JP6685042B2 - 脈管モデルの製造方法 - Google Patents

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本発明は、動脈等の脈管手術の教育訓練のための脈管モデルを製造する脈管モデル成形具及び脈管モデルの製造方法に関するものである。
血管やリンパ管などの脈管に対する切開、縫合の手術や、カテーテル手術には高度な技術が要求される。医学生や外科医は、このような脈管手術の手技を身に付けるためには繰り返し訓練を行う必要がある。
脈管手術の手技の訓練用脈管モデルとして、シリコンゴムからなるものが用いられていた。しかし、シリコンゴム製の脈管モデルは、硬さや伸びなどの機械特性が実際の生体の脈管とはその形態が大きく異なるものであった。また、生体のような親水性を有していないため質感も異なるものであった。
従来、シリコンゴムに代わりに、親水性の高分子であるポリビニルアルコールを用いた手術練習用モデルが提案されている(特許文献1)。
特開2011−8213号公報
特許文献1の血管モデル及びその製造方法には、ポリビニルアルコールからなる水性ゲルおよびシリカ粒子を含有する血管モデルとその製造方法が開示されている。特許文献1の血管モデルは、人体の血管の直径に対応した内径を有する管内にポリビニルアルコール水溶液を充填し、−10℃以下の温度で冷凍した後、解凍し、その管内で形成された成形体の中央部分に、血管の内径に対応する直径を有する針金、ワイヤー、金属線などの線状体を挿入し、血液の通路を形成させ、形成された成形体から前記管および線状体を除去することにより、製造するものであった。
また、特許文献1の血管モデルでは、動脈瘤に見立てた動脈瘤状の血管モデルを形成する場合、例えば、血管モデル内部に空気を入れることによって膨らませた風船状の球状体の表面に前記ポリビニルアルコール水溶液を塗布し、血管モデルの製造方法にしたがって冷解凍を行なうことによって製造していた。
しかし、特許文献1の血管モデルの製造においては、血管の内径に対応する直径を有する線状体を血管モデルの成形体に挿入・除去して、血液の通路(内腔)を形成する必要があり、血管モデルの内腔を人体の血管内腔と同じように形成することが困難な場合があった。
本発明は、上記課題を解決するもので、人体の脈管を模した形態の脈管モデルを成形するための脈管モデル成形具及び脈管モデルの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明の脈管モデルの製造方法は、人体の脈管の内腔を模った形態からなる脈管モデル成形具に、ポリビニルアルコールと水溶性多糖類を混合する混合溶液を塗布して脈管モデル成形具の表面に被膜を形成し、被膜中の水溶性多糖類を架橋してゲル化し、その後水溶性多糖類をゲル化した被膜の凍結解凍を繰り返して被膜中のポリビニルアルコールを架橋してゲル化し、脈管モデル成形具からゲル化した被膜を取り外すことにより形成されるゲル化した被膜からなる脈管モデルの製造方法であって、脈管モデルを形成する人体の脈管の種類に応じてポリビニルアルコールの重合度、水溶性多糖類の濃度および凍結解凍の繰り返し回数を選択し、人体の脈管のような弾性と触感を有する脈管モデルを得るようにしたものである。
また、ゲル化した被膜の表面に、ポリビニルアルコールと水溶性多糖類を混合する混合溶液を塗布して新たに被膜を形成し、被膜中の水溶性多糖類を架橋してゲル化し、その後水溶性多糖類をゲル化した被膜の凍結解凍を繰り返して被膜中のポリビニルアルコールを架橋してゲル化することを繰り返して、内膜、中膜、外膜からなる三層構造の脈管モデルを製造するようにしたものである。
本発明の脈管モデル成形具は、人体の脈管の内腔の形態を模ったもので、脈管モデルを成形するものである。これにより、従来のように芯材を用いて成形体に内腔を形成する必要がなくなり、人体の脈管を模した形態の脈管モデルを容易に成形することができる。
本発明の脈管モデルの製造方法によると、脈管モデル成形具に脈管モデルを成形する溶液を塗布しゲル化するだけで、脈管モデルを製造することができる。従来のように線状体を用いて成形体に内腔を形成する必要もなく、脈管モデルの内腔の形態を正確に形成することができる。
また、脈管モデル成形具に脈管モデルを成形するための溶液を塗布して被膜を形成し、その被膜をゲル化することにより、また、その工程をゲル化した被膜に繰り返すことにより、生体の脈管と同様の弾性と触感を有し、手術の手技訓練に好適な脈管モデルを製造することができる。
本発明の脈管モデル成形具の例を表わす図である。 本発明の脈管モデルの製造方法を示す図である。 3Dプリンターで作製した本発明の脈管モデル成形具と、この成形具を用いて製造した脈管モデルの例を示す図である。 膨らみ部を有するワイヤーの脈管モデル成形具を用いて製造した脈管モデルの例を示す図である。 枝分かれした脈管の内腔を模した脈管モデル成形具を用いて製造した脈管モデルの例を示す図である。 アルギン酸塩の濃度と弾性率の関係を示す図である。 凍結・解凍回数と破断伸びの関係を示す図である。 凍結・解凍回数と引張強度の関係を示す図である。 ポリビニルアルコールの重合度と弾性率および引張強度の関係を示す図である。
本発明は、手術の手技訓練に好適な脈管モデルの製造を実現するものである。
本発明の脈管モデル成形具及び脈管モデルの製造方法を図に基づいて説明する。図1は、本発明の脈管モデル成形具の例を表わす図であり、図(a)は正常な脈管の内腔を模った脈管モデル成形具の縦断面図、図(b)は動脈硬化によって冠動脈が狭窄した場合の脈管の内腔を模った脈管モデル成形具の縦断面図、図(c)は動脈瘤の場合の脈管の内腔を模った脈管モデル成形具の縦断面図である。図2は、本発明の脈管モデルの製造方法を示す図である。
本発明の脈管モデル成形具10は、人体の脈管の内腔の形態を模ったものである(図1)。脈管モデル成形具10は、後述する脈管モデルの製造方法で述べるとおり、脈管モデルを成形するための基材として用いるものである。脈管モデルを成形する場合、脈管モデル成形具10に脈管モデルを成形するための溶液16を塗布し、被膜16aを形成し、被膜16aをゲル化することで脈管モデル22を得ることができる(図2)。
皮膜16aを形成させる方法は、溶液16に脈管モデル成形具10を浸漬させ、引き上げて塗布することにより、脈管モデル成形具10の表面に皮膜16aを形成させる。皮膜16aを形成させる方法は、これに限るものではなく、脈管モデル成形具10の形状に応じて、溶液16を脈管モデル成形具10の表面に流涎して塗布することにより、また、溶液16を脈管モデル成形具10の表面に噴霧して塗布することにより、皮膜16aを形成しても良い。
脈管モデル成形具10を人体の脈管の症状(病変)を模した形態に形成することにより(図1(b)、(c))、症状が表された正確な脈管モデルを形成することが可能になる。
たとえば、動脈硬化によって冠動脈が狭窄した場合の脈管の内腔は、血管の内腔が狭くなることから、その症状の内腔の形態を表わすために、脈管モデル成形具10の一部に凹み部12を形成する(図(b))。動脈瘤(真性動脈瘤)の場合の脈管の内腔は、血管壁(内膜、中膜、外膜の三層構造からなる血管の壁)を維持したまま瘤状の膨らみができることから、その症状の内腔の形態を表わすために、脈管モデル成形具10の一部に膨らみ部14を形成する(図(c))。
従来の特許文献1に記載の血管モデルにおける成形体から線状体を用いて血管の内腔を形成し、また血管モデル内部に空気を入れることによって膨らみ部を形成する製造方法に比べ、より正確に、人体の脈管の症状(病変)を模した形態の血管モデルを製造することができる。
本発明の脈管モデル成形具10は、人体の脈管の内腔の形態を模ったものであることから、実際の生体の脈管の形状に対応した直線状や曲線状の形状の線状体を用いることができる。脈管モデル成形具10の外径としては、対象とする脈管の内腔(内径)に応じて適宜選択すればよい。脈管モデル成形具10の材質は、特に限定するものではなく、樹脂、金属、ガラス等いずれでも良い。
また、脈管モデル成形具10は、コンピュータ断層撮影や核磁気共鳴画像法等により得られた人体の脈管の三次元形状データを基に3Dプリンターにより作製することもできる。
図3は、3Dプリンターで作製した直径2mmの曲線形状の樹脂からなる脈管モデル成形具と、その成形具を用いて製造した脈管モデルの例を示す図である。3Dプリンターを用いることで、自由曲線の形態の脈管モデル成形具を形成でき、その成形具により脈管モデルを作製できる。
図4は、膨らみ部を有する直径1mmのワイヤーの脈管モデル成形具)を用いて製造した脈管モデルの例を示す図である。図4の脈管モデルは、一部に膨らみ部を形成する図1(c)の脈管モデル成形具を用いて、製造したものである。
図5は、枝分かれした脈管の内腔を模した直径2〜3mmの樹脂からなる脈管モデル成形具を用いて製造した脈管モデルの例を示す図である。
以上のように、本発明では、人体の脈管を模った様々な形態の脈管モデル成形具を用いることにより、任意の形態の脈管モデルを製造することができる。
本発明の脈管モデルの製造方法は、上記脈管モデル成形具10に脈管モデルを成形するための溶液16を塗布して被膜16aを形成し、その被膜16aをゲル化して、脈管モデル22を製造するものである(図2)。
図2の図(a)及び(b)は被膜形成工程を表わす図、図(c)は第一ゲル化工程を表わす図、図(d)は第二ゲル化工程を表わす図、図(e)は、脈管モデルを表わす図である。
被膜形成工程では、脈管モデル22を成形するための溶液16に脈管モデル成形具10を浸漬させ、溶液16から脈管モデル成形具10を引き上げて塗布することにより、脈管モデル成形具10に被膜16aを容易に形成することができる(図2(a)、(b))。
図2(a)の脈管モデルを成形するための溶液16は、ポリビニルアルコールと水溶性多糖類を含有する溶液である。
ポリビニルアルコールの重合度は、生体の脈管の弾性と触感に近づける観点から、500〜4000であることが好ましく、けん化度は90モル%以上であることが好ましい。
水溶性多糖類は、ゲル化が可能なものであれば良い。水溶性多糖類として、例えば、アガロース、アルギン酸、アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムなど)、カラギーナン、グルコマンナン、ジェランガム、ローメトキシルペクチン、およびこれらの誘導体などが挙げられる。さらに、実質的に前記の水溶性多糖類が主成分である寒天、コンニャク粉などが挙げられる。
ポリビニルアルコールと水溶性多糖類を含有する溶液16の作製は、公知の方法が利用できる。例えば、水を攪拌しながらポリビニルアルコールと水溶性多糖類を加え、90〜95℃に昇温し溶解するまで攪拌することにより得ることができる。
溶液16中のポリビニルアルコールと水溶性多糖類の濃度は、1〜50質量%であることが好ましいが、これに限るものではない。製造する脈管によって、濃度を調整する。
ポリビニルアルコールと水溶性多糖類の質量比(ポリビニルアルコール:水溶性多糖類)は、99:1〜50:50であることが好ましいが、これに限るものではない。水溶性多糖類の種類や製造する脈管によって、質量比を調整する。
皮膜16aの厚さは、製造とする生体の脈管の壁の厚さに応じて適宜選択すればよい。例えば、0.1〜1.0mmとする。皮膜16aの厚さは、溶液16の粘度や、脈管モデル成形具10の引き上げ速度を調整することにより、調整することができる。
被膜16aのゲル化の工程は、被膜16a中の水溶性多糖類をゲル化する第一ゲル化工程(図2(c))と、その後行われる被膜16a中のポリビニルアルコールをゲル化する第二ゲル化工程(図2(d))の2つの工程によって行われる。
第一ゲル化工程は、皮膜16a中の水溶性多糖類を架橋してゲル化させる工程である。ゲル化の方法は、水溶性多糖類のゲル化特性によって異なり、陽イオンとの接触、アルカリ処理、冷却、加熱などの方法から選択して用いることができる。
例えば、アルギン酸、アルギン酸塩、ローメトキシルペクチンなどの陽イオンによりゲル化する特性を有する水溶性多糖類を用いた場合は、皮膜を陽イオンと接触させる方法によりゲル化を行う。
皮膜を陽イオンと接触させる方法は、(図2(c))に示すように、皮膜16aを陽イオン溶液18(18a)に浸漬させる方法や、陽イオン溶液18を皮膜16aの表面に流延させる方法などにより行うことができる。これにより水溶性多糖類が陽イオンによって架橋されゲル化する。
陽イオン溶液としては、2価以上の陽イオンを含む溶液であればよく、例えばマグネシウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、亜鉛イオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、アルミニウムイオンなどを含む溶液が挙げられる。
2価以上の陽イオンの溶液18中の濃度は、特に限定されず、取り扱いの点から例えば、0.1〜20質量%とすればよい。
接触時間としては1秒〜60分が好ましい。接触時間が60分を超えると皮膜中のポリビニルアルコールが溶出する恐れがある。
また、例えば、グルコマンナンなどのアルカリ処理によりゲル化する特性を有する水溶性多糖類を用いた場合は、皮膜16aをアルカリ処理する方法によりゲル化を行う。
皮膜16aをアルカリ処理する方法は、皮膜16aをアルカリ性溶液18(18b)に浸漬させる方法や、アルカリ性溶液18(18b)を皮膜16aの表面に流延させる方法などにより行うことができる。これにより水溶性多糖類同士が架橋されゲル化する。また、ゲル化を促進するためにアルカリ性溶液18(18b)は加温しても良い。
また、例えば、アガロース、カラギーナン、ジェランガムなどの冷却によりゲル化する特性を有する水溶性多糖類を用いた場合は、皮膜16aを冷却する方法によりゲル化を行う。
皮膜16aを冷却する方法は、皮膜16aを冷水18(18c)に浸漬させる方法、冷水18(18c)を皮膜16aの表面に流延させる方法、送風により冷却する方法などにより行うことができる。これにより、水溶性多糖類同士が架橋されゲル化する。
冷却温度、すなわち冷水または送風の温度としては、水溶性多糖類がゲル化する凝固点以下であれば限定されないが、例えば30℃以下であることが好ましい。
第一ゲル化工程により皮膜16aがゲル化することにより、流動性を有する皮膜16aの形状が固定される。また、皮膜16aを形成する工程と第1のゲル化工程を複数回繰り返すことにより、皮膜16aを厚く形成することができる。
溶液16には、第一ゲル化工程においてゲル化を促進させるために、塩類を添加しても良い。塩類は、水溶性多糖類の種類によって選択する。例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、亜鉛イオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、アルミニウムイオンなどのハロゲン化物、炭酸塩、酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、水酸化物などが挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、溶液16に顔料や染料などの着色剤や、抗菌剤や安定剤などの添加剤を加えても良い。
なお、溶液16中の水溶性多糖類が温度低下によりゲル化する特性の水溶性多糖類である場合は、溶液16の温度をゲル化が生じない温度以上に保持しておく必要がある。
第二ゲル化工程は、皮膜16a中のポリビニルアルコールを架橋することにより、ゲル化させる工程である。
ポリビニルアルコールのゲル化は、第一ゲル化工程で水溶性多糖類がゲル化された皮膜20を凍結・解凍することにより行われる。これにより、ポリビニルアルコール分子同士が架橋される。凍結温度は、−5℃以下が好ましく、脈管モデル22の機械強度を高める観点から、−20℃以下がより好ましい。
凍結時間は、1時間から20時間が好ましい。解凍の方法は、特に限定されず、例えば、室温中に静置するか、乾燥機などにより加熱しても良い。
また、凍結と解凍の工程(第二ゲル化工程)を複数回繰り返すことにより、脈管モデルの機械強度を高めることができる。
また、必要に応じて、皮膜20を乾燥し、皮膜20に含まれる水分量の調整を行っても良い。
第二ゲル化工程の後、脈管モデル成形具10からゲル化した皮膜20(すなわち、本発明により製造される脈管モデル22)を取り外すことにより、脈管モデル22が得られる。
このようにして得られた脈管モデル22は、ポリビニルアルコールおよび水溶性多糖類を含む架橋ゲルを含み、ポリビニルアルコールと水溶性多糖類が架橋構造を形成している。
(実験例A)
水溶性多糖類にアルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム)を用いて、脈管モデルを製造した。また、脈管モデル成形具10として、ステンレス製ワイヤー(直径1.0mm、長さ10cm)を用いた。
蒸留水にポリビニルアルコール(重合度1500〜1800、けん化度98モル%以上)を加え、加熱しながら攪拌することにより、ポリビニルアルコールを溶解した。冷却後、アルギン酸塩を加え、攪拌することによりアルギン酸塩を溶解させ、ポリビニルアルコール10質量%とアルギン酸塩1質量%を含む混合溶液16を調整した。
上記混合溶液16に脈管モデル成形具10を浸漬し、引き上げることにより、脈管モデル成形具10の表面に皮膜16aを形成させた(被膜形成工程)。
次に、被膜16aを形成させた脈管モデル成形具10を塩化カルシウム1%水溶液18に3分間浸漬した(第一ゲル化工程)。
次に、上記第一ゲル化工程によりゲル化した脈管モデル成形具10の皮膜20を冷凍庫の中で−30℃にて15時間凍結した後、室温にて解凍した。その後、当該凍結・解凍の工程を、凍結時間8時間、15時間、8時間、15時間にて四回繰り返し行った(第二ゲル化工程)。
上記製造工程の後、脈管モデル成形具10から皮膜20(すなわち、本発明により製造される脈管モデル22)を取り外して、脈管モデル22を製造した。製造された脈管モデル22は、実際の生体の脈管のような親水性と適度な弾性や強度を有するものであり、生体の脈管を模った形態に成形することができた。
(弾性率、破断伸びおよび引張強度の測定)
(実験例B)
水溶性多糖類にアルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム)を用いて、脈管モデルを製造した。また、脈管モデル成形具10として、ステンレス製ワイヤー(直径1.0mm、長さ10cm)を用いた。
蒸留水にポリビニルアルコールを加え、加熱しながら攪拌することにより、ポリビニルアルコールを溶解した。冷却後、アルギン酸塩を加え、攪拌することによりアルギン酸塩を溶解させ、ポリビニルアルコール10質量%と所定の濃度のアルギン酸塩を含む混合溶液16を調整した。
上記混合溶液16に脈管モデル成形具10を浸漬し、引き上げることにより、脈管モデル成形具10の表面に皮膜16aを形成させた(被膜形成工程)。
被膜16aを形成させた脈管モデル成形具10を塩化カルシウム1%水溶液18に3分間浸漬した(第一ゲル化工程)。
上記第一ゲル化工程によりゲル化した脈管モデル成形具10の皮膜20を冷凍庫の中で−20℃にて8〜14時間凍結した後、室温にて解凍した。その後、当該凍結・解凍の工程を、所定の回数繰り返し行った(第二ゲル化工程)。
上記製造工程の後、脈管モデル成形具10から皮膜20(すなわち、本発明により製造される脈管モデル22)を取り外して、脈管モデル22を製造した。製造された脈管モデル22は、実際の生体の脈管のような親水性と適度な弾性や強度を有するものであり、生体の脈管を模った形態に成形することができた。
(実験例1、2)
上記実験例Bにおいて、ポリビニルアルコールとして、日本酢ビ・ポバール株式会社製JC‐17KB(重合度1700、けん化度99モル%)を用い、アルギン酸塩の濃度が0.5質量%である混合溶液を調整した。そして、凍結・解凍の工程を4回繰り返し、脈管モデルを製造した(実験例1)。また、凍結・解凍の工程を6回繰り返し、脈管モデルを製造した(実験例2)。
(実験例3〜11)
上記実験例Bにおいて、ポリビニルアルコールとして、日本酢ビ・ポバール株式会社製JC‐17KB(重合度1700、けん化度99モル%)を用い、アルギン酸塩の濃度が1.0質量%である混合溶液を調整した。そして、凍結・解凍の工程をそれぞれ2回(実験例3)、4回(実験例4)、および6回(実験例5)繰り返し、脈管モデルを製造した。
また、アルギン酸塩の濃度が1.5質量%である混合溶液を調整した。そして、凍結・解凍の工程をそれぞれ2回(実験例6)、4回(実験例7)、および6回(実験例8)繰り返し、脈管モデルを製造した。
また、アルギン酸塩の濃度が2.0質量%である混合溶液を調整した。そして、凍結・解凍の工程をそれぞれ2回(実験例9)、4回(実験例10)、および6回(実験例11)繰り返し、脈管モデルを製造した。
(実験例12)
上記実験例Bにおいて、ポリビニルアルコールとして、日本酢ビ・ポバール株式会社製JF‐10(重合度1000、けん化度98.0〜99.0モル%)を用い、アルギン酸塩の濃度が1.0質量%である混合溶液を調整した。そして、凍結・解凍の工程を4回繰り返し、脈管モデルを製造した。
(実験例13)
上記実験例Bにおいて、ポリビニルアルコールとして、日本酢ビ・ポバール株式会社製JC‐25(重合度2500、けん化度99.0モル%以上)を用い、アルギン酸塩の濃度が1.0質量%である混合溶液を調整した。そして、凍結・解凍の工程を4回繰り返し、脈管モデルを製造した。
上記実験例1〜13で得られた脈管モデルを長さ5.0mmに切断し、引張速度2mm/minで円周方向に引張試験を行った。弾性率、引張強度および破断伸びを求めた結果を表1に示す。なお、実験は5回行い、平均値を用いた。
Figure 0006685042
表1の実験例1〜11のアルギン酸塩の濃度と弾性率の関係を図6に示す。図6から、弾性率は凍結・解凍回数にほぼ影響されずに、アルギン酸塩の濃度が増加するに従い増加することが分かった。
特開2014−186281によれば、人体の血管の弾性率は1kPaから1000kPaの範囲であるとされている。本発明においては、アルギン酸塩の濃度を適宜選択することにより、人体の血管と同様な様々な弾性を有する脈管モデルを容易に製造可能である。
表1の実験例1〜11の凍結・解凍回数と破断伸びの関係を図7に示す。また、凍結・解凍回数と引張強度の関係を図8に示す。図7及び図8から、破断伸びと引張強度は、凍結・解凍回数が増加するに従い増加することが分かった。
本発明においては、第二ゲル化工程での凍結・解凍を適当な回数繰り返すことにより、様々な強度を有する脈管モデルを容易に製造可能である。
表1の実験例4、12、および13のポリビニルアルコールの重合度と弾性率および引張強度の関係を図9に示す。図9から、重合度が増加するに従い弾性率は減少するが、引張強度は増加することが分かった。
本発明においては、ポリビニルアルコールの重合度を適宜選択することにより、硬くて脆いものから柔らかくてしなやかなものまで様々な機械特性を有する脈管モデルを容易に製造可能である。
以上のように、本発明では、ポリビニルアルコールと水溶性多糖類をそれぞれ架橋(ゲル化)することにより、生体の脈管のような親水性と適度な弾性や強度を有する脈管モデルを得ることができる。本発明により製造される脈管モデルは、手術における切開、縫合、吻合、カテーテル挿入、ステント留置術、ステントグラフト内挿術、バルーン拡張術などの手技訓練に好適に使用できるものである。
ゲル化した被膜20の表面に溶液16を塗布して新たに被膜を形成し、その新たな被膜をゲル化することを繰り返して、脈管モデルを製造してもよい。
血管は、内膜、中膜、外膜からなる三層構造をしており、それぞれ弾力等の物理的性質が異なっている。被膜20に本発明の皮膜形成工程から第二ゲル化工程を繰り返すことにより、このような3層構造の脈管モデルを製造することが可能になる。これにより、内膜、中膜、外膜の三層構造からなる血管の壁を形成することができ、より人体の脈管に近い弾力や触感を示すようなリアリティのある脈管モデルを製造することが可能になり、手術の訓練の効果を上げることができる。
本発明によると、より人体の脈管に近い弾力や触感を有し、生体の脈管の形態と同様の脈管モデルを得ることができることから、手術における切開、縫合、吻合、カテーテル挿入、ステント留置術、ステントグラフト内挿術、バルーン拡張術などの手技訓練に広く利用できる、手術の手技訓練に好適な脈管モデルを提供することができる。また、容易に脈管モデルを製造することができる。
10 脈管モデル成形具
12 凹み部
14 膨らみ部
16 脈管モデルを成形するための溶液
16a 被膜
18 被膜中の水溶性多糖類をゲル化する溶液
20 ゲル化した被膜
22 脈管モデル

Claims (2)

  1. 人体の脈管の内腔を模った形態からなる脈管モデル成形具に、ポリビニルアルコールと水溶性多糖類を混合する混合溶液を塗布して脈管モデル成形具の表面に被膜を形成し、被膜中の水溶性多糖類を架橋してゲル化し、その後水溶性多糖類をゲル化した被膜の凍結解凍を繰り返して被膜中のポリビニルアルコールを架橋してゲル化し、脈管モデル成形具からゲル化した被膜を取り外すことにより形成されるゲル化した被膜からなる脈管モデルの製造方法であって、脈管モデルを形成する人体の脈管の種類に応じてポリビニルアルコールの重合度、水溶性多糖類の濃度および凍結解凍の繰り返し回数を選択し、人体の脈管のような弾性と触感を有する脈管モデルを得ることを特徴とする脈管モデルの製造方法。
  2. ゲル化した被膜の表面に、ポリビニルアルコールと水溶性多糖類を混合する混合溶液を塗布して新たに被膜を形成し、被膜中の水溶性多糖類を架橋してゲル化し、その後水溶性多糖類をゲル化した被膜の凍結解凍を繰り返して被膜中のポリビニルアルコールを架橋してゲル化することを繰り返して、内膜、中膜、外膜からなる三層構造の脈管モデルを製造することを特徴とする請求項1記載の脈管モデルの製造方法。
JP2016031534A 2015-02-24 2016-02-23 脈管モデルの製造方法 Active JP6685042B2 (ja)

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