<第1実施形態>
本発明は、固定子が回転対称形状とされた回転電機、および固定子がリニア形状とされたリニアモータの両方で実施可能である。以降では、主に回転電機の実施形態について説明し、リニアモータの実施形態についても適宜補足説明する。まず、図1〜図4を参考にして、本発明の第1実施形態のモータ装置である三相回転電機1の全体構成を模式的に説明する。
第1実施形態の三相回転電機1は、例えば、ハイブリッド車両に搭載される。車載の三相回転電機1は、電動機として動作することにより車両の走行を駆動し、制動時には発電機として動作することにより回生発電を行う。図1は、第1実施形態のモータ装置である三相回転電機1の全体構成を模式的に示す正面図であり、軸線AXの延長方向から見た電気角の360°の範囲を示している。三相回転電機1は、固定子2を外周側に備え、移動子に相当する回転子3を内周側に備える。三相回転電機1は、軸線AXの周りに概ね回転対称なインナーロータタイプのラジアル空隙型に構成されている。
固定子2は、固定子鉄芯4および固定子巻線5(図3参照)を有する。固定子鉄芯4は、略円筒状に形成されている。固定子鉄芯4は、ケイ素鋼板などの電磁鋼板を打ち抜いて形成した薄板状の鉄芯材料を、軸線AX方向に複数枚積層して形成できる。固定子鉄芯4は、外周側を周回する環状のバックヨーク部41、およびバックヨーク部41から周方向内向きに突設されて周方向に並ぶティース42をもつ。ティース42は、磁極が形成される先端の表面積を拡げる図略の先端拡大部を有していてもよい。
各ティース42の間には、溝形状のスロット43がそれぞれ形成される。スロット43は、軸線AX方向に延在するとともに、径方向に溝口部48(溝の入り口)から溝底部49まで達する溝深さを有する。スロット43の内部空間のうち溝口部48に近い径方向内側の空間領域が溝口部側位置44である。スロット43の内部空間のうち溝底部49に近い径方向外側の空間領域が溝底部側位置45である。スロット43の溝口部48は、前述したティース42の先端拡大部によって狭められていてもよい。また、スロット43は、溝口部48が開口していない閉スロットであってもよい。
ティース42およびスロット43の個数nsは、各48個とされている。図1に示された12個のスロット43を、図中の時計回りに第1スロットS1から第12ロットS12と呼称する。さらには、図示されていない範囲のスロット43を、時計回りに第13スロットS13から第48スロットS48と呼称する。
固定子巻線5は、複数のコイルが接続されて構成される。図1には、1個のコイル51が例示されており、実際には複数のコイルが径方向に重なって配置される。コイル51は、例えば、銅線の表面をエナメルなどの絶縁層で被覆した導体を巻装して形成する。導体の断面形状は、特に限定されず、例えば丸線や角線など任意の形状を採用できる。また、複数の細い素線を組み合わせた並列導体を用いてもよい。並列導体を用いることにより、単一導体の場合と比較して、固定子巻線5に発生する渦電流損を低減することができ、効率が向上する。さらに、曲げ加工に要する力を低減できるので、巻装作業性や後述する組み込み作業性が向上する。
回転子3は、固定子2の内周側にわずかなエアギャップAGを挟んで同軸に配置される。回転子3は、回転子鉄芯31、出力軸32、および、4対の永久磁石33N、33Sを有する。回転子鉄芯31は、略円筒状に形成されている。回転子鉄芯31は、ケイ素鋼板などの電磁鋼板を打ち抜いて形成した薄板状の鉄芯材料を、軸線AX方向に複数枚積層して形成できる。回転子鉄芯31の内周側に、出力軸32が一体的に設けられる。出力軸32は、図略のケーシングに設けられた軸受けによって回転可能に支承される。
回転子鉄芯31の外周面に近接する位置の周方向に並んで、8個の埋込み孔が形成されている。埋込み孔には、合計4対の永久磁石33N、33Sが埋め込まれている。永久磁石33N、33Sは、回転子鉄芯31の外周に向かう方向に磁極が配置される。これにより、回転子鉄芯31の外周面に、N磁極34NおよびS磁極34Sからなる磁極対の4組が形成される。N磁極34NおよびS磁極34Sの総磁極数nm=8である。N磁極34NおよびS磁極34Sが占める中心角θは、それぞれ機械角の45°となる。したがって、N磁極34NおよびS磁極34Sからなる1磁極対は、機械角の90°を占め、かつ電気角の360°を占める。
図2は、固定子2の内周側を軸線AXから見た図であり、円筒面が平面化されて示されている。図2において、コイル51は、模式的に六角形で示されている。コイル51は、一対の第5および第11スロットS5、S11を通って巻装されており、その巻装回数Nwは限定されない。コイル51の第5および第11スロットS5、S11内に収容される部位をそれぞれコイルサイド511と呼称する。また、スロット43の外部で一対のコイルサイド511の端部同士を接続する部位をそれぞれコイルエンド512と呼称する。コイルエンド512の実際の形状は、図示される六角形の2辺とは多少異なる。
図1に示されるように、コイル51の一対のコイルエンド512の各々は、第5スロットS5の溝口部側位置44から第11スロットS11の溝底部側位置45に渡るように配置されている。一対のコイルエンド512の各々がスロット43の同じ位置を渡ることは、明らかである。このため、以降では「一対のコイルエンドの各々は」を「コイルエンドは」と略記し、「渡るように配置されている」を「渡っている」と略記する。
図3は、三相の固定子巻線5の結線方法の一例を示した結線図である。図示される一例で、U相、V相、およびW相固定子巻線5U、5V、5WはY結線とされており、Δ結線とされてもよい。U相、V相、およびW相固定子巻線5U、5V、5Wは、それぞれ4組のU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの並列接続によって構成されており、直列接続によって構成されてもよい。U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wは、1磁極対に対向する角度範囲のスロット43に渡って巻装される。各相の4組のU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wは、固定子鉄芯4上に機械角の90°ピッチで回転対称に配置される。U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wは、それぞれ複数のコイルが直列接続されて構成される。
ここで、三相回転電機1の毎極スロット数N1は、スロット43の個数ns=48を総磁極数nm=8で除算して求められ、6となる。三相回転電機1の毎極毎相スロット数N2は、毎極スロット数N1を相数3で除算して求められ、2となる。つまり、三相回転電機1は、整数スロット構成となっている。
また、図1および図2に例示されたコイル51は、スロット43の6箇所分だけ離れて一対のコイルサイド511が巻装されているので、コイルピッチPc=6である。コイル51は、コイルピッチPcが毎極スロット数N1に等しい全節巻コイルである。図面による説明は省略するが、毎極スロット数N1よりもコイルピッチPcが長いコイルは、長節巻コイルであり、毎極スロット数N1よりもコイルピッチPcが短いコイルは、短節巻コイルである。
以降の説明では、図1および図2を用いて説明した固定子2および回転子3の構成を簡略化して、図4のように表示する。図4は、固定子2および回転子3の略回転対称形状の構成の一部を平面化しつつ簡略化して表示した一例の図である。図4のコイル51に示された「丸印にクロス」および「丸印にドット」は、導体の巻装方向R(図2で反時計回りの方向)を示す。すなわち、「丸印にクロス」は、図4の紙面表側から裏側へと導体が巻装されていることを示し、「丸印にドット」は、図4の紙面裏側から表側へと導体が巻装されていることを示す。
三相回転電機1の固定子2のコイル構成の説明に移る。図5は、第1実施形態の三相回転電機1の固定子2のコイル構成を模式的に示した図である。図5には、1磁極対よりも広めの角度範囲、すなわち電気角の360°よりも広めの角度範囲が示されている。また、図5だけでなく以降の各図において、U相コイルが実線で示され、V相コイルが一点鎖線で示され、W相コイルが破線で示されている。
第1実施形態において、U相極対コイル52Uは、直列接続されたU相長節巻コイル53UおよびU相短節巻コイル54Uからなる。同様に、V相極対コイル52Vは、直列接続されたV相長節巻コイル53VおよびV相短節巻コイル54Vからなり、W相極対コイル52Wは、直列接続されたW相長節巻コイル53WおよびW相短節巻コイル54Wからなる。長節巻コイル53U、53V、53WのコイルピッチPc=7であり、短節巻コイル54U、54V、54WのコイルピッチPc=5である。長節巻コイル53U、53V、53W、および短節巻コイル54U、54V、54Wは、巻装回数Nw1が相互に一致している。また、長節巻コイル53U、53V、53W、および短節巻コイル54U、54V、54Wの巻装方向Rも、相互に一致している(図6参照)。
コイルの配置位置について詳述すると、U相長節巻コイル53Uのコイルエンドは、第1スロットS1の溝口部側位置44から第8スロットS8の溝底部側位置45に渡っている。U相短節巻コイル54Uのコイルエンドは、第2スロットS2の溝口部側位置44から第7スロットS7の溝底部側位置45に渡っている。
V相コイル53V、54Vの配置位置は、U相コイル53U、54Uの配置位置を図5の右方向に4スロット分だけシフトしたものとなっている。V相長節巻コイル53Vのコイルエンドは、第5スロットS5の溝口部側位置44から第12スロットS12の溝底部側位置45に渡っている。V相短節巻コイル54Vのコイルエンドは、第6スロットS6の溝口部側位置44から第11スロットS11の溝底部側位置45に渡っている。
W相コイル53W、54Wの配置位置は、U相コイル53U、54Uの配置位置を図5の右方向に8スロット分だけシフトしたものとなっている。W相長節巻コイル53Wのコイルエンドは、第9スロットS9の溝口部側位置44から第16スロットS16の溝底部側位置45に渡っている。W相短節巻コイル54Wのコイルエンドは、第10スロットS10の溝口部側位置44から第15スロットS15の溝底部側位置45に渡っている。
別のW相長節巻コイル53Wのコイルエンドは、図5に見えない第45スロットS45の溝口部側位置44から第4スロットS4の溝底部側位置45に渡っている。別のW相短節巻コイル54Wのコイルエンドは、図5に見えない第46スロットS46の溝口部側位置44から第3スロットS3の溝底部側位置45に渡っている。
第1実施形態において、固定子巻線5は、12個の長節巻コイル53U、53V、53W、および12個の短節巻コイル54U、54V、54Wからなる。そして48個のスロット43(S1〜S48)の各々には、1個のコイル53U、53V、53W、54U、54V、54Wの片側のコイルサイドのみが配置される。逆に言えば、長節巻コイル53U、53V、53W、および短節巻コイル54U、54V、54Wは、コイルサイドの各々がスロット43の全体を占有するフルコイルである。
また、図5に示されるように、回転子3の特定の回転位相において、U相長節巻コイル53UおよびU相短節巻コイル54Uは、N磁極34Nに対向する。これは、U相長節巻コイル53Uが占める角度範囲内にN磁極34Nの全体が位置することを意味し、N磁極34Nが占める角度範囲内にU相短節巻コイル54Uの全体が位置することを意味する。さらに、コイルと磁極とが完全な角度範囲の包含関係を有さずとも、両者の占める角度範囲の大部分が相互に重なっている位置関係を「対向する」と定義付ける。長節巻コイル53V、53Wおよび短節巻コイル54V、54Wが一方の磁極に対向する点は、回転子3の異なる回転位相において、V相およびW相にもあてはまる。つまり、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを構成するコイルは、一方の磁極に対向可能に集約して配置されており、換言すれば、集約構成となっている。
U相長節巻コイル53Uのコイルエンドと、U相短節巻コイル54Uのコイルエンドとは、近接して並行配置される。図6は、U相極対コイル52Uを構成するU相長節巻コイル53UおよびU相短節巻コイル54Uのコイルエンドの2階配置を模式的に示した図である。図示されるように、U相長節巻コイル53Uのコイルエンド532は、ティース42から離隔して配置される。一方、U相短節巻コイル54Uのコイルエンド542は、U相長節巻コイル53Uのコイルエンド532と、ティース42との間に配置される。つまり、両コイル53U、54Uのコイルエンド532、542は、軸線AX方向に2階建てに配置される。同様に、V相の各2個のコイル53V、54Vのコイルエンド、およびW相の各2個のコイル53W、54Wのコイルエンドも、軸線AX方向に2階建てに配置される。
なお、リニアモータの固定子は、軌道を構成するリニア形状とされる。そして、軌道に沿って多数のスロット43が形成され、軌道に沿って多数のU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wが列設される。一方、リニアモータの可動子は、軌道に沿って移動可能に支承されたリニア移動子とされる。リニア移動子には、磁極対(図5の例では4組の磁極対)が直線的に配置される。リニアモータの固定子の構成は、回転対称形状とリニア形状の違いは有っても、三相回転電機1と同様に考えることができる。つまり、図5は、リニアモータの固定子およびリニア移動子の一部を簡略化して表示した図を兼ねている(第2実施形態以降も同様)。ただし、リニアモータの毎極スロット数N1および毎極毎相スロット数N2は、リニア移動子(図5の例では4組の磁極対)に対向する範囲のスロット43の個数nsに基づいて求められる。
次に、三相回転電機1に関して、固定子巻線5を固定子鉄芯4のスロット43に組み込む作業の方法について説明する。図7は、固定子巻線5の組み込み作業において、始めに組み込むコイルを簡略化して示す図である。図8は、固定子巻線5の組み込み作業において、最後のコイルを組み込む直前に、組み込み済みのコイルのコイルサイドを一旦スロット43の外部に出した状態を示す図である。図9は、固定子巻線5の組み込み作業において、最後のコイルを組み込んだ直後の状態を示す図である。また、図10は、一旦スロット43の外部に出すコイルサイドの数量を図8よりも低減できる代替方法を示す図である。
固定子巻線5を構成する各相の4組の長節巻コイル53U、53V、53Wおよび短節巻コイル54U、54V、54Wは、まず、固定子鉄芯4を模した巻装用治具に導体が巻装されてそれぞれ形成される。そして、図7の矢印P1に示されるように、長節巻コイル53U、53V、53Wおよび短節巻コイル54U、54V、54Wは、図中の左側から右側へと順番に組み込まれる。ただし、組み込み始めおよび組み込み終わりのコイルは、特に限定されない。
ここでは、始めに第1組のW相長節巻コイル53WおよびW相短節巻コイル54Wを組み込み、終わりに第4組のV相長節巻コイル53VおよびV相短節巻コイル54Vを組み込む場合を例にして説明する。固定子巻線5の組み込み作業では、適宜組み込み用治具を用いることができる。
図7に示されるように、作業者は、始めに第1組のW相長節巻コイル53WならびにW相短節巻コイル54Wの一対のコイルサイドを、それぞれ第9および第16スロットS9、S16、ならびに、第10および第15スロットS10、S15に挿入して組み込む。作業者は、2番目に、第1組のU相長節巻コイル53UならびにU相短節巻コイル54Uの一対のコイルサイドを、それぞれ第13および第20スロットS13、S20、ならびに、第14および第19スロットS14、S19に挿入して組み込む。作業者は、3番目に、第1組のV相長節巻コイル53VならびにV相短節巻コイル54Vの一対のコイルサイドを、それぞれ第17および第24スロットS17、S24、ならびに、第18および第23スロットS18、S23に挿入して組み込む。以下、図7の左側から右側へと順番に、作業者は、長節巻コイル53U、53V、53Wおよび短節巻コイル54U、54V、54Wをスロット43に組み込んでゆく。
ここで、短節巻コイル54U、54V、54Wのコイルエンドを跨いで長節巻コイル53U、53V、53Wのコイルエンドが配置されるので、コイルエンドの2階建て配置が可能となっている。これによれば、短節巻コイル54U、54V、54Wおよび長節巻コイル53U、53V、53Wを入れ子にして保持できるので、両コイルを一括して組み込むことが容易となり、組み込み作業性が良好となる。
作業者は、11番目に、第4組のU相長節巻コイル53UならびにU相短節巻コイル54Uの一対のコイルサイドを、それぞれ第1および第8スロットS1、S8、ならびに、第2および第7スロットS2、S7に挿入して組み込む。最後の12番目に組み込む第4組のV相長節巻コイル53VおよびV相短節巻コイル54Vの組み込み位置は、第5および第6スロットS5、S6の溝口部側位置44と第12および第11スロットS12、S11の溝底部側位置45の間である。しかしながら、第1組のW相長節巻コイル53WおよびW相短節巻コイル54Wの片側のコイルサイドは、既に第9および第10スロットS9、S10の溝口部側位置44に組み込まれており、組み込み作業の邪魔になる。
このため、図8に示されるように、作業者は、組み込み済みの第1組のW相長節巻コイル53WおよびW相短節巻コイル54Wの片側のコイルサイドを、一旦第9および第10スロットS9、S10の外部に出す。このとき、組み込み済みの第1組のU相長節巻コイル53UおよびU相短節巻コイル54Uの片側のコイルサイドも連鎖的に邪魔になる場合がある。さらに、組み込み済みの第1組のV相長節巻コイル53VおよびV相短節巻コイル54Vの片側のコイルサイドも連鎖的に邪魔になる場合がある。
作業者は、邪魔になる範囲内のコイルサイドを、一旦スロット43の外部に出す。図8の例で、第9、第10、第13、第14、および第17スロットS9、S10、S13、S14、S17から、それぞれコイル53W、54W、53U、54U、53Vの片側のコイルサイドが一旦スロット43の外部に出される。
これにより、図9に示されるように、作業者は、第4組のV相長節巻コイル53VならびにV相短節巻コイル54Vの一対のコイルサイドを、それぞれ第5および第12スロットS5、S12、ならびに、第6および第11スロットS6、S11に挿入して組み込むことができる。次に、作業者は、一旦スロット43の外部に出したコイル53W、54W、53U、54U、53Vの片側のコイルサイドを元のスロット43に再度組み込む(矢印M1、M2参照)。
また、コイルの剛性が比較的小さくて一時的な変形が許容される場合に、作業者は、図8に代えて、図10に示される代替方法を採用できる。この代替方法で、作業者は、組み込み済みの第1組のW相長節巻コイル53WおよびW相短節巻コイル54Wの片側のコイルサイドを一旦第9および第10スロットS9、S10の外部に出す。さらに、作業者は、片側のコイルサイドが第5スロットS5から第12スロットS12の間に位置しないように、W相長節巻コイル53WおよびW相短節巻コイル54Wを一時的に曲げ加工する。作業者は、邪魔になる範囲内のコイルサイドを一旦スロット43の外部に出して、一時的に曲げ加工する。
図10の例で、第9、第10、および第13スロットS9、S10、S13からW相長節巻コイル53W、W相短節巻コイル54W、およびU相長節巻コイル53Uの片側のコイルサイドが一旦スロット43の外部に出されるとともに、曲げ加工される。これにより、作業者は、第4組のV相長節巻コイル53VならびにV相短節巻コイル54Vの一対のコイルサイドを、それぞれ第5および第12スロットS5、S12、ならびに、第6および第11スロットS6、S11に挿入して組み込むことができる。次に、作業者は、一旦スロット43の外部に出したコイル53W、54W、53Uの片側のコイルサイドを元のスロット43に再度組み込みながら、曲がりを元の形状に戻す。代替方法によれば、一旦スロット43の外部に出すコイルサイドの数量は、図8の5個から図10の3個に削減される。
コイルの組み付けを終えた後、作業者は、付帯作業を行う。付帯作業には、コイルエンドの整形加工作業、相間絶縁紙の装着作業、およびコイルの接続作業などがある。図11は、組み付け直後のコイルエンドの断面形状を模式的に示す図5のJ−J矢視断面図である。図12は、コイルエンドの整形加工作業および相間絶縁紙の装着作業を終えた後のコイルエンドの断面形状を模式的に示す断面図である。図11および図12には、長節巻コイル53U、53V、53Wおよび短節巻コイル54U、54V、54Wの巻装回数Nw1=8ターンの場合が例示されている。
図11に示されるように、組み込み直後の長節巻コイル53U、53V、53Wおよび短節巻コイル54U、54V、54Wのコイルエンドは、前述した2階建てに配置されている。各コイルエンドは、例えば、スロット43の溝幅方向に1スロットピッチ分を占有して導体が2ターン並び、軸線AX方向に導体が4ターン並んでいる。そして、コイルエンドの異相間には、3スロットピッチ分の隙間が有る。したがって、この隙間を有効利用することで、コイルエンドの軸線AX方向の高さHAの低減が可能になる。
作業者は、コイルエンドの2階建ての配置を維持しつつ整形加工して、スロット43の溝幅方向の4スロットピッチ分に導体を8ターン並べることができる。これにより、各コイルエンドは、軸線AX方向の導体が1ターンのみとなり、スロット43の溝幅方向に拡がって扁平化される。整形加工作業の結果、図12に示されるコイルエンドの断面形状が得られる。整形加工後のコイルエンドの高さHBは、組み付け直後のコイルエンドの高さHAの概ね25%まで低減することが可能である。したがって、小型化に不向きな2階建ての不利を解消して、コイルエンドをコンパクト化できる。
コイルエンドの整形加工作業の途中または終わりに、作業者は、コイルエンドの異相間に相間絶縁紙9の装着作業を行う。相間絶縁紙9は、U相コイル53U、54UとV相コイル53V、54Vの間、ならびに、V相コイル53V、54VとW相コイル53W、54Wの間に必要である。さらに、相間絶縁紙9は、W相コイル53W、54Wと次のU相コイル53U、コイル54Uの間にも必要である。したがって、相間絶縁紙9の必要箇所数は、1磁極対あたり3箇所となる。
この後、作業者は、コイルの接続作業を行う。作業者は、長節巻コイル53U、53V、53Wと、短節巻コイル54U、54V、54Wを直列接続してU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wとする。作業者は、次に、各相の4組のU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを並列接続して、それぞれU相、V相、およびW相固定子巻線5U、5V、5Wとする。作業者は、さらに、中性点の接続および三相の相端の配策を行う。
次に、第1実施形態の三相回転電機1の作用について、2種類の従来技術と比較して説明する。図13は、第1の従来技術の三相回転電機に係り、固定子2Xを構成するコイルのコイルエンドが同心円孤状に配置された例を示す図である。第1の従来技術の固定子2Xの極対コイルは、構成自体が第1実施形態と同じで、スロット43内の配置位置が異なる。詳述すると、U相長節巻コイル53Uのコイルエンドは、第1および第8スロットS1、S8の溝底部側位置45同士を渡っている。U相短節巻コイル54Uのコイルエンドは、第2および第7スロットS2、S7の溝底部側位置45同士を渡っている。
また、V相長節巻コイル53Vのコイルエンドは、第5および第12スロットS5、S12の溝深さ方向の中間位置同士を渡っている。V相短節巻コイル54Vのコイルエンドは、第6および第11スロットS6、S11の溝深さ方向の中間位置同士を渡っている。W相長節巻コイル53Wのコイルエンドは、第9および第16スロットS9、S16の溝口部側位置44同士を渡っている。W相短節巻コイル54Wのコイルエンドは、第10および第15スロットS10、S15の溝口部側位置44同士を渡っている。
第1の従来技術において、極対コイルのコイルエンドの長さは、最外周配置となるU相で最も長くなり、V相、W相の順番に短くなる。また、極対コイルの配置位置も三相で相互に異なる。このため、U相、V相、およびW相の極対コイルの特性が均等化されず、優れた性能を実現することが難しい。また、別の従来技術では、三相の極対コイルの大きさを均等化できるが、組み込み作業の制約によって、或る相の最も大きくなる極対コイルに他相の極対コイルの大きさを合わせる必要がある。このため、導体の全長が増加して効率が低下するとともに、極対コイルが大型化する。これらに対して第1実施形態では、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wは、形状および配置位置が三相で均等化され、かつ小型化が可能である。このため、騒音および振動の低減や、効率向上などの面で優れた性能が実現される。
また、図14は、第2の従来技術の三相回転電機に係り、固定子2Yの極対コイルが振り分け構成とされたコイル構成を模式的に説明する図である。第2の従来技術は、特許文献1、2に開示されたコイルエンドが螺旋状に渡る技術に対応する。第2の従来技術において、固定子巻線5の各相の4組の極対コイルの各々は、直列接続された2層各2個の全節巻コイルからなる。各層内の2個の全節巻コイルは、配置位置が1スロット分だけ異なっている。また、第1層と第2層とでは、配置位置が6スロット分だけ異なっている。各相の全節巻コイル55U、55V、55Wは、コイルサイド間のコイルピッチPcと巻装回数NwYに関して1種類であり、コイルピッチPc=6である。また、全節巻コイル55U、55V、55Wの巻装回数NwYは、第1実施形態の長節巻コイル53U、53V、53Wの巻装回数Nw1の半分になっている。
第1層の2個のU相全節巻コイル55Uのコイルエンドは、第1および第2スロットS1、S2の溝口部側位置44から第7および第8スロットS7、S8の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。第2層の2個のU相全節巻コイル55Uのコイルエンドは、第7および第8スロットS7、S8の溝口部側位置44から第13および第14スロットS13、S14の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。U相全節巻コイル55Uの巻装方向は、第1層と第2層とで逆方向になっている。
2層各2個のV相全節巻コイル55Vの配置位置は、U相全節巻コイル55Uの配置位置を図14の右方向に4スロット分だけシフトしたものとなっている。2層各2個のV相全節巻コイル55Vのコイルエンドは、第5、第6、第11、および第12スロットS5、S6、S11、S12の溝口部側位置44から、第11、第12、第17、および第18スロットS11、S12、S17、S18の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。
2層各2個のW相全節巻コイル55Wの配置位置は、U相全節巻コイル55Uの配置位置を図14の右方向に8スロット分だけシフトしたものとなっている。2層各2個のW相全節巻コイル55Wのコイルエンドは、第9、第10、第3、および第4スロットS9、S10、S3、S4の溝口部側位置44から、第15、第16、第9、および第10スロットS15、S16、S9、S10の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。
第2の従来技術において、固定子巻線5は、合計で48個の全節巻コイル55U、55V、55Wからなる。そして48個のスロット43(S1〜S48)の各々には、2個の全節巻コイル55U、55V、55Wの片側のコイルサイドが配置される。例えば、第7スロットS7において、第1層のU相全節巻コイル55Uのコイルサイドが溝底部側位置45に配置され、第2層のU相全節巻コイル55Uのコイルサイドが溝口部側位置44に配置される。つまり、全節巻コイル55U、55V、55Wは、コイルサイドがスロット43の半分を占有するハーフコイルである。
また、図14に示されるように、回転子3の特定の回転位相において、第1層の2個のU相全節巻コイル55Uは、N磁極34Nに対向し、第2層の2個のU相全節巻コイル55Uは、S磁極34Sに対向する。つまり、極対コイルを構成するコイルは、両方の磁極34N、34Sに対向可能に振り分けて配置されており、換言すれば、振り分け構成となっている。同様に、V相およびW相を構成するコイルも、振り分け構成となっている。
図15は、第2の従来技術における固定子巻線5の組み込み作業の方法を説明する図である。第2の従来技術では、全節巻コイル55U、55V、55Wのコイル数が第1実施形態の2倍となっており、両方のコイルサイドを一度に組み込むことが難しい。そのため、作業者は、まず、全部の全節巻コイル55U、55V、55Wの一方のコイルサイドのみを、スロット43の溝底部側位置45に組み込む(矢印M3参照)。作業者は、次に、全部の全節巻コイル55U、55V、55Wを徐々に傾けてゆき(矢印M4参照)、順番に他方のコイルサイドをスロット43の溝口部側位置44に組み込んでゆく。第2の従来技術において、相間絶縁紙9の必要箇所数は、1磁極対あたり6箇所となる。
第2の従来技術では、全部の全節巻コイル55U、55V、55Wについて、コイルサイドごとに別々に組み込み作業を行うことになり、2度手間となっている。これに対して、第1実施形態では、全部の長節巻コイル53U、53V、53Wおよび短節巻コイル54U、54V、54Wの両方のコイルサイドを一緒に組み込むことができる。そして、コイルサイドを一旦スロット43の外部に出して再度組み込む2度手間は、組み込み始めの数個のコイルに限定される。したがって、第1実施形態では、固定子巻線5を固定子鉄芯4のスロット43に組み込む作業の作業性が向上する。さらに、相間絶縁紙6の必要箇所数は、第2の従来技術では1磁極対あたり6箇所であり、第1実施形態では3箇所に半減される。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の三相回転電機について、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態において、回転子3の構成および固定子鉄芯4の形状は第1実施形態と同じであり、固定子2Aのコイル構成が第1実施形態と異なる。したがって、第2実施形態においても、毎極スロット数N1=6であり、毎極毎相スロット数N2=2であり、整数スロット構成となっている。図16は、第2実施形態の固定子2Aのコイル構成を模式的に説明する図である。
第2実施形態において、固定子巻線5の各相の4組のU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの各々は、直列接続された長節巻コイル56U、56V、56Wおよび短節巻コイルコイル57U、57V、57Wの2層構成からなる。長節巻コイル56U、56V、56WのコイルピッチPc=7であり、短節巻コイル57U、57V、57WのコイルピッチPc=5である。長節巻コイル56U、56V、56W、および短節巻コイル57U、57V、57Wの巻装回数Nw2は、相互に等しい。長節巻コイル56U、56V、56W、および短節巻コイル57U、57V、57Wの巻装方向は、同じ層内で相互に一致し、第1層と第2層とで相互に逆方向となっている。
コイルの配置位置について詳述すると、第1層のU相長節巻コイル56Uのコイルエンドは、第1スロットS1の溝口部側位置44から第8スロットS8の溝底部側位置45に渡っている。第1層のU相短節巻コイル57Uのコイルエンドは、第2スロットS2の溝口部側位置44から第7スロットS7の溝底部側位置45に渡っている。
第2層のU相長節巻コイル56Uのコイルエンドは、第7スロットS7の溝口部側位置44から第14スロットS14の溝底部側位置45に渡っている。第2層のU相短節巻コイル57Uのコイルエンドは、第8スロットS8の溝口部側位置44から第13スロットS13の溝底部側位置45に渡っている。
V相コイル56V、57Vの配置位置は、U相コイル56U、57Uの配置位置を図16の右方向に4スロット分だけシフトしたものとなっている。第1層のV相長節巻コイル56Vのコイルエンドは、第5スロットS5の溝口部側位置44から第12スロットS12の溝底部側位置45に渡っている。第1層のV相短節巻コイル57Vのコイルエンドは、第6スロットS6の溝口部側位置44から第11スロットS11の溝底部側位置45に渡っている。
第2層のV相長節巻コイル56Vのコイルエンドは、第11スロットS11の溝口部側位置44から第18スロットS18の溝底部側位置45に渡っている。第2層のV相短節巻コイル57Vのコイルエンドは、第12スロットS12の溝口部側位置44から第17スロットS17の溝底部側位置45に渡っている。
W相コイル56W、57Wの配置位置は、U相コイル56U、57Uの配置位置を図16の右方向に8スロット分だけシフトしたものとなっている。第1層のW相長節巻コイル56Wのコイルエンドは、第9スロットS9の溝口部側位置44から第16スロットS16の溝底部側位置45に渡っている。第1層のW相短節巻コイル57Wのコイルエンドは、第10スロットS10の溝口部側位置44から第15スロットS15の溝底部側位置45に渡っている。
第2層のW相長節巻コイル56Wのコイルエンドは、第15スロットS15の溝口部側位置44から第22スロットS22の溝底部側位置45に渡っている。第2層のW相短節巻コイル57Wのコイルエンドは、第16スロットS16の溝口部側位置44から第21スロットS21の溝底部側位置45に渡っている。
別の第2層のW相長節巻コイル56Wのコイルエンドは、第3スロットS3の溝口部側位置44から第10スロットS10の溝底部側位置45に渡っている。別の第2層のW相短節巻コイル57Wのコイルエンドは、第4スロットS4の溝口部側位置44から第9スロットS9の溝底部側位置45に渡っている。
第2実施形態において、固定子巻線5は、24個の長節巻コイル56U、56V、56W、および24個の短節巻コイル57U、57V、57Wからなる。これらのコイル56U、56V、56W、57U、57V、57Wは、コイルサイドがスロット43の半分を占有するハーフコイルである。
また、図16に示されるように、回転子3の特定の回転位相において、第1層のU相長節巻コイル56UおよびU相短節巻コイル57Uは、N磁極34Nに対向する。一方、第2層のU相長節巻コイル56UおよびU相短節巻コイル57Uは、S磁極34Sに対向する。つまり、固定子2AのU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを構成するコイルは、振り分け構成となっている。
さらに、第1層のU相長節巻コイル56UおよびU相短節巻コイル57Uは、図6に示される第1実施形態と同様に、コイルエンドが軸線AX方向に2階建てに配置される。同様に、第2層のU相長節巻コイル56UおよびU相短節巻コイル57Uも、コイルエンドが軸線AX方向に2階建てに配置される。さらに同様に、V相およびW相の各2層の2個のコイル56V、57V、56W、57Wも、それぞれコイルエンドが軸線AX方向に2階建てに配置される。第2実施形態において、相間絶縁紙9の必要箇所数は、1磁極対あたり6箇所となる。
ここで、第2の従来技術を示した図14と、第2実施形態を示した図16とを比較する。すると、2個のU相全節巻コイル55Uが第1層の長節巻コイル53Uおよび短節巻コイル54Uに置換されて、第2実施形態となっていることがわかる。第2実施形態の固定子2Aでは、コイルエンドが軸線AX方向に2階建てに配置されるので、第2の従来技術と比較して、固定子巻線5の組み込み作業の作業性が良好になる。
<第3および第4実施形態>
次に、第3および第4実施形態の三相回転電機について、第1および第2実施形態と異なる点を主に説明する。第3および第4実施形態において、回転子3の構成は第1実施形態と同じであり、固定子2B、2Cのスロット43の個数nsおよびコイル構成が第1実施形態と異なる。第3および第4実施形態において、総磁極数nm=8、スロット43の個数ns=36である。したがって、毎極スロット数N1=4.5であり、毎極毎相スロット数N2=1.5であり、分数スロット構成となっている。
図17は、第3実施形態の固定子2Bのコイル構成を模式的に説明する図である。第3実施形態において、固定子巻線5の各相の4組のU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの各々は、直列接続された長節巻コイルコイル58U、58V、58Wおよび短節巻コイル59U、59V、59Wからなる。長節巻コイル58U、58V、58WのコイルピッチPc=5であり、短節巻コイル59U、59V、59WのコイルピッチPc=3である。
図18は、U相極対コイル52Uを構成するU相長節巻コイル58UおよびU相短節巻コイル59Uのコイルエンドの2階配置を模式的に示した図である。長節巻コイル58U、58V、58Wは、巻装回数Nw31のフルコイルである。一方、短節巻コイル59U、59V、59Wは、巻装回数Nw32が長節巻コイル58U、58V、58Wの巻装回数Nw31の半分のハーフコイルである。長節巻コイル58U、58V、58W、および短節巻コイル59U、59V、59Wの巻装方向Rは、相互に一致している。
コイルの配置位置について詳述すると、U相長節巻コイル58Uのコイルエンドは、第1スロットS1の溝口部側位置44から第6スロットS6の溝底部側位置45に渡っている。U相短節巻コイル59Uのコイルエンドは、第2スロットS2の溝口部側位置44から第5スロットS5の溝底部側位置45に渡っている。別のU相長節巻コイル58Uのコイルエンドは、第10スロットS10の溝口部側位置44から第15スロットS15の溝底部側位置45に渡っている。別のU相短節巻コイル59Uのコイルエンドは、第11スロットS11の溝口部側位置44から第14スロットS14の溝底部側位置45に渡っている。
V相コイル58V、59Vの配置位置は、U相コイル58U、59Uの配置位置を図17の右方向に3スロット分だけシフトしたものとなっている。V相長節巻コイル58Vのコイルエンドは、第4スロットS4の溝口部側位置44から第9スロットS9の溝底部側位置45に渡っている。V相短節巻コイル59Vのコイルエンドは、第5スロットS5の溝口部側位置44から第8スロットS8の溝底部側位置45に渡っている。
W相コイル58W、59Wの配置位置は、U相コイル58U、59Uの配置位置を図17の右方向に6スロット分だけシフトしたものとなっている。W相長節巻コイル58Wのコイルエンドは、第7スロットS7の溝口部側位置44から第12スロットS12の溝底部側位置45に渡っている。W相短節巻コイル59Wのコイルエンドは、第8スロットS8の溝口部側位置44から第11スロットS11の溝底部側位置45に渡っている。
図17に示されるように、回転子3の特定の回転位相において、U相長節巻コイル58UおよびU相短節巻コイル59Uは、N磁極34Nに対向する。つまり、固定子2BのU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを構成するコイルは、集約構成となっている。さらに、図18に示されるように、U相長節巻コイル58UおよびU相短節巻コイル59Uは、コイルエンドが軸線AX方向に2階建てに配置される。また、相間絶縁紙9の必要箇所数は、1磁極対あたり3箇所となる。
第3実施形態においても、第1実施形態と同様の方法で固定子巻線5の組み込み作業を行うことができる。例えば、始めにW相長節巻コイル58WおよびW相短節巻コイル59Wを第7スロットS7から第12スロットS12にかけて組み込む場合を想定する。すると、2番目にU相長節巻コイル58UおよびU相短節巻コイル59Uを第10スロットS10から第15スロットS15にかけて組み込み、3番目にV相長節巻コイル58VおよびV相短節巻コイル59Vを第13スロットS13から第18スロットS18にかけて組み込むことになる。また、終わりにV相長節巻コイル58VおよびV相短節巻コイル59Vを第4スロットS4から第9スロットS9にかけて組み込むことになる。この場合、一旦スロット43の外部に出して再度組み込むコイルサイドの数量は、始めのうちに組み込む4個程度のコイル58W、59W、58U、58Vで済み、組み込み作業性が向上する。さらに、コイルエンドの軸線AX方向の高さの低減によるコンパクト化の効果や、相間絶縁紙9の半減効果も、第1実施形態と同様に得られる。
図19は、第4実施形態の固定子2Cのコイル構成を模式的に説明する図である。第4実施形態において、固定子巻線5の各相の4組のU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの各々は、直列接続された第1短節巻コイル60U、60V、60Wおよび第2短節巻コイル61U、61V、61Wからなる。第1短節巻コイル60U、60V、60WのコイルピッチPc=3であり、第2短節巻コイル61U、61V、61WのコイルピッチPc=4である。
図20は、U相極対コイル52Uを構成するU相第1短節巻コイル60UおよびU相第2短節巻コイル61Uを模式的に示した図である。第2短節巻コイル61U、61V、61は、巻装回数Nw42のフルコイルである。一方、第1短節巻コイル60U、60V、60Wは、巻装回数Nw41が第2短節巻コイル61U、61V、61の巻装回数Nw42の半分のハーフコイルである。第1短節巻コイル60U、60V、60W、および第2短節巻コイル61U、61V、61Wの巻装方向Rは、相互に逆方向となっている。
コイルの配置位置について詳述すると、U相第1短節巻コイル60Uのコイルエンドは、第1スロットS1の溝口部側位置44から第4スロットS4の溝底部側位置45に渡っている。U相第2短節巻コイル61Uのコイルエンドは、第5スロットS5の溝口部側位置44から第9スロットS9の溝底部側位置45に渡っている。別のU相第1短節巻コイル60Uのコイルエンドは、第10スロットS10の溝口部側位置44から第13スロットS13の溝底部側位置45に渡っている。
V相コイル60V、61Vの配置位置は、U相コイル60U、61Uの配置位置を図19の右方向に3スロット分だけシフトしたものとなっている。V相第1短節巻コイル60Vのコイルエンドは、第4スロットS4の溝口部側位置44から第7スロットS7の溝底部側位置45に渡っている。V相第2短節巻コイル61Vのコイルエンドは、第8スロットS8の溝口部側位置44から第12スロットS12の溝底部側位置45に渡っている。別のV相第1短節巻コイル60Vのコイルエンドは、第13スロットS13の溝口部側位置44から第16スロットS16の溝底部側位置45に渡っている。
W相コイル60W、61Wの配置位置は、U相コイル60U、61Uの配置位置を図19の右方向に6スロット分だけシフトしたものとなっている。W相第1短節巻コイル60Wのコイルエンドは、第7スロットS7の溝口部側位置44から第10スロットS10の溝底部側位置45に渡っている。W相第2短節巻コイル61Wのコイルエンドは、第11スロットS11の溝口部側位置44から第15スロットS15の溝底部側位置45に渡っている。別のW相第2短節巻コイル61Wのコイルエンドは、第2スロットS2の溝口部側位置44から第6スロットS6の溝底部側位置45に渡っている。
図19に示されるように、回転子3の特定の回転位相において、U相第1短節巻コイル60Uは、N磁極34Nに対向する。一方、U相第2短節巻コイル61Uは、S磁極34Sに対向する。つまり、固定子2CのU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを構成するコイルは、振り分け構成となっている。また、相間絶縁紙9の必要箇所数は、1磁極対あたり6箇所となる。
第4実施形態においても、第1実施形態と同様の方法で固定子巻線5の組み込み作業を行うことができる。例えば、始めにW相第1短節巻コイル60Wを第7スロットS7から第10スロットS10にかけて組み込む場合を想定する。すると、2番目以降にV相第2短節巻コイル61V、U相第1短節巻コイル60U、W相第2短節巻コイル61W、V相第1短節巻コイル60V、U相第2短節巻コイル61Uの順番で組み込むことになる。また、終わりにU相第2短節巻コイル61Uを第5スロットS5から第9スロットS9にかけて組み込むことになる。この場合、一旦スロット43の外部に出して再度組み付けるコイルサイドの数量は、始めのうちに組み込む6個程度のコイル60W、61V、60U、61W、60V、61Uで済み、組み込み作業性が向上する。さらに、コイルエンドの軸線AX方向の高さに低減の余地があり、コイルエンドのコンパクト化が可能である。
<第5および第6実施形態>
次に、第5および第6実施形態の三相回転電機について、第1〜第4実施形態と異なる点を主に説明する。第5および第6実施形態において、回転子3の構成は第1実施形態と同じであり、固定子2D、2Eのスロット43の個数nsおよびコイル構成が第1実施形態と異なる。第5および第6実施形態において、総磁極数nm=8、スロット43の個数ns=60である。したがって、毎極スロット数N1=7.5であり、毎極毎相スロット数N2=2.5であり、分数スロット構成となっている。
図21は、第5実施形態の固定子2Dのコイル構成を模式的に説明する図である。第5実施形態において、固定子巻線5の各相の4組のU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの各々は、直列接続された長節巻コイル62U、62V、62W、第1短節巻コイル63U、63V、63W、および第2短節巻コイル64U、64V、64Wからなる。長節巻コイル62U、62V、62WのコイルピッチPc=9であり、第1短節巻コイル63U、63V、63WのコイルピッチPc=7であり、第2短節巻コイル64U、64V、64WのコイルピッチPc=5である。
図22は、U相極対コイル52Uを構成するU相長節巻コイル62U、U相第1短節巻コイル63U、およびU相第2短節巻コイル64Uのコイルエンドの3階配置を模式的に示した図である。長節巻コイル62U、62V、62Wは、巻装回数Nw51のフルコイルである。第1短節巻コイル63U、63V、63Wは、巻装回数Nw52が長節巻コイル62U、62V、Wの巻装回数Nw51に等しいフルコイルである。第2短節巻コイル64U、64V、64Wは、巻装回数Nw53が長節巻コイル62U、62V、Wの巻装回数Nw51の半分のハーフコイルである。長節巻コイル62U、62V、62W、第1短節巻コイル63U、63V、63W、および第2短節巻コイル64U、64V、64Wの巻装方向Rは、相互に一致している。
コイルの配置位置について詳述すると、U相長節巻コイル62Uのコイルエンドは、第1スロットS1の溝口部側位置44から第10スロットS10の溝底部側位置45に渡っている。U相第1短節巻コイル63Uのコイルエンドは、第2スロットS2の溝口部側位置44から第9スロットS9の溝底部側位置45に渡っている。U相第2短節巻コイル64Uのコイルエンドは、第3スロットS3の溝口部側位置44から第8スロットS8の溝底部側位置45に渡っている。
V相コイル62V、63V、64Vの配置位置は、U相コイル62U、63U、64Uの配置位置を図21の右方向に5スロット分だけシフトしたものとなっている。V相長節巻コイル62Vのコイルエンドは、第6スロットS6の溝口部側位置44から第15スロットS15の溝底部側位置45に渡っている。V相第1短節巻コイル63Vのコイルエンドは、第7スロットS7の溝口部側位置44から第14スロットS14の溝底部側位置45に渡っている。V相第2短節巻コイル64Vのコイルエンドは、第8スロットS8の溝口部側位置44から第13スロットS13の溝底部側位置45に渡っている。
W相コイル62W、63W、64WVの配置位置は、U相コイル62U、63U、64Uの配置位置を図21の右方向に10スロット分だけシフトしたものとなっている。W相長節巻コイル62Wのコイルエンドは、第11スロットS11の溝口部側位置44から第20スロットS20の溝底部側位置45に渡っている。W相第1短節巻コイル63Wのコイルエンドは、第12スロットS12の溝口部側位置44から第19スロットS19の溝底部側位置45に渡っている。W相第2短節巻コイル64Wのコイルエンドは、第13スロットS13の溝口部側位置44から第18スロットS18の溝底部側位置45に渡っている。
図21に示されるように、回転子3の特定の回転位相において、U相長節巻コイル62U、U相第1短節巻コイル63U、およびU相第2短節巻コイル64Uは、N磁極34Nに対向する。つまり、固定子2DのU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを構成するコイルは、集約構成となっている。さらに、図22に示されるように、U相長節巻コイル62U、U相第1短節巻コイル63U、およびU相第2短節巻コイル64Uは、コイルエンドが軸線AX方向に3階建てに配置される。また、相間絶縁紙9の必要箇所数は、1磁極対あたり3箇所となる。
第5実施形態においても、第1実施形態と同様の方法で固定子巻線5の組み込み作業を行うことができる。例えば、始めにW相長節巻コイル62W、W相第1短節巻コイル63W、およびW相第2短節巻コイル64Wを、第11スロットS11から第20スロットS20にかけて組み込む場合を想定する。すると、2番目にU相長節巻コイル62U、U相第1短節巻コイル63U、およびU相第2短節巻コイル64Uを第16スロットS16から第25スロットS25にかけて組み込むことになる。また、終わりにV相長節巻コイル62V、V相第1短節巻コイル63V、およびV相第2短節巻コイル64Vを第6スロットS6から第15スロットS15にかけて組み込むことになる。
ここで、第2短節巻コイル64U、64V、64Wのコイルエンドを跨いで第1短節巻コイル63U、63V、63Wのコイルエンドが配置され、さらに、この2個のコイルを跨いで長節巻コイル62U、62V、62Wのコイルエンドが配置されるので、コイルエンドの3階建て配置が可能となっている。これによれば、第2短節巻コイル64U、64V、64W、第1短節巻コイル63U、63V、63W、および長節巻コイル62U、62V、62Wを入れ子にして保持できるので、3個のコイルを一括して組み込むことが容易となり、組み込み作業性が極めて良好になる。加えて、一旦スロット43の外部に出して再度組み付けるコイルサイドの数量は、始めのうちに組み込む5個程度のコイル62W、63W、64W、62U、63Uで済み、組み込み作業性が向上する。さらに、コイルエンドの軸線AX方向の高さの低減によるコンパクト化の効果や、相間絶縁紙9の半減効果も、第1実施形態と同様に得られる。
図23は、第6実施形態の固定子2Eのコイル構成を模式的に説明する図である。第6実施形態において、固定子巻線5の各相の4組のU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの各々は、直列接続された第1短節巻コイル65U、65V、65W、第2短節巻コイル66U、66V、66W、および第3短節巻コイル67U、67V、67Wからなる。第1短節巻コイル65U、65V、65WのコイルピッチPc=7であり、第2短節巻コイル66U、66V、66WのコイルピッチPc=5であり、第3短節巻コイル67U、67V、67WのコイルピッチPc=6である。
図24は、U相極対コイル52Uを構成するU相第1〜第3短節巻コイル65U、66U、67Uのコイルエンドの2階配置を模式的に示した図である。第1短節巻コイル65U、65V、65Wは、巻装回数Nw61のフルコイルである。第2短節巻コイル66U、66V、66Wは、巻装回数Nw62が第1短節巻コイル65U、65V、65Wの巻装回数Nw61の半分のハーフコイルである。第3短節巻コイル67U、67V、67Wは、巻装回数Nw63が第1短節巻コイル65U、65V、65Wの巻装回数Nw61に等しいフルコイルである。第1短節巻コイル65U、65V、66W、および第2短節巻コイル66U、66V、66Wの巻装方向Rは、相互に一致し、第3短節巻コイル67U、67V、67Wの巻装方向Rだけが逆方向となっている。
コイルの配置位置について詳述すると、U相第1短節巻コイル65Uのコイルエンドは、第1スロットS1の溝口部側位置44から第8スロットS8の溝底部側位置45に渡っている。U相第2短節巻コイル66Uのコイルエンドは、第2スロットS2の溝口部側位置44から第7スロットS7の溝底部側位置45に渡っている。U相第3短節巻コイル67Uのコイルエンドは、第9スロットS9の溝口部側位置44から第15スロットS15の溝底部側位置45に渡っている。
V相コイル65V、66V、67Vの配置位置は、U相コイル65U、66U、67Uの配置位置を図23の右方向に5スロット分だけシフトしたものとなっている。V相第1短節巻コイル65Vのコイルエンドは、第6スロットS6の溝口部側位置44から第13スロットS13の溝底部側位置45に渡っている。V相第2短節巻コイル66Vのコイルエンドは、第7スロットS7の溝口部側位置44から第12スロットS12の溝底部側位置45に渡っている。V相第3短節巻コイル67Uのコイルエンドは、第14スロットS14の溝口部側位置44から、図23に見えない第20スロットS20の溝底部側位置45に渡っている。
W相コイル65W、66W、67Wの配置位置は、U相コイル65U、66U、67Uの配置位置を図23の右方向に10スロット分だけシフトしたものとなっている。W相第1短節巻コイル65Wのコイルエンドは、第11スロットS11の溝口部側位置44から第18スロットS18の溝底部側位置45に渡っている。W相第2短節巻コイル66Wのコイルエンドは、第12スロットS12の溝口部側位置44から第17スロットS17の溝底部側位置45に渡っている。図23に見えないW相第3短節巻コイル67Wのコイルエンドは、第19スロットS19の溝口部側位置44から第25スロットS25の溝底部側位置45に渡っている。図23に見える別のW相第3短節巻コイル67Wのコイルエンドは、第4スロットS4の溝口部側位置44から第10スロットS10の溝底部側位置45に渡っている。
図23に示されるように、回転子3の特定の回転位相において、U相第1短節巻コイル65UおよびU第2短節巻コイル66Uは、N磁極34Nに対向する。一方、U相第3短節巻コイル67Uは、S磁極34Sに対向する。つまり、固定子2EのU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを構成するコイルは、振り分け構成となっている。図24に示されるように、U相第1短節巻コイル65UおよびU第2短節巻コイル66Uは、コイルエンドが軸線AX方向に2階建てに配置される。また、相間絶縁紙9の必要箇所数は、1磁極対あたり6箇所となる。
第6実施形態においても、第1実施形態と同様の方法で固定子巻線5の組み込み作業を行うことができる。例えば、始めにW相第3短節巻コイル67Wを第4スロットS4から第10スロットS10にかけて組み込む場合を想定する。すると、2番目以降にV相第1短節巻コイル65VおよびV相第2短節巻コイル66V、U相第3短節巻コイル67U、W相第1短節巻コイル65WおよびW相第2短節巻コイル66W、V相第3短節巻コイル67V、U相第1短節巻コイル65UおよびU相第2短節巻コイル66Uの順番で組み込むことになる。また、終わりにU相第1短節巻コイル65UおよびU相第2短節巻コイル66Uを、第1スロットS1からと第8スロットS8にかけて組み込むことになる。この場合、一旦スロット43の外部に出して再度組み付けるコイルサイドの数量は、始めのうちに組み込む8個程度のコイル67W、65V、66V、67U、65W、66W、67V、65Uで済み、組み込み作業性が向上する。さらに、コイルエンドの軸線AX方向の高さに低減の余地があり、コイルエンドのコンパクト化が可能である。
<第1〜第6実施形態の態様および効果>
第1〜第6実施形態のモータ装置である三相回転電機1は、溝形状であって溝口部48および溝底部49をそれぞれ有する複数のスロット43をもつ固定子鉄芯4、ならびに、複数のスロット43にそれぞれ巻装された複数のコイルが接続された固定子巻線5を有する固定子2、2A〜2Eと、N磁極34NおよびS磁極34Sからなる磁極対を有し、固定子2、2A〜2Eに対して回転可能または移動可能に支承された可動子(回転子3)と、を備えたモータ装置であって、複数のコイルは、複数のスロット43のうちの一対のスロットにそれぞれ巻装されて、一対のスロット内に収容される一対のコイルサイドと、一対のコイルサイドの端部同士を接続する一対のコイルエンドとをそれぞれ有し、かつ、一対のコイルサイドの間のコイルピッチPcおよび巻装回数Nwの少なくとも一方が相互に異なる複数種類とされ、かつ、一対のコイルエンドの各々が一対のスロットの一方の溝口部側位置44から一対のスロットの他方の溝底部側位置45に渡るように配置されている。
これによれば、固定子巻線5を構成するコイルのコイルエンドが固定子鉄芯4の或るスロットの溝口部側位置44から別のスロットの溝底部側位置45に渡る構成を採用しており、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの形状および配置位置が三相で均等化される。したがって、コイルエンドが同心円孤状に渡る従来技術と比較して、騒音および振動の低減や、効率向上などの面で優れた性能が実現される。
また、コイルエンドが螺旋状に渡る従来技術では、固定子巻線5を固定子鉄芯4に組み込む作業で、全部のコイルについてコイルサイドごとに別々に組み込む必要があり、2度手間となっている。これに対し、第1および第3〜第6実施形態では、全部のコイルの両方のコイルサイドを一緒に組み込むことができ、組み込み済みのコイルサイドを一旦スロット43の外部に出して再度組み込む2度手間は、組み込み始めの数個のコイルに限定される。したがって、固定子巻線5を固定子鉄芯4に組み込む作業の作業性が向上する。さらに、第1、第2、第3、および第5実施形態では、長節巻コイルと短節巻コイルの併用により、コイルエンドが軸線AX方向に2階建てないしは3階建てに配置される。これによれば、複数のコイルを入れ子にして保持し、一括して組み込むことが容易となり、組み込み作業性が良好になる。
また、第1、第3、および第5実施形態では、コイルエンドの整形加工作業により、コイルエンドの高さを低減してコンパクト化できる。第4および第6実施形態においても、コイルエンドのコンパクト化は実現可能である。さらに、第1、第3、および第5実施形態では、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを集約構成としたので、相間絶縁紙9の必要箇所数が従来技術から半減される。
加えて、上述した組み込み作業性の向上による組み込み作業工数の低減、コイルエンドのコンパクト化による導体使用量の低減、相間絶縁紙9の半減などの総合的な効果により、第1〜第6実施形態の三相回転電機1の製造コストは顕著に低減される。
また、第1〜第6実施形態において、複数のコイルは、固定子鉄芯4の複数のスロット43の個数nsをN磁極34NおよびS磁極34Sの総磁極数nmで除算した毎極スロット数N1よりもコイルピッチPcが長い長節巻コイルと、毎極スロット数N1よりもコイルピッチPcが短い短節巻コイルとを含み、ならびに/あるいは、巻装回数Nwが相対的に多くて一対のコイルサイドの各々が一対のスロット43の各々の全体を占有するフルコイルと、巻装回数Nwが相対的に少なくて一対のコイルサイドの各々が一対のスロットの各々の半分を占有するハーフコイルとを含む。
これによれば、様々な種類のコイルを組み合わせてU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを構成できるので、本発明を実施可能な三相回転電機1の範囲が広い。
さらに、固定子巻線5は三相である。加えて、固定子2は、回転対称形状とされ、可動子は、固定子2に対して回転可能に支承された回転子3である。これによれば、本発明は、三相同期電動機を始めとする三相回転電機1として実施できる。
さらに、固定子は、軌道を構成するリニア形状とされ、可動子は、軌道に沿って移動可能に支承されたリニア移動子とすることができる。これによれば、本発明は、リニアモータ装置として実施できる。
<第7実施形態>
次に、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wが1種類のコイルで構成される第7実施形態の三相回転電機について、第1〜第6実施形態と異なる点を主に説明する。第7実施形態において、回転子3の構成および固定子鉄芯4の形状は第1実施形態と同じであり、固定子2Fのコイル構成が第1実施形態と異なる。したがって、毎極スロット数N1=6であり、毎極毎相スロット数N2=2であり、整数スロット構成となっている。
図25は、第7実施形態の固定子2Fのコイル構成を模式的に説明する図である。第7実施形態において、固定子巻線5の各相の4組のU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの各々は、直列接続された2個の全節巻コイル68U、68V、68Wからなる。全節巻コイル68U、68V、68WのコイルピッチPc=6である。全節巻コイル68U、68V、68Wは、巻装回数Nw7のフルコイルである。全節巻コイル68U、68V、68Wの巻装方向は、相互に一致している。
コイルの配置位置について詳述すると、2個のU相全節巻コイル68Uのコイルエンドは、第1および第2スロットS1、S2の溝口部側位置44から第7および第8スロットS7、S8の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。
2個のV相全節巻コイル68Vの配置位置は、2個のU相全節巻コイル68Uの配置位置を図25の右方向に4スロット分だけシフトしたものとなっている。すなわち、2個のV相全節巻コイル68Vのコイルエンドは、第5および第6スロットS5、S6の溝口部側位置44から第11および第12スロットS11、S12の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。
2個のW相全節巻コイル68Wの配置位置は、2個のU相全節巻コイル68Uの配置位置を図25の右方向に8スロット分だけシフトしたものとなっている。すなわち、2個のW相全節巻コイル68Wのコイルエンドは、第9および第10スロットS9、S10の溝口部側位置44から第15および第16スロットS15、S16の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。
さらに、別の2個のU相全節巻コイル68Uのコイルエンドは、第13および第14スロットS13、S14の溝口部側位置44から第19および第20スロットS19、S20の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。また、別の2個のW相全節巻コイル68Wのコイルエンドは、図25に見えない第45および第46スロットS45、S46の溝口部側位置44から第3および第4スロットS3、S4の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。
図25に示されるように、回転子3の特定の回転位相において、2個のU相全節巻コイル68Uは、N磁極34Nに対向する。つまり、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを構成するコイルは、集約構成となっている。また、2個のU相全節巻コイル68Uのコイルエンドは、スロット43の溝口部側位置44から溝底部側位置45に向かう方向に並んで配置される。
次に、固定子巻線5を固定子鉄芯4のスロット43に組み込む作業の方法について説明する。固定子巻線5を構成する各相の4組の各2個の全節巻コイル68U、68V、68Wは、まず、固定子鉄芯4を模した巻装用治具に導体が巻装されてそれぞれ形成される。そして、図26の矢印P2に示されるように、全節巻コイル68U、68V、68Wは、図中の左側から右側へと順番にスロット43に組み込まれる。ただし、組み込み始めおよび組み込み終わりのコイルは、特に限定されない。ここでは、始めに第1組の2個のV相全節巻コイル68Vを組み込み、終わりに第4組の2個のU相全節巻コイル68Uを組み込む順序を例にして説明する。
図26は、固定子巻線5の組み込み作業において、始めに組み込むコイルを簡略化して示す図である。図27は、固定子巻線5の組み込み作業において、最後のコイルを組み込む直前に、組み込み済みのコイルのコイルサイドを一旦スロット43の外部に出した状態を示す図である。図28は、固定子巻線5の組み込み作業において、最後のコイルを組み込んだ直後の状態を示す図である。また、図29は、一旦スロット43の外部に出すコイルサイドの数量を図27よりも低減できる代替方法を示す図である。
図26に示されるように、作業者は、始めに第1組の2個のV相全節巻コイル68Vの一対のコイルサイドを、それぞれ第5および第11スロットS5、S11、ならびに、第6および第12スロットS6、S12に挿入して組み込む。作業者は、2番目に、第1組の2個のW相全節巻コイル68Wの一対のコイルサイドを、それぞれ第9および第15スロットS9、S15、ならびに、第10および第16スロットS10、S16に挿入して組み込む。作業者は、3番目に、第1組の2個のU相全節巻コイル68Uの一対のコイルサイドを、それぞれ第13および第19スロットS13、S19、ならびに、第14および第20スロットS14、S20に挿入して組み込む。以下、図26の左側から右側へと順番に、作業者は、全節巻コイル68U、68V、68Wを組み込んでゆく。
作業者は、11番目に、第4組の2個のW相全節巻コイル68Wの一対のコイルサイドを、それぞれ第45および第3スロットS45、S3、ならびに、第46および第4スロットS46、S4に挿入して組み込む(S45、S46は図27に見えない)。最後の12番目に組み込む第4組の2個のU相全節巻コイル68Uの組み込み位置は、第1および第2スロットS1、S2の溝口部側位置44と、第7および第8スロットS7、S8の溝底部側位置45の間である。しかしながら、第1組の2個のV相全節巻コイル68Vの片側のコイルサイドは、既に第5および第6スロットS5、S6の溝口部側位置44に組み込まれており、組み込み作業の邪魔になる。
このため、図27に示されるように、作業者は、組み込み済みの第1組の2個のV相全節巻コイル68Vの片側のコイルサイドを、一旦第5および第6スロットS5、S6の外部に出す。このとき、組み込み済みの第1組の2個のW相全節巻コイル68Wの片側のコイルサイドも連鎖的に邪魔になる場合がある。さらに、組み込み済みの第1組のU相全節巻コイル68W以降の片側のコイルサイドも連鎖的に邪魔になる場合がある。
作業者は、邪魔になる範囲内のコイルサイドを、一旦スロット43の外部に出す。図27の例で、第5、第6、第9、第10、第13、第14、第17、および第18スロットS5、S6、S9、S10、S13、S14、S17、S18から、それぞれコイル68V、68W、68U、68Vの片側のコイルサイドが一旦スロット43の外部に出される。
これにより、図28に示されるように、作業者は、第4組の2個のU相全節巻コイル68Uの一対のコイルサイドを、それぞれ第1および第7スロットS1、S7、ならびに、第2、第8スロットS2、S8に挿入して組み込むことができる。次に、作業者は、一旦スロット43の外部に出したコイル68V、68W、68U、68Vの片側のコイルサイドを、元のスロット43に再度組み込む(矢印M5、M6参照)。
また、コイルの剛性が比較的小さくて一時的な変形が許容される場合に、作業者は、図27に代えて、図29に示される代替方法を採用できる。この代替方法で、作業者は、邪魔になる組み込み済みの第1組の2個のV相全節巻コイル68Vの片側のコイルサイドを、一旦第5および第6スロットS5、S6の外部に出す。さらに、作業者は、片側のコイルサイドが第1スロットS1から第8スロットS8の間に位置しないように、V相全節巻コイル68Vを一時的に曲げ加工する。同様に、作業者は、邪魔になる組み込み済みの第1組の2個のW相全節巻コイル68Wの片側のコイルサイドを、一旦第5および第6スロットS5、S6の外部に出し、さらに曲げ加工する。
図29の例で、第5、第6、第9、および第10スロットS5、S6、S9、S10から2個のV相全節巻コイル68Vおよび2個のW相全節巻コイル68Wの片側のコイルサイドが一旦スロット43の外部に出されるとともに、曲げ加工される。これにより、作業者は、第4組の2個のU相全節巻コイル68Uの一対のコイルサイドを、それぞれ第1および第7スロットS1、S7、ならびに、第2、第8スロットS2、S8に挿入して組み込むことができる。次に、作業者は、一旦スロット43の外部に出したコイル68V、68Wの片側のコイルサイドを元のスロット43に再度組み込みながら、曲がりを元の形状に戻す。代替方法によれば、一旦スロット43の外部に出すコイルサイドの数量は、図27の8個から図29の4個に削減される。
コイルの組み付けを終えた後、作業者は、付帯作業を行う。付帯作業には、コイルエンドの整形加工作業、相間絶縁紙の装着作業、およびコイルの接続作業などがある。図30は、組み付け直後のコイルエンドの断面形状を模式的に示す図25のK−K矢視断面図である。図31は、コイルエンドの整形加工作業および相間絶縁紙の装着作業を終えた後のコイルエンドの断面形状を模式的に示す断面図である。図30および図31には、全節巻コイル68U、68V、68Wの巻装回数Nw7=8ターンの場合が例示されている。
図30に示されるように、組み付け直後の全節巻コイル68U、68V、68Wのコイルエンドは、並んで配置されている。各コイルエンドは、例えば、スロット43の溝幅方向に1スロットピッチ分を占有して導体が2ターン並び、軸線AX方向に導体が4ターン並んでいる。そして、コイルエンドの異相間には、2スロットピッチ分の隙間が有る。したがって、この隙間を有効利用することで、コイルエンドの軸線AX方向の高さHCの低減が可能になる。
作業者は、コイルエンドの並んだ配置を維持しつつ整形加工して、スロット43の溝幅方向の2スロットピッチごとに4ターンを並べることができる。これにより、各コイルエンドは、軸線AX方向に2ターンが並び、スロット43の溝幅方向に4ターンが並んで拡がり、扁平化される。整形加工作業の結果、図31に示されるコイルエンドの断面形状が得られる。整形加工後のコイルエンドの高さHDは、組み付け直後のコイルエンドの高さHCの概ね50%まで低減することが可能である。したがって、小型化に不向きな2階建ての不利を解消して、コイルエンドをコンパクト化できる。
コイルエンドの整形加工作業の途中または終わりに、作業者は、コイルエンドの異相間に相間絶縁紙9を装着する。相間絶縁紙9の必要箇所数は、1磁極対あたり3箇所となる。この後、作業者は、コイルの接続作業を行う。
第7実施形態の三相回転電機は、第1の従来技術のコイルエンドが同心円孤状に配置される構成(図13参照)と比較して、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの特性が均等化される。このため、騒音および振動の低減や、効率向上などの面で優れた性能が実現される。
また、第1実施形態における固定子巻線2の組み付け方法と同様に、第7実施形態でも、全部の全節巻コイル68U、68V、68Wの両方のコイルサイドを一緒に組み込むことができる。また、コイルサイドを一旦スロット43の外部に出して再度組み込む2度手間は、組み込み始めの数個のコイルに限定される。したがって、第7実施形態でも、固定子巻線5を固定子鉄芯4のスロット43に組み込む作業の作業性が向上する。さらに、相間絶縁紙9の必要箇所数も、第2の従来技術で1磁極対あたり6箇所であったものが3箇所に半減される。
第7実施形態の三相回転電機は、溝形状であって溝口部48および溝底部49をそれぞれ有する複数のスロット43をもつ固定子鉄芯4、ならびに、複数のスロット43にそれぞれ巻装された複数のコイルが接続された固定子巻線5を有する固定子2Fと、N磁極34NおよびS磁極34Sからなる磁極対を有し、固定子2Fに対して回転可能または移動可能に支承された可動子(回転子3)と、を備えるモータ装置であって、固定子鉄芯4の複数のスロット43の個数nsをN磁極34NおよびS磁極34Sの総磁極数nmで除算し、さらに固定子巻線5の相数で除算して得られる毎極毎相スロット数N2が2以上の整数であり、複数のコイルは、複数のスロット43のうちの一対のスロットにそれぞれ巻装されて、一対のスロット内に収容される一対のコイルサイドと、一対のコイルサイドの端部同士を接続する一対のコイルエンドとをそれぞれ有し、かつ、一対のコイルサイドの間のコイルピッチPcおよび巻装回数Nw7が相互に等しい1種類とされ、かつ、可動子の特定の回転位相または特定の移動位置において、N磁極34NおよびS磁極34Sの一方に対向する集約構成となっており、かつ、一対のコイルエンドの各々が一対のスロットの一方の溝口部側位置44から一対のスロットの他方の溝底部側位置45に渡るように配置されている。
これによれば、毎極毎相スロット数N2が2以上の整数構成の三相回転電機において、第1実施形態と同様の効果が生じる。すなわち、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの形状および配置位置が三相で均等化され、騒音および振動の低減や、効率向上などの面で優れた性能が実現される。また、固定子巻線5を固定子鉄芯4へ組み込む作業では、組み込み始めの数個のコイルに2度手間が限定されるので、組み込み作業性が向上する。さらに、コイルエンドの整形加工作業によりコイルエンドをコンパクト化できる効果や、相間絶縁紙9の必要箇所数が半減される効果も生じる。
さらに、第7実施形態において、複数のコイルは、固定子鉄芯4の複数のスロット43の個数NSをN磁極34NおよびS磁極34Sの総磁極数nmで除算した毎極スロット数N1と、コイルピッチPcとが等しい全節巻コイルであって、かつ、一対のコイルサイドの各々が一対のスロットの各々の全体を占有するフルコイルである。これによれば、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを構成するコイルの種類が特定され、上述した各効果が顕著となる。
<第8実施形態>
次に、第8実施形態の三相回転電機について、第1〜第7実施形態と異なる点を主に説明する。第8実施形態では、第1実施形態の固定子2の各コイル53U、54U、53V、54V、53W、54Wがそれぞれ2分割されて分割コイルとされる。2個の分割コイルは、スロット43の溝深さ方向に分けて配置されるとともに、周方向には電気角の180°相当分だけずらして配置される。第8実施形態において、回転子3の構成および固定子鉄芯4の形状は、第1実施形態と同じであり、固定子2Gのコイル構成が第1〜第7実施形態と異なる。したがって、毎極スロット数N1=6であり、毎極毎相スロット数N2=2であり、整数スロット構成となっている。
図32は、第8実施形態の固定子2Gのコイル構成を模式的に説明する図である。第8実施形態において、固定子2Gのコイル構成は、スロット43の溝深さ方向に2段に分割されている。スロット43の溝口部48に近接した側をスロット内段位置43iと呼称し、溝底部49に近接した側をスロット外段位置43oと呼称する。スロット内段位置43iの領域内であってスロット43の溝口部48に近い空間領域が内段溝口部側位置44iであり、スロット内段位置43iの領域内であってスロット43の溝深さ方向の中間の空間領域が内段溝底部側位置45iである。また、スロット外段位置43oの領域内であって内段溝底部側位置45iに隣接する空間領域が外段溝口部側位置44oであり、スロット外段位置43oの領域内であってスロット43の溝底部49に近い空間領域が外段溝底部側位置45oである。
固定子巻線5の各相の4組のU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの各々は、直列接続された4個の分割コイルからなる。換言すると、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの各々は、外段長節巻コイル70U、70V、70W、外段短節巻コイル71U、71V、71W、内段長節巻コイル72U、72V、72W、および内段短節巻コイル73U、73V、73Wからなる。外段長節巻コイル70U、70V、70WのコイルピッチPc=7であり、外段短節巻コイル71U、71V、71WのコイルピッチPc=5である。また、内段長節巻コイル72U、72V、72WのコイルピッチPc=7であり、内段短節巻コイル73U、73V、73WのコイルピッチPc=5である。
これらの分割コイル(70U、70V、70W、71U、71V、71W、72U、72V、72W、73U、73V、73W)の巻装回数Nw8は、相互に等しい。これらの分割コイル(70U、70V、70W、71U、71V、71W、72U、72V、72W、73U、73V、73W)は、コイルサイドがスロット43の半分を占有するハーフコイルである。
ここで、外段長節巻コイル70U、70V、70Wと内段長節巻コイル72U、72V、72Wとは、電気角の180°相当分だけずらして配置される。同様に、外段短節巻コイル71U、71V、71Wと内段短節巻コイル73U、73V、73Wとは、電気角の180°相当分だけずらして配置される。スロット外段位置43oのコイル同士およびスロット内段位置43iのコイル同士で、巻装方向は相互に一致している。スロット外段位置43oのコイルとスロット内段位置43iのコイルとで、巻装方向は相互に逆方向となっている。
スロット外段位置43oのコイルの配置位置について詳述すると、U相外段長節巻コイル70Uのコイルエンドは、第1スロットS1の外段溝口部側位置44oから第8スロットS8の外段溝底部側位置45oに渡っている。U相外段短節巻コイル71Uのコイルエンドは、第2スロットS2の外段溝口部側位置44oから第7スロットS7の外段溝底部側位置45oに渡っている。
V相外段長節巻コイル70Vのコイルエンドは、第5スロットS5の外段溝口部側位置44oから第12スロットS12の外段溝底部側位置45oに渡っている。V相外段短節巻コイル71Vのコイルエンドは、第6スロットS6の外段溝口部側位置44oから第11スロットS11の外段溝底部側位置45oに渡っている。
W相外段長節巻コイル70Wのコイルエンドは、第9スロットS9の外段溝口部側位置44oから第16スロットS16の外段溝底部側位置45oに渡っている。W相外段短節巻コイル71Wのコイルエンドは、第10スロットS10の外段溝口部側位置44oから第15スロットS15の外段溝底部側位置45oに渡っている。
スロット内段位置43iのコイルの配置位置について詳述すると、U相内段長節巻コイル72Uのコイルエンドは、第7スロットS1の内段溝口部側位置44iから第14スロットS14の内段溝底部側位置45iに渡っている。U相内段短節巻コイル73Uのコイルエンドは、第8スロットS8の内段溝口部側位置44iから第13スロットS13の内段溝底部側位置45iに渡っている。
V相内段長節巻コイル72Vのコイルエンドは、第11スロットS11の内段段溝口部側位置44iから第18スロットS18の内段段溝底部側位置45iに渡っている。V相内段短節巻コイル73Vのコイルエンドは、第12スロットS12の内段溝口部側位置44iから第17スロットS17の内段溝底部側位置45iに渡っている。
W相内段長節巻コイル72Wのコイルエンドは、第15スロットS15の内段溝口部側位置44iから第22スロットS22の内段段溝底部側位置45iに渡っている。W相内段短節巻コイル73Wのコイルエンドは、第16スロットS16の内段溝口部側位置44iから第21スロットS21の内段溝底部側位置45iに渡っている。
さらに、別のV相内段長節巻コイル72Vのコイルエンドは、図32に見えない第47スロットS47の内段段溝口部側位置44iから第6スロットS6の内段段溝底部側位置45iに渡っている。別のV相内段短節巻コイル73Vのコイルエンドは、第48スロットS48の内段溝口部側位置44iから第5スロットS5の内段溝底部側位置45iに渡っている。
また、別のW相内段長節巻コイル72Wのコイルエンドは、第3スロットS3の内段溝口部側位置44iから第10スロットS10の内段段溝底部側位置45iに渡っている。別のW相内段短節巻コイル73Wのコイルエンドは、第4スロットS4の内段溝口部側位置44iから第9スロットS9の内段溝底部側位置45iに渡っている。
図32に示されるように、回転子3の特定の回転位相において、スロット外段位置43oのU相外段長節巻コイル70UおよびU相外段短節巻コイル71Uは、N磁極34Nに対向する。一方、回転子3の同じ回転位相において、スロット内段位置43iのU相内段長節巻コイル72UおよびU相内段短節巻コイル73Uは、S磁極34Sに対向する。したがって、固定子2GのU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを構成するコイルは、スロット外段位置43oおよびスロット内段位置43iを分けて考えれば、それぞれ集約構成となっている。また、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを構成するコイルは、スロット外段位置43oおよびスロット内段位置43iをまとめて考えれば、振り分け構成と同等の磁界形成機能を有する。これにより、第1実施形態と比較して、漏れ磁束を低減する効果が生じる。
さらに、スロット外段位置43oのU相外段長節巻コイル70UおよびU相外段短節巻コイル71Uは、図6に示される第1実施形態と同様に、コイルエンドが軸線AX方向に2階建てに配置される。同様に、スロット内段位置43iのU相内段長節巻コイル72UおよびU相内段短節巻コイル73Uも、コイルエンドが軸線AX方向に2階建てに配置される。固定子巻線5を固定子鉄芯4に組み込む作業では、スロット外段位置43oのコイルおよびスロット内段位置43iのコイルについて、第1実施形態と同様の方法を繰り返す。相間絶縁紙9の必要箇所数は、1磁極対あたりスロット外段位置43oおよびスロット内段位置43iでそれぞれ3箇所、合計で6箇所となる。
第8実施形態の固定子2Gでは、第1実施形態と比較してコイルが細分化されるので、コイルの取り扱いが容易になる。加えて、コイルエンドが軸線AX方向に2階建てに配置されるので、固定子巻線5の組み込み作業の作業性がさらに一層向上する。また、第8実施形態の固定子2Gでは、第1実施形態で説明したコイルエンドの整形加工作業(図11、図12参照)による軸線AX方向の高さHAの低減も容易である。
第8実施形態の三相回転電機は、溝形状であって溝口部48および溝底部49をそれぞれ有する複数のスロット43をもつ固定子鉄芯4、ならびに、複数のスロット43にそれぞれ巻装された複数のコイルが接続された固定子巻線5を有する固定子2Gと、N磁極34NおよびS磁極34Sからなる磁極対を有し、固定子2Gに対して回転可能または移動可能に支承された可動子(回転子3)と、を備えるモータ装置であって、固定子鉄芯4の複数のスロット43の個数nsをN磁極34NおよびS磁極34Sの総磁極数nmで除算し、さらに固定子巻線5の相数で除算して得られる毎極毎相スロット数N2が整数であり、複数のコイルは、巻装回数Nw8が相互に等しくかつ直列接続された偶数個の分割コイルからそれぞれなり、偶数個の分割コイルは、複数のスロット43のうちの一対のスロットにそれぞれ巻装されて、一対のスロット内に収容される一対のコイルサイドと、一対のコイルサイドの端部同士を接続する一対のコイルエンドとをそれぞれ有し、かつ、一対のコイルエンドの各々が一対のスロットの一方の溝口部側位置44i、44oから一対のスロットの他方の溝底部側位置45i、45oに渡るように配置され、偶数個の分割コイルの半数は、スロットの溝口部48および溝底部49の一方に近接して配置されるとともに、可動子(回転子3)の特定の回転位相または特定の移動位置においてN磁極34NおよびS磁極34Sの一方に対向する集約構成となっており、偶数個の分割コイルの残りは、スロットの溝口部48および溝底部49の他方に近接して配置されるとともに、偶数個の分割コイルの半数に対して電気角の180°相当分だけずれて配置され、可動子(回転子3)の特定の回転位相または特定の移動位置においてN磁極34NおよびS磁極34Sの他方に対向する集約構成となっている。
これによれば、毎極毎相スロット数N2が整数構成の三相回転電機において、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの形状および配置位置が三相で均等化され、騒音および振動の低減や、効率向上などの面で優れた性能が実現される。また、固定子巻線5を固定子鉄芯4へ組み込む作業では、第1実施形態と比較してコイルが細分化されるので、コイルの取り扱いが容易になる。さらに、コイルエンドの整形加工作業によりコイルエンドをコンパクト化できる効果も生じる。加えて、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを構成するコイルは、相互に電気角の180°だけずれたスロット外段位置43oおよびスロット内段位置43iの各集約構成を組み合わせたものであるので、振り分け構成と同等の磁界形成機能を有して、漏れ磁束を低減する効果が生じる。
さらに、第8実施形態において、偶数個の分割コイルは、固定子鉄芯4の複数のスロット43の個数nsをN磁極34NおよびS磁極34Sの総磁極数nmで除算した毎極スロット数N1と、一対のコイルサイドの間のコイルピッチPcとが等しい全節巻コイルであり、または、毎極スロット数N1よりもコイルピッチPcが長い長節巻コイル70U、70V、70W、72U、72V、72W、および毎極スロット数N1よりもコイルピッチPcが短い短節巻コイル71U、71V、71W、73U、73V、73Wを含む。
これによれば、分割コイルは、1種類の全節巻コイルとしてもよく、長節巻コイルと短節巻コイルの組み合わせとしてもよいので、本発明を実施可能な三相回転電機の範囲が広い。
<第9、第10実施形態>
次に、第9実施形態の三相回転電機について、第1〜第8実施形態と異なる点を主に説明する。第9実施形態において、回転子3の構成、固定子鉄芯4の形状、および固定子巻線5の構成は第7実施形態と同じであり、固定子2Hの4個のコイルの配置位置が第7実施形態と異なる。したがって、毎極スロット数N1=6であり、毎極毎相スロット数N2=2であり、整数スロット構成となっている。
図33は、第9実施形態の固定子2Hのコイル構成を模式的に説明する図である。第9実施形態において、固定子巻線5の各相の4組のU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの各々は、直列接続された2個の全節巻コイル74U、74V、74Wからなる。全節巻コイル74U、74V、74WのコイルピッチPc=6である。全節巻コイル74U、74V、74Wは、巻装回数Nw9のフルコイルである。全節巻コイル74U、74V、74Wの巻装方向は、相互に一致している。そして、固定子巻線5を構成する24個のコイルのうちの4個は、コイルエンドが一対のスロット43の溝口部側位置44同士または溝底部側位置45同士を渡っている。この渡り方は、背景技術で説明した同心円孤状の渡り方に相当する。
コイルの配置位置について詳述すると、2個のU相全節巻コイル74Uのコイルエンドは、第1および第2スロットS1、S2の溝口部側位置44から第7および第8スロットS7、S8の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。2個のV相全節巻コイル74Vのコイルエンドは、第5および第6スロットS5、S6の溝口部側位置44から第11および第12スロットS11、S12の溝口部側位置44に同心円孤状にそれぞれ渡っている。2個のW相全節巻コイル74Wのコイルエンドは、第9および第10スロットS9、S10の溝底部側位置45から第15および第16スロットS15、S16の溝底部側位置45に同心円孤状にそれぞれ渡っている。
さらに、別の2個のU相全節巻コイル74Uのコイルエンドは、第13および第14スロットS13、S14の溝口部側位置44から第19および第20スロットS19、S20の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。また、別の2個のW相全節巻コイル74Wのコイルエンドは、図33に見えない第45および第46スロットS45、S46の溝口部側位置44から第3および第4スロットS3、S4の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。
第9実施形態において、上記した2個のV相全節巻コイル74Vおよび2個のW相全節巻コイル74Wのみは、コイルエンドが同心円孤状に渡っている。そして、同心円孤状に渡る4個を除いた20個のコイルのコイルエンドは、或るスロット43の溝口部側位置44から6スロットピッチ分だけ離れた別のスロット43の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。また、相間絶縁紙9の必要箇所数は、1磁極対あたり3箇所となる。
次に、固定子巻線5を固定子鉄芯4のスロット43に組み込む作業の方法について説明する。以降に説明する固定子巻線5の組み込み作業の方法は、本発明のモータ装置の製造方法の一実施形態である。第9実施形態における固定子巻線5の組み込み作業では、同心円孤状に渡る2個のW相全節巻コイル74Wが組み付け始めに特定され、同心円孤状に渡る2個のV相全節巻コイル74Vが組み付け終わりに特定される。
作業者は、始めに第1組の2個のW相全節巻コイル74Wを同心円孤状に組み込む。詳述すると、作業者は、2個のW相全節巻コイル74Wの一対のコイルサイドを、それぞれ第9および第15スロットS9、S15の溝底部側位置45、ならびに、第10および第16スロットS10、S16の溝底部側位置45に挿入して組み込む。作業者は、2番目に、第1組の2個のU相全節巻コイル68Uの一対のコイルサイドを、それぞれ第13スロットS13の溝口部側位置44および第19スロットS19の溝底部側位置45、ならびに、第14スロットS14の溝口部側位置44および第20スロットS20の溝底部側位置45に挿入して組み込む。以下、図33の左側から右側へと順番に、作業者は、全節巻コイル74U、74V、74Wを組み込んでゆく。
作業者は、11番目に、第4組の2個のU相全節巻コイル74Uの一対のコイルサイドを、それぞれ第1スロットS1の溝口部側位置44および第7スロットS7の溝底部側位置45、ならびに、第2スロットS2の溝口部側位置44および第8スロットS8の溝底部側位置45に挿入して組み込む。ここで、最後の12番目に組み込む第4組の2個のV相全節巻コイル74Vの組み込み位置は、第5および第6スロットS5、S6と、第11および第12スロットS11、S12の間である。
このとき、始めに組み込んだ2個のW相全節巻コイル74Wのコイルエンドは、第9スロットS9から第15スロットS15までの溝底部側位置45を渡っている。また、11番目に組み込んだ2個のU相全節巻コイル74Uのコイルエンドは、第5および第6スロットS5、S6の溝底部側位置45寄りを渡っている。したがって、第5スロットS5から第12スロットS12までの溝口部側位置44には、組み込み作業の邪魔になるコイルが存在しない。これにより、作業者は、第4組の2個のV相全節巻コイル74Vを溝口部側位置44に同心円孤状に組み込むことができる。詳述すると、作業者は、2個のV相全節巻コイル74Vの一対のコイルサイドを、それぞれ第5スロットS5および第11スロットS11の溝口部側位置44、ならびに、第6スロットS6および第12スロットS12の溝口部側位置44に挿入して組み込むことができる。さらに、作業者は、スロット43内の占積率に余裕がある場合に、組み込んだコイルのコイルサイドの位置を調整してもよい。
第9実施形態では、第1実施形態や第7実施形態で説明した組み込み済みのコイルの片側のコイルサイドを一旦スロット43の外部に出して再度組み込む2度手間が不要になる。なお、コイルの形状および配置位置は、同相の極対コイル間や三相間で部分的に均等でなくなるが、その割合が少ないので、三相回転電機の性能低下は僅少である。
次に、第10実施形態の三相回転電機について、第1〜第9実施形態と異なる点を主に説明する。第10実施形態において、回転子3の構成、および固定子鉄芯4の形状は、第1実施形態と同じであり、固定子2Iのコイル構成および配置位置が第1実施形態と異なる。したがって、毎極スロット数N1=6であり、毎極毎相スロット数N2=2であり、整数スロット構成となっている。図34は、第10実施形態の固定子2Iのコイル構成を模式的に説明する図である。第9実施形態と同様に第10実施形態でも、コイルエンドの一部が同心円孤状に渡っている。
第10実施形態において、固定子巻線5の各相の4組のU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの各々は、直列接続された第1短節巻コイル75U、75V、75Wおよび第2短節巻コイル76U、76V、76Wからなる。第1短節巻コイル75U、75V、75WのコイルピッチPc=5であり、第2短節巻コイル76U、76V、76WのコイルピッチPc=5である。第1短節巻コイル75U、75V、75W、および第2短節巻コイル76U、76V、76Wは、巻装回数Nw10のフルコイルである。第1短節巻コイル75U、75V、75W、および第2短節巻コイル76U、76V、76Wの巻装方向は、相互に逆方向となっている。そして、固定子巻線5を構成する24個のコイルのうちの4個は、コイルエンドが一対のスロット43の溝口部側位置44同士または溝底部側位置45同士を渡っている。この渡り方は、背景技術で説明した同心円孤状の渡り方に相当する。
コイルの配置位置について詳述すると、U相第1短節巻コイル75Uのコイルエンドは、第1スロットS1の溝口部側位置44から第6スロットS6の溝底部側位置45に渡っている。U相第2短節巻コイル76Uのコイルエンドは、第7スロットS7の溝底部側位置45から第12スロットS12の溝底部側位置45に同心円孤状に渡っている。別のU相第1短節巻コイル75Uのコイルエンドは、第13スロットS13の溝口部側位置44から第18スロットS18の溝底部側位置45に渡っている。
V相第1短節巻コイル75Vのコイルエンドは、第3スロットS3の溝口部側位置44から第8スロットS8の溝口部側位置44に同心円孤状に渡っている。V相第2短節巻コイル76Vのコイルエンドは、第9スロットS9の溝底部側位置45から第14スロットS14の溝底部側位置45に同心円孤状に渡っている。
W相第1短節巻コイル75Wのコイルエンドは、第5スロットS5の溝口部側位置44から第10スロットS10の溝口部側位置44に同心円孤状に渡っている。W相第2短節巻コイル76Wのコイルエンドは、第11スロットS11の溝口部側位置44から第16スロットS16の溝底部側位置45に渡っている。
さらに、別のU相第1短節巻コイル75Uのコイルエンドは、第13スロットS13の溝口部側位置44から第18スロットS18の溝底部側位置45に渡っている。別のV相第2短節巻コイル76Vのコイルエンドは、図34に見えない第45スロットS45の溝口部側位置44から第2スロットS2の溝底部側位置45に渡っている。別のW相第2短節巻コイル76Wのコイルエンドは、図34に見えない第47スロットS47の溝口部側位置44から第4スロットS4の溝底部側位置45に渡っている。
図34に示されるように、回転子3の特定の回転位相において、U相第1短節巻コイル75Uは、N磁極34Nに対向する。一方、U相第2短節巻コイル76Uは、S磁極34Sに対向する。つまり、固定子2IのU相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wを構成するコイルは、振り分け構成となっている。また、相間絶縁紙9の必要箇所数は、コイルエンドが同心円孤状に渡る部分では1磁極対あたり3箇所、その他の部分では1磁極対あたり6箇所となる。
第10実施形態において、上記したU相第2短節巻コイル76U、V相第1短節巻コイル75V、V相第2短節巻コイル76V、およびW相第1短節巻コイル75Wのみは、コイルエンドが同心円孤状に渡っている。そして、同心円孤状に渡る4個を除いた20個のコイルのコイルエンドは、或るスロット43の溝口部側位置44から5スロットピッチ分離れた別のスロット43の溝底部側位置45にそれぞれ渡っている。
固定子巻線5を固定子鉄芯4のスロット43に組み込む作業において、コイルエンドが同心円孤状に渡るU相第2短節巻コイル76UおよびV相第2短節巻コイル76Vが組み付け始めに特定される。また、コイルエンドが同心円孤状に渡るV相第1短節巻コイル75VおよびW相第1短節巻コイル75Wが組み付け終わりに特定される。この組み込み作業の方法は、本発明のモータ装置の製造方法の一実施形態である。これによれば、組み込み済みのコイルの片側のコイルサイドを一旦スロット43の外部に出して再度組み込む2度手間が不要になる。
<第9、第10実施形態の態様および効果>
第9および第10実施形態の三相回転電機は、溝形状であって溝口部48および溝底部49をそれぞれ有する複数のスロット43をもつ固定子鉄芯4、ならびに、複数のスロット43にそれぞれ巻装された複数のコイルが接続された固定子巻線5を有する固定子2H、2Iと、N磁極34NおよびS磁極34Sからなる磁極対を有し、固定子2H、2Iに対して回転可能または移動可能に支承された可動子(回転子3)と、を備えるモータ装置であって、複数のコイルは、複数のスロット43のうちの一対のスロットにそれぞれ巻装されて、一対のスロット内に収容される一対のコイルサイドと、一対のコイルサイドの端部同士を接続する一対のコイルエンドとをそれぞれ有し、複数のコイルの一部は、一対のコイルエンドの各々が一対のスロットの一方の溝口部側位置44から一対のスロットの他方の溝底部側位置45に渡るように配置され、複数のコイルの残部は、一対のコイルエンドの各々が一対のスロットの溝口部側位置44同士または溝底部側位置45同士を渡るように配置されている。
第9実施形態において、複数のコイルの残部は、コイルエンドが同心円孤状に渡る2個のV相全節巻コイル74Vおよび2個のW相全節巻コイル74Wとされる。第10実施形態において、複数のコイルの残部は、コイルエンドが同心円孤状に渡るU相第2短節巻コイル76U、V相第1短節巻コイル75V、V相第2短節巻コイル76V、およびW相第1短節巻コイル75Wとされる。さらに、複数のコイルの残部は、固定子巻線5を固定子鉄芯4に組み込む際に組み込み始めおよび組み込み終わりとなる。
これによれば、組み込み済みのコイルのコイルサイドを一旦スロット43の外部に出して再度組み込む2度手間が、第1〜第8実施形態と異なって不要になる。したがって、固定子巻線5を固定子鉄芯4に組み込む作業の作業性は、従来技術よりも格段に向上し、第1〜第8実施形態と比較しても良好である。さらに、第9実施形態では、相間絶縁紙9の必要箇所数が従来技術から半減される。第10実施形態では、コイルエンドが同心円孤状に渡る部分で、相間絶縁紙9の必要箇所数が従来技術から半減される。
また、第9および第10実施形態の三相回転電機の製造方法は、固定子巻線5を固定子鉄芯4に組み込む際に、複数のコイルの残部を組み込み始めおよび組み込み終わりとする。これによれば、本発明は、モータ装置の装置発明に限定されず、モータ装置の製造方法の発明として実施することもできる。モータ装置の製造方法の発明においても、モータ装置の装置発明と同様の効果が生じる。
<実施形態の応用および変形>
なお、各実施形態において、毎極スロット数N1および毎極毎相スロット数N2を変更しない範囲内で、総磁極数nmおよびスロット43の個数nsを変更できる。例えば、総磁極数nm=2k(kは自然数)と変更した場合に、第1、第2および第7〜第10実施形態でスロット43の個数ns=12kとし、第3および第4実施形態でスロット43の個数ns=9kとし、第5および第6実施形態でスロット43の個数ns=15kとすればよい。
また、第8実施形態において、U相、V相、およびW相極対コイル52U、52V、52Wの構成を直列接続された外段の2個の全節コイルおよび内段の2個の全節コイルとすることができる。また、第9および第10実施形態で説明したコイルエンドが溝口部側位置44同士または溝底部側位置45同士を渡る構成は、第1〜第8実施形態と組み合わせて実施することもできる。
さらになお、本発明は、内周側に固定子、外周側に回転子を備えるアウターロータタイプの構成や、エアギャップを挟んで固定子と回転子とが軸線AXの長さ方向に並ぶ軸方向空隙型の構成でも実施できる。加えて、本発明は、軌道を構成するリニア形状の固定子と、軌道に沿って移動可能に支承されたリニア移動子とを備えるリニアモータ装置で実施することもできる。本発明は、その他にも様々な変形や応用が可能である。