以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る圧電デバイスを示した分解斜視図である。図2は、図1に示したA−A切断線で切断したときの断面図である。図3は、本発明の第一実施形態に係る圧電デバイスにおける変形例を、図2と同じ位置で切断したときの断面図である。図4は、本発明の第一実施形態に係る圧電デバイスにおける変形例を構成する基体部分を上方から示した斜視図である。図5は、本発明の第二実施形態に係る圧電デバイスを、図2と同じ位置で切断したときの断面図である。
尚、各図では、説明を明りょうとするため構造体の一部を図示せず、また寸法も一部誇張して図示している。また、図2、3及び5では、説明を平易とするため、図面が記載されている用紙上方を各々の圧電デバイス及びそれを構成する各構成要素の上方として記述する。図1及び4については、図示してある平面を上面、反対側の平面を下面として記述する。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態として、圧電デバイスの一つである圧電発振器について説明する。圧電発振器100は、図1及び図2に示すように、振動子部110と、基体150と、ソルダーレジスト層160と、集積回路素子170とから主に構成されている。このような圧電発振器100は、電子機器等で使用する基準信号を生成出力するために用いられる。
振動子部110は、内部に圧電振動素子120を、且つ外部に集積回路素子170を安定的に搭載しつつ、圧電振動素子120及び集積回路素子170に電気信号を入力させ圧電振動素子120及び集積回路素子170からの電気信号を出力させることに用いる。振動子部110は、素子搭載部材111と、圧電振動素子120と、蓋体130とを備えている。
素子搭載部材111は、後述する圧電振動素子120を安定的に搭載するためのものである。素子搭載部材111は、第一基板112と、枠部113とからなり、第一電極パッド114と、第二電極パッド115と、第三電極パッド116とを備えた構成となっている。
第一基板112は、平面視矩形状の平板であり、その上面に圧電振動素子120を実装し且つ下面に集積回路素子170を実装するための実装部材として機能するものである。第一基板112の上面には、圧電振動素子120へ信号を入出力するための第一電極パッド114が一対設けられており、下面の四隅には、後述する基体150への信号を入出力させつつ振動子部110と基体150とを接続固着させるための第二電極パッド115が設けられている。また、下面の中央には、後述する集積回路素子170へ信号を入出力させつつ集積回路素子170を接続固着させるための第三電極パッド116が設けられている。第一基板112の表面及び内部には、第一電極パッド114と第三電極パッド116とを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)と、第二電極パッド115と第三電極パッド116とを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)が設けられている。また、第一電極パッド114と第二電極パッド115とは集積回路素子170を介して電気的に接続しているが、直接的には接続していない。尚、第一基板112は、例えば、アルミナセラミックスまたはガラス−セラミックス等のセラミック材料、またはガラス−エポキシである絶縁材料から構成されている。
枠部113は、第一基板112の上面の外周縁に沿って設けられており、第一基板112の上面側に凹部117を形成するためのものである。枠部113は、例えば、アルミナセラミックスまたはガラス−セラミックス等のセラミック材料、またはガラス−エポキシである絶縁材料から構成されている。尚、この枠部113の内周の大きさ、つまり凹部117の開口部の大きさは、後述する圧電振動素子120が横方向で凹部117内に搭載できる大きさとなっている。
第一電極パッド114は、後述する圧電振動素子120と導電性接着剤118を用いて導通し、圧電振動素子120への信号の入出力をするものである。第一電極パッド114は一対であり、凹部117内に露出した第一基板112の上面の一方の短辺に沿って並びつつ、圧電振動素子120が凹部117内の所定の位置に配置されたときに圧電振動素子120に設けられた接続用電極123に対向する位置に設けられている。この第一電極パッド114は、基板112内に設けられた配線パターン(図示せず)により所定の第三電極パッド116と電気的に接続されている。尚、第一電極パッド114は金等の導電性の金属のメタライズ処理によって形成される。
第二電極パッド115は、振動子110を基体150に実装する際に、半田等の導電性接合材119を介して電気的に接続するための電極パッドとして機能する。第二電極パッド115は、第一基板112の下面の四隅にそれぞれ一つずつ計四個設けられており、それぞれの第二電極パッド115は、所定の第三電極パッド116と基板112内に設けられた配線パターン(図示せず)により電気的に接続されている。尚、この第二電極パッド115のうち、GND(接地)電位となる第二電極パッド115は後述する蓋体130と電気的に接続していても構わない。また、第二電極パッド115は金等の導電性の金属のメタライズ処理によって形成される。
第三電極パッド116は、後述する集積回路素子170を接合導通するものであり、第一基板112の下面の中央部分に、集積回路素子170に設けられた複数個の接続パッド171に対応する個数及び位置に設けられている。例えば、集積回路素子170に接続パッド171が二列に計八個設けられていた場合、第三電極パッド116は、第一基板112の下面の中央部に二列に計八個設けられることとなる。第三電極パッド116のうち所定のパッドは、第一電極パッド114と電気的に接続されている。また、残りの第三電極パッド119のうちの所定のパッドは、それぞれ第二電極パッド115と電気的に接続されている。尚、第三電極パッド116は金等の導電性の金属のメタライズ処理によって形成される。
圧電振動素子120は、例えば、厚みすべり振動を用いて所望する周波数の電気信号を生成するものである。圧電振動素子120は、図2に示すように、圧電素子121と、圧電素子121の上面に設けられた厚みすべり振動を励振する励振用電極122と、接続用電極123から主に構成されている。
圧電素子121は、平面視矩形の平板であり、例えば、人工水晶体から所定の結晶アングルでカットされ外形加工された水晶薄板が用いられている。尚、本実施形態においては、圧電素子121に水晶薄板を用いたが、他にタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電性を有する単結晶材料を材料とした薄板を使用しても良い。
励振用電極122は、厚みすべり振動を圧電素子121に生成するためのものである。励振用電極122は、圧電素子121の上面及び下面のほぼ中央に一つずつ、圧電素子121を挟んで対向して設けられている。励振用電極122は、例えば、互いに同一の形状及び大きさであり、平面透視において重なっている。励振用電極122の形状は、例えば、圧電素子121の主面の四辺と平行な四辺を有する概略矩形である。また、励振用電極122は、圧電素子121の上下面に、金、アルミニウム、ニッケル、クロムやチタン、或いはこれらの金属を含む合金等の導電性の金属を蒸着あるいはスパッタリング等により薄膜状に積層形成した上で、フォトリソグラフィ法等の製造方法により形成されている。例えば、励振用電極122は上面から順に金、ニッケル、クロムの金属の三層構造となっていても良い。
接続用電極123は、素子搭載部材111に設けられた第一電極パッド114と圧電振動素子120の励振用電極122との間の信号の入出力を行うためのものである。接続用電極123は、それぞれの励振用電極122から引き出された配線パターンの各終端部分に設けられおり、圧電素子121の一方の短辺の両角部の上面から側面を介して下面にかけて、それぞれ一個計二個形成されている。この接続用電極123は、導電性接着剤118により、素子搭載部材111に設けられた第一電極パッド114と電気的に接続されている。また、接続用電極123は、圧電素子121の一方の短辺の両角部の上下側面に、金、アルミニウム、ニッケル、クロムやチタン、或いはこれらの金属を含む合金等の導電性の金属を蒸着あるいはスパッタリング等により薄膜状に積層形成した上で、フォトリソグラフィ法等の製造方法により形成されている。例えば、接続用電極123は上面から順に金、ニッケル、クロムの金属の三層構造となっていても良い。
導電性接着剤118は、接続用電極123と第一電極パッド114とを電気的に接続させつつ、圧電振動素子120を第一電極パッド114に固着するためのものである。導電性接着剤118は、銀等を導電性フィラーとして含有したエポキシ系又はシリコーン系の合成樹脂からなり、粘度は20〜40Pa・sとなっている。この導電性接着剤118は、例えば、流動性を有した状態で第一電極パッド114の上面に適量塗布され、圧電振動素子120を導電性接着剤118と接続用電極123とが接触するように配置した後、120〜200℃で加熱して導電性接着剤118を固化させることにより、接続用電極123と第一電極パッド114とを電気的に接続させつつ、圧電振動素子120を第一電極パッド114に固着させている。
蓋体130は、真空状態にある凹部117、あるいは窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが充填された凹部117を気密的に封止するためのものである。蓋体130は、平面視矩形状の平板形状であり、凹部117の開口部を覆い塞ぐ大きさを有する。蓋体130は、枠部113の開口部側主面上に凹部117の開口部を覆い塞ぐように配置され、枠部113の開口部側上面と接合材を介して接合されている。蓋体130は、例えば、鉄、ニッケルまたはコバルトの少なくともいずれかを含む合金あるいはセラミックからなり、その厚み寸法は、例えば0.2〜1.0mmである。
尚、振動子部110の構成は前記したものに限定されず、例えば、枠部113を備えずに、第一基板112の上面に圧電振動素子120を搭載し、その圧電振動素子120を覆うように箱状でフランジを有する蓋体を被せ、その蓋体のフランジ部分と第一基板112とを接合することで蓋体内の圧電振動素子120を気密封止した形態の振動子部でも良い。
基体150は、前述した振動子部110を接合するためのものであると共に、集積回路素子170を収容するためのものである。基体150は、第二基板151と第四電極パッド152と、外部接続電極パッド153とを備えている。
第二基板151は、平面視外形が矩形である平板状であり、振動子部110を実装するためのものである。第二基板151の上面には、振動子部110に設けられた第二電極パッド115に対応する位置に第四電極パッド152が設けられており、下面には、外部接続電極パッド153が設けられている。第二基板151の表面及び内部には、上面に設けられた第四電極パッド152と、第二基板151の下面に設けられた外部接続電極パッド153とを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)が設けられている。又、第二基板151の平面視中央には、後述する集積回路素子170を収めることが可能な大きさの第一貫通孔154が形成されている。第二基板151は、例えば、アルミナセラミックス又はガラス−セラミックス等のセラミック材料、又はガラス−エポキシである絶縁体から構成されている。
第四電極パッド152は、基体150と振動子部110とを接合導通するためのものである。第四電極パッド152は、第二基板151の上面に設けられており、振動子部110の第一基板112の下面に設けられた第二電極パッド115に対応する個数及び位置に設けられている。例えば、振動子部110の第一基板112の下面四隅に第二電極パッド115が設けられていた場合、第四電極パッド152は、第二基板151の上面の四隅に設けられることとなる。また、第四電極パッド152の主面の大きさは、第二電極パッド115の主面の大きさよりも大きくなっている。第四電極パッド152は、第二基板151に設けられた配線パターン(図示せず)を介して、第二基板151の下面に設けられた外部接続電極パッド153と電気的に接続されている。
外部接続電極パッド153は、圧電発振器100を電子機器等の外部の実装基板に実装するためのものである。外部接続電極パッド153は、第二基板151の下面に複数個設けられており、第四電極パッド152と個々に電気的に接続されている。外部接続電極パッド153には、例えば、GND電位と接続されている実装基板のパッドと接続される端子の他に、出力端子として用いられる端子、電源電圧端子として用いられる端子、後述する集積回路素子170へのデータ書込読込端子及び周波数制御端子として用いられる端子を備えている。
この基体150の上面にはソルダーレジスト層160が設けられている。このソルダーレジスト層160は、振動子部110に設けられた第二電極パッド115と基体150に設けられた第四電極パッド152とを導電性接合材119で接合固着する際に、溶融した導電性接合材119が接合位置から外部に流れ出さないようにするために用いられる。ソルダーレジスト層160は、基体150を構成する第二基板151の上面に設けられており、それぞれの第四電極パッド152の上面の一部が露出するように第二貫通孔161が設けられている。この第二貫通孔161は、第二電極パッド115と第四電極パッド152とを導電性接合材119で接合固着するために、第四電極パッド152の上のソルダーレジスト層160を除去し、第四電極パッド152の一部を露出させる機能を有し、更に、振動子部110と基体150との接合時に、第二電極パッド115を嵌合させることで振動子部110の位置合わせ機能を備えることも可能となっている。第二貫通孔161の開口の大きさは、第四電極パッド152の上面の大きさよりも小さく且つ第二電極パッド115が嵌合できる大きさとなっている。つまり、第二貫通孔161は第四電極パッド152の上面の内側に設けられていて、ソルダーレジスト層160が第四電極パッド152の上面の辺縁部上にまで設けられていることになる。ソルダーレジスト層160の厚みは、振動子部110と基体150とを接続固着した際に第二電極パッド115が第二貫通孔161内に挿入できる厚さであり、例えば10〜20μmとなっている。尚、このソルダーレジスト層160の形成方法としては、例えば、スクリーン印刷、ロールコート、スプレーコートなどが用いられる。
このソルダーレジスト層160には溝部162が設けられている。この溝部162は、基体150に振動子部110を搭載するときに、振動子部110の第二電極パッド115と基体150の第四電極パッド152とを半田等の導電性接合材119により溶融固着する際に発生するガス化したフラックスを圧電発振器100の外へ排出するために用いられる。溝部162は、ソルダーレジスト層160の外側の辺縁部と第二貫通孔161との間に設けられており、溝部162の長さ方向の一方の端部はソルダーレジスト層160の外側の辺縁部において圧電発振器100の外部に開口しており、溝部162の他方の端部は第二貫通孔161の内部に開口している。尚、溝部162は、フラックスの排出を容易にするために直線状に設けることが好ましい。また、溝部162の深さは、溝部162を設けたときにソルダーレジスト層160の下の第四電極パッド152が露出しない程度の深さとなっており、更に、溝部162の幅方向の寸法は約50μmとなっている。
尚、第一実施形態において、溝部162は、ソルダーレジスト層160の二つ辺縁部と第二貫通孔161との間にそれぞれ一つずつ設けられている形態を開示しているが、本発明はフラックスの排出によるボイドの発生抑制作用を奏するのであれば、溝部162の形成位置及び形成本数は、第一実施形態に限定されるものではない。
集積回路素子170は、例えば、複数個の接続パッド171を有した平面視矩形のフリップチップ型集積回路素子が用いられ、その回路形成面(上面)には、所定の電子回路及び電子素子を組み合わせて、例えば、圧電振動素子120を励振する発振回路、波形成形回路、温度補償回路などが設けられている。この集積回路素子170は、接続パッド171と振動子部110の下面に設けられた第三電極パッド116とを、半田等の導電性接合材119によって接合固着することにより、振動子部110と基体150とを接合したときに第一貫通孔154内に露出する振動子部110の下面に搭載される。
第一実施形態における圧電発振器100は、下面に複数の第二電極パッド115が設けられた平面視四角形の第一基板112を有した素子搭載部材111と、第一基板112の上面に実装された圧電振動素子120と、素子搭載部材111に接合することで圧電振動素子120を気密封止する蓋体130とを備えた振動子部110と、平面視四角形の平板であり中央に第一貫通孔154を有する第二基板151と、この第二基板151の上面の第二電極パッド115と対応する位置に設けられた第四電極パッド152と、を有し、第二電極パッド115と第四電極パッド152とが導電性接合材119により接合固着されることで、振動子部110の下面に搭載される基体150と、第一貫通孔154内であって第一基板112の下面に実装された集積回路素子170と、基体150の上面に設けられており、少なくとも第四電極パッド152の一部が露出し、且つ第二電極パッド115が嵌合できる大きさである第二貫通孔161が設けられているソルダーレジスト層160と、第二貫通孔161からソルダーレジスト層160の基体150の外側に沿った辺縁部に至る溝部162と、を備えている。
このような構成により、導電性接合材119を加熱溶融した際にガス化したフラックスが溝部162を介して圧電発振器100の外に排出される。これにより、導電性接合材119が固化した際に導電性接合材119内にボイドが生じることを低減させることができ、ボイドに起因する接合面積の低下による接合強度の低下や導電性の低下、或いはボイド内のガスが熱膨張することにより導電性接合材の外部へ噴出し接合部分が破断することを抑え、導電性接合材119を介して第二電極パッド115と第四電極パッド152との間の電気信号の安定的で確実な導通が可能となる。
また、第一実施形態における圧電発振器100は、第二貫通孔161が第四電極パッド152の基体150の外側に沿った二つの辺縁部から所定の間隔を開けた位置であり、溝部162がソルダーレジスト層160の前記基体の外側に沿った二つの辺縁部と第二貫通孔161との間にそれぞれ少なくとも一つずつ設けられている。
このような構成により、フラックスを排出する溝部162を複数且つ分散して設けることができ、導電性接合材119全体からフラックスの排出を効率良く行うことができる。よって、導電性接合材119が固化した際に導電性接合材119内にボイドが生じることを更に低減させることができ、ボイドに起因する接合強度の低下を抑え、導電性接合材119を介して第二電極パッド115と第四電極パッド152との間の電気信号のより安定的で確実な導通が可能となる。
更に、第一実施形態における圧電発振器100は、第二貫通孔161の大きさが、第二電極パッド115が嵌合できる大きさであることにより、第二電極パッド115と第四電極パッド152とを接合する際に、第二電極パッド115を第二貫通孔161内に嵌合させて、第二貫通孔161内に露出した第四電極パッド152と接合することになる。これにより第二電極パッド115と第四電極パッド152とを接合する際に接合位置がずれて接合することが抑えられ、振動子部110と基体150とを正しい位置で接合することが可能となる。
尚、第二貫通孔161内に第二電極パッド115を嵌合することよる振動子部110と基体150の接合位置合わせが必要ない場合は、第二貫通孔の大きさを第二電極パッド115が嵌合できる大きさに限定することはない。つまり、第二貫通孔161は、第二電極パッド115が内部に挿入できるように、第四電極パッド152の一部が露出し且つ第四電極パッド152の基体150の外側に沿った辺縁部から所定の間隔を開けた位置に設けられていても構わない。
(変形例)
以下に第一実施形態の変形例に係る圧電デバイスについて説明する。尚、変形例において、第一実施形態の圧電デバイスである圧電発振器100と同じ構成要素の部分には、圧電発振器100の各構成要素に付与した符号と同じ符号を付してその説明を省略する。第一実施形態の変形例である圧電発振器200は、図3に示すように、第二貫通孔261の大きさが、第四電極パッド152の一部及び基体150の上面を露出する大きさである点、及び溝部262の第二貫通孔261側の端部が、第二貫通孔261内に露出した基体150の上面の上部に開口している点で第一実施形態と異なっている。
図4に示すように、圧電発振器200を構成する基体150の上面にはソルダーレジスト層260が設けられている。このソルダーレジスト層260は、振動子部110に設けられた第二電極パッド115と基体150に設けられた第四電極パッド152とを導電性接合材119で接合固着する際に、溶融した導電性接合材119が接合位置から外部に流れ出さないようにするために用いられる。ソルダーレジスト層260は、基体150を構成する第二基板151の上面に設けられている。また、ソルダーレジスト層260には、それぞれの第四電極パッド152の上面の一部及び第四電極パッド152の隣り合う他の第四電極パット152側に対向した辺に沿った基体150を構成する第二基板151の上面の一部が露出するように第二貫通孔261が設けられている。ソルダーレジスト層260の厚みは、振動子部110と基体150とを接続固着した際に第二電極パッド115が第二貫通孔261内に挿入できる厚さであり、例えば10〜20μmとなっている。尚、このソルダーレジスト層160の形成方法としては、例えば、スクリーン印刷、ロールコート、スプレーコートなどが用いられる。
また、このソルダーレジスト層260には溝部262が設けられている。この溝部262は、基体150に振動子部110を搭載するときに、振動子部110の第二電極パッド115と基体150の第四電極パッド152とを半田等の導電性接合材119により溶融固着する際に発生するガス化したフラックスを圧電発振器200の外へ排出するために用いられる。溝部262は、ソルダーレジスト層260の外側の辺縁部と第二貫通孔261との間に設けられており、溝部262の長さ方向の一方の端部はソルダーレジスト層260の外側の辺縁部において圧電デバイス100の外部に開口しており、溝部162の他方の端部は第二貫通孔261内に露出した基体150の上面の上部に開口している。尚、溝部262は、フラックスの排出を容易にするために直線状に設けることが好ましい。また、溝部262の深さ寸法は、溝部262に対する第二貫通孔261内に露出した基体150の上面に流出した導電性接合材119の影響を少なくするため、第四電極パッド152上に設けられているソルダーレジスト層260の厚み寸法より小さくなる深さとなっており、更に、溝部162の幅方向の寸法は約50μmとなっている。
このように、第二貫通孔261の大きさが、第四電極パッド152の一部、及び第四電極パッド152の隣り合う他の第四電極パット152側に対向した辺に沿った基体150の上面の一部を露出する大きさであることにより、たとえ導電性接合材119の量が多く第二電極パッド115と第四電極パッド152の間から溢れたとしても、溢れた導電性接合材119は隣り合う他の第四電極パット152側に対向した辺に沿った基体150の上面へ流れ出るので、余分な導電性接合材119が第二電極パッド115と第二電極パッド152の接合を阻害することを抑止することが可能となる。
また、溝部262の第二貫通孔261側の端部が、第二貫通孔261内に露出した基体150の上面の上部に開口していることにより、第二電極パッド115と第四電極パッド152の間にある導電性接合材119だけではなく、第二貫通孔261内に露出した基体150上面に流れ出た導電性接合材119から生じたフラックスも溝部262から圧電発振器200の外部に排出できる。よって、流出した導電性接合材119から生じたフラックスによって第二電極パッド115と第四電極パッド152の間にある導電性接合材119内に生じるボイドも抑止することができる。よって、ボイドに起因する接合面積の低下による接合強度の低下や導電性の低下、或いはボイド内のガスが熱膨張することにより導電性接合材の外部へ噴出し接合部分が破断することを更に抑え、導電性接合材119を介して第二電極パッド115と第四電極パッド152との間の電気信号の安定的で確実な導通が可能となる。
(第二実施形態)
以下に本願発明の第二実施形態に係る圧電デバイスについて説明する。尚、第二実施形態において、第一実施形態の圧電デバイスである圧電発振器100と同じ構成要素の部分には、圧電発振器100の各構成要素に付与した符号と同じ符号を付してその説明を省略する。第二実施形態である圧電振動子300は、図5に示すように、第一電極パッド314と第二電極パッド115と第三電極パッドとの間の接続形態及び電子部品素子がサーミスタ素子370である点において第一実施形態と異なっている。
本発明の第二実施形態として、圧電デバイスの一つである圧電振動子300について説明する。圧電振動子300は、図5に示すように、振動子部310と、基体150と、第二貫通孔161及び溝部162を有するソルダーレジスト層160と、電子部品素子であるサーミスタ素子370とから主に構成されている。このような圧電振動子300は、電子機器等で使用する各種電子部品の動作タイミング基準信号やクロック基準信号を生成出力するために用いられる。
振動子部310は、内部に圧電振動素子120を、且つ外部にサーミスタ素子370を安定的に搭載しつつ、圧電振動素子120及びサーミスタ素子370に電気信号を入力させ圧電振動素子120及びサーミスタ素子370からの電気信号を出力させることに用いる。振動子部310は、素子搭載部材311と、圧電振動素子120と、蓋体130とを備えている。
素子搭載部材311は、圧電振動素子120を安定的に搭載するためのものである。素子搭載部材311は、第一基板312と、枠部113とからなり、第一電極パッド314と、第二電極パッド115と、第三電極パッド316とを備えた構成となっている。
第一基板312は、平面視矩形状の平板であり、その上面に圧電振動素子120を実装し且つ下面にサーミスタ素子370を搭載するための実装部材として機能するものである。第一基板312の上面には、圧電振動素子120へ信号を入出力するための第一電極パッド314が設けられており、下面の四隅には、基体150への信号を入出力させつつ振動子部310を基体150に固着させるための第二電極パッド115が設けられている。また、下面の中央には、後述するサーミスタ素子370へ信号を入出力させつつサーミスタ素子370を固着搭載させるための第三電極パッド316が設けられている。第一基板312の表面及び内部には、第一電極パッド314と所定の第二電極パッド115とのみを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)と、第三電極パッド316と第一電極パッド314と電気的に接続していない第二電極パッド115とのみを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)が設けられている。つまり、第一電極パッド314と第三電極パッド316は圧電振動子300の内部では電気的に接続していない。尚、第一基板312は、例えば、アルミナセラミックスまたはガラス−セラミックス等のセラミック材料、またはガラス−エポキシである絶縁材料から構成されている。
第一電極パッド314は、圧電振動素子120と導電性接着剤118を用いて導通し、圧電振動素子120への信号の入出力をするものである。第一電極パッド314は一対であり、凹部117内に露出した第一基板112の上面の一方の短辺に沿って並びつつ、圧電振動素子120が凹部117内の所定の位置に配置されたときに圧電振動素子120に設けられた接続用電極123に対向する位置に設けられている。この第一電極パッド314は、第一基板312内に設けられた配線パターン(図示せず)により所定の第二電極パッド115とのみ電気的に接続されている。尚、第一電極パッド314は金等の導電性の金属のメタライズ処理によって形成される。
第三電極パッド316は、後述するサーミスタ素子370を接合導通するものであり、第一基板312の下面の中央部分に、サーミスタ素子370に設けられた二個の接続端子に対応する個数及び位置に設けられている。第三電極パッド316は、第二電極パッド115のうち第一電極パッド314と電気的に接続していない第二電極パッド115とのみ電気的に接続されている。尚、第三電極パッド316は金等の導電性の金属のメタライズ処理によって形成される。
基体150は、振動子部310を接合するためのものであると共に、サーミスタ素子370を収容するためのものである。基体150は、第二基板151と第四電極パッド152と、外部接続電極パッド153とを備えている。
第二基板151は、平面視外形が矩形である平板状であり、振動子部310を実装するためのものである。第二基板151の上面には、振動子部310に設けられた第二電極パッド115に対応する位置に第四電極パッド152が設けられており、下面には、外部接続電極パッド153が設けられている。第二基板151の表面及び内部には、上面に設けられた第四電極パッド152と、第二基板151の下面に設けられた外部接続電極パッド153とを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)が設けられている。又、第二基板151の平面視中央には、後述するサーミスタ素子370を収めることが可能な大きさの第一貫通孔154が形成されている。第二基板151は、例えば、アルミナセラミックス又はガラス−セラミックス等のセラミック材料、又はガラス−エポキシである絶縁体から構成されている。
サーミスタ素子370は、素子周囲の温度変化によって電気抵抗が顕著な変化を示すものであり、この抵抗値の変化から電圧が変化するため、抵抗値と電圧との関係及び電圧と温度との関係により、出力された電圧から圧電振動子300の温度情報を得るために用いられる。サーミスタ素子370は、直方体形状であり、両端に接続端子371が設けられている。このサーミスタ素子370は、サーミスタ素子370に設けられた接続端子371と振動子部310の下面に設けられた第三電極パッド316とを、半田等の導電性接合材119によって接合固着することにより、振動子部310と基体150とを接合したときに第一貫通孔154内に露出する振動子部310の下面に搭載される。尚、サーミスタ素子370に代えて、例えば、白金側温抵抗体又はダイオード等の温度情報を発生させる電子部品素子を用いても良い。
第二実施形態における圧電振動子300は、下面に複数の第二電極パッド115が設けられた平面視四角形の第一基板312を有した素子搭載部材311と、第一基板312の上面に実装された圧電振動素子120と、素子搭載部材311に接合することで圧電振動素子120を気密封止する蓋体130とを備えた振動子部310と、平面視四角形の平板であり中央に第一貫通孔154を有する第二基板151と、この第二基板151の上面の第二電極パッド115と対応する位置に設けられた第四電極パッド152と、を有し、第二電極パッド115と第四電極パッド152とが導電性接合材119により接合固着されることで、振動子部310の下面に搭載される基体150と、第一貫通孔154内であって第一基板112の下面に実装されたサーミスタ素子370と、基体150の上面に設けられており、少なくとも第四電極パッド152の一部が露出し、且つ第二電極パッド115が嵌合できる大きさである第二貫通孔161が設けられているソルダーレジスト層160と、第二貫通孔161からソルダーレジスト層160の基体150の外側に沿った辺縁部に至る溝部162と、を備えている。
このような構成により、導電性接合材119を加熱溶融した際にガス化したフラックスが溝部162を介して圧電振動子300の外に排出される。これにより、導電性接合材119が固化した際に導電性接合材119内にボイドが生じることを低減させることができ、ボイドに起因する接合面積の低下による接合強度の低下や導電性の低下、或いはボイド内のガスが熱膨張することにより導電性接合材の外部へ噴出し接合部分が破断することを更に抑え、導電性接合材119を介して第二電極パッド115と第四電極パッド152との間の電気信号の安定的で確実な導通が可能となる。
また、第二実施形態における圧電振動子300は、第二貫通孔161が設けられている位置が、第四電極パッド152の基体150の外側に沿ったソルダーレジスト層160の二つの辺縁部から所定の間隔を開けた位置であり、溝部162がソルダーレジスト層160の二つ辺縁部と第二貫通孔161との間にそれぞれ少なくとも一つずつ設けられている。
このような構成により、フラックスを排出する溝部162を複数且つ分散して設けることができ、導電性接合材119全体からフラックスの排出を効率良く行うことができる。よって、導電性接合材119が固化した際に導電性接合材119内にボイドが生じることを更に低減させることができ、ボイドに起因する接合強度の低下を抑え、導電性接合材119を介して第二電極パッド115と第四電極パッド152との間の電気信号のより安定的で確実な導通が可能となる。
また、第二貫通孔161の大きさが、第二電極パッド115が嵌合できる大きさであることにより、第二電極パッド115と第四電極パッド152とを接合する際に、第二電極パッド115を第二貫通孔161内に嵌合させて、第二貫通孔161内に露出した第四電極パッド152と接合することになる。これにより第二電極パッド115と第四電極パッド152とを接合する際に接合位置がずれて接合することが抑えられ、振動子部310と基体150とを正しい位置で接合することが可能となる。尚、第二貫通孔161内に第二電極パッド115を嵌合することよる振動子部310と基体150の接合位置合わせが必要ない場合は、第二貫通孔161の大きさを第二電極パッド115が嵌合できる大きさに限定することはない。つまり、第二貫通孔161は、第二電極パッド115が内部に挿入できるように、第四電極パッド152の一部が露出し且つ第四電極パッド152の基体150の外側に沿った辺縁部から所定の間隔を開けた位置に設けられていても構わない。
尚、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。例えば、前述した実施形態においては、圧電デバイス内に搭載する周波数決定素子として平面視矩形の圧電振動素子を例示したが、他に、平面視音叉型の圧電振動素子や、弾性表面波素子を用いても構わない。