JP6676311B2 - 保護フィルムおよび積層体 - Google Patents

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本発明は、光学部材等の保護に用いることのできる保護フィルム、および当該保護フィルムを含む積層体に関するものである。
液晶パネルを製造する際、偏光板といった光学部材が液晶セルのガラス基板等に貼付される。
このような光学部材は、ガラス基板に貼付されるにあたり、保護フィルム、光学部材、光学部材用粘着剤層および剥離シートがこの順に積層された積層体として準備される。光学部材用粘着剤層は、光学部材をガラス基板に貼合するためのものである。また、剥離シートは、光学部材がガラス基板に貼付されるまでの間、光学部材用粘着剤層を保護する目的で設けられている。さらに、保護フィルムは、光学部材を取り扱う際や、光学部材を貼付した液晶セルを取り扱う際に、光学部材の露出面(粘着剤層とは反対側の面)における傷の発生や汚れの付着を防止する目的で使用される。なお、保護フィルムは、少なくとも基材と粘着剤層とからなる。
上記積層体を使用して光学部材をガラス基板に貼付する場合、最初に当該積層体から剥離シートが剥離される。そして、光学部材用粘着剤層の露出面がガラス基板に貼付される。続いて、必要に応じて、保護フィルムを介して光学部材の検査が行われる。その後、光学部材を含む最終製品が完成するまでの任意の段階において、光学部材から保護フィルムが剥離される。
特許文献1には、偏光板の表面保護に使用される保護フィルムの一例が開示されている。当該保護フィルムでは、イオン性液体、エチレンオキシド基含有化合物、及びベースポリマーとしてガラス転移温度Tgが0℃以下のポリマーを含有してなる粘着剤組成物から得られる粘着剤層が基材上に設けられている。
特開2006−016595号公報
ところで、上述した積層体から剥離シートを剥離する際、一般的に、保護フィルム側の面を吸着パッドで吸着しながら、剥離シートを剥離する。近年、液晶パネルの大型化に伴い、それに使用される光学部材も大型化している。このような大型化した光学部材を含む積層体では、小さな積層体と比べて、光学部材から剥離シートを剥離するためにより強い力を要する。そのため、当該積層体から剥離シートを剥離する際には、保護フィルム側を吸着パッドによってより強く吸着する必要がある。その結果、保護フィルムの吸着された部分では、光学部材と保護フィルムとの界面で浮きが発生したり、保護フィルムに吸着された跡が残ったりし易い。このような浮きや跡が生じると、ガラス基板に貼付された光学部材の、保護フィルムを介した検査を正確に行うことができなくなってしまう。
特許文献1に開示される保護フィルムは、時間の経過や高温下での処理に伴う浮きを抑制するよう製造されているものの、吸着パッドによって強く吸着される場合のように、部分的に強い負荷を受けた場合における浮きや跡の発生を抑制することはできない。
本発明は、上記の実状に鑑みてなされたものであり、部分的に強い負荷を受けたとしても、当該負荷に起因した浮きや跡が発生しにくい保護フィルムおよび当該保護フィルムを含む積層体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備えた保護フィルムであって、前記粘着剤層が、ポリロタキサン化合物を含有する粘着性組成物から得られる粘着剤からなることを特徴とする保護フィルムを提供する(発明1)。
上記発明(発明1)による保護フィルムでは、粘着剤層がポリロタキサン化合物を含有する粘着性組成物から得られる粘着剤からなり、優れた応力緩和性を有する。そのため、保護フィルムが部分的に強い負荷を受けた場合であっても、粘着剤層がその負荷による応力を緩和することができ、それにより、浮きや跡の発生が抑制される。
上記発明(発明1)において、前記粘着性組成物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体をさらに含有することが好ましい(発明2)。
上記発明(発明2)において、前記ポリロタキサン化合物は、反応性基として水酸基を有する環状オリゴ糖を、環状分子として有し、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを含み、前記粘着性組成物は、イソシアネート系架橋剤をさらに含有することが好ましい(発明3)。
上記発明(発明1〜3)において、トリアセチルセルロース板のケン化処理された面に貼付した前記保護フィルムを300mm/分の速度で180°剥離するときの粘着力が、50mN/25mm以上、200mN/25mm以下であることが好ましい(発明4)。
上記発明(発明1〜4)において、トリアセチルセルロース板のケン化処理された面に貼付した前記保護フィルムを30m/分の速度で180°剥離するときの粘着力が、500mN/25mm以上、1500mN/25mm以下であることが好ましい(発明5)。
第2に本発明は、前記保護フィルム(発明1〜5)と、前記保護フィルムの前記粘着剤層側の面に積層された光学部材と、前記光学部材の前記保護フィルムとは反対側の面に積層された光学部材用粘着剤層と、前記光学部材用粘着剤層の前記光学部材とは反対側の面に積層された光学部材用剥離シートとを含むことを特徴とする積層体を提供する(発明6)。
上記発明(発明6)において、前記保護フィルムの前記光学部材とは反対側の面に円柱状の金属の底面を所定の荷重で30秒間押し当てる耐荷重試験において、前記保護フィルムと前記光学部材との間に気泡が発生する前記荷重が、550g/mm以上であることが好ましい(発明7)。
本発明に係る保護フィルムおよび当該保護フィルムを含む積層体は、部分的に強い負荷を受けたとしても、当該負荷に起因した浮きや跡が発生しにくい。
本発明の一実施形態に係る保護フィルムの断面図である。 本発明の一実施形態に係る保護フィルムを含む積層体の断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔保護フィルム〕
以下、本発明の一実施形態に係る保護フィルムについて説明する。なお、本実施形態に係る保護フィルムは、被着体の保護のために用いられるが、当該被着体が組み込まれる製品の組み立ての途中またはその完了後において、当該被着体から剥離されるものである。すなわち、本実施形態に係る保護フィルムは、当該製品には組み込まれないものである。
図1には、本実施形態に係る保護フィルム1の断面図が示されている。本実施形態に係る保護フィルム1は、基材11と、基材11の一方の面に積層された粘着剤層12と、粘着剤層12における基材11とは反対側の面に積層された剥離シート13とを備える。なお、剥離シート13は、保護フィルム1が使用されるまでの間、保護フィルム1の粘着剤層12を保護するものであり、本実施形態に係る保護フィルム1は、剥離シート13を必ずしも含まなくてもよい。また、基材11における粘着剤層12とは反対側の面に、剥離層を設けることもできる。この場合、保護フィルム1を巻回体又は枚葉体としたときに、上記剥離層と粘着剤層12とが接することとなる。
本実施形態に係る保護フィルム1では、粘着剤層12が、ポリロタキサン化合物を含有する粘着性組成物から得られる粘着剤からなる。ポリロタキサン化合物は、環状分子とそれを貫通する直鎖状分子との機械的結合を有しており、環状分子は直鎖状分子上を自由に移動することが可能となっている。これにより、粘着剤は高い応力緩和性を発揮することができ、保護フィルム1が吸着パッドによって強く吸着される場合のように、保護フィルム1が部分的に強い負荷を受けたとしても、粘着剤層12がその負荷による応力を緩和することができる。結果として、本実施形態に係る保護フィルム1では、光学部材と保護フィルム1との界面における浮きの発生が抑制され、さらに、吸着された跡が保護フィルム1に残りにくい。そして、浮きおよび跡が発生しないことにより、保護フィルム1を介した、被着体の光学的検査、例えばガラス基板に貼付された光学部材の検査を正確に行うことが可能となる。
1.基材
本実施形態に係る保護フィルム1において、基材11の23℃における引張弾性率は、0.1GPa以上であることが好ましく、特に1GPa以上であることが好ましく、さらには3GPa以上であることが好ましい。また、基材11の23℃における引張弾性率は、20GPa以下であることが好ましく、特に10GPa以下であることが好ましく、さらには6GPa以下であることが好ましい。23℃における引張弾性率が0.1GPa以上であることで、基材11が適度な耐荷重性を有することとなり、保護フィルム1が強い負荷を受けた場合であっても、基材11がその負荷をある程度受け止めるため、効果的に浮きおよび跡の発生を抑制することができる。また、23℃における引張弾性率が20GPa以下であることで、基材11が適度な柔軟性を有することとなり、保護フィルム1の取扱いがより優れたものとなる。
なお、上述の23℃における引張弾性率は、基材11を15mm×140mmの試験片に裁断し、JIS K7127:1999に準拠して、23℃にて測定した引張弾性率(ヤング率)である。具体的には、上記試験片を、引張試験機(株式会社島津製作所製,製品名「オートグラフAG−IS 500N」)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行って測定される引張弾性率である。
本実施形態に係る保護フィルム1において、基材11の厚さは、15μm以上であることが好ましく、特に19μm以上であることが好ましく、さらには25μm以上であることが好ましい。また、基材11の厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に75μm以下であることが好ましく、さらには50μm以下であることが好ましい。基材11の厚さが15μm以上であることで、基材11が適度な耐荷重性を有することとなり、保護フィルム1が強い負荷を受けた場合であっても、基材11がその負荷をある程度受け止めるため、効果的に浮きおよび跡の発生を抑制することができる。また、基材11の厚さが100μm以下であることで、基材11が適度な柔軟性を有することとなり、保護フィルム1の取扱いがより優れたものとなる。
基材11の材料としては、耐荷重性を発揮し得るものを使用することが好ましい。また、保護フィルム1を、当該保護フィルム1を介した被着体の光学的検査に使用する場合には、基材11の材料として、所望の透明性を有するものを使用することが好ましい。基材11としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。このようなフィルムは、単層からなるフィルムであってもよいし、同種又は異種の複数層を積層したフィルムであってもよい。上記の中でも、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
なお、上記プラスチックフィルムは、フィラーの他、耐熱性向上剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有していてもよい。
上記基材11においては、粘着剤層12との密着性を向上させる目的で、所望により、酸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、これらの表面処理法は、基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれる。
基材11の一方の面には、上述したように剥離層を設けることもできる。当該剥離層は、例えば、後述するような剥離剤を用いて形成することができる。なお、剥離層を設ける場合、粘着剤層12は、基材11における当該剥離層とは反対側の面に設けられる。
2.粘着剤層
本実施形態に係る保護フィルム1では、粘着剤層12は、ポリロタキサン化合物を含有する粘着性組成物から得られる粘着剤からなる。ポリロタキサン化合物は、環状分子とそれを貫通する直鎖状分子との機械的結合を有しており、環状分子は直鎖状分子上を自由に移動する。これにより、当該粘着剤は高い応力緩和性を発揮することができる。そのため、保護フィルム1が部分的に強い負荷を受けたとしても、粘着剤層12がその負荷による応力を緩和することが可能となる。結果として、保護フィルム1における浮きおよび跡の発生が抑制される。また、本実施形態に係る保護フィルム1では、ポリロタキサン化合物を使用することにより、所望の粘着性を維持したまま、応力緩和性を付与することができる。
本実施形態に係る保護フィルム1では、粘着性組成物が、(メタ)アクリル酸エステル重合体をさらに含有することが好ましい。粘着剤層12が、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有する粘着性組成物から得られる粘着剤からなることで、所望の粘着力を効果的に発揮することができる。
さらに、本実施形態に係る保護フィルム1では、粘着性組成物が、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体とともに、イソシアネート系架橋剤をさらに含有することが好ましい。この場合、ポリロタキサン化合物は、反応性基として水酸基を有する環状オリゴ糖を環状分子として有し、且つ、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを含むことが好ましい。このような粘着性組成物を架橋させると、イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基と、(メタ)アクリル酸エステル重合体における水酸基含有モノマー由来の水酸基とが反応するとともに、イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基と、ポリロタキサン化合物が有する環状分子の水酸基とが反応する。これにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、イソシアネート系架橋剤を介してポリロタキサン化合物の1つの環状分子と結合し、同様に、別の(メタ)アクリル酸エステル重合体が当該ポリロタキサン化合物の別の環状分子と結合するものと推定される。その結果、複数の(メタ)アクリル酸エステル重合体がポリロタキサン化合物により互いに機械的に結合された三次元網目構造等の高次構造が形成されると推定される。かかる高次構造により、得られる粘着剤は、より優れた応力緩和性を発揮し、浮きおよび跡の発生を効果的に抑制することができる。
なお、得られる粘着剤の全てが上記の推定される構造である必要はなく、2つの(メタ)アクリル酸エステル重合体が、ポリロタキサン化合物を介さず、イソシアネート系架橋剤により直接結合されている構造等を含んでいてもよい。
(1)ポリロタキサン化合物
ポリロタキサン化合物は、少なくとも2つの環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、かつ、直鎖状分子の両末端にブロック基を有してなる化合物である。このポリロタキサン化合物においては、環状分子が直鎖状分子上を自由に移動することが可能であるが、ブロック基により環状分子は直鎖状分子からは抜け出せない構造となっている。すなわち、直鎖状分子および環状分子は、共有結合等の化学結合ではなく、いわゆる機械的結合によりその形態を維持するものとなっている。粘着性組成物が、このような機械的結合を有するポリロタキサン化合物を含有することにより、当該粘着性組成物から得られる粘着剤からなる粘着剤層12は、非常に高い応力緩和性を発揮することができる。その結果、本実施形態に係る保護フィルム1は、部分的に強い負荷を受けたとしても、当該負荷に起因した浮きや跡が発生しにくいものとなる。
また、ポリロタキサン化合物における環状分子が、反応性基として水酸基を有する環状オリゴ糖である場合、適切な環径の選択が可能となり、それにより、直鎖状分子上で環状分子が移動することによる効果が発現しやすい。また、環状オリゴ糖が反応性基として水酸基を有することから、粘着性組成物がイソシアネート系架橋剤を含む場合には、当該イソシアネート系架橋剤との反応が容易となる。さらに、様々な置換基等の導入も容易であり、それにより、ポリロタキサン化合物とその他の成分との相溶性をポリロタキサン化合物によって調整することが可能となる。さらに、環状オリゴ糖であれば、入手も容易であるという利点もある。なお、本明細書において、「環状分子」または「環状オリゴ糖」の「環状」は、実質的に「環状」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で移動可能であれば、環状分子は完全には閉環でなくてもよく、例えば螺旋構造であってもよい。
環状オリゴ糖としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等のシクロデキストリンが好ましく挙げられ、中でも特にα−シクロデキストリンが好ましい。ポリロタキサン化合物の環状分子は、ポリロタキサン化合物中または粘着性組成物中で2種以上混在していてもよい。
ポリロタキサン化合物の環状分子(環状オリゴ糖)が反応性基として水酸基を有する場合、この水酸基は、環状オリゴ糖がオリジナル(修飾前の状態をいう。)で有する水酸基であってもよいし、環状オリゴ糖に置換基として導入された水酸基であってもよい。
上記環状分子の水酸基価は、下限値として10mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましく、50mgKOH/g以上であることが特に好ましい。また、上記環状分子の水酸基価は、上限値として1000mgKOH/g以下であることが好ましく、200mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることが特に好ましい。水酸基価が10mgKOH/g以上であることで、ポリロタキサン化合物とイソシアネート系架橋剤との反応を効率的に進行させることができる。一方、水酸基価が1000mgKOH/g以下であることで、同一の環状分子における架橋の発生頻度が適度に抑えられ、これにより、当該環状分子自体が主要な架橋点となることがなく、ポリロタキサン化合物全体が主要な架橋点となり、優れた応力緩和性を発揮する高次構造が効果的に形成される。
ポリロタキサン化合物の直鎖状分子は、環状分子に包接され、共有結合等の化学結合でなく機械的な結合で一体化することができる分子または物質であって、直鎖状のものであれば、特に限定されない。なお、本明細書において、「直鎖状分子」の「直鎖」は、実質的に「直鎖」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で環状分子が移動可能であれば、直鎖状分子は分岐鎖を有していてもよい。
ポリロタキサン化合物の直鎖状分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましく、これらの直鎖状分子は、粘着性組成物中で2種以上混在していてもよい。
ポリロタキサン化合物の直鎖状分子の数平均分子量は、3,000以上であることが好ましく、特に10,000以上であることが好ましく、さらには20,000以上であることが好ましい。また、当該数平均分子量は、300,000以下であることが好ましく、特に200,000以下であることが好ましく、さらには100,000以下であることが好ましい。数平均分子量が3,000以上であることで、環状分子の直鎖状分子上での移動量が確保され、粘着剤の応力緩和性が十分に得られる。また、数平均分子量が300,000以下であることで、ポリロタキサン化合物の溶媒への溶解性や(メタ)アクリル酸エステル重合体との相溶性が良好になる。
ポリロタキサン化合物のブロック基は、環状分子が直鎖状分子により串刺し状になった形態を保持し得る基であれば、特に限定されない。このような基としては、嵩高い基、イオン性基等が挙げられる。
具体的には、ポリロタキサン化合物のブロック基は、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、アントラセン類等、あるいは、数平均分子量1,000〜1,000,000の高分子の主鎖または側鎖等が好ましく、これらのブロック基は、ポリロタキサン化合物中または粘着性組成物中で2種以上混在していてもよい。
以上説明したポリロタキサン化合物は、従来公知の方法(例えば特開2005−154675に記載の方法)によって得ることができる。
本実施形態では、粘着性組成物が(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有する場合、ポリロタキサン化合物の粘着性組成物中における含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましく、さらには0.25質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることが最も好ましい。また、ポリロタキサン化合物の粘着性組成物中における含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、特に15質量部以下であることが好ましく、さらには10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることが最も好ましい。ポリロタキサン化合物の含有量が0.01質量部以上であることで、ポリロタキサン化合物を使用することによる効果を得ることができ、浮きおよび跡の発生が抑制される。また、ポリロタキサン化合物の含有量が20質量部以下であることで、(メタ)アクリル酸エステル重合体との相溶性を良好に維持し、得られる粘着剤のヘイズ値を低く抑えることができる。
(2)(メタ)アクリル酸エステル重合体
本実施形態に係る保護フィルム1において使用される(メタ)アクリル酸エステル重合体は、所望の粘着性を有し、且つ、粘着剤層12が発揮する応力緩和性を損なわなければ、特に限定されない。
前述した通り、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを含むことが好ましい。これにより、粘着性組成物を架橋させたときに、上述したような高次構造が形成され、得られる粘着剤は、より優れた応力緩和性を発揮し、浮きおよび跡の発生を効果的に抑制することができる。当該水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体における水酸基のイソシアネート系架橋剤との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを、0.1質量%以上含有することが好ましく、特に0.5質量%以上含有することが好ましく、さらには1質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを、15質量%以下で含有することが好ましく、特に10質量%以下で含有することが好ましく、さらには5質量%以下で含有することが好ましい。水酸基含有モノマーの含有量が0.1質量%以上であることで、上述した高次構造が効率的に形成され、応力緩和性がより優れたものとなる。また、水酸基含有モノマーの含有量が15質量%以下であることで、適切な粘着性が得られ易くなるとともに、上述した高次構造が所望の密度で形成され、応力緩和性がより優れたものとなる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50質量%以上含有することが好ましく、特に75質量%以上含有することが好ましく、さらには90質量%以上含有することが好ましく、95質量%以上含有することが最も好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、99.9質量%以下で含有することが好ましく、特に99.5質量%以下で含有することが好ましく、さらには99質量%以下で含有することが好ましい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50質量%以上含有すると、(メタ)アクリル酸エステル重合体は好適な粘着性を発揮することができる。また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを99.9質量%以下とすることにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体中に他のモノマー成分を好適な量導入することができる。
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等が挙げられ、中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸エステルが含まれることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上述したアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、アルキル基の炭素数が5〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも1種類のモノマーを含有することが好ましい。このようなモノマーの好ましい例としては、アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、これらのモノマーを、50質量%以上含有することが好ましく、特に60質量%以上含有することが好ましく、さらには70質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、これらのモノマーを、95質量%以下で含有することが好ましく、特に90質量%以下で含有することが好ましく、さらには85質量%以下で含有することが好ましい。これらのモノマーの含有量が50質量%以上であることで、得られる粘着剤が比較的柔らかく且つタックを有するものとなり、保護フィルム1を光学部材から低速で剥離するときの粘着力を向上させることができる。その結果、保護フィルム1の光学部材からの意図しない剥離を抑制することができる。また、これらのモノマーの含有量が95質量%以下であることで、高速で剥離するときの粘着力を低減でき、作業性が向上するという効果が得られる。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上述したアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも1種類のモノマーを含有することが好ましい。このようなモノマーの好ましい例としては、アクリル酸n−ブチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、これらのモノマーを、4質量%以上含有することが好ましく、特に9質量%以上含有することが好ましく、さらには14質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、これらのモノマーを、45質量%以下で含有することが好ましく、特に35質量%以下で含有することが好ましく、さらには25質量%以下で含有することが好ましい。これらのモノマーの含有量が4質量%以上であることで、得られる粘着剤の凝集力が向上し、粘着剤層12を良好に形成することができる。また、これらのモノマーの含有量が45質量%以下であることで、得られる粘着剤が適度な凝集力を示し、意図しない剥離を抑制できるという効果が得られる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性を有する官能基を含むモノマーであってもよいし、反応性を有する官能基を含まないモノマーであってもよい。
反応性を有する官能基を含むモノマーとしては、前述した分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)以外に、分子内にカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの反応性官能基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体におけるカルボキシル基の、イソシアネート系架橋剤との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体が当該重合体を構成するモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマーを含有する場合、その含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、特に0.5質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量%以下であることが好ましく、特に5質量%以下であることが好ましい。なお、被着体が、酸によって腐食し易いものの場合には、カルボキシル基含有モノマーを含有しないことが好ましく、含有するとしても、0.01質量%以下、特に0.001質量%以下で含有することが好ましい。
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体が当該重合体を構成するモノマー単位としてアミノ基含有モノマーを含有する場合、その含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、特に0.1質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、5.0質量%以下であることが好ましく、特に2.5質量%以下であることが好ましい。
なお、得られる粘着剤の架橋構造の制御を容易にする観点から、反応性を有する官能基を含むモノマーを前述の水酸基含有モノマーのみとすることも好ましい。
一方、反応性を有する官能基を含まないモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、3万以上であることが好ましく、特に6万以上であることが好ましく、さらには10万以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は、100万以下であることが好ましく、特に50万以下であることが好ましく、さらには20万以下であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
なお、粘着性組成物において、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(3)イソシアネート系架橋剤
イソシアネート系架橋剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体における水酸基含有モノマー由来の水酸基、およびポリロタキサン化合物が有する環状分子である環状オリゴ糖の水酸基との反応性に優れる。イソシアネート系架橋剤を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体とポリロタキサン化合物(の環状分子)とが架橋されると、ポリロタキサン化合物にて環状分子が直鎖状分子上を自由に移動することにより、粘着剤層の架橋体としての柔軟性が著しく向上する。
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性に優れるという観点から、脂肪族ポリイソシアネート、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。なお、イソシアネート系架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
粘着性組成物中におけるイソシアネート系架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましく、さらには2質量部以上であることが好ましい。15質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。イソシアネート系架橋剤の含有量が0.05質量部以上であることで、前述した高次構造を良好に形成することができ、得られる粘着剤の応力緩和性がより優れたものとなる。また、イソシアネート系架橋剤の含有量が15質量部以下であることで、架橋の程度を適度なものとし、得られる粘着剤の応力緩和性を良好に確保することが可能である。
(4)反応促進剤
本実施形態に係る保護フィルム1において、粘着性組成物は、ウレタン化反応を促進させる反応促進剤をさらに含有してもよい。このような反応促進剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体における水酸基含有モノマー由来の水酸基およびポリロタキサン化合物の環状オリゴ糖の水酸基と、イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基との反応を促進し、前述した高次構造を確実に、かつ高密度で形成することができる。これにより、粘着剤は、優れた応力緩和性を維持しつつも、所定の硬さを有するものとなり、保護フィルム1を光学部材から高速で剥離するときの粘着力を適度に低下させることができ、保護フィルム1を光学部材から剥離するときに、適度な力で剥離することが可能となる。
反応促進剤としては、例えば、スズ、鉛、水銀、ビスマス等の重金属の化合物(有機金属化合物を含む);チタニウム、鉄、銅、ジルコニウム、ニッケル、コバルト、マンガン等の遷移金属の錯体、特にアセチルアセトネート錯体;アミン化合物;パラトルエンスルホン酸、リン酸、塩酸、塩化アンモニウム等の酸触媒などが挙げられる。これらの中でも、ウレタン化反応の促進作用の観点から、有機スズ化合物およびアミン化合物が好ましく、特に有機スズ化合物が好ましい。なお、反応促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機スズ化合物としては、例えば、ジメチルスズジクロライド等の有機スズ化合物;ジメチルスズジラウレート、ジメチルスズジ(2−エチルヘキサノエート)、ジメチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジヘキシルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート等の有機スズ化合物の脂肪酸塩;ジメチルスズビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)塩、ジオクチルスズビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)塩等の有機スズ化合物のチオグリコール酸エステル塩;オクチル酸スズ、デカン酸スズ等の金属石鹸などが挙げられる。上記の中でも、ウレタン化反応の促進作用の観点から、有機スズ化合物の脂肪酸塩が好ましく、特にジオクチルスズジラウレートが好ましい。
アミン化合物としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、トリエチルアミン、イミダゾール等が挙げられる。上記の中でも、ウレタン化反応の促進作用の観点から、トリエチルアミンが好ましい。
粘着性組成物中における反応促進剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、特に0.003質量部以上であることが好ましく、さらには0.005質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、1.0質量部以下であることが好ましく、特に0.5質量部以下であることが好ましく、さらには0.3質量部以下であることが好ましい。反応促進剤の含有量が0.001質量部以上であることで、前述した高次構造を良好に形成することができる。反応促進剤の含有量が1.0質量部以下であることで、得られる粘着剤の粘着性が良好に維持される。
(5)反応抑制剤
粘着性組成物は、上記成分以外に、反応抑制剤を含有してもよい。粘着性組成物では、反応促進剤の種類や含有量によっては、保存段階(加熱する前の段階)で、ポリロタキサン化合物、(メタ)アクリル酸エステル重合体およびイソシアネート系架橋剤のウレタン化反応(架橋反応)が始まってしまうことがあるが、反応抑制剤を含有することで、粘着性組成物の室温における保存安定性(ポットライフ)を向上させることができる。
反応抑制剤としては、例えば、アセチレン系化合物、オキシム化合物、有機窒素化合物、有機リン化合物、有機塩素化合物等が挙げられる。これらの中でも、ウレタン化反応の反応抑制作用の観点から、アセチレン系化合物が好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。上記の反応抑制剤は、通常、粘着剤層を形成するときの乾燥工程で揮発する。なお、反応抑制剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
粘着性組成物中における反応抑制剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.2質量部以上であることが好ましく、さらには0.5質量部以上であることが好ましい。10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには3質量部以下であることが好ましい。反応抑制剤の含有量が上記範囲内にあることで、粘着性組成物の保存安定性を効果的に向上させることができる。
(6)各種添加剤
粘着性組成物には、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
(7)粘着剤層の物性等
粘着剤層12の厚さは、2μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましく、さらには10μm以上であることが好ましい。また、粘着剤層12の厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることが好ましく、さらには20μm以下であることが好ましい。粘着剤層12の厚さが上記の範囲内にあることで、優れた応力緩和性および粘着力を発揮することが可能となる。
粘着剤層12のヘイズ値は、3.0%以下であることが好ましく、特に2.0%以下であることが好ましく、さらには1.5%以下であることが好ましい。粘着剤層12のヘイズ値が3.0%以下であることで、保護フィルム1を介した被着体の光学的検査を効果的に行うことが可能となる。なお、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値であり、測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
3.剥離シート
剥離シート13としては、特に限定されることはなく、公知のプラスチックフィルムを用いることができる。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
剥離シート13における粘着剤層12と接する面には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
剥離シート13の厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
4.保護フィルムの物性
本実施形態における保護フィルム1では、トリアセチルセルロース板のケン化処理された面に貼付した保護フィルム1を300mm/分の速度で180°剥離(以下「低速剥離」という場合がある。)するときの粘着力は、50mN/25mm以上であることが好ましく、特に80mN/25mm以上であることが好ましく、さらには100mN/25mm以上であることが好ましい。また、当該粘着力は200mN/25mm以下であることが好ましく、特に150mN/25mm以下であることが好ましく、さらには130mN/25mm以下であることが好ましい。低速剥離の際の粘着力が50mN/25mm以上であることで、保護フィルム1の光学部材からの意図しない剥離を抑制することができる。また、低速剥離の際の粘着力が200mN/25mm以下であることで、再貼付性を確保することができる。
本実施形態における保護フィルム1では、トリアセチルセルロース板のケン化処理された面に貼付した保護フィルム1を30m/分の速度で180°剥離(以下「高速剥離」という場合がある。)するときの粘着力は、500mN/25mm以上であることが好ましく、特に600mN/25mm以上であることが好ましく、さらには700mN/25mm以上であることが好ましい。また、当該粘着力は、1500mN/25mm以下であることが好ましく、特に1400mN/25mm以下であることが好ましく、さらには1300mN/25mm以下であることが好ましい。高速剥離の際の粘着力が500mN/25mm以上であることで、保護フィルム1、光学部材、光学部材用粘着剤層および剥離シートがこの順に積層された積層体において、光学部材用粘着剤層から剥離シートを剥離する際、保護フィルム1と光学部材との界面に浮き等が発生するのを有効に防止できる。また、高速剥離の際の粘着力が1500mN/25mm以下であることで、保護フィルム1を光学部材から剥離するときに、適度な力で剥離することが可能となる。
なお、本明細書における粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により測定した粘着力をいい、測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
5.保護フィルムの製造方法
(1)粘着性組成物の調製
粘着性組成物は、ポリロタキサン化合物およびその他の成分を混合するとともに、所望により添加剤を加えることで製造することができる。特に、粘着性組成物が、ポリロタキサン化合物、(メタ)アクリル酸エステル重合体およびイソシアネート系架橋剤を含有する場合、最初に(メタ)アクリル酸エステル重合体を製造した後、当該(メタ)アクリル酸エステル重合体と、ポリロタキサン化合物と、イソシアネート系架橋剤とを混合するとともに、所望により添加剤を加えることで、粘着性組成物を製造することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
なお、上記重合工程において、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体の溶液に、ポリロタキサン化合物およびイソシアネート系架橋剤、ならびに所望により希釈溶剤および添加剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物(塗布溶液)を得る。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物の濃度が10〜60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
(2)粘着剤層の形成
以上の粘着性組成物を、剥離シート13または基材11に塗布した後、熱架橋することにより、粘着剤(粘着剤層12)が形成される。これにより、剥離シート13または基材11と粘着剤層12とからなる積層体が得られる。
粘着性組成物の熱架橋は、加熱処理によって行うことができる。この加熱処理は、粘着性組成物の塗布後の乾燥処理で兼ねることもできる。加熱処理の加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒〜10分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
(3)保護フィルムの製造
上記のように得られた剥離シート13と粘着剤層12とからなる積層体については、当該積層体の粘着剤層12側の面と、基材11の片面とを貼合することで、基材11、粘着剤層12および剥離シート13とがこの順に積層された保護フィルム1を得ることができる。
また、基材11と粘着剤層12とからなる積層体については、当該積層体の粘着剤層12側の面と剥離シート13の剥離処理面とを貼合することで、基材11、粘着剤層12および剥離シート13とがこの順に積層された保護フィルム1を得ることができる。
6.保護フィルムの用途
本実施形態に係る保護フィルム1は、被着体を保護するために使用することができる。被着体としては、例えば光学部材が挙げられ、より具体的には光学フィルムが挙げられ、さらに具体的には偏光板、位相差板、位相差層や光学補償層など各種光学機能層が積層された複合偏光板等が挙げられる。なお、本実施形態に係る保護フィルム1は、被着体が組み込まれる製品の組み立ての途中またはその完了後において、当該被着体から剥離されるものである。すなわち、本実施形態に係る保護フィルムは、当該製品には組み込まれないものである。
本実施形態に係る保護フィルム1では、粘着剤層12が、ポリロタキサン化合物を含有する粘着性組成物から得られる粘着剤からなるため、高い応力緩和性を発揮することができる。このため、保護フィルム1が吸着パッドによって強く吸着される場合のように、保護フィルム1が部分的に強い負荷を受けたとしても、粘着剤層12がその負荷による応力を緩和することができる。結果として、本実施形態に係る保護フィルム1では、光学部材と保護フィルム1との界面における浮きの発生が抑制され、さらに、吸着された跡が保護フィルム1に残りにくい。そして、浮きおよび跡が発生しないことにより、保護フィルム1を介した、被着体の光学的検査、例えばガラス基板に貼付された光学部材の検査を正確に行うことが可能となる。
〔積層体〕
以下、本発明の一実施形態に係る積層体について説明する。図2には、本実施形態に係る積層体の断面図が示されている。本実施形態に係る積層体は、基材11および粘着剤層12からなる保護フィルム1と、保護フィルム1の粘着剤層12側の面に積層された光学部材2と、光学部材2の保護フィルム1とは反対側の面に積層された光学部材用粘着剤層3と、光学部材用粘着剤層3の光学部材2とは反対側の面に積層された光学部材用剥離シート4とを含む。ここで保護フィルム1は、前述した保護フィルム1である。
本実施形態に係る積層体では、保護フィルム1に含まれる粘着剤が高い応力緩和性を発揮するため、光学部材用剥離シート4を剥離するために、積層体の保護フィルム1側の面を吸着パッドで強く吸着した場合であっても、粘着剤層12がその負荷による応力を緩和することができる。結果として、本実施形態に係る積層体では、光学部材2と保護フィルム1との界面における浮きの発生が抑制され、さらに、吸着された跡が保護フィルム1に残りにくい。
上記光学部材2としては、特に制限はなく、従来の光学部材として公知のものを適宜選択して用いることができる。光学部材2の具体例としては、光学フィルムが挙げられ、さらに具体的には、偏光板、位相差板、位相差層や光学補償層など各種光学機能層が積層された複合偏光板等が挙げられる。
上記光学部材用粘着剤層3としては、特に制限はなく、従来の光学部材用粘着剤層として公知のものを適宜選択して用いることができる。光学部材用粘着剤層3の具体例としては、上述した(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有する粘着性組成物からなる粘着剤から構成されるものが挙げられる。
上記光学部材用剥離シート4としては、特に制限はなく、従来の光学部材用剥離シートとして公知のものを適宜選択して用いることができる。光学部材用剥離シート4としては、例えば、保護フィルム1に含まれる剥離シート13と同様のものを使用することができる。
本実施形態における積層体では、保護フィルム1の光学部材2とは反対側の面に円柱状の金属の底面を所定の荷重で30秒間押し当てる耐荷重試験において、保護フィルム1と光学部材2との間に気泡が発生する上記荷重が、550g/mm以上であることが好ましく、特に600g/mm以上であることが好ましく、さらには700g/mm以上であることが好ましい。本実施形態に係る積層体では、粘着剤層12がポリロタキサン化合物を含有する粘着性組成物から得られる粘着剤からなるため、粘着剤層12が優れた応力緩和性を発揮する結果、上記のように550g/mm以上の荷重を受けた場合であっても、浮きや跡の発生が抑制される。なお、当該試験の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
本実施形態に係る積層体は、例えば、光学部材用剥離シート4上に光学部材用粘着剤層3を形成し、当該光学部材用粘着剤層3の光学部材用剥離シート4とは反対側の面に光学部材2を貼付した後に、保護フィルム1の粘着剤層12側の面を、光学部材2における光学部材用粘着剤層3とは反対側の面に貼付することで得ることができる。
本実施形態に係る積層体を使用して、光学部材2をガラス基板等に貼付する場合、最初に、当該積層体から光学部材用剥離シート4を剥離する。このとき、保護フィルム1側の面を吸着パッドで吸着し、当該積層体を固定した状態で剥離する。その後、光学部材用粘着剤層3の露出した面をガラス基板等に貼付する。続いて、必要に応じて、保護フィルムを介して光学部材2の検査が行われる。最後に、保護フィルム1が不要になった段階で、光学部材2から保護フィルム1を剥離する。
このように、保護フィルム1が光学部材2の一方の面に貼付されていることにより、光学部材2を取り扱う際や、光学部材2を貼付したガラス基板等を取り扱う際に、当該面における傷の発生や汚れの付着を防止することができる。さらに、本実施形態に係る積層体では、保護フィルム1の粘着剤層12がポリロタキサン化合物を含有する粘着性組成物から得られる粘着剤からなるため、粘着剤層12が優れた応力緩和性を発揮する。その結果、吸着パッドで強く吸着した場合のように、保護フィルム1が強い負荷を受けたとしても、光学部材2と保護フィルム1との界面における浮きの発生が抑制され、さらに、吸着された跡が保護フィルム1に残りにくい。これにより、保護フィルム1を介した、ガラス基板に貼付された光学部材の検査を正確に行うことが可能となる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、保護フィルム1における基材11と粘着剤層12との間には、他の層が介在していてもよいし、基材11における粘着剤層12側とは反対側の面には、他の層(例えばハードコート層等)が積層されていてもよい。また、積層体における光学部材2と光学部材用粘着剤層3との間には、他の層が積層されていてもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸n−ブチル20質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル80質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル2.5質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量(Mw)を後述する方法で測定したところ、16万であった。
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、ポリロタキサン化合物(アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製,製品名「セルム スーパーポリマー SH3400P」,直鎖状分子:ポリエチレングリコール,環状分子:ヒドロキシプロピル基およびカプロラクトン鎖を有するα−シクロデキストリン,ブロック基:アダマンタン基,重量平均分子量(Mw)70万,水酸基価72mgKOH/g)0.25質量部と、イソシアネート系架橋剤としてのヘキサメチレンジイソシアネート3.4質量部と、反応促進剤としてのジオクチルスズジラウレート0.010質量部と、反応抑制剤としてのアセチルアセトン1.0質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度37質量%の粘着性組成物の塗布溶液を得た。
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体]
BA:アクリル酸n−ブチル
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
3.保護フィルムの製造
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET3811」,厚さ:38μm)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布して塗布層を形成した。当該塗布層を、90℃で1分間加熱処理して、厚さ15μmの粘着剤層を形成した。これにより、粘着剤層と剥離シートとからなる積層体を得た。
次いで、当該積層体の粘着剤層側の面と、基材としての厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(Toray Advanced Materials Korea社製,製品名「XD571S」,23℃における引張弾性率:3.9GPa)の片面とを貼合することにより、基材と粘着剤層と剥離シートとがこの順に積層された保護フィルムを得た。
〔実施例2〜6〕
ポリロタキサン化合物の配合量を表2に示されるように変更する以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを作製した。
〔比較例1〕
ポリロタキサン化合物を配合しない以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを作製した。
〔比較例2〜3〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体の組成を表1に示されるように変更し、ポリロタキサン化合物、反応抑制剤および反応促進剤を配合せず、イソシアネート系架橋剤の配合量を表1に示されるように変更する以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを作製した。
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
〔試験例1〕(低速粘着力の測定)
実施例および比較例で作製した保護フィルムから剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層側の面と、片面がケン化処理されたトリアセチルセルロースのケン化処理面とを貼合し、50℃の温度の下、0.5MPaの圧力にて20分間加圧した。その後、幅50mm、長さ120mmに裁断し、これをサンプルとした。
上記サンプルを、23℃、50%RHの環境下で24時間放置した後、引張試験機を用いて180°の剥離角度、300mm/分の剥離速度で保護フィルム側を剥離し、粘着力(mN/25mm)を測定した。当該測定値を低速粘着力とした。結果を表1に示す。
〔試験例2〕(高速粘着力の測定)
実施例および比較例で作製した保護フィルムから、試験例1と同様にサンプルを作製した。
上記サンプルを、23℃、50%RHの環境下で24時間放置した後、引張試験機を用いて180°の剥離角度、30m/分の剥離速度で保護フィルム側を剥離し、粘着力(mN/25mm)を測定した。当該測定値を高速粘着力とした。結果を表1に示す。
〔試験例3〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例にて保護フィルムの作製に使用した基材に替えて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3801,厚さ:38μm)を使用し、剥離シート(SP−PET3801)/粘着剤層/剥離シート(SP−PET3811)の構成からなる積層体を作製した。なお、剥離シート(SP−PET3801)を粘着剤層に貼付する際、剥離シート(SP−PET3801)の剥離処理面が粘着剤層に対向するように貼付した。
得られた積層体の粘着剤層をソーダガラスに貼合し、ヘイズメーター(日本電色工業社製,NDH2000)を用いて、JIS K7136:2000に準じてヘイズ値(%)を測定した。結果を表1に示す。
〔試験例4〕(耐荷重試験)
実施例および比較例で作製した保護フィルムから剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層側の面を、一方の面がケン化処理されたトリアセチルセルロースに両面挟持されたヨウ素含有ビニルアルコール系偏光子を有する偏光板(総厚:200μm)の当該ケン化処理面側に貼付し、50℃の温度の下、0.5MPaの圧力にて20分間加圧した。その後、60mm×60mmの大きさに裁断し、これをサンプルとした。
上記サンプルの4辺をセロハンテープでガラス板に固定した。このとき、サンプルの偏光板側がガラス板に対向するように固定した。次に、直径1mmの金属製の円柱を装着した鉛筆引っかき硬度試験機(安田精機製作所社製,製品名「No.553−M」)に、上記サンプルが固定されたガラス板を設置した。続いて、サンプルの保護フィルムにおける基材側の面に対して、上記円柱の一端を垂直に押し当て、所定の荷重(g)を30秒間印加した。その後、サンプルの粘着剤層と偏光板との間の界面で浮きが発生したか否かを目視によって確認した。荷重(g)は、200g〜700gの間の50g刻みの値とし、荷重(g)ごとに新たなサンプルを使用し、1種類のサンプルに対して各荷重での試験を行った。浮きの発生が確認された荷重(g)のうち最も小さい値を、測定値(g)として表1に示す。さらに、当該測定値を、円柱とサンプルとの接触面積(すなわち、直径1mmの円の面積:約0.785mm)で除することで、単位面積当たりの荷重(g/mm)を算出した。この単位面積当たりの荷重を、換算値(g/mm)として表1に示す。
Figure 0006676311
表1から明らかなように、実施例1〜6で作製した保護フィルムは優れた耐荷重性を示しており、浮きおよび跡が発生しにくいことがわかる。これに対し、比較例1〜3で作製した保護フィルムは耐荷重性が低く、浮きおよび跡が発生し易いことがわかる。
本発明に係る保護フィルムは、例えば、偏光板といった光学部材の保護に好適に用いられる。
1…保護フィルム
11…基材
12…粘着剤層
13…剥離シート
2…光学部材
3…光学部材用粘着剤層
4…光学部材用剥離シート

Claims (7)

  1. 基材と、前記基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備えた保護フィルムであって、
    前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル重合体およびポリロタキサン化合物を含有する粘着性組成物から得られる粘着剤からなり、
    前記粘着剤層が、複数の前記(メタ)アクリル酸エステル重合体が前記ポリロタキサン化合物により互いに機械的に結合された三次元網目構造の高次構造を含み、
    前記粘着剤層の厚さが、2μm以上、50μm以下である
    ことを特徴とする保護フィルム。
  2. 前記ポリロタキサン化合物は、反応性基として水酸基を有する環状オリゴ糖を、環状分子として有し、
    前記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを含み、
    前記粘着性組成物は、イソシアネート系架橋剤をさらに含有することを特徴とする請求項に記載の保護フィルム。
  3. 前記(メタ)アクリル酸エステル重合体が、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が5〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも1種類のモノマーを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の保護フィルム。
  4. トリアセチルセルロース板のケン化処理された面に貼付した前記保護フィルムを300mm/分の速度で180°剥離するときの粘着力が、50mN/25mm以上、200mN/25mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護フィルム。
  5. トリアセチルセルロース板のケン化処理された面に貼付した前記保護フィルムを30m/分の速度で180°剥離するときの粘着力が、500mN/25mm以上、1500mN/25mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の保護フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の保護フィルムと、
    前記保護フィルムの前記粘着剤層側の面に積層された光学部材と、
    前記光学部材の前記保護フィルムとは反対側の面に積層された光学部材用粘着剤層と、
    前記光学部材用粘着剤層の前記光学部材とは反対側の面に積層された光学部材用剥離シートと
    を含むことを特徴とする積層体。
  7. 前記保護フィルムの前記光学部材とは反対側の面に円柱状の金属の底面を所定の荷重で30秒間押し当てる耐荷重試験において、前記保護フィルムと前記光学部材との間に気泡が発生する前記荷重が、550g/mm以上であることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
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