JP6687574B2 - 演算処理装置、演算処理装置の演算方法及びプログラム - Google Patents
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Description
また射出成形品質モニタリングシステムを用いた不良品の識別については、より精度の高い判別手法の提供が望まれている。
即ち、計測項目の検出信号と時間を用いた積和演算を行う際に、第2監視期間毎に経過時間に応じて設定された係数を用いることで、経過時間毎の積和値に重み付けが行われる。
積和演算とは、乗算の結果を順次加算して積和値を算出するための演算である。
これにより、第2監視期間内での所定期間ごとの積和値の算出にあたり、異なる係数を用いた重み付けが行われる。
即ち、単位の異なる多次元の各計測項目の値を、共通の一次元としての単位に置き換えるための単位空間情報を設定する。
成形品の良否判定のために用いる検出信号を金型内の樹脂圧力とした場合等においては、監視タイミングはゲートシール期間中に設定することが望ましい。なぜなら、ゲートシール期間は、金型内に充填された樹脂が固化するまでの期間であるため、成形品の品質の評価に有用な部分であるが、固化した後に期間については、あまり意味がない場合があるためである。
圧力センサの検出信号を考えると、その立ち上がりタイミングは、金型内に成形材料が充満した直後のタイミングとなる。そこで当該立ち上がりのタイミングを監視開始時点として特定する。
キャビティに樹脂材料が充満した直後のタイミングは、検出した値の単位時間あたりの立ち上がりの幅が大きい。そのため、樹脂材料が充満されたタイミングをある程度正確に検出することができる。
本技術に係るプログラムは、上記各処理を演算処理装置に実行させるプログラムである。
<1.品質モニタリングシステムの構成>
<2.監視装置の構成>
<3.コンピュータ装置の構成>
<4.品質モニタリングシステムの概要>
<5.単位空間設定処理>
<6.量産監視処理>
<7.まとめ及び変形例>
<8.プログラム及び記憶媒体>
以下、本発明に係る実施の形態について説明する。まず本発明の実施の形態となる監視装置1と射出成形装置2とパーソナルコンピュータ4とを含む射出成形品質モニタリングシステム100(単に「品質モニタリングシステム100」とも表記する)について説明する。
図1は品質モニタリングシステム100の構成概要を示した図である。
図示するように品質モニタリングシステム100は、監視装置1、射出成形装置2、専用アンプ3、パーソナルコンピュータ4(以下「コンピュータ装置4」とも表記する)を備えている。
金型10内には金型内センサ31が配置されている。例えば充填された樹脂材料の温度を検出する温度センサや、樹脂材料の圧力を検出する圧力センサなどである。
金型10の構造、種別については特に限定されずに各種のものが想定される。
また射出部11には射出部内センサ32及びセンサ用アンプ33が設けられている。射出部内センサ32としては、注入過程の樹脂材料の温度を検出する温度センサや、圧力を検出する圧力センサ、注入速度を算出する位置センサなどがある。
本実施の形態では射出部11の機構、構造、例えばシリンダ構造、型締め機構の構造、ランナー構造、ノズル構造、ヒーター配置、モータ配置、材料投入機構などは特に限定されず、どのような構造/種別のものでもよい。
成形制御部12は、射出部11による各部の駆動制御を行う。例えば射出モータ制御、金型ステージ動作制御、金型開閉機構の動作制御、ノズル開閉機構の動作制御、ヒーター制御、材料投入動作制御などを行う。これによって一連の射出成形動作を実行させる。
射出部内センサ32の検出信号S2は、例えば射出部11内に設けられたセンサ用アンプ33により電圧値に変換される。そして電圧信号に変換された検出信号Vs2として監視装置1に供給される。
従って検出信号Vs1,Vs2は2系統のみの検出信号を示しているものではなく、金型内センサ31と射出部内センサ32のいずれの検出信号についても監視装置1に入力できることを示しているに過ぎない。
監視装置1にはnチャネルの入力系が用意されており、n系統の検出信号の同時入力が可能である。従って金型内センサ31としてn個のセンサの検出信号Vs1を監視装置1に供給してもよいし、射出部内センサ32としてのn個のセンサの検出信号Vs2を監視装置1に供給してもよい。さらに金型内センサ31と射出部内センサ32としてのそれぞれ1又は複数系統の検出信号Vs1,Vs2をnチャネルに振り分けて監視装置1に供給してもよい。
監視装置1に対してどのような検出信号入力を行うかは、実際の射出成形装置2や金型10の構造、種別、成形品、搭載センサ数、実行したい計測・監視の内容などに応じて適宜決められればよい。
また、図示していないが射出成形装置2の周辺機器、例えば冷却用の温調機や真空引き装置などに各種のセンサが設けられる場合もあり、それらのセンサの検出信号を監視装置1に供給することも想定されている。
タイミング信号STMの1つとしては、例えば射出成形の1サイクルの開始/終了タイミングを通知する信号がある。監視装置1は、タイミング信号STMにより、1ショットの樹脂注入による1サイクルの成形期間を検知し、その間の各種検出信号のロギングや判定を行うことができる。
また他のタイミング信号STMとしては、後述するように型締め期間の開始/終了のタイミングを示す信号や、工程の遷移タイミングを示す信号、或いは制御方式(速度制御、圧力制御)の切替タイミングを示す信号などが考えられる。
コンピュータ装置4には、監視装置1による各種検出信号の計測について管理を行うための管理ソフトウェアがインストールされている。この管理ソフトウェアにより、作業員等はコンピュータ装置4のディスプレイを介して監視装置1による計測結果を閲覧可能とされている。
また、管理ソフトウェアを用いた設定により、作業員等は各種の数値設定を行うことができる。
さらに計測結果をコンピュータ装置4におけるHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Disk)等の所定の記憶装置に収録させることが可能とされている。
図3は監視装置1の内部構成を示している。
監視装置1には、演算部20、入力部21、A/D変換器22、バッファ及びIF部23、メモリ部24が設けられている。
各入力チャネルI1〜I8に入力される検出信号Vs1,Vs2は、上述のように専用アンプ3又はセンサ用アンプ33で検出情報が電圧レベルに変換された信号である。
チャネルI1〜I8の全部又は一部に対して、検出信号Vs1又はVs2が入力される。即ち金型内センサ31や射出部内センサ32として射出成形装置2に配備された1又は複数のセンサの検出信号を、同時に、それぞれ所要のチャネルに入力可能とされている。
A/D変換器22は、入力された各チャネルI1〜I8の検出信号について電圧値に応じたデジタルデータに変換し、バッファ及びIF部23に供給する。
例えばA/D変換器22から出力される同時入力された複数チャネルの検出信号のデジタルデータ(後述する検出値Ddet)は、バッファ及びIF部23で一時的にバファリングされながら各時点の検出情報として検出信号のサンプリング時点の時刻情報(後述する時間値Tdet)とともに順次演算部20に転送される。
また演算部20からの通知信号SIは、バッファ及びIF部23が端子TM2から成形制御部12に送信する。また成形制御部12からの各種のタイミング信号STMは、端子TM1からバッファ及びIF部23に一旦取り込まれ、時刻情報とともに順次演算部20に転送される。
また演算部20とコンピュータ装置4の各種情報通信は、バッファ及びIF部23を介して、端子TM3(例えばLANコネクタ端子)に接続された通信経路USにより実行される。
本実施の形態では、演算部20は、入力部21の各入力チャネルに入力された各時点での検出信号値をログデータとしてメモリ部24に記憶する処理を行う。
例えばA/D変換器22でデジタル値とされた各チャネルI1〜I8の検出信号についてサンプル毎の値を記憶していく処理を行う。
また演算部20は、射出成形装置2による監視期間内において設定された監視タイミング毎に、入力部21に入力された検出信号値を用いて評価値の算出を行う。
さらに演算部20は、算出した評価値を用いて射出成形状況の判定結果を求める処理を行う。また判定処理に応じた通知信号SIの出力処理を行う。
これらの機能を有する演算部20の具体的な処理例については後述する。
メモリ部24は、例えば演算部20の処理によるログデータの記憶領域として用いられる。またメモリ部24は、各種演算処理のワーク領域として用いられる。またメモリ部24は、演算部20の各種処理を実現するためのプログラムの格納領域としても用いられる。
図4はコンピュータ装置4の内部構成を示している。
コンピュータ装置4のCPU41は、ROM42に記憶されているプログラム、または記憶部48からRAM43にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM43にはまた、CPU41が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
CPU41、ROM42、及びRAM43は、バス44を介して相互に接続されている。このバス44には、入出力インターフェース45も接続されている。
入出力インターフェース45には、キーボード、マウス、タッチパネルなどよりなる入力部46、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)パネルなどよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部47、HDDやフラッシュメモリ装置などより構成される記憶部48、端子TM3に接続された通信経路USを介した監視装置1との通信処理やインターネットを介した通信を行う通信部49が接続されている。
第1期間設定部41aは、監視開始時点を特定し、監視開始時点から所定期間を第1監視期間として設定する処理を行う。
また第2期間設定部41bは、指定された分割数に基づいて、第1監視期間を複数の第2監視期間に分割する処理を行う。
さらに積和演算部41cは、計測時点における良品製造時の検出信号と、第2監視期間の各々において経過時間に応じて設定された係数とを用いた積和演算を行う。
さらにまた単位空間情報設定部41dは、第2監視期間における成形品の監視処理に用いる単位空間情報を、積和演算で求めた値を用いて設定する処理を行う。
これらの機能を有するCPU41の具体的な処理例については後述する。
本実施の形態のコンピュータ装置4において実行する、品質モニタリングシステムにおける単位空間設定処理の概要を図5及び図6を用いて説明する。本実施の形態の単位空間設定処理は、1成形サイクル内で設定された監視対象期間(第2監視期間)毎に、検出信号と経過時間を用いた積和演算処理を行い、当該積和演算により算出した値を用いて単位空間情報を設定する処理である。単位空間情報は、成形品の良否判定のための基準となる評価値を算出する際に用いられる情報である。
そして、第1監視期間において設定した各監視タイミング(例えばX1,X2,X3)の検出信号を監視装置1から取得する。コンピュータ装置4は、当該検出信号から単位空間情報を設定し、当該単位空間情報を用いて良品判定のための評価値を算出する。
例えば第1監視期間をTs2〜Te2とした場合、指定された分割数に基づいて第2監視期間α1〜α4を設定する。そして第2監視期間毎の積和値を積和演算により算出し、当該積和値を用いて単位空間情報を設定する。
図6Aには、或る計測項目の検出信号の波形の例として、波形GP1及び波形GP2が示されている。波形GP1と波形GP2は同じ計測項目において検出された検出信号の波形である。図の例では、波形GP1を良品から検出された波形とし(以下、波形GP1を良品波形GP1とも表記する)、波形GP2を不良品から検出された波形とする(以下、波形GP2を不良品波形GP2とも表記する)。図では、Ts0〜Te0までの期間を第2監視期間として設定している。ここでは、計測項目の計測開始時点T0から1秒経過した時点をTs0とし、T0から2秒経過した時点をTe0として設定する。
例えば、波形の形状が異なる良品波形GP1と不良品波形GP2との第2監視期間における或る時点(A1〜A5)毎の積の値やその総和である積和値が図6B及び図6Cに示されている。図6Bは良品波形GP1のデータであり、図6Cは不良品波形GP2のデータである。
図6B及び図6Cによると、良品波形GP1と不良品波形GP2では、時点A1,A2,A4,A5において、それぞれの積の値が異なっている。しかし、A1〜A5の積和値SV1は、両波形とも50.50であり同じ値となる。
このように、検出値Ddetと計測間隔の積の総和により積和値SV1を算出する場合は、異なる波形であっても違いが数値として表れないことがある。即ち、成形品における良品と不良品の違いが数値として判別できない場合がある。
ここでは、検出値Ddetと計測間隔の積に加えて、実際の経過時間を重み付けの係数として設定し、当該係数をさらに乗算することで積和値SV2を算出する。
これにより、検出値Ddetと計測間隔との積の値が同じであっても、計測時点によっては異なる値として算出することが可能となる。
例えば図6Bの時点A1と図6Cの時点A5を比較してみると、検出値Ddetと計測間隔との積の値は10.00で同じである。しかし、図6Dの時点A1と図6Eの時点A5を比較してみると、重み付け係数を乗じた値は、時点A1で10.00、時点A5で18.00というように異なる値として算出される。即ち、重み付け係数を乗じることで、検出値Ddetと計測間隔の積が同じであっても計測時点が異なるものであることが明確となる。
本実施の形態においては、実際の経過時間を重み付けとしているため、重み付け係数の値は、前記第2監視期間内での時間の経過に伴い大きくなる値となる。例えば、A1→A2→A3→A4→A5と時間が進行するにつれ、重み付け係数の値も1.0→1.2→1.4→1.6→1.8と変化する。
例えば、良品波形GP1と不良品波形GP2においては、重み付け係数のない状態では、図6Bと図6Cに示すように、波形が異なっていても積和値SV1は共に50.50であり、数値としての違いは生じない。一方で、経過時間による重み付け係数を用いて積和値SV2を算出すると、図6Dに示す良品波形GP1における数値は70.80となり、図6Eに示す不良品波形GP2における数値は70.60となる。即ち、良品波形GP1と不良品波形GP2では数値として0.20の差が生じることとなる。これにより、良品波形GP1と不良品波形GP2の波形が異なることが数値として確認することができる。
本実施の形態では、コンピュータ装置4は、算出した積和値SV2を用いて単位空間情報を設定し、当該単位空間情報を用いて良品判定のための評価値を算出する。
設備の製造条件パラメータに多種多様の計測項目及び計測タイミングが含まれており、かつ、これらが相互に影響し合う関係にある場合には、一つの項目が所望しない方向に変化してしまう可能性を考慮し、製造条件パラメータに含まれる全ての項目を総合的に監視することが望ましい。
このような場合には、各次元における相関を考慮したうえで、相互に影響し合う複数の項目を一次元化する手法であるMT法を用いるのが好適である。
MT法においては、基準となる項目群にどれだけ似ているかを示す評価値として、マハラノビス距離を2乗した値を用いる。マハラノビス距離の詳細については後述する。
本実施の形態の品質モニタリングシステムにおける単位空間情報設定処理について、図5乃至図8を用いて説明する。
単位空間設定処理は、後述する量産監視処理を監視装置1が実行する際の第1監視期間及び複数の第2監視期間を設定し、第2監視期間毎に成形品の品質評価に用いるための情報である単位空間情報を算出する処理である。単位空間情報設定処理は、コンピュータ装置4のCPU41により行われる。
第1監視期間の設定方法は多様に考えられる。例えば図5Bに示す時点Ts1〜Te1の型締め期間を第1監視期間に設定することが考えられる。この期間は、型締めから型開きまでの複数の工程が行われる期間である。即ち、金型10が閉じられている期間のみを第1監視期間としている。監視装置1は図4Bの波形の型締め期間信号をタイミング信号STMの1つとして成形制御部12から取得することで、この時点Ts1〜Te1の第1監視期間の検出値Ddetの値を取得する。
キャビティに樹脂材料が充満した直後のタイミングは、検出値Ddetの単位時間あたりの立ち上がりの幅が大きい。そのため、閾値thDHを設定しておけば、その時点を基準として、さまざまなタイミングを検出することが可能となる。
例えば、閾値thDH以上となった時点よりも所定時間前の時点を検出することで、樹脂材料が充満されたタイミングをある程度正確に検出することが可能である。つまり、閾値thDH以上となった時点から、樹脂材料が充満されるまでに掛かる時間を逆算することで、樹脂注入開始時点を特定することが可能となる。
従って、第1監視期間の開始タイミングを閾値thDH以上となった時点から、成形サイクルにおける樹脂注入開始時点を設定することができるようになる。これにより、成形制御部12から樹脂注入開始時点の情報を受信することなく、受信した検出信号データのみから樹脂注入開始時点を特定することができる。
なお、基準として設定できる時点は、検出値Ddetの単位時間あたりの変動の幅が大きいものであればよく、例えば金型10を開く前のタイミングであって検出値Ddetが閾値thDL以下になった時点を基準とすることも可能である。
また、これらの基準となる時点を用いて、他の計測項目における様々な時点を特定することも可能である。
例えば成形制御部12は、樹脂が金型10のキャビティに充満するまでは、注入樹脂の速度制御を行い、充満後に圧力制御に切り換えるような制御を行う。その場合に、樹脂射出の速度制御については、速度制御期間のみの評価値を得たい場合もある。
このような場合、例えば波形の立ち上がりを判定する閾値thDHを設定し、圧力センサの波形PRを監視する。圧力センサの検出信号を考えると、その立ち上がりタイミングは、キャビティに樹脂材料が充満した直後のタイミングとなる。充満後にさらに樹脂が注入されることで樹脂が圧縮されて圧力が高くなるためである。
圧力センサの検出値Ddetは充満直後に急激に上昇する。そこで圧力センサの検出値Ddetを監視し、これが閾値thDH以上となった時点を充満タイミング(時点Te3)と判断し、時点Ts3〜Te3の期間を第1監視期間として設定することができる。
監視装置1は図5Dの波形の速度制御期間信号をタイミング信号STMの1つとして成形制御部12から取得することで、この時点Ts3〜Te3の期間の検出値Ddetの値を取得することができる。
また、計測項目毎の第1監視期間は共通していても良いし、異なる期間であってもよい。つまり、第1監視期間は、計測項目毎に、良品判定の際に効果的な評価値が算出できる期間を設定することができる。
第2監視期間とは、後述する量産監視処理における良品判定を行う際に用いられる積和値SV2を算出するために設けられた期間のことをいう。第2監視期間は、計測項目毎の第1監視期間のそれぞれについて設定することができる。
例えば分割数が4と指定された場合、図5A及び図5Cでは、圧力制御期間Ts2〜Te2を第1監視期間とした圧力センサの波形PRにおいて、4つの領域に分割されるようにα1,α2,α3,α4が第2監視期間として設定される。ここで、監視期間開始時点Ts2,分割の境界点となるX1,X2,X3,監視期間終了時点Te2は均等間隔になるように設けられる。樹脂圧力のみならず、樹脂の流速や樹脂温度等の他の計測項目についても、同様に設定される。
なお、分割の境界点の設定には様々な態様が考えられる。例えば、予め良品判定を行うために有用なタイミングを設定しておき、境界点を優先的にそのタイミングに振り分けることも考えられる。また、良品判定に有用なタイミングの付近に重点的に境界点を設定することもできる。
そしてCPU41は、ステップS106において、第2監視期間毎に係数情報を取得する。当該係数情報は、積和値SV2を算出するにあたり用いる係数の情報である。CPU41は、記憶部48からあらかじめ記憶しておいた係数情報を取得してもよいし、監視装置1等の外部機器に必要に応じて係数情報の取得要求を行ってもよい。また、CPU41が、設定された第2監視期間に応じた係数値を算出することとしてもよい。
その後、CPU41は、正規化した検出信号データ群から相関係数行列を算出し、算出した相関係数行列の逆行列を求める。このとき、良品と判定するための基準値が用いられる。基準値は{(計測値)−(平均値)}/(標準偏差)により算出する。
上記逆行列と任意の検出信号データの二次形式により、そのデータのマハラノビス距離(D値)を求めることが可能となる。
MT法においては、算出したD値を2乗した値(D2値)を用いて製造した成形品の良品判定が行われる。これは基準データ群の、D値の2乗平均を変量の数にかかわらず1前後に調整するための処置である。D2値は、良品データとの乖離を数値化したものであり、その数値が1に近いほど良品であることを示している。
このようにして本実施の形態における単位空間情報が設定される。
この場合、CPU41は、ステップS102で第1監視期間を設定した後、ステップS103で指定された分割数に基づいて、ステップS104において監視タイミングを設定する処理を行う。
ここで、監視タイミングとは、成形品の製造工程の内の良否判定を行うタイミングをいう。監視装置1は、成形品を量産する前に、あらかじめ監視タイミング毎の良品判定のための単位空間情報を取得しておき、当該単位空間情報に基づいて良品判定を行う。
また、監視タイミングの設定には様々な態様が考えられる。例えば、予め良品判定を行うために有用なタイミングを設定しておき、分割数を優先的にそのタイミングに振り分けることも考えられる。また、良品判定に有用なタイミングの付近に重点的に監視タイミングを設定することもできる。
そしてCPU41は、ステップS108において、抽出した検出信号データ群の監視タイミング毎の平均値や標準偏差を求めることで、それぞれの検出信号データの正規化を行うことで、単位空間情報を設定する。
本実施の形態における量産監視処理について、図8及び図9を用いて説明する。
量産監視処理は、単位空間情報設定処理において設定した単位空間情報に基づいて成形品の良品判定を行うものである。量産監視処理は、監視装置1の演算部20により行われる。
なお、以下の処理は、例えば樹脂成形の1成形サイクル実行中にリアルタイムで評価値(D2値)演算及び判定を行う例とする。また演算部20は、複数の入力チャネルI1〜I8の検出信号について、計測項目毎にそれぞれ並行して(実際の処理としては時分割でもよい)、図9の処理を行う。
もし、この判定条件を満たしていればOK判定としてステップS205からS206に進み、判定OKの通知信号SIを成形制御部12に送信し、またコンピュータ装置4に判定OKを通知する。
なおこの段階で判定OKという判定結果情報を、今回の成形サイクルの識別情報(何サイクル目かの情報)とともにログデータとして記憶させる。
なおこの段階で判定エラー(成形不良)という判定結果情報を、今回の成形サイクルの識別情報とともにメモリ部24にログデータとして記憶させてもよい。
以上の実施の形態のコンピュータ装置4(演算処理装置)は、射出成形装置2に備えられたセンサから検出され監視装置1に入力される1又は複数の計測項目における検出信号に基づく積分値を用いて、良品判定のための単位空間情報を生成する。また、コンピュータ装置4は、監視開始時点(Ts)を特定し、監視開始時点(Ts)から所定期間(Ts〜Te)を第1監視期間として設定する第1期間設定部41aと、指定された分割数に基づいて、第1監視期間を複数の第2監視期間(α1、…αn)に分割する第2期間設定部41bと、計測時点における良品製造時の検出信号と、第2監視期間の各々において経過時間に応じて設定された係数とを用いた積和演算を行う(図7のステップS107)積和演算部41cと、第2監視期間における成形品の監視処理に用いる単位空間情報を、積和演算により求めた値(積和値SV2)を用いて設定する単位空間情報設定部41dと、を備えている。
即ち、少なくとも監視開始時点及び監視期間の分割数を設定することにより、第2監視期間を自動的に設定する。また、それぞれの第2監視期間ごとに、成形品の監視処理に用いる単位空間情報を、取得した良品製造時の積和値SV2に基づいて設定する。
ここで、計測項目の検出信号と時間を用いた積和演算を行う際に、第2監視期間毎に経過時間に応じて設定された係数を用いることで、経過時間毎の積の値に重み付けが行われる。
これにより、検出値Ddetと計測間隔の積の値の総和が同じだが、異なる波形である検出信号データごとの違いを数値として表すことが可能となる。これにより、良品波形と不良品波形の差分がより明確になり、良品判定の精度を向上させることができる。このような積和値を用いることで良品判定のための、より有用な単位空間情報を設定することが可能となる。
以上の処理を行うことで、射出成形装置2の成形サイクルの動作や成形品の良否判定のための準備(設定)をより的確に容易に行うことができる。
なお、本実施の形態では、第2監視期間の重み付け係数の値が時間軸に沿って徐々に増加していく例について説明したが、重み付け係数の値は、時間軸に沿って徐々に低下することとしてもよい。つまり時間軸に沿って重み付け係数を変化させることで、良品判定に有用な積和値を算出することが可能となる。
これにより、第2監視期間内での所定期間ごとの積和値の算出にあたり、異なる係数を用いた重み付けが行われる。これにより、良品判定を行うにあたって、より一層有用な単位空間情報を設定することが可能となる。
また、第2監視期間の終了地点に近いほど係数を大きな値とすることで、より良い単位空間情報を設定することができ、より精度の高い用品判定を行うことができる
これにより、成形品の良否判定において、計測項目の全てが規格を充足していたとしても、成形品全体として不良品の可能性がある製品を発見することができる。従って、成形品の良否判定の精度をより一層向上させることができる。
成形品の良否判定のために用いる検出信号を金型内の樹脂圧力とした場合等においては、監視タイミングはゲートシール期間中に設定することが望ましい。なぜなら、ゲートシール期間は、金型内に充填された樹脂が固化するまでの期間であるため、成形品の品質の評価に有用な部分であるが、固化した後に期間については、あまり意味がない場合があるためである。
計測項目のうち樹脂圧力の検出信号を用いた成形品の良品判定を行うにあたり、品質評価に有用な期間であるゲートシール期間を監視期間として設定することで、成形品の評価に与える影響が大きい時点を監視タイミングとすることができる。これにより、一層精度の高い良品判定を行うことが可能となる。
圧力センサの検出信号を考えると、その立ち上がりタイミングは、金型内に成形材料が充満した直後のタイミングとなる。そこで当該立ち上がりのタイミングを監視開始時点として特定する。
これにより、ユーザが具体的な監視開始時間を設定しなくても、閾値を設定しておくだけで監視開始時点を特定することができる。従って、ユーザの利便性の向上を図ることができる。
キャビティに樹脂材料が充満した直後のタイミングは、検出値Ddetの単位時間あたりの立ち上がりの幅が大きい。そのため、樹脂材料が充満されたタイミングをある程度正確に検出することが可能である。
これにより、成形制御部12から樹脂注入開始時点の情報を受信することなく、受信した検出信号データのみから樹脂注入開始時点を特定することができる。
射出成形装置2の構成は多様に考えられる。監視装置1及びコンピュータ装置4の構成も同様である。
図7の処理を監視装置1の演算部20で行ってもよい。この場合においては、監視装置1が請求項でいう演算処理装置となる。
図7に示したコンピュータ装置4のCPU41の処理例も一例に過ぎず、具体的な処理例は多様に考えられる。また図8に示した監視装置1の演算部20の処理例についても同様である。
射出成形装置2に搭載されるセンサ(金型内センサ31や射出部内センサ32)としては多様に考えられる。即ち監視装置1は、圧力センサによる射出部11内や金型10内における樹脂材料の圧力計測や、温度センサの検出信号に基づく成形材料や金型表面温度の計測以外にも多様な検出信号の計測に適用できる。例えば光センサ等の検出信号に基づく成形材料の流速計測、赤外線センサ等の検出信号に基づくフローフロント計測(例えば成形樹脂がキャビティ内の所定位置に到達するまでの時間の計測)、位置センサ等の検出信号に基づく型閉時における金型同士の位置ズレ量の計測(型開き量の計測)等、射出成形に係る他の計測を行う場合の各種センサの検出信号についても好適に適用できる。
本発明の実施の形態のプログラムは、コンピュータ装置4におけるCPU41(マイクロコンピュータ等の演算処理装置)に第1期間設定部41a、第2設定部41b、積和演算部41c、単位空間情報設定部41dとしての機能を実行させるプログラムである。
そしてこのようなプログラムはコンピュータ装置4等の機器に内蔵されている記憶媒体や、CPUを有するマイクロコンピュータ内のROM等に予め記憶しておくことができる。あるいはまた、半導体メモリ、メモリカード、光ディスク、光磁気ディスク、磁気ディスクなどのリムーバブル記憶媒体に、一時的あるいは永続的に格納(記憶)しておくことができる。またこのようなリムーバブル記憶媒体は、いわゆるパッケージソフトウェアとして提供することができる。
また、このようなプログラムは、リムーバブル記憶媒体からパーソナルコンピュータ等にインストールする他、ダウンロードサイトから、LAN、インターネットなどのネットワークを介してダウンロードすることもできる。
例えば専用アンプ3とコンピュータ装置4をコネクタで直接接続する。専用アンプ3を介してコンピュータ装置4には1又は複数の入力チャネルの検出信号が供給されるようにする。そしてコンピュータ装置4において当該プログラムを含むソフトウェアが起動されることで、図6の処理をコンピュータ装置4で実行する。即ちセンサ(31,32)の検出信号を取得し、射出成形装置2による1成形サイクルの期間内の一部の期間とされた指定期間における検出信号値(検出値Ddet)を用いて評価値の算出を行い、評価値を用いて射出成形状況の判定結果を求める処理を行う。これにより、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ装置4を用いて監視装置1を実現できる。
Claims (8)
- 射出成形装置に備えられたセンサから検出され監視装置に入力される1又は複数の計測項目における検出信号に基づく積分値を用いて、良品判定のための単位空間情報を生成する演算処理装置であって、
監視開始時点を特定し、前記監視開始時点から所定期間を第1監視期間として設定する第1期間設定部と、
指定された分割数に基づいて、前記第1監視期間を複数の第2監視期間に分割する第2期間設定部と、
計測時点における良品製造時の前記検出信号と、前記第2監視期間の各々において経過時間に応じて異なる数値に設定された係数とを用いた積和演算を行う積和演算部と、
前記第2監視期間における成形品の監視処理に用いる単位空間情報を、前記積和演算で求めた値を用いて設定する単位空間情報設定部と、
を備える演算処理装置。 - 前記係数の値は、前記第2監視期間内での時間の経過に伴い大きくなる値とする
請求項1に記載の演算処理装置。 - 前記単位空間情報はマハラノビス距離を2乗した値を算出するために用いられる情報である
請求項1又は請求項2に記載の演算処理装置。 - 前記第1期間設定部は、ゲートシール期間を前記第1監視期間として設定する
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の演算処理装置。 - 前記第1期間設定部は、設定された所定の閾値に前記検出信号が到達した時点を用いて前記監視開始時点を特定する
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の演算処理装置。 - 前記第1期間設定部は、設定された所定の閾値に前記検出信号が到達した時点よりも所定時間前の時点を前記監視開始時点として特定する
請求項5に記載の演算処理装置。 - 射出成形装置に備えられたセンサから検出され監視装置に入力される1又は複数の計測項目における検出信号に基づく積分値を用いて、良品判定のための単位空間情報を生成する演算処理装置が、
監視開始時点を特定し、前記監視開始時点から所定期間を第1監視期間として設定する第1期間設定処理と、
指定された分割数に基づいて、前記第1監視期間を複数の第2監視期間に分割する第2期間設定処理と、
計測時点における良品製造時の前記検出信号と、前記第2監視期間の各々において経過時間に応じて異なる数値に設定された係数とを用いた積和演算を行う積和演算処理と、
前記第2監視期間における成形品の監視処理に用いる単位空間情報を、前記積和演算で求めた値を用いて設定する単位空間情報設定処理と、
を実行するための演算方法。 - 射出成形装置に備えられたセンサから検出され監視装置に入力される1又は複数の計測項目における検出信号に基づく積分値を用いて、良品判定のための単位空間情報を生成する演算処理装置に、
監視開始時点を特定し、前記監視開始時点から所定期間を第1監視期間として設定する第1期間設定処理と、
指定された分割数に基づいて、前記第1監視期間を複数の第2監視期間に分割する第2期間設定処理と、
計測時点における良品製造時の前記検出信号と、前記第2監視期間の各々において経過時間に応じて異なる数値に設定された係数とを用いた積和演算を行う積和演算処理と、
前記第2監視期間における成形品の監視処理に用いる単位空間情報を、前記積和演算で求めた値を用いて設定する単位空間情報設定処理と、
を実行させるためのプログラム。
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