JP6674773B2 - 吸音部材および空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
本発明の吸音部材によれば、軽量化と空洞共鳴音の低減とを両立させることができる。また、吸音部材の強度を維持しつつ、吸音部材の重量を低減することができる。
なお、本発明において、「セル数」は、JIS K 6400−1 附属書1:2012に準拠して測定し、また、「25%硬度」は、JIS K 6400−2:2012に準拠して測定するものとする。さらに、本発明において「多孔質部の厚さ」とは、多孔質部の薄膜部の厚さ方向に沿って測った長さを指すものとする。
この構成によれば、空洞共鳴音を効果的に低減させることができる。
この構成によれば、空洞共鳴音を効果的に低減させることができる。
本発明の空気入りタイヤによれば、軽量化と空洞共鳴音の低減とを両立させることができる。
この構成によれば、重量を増加させることなく空洞共鳴音を効果的に低減させることができる。
この構成によれば、空洞共鳴音を効果的に低減させることができる。
また、本発明において「タイヤの内腔の、タイヤ周方向に対して垂直な方向での断面積」とは、タイヤを適用リムに組み付けて、50kPaの内圧を適用した無負荷状態でのタイヤの内腔(タイヤの内表面とリムの表面とで囲まれる領域)の断面積を指す。
また、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されている、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す。ここで内圧を50kPaにするのは、タイヤのビード部を適用リムに組み付けてリム幅にするとともに、タイヤのケースラインの形状を保つためだけの低内圧とする趣旨である。また、ここでいう内圧の適用は、空気の他に窒素ガス等の不活性ガスその他で行うことも可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係る、吸音部材1および空気入りタイヤ(以下、タイヤとも称す)2を、吸音部材1をタイヤ2の内腔I側の表面TS上に配設したタイヤ2をリムRに装着した状態で示す、タイヤ赤道面Cにおける一部断面図である。また、図2は、図1の吸音部材1およびタイヤ2を、図1と同様な状態で示す、タイヤ周方向に対して垂直な方向での断面図である。
この吸音部材1は、タイヤ2の内腔Iに配置するものであり、具体的には、例えば、図1、2、4、6、7に示すように、タイヤ2の内腔I側の表面(以下、タイヤ2の内表面とも称す)TS上に配設したり、または、図5に示すように、タイヤ2の内腔Iのうち、タイヤ2を装着するリムRの表面RS上に配設したりすることができる。
なお、図示の例では薄膜部3を2層構造としているが、薄膜部3は、第1薄膜部分31または第2薄膜部分32のどちらか1層のみとすることができ、或いは、さらに別の薄膜部分を第1薄膜部分31とは逆側の多孔質部4の表面に、または多孔質部4の内部に設ける等して、3層以上とすることもできる。さらに、薄膜部3を、1以上の小片部分として多孔質部4の内部または表面に分散させて設けることもできる。
タイヤ2の転動の際、タイヤ2の内腔Iにおいては、タイヤ周方向に定在する音波である空洞共鳴音が生じているが、本実施形態の吸音部材1は、薄膜部3と多孔質部4とを有するので、当該吸音部材1をタイヤ2の内腔Iに配置することで、薄膜部3が空洞共鳴音を吸収するとともに、多孔質部4が当該薄膜部3を支持し薄膜部3の振動を吸収する。したがって、薄膜部3と多孔質部4とが相まって空洞共鳴音を低減させることができる。また、本実施形態の吸音部材1の多孔質部4は、セル数が5〜30個/25mmであり、且つ、25%硬度が20〜200Nであるので、多孔質部4、ひいては吸音部材1を軽量化することができる。
したがって、本実施形態の吸音部材1によれば、軽量化と空洞共鳴音の低減とを両立することができる。
なお、吸音部材1の多孔質部4のセル数が5個/25mm未満または25%硬度が20N未満になると、吸音部材1の強度が低下する虞がある。また吸音部材1の多孔質部4のセル数が30個/25mm超または25%硬度が200N超になると、吸音部材1の重量が増加したり、所期した空洞共鳴音低減効果が十分には得られない虞がある。また、吸音部材1が、多孔質部4のみからなる場合には、十分に吸収するために大きな体積を有する吸音部材1とする必要が生じ吸音部材1の重量が増すこととなる。
なお、同様な観点から、図1に示すように、多孔質部4の側面のうち少なくとも1つの側面の全てを覆うことがより好ましい。
なお、多孔質部4は、1または複数種類の材料で形成することもできる。
なお、薄膜部3は、1つまたは複数種類の材料で形成することもできる。
なお、多孔質部4への薄膜部3の貼り付けは、薄膜部3にテンションをかけずに張ることが好ましく(例えば、薄膜部3を貼る多孔質部4の面の面積よりも、薄膜部3の面積が若干大きい)、なお、テンションをかけずに張った結果として薄膜部にはしわが生じるようにすることができる。
さらに、図示の例では、吸音部材1は、吸音部材1の故障の有無や温度などの状態をタイヤ2の外部から検知可能とするため、無線タグやセンサ等を有することができる。
このタイヤ2は、上述した吸音部材1を有するものであって、図示を一部省略するが、ビード部間にトロイダル状に延びるカーカスと、トレッド部のカーカスのタイヤ径方向外側に配設されたベルトと、ベルトのタイヤ径方向外側に配設されて、トレッド踏面を形成するトレッドゴムと、を備えている。また、タイヤ2の内部補強構造等は一般的なタイヤのそれと同様とすることができる。
なお、空気入りタイヤとしては、特に乗用車用タイヤを挙げることができる。空洞共鳴音の性能が乗用車用タイヤ以外の、例えば重荷重用タイヤ・二輪車用タイヤ等で求められることは通常無いためである。
また、図1、2に示す例では、吸音部材1は、直方体状であり、その最も大きい表面1a、1bがタイヤ周方向に向くように、換言すれば、当該表面がタイヤ周方向に対して傾斜する(本例では、直交する)姿勢で配置されている。なお、吸音部材1が直方体状の場合に、タイヤ周方向の傾斜する表面1a、1bが直方体の最も大きい表面である必要はない。たとえば、図3に示すように、タイヤ周方向長さl、タイヤ径方向長さd、タイヤ幅方向長さwとするときに、各長さl、d、wを、l>w>dとした上で、タイヤ周方向の傾斜する表面1a、1bにのみ薄膜を設けることができる。
具体的には、図示の例では、上述のように、薄膜部3が第1薄膜部分31と第2薄膜部分32との2層構造となっているが、第1薄膜部分31が、多孔質部4のタイヤ周方向に対して垂直に傾斜する表面を、当該表面に沿うように覆い、また、第2薄膜部分32が、多孔質部4の内部に、タイヤ周方向に対して垂直に傾斜して配置されている。したがって、図示の例では、薄膜部3中の第1薄膜部分31および第2薄膜部分32がタイヤ周方向に対して傾斜し、また、第1薄膜部分31が、多孔質部4の表面の少なくとも一部を覆い、また、吸音部材1のタイヤ周方向の一方側に位置する側面1aの全体に、第1薄膜部分31が形成されている。
なお、薄膜部について「少なくとも一部がタイヤ周方向に対して傾斜する」とは、薄膜部の少なくとも一部が、タイヤ径方向成分を有することを意味する。
具体的には、図示の例では、多孔質部4の、タイヤ周方向に対して垂直な方向での面積は、タイヤ2の内腔Iの、タイヤ周方向に対して垂直な方向での断面積の50%以上となっており、多孔質部4の面積と同等の面積を有する薄膜部3も同様にタイヤ2の内腔Iの断面積の50%以上となっている。また、図示の例では、薄膜部3の第1薄膜部分31、第2薄膜部分32の面積は、それぞれタイヤ2の内腔Iの断面積の50%以上となっている。
なお、多孔質部4のタイヤ周方向に対して傾斜する表面の一部のみに薄膜部3が設けられることによって、薄膜部3の面積が多孔質部4の面積よりも小さくなっていてもよく、或いは、薄膜部3が多孔質部4からはみ出したり、または、タイヤ周方向視で1以上の貫通穴(多孔質部4のセル面積よりも大きい)を有する場合の多孔質部4を、タイヤ周方向視で、当該多孔質部4の外輪郭で囲まれる面と同じ面積となる薄膜部3で覆ったりすることによって、薄膜部3の面積が多孔質部4の面積よりも大きくなっていてもよい。
本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤでは、所定の吸音部材1、すなわち、タイヤ2の内腔I側の表面TS上に、セル数が5〜30個/25mmであり、且つ、25%硬度が20〜200Nである多孔質部4を有する吸音部材1、が配設されているので、軽量化と空洞共鳴音の低減とを両立することができる。
なお、同様な観点から、図1に示すように、多孔質部4の、タイヤ周方向に対して傾斜する表面のうち少なくとも一方側の表面(タイヤ周方向の側面)の全てを、薄膜部3はタイヤ周方向に対して傾斜する姿勢で覆うことがより好ましい。さらに、吸音部材1により効率よく空洞共鳴音を低減させる観点からは、薄膜部3はタイヤ周方向に対して垂直な姿勢で、多孔質部4のタイヤ周方向に対して傾斜する表面を覆うことがより好ましい。
なお、空洞共鳴音を低減する観点からは、薄膜部3の面積は大きい方が好ましいが、リム組み性の観点からは90%以下にすることが好ましい。
同様な観点からは、吸音部材1を、2〜8個配設することがより好ましく、図示のように、4個配設することが特に好ましい。複数個の吸音部材1を配置する場合には、タイヤ周方向に等間隔で並べることが好ましいが、間隔を不均一に配置することもできる。また、ユニフォミティ等を考慮して配置を決めることもできる。
また、吸音部材1の配設位置は、トレッド踏面上に形成されているトレッドパターン、その他サイドウォール部5の表面上に形成され得るタイヤ表面保護用または放熱用の突起等に対して、タイヤ2の内表面TS上で任意に位置させることができる。ただし、タイヤ2の転動中において吸音部材1は蓄熱する傾向があり、吸音部材1が蓄熱した熱がタイヤ部材に伝熱するのを低減する観点から吸音部材1の配設位置を定めることができる。吸音部材1がトレッド踏面に対応するタイヤ2の内表面TS上に位置する場合には、放熱を促進するため、吸音部材1の配設位置に対応するトレッド踏面における位置に、溝が形成されていることが好ましい。
なお、図示のように、吸音部材1をタイヤ2の内表面TS上に配設したタイヤ2の例では、多孔質部4の延在部41は、タイヤ周方向に延在し、円弧(円)の半径方向外側の表面がタイヤ2の内表面TS側となり、また、延在部41の周方向がタイヤ2のタイヤ周方向になっている。
具体的には、図5に示す組立体の例では、図1に示す、直方体状の吸音部材1が、タイヤ2の内腔I側のリムRの表面RS上に配設されている。なお、吸音部材1のリムRの表面RS上への配設は、吸音部材1のタイヤ2の内表面TS上への配設と同様な方法で行うことができる。
さらに、図示は省略するが、組立体の他の例では、図4に示す、延在部41および突出部42を有する多孔質部4と薄膜部3とを有する吸音部材1が、リムRの表面RS上に配設されている。具体的には、図4に示す例では、突出部42の延在部41への配置が、延在部41の半径方向内側の表面上であり、延在部41の半径方向外側の表面がタイヤ2の内表面TS上側を向いた状態で、吸音部材1が、タイヤ2の内表面TS上に配設されている。これに対して、この組立体の他の例では、当該突出部42の延在部41への配置が半径方向外側の表面上であり、延在部41の半径方向内側の表面がリムRの表面RS側に向いた状態で、吸音部材1が、リムRの表面RS上に配設されている。
本発明の実施形態に係る実施例のタイヤ、および、比較例のタイヤを試作し、以下に示す実験1、2を行った。
実施例1のタイヤは、タイヤサイズが205/55R16であって、図1に示すように、タイヤの内表面上に、直方体状の吸音部材をタイヤ周方向に等間隔に4個配設したものである。各吸音部材は、厚さが30mm、セル数が18個/25mm、25%硬度が70Nである直方体状のポリウレタン製の多孔質部と、厚さが10μmであるポリエチレン製の薄膜部とからなっている。薄膜部は1層であって、直方体状の多孔質部のタイヤ周方向一方側の、タイヤ周方向に垂直な方向の側面の全体を覆っており、薄膜部の面積は、タイヤ内腔Iの断面積の80%である。
実施例2タイヤは、実施例1のタイヤの多孔質部の厚さを50mmに変更し、吸音部材の内部に薄膜部を1層追加した(薄膜部で覆った多孔質部の側面から測って30mmの距離に追加の薄膜部を配置し、図1に示すように薄膜部を2層とした)以外、実施例1のタイヤと同様である。
比較例1のタイヤは、実施例1の吸音部材を設けない以外、実施例1のタイヤと同様である。
比較例2のタイヤは、実施例1の吸音部材を、薄膜部を有しない吸音部材に変更した(すなわち、実施例1の吸音部材から薄膜部を取り除いた)以外実施例1のタイヤと同様である。
比較例3のタイヤは、実施例1の吸音部材の多孔質部を、セル数が50個/25mm、25%硬度が500Nであるものに変更した以外実施例1のタイヤと同様である。
[軽量化]
上記の各供試タイヤから吸音部材を取り外して、それぞれの質量(g)を測定して評価した。
[空洞共鳴音の低減]
上記の各供試タイヤをサイズ16×6.5Jのリムに装着し、内圧が250kPaになるように空気を充填して、当該タイヤを、直径1.7mの鉄板表面を持つ鉄製ドラムを備えたレプリカドラム試験機に取り付けて、空洞共鳴を測定した。測定方法は、当該試験機内において、各供試タイヤを、タイヤ負荷質量5.0kN、速度60km/hの条件で定速で転動させ、ホイール分力計を用いて上下方向タイヤ軸力(Fz)を測定して得られる周波数スペクトルから空洞共鳴に対応する周波数のピーク値を測定した。実施例1、2および比較例2、3のタイヤで発生した空洞共鳴のピーク値の、比較例1のタイヤで発生した空洞共鳴のピーク値からの低減量である空洞共鳴低減量(dB)を表1に示す。数値が大きいほど、空洞共鳴が、比較例1のタイヤで発生した音量よりも低減していることを意味する。
実施例3のタイヤは、タイヤサイズが205/55R16であって、図6、7に示すように、タイヤの内表面上に、タイヤの内表面の一周上に延在させた多孔質部と、タイヤの内腔I側の当該多孔質部の表面の一周を覆う薄膜部(薄膜部は、タイヤ周方向に傾斜しておらず、図7に示すように多孔質部のタイヤ径方向に垂直な面にのみ形成されている。)とからなる吸音部材を配設したものである。吸音部材は、厚さが30mm(タイヤ径方向に測定)、セル数が18個/25mm、25%硬度が70Nである環状のポリウレタン製の多孔質部と、厚さが10μmであるポリエチレン製の薄膜部とからなっている。
比較例4のタイヤは、実施例3の吸音部材を、セル数が50個/25mm、25%硬度が500Nであるものに変更した以外、実施例3のタイヤと同様である。
上記の各供試タイヤの性能(軽量化、空洞共鳴音の低減)を上記の方法で評価した。
1a、2b:吸音部材の表面
2:空気入りタイヤ(タイヤ)
3:薄膜部
31:第1薄膜部分
32:第2薄膜部分
4:多孔質部
41:延在部
42:突出部
5:サイドウォール部
C:タイヤ赤道面
I:内腔
TS:タイヤの内腔側の表面(タイヤの内表面)
R:リム
RS:リムの表面
Claims (6)
- タイヤの内腔に配置される吸音部材であって、
前記吸音部材は、薄膜部と、セル数が5〜30個/25mmであり、且つ、25%硬度が20〜200Nである、多孔質部と、を有し、
前記多孔質部のタイヤ周方向に沿った長さである、前記多孔質部の厚さが、10〜50mmであることを特徴とする、吸音部材。 - 前記薄膜部は、前記多孔質部の表面の少なくとも一部を覆う、請求項1に記載の吸音部材。
- 前記薄膜部の厚さが、5〜30μmである、請求項1または2に記載の吸音部材。
- 請求項1〜3の何れかに記載の吸音部材が、タイヤの内腔側の表面上に配設されていることを特徴とする、空気入りタイヤ。
- タイヤの内腔側の表面上に、複数の前記吸音部材が相互にタイヤ周方向に離間して配設され、
前記吸音部材のタイヤ周方向に位置する側面に、薄膜部の少なくとも一部が形成されている、請求項4に記載の空気入りタイヤ。 - 1つの前記吸音部材に含まれる薄膜部の、タイヤ周方向に対して垂直な方向での面積は、タイヤの内腔の、タイヤ周方向に対して垂直な方向での断面積の50%以上である、請求項4または5に記載の空気入りタイヤ。
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