以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、本技術の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
本技術について、以下の順序で説明を行う。
1.本技術の説明
2.第1の実施形態(塗布型の磁気記録媒体の例)
(1)磁気記録媒体の構成
(2)各層の説明
(3)物性及び構造
(4)磁気記録媒体の製造方法
(5)記録再生装置
(6)効果
(7)変形例
3.第2の実施形態(真空薄膜型の磁気記録媒体の例)
(1)磁気記録媒体の構成
(2)各層の説明
(3)物性及び構造
(4)スパッタ装置の構成
(5)磁気記録媒体の製造方法
(6)効果
(7)変形例
4.第3の実施形態(真空薄膜型の磁気記録媒体の例)
5.実施例
1.本技術の説明
磁気記録カートリッジ1つ当たりの記録容量をさらに増やすことが求められている。例えば、記録容量を増やすために、磁気記録カートリッジに含まれる磁気記録媒体(例えば磁気記録テープ)をより薄くして(全厚を低減して)、磁気記録カートリッジ1つ当たりのテープ長を増加させることが考えられる。
しかしながら、磁気記録媒体がより薄くなることによって、トラック幅方向の寸法変化が起こり易くなりうる。当該寸法変化は、特に長期保存した場合に起こりやすい。幅方向の寸法変化は、例えばオフトラック現象など、磁気記録にとって望ましくない現象を引き起こしうる。オフトラック現象は、磁気ヘッドが読み取るべきトラック位置に対象のトラックが存在しないこと、又は、磁気ヘッドが間違ったトラック位置を読み取ることをいう。
従来は、磁気記録媒体の寸法変化抑制のために、例えば磁気記録媒体の寸法変化抑制のための層を追加するなどの手法が行われていた。
しかしながら、当該層の追加は磁気記録テープの厚みを高める場合があり、前記カートリッジ製品1つ当たりのテープ長を増加させない。
本発明者らは、長尺状の磁気記録媒体の長手方向のテンションを調整することによって当該磁気記録媒体の幅を一定又はほぼ一定に保つことができる記録再生装置における使用に適している磁気記録媒体を検討している。当該記録再生装置は、例えば磁気記録媒体の幅方向の寸法又は寸法変化を検知し、検知結果に基づき長手方向のテンションを調整する。
しかしながら、寸法変化が抑制された磁気記録媒体は、長手方向のテンション変化による幅方向の寸法変化量が小さい。そのため、当該磁気記録媒体は、前記記録再生装置による長手方向のテンション調整を行っても、その幅を一定又はほぼ一定に保つことは難しい。
以上の状況を踏まえ、本発明者らは、薄く、長手方向のテンションを調整する記録再生装置における使用に適しており、且つ、前記記録再生装置における使用のための適性が保存によって低下することを抑制することができる磁気記録媒体について検討した。その結果、本発明者らは特定の構成を有する磁気記録媒体がこれらの要件を満たすことを見出した。すなわち、本技術は、平均厚みtTが、tT≦5.6μmであり、長手方向のテンション変化に対する幅方向の寸法変化量Δwが、660ppm/N≦Δwであり、垂直方向における角形比が65%以上であり、長期保存幅変化量YをY=alog(t)と規定した場合における、長期保存時の幅変形係数aが−0.06≦a≦0.06である、磁気記録媒体を提供する。
本技術に従う磁気記録媒体の平均厚みtTは、5.6μm以下であり、より好ましくは5.5μm以下であり、さらにより好ましくは5.3μm以下、5.2μm以下、5.0μm以下又は4.6μm以下でありうる。前記磁気記録媒体はこのように薄いものであるので、例えば1つの磁気記録カートリッジ中に巻き取られるテープ長をより長くすることができ、これにより1つの磁気記録カートリッジ当たりの記録容量を高めることができる。
本技術に従う磁気記録媒体は、長手方向のテンション変化に対する幅方向の寸法変化量Δwが、660ppm/N以上であり、より好ましくは670ppm/N以上であり、さらにより好ましくは700ppm/N以上、710ppm/N以上、730ppm/N以上、750ppm/N以上、780ppm/N以上、又は800ppm/N以上であってよい。前記磁気記録媒体が上記数値範囲内の寸法変化量Δwを有することが、当該磁気記録媒体の長手方向のテンションを調整することで当該磁気記録媒体の幅を一定に保つことを可能とすることに貢献する。
また、前記寸法変化量Δwの上限は、特に限定されるものではないが、例えば1700000ppm/N以下、好ましくは20000ppm/N以下、より好ましくは8000ppm/N以下、さらにより好ましくは5000ppm/N以下、4000ppm/N以下、3000ppm/N以下、又は2000ppm/N以下でありうる。寸法変化量Δwが大きすぎる場合、製造工程内で安定して走行させることが困難になる場合がある。
寸法変化量Δwの測定方法は、以下2.の(3)において説明する。
本技術に従う磁気記録媒体は、垂直方向における角形比S2が65%以上であり、好ましくは73%以上であり、さらに好ましくは80%以上でありうる。前記磁気記録媒体が上記数値範囲内の角形比S2を有することにより、より優れた電磁変換特性を得ることができる。また、サーボ信号形状が改善され、よりドライブ側の制御がし易くなる。
当該垂直方向における角形比S2の測定方法は、以下2.の(3)において説明する。
以上のとおり、本技術の磁気記録媒体は、薄く、長手方向のテンションを調整する記録再生装置に適しており、且つ電磁変換特性に優れているので、磁気記録カートリッジ1つ当たりの記録容量を大幅に高めることができる。
さらに、本技術に従う磁気記録媒体は、長期保存幅変化量YをY=alog(t)と規定した場合における長期保存時の幅変形係数aが、−0.06μm以上であり、好ましくは−0.05μm以上であり、より好ましくは−0.04μm以上であってよい。また、前記幅変形係数aは、0.06μm以下であり、好ましくは0.05μm以下であり、より好ましくは0.04μm以下であってよい。前記磁気記録媒体の幅変形係数aが上記数値範囲内にあることによって、磁気記録媒体を長期保存した場合にも、前記記録再生装置における使用への適性が変わらない。そのため、例えばオフトラック現象など、磁気記録にとって望ましくない現象が起こりにくくなる。
幅変形係数aの算出方法は、以下2.の(3)において説明する。
本技術に従う磁気記録媒体は、好ましくはバック層を備え、前記バック層の表面粗度Rabは、好ましくは3.0nm≦Rab≦7.5nmであり、より好ましくは3.0nm≦Rab≦7.3nmである。表面粗度Rabが上記数値範囲内にあることが、磁気記録媒体のハンドリング性の向上に貢献する。
前記バック層の表面粗度Rabは、より好ましくは7.2nm以下であり、さらにより好ましくは7.0nm以下、6.5nm以下、6.3nm以下、又は6.0nm以下であってよい。また、前記表面粗度Rabは、より好ましくは3.2nm以上であり、さらにより好ましくは3.4nm以上であってよい。前記バック層の表面粗度Rabが上記数値範囲内にあることによって、特には上記上限値以下であることによって、ハンドリング性の向上に加えて、良好な電磁変換特性を達成することができる。
表面粗度Rabの測定方法は、以下2.の(3)において説明する。
本技術に従う磁気記録媒体は、好ましくは長尺状の磁気記録媒体であり、例えば磁気記録テープ(特には長尺状の磁気記録テープ)でありうる。
本技術に従う磁気記録媒体は、磁性層、ベース層、及びバック層を備えていてもよく、これらの層に加えて、他の層を含んでいてよい。当該他の層は、磁気記録媒体の種類に応じて適宜選択されてよい。前記磁気記録媒体は、例えば塗布型の磁気記録媒体であってよく又は真空薄膜型の磁気記録媒体であってよい。前記塗布型の磁気記録媒体について、以下2.においてより詳細に説明する。真空薄膜型の磁気記録媒体について、以下3.及び4.においてより詳細に説明する。上記3つの層以外に前記磁気記録媒体に含まれる層については、これらの説明を参照されたい。
本技術に従う磁気記録媒体は、例えば少なくとも一つのデータバンドと少なくとも二つのサーボバンドとを有しうる。データバンドの数は例えば2〜10であり、特には3〜6、より特には4又は5でありうる。サーボバンドの数は、例えば3〜11であり、特には4〜7であり、より特には5又は6でありうる。これらサーボバンド及びデータバンドは、例えば長尺状の磁気記録媒体(特には磁気記録テープ)の長手方向に延びるように、特には略平行となるように配置されていてよい。前記データバンド及び前記サーボバンドは、前記磁性層に設けられうる。このようにデータバンド及びサーボバンドを有する磁気記録媒体として、LTO(Linear Tape-Open)規格に従う磁気記録テープを挙げることができる。すなわち、前記磁気記録媒体は、LTO規格に従う磁気記録テープであってよい。例えば、前記磁気記録媒体は、LTO8又はそれ以降の規格(例えばLTO9、LTO10、LTO11、又はLTO12など)に従う磁気記録テープであってよい。
前記長尺状の磁気記録媒体(特には磁気記録テープ)の幅は、例えば5mm〜30mmであり、特には7mm〜25mmであり、より特には10mm〜20mm、さらにより特には11mm〜19mmでありうる。長尺状の磁気記録媒体(特には磁気記録テープ)の長さは、例えば500m〜1500mでありうる。例えばLTO8規格に従うテープ幅は12.65mmであり、長さは960mである。
2.第1の実施形態(塗布型の磁気記録媒体の例)
(1)磁気記録媒体の構成
まず、図1を参照して、第1の実施形態に係る磁気記録媒体10の構成について説明する。磁気記録媒体10は、例えば垂直配向処理を施した磁気記録媒体であって、図1に示すように、長尺状のベース層(基体ともいう)11と、ベース層11の一方の主面上に設けられた下地層(非磁性層)12と、下地層12上に設けられた磁性層(記録層ともいう)13と、ベース層11の他方の主面上に設けられたバック層14とを備える。以下では、磁気記録媒体10の両主面のうち、磁性層13が設けられた側の面を磁性面といい、当該磁性面とは反対側の面(バック層14が設けられた側の面)をバック面という。
磁気記録媒体10は長尺状を有し、記録再生の際には長手方向に走行される。また、磁気記録媒体10は、好ましくは100nm以下、より好ましくは75nm以下、更により好ましくは60nm以下、特に好ましくは50nm以下の最短記録波長で信号を記録可能に構成されていてよく、例えば最短記録波長が上記範囲内にある記録再生装置に用いられうる。この記録再生装置は、記録用ヘッドとしてリング型ヘッドを備えるものであってもよい。記録トラック幅は、例えば2μm以下である。
(2)各層の説明
(ベース層)
ベース層11は、磁気記録媒体10の支持体として機能しうるものであり、例えば可撓性を有する長尺状の非磁性基体であり、特には非磁性のフィルムでありうる。ベース層11の厚みは、例えば2μm以上8μm以下であり、好ましくは2.2μm以上7μm以下であり、より好ましくは2.5μm以上6μm以下であり、さらにより好ましくは2.6μm以上5μm以下でありうる。ベース層11は、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース誘導体、ビニル系樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、及びその他の高分子樹脂のうちの少なくとも1種を含みうる。ベース層11が上記材料のうちの2種以上を含む場合、それらの2種以上の材料は混合されていてもよいし、共重合されていてもよいし、又は、積層されていてもよい。
前記ポリエステル系樹脂は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PCT(ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、PEB(ポリエチレン−p−オキシベンゾエート)、及びポリエチレンビスフェノキシカルボキシレートのうちの1種又は2種以上の混合物であってよい。本技術の好ましい実施態様に従い、ベース層11は、PET又はPENから形成されてよい。
前記ポリオレフィン系樹脂は、例えば、PE(ポリエチレン)及びPP(ポリプロピレン)のうちの1種又は2種以上の混合物であってよい。
前記セルロース誘導体は、例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、CAB(セルロースアセテートブチレート)、及びCAP(セルロースアセテートプロピオネート)のうちの1種又は2種以上の混合物であってよい。
前記ビニル系樹脂は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)及びPVDC(ポリ塩化ビニリデン)のうちの1種又は2種以上の混合物であってよい。
前記芳香族ポリエーテルケトン樹脂は、例えば、PEK(ポリエーテルケトン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEKK(ポリエーテルケトンケトン)、及びPEEKK(ポリエーテルエーテルケトンケトン)のうちの1種又は2種以上の混合物であってよい。本技術の好ましい実施態様に従い、ベース層11は、PEEKから形成されてよい。
前記その他の高分子樹脂は、例えば、PA(ポリアミド、ナイロン)、芳香族PA(芳香族ポリアミド、アラミド)、PI(ポリイミド)、芳香族PI(芳香族ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)、芳香族PAI(芳香族ポリアミドイミド)、PBO(ポリベンゾオキサゾール、例えばザイロン(登録商標))、ポリエーテル、ポリエーテルエステル、PES(ポリエーテルサルフォン)、PEI(ポリエーテルイミド)、PSF(ポリスルフォン)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PC(ポリカーボネート)、PAR(ポリアリレート)、及びPU(ポリウレタン)のうちの1種又は2種以上の混合物であってよい。
(磁性層)
磁性層13は、例えば垂直記録層でありうる。磁性層13は、磁性粉を含みうる。磁性層13は、磁性粉に加えて、例えば結着剤及び導電性粒子をさらに含みうる。磁性層13は、必要に応じて、例えば潤滑剤、研磨剤、及び防錆剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
磁性層13の平均厚みtmは、好ましくは35nm≦tm≦120nmであり、より好ましくは35nm≦tm≦100nmであり、特に好ましくは35nm≦tm≦90nmでありうる。磁性層13の平均厚みtmが上記数値範囲内にあることが、電磁変換特性の向上に貢献する。
磁性層13の平均厚みtmは以下のようにして求められる。まず、磁気記録媒体10を、その主面に対して垂直に薄く加工して試験片を作製し、その試験片の断面を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)により、下記の条件で観察を行う。
装置:TEM(日立製作所製H9000NAR)
加速電圧:300kV
倍率:100,000倍
次に、得られたTEM像を用い、磁気記録媒体10の長手方向で少なくとも10点以上の位置で磁性層13の厚みを測定した後、それらの測定値を単純平均(算術平均)して磁性層13の平均厚みtm(nm)とする。
磁性層13は、好ましくは垂直配向している磁性層である。本明細書内において、垂直配向とは、磁気記録媒体10の長手方向(走行方向)に測定した角形比S1が35%以下であることをいう。当該角形比S1の測定方法は、以下で別途説明する。
なお、磁性層13は、面内配向(長手配向)している磁性層であってもよい。すなわち、磁気記録媒体10が水平記録型の磁気記録媒体であってもよい。しかしながら、高記録密度化という点で、垂直配向がより好ましい。
(磁性粉)
磁性層13に含まれる磁性粉をなす磁性粒子として、例えばイプシロン型酸化鉄(ε酸化鉄)、ガンマヘマタイト、マグネタイト、二酸化クロム、コバルト被着酸化鉄、六方晶フェライト、バリウムフェライト(BaFe)、Coフェライト、ストロンチウムフェライト、及びメタル(金属)などを挙げることができるが、これらに限定されない。前記磁性粉は、これらのうちの1種であってよく、又は、2種以上の組合せであってもよい。特に好ましくは、前記磁性粉は、ε酸化鉄磁性粉、バリウムフェライト磁性粉、コバルトフェライト磁性粉、又はストロンチウムフェライト磁性粉を含みうる。なお、ε酸化鉄はGa及び/又はAlを含んでいてもよい。これらの磁性粒子については、例えば磁性層13の製造方法、テープの規格、及びテープの機能などの要因に基づいて当業者により適宜選択されてよい。
磁性粉の平均粒子サイズ(平均最大粒子サイズ)Dは、好ましくは22nm以下、より好ましくは8nm以上22nm以下、更により好ましくは10nm以上20nm以下でありうる。
上記の磁性粉の平均粒子サイズDは、以下のようにして求められる。まず、測定対象となる磁気記録媒体10をFIB(Focused Ion Beam)法などにより加工して薄片を作製し、TEMにより薄片の断面観察を行う。次に、撮影したTEM写真から500個のε酸化鉄粒子を無作為に選び出し、それぞれの粒子の最大粒子サイズdmaxを測定して、磁性粉の最大粒子サイズdmaxの粒度分布を求める。ここで、“最大粒子サイズdmax”とは、いわゆる最大フェレ径を意味し、具体的には、ε酸化鉄粒子の輪郭に接するように、あらゆる角度から引いた2本の平行線間の距離のうち最大のものをいう。その後、求めた最大粒子サイズdmaxの粒度分布から最大粒子サイズdmaxのメジアン径(50%径、D50)を求めて、これを磁性粉の平均粒子サイズ(平均最大粒子サイズ)Dとする。
磁性粒子の形状は、磁性粒子の結晶構造に依拠している。例えば、BaFe及びストロンチウムフェライトは六角板状でありうる。ε酸化鉄は球状でありうる。コバルトフェライトは立方状でありうる。メタルは紡錘状でありうる。磁気記録媒体10の製造工程においてこれらの磁性粒子が配向される。
本技術の一つの好ましい実施態様に従い、前記磁性粉は、好ましくはε酸化鉄を含むナノ粒子(以下「ε酸化鉄粒子」という。)の粉末を含みうる。ε酸化鉄粒子は微粒子でも高保磁力を得ることができる。ε酸化鉄粒子に含まれるε酸化鉄は、磁気記録媒体10の厚み方向(垂直方向)に優先的に結晶配向していることが好ましい。
ε酸化鉄粒子は、球状若しくはほぼ球状を有しているか、又は、立方体状若しくはほぼ立方体状を有している。ε酸化鉄粒子が上記のような形状を有しているため、磁性粒子としてε酸化鉄粒子を用いた場合、磁性粒子として六角板状のバリウムフェライト粒子を用いた場合に比べて、媒体の厚み方向における粒子同士の接触面積を低減し、粒子同士の凝集を抑制できる。したがって、磁性粉の分散性を高め、より良好なSNR(Signal-to-Noise Ratio)を得ることができる。
ε酸化鉄粒子は、コアシェル型構造を有する。具体的には、ε酸化鉄粒子は、図2に示すように、コア部21と、このコア部21の周囲に設けられた2層構造のシェル部22とを備える。2層構造のシェル部22は、コア部21上に設けられた第1シェル部22aと、第1シェル部22a上に設けられた第2シェル部22bとを備える。
コア部21は、ε酸化鉄を含む。コア部21に含まれるε酸化鉄は、ε−Fe2O3結晶を主相とするものが好ましく、単相のε−Fe2O3からなるものがより好ましい。
第1シェル部22aは、コア部21の周囲のうちの少なくとも一部を覆っている。具体的には、第1シェル部22aは、コア部21の周囲を部分的に覆っていてもよいし、コア部21の周囲全体を覆っていてもよい。コア部21と第1シェル部22aの交換結合を十分なものとし、磁気特性を向上する観点からすると、コア部21の表面全体を覆っていることが好ましい。
第1シェル部22aは、いわゆる軟磁性層であり、例えば、α−Fe、Ni−Fe合金又はFe−Si−Al合金などの軟磁性体を含みうる。α−Feは、コア部21に含まれるε酸化鉄を還元することにより得られるものであってもよい。
第2シェル部22bは、酸化防止層としての酸化被膜である。第2シェル部22bは、α酸化鉄、酸化アルミニウム、又は酸化ケイ素を含みうる。α酸化鉄は、例えばFe3O4、Fe2O3、及びFeOのうちの少なくとも1種の酸化鉄を含みうる。第1シェル部22aがα−Fe(軟磁性体)を含む場合には、α酸化鉄は、第1シェル部22aに含まれるα−Feを酸化することにより得られるものであってもよい。
ε酸化鉄粒子が、上述のように第1シェル部22aを有することで、熱安定性を確保することができ、これによりコア部21単体の保磁力Hcを大きな値に保ちつつ且つ/又はε酸化鉄粒子(コアシェル型粒子)全体としての保磁力Hcを記録に適した保磁力Hcに調整できる。また、ε酸化鉄粒子が、上述のように第2シェル部22bを有することで、磁気記録媒体10の製造工程及びその工程前において、ε酸化鉄粒子が空気中に暴露されて、粒子表面に錆びなどが発生することにより、ε酸化鉄粒子の特性が低下することを抑制することができる。したがって、磁気記録媒体10の特性劣化を抑制することができる。
ε酸化鉄粒子は、図6に示されるとおり、単層構造のシェル部23を有していてもよい。この場合、シェル部23は、第1シェル部22aと同様の構成を有する。但し、ε酸化鉄粒子の特性劣化を抑制する観点からすると、ε酸化鉄粒子が2層構造のシェル部22を有していることがより好ましい。
ε酸化鉄粒子は、コアシェル型構造に代えて添加剤を含んでいてもよく、又は、コアシェル型構造を有すると共に添加剤を含んでいてもよい。これらの場合、ε酸化鉄粒子のFeの一部が添加剤で置換される。ε酸化鉄粒子が添加剤を含むことによっても、ε酸化鉄粒子全体の保磁力Hcを記録に適した保磁力Hcに調整できるため、記録容易性を向上することができる。添加剤は、鉄以外の金属元素、好ましくは3価の金属元素、より好ましくはアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)からなる群より選ばれる1種以上である。
具体的には、添加剤を含むε酸化鉄は、ε−Fe2−xMxO3結晶(ここで、Mは鉄以外の金属元素、好ましくは3価の金属元素、より好ましくは、Al、Ga、及びInからなる群より選ばれる1種以上である。xは、例えば0<x<1である。)である。
本技術の他の好ましい実施態様に従い、前記磁性粉は、バリウムフェライト(BaFe)磁性粉であってもよい。バリウムフェライト磁性粉は、バリウムフェライトを主相とする鉄酸化物の磁性粒子(以下「バリウムフェライト粒子」という。)を含む。バリウムフェライト磁性粉は、例えば高温多湿環境でも抗磁力が落ちないなど、データ記録の信頼性が高い。このような観点から、バリウムフェライト磁性粉は、前記磁性粉として好ましい。
バリウムフェライト磁性粉の平均粒子サイズは、50nm以下、より好ましくは10nm以上40nm以下、さらにより好ましくは12nm以上25nm以下である。
磁性層13が磁性粉としてバリウムフェライト磁性粉を含む場合、磁性層13の平均厚みtm[nm]が、35nm≦tm≦100nmであることが好ましい。また、磁気記録媒体10の厚み方向(垂直方向)に測定した保磁力Hcが、好ましくは160kA/m以上280kA/m以下、より好ましくは165kA/m以上275kA/m以下、更により好ましくは170kA/m以上270kA/m以下である。
本技術のさらに他の好ましい実施態様に従い、磁性粉は、コバルトフェライト磁性粉でありうる。コバルトフェライト磁性粉は、コバルトフェライトを主相とする鉄酸化物の磁性粒子(以下「コバルトフェライト磁性粒子」という。)を含む。コバルトフェライト磁性粒子は、一軸異方性を有することが好ましい。コバルトフェライト磁性粒子は、例えば、立方体状又はほぼ立方体状を有している。コバルトフェライトは、Coを含むコバルトフェライトである。コバルトフェライトが、Co以外にNi、Mn、Al、Cu、及びZnからなる群より選ばれる1種以上をさらに含んでいてもよい。
コバルトフェライトは、例えば以下の式(1)で表される平均組成を有する。
CoxMyFe2Oz・・・(1)
(但し、式(1)中、Mは、例えば、Ni、Mn、Al、Cu、及びZnからなる群より選ばれる1種以上の金属である。xは、0.4≦x≦1.0の範囲内の値である。yは、0≦y≦0.3の範囲内の値である。但し、x及びyは(x+y)≦1.0の関係を満たす。zは3≦z≦4の範囲内の値である。Feの一部が他の金属元素で置換されていてもよい。)
コバルトフェライト磁性粉の平均粒子サイズは、好ましくは25nm以下、より好ましくは23nm以下である。コバルトフェライト磁性粉の保磁力Hcは、好ましくは2500Oe以上、より好ましくは2600Oe以上3500Oe以下である。
本技術のさらに他の好ましい実施態様に従い、磁性粉が、六方晶フェライトを含有するナノ粒子(以下「六方晶フェライト粒子」という。)の粉末を含みうる。六方晶フェライト粒子は、例えば、六角板状又はほぼ六角板状を有する。六方晶フェライトは、好ましくはBa、Sr、Pb、及びCaのうちの少なくとも1種、より好ましくはBa及びSrのうちの少なくとも1種を含みうる。六方晶フェライトは、具体的には例えばバリウムフェライト又はストロンチウムフェライトであってもよい。バリウムフェライトは、Ba以外に、Sr、Pb、及びCaのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。ストロンチウムフェライトは、Sr以外に、Ba、Pb、及びCaのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
より具体的には、六方晶フェライトは、一般式MFe12O19で表される平均組成を有しうる。ここで、Mは、例えばBa、Sr、Pb、及びCaのうちの少なくとも1種の金属、好ましくはBa及びSrのうちの少なくとも1種の金属である。Mが、Baと、Sr、Pb、及びCaからなる群より選ばれる1種以上の金属との組み合わせであってもよい。また、Mが、Srと、Ba、Pb、及びCaからなる群より選ばれる1種以上の金属との組み合わせであってもよい。上記一般式においてFeの一部が他の金属元素で置換されていてもよい。
磁性粉が六方晶フェライト粒子の粉末を含む場合、磁性粉の平均粒子サイズは、好ましくは50nm以下、より好ましくは10nm以上40nm以下、さらにより好ましくは15nm以上30nm以下である。
(結着剤)
結着剤としては、ポリウレタン系樹脂又は塩化ビニル系樹脂などに架橋反応を付与した構造の樹脂が好ましい。しかしながら結着剤はこれらに限定されるものではなく、磁気記録媒体10に対して要求される物性などに応じて、その他の樹脂を適宜配合してもよい。配合する樹脂としては、通常、塗布型の磁気記録媒体10において一般的に用いられる樹脂であれば、特に限定されない。
前記結着剤として、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニル共重合体、メタクリル酸エステル−エチレン共重合体、ポリ弗化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、及び合成ゴムなどが挙げられる。
また、前記結着剤として、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂が用いられてもよく、これらの例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミン樹脂、及び尿素ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
また、上述した各結着剤には、磁性粉の分散性を向上させる目的で、−SO3M、−OSO3M、−COOM、P=O(OM)2などの極性官能基が導入されていてもよい。ここで、式中Mは、水素原子、又は、リチウム、カリウム、及びナトリウムなどのアルカリ金属である。
更に、極性官能基としては、−NR1R2、−NR1R2R3+X−の末端基を有する側鎖型のもの、>NR1R2+X−の主鎖型のものが挙げられる。ここで、式中R1、R2、R3は、水素原子又は炭化水素基であり、X−は、弗素、塩素、臭素、若しくはヨウ素などのハロゲン元素イオン、又は、無機若しくは有機イオンである。また、極性官能基としては、−OH、−SH、−CN、及びエポキシ基なども挙げられる。
(添加剤)
磁性層13は、非磁性補強粒子として、酸化アルミニウム(α、β、又はγアルミナ)、酸化クロム、酸化珪素、ダイヤモンド、ガーネット、エメリー、窒化ホウ素、チタンカーバイト、炭化珪素、炭化チタン、酸化チタン(ルチル型またはアナターゼ型の酸化チタン)などをさらに含有していてもよい。
(下地層)
下地層12は、非磁性粉及び結着剤を主成分として含む非磁性層である。上述の磁性層13に含まれる結着剤に関する説明が、下地層12に含まれる結着剤についても当てはまる。下地層12は、必要に応じて、導電性粒子、潤滑剤、硬化剤、及び防錆剤などのうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
下地層12の平均厚みは、好ましくは0.6μm以上2.0μm以下、より好ましくは0.8μm以上1.4μm以下である。なお、下地層12の平均厚みは、磁性層13の平均厚みtmと同様にして求められる。但し、TEM像の倍率は、下地層12の厚みに応じて適宜調整される。
(非磁性粉)
下地層12に含まれる非磁性粉は、例えば、無機粒子及び有機粒子から選ばれる少なくとも1種を含みうる。1種の非磁性粉を単独で用いてもよいし、又は、2種以上の非磁性粉を組み合わせて用いてもよい。無機粒子は、例えば、金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、及び金属硫化物から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせを含む。より具体的には、無機粒子は、例えばオキシ水酸化鉄、ヘマタイト、酸化チタン、及びカーボンブラックから選ばれる1種又は2種以上でありうる。非磁性粉の形状としては、例えば、針状、球状、立方体状、及び板状などの各種形状が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。
(バック層)
バック層14は、結着剤及び非磁性粉を含みうる。バック層14は、必要に応じて潤滑剤、硬化剤、及び帯電防止剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。上述の下地層12に含まれる結着剤及び非磁性粉について述べた説明が、バック層14に含まれる結着剤及び非磁性粉についても当てはまる。
バック層14に含まれる無機粒子の平均粒子サイズは、好ましくは10nm以上150nm以下、より好ましくは15nm以上110nm以下である。無機粒子の平均粒子サイズは、上記の磁性粉の平均粒子サイズDと同様にして求められる。
バック層14の平均厚みtbは、tb≦0.6μmであることが好ましい。バック層14の平均厚みtbが上記範囲内にあることで、磁気記録媒体10の平均厚みtTをtT≦5.6μmにした場合でも、下地層12及びベース層11の厚みを厚く保つことが出来、これにより磁気記録媒体10の記録再生装置内での走行安定性を保つことが出来る。
バック層14の平均厚みtbは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気記録媒体10を準備し、それを250mmの長さに切り出し、サンプルを作製する。次に、測定装置としてMitutoyo社製レーザーホロゲージを用いて、サンプルの異なる場
所の厚みを5点以上測定し、それらの測定値を単純平均(算術平均)して、平均値tT[μm]を算出する。続いて、サンプルのバック層14をMEK(メチルエチルケトン)等の溶剤や希塩酸等で除去した後、再び上記のレーザーホロゲージを用いてサンプルの異なる場所の厚みを5点以上測定し、それらの測定値を単純に平均(算術平均)して平均値tB[μm]を算出する。その後、以下の式よりバック層14の平均厚みtb[μm]を求める。
tb[μm]=tT[μm]−tB[μm]
(3)物性及び構造
(磁気記録媒体の平均厚みtT)
磁気記録媒体10の平均厚みtTは、tT≦5.6μmである。磁気記録媒体10の平均厚みtTがtT≦5.6μmであると、1データカートリッジ内に記録できる記録容量を従来よりも高めることができる。磁気記録媒体10の平均厚みtTの下限値は特に限定されるものではないが、例えば、3.5μm≦tTである。
磁気記録媒体10の平均厚みtTは、バック層14の平均厚みtbの測定方法において説明した平均値tTの測定方法により求められる。
(寸法変化量Δw)
磁気記録媒体10の長手方向のテンション変化に対する磁気記録媒体10の幅方向の寸法変化量Δw[ppm/N]は、660ppm/N≦Δwであり、より好ましくは670ppm/N≦Δwであり、より好ましくは700ppm/N≦Δwであり、より好ましくは710ppm/N≦Δwであり、より好ましくは730ppm/N≦Δwであり、より好ましくは750ppm/N≦Δwであり、さらにより好ましくは780ppm/N≦Δwであり、特に好ましくは800ppm/N≦Δwである。寸法変化量ΔwがΔw<640ppm/Nであると、記録再生装置による長手方向のテンションの調整では、幅の変化を抑制することが困難となる虞がある。寸法変化量Δwの上限値は特に限定されるものではないが、例えばΔw≦1700000ppm/N、好ましくはΔw≦20000ppm/N、より好ましくはΔw≦8000ppm/N、さらにより好ましくはΔw≦5000ppm/N、Δw≦4000ppm/N、Δw≦3000ppm/N、Δw≦2000ppm/Nでありうる。
当業者は、寸法変化量Δwを適宜設定することができる。例えば、寸法変化量Δwは、ベース層11の厚み及び/又はベース層11の材料を選択することにより所望の値に設定されうる。また、寸法変化量Δwは、例えばベース層を構成するフィルムの縦横方向の延伸強度を調整することによって、所望の値に設定されてもよい。例えば、幅方向により強く延伸することによって、Δwはより低下し、反対に、縦方向における延伸を強めることによって、Δwは上昇する。
寸法変化量Δwは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気記録媒体10を準備し、それを250mmの長さに切り出し、サンプル10Sを作製する。次に、サンプル10Sの長手方向に0.2N、0.6N、1.0Nの順で荷重をかけ、0.2N、0.6N、及び1.0Nの荷重におけるサンプル10Sの幅を測定する。続いて、以下の式より寸法変化量Δwを求める。なお、0.6Nの荷重をかけた場合の測定は、測定において異常が生じていないかを確認するため(特にはこれら3つの測定結果が直線的になっていることを確認するため)に行われるものであり、その測定結果は以下の式において用いられない。
(但し、式中、D(0.2N)及びD(1.0N)はそれぞれ、サンプル10Sの長手方向に0.2N及び1.0Nの荷重をかけたときのサンプル10Sの幅を示す。)
各荷重をかけたときのサンプル10Sの幅は以下のようにして測定される。まず、測定装置としてキーエンス社製のデジタル寸法測定器LS−7000を組み込んだ、図3Aに示す測定装置を準備し、この測定装置にサンプル10Sをセットする。具体的には、長尺状のサンプル(磁気記録媒体)10Sの一端を固定部231により固定する。次に、図3Aに示されるとおり、サンプル10Sを、5本の略円柱状且つ棒状の支持部材232に乗せる。サンプル10Sは、そのバック面が5本の支持部材232に接するように、これら支持部材に乗せられる。5本の支持部材232(特にその表面)はいずれもステンレス鋼SUS304から形成されており、その表面粗さRz(最大高さ)は0.15μm〜0.3μmである。
5本の棒状の支持部材232の配置を、図3Bを参照しながら説明する。図3Bに示されるとおり、サンプル10Sは、5本の支持部材232に乗せられている。5本の支持部材232について、以下では、固定部231に最も近いほうから「第1支持部材」、「第2支持部材」、「第3支持部材」(スリット232Aを有する)、「第4支持部材」、及び「第5支持部材」(重り233に最も近い)という。これら5本の支持部材の直径は、7mmである。第1支持部材と第2支持部材との距離d1(特にはこれら支持部材の中心の間の距離)は20mmである。第2支持部材と第3支持部材との距離d2は30mmである。第3支持部材と第4支持部材との距離d3は30mmである。第4支持部材と第5支持部材との距離d4は20mmである。また、サンプル10Sのうち第2支持部材、第3支持部材、及び第4支持部材の間に乗っている部分が、重力方向に対して略垂直の平面を形成するように、これら3つの支持部材は配置されている。また、サンプル10Sが、第1支持部材と第2支持部材との間では、前記略垂直の平面に対してθ1=30°の角度を形成するように、第1支持部材及び第2支持部材は配置されている。さらに、サンプル10Sが、第4支持部材と第5支持部材との間では、前記略垂直の平面に対してθ2=30°の角度を形成するように、第4支持部材及び第5支持部材は配置されている。
また、5本の支持部材232のうち、第3支持部材は回転しないように固定されているが、その他の4本の支持部材は全て回転可能である。
サンプル10Sは、支持部材232上でサンプル10Sの幅方向に移動しないように保持される。なお、支持部材232のうち、発光器234及び受光器235の間に位置し且つ固定部231と荷重をかける部分とのほぼ中心に位置する支持部材232にはスリット232Aが設けられている。スリット232Aを介して発光器234から受光器235に光Lが照射されるようになっている。スリット232Aのスリット幅は1mmであり、光Lは、スリット232Aの枠に遮られることなく、当該幅を通り抜けられる。
続いて、温度25℃相対湿度50%の一定環境下に制御されたチャンバー内に測定装置を収容した後、サンプル10Sの他端に、0.2Nの荷重をかけるための重り233を取り付け、サンプル10Sを上記環境内に2時間置く。2時間置いた後に、サンプル10Sの幅を測定する。次に、0.2Nの荷重をかけるための重りを、0.6Nの荷重をかけるための重りに変更し、当該変更の5分後にサンプル10Sの幅を測定する。最後に、1.0Nの荷重をかけるための重りに変更し、当該変更の5分後にサンプル10Sの幅を測定する。
以上のとおり、重り233の重さを調整することによりサンプル10Sの長手方向に加わる荷重を変化させることができる。各荷重が加えられた状態で、発光器234から受光器235に向けて光Lを照射し、長手方向に荷重が加えられたサンプル10Sの幅を測定する。当該幅の測定は、サンプル10Sがカールしていない状態で行われる。発光器234及び受光器235は、デジタル寸法測定器LS−7000に備えられているものである。
(温度膨張係数α)
磁気記録媒体10の温度膨張係数α[ppm/℃]は、好ましくは5.5ppm/℃≦α≦9ppm/℃であり、より好ましくは5.9ppm/℃≦α≦8ppm/℃でありうる。温度膨張係数αが上記範囲内にあると、記録再生装置による磁気記録媒体10の長手方向のテンションの調整により、磁気記録媒体10の幅の変化を更に抑制することができる。
温度膨張係数αは以下のようにして求められる。まず、寸法変化量Δwの測定方法と同様にしてサンプル10Sを作製し、寸法変化量Δwの測定方法と同様の測定装置にサンプル10Sをセットしたのち、測定装置を温度29℃相対湿度24%の一定環境に制御されたチャンバー内に収容する。次に、サンプル10Sの長手方向に0.2Nの荷重をかけ、上記環境にサンプル10Sを2時間置く。その後、相対湿度24%を保持したまま、45℃、29℃、及び10℃の順で温度を変え、45℃、29℃、及び10℃におけるサンプル10Sの幅を測定し、以下の式より温度膨張係数αを求める。これら温度での測定は、各温度への到達後2時間後に行われる。なお、29℃の温度における測定は、測定において異常が生じていないかを確認するため(特にはこれら3つの測定結果が直線的になっていることを確認するため)に行われるものであり、その測定結果は以下の式において用いられない。
(但し、式中、D(45℃)及びD(10℃)はそれぞれ、温度45℃及び10℃におけるサンプル10Sの幅を示す。)
(湿度膨張係数β)
磁気記録媒体10の湿度膨張係数β[ppm/%RH]は、好ましくはβ≦5.5ppm/%RHであり、より好ましくはβ≦5.2ppm/%RHであり、さらにより好ましくはβ≦5.0ppm/%RHでありうる。湿度膨張係数βが上記範囲内にあると、記録再生装置による磁気記録媒体10の長手方向のテンションの調整により、磁気記録媒体10の幅の変化を更に抑制することができる。
湿度膨張係数βは以下のようにして求められる。まず、寸法変化量Δwの測定方法と同様にしてサンプル10Sを作製し、寸法変化量Δwの測定方法と同様の測定装置にサンプル10Sをセットしたのち、測定装置を温度29℃相対湿度24%の一定環境に制御されたチャンバー内に収容する。次に、サンプル10Sの長手方向に0.2Nの荷重をかけ、上記環境中にサンプル10Sを2時間置く。その後、温度29℃を保持したまま、80%、24%、10%の順で相対湿度を変え、80%、24%、及び10%におけるサンプル10Sの幅を測定し、以下の式より湿度膨張係数βを求める。これら湿度での測定は、各湿度に到達した直後に行われる。なお、24%の湿度における測定は、測定において異常が生じていないかを確認するために行われるものであり、その測定結果は以下の式において用いられない。
(但し、式中、D(80%)、D(10%)はそれぞれ、相対湿度80%、10%におけるサンプル10Sの幅を示す。)
(ポアソン比ρ)
磁気記録媒体10のポアソン比ρは、好ましくは0.25≦ρであり、より好ましくは0.29≦ρであり、さらにより好ましくは0.3≦ρでありうる。ポアソン比ρが上記範囲内であると、記録再生装置による磁気記録媒体10の長手方向のテンションの調整による磁気記録媒体10の幅の変化をより行いやすくなる。
ポアソン比ρは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気記録媒体10を準備し、それを150mmの長さに切り出しサンプルを作製したのち、そのサンプルの中央部に6mm×6mmのサイズのマークを付与する。次に、チャック間の距離が100mmとなるようにサンプルの長手方向の両端部をチャックし、初期荷重2Nをかけ、その際のサンプルの長手方向のマークの長さを初期長とし、サンプルの幅方向のマークの幅を初期幅とする。続いて、引張速度0.5mm/minで、インストロンタイプの万能引張試験装置にて引張り、キーエンス製イメージセンサーにて、サンプルの長手方向のマークの長さ及びサンプルの幅方向のマークの幅それぞれの寸法変化量を測定する。その後、以下の式よりポアソン比ρを求める。
(長手方向の弾性限界値σMD)
磁気記録媒体10の長手方向の弾性限界値σMD[N]が、好ましくは0.7N≦σMDであり、より好ましくは0.75N≦σMDであり、さらにより好ましくは0.8N≦σMDでありうる。弾性限界値σMDが上記範囲であると、記録再生装置による磁気記録媒体10の長手方向のテンションの調整により、磁気記録媒体10の幅の変化を更に抑制することができる。また、ドライブ側の制御がし易くなる。磁気記録媒体10の長手方向の弾性限界値σMDの上限値は特に限定されるものではないが、例えばσMD≦5.0N
である。弾性限界値σMDが、弾性限界測定を行う際の速度Vに依らないことが好ましい。弾性限界値σMDが上記速度Vに依らないことで、記録再生装置における磁気記録媒体10の走行速度や、記録再生装置のテンション調整速度とその応答性に影響を受ける事無く、効果的に磁気記録媒体10の幅の変化を抑制できるからである。弾性限界値σMDは、例えば、下地層12、磁性層13、及びバック層14の硬化条件の選択、及び/又は、ベース層11の材質の選択により所望の値に設定される。例えば、下地層形成用塗料、磁性層形成用塗料、及びバック層形成用塗料の硬化時間を長くするほど又は硬化温度を上げるほど、これらの各塗料に含まれるバインダと硬化剤の反応が促進する。これにより、弾性的な特徴が向上し、弾性限界値σMDが向上する。
弾性限界値σMDは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気記録媒体10を準備し、それを150mmの長さに切り出しサンプルを作製し、チャック間距離λ0がλ0=100mmとなるように、万能引張試験装置にサンプルの長手方向の両端をチャックする。次に、引張速度0.5mm/minでサンプルを引張り、チャック間距離λ(mm)に対する荷重σ(N)を連続的に計測する。続いて、得られたλ(mm)、σ(N)のデータを用い、Δλ(%)とσ(N)の関係をグラフ化する。但し、Δλ(%)は以下の式により与えられる。
Δλ(%)=((λ−λ0)/λ0)×100
次に、上記のグラフ中、σ≧0.2Nの領域で、グラフが直線となる領域を算出し、その最大荷重σを弾性限界値σMD(N)とする。
(磁性面とバック面との間の摩擦係数μ)
磁気記録媒体10の前記磁性層側の表面と前記バック層側の表面との間の摩擦係数μ(以下「層間摩擦係数μ」ともいう)は、好ましくは0.20≦μ≦0.80であり、より好ましくは0.20≦μ≦0.78であり、さらにより好ましくは0.25≦μ≦0.75である。前記摩擦係数μが上記範囲内にあると、磁気記録媒体10のハンドリング性が向上する。例えば、前記摩擦係数μが上記範囲内にあると、例えば磁気記録媒体10をリール(例えば図5のリール10Cなど)に巻いたときに巻ズレが発生することを抑制できる。より具体的には、摩擦係数μが小さすぎる場合(例えばμ<0.18である場合)と、カートリッジリールに既に巻かれている磁気記録媒体10のうち最外周に位置する部分の磁性面と、その外側に新たに巻こうとしている磁気記録媒体10のバック面との間の層間摩擦が極端に低い状態となり、新たに巻こうとしている磁気記録媒体10が、既に巻かれている磁気記録媒体10のうち最外周に位置する部分の磁性面からズレやすくなる。したがって、磁気記録媒体10の巻ズレが発生する。一方、摩擦係数μが大きすぎる場合(例えば0.82<μ又は0.80<μである場合)、ドライブ側リールの最外周から正に巻き出されようとしている磁気記録媒体10のバック面と、その直下に位置する、未だドライブ側リールに巻かれたままの磁気記録媒体10の磁性面との間の層間摩擦が極端に高い状態となり、上記バック面と上記磁性面とが貼り付いた状態となる。したがって、カートリッジリールへと向かう磁気記録媒体10の動作が不安定となり、これにより磁気記録媒体10の巻ズレが発生する。
前記摩擦係数μは以下のようにして求められる。まず、1インチ径の円柱に、1/2インチ幅の磁気記録媒体10をバック面を表にして巻き付け、磁気記録媒体10を固定する。次に、この円柱に対し、1/2インチ幅の磁気記録媒体10を今度は磁性面が接触する様に抱き角θ(°)=180°+1°〜180°−10°で接触させ、磁気記録媒体10の一端を可動式ストレインゲージと繋ぎ、他方端にテンションT0=0.6(N)を付与する。可動式ストレインゲージを0.5mm/sにて8往復させた際の各往路でのストレインゲージの読みT1(N)〜T8(N)を測定し、T4〜T8の平均値をTave(N)とする。その後、以下の式より摩擦係数μを求める。
(バック層の表面粗度Rab)
バック層14の表面粗度(すなわち、バック面の表面粗度)Rab[nm]は、好ましくは7.5nm以下であり、より好ましくは7.2nm以下であり、さらにより好ましくは7.0nm以下、6.5nm以下、6.3nm以下、又は6.0nm以下である。また、前記表面粗度Rabは、好ましくは3.0nm以上であり、より好ましくは3.2nm以上であり、さらにより好ましくは3.4nm以上である。バック層の表面粗度Rabが上記範囲内にあると、磁気記録媒体10のハンドリング性を向上させることができる。また、磁気記録媒体10の巻き取り時に、磁性層の表面に及ぼす影響を低減でき、電磁変換特性への悪影響を抑制することができる。ハンドリング性と電磁変換特性とは相反する特性であるが、上記数値範囲内の表面粗度Rabが、これらの両立を可能とする。
バック面の表面粗度Rabは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気記録媒体10を準備し、そのバック面を上にしてスライドガラスに貼り付け(すなわち磁性面がスライドガラスに貼り付けられる)、サンプル片とする。次に、そのサンプル片のバック面を下記の光干渉を用いた非接触粗度計により、面粗度を測定する。
装置:光干渉を用いた非接触粗度計
(株式会社菱化システム製非接触表面・層断面形状計測システムVertScan R5500GL-M100-AC)
対物レンズ:20倍(約237μm×178μm視野)
分解能:640points×480points
測定モード:phase
波長フィルター:520nm
面補正:2次多項式近似面にて補正
上述のようにして、長手方向で少なくとも5点以上の位置にて面粗度を測定したのち、各位置で得られた表面プロファイルから自動計算されたそれぞれの算術平均粗さSa(nm)の平均値をバック面の表面粗度Rab(nm)とする。
(幅変形係数a)
磁気記録媒体10の長期保存幅変化量YをY=alog(t)と規定した場合における、長期保存時の幅変形係数aは−0.06μm≦a≦0.06μmである。幅変形係数aが上記数値範囲内にあることによって、磁気記録媒体を長期保存した場合にも、前記記録再生装置における使用への適性が変わらない。そのため、例えばオフトラック現象など、磁気記録にとって望ましくない現象が起こりにくくなる。
幅変形係数aの算出方法を、図11を参照しながら説明する。図11(a)は、磁気記録テープの磁性層に形成されるデータバンド及びサーボバンドの模式図である。図11(a)に示されるとおり、前記磁性層は4つのデータバンドd0〜d3を有する。前記磁性層は、各データバンドを2つのサーボバンドで挟むように、合計で5つのサーボバンドS0〜S4を有する。図11(b)に示されるとおり、各サーボバンドは、所定角度θ1で傾斜する5本のサーボ信号S5aと、この信号と逆方向に同じ角度で傾斜する5本のサーボ信号S5bと、所定角度θ1で傾斜する4本のサーボ信号S4aと、この信号と逆方向に同じ角度で傾斜する4本のサーボ信号S4bと、からなるフレーム単位を繰り返し有する。前記角度θ1は、例えば5°〜25°であり、特には11°〜20°でありうる。
幅変形係数aは、下記の方法によって測定されるサーボトラック幅のずれ量から求められる。
サーボトラック幅のずれ量とは、磁気記録再生装置のサーボリードヘッドに対する各サーボバンドのセンターラインの位置が磁気記録媒体の幅の変化に伴い標準の位置からずれたときの、各サーボバンドのセンターライン位置のずれ量を意味する。当該標準の位置は、磁気記録媒体10が標準サーボトラック幅を有すると想定した場合における、各サーボバンドのセンターラインの位置である。
サーボトラック幅のずれ量の測定は、磁気記録媒体を、磁気記録再生装置へと巻き込むように走行させながら(いわゆる順方向に走行させながら)行われる。幅変形係数aを求めるために用いられるサーボトラック幅のずれ量は、図11(a)の上から2つ目のデータバンドd1を挟む2つのサーボトラックS1及びS2のずれ量である。
ドライブ走行時に、データバンドd1を挟む2つのサーボトラックS1及びS2を再生した場合、デジタルオシロスコープ(Lecroy社 WAVEPRO 960)によってサーボトラックごとに図11(c)に示されるような波形が得られる。
サーボトラックS1の再生により得られた波形からタイミング信号間の時間が得られ、当該時間とテープ走行速度とから、サーボトラックS1におけるAバーストの先頭磁気ストライプとBバーストの先頭磁気ストライプとの間の距離が算出される。例えば、図11(b)に示されるとおり、AバーストS5a−1の先頭磁気ストライプ(5つの磁気ストライプのうち最も左の磁気ストライプ)とBバーストS5b−1の先頭磁気ストライプ(5つの磁気ストライプのうち最も左の磁気ストライプ)との間の距離L1が算出される。
同様に、サーボトラックS2の再生により得られた波形からタイミング信号間の時間が得られ、当該時間とテープ走行速度とから、サーボトラックS2におけるAバーストの先頭磁気ストライプとBバーストの先頭磁気ストライプとの間の距離が算出される。例えば、図11(b)に示されるとおり、AバーストS5a−2の先頭磁気ストライプとBバーストS5b−2先頭磁気ストライプとの間の距離L2が算出される。
例えば、磁気記録テープが幅方向に広がった場合、例えばサーボトラックS1の再生により得られるタイミング信号間の時間が長くなり、その結果、算出される距離L1も大きくなりうる。磁気記録テープが幅方向において縮んだ場合には、反対に、算出される距離L1は小さくなりうる。そのため、距離L1及び距離L2とアジマス角を用いることで、サーボトラック幅のずれ量を求めることができる。サーボトラック幅のずれ量は、以下の式から求められる。
(サーボトラック幅のずれ量)={(L1−L2)/2}×tan(90°−θ1)
この式において、L1及びL2は、上記で述べた距離L1及びL2であり、θ1は、上記で述べた傾斜角度θ1であり、アジマス角とも言われる。θ1は、カートリッジより取り出した磁気記録テープをフェリコロイド現像液で現像し、万能工具顕微鏡(TOPCON TUM-220ES)及びデータ処理装置(TOPCON CA-1B)を用いて求められる。
サーボトラック幅のずれ量は、標準サーボトラック幅に対する変化量である。標準サーボトラック幅は、磁気記録再生装置が有するサーボリードヘッド幅と同じ幅であってよく、例えば磁気記録媒体10が準拠する規格など磁気記録媒体10の種類に応じて決定されてよい。
磁気記録テープを32℃55%環境下で300時間保存し、当該300時間の保存中、50時間おきに、当該磁気記録テープの巻き外及び巻き内からそれぞれ20mを除いた範囲の全長にわたって、約50mごとの間隔でサーボトラック幅のずれ量を測定する。本明細書内において、「巻き外」とは、磁気記録媒体の2つの端部のうち、磁気記録カートリッジに巻かれたときに外側に位置する端部をいう。一方、「巻き内」とは、磁気記録媒体の2つの端部のうち、磁気記録カートリッジ内のリール(磁気記録媒体が巻き取られるリール)に取り付けられる端部をいう。
磁気記録テープの各位置において、32℃55%環境下で50時間保存したときの前記サーボトラック幅のずれ量を基準値とし、t時間(t≧50)保存したときの前記サーボトラック幅のずれ量の前記基準値からの変化量(長期保存幅変化量Y)を求める。長期保存幅変化量Yと保存時間との関係から、最小二乗法を用いて、長期保存幅変化量YをY=alog(t)と規定した場合の幅変形係数aを求める。
32℃55%環境下で或る期間保存したときの長期保存幅変化量Yは、以上のとおりにして求められた幅変形係数aと時間tとを用いて、当該Yに関する式から求められる。例えば10年保存後の長期保存幅変化量Yは、以下の式から求められる。
(10年保存後の長期保存幅変化量Y)=alog{10(年)×365(日)×24(時間)}
なお、前記幅変形係数aは、例えば以下のとおりに調整することができる。磁気記録媒体10に生じたひずみを緩和するために、磁気記録媒体10の乾燥工程及び/又はカレンダー工程(加温領域)において巻き取り張力を低くすることが行われてもよい。また、裁断後のパンケーキ状態及び/又はカートリッジ状態においてひずみを緩和するために、55℃以上の温度で長時間保管することが行われてもよい。このようにひずみを緩和することで、前記幅変形係数aを調整することができる。
(保磁力Hc)
磁気記録媒体10の厚み方向(垂直方向)に測定した保磁力Hcが、好ましくは220kA/m以上310kA/m以下、より好ましくは230kA/m以上300kA/m以下、更により好ましくは240kA/m以上290kA/m以下である。保磁力Hcが220kA/m以上であると、保磁力Hcが十分な大きさとなるため、記録ヘッドからの漏れ磁界により、隣接するトラックに記録された磁化信号が劣化することを抑制できる。したがって、より優れたSNRを得ることができる。一方、保磁力Hcが310kA/m以下であると、記録ヘッドによる飽和記録が容易になるため、より優れたSNRを得ることができる。
上記の保磁力Hcは以下のようにして求められる。まず、長尺状の磁気記録媒体10から測定サンプルを切り出し、振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer:VS
M)を用いて測定サンプルの厚み方向(磁気記録媒体10の厚み方向)に測定サンプル全体のM−Hループを測定する。次に、アセトンまたはエタノールなどを用いて塗膜(下地層12、磁性層13など)を払拭し、ベース層11のみを残してバックグラウンド補正用とし、VSMを用いてベース層11の厚み方向(磁気記録媒体10の厚み方向)にベース層11のM−Hループを測定する。その後、測定サンプル全体のM−Hループからベース層11のM−Hループを引き算して、バックグラウンド補正後のM−Hループを得る。得られたM−Hループから保磁力Hcを求める。なお、上記のM−Hループの測定はいずれも、25℃にて行われるものとする。また、M−Hループを磁気記録媒体10の厚み方向(垂直方向)に測定する際の“反磁界補正”は行わないものとする。
(保磁力Hc(50)と保磁力Hc(25)との比率R)
50℃にて磁気記録媒体10の厚み方向(垂直方向)に測定した保磁力Hc(50)と25℃にて磁気記録媒体10の厚み方向に測定した保磁力Hc(25)との比率R(=(Hc(50)/Hc(25))×100)が、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、更により好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上である。上記比率Rが95%以上であると、保磁力Hcの温度依存性が小さくなり、高温環境下におけるSNRの劣化を抑制することができる。
上記の保磁力Hc(25)は、上記の保磁力Hcの測定方法と同様にして求められる。また、上記の保磁力Hc(50)は、測定サンプル及びベース層11のM−Hループの測定をいずれも50℃にて行うこと以外は上記の保磁力Hcの測定方法と同様にして求められる。
(長手方向に測定した角形比S1)
磁気記録媒体10の長手方向(走行方向)に測定した角形比S1が、好ましくは35%以下、より好ましくは27%以下、更により好ましくは20%以下である。角形比S1が35%以下であると、磁性粉の垂直配向性が十分に高くなるため、より優れたSNRを得ることができる。したがって、より優れた電磁変換特性を得ることができる。また、サーボ信号形状が改善され、ドライブ側の制御がより行い易くなる。
本明細書内において、磁気記録媒体が垂直配向しているとは、磁気記録媒体の角形比S1が上記数値範囲内にあること(例えば35%以下であること)を意味しうる。本技術に従う磁気記録媒体は好ましくは垂直配向している。
上記の角形比S1は以下のようにして求められる。まず、長尺状の磁気記録媒体10から測定サンプルを切り出し、VSMを用いて磁気記録媒体10の長手方向(走行方向)に対応する測定サンプル全体のM−Hループを測定する。次に、アセトン又はエタノールなどを用いて塗膜(下地層12、磁性層13など)を払拭し、ベース層11のみを残して、バックグラウンド補正用とし、VSMを用いてベース層11の長手方向(磁気記録媒体10の走行方向)に対応するベース層11のM−Hループを測定する。その後、測定サンプル全体のM−Hループからベース層11のM−Hループを引き算して、バックグラウンド補正後のM−Hループを得る。得られたM−Hループの飽和磁化Ms(emu)及び残留磁化Mr(emu)を以下の式に代入して、角形比S1(%)を計算する。なお、上記のM−Hループの測定はいずれも、25℃にて行われるものとする。
角形比S1(%)=(Mr/Ms)×100
(垂直方向に測定した角形比S2)
磁気記録媒体10の垂直方向(厚み方向)に測定した角形比S2が、好ましくは65%以上、より好ましくは73%以上、更により好ましくは80%以上である。角形比S2が65%以上であると、磁性粉の垂直配向性が十分に高くなるため、より優れたSNRを得ることができる。したがって、より優れた電磁変換特性を得ることができる。また、サーボ信号形状が改善され、よりドライブ側の制御がし易くなる。
本明細書内において、磁気記録媒体が垂直配向しているとは、磁気記録媒体の角形比S2が上記数値範囲内にあること(例えば65%以上であること)を意味してもよい。
角形比S2は、M−Hループを磁気記録媒体10及びベース層11の垂直方向(厚み方向)に測定すること以外は角形比S1と同様にして求められる。なお、角形比S2の測定においては、M−Hループを磁気記録媒体10の垂直方向に測定する際の“反磁界補正”は行わないものとする。
角形比S1及びS2は、例えば磁性層形成用塗料に印加される磁場の強度、磁性層形成用塗料に対する磁場の印加時間、磁性層形成用塗料中における磁性粉の分散状態、又は磁性層形成用塗料中における固形分の濃度を調整することにより所望の値に設定される。具体的には例えば、磁場の強度を強くするほど、角形比S1が小さくなるのに対して、角形比S2が大きくなる。また、磁場の印加時間を長くするほど、角形比S1が小さくなるのに対して、角形比S2が大きくなる。また、磁性粉の分散状態を向上するほど、角形比S1が小さくなるのに対して、角形比S2が大きくなる。また、固形分の濃度を低くするほど、角形比S1が小さくなるのに対して、角形比S2が大きくなる。なお、上記の調整方法は単独で使用してもよいし、2以上組み合わせて使用してもよい。
(SFD)
磁気記録媒体10のSFD(Switching Field Distribution)曲線において、メインピーク高さXと磁場ゼロ付近のサブピークの高さYとのピーク比X/Yが、好ましくは3.0以上、より好ましくは5.0以上、更により好ましくは7.0以上、特に好ましくは10.0以上、最も好ましくは20.0以上である(図4参照)。ピーク比X/Yが3.0以上であると、実際の記録に寄与するε酸化鉄粒子の他にε酸化鉄特有の低保磁力成分(例えば軟磁性粒子や超常磁性粒子など)が磁性粉中に多く含まれることを抑制できる。したがって、記録ヘッドからの漏れ磁界により、隣接するトラックに記録された磁化信号が劣化することを抑制できるので、より優れたSNRを得ることができる。ピーク比X/Yの上限値は特に限定されるものではないが、例えば100以下である。
上記のピーク比X/Yは、以下のようにして求められる。まず、上記の保磁力Hcの測定方法と同様にして、バックグラウンド補正後のM−Hループを得る。次に、得られたM−HループからSFDカーブを算出する。SFDカーブの算出には測定機に付属のプログラムを用いてもよいし、その他のプログラムを用いてもよい。算出したSFDカーブがY軸(dM/dH)を横切る点の絶対値を「Y」とし、M−Hループで言うところの保磁力Hc近傍に見られるメインピークの高さを「X」として、ピーク比X/Yを算出する。なお、M−Hループの測定は、上記の保磁力Hcの測定方法と同様に25℃にて行われるものとする。また、M−Hループを磁気記録媒体10の厚み方向(垂直方向)に測定する際の“反磁界補正”は行わないものとする。
(活性化体積Vact)
活性化体積Vactが、好ましくは8000nm3以下、より好ましくは6000nm3以下、更により好ましくは5000nm3以下、特に好ましくは4000nm3以下、最も好ましくは3000nm3以下である。活性化体積Vactが8000nm3以下であると、磁性粉の分散状態が良好になるため、ビット反転領域を急峻にすることができ、記録ヘッドからの漏れ磁界により、隣接するトラックに記録された磁化信号が劣化することを抑制できる。したがって、より優れたSNRを得ることができる。
上記の活性化体積Vactは、Street&Woolleyにより導出された下記の式により求められる。
Vact(nm3)=kB×T×Χirr/(μ0×Ms×S)
(但し、kB:ボルツマン定数(1.38×10−23J/K)、T:温度(K)、Χirr:非可逆磁化率、μ0:真空の透磁率、S:磁気粘性係数、Ms:飽和磁化(emu/cm3))
上記式に代入される非可逆磁化率Χirr、飽和磁化Ms、及び磁気粘性係数Sは、VSMを用いて以下のようにして求められる。なお、VSMによる測定方向は、磁気記録媒体10の厚み方向(垂直方向)とする。また、VSMによる測定は、長尺状の磁気記録媒体10から切り出された測定サンプルに対して25℃にて行われるものとする。また、M−Hループを磁気記録媒体10の厚み方向(垂直方向)に測定する際の“反磁界補正”は行わないものとする。
(非可逆磁化率Χirr)
非可逆磁化率Χirrは、残留磁化曲線(DCD曲線)の傾きにおいて、残留保磁力Hr付近における傾きと定義される。まず、磁気記録媒体10全体に−1193kA/m(15kOe)の磁界を印加し、磁界をゼロに戻し残留磁化状態とする。その後、反対方向に約15.9kA/m(200Oe)の磁界を印加し再びゼロに戻し残留磁化量を測定する。その後も同様に、先ほどの印加磁界よりもさらに15.9kA/m大きい磁界を印加しゼロに戻す測定を繰り返し行い、印加磁界に対して残留磁化量をプロットしDCD曲線を作成する。得られたDCD曲線から、磁化量ゼロとなる点を残留保磁力Hrとし、さらにDCD曲線を微分し、各磁界におけるDCD曲線の傾きを求める。このDCD曲線の傾きにおいて、残留保磁力Hr付近の傾きがΧirrとなる。
(飽和磁化Ms)
まず、磁気記録媒体10の厚み方向に磁気記録媒体10(測定サンプル)全体のM−Hループを測定する。次に、アセトン及びエタノールなどを用いて塗膜(下地層12、磁性層13など)を払拭し、ベース層11のみを残して、バックグラウンド補正用として、ベース層11のM−Hループを同様に厚み方向に測定する。その後、磁気記録媒体10全体のM−Hループからベース層11のM−Hループを引き算して、バックグラウンド補正後のM−Hループを得る。得られたM−Hループの飽和磁化Ms(emu)の値と、測定サンプル中の磁性層13の体積(cm3)から、Ms(emu/cm3)を算出する。なお、磁性層13の体積は測定サンプルの面積に磁性層13の平均厚みを乗ずることにより求められる。磁性層13の体積の算出に必要な磁性層13の平均厚みの算出方法については後述する。
(磁気粘性係数S)
まず、磁気記録媒体10(測定サンプル)全体に−1193kA/m(15kOe)の磁界を印加し、磁界をゼロに戻し残留磁化状態とする。その後、反対方向に、DCD曲線より得られた残留保磁力Hrの値と同等の磁界を印加する。磁界を印加した状態で1000秒間、磁化量を一定の時間間隔で継続的に測定する。このようにして得られた、時間tと磁化量M(t)の関係を以下の式に照らし合わせて、磁気粘性係数Sを算出する。
M(t)=M0+S×ln(t)
(但し、M(t):時間tの磁化量、M0:初期の磁化量、S:磁気粘性係数、ln(t):時間の自然対数)
(算術平均粗さRa)
磁性面の算術平均粗さRaは、好ましくは2.5nm以下、より好ましくは2.0nm以下である。Raが2.5nm以下であると、より優れたSNRを得ることができる。
上記の算術平均粗さRaは以下のようにして求められる。まず、AFM(Atomic Force
Microscope)(ブルカー製、Dimension Icon)を用いて磁性層13が設けられている側
の表面を観察して、断面プロファイルを取得する。次に、取得した断面プロファイルから、JIS B0601:2001に準拠して算術平均粗さRaを求める。
(4)磁気記録媒体の製造方法
次に、上述の構成を有する磁気記録媒体10の製造方法について説明する。まず、非磁性粉及び結着剤などを溶剤に混練及び/又は分散させることにより、下地層形成用塗料を調製する。次に、磁性粉及び結着剤などを溶剤に混練及び/又は分散させることにより、磁性層形成用塗料を調製する。磁性層形成用塗料及び下地層形成用塗料の調製には、例えば、以下の溶剤、分散装置、及び混練装置を用いることができる。
上述の塗料調製に用いられる溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;例えばメタノール、エタノール、及びプロパノールなどのアルコール系溶媒;例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、乳酸エチル、及びエチレングリコールアセテートなどのエステル系溶媒;ジエチレングリコールジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、テトラヒドロフラン、及びジオキサンなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、及びキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;並びに、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、及びクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらのうちの1つが用いられてもよく、又は、2以上の混合物が用いられてもよい。
上述の塗料調製に用いられる混練装置としては、例えば連続二軸混練機、多段階で希釈可能な連続二軸混練機、ニーダー、加圧ニーダー、及びロールニーダーなどの混練装置を用いることができるが、特にこれらの装置に限定されるものではない。また、上述の塗料調製に用いられる分散装置としては、例えばロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、スパイクミル、ピンミル、タワーミル、パールミル(例えばアイリッヒ社製「DCPミル」など)、ホモジナイザー、及び超音波分散機などの分散装置を用いることができるが、特にこれらの装置に限定されるものではない。
次に、下地層形成用塗料をベース層11の一方の主面に塗布して乾燥させることにより、下地層12を形成する。続いて、この下地層12上に磁性層形成用塗料を塗布して乾燥させることにより、磁性層13を下地層12上に形成する。なお、乾燥の際に、例えばソレノイドコイルにより、磁性粉をベース層11の厚み方向に磁場配向させる。また、乾燥の際に、例えばソレノイドコイルにより、磁性粉をベース層11の長手方向(走行方向)に磁場配向させたのちに、ベース層11の厚み方向に磁場配向させるようにしてもよい。磁性層13の形成後、ベース層11の他方の主面にバック層14を形成する。これにより、磁気記録媒体10が得られる。
その後、得られた磁気記録媒体10を大径コアに巻き直し、硬化処理を行う。最後に、磁気記録媒体10に対してカレンダー処理を行った後、所定の幅(例えば1/2インチ幅)に裁断する。以上により、目的とする細長い長尺状の磁気記録媒体10が得られる。
(5)記録再生装置
[記録再生装置の構成]
次に、図5を参照して、上述の構成を有する磁気記録媒体10の記録及び再生を行う記録再生装置30の構成の一例について説明する。
記録再生装置30は、磁気記録媒体10の長手方向に加わるテンションを調整可能な構成を有している。また、記録再生装置30は、磁気記録カートリッジ10Aを装填可能な構成を有している。ここでは、説明を容易とするために、記録再生装置30が、1つの磁気記録カートリッジ10Aを装填可能な構成を有している場合について説明するが、記録再生装置30が、複数の磁気記録カートリッジ10Aを装填可能な構成を有していてもよい。
記録再生装置30は、好ましくはタイミングサーボ方式の磁気記録再生装置である。本技術の磁気記録媒体は、タイミングサーボ方式の磁気記録再生装置における使用に適している。
記録再生装置30は、ネットワーク43を介してサーバ41及びパーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)42等の情報処理装置に接続されており、これらの情報処理装置から供給されたデータを磁気記録カートリッジ10Aに記録可能に構成されている。記録再生装置30の最短記録波長は、好ましくは100nm以下、より好ましくは75nm以下、更により好ましくは60nm以下、特に好ましくは50nm以下である。
記録再生装置は、図5に示すように、スピンドル31と、記録再生装置側のリール32と、スピンドル駆動装置33と、リール駆動装置34と、複数のガイドローラ35と、ヘッドユニット36と、通信インターフェース(以下、I/F)37と、制御装置38とを備えている。
スピンドル31は、磁気記録カートリッジ10Aを装着可能に構成されている。磁気記録カートリッジ10Aは、LTO(Linear Tape Open)規格に準拠しており、カートリッジケース10Bに磁気記録媒体10を巻装した単一のリール10Cを回転可能に収容している。磁気記録媒体10には、サーボ信号としてハの字状のサーボパターンが予め記録されている。リール32は、磁気記録カートリッジ10Aから引き出された磁気記録媒体10の先端を固定可能に構成されている。
本技術は、本技術に従う磁気記録媒体を含む磁気記録カートリッジも提供する。当該磁気記録カートリッジ内において、前記磁気記録媒体は、例えばリールに巻き付けられていてよい。
スピンドル駆動装置33は、スピンドル31を回転駆動させる装置である。リール駆動装置34は、リール32を回転駆動させる装置である。磁気記録媒体10に対してデータの記録又は再生を行う際には、スピンドル駆動装置33とリール駆動装置34とが、スピンドル31とリール32とを回転駆動させることによって、磁気記録媒体10を走行させる。ガイドローラ35は、磁気記録媒体10の走行をガイドするためのローラである。
ヘッドユニット36は、磁気記録媒体10にデータ信号を記録するための複数の記録ヘッドと、磁気記録媒体10に記録されているデータ信号を再生するための複数の再生ヘッドと、磁気記録媒体10に記録されているサーボ信号を再生するための複数のサーボヘッドとを備える。記録ヘッドとしては例えばリング型ヘッドを用いることができるが、記録ヘッドの種類はこれに限定されるものではない。
通信I/F37は、サーバ41及びPC42等の情報処理装置と通信するためのものであり、ネットワーク43に対して接続される。
制御装置38は、記録再生装置30の全体を制御する。例えば、制御装置38は、サーバ41及びPC42等の情報処理装置の要求に応じて、情報処理装置から供給されるデータ信号をヘッドユニット36により磁気記録媒体10に記録する。また、制御装置38は、サーバ41及びPC42等の情報処理装置の要求に応じて、ヘッドユニット36により、磁気記録媒体10に記録されたデータ信号を再生し、情報処理装置に供給する。
また、制御装置38は、ヘッドユニット36から供給されるサーボ信号に基づき、磁気記録媒体10の幅の変化を検出する。具体的には、磁気記録媒体10にはサーボ信号として複数のハの字状のサーボパターンが記録されており、ヘッドユニット36はヘッドユニット36上の2つのサーボヘッドにより、異なる2つのサーボパターンを同時に再生し、其々のサーボ信号を得ることが出来る。このサーボ信号から得られる、サーボパターンとヘッドユニットとの相対位置情報を用いて、サーボパターンを追従する様に、ヘッドユニット36の位置を制御する。これと同時に、2つのサーボ信号波形を比較する事で、サーボパターンの間の距離情報も得ることが出来る。各々の測定時に得られるこのサーボパターン間の距離情報を比較する事で、各々の測定時におけるサーボパターン間の距離の変化を得ることができる。これに、サーボパターン記録時のサーボパターン間の距離情報を加味する事で、磁気記録媒体10の幅の変化も計算できる。制御装置38は、上述のようにして得られたサーボパターン間の距離の変化、または計算した磁気記録媒体10の幅の変化に基づき、スピンドル駆動装置33及びリール駆動装置34の回転駆動を制御し、磁気記録媒体10の幅が規定の幅、またはほぼ規定の幅となるように、磁気記録媒体10の長手方向のテンションを調整する。これにより、磁気記録媒体10の幅の変化を抑制することができる。
[記録再生装置の動作]
次に、上記構成を有する記録再生装置30の動作について説明する。
まず、磁気記録カートリッジ10Aを記録再生装置30に装着し、磁気記録媒体10の先端を引き出して、複数のガイドローラ35及びヘッドユニット36を介してリール32まで移送し、磁気記録媒体10の先端をリール32に取り付ける。
次に、図示しない操作部を操作すると、スピンドル駆動装置33とリール駆動装置34とが制御装置38の制御により駆動され、リール10Cからリール32へ向けて磁気記録媒体10が走行されるように、スピンドル31とリール32とが同方向に回転される。これにより、磁気記録媒体10がリール32に巻き取られつつ、ヘッドユニット36によって、磁気記録媒体10への情報の記録または磁気記録媒体10に記録された情報の再生が行われる。
また、リール10Cに磁気記録媒体10を巻き戻す場合は、上記とは逆方向に、スピンドル31とリール32とが回転駆動されることにより、磁気記録媒体10がリール32からリール10Cに走行される。この巻き戻しの際にも、ヘッドユニット36による、磁気記録媒体10への情報の記録または磁気記録媒体10に記録された情報の再生が行われる。
(6)効果
第1の実施形態に係る磁気記録媒体10では、磁気記録媒体10の平均厚みtTが、tT≦5.6μmであり、磁気記録媒体10の長手方向のテンション変化に対する磁気記録媒体10の幅方向の寸法変化量Δwが、660ppm/N≦Δwであり、垂直方向における角形比が65%以上であり、長期保存幅変化量YをY=alog(t)と規定した場合における、長期保存時の幅変形係数aが−0.06μm≦a≦0.06μmである。これにより、記録再生装置により磁気記録媒体10の長手方向のテンションを調整することで、磁気記録媒体10の幅の変化を抑制することができる。例えば磁気記録媒体10の幅の変化をもたらしうる温湿度変化があったとしても、磁気記録媒体10の幅を一定又はほぼ一定に保つことができる。当該テンション調整による幅の変化の抑制は、長期保存後でも可能である。さらに、磁気記録媒体10は、その厚みがtT≦5.6μmと薄いが、ハンドリング性に優れている。
(7)変形例
[変形例1]
磁気記録媒体10が、図7に示すように、ベース層11の少なくとも一方の表面に設けられたバリア層15をさらに備えるようにしてもよい。バリア層15は、環境に応じたベース層11の寸法変化を抑える為の層である。例えば、その寸法変化を及ぼす原因の一例としてベース層11の吸湿性が挙げられ、バリア層15によりベース層11への水分の侵入速度を低減できる。バリア層15は、金属又は金属酸化物を含む。金属としては、例えば、Al、Cu、Co、Mg、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Ba、Pt、Au、及びTaのうちの少なくとも1種を用いることができる。金属酸化物としては、例えば、Al2O3、CuO、CoO、SiO2、Cr2O3、TiO2、Ta2O5、及びZrO2のうちの少なくとも1種を用いることができるし、上記金属の酸化物の何れかを用いることもできる。またダイヤモンド状炭素(Diamond-Like Carbon:DLC)又はダイヤモンドなどを用いること
もできる。
バリア層15の平均厚みは、好ましくは20nm以上1000nm以下、より好ましくは50nm以上1000nm以下である。バリア層15の平均厚みは、磁性層13の平均厚みtmと同様にして求められる。但し、TEM像の倍率は、バリア層15の厚みに応じて適宜調整される。
[変形例2]
磁気記録媒体10は、ライブラリ装置に組み込まれてもよい。すなわち、本技術は、少なくとも一つの磁気記録媒体10を備えているライブラリ装置も提供する。当該ライブラリ装置は、磁気記録媒体10の長手方向に加わるテンションを調整可能な構成を有しており、上記で述べた記録再生装置30を複数備えるものであってもよい。
[変形例3]
磁気記録媒体10は、サーボライタによるサーボ信号書き込み処理に付されてもよい。当該サーボライタが、サーボ信号の記録時などに磁気記録媒体10の長手方向のテンションを調整することで、磁気記録媒体10の幅を一定又はほぼ一定に保ちうる。この場合、当該サーボライタは、磁気記録媒体10の幅を検出する検出装置を備えうる。当該サーボライタは、当該検出装置の検出結果に基づき、磁気記録媒体10の長手方向のテンションを調整しうる。
3.第2の実施形態(真空薄膜型の磁気記録媒体の例)
(1)磁気記録媒体の構成
第2の実施形態に係る磁気記録媒体110は、長尺状の垂直磁気記録媒体であり、図8に示すように、フィルム状のベース層111と、軟磁性裏打ち層(Soft magnetic underlayer、以下「SUL」という。)112と、第1のシード層113Aと、第2のシード層113Bと、第1の下地層114Aと、第2の下地層114Bと、磁性層115とを備える。SUL112、第1、第2のシード層113A、113B、第1、第2の下地層114A、114B、及び磁性層115は、例えば、スパッタリングにより形成された層(以下「スパッタ層」ともいう)などの真空薄膜でありうる。
SUL112、第1、第2のシード層113A、113B、及び第1、第2の下地層114A、114Bは、ベース層111の一方の主面(以下「表面」という。)と磁性層115との間に設けられ、ベース層111から磁性層115の方向に向かってSUL112、第1のシード層113A、第2のシード層113B、第1の下地層114A、第2の下地層114Bの順序で積層されている。
磁気記録媒体110が、必要に応じて、磁性層115上に設けられた保護層116と、保護層116上に設けられた潤滑層117とをさらに備えるようにしてもよい。また、磁気記録媒体110が、必要に応じて、ベース層111の他方の主面(以下「裏面」という。)上に設けられたバック層118をさらに備えるようにしてもよい。
以下では、磁気記録媒体110の長手方向(ベース層111の長手方向)を機械方向(MD:Machine Direction)という。ここで、機械方向とは、磁気記録媒体110に対する記録及び再生ヘッドの相対的な移動方向、すなわち記録再生時に磁気記録媒体110が走行される方向を意味する。
第2の実施形態に係る磁気記録媒体110は、今後ますます需要が高まることが期待されるデータアーカイブ用ストレージメディアとして用いて好適なものである。この磁気記録媒体110は、例えば、現在のストレージ用塗布型磁気記録媒体の10倍以上の面記録密度、すなわち50Gb/in2以上の面記録密度を実現することが可能である。このような面記録密度を有する磁気記録媒体110を用いて、一般のリニア記録方式のデータカートリッジを構成した場合には、データカートリッジ1巻当たり100TB以上の大容量記録が可能になる。
第2の実施形態に係る磁気記録媒体110は、リング型の記録ヘッドと巨大磁気抵抗効果(Giant Magnetoresistive:GMR)型またはトンネル磁気抵抗効果(Tunneling Magnetoresistive:TMR)型の再生ヘッドとを有する記録再生装置(データを記録再生するための記録再生装置)に用いて好適なものである。また、第2の実施形態に係る磁気記録媒体110は、サーボ信号書込ヘッドとしてリング型の記録ヘッドが用いられるものであることが好ましい。磁性層115には、例えばリング型の記録ヘッドによりデータ信号が垂直記録される。また、磁性層115には、例えばリング型の記録ヘッドによりサーボ信号が垂直記録される。
(2)各層の説明
(ベース層)
ベース層111については、第1の実施形態におけるベース層11に関する説明が当てはまるので、ベース層111についての説明は省略する。
(SUL)
SUL112は、アモルファス状態の軟磁性材料を含む。軟磁性材料は、例えば、Co系材料及びFe系材料のうちの少なくとも1種を含む。Co系材料は、例えば、CoZrNb、CoZrTa、又はCoZrTaNbを含む。Fe系材料は、例えば、FeCoB、FeCoZr、又はFeCoTaを含む。
SUL112は、単層のSULであり、ベース層111上に直接設けられている。SUL112の平均厚みは、好ましくは10nm以上50nm以下、より好ましくは20nm以上30nm以下である。
SUL112の平均厚みは、第1の実施形態における磁性層13の平均厚みの測定方法と同じ方法で求められる。なお、後述する、SUL112以外の層の平均厚み(すなわち、第1、第2のシード層113A、113B、第1、第2の下地層114A、114B、及び磁性層115の平均厚み)も、第1の実施形態における磁性層13の平均厚みの測定方法と同じ方法で求められる。但し、TEM像の倍率は、各層の厚みに応じて適宜調整される。
(第1、第2のシード層)
第1のシード層113Aは、Ti及びCrを含む合金を含み、アモルファス状態を有している。また、この合金には、O(酸素)がさらに含まれていてもよい。この酸素は、スパッタリング法などの成膜法で第1のシード層113Aを成膜する際に、第1のシード層113A内に微量に含まれる不純物酸素であってもよい。
ここで、“合金”とは、Ti及びCrを含む固溶体、共晶体、及び金属間化合物などの少なくとも一種を意味する。“アモルファス状態”とは、X線回折または電子線回折法などにより、ハローが観測され、結晶構造を特定できないことを意味する。
第1のシード層113Aに含まれるTi及びCrの総量に対するTiの原子比率は、好ましくは30原子%以上100原子%未満、より好ましくは50原子%以上100原子%未満の範囲内である。Tiの原子比率が30%未満であると、Crの体心立方格子(Body-Centered Cubic lattice:bcc)構造の(100)面が配向するようになり、第1の
シード層113A上に形成される第1、第2の下地層114A、114Bの配向性が低下する虞がある。
上記Tiの原子比率は次のようにして求められる。磁性層115側から磁気記録媒体110をイオンミリングしながら、オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy、
以下「AES」という。)による第1のシード層113Aの深さ方向分析(デプスプロファイル測定)を行う。次に、得られたデプスプロファイルから、膜厚方向におけるTi及びCrの平均組成(平均原子比率)を求める。次に、求めたTi及びCrの平均組成を用いて、上記Tiの原子比率を求める。
第1のシード層113AがTi、Cr、及びOを含む場合、第1のシード層113Aに含まれるTi、Cr、及びOの総量に対するOの原子比率は、好ましくは15原子%以下、より好ましくは10原子%以下である。Oの原子比率が15原子%を超えると、TiO2結晶が生成することにより、第1のシード層113A上に形成される第1、第2の下地層114A、114Bの結晶核形成に影響を与えるようになり、第1、第2の下地層114A、114Bの配向性が低下する虞がある。上記Oの原子比率は、上記Tiの原子比率と同様の解析方法を用いて求められる。
第1のシード層113Aに含まれる合金が、Ti及びCr以外の元素を添加元素としてさらに含んでいてもよい。この添加元素は、例えば、Nb、Ni、Mo、Al、及びWからなる群より選ばれる1種以上の元素であってよい。
第1のシード層113Aの平均厚みは、好ましくは2nm以上15nm以下、より好ましくは3nm以上10nm以下である。
第2のシード層113Bは、例えば、NiW又はTaを含み、結晶状態を有している。第2のシード層113Bの平均厚みは、好ましくは3nm以上20nm以下、より好ましくは5nm以上15nm以下である。
第1、第2のシード層113A、113Bは、第1、第2の下地層114A、114Bに類似した結晶構造を有し、結晶成長を目的として設けられるシード層ではなく、当該第1、第2のシード層113A、113Bのアモルファス状態によって第1、第2の下地層114A、114Bの垂直配向性を向上するシード層である。
(第1、第2の下地層)
第1、第2の下地層114A、114Bは、磁性層115と同様の結晶構造を有していることが好ましい。磁性層115がCo系合金を含む場合には、第1、第2の下地層114A、114Bは、Co系合金と同様の六方最密充填(hcp)構造を有する材料を含み、その構造のc軸が膜面に対して垂直方向(すなわち膜厚方向)に配向していることが好ましい。これは、磁性層115の配向性を高め、且つ、第2の下地層114Bと磁性層115との格子定数のマッチングを比較的良好にできるからである。六方最密充填(hcp)構造を有する材料としては、Ruを含む材料を用いることが好ましく、具体的にはRu単体またはRu合金が好ましい。Ru合金としては、例えばRu−SiO2、Ru−TiO2、及びRu−ZrO2などのRu合金酸化物が挙げられ、Ru合金はこれらのうちのいずれか一つであってよい。
上述のように、第1、第2の下地層114A、114Bの材料として同様のものを用いることができる。しかしながら、第1、第2の下地層114A、114Bそれぞれの目的とする効果が異なっている。具体的には、第2の下地層114Bについてはその上層となる磁性層115のグラニュラ構造を促進する膜構造であり、第1の下地層114Aについては結晶配向性の高い膜構造である。このような膜構造を得るためには、第1、第2の下地層114A、114Bそれぞれのスパッタ条件などの成膜条件を異なるものとすることが好ましい。
第1の下地層114Aの平均厚みは、好ましくは3nm以上15nm以下、より好ましくは5nm以上10nm以下である。第2の下地層114Bの平均厚みは、好ましくは7nm以上40nm以下、より好ましくは10nm以上25nm以下である。
(磁性層)
磁性層(記録層ともいう)115は、磁性材料が垂直に配向した垂直磁気記録層でありうる。磁性層115は、記録密度を向上する観点からすると、Co系合金を含むグラニュラ磁性層であることが好ましい。このグラニュラ磁性層は、Co系合金を含む強磁性結晶粒子と、この強磁性結晶粒子を取り巻く非磁性粒界(非磁性体)とから構成されている。より具体的には、このグラニュラ磁性層は、Co系合金を含むカラム(柱状結晶)と、このカラムを取り囲み、それぞれのカラムを磁気的に分離する非磁性粒界(例えばSiO2などの酸化物)とから構成されている。この構造では、それぞれのカラムが磁気的に分離した構造を有する磁性層115を構成することができる。
Co系合金は、六方最密充填(hcp)構造を有し、そのc軸が膜面に対して垂直方向(膜厚方向)に配向している。Co系合金としては、少なくともCo、Cr、及びPtを含有するCoCrPt系合金を用いることが好ましい。CoCrPt系合金は、さらに添加元素を含んでいてもよい。添加元素としては、例えば、Ni及びTaなどからなる群より選ばれる1種以上の元素が挙げられる。
強磁性結晶粒子を取り巻く非磁性粒界は、非磁性金属材料を含む。ここで、金属には半金属を含むものとする。非磁性金属材料としては、例えば、金属酸化物及び金属窒化物のうちの少なくとも一方を用いることができ、グラニュラ構造をより安定に維持する観点からすると、金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物としては、Si、Cr、Co、Al、Ti、Ta、Zr、Ce、Y、及びHfなどからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素を含む金属酸化物が挙げられ、少なくともSi酸化物(すなわちSiO2)を含む金属酸化物が好ましい。金属酸化物の具体例としては、SiO2、Cr2O3、CoO、Al2O3、TiO2、Ta2O5、ZrO2、及びHfO2などが挙げられる。金属窒化物としては、Si、Cr、Co、Al、Ti、Ta、Zr、Ce、Y、及びHfなどからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素を含む金属窒化物が挙げられる。金属窒化物の具体例としては、SiN、TiN、及びAlNなどが挙げられる。
強磁性結晶粒子に含まれるCoCrPt系合金と、非磁性粒界に含まれるSi酸化物とが、以下の式(1)に示す平均組成を有していることが好ましい。反磁界の影響を抑え、かつ、十分な再生出力を確保できる飽和磁化量Msを実現でき、これにより、記録再生特性の更なる向上を実現できるからである。
(CoxPtyCr100−x−y)100−z−(SiO2)z・・・(1)
(但し、式(1)中において、x、y、zはそれぞれ、69≦x≦75、10≦y≦16、9≦z≦12の範囲内の値である。)
なお、上記組成は次のようにして求めることができる。磁性層115側から磁気記録媒体110をイオンミリングしながら、AESによる磁性層115の深さ方向分析を行い、膜厚方向におけるCo、Pt、Cr、Si、及びOの平均組成(平均原子比率)を求める。
磁性層115の平均厚みtm[nm]は、好ましくは9nm≦tm≦90nm、より好ましくは9nm≦tm≦20nm、更により好ましくは9nm≦tm≦15nmである。磁性層115の平均厚みtmが上記数値範囲内にあることによって、電磁変換特性を向上することができる。
(保護層)
保護層116は、例えば、炭素材料又は二酸化ケイ素(SiO2)を含み、保護層116の膜強度の観点からすると、炭素材料を含むことが好ましい。炭素材料としては、例えば、グラファイト、ダイヤモンド状炭素(Diamond-Like Carbon:DLC)、又はダイヤ
モンドなどが挙げられる。
(潤滑層)
潤滑層117は、少なくとも1種の潤滑剤を含む。潤滑層117は、必要に応じて各種添加剤、例えば防錆剤など、をさらに含んでいてもよい。潤滑剤は、少なくとも2つのカルボキシル基と1つのエステル結合とを有し、下記の一般式(1)で表されるカルボン酸系化合物の少なくとも1種を含む。潤滑剤は、下記の一般式(1)で表されるカルボン酸系化合物以外の種類の潤滑剤をさらに含んでいてもよい。
一般式(1):
(式中、Rfは、非置換若しくは置換の飽和若しくは不飽和の含フッ素炭化水素基又は炭化水素基であり、Esはエステル結合であり、Rは、なくてもよいが、非置換若しくは置換の飽和若しくは不飽和の炭化水素基である。)
上記カルボン酸系化合物は、下記の一般式(2)又は(3)で表されるものであることが好ましい。
一般式(2):
(式中、Rfは、非置換若しくは置換の飽和若しくは不飽和の含フッ素炭化水素基又は炭化水素基である。)
一般式(3):
(式中、Rfは、非置換若しくは置換の飽和若しくは不飽和の含フッ素炭化水素基又は炭化水素基である。)
潤滑剤は、上記の一般式(2)及び(3)で表されるカルボン酸系化合物の一方または両方を含むことが好ましい。
一般式(1)で示されるカルボン酸系化合物を含む潤滑剤を磁性層115または保護層116などに塗布すると、疎水性基である含フッ素炭化水素基又は炭化水素基Rf間の凝集力により潤滑作用が発現する。Rf基が含フッ素炭化水素基である場合には、総炭素数が6〜50であり、且つフッ化炭化水素基の総炭素数が4〜20であることが好ましい。Rf基は、例えば飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環状の炭化水素基であってよいが、好ましくは飽和の直鎖状炭化水素基でありうる。
例えば、Rf基が炭化水素基である場合には、下記一般式(4)で表される基であることが望ましい。
一般式(4):
(但し、一般式(4)において、lは、8〜30、より望ましくは12〜20の範囲から選ばれる整数である。)
また、Rf基が含フッ素炭化水素基である場合には、下記一般式(5)で表される基であることが望ましい。
一般式(5):
(但し、一般式(5)において、mとnは、それぞれ次の範囲から互いに独立に選ばれる整数で、m=2〜20、n=3〜18、より望ましくは、m=4〜13、n=3〜10である。)
フッ化炭化水素基は、上記のように分子内の1箇所に集中していても、また下記一般式(6)のように分散していてもよく、−CF3や−CF2−ばかりでなく−CHF2や−CHF−等であってもよい。
一般式(6):
(但し、一般式(5)及び(6)において、n1+n2=n、m1+m2=mである。)
一般式(4)、(5)、及び(6)において炭素数を上記のように限定したのは、アルキル基または含フッ素アルキル基を構成する炭素数(l、又は、mとnの和)が上記下限以上であると、その長さが適度の長さとなり、疎水性基間の凝集力が有効に発揮され、良好な潤滑作用が発現し、摩擦・摩耗耐久性が向上するからである。また、その炭素数が上記上限以下であると、上記カルボン酸系化合物からなる潤滑剤の、溶媒に対する溶解性が良好に保たれるからである。
特に、一般式(1)、(2)、及び(3)におけるRf基は、フッ素原子を含有すると、摩擦係数の低減、さらには走行性の改善等に効果がある。但し、含フッ素炭化水素基とエステル結合との間に炭化水素基を設け、含フッ素炭化水素基とエステル結合との間を隔てて、エステル結合の安定性を確保して加水分解を防ぐことが好ましい。
また、Rf基がフルオロアルキルエーテル基又はパーフルオロポリエーテル基を有するものであってもよい。
一般式(1)におけるR基は、なくてもよいが、ある場合には、比較的炭素数の少ない炭化水素鎖であることが好ましい。
また、Rf基又はR基は、構成元素として窒素、酸素、硫黄、リン、及びハロゲンから選ばれる1又は複数の元素を含み、既述した官能基に加えて、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、及びエステル結合等を更に有していてもよい。
一般式(1)で示されるカルボン酸系化合物は、具体的には以下に示す化合物の少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、潤滑剤は、以下に示す化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。
CF3(CF2)7(CH2)10COOCH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)3(CH2)10COOCH(COOH)CH2COOH
C17H35COOCH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)7(CH2)2OCOCH2CH(C18H37)COOCH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)7COOCH(COOH)CH2COOH
CHF2(CF2)7COOCH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)7(CH2)2OCOCH2CH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)7(CH2)6OCOCH2CH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)7(CH2)11OCOCH2CH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)3(CH2)6OCOCH2CH(COOH)CH2COOH
C18H37OCOCH2CH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)7(CH2)4COOCH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)3(CH2)4COOCH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)3(CH2)7COOCH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)9(CH2)10COOCH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)7(CH2)12COOCH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)5(CH2)10COOCH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)7CH(C9H19)CH2CH=CH(CH2)7COOCH(COOH)CH2COOH
CF3(CF2)7CH(C6H13)(CH2)7COOCH(COOH)CH2COOH
CH3(CH2)3(CH2CH2CH(CH2CH2(CF2)9CF3))2(CH2)7COOCH(COOH)CH2COOH
一般式(1)で示されるカルボン酸系化合物は、環境への負荷の小さい非フッ素系溶剤に可溶であり、例えば炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、及びエステル系溶剤などの汎用溶剤を用いて、塗布、浸漬、噴霧などの操作を行えるという利点を備えている。具体的には、前記汎用溶剤として、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びシクロヘキサノンなどの溶媒を挙げることができる。
保護層116が炭素材料を含む場合には、潤滑剤として上記カルボン酸系化合物を保護層116上に塗布すると、保護層116上に潤滑剤分子の極性基部である2つのカルボキシル基と少なくとも1つのエステル結合基が吸着され、疎水性基間の凝集力により特に耐久性の良好な潤滑層117を形成することができる。
なお、潤滑剤は、上述のように磁気記録媒体110の表面に潤滑層117として保持されるのみならず、磁気記録媒体110を構成する磁性層115及び保護層116などの層に含まれ、保有されていてもよい。
(バック層)
バック層118については、第1の実施形態におけるバック層14に関する説明が当てはまる。
(3)物性及び構造
上記2.の(3)において述べた物性及び構造に関する説明の全てが、第2の実施形態についても当てはまる。例えば、磁気記録媒体110の平均厚みtT、寸法変化量Δw、温度膨張係数α、湿度膨張係数β、ポアソン比ρ、長手方向の弾性限界値σMD、磁性面とバック面との間の摩擦係数μ、バック層118の表面粗度Rab及び幅変形係数aは、第1の実施形態におけるものと同様であってよい。そのため、第2の実施形態の磁気記録媒体の物性及び構造についての説明は省略する。
(4)スパッタ装置の構成
以下、図9を参照して、第2の実施形態に係る磁気記録媒体110の製造に用いられるスパッタ装置120の構成の一例について説明する。このスパッタ装置120は、SUL112、第1のシード層113A、第2のシード層113B、第1の下地層114A、第2の下地層114B及び磁性層115の成膜に用いられる連続巻取式スパッタ装置であり、図9に示すように、成膜室121と、金属キャン(回転体)であるドラム122と、カソード123a〜123fと、供給リール124と、巻き取りリール125と、複数のガイドローラ127a〜127c、128a〜128cとを備える。スパッタ装置120は、例えばDC(直流)マグネトロンスパッタリング方式の装置であるが、スパッタリング方式はこの方式に限定されるものではない。
成膜室121は、排気口126を介して図示しない真空ポンプに接続され、この真空ポンプにより成膜室121内の雰囲気が所定の真空度に設定される。成膜室121の内部には、回転可能な構成を有するドラム122、供給リール124、及び巻き取りリール125が配置されている。成膜室121の内部には、供給リール124とドラム122との間におけるベース層111の搬送をガイドするための複数のガイドローラ127a〜127cが設けられていると共に、ドラム122と巻き取りリール125との間におけるベース層111の搬送をガイドするための複数のガイドローラ128a〜128cが設けられている。スパッタ時には、供給リール124から巻き出されたベース層111が、ガイドローラ127a〜127c、ドラム122、及びガイドローラ128a〜128cを介して巻き取りリール125に巻き取られる。ドラム122は円柱状の形状を有し、長尺状のベース層111はドラム122の円柱面状の周面に沿わせて搬送される。ドラム122には、図示しない冷却機構が設けられており、スパッタ時には、例えば−20℃程度に冷却される。成膜室121の内部には、ドラム122の周面に対向して複数のカソード123a〜123fが配置されている。これらのカソード123a〜123fにはそれぞれターゲットがセットされている。具体的には、カソード123a、123b、123c、123d、123e、123fにはそれぞれ、SUL112、第1のシード層113A、第2のシード層113B、第1の下地層114A、第2の下地層114B、磁性層115を成膜するためのターゲットがセットされている。これらのカソード123a〜123fにより複数の種類の膜、すなわちSUL112、第1のシード層113A、第2のシード層113B、第1の下地層114A、第2の下地層114B、及び磁性層115が同時に成膜される。
上述の構成を有するスパッタ装置120では、SUL112、第1のシード層113A、第2のシード層113B、第1の下地層114A、第2の下地層114B、及び磁性層115をRolltoRoll法により連続成膜することができる。
(5)磁気記録媒体の製造方法
第2の実施形態に係る磁気記録媒体110は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、図9に示したスパッタ装置120を用いて、SUL112、第1のシード層113A、第2のシード層113B、第1の下地層114A、第2の下地層114B、及び磁性層115をベース層111の表面上に順次成膜する。具体的には以下のようにして成膜する。まず、成膜室121を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、成膜室121内にArガスなどのプロセスガスを導入しながら、カソード123a〜123fにセットされたターゲットをスパッタする。これにより、SUL112、第1のシード層113A、第2のシード層113B、第1の下地層114A、第2の下地層114B、及び磁性層115が、走行するベース層111の表面に順次成膜される。
スパッタ時の成膜室121の雰囲気は、例えば、1×10−5Pa〜5×10−5Pa程度に設定される。SUL112、第1のシード層113A、第2のシード層113B、第1の下地層114A、第2の下地層114B、及び磁性層115の膜厚及び特性は、ベース層111を巻き取るテープライン速度、スパッタ時に導入するArガスなどのプロセスガスの圧力(スパッタガス圧)、及び投入電力などを調整することにより制御可能である。
次に、磁性層115上に保護層116を成膜する。保護層116の成膜方法としては、例えば化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法または物理蒸着(Physical Vapor Deposition:PVD)法を用いることができる。
次に、結着剤、無機粒子、及び潤滑剤などを溶剤に混練、分散させることにより、バック層成膜用の塗料を調製する。次に、ベース層111の裏面上にバック層成膜用の塗料を塗布して乾燥させることにより、バック層118をベース層111の裏面上に成膜する。
次に、例えば潤滑剤を保護層116上に塗布し、潤滑層117を成膜する。潤滑剤の塗布方法としては、例えば、グラビアコーティング、ディップコーティングなどの各種塗布方法を用いることができる。次に、必要に応じて、磁気記録媒体110を所定の幅に裁断する。以上により、図8に示した磁気記録媒体110が得られる。
(6)効果
第2の実施形態に係る磁気記録媒体110では、第1の実施形態と同様に、記録再生装置により磁気記録媒体110の長手方向のテンションを調整することで、磁気記録媒体110の幅の変化を抑制することができる。例えば磁気記録媒体110の幅の変化をもたらしうる温湿度変化があったとしても、磁気記録媒体110の幅を一定又はほぼ一定に保つことができる。当該テンション調整による幅の変化の抑制は、長期保存後であっても可能である。さらに、磁気記録媒体110の厚みはtT≦5.6μmと薄いが、ハンドリング性に優れている。
(7)変形例
磁気記録媒体110が、ベース層111とSUL112との間に下地層をさらに備えるようにしてもよい。SUL112はアモルファス状態を有するため、SUL112上に形成される層のエピタキシャル成長を促す役割を担わないが、SUL112の上に形成される第1、第2の下地層114A、114Bの結晶配向を乱さないことが求められる。そのためには、軟磁性材料がカラムを形成しない微細な構造を有していることが好ましいが、ベース層111からの水分などのガスの放出の影響が大きい場合、軟磁性材料が粗大化し、SUL112上に形成される第1、第2の下地層114A、114Bの結晶配向を乱してしまう虞がある。ベース層111からの水分などのガスの放出の影響を抑制するためには、上述のように、ベース層111とSUL112との間に、Ti及びCrを含む合金を含み、アモルファス状態を有する下地層を設けることが好ましい。この下地層の具体的な構成としては、第2の実施形態の第1のシード層113Aと同様の構成を採用することができる。
磁気記録媒体110が、第2のシード層113B及び第2の下地層114Bのうちの少なくとも1つの層を備えていなくてもよい。但し、SNRの向上の観点からすると、第2のシード層113B及び第2の下地層114Bの両方の層を備えることがより好ましい。
磁気記録媒体110が、単層のSULに代えて、APC−SUL(Antiparallel Coupled SUL)を備えるようにしてもよい。
4.第3の実施形態(真空薄膜型の磁気記録媒体の例)
(磁気記録媒体の構成)
第3の実施形態に係る磁気記録媒体130は、図10に示すように、ベース層111と、SUL112と、シード層131と、第1の下地層132Aと、第2の下地層132Bと、磁性層115とを備える。なお、第3の実施形態において第2の実施形態と同様の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
SUL112、シード層131、第1、第2の下地層132A、132Bは、ベース層111の一方の主面と磁性層115との間に設けられ、ベース層111から磁性層115の方向に向かってSUL112、シード層131、第1の下地層132A、第2の下地層132Bの順序で積層されている。
(シード層)
シード層131は、Cr、Ni、及びFeを含み、面心立方格子(fcc)構造を有し、この面心立方構造の(111)面がベース層111の表面に平行になるように優先配向している。ここで、優先配向とは、X線回折法のθ−2θスキャンにおいて面心立方格子構造の(111)面からの回折ピーク強度が他の結晶面からの回折ピークより大きい状態、またはX線回折法のθ−2θスキャンにおいて面心立方格子構造の(111)面からの回折ピーク強度のみが観察される状態を意味する。
シード層131のX線回折の強度比率は、SNRの向上の観点から、好ましくは60cps/nm以上、より好ましくは70cps/nm以上、さらにより好ましくは80cps/nm以上である。ここで、シード層131のX線回折の強度比率は、シード層131のX線回折の強度I(cps)をシード層131の平均厚みD(nm)で除算して求められる値(I/D(cps/nm))である。
シード層131に含まれるCr、Ni、及びFeは、以下の式(2)で表される平均組成を有することが好ましい。
CrX(NiYFe100−Y)100−X・・・(2)
(但し、式(2)中において、Xは10≦X≦45、Yは60≦Y≦90の範囲内である。)Xが上記範囲内であると、Cr、Ni、Feの面心立方格子構造の(111)配向が向上し、より良好なSNRを得ることができる。同様にYが上記範囲内であると、Cr、Ni、Feの面心立方格子構造の(111)配向が向上し、より良好なSNRを得ることができる。
シード層131の平均厚みは、5nm以上40nm以下であることが好ましい。シード層131の平均厚みをこの範囲内にすることで、Cr、Ni、Feの面心立方格子構造の(111)配向を向上し、より良好なSNRを得ることができる。なお、シード層131の平均厚みは、第1の実施形態における磁性層13と同様にして求められる。但し、TEM像の倍率は、シード層131の厚みに応じて適宜調整される。
(第1、第2の下地層)
第1の下地層132Aは、面心立方格子構造を有するCo及びOを含み、カラム(柱状結晶)構造を有している。Co及びOを含む第1の下地層132Aでは、Ruを含む第2の下地層132Bとほぼ同様の効果(機能)が得られる。Coの平均原子濃度に対するOの平均原子濃度の濃度比((Oの平均原子濃度)/(Coの平均原子濃度))が1以上である。濃度比が1以上であると、第1の下地層132Aを設ける効果が向上し、より良好なSNRを得ることができる。
カラム構造は、SNR向上の観点から、傾斜していることが好ましい。その傾斜の方向は、長尺状の磁気記録媒体130の長手方向であることが好ましい。このように長手方向が好ましいのは、以下の理由による。本実施形態に係る磁気記録媒体130は、いわゆるリニア記録用の磁気記録媒体であり、記録トラックは磁気記録媒体130の長手方向に平行となる。また、本実施形態に係る磁気記録媒体130は、いわゆる垂直磁気記録媒体でもあり、記録特性の観点からすると、磁性層115の結晶配向軸が垂直方向であることが好ましいが、第1の下地層132Aのカラム構造の傾きの影響で、磁性層115の結晶配向軸に傾きが生じる場合がある。リニア記録用である磁気記録媒体130においては、記録時のヘッド磁界との関係上、磁気記録媒体130の長手方向に磁性層115の結晶配向軸が傾いている構成が、磁気記録媒体130の幅方向に磁性層115の結晶配向軸が傾いている構成に比べて、結晶配向軸の傾きによる記録特性への影響を低減できる。磁気記録媒体130の長手方向に磁性層115の結晶配向軸を傾かせるためには、上記のように第1の下地層132Aのカラム構造の傾斜方向を磁気記録媒体130の長手方向とすることが好ましい。
カラム構造の傾斜角は、好ましくは0°より大きく60°以下であることが好ましい。傾斜角が0°より大きく60°以下の範囲では、第1の下地層132Aに含まれるカラムの先端形状の変化が大きくほぼ三角山状になるため、グラニュラ構造の効果が高まり、低ノイズ化し、SNRが向上する傾向がある。一方、傾斜角が60°を超えると、第1の下地層132Aに含まれるカラムの先端形状の変化が小さくほぼ三角山状とはなりにくいため、低ノイズ効果が薄れる傾向がある。
カラム構造の平均粒径は、3nm以上13nm以下である。平均粒径が3nm未満であると、磁性層115に含まれるカラム構造の平均粒径が小さくなるため、現在の磁性材料では記録を保持する能力が低下する虞がある。一方、平均粒径が13nm以下であると、ノイズを抑制し、より良好なSNRを得ることができる。
第1の下地層132Aの平均厚みは、10nm以上150nm以下であることが好ましい。第1の下地層132Aの平均厚みが10nm以上であると、第1の下地層132Aの面心立方格子構造の(111)配向が向上し、より良好なSNRを得ることができる。一方、第1の下地層132Aの平均厚みが150nm以下であると、カラムの粒径が大きくなることを抑制できる。したがって、ノイズを抑制し、より良好なSNRを得ることができる。なお、第1の下地層132Aの平均厚みは、第1の実施形態における磁性層13と同様にして求められる。但し、TEM像の倍率は、第1の下地層132Aの厚みに応じて適宜調整される。
第2の下地層132Bは、磁性層115と同様の結晶構造を有していることが好ましい。磁性層115がCo系合金を含む場合には、第2の下地層132Bは、Co系合金と同様の六方最密充填(hcp)構造を有する材料を含み、その構造のc軸が膜面に対して垂直方向(すなわち膜厚方向)に配向していることが好ましい。磁性層115の配向性を高め、かつ、第2の下地層132Bと磁性層115との格子定数のマッチングを比較的良好にできるからである。六方最密充填構造を有する材料としては、Ruを含む材料を用いることが好ましく、具体的にはRu単体またはRu合金が好ましい。Ru合金としては、例えば、Ru−SiO2、Ru−TiO2またはRu−ZrO2などのRu合金酸化物が挙げられる。
第2の下地層132Bの平均厚みは、一般的な磁気記録媒体における下地層(例えばRuを含む下地層)よりも薄くてもよく、例えば、1nm以上5nm以下とすることが可能である。第2の下地層132Bの下に上述の構成を有するシード層131及び第1の下地層132Aを設けているので、第2の下地層132Bの平均厚みが上述のように薄くても良好なSNRが得られる。なお、第2の下地層132Bの平均厚みは、第1の実施形態における磁性層13と同様にして求められる。但し、TEM像の倍率は、第2の下地層132Bの厚みに応じて適宜調整される。
(効果)
第3の実施形態に係る磁気記録媒体130では、第1の実施形態と同様に、磁気記録媒体10の長手方向のテンションの調整により、磁気記録媒体10の幅を一定またはほぼ一定に保つことができる。
第3の実施形態に係る磁気記録媒体130は、ベース層111と第2の下地層132Bとの間にシード層131及び第1の下地層132Aを備えている。シード層131は、Cr、Ni、及びFeを含み、面心立方格子構造を有し、この面心立方構造の(111)面がベース層111の表面に平行になるように優先配向している。第1の下地層132Aは、Co及びOを含み、Coの平均原子濃度に対するOの平均原子濃度の比が1以上であり、平均粒径が3nm以上13nm以下であるカラム構造を有する。これにより、第2の下地層132Bの厚さを薄くして高価な材料であるRuをできるだけ使用せずに、良好な結晶配向を有し、かつ高い抗磁力を有する磁性層115を実現できる。
第2の下地層132Bに含まれるRuは、磁性層115の主成分であるCoと同じ六方最密格子構造を有する。このため、Ruには、磁性層115の結晶配向性向上とグラニュラ性促進とを両立させる効果がある。また、第2の下地層132Bに含まれるRuの結晶配向を更に向上させるために、第2の下地層132Bの下に第1の下地層132A及びシード層131を設けている。第3の実施形態に係る磁気記録媒体130においては、Ruを含む第2の下地層132Bとほぼ同様の効果(機能)を、面心立方格子構造を有する安価なCoOを含む第1の下地層132Aで実現している。このため、第2の下地層132Bの厚さを薄くできる。また、第1の下地層132Aの結晶配向を高めるために、Cr、Ni、及びFeを含むシード層131を設けている。
5.実施例
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、磁気テープの平均厚みtT、磁気テープの長手方向のテンション変化に対する磁気テープの幅方向の寸法変化量Δw、磁気テープの温度膨張係数α、磁気テープの湿度膨張係数β、磁気テープのポアソン比ρ、磁気テープの長手方向の弾性限界値σMD、磁性層の平均厚みtm、角形比S2、バック層の平均厚みtb、バック層の表面粗度Rab及び磁性面とバック面の層間摩擦係数μは、第1の実施形態にて説明した測定方法により求められた値である。但し、後述するように、実施例11では、長手方向の弾性限界値σMDを測定する際の速度Vを、第1の実施形態にて説明した測定方法とは異なる値とした。
[実施例1]
(磁性層形成用塗料の調製工程)
磁性層形成用塗料を以下のようにして調製した。まず、下記配合の第1組成物をエクストルーダで混練した。次に、ディスパーを備えた攪拌タンクに、混練した第1組成物と、下記配合の第2組成物を加えて予備混合を行った。続いて、さらにサンドミル混合を行い、フィルター処理を行い、磁性層形成用塗料を調製した。
(第1組成物)
ε酸化鉄ナノ粒子(ε−Fe2O3結晶粒子)の粉末:100質量部
塩化ビニル系樹脂(シクロヘキサノン溶液30質量%):10質量部(重合度300、Mn=10000、極性基としてOSO3K=0.07mmol/g、2級OH=0.3mmol/gを含有する。)
酸化アルミニウム粉末:5質量部
(α−Al2O3、平均粒径0.2μm)
カーボンブラック:2質量部
(東海カーボン社製、商品名:シーストTA)
(第2組成物)
塩化ビニル系樹脂:1.1質量部
(樹脂溶液:樹脂分30質量%、シクロヘキサノン70質量%)
n−ブチルステアレート:2質量部
メチルエチルケトン:121.3質量部
トルエン:121.3質量部
シクロヘキサノン:60.7質量部
最後に、上述のようにして調製した磁性層形成用塗料に、硬化剤として、ポリイソシアネート(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製):4質量部と、ミリスチン酸:2質量部とを添加した。
(下地層形成用塗料の調製工程)
下地層形成用塗料を以下のようにして調製した。まず、下記配合の第3組成物をエクストルーダで混練した。次に、ディスパーを備えた攪拌タンクに、混練した第3組成物と、下記配合の第4組成物を加えて予備混合を行った。続いて、さらにサンドミル混合を行い、フィルター処理を行い、下地層形成用塗料を調製した。
(第3組成物)
針状酸化鉄粉末:100質量部
(α−Fe2O3、平均長軸長0.15μm)
塩化ビニル系樹脂:55.6質量部
(樹脂溶液:樹脂分30質量%、シクロヘキサノン70質量%)
カーボンブラック:10質量部
(平均粒径20nm)
(第4組成物)
ポリウレタン系樹脂UR8200(東洋紡績製):18.5質量部
n−ブチルステアレート:2質量部
メチルエチルケトン:108.2質量部
トルエン:108.2質量部
シクロヘキサノン:18.5質量部
最後に、上述のようにして調製した下地層形成用塗料に、硬化剤として、ポリイソシアネート(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製):4質量部と、ミリスチン酸:2質量部とを添加した。
(バック層形成用塗料の調製工程)
バック層形成用塗料を以下のようにして調製した。下記原料を、ディスパーを備えた攪拌タンクで混合を行い、フィルター処理を行うことで、バック層形成用塗料を調製した。カーボンブラック(旭カーボン株式会社製、商品名:#80):100質量部
ポリエステルポリウレタン:100質量部
(日本ポリウレタン社製、商品名:N−2304)
メチルエチルケトン:500質量部
トルエン:400質量部
シクロヘキサノン:100質量部
(成膜工程)
上述のようにして作製した塗料を用いて、非磁性支持体である長尺のポリエチレンナフタレートフィルム(以下「PENフィルム」という。)上に平均厚み1.0μmの下地層、及び平均厚みtmが90nmの磁性層を以下のようにして形成した。まず、フィルム上に、下地層形成用塗料を塗布、乾燥させることにより、フィルム上に下地層を形成した。次に、下地層上に、磁性層形成用塗料を塗布し、乾燥させることにより、下地層上に磁性層を形成した。なお、磁性層形成用塗料の乾燥の際に、ソレノイドコイルにより、磁性粉をフィルムの厚み方向に磁場配向させた。また、磁性層形成用塗料に対する磁場の印加時間を調整し、磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比S2を65%に設定した。
続いて、下地層及び磁性層が形成されたフィルムに対して、平均厚みtbが0.6μmのバック層を塗布し乾燥させた。そして、下地層、磁性層、及びバック層が形成されたフィルムに対して硬化処理を行った。続いて、カレンダー処理を行い、磁性層表面を平滑化した。この際、磁性面とバック面の層間摩擦係数μが約0.5となるように、カレンダー処理の条件(温度)を調整した後、再硬化処理を施し、平均厚みtTが5.5μmの磁気テープが得られた。
(裁断の工程)
上述のようにして得られた磁気テープを1/2インチ(12.65mm)幅に裁断し、コアに巻き取ってパンケーキを得た。
以上のとおりにして得られた磁気テープは、表1に示す特性を有した。例えば、当該磁気テープの寸法変化量Δwは707ppm/Nであった。
当該1/2インチ幅の磁気テープをカートリッジケース内に設けられたリールに巻き付けて、磁気記録カートリッジを得た。当該磁気テープに、サーボ信号を記録した。当該サーボ信号は、ハの字の磁気パターンの列からなり、当該磁気パターンは、互いに既知の間隔(以下、「標準サーボトラック幅」という。)で、長手方向に平行に2列以上予め記録された。
[実施例2]
寸法変化量Δwが750ppm/Nとなるように実施例1よりもPENフィルムの厚みを薄くしたこと以外は実施例1と同じ方法で磁気テープを得た。当該磁気テープの平均厚みtTは5μmであった。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例3]
寸法変化量Δwが800ppm/Nとなるように実施例1よりもPENフィルムの厚みを薄くし且つバック層及び下地層の平均厚みを薄くしたこと以外は実施例1と同じ方法で磁気テープを得た。当該磁気テープの平均厚みtTは4.5μmであった。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例4]
寸法変化量Δwが800ppm/Nとなるように実施例1よりもPENフィルムの厚みを薄くし、バック層及び下地層の平均厚みを薄くし、且つ、下地層、磁性層、及びバック層が形成されたフィルムの硬化処理条件を調整したこと以外は、実施例1と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例5]
温度膨張係数αが8.0ppm/℃となるように下地層形成用塗料の組成を変更したこと以外は実施例4と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例6]
湿度膨張係数βが3.0ppm/%RHとなるようにPENフィルムの片面に薄いバリア層を形成したこと以外は実施例4と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例7]
ポアソン比ρが0.31となるようにベースフィルムの縦横の延伸強度を変更したこと以外は実施例4と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例8]
ポアソン比ρが0.35となるようにベースフィルムの縦横の延伸強度を変更したこと以外は実施例4と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例9]
長手方向の弾性限界値σMDが0.8Nとなるように下地層、磁性層、及びバック層が形成されたフィルムの硬化条件を調整したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例10]
長手方向の弾性限界値σMDが3.5Nとなるように下地層、磁性層、及びバック層が形成されたフィルムの硬化条件及び再硬化条件を調整したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例11]
実施例9と同様にして磁気テープを得た。そして、得られた磁気テープの弾性限界値σMDを、長手方向の弾性限界値σMDを測定する際の速度Vを5mm/minに変更して測定した。その結果、長手方向の弾性限界値σMDは、上記速度Vが0.5mm/minの長手方向の弾性限界値σMD(実施例9)に対して変化はなく0.8であった。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例12]
磁性層の平均厚みtmが40nmとなるように磁性層形成用塗料の塗布厚を変更したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例13]
(SULの成膜工程)
まず、以下の成膜条件にて、非磁性支持体としての長尺の高分子フィルムの表面上に、平均厚み10nmのCoZrNb層(SUL)を成膜した。なお、高分子フィルムとしては、PENフィルムを用いた。
成膜方式:DCマグネトロンスパッタリング方式
ターゲット:CoZrNbターゲット
ガス種:Ar
ガス圧:0.1Pa
(第1のシード層の成膜工程)
次に、以下の成膜条件にて、CoZrNb層上に平均厚み5nmのTiCr層(第1のシード層)を成膜した。
スパッタリング方式:DCマグネトロンスパッタリング方式
ターゲット:TiCrターゲット
到達真空度:5×10−5Pa
ガス種:Ar
ガス圧:0.5Pa
(第2のシード層の成膜工程)
次に、以下の成膜条件にて、TiCr層上に平均厚み10nmのNiW層(第2のシード層)を成膜した。
スパッタリング方式:DCマグネトロンスパッタリング方式
ターゲット:NiWターゲット
到達真空度:5×10−5Pa
ガス種:Ar
ガス圧:0.5Pa
(第1の下地層の成膜工程)
次に、以下の成膜条件にて、NiW層上に平均厚み10nmのRu層(第1の下地層)を成膜した。
スパッタリング方式:DCマグネトロンスパッタリング方式
ターゲット:Ruターゲット
ガス種:Ar
ガス圧:0.5Pa
(第2の下地層の成膜工程)
次に、以下の成膜条件にて、Ru層上に平均厚み20nmのRu層(第2の下地層)を成膜した。
スパッタリング方式:DCマグネトロンスパッタリング方式
ターゲット:Ruターゲット
ガス種:Ar
ガス圧:1.5Pa
(磁性層の成膜工程)
次に、以下の成膜条件にて、Ru層上に平均厚み9nmの(CoCrPt)−(SiO2)層(磁性層)を成膜した。
成膜方式:DCマグネトロンスパッタリング方式
ターゲット:(CoCrPt)−(SiO2)ターゲット
ガス種:Ar
ガス圧:1.5Pa
(保護層の成膜工程)
次に、以下の成膜条件にて、磁性層上に平均厚み5nmのカーボン層(保護層)を成膜した。
成膜方式:DCマグネトロンスパッタリング方式
ターゲット:カーボンターゲット
ガス種:Ar
ガス圧:1.0Pa
(潤滑層の成膜工程)
次に、潤滑剤を保護層上に塗布し、潤滑層を成膜した。
(バック層の成膜工程)
次に、磁性層とは反対側の面に、バック層形成用塗料を塗布し乾燥することにより、平均厚みtbが0.3μmのバック層を形成した。これにより、平均厚みtTが4.0μmの磁気テープが得られた。
(裁断の工程)
上述のようにして得られた磁気テープを1/2インチ(12.65mm)幅に裁断した。
以上のとおりにして得られた磁気テープは、表1に示す特性を有した。例えば、当該磁気テープの寸法変化量Δwは800ppm/Nであった。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例14]
バック層の厚みを0.2μmに変更したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。当該磁気テープの平均厚みは4.4μmであった。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例15]
バック層の表面粗度Rabが3nmとなるようにバック層形成用塗料の組成を変更したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例16]
摩擦係数μが0.20となるようにカレンダー処理の条件(温度)を調整したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例17]
バック層の表面粗度Rabが3nmとなるようにバック層形成用塗料の組成を変更し、摩擦係数μが0.80となるようにカレンダー処理の条件(温度)を調整したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例18]
磁性層の平均厚みtmが110nmとなるように磁性層形成用塗料の塗布厚を変更したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例19]
バック層の表面粗度Rabが7nmとなるようにバック層形成用塗料の組成を変更したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例20]
摩擦係数μが0.18となるようにカレンダー処理の条件(温度)を調整したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例21]
摩擦係数μが0.82となるようにカレンダー処理の条件(温度)を調整したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例22]
磁性層形成用塗料に対する磁場の印加時間を調整し磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比S2を73%に設定したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例23]
磁性層形成用塗料に対する磁場の印加時間を調整し磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比S2を80%に設定したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例24] 長手方向の弾性限界値σMDが5.0Nとなるように下地層、磁性層、及びバック層が形成されたフィルムの硬化条件並びに再硬化条件を調整したこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[実施例25]
ε酸化鉄ナノ粒子に代えてバリウムフェライト(BaFe12O19)ナノ粒子を用いたこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[比較例1]
寸法変化量Δwが650[ppm/N]となるようにPENフィルムの延伸処理を変更し、塗布工程での巻き取り張力を上げたこと以外は実施例1と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[比較例2]
厚いベースフィルムを使用し、且つ、乾燥工程での張力を上げたこと以外は実施例3と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[比較例3]
厚いベースフィルムを使用し、サーボ信号を記録するときに張力を調整しながら記録し、且つ、乾燥工程での張力を上げたこと以外は実施例3と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
[比較例4]
垂直配向を行わなかったこと以外は実施例7と同じ方法で磁気テープを得た。実施例1と同じように、当該磁気テープを用いて磁気記録カートリッジを製造し、そして、当該磁気テープにサーボ信号を記録した。
(幅変形係数aの算出及び10年保存後の走行判定)
幅変形係数aを、第1の実施形態にて説明した測定方法により求めた。具体的には、以下のとおりである。
実施例1〜25及び比較例1〜4の磁気記録テープには、上記で述べたとおり、ハの字の磁気パターンの列が、互いに既知の間隔(「標準サーボトラック幅」)で、長手方向に平行に2列以上予め記録されている。各磁気記録テープを、磁気記録再生装置へと巻き込むように(いわゆる順方向に)走行させた。ドライブ走行時に、磁気記録テープの上から2つ目のデータバンドを挟む2つのサーボトラックを再生し、デジタルオシロスコープ(Lecroy社 WAVEPRO 960)でそれぞれの再生波形を得た。各サーボトラックの再生により得られた波形からタイミング信号間の時間を得て、当該時間とテープ走行速度とから、前記データバンドの上側のサーボトラックのAバーストの先頭磁気ストライプとBバーストの先頭磁気ストライプとの間の距離L1、及び前記データバンドの下側のサーボトラックのAバーストの先頭磁気ストライプとBバーストの先頭磁気ストライプとの間の距離L2をそれぞれ計算し、以下の式を用いてサーボトラック幅のずれ量を求めた。
(サーボトラック幅のずれ量)={(L1−L2)/2}×tan(90°−θ1)
この式において、L1及びL2は、上記で述べた距離L1及びL2であり、θ1は、カートリッジより取り出した磁気記録テープをフェリコロイド現像液で現像し、万能工具顕微鏡(TOPCON TUM-220ES)及びデータ処理装置(TOPCON CA-1B)を用いて求めた。
磁気記録テープを32℃55%環境下で300時間保存し、当該300時間の保存中に、50時間おきに、当該磁気記録テープの巻き外と巻き内からそれぞれ20mを除いた範囲の全長にわたって、約50mごとの間隔でサーボトラック幅のずれ量を測定した。
磁気記録テープの各位置において、32℃55%環境下で50時間保存したときの前記サーボトラック幅のずれ量を基準値とした。その後、前記各位置について、各測定時点における、前記サーボトラック幅のずれ量の前記基準値からの変化量(長期保存幅変化量Y)を求めた。長期保存幅変化量Yと保存時間との関係から、最小二乗法を用いて、長期保存幅変化量YをY=alog(t)と規定した場合の幅変形係数aを求めた。
また、上記方法によって求めた幅変形係数aを用いて、以下の式から10年保存後の長期保存幅変化量Yを求めた。
(10年保存後の長期保存幅変化量Y)=alog{10(年)×365(日)×24(時間)}
この長期保存幅変化量Yの値(小さい程望ましい)に従った判定を各磁気テープに対して行い、8段階の判定値をそれぞれ付与した。なお、評価“8”が最も望ましい判定結果を示し、評価“1”が最も望ましくない判定結果を示すものとした。前記8段階のいずれかの評価を有する磁気テープは、テープ走行時に以下の状態が観察される。
8:何も異常が発生しない。
7:走行時に、軽度のエラーレートの上昇がみられる。
6:走行時に、重度のエラーレートの上昇がみられる。
5:走行時に、サーボ信号が読めず軽度(1〜2回)の再読み込みがかかる。
4:走行時に、サーボ信号が読めず中度(10回以内)の再読み込みがかかる。
3:走行時に、サーボ信号が読めず重度(10回超)の再読み込みがかかる。
2:サーボが読めず、システムエラーで時々停止する。
1:サーボが読めず、システムエラーで即時に停止する。
幅変形係数aの算出及び10年保存後の判定について、実施例4を例にしてさらに詳細に説明する。
実施例4の磁気テープにおいて、サーボトラック幅のずれ量の測定を行った各位置における、サーボトラック幅のずれ量(μm)の測定結果、及び各位置における幅変形係数aの算出結果の一例を表2に示す。表2に示されるとおり、実施例4の磁気テープにおいて幅変形係数aの最大値は0.04μmであり、幅変形係数aの最小値は−0.01μmであった。また、これら幅変形係数aを用いて10年保存後の長期保存幅変化量Yを求め、Yの値に従った判定を行ったところ、表1に示されるとおり、実施例4の磁気テープの判定は6であった。
(電磁変換特性の評価)
まず、ループテスター(Microphysics社製)を用いて、磁気テープの再生信号を取得した。以下に、再生信号の取得条件について示す。
head:GMR
headspeed : 2m/s
signal : 単一記録周波数(10MHz)
記録電流:最適記録電流
次に、再生信号をスペクトラムアナライザ(spectrum analyzer)によりスパン(SPAN)0〜20MHz(resolution band width=100kHz, VBW = 30kHz)で取り込んだ。次に、取り込
んだスペクトルのピークを信号量Sとすると共に、ピークを除いたfloor noiseを積算して雑音量Nとし、信号量Sと雑音量Nの比S/NをSNR(Signal-to-Noise Ratio)と
して求めた。次に、求めたSNRを、リファレンスメディアとしての比較例1のSNRを基準とした相対値(dB)に変換した。次に、上述のようにして得られたSNR(dB)を用いて、電磁変換特性の良否を以下のようにして判定した。
より良好:磁気テープのSNRが評価基準サンプル(比較例1)のSNR(=0(dB))よりも1dB以上良い。
良好:磁気テープのSNRが評価基準サンプル(比較例1)のSNR(=0(dB))と同等、もしくはこのSNR(=0(dB))を超える。
概ね良好:磁気テープのSNRが評価基準サンプル(比較例1)のSNR(=0(dB))未満の部分がある
不良:すべての領域にわたって磁気テープのSNRが評価基準サンプル(比較例1)のSNR(=0(dB))未満である。
(巻ズレの評価)
まず、上記の“テープ幅の変化量の判定”後の磁気記録カートリッジを準備した。次に、磁気記録カートリッジからテープが巻かれたリールを取り出し、巻かれたテープの端面を目視にて観察した。なお、リールにはフランジがあり、少なくとも1つのフランジは透明または半透明であり、内部のテープ巻き状態をフランジ越しに観察することができる。
観察の結果、テープの端面が平坦でなく、段差やテープの飛び出しがある場合、テープの巻ズレがあるものとした。また、これらの段差やテープの飛び出しが複数個観察される程、「巻ズレ」は悪いものとした。上記の判定をサンプル毎に行った。各サンプルの巻ズレ状態を、リファレンスメディアとしての比較例1の巻ズレ状態と比較し、良否を以下のようにして判定した。
良好:サンプルの巻ズレ状態が、基準サンプル(比較例1)の巻ズレ状態と同等もしくは少ない場合。
不良:サンプルの巻ズレ状態が、基準サンプル(比較例1)の巻ズレ状態とより多い場合。
表1は、実施例1〜25及び比較例1〜4の磁気テープの構成及び評価結果を示す。また、表2は、実施例4の磁気テープにおいて、各位置におけるサーボトラック幅のずれ量(μm)の測定結果、及び当該磁気テープの各位置における幅変形係数aの算出結果の一例を示す。
なお、表1中の各記号は、以下の測定値を意味する。
tT:磁気テープの厚み(単位:μm)
Δw:磁気テープの長手方向のテンション変化に対する磁気テープの幅方向の寸法変化量(単位:ppm/N)
α:磁気テープの温度膨張係数(単位:ppm/℃)
β:磁気テープの湿度膨張係数(単位:ppm/%RH)
ρ:磁気テープのポアソン比
σMD:磁気テープの長手方向の弾性限界値(単位:N)
V:弾性限界測定を行う際の速度(単位:mm/min)
tm:磁性層の平均厚み(単位:nm)
S2:磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比(単位:%)
tb:バック層の平均厚み(単位:μm)
Rab:バック層の表面粗度(単位:nm)
μ:磁性面とバック面の層間摩擦係数
表1に示される結果より、以下のことが分かる。
実施例1〜25の磁気テープはいずれも、10年保存後の長期保存幅変化量Yに基づく判定結果が4以上であった(すなわち長期保存幅変化量Yの値が小さい)。よって、本技術に従う磁気記録媒体は、長手方向のテンションを調整する記録再生装置における使用に適しており、前記記録再生装置への適性が、長期間にわたって安定的に維持されることが分かる。
実施例1〜25及び比較例1についてのテープ幅の変化量の判定結果より、磁気記録テープの寸法変化量Δwが660ppm/N以上、より好ましくは700ppm/N以上、より好ましくは750ppm/N以上、さらにより好ましくは800ppm/N以上であることによって、当該磁気記録テープは、長手方向のテンションを調整する記録再生装置における使用(特には当該テンションの調整によるテープの幅の調整)により適したものとなることが分かる。
実施例7と比較例2及び3とを対比すると、実施例7の磁気テープは、幅変形係数aが−0.06μm≦a≦0.06μmの範囲内であり、10年保存後の長期保存幅変化量Yに基づく判定結果が6である一方で、比較例2の磁気テープは、幅変形係数aの最大値が0.06μmを超えており、10年保存後の長期保存幅変化量Yに基づく判定結果が1であった。また、比較例3の磁気テープは、幅変形係数aの最小値が−0.06μmを下回っており、10年保存後の長期保存幅変化量Yに基づく判定結果が1であった。そのため、磁気記録テープの幅変形係数aが−0.06μm≦a≦0.06μmの範囲内であることによって、前記記録再生装置への適性が、長期間にわたって安定的に維持されることが分かる。
実施例3〜6等の評価結果の比較から、長期保存幅変化量Yの値を小さくする観点からすると、温度膨張係数αが5.9ppm/℃≦α≦8ppm/℃であることが好ましいことがわかる。また、実施例3〜6等の評価結果の比較から、長期保存幅変化量Yの値を小さくする観点からすると、湿度膨張係数βがβ≦5ppm/%RHであることが好ましいことがわかる。
実施例7、9、10等の評価結果の比較から、長期保存幅変化量Yの値を小さくする観点からすると、長手方向の弾性限界値σMDが、0.8N≦σMDであることが好ましいことがわかる。
実施例9及び11の比較から、弾性限界値σMDが、弾性限界測定を行う際の速度Vに寄らないことが分かる。
実施例7及び18の評価結果の比較から、電磁変換特性を良好にする観点からは、磁性層の厚みが100nm以下、特には90nm以下であることが好ましいことがわかる。
実施例7、15、17、19等の評価結果の比較から、電磁変換特性の向上の観点からすると、バック層の表面粗度Rabが、好ましくは3.0nm≦Rab≦7.5nmであることがわかる。
実施例7、16、17、20、及び21の評価結果を相互に比較すると、巻ずれを抑制する観点からは、摩擦係数μは、0.18<μ<0.82、特には0.20≦μ≦0.80、より特には0.20≦μ≦0.78、さらにより特には0.25≦μ≦0.75であることが好ましいことがわかる。
実施例7と比較例4とを対比すると、電磁変換特性を良好にする観点からは、磁性層が垂直配向又はほぼ垂直配向していることが好ましいことがわかる。また、実施例7、22、23の評価結果の比較から、電磁変換特性の向上の観点からすると、垂直方向における磁気テープの角形比S2が73%以上、特には80%以上であることが好ましいことがわかる。
実施例7、25の評価結果の比較から、磁性粒子としてバリウムフェライトナノ粒子を用いた場合にも、磁性粒子としてε酸化鉄ナノ粒子を用いた場合と同様の評価結果が得られることがわかる。
実施例13と他の実施例の結果との比較から、真空薄膜型(スパッタタイプ)の磁気記録テープであっても、塗布型の磁気記録テープと同様の評価結果が得られることが分かる。
以上、本技術の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等を用いてもよい。また、化合物等の化学式は代表的なものであって、同じ化合物の一般名称であれば、記載された価数等に限定されない。
また、上述の実施形態及び実施例の構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等は、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値または下限値は、他の段階の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本技術は、以下のような構成をとることもできる。
〔1〕平均厚みtTが、tT≦5.6μmであり、
長手方向のテンション変化に対する幅方向の寸法変化量Δwが、660ppm/N≦Δwであり、
垂直方向における角形比が65%以上であり、
長期保存幅変化量YをY=alog(t)と規定した場合における、長期保存時の幅変形係数aが−0.06μm≦a≦0.06μmである、
磁気記録媒体。
〔2〕前記磁気記録媒体が、タイミングサーボ方式の磁気記録再生装置において用いられる、〔1〕に記載の磁気記録媒体。
〔3〕前記寸法変化量Δwが、700ppm/N≦Δwである、〔1〕又は〔2〕に記載の磁気記録媒体。
〔4〕前記寸法変化量Δwが、750ppm/N≦Δwである、〔1〕又は〔2〕に記載の磁気記録媒体。
〔5〕前記寸法変化量Δwが、800ppm/N≦Δwである、〔1〕又は〔2〕に記載の磁気記録媒体。
〔6〕前記磁気記録媒体が、バック層を備え、
前記バック層の表面粗度Rabが、3.0nm≦Rab≦7.5nmである、〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
〔7〕前記磁気記録媒体が、磁性層及びバック層を備え、
前記磁性層側の表面と前記バック層側の表面との間の摩擦係数μが、0.20≦μ≦0.80である、〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
〔8〕温度膨張係数αが、5.5ppm/℃≦α≦9ppm/℃であり、且つ、
湿度膨張係数βが、β≦5.5ppm/%RHである、
〔1〕〜〔7〕のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
〔9〕ポアソン比ρが、0.25≦ρである、〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
〔10〕長手方向の弾性限界値σMDが、0.7N≦σMDである、〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
〔11〕前記弾性限界値σMDが、弾性限界測定を行う際の速度Vに依らない、〔10〕に記載の磁気記録媒体。
〔12〕前記磁気記録媒体が、磁性層を備え、
前記磁性層が垂直配向しているものである、〔1〕〜〔11〕のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
〔13〕前記磁気記録媒体が、バック層を備え、
前記バック層の平均厚みtbが、tb≦0.6μmである、〔1〕〜〔12〕のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
〔14〕前記磁気記録媒体が、磁性層を備え、
前記磁性層がスパッタ層である、〔1〕〜〔13〕のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
〔15〕前記磁性層の平均厚みtmが、9nm≦tm≦90nmである、〔14〕に記載の磁気記録媒体。
〔16〕前記磁気記録媒体が、磁性層を備え、
前記磁性層が磁性粉を含む、〔1〕〜〔13〕のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。〔17〕前記磁性層の平均厚みtmが、35nm≦tm≦120nmである、〔16〕に記載の磁気記録媒体。
〔18〕前記磁性粉が、ε酸化鉄磁性粉、バリウムフェライト磁性粉、コバルトフェライト磁性粉、又はストロンチウムフェライト磁性粉を含む、〔16〕又は〔17〕に記載の磁気記録媒体。