以下では、この発明の実施形態について詳細に説明をする。図1は、この発明の一実施形態に係る試験装置1の全体図である。図1の上下方向は、試験装置1の上下方向である。図1の左右方向を試験装置1の横方向といい、横方向は、水平方向に含まれる。試験装置1は、タイヤ2が装着されたホイール3(タイヤ付ホイール4という)のユニフォーミテイ試験および動釣合い試験を行うための装置である。試験装置1は、負荷装置5と、計測装置6とを含む。
負荷装置5は、ユニフォーミテイ試験の際にタイヤ付ホイール4に横からの荷重(接地荷重)を与える装置である。計測装置6は、横になったタイヤ付ホイール4を保持した状態で、タイヤ付ホイール4のユニフォーミテイや動不釣合いを測定する装置である。負荷装置5と計測装置6とは、横方向に並んで配置されている。
負荷装置5は、マシンベース10上に設置された基台11を含む。基台11の上面には、横方向に延びるガイドレール12が固定されている。負荷装置5は、摺動機構13を含む。摺動機構13は、ガイドレール12の上側で水平に延びる載置板14と、載置板14の下面に設けられてガイドレール12に係合する複数のスライド脚15とを含む。摺動機構13は、載置板14に固定された送りナット16と、送りナット16に組み付けられた送りネジ17と、送りネジ17に連結されたモータ18とをさらに含む。モータ18は、取付部材19によって基台11に固定されている。モータ18が駆動されると、送りネジ17が回転するので、送りナット16が、載置板14を伴って、ガイドレール12に沿って横方向にスライドする。
載置板14には、上下方向に沿って延びるスピンドル20が固定されている。スピンドル20において載置板14から上側にはみ出た部分には、回転ドラム21が搭載されている。回転ドラム21は、スピンドル20を中心とする円筒状であり、その外周面は、タイヤ付ホイール4に接地荷重をかけるための代用路面として機能する。回転ドラム21は、載置板14とともに横方向にスライドする。
計測装置6は、横になって水平方向に寝た状態のタイヤ付ホイール4を支持する支持装置29と、回転軸として上下方向に延びるスピンドル30とを含む。支持装置29は、タイヤ付ホイール4を、その径方向内側から保持する第1保持機構31と、タイヤ付ホイール4を上側から保持する第2保持機構32とを含む。第1保持機構31は、タイヤ付ホイール4が搭載される架台としても機能し、スピンドル30の上端部30Aに固定されている。スピンドル30において上端部30Aよりも下側の部分には、プーリ34が固定されている。
計測装置6は、マシンベース10に固定された基台35と、基台35の上端部に固定され、スピンドル30を振動可能に保持する保持フレーム36と、マシンベース10に固定された駆動装置37とをさらに含む。駆動装置37は、モータ38を含み、モータ38において駆動装置37から上側へ突出した出力軸39にはプーリ40が固定されていて、プーリ40とスピンドル30のプーリ34とは、ベルト41によって連結されている。モータ38が駆動されて出力軸39が回転すると、出力軸39の回転がベルト41を介してスピンドル30に伝達されるので、スピンドル30が、上下方向に延びる回転軸線Jまわりに駆動回転される。これにより、第1保持機構31を介してスピンドル30に固定されたタイヤ付ホイール4は、スピンドル30と第1保持機構31と一体となって、所定の回転速度で回転する。
ユニフォーミテイ試験を行う場合には、回転ドラム21が横方向に所定距離だけスライドし、回転ドラム21の外周面が、支持装置29の第1保持機構31によって保持されたタイヤ付ホイール4のタイヤ2の外周面に横方向つまりタイヤ付ホイール4の径方向から圧接する。この状態でタイヤ付ホイール4がモータ38によって所定速度で駆動回転されると、回転ドラム21が従動回転する。回転ドラム21から横方向の荷重を受けながら回転するタイヤ付ホイール4の振動が計測装置6に検出されることによって、ユニフォーミテイ試験が実施される。
動釣合い試験を行う場合には、回転ドラム21がタイヤ付ホイール4から離れていて、荷重を受けていない状態のタイヤ付ホイール4が、モータ38によって所定速度で駆動回転される。この状態におけるタイヤ付ホイール4の振動が計測装置6に検出されることによって、動釣合い試験が実施される。
次に、支持装置29の第1保持機構31および第2保持機構32を、この順番で詳しく説明する。図2は、第1保持機構31の縦断面図である。なお、図2および後述する図4〜図6のそれぞれでは、第1保持機構31を構成する各部品を区別するために、各部品の断面に部品毎に異なる様々なハッチングを付しているが、これらの部品のうち、後述するシール部材S以外の部品は、全て金属製である。第1保持機構31は、シリンダ50と、第1ハウジング51と、第1ストッパ52と、第2ストッパ53と、第1ピストン54と、第2ピストン55と、第1ガイド56と、第2ガイド57と、第1スプリング58と、第2ハウジング59と、第2スプリング60と、ガイドロッド61と、支持部62と、挿通軸63と、コレット64とを含む。
シリンダ50は、回転軸線Jと一致した中心軸線を有する円筒状の周壁50Aと、周壁50Aの上下方向における途中に設けられた円板状の仕切壁50Bとを一体的に含む。周壁50Aによって取り囲まれた空間は、仕切壁50Bよりも下側の第1空間50Cと、仕切壁50Bよりも上側の第2空間50Dとに仕切られている。スピンドル30の上端部30Aは、円板状に形成されていて、第1空間50Cを下側から塞いだ状態で、ボルトB1によってシリンダ50に対して下側から固定されている。第1ハウジング51は、円板状に形成されていて、第2空間50Dを上側から塞いだ状態で、ボルトB2によってシリンダ50に対して上側から固定されている。
第1ストッパ52は、仕切壁50Bよりも小径の円環状に形成されていて、第1空間50C内においてスピンドル30の上端部30Aに対してボルトB3によって上側から固定されている。第2ストッパ53は、仕切壁50Bよりも小径の円板状に形成されていて、第2空間50D内において仕切壁50Bの円中心部に対してボルトB4によって上側から固定されている。
第1ピストン54および第2ピストン55は、周壁50Aの内径とほぼ同じ外径を有する円板状に形成されている。第1ピストン54は、第1空間50C内に配置され、第1空間50C内において、下位置(図2参照)と上位置(図5参照)との間で昇降可能である。第1ストッパ52が下位置の第1ピストン54に下側から接触するので、第1ピストン54が下位置からさらに下降することが規制される。第2ピストン55は、第2空間50D内に配置され、第2空間50D内において、上位置(図2参照)と下位置(図4参照)との間で昇降可能である。第2ピストン55の下面の円中心部には上側へ窪む凹部55Aが形成されていて、第2ストッパ53が下位置の第2ピストン55の凹部55Aに嵌まり込んで第2ピストン55に下側から接触するので、第2ピストン55が下位置からさらに下降することが規制される(図4参照)。
第1ガイド56は、回転軸線Jに沿って上下方向に延びる円柱状に形成されている。第1ガイド56の下端部56Aは、水平方向へ張り出したフランジ状に形成され、第1空間50C内においてスピンドル30の上端部30Aに対してボルトB5によって上側から固定されている。第1ガイド56は、シリンダ50の仕切壁50B、第1ピストン54および第2ピストン55のそれぞれを上下方向に貫通し、第1ガイド56の上端部は、第1ハウジング51の円中心部に形成された貫通穴51Aに配置されている。第1ピストン54および第2ピストン55のそれぞれの昇降は、第1ガイド56によってガイドされる。
第2ガイド57は、1箇所に存在する。第2ガイド57は、上下方向に延びる管状である。第2ガイド57の下端部57Aは、水平方向へ張り出したフランジ状に形成され、第1空間50C内においてスピンドル30の上端部30Aに対してボルトB6によって上側から固定されている。第2ガイド57は、シリンダ50の仕切壁50Bおよび第1ピストン54のそれぞれを上下方向に貫通していて、第2ガイド57の内部空間は、第2空間50Dに下側から連通している。第1ピストン54の昇降は、第1ガイド56だけでなく、第2ガイド57によってもガイドされる。
第1スプリング58は、上下方向に伸縮自在なコイルばねであり、複数存在し、第2ガイド57よりも回転軸線Jから離れた径方向外側において周方向に等間隔で並んでいる。各第1スプリング58では、下端部が、第1ピストン54の上面に形成された凹部54Aに上側から嵌まり込み、上端部が、シリンダ50の仕切壁50Bの下面に形成された凹部50Eに下側から嵌まり込んでいる。これにより、各第1スプリング58は、第1ピストン54と仕切壁50Bとの間で圧縮されていて、第1ピストン54を下位置へ向けて常に付勢している。なお、図2では、各第1スプリング58における上下方向の途中部分の図示が省略されている。
第1スプリング58に関連して、スピンドル30の下端部には、エアホース(図示せず)に接続されたロータリージョイント42が設けられている(図1参照)。スピンドル30内には、ロータリージョイント42から上側に延びてスピンドル30の上端部30A内で屈曲してシリンダ50の第1空間50Cに下側から連通した第1流路30Bが形成されている。ロータリージョイント42からの空気が第1流路30Bを通って第1空間50Cに下側から送り込まれると、第1空間50C内において第1ピストン54よりも下側の領域の圧力が上昇し、第1ピストン54は、第1スプリング58の付勢力に抗して上位置まで上昇する。ロータリージョイント42から第1空間50Cへの空気の供給が停止されて、第1ピストン54よりも下側の領域の空気が第1流路30Bに逆流すると、第1ピストン54は、第1スプリング58の付勢力によって下位置まで下降する。なお、第1空間50Cへの空気の供給や供給の停止は、試験装置1に設けられた制御部(図示せず)によって実行される。シリンダ50には、第1ピストン54の上昇の際に第1空間50C内において第1ピストン54よりも上側の領域の空気を機外に逃がしたり、第1ピストン54の下降の際に機外の空気を当該領域に取り込んだりするための通気穴50Fが形成されている。
第2ハウジング59は、回転軸線Jと一致した中心軸線を有する円筒状の周壁59Aと、周壁59Aの上端から回転軸線J側つまり径方向内側へ張り出した円環状の天壁59Bとを一体的に含み、第1ハウジング51の上側に配置されている。周壁59Aの下端部は、径方向外側へ張り出したフランジ状に形成され、第1ハウジング51に対してボルトB7によって上側から固定されている。
第2スプリング60は、上下方向に伸縮自在なコイルばねであり、複数存在し、第2ハウジング59内において周方向に等間隔で並んでいる。各第2スプリング60では、下端部が、第1ハウジング51を貫通して、第2ピストン55の上面の凹部55Bに上側から嵌まり込み、上端部が、第2ハウジング59の天壁59Bに下側から接触している。これにより、各第2スプリング60は、第2ピストン55と天壁59Bとの間で圧縮されていて、第2ピストン55を下位置へ向けて常に付勢している。なお、図2では、各第2ピストン55における上下方向の途中部分の図示が省略されている。
第2スプリング60に関連して、スピンドル30内には、ロータリージョイント42から上側に延びてスピンドル30の上端部30A内で屈曲して第2ガイド57の内部に下側から連通した第2流路30Cが形成されている。前述した制御部(図示せず)の制御によって、ロータリージョイント42からの空気が第2流路30Cと第2ガイド57の内部とを通ってから第2空間50Dに下側から送り込まれると、第2空間50D内において第2ピストン55よりも下側の領域の圧力が上昇し、第2ピストン55は、第2スプリング60の付勢力に抗して上位置まで上昇する。制御部(図示せず)の制御によって、ロータリージョイント42から第2空間50Dへの空気の供給が停止されて、第2ピストン55よりも下側の領域の空気が第2流路30Cに逆流すると、第2ピストン55は、第2スプリング60の付勢力によって下位置まで下降する。第1ハウジング51には、第2ピストン55の上昇の際に第2空間50D内において第2ピストン55よりも上側の領域の空気を機外に逃がしたり、第2ピストン55の下降の際に機外の空気を当該領域に取り込んだりするための通気穴51Bが形成されている。
ガイドロッド61は、上下方向に延びる円柱状に形成され、複数存在し、各第2スプリング60と周方向で同じ位置に1つずつ配置されている。各ガイドロッド61の下端部は、第1ピストン54に固定されている。各ガイドロッド61は、上側へ向けて、シリンダ50の仕切壁50Bと第2ピストン55とを貫通し、第2スプリング60の内側を通って第2ハウジング59の天壁59Bを貫通していて、各ガイドロッド61の上端部は、天壁59Bよりも上側にはみ出している。支持部62は、回転軸線Jまわりの周方向に延びる円環状に形成され、天壁59Bよりも上側において各ガイドロッド61の上端部に上側から取り付けられ、ボルトB70によって各ガイドロッド61の上端部に固定されている。ガイドロッド61および支持部62は、第1ピストン54とともに、例えば2cmの範囲内で昇降する。
挿通軸63は、上下方向に延びる円錐台形状に形成されていて、その外周面63Aは、上側へ向けて小径になるテーパー状に形成されている。挿通軸63は、その中心軸線が回転軸線Jと一致した状態で、第1ハウジング51の上側に配置されている。挿通軸63の下端部63Bは、径方向外側へ張り出したフランジ状に形成され、第1ハウジング51に対してボルトB8によって上側から固定されている。なお、挿通軸63と第1ハウジング51との間には、ブロック状のディスタンスピース65が介在されてもよく、その場合には、挿通軸63と第1ハウジング51とディスタンスピース65とは、ボルトB8によって一体化される。挿通軸63では、下端部63Bおよびその周辺部分が、第2ハウジング59内に収容されていて、外周面63Aのほとんどは、第2ハウジング59よりも上側にはみ出している。
コレット64は、円筒状の全体形状を有する。具体的に、コレット64は、略下半分をなす円環状の基部64Aと、コレット64の略上半分として基部64Aと同軸状に配置されて、それぞれに外径が異なる複数の円筒部64Bとを一体的に含む。基部64Aの下端部64Cは、径方向外側へ張り出したフランジ状に形成されている。円筒部64Bの数は、任意に設定できるが、この実施形態では2つである。2つの円筒部64Bは、基部64Aに上側から連なった第1円筒部64Dと、第1円筒部64Dに上側から連なった第2円筒部64Eとを含む。第1円筒部64Dの外周面は、基部64Aおよび第2円筒部64Eのそれぞれの外周面よりも大径である。これら2つの円筒部64Bは、上側へ向けて次第に小径になるように、つまり、小径のものが上側に位置するように、上下方向に並んでいる。各円筒部64Bの外径は、タイヤ付ホイール4の中心に形成されたハブ穴4Aの代表的な内径に合うように設定される。また、円筒部64Bが円滑にハブ穴4Aに嵌まることができるように、各円筒部64Bの外周面の上端部には、面取りMが形成されている。
コレット64には、コレット64を上下方向に貫通する貫通穴64Fと、上下方向に延びる複数の割溝64G(図3参照)とが形成されている。貫通穴64Fは、基部64Aおよび各円筒部64Bのそれぞれの中心を通っていて、上側へ向けて小径になるテーパー状に形成されている。割溝64Gは、スリットであり、この実施形態では12本存在する。12本のうち、6本の割溝64Gは、コレット64の周方向つまり各円筒部64Bの周方向に等間隔で並んでいて、コレット64の上端から下端の手前まで延びてコレット64を径方向に切断した上割溝である(図3参照)。残りの6本の割溝64Gは、コレット64の周方向に等間隔で並んでいて、コレット64の下端から上端の手前まで延びてコレット64を径方向に切断した下割溝である(図示せず)。上割溝と下割溝とは、周方向において交互に並んでいる。各割溝64Gが狭まることによって、コレット64全体が縮径し、各割溝64Gが広がることによって、コレット64全体が拡径する。
コレット64の貫通穴64Fには、挿通軸63が下側から挿通されていて、この状態におけるコレット64の中心軸線は、回転軸線Jと一致している。コレット64の基部64Aの下端部64Cには、円環状のリング部材66が上側から係合している。作業者は、コレット64をリング部材66に対して回転軸線Jまわりに相対回転させることによって、下端部64Cをリング部材66から外して、サイズ違いの別のコレット64に交換することができる。なお、リング部材66には、コレット64を不意にリング部材66に対して相対回転しないように位置決めする爪状の回り止め67が、ボルトB9によって取り付けられている。また、上下方向に延びる管状のディスタンスパイプ68が、第2ハウジング59内において周方向に等間隔で並んで複数設けられている。各ディスタンスパイプ68は、第1ハウジング51、挿通軸63の下端部63Bおよびディスタンスピース65を貫通し、その下端部68Aは、第2ピストン55に到達している。第2ピストン55とリング部材66と各ディスタンスパイプ68とは、第2ピストン55およびリング部材66のそれぞれに組み付けられて各ディスタンスパイプ68の内側を通るボルトB10によって、一体化されている。そのため、リング部材66と各ディスタンスパイプ68とは、第2ピストン55とともに昇降する。
以上のように、第1保持機構31では、第1ピストン54とガイドロッド61と支持部62とが一体となって昇降し、第2ピストン55とリング部材66とディスタンスパイプ68とが一体となって昇降するが、他の部品は、スピンドル30に固定されている。また、前述した制御部(図示せず)とロータリージョイント42と第1流路30Bと第1スプリング58とは、第1ピストン54とガイドロッド61と支持部62とを昇降させる第1昇降機構を構成する。また、制御部(図示せず)とロータリージョイント42と第2流路30Cと第2スプリング60とは、第2ピストン55とリング部材66とディスタンスパイプ68とを昇降させる第2昇降機構を構成する。なお、第1保持機構31内には、昇降する部品と、固定された部品との間に、オイルシール等のシール部材Sが配置されている。
第1保持機構31が待機状態にある場合には、少なくともシリンダ50の第2空間50Dに空気が供給されているので、第2ピストン55が上位置にあって、コレット64全体が縮径した状態にある。待機状態の第1保持機構31において、図2に示すように第1ピストン54が下位置にあるときには、支持部62が、コレット64における第1円筒部64Dよりも下側にずれていて、支持部62の上面は、第1円筒部64Dの下面と、上下方向においてほぼ同じ位置にある。
ユニフォーミテイ試験や動釣合い試験が実施される場合には、その準備として、横になったタイヤ付ホイール4が第1保持機構31に対して上側からセットされる。図2のタイヤ付ホイール4のハブ穴4Aの内径が、縮径状態のコレット64における第1円筒部64Dの外径とほぼ同じであり、詳しくは、第1円筒部64Dの外径よりも僅かに大きい。第1円筒部64Dは、セットされたタイヤ付ホイール4のハブ穴4Aに下側から嵌り、タイヤ付ホイール4においてハブ穴4Aを取り囲んだ内周部4Bは、支持部62の上面に載ることによって支持部62によって下側から支えられる。図2のタイヤ付ホイール4は、第1保持機構31による保持がまだのアンチャック状態にある。
次に、シリンダ50の第2空間50Dへの空気の供給が停止されると、第2ピストン55は、第2スプリング60の付勢力によって、図4に示すように下位置まで下降する。すると、コレット64の基部64Aの下端部64Cに上側から係合したリング部材66が、第2ピストン55とともに下降しながら、コレット64を引き下げる。これにより、コレット64が、挿通軸63のテーパー状の外周面63Aに対して下側へ相対移動するので、コレット64の各割溝64Gが広がることによってコレット64が拡径する。そのため、コレット64の第1円筒部64Dは、タイヤ付ホイール4のハブ穴4Aに下側から嵌った状態を維持しつつ若干下降しながら拡径し、最終的にハブ穴4Aに対して圧入された状態になる。そのため、図4のタイヤ付ホイール4は、第1保持機構31によって保持されたチャック状態にある。この状態において第2空間50Dに空気が供給されると、第2ピストン55がリング部材66を伴って上位置まで上昇することにより、リング部材66がコレット64を引き下げなくなるので、コレット64が元の形状まで自然に縮径しながら浮き上がることによって挿通軸63に対して上側へ相対移動する。これにより、ハブ穴4Aに対する第1円筒部64Dの圧入状態が解除されるので、タイヤ付ホイール4はアンチャック状態になる(図2参照)。前述した第2昇降機構と挿通軸63とコレット64とリング部材66とは、タイヤ付ホイール4を径方向内側からチャックしたりアンチャックしたりするチャック・アンチャック機構を構成する。
先ほどのタイヤ付ホイール4よりもハブ穴4Aの内径が小さい別のタイヤ付ホイール4についてユニフォーミテイ試験や動釣合い試験が実施される場合には、待機状態の第1保持機構31において、シリンダ50の第1空間50Cに空気が供給されることによって、図5に示すように第1ピストン54が上位置まで上昇する。第1ピストン54とともに上昇した支持部62は、コレット64における第2円筒部64Eよりも下側にずれていて、支持部62の上面は、第2円筒部64Eよりも下側の第1円筒部64Dの上面と、上下方向においてほぼ同じ位置にある。次に、当該別のタイヤ付ホイール4が第1保持機構31に対して上側からセットされる。セットされたタイヤ付ホイール4のハブ穴4Aの内径は、縮径状態にあるコレット64における第2円筒部64Eの外径とほぼ同じであり、詳しくは、第2円筒部64Eの外径よりも僅かに大きい。第2円筒部64Eは、セットされたタイヤ付ホイール4のハブ穴4Aに下側から嵌り、このタイヤ付ホイール4の内周部4Bは、支持部62の上面に載ることによって支持部62によって下側から支えられる。図5のタイヤ付ホイール4は、アンチャック状態にある。
次に、シリンダ50の第2空間50Dへの空気の供給が停止される。すると、第2ピストン55が、第2スプリング60の付勢力によって、図6に示すように下位置まで下降するので、前述したように、リング部材66が、第2ピストン55とともに下降しながらコレット64を引き下げる。これにより、コレット64が、挿通軸63の外周面63Aに対して下側へ相対移動するので、コレット64の各割溝64Gが広がることによってコレット64が拡径する。そのため、コレット64の第2円筒部64Eは、タイヤ付ホイール4のハブ穴4Aに下側から嵌った状態を維持しつつ若干下降しながら拡径し、最終的にハブ穴4Aに対して圧入された状態になる。そのため、図6のタイヤ付ホイール4は、チャック状態にある。この状態で第2空間50Dへ空気が供給されて第2ピストン55がリング部材66を伴って上位置まで上昇すると、前述したようにコレット64が元の形状まで自然に縮径しつつ挿通軸63に対して上側へ相対移動するので、タイヤ付ホイール4はアンチャック状態になる(図5参照)。
以上のように、第1保持機構31では、コレット64における複数の円筒部64Bのうち、試験対象となるタイヤ付ホイール4のハブ穴4Aの内径とほぼ同じ大きさの外径を有するいずれかの円筒部64Bが、ハブ穴4Aに嵌められる。その後、コレット64が、その貫通穴64Fに挿通された挿通軸63に対して上下方向のいずれかに相対移動すると、ハブ穴4A内の円筒部64Bが僅かに拡径し、ハブ穴4Aに対して強く圧入された状態になる。このようにコレット64を僅かに拡径させてハブ穴4Aに圧入するコレットチャック方式では、マルチジョーチャック方式と比べて、タイヤ付ホイール4を径方向内側から強力に保持できる。また、第1保持機構31は、ハブ穴4Aの内径に応じて複数の円筒部64Bを有するコレット64を用いたコレットチャック方式によって、ハブ穴4Aの大きさが異なる複数種類のタイヤ付ホイール4であっても径方向内側から強力に保持できる。そのため、試験の際において回転時または停止時のタイヤ付ホイール4が第1保持機構31に対して回転方向に滑ることを防止できる。
また、ハブ穴4Aの大きさが異なる複数種類のタイヤ付ホイール4では、前述したように、コレット64においてハブ穴4Aに嵌る円筒部64Bに応じて、上下方向の搭載位置が変わる。しかし、支持部62が、タイヤ付ホイール4のサイズに応じて昇降してタイヤ付ホイール4を下側から支えるので、サイズの異なる複数種類のタイヤ付ホイール4であっても上下方向において安定して位置決めできる。
次に、第2保持機構32について説明する。図7は、第2保持機構32の縦断面図である。第2保持機構32は、連結部材80と、接触部材81と、弾性部材82という複数の金属部品を有する。
連結部材80は、上下方向に一致した板厚方向を有する円板状の基部83と、基部83の下面から下側へ突出した円筒状のケース部84と、ケース部84の内側に配置されて基部83の円中心部を上下方向に貫通した円管状の管部85とを一体的に含む。ケース部84は、基部83と同軸状に配置され、その下端部84Aは、径方向内側へ折り曲げられたフランジ状に形成されている。管部85では、上端部85Aが、基部83よりも上側にはみ出していて、下端部85Bが、ケース部84よりも下側にはみ出している。下端部85Bにおいて周方向における複数の位置には、貫通穴85Cが形成されていて、各貫通穴85Cには、金属製の球によって構成された嵌合部86が1つずつ外れ不能に嵌め込まれている。
管部85内には、上下方向に延びる円柱状のロック部材87が収容されている。ロック部材87の外周面の下端部には、ロック部材87の周方向に延びる1本の受け溝87Aが形成されている。ロック部材87の上端部には、一段大径になった大径部87Bと、大径部87Bよりも小径であって大径部87Bに上側から連なった小径部87Cとが設けられている。小径部87Cは、管部85の上端壁85Dを貫通して上端壁85Dよりも上側にはみ出ている。管部85の内周面の上端部には、管部85の径方向内側へ突出した段差85Eが形成されている。上下方向に伸縮可能なコイルばね88が、ロック部材87に対して外嵌された状態で、大径部87Bと段差85Eとの間で圧縮されることによって、ロック部材87全体を上側へ付勢している。これにより、待機状態におけるロック部材87では、大径部87Bが管部85の上端壁85Dに下側から接触し、受け溝87Aが、管部85の貫通穴85Cよりも上側にずれている。この状態では、管部85の各貫通穴85Cに嵌め込まれた嵌合部86は、ロック部材87の外周面において受け溝87Aよりも下側の部分に押されることによって、各嵌合部86の一部は、管部85の外周面からはみ出している。
接触部材81は、上下方向に延びる円筒状に形成されている。接触部材81の上部81Aは、一段小径になっている。接触部材81の外周面において上部81Aの下端に位置する部分には、接触部材81の径方向外側へ張り出したフランジ部81Bが設けられている。接触部材81の下端部81Cは、径方向外側へ張り出したフランジ状に形成されている。接触部材81では、上部81Aが、連結部材80のケース部84内に下側から挿入され、管部85に対して外嵌されている。これによって、接触部材81は、連結部材80によって上下方向にスライド可能に支持されている。フランジ部81Bがケース部84の下端部84Aに対して上側から対向しているので、接触部材81が連結部材80から下側へ抜けることが防止される。また、必要に応じて、接触部材81の上部81Aと管部85との間にスリーブ89が介在されてもよく、スリーブ89によって、連結部材80がスムーズにスライドできる。
弾性部材82は、例えば上下方向に伸縮可能なコイルばねであって、連結部材80のケース部84内に収容され、接触部材81の上部81Aおよび管部85に対して外嵌されている。この状態の弾性部材82は、連結部材80の基部83と接触部材81のフランジ部81Bとの間で圧縮されることによって、接触部材81全体を下側へ付勢している。これにより、待機状態における接触部材81では、フランジ部81Bがケース部84の下端部84Aに上側から接触し、フランジ部81Bよりも下側の部分が、ケース部84よりも下側に突出している。
試験装置1は、モータやエアシリンダによって構成された移動機構90を含み、移動機構90は、連結部材80の基部83を掴んで第2保持機構32全体を昇降させたり水平移動させたりする(図1も参照)。図8を参照して、第2保持機構32に関連して、タイヤ付ホイール4をチャック状態で保持した第1保持機構31の挿通軸63には、アダプタ91が取り付けられている。アダプタ91は、上下方向に延びる円柱状であって、挿通軸63と同軸状に配置されている。アダプタ91には、その上端面から下側へ延びる挿通穴91Aが形成されている。アダプタ91は、挿通穴91Aの下端を通って挿通軸63に組み付けられたボルトB11によって挿通軸63に固定され、挿通軸63の上端部をなしている。アダプタ91において挿通穴91Aを区画した円筒状の内周面91Bの上下方向途中には、内周面91Bの周方向に延びる複数の横溝91Cが上下方向に並んで形成されている。横溝91Cは、コレット64の円筒部64Bと同数存在し、図8では、下側の第1横溝91Dと上側の第2横溝91Eとを含む。
第1保持機構31がタイヤ付ホイール4をチャック状態で保持した状態において、移動機構90が、第2保持機構32をタイヤ付ホイール4の上側に配置する。第2保持機構32の接触部材81および管部85が、第1保持機構31の挿通軸63と同軸状に配置されるように、水平方向における第2保持機構32の位置が微調整されてもよい。次に、作業者または試験装置1に設けられたアクチュエータ(図示せず)が第2保持機構32のロック部材87の上端の小径部87Cを下側へ押圧することによって、ロック部材87が管部85内で下降する。これにより、図8に示すように、ロック部材87の受け溝87Aと管部85の各貫通穴85Cとが上下方向において一致し、各貫通穴85C内の嵌合部86は、その一部が受け溝87Aに受け入れられることによって、管部85の外周面からはみ出さなくなる。
小径部87Cが下側へ押圧された状態で、移動機構90は、第2保持機構32を下降させる。すると、管部85が、アダプタ91の挿通穴91Aに対して上側から挿入され、アダプタ91が、接触部材81の内部に下側から挿入される。なお、管部85の外周面の下端部には、下側へ向けて縮径するテーパー面85Fが形成され、アダプタ91の内周面91Bの上端部には、下側へ向けて縮径するテーパー面91Fが形成されているので、管部85とアダプタ91とが水平方向に若干ずれていても、管部85は、アダプタ91の挿通穴91Aに確実に挿入される。接触部材81は、その下端部81Cにおいてタイヤ付ホイール4の内周部4Bに上側から接触するとともに、第2保持機構32の下降に伴って連結部材80のケース部84内に下側から進入して弾性部材82を圧縮する。図8に示すようにコレット64における下側の第1円筒部64Dがタイヤ付ホイール4のハブ穴4Aに嵌った状態では、管部85の各貫通穴85Cがアダプタ91における下側の第1横溝91Dと上下方向において一致すると、移動機構90は、第2保持機構32の下降を停止する。
次に、下側への小径部87Cの押圧が解除されることによって、図9に示すように、ロック部材87が上昇する。すると、管部85の各貫通穴85Cに嵌め込まれた嵌合部86は、ロック部材87の外周面において受け溝87Aよりも下側の部分に押されることによって、各嵌合部86の一部は、管部85の外周面からはみ出して第1横溝91Dに嵌る。これにより、管部85を有する連結部材80が、アダプタ91つまり挿通軸63に対して上下方向において相対移動不能に連結される。つまり、第2保持機構32は、球体である嵌合部86を用いたボールロック機構によって、連結部材80を挿通軸63に連結する。また、第2保持機構32の下降の際に接触部材81によって圧縮された弾性部材82は、その圧縮量に応じた付勢力によって、接触部材81を下側へ付勢している。タイヤ付ホイール4の内周部4Bを上側から接触した接触部材81は、この付勢力を保持力として、タイヤ付ホイール4を支持部62に押さえつけることによって上側へ外れないように保持している。これにより、第1保持機構31によってチャックされた状態にあるタイヤ付ホイール4は、第2保持機構32によってもチャックされた状態にある。このとき、移動機構90は、第2保持機構32から外れている。そのため、移動機構90による上側からの拘束がない状態で第2保持機構32がタイヤ付ホイール4と一体回転できるので、例えば、タイヤ付ホイール4を高速で回転させて正確なユニフォーミテイ試験を実施できる。
第2保持機構32によるタイヤ付ホイール4のチャック状態を解除するには、まず、ロック部材87の小径部87Cを下側へ押圧して、ロック部材87の受け溝87Aと管部85の各貫通穴85Cとを上下方向において一致させる。これにより、各貫通穴85C内の嵌合部86は、受け溝87A側へ退避することによってアダプタ91の横溝91Cから外れるので、挿通軸63に対する連結部材80の連結が解除される(図8参照)。その後、移動機構90が、第2保持機構32を上昇させて挿通軸63から外すと、接触部材81がタイヤ付ホイール4から離れるので、第2保持機構32によるタイヤ付ホイール4のチャック状態が解除される。
以上のように、第2保持機構32では、連結部材80の嵌合部86が挿通軸63におけるいずれかの横溝91Cに嵌ると、連結部材80が挿通軸63に連結される。この状態において、連結部材80によって支持された接触部材81が、連結部材80と接触部材81との間で圧縮された弾性部材82の付勢力によってタイヤ付ホイール4に上側から押し付けられることにより、タイヤ付ホイール4が第2保持機構32によって上側から保持される。
また、コレット64における上側の第2円筒部64Eがタイヤ付ホイール4のハブ穴4Aに嵌った状態(図6参照)で第2保持機構32によってタイヤ付ホイール4をチャックする場合がある。この場合には、管部85の各貫通穴85Cに嵌め込まれた嵌合部86がアダプタ91における上側の第2横溝91Eに嵌るように、移動機構90による第2保持機構32の下降停止位置が調整される。嵌合部86が第2横溝91Eに嵌った状態における弾性部材82の圧縮量は、第1円筒部64Dがハブ穴4Aに嵌って嵌合部86が第1横溝91Dに嵌った状態における弾性部材82の圧縮量(図9参照)とほぼ同じである。そのため、第1円筒部64Dおよび第2円筒部64Eのどちらがハブ穴4Aに嵌った状態であっても、ほぼ一定の圧縮量で圧縮した弾性部材82によって付勢された接触部材81は、ほぼ一定の保持力でタイヤ付ホイール4を上側から保持することができる。
つまり、ハブ穴4Aの大きさが異なる複数種類のタイヤ付ホイール4では、コレット64においてハブ穴4Aに嵌る円筒部64Bに応じて、上下方向の搭載位置が変わるが、搭載位置が変わっても、嵌合部86を今までとは別の横溝91Cに嵌めることによって、弾性部材82の圧縮量つまり付勢力を一定に維持できる。そのため、第2保持機構32は、サイズの異なる複数種類のタイヤ付ホイール4であっても上側から一定の保持力で保持できる。
ユニフォーミテイ試験および動釣合い試験のそれぞれにおいて、第1保持機構31によるタイヤ付ホイール4の保持は必ず行われるが、第2保持機構32は、第1保持機構31とは連動しておらず、独立して動作できる。そのため、タイヤ付ホイール4に接地荷重が与えられない動釣合い試験や、接地荷重が小さい場合におけるユニフォーミテイ試験のように第2保持機構32による保持が不要の場合には、第2保持機構32を動作させずに済ませることができるので、第2保持機構32の動作に起因したサイクルタイムのロスを低減できる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、前述した実施形態では、試験装置1は、ユニフォーミテイ試験および動釣合い試験の両方を行う複合試験装置であるが、ユニフォーミテイ試験および動釣合い試験の少なくとも一方を行えればよい。
また、前述した実施形態では、第1保持機構31において、挿通軸63が固定されてコレット64自体が上下方向に移動可能であったが、コレット64が上下方向において固定されていて挿通軸63が第2ピストン55とともに上下方向に移動可能であってもよい。この場合においても、コレット64は、挿通軸63に対して上下方向に相対移動しながら拡径したり縮径したりする。
また、横になったタイヤ付ホイール4を第1保持機構31に上側から傾かずに水平な姿勢でセットできるように、タイヤ付ホイール4を上側から押える着脱装置(図示せず)が試験装置1に備えられてもよい。前述した移動機構90が着脱装置として機能してもよい。着脱装置は、タイヤ付ホイール4が第1保持機構31にセットされた後は、タイヤ付ホイール4から退避する。