図1乃至図48を参照して、実施形態の磁気メモリ及びその制御方法について、説明する。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、同一符号を付す。また、以下の実施形態において、区別化のために数字/英字が参照符号の末尾に付された構成要素(例えば、ワード線WLやビット線BL、各種の電圧及び信号など)が相互に区別されない場合、末尾の数字/英字が省略された表記が用いられる。
(1) 第1の実施形態
図1乃至図16を参照して、第1の実施形態の磁気メモリ及びその制御方法について、説明する。
(a) 構成
図1乃至図4を参照して、本実施形態の磁気メモリの全体構成について説明する。
図1は、本実施形態の磁気メモリを含むメモリシステムの一例を示すブロック図である。
図1に示されるように、メモリシステムは、例えば、本実施形態の磁気メモリ1、メモリコントローラ7及びホストデバイス9を含む。
本実施形態の磁気メモリ(メモリデバイス)1は、メモリ素子としての磁気抵抗効果素子を含む。
磁気メモリ1は、メモリコントローラ7に直接的又は間接的に接続されている。例えば、磁気メモリ1は、ストレージクラスメモリやメインメモリを構成する。
ホストデバイス9は、メモリコントローラ7を介して、データの書き込み(記憶)、データの読み出し、及びデータの消去などのなどの各種の動作を、磁気メモリ1に要求できる。
ホストデバイス9は、例えば、プロセッサである。
メモリコントローラ7は、接続端子、コネクタ又はケーブルを介して、ホストデバイス9に直接的又は間接的に結合されている。
メモリコントローラ7は、磁気メモリ1の動作を制御できる。メモリコントローラ7は、バッファメモリ及びECC回路などを含む。
メモリコントローラ7は、ホストデバイス9からの要求に基づいて、コマンドを生成する。メモリコントローラ7は、生成したコマンドを、磁気メモリ1に送信する。
磁気メモリ1は、メモリコントローラ7からのコマンドに対応する動作を実行する。
例えば、メモリコントローラ7は、ホストデバイス9からの要求がデータの書き込みである場合において、書き込みコマンドをメモリデバイスに送信する。メモリコントローラ7は、書き込みコマンドと共に、選択すべきメモリセルのアドレス、メモリセルに書き込むべきデータ、及び、制御信号を送信する。磁気メモリ1は、書き込みコマンド及び制御信号に基づいて、書き込むべきデータを、選択されたアドレスに書き込む。
例えば、メモリコントローラ7は、ホストデバイス9からの要求がデータの読み出しである場合において、読み出しコマンドをメモリデバイスに送信する。メモリコントローラ7は、読み出しコマンドと共に、選択すべきメモリセルのアドレス及び制御信号を送信する。磁気メモリ1は、読み出しコマンド及び制御信号に基づいて、選択されたアドレスから、データを読み出す。磁気メモリ1は、読み出されたデータを、メモリコントローラ7に送信する。メモリコントローラ7は、磁気メモリ1からのデータを受信する。メモリコントローラ5は、磁気メモリ1からのデータを、ホストデバイスに送信する。
このように、磁気メモリ1は、メモリシステム内において、所定の動作を実行する。
以下において、メモリコントローラ7及びホストデバイス9の少なくとも一方は、外部デバイスとよばれる。
尚、本実施形態の磁気メモリ1は、メモリコントローラ7内又はホストデバイス9内のメモリでもよい。この場合において、磁気メモリ1は、メモリコントローラ7内のCPU、又は、ホストデバイス9内のCPU(又はコントローラ)によって、制御される。また、本実施形態において、メモリコントローラ7は、ホストデバイス9内に形成されていても良い。
図2は、本実施形態の磁気メモリの内部構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、本実施形態の磁気メモリは、メモリセルアレイ10、カラム制御回路11、ロウ制御回路12、第1及び第2の書き込み回路13A,13B、第1及び第2の読み出し回路14A,14B、デコード回路15、I/O回路16、電圧生成回路17、及び、制御回路18などを含む。
メモリセルアレイ10は、複数のビット線BL、複数のワード線WL及び複数のメモリセルMCを少なくとも含む。
複数のメモリセルMCは、メモリセルアレイ10内に、マトリックス状に配置される。
1つのメモリセルMCは、1つのワード線WLと1つのビット線BLとの間に接続される。
カラム制御回路11は、メモリセルアレイ10のカラム(例えば、ビット線BL)を制御する。カラム制御回路11に、信号CSが供給される。カラム制御回路11は、例えば、信号CSに基づいて、複数のビット線BLのうち1つのビット線を、選択状態に設定する。以下において、選択状態に設定されたビット線は、選択ビット線とよばれる。選択ビット線以外のビット線は、非選択ビット線とよばれる。
ロウ制御回路12は、メモリセルアレイ10のロウ(例えば、ワード線WL)を制御する。ロウ制御回路12に、信号RSが供給される。ロウ制御回路12は、例えば、信号RSに基づいて、複数のワード線WLのうち1つのワード線を、選択状態に設定するする。以下において、選択状態に設定されたワード線は、選択ワード線とよばれる。選択ワード線以外のワード線は、非選択ワード線とよばれる。
第1及び第2の書き込み回路(書き込み制御回路又は書き込みドライバともばれる)13A,13Bは、書き込み動作(データの書き込み)のための各種の制御を行う。
第1の書き込み回路13Aは、メモリセルアレイ10のカラム側に設けられ、第2の書き込み回路13Bは、メモリセルアレイ10のロウ側に設けられている。以下において、第1の書き込み回路13Aは、カラム側書き込み回路13Aとよばれ、第2の書き込み回路13Bはロウ側書き込み回路13Bとよばれる。
カラム側書き込み回路13Aは、選択ビット線に、書き込み動作のためのある電圧を印加する。ロウ側書き込み回路13Bは、選択ワード線に、書き込み動作のためのある電圧を印加する。
例えば、書き込み回路13A,13Bは、電圧源(又は電流源)、ラッチ回路などを有する。
第1及び第2の読み出し回路(読み出し制御回路又は読み出しドライバともよばれる)14A,14Bは、読み出し動作(データの読み出し)のための各種の制御を行う。
第1の読み出し回路14Aは、メモリセルアレイ10のカラム側に設けられ、第2の読み出し回路14Bは、メモリセルアレイ10のロウ側に設けられている。以下において、第1の読み出し回路14Aは、カラム側読み出し回路14Aとよばれ、第2の読み出し回路14Bは、ロウ側読み出し回路14Bとよばれる。
カラム側読み出し回路14Aは、選択ビット線に、読み出し動作のためのある電圧を印加する。ロウ側読み出し回路14Bは、選択ワード線に、読み出し動作のためのある電圧を印加する。
例えば、読み出し回路14A,14Bは、電圧源(又は電流源)、ラッチ回路、センスアンプ回路などを有する。
尚、書き込み回路13A,13B及び読み出し回路14A,14Bは、互いに独立な回路に限定されない。例えば、書き込み回路と読み出し回路とは、相互に利用可能な共通な構成要素を有し、1つの統合的な回路として提供されてもよい。
デコード回路15は、例えば外部デバイス(メモリコントローラまたはホストデバイス)から提供されたアドレス信号をデコードする。デコード回路15は、アドレス信号のデコード結果を、カラム制御回路11及びロウ制御回路12に出力する。
アドレス信号(例えば、物理アドレス)は、選択すべきカラムアドレス及び選択すべきロウアドレスを、含む。例えば、カラムアドレスのデコード結果が、信号CSに対応し、ロウアドレスのデコード結果が、信号RSに対応する。
I/O回路(入出力回路)16は、磁気メモリ1内におけるデータの送受信のためのインターフェイス回路である。I/O回路16は、書き込み動作時において、外部デバイスからのデータを、書き込みデータとして、書き込み回路13A,13Bに転送する。I/O回路16は、読み出し動作時において、メモリセルアレイ10から読み出し回路14Aへ出力されたデータを、読み出しデータとして、外部デバイスへ転送する。
電圧生成回路17は、外部デバイスから提供された電源電圧を用いて、メモリセルアレイ10の各種の動作のための電圧を生成する。
電圧生成回路17は、書き込み動作時において、書き込み動作のために生成された各種の電圧を、カラム側及びロウ側書き込み回路13A,13Bに出力する。電圧生成回路17は、読み出し動作時において、読み出し動作のために生成された各種の電圧を、カラム側及びロウ側読み出し回路14A,14Bに出力する。
制御回路(ステートマシーンまたは内部コントローラともよばれる)18は、制御信号及びコマンドに基づいて、磁気メモリ1内の各回路の動作を制御する。例えば、コマンドは、外部デバイスから磁気メモリ1に提供される。制御信号は、磁気メモリ1と外部でナイスとの間で相互に送受信される。
例えば、コマンドCMDは、磁気メモリ1が実行すべき動作を示す信号である。例えば、制御信号CNTは、外部デバイス7,9と磁気メモリ1との間の動作タイミング及び磁気メモリの内部の動作タイミングを制御するための信号である。
本実施形態の磁気メモリは、例えば、クロスポイント型MRAMである。本実施形態の磁気メモリにおいて、メモリセルアレイ10は、クロスポイント型の構造を有する。
(a−1)メモリセルアレイ
図3乃至図8を参照して、本実施形態のMRAMのメモリセルアレイの内部構成について説明する。
<構成>
図3及び図4を参照して、本実施形態のMRAMのメモリセルアレイの構成について説明する。
図3は、本実施形態のMRAMのメモリセルアレイの内部構成の一例を示す等価回路図である。
図3に示されるように、複数のワード線WLは、Y方向に配列される。各ワード線WLは、X方向に延在する。複数のビット線BLは、X方向に配列される。各ビット線BLは、Y方向に延在している。
メモリセルMCは、ビット線BLとワード線WLとの交差位置に配置される。メモリセルMCの一端は、ビット線BLに接続され、メモリセルMCの他端は、ワード線WLに接続されている。
X方向に配列された複数のメモリセルMCは、1つのワード線WLに共通に接続される。Y方向に配列された複数のメモリセルMCは、1つのビット線BLに共通に接続されている。
1つのメモリセルMCは、1つの磁気抵抗効果素子100及び1つのセレクタ素子200を含む。磁気抵抗効果素子100は、メモリセルMCのメモリ素子として機能する。セレクタ素子200は、メモリセルMCの選択素子として機能する。
メモリセルMCにおいて、磁気抵抗効果素子100及びセレクタ素子200は、ビット線BLとワード線WLとの間に、直列に接続されている。
図3の例において、磁気抵抗効果素子100の一端が、ビット線BLに接続され、磁気抵抗効果素子100の他端が、セレクタ素子200の一端に接続され、セレクタ素子200の他端が、ワード線WLに接続される。
尚、メモリセルMCの内部構成において、磁気抵抗効果素子100がワード線側に設けられ、セレクタ素子200がビット線側に設けられてもよい。
<メモリセル>
図4は、クロスポイント型メモリセルアレイにおけるメモリセルの構造例を示している。
図4において、1つのメモリセルのY方向に沿う模式的断面図が示されている。図4において、メモリセルMC及び配線BL,WLを覆う絶縁層の図示は、省略される。
ビット線BL及びワード線WLは、基板300の表面に対して垂直な方向(Z方向)に積層されている。例えば、ビット線BLは、ワード線WLの上方に、配置されている。ビット線BL及びワード線WLは、導電層(例えば、金属膜)である。
例えば、基板300は、半導体基板(図示せず)上に配置された絶縁層である。基板300下方の半導体基板上に、磁気メモリ1内の各回路11〜18を構成するための素子(例えば、電界効果トランジスタ、抵抗素子及び容量素子など)が、配置されてもよい。
メモリセルMCは、ビット線BLとワード線WLとの間に設けられている。
例えば、磁気抵抗効果素子100は、セレクタ素子200の上方に設けられている。例えば、導電層390が、磁気抵抗効果素子100とセレクタ素子200との間に、設けられてもよい。尚、導電層が、ビット線BLと磁気抵抗効果素子100との間、又は、ワード線WLとセレクタ素子との間に、設けられてもよい。
メモリセルアレイ10が、クロスポイント型の構造を有する場合、1ビットのメモリセルMCの面積が、4F2(F:ハーフピッチ)程度になる。このように、クロスポイント型メモリセルアレイ10は、メモリの記憶容量を大きくすることに有利な構造である。この結果として、磁気メモリの記憶密度を向上できる。
尚、ワード線WLは、基板300の表面に対して垂直方向において、ビット線BLの下方に配置されてもよい。この場合において、セレクタ素子200が、磁気抵抗効果素子100の上方に積層される。また、複数のメモリセルMCが、Z方向に積層されてもよい。
<磁気抵抗効果素子>
図5及び図6を参照して、本実施形態のMRAMのメモリセル内の磁気抵抗効果素子の構成について説明する。
図5は、本実施形態のMRAMのメモリセルにおける、磁気抵抗効果素子の構成を説明するための模式的断面図である。
図5に示されるように、磁気抵抗効果素子100は、少なくとも2つの磁性層101,102と、磁性層101,102間の非磁性層103とを含む。
例えば、磁性層101,102及び非磁性層103は、磁気トンネル接合を形成する。これによって、磁気抵抗効果素子100は、磁気トンネル接合を有する。本実施形態において、磁気トンネル接合を有する磁気抵抗効果素子100は、MTJ素子100とよばれる。MTJ素子における非磁性層103は、トンネルバリア層とよばれる。トンネルバリア層103は、例えば、MgOを含む絶縁膜である。
磁性層101は、磁化の向きが可変であり、磁性層102は、磁化の向きが不変(固定状態、固着状態)である。
本実施形態において、磁化の向きが可変な磁性層101は、記憶層(又は、自由層)101とよばれ、磁化の向きが不変な磁性層102は、参照層(又は、固定層、固着層)102とよばれる。
磁化の向きが不変とは、磁気抵抗効果素子100に記憶層101の磁化の向きを反転させる(変える)ための電圧又は電流が供給された場合に、参照層102の磁化の向きは反転しないことを、意味する。磁性層の磁化の向きが反転する電圧値又は電流値は、磁化反転しきい値とよばれる。
参照層102の磁化反転しきい値が、記憶層101の磁化反転しきい値より高い値に設定される。これによって、記憶層101の磁化の向きを反転させるために、記憶層101の磁化反転しきい値程度の電圧又は電流が磁気抵抗効果素子100に供給されたとしても、参照層102の磁化の向きは、反転しない。
磁性層104が、スペーサ層103を介して参照層102上に設けられてもよい。
磁性層104は、シフトキャンセル層104ともよばれる。シフトキャンセル層104は、参照層102の漏れ磁場を低減するための磁性層である。シフトキャンセル層104の磁化の向きは、参照層102の磁化の向きと反対である。これによって、参照層102の漏れ磁場に起因する記憶層101の磁化への悪影響(例えば、磁界シフト)が、抑制される。
参照層102の磁化の向きとシフトキャンセル層104の磁化の向きは、SAF(synthetic antiferromagnetic)構造によって、互いに反対の向きに設定される。
SAF構造において、参照層102及びシフトキャンセル層104と間のスペーサ層105によって、参照層102及びシフトキャンセル層104が、反強磁性的に結合する。
スペーサ層105は、例えば、ルテニウム(Ru)のような非磁性金属膜である。例えば、スペーサ層105に、Ruが用いられた場合、スペーサ層105の膜厚を調節することによって、参照層102及びシフトキャンセル層104における反強磁性の結合力を、強くできる。これによって、参照層102の磁化の向き及びシフトキャンセル層104の磁化の向きは、自動的に反平行な状態で安定化する。
尚、参照層102及びシフトキャンセル層104の磁化方向は、互いに反平行であればよく、図5に示される方向に限られない。
磁性層102,104及びスペーサ層105を含む積層体(SAF構造)が、全体として参照層とよばれる場合もある。
MTJ素子100の抵抗値(磁気抵抗値)は、記憶層101の磁化の向きと参照層102の磁化の向きと間の相対的な関係(磁化配列)に応じて、変化する。
図6は、本実施形態のMRAMのメモリセルに用いられる磁気抵抗効果素子の磁化配列状態(抵抗状態)を説明するための模式的図である。
図6の(a)は、MTJ素子の磁化配列が平行配列状態である場合(MTJ素子の抵抗状態が、低抵抗状態である場合)を示している。本実施形態において、MTJ素子の磁化配列の状態に関して、平行配列状態は、P状態と表記される。
図6の(a)のように、記憶層101の磁化の向きが参照層102の磁化の向きと同じである場合、MTJ素子100は、第1の抵抗値R1を有する。
図6の(b)は、MTJ素子の磁化配列が反平行配列状態である場合MTJ素子の抵抗状態が、高抵抗状態である場合)を示している。本実施形態において、MTJ素子の磁化配列の状態に関して、反平行配列状態は、AP状態と表記される。
図6の(b)のように、記憶層101の磁化の向きが参照層102の磁化の向きに対して反対である場合、MTJ素子100は、第2の抵抗値R2を有する。第2の抵抗値は、第1の抵抗値より高い。
MTJ素子100が、磁化配列状態に応じて異なる抵抗値を有することを利用して、データ(情報)が、MTJ素子100内に記憶される。例えば、第1の抵抗値又は第2の抵抗値を有するMTJ素子は、1ビット(“0”又は“1”)のデータを記憶する。
例えば、MTJ素子100の抵抗値が第1の抵抗値R1に設定された場合に、MTJ素子(P状態(低抵抗状態)のMTJ素子)100は、第1のデータ(例えば、“0”データ)を記憶する。MTJ素子100の抵抗値が第2の抵抗値R2に設定された場合に、MTJ素子(AP状態(高抵抗状態)のMTJ素子)100は、第2のデータ(例えば、“1”データ)を記憶する。
尚、MTJ素子100は、素子の構造(例えば、記憶層の数)又は磁性層の磁化の制御によって、2ビット以上のデータを記憶することができる。
<セレクタ素子>
図7及び図8を参照して、本実施形態のMRAMのメモリセル内のセレクタ素子の構成について説明する。
図7は、本実施形態のMRAMのメモリセルにおける、セレクタ素子の構成を説明するための模式的断面図である。
図7に示されるように、セレクタ素子200は、例えば、2つの電極210,220と、2つの電極210,220間の中間層230とを、少なくとも含む。
電極210,220は、例えば、金属膜である。中間層230は、絶縁膜(例えば、酸化物膜)又は半導体膜(例えば、シリコン膜)である。中間層230は、1以上の絶縁膜と1以上の半導体膜とを含む積層膜でもよい。
セレクタ素子200の抵抗状態は、電圧の印加の有無に応じて、低抵抗状態又は高抵抗状態を有する。
セレクタ素子200に電圧が印加されていない場合、セレクタ素子200は、高抵抗状態である。
所定の期間においてセレクタ素子200の電極210,220間に電圧が印加されることによって、セレクタ素子200の抵抗状態は、低抵抗状態に設定される。
低抵抗状態のセレクタ素子200は、抵抗値R3を有し、高抵抗状態のセレクタ素子200は、抵抗値R4(R4>R3)を有する。
本実施形態において、セレクタ素子200の高抵抗状態は、セレクタ素子200のオフ状態に対応し、セレクタ素子200の低抵抗状態は、セレクタ素子200のオン状態に対応する。
セレクタ素子200がオン状態に設定されることよって、メモリセルMCは、選択状態に設定される。
図8を用いて、セレクタ素子200のオン/オフのスイッチ(抵抗状態の変化)のメカニズムの例は、以下のように考えられる。
図8は、本実施形態のMRAMのメモリセルに用いられるセレクタ素子の抵抗状態(オン/オフ状態)を説明するための模式図である。
図8の(a)は、セレクタ素子200の抵抗状態が低抵抗状態である場合を説明するための模式図である。
電圧の印加によって、セレクタ素子200内にある大きさの電流が発生する。発生した電流によって、電極210の金属が、中間層230内をイオン伝導する。
これによって、図8の(a)のように、中間層230内に、金属イオンに起因する伝導パス(導電性フィラメント)290が、形成される。例えば、伝導パス290を介して、一方の電極210が、他方の電極220に電気的に接続される。尚、伝導パス290は、電極210,220に完全に接触していなくともよい。
このように、2つの電極210,220を接続する伝導パスが形成されることによって、セレクタ素子200の抵抗状態は、低抵抗状態になる。セレクタ素子200の抵抗状態が低抵抗状態になることによって、セレクタ素子200は、オン状態になる。
図8の(b)は、セレクタ素子200の抵抗状態が高抵抗状態である場合を説明するための模式図である。
セレクタ素子200に電圧が印加されない又はセレクタ素子200内に発生する電流が小さい場合において、伝導パスは、中間層230内に形成されない。
図8の(b)に示されるように、2つの電極210,220を接続する伝導パスが、中間層230内に形成されない状態が、セレクタ素子200の高抵抗状態に対応する。
尚、図8の(b)に示されるように、セレクタ素子200の高抵抗状態は、伝導パス299が、2つの電極210,220を接続せずに、中間層230内に部分的に形成される状態を、含んでもよい。
傾向として、セレクタ素子200の中間層230内における金属の伝導パスの形成のための時間は、MTJ素子の記憶層101の電子(磁化)の歳差運動の周期よりも十分に長い。それゆえ、MTJ素子100の磁化反転のための時間に比較して、セレクタ素子200のオン/オフの遷移時間(オフ状態からオン状態へ遷移する時間、又は、オン状態からオフ状態へ遷移する時間)は、非常に長い。
低抵抗状態のセレクタ素子200の抵抗値R3は、低抵抗状態のMTJ素子100の抵抗値R1より小さい。例えば、低抵抗状態のセレクタ素子200の抵抗値R3は、低抵抗状態のMTJ素子100の抵抗値の10分の1から1000分の1の範囲内の値である。
高抵抗状態のセレクタ素子200の抵抗値R4は、高抵抗状態のMTJ素子100の抵抗値R2より高い。例えば、高抵抗状態のセレクタ素子200の抵抗値R4は、高抵抗状態のMTJ素子200の抵抗値R2の10倍から1000倍の範囲内の値である。
(b)基本動作
図9乃至図11を参照して、本実施形態のクロスポイント型MRAMの基本的な動作について、説明する。
<磁気抵抗効果素子の基本動作>
図9は、本実施形態のMRAMにおける、磁気抵抗効果素子(MTJ素子)の基本的な動作例を説明するための図である。
本実施形態のMRAMにおいて、MTJ素子に対するデータの書き込み(記憶層の磁化の反転)は、MTJ素子の電圧効果を利用して実行される。
図9の(a)は、書き込み動作時におけるMTJ素子に対する電圧の印加状態の一例を示す模式図である。
図9の(a)に示されるように、電圧効果を用いた書き込み動作において、MTJ素子100に対する電圧(書き込み電圧)VWRの印加によって、MTJ素子100の磁化配列が、反平行配列状態又は平行配列状態に設定される。以下では、電圧効果を用いてMTJ素子100にデータを書き込む方式(書き込み動作)は、電圧書き込みとよばれる。本実施形態において、データの書き込みに電圧効果が利用されるMRAMは、電圧書き込み型MRAM(又は電圧トルク型MRAM)とよばれる。また、データの書き込み(書き込み動作)時において、電圧効果によって記憶層101の磁化が反転されるMTJ素子は、電圧効果型MTJ素子とよばれる。
MTJ素子100の記憶層101の磁化の向きを反転させるために、電圧源900からの書き込み電圧が、MTJ素子100に印加される。書き込み電圧に含まれるある期間の電圧(以下では、磁化反転電圧、プログラム電圧ともよばれる)の電圧値は、記憶層101の磁化反転しきい値以上であり、参照層102の磁化反転しきい値より小さい。
MTJ素子100に対するプログラム電圧の印加時において、参照層102側が高電位に設定され、記憶層101側が低電位側に設定される。
例えば、本実施形態において、図9の(a)のように、MTJ素子100に対する電圧印加時において、参照層側が高電位に設定され、記憶層側が低電位に設定される電圧印加状態は、正バイアス状態とよばれる。
以下のように、本実施形態のMRAMにおいて、電圧効果型MTJ素子100は、プログラム電圧のパルス幅を主に制御することによって、実行される。
図9の(b)は、電圧効果による磁性層の磁化の運動を模式的に示す図である。磁性層の磁化の大きさは一定である。そのため、歳差運動する磁化の軌跡は、図9の(b)に示すように球面上をたどる。
図9の(b)に示されるように、磁性層(記憶層)110は、MTJ素子100に対する電圧の印加前において、ある向きに設定された磁化(以下では、初期状態の磁化とよぶ)Ziを有する。例えば、記憶層101の初期状態の磁化Ziの向きは、記憶層101の層面に対して垂直方向(記憶層及び参照層の積層方向)に安定している。
MTJ素子100にプログラム電圧が印加された場合、記憶層101の磁気異方性エネルギーの低減によって、記憶層101の磁化の運動が励起される。これによって、記憶層101の初期状態の磁化Ziは、外部磁場Hextを軸として歳差運動を開始する。
プログラム電圧の印加が停止されるタイミングで、記憶層の磁化Zxの歳差運動は、停止し、垂直方向に安定化する。
プログラム電圧の印加の開始から印加の停止までの期間は、プログラム電圧のパルス幅に実質的に相当する。
ここで、プログラム電圧のパルス幅(プログラム電圧の印加期間)は、記憶層101の磁化の歳差運動の周期の半分程度(磁化が180°回転する期間)に設定される。これによって、記憶層101の磁化が反転した状態で、記憶層101の磁化は、層面に対して垂直方向に停止する。
このように、本実施形態のMRAMは、プログラム電圧のパルス幅が制御されることによって、記憶層の磁化の向きを反転(スイッチ)させることができる。
図9の(c)は、MTJ素子に対する印加電圧のパルス幅とMTJ素子のスイッチ確率(記憶層の磁化の反転確率)との関係の一例を示すグラフである。図9の(c)のグラフの横軸は、印加電圧のパルス幅に対応する。図9の(c)のの縦軸は、MTJ素子のスイッチ確率に対応する。MTJ素子のスイッチ確率は、MTJ素子の記憶層の磁化の向きの反転確率と実質的に同じ意味を示す。
図9の(c)に示されるように、MTJ素子のスイッチ確率は、印加電圧(プログラム電圧)のパルス幅に対して、周期的に振動(増加及び減少)するように挙動する。図9の(c)に示される傾向として、印加電圧のパルス幅(印加時間)が増加するにしたがって、スイッチ確率は、低下する。
上述のように、MTJ素子100に対するデータの書き込みにおいて、記憶層101の磁化の歳差運動が、記憶層101の磁化の向きが初期状態の向きから180°回転したタイミングで停止するように、印加電圧のパルス幅が設定される。
図9の(c)の例に基づくと、高い確率の記憶層101の磁化反転を実現するために、印加電圧のパルス幅は、パルス幅Tzに設定される。例えば、印加電圧のパルス幅Tzは、0.5ナノ秒から1.0ナノ秒程度の範囲に、設定される。パルス幅Tzは、MTJ素子に対する実験結果及びシミュレーション結果に基づいて、適宜設定される。
印加電圧のパルス幅の制御によってMTJ素子100のスイッチが実行される場合、MTJ素子100の磁化配列状態がP状態からAP状態へスイッチされるための電圧のパルス幅は、MTJ素子100の磁化配列状態がAP状態からP状態へスイッチされるための電圧のパルス幅と実質的に同じである。
また、MTJ素子の磁化配列状態がP状態からAP状態へスイッチされるための電圧の極性は、MTJ素子の磁化配列状態がAP状態からP状態へスイッチされるための電圧の極性と同じである。
このように、電圧書き込み型MRAMにおいて、書き込まれるデータは、MTJ素子100に印加される電圧の極性に依存しない。電圧効果型MTJ素子は、データの書き込みに関してユニポーラ型のメモリ素子である。
それゆえ、例えば、データの書き込みシーケンスにおいて、書き込み動作の前に、現在のMTJ素子のデータ保持状態(磁化配列状態)を判別するための動作(例えば、読み出し動作)が実行されることが、望ましい。本実施形態において、書き込みシーケンスにおけるデータの書き込み前の読み出し動作は、事前読み出し、又は、内部読み出しとよばれる。
尚、電圧値に関する参照層102の反転しきい値が電圧値に関する記憶層101の反転しきい値より高くなるように、磁性層101,102の磁気特性が設計される。そのため、書き込み電圧(プログラム電圧)VWRがMTJ素子100に印加されたとしても、参照層102の磁化は、反転しない。
<セレクタ素子の基本動作>
図10は、本実施形態のMRAMにおける、セレクタ素子の電流−電圧特性(I−V特性)の一例を示す図である。図10において、グラフの横軸は、セレクタ素子に対する印加電圧に対応する。図10において、グラフの縦軸(logスケール)は、セレクタ素子に流れる電流に対応する。
セレクタ素子200に電圧が印加されていない場合において、セレクタ素子200は、高抵抗状態である。
図10に示されるように、高抵抗状態のセレクタ素子200に対する印加電圧が、正の電圧である場合において、正の印加電圧の電圧値V2に達すると、セレクタ素子200内に流れる電流は、急峻に増大している。この電流の増大は、セレクタ素子200の抵抗値の低下を示す。
電圧値V2をしきい値として、電極210,220の金属に起因する伝導パスが中間層230内に形成される(2つの電極210,220を電気的に接続する)ため、セレクタ素子200の抵抗状態は、低抵抗状態となる。
このように、印加電圧の電圧値がある値に達すると、セレクタ素子200は、高抵抗状態から低抵抗状態に変わる。この結果として、セレクタ素子200は、オン状態に設定される。以下において、セレクタ素子200の抵抗状態が高抵抗状態から低抵抗状態に切り替わる電圧値(セレクタ素子200がオンする電圧値)は、オン電圧とよばれる。
印加電圧の電圧値が、電圧値V2から低下される。印加電圧の電圧値が、電圧値V2から電圧値V1に達すると、セレクタ素子200内に流れる電流は、急峻に減少している。この電流の減少は、セレクタ素子200の抵抗値の上昇を示す。
印加電圧の電圧値がオン電圧より小さくなると、金属のイオン伝導が抑制され、伝導パスが消失する(又は、伝導パスが短くなる)ため、セレクタ素子200の抵抗状態は、低抵抗状態から高抵抗状態に変わる。
このように、印加電圧の電圧値がオン電圧(電圧値V2)より低下すると、セレクタ素子200の抵抗状態は、低抵抗状態から高抵抗状態に変わる。この結果として、セレクタ素子200は、オフ状態に設定される。
以下において、セレクタ素子200の抵抗状態が抵抗状態から高抵抗状態に切り替わる電圧値(セレクタ素子200がオフする電圧値)は、オフ電圧とよばれる。
高抵抗状態のセレクタ素子200に対する印加電圧が、負の電圧である場合において、負の印加電圧の電圧値がある電圧値−V4に達すると、セレクタ素子200内に流れる電流は、増大している。この電流の増加は、セレクタ素子200の抵抗値の低下を示す。
このように、負の電圧の印加によって、セレクタ素子200は、高抵抗状態から低抵抗状態に変わる。この結果として、セレクタ素子200は、オン状態に設定される。
印加電圧の電圧値が、電圧値−V4から電圧値−V3に向かって増加される。印加電圧の電圧値が、電圧値−V3に達すると、セレクタ素子200内に流れる電流は減少している。この電流の減少は、セレクタ素子200の抵抗値の上昇を示す。
このように、負の電圧の印加によって、セレクタ素子200の抵抗状態は、低抵抗状態から高抵抗状態に変わる。この結果として、セレクタ素子は、オフ状態に設定される。
このように、セレクタ素子200は、正の電圧と同様に、負の電圧領域においても、オン電圧およびオフ電圧を有する。セレクタ素子200は、バイポーラ型のスイッチ素子である。
以上のように、セレクタ素子200は、印加される電圧値の制御によって、オン/オフを制御できる。
電圧値V2(又は電圧値−V4の絶対値)がMTJ素子100の磁化反転しきい値より小さくなるように、セレクタ素子200(又はMTJ素子100)の構成が、設計される。
尚、電圧の印加時にセレクタ素子200内を流れる電流の電流値が、ある電流値Iz以下に設定されることが好ましい。これによって、セレクタ素子200の破壊が、防止される。ある電流値を有する電流(又は、その電流値自体)Izは、制限電流Izとよばれる。制限電流Izは、セレクタ素子が破壊される可能性がある電流(電流値)を示す。
セレクタ素子のオン電圧/オフ電圧に関して、負の電圧値−V4の絶対値は、正の電圧値V2の絶対値と実質的に同じである場合もあるし、異なる場合もある。これと同様に、負の電圧値−V3の絶対値は、正の電圧値V1の絶対値と実質的に同じである場合もあるし、異なる場合もある。
<書き込み電圧のパルス形状>
図11は、本実施形態のクロスポイント型MRAMの動作に用いられる電圧のパルス波形が示されている。図11の電圧は、本実施形態のクロスポイント型MRAMの書き込み動作に用いられる書き込み電圧である。
図11の(a)は、メモリセルに印加される書き込み電圧(メモリセルの端子間の電位差)VWRの電圧波形(電圧値と時間との関係)を示している。図11の(b)は、メモリセルに対する書き込み電圧の印加時におけるセレクタ素子に印加される電圧(セレクタ素子の端子間の電位差)VSELの電圧波形を示している。図11の(c)は、メモリセルに対する書き込み電圧の印加時におけるMTJ素子に印加されている電圧(MTJ素子の端子間の電位差)VMTJの電圧波形を示している。
図11の(a)に示されるように、書き込み電圧VWRは、階段状のパルス波形を有している。
書き込み電圧VWRのパルス波形の第1の期間TSELにおいて、第1の電圧値VaがメモリセルMCに印加され、第1の期間TSELの後の第2の期間TMTJにおいて、第1の電圧値Vaより高い第2の電圧値VbがメモリセルMCに印加される。第1の期間TSELは、第2の期間TMTJより長い。
第1の電圧値Vaは、メモリセルMC内のセレクタ素子200をオン状態にスイッチさせる(セレクタ素子200を低抵抗状態に設定する)ための電圧値である。
第2の電圧値Vbは、メモリセルMC内のMTJ素子100をスイッチさせる(記憶層の磁化を反転させる)ための電圧値である。
本実施形態において、説明の明確化のために、書き込み電圧VWRのうちセレクタ素子200をスイッチさせるための電圧値Vaを有する部分は、スイッチ電圧VSWともよばれる。書き込み電圧VWRのうちメモリ素子の抵抗状態を変える(ここでは、MTJ素子の記憶層の磁化の向きを反転させる)ための電圧値Vbを有する部分は、プログラム電圧(又は、磁化反転電圧)VPGMともよばれる。
また、本実施形態において、説明の明確化のために、期間TSELは、スイッチ期間ともよばれ、期間TMTJは、プログラム期間ともよばれる。
本実施形態において、セレクタ素子200のスイッチ電圧VSWの電圧値は、MTJ素子100のプログラム電圧VPGMの電圧値(磁化反転しきい値)よりも低い。セレクタ素子200の抵抗状態は、MTJ素子100の抵抗状態の変化のための電圧値よりも低い電圧値で、高抵抗状態から低抵抗状態に変化する。
また、上述のように、セレクタ素子200のオフ状態からオン状態へ(又はオン状態からオフ状態へ)変わる期間は、MTJ素子100の記憶層101の磁化反転の期間より長い。
書き込み電圧VWRは、セレクタ素子200及びMTJ素子100にそれぞれ分圧されて印加されている。分圧された電圧VSEL,VMTJが、セレクタ素子200の抵抗値及びMTJ素子100の抵抗値にそれぞれ応じた電圧値を有するように、セレクタ素子200及びMTJ素子100にそれぞれ印加される。
本実施形態において、書き込み電圧の印加の開始時(例えば、時刻t1)において、セレクタ素子200は、オフ状態に設定されている。それゆえ、時刻t1において、オフ状態のセレクタ素子200の抵抗値は、MTJ素子100の抵抗値より高い。
それゆえ、図11の(b)及び(c)に示されるように、期間TSEL内の時刻t1からある時刻txまで期間において、書き込み電圧VWRの大部分は、セレクタ素子200に印加されている。例えば、セレクタ素子200に対する印加電圧VSELは、電圧値Vaを有する。
期間TSELにおいて、MTJ素子100に印加される電圧VMTJは、セレクタ素子200に印加される電圧に比較して小さい。例えば、期間TSELにおいて、電圧は、MTJ素子にほとんど印加されず、MTJ素子に対する印加電圧VMTJは、実質的にゼロである。
尚、セレクタ素子200とMTJ素子100との抵抗比に応じて、ゼロより大きい電圧値が、MTJ素子100に印加される場合もある。この場合において、MTJ素子100に印加される電圧は、セレクタ素子200に対する印加電圧より十分小さく、MTJ素子100の磁化反転しきい値より小さい電圧値を有するように、MTJ素子100及びセレクタ素子200が、設計されることが望ましい。
書き込み電圧の印加の開始からある期間が経過すると、例えば、時刻txにおいて、セレクタ素子200は、オフ状態(高抵抗状態)からオン状態(低抵抗状態)にスイッチする。これによって、オン状態のセレクタ素子200の抵抗値は、MTJ素子100の抵抗値より低くなる。
この結果として、セレクタ素子200に印加される電圧VSELの電圧値は減少し、MTJ素子100に印加される電圧VMTJの電圧値は増加する。時刻txにおいて、電圧VSELの電圧値、電圧VMTJの電圧値より低くなる。
ここで、期間TSELにおける書き込み電圧の電圧値は、MTJ素子の磁化反転しきい値より小さいので、時刻txにおいて、MTJ素子100に印加される電圧VMTJが増加しても、MTJ素子100の磁化反転は生じない。
時刻txの後、時刻t2において、書き込み電圧VWRの電圧値が、電圧値Vaから電圧値Vbに増加される。これに伴って、MTJ素子100の印加電圧VMTJの電圧値も、増加する。
これによって、MTJ素子100の印加電圧VMTJの電圧値は、記憶層101の磁化反転しきい値以上になる。それゆえ、記憶層101の磁化が歳差運動を開始し、記憶層101の磁化の回転が、生じる。
時刻t3において、書き込み電圧VWRの電圧値が、電圧値Vbから電圧値Vaに低下される。これによって、記憶層101の磁化の歳差運動は、停止する。
電圧値Vbは、時刻t2から時刻t3までの期間TMTJ中において、メモリセルMCに印加される。本実施形態のMRAMにおいて、電圧値Vbが印加される期間TMTJは、記憶層101の磁化の歳差運動の半周期に対応する長さに設定される。
それゆえ、期間TMTJ(例えば、時刻t3)において、記憶層101の磁化は、反転する。これによって、メモリセルMCにデータが、書き込まれる。
ここで、セレクタ素子200のスイッチ時間(時刻tx)がばらつく場合、MTJ素子100に対する磁化反転しきい値以上の電圧の印加の開始のタイミングが、ばらつく可能性がある。
本実施形態において、期間TSELにおいて、書き込み電圧VWRの電圧値の大きさは、MTJ素子100のプログラム電圧(磁化反転しきい値)よりも小さいため、セレクタ素子200がオンしても、記憶層101の磁化は歳差運動を開始せず、MTJ素子100の初期状態が維持される。
本実施形態において、期間TSELから期間TMTJへの遷移のタイミング(例えば、時刻t2)に、書き込み電圧VWRの電圧値が電圧値Vaから電圧値Vbに増加すると、記憶層101の磁化が歳差運動を開始する。これによって、時刻t2において、MTJ素子100のプログラム動作が始まる。
例えば、本実施形態において、電圧値Vaから電圧値Vbへの変化のタイミング(時刻t2)は、実験結果又はシミュレーションなどに基づいて、セレクタ素子200がオンするタイミング(時刻tx)のばらつきを考慮したタイミングに、設定されている。本実施形態において、電圧値Vaから電圧値Vbへの変化のタイミングは、セレクタ素子200がオンするタイミングと同じにならない。電圧値Vaから電圧値Vbへの変化のタイミングは、セレクタ素子200がオンするタイミングの後のタイミングである。
本実施形態のMRAMにおいて、セレクタ素子200がオンするタイミングとMTJ素子100にプログラム電圧(磁化反転しきい値)が印加されるタイミングとの間に、ある期間が存在する。
このように、本実施形態のMRAMは、低い電圧値によってセレクタ素子200がオン状態にスイッチされた後に、ある時間的なマージンが確保されて、高い電圧値によってMTJ素子100が磁化反転される。
尚、セレクタ素子200の状態が、時刻t3の後にオン状態からオフ状態に変化するように、セレクタ素子200の特性が、図10の特性に基づいて設計されている。
本実施形態のMRAMにおいて、書き込み電圧VWRの電圧値及び印加タイミングの制御によって、セレクタ素子200のスイッチ時間にばらつきが存在していたとしても、MTJ素子100のプログラム電圧の印加時間はばらつかない。
この結果として、本実施形態のMRAMは、MTJ素子の書き込みエラーを低減できる。
(c)具体例
図12及び図13を参照して、本実施形態のMRAMの具体例について説明する。
(c−1)書き込み回路の構成例
図12及び図13は、本実施形態のMRAMの書き込み回路の内部構成の一例を示す等価回路図である。図12は、本実施形態のMRAMにおける、カラム側書き込み回路の内部構成の一例を示す。図13は、本実施形態のMRAMにおける、ロウ側書き込み回路の内部構成の一例を示す。
図12に示されるように、カラム側書き込み回路13Aは、論理制御回路500、及び電圧出力回路510を含む。
論理制御回路500は、制御回路18からの制御信号SEL,WRを用いて、電圧出力回路510における電圧の出力タイミングを、制御する。
制御信号SELは、スイッチ電圧の印加タイミングを制御するための信号である。
制御信号WRは、MTJ素子100に対するプログラム電圧の印加タイミングを制御するための信号である。
電圧出力回路510は、論理制御回路500による制御に基づいたタイミングで、電圧値Va又は電圧値Vbを有する電圧を、カラム制御回路11に出力する。
例えば、論理制御回路500は、ORゲート130、ANDゲート134、及び、インバータ(NOTゲート)131,133A,133B,133Cを含む。
例えば、電圧出力回路510は、2つのP型電界効果トランジスタP1,P2、1つのN型電界効果トランジスタN1、及び電圧端子199a,199b,199cを含む。以下では、P型電界効果トランジスタは、P型トランジスタと表記され、N型電界効果トランジスタは、N型トランジスタと表記される。
ORゲート130の一方の入力端子に、制御信号WRが供給される。
ORゲート130の他方の入力端子に、インバータ133Aを介して、制御信号SELが供給される。
ORゲート130の出力端子は、P型トランジスタP1のゲートに接続される。
P型トランジスタP1の一端(ソース/ドレインの一方)は、電圧値Vaが印加された端子199aに接続される。
P型トランジスタの他端(ソース/ドレインの他方)は、カラム制御回路11の電圧ノード111に接続されている。
インバータ131の入力端子に、制御信号WRが供給される。インバータ131の出力端子は、P型トランジスタP2のゲートに接続されている。
P型トランジスタP2の一端(ソース/ドレインの一方)は、電圧値Vbが印加された電圧端子199bに接続されている。P型トランジスタP2の他端(ソース/ドレインの他方)は、カラム制御回路11の電圧ノード111に接続されている。上述のように、電圧値Vbは、電圧値Vaより高い。
ANDゲート134の一方の入力端子に、インバータ133Bを介して、制御信号SELが供給される。ANDゲート134の他方の入力端子に、インバータ133Cを介して、制御信号WRが供給される。
ANDゲート134の出力端子は、N型トランジスタN1のゲートに接続される。
N型トランジスタN1の一端(ソース/ドレインの一方)は、カラム制御回路11の電圧ノード111に接続される。N型トランジスタN1の他端(ソース/ドレインの他方)は、グランド電圧VSS(例えば、0V)が印加された電圧端子(グランド端子)199cに接続されている。
P型トランジスタP1のオン/オフは、ORゲート130の出力信号に基づいて、制御される。
制御信号WRの信号レベルが、“L(low)”レベルであり、制御信号SELの信号レベルが、“H(High)”レベルである場合に、ORゲートは、“L”レベルの信号を、出力する。
“L”レベルの信号によって、P型トランジスタP1は、オンする。これによって、P型トランジスタP1は、電圧値Vaの電圧をカラム制御回路11に出力する。
P型トランジスタP2のオン/オフは、インバータ131の出力信号に基づいて、制御される。
制御信号WRの信号レベルが“H”レベルである場合に、インバータ131は、“L”レベルの信号を出力する。
“L”レベルの信号によって、P型トランジスタP2は、オンする。これによって、P型トランジスタP2は、電圧値Vbの電圧を、カラム制御回路11に出力する。
N型トランジスタN1のオン/オフは、ANDゲート134の出力信号に基づいて、制御される。
制御信号SELの信号レベル及び制御信号WRの信号レベルの少なくとも一方の信号レベルが“H”レベルである場合に、ANDゲート134は、“L”レベルの信号を出力する。
“L”レベルの信号によって、N型トランジスタN1は、オフする。
制御信号SEL及び制御信号WRの両方が“L”レベルである場合に、ANDゲート134は、“H”レベルの信号を出力する。
“H”レベルの信号によって、N型トランジスタN1は、オンする。これによって、N型トランジスタN1は、グランド端子199cを、カラム制御回路11に接続できる。オン状態のN型トランジスタN1は、グランド電圧VSSを、カラム制御回路11に出力する。
この結果として、カラム側書き込み回路13Aは、制御信号SEL及び制御信号WRの両方が“L”レベルである時に、選択ビット線BLiを放電することが可能になる。
例えば、制御信号SEL及び制御信号WRの両方が同時に“H”レベルであったとしても、電圧値Vbがカラム側書き込み回路13Aからカラム制御回路11へ出力されるように、論理制御回路500及び電圧出力回路510の各素子が設計されている。それゆえ、図12の書き込み回路13Aは、制御信号SELの立ち下りの時刻と制御信号WRの立ち上りの時刻とが同期されなくともよい。
また、ロウ側書き込み回路13Bの出力電圧に応じて、電圧端子199a,199bの電圧値は、適宜変更されてもよい。
図13に示されるように、ロウ側書き込み回路13Bは、論理制御回路520及び電圧出力回路530を含む。
論理制御回路520は、制御回路18からの制御信号SEL,WRを用いて、電圧出力回路530における電圧の出力タイミングを、制御する。
電圧出力回路530は、論理制御回路520による制御に基づいたタイミングで、電圧をロウ制御回路12に出力する。
例えば、論理制御回路520は、ORゲート135を含む。
例えば、電圧出力回路530は、1つのN型トランジスタN1を含む。
ORゲート135の一方の入力端子に、制御信号WRが、供給される。ORゲート135の他方の入力端子に、制御信号SELが、供給される。
ORゲート135の出力端子は、N型トランジスタN2のゲートに供給される。
N型トランジスタN2の一端(ソース/ドレインの一方)は、ロウ制御回路12の電圧ノード121に接続される。
N型トランジスタN2の他端(ソース/ドレインの他方)は、グランド端子199dに接続される。
N型トランジスタN2のオン/オフは、ORゲート135の出力信号に基づいて、制御される。
制御信号WRの信号レベル及び制御信号SELの信号レベルの少なくとも一方が“H”レベルである場合に、ORゲート135は、“H”レベルの信号を出力する。
“H”レベルの信号によって、N型トランジスタN2は、オンする。これによって、N型トランジスタN2は、グランド電圧VSSを、ロウ制御回路12に出力する。
(c−2)動作例
図14乃至図16を参照して、本実施形態のMRAMの動作例の一例について説明する。
図14は、本実施形態のMRAMの動作例を説明するためのフローチャートである。
図15は、本実施形態のMRAMの動作時における、メモリセルアレイ内の配線の電位状態を模式的に示す図である。
図16は、本実施形態のMRAMの動作例を説明するためのタイミングチャートである。図16において、本実施形態のMRAMの書き込み動作時における、制御信号の信号レベル及び各配線の電圧の変化が、示されている。
ここでは、本実施形態のMRAMの動作例を説明するために、図1乃至図13なども適宜用いられる。
図14に示されるように、本実施形態のMRAMの書き込み動作を含むシーケンスが、開始される(ステップST0)。
例えば、本実施形態のMRAMの書き込みシーケンスは、書き込みコマンド、各種の制御信号、アドレス、及び、メモリセルに書き込むべきデータ(以下では、書き込みデータとよばれる)が、外部デバイスから本実施形態のMRAMに供給されることによって、開始される。
例えば、書き込みコマンド及び制御信号は、制御回路18に供給される。制御回路18は、書き込みコマンド及び制御信号に基づいて、MRAM1内の各回路11〜17の動作を制御する。書き込みデータは、例えば、I/O回路16を介して、書き込み回路13A,13B(及び読み出し回路14A,14B)に供給される。
アドレスは、デコード回路15に供給される。デコード回路15は、アドレスをデコードする。デコード回路15は、デコード結果を、選択カラム信号CS及び選択ロウ信号RS(及び非選択信号)として、カラム制御回路11及びロウ制御回路12に供給する。
データの書き込みの前に、事前読み出し(内部読み出し)が書き込み対象の選択セルに対して実行される(ステップST1)。
少なくとも選択セル内のデータが、読み出し回路14A,14B(又は書き込み回路13A,13B)によって読み出される。例えば、読み出されたデータが、読み出し回路14A内のラッチ回路(図示せず)内に、一時的に保持される。読み出されたデータが、書き込みデータと比較され、読み出されたデータと書き込みデータとが同じであるか否か判定される(ステップST2)。
書き込みデータと読み出されたデータとが同じである場合、書き込み動作の実行無し(メモリセルに対する書き込み電圧の印加無し)に、書き込みシーケンスは、終了する。
書き込むべきデータと読み出されたデータとが異なる場合、選択セルに対するデータの書き込み(プログラム動作)が実行される(ステップST3)。これによって、書き込み電圧VWRの印加が、実行される。
図15に示されるように、例えば、選択ビット線BLiに、書き込み電圧VWRが印加され、選択ワード線WLiに、0Vの電圧(グランド電圧)が印加される。このように、本実施形態において、選択ビット線BLiが、書き込み電圧VWRの印加時の高電位側に設定され、選択ワード線WLiが、書き込み電圧VWRの印加時の低電位側に設定されている。
本実施形態において、選択ビット線BLi以外のビット線(非選択ビット線)BLxの電位状態は、フローティング状態に設定される。これと同様に、選択ワード線WLi以外のワード線(非選択ワード線)WLxの電位状態は、フローティング状態に設定される。この場合において、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに電圧が印加されないので、メモリセルアレイ10内の消費電力の発生を、抑制できる。
尚、この場合において、非選択セルMCx内のセレクタ素子200が、書き込み電圧VWRの回り込み電圧(又は回り込み電流)によってオンしないように、セレクタ素子200が設計されることが望ましい。
書き込み回路13A,13Bの制御によって、階段状のパルス波形の書き込み電圧VWRが、選択ビット線BLi及び選択ワード線WLiを介して、メモリセル(選択セル)MCiに印加される。
図16に示されるように、書き込み電圧VWRの印加の開始前の時刻t0において、選択カラム信号CSの信号レベル及び選択ロウ信号RSの信号レベルが、例えば、デコード回路15のデコード結果に基づいて、“L”レベルから“H”レベルに遷移される。“H”レベルの選択カラム信号CS及び“H”レベルの選択ロウ信号RSによって、選択ビット線BLi及び選択ワード線WLiが、選択状態に設定される。これによって、選択ビット線BLi及び選択ワード線WLiは、電圧が印加されることが可能な状態になる。
例えば、デコード回路15は、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxの電位の制御のために、“L”レベルの信号を、非選択信号として、カラム制御回路11及びロウ制御回路12に出力できる。これによって、非選択ビット線BL及び非選択ワード線WLは、電気的にフローティング状態に設定される。
時刻t0において、制御信号SELは、“L”レベルに設定され、制御信号WRは、“L”レベルに設定される。
カラム側書き込み回路13Aは、制御信号SEL,WRによって、以下のように、動作する。
“L”レベルの制御信号WRが、インバータ131に供給される。
インバータ131は、“H”レベルの信号を、P型トランジスタP2のゲートに出力する。P型トランジスタP2は、“H”レベルの信号によって、オフする。
オフ状態のP型トランジスタP2によって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、電圧端子199bから電気的に分離される。
ORゲート130に、制御信号SELの反転信号が、インバータ133Aを介して、供給される。ORゲート130は、“L”レベルの制御信号WRと“H”レベルの反転信号とによって、“H”レベルの信号を、P型トランジスタP1のゲートに出力する。P型トランジスタP1は、“H”レベルの信号によって、オフする。
オフ状態のP型トランジスタP1によって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、電圧端子199aから電気的に分離される。
“L”レベルの制御信号SEL,WRが、インバータ133B,133Cにそれぞれ供給される。ANDゲート134の一方の入力端子に、“H”レベルの信号が供給され、ANDゲート134の他方の入力端子に、“H”レベルの信号が供給される。これによって、ANDゲート134は、“H”レベルの信号を、N型トランジスタN1のゲートに出力する。N型トランジスタNT1は、“H”レベルの信号によって、オンする。
オン状態のN型トランジスタN1を介して、カラム制御回路11の電圧ノードは、グランド端子199cに電気的に接続される。これによって、選択ビット線BLiは、放電される。
ロウ側書き込み回路13Bは、制御信号WR,SELによって、以下のように、動作する。
ORゲート135は、“L”レベルの制御信号WR,SELによって、“L”レベルの信号を、N型トランジスタN2のゲートに出力する。
N型トランジスタN2は、“L”レベルの信号によって、オフする。
オフ状態のN型トランジスタN2によって、ロウ制御回路12の電圧ノード121は、フローティング状態になる。
時刻t1において、制御回路18は、セレクタ素子200をオン状態に設定するために、制御信号SELの信号レベルを、“L”レベルから“H”レベルに変える。制御信号SELの信号レベルは、“H”レベルに設定される。制御信号WRの信号レベルは、“L”レベルに維持される。
カラム側書き込み回路13は、時刻t1において、“H”レベルの制御信号SELが供給されると、以下のように、動作する。
インバータ131は、“H”レベルの信号(信号WRの反転信号)をP型トランジスタP2のゲートに出力する。
これによって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、オフ状態のP型トランジスタP2によって、電圧端子199bから電気的に分離される。
“H”レベルの制御信号SELが、インバータ133Bに供給され、“L”レベルの制御信号WRがインバータ133Cに供給される。“L”レベルの信号(信号SELの反転信号)と“H”レベルの信号(信号WRの反転信号)が、ANDゲート134に供給される。それゆえ、ANDゲート134は、“L”レベルの信号を、N型トランジスタN1のゲートに出力する。N型トランジスタN1は、“L”レベルの信号によって、オフする。これによって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、グランド端子199cから電気的に分離される。
インバータ133Aに、“H”レベルの制御信号SELが供給される。
ORゲート130に対して、制御信号SELの反転信号が、インバータ133Aを介して供給される。“L”レベルの制御信号WRと“L”レベルの反転信号とが、ORゲート130に供給される。
それゆえ、ORゲート130は、“L”レベルの信号を、P型トランジスタP1のゲートに出力する。P型トランジスタP1は、“L”レベルの信号によって、オンする。
これによって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、オン状態のP型トランジスタP1によって、電圧端子199aに電気的に接続される。
この結果として、電圧値Vaの電圧が、電圧端子199aからカラム制御回路11の電圧ノード111に印加される。
ロウ側書き込み回路13Bは、時刻t1において、“H”レベルの制御信号SELが供給されると、以下のように、動作する。
“H”レベルの制御信号SELと“L”レベルの制御信号WRとが、ORゲート135に供給される。それゆえ、ORゲート135は、“H”レベルの信号を、N型トランジスタN2のゲートに出力する。
N型トランジスタN2は、“H”レベルの信号によって、オンする。
これによって、ロウ制御回路12の電圧ノード121は、オン状態のN型トランジスタN2によって、グランド端子199dに電気的に接続される。
このように、“H”レベルの制御信号SEL及び“L”レベルの制御信号WRによって、カラム制御回路11は、電圧値Vaの電圧を選択ビット線BLiに印加し、ロウ制御回路12は、グランド電圧VSS(0V)を選択ワード線WLiに印加する。
この結果として、選択ビット線BLiと選択ワード線WLiとの電位差Vaが、書き込み電圧の電圧値として、選択セルMCに印加される。
ここで、上述のように、オフ状態のセレクタ素子200の抵抗値は、MTJ素子100の抵抗値より高い。それゆえ、書き込み電圧VWR(電圧値Va)の大部分は、セレクタ素子200に、印加される。
それゆえ、書き込み電圧VWRのうちセレクタ素子200に分圧された電圧が、スイッチ電圧として、セレクタ素子200に印加される。
書き込み電圧におけるスイッチ電圧は、時刻t1から時刻t2までの期間TSELにおいて、選択セルに印加される。スイッチ電圧の電圧値Vaは、セレクタ素子200のオン電圧以上であり、MTJ素子100の磁化反転しきい値より小さい。
期間TSELにわたるスイッチ電圧VSWの印加によって、セレクタ素子200の抵抗状態は、期間TSEL内のある時刻txで、高抵抗状態から低抵抗状態に変わる。これによって、セレクタ素子200は、オン状態に設定される。
セレクタ素子200がオフ状態からオン状態にスイッチしてからある期間が経過した後、MTJ素子100に対するデータの書き込み(プログラム動作)が、実行される。
時刻t2において、制御回路18は、MTJ素子100のプログラム動作(記憶層の磁化反転)のために、制御信号SELの信号レベルを、“H”レベルから“L”レベルに変える。これと実質的に同時に、制御回路19は、制御信号WRの信号レベルを、“L”レベルから“H”レベルに変える。時刻t2は、セレクタ素子200がオンした時刻txの後の時刻である。
カラム側書き込み回路13Aは、時刻t2において、“H”レベルの制御信号WRが供給されると、以下のように、動作する。
“H”レベルの制御信号WRが、インバータ131に供給される。インバータ131は、“L”レベルの信号を、P型トランジスタP2のゲートに供給する。“L”レベルの信号によって、P型トランジスタP2はオンする。
これによって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、オン状態のP型トランジスタP2によって、電圧端子199bに電気的に接続される。
“L”レベルの制御信号SELが、インバータ133Bに供給され、“H”レベルの制御信号WRが、インバータ133Cに供給される。“H”レベルの信号(信号SELの反転信号)と“L”レベルの信号(信号WRの反転信号)とが、ANDゲート134に供給される。それゆえ、ANDゲート134は、“L”レベルの信号を、N型トランジスタN1のゲートに出力する。N型トランジスタN1は、“L”レベルの信号によって、オフする。
これによって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、オフ状態のN型トランジスタN1によって、グランド端子199cから電気的に分離される。この時において、例えば、電圧ノード111は、グランド端子199cに対してフローティング状態になる。
ORゲート130に対して、制御信号SELの反転信号が、インバータ133Aを介して供給される。それゆえ、“H”レベルの制御信号WRと“H”レベルの信号とが、ORゲート130に供給される。
それゆえ、ORゲート130は、“H”レベルの信号を、P型トランジスタP1のゲートに出力する。P型トランジスタP1は、“H”レベルの信号によって、オフする。
オフ状態のP型トランジスタP1によって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、電圧端子199aから電気的に分離される。これによって、電圧端子199aからカラム制御回路11への電圧の供給は、遮断される。
この結果として、電圧値Vbの電圧が、電圧端子199bからカラム制御回路11の電圧ノード111に印加される。
このように、時刻t2において、カラム側書き込み回路13Aの出力電圧の電圧値は、電圧値Vaから電圧値Vbへ連続的に変わる。
ロウ側書き込み回路13Bは、時刻t2において、“H”レベルの制御信号WRが供給されると、以下のように、動作する。
“H”レベルの制御信号WRと“L”レベルの制御信号SELとが、ORゲート135に供給される。それゆえ、ORゲート135は、“H”レベルの信号を、N型トランジスタN2のゲートに出力する。N型トランジスタN2は、“H”レベルの信号によって、オンする。
オン状態のN型トランジスタN2によって、ロウ制御回路12の電圧ノード121は、グランド端子199dに電気的に接続される。
このように、カラム制御回路11は、電圧値Vb(Vb>Va)の電圧を選択ビット線BLiに印加し、ロウ制御回路12は、グランド電圧VSS(0V)を選択ワード線WLiに印加する。
この結果として、選択セルMCiに、選択ビット線BLiと選択ワード線WLiとの電位差Vbが、書き込み電圧VWRの電圧値として、印加される。
本実施形態において、セレクタ素子200がオンされた後にある期間が経過してから、書き込み電圧の電圧値が上昇する。
ここで、セレクタ素子200の抵抗値は、MTJ素子の抵抗値より十分低い。それゆえ、書き込み電圧VWRの大部分(電圧値Vb)は、MTJ素子100に、印加される。
それゆえ、書き込み電圧VWRのうちMTJ素子100に分圧された電圧が、プログラム電圧として、MTJ素子100に印加される。
書き込み電圧VWRのプログラム電圧は、時刻t2から時刻t3までの期間T2において、選択セルに印加される。プログラム電圧の電圧値Vbは、MTJ素子100の磁化反転しきい値以上の電圧値である。例えば、電圧値Vbは、セレクタ素子200内を流れる電流が制限電流以下となるように設定された値であることが、望ましい。
プログラム電圧の印加によって、MTJ素子100の記憶層101の磁化は、歳差運動を開始する。
時刻t3において、制御信号WRの信号レベルが、“H”レベルから“L”レベルに遷移される。制御信号SELの信号レベルは、“L”レベルに維持されている。
カラム側書き込み回路13Aは、時刻t3において、制御信号SEL,WRによって、以下のように、動作する。
“L”レベルの制御信号WRが、インバータ131に供給される。インバータ131は、“H”レベルの信号を、P型トランジスタP1のゲートに供給する。“H”レベルの信号によって、P型トランジスタP1はオフする。
オフ状態のP型トランジスタP1によって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、電圧端子199bから電気的に分離される。
“L”レベルの制御信号SELが、インバータ133Bに供給され、“L”レベルの制御信号WRが、インバータ133Cに供給される。2つの“H”レベルの信号が、ANDゲート134に供給される。それゆえ、ANDゲート134は、“H”レベルの信号を、N型トランジスタN1のゲートに出力する。“H”レベルの信号によって、N型トランジスタN1はオンする。
オン状態のN型トランジスタN1によって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、グランド端子199cに電気的に接続される。
“L”レベルの制御信号WRと“H”レベルの反転信号とが、ORゲート130に供給される。それゆえ、ORゲート130は、“H”レベルの信号を、P型トランジスタP2のゲートに出力する。“H”レベルの信号によって、P型トランジスタP2はオフする。
オフ状態のP型トランジスタP2によって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、電圧端子199aから電気的に分離される。
この結果として、グランド端子199cが、カラム制御回路11の電圧ノードに接続される。これによって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、放電される。
ロウ側書き込み回路13Bは、時刻t3において、制御信号SEL,WRによって、以下のように、動作する。
“L”レベルの制御信号WRと“L”レベルの制御信号SELとが、ORゲート135に供給される。
それゆえ、ORゲート135は、“L”レベルの信号を、N型トランジスタN2のゲートに出力する。“L”レベルの信号によって、N型トランジスタN2はオフする。
オフ状態のN型トランジスタN2によって、ロウ制御回路12の電圧ノード121は、フローティング状態になる。
このように、時刻t3において、選択ビット線BLiの電圧値は、電圧値Vbから0Vに低下する。選択ワード線WLiは、フローティング状態になる。
上述のように、時刻t2から時刻t3における電圧値Vbを有する電圧の印加期間(プログラム時間)TMTJは、記憶層101の磁化反転の半周期と実質的に同じ長さに設定されている。
それゆえ、選択セルMC内のMTJ素子100において、記憶層101の磁化の向きは、電圧値Vbの電圧の印加前の状態に対して反転する。
これによって、MTJ素子100の磁化配列状態(抵抗状態)が、書き込みデータに対応する状態に変化する。この結果として、本実施形態のMRAMにおいて、書き込み動作時に、データが、選択セルMCi内に書き込まれる。
時刻t4において、選択信号CS,RSの信号レベルが、“H”レベルから“L”レベルに遷移される。これによって、カラム制御回路11は、選択ビット線BLiを非活性化し、ロウ制御回路12は、選択ワード線WLiを非活性化する。この結果として、選択セルMCiは、非活性化する。
例えば、セレクタ素子200は、時刻t3(又は時刻t4)の後に、オン状態からオフ状態に変わる。
また、カラム制御回路11は、非選択ビット線BLiのフローティング状態を解消し、ロウ制御回路12は、非選択ワード線WLxのフローティング状態を解消する。
制御回路18は、書き込み電圧の印加の終了を、検知する。制御回路18は、コマンドに対応した書き込み動作のための各回路の制御を、終了する。例えば、制御回路18は、書き込み動作の終了を、外部デバイスに通知できる。
これによって、本実施形態のMRAMの書き込み動作が、終了する。
以上のように、本実施形態のMRAMの書き込み動作が、実行される。
(d)まとめ
本実施形態の磁気メモリは、ビット線及びワード線間に接続されたメモリセルを有する。メモリセルは、セレクタ素子と磁気抵抗効果素子とを含む。セレクタ素子と磁気抵抗効果素子とは、ビット線及びワード線間に直列接続される。
本実施形態の磁気メモリ(例えば、MRAM)において、書き込み動作時の書き込み電圧は、第1の期間において第1の電圧値を有し、第1の期間の後の第2の期間において第2の電圧値を有する。第2の電圧値は、第1の電圧値より高い。
第1の電圧値は、セレクタ素子をオン状態に設定するための電圧値である。
第2の電圧値は、磁気抵抗効果素子の記憶層の磁化反転しきい値以上の電圧値である。第1の期間において、セレクタ素子は、オン状態に設定される。第2の期間において、磁気抵抗効果素子の記憶層の磁化の向きが、反転される。第2の期間は、第1の期間より短い。
本実施形態家の磁気メモリにおいて、磁気抵抗効果素子は、電圧効果型の磁気抵抗効果素子である。それゆえ、磁気抵抗効果素において、記憶層の磁化の反転は、第2の期間の大きさに依存する。
本実施形態の磁気メモリは、セレクタ素子がオンしてからある期間が経過した後に、磁化反転しきい値以上の電圧を、MTJ素子に印加することができる。
それゆえ、本実施形態の磁気メモリは、セレクタ素子がオンする(高抵抗状態から低抵抗状態へスイッチする)タイミングがセレクタ素子(メモリセル)毎にばらついていたとしても、磁気抵抗効果素子に対する磁化反転しきい値以上の電圧(プログラム電圧)の印加の開始のタイミングが変動するのを、抑制できる。
これによって、本実施形態の磁気メモリは、プログラム電圧のパルス幅が記憶層の磁化反転のために設定された値からずれるのを、防止できる。このように、本実施形態の磁気メモリは、記憶層の磁化反転のために設定されたパルス幅のプログラム電圧を、メモリセルに比較的安定的に印加できる。
この結果として、本実施形態の磁気メモリは、電圧効果型磁気抵抗効果素子を用いた磁気メモリのデータ書き込みに関するエラー発生率を、低減できる。
したがって、本実施形態の磁気メモリは、電圧効果型磁気抵抗効果素子を用いたメモリセルに対するデータの書き込みの信頼性を、向上できる。
以上のように、本実施形態の磁気メモリは、メモリの特性を向上できる。
(2) 第2の実施形態
図17乃至図23を参照して、第2の実施形態の磁気メモリ(例えば、MRAM)及びその制御方法について、説明する。
(a)基本例
図17は、本実施形態のMRAMの書き込み動作時におけるメモリセルアレイ内の各配線の電位状態を示す模式図である。
図17に示されるように、本実施形態において、選択セルに対する書き込み動作時において、電圧VINH1が、非選択ビット線BLxに印加され、電圧VINH2が、非選択ワード線WLxに印加される。
これによって、本実施形態のMRAMは、書き込み動作時における非選択セルMCxの誤動作(例えば、非選択セルに対する誤書き込み)を抑制できる。
以下において、書き込み動作時(及び読み出し動作時)において、非選択ワード線及び非選択ビット線に印加される電圧は、非選択電圧とよばれる。
図18は、本実施形態のMRAMにおける、書き込み動作時における非選択ビット線及びワード線の非選択電圧を示す電圧波形図である。図18において、書き込み電圧VWRのパルス波形、ビット線に印加される非選択電圧VINH1のパルス波形、及び、ワード線に印加される非選択電圧VINH2のパルス波形が示されている。
図18に示されるように、非選択電圧VINH1,VINH2は、矩形状のパルス形状を有する。非選択電圧VINH1,VINH2の電圧値は、書き込み電圧VWRの印加期間において、一定である。非選択電圧VINH1は、電圧値Vi1を有し、非選択電圧VINH2は、電圧値Vi2を有する。
電圧値Vi1,Vi2は、セレクタ素子のオン電圧(例えば、電圧値Va)より小さい電圧値である。
非選択ビット線BLxと非選択ワード線WLxとの間に接続された非選択セルMCxに対して、非選択ビット線BLxの電圧と非選択ワード線WLxの電圧との電位差(VINH1−VINH2)が、印加される。
非選択ビット線BLxと選択ワード線WLiとの間に接続された非選択セル(以下において、選択ワード線共有セルともよばれる)MCxに対して、非選択ビット線BLxの電圧と選択ワード線WLiの電圧(ここでが、“VWL”と表記する)との電位差(VINH1−VWL)が、印加される。
選択ビット線BLiと非選択ワード線WLxとの間に接続された非選択セル(以下において、選択ビット線共有セルともよばれる)MCxに対して、選択ビット線BLiの電圧(ここでが、“VBL”と表記する)と非選択ワード線WLxの電圧との電位差(VBL−VINH2)が印加される。
以下の説明において、選択ビット線に接続された非選択セル(選択ビット線共有セル)及び選択ワード線に接続された非選択セル(選択ワード線共有セル)が区別されない場合において、選択ビット線共有セル及び選択ワード線共有セルは、半選択セルともよばれる。また、選択ビット線BLi及び選択ワード線WLiに接続されない非選択セルは、区別化のために、非共有セルともよばれる。
例えば、非選択電圧VINH1,VINH2の立ち上りの開始の時刻(タイミング)taは、書き込み電圧VWRの立ち上りの開始の時刻t1より早い。
非選択電圧VINH1,VINH2の立ち下りの開始の時刻tbは、書き込み電圧VWRの立ち下りの開始の時刻t3より遅い。
この結果として、非選択電圧VINH1,VINH2が非選択ビット線/ワード線BLx,WLxに印加されている期間TAは、書き込み電圧VWRが選択ビット線/ワード線BLi,WLiに印加されている期間(時刻t1から時刻t3までの期間)より長い。
この場合において、書き込み電圧VWRの電圧値が0Vであっても、非選択セルMCxに対する印加電圧の電圧値(電位差)は、電圧値Vi1、電圧値Vi2又は電圧値Vi1−Vi2となる。それゆえ、本実施形態のMRAMは、書き込み電圧VWRが、選択ビット線BLi及び選択ワード線WLiに印加されていない場合であっても、非選択セルの誤動作を防止することができる。
(b)具体例
図19乃至図21を参照して、本実施形態のMRAMの具体例について説明する。
<回路例>
図19及び図20は、本実施形態のMRAMの書き込み回路の内部構成の一例を示す等価回路図である。図19は、本実施形態のMRAMにおける、カラム側書き込み回路の内部構成の一例を示す。図20は、本実施形態のMRAMにおける、ロウ側書き込み回路の内部構成の一例を示す。
図19に示されるように、カラム側書き込み回路13Aは、P型トランジスタP3、及び、インバータ139Aを、さらに含む。
P型トランジスタP3の電流経路の一端は、電圧端子199eに接続されている。電圧端子199eに、電圧値Vi1が印加されている。P型トランジスタP3の電流経路の他端は、カラム制御回路11の第2の電圧ノード119に接続されている。
P型トランジスタP3のゲートは、インバータ139Aの出力端子に接続されている。
制御信号INH1は、インバータ139Aを介して、P型トランジスタP3のゲートに供給される。制御信号INH1の信号レベルに応じて、P型トランジスタP3は、オン又はオフする。
オン状態のP型トランジスタP3によって、電圧値Vi1の非選択電圧VINH1が、カラム制御回路11を介して、非選択ビット線BLxに印加される。
図20に示されるように、ロウ側書き込み回路13Bは、P型トランジスタP4、及び、インバータ139Bを含む。
P型トランジスタP4の電流経路の一端は、電圧端子199fに接続される。電圧端子199eに、電圧値Vi1が印加される。P型トランジスタP4の電流経路の他端は、ロウ制御回路12の第2の電圧ノード129に接続される。
P型トランジスタP4のゲートは、インバータ139Bの出力端子に接続される。
制御信号INH2は、インバータ139Bを介して、P型トランジスタP4のゲートに供給される。制御信号INH2の信号レベルに応じて、P型トランジスタP3は、オン又はオフする。
オン状態のP型トランジスタP3によって、電圧値Vi2の非選択電圧VINH2が、ロウ制御回路12を介して、非選択ワード線WLxに印加される。
<動作例>
図21は、本実施形態のMRAMの動作例を説明するためのタイミングチャートである。
選択ビット線BLi及び選択ワード線WLiに対する電圧の印加は、上述の例(例えば、図16)と同様に、制御信号SEL,WRによって、制御される。
非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxの電圧の印加は、制御信号INHc,INHrによって、制御される。
図21に示されるように、時刻t0において、選択ビット線BLi及び選択ワード線WLiに対して、選択信号CS,RSが“H”レベルに設定される。例えば、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに対して、選択信号は、“L”レベルに設定される。
時刻t0において、制御信号INH1,INH2の信号レベルは、“L”レベルである。
カラム側書き込み回路13Aにおいて、インバータ139Aを介して、“H”レベルの信号が、P型トランジスタP3のゲートに入力される。これによって、P型トランジスタP3は、オフしている。カラム制御回路11の電圧ノード119は、オフ状態のP型トランジスタP3によって、電圧端子199eから電気的に分離される。
ロウ側書き込み回路13Bにおいて、インバータ139Bを介して、“H”レベルの信号が、P型トランジスタP4のゲートに入力される。これによって、P型トランジスタP3は、オフしている。ロウ制御回路12の電圧ノード129は、オフ状態のP型トランジスタP4によって、電圧端子199fから電気的に分離される。
このように、時刻t0において、非選択ビット線BLiの電位及び非選択ワード線WLxの電位は、0V(又は、フローティング状態)に設定される。
時刻t0と時刻t1との間の時刻taにおいて、制御回路18は、制御信号INH1,INH2の信号レベルを、“L”レベルから“H”レベルに遷移する。
カラム側書き込み回路13Aにおいて、インバータ139Aに“H”レベルの信号INH1が供給される。インバータ139Aは、“L”レベルの信号を、P型トランジスタP3のゲートに出力する。“L”レベルの信号によって、P型トランジスタP3はオンする。
オン状態のP型トランジスタP3を介して、電圧値Vi1を有する非選択電圧VINH1が、カラム制御回路11の電圧ノード119に印加される。カラム制御回路11は、非選択電圧VINH1を、非選択ビット線BLxに印加する。
ロウ側書き込み回路13Bにおいて、インバータ139Bに“H”レベルの信号INH2が入力される。インバータ139Bは、“L”レベルの信号を、P型トランジスタP4のゲートに出力する。“L”レベルの信号によって、P型トランジスタP4はオンする。
オン状態のP型トランジスタP4を介して、電圧値Vi2を有する非選択電圧VINH2が、ロウ制御回路12の電圧ノード129に印加される。ロウ制御回路12は、非選択電圧VINH2を、非選択ワード線WLxに印加する。
第1の実施形態で述べたように、時刻t1において、書き込み電圧VWRの印加が開始される。
書き込み電圧VWRの印加時において、以下のような電圧が、非選択セルMCxに印加される。選択ビット線共通セルに印加される電圧は、“VWR−VINH1”である。選択ワード線共通セルに印加される電圧は、“VINH2”である。他の非選択セル(非共通セル)に印加される電圧は、“VINH1−VINH2”である。
例えば、非選択電圧VINH1,VINH2に関して、例えば、電圧値Vi1の大きさは、電圧値Vi2と同じである。例えば、電圧値Vi1,Vi2は、電圧値Vaの半分の大きさ(Va/2)に設定される。
これによって、期間TSELにおいて、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに接続された選択セル(非共有セル)に対する印加電圧は、0Vになる。この場合において、メモリセルアレイ10の消費電力は、主として、選択ビット線共有セル及び選択ワード線共有セル(半選択セル)で、発生する。
選択ビット線共有セルに対する印加電圧は、書き込み電圧VWRの電圧値と非選択電圧VINH2の電圧値との差である。選択ワード線共有セルに対する印加電圧は、0Vと非選択電圧VINH1の電圧値との差である。
例えば、期間TSELにおいて、選択ビット線共有セルに対する印加電圧は、“Va/2”(絶対値)であり、選択ワード線共有セルに対する印加電圧は、“Va/2”(絶対値)である。期間TMTJにおいて、選択ビット線共有セルに対する印加電圧は、“Vb−Va/2”(絶対値)であり、選択ワード線共有セルに対する印加電圧は、“Va/2”(絶対値)である。
このように、本実施形態において、非選択電圧VINH1,VINH2が書き込み動作時に用いられる場合において、MRAMに発生する消費電力は、最小限にされる。
尚、選択ビット線共有セルに対する印加電圧の極性は、選択ワード線共有セルに対する印加電圧の極性と反対である。
非選択電圧VINH1の電圧値Vi1は、非選択電圧VINH2の電圧値Vi2と異なってもよい。
例えば、非選択電圧VINH1の電圧値Vi1は、電圧値Vaの3分の1程度の大きさ(Va/3)に設定される。例えば、非選択電圧VINH2の電圧値Vi2は、電圧値Vaの3分の2程度の大きさ(2Va/3)に設定される。
これによって、期間TSELにおいて、メモリセルアレイ10内の全ての非選択セルに対する印加電圧は、電圧値Va/3となる。
この場合において、本実施形態のMRAMは、非選択セルMCx内のセレクタ素子200のスイッチ電圧のばらつきに対する耐性を、確保できる。したがって、本実施形態のMRAMは、非選択セルMCx内のセレクタ素子200の誤動作を、抑制できる。
期間TSEL及び期間TMTJにおいて、書き込み回路13A,13Bが非選択電圧VINH1,VINH2を非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに印加した状態で、書き込み回路13A,13Bは、上述のように、書き込み電圧VWRを選択セルMCiに印加する。
期間TSELにおける電圧値Vaの書き込み電圧VWRによって、選択セルMCi内のセレクタ素子200は、オン状態に設定される。期間TMTJにおける電圧値Vbの書き込み電圧VWRによって、選択セルMCi内のMTJ素子100の記憶層の磁化が、反転される。
時刻t3の後の時刻tbにおいて、制御信号INH1,INH2の信号レベルが、“H”レベルから“L”レベルに遷移される。
カラム側書き込み回路13Aにおいて、“L”レベルの信号INH1が、インバータ139Aに供給される。インバータ139Aは、“H”レベルの信号を、P型トランジスタP3のゲートに出力する。“H”レベルの信号によって、P型トランジスタP3はオフする。
ロウ側書き込み回路13Bにおいて、“L”レベルの信号INH2が、インバータ139Bに供給される。インバータ139Bは、“H”レベルの信号を、P型トランジスタP4のゲートに出力する。“H”レベルの信号によって、P型トランジスタP4はオフする。
これによって、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに対する非選択電圧の印加が、停止される。
時刻t4において、選択信号CS,RSの信号レベルが、“H”レベルから“L”レベルに遷移される。これによって、選択セルMCiが、非活性化される。また、非選択セルMCxも、非選択電圧の印加が可能な状態から解消される。
このように、本実施形態のMRAMにおいて、選択セルに対する書き込み動作が、完了する。
以上のように、本実施形態のMRAMは、非選択ビット線及び非選択ワード線に電圧が印加されたとしても、選択セルに対する書き込み動作を実行できる。
(c)変形例
図22を参照して、本実施形態のMRAMの変形例について説明する。
図22は、本実施形態のMRAMの変形例を説明するための電圧波形図である。
図22の変形例は、MRAMの書き込み動作時における、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに対する非選択電圧VINH1,VINH2の印加の開始及び停止のタイミングが、図21の例と異なっている。
図22に示されるように、非選択電圧VINH1,VINH2の立ち上りの開始の時刻は、書き込み電圧VWRの立ち上りの開始の時刻t1と実質的に同じ時刻に設定されている。
非選択電圧VINH1,VINH2の立ち下りの開始の時刻は、プログラム電圧の立ち上り(電圧値Vaから電圧値Vbへの増加)の開始の時刻t2と実質的に同じ時刻に設定されている。
例えば、図19及び図20の回路において、制御信号INH1,INH2の信号レベルの変化のタイミングを制御することによって、図22に示される非選択電圧の立ち上り/立ち下りの開始の時刻を制御できる。
上述のように、MTJ素子のスイッチ時間(磁化反転時間)は、セレクタ素子のスイッチ時間に比較して短い。
それゆえ、期間TMTJ内において、オフ状態のセレクタ素子を含む非選択セルが、フローティング状態であったり、電圧が印加されていたりしても、非選択セルに誤書き込みが生じる可能性は、小さい。
図22の例において、非選択セルに対する非選択電圧の印加期間は、短縮される。この結果として、本実施形態の変形例のMRAMは、非選択セルの印加電圧が制御される場合における書き込み動作中の消費電力の増大を、抑制できる。
図23は、本実施形態のMRAMの書き込み動作における図22と異なる変形例を説明するためのタイミングチャートである。
図23に示されるように、非選択電圧VINH1,VINH2の立ち下りの開始の時刻は、プログラム電圧VPGMの立ち下りの開始の時刻t3と実質的に同じ時刻に設定されてもよい。
尚、図18の例の変形例として、非選択電圧VINH1,VINH2の立ち上りの開始の時刻taのみが、書き込み電圧VWRの立ち上りの開始の時刻t1と異なってもよいし、非選択電圧VINH1,VINH2の立ち下りの開始の時刻tbのみが、書き込み電圧VWRの立ち下りの時刻t3と異なってもよい。
(d) まとめ
本実施形態の磁気メモリは、書き込み動作時において、非選択電圧を非選択ビット線及び非選択ワード線に印加する。
これによって、本実施形態の磁気メモリは、書き込み動作時における非選択セルの誤動作を、抑制できる。
この結果として、本実施形態の磁気メモリは、メモリの信頼性を向上できる。
したがって、第2の実施形態の磁気メモリは、メモリの特性を向上できる。
(3) 第3の実施形態
図24乃至図31を参照して、第3の実施形態の磁気メモリ(例えば、MRAM)及びその制御方法について、説明する。
(a)基本例
図24を参照して、本実施形態のMRAMの基本例について、説明する。
図24は、本実施形態のMRAMの書き込み動作に用いられる書き込み電圧のパルス波形を示す、電圧波形図である。
図24に示されるように、本実施形態において、ある期間TIが、セレクタ素子200に対するスイッチ電圧VSWの印加期間TSELとMTJ素子100に対するプログラム電圧VPGMの印加期間TMTJとの間に、設けられている。
この期間TIによって、スイッチ電圧VSWは、プログラム電圧VPGMから分離される。
期間TIにおいて、書き込み電圧VWRの電圧値は、電圧値Vaより小さい。例えば、期間TIにおける書き込み電圧VWRの電圧値は、0Vに設定される。
期間TIの長さは、セレクタ素子200が、オン状態(低抵抗状態)からオフ状態(高抵抗状態)に遷移する期間より短い。セレクタ素子200は、期間TI及び期間TMTJにおいてオン状態を維持する。
それゆえ、図23のように、書き込み電圧VWRにおけるスイッチ電圧とプログラム電圧との間に、スイッチ電圧の電圧値より小さい電圧値の期間が設けられていたとしても、本実施形態は、第1の実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
(b)具体例
図25乃至図31を参照して、本実施形態のMRAMの具体例について、説明する。
(b−1)具体例1
図25及び図26を参照して、本実施形態のMRAMの具体例1について説明する。
<構成例>
図25は、本実施形態のMRAMの具体例におけるカラム側書き込み回路の内部構成の一例を示す等価回路図である。
図25に示されるように、カラム側書き込み回路13Aは、2つのインバータ137A,137Bと、2つのP型トランジスタP1,P2とを含む。
P型トランジスタP1の一端は、電圧端子199aに接続される。P型トランジスタP1の他端は、カラム制御回路11の電圧ノード111に接続される。P型トランジスタP1のゲートは、インバータ137Aの出力端子に接続されている。
インバータ137Aの入力端子に、制御信号SELが、供給される。
制御信号SELは、インバータ137Aを介して、P型トランジスタP1のゲートに供給される。
P型トランジスタP2の一端は、電圧端子199bに接続される。P型トランジスタP2の他端は、カラム制御回路11の電圧ノードに接続される。P型トランジスタP2のゲートは、インバータ137Bの出力端子に接続される。
インバータ137Bの入力端子に、制御信号WRが、供給される。
制御信号WRは、インバータ137Bを介して、P型トランジスタP2のゲートに供給される。
尚、本実施形態のMRAMにおいて、ロウ側書き込み回路13Bの構成は、図13に示される例と実質的に同じである。
図24に示される書き込み電圧VWRのように、セレクタ素子200のスイッチ期間TSELとMTJ素子100のプログラム期間TMTJとの間に、ある長さの間隔(期間)TIが存在する。
これによって、本実施形態のMRAMにおいて、書き込み動作の印加時おける、スイッチ電圧の印加と、プログラム電圧の印加は、互いに独立に制御される。
図24の書き込み電圧VWRが選択セルMCiに印加される場合において、例えば、図15の例のように、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxは、電気的にフローティングな状態に設定される。
<動作例>
図26は、本実施形態のMRAMの動作例を説明するためのタイミングチャートである。
図26に示されるように、書き込み電圧VWRの印加の開始前の時刻t1において、選択カラム信号CSの信号レベル及び選択ロウ信号RSの信号レベルが、“L”レベルから“H”レベルに遷移される。“H”レベルの選択カラム信号CS及び“H”レベルの選択ロウ信号RSによって、選択ビット線BLi及び選択ワード線WLiが、活性化され、選択状態に設定される。これによって、選択ビット線BLi及び選択ワード線WLiは、電圧を印加することが可能な状態になる。
例えば、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxは、電気的にフローティング状態に設定される。
時刻t0において、制御信号SELは、“L”レベルに設定され、制御信号WRは、“L”レベルに設定される。
カラム側書き込み回路13Aにおいて、“L”レベルの制御信号SELが、インバータ137Aに供給され、“L”レベルの制御信号WRが、インバータ137Bに供給される。
インバータ137Aは、“H”レベルの信号を、P型トランジスタP1のゲートに出力する。P型トランジスタP1は、“H”レベルの信号によって、オフする。
インバータ137Bは、“H”レベルの信号を、P型トランジスタP2のゲートに出力する。P型トランジスタP2は、“H”レベルの信号によって、オフする。
これによって、カラム制御回路11の電圧ノードは、電圧端子199a,199bから電気的に分離される。
ロウ側書き込み回路13Bにおいて、“L”レベルの制御信号WR,SELによって、ロウ制御回路12の電圧ノード121は、グランド端子199dに電気的に接続される。
時刻t1において、制御回路18は、制御信号SELの信号レベルを、“L”レベルから“H”レベルに変える。制御信号WRの信号レベルが、“L”レベルに維持される。
カラム側書き込み回路13Aは、時刻t1において、“H”レベルの制御信号SELが供給されると、以下のように、動作する。
“H”レベルの制御信号SELが、インバータ137Aに供給される。
インバータ137Aは、“L”レベルの信号(“H”レベルの信号SELの反転信号)をP型トランジスタP1のゲートに出力する。
これによって、カラム側書き込み回路13Aの電圧端子199aは、カラム制御回路11の電圧ノード111に電気的に接続される。
インバータ137Bは、“H”レベルの信号を、P型トランジスタP2のゲートに出力する。オフ状態のP型トランジスタP2によって、カラム制御回路11は、電圧端子199bから電気的に分離される。
このように、電圧値Vaの電圧が、選択ビット線BLiに印加される。
ロウ側書き込み回路13Bにおいて、“H”レベルの制御信号SEL及び“L”レベルの制御信号WRによって、ORゲート135は、“H”レベルの信号を、N型トランジスタN2のゲートに出力する。これによって、N型トランジスタN2は、オン状態に設定される。
ロウ制御回路12の電圧ノード121は、オン状態のN型トランジスタN2によって、グランド端子199dに電気的に接続される。
この結果として、0Vの電圧が、選択ワード線WLiに印加される。
このように、時刻t1において、電圧値V1の書き込み電圧VWR(スイッチ電圧VSW)の印加が、開始される。上述のように、書き込み電圧VWR(電圧値Va)の大部分は、セレクタ素子200に、印加される。
電圧値Vaの印加によって、時刻t1から時刻t2aまでの期間TSELにおいて、選択セルMCi内のセレクタ素子200の抵抗状態は、高抵抗状態から低抵抗状態に変わる。
これによって、セレクタ素子200は、オン状態に設定される。
時刻t2aにおいて、制御回路18は、制御信号SELの信号レベルを、“H”レベルから“L”レベルに変える。
カラム側書き込み回路13Aは、時刻t1において、“L”レベルの制御信号SELが供給されると、以下のように、動作する。
“L”レベルの制御信号WRが、インバータ137Aに供給される。
“H”レベルの信号が、インバータ137AからP型トランジスタP1に供給される。それゆえ、P型トランジスタP1はオフする。また、P型トランジスタP2も、オフ状態である。
これによって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、電圧端子199a,199bから電気的に分離される。
このように、選択ビット線BLiに対する電圧の印加が、一時的に停止される。
ロウ側書き込み回路13Bにおいて、“L”レベルの制御信号SEL及び“L”レベルの制御信号WRの供給時、N型トランジスタN2は、オン状態である。
それゆえ、オン状態のN型トランジスタN2によって、0Vの電圧が選択ワード線WLiに印加される。
この結果として、書き込み動作中の時刻t2aにおいて、選択セルに印加される電圧は、0Vになる。
時刻t2aから時刻t2bまでの期間TIにおいて、制御信号SEL,WRの信号レベルは、“L”レベルに維持される。尚、期間TIは、電圧が印加されていない状態のセレクタ素子200がオン状態からオフ状態へスイッチするまでの期間より短い。
したがって、セレクタ素子200は、期間TIにオン状態を維持する。
時刻t2bにおいて、制御回路18は、制御信号WRの信号レベルを“L”レベルから“H”レベルへ変える。制御信号SELの信号レベルは、“L”レベルに維持される。
カラム側書き込み回路13Aは、時刻t2bにおいて、“H”レベルの制御信号WRが供給されると、以下のように、動作する。
“H”レベルの制御信号WRが、インバータ137Bに供給される。インバータ137Bは、“L”レベルの信号を、P型トランジスタP2のゲートに供給する。“L”レベルの信号によって、P型トランジスタP2はオンする。
これによって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、オン状態のP型トランジスタP2によって、電圧端子199bに電気的に接続される。
P型トランジスタP1は、インバータ137Aから“H”レベルの信号によって、オフしている。
この結果として、電圧端子199bの電圧Vbが、カラム制御回路11の電圧ノード111に印加される。
ロウ側書き込み回路13Bは、“H”レベルの制御信号WRが供給されると、以下のように、動作する。
“H”レベルの制御信号WRと“L”レベルの制御信号SELとが、ORゲート135に供給される。ORゲート135からの“H”レベルの信号によって、N型トランジスタN2は、オンする。
オン状態のN型トランジスタN2によって、ロウ制御回路12の電圧ノード121は、グランド端子199dに電気的に接続される。
このように、カラム制御回路11は、電圧Vbを選択ビット線BLiに印加し、ロウ制御回路12は、グランド電圧VSS(0V)を選択ワード線WLiに印加する。
この結果として、選択セルMCiに、選択ビット線BLiと選択ワード線WLiとの電位差Vbが、印加される。
上述のように、書き込み電圧VWRの大部分(電圧値Vb)が、プログラム電圧として、MTJ素子100に、印加される。
時刻t3において、制御信号WRの信号レベルが、“H”レベルから“L”レベルに遷移される。制御信号SELの信号レベルは、“L”レベルに維持されている。
時刻t3において、カラム側書き込み回路13Aは、制御信号SEL,WRによって、以下のように、動作する。
“L”レベルの制御信号WRによって、インバータ137Bは、“H”レベルの信号を、P型トランジスタP2のゲートに供給する。“H”レベルの信号によって、P型トランジスタP1はオフする。
オフ状態のP型トランジスタによって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、オフ状態のP型トランジスタP2によって、電圧端子199bから電気的に分離される。
また、オフ状態のP型トランジスタP2によって、カラム制御回路11の電圧ノード111は、電圧端子199aから電気的に分離される。
これによって、カラム側書き込み回路13Aから選択ビット線BLiへの電圧の印加は、停止される。
時刻t3において、ロウ側書き込み回路13Bは、制御信号SEL,WRによって、以下のように、動作する。
“L”レベルの制御信号WRと“L”レベルの制御信号SELとによって、ORゲート135は、“H”レベルの信号を、N型トランジスタN2のゲートに出力する。“H”レベルの信号によって、N型トランジスタN2はオンする。
オン状態のN型トランジスタN2によって、ロウ制御回路12の電圧ノード121は、グランド端子199dに電気的に接続される。
これによって、ロウ側書き込み回路13Bから選択ワード線WLiに、グランド電圧が印加される。
このように、時刻t3において、選択セルに対する印加電圧は、0Vになる。
したがって、プログラム電圧は、時刻t2bから時刻t3までの期間TMTJにおいて、選択セルに印加される。
上述のように、時刻t2bから時刻t3までの印加期間TMTJにおける電圧値Vbの印加によって、書き込みデータが、選択セルMCi内のMTJ素子100に書き込まれる。
時刻t4において、選択信号CS,RSの信号レベルが、“L”レベルに設定される。これによって、カラム制御回路11は、選択ビット線BLiを非活性化し、ロウ制御回路12は、選択ワード線WLiを非活性化する。この結果として、選択セルは、非活性化する。
以上のように、本実施形態のMRAMの書き込み動作が、終了する。
本具体例のように、本実施形態のMRAMにおいて、書き込み回路13A,13Bは、スイッチ電圧の印加期間とプログラム電圧の印加期間との間に、選択セルMCiに電圧が印加されない期間(又は、スイッチ電圧より小さい電圧が印加される期間)TIを含む書き込み電圧VWRを、生成できる。
(b−2)具体例2
図27及び図28を参照して、本実施形態のMRAMの具体例2について説明する。
図27は、本実施形態のMRAMの具体例2における、書き込み動作時に用いられる各種の電圧のパルス波形を示す電圧波形図である。
図27に示されるように、書き込み電圧VWRがスイッチ電圧とプログラム電圧との間に間隔TIを有する場合において、非選択電圧VINH1,VINH2が、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに印加されてもよい。
これによって、本実施形態の具体例2のMRAMは、書き込み動作時における非選択セルの誤動作が、抑制できる。
図28は、本実施形態のMRAMの書き込み回路の構成例を示す等価回路図である。
図28に示されるように、カラム側書き込み回路13Bは、非選択電圧VINH1を出力するための、P型トランジスタP3をさらに含む。
P型トランジスタP3の一端は、電圧端子199eに接続される。P型トランジスタP3の他端は、カラム制御回路11の電圧ノード111に接続される。P型トランジスタP3のゲートは、インバータ139Aの出力端子に接続される。
インバータ139Aの入力端子に、制御信号INH1が、供給される。
尚、本具体例において、ロウ側書き込み回路13Bは、図20に示される回路と同じ回路でよい。
図27に示されるように、非選択電圧VINH1,VINH2の立ち上りの開始の時刻は、書き込み電圧VWRにおけるスイッチ電圧の立ち上りの開始(例えば、0Vから電圧値Vaへの変化)の時刻t1と実質的に同じタイミングに設定されている。
時刻t1において、制御信号INH1,INH2の信号レベルが、“L”レベルから“H”レベルに遷移される。これによって、図28のP型トランジスタP3及び図20のP型トランジスタP4が、オンする。
それゆえ、非選択電圧VINH1,VINH2が、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに印加される。
非選択電圧VINH1,VINH2の立ち下りの開始の時刻は、スイッチ電圧VSWの立ち下りの開始(例えば、電圧値Vaから0Vへの変化)の時刻t2aと実質的に同じタイミングに設定されている。
時刻t2aにおいて、制御信号INH1,INH2の信号レベルが、“H”レベルから“L”レベルに遷移される。これによって、図28のP型トランジスタP3及び図20のP型トランジスタが、オフする。
したがって、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに対する非選択電圧VINH1,VINH2の印加が、停止される。
このように、図27及び図28の例において、非選択電圧VINH1,VINH2の電圧値は、時刻t1で増加し、時刻t2aで減少する。
以上のように、本実施形態のMRAMの具体例2は、誤書き込み防止のための非選択電圧が用いられた場合に、非選択電圧に起因する消費電力の増大を抑制することができる。
(b−3)具体例3
図29乃至図31を参照して、本実施形態の磁気MRAMの具体例3について、説明する。
図29は、本実施形態のMRAMの具体例3の書き込み動作における、書き込み電圧及び非選択電圧の電圧波形図である。
図29に示されるように、非選択電圧VINH1,VINH2の印加のタイミングは、書き込み電圧に含まれるスイッチ電圧/プログラム電圧の立ち上り及び立ち下りのタイミングと異なってもよい。
本具体例において、非選択電圧VINH1,VINH2の立ち上りの時刻taは、スイッチ電圧(書き込み電圧VWR)の立ち上りの開始の時刻t1よりも早い。
非選択電圧VINH1,VINH2の立ち下りの開始の時刻tbは、スイッチ電圧の立ち下りの開始の時刻t2aよりも遅く、プログラム電圧の立ち上りの開始(例えば、0Vから電圧値Vbへの変化)の時刻t2bより早い。
図30は、図29の変形例を示す書き込み電圧及び非選択電圧の電圧波形図である。
図30に示されるように、非選択電圧VINH1,VINH2の立ち上りの開始の時刻taのみが、スイッチ電圧(書き込み電圧)の立ち上りの開始の時刻と異なってもよい。
尚、図30とは反対に、非選択電圧VINH1,VINH2の立ち下りの開始の時刻のみが、スイッチ電圧の立ち下りの開始の時刻と異なってもよい。
図31は、図29の変形例を示す書き込み電圧及び非選択電圧の電圧波形図である。
図31に示されるように、非選択電圧VINH1,VINH2の立ち下りの開始の時刻tb2は、プログラム電圧の立ち下りの開始(電圧値Vbから0Vへの変化)の時刻t3より遅くともよい。
本実施形態のMRAMの具体例3は、電圧のパルスの立ち上りマージンが拡大できる。
以上のように、第3の実施形態の磁気メモリは、メモリの特性を向上できる。
(4) 第4の実施形態
図32及び図33を参照して、第4の実施形態の磁気メモリ(例えば、MRAM)及びその制御方法について、説明する。
本実施形態において、上述の実施形態のMRAMの読み出し動作について、説明する。
上述のように、電圧効果型MTJ素子において、MTJ素子の磁化配列状態がP状態からAP状態へ変えるための電圧の極性は、MTJ素子の磁化配列状態がAP状態からP状態へ変えるための電圧の極性と同じである。
このようなユニポーラ型の素子において、読み出し動作時におけるメモリセルへの誤書き込みを抑制するために、読み出し電圧の極性が、書き込み電圧の極性と反対であることが望ましい場合がある。
この場合において、書き込み動作時におけるビット線及びワード線の電位の関係とは反対に、読み出し動作時において、選択ワード線が、高電位側に設定され、選択ビット線が、低電位側に設定される。
図32は、本実施形態のMRAMの読み出し動作時における、読み出し電圧を示す電圧波形図である。
図32に示されるように、読み出し電圧VRDのパルス波形の第1の期間TSELにおいて、電圧値Vcがメモリセル(選択セル)MCに印加され、第1の期間TSELに続く第2の期間TRDにおいて、第1の電圧値Vcより低い第2の電圧値VrがメモリセルMCに印加される。
第1の電圧値Vcは、セレクタ素子200をオン状態に設定するための電圧値である。例えば、電圧値Vcは、書き込み電圧VWRにおけるスイッチ電圧の電圧値Vaと実質的に同じ電圧値を有する。電圧値Vcは、MTJ素子の磁化反転しきい値(例えば、電圧値Vb)より小さい。
第2の電圧値Vrは、MTJ素子100の抵抗状態を判別するための電圧値である。電圧値Vrは、記憶層101の磁化反転しきい値より小さい電圧値である。本実施形態において、読み出し電圧VRDのうち、電圧値Vrの部分は、判定電圧VDTMとよばれる場合がある。
例えば、選択セルMCi内のデータの判定は、期間TRD中に、配線(例えば、ビット線)における電流の発生又は配線の電位/電流値の変動が、読み出し回路14A,14Bのセンスアンプ回路を用いて検知されることによって、実行される。選択セルMCi内のデータの判定結果は、期間TRD中に、得られる。
図32において、電圧値Vcの大きさが、電圧値Vrの大きさより大きい例が示されている。但し、MTJ素子100及びセレクタ素子200の特性に応じて、電圧値Vcの大きさが、電圧値Vrの大きさと同じでもよいし、電圧値Vcの大きさが、電圧値Vrの大きさより小さくてもよい。
読み出し動作時において、書き込み動作時と同様に、セレクタ素子200がオン状態に設定されるまでの期間(時刻trから時刻txまでの期間)において、読み出し電圧VRDの大部分は、セレクタ素子200に分圧される。それゆえ、時刻trから時刻txまでの期間において、セレクタ素子200の端子間電圧VSELは、電圧値Vcを有する。
そして、時刻txにおいてセレクタ素子200がオン状態に変化すると、読み出し電圧VRDの大部分は、MTJ素子100に分圧される。それゆえ、時刻txからtsまでの期間において、MTJ素子100の端子間電圧VMTJは、電圧値Vcを有する。時刻tsからttまでの期間において、MTJ素子100の端子間電圧VMTJは、電圧値Vrを有する。
例えば、セレクタ素子200は、時刻ttの後にオン状態からオフ状態に変化するように、セレクタ素子200の特性が、設計される。
図33は、本実施形態のMRAMの読み出し動作における、メモリセルアレイ内の配線の電位状態を示す模式図である。
MRAMの読み出し動作時において、図2のカラム側読み出し回路14A及びロウ側読み出し回路14Bは、読み出し電圧VRDを、選択セルMCiに印加する。
図33に示されるように、選択セルMCiに対する読み出し動作時において、ある電圧値の読み出し電圧VRDが、選択ワード線WLiに印加され、0Vの電圧が選択ビット線BLiに印加される。
読み出し動作時において、選択ワード線WLiが高電位側に設定され、選択ビット線BLiが低電位側に設定される。
例えば、ロウ側読み出し回路14Bが、選択ワード線WLiに正の電圧を印加する。カラム側読み出し回路14Bが、選択ビット線BLiに0Vの電圧を印加する。読み出し電圧VRDによって、電流(読み出し電流)が選択セルMCi内に流れる。これによって、選択セルMCは信号(読み出し信号)を出力する。
カラム側読み出し回路14Bは、選択セルMCiから選択ビット線BLiに出力される読み出し信号をセンスする。選択セルMCiからの読み出し信号の大きさ(例えば、電流値)は、MTJ素子100の抵抗状態(磁化配列状態)に応じて変化する。
カラム側読み出し回路14Bによる選択セルMCiの読み出し信号のセンス結果(例えば、読み出し信号の大きさの比較結果)に基づいて、選択セルMCi内のデータが、判別され、読み出される。
図33のような選択ビット線BLi及び選択ワード線WLiの電位の制御によって、読み出し動作時における選択セル(MTJ素子)MCiに対する印加電圧の極性は、書き込み動作時における選択セルに対する印加電圧の極性に対して反対になる。
本実施形態において、図33の読み出し動作時のように、選択ワード線WLiの電位が選択ビット線BLiの電位より高くなるように、MTJ素子100に対して電圧が印加されている状態は、負バイアス状態とよばれる。
これに対して、書き込み動作時のように、ビット線の電位がワード線の電位より高くなるように、MTJ素子100に対して電圧が印加されている状態は、正バイアス状態と呼ばれる。
例えば、図9の(a)に示されるように、正バイアス状態において、MTJ素子100の参照層102が高電位側に設定され、MTJ素子100の記憶層101が低電位側に設定される。これに対して、負バイアス状態において、MTJ素子100の参照層102が低電位側に設定され、MTJ素子100の記憶層101が高電位側に設定される。
上述のように、セレクタ素子200はバイポーラ型の素子である。それゆえ、正バイアス状態の読み出し電圧VRDがメモリセルMCに印加されたとしても、セレクタ素子200は、オン状態に設定できる。
例えば、読み出し回路14A,14Bは、読み出し動作時において、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxを、電気的にフローティングな状態に設定する。
読み出し動作中に、非選択ビット線及BLx及び非選択ワード線WLxが、電気的にフローティングな状態に設定される場合、読み出し動作時におけるMRAMの消費電力を低減できる。
尚、図35のパルス形状を有する読み出し電圧VRDは、書き込み回路の回路構成(例えば、図12の回路)と類似の回路によって、生成できる。例えば、判定電圧を出力する電源端子の電圧値が、図12の回路の電源端子199bの電圧値が、電圧値Vrに設定される。また、制御信号WRの代わりに、判定電圧の出力のタイミングを制御するための制御信号が、図12の回路に供給される。このような回路を、読み出し回路14A,14Bが含む。
例えば、本実施形態のMRAMにおける読み出し動作は、書き込み動作の事前読み出しに適用できる。
以上のように、第4の実施形態の磁気メモリは、読み出し動作を実行することができる。
(5) 第5の実施形態
図34及び図35を参照して、第5の実施形態の磁気メモリ(例えば、MRAM)及びその制御方法について、説明する。
図34は、本実施形態のMRAMの読み出し動作時における、メモリセルアレイ内の各配線の電圧の印加状態を模式的に示す図である。
図34に示されるように、読み出し電圧VRDの印加時の期間TRDにおいて、非選択電圧VINHa,VINHbが、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに印加されてもよい。
例えば、読み出し動作時において、非選択電圧VINHa,VINHbは、読み出し回路14A,14Bによって、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに印加される。
図35は、本実施形態のMRAMの読み出し動作に用いられる各種の電圧の電圧波形図である。
図35に示されるように、読み出し電圧VRDにおけるスイッチ電圧の印加時(期間TSEL)において、非選択電圧VINHa,VINHbの電圧値は、0Vに設定されている。期間TSELにおいて、0Vの電圧が、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに印加されている。これによって、非選択セルMCxのセレクタ素子200は、オンされず、オフ状態を維持する。
尚、セレクタ素子200のオン電圧(例えば、電圧値Vc)以下であり、0Vより大きい電圧値を有する電圧が、期間TSELにおいて、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに印加されてもよい。
MTJ素子100に、電圧値Vrの電圧が印加されている期間TRDにおいて、電圧値Vrの非選択電圧VINH3,VINH4が、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに、印加される。
これによって、選択ワード線WLiと非選択ビット線BLxとの間の電位差、及び、非選択ビット線BLxと非選択ワード線WLxとの間の電位差は、0Vになる。それゆえ、選択ワード線共有セルからの電流(出力信号)、及び、非共有セルからの電流は、削減される。
ここで、非選択セルMCxに電流が流れる場合、非選択セルMCxからの電流が、選択セル内を流れる読み出し電流に混合し、選択セルMCiの読み出し信号が変動する可能性がある。
メモリセルアレイ内のメモリセルの個数が大きくなると、複数の非選択セルからの電流の合計は大きくなる。そのため、メモリセルアレイの記憶密度が高くなると、選択セルの読み出し信号が劣化する可能性がある。
本実施形態のように、非選択電圧VINH1,VINH2が非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに印加されることによって、非選択セルMCxからの出力信号(ノイズ)を低減できる。
例えば、本実施形態のMRAMにおける読み出し動作は、書き込み動作の事前読み出しに適用できる。
この結果として、本実施形態のMRAMは、非選択セルからのノイズに起因する選択セルの読み出し信号(読み出し電流)の劣化を、抑制できる。
以上のように、第5の実施形態の磁気メモリは、読み出し動作を実行することができる。
(6) 第6の実施形態
図36乃至図39を参照して、第6の実施形態の磁気メモリ(例えば、MRAM)及びその制御方法について、説明する。
上述のように(例えば、図14参照)、電圧効果型MTJ素子がメモリ素子に用いられる場合、書き込みシーケンスとして、MTJ素子に対するデータの書き込み(記憶層の磁化の反転)前に、メモリセルMC内に記憶されているデータが、事前読み出しによって判別される。
本実施形態のMRAMにおいて、事前読み出しと書き込み動作とが、一連の電圧パルスを用いて、実行される。これによって、メモリセル内のセレクタ素子のスイッチが、事前読み出しと書き込み動作とで共通化され、1回でよくなる。
この結果として、本実施形態のMRAMは、書き込みシーケンスの期間を、短縮でき、メモリの動作速度を向上できる。
以下において、本実施形態のMRAMの書き込みシーケンスについて、より具体的に説明する。
(a)基本例
図36は、本実施形態のMRAMの書き込み動作に用いられる電圧を示す電圧波形図である。
図36において、書き込み電圧VWRの電圧波形、選択ワード線WLiに対する印加電圧の電圧波形、及び、選択ビット線BLiに対する印加電圧の電圧波形が示されている。
図36に示されるように、電圧値Vbのプログラム電圧の印加の前に、セレクタ素子200のオン状態の設定及び読み出し電圧の印加が、実行される。
上述のように、本実施形態のMRAMにおいて、電圧効果型MTJ素子は、ユニポーラ型メモリ素子として、動作する。
それゆえ、プログラム電圧VPGMの極性に対して反対の極性を有する電圧を用いて、セレクタ素子200のオン状態の設定及びMTJ素子100に対する読み出し動作が、実行される。セレクタ素子200は、バイポーラ型の素子であるため、負バイアス状態で選択セルに電圧が印加された場合であっても、セレクタ素子200は、オン状態に設定されることが可能である。
セレクタ素子200のオン状態の設定及び読み出し電圧の印加時において、MTJ素子100のバイアス状態が負バイアス状態となるように、選択ワード線WLiが、高電位側に設定され、選択ビット線BLiが、低電位側に設定される。
時刻trからの期間TSELにおいて、電圧値Vcの電圧が、選択ワード線WLiに印加される。期間TSELにおいて、0Vの電圧が、選択ビット線BLiに印加される。電圧値Vcの電圧の印加によって、期間TSELのある時刻txにおいて、セレクタ素子200は、オン状態に設定される。
時刻txの後の時刻tsにおいて、選択ワード線WLiの電位が低下され、選択ワード線WLiの電圧値は、電圧値Vrに設定される。尚、セレクタ素子200及びMTJ素子100の特性に応じて、選択ワード線WLiの電圧値は、電圧値Vc以上に増加されてもよい。
時刻tsからの期間TRDにおいて、0Vの電圧が、選択ビット線BLiが印加される。期間TRDにおいて、電圧値Vrの判定電圧が、負バイアス状態で、MTJ素子100に印加される。これによって、期間TRDにおいて、選択セルMCi内のデータが、判別される。選択セルMCi内のデータが書き込みデータと異なる場合、読み出し電圧VRDの印加の後に、プログラム電圧VPGMが、印加される。
時刻ttにおいて、選択ワード線WLiの電圧値が、電圧値Vrから0Vに低下される。時刻ttにおいて、選択ビット線BLiの電圧値が、0Vから電圧値Vbに上昇される。これによって、電圧値Vbのプログラム電圧が、正バイアス状態で、MTJ素子100に印加される。
時刻tuにおいて、選択ビット線BLiの電圧値が、電圧値Vbから0Vに低下される。時刻ttから時刻tuまでの期間TMTJは、記憶層101の磁化の歳差運動の半周期の長さ(図11の時刻t2から時刻t3までの期間)に対応する。
この結果として、時刻ttから時刻tuまでのパルス幅(期間)TMTJのプログラム電圧が、MTJ素子100に印加される。これによって、選択セルMCiのMTJ素子100において、記憶層101の磁化は、反転する。
セレクタ素子200が、時刻tuの後にオン状態からオフ状態に変化するように、セレクタ素子200の特性が、設計される。セレクタ素子200は、時刻tsから時刻ttまでの期間において、オン状態を継続する。
選択セルMCi内のデータが書き込みデータと同じである場合、読み出し電圧VRDの印加の後におけるプログラム電圧VPGMの印加無しに、書き込みシーケンスが終了する。
尚、セレクタ素子200のオン/オフの制御、及び、読み出し電圧VRDの印加は、読み出し回路14A,14Bによって実行されてもよいし、書き込み回路13A,13Bによって実行されてもよい。
以上のように、本実施形態のMRAMは、読み出し電圧とプログラム電圧とが連続したパルス波形の書き込み電圧によって、事前読み出しと書き込み動作(プログラム動作)とが連続して実行される。
(b)変形例
図37を参照して、本実施形態のMRAMの変形例について説明する。
図37は、本実施形態のMRAMの変形例における、MRAMの書き込み電圧の電圧波形、選択ビット線の電圧波形及び選択ワード線の電圧波形を示す、電圧波形図である。
図36の例において、選択ワード線WLiの電圧値の立ち下りの開始の時刻は、選択ビット線BLiの電圧値の立ち上りの開始の時刻と同じ時刻に設定されている。
図37に示されるように、選択ワード線WLiの電圧値の立ち下りの開始の時刻は、選択ビット線BLiの電圧値の立ち上りのタイミングより遅くともよい。
例えば、時刻tuにおいて、選択ワード線WLiの電圧値は、選択ビット線BLiの電圧値の立ち下りの開始と同時に、電圧値Vrから0Vに低下される。
この場合において、期間TMTJにおいて、選択ワード線WLiの電圧値は、電圧値Vrに維持されている。
これに伴って、期間TMTJにおける選択ビット線BLiの電圧値は、MTJ素子100の磁化反転しきい値Vbと読み出し電圧の電圧値Vrとの和(Vb+Vr)に設定される。
(c)具体例
図38及び図39を参照して、本実施形態のMRAMの具体例を説明する。
読み出し電圧とプログラム電圧とが連続する書き込み電圧が選択セルに印加される場合において、非選択電圧が、非選択ビット線及び非選択ワード線に印加されてもよい。
図38は、本実施形態のMRAMの具体例の一例における、MRAMの書き込み電圧の電圧波形、選択/非選択ビット線の電圧波形及び選択/非選択ワード線の電圧波形を示す、電圧波形図である。
図38に示されるように、書き込み電圧VWRの印加時において、非選択電圧VINHaが、非選択ビット線BLxに印加され、非選択電圧VINHbが、非選択ワード線WLxに印加される。
時刻trにおいて、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに対する非選択電圧VINHa,VINHbの印加が、電圧値Vc(例えば、Vc=Va)の電圧が選択ワード線WLiに印加されるタイミングと実質的に同時に、開始される。
例えば、期間TSEL(時刻trから時刻ts)において、非選択ビット線BLxの電圧値は、電圧値Viaに設定され、非選択ワード線WLxの電圧値は、電圧値Vibに設定されている。
期間TSELにおいて、電圧値Viaが、MTJ素子100に対して負バイアス状態で、選択ビット線BLiと非選択ワード線WLxとの間のメモリセルに、印加される。
また、非選択ビット線BLxと選択ワード線WLiとの間のメモリセルに、電圧値Via−Vcが、印加される。
期間TRDにおいて、非選択ビット線BLxの電圧値は、電圧値Vrに設定され、非選択ワード線WLxの電圧値は、電圧値Vrに設定される。
図38の例のように、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに対する電圧の印加によって、セレクタ素子200の誤動作、及び、読み出しマージンの劣化が、抑制される。
図39は、図38の具体例と異なる一例を示す、MRAMの書き込み電圧、選択/非選択ビット線及び選択/非選択ワード線の電圧波形図である。
図39に示される例において、期間TSELにおいて、電圧値Viaの非選択電圧VINHaが、非選択ビット線BLxに印加され、電圧値Vibの非選択電圧VINHbが、非選択ワード線WLxに印加される。
事前読み出しの期間TRD及びプログラム電圧の印加の期間TMTJの期間において、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxの電圧値は、0Vに設定される。
ここで、図38及び図39のように、選択セルが負バイアス状態の電圧が印加されている期間において、選択ビット線共有セルに印加される電圧は電圧値Viaを有し、ロウ選択セルに印加される電圧は、電圧値Vc−Vibを有し、他の非選択セルに印加される電圧は、電圧値Via−Vibを有する。
例えば、電圧値Via,Vibが、電圧値Vcの半分の大きさ(Vc/2)程度に設定された場合、非選択ビット線−非選択ワード線間の非選択セルに対する印加電圧は、0Vになる。この場合において、メモリセルアレイ10内に発生する消費電力を削減できる。
電圧値Viaが、電圧値Vcの3分の2の大きさ(2Vc/3)程度に設定され、電圧値Vibが、電圧値Vcの3分の1の大きさ(Vc/3)程度に設定された場合、全ての非選択セルに対する印加電圧の電圧値は、電圧値Vc/3程度になる。この場合において、メモリセルアレイ10内の複数のセレクタ素子200において、スイッチ電圧のばらつきが存在していたとしても、セレクタ素子200の誤動作が、抑制される。
尚、本実施形態において、書き込み動作時において、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxの電位状態は、電気的にフローティング状態に設定されてもよい。
(d)まとめ
本実施形態の磁気メモリは、電圧効果型MTJ素子を含むメモリセルに対する書き込みシーケンスにおいて、事前読み出しとプログラム電圧とが、セレクタ素子のオン動作を共通化して、連続的に実行される。
それゆえ、本実施形態の磁気メモリは、事前読み出し及び書き込み動作の期間を短縮できる。この結果として、本実施形態の磁気メモリは、書き込み動作(書き込みシーケンス)を高速化できる。
以上のように、第6の実施形態の磁気メモリは、メモリの特性を向上できる。
(7) 第7の実施形態
図40を参照して、第7の実施形態の磁気メモリ(例えば、MRAM)について、説明する。
上述の実施形態において、読み出し電圧の極性が、書き込み電圧(プログラム電圧)の極性と反対である場合について説明されている。
一方、本実施形態のMRAMは、読み出し電圧の極性が、書き込み電圧の極性と同じに設定されている。これによって、本実施形態のMRAMは、メモリセルアレイ内の配線に対する電圧の印加の制御を容易化でき、読み出し回路及び書き込み回路の回路設計を簡素化できる。
図40は、本実施形態のMRAMの書き込みシーケンスにおける選択セルに対する印加電圧及びメモリセルアレイ内の配線に対する印加電圧を示す電圧波形図である。
図40に示されるように、書き込みシーケンスの期間TSELにおいて、スイッチ電圧VSWが、選択セルMCiに印加される。正の電圧値Vaの電圧が、選択ビット線BLiに印加され、0Vの電圧が、選択ワード線WLiに印加される。
これによって、セレクタ素子200が、オン状態に設定される。
期間TRDにおいて、読み出し電圧VRが、選択セルMCiに印加される。正の電圧値Vrの電圧が、選択ビット線BLiに印加され、0Vの電圧が選択ワード線WLiに印加される。
事前読み出しによって、選択セル内のデータ保持状態が、判定される。
事前読み出しの結果に基づいて、選択セルMCiに対するデータの書き込みが実行される場合、期間TMTJにおいて、プログラム電圧VPGMが、選択セルMCiに印加される。正の電圧値Vbの電圧が、選択ビット線BLiに印加され、0Vの電圧が選択ワード線WLiに印加される。
このように、読み出し電圧の極性が、プログラム電圧の極性と同じである場合、書き込みシーケンス中において、0Vの電圧が、選択ワード線に、印加される。
尚、事前読み出しの結果に基づいて、MTJ素子の磁化が反転されない場合、期間TMTJにおいて、0Vの電圧が、選択ビット線BLiに印加される。
本実施形態のように、事前読み出し時におけるMTJ素子に印加される電圧の極性が、プログラム動作時におけるMTJ素子に印加される電圧の極性と同じであっても、本実施形態のMRAMは、事前読み出しとプログラム動作とを、連続して実行できる。
尚、本実施形態のMRAMのように、正バイアス状態で事前読み出し及びプログラム動作が連続した書き込み動作が実行される場合であっても、非選択電圧が、非選択ビット線及び非選択ワード線に印加されてもよい。また、本実施形態のMRAMの書き込み動作時において、非選択ビット線及び非選択ワード線は、電気的にフローティングな状態に設定されてもよい。
以上のように、第7の実施形態の磁気メモリは、回路の内部構成を、簡素化できる。
(8) 第8の実施形態
図41乃至図47を参照して、第8の実施形態の磁気メモリ(例えば、MRAM)について、説明する。
実施形態のMRAMは、書き込み電圧の印加の後に、所定のデータが選択セル内に書き込まれた否かベリファイするために、選択セルに対してベリファイ動作を実行する。
ベリファイ動作において、書き込み電圧の印加後に、選択セルからデータが読み出される。読み出されたデータが、書き込みデータと一致するか否かベリファイされる。
上述のように、電圧効果型MTJ素子のスイッチ確率は、プログラム電圧のパルス幅に依存する。メモリセルアレイの記憶容量が大きい場合、配線の寄生成分に起因して、電圧のパルス形状が、理想的な形状から歪む可能性がある。これに伴って、データの書き込みに関するエラー発生率が上昇する可能性がある。
本実施形態のように、データの書き込みエラーを抑制するために、プログラム電圧の印加後に、データの書き込みの成否を確認するための動作(例えば、ベリファイ動作)を実行することが、望ましい。
ベリファイ動作は、読み出し動作(事前読み出し)と実質的に同じ動作によって、実行される。
(a)基本例
図41は、本実施形態のMRAMの書き込みシーケンスを説明するためのフローチャートである。
図41に示されるように、事前読み出しの結果に基づいて、MTJ素子にプログラム電圧が印加される(ステップST3)。
プログラム電圧の印加の後、ベリファイ動作が実行される(ステップST4)。
ベリファイ動作の結果に基づいて、選択セルに対するデータの書き込みが、ベリファイパスしたか否か、判定される(ステップST5)。
データの書き込みがベリファイパスしなかった場合(プログラム動作が失敗である場合)、プログラム動作が再度実行される。尚、ベリファイパスしなかった場合の再度のプログラム動作において、プログラム電圧のパルス幅TMTJの大きさ及び電圧値の少なくとも一方が、変更されてもよい。
選択セルに対するデータの書き込みがベリファイパスするまで、プログラム電圧の印加とベリファイ動作が繰り返し実行される。
データの書き込みが、ベリファイパスである場合(書き込み動作が成功である場合)、書き込み動作は、完了する。
尚、プログラム電圧の印加が所定の回数に達しても、ベリファイパスの結果が得られない場合、選択セルが他のメモリセルに変更されてもよい。
図42は、本実施形態のMRAMの書き込みシーケンスにおける選択セルに対する印加電圧を示す電圧波形図である。
図42において、本実施形態のMRAMの書き込みシーケンスにおける、書き込み電圧、選択ビット線の印加電圧及び選択ワード線の印加電圧の電圧波形が、示されている。
図42に示されるように、事前読み出し、プログラム動作及びベリファイ動作は、一連の電圧パルスを用いて実行される。これによって、選択セル内のセレクタ素子のスイッチが、各動作で共通化される。それゆえ、セレクタ素子が、書き込みシーケンス中で1度オン状態に設定されればよくなる。したがって、本実施形態のMRAMは、書き込みシーケンスを高速化できる。
図42の書き込み電圧において、図36の例と同様に、事前読み出しが負バイアス状態で実行された後、プログラム電圧が、正バイアス状態で選択セルMCiに印加される。
尚、時刻ttにおいて、選択ワード線WLiの電圧値は、電圧値Vrから0Vに低下される。プログラム電圧の印加時(期間TMTJ中)において、選択ワード線WLiの電圧値が、0Vに維持される。
プログラム電圧VPGMの印加後において、ベリファイ動作が実行される。
ベリファイ動作のために、選択セルMCiは、負バイアス状態に設定される。
ベリファイ動作のための期間TVFの時刻tuにおいて、事前読み出し時と実質的に同様に、選択ワード線WLiの電圧値が、電圧値Vrに設定され、選択ビット線BLiの電圧値が、0Vに設定される。
これによって、読み出し電流が、負バイアス状態の選択セルMCi内に流れる。読み出し信号が、選択セルMCiから出力される。
時刻tvにおいて、選択ワード線WLiの電圧値が、電圧値Vrから0Vに低下される。
これによって、期間TVFにおいて、選択セルのデータが読み出される。プログラム電圧の印加後の読み出し動作の結果に基づいて、データの書き込みの成否が、判定される。
この判定結果に基づいて、書き込み動作の完了又は再度のプログラム電圧の印加が、決定される。
ベリファイ動作の結果に基づいてプログラム動作が再度実行される場合、図42のパルス形状の書き込み電圧が、選択セルに印加される。但し、事前読み出しのための読み出し電圧(電圧値Vr)の印加無しに、スイッチ電圧VSW及びプログラム電圧VPGM(例えば、図11の書き込み電圧)が、選択セルMCiに印加されてもよい。
尚、セレクタ素子200は、時刻tvの後にオフ状態に設定されるように、設計される。セレクタ素子200は、期間TRD、期間TMTJ及び期間TVFにおいてオン状態を継続する。
図43は、図42の変形例を示す、本実施形態のMRAMの書き込みシーケンスにおける、ビット線及びワード線に対する印加電圧の電圧波形図である。
図43に示されるように、プログラム電圧VPGMの印加期間TMTJにおいて、選択ワード線WLiの電圧値は、電圧値Vrに維持されてもよい。
これによって、図43の例にMRAMにおいて、選択ワード線WLiの電位の制御の回数は、削減される。この結果として、図43の動作例を用いる本実施形態のMRAMは、書き込み動作の制御の簡便化を図ることができる。
この場合において、MTJ素子100に印加される電圧値が、磁化反転しきい値以上の電圧値となるように、プログラム動作時(時刻ttから時刻tuまでの期間)に選択ビット線BLiに印加される電圧の電圧値は、電圧値Vbと電圧値Vrの和の値(Vb+Vr)を有するように、設定される。
(b)具体例
図44乃至図47を参照して、本実施形態のMRAMの具体例を説明する。
本実施形態において、非選択ビット線及び非選択ワード線に、非選択電圧が印加されてもよい。
図44は、実施形態のMRAMの書き込みシーケンスにおける、ビット線及びワード線に対する印加電圧の電圧波形図である。
図44に示されるように、非選択電圧VINH1が、非選択ビット線BLxに印加され、非選択電圧VINH2が、非選択ワード線WLxに印加される。
期間TSEL(時刻tr〜時刻ts)において、非選択ビット線BLxの電圧値及び非選択ワード線WLxの電圧値は、0Vに設定されている。期間TSELにおいて、0Vの電圧が、非選択セル及び選択ビット線共有セルに印加され、電圧値Vcの電圧が、選択ワード線共有セルに印加される。
時刻tsにおいて、非選択ビット線BLxの電圧値及び非選択ワード線WLxの電圧値が、0Vから電圧値Vrに増加される。
期間TRDにおいて、非選択電圧VINH1,VINH2の電圧値(絶対値)は、電圧値Vrに設定される。これによって、事前読み出しの期間TRDにおいて、0Vの電圧が、非共有セル及び選択ワード線共有セルに印加される。
時刻ttにおいて、非選択ビット線BLxの電圧値及び非選択ワード線WLxの電圧値が、電圧値Vrから0Vに低下される。
時刻ttから時刻tuまでの期間TMTJにおいて、電圧値Vbのプログラム電圧が、選択セルMCiに印加される。期間TMTJにおいて、非選択電圧VINH1,VINH2の電圧値(絶対値)は、0Vである。
時刻tuにおいて、非選択ビット線BLxの電圧値及び非選択ワード線WLxの電圧値が、0Vから電圧値Vrに増加される。
時刻tvにおいて、非選択ビット線BLxの電圧値及び非選択ワード線WLxの電圧値は、電圧値Vrから0Vに低下される。
時刻tuから時刻tvまでの期間TVFにおいて、非選択電圧VINH1,VINH2の電圧値(絶対値)は、電圧値Vrに設定される。
これによって、ベリファイ動作時の期間TVFにおいて、0Vの電圧が、非共有セル及び選択ワード線共有セルに印加される。
このように、図44の例のMRAMは、読み出しマージンの劣化が抑制される。
図45は、本実施形態のMRAMの書き込みシーケンスにおける、ビット線及びワード線に対する印加電圧のパターンの一例を示す電圧図である。
図45に示されるように、セレクタ素子のスイッチ期間TSELにおいて、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに、0Vより大きい電圧値(絶対値)が印加されてもよい。
期間TSELにおいて、非選択電圧VINH1は、電圧値Vi1を有する。電圧値Vi1が、非選択ビット線BLxに印加される。非選択電圧VINH2は、電圧値Vi2を有する。電圧値Vi2が、非選択ワード線WLxに印加される。
ここで、図38及び図39の例と実質的に同様に、電圧値Vi1,Vi2が、電圧値Vc/2程度である場合、メモリセルアレイ10内の消費電力の増大を、抑制できる。
また、電圧値Vi1が、2Vc/3程度に設定され、電圧値Vi2が、Vc/3程度に設定された場合、セレクタ素子200の誤動作を抑制できる。
図46は、図44の変形例を説明するための各電圧の電圧波形図である。
図46に示されるように、選択セルMCiに対するプログラム電圧の印加時において、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxの電位は、電圧値Vrに維持されていてもよい。
図47は、図44の変形例を説明するための各電圧の電圧波形図である。
図47に示されるように、セレクタ素子200がオン状態に設定される期間TSELにおいて、非選択ビット線BLx及び非選択ワード線WLxに正の電圧値が印加されている場合であっても、プログラム電圧の印加時に、非選択ビット線BLxの印加電圧の電圧値及び非選択ワード線WLxの印加電圧の電圧値が、電圧値Vrに設定されていてもよい。
尚、本実施形態のMRAMの書き込み動作時において、非選択ビット線及び非選択ワード線は、電気的にフローティングな状態に設定されてもよい。
(c)まとめ
本実施形態の磁気メモリは、プログラム動作の後に、ベリファイ動作が実行される。
これによって、本実施形態の磁気メモリは、データの書き込みの信頼性を向上できる。
本実施形態の磁気メモリは、書き込みシーケンスにおいて、事前読み出し、プログラム電圧及びベリファイ動作がが、セレクタ素子のオン動作を共通化して、連続的に実行される。これによって、本実施形態の磁気メモリは、書き込み動作(書き込みシーケンス)を高速化できる。
以上のように、第8の実施形態の磁気メモリは、メモリの特性を向上できる。
(9) 第9の実施形態
図48を参照して、第9の実施形態の磁気メモリ(例えば、MRAM)及びその制御方法について、説明する。
図48は、本実施形態のMRAMにおける、書き込み電圧のパルス波形の一例を示す電圧波形図である。
図48に示されるように、事前読み出し及びベリファイ動作における選択セルに対する電圧のバイアス状態が、プログラム動作時における選択セルに対する電圧のバイアス状態と同じでもよい。
例えば、事前読み出し及びベリファイ動作時において、読み出し電圧VRDが、正バイアス状態で選択セルに印加される。
これによって、本実施形態のMRAMにおいて、事前読み出し及びベリファイ動作時において、選択ビット線BLiが高電位側に設定され、選択ワード線WLiが低電位側に設定される。
第7の実施形態で説明したように、事前読み出し及びベリファイ動作のために選択セルに印加される電圧の極性が、プログラム動作のために選択セルに印加される電圧の極性と同じに設定されることによって、本実施形態のMRAMは、書き込みシーケンス中の全体において、選択ワード線WLiの電位を0Vに設定していればよくなる。
本実施形態のように、事前読み出し時及びベリファイ動作時においてMTJ素子に印加される電圧の極性が、プログラム動作時においてMTJ素子に印加される電圧の極性と同じであっても、本実施形態のMRAMは、事前読み出し、プログラム動作及びベリファイ動作を、連続して実行できる。
尚、正バイアス状態でMTJ素子に対する読み出し動作(MTJ素子の抵抗状態の判別)が、実行される場合であっても、非選択電圧が、非選択ビット線及び非選択ワード線に印加されてもよい。また、本実施形態のMRAMの書き込み動作時において、非選択ビット線及び非選択ワード線は、電気的にフローティングな状態に設定されてもよい。
以上のように、第9の実施形態の磁気メモリは、メモリの特性を向上できる。
(10) その他
上述の実施形態において、磁気抵抗効果素子をメモリ素子に用いたメモリデバイスが、例示されている。但し、磁気抵抗効果素子以外の可変抵抗素子をメモリ素子に用いたメモリデバイス(例えば、抵抗変化型メモリ)に、上述の実施形態が、適用されてもよい。
上述の実施形態において、書き込み動作時において、ビット線が高電位側に設定され、ワード線が低電位側に設定されている例が、説明された。但し、本実施形態の磁気メモリ(又は抵抗変化型メモリ)において、ビット線及びワード線に対するメモリ素子(例えば、磁気抵抗効果素子)及びセレクタ素子の接続関係に応じて、書き込み動作時において、ビット線が低電位側に設定され、ワード線が高電位側に設定されてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。