[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成について説明する。図1に示したように、本実施の形態に係る磁気センサシステム1は、磁気スケール2と、磁気センサ3とを備えている。磁気スケール2は、強度および方向が空間的な分布を有する外部磁界を発生する。磁気センサ3は、外部磁界の一部である印加磁界を検出して、印加磁界が有する情報である印加磁界情報に対応する検出値θsを生成する。本実施の形態では、印加磁界情報は、基準方向に対して印加磁界の方向がなす角度である。以下、基準方向に対して印加磁界の方向がなす角度を印加磁界角度と言い、記号θMで表す。検出値θsは、印加磁界角度θMと対応関係を有する。基準方向については、後で説明する。
磁気スケール2は、主磁界を発生する複数の主磁石と、副磁界を発生する複数の副磁石と、複数の主磁石および複数の副磁石を支持する基板61と、複数の主磁石および複数の副磁石を保護する保護部62とを含んでいる。なお、保護部62は、後で説明する図3に示されている。保護部62は、例えば樹脂によって形成されて、複数の主磁石および複数の副磁石を覆っている。外部磁界は、主磁界と副磁界とが合成されたものである。複数の主磁石および複数の副磁石は、例えば直方体形状を有している。
本実施の形態では、磁気スケール2は、リニアスケールである。基板61は、一方向に長い板状である。また、基板61は、上面61aと下面61bを有している。複数の主磁石と複数の副磁石は、基板61の上面61aの上に配置されている。磁気センサ3は、基板61の上面61aに対向するように配置されている。
ここで、図1に示したように、X方向、Y方向およびZ方向を定義する。本実施の形態では、基板61の上面61aに垂直で下面61bから上面61aに向かう方向をZ方向とする。また、Z方向に垂直な2方向であって、互いに直交する2つの方向をX方向とY方向とする。また、X方向とは反対の方向を−X方向とし、Y方向とは反対の方向を−Y方向とし、Z方向とは反対の方向を−Z方向とする。
本実施の形態において、X方向に平行な方向を、第1の方向と言い、符号X1で表す。第1の方向X1は、直線的な方向である。第1の方向X1は、X方向と−X方向とを含む。複数の主磁石は、第1の方向X1に沿って間隔を開けて配置されている。複数の副磁石は、第1の方向X1に沿って、複数の主磁石とは異なる位置に配置されている。
ここで、複数の主磁石および複数の副磁石の各々の第1の方向X1における位置を、以下のように定義する。まず、基板61の上面61aに位置して第1の方向X1に延びる直線であって、複数の主磁石および複数の副磁石と接する直線を、位置基準線とする。そして、位置基準線のうち、複数の主磁石および複数の副磁石の各々と重なる線分の中点の位置を、複数の主磁石および複数の副磁石の各々の第1の方向X1における位置とする。
また、本実施の形態では、Z方向は、本発明における第2の方向に対応する。磁気センサ3は、磁気スケール2に対して、Z方向(第2の方向)について離れた位置にある。複数の主磁石および複数の副磁石の各々は、Z方向(第2の方向)に平行な方向の磁化を有している。複数の主磁石と複数の副磁石の配置と磁化の方向については、後で詳しく説明する。
磁気スケール2は、第1の方向X1に沿った所定の範囲内において、磁気センサ3に対する相対位置が変化可能である。以下、磁気センサ3に対する磁気スケール2の相対位置を、相対位置P2と言う。本実施の形態では、磁気スケール2と磁気センサ3の一方は、図示しない可動物体に連動して、X方向または−X方向に直線的に移動する。これにより、相対位置P2がX方向または−X方向に変化する。印加磁界角度θMは、相対位置P2の変化に伴って変化する。
本実施の形態に係る磁気センサシステム1は、相対位置P2を検出するための位置検出装置として用いることができる。検出値θsは、相対位置P2と対応関係を有する。磁気センサシステム1を位置検出装置として用いる場合には、検出値θsの範囲を、相対位置P2を一意に特定可能な範囲としてもよい。このような検出値θsの範囲は、複数の相対位置P2において検出値θsが同じ値になることがない範囲である。これは、例えば、0°〜360°よりも狭い範囲である。検出値θsの範囲を0°〜360°よりも狭い範囲にするには、相対位置P2が変化可能な所定の範囲(以下、可動範囲と言う。)を、検出値θsの0°〜360°に対応する範囲とするが、実際に磁気センサ3が生成する検出値θsの範囲を0°〜360°よりも狭い範囲に制限して、その制限された検出値θsの範囲に対応する相対位置P2の範囲のみを、検出可能な相対位置P2の範囲としてもよい。あるいは、可動範囲を、検出値θsが0°〜360°となる範囲よりも狭い範囲としてもよい。これらのことにより、検出値θsによって、相対位置P2を一意に特定することができる。
次に、図2を参照して、本実施の形態における基準方向について説明する。ここで、磁気センサ3が印加磁界を検出する基準の位置を、基準位置PRと言う。基準位置PRは、磁気センサ3内の位置とする。また、基準位置PRを含むXZ平面を、基準平面Pと言う。図2に示したように、この基準平面P内において、印加磁界の方向DMは、基準位置PRを中心として回転する。以下の説明において、印加磁界の方向DMとは、基準平面P内に位置する方向を指す。
基準方向DRは、基準平面P内に位置する。本実施の形態では特に、Z方向を基準方向DRとする。基準方向DRに対して印加磁界の方向DMがなす角度、すなわち印加磁界角度θMは、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから時計回り方向に見たときに負の値で表す。
次に、図3を参照して、複数の主磁石と複数の副磁石の配置と磁化の方向について説明する。始めに、複数の主磁石と複数の副磁石の配置について説明する。本実施の形態では、磁気スケール2は、複数の主磁石として、3つの主磁石11,12,13を含んでいる。主磁石11,12,13は、第1の方向X1に沿って、この順に一定の間隔Dで配置されている。
複数の副磁石は、1組以上の副磁石の組を構成する。本実施の形態では、磁気スケール2は、複数の副磁石として、第1の組を構成する4つの副磁石21,22,23,24と、第2の組を構成する8つの副磁石31,32,33,34,35,36,37,38とを含んでいる。
副磁石21〜24,31〜38は、主磁石11,12,13のうちの隣り合う2つの主磁石の間に2つ以上の副磁石が存在するように配置されている。本実施の形態では、主磁石11と主磁石12の間には、副磁石31,21,32,33,22,34が、X方向にこの順に配置されている。主磁石12と主磁石13の間には、副磁石35,23,36,37,24,38が、X方向にこの順に配置されている。
副磁石21〜24,31〜38の各々は、主磁石11,12,13のうちの隣り合う2つの主磁石の間の位置であって、この2つの主磁石のうちの近い方の主磁石とは、第1の方向X1にm×{1/(2n−1)}×Dだけ異なる位置に配置されている。以下、この要件を第1の要件と言う。nは、2以上の整数であって、副磁石の組によって異なる。第1の組ではnは2であり、第2の組ではnは3である。mは、1以上の整数であって、副磁石の位置によって異なる。
第1の組の副磁石21〜24と主磁石11,12,13との位置関係は、具体的には以下の通りである。副磁石21にとって、上記の近い方の主磁石とは、主磁石11である。副磁石22,23にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石12である。副磁石24にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石13である。副磁石21〜24はいずれも、上記の第1の要件において、nが2、mが1となる位置、すなわち、上記の近い方の主磁石とは、X方向または−X方向にD/3だけ異なる位置に配置されている。また、第1の方向X1における、副磁石21,22の間隔と副磁石23,24の間隔は、それぞれD/3である。
第2の組の副磁石31〜38と主磁石11,12,13との位置関係は、具体的には以下の通りである。副磁石31にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石11である。副磁石34,35にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石12である。副磁石38にとって、上記の近い方の主磁石とは、主磁石13である。副磁石31,34,35,38はいずれも、上記の第1の要件において、nが3、mが1となる位置、すなわち、上記の近い方の主磁石とは、X方向または−X方向にD/5だけ異なる位置に配置されている。
また、副磁石32にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石11である。副磁石33,36にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石12である。副磁石37にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石13である。副磁石32,33,36,37はいずれも、上記の第1の要件において、nが3、mが2となる位置、すなわち、上記の近い方の主磁石とは、X方向または−X方向に2D/5だけ異なる位置に配置されている。
また、第1の方向X1における、副磁石31,32の間隔、副磁石32,33の間隔、副磁石33,34の間隔、副磁石35,36の間隔、副磁石36,37の間隔および副磁石37,38の間隔は、それぞれD/5である。
次に、複数の主磁石と複数の副磁石の磁化の方向について説明する。複数の主磁石すなわち主磁石11,12,13のうちの隣り合う2つの主磁石の磁化の方向は、互いに反対である。図3において主磁石11,12,13に描いた矢印は、主磁石11,12,13の磁化の方向を表している。図3では、主磁石11,13の磁化の方向はZ方向であり、主磁石12の磁化の方向は−Z方向である。
また、図3において副磁石21〜24,31〜38に描いた矢印は、副磁石21〜24,31〜38の磁化の方向を表している。各組の副磁石のうち、mが1となる位置に配置された副磁石の磁化の方向は、その副磁石に最も近い主磁石の磁化の方向と同じである。以下、この要件を第2の要件と言う。この第2の要件が当てはまるのは、第1の組の全ての副磁石21〜24と、第2の組の一部の副磁石31,34,35,38である。図3に示したように、副磁石21,31の磁化の方向は、主磁石11の磁化の方向と同じ方向(Z方向)である。副磁石22,23,34,35の磁化の方向は、主磁石12の磁化の方向と同じ方向(−Z方向)である。副磁石24,38の磁化の方向は、主磁石13の磁化の方向と同じ方向(Z方向)である。
また、各組の副磁石のうち、mが2以上となる位置に配置された副磁石の磁化の方向は、その副磁石の両側の同じ組の2つの副磁石の各々の磁化の方向と反対である。以下、この要件を第3の要件と言う。この第3の要件が当てはまるのは、第2の組の他の一部の副磁石32,33,36,37である。図3に示したように、副磁石32の磁化の方向は、副磁石31,33の磁化の方向とは反対の方向(−Z方向)である。副磁石33の磁化の方向は、副磁石32,34の磁化の方向とは反対の方向(Z方向)である。副磁石36の磁化の方向は、副磁石35,37の磁化の方向とは反対の方向(Z方向)である。副磁石37の磁化の方向は、副磁石36,38の磁化の方向とは反対の方向(−Z方向)である。
以下、磁気センサ3の第1および第2の例について説明する。始めに、図4および図5を参照して、磁気センサ3の第1の例について説明する。図4は、磁気センサ3の第1の例を示す斜視図である。図5は、磁気センサ3の第1の例の構成を示す回路図である。
図4および図5に示したように、第1の例では、磁気センサ3は、第1の検出部71と、第2の検出部72と、第3の検出部73と、第4の検出部74とを含んでいる。第1ないし第4の検出部71〜74の各々は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を含んでいる。第1ないし第4の検出部71〜74の各々は、直列に接続された複数の磁気抵抗効果素子を含んでいてもよい。第1ないし第4の検出部71〜74は、Z方向にこの順に並んでいる。なお、図4では、理解を容易にするために、第1ないし第4の検出部71〜74を実際よりも大きく描いている。また、第1ないし第4の検出部71〜74の配置は、図4に示した例に限られない。例えば、第1ないし第4の検出部71〜74は、Y方向に積層されていてもよい。
図5に示したように、第1の例では、磁気センサ3は、更に、2つの電源ポートV11,V12と、2つのグランドポートG11,G12と、2つの出力ポートE11,E12とを含んでいる。第1の検出部71は、電源ポートV11と出力ポートE11との間に設けられている。第2の検出部72は、電源ポートV12と出力ポートE12との間に設けられている。第3の検出部73は、出力ポートE11とグランドポートG11との間に設けられている。第4の検出部74は、出力ポートE12とグランドポートG12との間に設けられている。電源ポートV11,V12には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG11,G12は、グランドに接続される。
磁気抵抗効果素子は、例えばスピンバルブ型の磁気抵抗効果素子である。スピンバルブ型の磁気抵抗効果素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、印加磁界の方向DMに応じて磁化の方向が変化する磁性層である自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。スピンバルブ型の磁気抵抗効果素子は、TMR素子でもよいし、GMR素子でもよい。TMR素子では、非磁性層はトンネルバリア層である。GMR素子では、非磁性層は非磁性導電層である。スピンバルブ型の磁気抵抗効果素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。図4において第1ないし第4の検出部71〜74に描いた矢印は、それぞれ、それらに含まれる磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向を表している。また、図5において、塗りつぶした矢印は磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は磁気抵抗効果素子の自由層の磁化の方向を表している。
第1の検出部71に含まれる磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、Z方向であり、第3の検出部73に含まれる磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、−Z方向である。この場合、印加磁界角度θMの余弦に応じて、出力ポートE11の電位が変化する。
第2の検出部72に含まれる磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、X方向であり、第4の検出部74に含まれる磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、−X方向である。この場合、印加磁界角度θMの正弦に応じて、出力ポートE12の電位が変化する。
磁気センサ3は、更に、角度演算部75を含んでいる。角度演算部75は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)またはマイクロコンピュータによって実現することができる。角度演算部75は、出力ポートE11の電位と出力ポートE12の電位に基づいて、印加磁界角度θMと対応関係を有する検出値θsを生成する。具体的には、例えば、角度演算部は、下記の式(1)によって、θsを算出する。なお“atan”は、アークタンジェントを表す。
θs=atan(Sb/Sa) …(1)
式(1)において、Saは、出力ポートE11の電位の最大値と最小値がそれぞれ1と−1になるように規格化した信号である。Sbは、出力ポートE12の電位の最大値と最小値がそれぞれ1と−1になるように規格化した信号である。Sa,Sbは、角度演算部75によって生成される。
θsが0°以上360°未満の範囲内では、式(1)におけるθsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、Sa,Sbの正負の組み合わせにより、θsの真の値が、式(1)におけるθsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。角度演算部は、式(1)と、上記のSa,Sbの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθsを求める。
次に、図6および図7を参照して、磁気センサ3の第2の例について説明する。図6は、磁気スケール2と磁気センサ3の第2の例を示す斜視図である。図7は、磁気センサ3の第2の例の構成を示す回路図である。
図6および図7に示したように、第2の例では、磁気センサ3は、第1のホール素子H1と第3のホール素子H3とを含む第1の検出部81と、第2のホール素子H2と第4のホール素子H4とを含む第2の検出部82と、非磁性材料よりなり上面83aを有する基板83と、磁性材料よりなるヨーク84とを含んでいる。上面83aは、XZ平面に平行である。なお、図6では、理解を容易にするために、基板83、ヨーク84およびホール素子H1〜H4を、実際よりも大きく描いている。
第1ないし第4のホール素子H1〜H4は、上面83aの近傍において、感磁面が上面83aに平行になるような姿勢で基板83に埋め込まれている。第1および第3のホール素子H1,H3は、Z方向に並ぶように配置されている。第2および第4のホール素子H2,H4は、X方向に並ぶように配置されている。
ヨーク84は、円板状である。ヨーク84は、第1ないし第4のホール素子H1〜H4のそれぞれの一部にまたがるように、基板83の上面83aの上に配置されている。
図7に示したように、第1の検出部81は、更に、電源ポートV21と、グランドポートG21と、2つの出力ポートE21,E22と、差分検出器85とを含んでいる。第2の検出部82は、更に、電源ポートV22と、グランドポートG22と、2つの出力ポートE23,E24と、差分検出器86とを含んでいる。第1ないし第4のホール素子H1〜H4の各々は、電源端子Haと、グランド端子Hcと、2つの出力端子Hb,Hdとを有している。
第1の検出部81では、第1および第3のホール素子H1,H3の電源端子Haは、電源ポートV21に接続されている。第1および第3のホール素子H1,H3のグランド端子Hcと、第1および第3のホール素子H1,H3の出力端子Hdは、グランドポートG21に接続されている。第1のホール素子H1の出力端子Hbは、出力ポートE21に接続されている。第3のホール素子H3の出力端子Hbは、出力ポートE22に接続されている。電源ポートV21には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG21は、グランドに接続される。
第2の検出部82では、第2および第4のホール素子H2,H4の電源端子Haは、電源ポートV22に接続されている。第2および第4のホール素子H2,H4のグランド端子Hcと、第2および第4のホール素子H2,H4の出力端子Hdは、グランドポートG22に接続されている。第2のホール素子H2の出力端子Hbは、出力ポートE23に接続されている。第4のホール素子H4の出力端子Hbは、出力ポートE24に接続されている。電源ポートV22には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG22は、グランドに接続される。
ヨーク84は、印加磁界を受けて、出力磁界を発生する。出力磁界は、Y方向に平行な方向の出力磁界成分であって、印加磁界に応じて変化する出力磁界成分を含んでいる。具体的には、ヨーク84は、印加磁界のZ方向の成分を受けた場合には、第1のホール素子H1の近傍においてY方向の出力磁界成分を発生し、第3のホール素子H3の近傍において−Y方向の出力磁界成分を発生する。ヨーク84が印加磁界の−Z方向の成分を受けた場合には、出力磁界成分の方向は、ヨーク84が印加磁界のZ方向の成分を受けた場合とは逆になる。
第1および第3のホール素子H1,H3は、第1および第3のホール素子H1,H3の近傍において発生したY方向または−Y方向の出力磁界成分を検出することによって、印加磁界のZ方向または−Z方向の成分を検出する。出力ポートE21,E22の電位差は、印加磁界のZ方向または−Z方向の成分に応じて変化する。差分検出器85は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第1の検出信号S1として出力する。
また、ヨーク84は、印加磁界のX方向の成分を受けた場合には、第2のホール素子H2の近傍においてY方向の出力磁界成分を発生し、第4のホール素子H4の近傍において−Y方向の出力磁界成分を発生する。ヨーク84が印加磁界の−X方向の成分を受けた場合には、出力磁界成分の方向は、ヨーク84が印加磁界のX方向の成分を受けた場合とは逆になる。
第2および第4のホール素子H2,H4は、第2および第4のホール素子H2,H4の近傍において発生したY方向または−Y方向の出力磁界成分を検出することによって、印加磁界のX方向または−X方向の成分を検出する。出力ポートE23,E24の電位差は、印加磁界のX方向または−X方向の成分に応じて変化する。差分検出器86は、出力ポートE23,E24の電位差に対応する信号を第2の検出信号S2として出力する。
図7に示したように、第2の例では、磁気センサ3は、更に、角度演算部87を含んでいる。角度演算部87は、例えば、ASICまたはマイクロコンピュータによって実現することができる。角度演算部87は、第1および第2の検出信号S1,S2に基づいて、印加磁界角度θMと対応関係を有する検出値θsを生成する。具体的には、例えば、角度演算部87は、下記の式(2)によって、θsを算出する。
θs=atan(S2/S1) …(2)
θsが0°以上360°未満の範囲内では、式(2)におけるθsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S1,S2の正負の組み合わせにより、θsの真の値が、式(2)におけるθsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。角度演算部87は、式(2)と、上記のS1,S2の正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθsを求める。
次に、本実施の形態に係る磁気センサシステム1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、主磁石11〜13は、主磁界を発生する。外部磁界が主磁界のみからなる場合には、相対位置P2の変化に対する印加磁界の一方向の成分の強度の変化を表す曲線は、正弦曲線を描く理想成分と、この理想成分の(2n−1)次の高調波に相当する少なくとも1つの高調波成分とを含んでいる。なお、nは、前述の第1の要件におけるnと同じものであり、2以上の整数である。
以下、相対位置P2の変化に対する印加磁界の一方向の成分の強度の変化を表す曲線を、印加磁界特性曲線と言う。また、印加磁界の第1の方向X1の成分を第1の成分と言い、印加磁界のZ方向(第2の方向)に平行な方向の成分を第2の成分と言う。
相対位置P2の変化に対する印加磁界の第1の成分の強度の変化を表す曲線と、相対位置P2の変化に対する印加磁界の第2の成分の強度の変化を表す曲線は、いずれも、上記印加磁界特性曲線に対応する。外部磁界が主磁界のみからなる場合には、相対位置P2の変化に対する印加磁界の第1の成分の強度の変化を表す曲線と、相対位置P2の変化に対する印加磁界の第2の成分の強度の変化を表す曲線は、いずれも、理想成分と、少なくとも1つの高調波成分とを含んでいる。
図8は、基準位置PRにおける主磁界に対応する磁束密度である主磁束密度を示す特性図である。主磁束密度は、磁束密度Bmxおよび磁束密度Bmzの総称である。磁束密度Bmxは、外部磁界が主磁界のみからなる場合における印加磁界の第1の成分に対応する磁束密度である。磁束密度Bmzは、外部磁界が主磁界のみからなる場合における印加磁界の第2の成分に対応する磁束密度である。図8は、Bmx,Bmzを示している。
なお、図8は、磁気スケール2の保護部62と磁気センサ3の間隔を2.5mmとし、複数の主磁石と複数の副磁石の体積の合計を600mm3として、シミュレーションによって求めたものである。図8において、横軸は相対位置P2を表し、縦軸は磁束密度Bmx,Bmzの値を表している。横軸の単位は、主磁石13と基準位置PRのそれぞれの第1の方向X1についての位置が一致したときの値を−1とし、主磁石11と基準位置PRのそれぞれの第1の方向X1についての位置が一致したときの値を1とした任意単位である。縦軸は、X方向またはZ方向の磁界に対応する磁束密度を正の値で表し、−X方向または−Z方向の磁界に対応する磁束密度を負の値で表している。
図8に示したように、相対位置P2の変化に対する磁束密度Bmx,Bmzの変化を表す曲線は、いずれも、正弦曲線を描く理想成分と、この理想成分の(2n−1)次の高調波に相当する少なくとも1つの高調波成分とを含んでいる。相対位置P2の変化に対する磁束密度Bmx,Bmzの変化を表す曲線は、いずれも、外部磁界が主磁界のみからなる場合における上記印加磁界特性曲線に対応する。
前述のように、基準方向DRに対して印加磁界の方向DMがなす角度、すなわち印加磁界角度θMは、相対位置P2の変化に伴って変化する。相対位置P2の変化に対する印加磁界角度θMの理想的な変化は、直線で表される。以下、この直線を理想直線と言う。外部磁界が主磁界のみからなる場合には、前述のように、相対位置P2の変化に対する磁束密度Bmx,Bmzの変化を表す曲線がいずれも少なくとも1つの高調波成分を含んでいるために、相対位置P2の変化に対する印加磁界角度θMの変化を表す特性曲線(以下、角度特性曲線と言う。)は、理想直線からずれてしまう。その結果、磁気センサ3が生成する検出値θsに誤差が生じてしまう。以下、検出値θsの誤差を、角度誤差と言う。
これに対し、本実施の形態では、磁気スケール2は、主磁石11,12,13の他に、副磁界を発生する副磁石21〜24,31〜38を含んでいる。相対位置P2の変化に対する印加磁界情報の理想的な変化を理想特性としたとき、副磁界は、外部磁界が主磁界のみからなる場合に比べて、相対位置P2の変化に対する印加磁界情報の変化を表す特性が、理想特性に近づくように、主磁界を補正するものである。
本実施の形態では特に、相対位置P2の変化に対する印加磁界情報の変化は、相対位置P2の変化に対する印加磁界角度θMの変化である。理想特性は、相対位置P2の変化に対する印加磁界角度θMの理想的な変化であり、上記理想直線で表される。また、相対位置P2の変化に対する印加磁界角度θMの変化を表す特性は、角度特性曲線で表される。副磁界は、角度特性曲線の、理想直線からの最大偏差が小さくなるように、主磁界を補正するものである。
また、本実施の形態では特に、各組の副磁石は、印加磁界特性曲線における1つの高調波成分が低減されるように主磁界を補正するためのものである。第1の組の副磁石21〜24は、印加磁界特性曲線における3次の高調波に相当する高調波成分(以下、3次高調波成分と言う。)を低減する。第2の組の副磁石31〜38は、印加磁界特性曲線における5次の高調波に相当する高調波成分(以下、5次高調波成分と言う。)を低減する。以下、第1の組の副磁石21〜24が発生する磁界を第1の副磁界成分と言い、第2の組の副磁石31〜38が発生する磁界を第2の副磁界成分という。副磁界は、第1の副磁界成分と第2の副磁界成分が合成されたものである。前述の第1ないし第3の要件は、第1の副磁界成分によって3次高調波成分を低減し、第2の副磁界成分によって5次高調波成分を低減するように、副磁石21〜24,31〜38の位置と磁化の方向を規定するための要件である。
以下、図8ないし図11を参照して、第1および第2の副磁界成分によって、3次高調波成分および5次高調波成分が低減されることについて説明する。
図9は、基準位置PRにおける第1の副磁界成分に対応する磁束密度である第1の副磁束密度を示す特性図である。図10は、基準位置PRにおける第2の副磁界成分に対応する磁束密度である第2の副磁束密度を示す特性図である。図11は、印加磁界に対応する磁束密度である印加磁束密度を示す特性図である。図9ないし図11は、シミュレーションによって求めたものである。図9ないし図11におけるシミュレーションの条件は、図8におけるシミュレーションの条件と同じである。
第1の副磁束密度は、磁束密度Bsx1および磁束密度Bsz1の総称である。磁束密度Bsx1は、外部磁界が第1の副磁界成分のみからなる場合における印加磁界の第1の成分に対応する磁束密度である。磁束密度Bsz1は、外部磁界が第1の副磁界成分のみからなる場合における印加磁界の第2の成分に対応する磁束密度である。図9は、Bs1x,Bs1zを示している。図9において、横軸は相対位置P2を表し、縦軸は磁束密度Bs1x,Bs1zの値を表している。縦軸の正負の意味は、図8と同じである。
第2の副磁束密度は、磁束密度Bsx2および磁束密度Bsz2の総称である。磁束密度Bsx2は、外部磁界が第2の副磁界成分のみからなる場合における印加磁界の第1の成分に対応する磁束密度である。磁束密度Bsz2は、外部磁界が第2の副磁界成分のみからなる場合における印加磁界の第2の成分に対応する磁束密度である。図10は、Bs2x,Bs2zを示している。図10において、横軸は相対位置P2を表し、縦軸は磁束密度Bs2x,Bs2zの値を表している。縦軸の正負の意味は、図8と同じである。
印加磁束密度は、磁束密度Bxおよび磁束密度Bzの総称である。磁束密度Bsは、印加磁界の第1の成分に対応する磁束密度である。磁束密度Bsz2は、印加磁界の第2の成分に対応する磁束密度である。図11は、Bx,Bzを示している。図11において、横軸は相対位置P2を表し、縦軸は磁束密度Bx,Bzの値を表している。縦軸の正負の意味は、図8と同じである。磁束密度Bxは、磁束密度Bmx,Bs1x,Bs2xが合成されたものである。磁束密度Bzは、磁束密度Bmz,Bs1z,Bs2zが合成されたものである。
図11に示したように、相対位置P2の変化に対する磁束密度Bx,Bzの変化を表す曲線は、いずれも、図8に示した相対位置P2の変化に対する磁束密度Bmx,Bmzの変化を表す曲線に比べて、正弦曲線に近い曲線になっている。これは、磁束密度s1x,Bs2xの作用によって、磁束密度Bmxに比べて、磁束密度Bxの3次高調波成分および5次高調波成分が低減され、磁束密度Bs1z,Bs2zの作用によって、磁束密度Bmzに比べて、磁束密度Bzの3次高調波成分および5次高調波成分が低減されることを表している。このことから、本実施の形態によれば、第1および第2の副磁界成分によって、3次高調波成分および5次高調波成分が低減されることが分かる。
本実施の形態では、第1および第2の副磁界成分によって、3次高調波成分および5次高調波成分が低減されることにより、外部磁界が主磁界のみからなる場合に比べて、角度特性曲線の、理想直線からの最大偏差が小さくなる。
次に、第1の比較例の磁気センサシステムと比較しながら、本実施の形態の実施例(以下、第1の実施例と言う。)における角度特性曲線について具体的に説明する。第1の実施例の磁気センサシステム1は、図8ないし図11におけるシミュレーションの条件で規定された磁気センサシステム1である。第1の比較例の磁気センサシステムは、第1の実施例における磁気スケール2から全ての副磁石を除いた第1の比較例の磁気スケール202を備えている。図12は、第1の比較例の磁気スケール202を示している。第1の比較例の磁気スケール202における主磁石11〜13の配置および磁化の方向は、第1の実施例における磁気スケール2と同じである。第1の比較例の磁気センサシステムのその他の構成は、第1の実施例の磁気センサシステム1と同じである。
次に、第1の比較例の磁気スケール202が発生する外部磁界に基づく印加磁界(以下、第1の比較例の印加磁界と言う。)について説明する。図13は、第1の比較例の印加磁界に対応する磁束密度である第1の比較例の印加磁束密度を示す特性図である。第1の比較例の印加磁束密度は、磁束密度Bcxおよび磁束密度Bczの総称である。磁束密度Bcxは、第1の比較例の印加磁界の第1の方向の成分に対応する磁束密度である。磁束密度Bczは、第1の比較例の印加磁界の第2の方向に平行な方向の成分に対応する磁束密度である。図13は、Bcx,Bczを示している。図13において、横軸は相対位置P2を表し、縦軸は磁束密度Bcx,Bczの値を表している。縦軸の正負の意味は、図8と同じである。図13は、磁気スケール202の保護部62と磁気センサ3の間隔を2.5mmとし、主磁石11〜13の体積の合計を600mm3として、シミュレーションによって求めたものである。
第1の比較例の印加磁界は、外部磁界が主磁界のみからなる場合の印加磁界に相当する。磁束密度Bcxは、外部磁界が主磁界のみからなる場合における印加磁界の第1の成分に対応する。磁束密度Bczは、外部磁界が主磁界のみからなる場合における印加磁界の第2の成分に対応する。相対位置P2の変化に対する磁束密度Bcx,Bczの変化を表す曲線は、いずれも、正弦曲線を描く理想成分と、この理想成分の(2n−1)次の高調波に相当する少なくとも1つの高調波成分とを含んでいる。相対位置P2の変化に対する磁束密度Bcx,Bczの変化を表す曲線は、いずれも、外部磁界が主磁界のみからなる場合における上記印加磁界特性曲線に対応する。
次に、第1の比較例の角度特性曲線について説明する。ここでは、角度特性曲線の代わりに、相対位置P2の変化に対する検出値θsの変化を表す特性曲線(以下、検出値特性曲線と言う。)を用いて説明する。図14は、第1の比較例の検出値特性曲線を示す特性図である。図14に示した検出値θsは、第1の比較例の印加磁界に基づいて、シミュレーションによって求めたものである。図14におけるシミュレーションの条件は、図13におけるシミュレーションの条件と同じである。図14において、横軸は相対位置P2を表し、縦軸は検出値θsを表している。また、図14において、符号91を付した直線は、相対位置P2の変化に対する検出値θsの理想的な変化を表す直線を示し、符号92を付した曲線は検出値特性曲線を示している。以下、相対位置P2の変化に対する検出値θsの理想的な変化を表す直線上における検出値θsの値を、検出値の理想値と言う。図14では、主磁石13と基準位置PRのそれぞれの第1の方向X1についての位置が一致したときの検出値の理想値を0°とし、主磁石11と基準位置PRのそれぞれの第1の方向X1についての位置が一致したときの検出値の理想値を360°としている。
図14に示したように、検出値特性曲線(符号92)は、符号91を付した直線からずれている。なお、検出値は、実質的に角度特性曲線と同じであり、符号91を付した直線は、実質的に理想直線と同じである。従って、第1の比較例では、角度特性曲線は、理想直線からずれていると言える。
次に、第1の比較例の角度誤差について説明する。図15は、第1の比較例の角度誤差を示す特性図である。図15に示した角度誤差は、図14に示した検出値θsと検出値の理想値に基づいて算出したものである。図15では、任意の相対位置P2における検出値θsから、その相対位置P2における検出値の理想値を引いて得られた値を360°で割って得られる値を百分率で表したものを、角度誤差とした。図15において、横軸は相対位置P2を表し、縦軸は角度誤差を表している。
図14および図15には、第1の比較例の磁気センサシステムにおける可動範囲ST示している。図14および図15に示した可動範囲STは、第1の実施例の磁気センサシステム1における可動範囲に合わせている。第1の実施例の磁気センサシステム1における可動範囲については、後で説明する。図15に示した角度誤差は、図14に示した可動範囲ST内の検出値θsと検出値の理想値に基づいて算出したものである。
次に、第1の実施例における角度特性曲線について説明する。ここでは、角度特性曲線の代わりに、検出値特性曲線を用いて説明する。図16は、第1の実施例における検出値特性曲線を示す特性図である。図16に示した検出値θsは、第1の実施例における印加磁界に基づいて、シミュレーションによって求めたものである。図16において横軸は相対位置P2を表し、縦軸は検出値θsを表している。また、図16において、符号93を付した直線は、相対位置の変化に対する検出値θsの理想的な変化を表す直線を示し、符号94を付した曲線は検出値特性曲線を示している。図16では、主磁石13と基準位置PRのそれぞれの第1の方向X1についての位置が一致したときの検出値の理想値を0°とし、主磁石11と基準位置PRのそれぞれの第1の方向X1についての位置が一致したときの検出値の理想値を360°としている。
図16および図17には、第1の実施例の磁気センサシステム1における可動範囲STを示している。図16における可動範囲STは、検出値θsが0°〜360°となる範囲である。図17に示した角度誤差は、図16に示した可動範囲ST内の検出値θsと検出値の理想値に基づいて算出したものである。
図16に示したように、第1の実施例における検出値特性曲線(符号94)の、符号93を付した直線からの最大偏差は、図14に示した第1の比較例における検出値特性曲線(符号92)の、符号91を付した直線からの最大偏差よりも小さい。なお、前述のように、検出値特性曲線は、実質的に角度特性曲線と同じであり、符号93を付した直線は、実質的に理想直線と同じである。従って、図14および図16に示した結果は、第1の実施例における角度特性曲線の、理想直線からの最大偏差が、第1の比較例における角度特性曲線の、理想直線からの最大偏差よりも小さいことを表している。
次に、第1の実施例における角度誤差について説明する。図17は、第1の実施例における角度誤差を示す特性図である。図17に示した角度誤差は、図16に示した検出値θsと検出値の理想値に基づいて算出したものである。角度誤差の算出方法は、図15に示した角度誤差の算出方法と同じである。図17に示した角度誤差は、任意の相対位置P2における検出値θsから、その相対位置P2における検出値の理想値を引いて得られた値を360°で割って得られる値を百分率で表したものである。図17において横軸は相対位置P2を表し、縦軸は角度誤差を表している。図15および図17に示したように、第1の実施例によれば、第1の比較例に比べて、角度誤差の最大値を小さくすることができる。角度誤差の最大値は、角度特性曲線の、理想直線からの最大偏差に対応する。
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気センサシステム1およびそれに用いられる磁気スケール2によれば、外部磁界が主磁界のみからなる場合に比べて、角度特性曲線の、理想直線からの最大偏差を小さくすることができ、その結果、磁気センサシステム1において高い検出精度を実現することができる。
[第2の実施の形態]
次に、図18を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図18は、本実施の形態に係る磁気スケール2を示す斜視図である。本実施の形態に係る磁気スケール2の構成は、第1の実施の形態における第2の組の副磁石31〜38が設けられていない点を除いて、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態における主磁石11〜13と第1の組の副磁石21〜24の、配置と磁化の方向は、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態における外部磁界は、主磁石11〜13が発生する主磁界と、第1の組の副磁石21〜24が発生する第1の副磁界成分とが合成されたものである。
第1の実施の形態で説明したように、第1の組の副磁石21〜24は、3次高調波成分が低減されるように、主磁界を補正するためのものである。本実施の形態では、3次高調波成分が低減されることにより、外部磁界が主磁界のみからなる場合に比べて、角度特性曲線の、理想直線からの最大偏差を小さくすることができる。
なお、本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した、第2の組の副磁石31〜38に基づく効果は得られない。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、図19を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図19は、本実施の形態に係る磁気スケール2を示す斜視図である。本実施の形態に係る磁気スケール2は、複数の副磁石として、第1の組を構成する4つの副磁石21〜24と、第2の組を構成する8つの副磁石31〜38に加えて、第3の組を構成する12個の副磁石41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52を含んでいる。本実施の形態に係る磁気スケール2のその他の構成は、第1の実施の形態と同じである。
主磁石11〜13と副磁石21〜24,31〜38の、配置と磁化の方向は、第1の実施の形態と同じである。以下、図19を参照して、副磁石41〜52の配置と磁化の方向について説明する。始めに、副磁石41〜52の配置について説明する。本実施の形態では、主磁石11と主磁石12の間には、副磁石41,31,42,21,32,43,44,33,22,45,34,46が、X方向にこの順に配置されている。主磁石12と主磁石13の間には、副磁石47,35,48,23,36,49,50,37,24,51,38,52が、X方向にこの順に配置されている。
副磁石41〜52の各々は、副磁石21〜24,31〜38と同様に、第1の実施の形態で説明した、副磁石の配置に関する第1の要件を満たす。すなわち、副磁石41〜52の各々は、主磁石11,12,13のうちの隣り合う2つの主磁石の間の位置であって、この2つの主磁石のうちの近い方の主磁石とは、第1の方向X1にm×{1/(2n−1)}×Dだけ異なる位置に配置されている。D,m,nは、第1の実施の形態で説明した通りである。第3の組では、nは4である。
第3の組の副磁石41〜52と主磁石11,12,13との位置関係は、具体的には以下の通りである。副磁石41にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石11である。副磁石46,47にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石12である。副磁石52にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石13である。副磁石41,46,47,52は、いずれも、上記の第1の要件において、nが4、mが1となる位置、すなわち、上記の近い方の主磁石とは、X方向または−X方向にD/7だけ異なる位置に配置されている。
また、副磁石42にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石11である。副磁石45,48にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石12である。副磁石51にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石13である。副磁石42,45,48,51は、いずれも、上記の第1の要件において、nが4、mが2となる位置、すなわち、上記の近い方の主磁石とは、X方向または−X方向に2D/7だけ異なる位置に配置されている。
また、副磁石43にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石11である。副磁石445,49にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石12である。副磁石50にとって、上記の近い方の主磁石は、主磁石13である。副磁石43,44,49,50は、いずれも、上記第1の要件において、nが4、mが3となる位置、すなわち、上記の近い方の主磁石とは、X方向または−X方向に3D/7だけ異なる位置に配置されている。
また、第1の方向X1における、副磁石41,42の間隔、副磁石42,43の間隔、副磁石43,44の間隔、副磁石44,45の間隔、副磁石45,46の間隔、副磁石47,48の間隔、副磁石48,49の間隔、副磁石49,50の間隔、副磁石50,51の間隔および副磁石51,52の間隔は、それぞれD/7である。
次に、副磁石41〜52の磁化の方向について説明する。副磁石41〜52の各々は、副磁石21〜24,31〜38と同様に、第1の実施の形態で説明した、副磁石の磁化の方向に関する第2または第3の要件を満たす。第2の要件は、各組の副磁石のうち、mが1となる位置に配置された副磁石の磁化の方向は、その副磁石に最も近い主磁石の磁化の方向と同じである、というものである。この第2の要件が当てはまるのは、第3の組の一部の副磁石41,46,47,52である。副磁石41の磁化の方向は、主磁石11の磁化の方向と同じ方向(Z方向)である。副磁石46,47の磁化の方向は、主磁石12の磁化の方向と同じ方向(−Z方向)である。副磁石52の磁化の方向は、主磁石13の磁化の方向と同じ方向(Z方向)である。
また、第3の要件は、各組の副磁石のうち、mが2以上となる位置に配置された副磁石の磁化の方向は、その副磁石の両側の同じ組の2つの副磁石の各々の磁化の方向と反対である、というものである。この第3の要件が当てはまるのは、第3の組のうちの、副磁石41,46,47,52以外の副磁石42〜45,48〜51である。副磁石42の磁化の方向は、副磁石41,43の磁化の方向とは反対の方向(−Z方向)である。副磁石43の磁化の方向は、副磁石42,44の磁化の方向とは反対の方向(Z方向)である。副磁石44の磁化の方向は、副磁石43,45の磁化の方向とは反対の方向(−Z方向)である。副磁石45の磁化の方向は、副磁石44,46の磁化の方向とは反対の方向(Z方向)である。副磁石48の磁化の方向は、副磁石47,49の磁化の方向とは反対の方向(Z方向)である。副磁石49の磁化の方向は、副磁石48,50の磁化の方向とは反対の方向(−Z方向)である。副磁石50の磁化の方向は、副磁石49,51の磁化の方向とは反対の方向(Z方向)である。副磁石51の磁化の方向は、副磁石50,52の磁化の方向とは反対の方向(−Z方向)である。
本実施の形態では、第3の組の副磁石41〜52は、第1の実施の形態で説明した印加磁界特性曲線における理想成分の7次の高調波に相当する高調波成分(以下、7次高調波成分と言う。)を低減する。以下、第3の組の副磁石41〜52が発生する磁界を第3の副磁界成分という。本実施の形態における副磁界は、第1の組の副磁石21〜24が発生する第1の副磁界成分と、第2の組の副磁石31〜38が発生する第2の副磁界成分と、第3の副磁界成分とが合成されたものである。また、本実施の形態における第1ないし第3の要件は、第1の副磁界成分によって3次高調波成分を低減し、第2の副磁界成分によって5次高調波成分を低減し、第3の副磁界成分によって7次高調波成分を低減するように、副磁石21〜24,31〜38,41〜52の位置と磁化の方向を規定するための要件である。本実施の形態では、第1ないし第3の副磁界成分によって、3次高調波成分、5次高調波成分および7次高調波成分が低減されることにより、外部磁界が主磁界のみからなる場合に比べて、角度特性曲線の、理想直線からの最大偏差を小さくすることができ、その結果、磁気センサシステム1においてより高い検出精度を実現することができる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
次に、図20および図21を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。図20は、本実施の形態に係る磁気センサシステム1を示す斜視図である。図21は、本実施の形態における主磁石と副磁石の配置と磁化の方向を説明するための説明図である。
本実施の形態に係る磁気センサシステム1は、第1の実施の形態における磁気スケール2の代わりに、外部磁界を発生する磁気スケール102を備えている。磁気スケール102は、主磁界を発生する複数の主磁石と、副磁界を発生する複数の副磁石と、複数の主磁石および複数の副磁石を支持する基板161とを含んでいる。本実施の形態では、基板161は、リング状である。
基板161は、上面161aと下面161bを有している。複数の主磁石と複数の副磁石は、基板161の上面161aの上に配置されている。磁気センサ3は、基板161の上面161aに対向するように配置されている。
磁気スケール102は、回転動作をする図示しない可動物体に連動し、所定の中心軸Cを中心として回転方向Rに回転する。これにより、磁気スケール102は、回転方向Rに沿った所定の範囲内において、磁気センサ3に対する相対位置が変化する。なお、回転方向Rは、図21における時計回り方向と、図21における反時計回り方向とを含んでいる。回転方向Rは、本発明における第1の方向に対応する。
複数の主磁石は、回転方向R(第1の方向)に沿って間隔を開けて配置されている。複数の副磁石は、回転方向R(第1の方向)に沿って、複数の主磁石とは異なる位置に配置されている。複数の主磁石と複数の副磁石の各々は、中心軸Cに最も近い第1の端面と、中心軸Cから最も遠い第2の端面を有している。中心軸Cから複数の主磁石の第1の端面までの距離は等しい値CR1であり、中心軸Cから複数の主磁石の第2の端面までの距離は等しい値CR2である。
ここで、複数の主磁石および複数の副磁石の各々の回転方向Rにおける位置の定義について説明する。まず、位置基準円を、以下のように定義する。位置基準円は、基板161の上面161aに位置する円であって、その中心が中心軸C上に位置し、CR1とCR2の平均値を半径とする円である。そして、位置基準円のうち、複数の主磁石および複数の副磁石の各々と重なる線分の中点の位置を、複数の主磁石および複数の副磁石の各々の回転方向Rにおける位置とする。また、複数の主磁石と複数の副磁石のうちの任意の2つの磁石の間隔は、この2つの磁石の位置を位置基準円に沿って結ぶ円弧の長さで表すものとする。
また、本実施の形態では、磁気センサ3は、磁気スケール102に対して、中心軸Cに平行な方向について離れた位置にある。中心軸Cに平行な方向は、本発明における第2の方向に対応する。
また、本実施の形態では、図20および図21に示したように、X方向、Y方向およびZ方向を定義する。本実施の形態では、中心軸Cに平行で、基板161の下面161bから上面161aに向かう方向をZ方向とし、Z方向とは反対の方向を−Z方向とする。図21において、Z方向は、奥から手前に向かう方向である。X方向、Y方向およびZ方向と、基準方向等の磁気センサ3に関連する方向との関係は、第1の実施の形態と同じである。
次に、図21を参照して、複数の主磁石と複数の副磁石の配置と磁化の方向について説明する。始めに、複数の主磁石と複数の副磁石の配置について説明する。本実施の形態では、磁気スケール102は、複数の主磁石として、2つの主磁石111,112を含んでいる。主磁石111,112は、回転方向R(第1の方向)に沿って間隔Dを開けて配置されている。本実施の形態では特に、間隔Dは、位置基準円の円周の長さの1/2と等しい。
また、本実施の形態では、磁気スケール102は、複数の副磁石として、第1の組を構成する4つの副磁石121,122,123,124と、第2の組を構成する8つの副磁石131,132,133,134,135,136,137,138とを含んでいる。
ここで、第1の領域と第2の領域を、以下のように定義する。第1の領域は、基板161の上面161a上の領域であって、主磁石111から、図21における反時計回り方向に進んで主磁石112に至る領域である。第2の領域は、基板161の上面161a上の領域であって、主磁石112から、図21における反時計回り方向に進んで主磁石111に至る領域である。第1の領域と第2の領域は、いずれも、本発明における「複数の主磁石のうちの隣り合う2つの主磁石の間」に対応する。
第1の領域には、副磁石131,121,132,133,122,134が、主磁石111の近傍から、図21における反時計回り方向にこの順に配置されている。第2の領域には、副磁石135,123,136,137,124,138が、主磁石112の近傍から、図21における反時計回り方向にこの順に配置されている。
磁気スケール102は、リニアスケールである第1の実施の形態に係る磁気スケール2(図1参照)を、主磁石11の位置と主磁石13の位置が一致するように、リング状に変形したスケールに相当する。主磁石111は、第1の実施の形態における主磁石11および主磁石13に対応する。主磁石112は、第1の実施の形態における主磁石12に対応する。
第1の領域は、第1の実施の形態における主磁石11と主磁石12の間に対応する。第1の領域に配置された副磁石131,121,132,133,122,134は、それぞれ、第1の実施の形態における副磁石31,21,32,33,22,34に対応する。主磁石111,112と副磁石131,121,132,133,122,134との位置関係は、基本的には、第1の実施の形態における主磁石11,12と副磁石31,21,32,33,22,34との位置関係と同様である。
第2の領域は、第1の実施の形態における主磁石12と主磁石13の間に対応する。第2の領域に配置された副磁石135,123,136,137,124,138は、それぞれ、第1の実施の形態における副磁石35,23,36,37,24,38に対応する。主磁石112,111と副磁石135,123,136,137,124,138との位置関係は、基本的には、第1の実施の形態における主磁石12,13と副磁石35,23,36,37,24,38との位置関係と同様である。
以下、副磁石121〜124,131〜138の配置について具体的に説明する。副磁石121〜124,131〜138の各々は、第1の実施の形態における副磁石21〜24,31〜38と同様に、第1の実施の形態で説明した、副磁石の配置に関する第1の要件を満たす。すなわち、副磁石121〜124,131〜138の各々は、第1の領域または第2の領域において、主磁石111,112のうちの近い方の主磁石とは、回転方向R(第1の方向)にm×{1/(2n−1)}×Dだけ異なる位置に配置されている。m,nは、第1の実施の形態で説明した通りである。第1の組ではnは2であり、第2の組ではnは3である。
第1の組の副磁石121〜124と主磁石111,112との位置関係は、回転方向R(第1の方向)に沿って配置されている点と、副磁石124にとっての近い方の主磁石が主磁石111になる点を除いて、第1の実施の形態で説明した、副磁石21〜24と主磁石11〜13との位置関係と同様である。すなわち、副磁石121〜124は、いずれも、上記第1の要件において、nが2、mが1となる位置、すなわち、主磁石111,112のうちの近い方の主磁石とは、図21における時計回り方向または反時計回り方向にD/3だけ異なる位置に配置されている。
また、回転方向R(第1の方向)における、副磁石121,122の間隔と副磁石123,124の間隔は、それぞれD/3である。
第2の組の副磁石131〜138と主磁石111,112との位置関係は、回転方向R(第1の方向)に沿って配置されている点と、副磁石137,138にとっての近い方の主磁石が主磁石111になる点を除いて、第1の実施の形態で説明した、副磁石31〜38と主磁石11〜13との位置関係と同様である。すなわち、副磁石131,134,135,138は、いずれも、上記第1の要件において、nが3、mが1となる位置、すなわち、主磁石111,112のうちの近い方の主磁石とは、図21における時計回り方向または反時計回り方向にD/5だけ異なる位置に配置されている。また、副磁石132,133,136,137は、いずれも、上記第1の要件において、nが3、mが2となる位置、すなわち、主磁石111,112のうちの近い方の主磁石とは、図21における時計回り方向または反時計回り方向に2D/5だけ異なる位置に配置されている。
回転方向R(第1の方向)における、副磁石131,132の間隔、副磁石132,133の間隔、副磁石133,134の間隔、副磁石135,136の間隔、副磁石136,137の間隔および副磁石137,138の間隔は、それぞれD/5である。
次に、複数の主磁石と複数の副磁石の磁化の方向について説明する。複数の主磁石すなわち主磁石111,112の磁化の方向は、互いに反対である。図21において主磁石111,112の近傍に描いた丸印の記号は、主磁石111,112の磁化の方向を表している。本実施の形態では、主磁石111の磁化の方向は、第1の実施の形態における主磁石11の磁化の方向(Z方向)と同じ方向である。主磁石112の磁化の方向は、第1の実施の形態における主磁石12の磁化の方向(−Z方向)と同じ方向である。
また、図21において副磁石121〜124,131〜138の近傍に描いた丸印の記号は、副磁石121〜124,131〜138の磁化の方向を表している。副磁石121〜124,131〜138の各々は、第1の実施の形態で説明した、副磁石の磁化の方向に関する第2または第3の要件を満たす。第2の要件は、各組の副磁石のうち、mが1となる位置に配置された副磁石の磁化の方向は、その副磁石に最も近い主磁石の磁化の方向と同じである、というものである。この第2の要件が当てはまるのは、第1の組の全ての副磁石121〜124と、第2の組の一部の副磁石131,134,135,138である。副磁石121〜124,131,134,135,138の磁化の方向は、それぞれ、第1の実施の形態における副磁石21〜24,31,34,35,38の磁化の方向と同じである。すなわち、図21に示したように、副磁石121,124,131,138の磁化の方向は、Z方向であり、副磁石122,123,134,135の磁化の方向は、−Z方向である。
また、第3の要件は、各組の副磁石のうち、mが2以上となる位置に配置された副磁石の磁化の方向は、その副磁石の両側の同じ組の2つの副磁石の各々の磁化の方向と反対である、というものである。この第3の要件が当てはまるのは、第2の組の他の一部の副磁石132,133,136,137である。副磁石132,133,136,137の磁化の方向は、それぞれ、第1の実施の形態における副磁石32,33,36,37の磁化の方向と同じである。すなわち、図21に示したように、副磁石132,137の磁化の方向は、−Z方向であり、副磁石133,136の磁化の方向は、Z方向である。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る磁気センサシステム1は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る磁気センサシステム1は、第1の実施の形態における磁気センサ3の代わりに、磁気センサ103を備えている。磁気センサ103は、外部磁界の一部である印加磁界を検出して、印加磁界が有する情報である印加磁界情報に対応する検出値を生成する。本実施の形態では、印加磁界情報は、印加磁界の一方向の成分の強度である。検出値は、印加磁界の一方向の成分の強度と対応関係を有する。以下、検出値を、記号Mで表す。
外部磁界は、第1の実施の形態と同様に、磁気スケール2によって発生される。磁気スケール2の構成は、第1の実施の形態と同じである。また、磁気スケール2と磁気センサ103の位置関係は、第1の実施の形態における磁気スケール2と磁気センサ3の位置関係と同じである。
図22は、磁気センサ103の第1の例の構成を示す回路図である。図23は、磁気センサ103の第2の例と磁気スケール2を示す斜視図である。本実施の形態における印加磁界情報は、特に、印加磁界のZ方向に平行な方向の成分の強度である。印加磁界のZ方向に平行な方向の成分は、第1の実施の形態における印加磁界の第2の成分と同じである。検出値Mは、印加磁界のZ方向に平行な方向の成分の強度と対応関係を有する。
本実施の形態に係る磁気センサシステム1は、磁気センサ103に対する磁気スケール2の相対位置を検出するための位置検出装置として用いることができる。以下、磁気センサ103に対する磁気スケール2の相対位置を、相対位置P2と言う。検出値Mは、相対位置P2と対応関係を有する。磁気センサシステム1を位置検出装置として用いる場合には、検出値Mの範囲を、相対位置P2を一意に特定可能な範囲としてもよい。このような検出値Mの範囲は、複数の相対位置P2において検出値Mが同じ値になることがない範囲である。検出値Mの範囲の具体例については、後で説明する。
次に、磁気センサ103の第1および第2の例について説明する。始めに、図22を参照して、磁気センサ103の第1の例について説明する。第1の例では、磁気センサ103は、第1の検出部171と、第2の検出部172と、電源ポートV11と、グランドポートG11と、出力ポートE11とを含んでいる。図示しないが、第1および第2の検出部171,172は、Z方向にこの順に並んでいる。
図22に示したように、第1の検出部171は、電源ポートV11と出力ポートE11との間に設けられている。第2の検出部172は、出力ポートE11とグランドポートG11との間に設けられている。電源ポートV11には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG11は、グランドに接続される。
検出部171,172の構成は、それぞれ、図5に示した検出部71,73と同じである。すなわち、検出部171,172の各々は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を含んでいる。図22において、塗りつぶした矢印は磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は磁気抵抗効果素子の自由層の磁化の方向を表している。
第1の検出部171に含まれる磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、Z方向であり、第2の検出部172に含まれる磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、−Z方向である。この場合、印加磁界のZ方向に平行な方向の成分の強度に応じて、出力ポートE11の電位が変化する。
磁気センサ103は、出力ポートE11の電位に基づいて、印加磁界のZ方向に平行な方向の成分の強度と対応関係を有する検出値Mを生成する。検出値Mは、上記電位そのものであってもよいし、例えば上記電位の最大値と最小値がそれぞれ1と−1になるように規格化した信号であってもよい。
次に、図23を参照して、磁気センサ103の第2の例について説明する。第2の例では、磁気センサ103は、ホール素子H101を含んでいる。ホール素子H101は、感磁面がXY平面に平行になるような姿勢で配置されている。なお、図23では、理解を容易にするために、ホール素子H101を、実際よりも大きく描いている。
図示しないが、磁気センサ103は、更に、電源ポートと、グランドポートとを含んでいる。ホール素子H101は、電源端子と、グランド端子と、2つの出力端子とを有している。ホール素子H101の電源端子は、電源ポートに接続されている。ホール素子H101のグランド端子は、グランドポートに接続されている。電源ポートには、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートは、グランドに接続される。
ホール素子H101は、印加磁界のZ方向に平行な方向の成分を検出する。ホール素子H101の2つの出力端子の電位差は、印加磁界のZ方向に平行な方向の成分に応じて変化する。
磁気センサ103は、ホール素子H101の2つの出力端子の電位差に基づいて、印加磁界のZ方向に平行な方向の成分の強度と対応関係を有する検出値Mを生成する。検出値Mは、上記電位差そのものであってもよいし、例えば上記電位差の最大値と最小値がそれぞれ1と−1になるように規格化した信号であってもよい。
次に、本実施の形態に係る磁気センサシステム1の作用および効果について説明する。第1の実施の形態で説明したように、磁気スケール2の主磁石11〜13は主磁界を発生し、磁気スケール2の副磁石21〜24,31〜38は副磁界を発生する。相対位置P2の変化に対する印加磁界情報の理想的な変化を理想特性としたとき、副磁界は、外部磁界が主磁界のみからなる場合に比べて、相対位置P2の変化に対する印加磁界情報の変化を表す特性が、理想特性に近づくように、主磁界を補正するものである。
本実施の形態では特に、相対位置P2の変化に対する印加磁界情報の変化は、相対位置P2の変化に対する印加磁界のZ方向に平行な方向の成分の強度の変化である。理想特性は、相対位置P2の変化に対する印加磁界のZ方向に平行な方向の成分の強度の理想的な変化であり、正弦曲線で表される。以下、この正弦曲線を理想正弦曲線と言う。本実施の形態では、相対位置P2の変化に対する印加磁界のZ方向に平行な方向の成分の強度の変化を表す特性曲線を、印加磁界特性曲線と言う。副磁界は、印加磁界特性曲線の、理想正弦曲線からの最大偏差が小さくなるように、主磁界を補正するものである。
第1の実施の形態と同様に、第1の組の副磁石21〜24は、印加磁界特性曲線における3次高調波成分を低減し、第2の組の副磁石31〜38は、印加磁界特性曲線における5次高調波成分を低減する。これにより、本実施の形態では、外部磁界が主磁界のみからなる場合に比べて、印加磁界特性曲線の、理想正弦曲線からの最大偏差が小さくなる。その結果、本実施の形態によれば、磁気センサシステム1において高い検出精度を実現することができる。
次に、第2の比較例の磁気センサシステムと比較しながら、本実施の形態の実施例(以下、第2の実施例と言う。)における印加磁界特性曲線について具体的に説明する。第2の実施例の磁気センサシステム1は、本実施の形態に係る磁気センサシステム1を、第1の実施の形態の図8ないし図11におけるシミュレーションと同様の条件で規定した磁気センサシステム1である。
第2の比較例の磁気センサシステムは、第2の実施例における磁気スケール2から全ての副磁石を除いた第2の比較例の磁気スケール202を備えている。第2の比較例の磁気スケール202は、図12に示した第1の比較例の磁気スケール202と同じである。以下、第2の比較例の磁気スケール202が発生する外部磁界に基づく印加磁界を、第2の比較例の印加磁界と言う。
図24は、第2の比較例の印加磁界に対応する磁束密度である第2の比較例の印加磁束密度を示す特性図である。図24は、シミュレーションによって求めたものである。図24におけるシミュレーションの条件は、第1の実施の形態の図13におけるシミュレーションの条件と同じである。図24は、第2の比較例の印加磁束密度Bczを示している。図24において、横軸は相対位置P2を表し、縦軸は印加磁束密度Bczの値を表している。第2の比較例の印加磁束密度Bczは、第2の比較例の印加磁界のZ方向に平行な方向の成分に対応する磁束密度であり、図13に示した第1の実施の形態における磁束密度Bczと同じである。
第2の比較例の印加磁界は、外部磁界が主磁界のみからなる場合の印加磁界に相当する。印加磁束密度Bczは、外部磁界が主磁界のみからなる場合における印加磁界のZ方向に平行な方向の成分に対応する。相対位置P2の変化に対する印加磁束密度Bczの変化を表す曲線は、正弦曲線を描く理想成分と、この理想成分の(2n−1)次の高調波に相当する少なくとも1つの高調波成分とを含んでいる。相対位置P2の変化に対する印加磁束密度Bczの変化を表す曲線は、外部磁界が主磁界のみからなる場合における上記印加磁界特性曲線に対応する。
次に、第2の実施例における印加磁界特性曲線について具体的に説明する。図25は、第2の実施例の印加磁界に対応する磁束密度である印加磁束密度を示す特性図である。図25は、シミュレーションによって求めたものである。図25におけるシミュレーションの条件は、第1の実施の形態の図11におけるシミュレーションの条件と同じである。図25は、印加磁束密度Bzを示している。図25において、横軸は相対位置P2を表し、縦軸は印加磁束密度Bzの値を表している。印加磁束密度Bzは、第2の実施例の印加磁界のZ方向に平行な方向の成分に対応する磁束密度であり、図11に示した第1の実施の形態における磁束密度Bzと同じである。
図25に示したように、相対位置P2の変化に対する印加磁束密度Bzの変化を表す曲線は、図24に示した相対位置P2の変化に対する印加磁束密度Bczの変化を表す曲線に比べて、正弦曲線に近い曲線になっている。その理由は、第1の実施の形態において、図11に示した相対位置P2の変化に対する磁束密度Bzの変化を表す曲線が、図8に示した相対位置P2の変化に対する磁束密度Bmzの変化を表す曲線に比べて、正弦曲線に近い曲線になる理由と同じである。この結果は、第1の実施の形態と同様に、第1の組の副磁石21〜24が発生する第1の副磁界成分と第2の組の副磁石31〜38が発生する第2の副磁界成分によって、印加磁界特性曲線の3次高調波成分および5次高調波成分が低減されることを表している。
次に、図25を参照して、相対位置P2を一意に特定可能な検出値Mの範囲の具体例について説明する。図25には、第2の実施例の磁気センサシステム1における可動範囲STを示している。なお、可動範囲とは、相対位置P2が変化可能な所定の範囲である。図24には、第2の比較例の磁気センサシステムにおける可動範囲STを示している。図24に示した可動範囲STは、図25に示した可動範囲STに合わせている。
図25に示した例では、可動範囲STは、相対位置P2が増加するに従って印加磁界のZ方向に平行な方向の成分の強度が最小値から最大値まで増加する範囲である。これにより、相対位置P2を一意に特定することができる。可動範囲STは、図25に示した範囲よりも狭い範囲であってもよい。あるいは、可動範囲STを、図25に示した範囲するが、実際に磁気センサ103が生成する検出値Mの範囲を、可動範囲STよりも狭い範囲に対応する範囲に制限してもよい。
なお、本実施の形態に係る磁気センサシステム1は、第1の実施の形態に係る磁気スケール2の代わりに、第2または第3の実施の形態に係る磁気スケール2を備えていてもよいし、第4の実施の形態に係る磁気スケール102を備えていてもよい。また、本実施の形態における磁気センサ103は、XZ平面上におけるZ方向に平行な方向以外の一方向の印加磁界の成分の強度と対応関係を有する検出値を生成するものであってもよい。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1ないし第4の実施の形態のいずれかと同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。請求の範囲の要件を満たす限り、複数の主磁石および複数の副磁石の数、形状、および磁化の方向は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。例えば、第4の実施の形態において、複数の主磁石および複数の副磁石は、位置基準円の半径方向の磁化を有していてもよい。この場合、磁気センサ3は、磁気スケール102に対して、位置基準円の半径方向の外側に配置されていてもよい。
また、本発明の磁気センサシステムおよび磁気スケールは、位置検出装置に限らず、磁気センサに対する磁気スケールの相対位置の変化の速度や加速度を検出する装置として用いることも可能である。この場合には、例えば、磁気スケールは、第1の実施の形態における磁気スケール2の主磁石11の位置から主磁石13の位置までを1ピッチとして、複数ピッチ分の複数の主磁石および複数の副磁石を含んでいてもよい。