以下、本発明による成形装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[成形装置の構成]
図1は、成形装置の概略構成図であり、この成形装置は、図5に示されるように、成形材料100から突起付きパイプ200を成形する装置である。成形された突起付きパイプ200は、筒状(この例では、断面矩形の角筒状)のパイプ本体201と、パイプ本体201の外側面(この例では、隣接する外側面が成す角部)から外側へ突出すると共にパイプ本体201の軸心O(図12参照)に平行な方向に延びる突起202と、両端部203と、を有している。なお、両端部203は、後工程によって不要部分として切断される。
図1に示されるように、成形装置1は、上型(金型)10及び下型(金型)20と、移動機構30と、気体供給部40と、パイプ保持機構60と、加熱機構70と、水循環機構80と、を備えている。移動機構30は、上型10及び下型20の成形面同士の間に突起付きパイプ200を成形するための成形空間を画成するように、上型10及び下型20を移動させる。気体供給部40は、突起付きパイプ200の基となる成形材料100に気体を供給して成形材料100を膨張させる。パイプ保持機構60は、成形材料100を上下方向に昇降可能に保持する。加熱機構70は、パイプ保持機構60で保持されている成形材料100に通電して加熱する。水循環機構80は、上型10及び下型20に形成された冷却水通路13,23を介して、上型10及び下型20を強制的に水冷する。
図2は、図1のII-II線に沿う金型の横断面図である。上型10は、図2に示されるように、第1上型11と、第2上型12と、を有している。下型20は、第1下型21と、第2下型22と、を有している。本実施形態では、第1上型11と第1下型21とは、同一の型である。また、第2上型12と第2下型22とは、同一の型である。第1上型11及び第2上型12と、第1下型21及び第2下型22とは、図5に示すパイプ本体201の軸心O(図11、図12参照)に対して点対称に配置されている。
再び図2に戻って、第1上型11は、スライド14の下面に固定されている。スライド14は、図1に示されるように、横揺れしないようにガイドシリンダ15によってガイドされている。スライド14は、加圧シリンダ33によって吊るされ、上下方向(以下、「Z方向」とする)に移動可能となっている。
第1上型11は、図2に示されるように、スライド14の下面に固定された板状のベース11aと、ベース11aから略中央下方に突出した成形部11bと、ベース11aの図示右側端部から下方に突出し、第2上型12を図示左右方向に移動可能に収容し支持する支持部11cと、を有している。ベース11a、成形部11b及び支持部11cは、鋼鉄等で一体形成されている。なお、第1上型11は、スライド14に例えばボルダ等を介して間接的に取付けられていてもよい。
成形部11bは、パイプ本体201の軸心Oに平行な方向(以下、「Y方向」とする)に延びている。成形部11bは、突起付きパイプ200の外側面に対応する成形面17a,17b,17cを有している。成形面17a,17b,17cは、互いに連続しており、上方から順に、成形面17a,成形面17b及び成形面17cと並んでいる。成形面17aは、Z方向に平行な面であって、成形面17cは、パイプ本体201の軸心Oに直交する方向のうちの左右方向(以下、「X方向」とする)に平行な面であって、成形面17bは、成形面17a,17cにつながる傾斜面である。
そして、ベース11aと支持部11cとにより、凹形状の凹部11dが形成されている。凹部11dは、X方向の一方端(図2の左側の端)が開放されており、Y方向に延在している。したがって、凹部11dは、開放端を成形部11bの成形面17a,17bに向けるように位置している。
第2上型12は、第1上型11の凹部11dに収容されており、X方向に摺動可能に支持されている。すなわち、第2上型12は、第1上型11に支持されている。第2上型12の先端部12aは、凹部11dの開放端側に位置し、第2上型12の後端部12bは、凹部11dの底側に位置している。
第2上型12の先端部12aは、突起付きパイプ200の外側面に対応する成形面18a,18b,18cを有している。成形面18a,18b,18cは、互いに連続しており、上方から順に、成形面18a、成形面18b及び成形面18cと並んでいる。成形面18aは、Z方向に平行な面であって、成形面18cは、X方向に平行な面であって、成形面18bは、成形面18a,18cにつながる傾斜面である。成形面18a,18b,18cと成形面17a,17b,17cとは、Z方向に平行な仮想線に対して線対称となっている。
第2上型12の後端部12bと凹部11dの底側との間には、第1空間Cが形成されている。第1空間Cには、後述の流体タンク36(図1参照)から作動流体が供給される。なお、作動流体は、ここでは作動油とされているが、他の作動流体が用いられてもよい。第1空間Cは、作動油が漏れない程度に密閉されている。後述の流体タンク36から作動油が流入すると、第2上型12が、凹部11dの開放端側(図2の左側)に移動する。その一方で、第1空間Cから作動油が流出すると、第2上型12が、凹部11dの底側(図2の右側)に移動する。
第1下型21は、金型取付台25を介して基台24(図1参照)上に載置されている。本実施形態では、第1下型21は、Z方向に移動しない。第1下型21は、金型取付台25上に固定された板状のベース21aと、ベース21aから略中央上方に突出し、第2下型22を図示左右方向に移動可能に収容し支持する支持部21cと、を有している。ベース21a、成形部21b及び支持部21cは、鋼鉄等で一体形成されている。なお、第1下型21は、金型取付台25に例えばボルダ等を介して間接的に取付けられていてもよい。
成形部21bは、Y方向に延びており、突起付きパイプ200の外側面に対応する成形面27a,27b,27cを有している。成形面27a,27b,27cは、互いに連続しており、下方から順に、成形面27a,成形面27b及び成形面27cと並んでいる。成形面27aは、Z方向に平行な面であって、成形面27cは、X方向に平行な面であって、成形面27bは、成形面27a,27cにつながる傾斜面である。成形面27a,27b,27cと成形面17a,17b,17cとは、パイプ本体201の軸心Oに対して点対称に配置されている。
そして、ベース21aと支持部21cとにより、凹形状の凹部21dが形成されている。凹部21dは、X方向の他方端(図2の右側の端)が開放された凹形状となっており、Y方向に延在している。凹部21dは、開放端を成形部21bの成形面27a,27bに向けるように位置している。
第2下型22は、第1下型21の凹部21dに収容されており、X方向に摺動可能に支持されている。すなわち、第2下型22は、第1下型21に支持されている。第2下型22の先端部22aは、凹部21dの開放端側に位置し、第2下型22の後端部22bは、凹部21dの底側に位置している。
第2下型22の先端部22aは、突起付きパイプ200の外側面に対応する成形面28a,28b,28cを有している。成形面28a,28b,28cは、互いに連続しており、下方から順に、成形面28a,成形面28b及び成形面28cと並んでいる。成形面28aは、Z方向に平行な面であって、成形面28cは、X方向に平行な面であって、成形面28bは、成形面28a,28cにつながる傾斜面である。成形面28a,28b,28cと成形面18a,18b,18cとは、パイプ本体201の軸心Oに対して点対称に配置されている。
第2下型22の後端部22bと凹部21dの底側との間には、第2空間Dが形成されている。第2空間Dには、後述の流体タンク36から作動油が流入する。第2空間Dは、作動油が漏れない程度に密閉されている。流体タンク36から作動油が流入すると、第2下型22が、凹部21dの開放端側(図2の右側)に移動する。その一方で、第2空間Dから作動油が流出すると、第2下型22が、凹部21dの底側(図2の左側)に移動する。
図1に示されるように、移動機構30は、スライド14を介して第1上型11をZ方向に移動させる第1駆動部31と、第2上型12及び第2下型22を左右方向に移動させる第2駆動部(第2上型用駆動部、第2下型用駆動部)32と、を有している。
第1駆動部31は、加圧シリンダ33と、加圧シリンダ33に作動油を供給する流体供給部34と、流体供給部34の供給動作を制御するサーボモータ35と、を有している。サーボモータ35は、流体供給部34が加圧シリンダ33に供給する作動油の量を制御することにより、スライド14の移動を制御する。
なお、第1駆動部31は、上述のように加圧シリンダ33を介してスライド14に駆動力を付与するものに限られず、例えば、スライド14に機械的に接続させてサーボモータ35が発生する駆動力を直接的に又は間接的にスライド14へ付与するものであってもよい。例えば、スライド14を偏心軸に取り付けると共に、この偏心軸をサーボモータ等で回転させる機構も採用できる。また、第1駆動部31が、サーボモータ35を備えていなくともよい。
第2駆動部32は、作動油を収容する流体タンク36と、流体タンク36に収容された作動油を第1空間C及び第2空間Dのそれぞれに流入又は流出させる流体ポンプ37と、を有している。すなわち、第2駆動部32は、第2上型用駆動部として機能し、第2上型12をX方向に移動させる。更に、第2駆動部32は、第2下型用駆動部として機能し、第2下型22をX方向に移動させる。
気体供給部40は、一対の気体供給機構50と、高圧ガス源41と、アキュムレータ42と、を有している。
一対の気体供給機構50は、Y方向における上型10及び下型20の両端側にそれぞれ配置されている。気体供給機構50は、シリンダユニット51と、シリンダロッド52と、シール部材53と、を有している。シリンダユニット51は、ブロック43を介して基台24上に載置固定されている。シリンダロッド52は、シリンダユニット51の作動に合わせてY方向に進退動する。シール部材53は、シリンダロッド52の先端部(上型10及び下型20側の端部)に連結されている。シール部材53の先端には、先細り形状となるようにテーパ面53aが形成されている。テーパ面53aは、後述する第1電極61及び第2電極62のテーパ凹面61b,62bに丁度嵌合当接することができる形状となっている。シール部材53には、ガス通路53bが設けられている。ガス通路53bは、シリンダユニット51側から先端側に向かって延在し、高圧ガス源41から供給された高圧ガスが流れる(図3(a),(b)参照)。
高圧ガス源41は、高圧ガスを供給する。アキュムレータ42は、高圧ガス源41によって供給されたガスを溜める。アキュムレータ42とシリンダユニット51とは、第1チューブ44で連通されている。第1チューブ44には、圧力制御弁45及び切替弁46が介設されている。アキュムレータ42とシール部材53内のガス通路53bとは、第2チューブ47で連通されている。第2チューブ47には、圧力制御弁48及び逆止弁49が介設されている。圧力制御弁45は、シール部材53の成形材料100に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット51に供給する役割を果たす。逆止弁49は、第2チューブ47内で高圧ガスが逆流することを防止する役割を果たす。
パイプ保持機構60は、一対の第1電極61と、一対の第2電極62と、を有している。一対の第1電極61は、上型10及び下型20のY方向の一端側(図1の左側)において、Z方向に互いに対向するようにそれぞれ位置している。一対の第2電極62は、上型10及び下型20のY方向の他端側(図1の右側)において、Z方向で互いに対向するようにそれぞれ位置している。第1電極61及び第2電極62には、成形材料100の外周面に対応した半円弧状の凹溝61a,62aがそれぞれ形成されている(図3(c)参照)。凹溝61a,62aには、載置された成形材料100が嵌り込む。また、第1電極61及び第2電極62には、テーパ状に傾斜して窪んだテーパ凹面61b,62bが凹溝61a,62aの外側の縁につながるように形成されている。テーパ凹面61b,62bは、シール部材53のテーパ面53aと嵌合当接する形状となっている(図3(b)参照)。上型10及び下型20のY方向の両端側には、電極収納スペース63が設けられている。第1電極61及び第2電極62は、電極収納スペース63内をアクチュエータ(図示しない)によってZ方向に進退する。
加熱機構70は、電源71と、電源71からそれぞれ延びて第1電極61及び第2電極62に接続している導線72と、導線72に介設したスイッチ73とを有している。加熱機構70は、成形材料100を焼入れ温度(AC3変態点温度以上)まで加熱する。なお、図1では、導線72のうち、下型20側の第1電極61及び第2電極62につながる部分は、省略されている。
水循環機構80は、水を溜める水槽81と、この水槽81に溜まっている水を汲み上げ、加圧して上型10の冷却水通路13及び下型20の冷却水通路23へ送る水ポンプ82と、配管83と、を有している。なお、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管83に介在させてもよい。
また、下型20の中央部には、下方から熱電対91が差し込まれている。熱電対91は、成形材料100の温度を測定する。熱電対91は、スプリング92により上下移動自在に支持されている。熱電対91は、測温手段の一例を示したに過ぎず、輻射温度計又は光温度計のような非接触型温度センサであってもよい。なお、通電時間と温度との相関が得られれば、測温手段は省いて構成することも十分可能である。
成形装置1は、制御部93を備えている。制御部93は、成形面17a〜17c,18a〜18c,27a〜27c,28a〜28cが画成する成形空間内で成形材料100が突起付きパイプ200に成形されるように、移動機構30による第1上型11、第2上型12、第2下型22の移動を制御する。また、制御部93は、気体供給部40による気体供給を制御する。更に、制御部93は、スイッチ73、圧力制御弁45,48及び切替弁46を制御する。制御部93は、図1に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対91から温度情報を取得し、各部を制御する。具体的な制御については、以下の成形方法にて説明する。
[突起付きパイプの成形方法]
次に、成形装置1を用いた突起付きパイプ200の成形方法について説明する。
まず、図4(a)に示すように、焼入れ可能な鋼種の成形材料100を準備する。この成形材料100を、例えばロボットアーム等を用いて、下型20側に位置する第1電極61及び第2電極62上に載置(投入)する。続いて、制御部93は、成形材料100を保持するパイプ保持機構60を制御する。具体的には、図4(b)に示すように、第1電極61及び第2電極62を進退動可能としているアクチュエータ(図示しない)を作動させ、各上下に位置する第1電極61及び第2電極62を接近させる。この接近によって、Y方向における成形材料100の両端部は、上下から第1電極61及び第2電極62によって挟持される。また、この挟持は、成形材料100の全周に渡って密着するような態様で挟持される。このとき、成形材料100は、図6に示されるように、第1上型11、第2上型12、第1下型21、及び第2下型22の各成形面17a〜17c,18a〜18c,27a〜27c,28a〜28cから離間している。
続いて、制御部93は、成形材料100を加熱するように加熱機構70を制御する。具体的には、制御部93は、加熱機構70のスイッチ73をONにする。そうすると、電源71から電力が成形材料100に供給され、成形材料100に存在する抵抗により、成形材料100自体が発熱する。このとき、熱電対91の測定値が常に監視され、この結果に基づいて通電が制御される。続いて、気体供給機構50のシリンダユニット51を作動させることによって、シール部材53で成形材料100の両端をシールする(図3(b)参照)。
続いて、制御部93は、図7に示されるように、成形材料100が下方に移動するように、成形材料100を挟持した状態で第1電極61及び第2電極62を移動させる。
続いて、制御部93は、図8及び図9に示されるように、成形空間内で成形材料100が突起付きパイプ200に成形されるように、移動機構30による第1上型11、第2上型12、及び第2下型22の移動を制御する(図5参照)。すなわち、制御部93は、第1の型閉じ動作を実行する。具体的には、制御部93は、図8に示されるように、流体供給部34から作動油が加圧シリンダ33に供給されるようにサーボモータ35を制御する。これにより、第1上型11がスライド14を介して下方に移動する。続いて、制御部93は、図9に示されるように、第1空間C及び第2空間Dのそれぞれに作動油が供給されるように流体ポンプ37を制御する。これにより、第2上型12が、X方向の一方側(図9の左側)に移動し、第2下型22がX方向の他方側(図9の右側)に同量移動する。
第1の型閉じ動作によって、互いに対向する成形面17b,27bと、互いに対向する成形面18b,28bとの間に、パイプ本体201を成形するための成形空間が画成される。また、互いに対向する成形面17a,18aの間に突起202を形成するための成形空間が画成される。また、互いに対向する成形面17c,28cの間に突起202を形成するための成形空間が画成される。また、互いに対向する成形面27a,28aの間に突起202を形成するための成形空間が画成される。また、互いに対向する成形面18c,27cの間に突起202を形成するための成形空間が画成される。
続いて、制御部93は、図10に示されるように、成形材料100に高圧ガスを供給して成形材料100を膨張させる。ここで、成形材料100は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しているので、成形材料100内に供給されたガスは、熱膨張する。このため、例えば供給するガスを圧縮空気とし、950℃の成形材料100を熱膨張した圧縮空気によって容易に膨張させることができる。これにより、成形材料100は、成形空間内で膨張して各成形面17a〜17c,18a〜18c,27a〜27c,28a〜28cに押し当てられる。
続いて、制御部93は、図11に示されるように、第2の型閉じ動作を実行し、第1の型閉じ動作による型閉じ位置から更なる型閉じを行う。具体的には、制御部93は、第1上型11がスライド14を介して更に下方に移動するように、サーボモータ35を制御すると共に、制御部93は、第2上型12がX方向の一方側(図11の左側)に更に移動し、第2下型22がX方向の他方側(図11の右側)に更に同量移動するように流体ポンプ37を制御する。
これにより、加熱により軟化し高圧ガスが供給された成形材料100は、成形空間において、突起付きパイプ200に成形される。すなわち、成形材料100は、成形空間の断面矩形状に合わせた断面矩形状のパイプ本体201と、成形材料100の一部が折り畳まれた突起202とに成形される(図5参照)。
続いて、制御部93は、図12に示されるように、型開き動作を実行する。具体的には、制御部93は、第1空間C及び第2空間Dからそれぞれ作動油が流出されるように流体ポンプ37を制御する。これにより、第2上型12が、X方向の他方側(図12の右側)に移動し、第2下型22がX方向の一方側(図12の左側)に移動する。制御部93は、加圧シリンダ33から流体供給部34に作動油が回収されるようにサーボモータ35を制御する。これにより、第1上型11がスライド14を介して上方に移動する。
続いて、制御部93は、突起付きパイプ200が上方に持ち上がるようにパイプ保持機構60を制御する。これにより、突起付きパイプ200が回収可能な状態となる。
以上のような成形方法により、図5に示されるように、突起付きパイプ200を成形品として得ることができる。
なお、この成形時にあっては、成形されて膨らんだ成形材料100の外周面が下型20に接触して急冷されると同時に、上型10に接触して急冷(上型10と下型20は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、成形材料100が接触すれば材料表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイトなど)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を成形材料100に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型に成形材料100を接触させて冷却を行い、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を成形材料100へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。
以上により、成形装置1によれば、制御部93は、第1上型11、第2上型、第1下型21及び第2下型22の成形面17a〜17c,18a〜18c,27a〜27c,28a〜28c同士の間に画成された成形空間内で成形材料100が突起付きパイプ200に成形されるように、移動機構30による上型10及び下型20の移動及び気体供給部40による気体供給を制御し、これにより、成形材料100が、成形空間内で膨張して成形面17a〜17c,18a〜18c,27a〜27c,28a〜28cに押し当てられ、突起付きパイプ200が成形される。このように、成形材料100を成形空間内で膨張させて成形する手法を用いているため、成形材料100の種類(より具体的には、成形材料100の硬さ等)にかかわらず、突起付きパイプ200を容易に成形することができる。
また、上型10及び下型20は、第1上型11と、第1上型11に移動可能に支持された第2上型12と、第1下型21と、第1下型21に移動可能に支持された第2下型22と、を有し、第1上型11は、Z方向に移動可能であり、第2上型12及び第2下型22は、X方向に移動可能である。このように、第2上型12及び第2下型22のみをX方向に移動させることにより、少なくとも3つ以上の突起202を容易に成形することができる。また、第1上型11及び第2上型12をZ方向に移動させる場合、第2上型12を独立してZ方向に移動させる移動機構を設ける必要がない。同様に、第1下型21及び第2下型22をZ方向に移動させる場合、第2下型22を独立してZ方向に移動させる移動機構を設ける必要がない。また、第2上型12及び第2下型22のみをX方向に移動させることにより、第1上型11及び第1下型21をX方向に移動させる移動機構を設ける必要がない。したがって、移動機構30の簡易化を図ることができる。
また、第1上型11及び第2上型12と、第1下型21及び第2下型22とは、パイプ本体201の軸心Oに対して点対称に配置されているため、第1上型11及び第2上型12と、第1下型21及び第2下型22との共通化が図られ、低コスト化を実現することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、成形装置1は加熱機構70を必ずしも有していなくてもよく、成形材料100はすでに加熱されていてもよい。
また、上記実施形態では、第2上型12は第1上型11に支持され、第2下型22は第1下型21に支持されているので、第2上型12及び第2下型22を独立してZ方向に移動させる移動機構を設ける必要がない。しかしながら、例えば、第2上型12及び第2下型22を第1上型11及び第1下型21に支持させず、その代わりに、第2上型12及び第2下型22を独立してZ方向に移動させる移動機構を設けてもよい。この場合、当該移動機構が、第2上型12及び第2下型22をZ方向に移動させ、第2駆動部32が、第2上型12及び第2下型22をX方向に移動させる。また、このような、第2上型12及び第2下型22の駆動源(第2駆動部32を含む)は、油圧ではなく、他の方式(電動シリンダ、ボールねじ等)であってもよい。
また、上記実施形態では、第1上型11をZ方向に移動可能としているが、第1上型11及び第1下型21の少なくとも一方が、Z方向に移動可能であればよい。したがって、第1上型11に加えて、又は、第1上型11に代えて、第1下型21がZ方向へ移動するものであってもよい。また、第1上型11及び第1下型21の移動方向は、厳密にZ方向でなく、Z方向よりも傾いた方向であってもよい。
また、上記実施形態では、第2駆動部32は、第2上型12をX方向に移動させるが、これに限らず、第2上型12を、パイプ本体201の軸心Oに直交する方向であり且つスライド14が移動する方向と交差する方向に移動させてもよい。
また、上記実施形態では、第1下型21は、Z方向に移動しないが、これに限らず、例えば金型取付台25をスライドとして機能させ、第1下型21を移動させてもよい。
また、第1下型21が移動しない場合、第2駆動部32は、第2下型22を、パイプ本体201の軸心Oに直交する方向であり且つスライド14が移動する方向と交差する方向に移動させてもよい。また、第1下型21が移動する場合、第2駆動部32は、第2下型22を、パイプ本体201の軸心Oに直交する方向であり且つ金型取付台25をスライドとして機能させた場合の当該金型取付台25が移動する方向と交差する方向に移動させてもよい。
また、パイプ本体201は、断面形状が三角形、五角形等の矩形以外の多角形の角パイプ本体であってもよいし、断面形状が円形の丸パイプ本体であってもよい。
また、上記実施形態では、パイプ本体201のすべての角部から突起202が突出しているが、少なくともいずれかの角部から突起202が突出していればよい。また、突起202は、角部以外の外側面から外側へ突出していてもよい。また、成形材料100の断面形状は、矩形、三角形、五角形、円形、楕円形等、いずれの形状であってもよい。
金型の数及び形状等は、上記の設計条件に応じて適宜変更すればよい。本実施形態では、金型の数は4個としているが、3個(例えば、第2上型12又は第2下型22のどちらかが無い状態)以上であればよい。
また、成形装置1は、第1上型11、第2上型12、第1下型21及び第2下型22を備えているが、これらの代わりに、Z方向に互いに対向する上型及び下型と、Z方向において上型と下型との間の側方に位置し、X方向に互いに対向する一対の側型と、を備えていてもよい。この場合、上型及び下型の少なくとも一方がZ方向のみに移動し且つ一対の側型の少なくとも一方がX方向のみに移動することにより、容易に外側面に突起を成形することができる。