以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1および図2において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、トラクタの走行により圃場(水田や畑等)を前方である進行方向Fに移動しながら耕耘整地作業である代掻き作業や土引き作業等をする代掻き作業機である。
農作業機1は、図示しないトラクタの後部の3点リンク部(農作業機昇降支持装置)に脱着可能に連結される左右方向長手状の中央作業部2と、この中央作業部2の左右方向両端部に前後方向の折畳軸5を中心としてそれぞれ回動可能に設けられた左右の延長作業部3と、これら左右の延長作業部3を中央作業部2に対して折畳軸5を中心としてそれぞれ回動させる回動駆動手段であるシリンダ部4とを備えている。
左右の延長作業部3は、折畳軸5を中心とする展開方向への回動により中央作業部2の側方に位置する展開作業状態になり、折畳軸5を中心とする折畳方向への回動により中央作業部2の上方に位置する折畳非作業状態になる。
このような折り畳み可能な3分割の農作業機1は、中央作業部2と左右両方の延長作業部3とによる作業状態と、中央作業部2と左右いずれか一方のみの延長作業部3とによる作業状態と、中央作業部2のみによる作業状態とに、それぞれ選択的に切換可能となっている。
そして、中央作業部2は、トラクタの後部の3点リンク部に脱着可能に連結される機体9と、この機体9に回転可能に設けられトラクタ側からの動力で所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体(図示せず)と、機体9の後端部に設けられ耕耘体の後方で整地作業をする整地手段10とを備えている。
機体9は、トラクタの後部の3点リンク部にそれぞれ着脱可能に連結されるトップマスト11および左右のロアリンク(図示せず)を有している。
さらに、機体9は、左右方向長手状のフレームパイプ12、および耕耘体の上方を覆う耕耘カバー13を有している。フレームパイプ12の左右方向中央部にミッションケース14が設けられている。フレームパイプ12内には、回転シャフト(図示せず)が回転可能に配設されている。ミッションケース14には、トラクタのPTO軸側からの動力を入力する入力軸(図示せず)、およびこの入力軸から回転シャフトに動力を伝達するギヤ伝達機構(図示せず)が設けられている。また、フレームパイプ12の左端部にはチェーンケース15が設けられ、フレームパイプ12の右端部にはブラケット16が設けられている。チェーンケース15内には、回転シャフトから耕耘体に動力を伝達するチェーン伝達機構(図示せず)が設けられている。
耕耘体は、機体9のチェーンケース15とブラケット16との間に回転可能に設けられている。この耕耘体は、入力軸側から伝達される動力により所定方向に回転する耕耘軸と、この耕耘軸に取り付けられ所定方向に回転しながら耕耘作業をする複数の耕耘爪とを有している。なお、この耕耘体の構成は、延長作業部3において説明する耕耘体24の構成と同様である。
整地手段10は、機体9の耕耘カバー13の下端部(後端部)に上下回動可能に設けられた第1整地体(均平板)17と、この第1整地体17の下端部(後端部)に上下回動可能に設けられた第2整地体(レーキ)18と、この第2整地体18に回動可能に連結された支持手段19とを有している。
また、延長作業部3は、中央作業部2の機体9の左右方向端部に折畳軸5を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた機体23と、この機体23に回転可能に設けられトラクタ側からの動力で所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体24と、機体23の後端部に設けられ耕耘体24の後方で整地作業をする整地手段25とを有している。
機体23は、延長作業部3の展開作業状態時に中央作業部2のフレームパイプ12と同軸上に位置するフレームパイプ26、および耕耘体24の上方を覆う耕耘カバー27を有している。フレームパイプ26内には、フレームパイプ12内の回転シャフトと着脱可能に連結されてそのフレームパイプ12内の回転シャフトから動力が伝達される回転シャフト(図示せず)が回転可能に配設されている。また、フレームパイプ26の外端部にはチェーンケース28が設けられ、フレームパイプ26の内端部にはブラケット29が設けられている。チェーンケース28内には、回転シャフトから耕耘体24に動力を伝達するチェーン伝達機構(図示せず)が設けられている。
耕耘体24は、機体23のチェーンケース28とブラケット29との間に回転可能に設けられている。この耕耘体24は、入力軸側から伝達される動力により所定方向に回転する耕耘軸30と、この耕耘軸30に取り付けられ所定方向に回転しながら耕耘作業をする複数の耕耘爪31とを有している。
整地手段25は、機体23の耕耘カバー27の下端部(後端部)に上下回動可能に設けられた第1整地体(均平板)32と、この第1整地体32の下端部(後端部)に上下回動可能に設けられた第2整地体(レーキ)33と、この第2整地体33の外端部に連結された延長整地体(延長レーキ)34と、第2整地体33を支持する支持手段35とを有している。
延長整地体34は、延長作業部3の側方に位置する展開作業状態(開状態)と、第2整地体33の上部に位置する折畳非作業状態(閉状態)とに回動可能としており、耕耘カバー27の上部に取り付けられた開閉装置36によって展開作業状態と折畳非作業状態とに切り換えられる。
そして、延長作業部3の展開作業状態時には、フレームパイプ26内の回転シャフトが中央作業部2のフレームパイプ12内の回転シャフトに連結され、これにより、入力軸からの動力が耕耘体24に伝達可能となり、さらに、第2整地体33の内端部が中央作業部2の第2整地体18の外端部に連結され、これにより、各作業部2,3の第1整地体17,32が一体に上下回動可能となるとともに、各作業部2,3の第2整地体18,33が一体に上下回動可能となる。
次に、図1ないし図8において、延長作業部3の構成を説明する。
第1整地体32は、左右方向長手状に形成されており、その左右両側部に側板40を有している。この第1整地体32の上端部(前端部)つまり両側板40の上端部(前端部)が、第1整地体回動支点41である左右方向の軸42を中心として機体23の耕耘カバー27の後部に上下回動可能に取り付けられている。
また、第2整地体33は、左右方向長手状に形成されており、その左右両側部に側板44を有している。この第2整地体33の上端部(前端部)つまり両側板44の上端部(前端部)が、第2整地体回動支点45である左右方向の軸46を中心として第1整地体32の下端部(後端部)つまり両側板40の下端部(後端部)に上下回動可能に取り付けられている。
第2整地体33の後面(上面)の左右方向中央には、左右一対の連結板47が突設されている。これら連結板47の上端側には、中央の第1連結孔48と、この第1連結孔48よりも第2整地体回動支点45から離れた位置に位置する第2連結孔49と、第1連結孔48よりも第2整地体回動支点45に近い位置に位置する第3連結孔50とがそれぞれ設けられている。
また、支持手段35は、機体23に設けられたリンク支点板53と、このリンク支点板53に前後回動可能に設けられた切換アーム54と、この切換アーム54と第2整地体33とを連結する連結リンク55と、切換アーム54を前後回動させてこの切換アーム54の位置つまり第2整地体33の位置を耕耘整地作業時の整地位置(図3および図4に示す位置)と土引き作業時の土引き位置(図5および図6に示す位置)とに切り換える切換手段56とを備えている。
リンク支点板53は、左右一対で(図7参照)、機体23つまり耕耘カバー27に取り付けられる支点補強板58から突設されている。このリンク支点板53には、切換アーム54を回動可能に支持する左右方向の切換支持ピン59が取り付けられている。さらに、リンク支点板53は、リンク支点板53の後端側に設けられた第1規制孔60と、リンク支点板53の前端側に設けられた第2規制孔61とを有している。これら第1規制孔60および第2規制孔61には、耕耘整地作業時の切換アーム54の位置を調整するための規制ピン62が選択的に取付可能になっている。
また、切換アーム54は、左右一対のリンク支点板53間に、切換支持ピン59を中心として前後回動可能に配設されている。切換アーム54は、一側の切換アーム部64、および他側の切換アーム部65を有し、これら切換アーム部64,65の下端側がパイプ部66に固定されているとともに、他側の切換アーム部65の上端側が折曲されて一側の切換アーム部65の上端側に固定されている。パイプ部66に切換支持ピン59が回動可能に挿通され、パイプ部66つまり切換支持ピン59を中心として切換アーム54が前後回動可能としている。そして、切換アーム54は、切換手段56により、耕耘整地作業時には前方の整地切換位置に回動され、また、土引き作業時には後方の土引き切換位置に回動される。
切換アーム54の後端側には、左右方向のリンク支点ピン67を中心として連結リンク55が回動可能に連結されている。一側の切換アーム部64の前端側には、切換手段56に連結される連結孔68が形成されている。
切換アーム54には、リンク支点板53の第1規制孔60の位置に対応して規制孔69が設けられている。この規制孔69には、第1規制孔60に規制ピン62が挿通される場合に、その規制ピン62が挿通される。規制孔69は、パイプ部66つまり切換支持ピン59を中心とする円弧の長孔状に形成され、規制ピン62が挿通されている状態のまま切換アーム54の整地切換位置と土引き切換位置との間での回動を可能としている。そして、切換アーム54の整地切換位置への回動時に、規制孔69の後端縁が規制ピン62に当接することにより、切換アーム54が所定の整地切換位置に規制される。
一側の切換アーム部64の前端には、切換アーム54の整地切換位置への回動時に、リンク支点板53の第2規制孔61に規制ピン62が挿通されている場合にその規制ピン62に当接して切換アーム54を所定の整地切換位置に規制する規制溝70と、規制ピン62が用いられない場合に支点補強板58に当接して切換アーム54を所定の整地切換位置に規制する規制当接部71とがそれぞれ設けられている。また、切換アーム部64の後側下部には、切換アーム54の土引き切換位置への回動時に、支点補強板58に当接して切換アーム54を所定の土引き切換位置に規制する土引き当接部72が設けられている。
また、連結リンク55は、断面略コ字形に形成されており、上端部がリンク支点ピン67を中心として切換アーム54に回動可能に連結され、下端部が左右方向の連結ピン74を中心として第2整地体33に回動可能に連結されている。連結ピン74は、第2整地体33の連結板47に設けられている各連結孔48,49,50のいずれか1つに挿通され、連結リンク55の下端部と第2整地体33とを回動可能に連結する。
また、切換手段56は、切換アーム54に回動可能に連結されるロッド76、およびこのロッド76を介して切換アーム54を前後回動させるアクチュエータ77を有している。
ロッド76は、後端部が切換アーム54の連結孔68に軸78によって回動可能に連結されている。
アクチュエータ77は、例えばモータやシリンダが用いられ、機体23の耕耘カバー27の上部に設置されている。アクチュエータ77の側部にこのアクチュエータ77によって前後方向に回動する回動アーム79が突設され、この回動アーム79にロッド76の前端側を軸方向移動可能に支持する支持部材80が取り付けられている。
ロッド76の周囲には、ロッド76の後端側と支持部材80との間にスプリング81が装着されているとともに、ロッド76の前端側と支持部材80との間にスプリング82が装着されている。
そして、切換手段56は、切換アーム54を前方に回動させた耕耘整地作業時の整地切換位置と、切換アーム54を後方に回動させた土引き作業時の土引き切換位置とに切換可能とする。
また、第1整地体32と、第2整地体33と、切換アーム54と、連結リンク55とによって四節リンク機構である仮想四節リンク機構84が構成されている。この仮想四節リンク機構84は、第1整地体回動支点41である回動支点Aと、リンク支点ピン67である回動支点Bと、第2整地体回動支点45である回動支点Cと、連結ピン74である回動支点Dとを有し、これら4つの回動支点A,B,C,Dを結んで設けられている。なお、図中には一点鎖線によって回動支点A,B,C,Dを結ぶ仮想リンクを示す。
図3に示す状態にある仮想四節リンク機構84は、回動支点A,B間の距離=回動支点C,D間の距離、回動支点A,C間の距離=回動支点B,C間の距離の関係にあり、平行リンク機構を構成している。そのため、第1整地体32が回動支点Aを中心として上下回動しても、第2整地体33の水平方向に対する角度θ1は一定に保たれる。なお、第2整地体33の水平方向に対する角度θ1は、好ましくは20°であるが、圃場条件や作業速度を考慮して0°〜30°の範囲にあることが好ましい。
さらに、仮想四節リンク機構84は、リンク支点板53と切換アーム54との連結部分に設けられる角度設定手段85、第2整地体33と連結リンク55との連結部分に設けられる選択手段86、および第1整地体32と切換アーム54(リンク支点ピン67)との間に設けられる規制手段(ロック手段)87を有している。
角度設定手段85では、耕耘整地作業時の第2整地体33の水平方向に対する角度が切り換えられる。つまり、角度設定手段85では、規制ピン62がリンク支点板53の第1規制孔60に挿通されること、第2規制孔61に挿通されること、これら第1規制孔60および第2規制孔61のいずれにも挿通されないことにより、耕耘整地作業時の第2整地体33の水平方向に対する角度が切り換えられる。
選択手段86では、第1整地体32の上下回動にかかわらず第2整地体33の水平方向に対する角度が一定である角度一定状態と、第1整地体32の上下回動に応じて第2整地体33の水平方向に対する角度が可変する角度可変状態とが選択可能となっている。つまり、選択手段86では、連結ピン74が第1連結孔48に挿通されることで角度一定状態が選択され、連結ピン74が第2連結孔49または第3連結孔50のいずれかに挿通されることで角度可変状態が選択される。
規制手段87は、第2整地体33が土引き位置にある状態で、第1整地体32および第2整地体33の後方への回動を規制する。この規制手段87は、第1整地体32の後面に設けられた規制部材88を有し、この規制部材88がリンク支点ピン67に当接して第1整地体32および第2整地体33の後方への回動を規制し、第1整地体32および第2整地体33を所定の土引き位置にロックする。
次に、農作業機1の作用等を説明する。
農作業機1をトラクタの後部の3点リンク部に連結する。また、例えば図2に示すように、農作業機1の作業幅を広げて耕耘整地作業(代掻き作業)をする場合、左右の延長作業部3を中央作業部2の側方に展開作業状態とし、さらには、必要に応じて、左右の延長整地体34を延長作業部3の側方に展開作業状態とする。
左右の延長作業部3を展開作業状態とすると、延長作業部3の第2整地体33の内端部が中央作業部2の第2整地体18の外端部に連結される。これにより、各作業部2,3の第1整地体17,32が一体に上下回動するようになるとともに、各作業部2,3の第2整地体18,33が一体に上下回動するようになる。
まず、農作業機1による耕耘整地作業(代掻き作業)について説明する。なお、以下に説明する耕耘整地作業については、図3および図4等の図面を参照して、延長作業部3での耕耘整地作業を説明するものとする。ただし、中央作業部2でも延長作業部3と同時に同様の耕耘整地作業が行われる。
図3および図4に示すように、耕耘整地作業では、アクチュエータ77によって切換アーム54が前方の整地切換位置に回動され、連結リンク55が引き上げられ、第2整地体33が整地位置に位置されている。図3および図4に示す状態では、選択手段86の連結ピン74が第2整地体33の連結板47の第1連結孔48に挿通されているため、仮想四節リンク機構84は、回動支点A,B間の距離=回動支点C,D間の距離、回動支点A,C間の距離=回動支点B,D間の距離の関係にあり、平行リンク機構を構成している。さらに、角度設定手段85の規制ピン62はリンク支点板53の第1規制孔60に挿通されており、切換アーム54は規制孔69の後端縁が規制ピン62に当接した整地切換位置にあり、第2整地体33の水平方向に対する角度は切換アーム54の整地切換位置に応じた所定の角度θ1にある。
そして、トラクタの走行により農作業機1を進行方向Fに移動させると、耕耘体24が所定の回転方向に回転しながら圃場の土を耕耘し、さらに、この耕耘体24の後方では、第1整地体32および第2整地体33が耕耘された圃場の土を整地して圃場面を平らにする。
図3は、耕耘整地作業していないときに、第1整地体32および第2整地体33が下方回動した状態にある。また、図4は、耕耘整地作業時に、耕耘体24の下部側が圃場に沈み込み、圃場面を整地する第1整地体32および第2整地体33が上方回動した状態にある。
耕耘整地作業時には、圃場面を整地する第1整地体32および第2整地体33が上方に回動し、圃場の状態によってその上方回動量が変化したり上下動するが、平行リンク機構を構成する仮想四節リンク機構84により、第1整地体32の上下回動にかかわらず第2整地体33の水平方向に対する角度θ1は一定に保たれる。
ところで、仮に、第2整地体33が自由に上下回動可能であると、圃場条件や農作業機1の作業速度によって圃場に対する第2整地体33の角度が変化し、圃場が均平に整地されない場合がある。
それに対して、第2整地体33の水平方向に対する角度が適切な一定の角度θ1に保たれることにより、圃場条件や農作業機1の作業速度にかかわらず、圃場を均平に整地できる。
次に、農作業機1による土引き作業について説明する。なお、以下に説明する土引き作業については、図5および図6等の図面を参照して、延長作業部3での土引き作業を説明するものとする。ただし、中央作業部2でも延長作業部3と同時に同様の土引き作業が行われる。
図5および図6に示すように、土引き作業では、アクチュエータ77によって切換アーム54が後方の土引き切換位置に回動され、連結リンク55が押し下げられ、第2整地体33が整地位置よりも鉛直方向に立ち上った土引き位置に位置されている。切換アーム54は、土引き当接部72が支点補強板58に当接した土引き切換位置に保持されている。切換アーム54が土引き切換位置に回動すると、仮想四節リンク機構84は、回動支点A,B間の距離<回動支点C,D間の距離の関係となり、平行リンク機構を構成しなくなる。
そして、トラクタの走行により農作業機1を進行方向Fに移動させると、第2整地体33で圃場の土を引き、圃場面を均す。
図5は、第2整地体33が土引き位置に回動した状態にある。また、図6は、土引き作業時に、第2整地体33が圃場の土によって後方に押された状態にある。第2整地体33が後方に押されると、第2整地体33が第1整地体32とともに後方に回動しようとするが、第1整地体32に設けられている規制部材88がリンク支点ピン67に当接し、第1整地体32および第2整地体33の後方への回動が規制されてロック状態となり、土引き作業が確実に行われる。
次に、耕耘整地作業に際し、角度設定手段85による第2整地体33の水平方向に対する角度の設定について説明する。
図3および図4は、角度設定手段85の規制ピン62がリンク支点板53の第1規制孔60に挿通された状態にある。この状態では、切換アーム54が前方へ回動されると、切換アーム54は規制孔69の後端縁が規制ピン62に当接した整地切換位置となる。この切換アーム54の整地切換位置に応じて、第2整地体33の水平方向に対する角度は所定の角度θ1となる。
図9は、角度設定手段85の規制ピン62がリンク支点板53の第2規制孔61に挿通された状態にある。この状態では、切換アーム54が前方へ回動されると、切換アーム54の規制溝70が規制ピン62に当接した整地切換位置となる。この整地切換位置の切換アーム54は、規制ピン62が第1規制孔60に挿通されていた場合よりも、前方への回動角度が小さくなる。この切換アーム54の整地切換位置に応じて、第2整地体33の水平方向に対する角度は、角度θ1よりも大きい角度θ2となる。なお、図9には、角度θ1の場合の第2整地体33の位置を二点鎖線で示す。
図10は、角度設定手段85の規制ピン62が第1規制孔60および第2規制孔61のいずれにも挿通されず、規制ピン62は用いられない状態にある。この状態では、切換アーム54が前方へ回動されると、切換アーム54の規制当接部71が支点補強板58に当接した整地切換位置となる。この整地切換位置の切換アーム54は、規制ピン62が第1規制孔60に挿通されていた場合よりも、前方への回動角度が大きくなる。この切換アーム54の整地切換位置に応じて、第2整地体33の水平方向に対する角度は、角度θ1よりも小さい角度θ3となる。なお、図10には、角度θ1の場合の第2整地体33の位置を二点鎖線で示す。
そして、圃場条件や農作業機1の作業速度等に応じて、角度設定手段85により第2整地体33の水平方向に対する角度を適切に設定できるため、圃場を均平に整地できる。
次に、選択手段86による、第1整地体32の上下回動にかかわらず第2整地体33の水平方向に対する角度が一定である角度一定状態と、第1整地体32の上下回動に応じて第2整地体33の水平方向に対する角度が可変する角度可変状態との選択について説明する。
図3および図4は、選択手段86の連結ピン74が第2整地体33の連結板47の第1連結孔48に挿通された状態にある。この状態では、仮想四節リンク機構84は、回動支点A,B間の距離=回動支点C,D間の距離、回動支点A,C間の距離=回動支点B,D間の距離の関係にあり、平行リンク機構を構成している。
そのため、第1整地体32の上下回動にかかわらず、第2整地体33の水平方向に対する角度は一定の角度θ1に保たれる。
図11(a)(b)は、選択手段86の連結ピン74が第2整地体33の連結板47の第2連結孔49に挿通された状態にある。この状態では、仮想四節リンク機構84は、回動支点A,B間の距離<回動支点C,D間の距離の関係となり、平行リンク機構を構成しなくなる。
そのため、第2整地体33の水平方向に対する角度は、第2整地体33が下方に回動した状態では角度θ4、第2整地体33が上方に回動した状態では角度θ5となり、角度θ4>角度θ5の関係となる。つまり、第2整地体33の水平方向に対する角度は、第2整地体33が上方に回動するほど小さくなるように変化する。
図12(a)(b)は、選択手段86の連結ピン74が第2整地体33の連結板47の第3連結孔50に挿通された状態にある。この状態では、仮想四節リンク機構84は、回動支点A,B間の距離>回動支点C,D間の距離の関係となり、平行リンク機構を構成しなくなる。
そのため、第2整地体33の水平方向に対する角度は、第2整地体33が下方に回動した状態では角度θ6、第2整地体33が上方に回動した状態では角度θ7となり、角度θ6<角度θ7の関係となる。つまり、第2整地体33の水平方向に対する角度は、第2整地体33が上方に回動するほど大きくなるように変化する。
そして、圃場条件や農作業機1の作業速度等に応じて、選択手段86により、第1整地体32の上下回動にかかわらず第2整地体33の水平方向に対する角度が一定である角度一定状態と、第1整地体32の上下回動に応じて第2整地体33の水平方向に対する角度が可変する角度可変状態とを適切に切り換えて設定できるため、圃場を均平に整地できる。
そして、以上のように構成された農作業機1によれば、耕耘整地作業時、仮想四節リンク機構84によって第2整地体33の水平方向に対する角度を一定に保つことができるため、圃場条件や農作業機1の作業速度にかかわらず、圃場を均平に整地できる等、適切な整地作業ができる。
また、仮想四節リンク機構84は、第1整地体32の第1整地体回動支点41および第2整地体33の第2整地体回動支点45を含む4つの回動支点A,B,C,Dを結んで設けられるため、仮想四節リンク機構84を簡単に構成できる。
また、仮想四節リンク機構84が備える角度設定手段85により、耕耘整地作業時の圃場条件や農作業機1の作業速度等に応じて、第2整地体33の水平方向に対する角度を適切に切り換えて設定できるため、適切な整地作業ができる。
また、仮想四節リンク機構84が備える選択手段86により、耕耘整地作業時の圃場条件や農作業機1の作業速度等に応じて、第1整地体32の上下回動にかかわらず第2整地体33の水平方向に対する角度が一定である角度一定状態と、第1整地体32の上下回動に応じて第2整地体33の水平方向に対する角度が可変する角度可変状態とを適切に選択して設定できるため、適切な整地作業ができる。
また、切換手段56により、仮想四節リンク機構84を介して、第2整地体33の位置を耕耘整地作業時の整地位置と土引き作業時の土引き位置とに切り換えることができるため、構成を簡素化できる。
また、仮想四節リンク機構84が備える規制手段87により、第2整地体33が土引き位置にある状態で、第1整地体32および第2整地体33の後方への回動を規制するため、土引き作業を確実にできる。
次に、図13ないし図17に、他の実施の形態の農作業機1が示されている。
切換手段56は、切換レバー91を用い、この切換レバー91によって第2整地体33の位置を整地位置と土引き位置とに手動で切り換える構成にしてもよい。
この構成では、リンク支点板53に、連結リンク55が左右方向のリンク支点ピン67を中心として回動可能に取り付けられるとともに、切換レバー91が左右方向のレバー支持ピン92を中心として回動可能に取り付けられている。
リンク支点板53には、リンク支点ピン67が挿通される切換溝93が形成されている。切換溝93は、前後方向に沿って長く、その前部側には例えば第1整地体回動支点41(回動支点A)を中心とする円弧状の整地切換溝部94が形成され、後部側には整地切換溝部94の後端から斜め上方に向かう土引き切換溝部95が形成されている。さらに、リンク支点板53には、切換溝93の上方にレバー支持ピン92が挿通配置され、このレバー支持ピン92の上方でかつレバー支持ピン92を中心とする同一円周上の後部および前部に整地切換孔96および土引き切換孔97がそれぞれ設けられている。
切換レバー91は、細長い板状に設けられ、中間部がレバー支持ピン92を中心としてリンク支点板53に回動可能に取り付けられている。切換レバー91の下端側には切換レバー91の長手方向に沿って長い長孔98が形成され、この長孔98にリンク支点ピン67が挿通されている。
切換レバー91の上端側には、略コ字形に形成されたトリガー99の上下両端部が切換レバー91の一側から左右方向に移動可能に挿通されている。トリガー99の両端部側と切換レバー91の一側との間には、トリガー99を切換レバー91の一側から離れる方向に付勢するスプリング100がそれぞれ装着されている。切換レバー91の他側において、この切換レバー91の他側に挿通されたトリガー99の下側端部に切換部材101が取り付けられている。この切換部材101の下端に切換ピン102が設けられている。切換ピン102は、切換レバー91に設けられた挿通孔103に左右方向に移動可能に配置され、切換レバー91の一側から出没可能とし、リンク支点板53の整地切換孔96または土引き切換孔97のいずれかに挿入される。
また、規制手段(ロック手段)87は、第1整地体32と第2整地体33との間に設けた構成でもよい。
この構成では、第2整地体33の前端部にロック部材105が取り付けられ、第2整地体33が土引き位置に回動した際に、このロック部材105のロック面106と第1整地体32のロック面107とが互いに当接するように構成されている。
そして、耕耘整地作業(代掻き作業)をする場合、図13に示すように、切換レバー91の切換ピン102が整地切換孔96に係合され、切換レバー91が整地切換位置に保持されている。この状態では、切換レバー91によってリンク支点ピン67が切換溝93の整地切換溝部94の前端側に配置されているため、第2整地体33は、整地位置にあり、また、仮想四節リンク機構84は、回動支点A,B間の距離=回動支点C,D間の距離、回動支点A,C間の距離=回動支点B,D間の距離の関係にあり、平行リンク機構を構成している。そして、第2整地体33の水平方向に対する角度は所定の角度θ8にある。
図14に示すように、耕耘整地作業時には、圃場面を整地する第1整地体32および第2整地体33が上方に回動し、圃場の状態によってその上方回動量が変化したり上下動するが、平行リンク機構を構成する仮想四節リンク機構84により、第1整地体32の上下回動にかかわらず第2整地体33の水平方向に対する角度θ8は一定に保たれる。
また、第2整地体33を整地位置から土引き位置に切り換える場合には、図16および図17に示すように、まず、トリガー99を切換レバー91と一緒に握り、トリガー99をスプリング100の付勢に抗して切換レバー91側に押し込むことにより、切換部材101を介して切換ピン102がリンク支点板53の整地切換孔96から外れる。続いて、図15に示すように、切換レバー91を前方に回動させることにより、リンク支点ピン67が切換溝93の土引き切換溝部95の後端側に移動する。続いて、トリガー99の押し込みを解除することにより、スプリング100によってトリガー99とともに移動する切換ピン102が切換レバー91の一側から突出してリンク支点板53の土引き切換孔97に挿入され、切換レバー91が土引き切換位置に保持される。
これにより、第2整地体33が土引き位置に回動される。第2整地体33が土引き位置に回動されると、第2整地体33のロック部材105のロック面106と第1整地体32のロック面107とが互いに当接し、第2整地体33が土引き位置でロックされる。
また、第2整地体33を土引き位置から整地位置に切り換える場合には、トリガー99を押し込み操作して切換ピン102をリンク支点板53の土引き切換孔97から外し、切換レバー91を後方に回動させて切換ピン102をリンク支点板53の整地切換孔96に挿入すればよい。
そして、このように構成された農作業機1においても、上述した一実施の形態と同様の作用効果が得られる。
また、切換手段56を手動切換構造とすることにより、構成を簡素化できる。
なお、切換レバー91を整地切換位置または土引き切換位置に保持する構成は、各切換孔96,97と切換ピン102とを用いた構成に限らず、他の保持構造を用いてもよい。
また、農作業機1は、中央作業部2に延長作業部3を折畳可能に設けた折畳み構造に限らず、折畳み構造のない一体形構造でもよい。