図1は、本発明の実施形態を説明するための、ドアロック装置を搭載した車両の一例を示す。
図1に示す車両は、車幅方向に開閉される四つのサイドドア1を備える4ドアタイプの自動車である。図1には、運転席のサイドドア1に設けられたドアロック装置2のみ示されているが、ドアロック装置2は四つのサイドドア1にそれぞれ設けられる。
ドアロック装置2は、ドアロックユニット3と、駆動ユニット4とで構成され、ドアロックユニット3及び駆動ユニット4は、サイドドア1の内部に配置されている。
ドアロックユニット3は、車両ボディに設けられたストライカ5と係合してサイドドア1を半閉状態及び全閉状態に保持可能なラッチ機構と、ラッチ機構によるサイドドア1の半閉状態及び全閉状態での保持を解除してサイドドア1を開扉可能とするオープン機構とを備える。
さらに、ドアロックユニット3は、サイドドア1を開扉可能とするオープン機構のオープン動作を無効化するロック機構と、ラッチ機構に連係して、サイドドア1を半閉状態にて保持するハーフラッチ状態からサイドドア1を全閉状態にて保持するフルラッチ状態にラッチ機構を遷移させるクローズ機構とをさらに備える。
駆動ユニット4は、ドアロックユニット3のクローズ機構を作動させるための駆動源を含む。
図2はサイドドア1の構成を示す。
サイドドア1は、インナーパネル10とアウターパネル11とを含む。
インナーパネル10には、サイドドア1の車内側の開扉操作源としてのインナーハンドル12が設けられており、また、サイドドア1を開扉不能にロックし、またロックを解除する施解錠操作がなされる施解錠操作源としてのロックノブ13が設けられている。
アウターパネル11には、サイドドア1の車外側の開扉操作源としてのアウターハンドル14(図1参照)が設けられており、また、サイドドア1を開扉不能にロックし、またロックを解除する施解錠操作がなされる施解錠操作源としてのキーシリンダ15(図1参照)が設けられている。
ドアロックユニット3及び駆動ユニット4は、インナーパネル10とアウターパネル11との間に形成されるサイドドア1の内部に配置され、インナーパネル10に固定されている。インナーパネル10にはサイドドア1の内部に通じる部品投入口16が設けられており、ドアロックユニット3及び駆動ユニット4は部品投入口16を通してサイドドア1の内部に挿入される。
ドアロックユニット3はサイドドア1の内部において部品投入口16から外れて設置されている。駆動ユニット4もまたサイドドア1の内部において部品投入口16から外れて設置されている。モータ等の駆動源を含む駆動ユニット4が、部品投入口16から外れて設置され、インナーパネル10によって覆われることにより、車内の静粛性が高まる。なお、ドアロックユニット3及び駆動ユニット4その他の部品がサイドドア1の内部に設置された後、部品投入口16は図示しない適宜な蓋部材によって閉じられる。
駆動ユニット4の動力はケーブル20を介してドアロックユニット3の上記クローズ機構に伝達される。インナーハンドル12の開扉操作はケーブル21を介してドアロックユニット3の上記オープン機構に伝達され、ロックノブ13の施解錠操作はケーブル22を介してドアロックユニット3の上記ロック機構に伝達される。また、アウターハンドル14の開扉操作はケーブル23を介してドアロックユニット3の上記オープン機構に伝達され、キーシリンダ15の施解錠操作は、キーリンク24(図3参照)を介してドアロックユニット3の上記ロック機構に伝達される。
図3及び図4はドアロックユニット3の構成を示す。なお、ドアロックユニット3がサイドドア1の内部に設置された状態での車高方向をドアロックユニット3の上下方向とする。
ドアロックユニット3は、金属製のカバープレート30及びベースプレート31、並びにカバープレート30及びベースプレート31に組み付けられた樹脂製のケース32及びボディ33に、上記ラッチ機構、オープン機構、ロック機構、及びクローズ機構を構成する種々の部品が組み付けられ、これらの部品が金属製又は樹脂製のカバーによって覆われて概略構成されている。カバープレート30には、サイドドア1の閉扉に伴ってストライカ5が進入するストライカ進入溝35が設けられている。
以下、ドアロックユニット3のラッチ機構、オープン機構、ロック機構、及びクローズ機構について順に説明する。
図5から図7はドアロックユニット3のラッチ機構及びオープン機構の構成を示す。
まず、ラッチ機構について説明する。ラッチ機構は、ラッチ40と、ラチェット50とを含む。
ラッチ40はラッチ軸42によって回動可能に支持されている。ラッチ40はストライカ5を受容可能なストライカ係合溝43を有し、ストライカ係合溝43の入口がストライカ進入溝35に重なるリリース位置P1(図8参照)から、ハーフラッチ位置P2(図9参照)を経て、フルラッチ位置P3(図10参照)まで回動可能である。ラッチ40はトーションばね44によってリリース位置P1に向けて付勢されている。
ラチェット50はラチェット軸51によって回動可能に支持されている。ラチェット50は、ラッチ40の外周に摺接する係合部52と、後述するオープン機構によって押圧される当接部53とを有する。ラチェット50は、トーションばね54により、ラッチ40の外周と係合部52との接触が維持される向きに付勢されている。
ラッチ40の外周部には、係合部52との係合部として、ハーフラッチ係合部45及びフルラッチ係合部46が設けられている。
図8から図10はラッチ機構の動作を示す。なお、サイドドア1は開扉されているものとする。
図8に示すように、ラッチ40はリリース位置P1にあり、サイドドア1が閉扉されるのに応じてストライカ5がカバープレート30のストライカ進入溝35に進入する。ストライカ進入溝35に進入したストライカ5は、ラッチ40のストライカ係合溝43に受容されてストライカ係合溝43の側面に当接し、ストライカ5によって押圧されたラッチ40は、リリース位置P1からハーフラッチ位置P2に向け、さらにはフルラッチ位置P3に向けて回動される。
図9は、サイドドア1を半閉状態にて保持したハーフラッチ状態のラッチ機構を示し、ラッチ40がハーフラッチ位置P2に移動された際には、ラッチ40のハーフラッチ係合部45とラチェット50の係合部52とが係合し、リリース位置P1に向けたラッチ40の回動は阻止される。
図10は、サイドドア1を全閉状態にて保持したフルラッチ状態のラッチ機構を示し、ラッチ40のフルラッチ係合部46とラチェット50の係合部52とが係合して、リリース位置P1に向けたラッチ40の回動は阻止される。
図9に示したハーフラッチ状態においては、ハーフラッチ係合部45と係合部52との係合が解除され、図10に示したフルラッチ状態においては、フルラッチ係合部46と係合部52との係合が解除されることにより、ラッチ40のリリース位置P1に向けた回動を伴ってストライカ5はストライカ進入溝35から脱出可能となり、サイドドア1が開扉可能となる。
次に、再度図5から図7を参照して、オープン機構について説明する。オープン機構は、オープンリンク61と、インナーハンドルレバー70(以下、IHレバーという)と、第1アウターハンドルレバー80(以下、第1OHレバーという)とを含む。
オープンリンク61は、ラチェット50の当接部53を押圧する押圧部62を有し、第2アウターハンドルレバー63(以下、第2OHレバーという)によって支持されている。
第2OHレバー63は、ラチェット50の下方に配置されており、カバープレート30に設けられた第2OHレバー軸64によって回動可能に支持されている。第2OHレバー63はオープンリンク61を支持する支持部65を有し、支持部65に支持されたオープンリンク61は当接部53の下方に配置されている。そして、オープンリンク61は第2OHレバー63の回動を伴って上下方向に移動可能である。第2OHレバー63は、トーションばね68により、オープンリンク61が下方に移動される向きに付勢されている。
さらに、支持部65はオープンリンク61を回動可能に支持し、支持部65に支持されたオープンリンク61は、押圧部62が当接部53に対向して配置されるアンロック位置P4(図9,10参照)と、押圧部62が当接部53から逸れて配置されるロック位置P5(図14,15,16参照)との間で回動可能である。オープンリンク61はトーションばね69によってアンロック位置P4に向けて付勢されている。
IHレバー70は、オープンリンク61より下側に配置され、ケース32(図4参照)に設けられた図示しないIHレバー軸によって回動可能に支持されている。IHレバー70にはインナーハンドル12(図2参照)の開扉操作を伝達するケーブル21が接続されており、IHレバー70はインナーハンドル12の開扉操作に応じてケーブル21に引っ張られて回動される。IHレバー70は、トーションばね72により、ケーブル21による引っ張りに基づく回動方向とは反対方向に付勢されている。
IHレバー70は、オープンリンク61の下方に配置された押圧部73を有する。押圧部73は、IHレバー70の回動に応じて上下方向に移動され、IHレバー70がインナーハンドル12の開扉操作に応じてケーブル21に引っ張られて回動された際には上方に移動される。
第1OHレバー80は、第2OHレバー63と略同じ上下方向位置にて第2OHレバー63に隣設されており、ボディ33(図4参照)に設けられた図示しない第1OHレバー軸によって回動可能に支持されている。第1OHレバー80にはアウターハンドル14(図2参照)の開扉操作を伝達するケーブル23が接続されており、第1OHレバー80はアウターハンドル14の開扉操作に応じてケーブル23に引っ張られて回動される。
第2OHレバー63には第2OHレバー軸64を挟んで支持部65と反対側に位置する当接部66が設けられており、第1OHレバー80は、当接部66の上方に配置された押圧部82を有する。押圧部82は、第1OHレバー80の回動に応じて上下方向に移動され、第1OHレバー80がアウターハンドル14の開扉操作に応じてケーブル23に引っ張られて回動された際には下方に移動される。
図11及び図12はオープン機構の動作を示す。なお、ラッチ機構はフルラッチ状態にあり、オープンリンク61はアンロック位置P4にあって、オープンリンク61の押圧部62がラチェット50の当接部53に対向して配置されているものとする。
図11は、インナーハンドル12が開扉操作された場合のオープン機構の動作を示し、IHレバー70がインナーハンドル12の開扉操作に応じてケーブル21に引っ張られて回動され、押圧部73がIHレバー70の回動に応じて上方に移動される。上方に移動された押圧部73はオープンリンク61に当接してオープンリンク61を押し上げる。
アンロック位置P4にあるオープンリンク61が押し上げられると、押圧部62が当接部53に当接して当接部53を押し上げる。当接部53が押し上げられることにより、ラチェット50が回動され、ラチェット軸51を挟んで当接部53と反対側に位置する係合部52は下方に移動される。これにより、係合部52がラッチ40の外周部から離反し、フルラッチ係合部46と係合部52との係合が解除される。フルラッチ係合部46と係合部52との係合が解除されると、ラッチ40がリリース位置P1に向けて回動可能となる。
図12は、アウターハンドル14が開扉操作された場合のオープン機構の動作を示し、第1OHレバー80がアウターハンドル14の開扉操作に応じてケーブル23に引っ張られて回動され、押圧部82が第1OHレバー80の回動に応じて下方に移動される。
下方に移動された押圧部82は第2OHレバー63の当接部66に当接して当接部66を押し下げる。当接部66が押し下げられると、第2OHレバー軸64を挟んで当接部66と反対側に位置する支持部65は上方に移動され、支持部65に支持されたオープンリンク61が押し上げられる。
アンロック位置P4にあるオープンリンク61が押し上げられると、押圧部62が当接部53に当接して当接部53を押し上げる。当接部53が押し上げられることにより、ラチェット50が回動され、係合部52は下方に移動され、フルラッチ係合部46と係合部52との係合が解除される。フルラッチ係合部46と係合部52との係合が解除されると、ラッチ40がリリース位置P1に向けて回動可能となる。
図11に示したインナーハンドル12の開扉操作に基づくオープン機構の動作、及び図12に示したアウターハンドル14の開扉操作に基づくオープン機構の動作に共通してオープンリンク61が押し上げられるが、インナーハンドル12とアウターハンドル14とは互いに独立を保ち、一方のハンドルの開扉操作に他方のハンドルは連動せず、インナーハンドル12及びアウターハンドル14の開扉操作は互いに干渉しない。
図11に示したインナーハンドル12の開扉操作に基づくオープン機構の動作において、オープンリンク61がIHレバー70によって押し上げられる際に、オープンリンク61を支持する第2OHレバー63もまた回動されるが、第2OHレバー63の当接部66は第1OHレバー80の押圧部82から離反して単独で下方に移動され、第1OHレバー80は静止状態に保たれる。したがって、アウターハンドル14は、インナーハンドル12の開扉操作に連動せず、静止状態に保たれる。
図12に示したアウターハンドル14の開扉操作に基づくオープン機構の動作において、オープンリンク61が第2OHレバー63を介して第1OHレバー80によって押し上げられる際に、オープンリンク61はIHレバー70の押圧部73から離反して単独で上方に移動され、IHレバー70は静止状態に保たれる。したがって、インナーハンドル12は、アウターハンドル14の開扉操作に連動せず、静止状態に保たれる。
そして、第1OHレバー80とオープンリンク61との間に第2OHレバー63が介在していることにより、アウターハンドル14と第1OHレバー80とを可撓なケーブル23によって連結し、ケーブル23の引っ張りによって第1OHレバー80を駆動してオープンリンク61を押し上げることが可能となる。
以上のオープン機構の動作説明では、ラッチ機構がフルラッチ状態にあるものとしたが、ハーフラッチ状態にある場合も、オープン機構の動作は同じである。
次に、ロック機構について説明する。
図13はロック機構の構成を示す。
ロック機構は、ロックレバー90と、モータ100及びウォームギヤ101並びにウォームホイール102と、キースライダ110とを備える。
ロックレバー90は、ケース32に設けられる図示しないロックレバー軸によって回動可能に支持されている。ロックレバー90はオープンリンク61と係合するガイド部92を有し、ガイド部92は、オープンリンク61と対向するロックレバー90の背面に設けられた上下方向に延びる凸条によって構成されている。オープンリンク61は、上述したオープン機構のオープン動作において、ガイド部92の側面を摺動して上下方向に移動される。
そして、ガイド部92に係合したオープンリンク61はロックレバー90の回動に応じて回動され、ロックレバー90は、ロックノブ13(図2参照)の施解錠操作を伝達するケーブル22、モータ100及びウォームギヤ101並びにウォームホイール102、そしてキーシリンダ15(図2参照)の施解錠操作が伝達されるキースライダ110によって回動される。
図14は、ロックノブ13の施解錠操作を伝達するケーブル22によってロックレバー90が回動される場合を示し、ロックレバー90にはケーブル22が接続されており、ロックレバー90はロックノブ13の施錠操作に応じてケーブル22によって回動される。ロックレバー90がケーブル22によって回動されることにより、ガイド部92に係合したオープンリンク61は、アンロック位置P4(図9,10参照)からロック位置P5に向けて回動される。
ロックレバー90は、オープンリンク61をアンロック位置P4に配置するアンセット位置(図14において二点鎖線で示される位置)と、オープンリンク61をロック位置P5に配置するセット位置(図14において実線で示される位置)との間で回動され、ロックレバー90の回動に伴って付勢方向を反転させるトーションばね93(図13参照)によって各位置に保持される。
図15は、モータ100及びウォームギヤ101並びにウォームホイール102によってロックレバー90が回動される場合を示し、ロックレバー90には、ウォームホイール102の側面に突設されたカム103と係合するカムフォロア94が設けられている。モータ100が正回転されてウォームギヤ101を介してウォームホイール102が回動され、ウォームホイール102の回動に応じてカム103がカムフォロア94に係合し、ロックレバー90が回動される。これにより、オープンリンク61はロック位置P5に向けて回動される。
図16は、キーシリンダ15の施解錠操作が伝達されるキースライダ110によってロックレバー90が回動される場合を示し、ロックレバー90には、キースライダ110に設けられた係合孔111に収容されるノックピン95(図13参照)が設けられている。キーシリンダ15にて施錠操作がなされると、キースライダ110が上方に移動されて係合孔111に収容されたノックピン95が押し上げられ、ロックレバー90が回動される。これにより、オープンリンク61はロック位置P5に向けて回動される。
ケーブル22、モータ100及びウォームギヤ101並びにウォームホイール102、又はキースライダ110いずれかによってロックレバー90が回動され、オープンリンク61がロック位置P5に移動されたものとして、図17に示すように、インナーハンドル12が開扉操作された場合に、IHレバー70によってオープンリンク61が押し上げられるが、ロック位置P5にあるオープンリンク61の押圧部62はラチェット50の当接部53から逸れて配置されているため、押圧部62と当接部53との当接は空振りし、ラッチ40のフルラッチ係合部46とラチェット50の係合部52との係合が維持される。
なお、押圧部62と当接部53との当接が空振りした後、IHレバー70のアンロック作用部74がロックレバー90の一部に当接し、ロックレバー90は上記アンセット位置に向けて回動される。インナーハンドル12が一旦戻されると、ロックレバー90はトーションばね93によって付勢されて上記アンセット位置に保持され、オープンリンク61がアンロック位置P4に配置される。この後、インナーハンドル12が再び開扉操作されると、フルラッチ係合部46と係合部52との係合が解除される。
同様にオープンリンク61がロック位置P5に移動されたものとして、図18に示すように、アウターハンドル14が開扉操作された場合に、第1OHレバー80によってオープンリンク61が押し上げられるが、押圧部62と当接部53との当接は空振りし、ラッチ40のフルラッチ係合部46とラチェット50の係合部52との係合が維持される。
次に、クローズ機構について説明する。
図19及び図20はクローズ機構の構成を示す。
クローズ機構は、駆動ユニット4(図1参照)の動力によって回動される駆動部材としてのクローズレバー120と、ラッチ機構に連係する連係部材としてのクローズアーム130と、クローズアーム130とラッチ機構との連係を解除する解除部材としてのキャンセルレバー140とを含む。
キャンセルレバー140は、クローズレバー120の回動中心となるクローズレバー軸121を支持する支持部141を有し、第2OHレバー63の下方に配置されている。クローズレバー120は、クローズレバー軸121にて支持部141に回動可能に支持されている。
クローズレバー120は、駆動ユニット4の動力が入力される係合ピン122と、クローズアーム130が相対回動可能に連結された連結軸123とを有する。係合ピン122と連結軸123とは、クローズレバー軸121を挟んで互いに反対側に配置されている。係合ピン122にはクローズリンク150を介して駆動ユニット4の動力が入力される。
クローズリンク150はクローズリンク軸151にてベースプレート31に回動可能に支持されている。クローズリンク150には駆動ユニット4の動力を伝達するケーブル20が接続され、クローズリンク150は駆動ユニット4の動作に応じてケーブル20に引っ張られて回動される。
クローズリンク150は係合ピン152を有する。係合ピン152は、クローズリンク150の回動に応じて上下方向に移動され、クローズリンク150が駆動ユニット4の動作に応じてケーブル20に引っ張られて回動された際には下方に移動される。下方に移動された係合ピン152は、クローズレバー120の係合ピン122に当接し、係合ピン122を押し下げる。
クローズレバー軸121を挟んで係合ピン122とは反対側に配置された連結軸123は、係合ピン122が押し下げられるのに応じて、係合ピン122とは逆に上方に移動される。クローズレバー120は、トーションばね124により、係合ピン122を上方に移動させ且つ連結軸123を下方に移動させる向きに付勢されている。
クローズアーム130は、連結軸123を介してクローズレバー120に相対回動可能に連結されており、且つ連結軸123から上方に延びて設置され、カバープレート30とボディ33(図4参照)との間でストライカ5のストライカ進入溝35への進入方向と交差する上下方向に並進移動可能に支持されている。
クローズアーム130の上端部には連係部131が設けられている。クローズレバー120が回動されて連結軸123が上方に移動され、連結軸123の上方への移動に応じてクローズアーム130が上方に移動されることにより、連係部131はラッチ40に連係される。ラッチ40の外周部には連係部131と連係可能な連係部47が設けられている。
クローズレバー120には、連結軸123を介して支持アーム160が相対回動可能にさらに連結されており、この支持アーム160は、同じく連結軸123を介してクローズレバー120に連結されたクローズアーム130に対しても相対回動可能である。
支持アーム160は支持アーム軸161にてカバープレート30に回動可能に支持されており、支持アーム軸161はキャンセルレバー140の支持部141によって支持されたクローズレバー軸121の軸線上に配置されている。クローズレバー120が回動されて連結軸123が上方に移動され、連結軸123の上方への移動に応じてクローズアーム130が上方に移動される際に、支持アーム160はクローズレバー120と一体に回動される。支持アーム160は、コイルばね162により、連結軸123を下方に移動させる向きに付勢されており、カバープレート30には、支持アーム160によって下方に移動された連結軸123に当接して連結軸123を支持する支持部36が設けられている。
図21から図24は、クローズ機構のクローズ動作を示す。なお、サイドドア1は開扉されているものとする。
図21に示す状態では、ラッチ40はリリース位置P1にあって、ラッチ40のストライカ係合溝43の入口はカバープレート30のストライカ進入溝35に重なっており、ラチェット50の係合部52は、ラッチ40のハーフラッチ係合部45及びフルラッチ係合部46のいずれにも係合していない。
ラッチ40の回動はラッチスイッチ170によって検出されている。ラッチスイッチ170は、ラッチ40がリリース位置P1からハーフラッチ位置P2を経てフルラッチ位置P3に到達する直前までON状態となり、ラッチ40がフルラッチ位置P3に到達した際にOFF状態となる。
ラチェット50の回動もまたラチェットスイッチ171によって検出されている。ラチェットスイッチ171は、係合部52とハーフラッチ係合部45又はフルラッチ係合部46とが係合している際にON状態となり、係合部52とハーフラッチ係合部45又はフルラッチ係合部46との係合が解除されている際にはOFF状態となる。
図22に示すように、サイドドア1が閉扉されるのに応じて、ストライカ5がカバープレート30のストライカ進入溝35に進入し、ストライカ5によって押圧されたラッチ40が、ハーフラッチ位置P2に向けて回動される。そして、ラッチ40がハーフラッチ位置P2に移動された時点で、ハーフラッチ係合部45と係合部52とが係合する。この時点でサイドドア1の閉扉が中断された場合に、ドアロック装置2の図示しない制御部によってクローズ機構のクローズ動作が開始される。
ラッチ40がハーフラッチ位置P2あることからラッチスイッチ170はON状態となっており、ハーフラッチ係合部45と係合部52とが係合していることからラチェットスイッチ171もまたON状態となっている。ラッチスイッチ170及びラチェットスイッチ171がいずれもON状態であることに基づき、ラッチ40がハーフラッチ位置P2にあり、ラッチ機構がハーフラッチ状態にあることが上記制御部によって検出され、上記制御部によって駆動ユニット4が作動される。
図23に示すように、駆動ユニット4の動作に応じてクローズリンク150がケーブル20に引っ張られて回動され、クローズリンク150の係合ピン152が下方に移動される。下方に移動された係合ピン152は、クローズレバー120の係合ピン122に当接し、係合ピン122を押し下げる。クローズレバー120のクローズレバー軸121はキャンセルレバー140の支持部141によって支持されており、係合ピン122が押し下げられるのに応じて、クローズレバー軸121を挟んで係合ピン122とは反対側にあるクローズレバー120の連結軸123が上方に移動され、連結軸123の上方への移動に応じてクローズアーム130が上方に移動される。
クローズアーム130が上方に移動されることにより、クローズアーム130の連係部131がラッチ40の連係部47に当接し、連係部47が押し上げられる。連係部47が押し上げられるのに応じてラッチ40はフルラッチ位置P3に向けて回動される。ラッチ40のフルラッチ位置P3に向けた回動に応じて、ストライカ5がラッチ40に押圧されてストライカ進入溝35の奥に押し込まれ、相対的にサイドドア1が閉じられる。
図24に示すように、ラッチ40がフルラッチ位置P3に移動された時点で、フルラッチ係合部46と係合部52とが係合する。ラッチ40がフルラッチ位置P3あることからラッチスイッチ170はOFF状態となっており、フルラッチ係合部46と係合部52とが係合していることからラチェットスイッチ171はON状態となっている。ラッチスイッチ170がOFF状態でありラチェットスイッチ171がON状態であることに基づき、ラッチ機構がフルラッチ状態に遷移したことが上記制御部によって検出される。そして、フルラッチ状態が検出されることにより、上記制御部によって駆動ユニット4が停止され、その後、駆動ユニット4が逆動作される。
駆動ユニット4の逆動作に応じてケーブル20によるクローズリンク150の引っ張りが解除され、トーションばね124によって付勢されたクローズレバー120、及びコイルばね162によって付勢された支持アーム160が、図21に示した初期位置にそれぞれ復帰し、併せてクローズアーム130もまた図21に示した初期位置に復帰する。以上により、クローズ機構のクローズ動作が完了する。
次に、再度図19及び図20を参照して、上記クローズ動作をキャンセルさせるためのクローズ機構の構成について説明する。
キャンセルレバー140はキャンセルレバー軸142にてカバープレート30に回動可能に支持されており、支持部141がクローズレバー軸121の直下に配置されるアクティブ位置P6(図21参照)と、支持部141がクローズレバー軸121の直下から逸れて配置されるキャンセル位置P7(図26参照)との間で回動可能である。キャンセルレバー140はコイルばね143によってアクティブ位置P6に向けて付勢されている。
キャンセルレバー140は当接部144を有する。第2OHレバー63には当接部144に当接可能な押圧部67が設けられている。オープン機構の上述したオープン動作における第2OHレバー63の回動に応じて、押圧部67が当接部144に当接し、キャンセルレバー140はキャンセル位置P7に向けて回動される。
図25から図27は、クローズ動作がキャンセルされる場合のクローズ機構の動作を示す。なお、ラッチ機構のハーフラッチ状態を検出した上記制御部によって駆動ユニット4が作動されたものとする。
図23に示したように、駆動ユニット4の動作に応じてクローズアーム130が上方に移動されることにより、クローズアーム130の連係部131がラッチ40の連係部47に当接し、連係部47が押し上げられる。連係部47が押し上げられるのに応じてラッチ40はハーフラッチ位置P2からフルラッチ位置P3に向けて回動されるが、ラッチ40がフルラッチ位置P3に到達するより前のタイミングでサイドドア1の開扉操作がなされることにより、クローズ動作がキャンセルされる。なお、本例では、サイドドア1の開扉操作源の一つであるアウターハンドル14にて開扉操作がなされるものとする。
図25に示すように、アウターハンドル14の開扉操作に応じて第1OHレバー80がケーブル23に引っ張られて回動されると、オープン機構の上述したオープン動作の一環として、第1OHレバー80の回動に応じて第2OHレバー63も回動される。第2OHレバー63の回動に応じて押圧部67が当接部144に当接し、キャンセルレバー140がアクティブ位置P6からキャンセル位置P7に向けて回動される。
第2OHレバー63の回動は第2OHレバースイッチ172によって検出されている。第2OHレバースイッチ172は、第2OHレバー63が図21に示した初期位置にあるときにON状態となり、第2OHレバー63が回動された際にはOFF状態となる。
図26に示すように、キャンセルレバー140がキャンセル位置P7に移動された時点で、支持部141によるクローズレバー軸121の支持が解除される。クローズレバー軸121の支持を失ったクローズレバー120、及び連結軸123を介してクローズレバー120に連結されたクローズアーム130は、連結軸123を下方に移動させる向きに付勢されている支持アーム160によって一体に引き下ろされる。
クローズアーム130が引き下ろされるのに応じて、クローズアーム130の連係部131はラッチ40の連係部47から離間する。そして、支持アーム160によって引き下ろされたクローズレバー120は、以後、係合ピン122の押し下げに対し、カバープレート30の支持部36に支持された連結軸123を回動中心として回動される。このため、係合ピン122の押し下げに対して連結軸123が上方に移動されることはなく、クローズアーム130が上方に移動されることもない。
以上により、クローズアーム130の連係部131がラッチ40の連係部47から離間した状態が維持され、ラッチ40のフルラッチ位置P3に向けた回動が停止され、クローズ機構のクローズ動作がキャンセルされる。同時に、アウターハンドル14の開扉操作に基づくオープン機構の上述したオープン動作により、ハーフラッチ係合部45と係合部52との係合は解除されており、サイドドア1は開扉可能である。
図27に示すように、アウターハンドル14が開扉操作から解放されると、ケーブル23による第1OHレバー80の引っ張りが解除され、トーションばね68によって付勢された第2OHレバー63が図21に示した初期位置に復帰し、第2OHレバースイッチ172がOFF状態からON状態に切り替わる。クローズ機構のクローズ動作が開始された後に第2OHレバースイッチ172がOFF状態からON状態に切り替わることに基づき、クローズ機構のクローズ動作がキャンセルされたことが上記制御部によって検出される。そして、クローズ動作のキャンセルが検出されることにより、上記制御部によって駆動ユニット4が停止され、その後、駆動ユニット4が逆動作される。
駆動ユニット4の逆動作に応じてケーブル20によるクローズリンク150の引っ張りが解除され、トーションばね124によって付勢されたクローズレバー120、及びコイルばね143によって付勢されたキャンセルレバー140が、図21に示した初期位置にそれぞれ復帰する。クローズレバー120及びキャンセルレバー140の初期位置への復帰に伴い、クローズレバー軸121が持ち上げられて再びキャンセルレバー軸142によって支持される。以上により、クローズ機構のキャンセルされた場合のクローズ動作が完了する。
ここまで、サイドドア1の開扉操作源の一つであるアウターハンドル14にて開扉操作がなされるものとしてクローズ機構のクローズ動作がキャンセルされる場合について説明したが、サイドドア1のもう一つの開扉操作源であるインナーハンドル12にて開扉操作がなされた場合にも、第2OHレバー63は同様に回動され、クローズ機構のクローズ動作もまた同様にキャンセルされる。
以上説明したドアロック装置2のクローズ機構では、上方に移動されることによってラッチ40に連係するクローズアーム130を回動させてクローズアーム130をラッチ40から外すことに替え、クローズアーム130を上方に移動させるクローズレバー120のクローズレバー軸121を支持したキャンセルレバー140を回動させてクローズレバー軸121がキャンセルレバー140によって支持された状態を解消し、これによりクローズレバー120及びクローズアーム130を一体に引き下ろしてクローズ機構のクローズ動作をキャンセルしており、クローズ動作をキャンセルする際のインナーハンドル12及びアウターハンドル14の開扉操作を軽くすることが可能である。
そして、クローズ動作をキャンセルする際に、クローズレバー軸121がキャンセルレバー140によって支持された状態を解消してクローズレバー120及びクローズアーム130を一体に引き下ろすことから、クローズレバー軸121がキャンセルレバー140によって再び支持されるようにクローズレバー軸121を持ち上げるだけでクローズレバー120及びクローズアーム130を初期位置に復帰させることができる。これにより、クローズアーム130をクローズレバー120に対して元の位置に復帰させる追加の構成が不要となり、クローズ機構の構成を簡潔なものとして動作の確実性を高めることができる。
また、クローズレバー120及びクローズアーム130の連結部である連結軸123を回動可能な支持アーム160によって支持しており、引き下ろされる際のクローズレバー120及びクローズアーム130の移動を共通の支持アーム160によって規制することができる。これにより、クローズ機構の構成を一層簡潔なものとして動作の確実性を高めることができる。さらに、キャンセルレバー140によって支持されたクローズレバー軸121の軸線上に支持アーム軸161を配置することによってクローズ機構を小型化できる。
また、クローズアーム130は上方に移動されてラッチ40と連係するところ、クローズ動作をキャンセルする際にはクローズアーム130を逆に引き下ろしてしており、クローズアーム130を回動させてクローズアーム130をラッチ40から外す場合に比べてクローズ機構を小型化できる。