引され、圧力センサ47により検出されるシステム内圧は、図29に示されるように急速に低下し、低下した状態に維持される。従って、この場合のシステム内圧の変化パターンも、正常時のシステム内圧の変化パターンと異なる変化パターンとなる。
図29の実線は、流路切換弁42が、図23Aに示される通常位置に固定され続ける流路切換弁42の通常位置固着異常が生じた場合に圧力センサ47により検出されるシステム内圧の変化パターンを示している。この場合には、時刻t1において吸引ポンプ40が作動せしめられると、燃料タンク5内およびキャニスタ6内の空気の吸引作用が開始され、従って、圧力センサ47により検出されるシステム内圧は、図28に示されるように、徐々に低下する。従って、この場合のシステム内圧の変化パターンも、正常時のシステム内圧の変化パターンと異なる変化パターンとなる。
図30の実線は、例えば、燃料蒸気流通管12又は13の管壁に小さな穴が開いた場合のシステム内圧の変化パターンを示している。この場合には、小さな穴を介して外気がシステム内に流入し続けるため、システム内圧は正常時のシステム内圧まで低下せず、従って、この場合のシステム内圧の変化パターンも、正常時のシステム内圧の変化パターンと異なる変化パターンとなる。
図31の実線は、パージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令が発せられてもパージ制御弁14を開弁し続ける開弁異常を生じているときを示している。このときには、燃料タンク5内およびキャニスタ6内は大気圧となっている。従って、時刻t2において、流路切換弁42が、図23Aに示される通常位置から図23Bに示されるテスト位置に切換えられ、このとき吸引ポンプ40が作動せしめられていても、圧力センサ47により検出されるシステム内圧は、図31に示されるように大気圧まで上昇して大気圧に維持される。従って、この場合のシステム内圧の変化パターンも、正常時のシステム内圧の変化パターンと異なる変化パターンとなる。
図32の実線は、パージ制御弁14を開弁させる開弁指令が発せられてもパージ制御弁14を閉弁し続ける閉弁異常を生じているときを示している。このときには、時刻t4において、パージ制御弁14を開弁させる開弁指令が発せられても、パージ制御弁14を閉弁し続けているので、燃料タンク5内およびキャニスタ6内は負圧に維持され、圧力センサ47により検出されるシステム内圧は、図32に示されるように低い状態に維持される。従って、この場合のシステム内圧の変化パターンも、正常時のシステム内圧の変化パターンと異なる変化パターンとなる。
このように異常が生ずると、システム内圧の変化パターンは、正常時のシステム内圧の変化パターンと異なる変化パターンとなる。そこでこの実施例でも、図24に示されるように、時刻t0から時刻t5の期間xtにおいて、一定時間Δt毎に、圧力センサ47によってシステム内圧が検出される。図24において、x1、x2・・・xn−1、xnは、圧力センサ47により一定時間Δt毎に検出されたシステム内圧を示している。圧力センサ47により検出された一定時間Δt毎のシステム内圧x1、x2・・・xn−1、xnは、一旦、記憶装置に記憶される。この実施例においても、一旦、記憶装置に記憶された一定時間Δt毎のシステム内圧x1、x2・・・xn−1、xnに基づき、ニューラルネットワークを用いて、燃料蒸気排出防止システムに異常が生じているか否かを推定することのできる異常判定推定モデルが作成される。
次に、この異常判定推定モデルの作成に用いられるニューラルネットワーク72について図33を参照しつつ説明する。図33を参照すると、このニューラルネットワーク72においても、図12に示されるニューラルネットワークと同様に、L=1は入力層、L=2および L=3は隠れ層、L=4は出力層を夫々示している。図33に示されるように、入力層 ( L=1) がn+k個のノードからなり、n個の入力値x1、x2・・・xn−1、xnとk個の入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkが、入力層 ( L=1) の各ノードに入力されている。この場合、n個の入力値x1、x2・・・xn−1、xnは、図24に示される一定時間Δt毎のシステム内圧x1、x2・・・xn−1、xnである。
一方、図33には隠れ層 ( L=2)および隠れ層 ( L=3)が記載されているが、これら隠れ層の層数は、1個又は任意の個数とすることができ、またこれら隠れ層のノードの数も任意の個数とすることができる。また、この実施例では、出力層 ( L=4) のノードの数は9個とされており、出力層 ( L=4) のノードからの出力値がy1’、 y2’、y3’、y4’、y5’、y6’、y7’、y8’、y9’で示されている。これら出力値y1’、 y2’、y3’、y4’ 、y5’、y6’、y7’、y8’、y9’は、ソフトマックス層SMに送り込まれて、夫々対応する出力値y1、 y2、y3、y4、y5、y6、y7、y8、y9 に変換される。これら出力値y1、 y2、y3、y4、y5、y6、y7、y8、y9の合計は1であり、各出力値y1、 y2、y3、y4、y5、y6、y7、y8、y9は1に対する割合を表している。
図33における入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkは、 図12における入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkと同一である。これら入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkについては、図13に示される一覧表を参照しつつ既に説明したので、これら入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkについての説明は省略する。
図34は、図33に示される出力値y1’、 y2’、y3’、y4’ 、y5’、y6’、y7’、y8’、y9’および出力値y1、 y2、y3、y4、y5、y6、y7、y8、y9がどのような状態を表しているかの一覧表を示している。図34からわかるように、出力値y1’および出力値y1は、燃料蒸気流通管12又は13の管壁に小さな穴が開いている穴あき異常を示しており、出力値y2’および出力値y2は、パージ制御弁14が開弁し続ける開弁異常を示しており、出力値y3’および出力値y3は、パージ制御弁14が閉弁し続ける閉弁異常を示しており、出力値y4’および出力値y4は、圧力センサ47の異常を示しており、出力値y5’および出力値y5は、流路切換弁42の通常位置固着異常を示しており、出力値y6’および出力値y6は、流路切換弁42のテスト位置固着異常を示しており、出力値y7’および出力値y7は、吸引ポンプ40の作動継続異常を示しており、出力値y8’および出力値y8は、吸引ポンプ40の作動停止異常を示しており、出力値y9’および出力値y9は、正常時を示している。
さて、この実施例においても、図33に示されるニューラルネットワーク72の入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkとして、図34に示される必須の入力パラメータのみの値、即ち、システム内圧x1、x2・・・xn−1、xnおよび大気圧xx1のみを用いることができる。無論、必須の入力パラメータの値に加えて、影響大の入力パラメータの値を入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkとすることができるし、必須の入力パラメータの値に加えて、影響大の入力パラメータの値および補助的な入力パラメータの値を入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkとすることもできる。なお、以下、必須の入力パラメータの値に加えて、影響大の入力パラメータの値および補助的な入力パラメータの値も入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxk(この例では、k=4)とした場合を例にとって、この実施例について説明する。
この実施例でも、最初に、入力値x1、x2・・・xn−1、xnと、入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkと、教師データ、即ち、正解ラベルytとを用いて、図16に示される訓練データセットが作成される。この実施例でも、図16において、入力値x1、x2・・・xn−1、xnは、圧力センサ47により検出された一定時間Δt毎のシステム内圧を示しており、入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkは、即ち、入力値xx1、xx2、xx3、xx4は、夫々、大気圧、燃料タンク5内の燃料の残量、燃料タンク5内の燃料温度、および吸引ポンプ40の流量特性値を示している。
一方、図16において、yt1・・・ytS (この例では、s=9)は、夫々図34に示される出力値y1’、 y2’、y3’、y4’ 、y5’、y6’、y7’、y8’、y9’および出力値y1、 y2、y3、y4、y5、y6、y7、y8、y9に対する教師データ、即ち、正解ラベルを示している。即ち、図16において、yt1は、燃料蒸気流通管12又は13の管壁に小さな穴が開いている穴あき異常が生じているときの正解ラベルを示しており、yt2は、パージ制御弁14が開弁し続ける開弁異常が生じているときの正解ラベルを示しており、yt3は、パージ制御弁14が閉弁し続ける閉弁異常が生じているときの正解ラベルを示しており、yt4は、圧力センサ47に異常が生じているときの正解ラベルを示しており、yt5は、流路切換弁42の通常位置固着異常が生じているときの正解ラベルを示しており、yt6は、流路切換弁42のテスト位置固着異常が生じているときの正解ラベルを示しており、yt7は、吸引ポンプ40の作動継続異常が生じているときの正解ラベルを示しており、yt8は、吸引ポンプ40の作動停止異常が生じているときの正解ラベルを示しており、yt9は、正常時であるときの正解ラベルを示している。
この場合、例えば、蒸気流通管12又は13の管壁に小さな穴が開いている穴あき異常が生じているときには、正解ラベルyt1のみが1とされ、残りの正解ラベルyt2、yt3、yt4、yt5、yt6、yt7、yt8、yt9 は全て零とされる。同様に、パージ制御弁14が開弁し続ける開弁異常が生じているときには、正解ラベルyt2のみが1とされると共に、残りの正解ラベルyt1、yt3、yt4、yt5、yt6、yt7、yt8、yt9 は全て零とされ、パージ制御弁14が閉弁し続ける閉弁異常が生じているときには、正解ラベルyt3のみが1とされると共に、残りの正解ラベルyt1、yt2、yt4、yt5、yt6、yt7、yt8、yt9 は全て零とされ、圧力センサ47に異常が生じているときには、正解ラベルyt4のみが1とされると共に、残りの正解ラベルyt1、yt2、yt3、yt5、yt6、yt7、yt8、yt9 は全て零とされ、流路切換弁42の通常位置固着異常が生じているときには、正解ラベルyt5のみが1とされると共に、残りの正解ラベルyt1、yt2、yt3、yt4、yt6、yt7、yt8、yt9 は全て零とされ、流路切換弁42のテスト位置固着異常が生じているときには、正解ラベルyt6のみが1とされると共に、残りの正解ラベルyt1、yt2、yt3、yt4、yt5、yt7、yt8、yt9 は全て零とされ、吸引ポンプ40の作動継続異常が生じているときには、正解ラベルyt7のみが1とされると共に、残りの正解ラベルyt1、yt2、yt3、yt4、yt5、yt6、yt8、yt9 は全て零とされ、吸引ポンプ40の作動停止異常が生じているときには、正解ラベルyt8のみが1とされると共に、残りの正解ラベルyt1、yt2、yt3、yt4、yt5、yt6、yt7、yt9 は全て零とされ、正常時であるときには、正解ラベルyt9のみが1とされ、残りの正解ラベルyt1、yt2、yt3、yt4、yt5、yt6、yt7、yt8 は全て零とされる。
一方、図16に示されるように、この訓練データセットでは、入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkと、正解ラベルytとの関係を表すm個のデータが取得されている。例えば、2番目のデータ(No. 2)には、取得された入力値x12、x22・・・xn−12、xn2と、入力値xx12、xx22・・・xxk−12、xxk2と、正解ラベルyt12・・・ytS2とが列挙されており、m−1番目のデータ(No. m−1)には、取得された入力パラメータの入力値x1m−1、x2m−1・・・xn−1m−1、xnm−1と、入力値xx1m−1、xx2m−1・・・xxk−1m−1、xxkm−1と、正解ラベルytSm−1が列挙されている。
この訓練データセットも、図17を参照しつつ既に説明した方法と同様な方法によって作成される。即ち、この場合にも、図17に示される試験制御装置81により、燃料蒸気排出防止システムに異常が生じているか否かを推定するために、パージ制御弁14、流路切換弁42および吸引ポンプ40を予め定められた操作順序に従って操作する異常検出処理が行われる。このとき、燃料蒸気排出防止システムの状態が、燃料蒸気流通管12又は13の管壁に小さな穴が開いている穴あき異常が生じている状態、パージ制御弁14が開弁し続ける開弁異常が生じている状態、パージ制御弁14が閉弁し続ける閉弁異常が生じている状態、圧力センサ47に異常が生じている状態、流路切換弁42の通常位置固着異常が生じている状態、流路切換弁42のテスト位置固着異常が生じている状態、吸引ポンプ40の作動継続異常が生じている状態、吸引ポンプ40の作動停止異常が生じている状態、および正常状態に順次変更され、変更された各状態において、大気圧、燃料タンク5内の燃料の残量、燃料タンク5内の燃料温度、および吸引ポンプ40の流量特性値の組み合わせを順次変更しつつ、繰り返し異常検出処理が行われる。
この異常検出処理が行われている間に、訓練データセットを作成するのに必要なデータが取得される。図35は、この異常検出処理を行うために試験制御装置81内において実行される異常検出処理ルーチンを示している。この異常検出処理ルーチンは、図24に示される一定時間Δt毎の割り込みによって実行される。なお、図35に示すルーチンにおいて、tは、図24において機関の運転が停止されたときの時刻t0を零とし、この時刻t0を起点として求められた時刻を表している。
図35を参照すると、まず初めに、ステップ500において、圧力センサ47により検出されたシステム内圧xnの取得および記憶が行われる。即ち、図24に示されるように、システム内圧xnが一定時間Δt毎に取得され、一定時間Δt毎に取得されたシステム内圧xnが試験制御装置81内に記憶される。次いで、ステップ501では、時刻tが、図24に示される時刻t1であるか否かが判別される。時刻tが、図24に示される時刻t1でないときにはステップ502に進んで、時刻tが、図24に示される時刻t2であるか否かが判別される。時刻tが、図24に示される時刻t2でないときにはステップ503に進んで、時刻tが、図24に示される時刻t4であるか否かが判別される。時刻tが、図24に示される時刻t4でないときにはステップ504に進んで、時刻tが、図24に示される時刻t5であるか否かが判別される。時刻tが、図24に示される時刻t5でないときには処理サイクルを終了する。
一方、ステップ501において、時刻tが、図24に示される時刻t1であると判別されたときにはステップ505に進んで、吸引ポンプ40の作動指令が発せられる。次いで、処理サイクルを終了する。また、ステップ502において、時刻tが、図24に示される時刻t2であると判別されたときにはステップ506に進んで、流路切換弁42をテスト位置に切換える切換指令が発せられる。次いで、処理サイクルを終了する。また、ステップ503において、時刻tが、図24に示される時刻t4であると判別されたときにはステップ507に進んで、パージ制御弁14を開弁させる開弁指令が発せられる。次いで、処理サイクルを終了する。
一方、ステップ504において、時刻tが、図24に示される時刻t5であると判別されたときにはステップ508に進んで、パージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令が発せられる。次いで、ステップ509では、流路切換弁42を通常位置に切換える切換指令が発せられる。次いで、ステップ510では、吸引ポンプ40の停止指令が発せられる。次いで、ステップ511では、圧力センサ47により検出されたシステム内圧xnの取得および記憶作用が停止される。次いで、ステップ512において、異常検出処理が終了される。図17に示される試験制御装置81では、異常検出処理が終了すると次の異常検出処理が開始される。
このようにして、燃料蒸気流通管12又は13の管壁に小さな穴が開いている穴あき異常が生じている状態、パージ制御弁14が開弁し続ける開弁異常が生じている状態、パージ制御弁14が閉弁し続ける閉弁異常が生じている状態、圧力センサ47に異常が生じている状態、流路切換弁42の通常位置固着異常が生じている状態、流路切換弁42のテスト位置固着異常が生じている状態、吸引ポンプ40の作動継続異常が生じている状態、吸引ポンプ40の作動停止異常が生じている状態、および正常状態の各状態において、大気圧、燃料タンク5内の燃料の残量、燃料タンク5内の燃料温度、および吸引ポンプ40の流量特性値の組み合わせが変更されたときの一定時間Δt毎のシステム内圧xnが試験制御装置81に記憶される。即ち、図16に示される訓練データセットのNo.1からNo.mの入力値x1m、x2m・・・xnm−1、xnmと、入力値xx1m、xx2m・・・xxkm−1、xxkmと、正解ラベルytsm(m=1,2,3・・・m)とが試験制御装置81内に記憶される。
このようにして訓練データセットが作成されると、作成された訓練データセットの電子データを用いて、図33に示されるニューラルネットワーク72の重みの学習が行われる。この場合、図33に示されるニューラルネットワーク72の重みの学習も、図19に示されるニューラルネットワークの重みの学習処理ルーチンを用いて、図17に示される学習装置82により行われる。ニューラルネットワーク72の重みの学習が完了すると、ニューラルネットワーク72の学習済み重みが学習装置82のメモリ84に記憶される。このようにして燃料蒸気排出防止システムに異常が生じているか否かを推定することのできる異常判定推定モデルが作成される。
この実施例でも、このようにして作成された燃料蒸気排出防止システムの異常判定推定モデルを用いて、市販車両における燃料蒸気排出防止システムの故障診断が行われる、そのためにこの燃料蒸気排出防止システムの異常判定推定モデルは、図20に示される電子制御ユニットへのデータ読み込みルーチンを用いて、市販車両の電子制御ユニット20に格納される。即ち、図20を参照すると、まず初めに、ステップ300において、図33に示されるニューラルネットワーク72の入力層 ( L=1) のノード数、隠れ層 ( L=2)および隠れ層 ( L=3)のノード数および出力層 ( L=4) のノード数が電子制御ユニット20のメモリ22に読み込まれ、次いで、ステップ301において、これらノード数に基づき、図36に示されるようなニューラルネットワーク73が作成される。図36からわかるように、このニューラルネットワーク73では、ソフトマックス層が除去されている。なお、この場合、ニューラルネットワーク73には、図33に示されるように、ソフトマックス層SMを設けてもよい。次いで、ステップ302において、ニューラルネットワーク72の学習済み重みが電子制御ユニット20のメモリ22に読み込まれる。それにより燃料蒸気排出防止システムの異常判定推定モデルが市販車両の電子制御ユニット20に格納される。
この実施例でも、市販車両において実行される燃料蒸気排出防止システムの異常検出ルーチンとして、図22に示されるルーチンが用いられる。この実施例において図22に示されるルーチンを用いた場合でも、ステップ400からステップ406までは、以前に説明した内容と変わらないので、ステップ400からステップ406については、説明を省略する。一方、ステップ407以降については、以前に説明した内容と若干異なるので、ステップ407以降についてのみ、簡単に説明する。
即ち、ステップ407では、一定時間Δt毎のシステム内圧xnx1、x2・・・xn−1、xnおよび入力値xx1、xx2・・・xxk−1、xxkが、図36に示されるニューラルネットワーク73の入力層 ( L=1) の各ノードに入力される。このときニューラルネットワーク73の出力層の各ノードからは、出力値y1’、 y2’、y3’、y4’ 、y5’、y6’、y7’、y8’、y9’が出力され、それにより、ステップ408おいて、出力値y1’、 y2’、y3’、y4’ 、y5’、y6’、y7’、y8’、y9’が取得される。
次いで、ステップ409では、取得された出力値y1’、 y2’、y3’、y4’ 、y5’、y6’、y7’、y8’、y9’の内から最大の出力値yi’が選定される。このときこの最大の出力値yi’に対応した図34に示される異常状態が生じていると推定される。従って、従って、ステップ410では、この最大の出力値yi’に対応した図34に示される異常状態が生じていると判定され、例えば、最大の出力値yi’に対応した図34に示される異常状態が生じていることを示す警告灯が点灯される。次いでステップ411において、異常検出が終了される。
このように本発明の別の実施例に係る燃料蒸気排出防止システムの異常検出装置では、燃料蒸気排出防止システムが、活性炭層9の両側に夫々燃料蒸気室10と大気圧室11が形成されているキャニスタ6を具備しており、燃料蒸気室10が一方では燃料タンク5の燃料液面上方の内部空間に連通していると共に、他方ではパージ制御弁14を介して機関の吸気通路内に連結されている。更に、燃料蒸気排出防止システムが、大気圧室11を大気と吸引ポンプ40に選択的に連結可能な流路切換弁42を具備しており、流路切換弁42から大気圧室11に向かう通路43と流路切換弁42から吸引ポンプ40に向かう吸引通路46とが絞り部51を有する基準圧検出通路50により連結されており、流路切換弁42から吸引ポンプ40に向かう吸引通路46内に圧力センサ47が配置されている。車両の運転停止時に、パージ制御弁14を閉弁させる閉弁指令と、車両の運転停止後、流路切換弁42の切換位置を大気圧室11が大気に連結される切換位置に維持しつつ予め設定された時間が経過したときに、燃料タンク5内およびキャニスタ6内を負圧にするために吸引ポンプ40を作動させるポンプ作動指令と、ポンプ作動指令の発生後、流路切換弁42の切換位置を大気圧室11が吸引ポンプ40に連結される切換位置に切換える切換指令と、この切換指令の発生後、パージ制御弁14を開弁させる開弁指令を発生させる異常検出処理が行われる。この異常検出処理が行われているときに、圧力センサ47により一定時間毎に検出された燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力が記憶装置に記憶され、記憶装置に記憶された一定時間毎の燃料タンク5内およびキャニスタ6内の圧力および異常検出処理が行われたときの少なくとも大気圧をニューラルネットワークの入力パラメータとし、上述のシステムに燃料蒸気を漏洩させる穴あきが生じているときを正解ラベルとして、重みの学習が行われた学習済みニューラルネットワークが記憶されており、車両の運転停止時に、この学習済みニューラルネットワークを用いて、上述の入力パラメータから、燃料蒸気を漏洩させる穴あき異常が検出される。
この場合、本発明による実施例では、上述の記憶装置に記憶された一定時間毎の燃料タンク5内およびキャニスタ内6の圧力および異常検出処理が行われたときの少なくとも大気圧をニューラルネットワークの入力パラメータとし、燃料蒸気排出防止システムに燃料蒸気を漏洩させる穴あきが生じているとき、パージ制御弁14が開弁し続ける開弁異常を生じているとき、パージ制御弁14が閉弁し続ける閉弁異常を生じているとき、圧力センサ47が異常を生じているとき、流路切換弁42の切換位置が大気圧室11を大気に連結させる切換位置に維持される切換異常を生じているとき、流路切換弁42の切換位置が大気圧室11を吸引ポンプ40に連結させる切換位置に維持される切換異常を生じているとき、吸引ポンプ40が作動し続ける異常を生じているとき、および吸引ポンプ40が停止し続ける異常を生じているときを夫々正解ラベルとして、重みの学習が行われた学習済みニューラルネットワークが記憶されており、車両の運転停止時に、この学習済みニューラルネットワークを用いて、上述の入力パラメータから、燃料蒸気を漏洩させる穴あき異常、パージ制御弁の開弁異常、パージ制御弁の閉弁異常、圧力センサの異常、流路切換弁の切換異常、および吸引ポンプの異常が検出される。
更に、この場合、本発明による実施例では、上述の入力パラメータが、記憶装置に記憶された一定時間毎の燃料タンク5内およびキャニスタ内6の圧力および異常検出処理が行われたときの大気圧と、異常検出処理が行われたときの燃料タンク5内の燃料の残量とからなる。また、この場合、本発明による実施例では、上述の入力パラメータが、記憶装置に記憶された一定時間毎の燃料タンク5内およびキャニスタ内6の圧力および異常検出処理が行われたときの大気圧と、異常検出処理が行われたときの燃料タンク5の燃料の残量と、燃料タンク5の燃料の温度と、吸引ポンプ40の能力を示す指標からなる。