JP6685516B2 - 内燃機関 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関に関し、特にマイクロ波を利用して燃料を点火するものに関する。
ガソリンエンジン等の内燃機関の点火手段としては、スパークプラグが従来から用いられている。これに対し、特許文献1では、スパークプラグに加え、マイクロ波等の電磁波を用いることにより、空燃比の改善を図る技術が提案されている。
また、特許文献2では、燃焼室内に均一に火炎を伝播させることを目的とし、燃焼室中央に配置された点火プラグに加え、シリンダ外周部に複数個の点火プラグを配置した、いわゆる多点点火技術が提案されている。
特許第4876217号公報 特開2010−127255号公報
しかし、多点点火手段として点火プラグを用いた場合、点火プラグの近辺でしか点火を行うことができないため、火炎伝播させる方向は点火プラグの数、位置に律則される。例えば、点火プラグと点火プラグの中間位置に火炎を導くことはできない。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものである。
本発明の内燃機関は、燃焼室と、燃焼室内の燃料を点火する点火プラグと、燃焼室に電磁波を照射する複数のアンテナと、電磁波を発振する発振部と、電磁波を増幅する増幅部と、増幅した電磁波を前記各アンテナに供給する複数の出力部を有する電磁波生成装置を備え、電磁波生成装置は、前記各出力部から出力される電磁波の位相差を可変可能に構成されたことを特徴とする。
本発明によれば、内燃機関で多点点火を行う場合において、火炎伝播の方向をより自由に制御することができる。
第1実施形態に係る内燃機関の一部断面の正面図。 上記内燃機関のアンテナの一部断面の正面図。 上記アンテナの電磁波放射部の正面図。 上記内燃機関の燃焼室のシリンダヘッドの底面図。 上記内燃機関の概略ブロック図。 上記内燃機関における電磁波の放射パターン例を示す図。 上記内燃機関における電磁波の放射パターン例を示す図。 上記内燃機関における電磁波の放射パターン例を示す図。 第2実施形態に係る内燃機関の一部断面の正面図。 上記内燃機関における電磁波の放射パターン例を示す図。 上記内燃機関における電磁波の放射パターン例を示す図。 上記内燃機関における電磁波の放射パターン例を示す図。 第3実施形態に係る内燃機関の一部断面の正面図。 上記内燃機関の点火プラグの一部断面の正面図。 第4実施形態に係る内燃機関の一部断面の正面図。 第5実施形態に係る内燃機関の燃焼室のシリンダヘッドの底面図。 上記内燃機関の概略ブロック図。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る内燃機関10の一部断面の正面図である。内燃機関10のシリンダヘッド21には、スパークプラグ1、マイクロ波を放射するアンテナ3が複数個挿入される。また、図示していないが、吸気ポート23には燃焼室28へガソリン燃料を噴射するためのインジェクタが設けられている。
図2を参照して、アンテナ3は、大きくは、マイクロ波を燃焼室28に放射するアンテナ部35と、マイクロ波生成装置4からのマイクロ波をアンテナ部35へ伝送する伝送路30とに分かれる。
また、同図では示されていないが、伝送路30からアンテナ部35へマイクロ波を供給する給電部を有しており、伝送路30は、給電部に対して着脱自在とすることもできる。なお、伝送路30は、同軸の伝送路であり、マイクロ波を伝送する中心導体31と、グラウンド(接地部)として機能すると共に、マイクロ波が外部に漏えいすることを防ぐための外側導体32が設けられている。また、中心導体31と外側導体32はセラミック等の絶縁体が充填され、また、外側導体32には例えば弾性体からなる絶縁体によりその外側が包まれている。
アンテナ部35は、例えば図3に示すように、セラミック基板上に渦巻き状の金属パターン35aを印刷等することにより形成することができる。
なお、上記実施形態のアンテナ3は、単なる一例に過ぎず、燃焼室にマイクロ波を放射することができるものであれば、上記の実施形態に限られない。
図4を参照して、シリンダヘッド21には、複数のアンテナ3a〜3dが挿入される。吸気ポート24Aの外周側にアンテナ3a、吸気ポート24Bの外周側にアンテナ3d、排気ポート26Aの外周側にアンテナ3b、排気ポート26Bの外周側にアンテナ3cが配置される。
内燃機関10では、まずスパークプラグ1での火花放電により燃焼室28内の混合気が点火する。続いて、燃焼室28の外周部に配置されたアンテナ3から燃焼室28に向けてマイクロ波を放射することにより、外周部への火炎伝播が促進される。火炎伝播が促進できる理由は、GHz帯の高周波であるマイクロ波を燃焼室28に放射し続けることにより、火炎拡大に寄与するOHラジカルの死滅を防ぐことができるからである。このようなマイクロ波照射により、初期燃焼期間の短縮、主燃焼期間の短縮、安定化が可能となる。また、火炎伝播距離の短縮により、自着火に至る前に火炎伝播が終了し、ノッキングが抑制される。また、NOx排出の抑制も可能となる。
図5を参照して、本実施形態に係る内燃機関10は、上述したスパークプラグ1、アンテナ3(3a〜3d)に加えて、スパークプラグ1に高電圧パルスを供給するための電源回路7、アンテナ3に供給するマイクロ波を生成するマイクロ波生成装置4、及び電源回路7やマイクロ波生成装置4を制御する制御装置6を備える。
マイクロ波生成装置4は2.45GHzの高周波を発振する発振回路と、発振回路からの出力を1KW程度の電力に増幅する増幅回路を有する。増幅回路は4つ設けられており、いわゆる4チャンネル出力の構成である。尚、1kWのマイクロ波を出力する関係上、増幅回路の発熱量は大きい。そこで、増幅回路は、放熱部材、及び/又は水冷パイプ等により冷却される。また、2つの増幅回路は放熱部材や水冷パイプを挟んで背中合わせに配置する構成としてもよい。これにより、2つの増幅回路の冷却構造を共通化でき、スペースの節約が図れる。更には2つの増幅回路間の距離を適切に設定すれば、各増幅回路を流れるマイクロ波によるノイズをキャンセルすることもできる。また、マイクロ波生成装置4の各チャンネルからの出力信号間の位相差は任意に変更することが可能である。これにより、無線通信分野のSDMA (Space Division Multiple Access) で用いられている、アダプティブアレーアンテナによる送信指向性制御技術と同様のことが実現できる。つまり、燃焼室内の任意の位置に強電界を発生させることが可能となり、任意の方向に火炎を導くことができる。以下、簡単な例を示す。
図6を参照して、今、4つのアンテナ3のうち、アンテナ3b、3cからマイクロ波を放射させた場合、排気バルブ26A、26Bの間の領域Hでは、両アンテナからの電界が重なり合うため、電界強度が高くなる。これにより、スパークプラグ1により点火した火炎が排気ポート側に伝播されやすくなる(特に、2つの排気ポート間の領域に伝播されやすくなる)。なお、この場合、マイクロ波生成装置4は、アンテナ3b、3cに対し同相のマイクロ波を供給するように制御される。
一方、図7のように、マイクロ波生成装置4がアンテナ3b、3cに対し逆相のマイクロ波を供給するように制御される場合、両アンテナからのマイクロ波が重なる部分では電界が打ち消される。従って、排気バルブ26A上の領域であるH1と、排気バルブ26B上の領域であるH2では電界が大きくなる一方、排気バルブ26A、26Bの間の領域では電界が弱くなる。従って、スパークプラグ1により点火した火炎は、各排気ポートの方向に伝播されやすくなる。
尚、図8に示すようにアンテナ3cのみからマイクロ波が放射される場合、排気バルブ26側の広範囲にわたって電界が強くなる。つまり、送信電波の指向性という点では図6、7の例と比較して劣る。
このように、各アンテナから放射させる電波の強さや位相をコントロールすることにより、アンテナから放射させる電波の指向性を制御することができる。
また、上記では、図7はあたかも好ましくない例のように説明したが、逆に弱い指向性にした場合が好ましい場合もある。例えば、広範囲に火炎を拡散させた方が好ましい場合は、寧ろ指向性を弱くした方が好ましい。
また、指向性の強弱は、両アンテナに与える位相差をコントロールすることによっても可能である。例えば両アンテナに与える位相差を90°とすれば弱い指向性とすることができる。つまり、図6の例で言うと、領域Hでの電界強度が他の領域に対して突出したものとはならない、と考えられる。
また、図6、図7では、燃焼室28の外周近辺の電界を強める例を示したが、燃焼室の中間部(中心と外周の中間)の電界を強くし、逆に外周部の電界が弱くなるように両アンテナに供給するマイクロ波を制御すれば、火炎がシリンダ壁面22側に流れることを極力防止することができ、シリンダ壁面22での熱損失を低減できる。
なお、図6、7では、両アンテナに供給するマイクロ波を同相とするか逆相とするか、という単純な例を示したが、実際には位相差のコントロール、強度差のコントロール、アンテナ間で異なるパルスパターンのマイクロ波を与える等、様々な方法による送信指向性制御が可能である。また、3以上のアンテナにマイクロ波を供給してもよい。
(第2実施形態)
図9は、本実施形態に係る内燃機関20の一部断面の正面図である。第1実施形態と同様、内燃機関20のシリンダヘッド21には、スパークプラグ1、アンテナ3が複数個挿入される一方、2個のアンテナ3がスパークプラグ1を挟むように近接して配置される点で第1実施形態とは相違する。以下、本実施形態におけるマイクロ波の指向性制御例を示す。
図10を参照して、両アンテナ3a、3bから同相のマイクロ波を放射させた場合、中心部の領域R1の電界が、外周部の領域R2、R3と比較して特に強くなる。
尚、図11を参照して、アンテナ3bのみからマイクロ波が放射される場合、燃焼室28の排気バルブ26側の広範囲にわたって電界が強くなる。
一方、図12のように、両アンテナ3a、3bから逆相のマイクロ波を放射させた場合、中心部の領域R1においては、両アンテナからのマイクロ波電界が打ち消されるため、電界は弱くなる。一方、外周部R2、R3の領域では、他方のアンテナからの電界による影響が小さくなるため、電界が比較的強くなる。
このように、アンテナ3を燃焼室28の中心部に配置しても、燃焼室内の電界強度の指向性を制御することができる。
(第3実施形態)
図13は、本実施形態に係る内燃機関30の一部断面の正面図である。第1、第2実施形態と同様、内燃機関20のシリンダヘッド21には、アンテナ3が複数個挿入される一方、スパークプラグ1に代えてマイクロ波共振プラグ5を用いる点で第1、第2実施形態とは相違する。先ず、図14を参照してマイクロ波共振プラグ5の構成を説明する。
マイクロ波共振プラグ5は、弊社が開発したMicrowave Discharge Igniter (MDI:登録商標)とも呼ばれるプラグである。外部(マイクロ波生成装置4)から入力された2.45GHz帯のマイクロ波が共振する構造となっており、共振によりマイクロ波が昇圧されて先端部(放電部)が高電圧となることで放電が起きる構成となっている。この点で、通常のスパークプラグとは大きく相違する。
図14を参照して、マイクロ波共振プラグ5の構成の詳細を説明する。マイクロ波共振プラグ5は、マイクロ波が入力される入力部分5a、通常50Ω系で設計されたマイクロ波生成装置4やマイクロ波を伝送する同軸ケーブルと、マイクロ波共振プラグ5の共振構造部分とのインピーダンス整合を行うための部分である結合部分5b、及びマイクロ波共振構造で形成されマイクロ波の電圧の増幅を行う増幅部分5cからなる。また、増幅部分5cの先端部には放電電極56を有する。マイクロ波共振プラグ5は導電性の金属からなる筒状のケース51により内部の各部材が収容される。
入力部分5aには、マイクロ波生成装置4で生成されたマイクロ波を入力する入力端子52と、第1中心電極53が設けられる。第1中心電極53はマイクロ波を伝送する。第1中心電極53とケース51の間には誘電体59aが設けられる。誘電体59aは、例えばセラミック材料で形成される。
結合部分5bには、第1中心電極53と、第2中心電極54が設けられる。この結合部分5bは、上述の通り、インピーダンス整合を行うために設けられている。第2中心電極54は、増幅部分5c側に底部を有する筒状構成であり、筒状部が第1中心電極53を囲む。棒状の第1中心電極53と筒状の第2中心電極54の筒部内壁は対向しており、この対向部分において第1中心電極53からのマイクロ波が容量結合により第2中心電極54へ伝送される。第2中心電極54の筒状部分には、セラミック等の誘電体59bが充填され、第2中心電極54とケース51の間にもセラミック等の誘電体59cが設けられる。
増幅部分5cには、第3中心電極55が設けられる。第3中心電極55は、第2中心電極54と接続しており、第2中心電極54のマイクロ波が伝送される。放電電極56は、第3中心電極55の先端部に取付けられる。第3中心電極55とケース51の間にはセラミック等の誘電体59dが充填される。但し、後述のように、放電容量C3を調整する目的で、第3中心電極55とケース51の間には誘電体59dが充填されない空洞部27が設けられる。第3中心電極55はコイル成分を有しており、マイクロ波の電位は第3中心電極55を通過するに従い高くなる。その結果、放電電極56とケース51の間に数十KVの高電圧が発生し、放電電極56とケース51の間で放電が起きる。また、第3中心電極55の長さはおおよそマイクロ波の4分の1波長の長さである。但し、ここで4分の1波長とは、中心電極の屈折率等も加味した上での長さであり、単純にマイクロ波の波長の4分の1の長さという意味ではない。このような長さとした上で、一例として、第3中心電極55と第2中心電極54の境界部分にマイクロ波の節が来るように調整/設計すれば、放電電極56が存する第3中心電極55の先端部ではマイクロ波の腹が位置するので、この箇所で電圧を大きくなるようにすることができる。
そして、放電電極56と、ケース57の間には環状の空間が形成されており、この空間で放電が生じる。つまり、放電が全方位で行われる。この点、放電電極と接地電極間でいわゆる一点放電を行うスパークプラグとは相違している。
放電電圧が、その近辺のガス分子のブレークダウン電圧を超えると、ガス分子から電子が放出されて非平衡プラズマが生成される。これにより、通常のスパークプラグと同様、燃料を点火させる点火プラグとして機能する。
なお、本実施形態の内燃機関30によるマイクロ波の指向性制御については、第1実施形態において説明したものと同様である。
(第4の実施形態)
図15は、本実施形態に係る内燃機関40の一部断面の正面図である。本実施形態では、第3実施形態と比較して、アンテナ3がマイクロ波共振プラグ5の周辺に配置される点で相違する。また、第2実施形態と比較して、スパークプラグ1に代えてマイクロ波共振プラグ5を配置した点で相違する。なお、本実施形態の内燃機関40によるマイクロ波の指向性制御については、第2実施形態において説明したものと同様である。
(第5の実施形態)
図16の例では、火炎面を計測するためのイオンセンサ8a〜8dがシリンダヘッド21に設けられている。このイオンセンサ8は、燃焼室内に電極を露出させた構成となっており、火炎に含まれるマイナスイオンを電極が捕集することにより火炎到達の有無を検出するものである。
本実施形態によれば、イオンセンサ8による検出結果に基づき、制御装置6が火炎の伝播方向を推定し、これに基づきアンテナ3の指向性制御を行うことができる(図17参照)。例えば、イオンセンサ8cで検出した電流が小さい場合は、その近傍には火炎が伝播していないか、火炎が弱いものと推定し、この領域の電界強度を高めるべく、アンテナ3b及び3cから同相のマイクロ波を放射させ、イオンセンサ8c近傍、つまり排気バルブ26A、B間への火炎伝播を促進させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。本発明の範囲はあくまでも特許請求の範囲に記載された発明に基づいて定められるものであり、上記実施形態に限定されるべきものではない。
例えば電磁波の一例としてマイクロ波を例に説明したが、他の波長域の電磁波であってもよい。また内燃機関が扱う燃料としてガソリンを例に説明したが、天然ガス等、他の種類の燃料であってもよい。また、いわゆるポート噴射型のエンジンを例に説明したが、直噴型のエンジンであってもよい。
1 スパークプラグ
3 アンテナ
4 電磁波生成装置
5 マイクロ波共振プラグ
6 制御装置
7 電源回路
8 イオンセンサ
10 内燃機関
21 シリンダヘッド
22 シリンダブロック
23 吸気ポート
24 吸気バルブ
25 排気ポート
26 排気ポート
27 ピストン
28 燃焼室

Claims (4)

  1. 燃焼室と、
    前記燃焼室内の燃料を点火する点火プラグと、
    前記燃焼室に電磁波を照射する複数のアンテナと、
    電磁波を発振する発振部と、電磁波を増幅する増幅部と、増幅した電磁波を前記各アンテナに供給する複数の出力部を有する電磁波生成装置と、
    前記電磁波生成装置を制御する制御装置とを備え、
    前記制御装置は、前記電磁波生成装置に対し、前記複数の出力部のうち1つの出力部から出力される電磁波と、前記複数の出力部のうち別の1つの出力部から出力される電磁波との間で、電磁波の位相を互いに異ならせ、該互いに異ならせた電磁波の位相の差を利用して所定領域の電界強度を高める制御を実行することを特徴とする、を備える内燃機関。
  2. 前記複数のアンテナは、燃焼室の外周部に同心円状に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
  3. 前記複数のアンテナは、点火プラグに隣接して設けられることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
  4. 燃焼室内の燃焼状態を検出するための複数のセンサ部材を備え、
    電磁波生成装置は、センサ部材による検出結果に基づいて、各出力部の位相差を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
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