以下、本発明の訓練用生体モデルを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、人体全身における動脈(心臓を含む)を示す模式図、図2は、図1に示す動脈を立体モデルに適用したものの全体写真、図3は、本発明の訓練用生体モデルが右冠動脈に配置された第1実施形態を示す模式図、図4は、右冠動脈に配置された訓練用生体モデルに対してPTCA術の訓練を行う手順を示す図、図5は、狭窄型の訓練用生体モデルの各種構成を示す図(左図は縦断面図、右図は左図のA−A線断面図)、図6は、狭窄型の訓練用生体モデルの各種構成を示す図(左図は縦断面図、右図は左図のA−A線断面図)、図7は、閉塞型の訓練用生体モデルの各種構成を示す図(左図は縦断面図、右図は左図のA−A線断面図)、図8は、閉塞型の訓練用生体モデルの各種構成を示す図(左図は縦断面図、右図は左図のA−A線断面図)、図9は、訓練後の訓練用生体モデルの状態を示す縦断面図、図10は、本発明の訓練用生体モデルを製造する方法を説明するための図、図11は、本発明の訓練用生体モデルを製造する他の製造方法を説明するための図、図12は、本発明の訓練用生体モデルを製造する際に用いられる押し子の他の構成を示す図、図13は、接続具の構成を説明するための図(図(a)は斜視図、図(b)は縦断面図)、図14は、接続機構の構成を説明するための図(図(a)は斜視図、図(b)は縦断面図)、図15は、本発明の訓練用生体モデルが左冠動脈に配置された第2実施形態を示す模式図、図16は、分岐部に配置される疑似病変部材の各種構成を示す縦断面図、図17は、本発明の訓練用生体モデルが配置される、病変の好発部位を示すための図、図18は、疑似管状部材の材料特性を試験する試験方法を示す図、図19は、図18に示す試験方法で試験された疑似管状部材の材料特性(応力の経時的変化)を示すグラフである。なお、以下の説明では、図3〜図17中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図3、図15および図17には、冠動脈の形状および位置等が分かり易くなるように、心臓の形状についても併せて図示している。
図2に示す立体モデルは、例えば、血管(動脈、静脈)、リンパ管、胆管、尿管、卵管等の管状組織を備えるヒトの生体の前記各種管状組織を再現して人工的に製造されたものである。この立体モデルを用いて、疑似病変部材にバルーンカテーテル等の医療器具を到達させ、その後、疑似病変部材を拡張することにより流路を確保したり、拡張した疑似病変部材にステントを留置するための訓練等が実施される。以下では、動脈の形状に対応して形成された(管状組織を模した)疑似管状組織に、当該動脈に生じた病変部を模した疑似病変部材を配置した場合を一例に説明する。
ヒトの全身における動脈(心臓を含む)は、図1の模式図に示すような形状をなしている。この動脈の形状に対応した立体モデルは、例えば、特許第3613568号公報の記載に基づいて、次のようにして製造される。
まず、動脈が備える腔部(血液の流路)の断層像データをCTスキャナ、MRIスキャナのような画像診断装置を用いて得た後、この動脈の内腔部に対応する断層像データに基づいて動脈の内腔部の形状をなす内腔モデルを積層造形する。
次に、内腔モデルの周囲を立体モデル成形材料で囲繞した状態で立体モデル成形材料を硬化させた後、内腔モデルを除去することにより、図2の全体写真に示すような、動脈の形状に対応した動脈モデル(立体モデル)が形成される。
上記のような動脈モデルが備える各部の動脈(モデル)、例えば、冠動脈、脳動脈、頸動脈、腎動脈、上腕動脈等の任意の位置に、疑似病変部材を配置することにより、バルーンカテーテル等の医療器具を疑似病変部材(狭窄モデル)に位置させた後、この疑似病変部材を拡張することにより流路を確保する訓練を行うことができる。本実施形態では、訓練用生体モデル1は、動脈モデルが備える冠動脈(疑似管状組織)10に疑似病変部材(病変モデル)21を配置したものとなっている。
冠動脈10は、大動脈5のバルサルバ洞において、左右に分岐する左冠動脈3および右冠動脈4からなる。
右冠動脈4は、バルサルバ洞窟の1つである右冠動脈洞の上部より前方に出た後、右心耳に覆われて右心房と肺動脈の間を走行し、右房室間溝に沿って鋭縁部41を回り後下行枝42に向かい、後室間溝で左心室後壁および中隔の下側を養う血管を派生する。
なお、この右冠動脈4において、右冠動脈4の入口から鋭縁部41までを半分にした上半分をSegment1(#1:Proximal)といい、その下半分をSegment2(#2:Middle)といい、鋭縁部41から後下行枝42で分岐するまでをSegment3(#3:distal)という。また、後下行枝42の分岐以降をSegment4といい、このSegment4は、#4AV・#4PD・#4PLの3つに分けられる。
また、左冠動脈3は、バルサルバ洞の1つである左冠動脈洞の上部より左前方に出て、前室間溝に入る左前下行枝31と、左回旋枝32とに分岐する。
なお、大動脈5から左前下行枝31と左回旋枝32とに分岐するまでの間の部位を左主幹部33(Segment5)という。また、左前下行枝31は、Segment6〜10まで細分化されており、このうち左前下行枝31の本幹は、Segment6(#6:Proximal)、Segment7(#7:Middle)、Segment8(#8:distal)の3つに分類され、Segment6とSegment7との間からSegment9(#9:第1対角枝)が分岐し、Segment7とSegment8との間からSegment10(#10:第2対角枝)が分岐している。さらに、左回旋枝32は、Segment11〜15まで細分化されており、このうち左回旋枝32の本幹は、Segment11(#11:Proximal)、Segment13(#13:distal)の2つに分類され、Segment11とSegment13との接続部からSegment12(#12:obtuse marginal branch;OM)が分岐している。
<<第1実施形態>>
第1実施形態の訓練用生体モデル1は、冠動脈10の右冠動脈4(Segment2)と、右冠動脈4に配置された疑似病変部材21と、右冠動脈4の双方の端部にそれぞれ設けられた接続部11とを備えている。右冠動脈4では、各接続部11を介して、Segment2の端部がそれぞれSegment1、Segment3と接続されている。この場合、各接続部11は、それぞれ、Segment1およびSegment3に対し着脱自在に構成されているのが好ましい。
また、かかる位置に配置された疑似病変部材21に対して、PTCA術の訓練が行われるが、かかる訓練は、以下に示すような手順で実施される。
[1] まず、大腿動脈にシースカテーテル(図示せず)を挿入、次いで、これにガイドカテーテル用ガイドワイヤ(図示せず)を挿入し、その先端を右冠動脈4の入口付近にまで進めた状態で、ガイドカテーテル用ガイドワイヤに沿わせてガイドカテーテル61を進め、その先端を右冠動脈4の入口に位置させる(図4(a)参照。)。
[2] 次に、ガイドカテーテル用ガイドワイヤを抜去し、バルーンカテーテル用ガイドワイヤ62をガイドカテーテル61内に挿入してガイドカテーテル61の先端からバルーンカテーテル用ガイドワイヤ62を突出させ、さらに右冠動脈4に配置した疑似病変部材21を越えた位置にまでバルーンカテーテル用ガイドワイヤ62を進める(図4(b)参照。)。
[3] 次に、バルーンカテーテル用ガイドワイヤ62の基端(大腿動脈)側から挿通されたバルーンカテーテル63の先端部をガイドカテーテル61の先端から突出させ、さらにバルーンカテーテル用ガイドワイヤ62に沿って進め、バルーンカテーテル63のバルーン64を疑似病変部材21に位置させた後、バルーン64に、バルーンカテーテル63の基端側からバルーン膨張用の流体を注入することにより、バルーン64が膨張される(図4(c)参照。)。これにより、疑似病変部材21が押し広げられる。
[4] 次に、バルーンカテーテル63の基端側からバルーン膨張用の流体を排出し、図4(d)に示すようにバルーン64を収縮させる。その後、バルーンカテーテル用ガイドワイヤ62、バルーンカテーテル63、ガイドカテーテル61およびシースカテーテルを大腿動脈側から抜去する。これにより、疑似病変部材21に血流路が形成される。
まず、Segment2となる右冠動脈4について説明する。
図5(図6〜図9についても同様)に示すように、右冠動脈4は、内腔部43を有する管状体40で構成されたものである。右冠動脈4では、内径φd1および外径φd2がそれぞれ長手方向に沿って一定となっている。
右冠動脈4は、塑性変形可能な材料で構成されており、その材料としては、特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ナイロンエラストマー、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン・プロピレン共重合体のような熱可塑性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの熱可塑性樹脂のなかでも、特に、ポリエチレンを用いるのが好ましい。この場合、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのように、密度すなわち結晶化度が異なるもの同士を混合した樹脂も用いることができる。また、ポリエチレンで構成される右冠動脈4の硬度は、ショアA(JIS K6253に規定)が20〜80であるのが好ましく、25〜35であるのがより好ましい。破断強度は、5〜30MPaであるのが好ましく、8〜12MPaであるのがより好ましい。破断伸びは、100〜600%程度であるのが好ましく、100〜200%程度であるのがより好ましい。
このようなポリエチレンを用いることにより、当該右冠動脈4が確実に塑性変形可能なものとなる。これにより、後述する疑似病変部材21と相まって、拡張訓練をした際、右冠動脈4および疑似病変部材21が一括して変形して、その変形状態(拡張状態)が確実に維持される(図9参照)。また、右冠動脈4を製造する際、右冠動脈4の母材となる管状体(チューブ)40を押出成形によって成形することができる。そして、管状体成形後、当該管状体に加工(例えば、加熱や圧縮等)を施すことにより、所望の大きさの右冠動脈4を製造することができる(図3参照)。
また、右冠動脈4を構成する塑性変形可能な材料、すなわち、熱可塑性樹脂は、応力緩和率が好ましくは20〜60%、より好ましくは20〜30%となる材料特性を有するものである。
ここで、「応力緩和率」とは、管状体40を、常温で、図18に示す試験方法により得られた(定義された)ものである。
まず、図18(a)に示すように、管状体40を短冊400にして、当該短冊400は、その一端(図中左側)が固定されて固定端401となり、他端(図中右側)が自由端402となっている。また、このときの短冊400は、全長がLとなっている。
次に、図18(a)に示す状態から、短冊400の自由端402を所定の速度(引張速度)で図中右側(長手方向)へ引張る(図18(b)参照)。このときの条件は、1分間で全長が2Lとなるように引張る。全長が2Lとなったときの初期引張り応力をf0とする(図19参照)。
次に、図18(b)に示す状態から前記速度(引張速度)を零として、全長2Lを保つ(図18(c)参照)。そして、前記速度を零としてから5分後の引張り応力をftとする(図19参照)。
そこで、「応力緩和率」を((f0−ft)/f0)×100で表すことができるものとする。
応力緩和率がこのような数値範囲内にあることにより、拡張訓練をした際に、右冠動脈4は、より確実に変形し、よって、実際のヒトの動脈に近似したものとなる。これにより、拡張訓練を行なうと、その訓練があたかも実際の手技(PTCA術)を行なっているのと同様の感覚を得る。なお、応力緩和率の大きさの調整は、例えば、構成材料を適宜選択すること等により、行なうことができる。
また、右冠動脈4の周方向の引張弾性率は、疑似病変部材21の圧縮弾性率と同じまたはそれより大きいのが好ましい。具体的には、疑似病変部材21の圧縮弾性率が0.001〜0.5MPaである場合、右冠動脈4の周方向の引張弾性率が0.5〜50MPaであるのが好ましく、0.5〜5MPaであるのがより好ましい。
また、右冠動脈4は、比d2/d1が1.01〜2なる関係を満足するものが好ましく、比d2/d1が1.01〜1.2なる関係を満足するものがより好ましい。右冠動脈4(Segment2)の内径φd1は、2〜5mm程度に設定するのが好ましい。
このような諸条件(数値範囲)により、拡張訓練を行なった際、右冠動脈4は、疑似病変部材21を介して押圧されて確実に変形することができる(図4、図9参照)。また、実際のヒトの冠動脈に対応した訓練を確実に実施することができ、術者の技術向上が的確に図られる。
次に、右冠動脈4の内腔部43に配置された疑似病変部材21について説明する。
疑似病変部材21の形状は、内腔部43に対する狭窄度に応じて、狭窄型または閉塞型のものに分類される。
<狭窄型>
狭窄型の疑似病変部材21のうち、図5(a)に示す第1の構成の疑似病変部材21は、そのほぼ中心部に軸方向(長手方向)に貫通する貫通孔23を有し、その内面231同士が離間したもの、すわわち、全体形状がほぼ筒状をなす筒状体である。
かかる構成の疑似病変部材21では、この疑似病変部材21を右冠動脈4の内腔部43に配置した際に、当該内腔部43が狭窄される。
この第1の構成の疑似病変部材21では、前記工程[3]において、バルーンカテーテル63をバルーンカテーテル用ガイドワイヤ62に沿って右冠動脈4内を進めて、バルーン64を右冠動脈4を狭窄する疑似病変部材21すなわち貫通孔23内に到達させ、その後バルーン64を膨らませることにより疑似病変部材21(貫通孔23)を拡張する訓練を行うのに好適である。
疑似病変部材21の長さは、特に限定されないが、1〜100mm程度であるのが好ましく、5〜50mm程度であるのがより好ましい。疑似病変部材21の長さをかかる範囲内に設定することにより、より実際の病変部位(狭窄部位)の大きさに適した訓練を実施することができる。
また、疑似病変部材21の外径φd4は、配置する右冠動脈4の内径φd1の大きさに応じて適宜設定され、特に限定されるものではなく、外力を付与しない自然状態で、右冠動脈4の内径φd1よりも大きく設定されているのが好ましい。これにより、疑似病変部材21は、右冠動脈(内腔部)4に圧縮された状態で挿入され、その結果、疑似病変部材21が右冠動脈4内に確実に固定されることとなるため、訓練の際に、バルーンカテーテル用ガイドワイヤ62やバルーンカテーテル63の接触により疑似病変部材21が不本意に位置ずれしてしまうのを確実に防止することができる。
また、疑似病変部材21の貫通孔23の内径φd3は、特に限定されないが、(φd1−φd3)/φd1が50〜100%となるようにφd3を設定するのが好ましい。貫通孔23の内径φd3をかかる範囲内に設定することにより、実際の狭窄部位の狭窄度に適した訓練を確実に実施することができ、術者の技術向上が的確に図られる。
具体的には、φd1を2〜5mmに設定したとすると、φd3は、0〜2.5mmとなり、疑似病変部材21の厚さは、0.5〜2.5mm程度となる。なお、φd3が0mmの場合は、完全閉塞となる。
次に、図5(b)に示す第2の構成の疑似病変部材21は、第1の構成の疑似病変部材21と同様に、その中心部に軸方向に貫通する貫通孔23を有し、その全体形状がほぼ筒状をなしているが、その両端部に、貫通孔23の孔径(外径)がその内部側から外部側に向かって漸増するテーパ部を備えており、疑似病変部材21の両端ではその幅が実質的に「0」となっている。
換言すれば、貫通孔23は、その両端部において、ロート状をなしており、疑似病変部材21の両端部内周面が、疑似病変部材21の内側から両端部側に向かって傾斜する傾斜面22をそれぞれ有している。
この第2の構成の疑似病変部材21では、前記工程[3]において、バルーン64を貫通孔23に到達させる際に、疑似病変部材21の傾斜面22にバルーンカテーテル63を沿わせるようにしながら、バルーン64を貫通孔23内に到達させ、その後バルーン64を膨らませることにより疑似病変部材21(貫通孔23)を拡張する訓練を行うのに好適である。
なお、傾斜面22は、特に限定されないが、貫通孔23の中心軸に対して、15°〜65°程度の角度で傾斜しているのが好ましく、22°〜55°程度の角度で傾斜しているのがより好ましい。これにより、実際の狭窄部位の形状により適した訓練を確実に実施することができる。
さらに、本実施形態では、疑似病変部材21の両端部にテーパ部を備えているが、かかる場合に限定されず、2つの端部のいずれか一方にテーパ部が設けられていればよい。
また、第1の構成および第2の構成の疑似病変部材21では、貫通孔23が、そのほぼ中心部で軸方向(長手方向)にほぼ直行して貫通する場合について説明したが、かかる構成に限定されず、貫通孔23は如何なる位置に、如何なる形状で形成されていてもよく、例えば、貫通孔23は、縁部側(外周部側)に偏在(図6(a))していてもよいし、縁部(外周部)でその一部が開放(図6(b))していてもよいし、蛇行(湾曲)(図6(c))していてもよいし、その途中で拡径および縮径(図6(d))していてもよい。
<閉塞型>
閉塞型の疑似病変部材21のうち、図7(a)に示す第3の構成の疑似病変部材21は、その中心部に軸方向(長手方向)に連続する孔(貫通孔)23’を有し、この疑似病変部材21を右冠動脈4内に配置した際に、この孔23’の内面231同士が密着して(接して)いること以外は、前述した第1の構成の疑似病変部材21と同様の構成のものである。
この第3の構成の疑似病変部材21では、上記のように、孔23’の内面231同士が密着していることにより、この疑似病変部材21が配置された位置で右冠動脈4の内腔部43が閉塞される。
この第3の構成の疑似病変部材21では、前記工程[3]において、バルーンカテーテル63をバルーンカテーテル用ガイドワイヤ62に沿って右冠動脈4内を進める際に、孔23’を押し広げながらバルーン64をこの孔23’内に到達させ、その後バルーン64を膨らませることにより疑似病変部材21(孔23’)を拡張する訓練を行うのに好適である。
次に、図7(b)に示す第4の構成の疑似病変部材21は、孔23’の両端に、孔23’から連続する貫通孔25を有し、この貫通孔25の孔径がその内部側から端部側に向かって漸増していること以外は、前述した第3の構成の疑似病変部材21と同様の構成のものである。
すなわち、第4の構成の疑似病変部材21は、第2の構成の疑似病変部材21と第3の構成の疑似病変部材21とを組み合わせた構成のものであり、孔23’の内面231同士が密着し、かつ、その両端部が傾斜面22を備えるテーパ部で構成されるものである。
この第4の構成の疑似病変部材21では、前記工程[3]において、バルーン64を孔23’に到達させる際に、疑似病変部材21の傾斜面22にバルーンカテーテル63を沿わせるようにしながら、その先端を孔23’の入口まで導入した後、孔23’を押し広げながらバルーン64を孔23’内に到達させ、その後バルーン64を膨らませることにより疑似病変部材21(貫通孔23)を拡張する訓練を行うのに好適である。
なお、第3の構成および第4の構成の疑似病変部材21では、孔23’が、そのほぼ中心部で軸方向(長手方向)にほぼ直行して連続的に形成されている場合について説明したが、かかる構成に限定されるものではない。具体的には、軸方向に連続する孔23’に代えて、軸方向に連続する切れ目23”であってもよい。また、この切れ目23”は如何なる位置に、如何なる形状で形成されていてもよく、例えば、切れ目23”は、一文字状(図8(a))または十文字状(図8(b))をなしていてもよいし、U字状をなして縁部側に偏在(図8(c))していてもよいし、切れ目23”の一端が外周の一部で開放する(図8(d))形状をなしていてもよい。
以上のような形状をなす各構成の疑似病変部材21は、本発明では、塑性変形可能な材料で構成されており、その材料としては、右冠動脈4の構成材料と異なるものが好ましい。具体的には、シリコーン粘土、ゴム粘土、樹脂粘土および油粘土等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記のうち、例えば、シリコーン粘土としては、シリコーンゴムとして、粘度が5000〜20万cSt(25℃)程度のポリオルガノシロキサンと、粘度が100万cSt(25℃)以上のポリオルガノシロキサンとを重量比で80:20〜40:60で混合したもの100重量部、無機充填材として、石英粉末、珪藻土、珪酸マグネシウム、炭酸カルシウム、タルクおよび雲母粉末等のうち1種または2種以上組み合わせたもの20〜100重量部、その他必要に応じて流動パラフィンとして10重量部を含有するものが挙げられる。また、かかる構成のシリコーン粘土は、上記のシリコーンゴム、無機充填材および必要に応じて流動パラフィンをそれぞれ用意し、これらを、ロールおよびニーダー等の通常のゴム混練りに使用される混練り機を使用して均一に混練りすることにより得ることができる。
なお、無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、0.1〜50μm程度であるのが好ましく、0.5〜30μm程度であるのがより好ましい。平均粒径が0.1μm未満であると、無機充填材の種類によっては、シリコーン粘土が硬すぎたり粘性が乏しくなるおそれがある。また、平均粒径が50μmを超えると、無機充填材の種類によっては、伸びのある物性が得にくくなるおそれがある。無機充填材の配合量は、少なすぎると好ましい粘土状物が得にくく、多すぎると硬くなりすぎるおそれがある。
また、流動パラフィンは、粘度の粘性を向上させる機能を有するが、この含有量を多くしすぎるとブリードし、手に付着したりすることがある。
ゴム粘土としては、上記のシリコーンゴムの代わりに天然ゴムやブチルゴムを含有するものが挙げられる。
樹脂粘土としては、一般に、澱粉および/または穀粉と、酢酸ビニルエマルジョン系接着剤とを主材料として構成される粘土が挙げられる。澱粉ならびに穀粉としては、それぞれ、例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉および甘薯澱粉等、ならびに、小麦粉、とうもろこし粉、米粉およびそば粉等が挙げられる。酢酸ビニルエマルジョン系接着剤としては、例えば、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンおよびアクリル−酢酸ビニル共重合体エマルジョン等が挙げられる。
なお、これらの配合量は、澱粉や穀粉100重量部に対し、酢酸ビニルエマルジョン系接着剤が100〜150重量部程度であるのが好ましい。また、これらの材料の他、樹脂粘土には、無機物粉末、ロウおよび石鹸等が含まれていてもよい。無機物粉末としては、例えば、石英、カオリン、ゼオライト、珪藻土、タルク、ベントナイト、ホウ砂および岩石粉等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ロウとしては、蜜蝋等が挙げられる。石鹸としては、脂肪酸塩石鹸等が挙げられる。ただし、これらは、いずれもその配合量が10重量部未満となっているのが好ましい。
油粘土としては、通常、クレー、炭酸カルシウム、セリサイト系粘土のような無機質充填剤と、石鹸および油成分とを練り合わせたものが用いられる。より詳しくは、油成分として、流動パラフィンおよび/またはマイクロクリスタリンワックスを、無機質充填剤100重量部に対し15〜45重量部程度含有し、石鹸として、アルカリ金属石鹸、アルカリ土類金属石鹸、アルミニウム石鹸のうちの1種または2種以上を組み合わせたものを、0.2〜15重量部程度含有し、さらにグリセリンを0.2〜10重量部程度含有するものが好ましく用いられる。
なお、上述したシリコーン粘土の具体例としては、透明粘土(日清アソシエイツ社製)が挙げられ、樹脂粘土の具体例としては、エクセレント(日清アソシエイツ社製)が挙げられる。
このような材料で疑似病変部材21を構成することにより、当該疑似病変部材21は、右冠動脈4よりも変形し易いものとなる。これにより、拡張訓練を行なった際、疑似病変部材21は、右冠動脈4の拡張よりも優先的に変形することとなる。これは、実際にヒトの右冠動脈に生じた狭窄部に対しPTCA術を施した場合に、狭窄物が右冠動脈よりも優先的に変形するのとほぼ同じ現象となっている。従って、訓練者は、実際の手技に近い訓練を行なうことができる。なお、疑似病変部材21の圧縮弾性率は、0.001〜0.5MPa程度であるのが好ましく、0.01〜0.3MPa程度であるのがより好ましい。疑似病変部材21の物性値をかかる範囲内のもとのすることにより、疑似病変部材21の物理的性質は、実際の病変部位により近似した状態で塑性変形するものとなり、より質の高い訓練を実施することができる。
また、右冠動脈4および疑似病変部材21は、それぞれ、拡張訓練により変形するものであるが、その変形後の戻りにくさは、疑似病変部材21の方が右冠動脈4よりも戻り難くなっている、すなわち、塑性変形の度合いが右冠動脈4の方が疑似病変部材21よりも小さい。
疑似病変部材21の構成材料は、上述したような物理的性質を疑似病変部材21に発揮させ得るものであり、可塑性を長時間に亘って持続するものである。従って、疑似病変部材21は、実際の病変部位により近似した状態で塑性変形するものとなり、よって、訓練者は、より質の高い訓練を実施することができる。
訓練用生体モデル1(立体モデル)を用いてPTCA術の訓練を行なった際の、当該訓練用生体モデル1の状態について詳細に説明する。
PTCA術では、バルーン64で疑似病変部材21を拡張した際に、疑似病変部材21の端部が外側に移動することによる移動部211の発生(プラークシフト、図9(a)参照。)や、疑似病変部材21の一部が断裂することによる解離部212の発生(図9(b)参照。)等を生じさせることなく、右冠動脈4における流路を確保する(血流を回復させる)ことが技術的に求められる。
そこで、PTCA術の訓練に訓練用生体モデル1を用いれば、移動部211の発生や解離部212の発生を生じさせないような訓練も行なうことができる。
訓練用生体モデル1を用いてPTCA術の訓練を行なうと、図4(c)に示す前記工程[3]では、膨張したバルーン64により、疑似病変部材21が外方に向かって押圧される。また、右冠動脈4も疑似病変部材21を介して外方に向かって押圧される。これにより、疑似病変部材21および右冠動脈4が一括して拡張して変形する。
そして、図4(d)に示す前記工程[4]で、バルーンカテーテル用ガイドワイヤ62およびバルーンカテーテル63を疑似病変部材21から取り外した後は、疑似病変部材21および右冠動脈4は、それぞれ、前述したように塑性変形するものであるため、拡張前の形状に戻らずに、前記拡張して変形した状態、すなわち、バルーン64で押し広げた形状を維持していることとなる。これは、実際にヒトの右冠動脈に生じた狭窄部に対しPTCA術を施した場合に、右冠動脈および狭窄部が拡張した状態となるのとほぼ同じ現象となっている。
このように、訓練用生体モデル1を用いることにより、術者の技術向上を目的とする訓練を行う際、訓練用生体モデル1が実際の病変部の物理的性質に近似したものとなっているため、実地の手技に則した訓練を確実に行なうことができる。
また、PTCA術の訓練の後に、疑似病変部材21に、移動部211や解離部212等が生じているか否かの評価をより確実に行え得るため、より質の高い訓練を実施することができる。
また、前記工程[3]におけるバルーン64の拡張を、目視やX線造影像で観察しながら訓練を実施でき、疑似病変部材21および右冠動脈4の拡張の度合いや、移動部211や解離部212等が生じているか否かの判断をその場で行い得るので、かかる観点からも、より質の高い訓練を実施することができる。
なお、前記工程[4]により血流が回復された後の疑似病変部材21、すなわちPTCA術が施術された後の疑似病変部材21に対して、図9(c)に示すように、ステント81を留置することにより、疑似病変部材21の再狭窄や解離部212の解離を抑止することができる。このようなステント81を留置する治療の訓練にも訓練用生体モデル1を用いることができ、かかる訓練に訓練用生体モデル1を用いれば、再狭窄や解離部212の解離が好適に抑止されているか否かの評価をより確実に実施することができる。
以上のような構成の訓練用生体モデル1は、例えば、次のようにして、右冠動脈4のSegment2に疑似病変部材21を挿入することにより、製造することができる。
[I] まず、外筒(シース)71と、外筒71内で摺動可能な、軸方向に貫通孔73が設けられた押し子72と、貫通孔73内に挿通されるワイヤ74とを用意し、図10(a)に示すように、外筒71内に押し子72を挿入した状態で、ワイヤ74を貫通孔73および外筒71内に挿通する。
[II] 次に、疑似病変部材21の構成材料である塑性変形可能な材料(前記粘土)を、ワイヤ74および押し子72が挿入された状態の外筒71内に充填することで成形し、外筒71内に疑似病変部材21を得る(図10(b)参照。)。
ここで、本実施形態では、押し子72は、その先端が図10に示すように平坦面で構成されているため、疑似病変部材21は、第1の構成のものが製造される。
また、塑性変形可能な材料を成形する際に、外筒71内でワイヤ74を蛇行させることにより、貫通孔23を蛇行させることができるし、ワイヤ74として拡径・縮径するものを用いることにより、貫通孔23を拡径・縮径させることができる。
[III] 次に、右冠動脈4のSegment2を接続部11で取り外し、この取り外されたSegment2内に、外筒71を挿入する(図10(c)参照。)。
[IV] 次に、ワイヤ74を、外筒71および貫通孔73内から抜き取り、その後、押し子72を、押圧操作して、外筒71内で先端方向に摺動させる。これにより、外筒71内から疑似病変部材21が押し出され、Segment2内に配置される(図10(d)参照。)。
なお、外筒71の内面には、予め、剥離剤を用いたコーティング処理が施されているのが好ましい。これにより、押し子72の押圧操作により、疑似病変部材21に変形等が生じることなく、容易に外筒71内から疑似病変部材21を押し出すことができる。また、剥離剤としては、特に限定されず、例えば、シリコンオイル等を用いることができる。
以上のような工程を経て、右冠動脈4のSegment2内、すなわち、管の内腔部に、製造された疑似病変部材21が配置される。
また、第2の構成の疑似病変部材21を製造する場合、図11(a)に示すように、押し子72として先端部の外径がその先端側に向かって縮径するものを2つ用意し、前記工程[II]を以下のような工程[II’]に変更することにより、第2の構成の疑似病変部材21を製造することができる。
[II’] 先端部が先端側に向かって縮径する押し子72およびワイヤ74が挿入された状態の外筒71内に、疑似病変部材21の構成材料である塑性変形可能な材料を充填した後、さらに、もう1つの押し子72を、先に挿入された押し子72とは、反対側から挿入する。その後、この状態で、前記塑性変形可能な材料を成形することにより、外筒71内に、第2の構成の疑似病変部材21を得ることができる(図11(b)参照。)。
さらに、貫通孔23が縁部側に偏在している第2の構成の疑似病変部材21を製造する場合、図12のように、貫通孔73も押し子72内で縁部側に偏在するものを用いるようにすれば、かかる構成の疑似病変部材21を容易に製造することができる。
なお、訓練用生体モデル1の製造方法では、ワイヤ74に代えて、厚さが比較的薄い薄板を用いてもよい。
また、各接続部11は、Segment2である右冠動脈4をその両端部でそれぞれ着脱可能とするため、当該両端部にそれぞれ設けられている(図3参照)。すなわち、Segment2は、一端がSegment1の端部と、他端がSegment3の端部と、それぞれ、接続部11で接続され、これにより、右冠動脈4から着脱可能な構成となっている。
このような接続部11は、Segment2の部分で着脱可能で、かつ接続すべき各端部同士を液密に接続し得る構成であれば、いかなる構成のものであってもよいが、例えば、以下に示すような接続具12または接続機構16を用いた構成とすることにより、液密に接続することができる。各接続部11は、互いに同じ構成であるため、以下、一方(Segment1側)の接続部11にいて説明する。
<接続具>
図13に示すように、接続具12は、その中心部に軸方向(長手方向)に貫通する貫通孔14を有し、その全体形状がほぼ筒状をなす本体13と、本体13の長手方向のほぼ中央に設けられたフランジ15とを有するものである。
本体13は、その両端部で外径が縮径する縮径部を有しており、この縮径部の外径が右冠動脈4の内径よりも小さく設定され、縮径部よりもフランジ15側(内側)ではその外径が右冠動脈4の内径よりも大きく設定される。
かかる構成の接続具12に対して、右冠動脈4の先端(切断面)から右冠動脈4を、前記先端部からフランジ15側に向かって挿入すると、右冠動脈4の内径が拡径する。これにより、本体13の外周面と右冠動脈4の内周面とが互いに密着することとなるため、接続具12により、右冠動脈4の端部同士が液密に接続される。
接続具12の構成材料としては、特に限定されないが、各種樹脂材料が好適に用いられ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデン等の各種樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<接続機構>
図14に示すように、接続機構16は、切断された右冠動脈4の各先端(切断面)に設けられたフランジ17と、一方の右冠動脈4に回転可能に支持されたリング状部材(第1のリング状部材)18と、他方の右冠動脈4にフランジ17と接触するように固着されたリング状部材(第2のリング状部材)19とを有するものである。
リング状部材18には、フランジ17側に開放する開放部が形成されており、この開放部の内面には雌ネジ181が形成されている。
また、リング状部材19には、その外周面に雄ネジ191が形成され、さらに、このリング状部材19がリング状部材18に形成された開放部に挿入可能な大きさに設定されることにより、リング状部材19がリング状部材18の開放部に挿入(螺入)し得るようになっている。
かかる構成の接続機構16において、2つのフランジ17の端面同士を接触させた状態で、リング状部材18、19にそれぞれ形成された雌ネジ181と雄ネジ191とを螺合することにより、2つのフランジ17の端面同士が互いに密着することとなるため、接続機構16により、右冠動脈4の端部同士が液密に接続される。
接続機構16の各種構成部材の構成材料としては、前述した接続具12の構成材料と同様のものが好適に用いられる。
なお、冠動脈10の右冠動脈4のSegment2を除く部分の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、Segment2と同様の材料を用いることができる。また、この他、例えば、シリコーンエラストマー、シリコーンゲルのようなシリコーンゴム、ポリウレタンエラストマー、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のような熱硬化性樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンのような熱可塑性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特に、シリコーンゴムを用いるのが好ましい。
具体的には、シリコーンゴムで構成される冠動脈10の破断強度は、0.5〜3.0MPa程度であるのが好ましく、1.0〜2.0MPa程度であるのがより好ましい。
また、冠動脈10の破断伸びは、50〜300%程度であるのが好ましく、100〜200%程度であるのがより好ましい。
さらに、冠動脈10のショアA硬度(JIS K6253に規定)は、10〜40程度であるのが好ましく、25〜35程度であるのがより好ましい。
さらに、冠動脈10の引張弾性率は、0.01〜5.0MPa程度であるのが好ましく、0.1〜3.0MPa程度であるのがより好ましい。
また、冠動脈10の内径は、特に限定されないが、0.5〜10mm程度に設定されるのが好ましく、1.0〜5.0mm程度に設定されるのがより好ましい。
<<第2実施形態>>
前記第1実施形態は、訓練用生体モデル1を右冠動脈4側に適用した場合であったが、第2実施形態は、訓練用生体モデル1を左冠動脈3側に適用した場合となっている。以下、この第2実施形態について、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
すなわち、本実施形態(第2実施形態)では、図15に示すように、左冠動脈3のSegment6がSegment7とSegment9とに分岐する分岐部(バイファケーション)34に疑似病変部材21が配置され、この疑似病変部材21を介してSegment6、Segment7およびSegment9の途中にそれぞれ接続部11が設けられていること以外は、前記第1実施形態と同様の構成となっている。
このような分岐部34に配置される疑似病変部材21は、例えば、図16(a)に示すような第5の構成のものや、図16(b)に示すような第6の構成のものが挙げられる。
第5の構成の疑似病変部材21は、一端から他端に向かって拡径する筒状体をなし、その内部に形成される貫通孔23も同様に拡径すること以外は、前述した第2の構成の疑似病変部材21と同様の構成のものである。かかる構成の第5の構成の疑似病変部材21は、分岐部34の先端が、その口径が拡径する他端側に挿入するようにして配置される。
また、第6の構成の疑似病変部材21は、その口径が拡径する他端側でY字状に分岐し、その内部に形成される貫通孔23も同様にY字状に分岐するような構成となっていること以外は、前述した第5の構成の疑似病変部材21と同様の構成のものである。かかる構成の第6の構成の疑似病変部材21は、左冠動脈3の分岐部34と、疑似病変部材21のY字状をなす分岐部とが互いに当接するようにして配置される。
これら第5および第6の構成の疑似病変部材21では、通常、まず、バルーンカテーテル用ガイドワイヤ62をSegment6からSegment7側に挿通し、このバルーンカテーテル用ガイドワイヤ62に沿ってバルーンカテーテル63を進めることにより、バルーン64を疑似病変部材21の位置に到達させ、さらにこの位置でバルーン64を膨らませて、疑似病変部材21のSegment7側を拡張させる。次いで、バルーンカテーテル用ガイドワイヤ62をSegment6からSegment9側に挿通し、上記と同様にしてバルーン64を疑似病変部材21の位置に到達させた後、膨らませて、疑似病変部材21のSegment9側を拡張することにより、流路を確保する訓練が実施される。
このような訓練では、疑似病変部材21のSegment7側を拡張させる際に、バルーン64が疑似病変部材21のSegment9側をも押し潰し、これに起因して疑似病変部材21のSegment9側の端部が移動(プラークシフト)し、最終的にはSegment9が閉塞されてしまうことを回避するのに高度な技術が求められる。このような訓練に訓練用生体モデル1を適用すると、疑似病変部材21および左冠動脈3は、拡張により拡張前の形状に戻らない程度に塑性変形するものであるため、疑似病変部材21のSegment7側を拡張させた際に、Segment9に閉塞が生じているか否かの評価をより確実に行え得る。したがって、かかる訓練に訓練用生体モデル1を適用すれば、より質の高い訓練を確実に実施することができる。
なお、本実施形態では、接続部11は、前述の通り、疑似病変部材21を分岐部34に配置し得るように、Segment6、Segment7およびSegment9の途中にそれぞれ設けられ、これにより、接続部11において、分岐部34を含むSegment6、Segment7およびSegment9の一部が左冠動脈3から着脱可能な構成となっている(図15参照。)。
また、本実施形態で説明した第5の構成および第6の構成の疑似病変部材21も、前記第1実施形態で説明した疑似病変部材21と同様にして製造することができる。例えば、テーパ状に拡径する外筒と、外筒のテーパ状の内径に適合する外径を有し、先端が縮径する押し子と、貫通孔に挿通されるワイヤを用意し、疑似病変部材21の構成材料である塑性変形可能な材料を外筒内に充填することで形成することができる。また、図16(b)の分岐部34に設置する疑似病変部材213は、別途、塑性変形可能な材料で分岐部34を被覆することにより形成することができる。
なお、前記第1実施形態では、疑似病変部材21が右冠動脈4のSegment2(#2:Middle)に配置されている場合について説明し、前記第2実施形態では、疑似病変部材21が左冠動脈3のSegment6(#6)がSegment7(#7)とSegment9(#9)とに分岐する分岐部34に配置されている場合について説明したが、疑似病変部材21を配置する位置はかかる位置に限定されず、冠動脈の狭窄または閉塞が高確率で生じる好発部位に疑似病変部材21を配置して、好発部位に応じた訓練を実施すれば良い。なお、このような疑似病変部材21が配置される好発部位としては、例えば、図17に示す●印の位置が挙げられる。
以上のように、訓練用生体モデル1では、病変部位の物理的性質に近似した疑似病変部材21を、右冠動脈4や左冠動脈3の任意の位置に任意の形状で配置することができる。そして、この訓練用生体モデル1を用いて、さまざまな患者の病態に対応した訓練を実施できることから、術者は、患者に施す手術以外の場で、より高度な技術を習得することができる。
以上、本発明の訓練用生体モデルを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、訓練用生体モデルを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の訓練用生体モデルは、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、疑似管状組織については、代表的に冠動脈(血管)を模したもので説明したが、これに限定されず、例えば、食道、大腸、小腸、膵管、胆管、尿管、卵管、気管、気管支等を模したものであってもよい。
また、疑似管状組織は、単層のものに限定されず、複数の層が積層されたもの(積層体)であってもよい。
また、疑似管状組織の形状は、直線状をなしていてもよいし、一部または全体が湾曲していてもよい。