以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、巻回装置によって得られる巻回素子としてのリチウムイオン電池素子の構成について説明する。
図1及び図2に示すように、リチウムイオン電池素子1(以下、単に「電池素子1」という)は、2枚のセパレータシート2,3を介して、正電極シート4及び負電極シート5が重ね合わされた状態で巻回されることにより製造される。尚、以下においては、セパレータシート2,3及び電極シート4,5を総称する場合、「各種シート2〜5」ということがある。
セパレータシート2,3は、それぞれ同一の幅を有する帯状をなしており、異なる電極シート4,5同士が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止すべく、ポリプロピレン(PP)等の絶縁素材により構成されている。セパレータシート2,3は、透明又は半透明である。従って、セパレータシート2,3を通して、正電極シート4や負電極シート5を視認することができるようになっている。
電極シート4,5は、薄板状の金属シートよりなり、その表裏両面には活物質が塗布されている。正電極シート4には例えばアルミニウム箔シートが用いられ、その表裏両面に正極活物質(例えば、マンガン酸リチウム粒子等)が塗布されている。負電極シート5には例えば銅箔シートが用いられ、その表裏両面に負極活物質(例えば、活性炭等)が塗布されている。
電極シート4,5は、連続塗工形態の電極シートであり、シート幅方向における所定部分が活物質塗工部4a,5a(図2中、散点模様を付した部位)となり、残りの部分が活物質不塗工部4b,5bとなっている。そして、活物質塗工部4a,5aを介して、正電極シート4及び負電極シート5間におけるイオン交換ができるようになっている。より詳しくは、充電時には、正電極シート4側から負電極シート5側へとイオンが移動し、放電時には、負電極シート5側から正電極シート4側へとイオンが移動する。
また、負電極シート5は、セパレータシート2,3よりも幅狭とされ、正電極シート4は、負電極シート5よりも幅狭とされている。そして、電池素子1においては、負電極シート5で正電極シート4が覆われた状態になっている。これにより、正電極シート4が負電極シート5で覆われないことに伴う不具合(例えば、正電極シート4に針状の析出物が形成され、セパレータシート2,3に傷がついてしまうこと等)が抑制され、電池素子1の品質向上が図られている。
さらに、正電極シート4の幅方向一端縁からは図示しない複数の正極リードが延出するとともに、負電極シート5の幅方向他端縁からは図示しない複数の負極リードが延出している。
リチウムイオン電池を得るに際しては、電池素子1が金属製で筒状をなす図示しない電池容器(ケース)内に配設されるとともに、前記正極リード及び負極リードがそれぞれまとめられる。そして、まとめられた正極リードを正極端子部品(図示せず)に接続するとともに、同じくまとめられた負極リードを負極端子部品(図示せず)に接続し、両端子部品が前記電池容器の両端開口に塞ぐように設けられることで、リチウムイオン電池を得ることができる。
次に、電池素子1を製造するための巻回装置10について説明する。図3に示すように、巻回装置10は、各種シート2〜5を巻回するための巻回部11と、正電極シート4を巻回部11へ供給するための正電極シート供給機構31と、負電極シート5を巻回部11へ供給するための負電極シート供給機構41と、セパレータシート2,3をそれぞれ巻回部11へ供給するためのセパレータ供給機構51,61と、良否判定手段及び連続撮像実行手段としての制御装置81とを備えている。尚、上記巻回部11や各供給機構31,41,51,61など、巻回装置10内の各種装置は、制御装置81により動作制御される構成となっている。
正電極シート供給機構31は、正電極シート4がロール状に巻回されてなる正電極シート原反32を備えている。正電極シート原反32は、図示しない駆動手段によって回転可能な支持軸33により支持されている。支持軸33の回転に伴い、正電極シート原反32から正電極シート4が引き出される。
また、正電極シート供給機構31は、シート挿入機構71と、シート切断カッタ72と、テンション付与機構73と、バッファ機構75とを備えている。
シート挿入機構71は、正電極シート4を巻回部11へ供給するものであり、正電極シート4の搬送経路に沿って、巻回部11に接近する接近位置と、巻回部11から離間する離間位置との間を移動可能に構成されている。シート挿入機構71は、正電極シート4を把持可能な一対のチャック71a,71bを備えている。チャック71a,71bは、図示しない駆動手段により開閉動作可能に構成されている。そして、正電極シート4を巻回部11へ供給する際には、チャック71a,71bにより正電極シート4を把持した上で、シート挿入機構71が巻回部11側に接近するようになっている。
シート切断カッタ72は、正電極シート4を切断するためのものであり、正電極シート4の表裏両側にそれぞれ位置する一対の刃部72a,72bを備えている。シート切断カッタ72は、その一対の刃部72a,72bが正電極シート4を挟むように位置するシート切断位置と、正電極シート4の搬送経路外へ退避する退避位置との間を移動可能に構成されている。
尚、正電極シート4の切断は、前記チャック71a,71bにより正電極シート4が把持された状態で行われるようになっている。また、巻回部11へと正電極シート4を供給すべく、シート挿入機構71が巻回部11側へ接近移動する際には、一対の刃部72a,72bがそれぞれ正電極シート4の搬送経路から離間することで、シート挿入機構71の移動を阻害しないようになっている。
テンション付与機構73は、一対のローラ73a,73bと、両ローラ73a,73b間において揺動自在に設けられたダンサローラ73cとを有している。ダンサローラ73cは、所定の定トルクモータ(図示せず)により動作し、正電極シート4に対し常に一定の張力を付与するように構成されている。正電極シート4に張力が付与されることで、正電極シート4の弛み防止が図られている。
バッファ機構75は、正電極シート原反32から送り出された正電極シート4を一旦貯留するものである。バッファ機構75は、一対の従動ローラ75a,75bと、両ローラ75a,75b間において上下方向に変位可能に設けられた昇降ローラ75cとを有している。昇降ローラ75cは、正電極シート4の貯留量に基づき上下位置が変位する。
負電極シート供給機構41は、その最上流側において、負電極シート5がロール状に巻回されてなる負電極シート原反42を備えている。負電極シート原反42は、図示しない駆動手段によって回転可能な支持軸43により支持されている。支持軸43の回転に伴い、負電極シート原反42から負電極シート5が引き出される。
また、負電極シート供給機構41は、正電極シート供給機構31と同様に、シート挿入機構71、シート切断カッタ72、テンション付与機構73及びバッファ機構75を備えている。これらは、負電極シート5を対象として機能する点を除き、正電極シート供給機構31に設けられたものと同様である。従って、これらについての詳細な説明は省略する。
一方、セパレータ供給機構51,61は、それぞれセパレータシート2,3がロール状に巻回されてなるセパレータ原反52,62を備えている。セパレータ原反52,62は、自由回転可能な状態で支持されており、ここから適宜セパレータシート2,3が引き出される。
さらに、セパレータ供給機構51,61は、電極シート供給機構31,41と同様に、テンション付与機構73を備えている。当該テンション付与機構73は、セパレータシート2,3を対象として機能する点を除き、正電極シート供給機構31に設けられたものと同様である。従って、これについての詳細な説明は省略する。
また、各種シート2〜5の搬送経路の途中には、一対のニップローラ78a,78bが設けられている。ニップローラ78a,78bは、各種シート2〜5が同一の搬送経路に沿って搬送されるように各種シート2〜5を重ねた状態とするものである。巻回部11に対しては、ニップローラ78a,78bにより重ねられた状態の各種シート2〜5が供給される。
加えて、ニップローラ78a,78bの回転量(本実施形態では、ニップローラ78bの回転量)は、図示しないニップローラ用エンコーダにより把握可能となっている。そして、当該ニップローラ用エンコーダからニップローラ78bの回転量に関する情報が制御装置81へと入力されるようになっている。尚、ニップローラ78bの回転量は、各種シート2〜5の送り量に対応したものとなる。
次に、巻回部11の構成について説明する。図4に示すように、巻回部11は、図示しない駆動機構により回転可能に設けられた相対向する2枚の円盤状のテーブルからなるターレット12と、当該ターレット12の回転方向に180°間隔で設けられた2つの巻芯13,14と、チャック部15a,15bと、セパレータカッタ16と、巻回後の各種シート2〜5がばらけるのを抑えるための押えローラ17と、所定の固定用テープを貼付するためのテープ貼付機構18とを備えている。
巻芯13,14は、それぞれ自身の外周側において各種シート2〜5を巻取るためのものであり、図示しない駆動機構により自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。巻芯13,14の回転量は、図示しない巻芯用エンコーダにより検出可能となっており、当該巻芯用エンコーダから巻芯13,14の回転量に関する情報が制御装置81へと入力されるようになっている。
また、巻芯13,14は、ターレット12の軸線方向(図4等の紙面奥行方向)に沿って、ターレット12を構成する一方のテーブルに対し出没可能に設けられている。尚、巻芯13,14は、前記一方のテーブルから突出した状態となったときに、その先端部が他方のテーブルに形成された受け用の穴に挿通され、両テーブルによって回転可能な状態で支持されるようになっている。
加えて、巻芯13,14は、それぞれ回転軸と直交する断面において外形線が非円形状をなすように構成されている。本実施形態において、巻芯13,14は、自身の回転軸と直交する断面において、楕円形状をなしている。そのため、本実施形態では、巻芯13,14の回転に伴い、巻芯13,14の外周面から後述するカメラ20までの距離が変動する。従って、巻芯13,14の回転に伴い、巻芯13,14に巻き付けられた各種シート2〜5からカメラ20までの距離も変動する。
さらに、巻芯13(14)は、それぞれ自身の軸線方向(図4の紙面奥行方向)に沿って延びる一対の芯片13a,13b(14a,14b)を備えている。芯片13a,13b(14a,14b)間には隙間13c(14c)が形成されている。
また、巻芯13,14は、ターレット12が回転することにより、巻回ポジションP1と、取外しポジションP2との間を旋回移動可能に構成されている。
巻回ポジションP1は、巻芯13,14により各種シート2〜5を巻回するポジションである。巻回ポジションP1に対し上記各供給機構31,41,51,61から各種シート2〜5が供給される。
取外しポジションP2は、巻回後の各種シート2〜5、すなわち電池素子1の取外しを行うためのポジションである。取外しポジションP2の周辺部には、巻芯13,14から電池素子1の取外しを行うための取外装置(不図示)等が設けられている。
チャック部15a,15bは、巻回ポジションP1及び取外しポジションP2間においてセパレータシート2,3を挟持するためのものである。チャック部15a,15bは、図示しない駆動手段によって、ターレット12や巻芯13,14の回転軸と平行な回動軸を中心として旋回移動可能に構成されている。そして、チャック部15a,15bは、それぞれ挟持位置及び退避位置の間で移動可能とされている。チャック部15a,15bがそれぞれ挟持位置に移動すると、チャック部15a,15bによってニップローラ78a,78bから取外しポジションP2にかけて配されたセパレータシート2,3を挟持することが可能となる(図16参照)。一方、チャック部15a,15bは、それぞれ退避位置に移動すると、巻芯13,14やセパレータシート2,3等の移動を妨げない位置に配置される(図3参照)。
セパレータカッタ16は、巻回ポジションP1及び取外しポジションP2間に配置され、チャック部15a,15bよりも取外しポジションP2側に設けられている。セパレータカッタ16は、所定の上方位置と下方位置との間で上下方向に沿って往復移動可能となっており、上方位置から下方位置へと移動することでセパレータシート2,3を切断する。
押えローラ17は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、ターレット12に接近し各種シート2〜5を押さえる近接位置と、ターレット12から離間し巻芯13,14の移動を妨げない退避位置との間で移動可能に構成されている。
テープ貼付機構18は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、巻回終了時にセパレータシート2,3の終端部に前記固定用テープを貼付する。前記固定用テープの貼付により、電池素子1の巻止めがなされる。
さらに、巻回部11は、照射手段としての照明装置19a,19b及び撮像手段としてのカメラ20を備えている。照明装置19a,19b及びカメラ20は、それぞれ巻回ポジションP1に対応して配設されている。
照明装置19a,19bは、巻回ポジションP1に位置する巻芯13,14に巻回された、検査対象としての各種シート2〜5における少なくとも幅方向端縁を含む部位に対し所定の光(例えば、赤色光などの可視光や赤外光など)を照射する。尚、カメラ20によって各種シート2〜5をより鮮明に撮像するという点では、セパレータシート2,3を透過する性質を持った赤色光や赤外光を照射することが好ましい。
また、照明装置19a,19bは、少なくとも巻芯13,14の回転軸から巻芯13,14の短径未満だけずれた位置に光を照射する。これにより、巻芯13,14による各種シート2〜5の巻取中に、常に各種シート2〜5を照らすことができるようになっている。
カメラ20は、照明装置19a,19bから照射される光の波長領域に感度を有するものであり、少なくとも照明装置19a,19bにより光の照らされた各種シート2〜5(検査対象)を撮像し、撮像画像を得るものである。
本実施形態において、照明装置19a,19b及びカメラ20は、二組設けられており、一組は、各種シート2〜5の幅方向一端縁に対応して設けられ、その他の一組は、各種シート2〜5の幅方向他端縁に対応して設けられている。
さらに、カメラ20による撮像範囲では、最外周に正電極シート4が位置し、その下にセパレータシート3が位置し、その下に負電極シート5が位置し、その下にセパレータシート2が位置した状態となっている。従って、カメラ20によって、少なくとも正電極シート4と、セパレータシート3と、セパレータシート3を透過して視認可能な負電極シート5と、セパレータシート2とが一度に撮像される。
カメラ20は、図5に示すように、レンズ21、撮像素子22、トリガ信号出力部23、画像メモリ24、判定対象検出手段としての判定対象検出部25、演算部26及び出力手段としての出力部27を備えている。
レンズ21は、照明装置19a,19bから照射される光のうち、各種シート2〜5などを反射した光を集め、撮像素子22に対し像を結ぶものである。レンズ21は、一般レンズであってもよいし、テレセントリックレンズであってもよい。
また、本実施形態において、レンズ21は、その光軸OP(図4参照)が巻回ポジションP1に配置された巻芯13,14の回転軸からずれるように設定されており、カメラ20(レンズ21)から撮像範囲に位置する各種シート2〜5の各部までの距離が異なる状態となるように構成されている(図14,15参照)。従って、得られた撮像画像において、カメラ20のピントが合っている部分と、カメラ20のピントが合っていない部分とが混在することがある。
撮像素子22は、レンズ21を通った光を電気信号に変換するものであり、例えば、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサにより構成されている。
トリガ信号出力部23は、撮像素子22に対しトリガ信号を出力する。トリガ信号が出力される度に、撮像素子22が露光されるとともに、撮像素子22から各種シート2〜5に係る撮像画像(画像データ)が画像メモリ24へと出力される。得られる撮像画像には、少なくとも正電極シート4と、セパレータシート3と、セパレータシート3を透過して撮像された負電極シート5と、セパレータシート2とが含まれる(図13参照)。但し、セパレータシート2,3の各エッジ部2E,3E(幅方向端縁)は通常重なるため、画像中においてセパレータシート2を判別できないことがある。尚、本実施形態において、カメラ20における被写界深度は比較的浅くなるように構成されており、得られる画像は解像度の比較的高いもの、つまり、計測分解能が比較的高いものとなっている。
また、カメラ20には、制御装置81から後述する連続撮像信号が入力されるが、連続撮像信号が入力されると、トリガ信号出力部23は、後述する撮像停止信号が入力されるまでの間、一定の短時間ごとにトリガ信号を繰り返し出力する。これにより、連続撮像が実行され、撮像素子22から複数の撮像画像が画像メモリ24へと出力される。
画像メモリ24は、撮像素子22から入力された撮像画像を記憶する。各種シート2〜5の巻回時において巻芯13,14が1回転する間に、画像メモリ24には、複数の撮像画像が記憶される。
判定対象検出部25は、画像メモリ24に記憶された各撮像画像において、各種シート2〜5に対するピントの合っている箇所である判定対象箇所を検出する。詳述すると、判定対象検出部25は、図10に示すように、得られた撮像画像のそれぞれに対し、各輝度確認箇所K1〜K3における輝度の変化割合を算出する処理を行う。尚、図10では、各種シート2〜5のエッジ部2E〜5Eのうち、画像がぼやけている部分に対応する箇所を波線で示し、画像が鮮明に表れている部分に対応する箇所を直線で示す(図13も同様)。また、図10〜12では、各種シート2〜5の幅方向をX方向として示す。
輝度確認箇所K1〜K3は、それぞれ各種シート2〜5のエッジ部2E〜5E(幅方向端縁)を横切る1行に並んだ画素群であり、これら画素群の位置は予め設定されている。尚、本実施形態では、撮像画像を列方向に4等分する位置に輝度確認箇所K1〜K3が設定されているが、輝度確認箇所の数や位置などは適宜変更可能である。
また、判定対象検出部25は、輝度確認箇所K1〜K3のそれぞれにおいて、輝度の変化割合として、画素毎に、撮像画像の行方向一方側にて隣接する画素との輝度の変化量を算出する。尚、輝度の変化割合の算出手法はあくまで一例である。従って、例えば、輝度の変化割合として、撮像画像の行方向に沿って一定画素数だけ離れた2つの画素における輝度の変化量を算出してもよい。
さらに、判定対象検出部25は、算出した輝度の変化割合(変化量)に基づき、判定対象箇所を検出する。詳述すると、本実施形態では、正電極シート4のエッジ部4Eが存在するものと想定される前記行方向に沿った画素範囲である正電極シート画素範囲PAと、負電極シート5のエッジ部5Eが存在するものと想定される前記行方向に沿った画素範囲である負電極シート画素範囲MAとが予め設定されている。判定対象検出部25は、輝度確認箇所K1〜K3のそれぞれにおいて、各画素範囲PA,MAにおける前記変化割合の絶対値の最大値が、予め設定された所定の輝度閾値を上回っているか否かを判定する。そして、各画素範囲PA,MAにおいて前記最大値が前記輝度閾値を上回っているという条件を満たす輝度確認箇所K1〜K3を、判定対象箇所として検出する。
例えば、図10に示す例のように、輝度確認箇所K1,K3において各種シート2〜5のエッジ部2E〜5Eがぼやけた状態となる場合には、図11に示すように、輝度確認箇所K1,K3の画素範囲PA,MAにおける輝度Xbの変化割合は緩やかなものとなる。そのため、画素範囲PA,MAの少なくとも一方にて前記最大値が前記輝度閾値以下となる。従って、輝度確認箇所K1,K3は、判定対象箇所として検出されない。
一方、輝度確認箇所K2において各種シート2〜5のエッジ部2E〜5Eが鮮明に表れた状態となる場合には、図12に示すように、各画素範囲PA,MAにおける輝度Xbの変化割合は急峻なものとなる。そのため、前記最大値が前記輝度閾値を上回る。従って、輝度確認箇所K2が、判定対象箇所として検出される。
このように、判定対象検出部25は、1枚の撮像画像における各種シート2〜5のエッジ部2E〜5Eを横切る複数の輝度確認箇所K1〜K3のそれぞれにおける輝度の変化態様に基づき、1枚の撮像画像の中からカメラ20のピントが合っている輝度確認箇所(例えば、輝度確認箇所K2)を判定対象箇所として検出する。
尚、撮像画像の全域がぼやけている場合等では、判定対象箇所が検出されないことがある。一方、撮像画像の大部分が鮮明である場合等では、1枚の撮像画像から複数の判定対象箇所が検出されることがある。
さらに、判定対象検出部25は、判定対象箇所を検出すると、この判定対象箇所を有する撮像画像を判定対象画像として検出する。つまり、後述する検査処理の対象となる撮像画像を特定する。その上で、判定対象検出部25は、画像メモリ24に対し、検査対象となる撮像画像のデータと関連付けて、判定対象画像であることを示す情報と、判定対象箇所に関する情報とを記憶させる。判定対象箇所に関する情報としては、輝度確認箇所K1〜K3のうちの少なくとも1つが記憶される。
図5に戻り、演算部26は、画像メモリ24に記憶された判定対象画像であることを示す情報に基づき、画像メモリ24に記憶された複数の撮像画像の中から、判定対象画像を出力部27へと送る。また、演算部26は、出力部27へと送る判定対象画像の判定対象箇所に関する情報を画像メモリ24から出力部27へと送る。従って、出力部27に対し、判定対象画像(画像データ)と、この判定対象画像における検査位置を示す情報である、判定対象箇所に関する情報とが送られる。
出力部27は、判定対象画像及び当該判定対象画像の判定対象箇所に関する情報を制御装置81へと送信するものである。通常、得られた複数の撮像画像の中に判定対象画像はごく一部しか存在しないため、出力部27から制御装置81へと送られる判定対象画像などの数は、カメラ20による撮像回数(すなわち、撮像画像の枚数)よりも著しく少ないものとなる。そのため、出力部27や出力部27及び制御装置81を結ぶ伝送路として、処理能力や通信能力などの優れた特別なものを用いる必要はない。
次いで、制御装置81について説明する。制御装置81は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAM、演算データ等を長期記憶するハードディスクなどを備えている。制御装置81は、上記の通り、巻回部11や各供給機構31,41,51,61など巻回装置10内の各種装置の動作を制御する。
制御装置81は、各種シート2〜5を巻取る際に、次のように動作する。すなわち、制御装置81は、各種シート2〜5の巻回工程を開始するとともに、カメラ20に対し連続撮像信号を出力する。
連続撮像信号の出力に伴い、制御装置81には、カメラ20から判定対象画像と判定対象箇所に関する情報とが順次入力される。制御装置81は、カメラ20から送られた判定対象画像などに基づき各種シート2〜5の位置ずれなどに関する検査を行う。尚、検査の具体的な手法については後述する。
本実施形態では、照明装置19a,19b、カメラ20及び制御装置81によって、電池素子1の検査を行うための検査装置100が構成されている。
次に、上記の巻回装置10による各種シート2〜5の巻回工程について説明する。尚、巻回工程に先立って、一方の巻芯13(14)における隙間13c(14c)に、セパレータシート2,3が予め配置され、また、当該セパレータシート2,3は、チャック部15a,15bにより保持された状態となっている(図16参照)。
巻回工程では、図6に示すように、まず、ステップS11において、一方の巻芯13(14)を所定数だけ回転させることで、一方の巻芯13(14)に対しセパレータシート2,3が所定量だけ巻き取られた状態とする。その後、チャック部15a,15bをそれぞれ退避位置に移動させる。
次いで、ステップS12において、負電極シート供給機構41のシート挿入機構71により一方の巻芯13(14)側に対し負電極シート5が供給される。具体的には、負電極シート5を把持するシート挿入機構71が巻回部11側に接近し、セパレータシート2,3間に負電極シート5が挿入されることで、負電極シート5が供給される。尚、挿入後、シート挿入機構71による負電極シート5の把持が解除されるとともに、シート挿入機構71が元の位置に戻る。
続くステップS13では、負電極シート5の供給後、一方の巻芯13(14)が所定数回転(例えば、1回転)した段階で、シート挿入機構71により一方の巻芯13(14)側に対し、正電極シート4が供給される。具体的には、正電極シート4を把持するシート挿入機構71が巻回部11側に接近し、セパレータシート2,3間に正電極シート4が挿入されることで、正電極シート4が供給される。尚、挿入後、シート挿入機構71による正電極シート4の把持が解除されるとともに、シート挿入機構71が元の位置に戻る。
次に、ステップS14において、撮像検査処理が実行される。撮像検査処理では、図7に示すように、まず、ステップS31において、一方の巻芯13(14)が一定速で回転するように制御し、各種シート2〜5を巻回していく。
次いで、ステップS32において、カメラ20に対し連続撮像信号が出力される。これにより、カメラ20によって巻回中の各種シート2〜5が連続撮像される。また、カメラ20から制御装置81に対し、判定対象検出部25によって検出された判定対象画像と判定対象箇所に関する情報とが入力される。尚、カメラ20により実行される、画像の撮像、検出及び出力に係る処理である撮像・検出・出力処理については後述する。
ステップS32の後、ステップS33において、正電極シート4の送り量が予め設定された所定量に到達したか否かが判定される。すなわち、撮像検査処理の終了条件を満たすか否かが判定される。正電極シート4の送り量としては、前記ニップローラ用エンコーダにより取得された、巻回開始からの各種シート2〜5の送り量が用いられる。また、この所定量は、電池素子1ひとつ分を構成する正電極シート4の長さに対応するものとされる。正電極シート4が前記所定量だけ巻芯13,14へと送られることで、一素子分の正電極シート4の終端部がシート切断カッタ72に対応して配置された状態となる。
ステップ33にて否定判定された場合には、ステップS34にて、カメラ20から判定対象画像などが入力されたか否かの判定がなされる。ステップS34にて否定判定されると、ステップS33へと戻る。これに対し、ステップS34にて肯定判定されると、ステップS35に移行し、検査処理を実行する。
ステップS35の検査処理では、図8に示すように、まず、ステップS101では、入力された判定対象画像及び判定対象箇所に関する情報に基づき、この入力された判定対象画像において、判定対象箇所に位置するセパレータシート3のエッジ部3E(幅方向端縁部)、セパレータシート2のエッジ部2E、正電極シート4のエッジ部4E、及び、負電極シート5のエッジ部5Eの抽出が行われる(図13参照)。尚、エッジ部2E,3Eが重なりエッジ部2Eを抽出できない場合には、エッジ部3Eをエッジ部2Eとして扱う。図13の例では、判定対象箇所が輝度確認箇所K2とされているため、輝度確認箇所K2に位置する各エッジ部2E〜5Eの抽出が行われる。
続くステップS102では、入力された判定対象画像において、判定対象箇所に位置する正電極シート4における活物質塗工部4a及び活物質不塗工部4bの境界部4Tと、負電極シート5における活物質塗工部5a及び活物質不塗工部5bの境界部5Tとが抽出される(図13参照)。図13の例では、輝度確認箇所K2に位置する境界部4T,5Tが抽出される。
次に、ステップS103において、上記ステップS101,102で抽出したエッジ部2E,3E,4E,5Eや境界部4T,5Tを基に各種距離の演算が行われる。つまり、一方の巻芯13(14)に巻き付けられた各種シート2〜5の位置ずれ量が演算される。
具体的には、エッジ部3Eを基準として、シート幅方向における境界部4Tまでの距離L1と、シート幅方向におけるエッジ部4Eまでの距離L2と、シート幅方向における境界部5Tまでの距離L3と、シート幅方向におけるエッジ部5Eまでの距離L4と、シート幅方向におけるエッジ部2Eまでの距離(不図示)とが算出される(図13参照)。
その後、ステップS104において、上記ステップS103で算出した各距離を基に、各距離が予め設定された許容範囲にあるか否かが判定される。
ここで各距離のうちのいずれかが許容範囲にないと判定された場合、すなわち、各種シート2〜5における巻きずれや活物質塗工部4a,5aの塗布位置ずれが発生していると考えられる場合には、ステップS105において、不良と判定し、検査処理を終了する。
一方、ステップS104において、各距離のいずれもが許容範囲にあると判定された場合には、ステップS106において、良と判定し、検査処理を終了する。
尚、ステップS34にて複数の判定対象画像等が入力された場合には、各判定対象画像に対しステップS101〜104の処理が実行される。そして、判定対象画像毎に実行されるステップS104の処理にて否定判定が一度でもなされた場合、ステップS105にて不良と判定される。一方、ステップS104の処理にて否定判定が一度もなされなかった場合、ステップS106にて良と判定される。
図7に戻り、ステップS35における検査処理の実行後、ステップS36に移行し、直前の検査処理において良判定されたか否かが判定される。ステップS36にて否定判定された場合、すなわち、検査処理にて不良判定された場合には、ステップS37に移行し、巻芯13,14の回転が停止されることで、各種シート2〜5の巻回が途中で中止される。その上で、ステップS38において、この巻回途中の電池素子1が不良品と判定され、ステップS41へと移行する。
一方、ステップS36にて肯定判定された場合には、ステップS33へと戻る。このように撮像検査処理では、正電極シート4の送り量が所定量となるまでの間、検査処理にて不良判定がなされない限り、カメラ20から判定対象画像などが入力される度に、ステップS35の処理が繰り返し行われる。その結果、複数の判定対象画像に対し検査処理がそれぞれ実行される。
検査処理が順調に行われ、正電極シート4の送り量が所定量になると(ステップS33:YES)、ステップS39に移行し、一方の巻芯13,14の回転が停止される。
次いで、ステップS40にて、巻回途中の各種シート2〜5からなる電池素子1が良品と判定され、ステップS41へと移行する。尚、判定対象画像等の入力回数、つまり、検査処理の回数を予め計測しておくとともに、ステップS40の処理前に、検査処理の回数が予め設定した所定回数以下であるか否かを判定してもよい。そして、検査処理の回数が前記所定回数以下であるときに、巻回途中の各種シート2〜5からなる電池素子1を不良品と判定したり、巻回装置10の動作を一時停止させたりしてもよい。検査処理の回数が少ない場合、つまり、判定対象画像が十分に得られない場合には、何らかの不具合が生じているおそれがあるためである。
ステップS40に続くステップS41では、撮像停止信号がカメラ20へと出力され、撮像検査処理が終了される。ステップS41の処理により、トリガ信号出力部23からのトリガ信号の出力が停止され、カメラ20による連続撮像が終了される。
図6に戻り、ステップS14の撮像検査処理を行った後、ステップS15にて、シート挿入機構71により正電極シート4が把持された上で、シート切断カッタ72により正電極シート4が切断される。尚、撮像検査処理にて、巻回途中の電池素子1が良品と判定されていれば、一素子分の正電極シート4の終端部にて切断される。一方、撮像検査処理にて、巻回途中の電池素子1が不良品と判定されていれば、前記終端部よりも手前の位置で正電極シート4が切断される。
続くステップS16では、撮像検査処理にて良品判定が行われたか否かが判定される。ステップS16にて肯定判定された場合には、一方の巻芯13(14)の回転を再開させた上で、ステップS17へと移行する。
一方、ステップS16にて否定判定された場合には、一方の巻芯13(14)の回転を再開させることなく、ステップS18へと移行する。すなわち、巻回途中の電池素子1が不良品と判定されている場合には、負電極シート5がこれ以上積極的に供給されないようにする。
ステップS17では、供給開始からの負電極シート5の送り量が所定量に到達したか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し行われる。この所定量は、電池素子1ひとつ分を構成する負電極シート5の長さに対応するものとされる。負電極シート5の送り量は、前記ニップローラ用エンコーダにより取得された各種シート2〜5の送り量に基づき導出される。ステップS17で肯定判定された場合、すなわち、現在巻回されている一素子分の負電極シート5の終端部がシート切断カッタ72に到達した場合には、一方の巻芯13(14)の回転を一時停止させた上で、ステップS18へと移行する。
ステップS18では、シート挿入機構71により負電極シート5が把持された上で、シート切断カッタ72により負電極シート5が切断される。
次いで、ステップS19において、一方の巻芯13(14)の回転を再開させることにより、電極シート4,5の終端部分(巻き残し部分)が巻き取られる。
ステップS19に続くステップS20では、セパレータシート2,3が切断されることなく、ターレット12が反時計回りに回転させられる。これにより、巻回ポジションP1にあった一方の巻芯13(14)がセパレータ供給機構51,61からセパレータシート2,3を引き出しつつ、取外しポジションP2側へと移動していく。一方、取外しポジションP2にあった他方の巻芯14(13)が、ターレット12の一方のテーブルに没した状態で、巻回ポジションP1側へと移動していく。
続いて、ステップS21において、ターレット12の回転に併せて、各種シート2〜5の巻回されている一方の巻芯13(14)が回転させられる。
そして、次のステップS22において、巻終わり処理が実行されることで、巻回工程が終了される。
巻終わり処理では、まず、前記巻芯用エンコーダにより把握される、負電極シート5の切断時からの一方の巻芯13(14)の回転量が所定量に到達した時点で、一方の巻芯13(14)の回転が停止させられる。尚、一方の巻芯13(14)の回転が停止する前、停止すると同時、又は、停止した後に、ターレット12の回転が停止される。
一方の巻芯13(14)及びターレット12の回転が停止されると、巻回ポジションP1にあった一方の巻芯13(14)が取外しポジションP2に位置し、取外しポジションP2にあった他方の巻芯14(13)が巻回ポジションP1に位置した状態となる。
この状態で、押えローラ17が一方の巻芯13(14)に接近させられ、押えローラ17により各種シート2〜5が押さえられる。また、チャック部15a,15bが退避位置から挟持位置へと移動させられることで、両ポジションP1,P2間にてセパレータシート2,3が保持される。その上で、セパレータカッタ16がセパレータシート2,3に接近することにより、セパレータシート2,3が切断される(図17参照)。
また、他方の巻芯14(13)がターレット12の一方のテーブルから突出することで、他方の巻芯14(13)の隙間14c(13c)にセパレータシート2,3が配置される。次回の巻回工程では、他方の巻芯14(13)が所定量だけ回転することにより、その外周にセパレータシート2,3が所定量だけ巻き付けられた状態となる。そして、このセパレータシート2,3が巻き付けられた他方の巻芯14(13)へと電極シート4,5が供給される。
セパレータシート2,3の切断後、押えローラ17により各種シート2〜5を押えた状態のまま、一方の巻芯13(14)が回転させられる。これにより、セパレータシート2,3及び電極シート4,5の終端部分がばらけることなく完全に巻取られる。その後、テープ貼付機構18により、セパレータシート2,3の終端部が前記固定用テープにより巻止めされ、巻終わり処理が終了される。巻止めされた電池素子1は、前記取外装置によって一方の巻芯13(14)から取外される。そして、良品と判定された電池素子1は、正規のラインへと送り出される。一方、不良品と判定された電池素子1は、所定の不良品排出機構へと送り出される。
次いで、カメラ20によって実行される、撮像・検出・出力処理について説明する。当該処理は、各種シート2〜5を連続撮像するとともに、連続撮像により得られた複数の撮像画像の中から判定対象画像を検出し、かつ、判定対象画像及び判定対象箇所に関する情報を制御装置81へと出力する処理である。
当該処理では、図9に示すように、まず、ステップS51において、連続撮像信号が入力されたか否かの判定が、肯定判定されるまで繰り返し実行される。
ステップS51にて肯定判定されると、ステップS52に移行し、撮像停止信号が入力されたか否かが判定される。ステップS52にて肯定判定された場合には、ステップS61へと移行する。
一方、ステップS52で否定判定された場合には、ステップS53において、トリガ信号出力部23から撮像素子22へとトリガ信号が出力される。これにより、撮像素子22から画像メモリ24に対し、各種シート2〜5の撮像画像が送られる。
続くステップS54では、カウンタの値を1だけ増加させる。カウンタの値は、一方の巻芯13(14)が1回転したか否かを判定するために用いられるものであり、本実施形態において初期値は0である。カウンタは、例えば、演算部26に設けられる。
次いで、ステップS55において、撮像素子22から送られた各種シート2〜5に係る撮像画像が画像メモリ24へと記憶される。
次に、ステップS56において、カウンタの値が予め設定された所定値に到達したか否かが判定される。この所定値は、巻芯13,14が1回転する間に撮像される画像の数と等しいものとされている。従って、カウンタの値が前記所定値に到達したということは、巻芯13,14が1回転したことを意味する。尚、各種シート2〜5の巻取開始直後や巻取終了直前など、巻芯13,14の回転が比較的遅く、巻芯13,14が1回転する間に撮像される画像数が比較的多くなる場合の処理では、前記所定値を比較的大きな値としてもよい。一方、巻芯13,14が一定速で回転し、巻芯13,14が1回転する間に撮像される画像数が比較的少なくなる場合の処理では、前記所定値を比較的小さな値としてもよい。
ステップS56にて肯定判定された場合、つまり、一方の巻芯13(14)が1回転した場合には、ステップS57へと移行する。一方、ステップS56にて否定判定された場合には、ステップS52へと戻り、撮像停止信号が入力されない限り、ステップS53〜55の処理が再び実行される。結果的に、撮像停止信号が入力されない限り、一方の巻芯13(14)が1回転する間に得られた複数の撮像画像が画像メモリ24に対し記憶される。
ステップS57では、画像メモリ24に記憶された、一方の巻芯13(14)が1回転する間に得られた複数の撮像画像のそれぞれにおいて、各輝度確認箇所K1〜K3における輝度の変化割合が算出される。
そして、ステップS58において、輝度の変化割合の絶対値の最大値に基づき、ピントの合っている輝度確認箇所K1〜K3を有する撮像画像が、判定対象画像として検出される。
例えば、図14に示すように、各種シート2〜5の巻回を開始した直後では、一方の巻芯13(14)の外周面からカメラ20までの距離が比較的小さいときに、カメラ20の撮像範囲SA内に位置する各種シート2〜5の少なくとも一部が、カメラ20のピントが合う範囲Rに位置する。そのため、このときに得た撮像画像において、輝度確認箇所K1〜K3の少なくとも1つにおける前記最大値が比較的大きなものとなり、当該撮像画像が判定対象画像として検出される。
一方、例えば、図15に示すように、各種シート2〜5の巻回が終了する直前では、一方の巻芯13(14)の外周面からカメラ20までの距離が比較的大きいときに、カメラ20の撮像範囲SA内に位置する各種シート2〜5の少なくとも一部が、カメラ20のピントが合う範囲Rに位置する。そのため、このときに得た撮像画像において、輝度確認箇所K1〜K3の少なくとも1つにおける前記最大値が比較的大きなものとなり、当該撮像画像が判定対象画像として検出される。
図9に戻り、ステップS58では、判定対象画像とともに、判定対象箇所に関する情報が検出される。そして、画像メモリ24に対し、検査対象となる撮像画像のデータに関連付けて、判定対象画像であることを示す情報と、判定対象箇所に関する情報とが記憶される。尚、本実施形態では、一方の巻芯13(14)が1回転した段階で、この1回転の間に得られた複数の撮像画像のそれぞれに対し、判定対象画像であるか否かの検出処理を行うこととしているが、撮像画像を得る度に、得られた撮像画像が判定対象画像であるか否かの検出処理を行うこととしてもよい。
ステップS58に続くステップS59では、出力部27を介して、判定対象画像と当該判定対象画像の判定対象箇所に関する情報とが画像メモリ24から制御装置81へと出力される。すなわち、出力部27は、画像データとして、画像メモリ24に記憶された複数の撮像画像のうち判定対象画像のみを出力する。判定対象画像などの出力に伴い、上述した撮像検査処理のステップS34にて肯定判定がなされるとともに、当該判定対象画像などに基づく検査処理などが実行される。尚、複数の判定対象画像が検出された場合には、複数の判定対象画像とそれぞれの判定対象画像の判定対象箇所に関する情報とが制御装置81へと出力される。
判定対象画像などの出力後、ステップS60において、カウンタの値が初期値へと戻され、ステップS52へと戻る。
ステップS52にて肯定判定されると、すなわち、撮像停止信号が入力されると、ステップS61にてカウンタの値が初期値とされた上で、ステップS51へと戻る。その結果、カメラ20は、連続撮像信号の入力を待つ状態となる。
以上詳述したように、本実施形態によれば、巻芯13,14に巻き付けられた各種シート2〜5を検査対象として、当該検査対象をカメラ20によって撮像し、制御装置81は、得られた撮像画像に基づき検査対象の良否を判定する。実際に巻き取られた状態の検査対象に対し良否判定を行うことで、電池素子1の品質に関する良否をより正確に判定することができる。
また、判定対象検出部25は、1枚の撮像画像におけるエッジ部2E〜5Eを横切る複数の輝度確認箇所K1〜K3のそれぞれにおける輝度の変化態様に基づき、この1枚の撮像画像の中から、カメラ20のピントが合っている輝度確認箇所を判定対象箇所として検出する。例えば、巻回開始直後であって、巻芯13,14に巻回された各種シート2〜5が薄い段階で得られた撮像画像では、各種シート2〜5のうちカメラ20に比較的接近していた部位に対応する箇所を判定対象箇所として検出することができる。一方、巻回がある程度進み、巻芯13,14に巻回された各種シート2〜5が厚くなった段階で得られた撮像画像では、各種シート2〜5のうちカメラ20から比較的離間していた部位に対応する箇所を判定対象箇所として検出することができる。これにより、被写界深度を浅くして計測分解能を高めつつ、巻芯13,14に巻回された各種シートの径(厚さ)が変動していっても、ピントの合っている判定対象箇所をより確実に得ることができる。すなわち、いわばトレードオフの関係にある、計測分解能を高めること、及び、被写界深度を深くすること(ピントの合う範囲を広げること)の双方を同時に実現した場合と同様の効果を得ることができる。
そして、制御装置81は、判定対象画像における判定対象箇所に対応する部分、すなわち、撮像画像のうちピントの合っている部分に基づき、各種シート2〜5の良否を判定する。これにより、検査に係る信頼性を十分に高めることができる。
特に本実施形態において、判定対象検出部25は、各電極シート4,5のエッジ部4E,5Eに対応する部位(正電極シート画素範囲PA及び負電極シート画素範囲MA)のそれぞれの輝度の変化割合に基づき、ピントの合っている判定対象箇所を検出する。従って、撮像画像のうち各種シート2〜5のそれぞれが鮮明な部分(カメラ20のピントが合っている部分)に基づいて検査を行うことがより確実に可能となる。これにより、検査に係る信頼性をより向上させることができる。
さらに、本実施形態では、単に連続撮像を行うため、複雑な撮像制御などを行う必要がない。従って、処理負担の低減を効果的に図ることができる。
また、巻芯13,14の外周面は断面非円形状をなしており、巻芯13,14の外周面からカメラ20までの距離は、巻芯13,14の回転角度に応じて変動する。そのため、巻芯13,14が1回転する間に得られた複数の撮像画像の中から、ピントの合っている判定対象箇所をより確実に検出することができる。これにより、巻芯13,14に巻回された各種シート2〜5の径(厚さ)がより広範囲に亘って変動する場合であっても、ピントの合っている判定対象箇所をより確実に得ることができる。その結果、検査に係る信頼性をより高めることができる。
また、カメラ20内にて判定対象画像などが検出されるため、判定対象画像などを検出するにあたって、カメラ20と外部との間でデータのやり取りを行う必要はない。これにより、判定対象画像などを素早く検出することができる。
加えて、出力部27は、画像データとして、画像メモリ24に記憶された複数の撮像画像のうち判定対象画像のみを外部に出力する。従って、連続撮像により得られた複数の撮像画像を全て出力する場合と比較して、外部に出力されるデータ量を比較的少なくすることができ、出力部27や出力部27及び外部(例えば制御装置81)を結ぶ伝送路として、処理能力や通信能力などの優れた特別なものを用いる必要がなくなる。これにより、一般的な伝送系の技術(例えば、一般的な画像伝送技術など)を利用して、出力部27から外部へと画像や情報を送ることができる。また、カメラ20や画像等が入力される外部の装置(制御装置81)における処理負担の低減を図ることができる。
さらに、本実施形態では、両電極シート4,5及びセパレータシート2,3を一度に撮像することができる。従って、少ない撮像回数で検査に必要な撮像画像を得ることができ、検査効率を向上させることができる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態では、各種シート2〜5の巻きずれや活物質塗工部4a,5aの塗布位置ずれに関し検査を行っているが、検査項目はこれらに限定されるものではない。従って、例えば、電極シート4,5に対しタブを設ける場合、得られた判定対象画像に基づき、電極シート4〜5の幅方向に沿ったタブの位置に関する検査を行ってもよい。タブとしては、電極シート4,5における活物質不塗工部4b,5bに溶接された溶接タブや、電極シート4,5の幅方向一端部に間欠的に切込みを設けることで形成された切込みタブなどがある。勿論、得られた判定対象画像に基づき、その他の項目に関する検査を行ってもよい。どのような検査項目であっても、ピントの合った判定対象箇所にて検査を行うため、検査に係る信頼性を十分に高めることができる。
(b)上記実施形態では特に記載していないが、カメラ20を、レンズ21の光軸OP方向に沿って巻芯13,14に対し相対移動可能に構成してもよい。このように構成することで、電池素子1が大型なものである場合など、巻回開始から巻回終了までの間に、巻取中における各種シート2〜5の径の変動が比較的大きくなるような場合であっても、巻芯13,14に対しカメラ20が相対移動することで、検査対象となる各種シート2〜5に対しより確実にピントを合わせることができる。従って、様々なサイズの電池素子1を精度よく検査することができる。
尚、カメラ20は、各種シート2〜5の巻回に合わせて徐々に(連続的に)移動するものであってもよいし、各種シート2〜5の巻回量が所定量に達した段階で所定位置へと間欠的に移動するものであってもよい。
(c)上記実施形態では、カメラ20から制御装置81へと判定対象画像などが出力され、制御装置81がこの判定対象画像などに基づき各種シート2〜5の良否を判定している。これに対し、カメラ20(例えば、演算部26)が、判定対象画像及び判定対象箇所に関する情報を検出するとともに、検出した判定対象画像などに基づき各種シート2〜5の良否を判定するとともに、当該判定対象画像に係る情報(判定結果)を制御装置81へと出力するように構成してもよい。つまり、カメラ20によって良否判定手段を構成してもよい。この場合には、カメラ20から制御装置81に伝送されるデータ量をより小さなものとすることができ、処理負担の軽減を図ることができる。
尚、判定対象画像と当該判定対象画像に係る情報(判定結果)との双方を制御装置81へと出力するように構成してもよい。
(d)上記実施形態では、各種シート2〜5における相対位置に基づき良否判定が行われているが、各種シート2〜5の絶対位置に基づき良否判定を行うこととしてもよい。この場合には、例えば、巻芯13,14に付された目印を用い、各種シート2〜5の絶対位置を得てもよい。
また、複数のピントの合った判定対象画像同士を比較することで、良否判定を行うように構成してもよい。例えば、各種シート2〜5の巻回開始直後に得られた判定対象画像と、各種シート2〜5の巻回終了直前に得られた判定対象画像とを比較した場合に、各種シート2〜5の幅方向に沿った各種シート2〜5の位置の変動量が大きいときには、各種シート2〜5が巻芯13,14の回転軸に対し斜めに巻取られているものとして、不良と判定してもよい。このように構成することで、各種シート2〜5における全体的な位置変動の程度を把握することができ、電池素子1の良否をより正確に判定することができる。
(e)上記実施形態では、セパレータシート2,3及び両電極シート4,5がそれぞれ同一の搬送経路を通って巻芯13,14へと供給されるように構成されている。そして、セパレータシート2,3及び両電極シート4,5を一度に撮像するように構成されている。これに対し、両セパレータシート2,3の一方及び両電極シート4,5の一方と、両セパレータシート2,3の他方及び両電極シート4,5の他方とがそれぞれ別々の搬送経路を通って巻芯へと供給されるように構成してもよい。また、この場合には、巻芯へと巻き付けられた両セパレータシート2,3の一方及び両電極シート4,5の一方と、巻芯へと巻き付けられた両セパレータシート2,3の他方及び両電極シート4,5の他方とを別々に撮像するように構成してもよい。すなわち、上記実施形態では、4枚のシートが一度に撮像されているが、2枚のシートを別々に撮像するように構成してもよい。
(f)上記実施形態では、巻芯13,14として、各種シート2〜5の巻回される外周形状が楕円形状に構成されたものを採用しているが、巻芯13,14の形状はこれに限定されるものではない。従って、例えば外周形状が円形状、長方形状(扁平状)、多角形状、長円形状等となる巻芯を採用してもよい。
(g)セパレータシート2,3や電極シート4,5の材質は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、セパレータシート2,3をPPにより形成することとしているが、他の絶縁性材料によってセパレータシート2,3を形成することとしてもよい。また、例えば、電極シート4,5に塗布される活物質を適宜変更してもよい。
(h)上記実施形態において、巻回部11は、2つの巻芯13,14を備えた構成となっているが、巻芯の数はこれに限定されるものではなく、3つ以上の巻芯を備えた構成としてもよい。尚、巻芯が1つの場合、ターレット12等は省略可能である。
(i)上記実施形態では、回転可能な巻芯13,14の外周に対し各種シート2〜5が直接巻回されるように構成されているが、回転可能な軸部及び当該軸部の外周に配置された筒状の巻芯コアにより巻芯を構成し、巻芯コアの外周面に対し各種シート2〜5が巻回されるようにしてもよい。