JP6671830B2 - 熱処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、環状のワークの周面の全周にわたって熱処理加工を行うための熱処理装置に関する。
従来から、鉄系金属から成る鋼材の表面層だけを硬化させ、内部は靱性のまま保持して、耐摩耗性や耐疲労性を与える熱処理の手法が知られている。この種の表面硬化の手法には、焼入れ、浸炭法、窒化法などがある。
鋼材からなる環状部材に対する表面硬化処理の手法として、例えば、加熱コイルを用いた焼入れが用いられている。具体的には、1個又は2個の加熱コイルを用いて、環状部材を加熱した後、急冷し、焼入れを行う焼入れ装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、2個以上偶数個の可動の高周波誘導子を用いてリングワークの外周を加熱し、高周波誘導子に設けられた冷却液噴出孔から冷却液の噴出を行うことによりリングワークを冷却し、焼入れする高周波焼入方法が開示されている。
特公昭36−505号公報
上掲した特許文献1に記載の高周波焼入方法では、高周波誘導子をリングワークの外周にそって移動させる機構は省略されている。しかしながら、一様な硬化層が形成された環状部材を得るためには、加熱コイルを環状部材の周面に沿って安定して移動させることが必要である。
ここで、従来の熱処理装置200は、図7の分図(b)に示すように、環状のワークWを載置することができるテーブル11と、ワークWの周面を熱処理加工するための一対の熱処理加工部20と、テーブル11に対して相対的に移動可能な一対の旋回アーム30と、を有して構成される。
テーブル11は、ワークWを載置することができるものである。ワークWを電動のクレーン17によってテーブル11上に載置し、固定することで、熱処理加工を行うことができる状態とすることが可能となっている。そして、テーブル11は、テーブル11などの基礎となるベース13上に設置される回転部15によってテーブル11の中心を回転中心軸として回転することができるようになっている。
図7の分図(b)に示すように、回転部15は、モータ12からの回転駆動を伝達するギアを介してモータ12と接続される。そして、回転部15の周りには、軸受14を介して固定ケーシング16が設置される。この固定ケーシング16は、基礎となるベース13に固定されて設置される。
回転部15上には、テーブル11が設置されており、このテーブル11は、回転部15と回転中心が一致した状態となるように固定設置される。モータ12からの回転駆動力はギアによって伝達され、回転部15が回転することとなる。そして、回転部15に固定設置されたテーブル11も、回転部15が回転することによって回転することとなる。
テーブル11上には、ワークWを取り付けるためのクランプ機構19が設置され、このクランプ機構19によってワークWをテーブル11上に取り付けることができるようになっている。
また、従来の熱処理装置200は、ワークWの周面を熱処理加工するための一対の熱処理加工部20を有して構成される。一対の熱処理加工部20はそれぞれ、ワークWを加熱するための加熱コイル21と、ワークWを冷却するための冷却水放出部と、不図示の冷却装置を備えている。従来の熱処理装置200は、加熱コイル21と冷却水放出部と不図示の冷却装置とによって、ワークWの昇温および冷却を行い、例えば焼入れなどの熱処理加工をワークWに対して行うことができるようになっている。そして、一対の熱処理加工部20は、テーブル11に対して相対的に旋回移動が可能な一対の旋回アーム30にそれぞれ設置される。
旋回アーム30は、図7の分図(b)に示すように、旋回アーム30の上側を構成する上側アーム31と、旋回アーム30の下側を構成する下側アーム33と、下側アーム33上に設置される垂直アーム32とから構成され、外観が側面視で略コの字形状となっている。旋回アーム30は、テーブル11に対して相対的に旋回移動が可能なものであり、モータ35とタイミングベルト等を介して接続されることで、モータ35からの伝動により回転可能となっている。そして、旋回アーム30の下側アーム33の上には、後述するトランス41などを介して熱処理加工部20が設置される。旋回アーム30がテーブル11に対して相対的に旋回移動すると、旋回アーム30に含まれる下側アーム33上に設置された熱処理加工部20も旋回移動することとなる。
しかしながら、従来の熱処理装置200は、図7の分図(a)に示すように、ワークWをテーブル11上に載置するために、クレーン17が、テーブル11および一対の熱処理加工部20の回転中心の軸の延長線上に配置されているので、上側アーム31の旋回中心と下側アーム33の旋回中心とが一致していなかった。このため、図8に示すように、従来の熱処理装置200では、紙面右側の旋回アーム30が有する上側アーム31は、旋回中心Rを中心として旋回し、紙面左側の旋回アーム30が有する上側アーム31は、旋回中心Lを中心として旋回し、さらに、下側アーム33上に設置される加熱コイル21は、旋回中心Cを中心として旋回する構成となっていた。
このように、従来の熱処理装置200では、旋回アーム30における上側アーム31の旋回中心と下側アーム33の旋回中心とが一致していなかったので、加熱コイル21をワークWの周面に沿って安定して移動することが難しく、所望の焼入れ品質を有するワークWを得ることが難しいという課題があり、また、加熱コイル21を含む熱処理加工部20の旋回速度を上げることが難しいという課題があった。そして、加熱コイル21をワークWの周面に沿って安定して移動させるために、加熱コイル21を含む熱処理装置20を保持する保持部材(旋回アーム30)の剛性が高い熱処理装置が求められていた。
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、環状のワークの周面の全周にわたって一様な熱処理加工を安定して行うことができる熱処理装置を提供することにある。
本発明に係る熱処理装置は、環状のワークを載置可能なテーブルと、前記ワークの周面を熱処理加工するための一対の熱処理加工部と、を備え、前記一対の熱処理加工部が、前記ワークの周面に沿って互いに反対方向に移動しながら当該ワークに熱処理加工を施すことで、所望の性質を有するワークを得るために用いられる熱処理装置であって、前記一対の熱処理加工部は、前記テーブルに対して相対的に旋回移動が可能な一対の旋回アームにそれぞれ設置され、前記旋回アームは、前記熱処理加工部が保持される下側アームと、前記下側アーム上に略垂直に設置される垂直アームと、前記垂直アーム上に設置される上側アームと、を備えることで側面視で略コの字形状となっており、前記一対の上側アームの旋回中心が前記一対の下側アームの旋回中心と一致するとともに、前記一対の旋回アームの旋回中心と前記テーブルの旋回中心とが一致することを特徴とするものである。
本発明によれば、環状のワークの全周にわたって一様な熱処理加工を安定して行うための熱処理装置を提供することができる。
本実施形態に係る熱処理装置の全体の構成例を示す図である。 本実施形態に係る熱処理装置のテーブルを説明するための図であり、図中の分図(a)は、本実施形態に係る熱処理装置のテーブルの平面図であり、図中の分図(b)は、本実施形態に係る熱処理装置の側面図である。 本実施形態に係る旋回アームの構成例および動作例を説明するための平面視概略図である。 本実施形態に係る熱処理装置の基本的な動作例を示す概略図であり、図中の分図(a)が焼入れを開始する位置(焼始め)の状態を示す概略図であり、図中の分図(b)が焼始めと焼入れを終了する位置(焼終り)との間の状態を示す概略図であり、図中の分図(c)および分図(d)が焼終りの状態を示す概略図である。 旋回軸受の一部断面を含む斜視図である。 旋回軸受の断面図である。 従来の熱処理装置の構成を示す図であり、図中の分図(a)は、従来の熱処理装置に係る上側アームの平面図であり、図中の分図(b)は、従来の熱処理装置の側面図である。 従来の熱処理装置の動作例を説明するための平面視概略図である。
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
まず、図1〜図4を用いて、本実施形態に係る熱処理装置100の全体構成例について説明する。ここで、図1は、本実施形態に係る熱処理装置の全体の構成例を示す図である。また、図2は、本実施形態に係る熱処理装置のテーブルを説明するための図であり、図中の分図(a)は、本実施形態に係る熱処理装置のテーブルの平面図であり、図中の分図(b)は、本実施形態に係る熱処理装置の側面図である。そして、図3は、本実施形態に係る旋回アームの構成例および動作例を説明するための平面視概略図である。図4は、本実施形態に係る熱処理装置の基本的な動作例を示す概略図であり、図中の分図(a)が焼入れを開始する位置(焼始め)の状態を示す概略図であり、図中の分図(b)が焼始めと焼入れを終了する位置(焼終り)との間の状態を示す概略図であり、図中の分図(c)および分図(d)が焼終りの状態を示す概略図である。
図1、図2および図4に示すように、本実施形態に係る熱処理装置100は、環状のワークWを載置可能なテーブル11と、ワークWの周面を熱処理加工するための一対の熱処理加工部20(20a,20b)と、を有して構成される。
ワークWは、熱処理加工が施される加工材料である。本実施形態におけるワークWは、例えば、旋回軸受を構成する外輪や内輪などであり、断面視が略台形状もしくは略矩形状となっている。そして、ワークWにおける、例えば、旋回軸受の転動体転走面となる周面に対して、熱処理加工が行われることとなる。
テーブル11は、ワークWを載置することができるものであり、本実施形態に係るテーブル11は、図2の分図(a)に示すように、平面視略円形状となっている。そして、本実施形態に係る熱処理装置100では、例えば、フォークリフトなどの荷役トラックによってワークWをテーブル11上に載置し、後述するクランプ機構19によってワークWを固定することで、熱処理加工を行うことができる状態とすることが可能となっている。
テーブル11は、基礎となるベース13上に設置される回転部15によってテーブル11の中心を回転中心軸として回転することができるようになっている。
図1に示すように、回転部15は、モータ12からの回転駆動を伝達するギアを介してモータ12と接続される。回転部15の周りには、軸受14を介して固定ケーシング16が設置される。この固定ケーシング16は、基礎となるベース13に対して固定されて設置される。
そして、図1および図2に示すように、回転部15上にテーブル11が固定されるとともに、このテーブル11は、回転部15と回転中心が一致した状態となるように固定設置される。
モータ12からの回転駆動力はギアによって伝達され、回転部15が回転することとなる。そして、回転部15に固定設置されたテーブル11も、回転部15が回転することによって回転することとなる。
テーブル11上には、ワークWを取り付けるためのクランプ機構19が設置され、クランプ機構19によってワークWをテーブル11上に取り付けることができるようになっている。
クランプ機構19は、環状のワークWの直径などに合わせて伸縮することができるように構成されている。図2の分図(a)に示すように、本実施形態に係る熱処理装置100は、例えば、最小直径1500mmのワークWminから最大直径3100mmのワークWmaxに対応し、ワークWminやワークmaxをテーブル11の上に載置するとともに固定し、ワークWminやワークmaxの周面に対して熱処理加工をすることができるようになっている。
以上の構成により、クランプ機構19により固定されたテーブル11上のワークWは、テーブル11の中心(すなわち、ワークWの中心)を回転中心軸として回転することができるようになっている(ただし、本実施形態では、熱処理加工を行う際にテーブル11は回転させず、固定された状態としている。)。
また、図4に示すように、本実施形態に係る熱処理装置100は、ワークWの周面を熱処理加工するための一対の熱処理加工部20(20a,20b)を有して構成される。
一対の熱処理加工部20(20a,20b)は、図4に示すように、それぞれワークWを加熱するための加熱コイル21(21a,21b)と、ワークWを冷却するための冷却水放出部23(23a,23b)とを備えている。
加熱コイル21は、ワークWの周面に対して対向配置可能となるように構成され、ワークWの周面を加熱することができるようになっている。図1および図2では、加熱コイル21の形状は、その先端が断面視略三角形状に形成されている。このような形状を有する加熱コイル21は、例えば、断面視略くの字形状の切欠きを有する略矩形状のワークWを加熱することができるようになっている。
そして、加熱コイル21は、加熱コイル21を取り付けるための加熱コイル取付部27に対して、取付けおよび取外しが可能な構成になっている。したがって、本実施形態に係る熱処理装置100によれば、加熱コイル21を取り替えるだけで、環状のワークWの外周側や内周側など、ワークWのあらゆる箇所を熱処理加工することができるとともに、種々の形状を有するワークWの熱処理加工を行うことができるようになっている。
冷却水放出部23は、ワークWを冷却するためのものである。冷却水放出部23は、例えば加熱コイル21に併設されるとともに、その側面またはワークWに対向する面に冷却水を放出するための孔が複数形成され、冷却水を放出することができるように構成されることとすることができる。
さらに、本実施形態に係る熱処理装置100は、熱処理加工部20をワークWの焼終り箇所から退避させた後にワークWを冷却するための冷却装置26が、ワークWの焼終り箇所となるテーブル11上に固定設置される(図4参照)。この冷却装置26は、例えば、旋回軸受の外輪や内輪となるワークWと対向して設置され、ワークWと対向する面に複数の孔を開けて、冷却水を放出することができるようにすることができる。
そして、本実施形態に係る熱処理装置100は、加熱コイル21と冷却水放出部23とによって、ワークWの昇温および冷却を行った後、冷却装置26により更に冷却を行い、例えば焼入れなどの熱処理加工をワークWに対して行うことができるようになっている。
熱処理加工部20は、図1に示すように、テーブル11に対して相対的に旋回移動が可能な旋回アーム30によって保持されるように構成される。
旋回アーム30は、上側アーム31と、垂直アーム32と、下側アーム33とから構成され、図1に示すように、外観が側面視で略コの字形状となっている。そして、一対の旋回アーム30は、図3に示すように、旋回中心が一致した状態となるように設置される。旋回アーム30は、テーブル11に対して相対的に旋回移動が可能なものであり、モータ35とタイミングベルト等を介して接続されることで、モータ35からの伝動により回転可能となっている。
下側アーム33は、旋回アーム30の下側を構成するものであり、図1に示すように、当該下側アーム33上には、後述するトランス41などを介して熱処理加工部20が載置され、その上面に運動案内装置の軌道部材としてのスプライン軸を組み込んで構成することができる。一方、後述するトランス支持部43は、運動案内装置の移動部材としてのスプラインナットを組み込んで構成することができる。このような構成により、トランス支持部43、トランス41およびトランス41に接続して設置される熱処理加工部20を、環状のワークWに対して直径方向に移動させることができ、種々の直径を有する環状のワークWの焼入れを行うことができるようになっている。
下側アーム33は、図1および図2の分図(b)に示すように、軸受34を介して固定ケーシング16に旋回可能な状態で設置される。下側アーム33を含む旋回アーム30は、回転部15(すなわち、テーブル11)とは別々に回転をすることができるようになっている。すなわち、回転部15が回転していても、下側アーム33を含む旋回アーム30は停止していることができるようになっている。また、回転部15が回転していなくても、下側アーム33を含む旋回アーム30は、回転することができるようになっている。なお、本実施形態に係る熱処理装置100では、回転部15(すなわち、テーブル11)は、モータ12からの伝動により回転し、下側アーム33を含む旋回アーム30は、モータ35からの伝動により回転する構成となっている。
下側アーム33の上方には、トランス支持部43が設置される。トランス支持部43は、トランス41を支持するためのものである。
トランス支持部43上に設置されるトランス41には、不図示の電源から電力が供給される。図1および図2に示すように、トランス41には、加熱コイル取付部27を介して加熱コイル21が設置される。そして、トランス41は、加熱コイル21に流れる電流を調整することができるようになっている。
垂直アーム32は、図1に示すように、下側アーム33上に略垂直に設置されるとともに上側アーム31と下側アーム33とをつなぐように構成される。
垂直アーム32上には、上側アーム31が設置される。上側アーム31は、旋回アーム30の上側を構成するものである。本実施形態に係る熱処理装置100は、上述した従来の熱処理装置200とは異なり、クレーン17を設置せず、フォークリフトなどの荷役トラックを用いてワークWをテーブル11上に載置することとしたため、一対の上側アーム31の旋回中心C'が一対の下側アーム33の旋回中心C'と一致するように、上側アーム31を設置することができるようになっている(図3参照)。さらに、本実施形態に係る熱処理装置100は、上側アーム31の旋回中心を、テーブル11の回転中心の中心軸の延長線上に配置しているため、旋回アーム30の旋回中心C'とテーブル11の旋回中心C'とも一致する構成となっている。
また、上述したように、従来の熱処理装置200では、図8に示すように、紙面左側および紙面右側の上側アーム31の旋回中心L,Rと下側アーム33の旋回中心Cが異なっていたため、加熱コイル21をワークWの周面に沿って安定して移動することが難しく、所望の焼入れ品質を有するワークWを得ることが難しかった。すなわち、下側アーム33上に設置される一対の熱処理加工部20が、ワークWの周面に沿って互いに反対方向に移動しながら当該ワークWに熱処理加工を施す際に、加熱コイル21と、当該加熱コイル21に対向するワークWの周面との角度や距離などを一定にすることが難しく、所望の焼入れ品質を有するワークWを得ることが難しいという課題があった。また、加熱コイル21を含む熱処理加工部20が設置される下側アーム33の旋回の速度を上げると、上側アーム31と下側アーム33とのバランスが悪いことから、下側アーム33の旋回の速度を上げることが難しいという課題があった。
これに対して、本実施形態に係る熱処理装置100では、上側アーム31の旋回中心C'と下側アーム33の旋回中心C'とが一致しており、さらに、旋回アーム30の旋回中心C'とテーブル11の旋回中心C'とも一致する構成となっているので、旋回アーム30の安定した旋回動作が可能となっている。したがって、本実施形態に係る熱処理装置100によれば、一様な焼入れ品質を有するワークWを安定して得ることができる熱処理装置100を実現することが可能である。また、本実施形態に係る熱処理加工部20は、上述したような剛性の高い旋回アーム30によって保持されているので、加熱コイル21を含む熱処理加工部20の旋回の速度を上げても、加熱コイル21を含む熱処理加工部20の振動を防ぐことができるようになっている。したがって、本実施形態に係る熱処理装置100によれば、熱処理加工部20によるワークWの周面に対する焼入れの速度を上げることができ、生産性の向上につながることとなる。
以上、本実施形態に係る熱処理装置100の全体構成について、説明した。次に、本実施形態に係る熱処理装置100の動作例について、図3および図4を用いて、説明する。
本実施形態に係る熱処理装置100では、熱処理加工を開始するときには、例えば、図4の分図(a)に示すように、一対の熱処理加工部20(20a,20b)が、互いに隣接して配置されることとすることができる。上述したように、一対の熱処理加工部20(20a,20b)は、一対の旋回アーム30(30a,30b)に設置されるとともに当該旋回アーム30(30a,30b)によって保持されるように構成される。
図4の分図(a)に示すように、紙面左側の熱処理加工部20aは、旋回アーム30aの旋回移動によってワークWの周面に沿って紙面左上方向に移動しながら、熱処理加工部20aに含まれる加熱コイル21aがワークWを加熱することとなる。そして、加熱コイル21aによって加熱されたワークWは、冷却水放出部23aによって順次冷却されることとなる。より詳しくは、旋回アーム30aが紙面左上方向に旋回移動すると、旋回アーム30aに設置された熱処理加工部20aも紙面左上方向に旋回移動しながら、熱処理加工部20aと対向する面のワークWの周面を加熱コイル21aが加熱し、その後に加熱されたワークWに対して、冷却水放出部23aが冷却水を放出することによって、ワークWは冷却され、熱処理加工(焼入れ)が行われることになる。
一方、紙面左側の熱処理加工部20aと同様に、図4の分図(a)に示すように、紙面右側の熱処理加工部20bは、旋回アーム30bの旋回移動によってワークWの周面に沿って紙面右上方向に移動しながら、熱処理加工部20bに含まれる加熱コイル21bがワークWを加熱し、加熱されたワークWは、冷却水放出部23bによって順次冷却されることとなる。より詳しくは、旋回アーム30bが紙面左上方向に旋回移動すると、旋回アーム30bに設置された熱処理加工部20bも紙面右上方向に旋回移動しながら、加熱コイル21bが熱処理加工部20bと対向する面のワークWの周面を加熱し、その後に加熱されたワークWに対して、冷却水放出部23bが冷却水を放出することによって、ワークWは冷却され、熱処理加工(焼入れ)が行われることになる。
このような動作により、一対の熱処理加工部20(20a,20b)は、ワークWの周面の全周にわたって熱処理加工(焼入れ)を施していくこととなる。本実施形態に係る熱処理装置100は、一対の熱処理加工部20(20a,20b)が一対の旋回アーム30(30a,30b)によって保持されているので、本実施形態に係る熱処理装置100によれば、一対の熱処理加工部20の安定した旋回移動を可能とし、一対の加熱コイル21(21a,21b)と、当該加熱コイル21(21a,21b)と対向するワークWの周面との角度や距離を保持することができるようになり、一様な焼入れ品質を有するワークWを安定して得ることができるようになる。また、一対の加熱コイル21(21a,21b)を含む一対の熱処理加工部20(20a,20b)の旋回移動の速度を上げても、一対の熱処理加工部20(20a,20b)は、剛性の高い一対の旋回アーム30(30a,30b)によって保持されることとなるので、一対の熱処理加工部20(20a,20b)の振動を防ぐことができるようになっている。したがって、本実施形態に係る熱処理装置100は、一対の熱処理加工部20(20a,20b)によるワークWの周面に対する焼入れの速度を上げることができ、生産性を向上させることが可能となる。
図4の分図(b)に示すように、焼始めと焼終りとの略中間の位置に一対の熱処理加工部20(20a,20b)および一対の旋回アーム30(30a,30b)が移動してくると、ワークWの略半分が熱処理加工(焼入れ)されたことになる。
図4の分図(b)に示された熱処理装置100では、紙面左側の熱処理加工部20aは、旋回アーム30aの旋回移動によってワークWの周面に沿って紙面右上方向に旋回移動しながら、熱処理加工部20aに含まれる加熱コイル21aによってワークWの周面を加熱し、加熱されたワークWは、その後に旋回移動してくる冷却水放出部23aから放出される冷却水によって順次冷却されることとなる。
また、紙面右側の熱処理加工部20bは、旋回アーム30bの旋回移動によってワークWの周面に沿って紙面左上方向に旋回移動しながら、熱処理加工部20bに含まれる加熱コイル21bによってワークWの周面を加熱し、加熱されたワークWは、その後に旋回移動してくる冷却水放出部23bから放出される冷却水によって順次冷却されることとなる。
以上のように熱処理加工を進めることで、一対の旋回アーム30(30a,30b)に設置された一対の熱処理加工部20(20a,20b)は、図4の分図(c)に示すように、互いに隣り合う位置まで移動することになる。
そして、一対の熱処理加工部20(20a,20b)が、焼終りに近づくと、一対の旋回アーム30(30a,30b)は移動速度を緩めながら旋回移動することで一対の熱処理加工部20(20a,20b)も移動速度を緩めながら旋回移動し、熱伝導により焼終りの部分のワークWを加熱することができる構成を有している。
焼終りの部分のワークWの加熱が熱伝導により行われた後、図4の分図(d)に示すように、一対の熱処理加工部20(20a,20b)を焼入れが終了する箇所から退避させるように一対の旋回アーム30(30a,30b)を移動させ、冷却装置26によってワークWの冷却を行うこととなる。このようにして、ワークWの周面の全周にわたって熱処理加工(焼入れ)を施していくこととなる。なお、一対の熱処理加工部20(20a,20b)の焼終り箇所からの退避は、熱処理加工を行った熱処理加工部20(20a,20b)の移動方向とは逆方向に、一対の熱処理加工部20(20a,20b)が設置された一対の旋回アーム30(30a,30b)を移動させ、一対の熱処理加工部20(20a,20b)を移動させれば良い。
以上、本実施形態に係る熱処理装置100の動作例について、説明した。
本実施形態に係る熱処理装置100によって熱処理加工が施されたワークWは、例えば、旋回軸受の外輪や内輪として用いられる。図5および図6を用いて、旋回軸受について、説明する。ここで、図5は、旋回軸受の一部断面を含む斜視図であり、図6は、旋回軸受の断面図である。
図5および図6は、旋回軸受用スペーサを組み込んだ旋回軸受を示すものであり、外輪55および内輪56それぞれにはV字形の転走面55a,56aが形成され、この転走面55a,56aの間で断面略四角形、例えば略正方形状のローラ転走路57が構成されている。ローラ転走路には複数のローラ58a,58b…がその傾斜方向を互い違いに交差させながら配列・収納されている。図5中斜線で示す旋回軸受用スペーサ59(以下、スペーサという)は、この複数のローラ58a,58b…間に介在され、ローラ58a,58b…を所定の姿勢に保持している。
外輪55は、その内周にV字形の転走面55aが形成される。V字形の開き角度は略90度に設定される。この外輪55は、一対の環状のワークWから構成され、ローラ58やスペーサ59の充填のために上下に2分割される。外輪55には、その周方向の一ヶ所に、外周から外輪転走面55aまで延びる給油孔75が形成されている。
内輪56は、外径を外輪55の内径に略合わせて、外輪55の内周側に嵌め込まれる。内輪56の外周には、外輪転走面55aに対向させて内輪転走面56aが形成される。内輪転走面56aもV字形で、開き角度は略90度に設定される。外輪転走面55aと内輪転走面56aとで、断面略正方形状のローラ転走路57が構成される。
ローラ転走路57において、ローラ58a,58b…はスペーサ59と交互に配置されている。ローラ58a,58b…は、その高さが自らの外径よりも僅かに小さく設定される。スペーサ59の左右に隣接するローラ58a,58b…は、その軸線が互いに直交し、外向きローラ58aと内向きローラ58bとに分類される。外向きローラ58aは、スペーサ59によって、その軸線60が外輪55および内輪56の回転中心線P上に位置する旋回中心点P1を向くような姿勢に保持されている。内向きローラ58bも、スペーサ59によって、その軸線61が回転中心線P上に位置する旋回中心点P2を向くような姿勢に保持されている。したがって、ローラ58a,58b…の軸線はローラ転走路57に対して常に直角を保ち、各ローラ58a,58b…は均等なすべりを保ちながら転走する。
このように本実施形態に係る熱処理装置100によって熱処理加工されたワークWを組み合わせて、外輪転走面55aと内輪転走面56aとでローラ転走路57を形成することができる。ローラ転走路には、複数のローラが配列・収納され、この複数のローラの間にはスペーサが配置される。そして、ローラは、ローラ転走路内を転走することとなる。本実施形態に係る熱処理装置100によって熱処理加工された断面視略台形状の環状のワークWを上下に配置して構成されることとなる。そして、この内輪は、本実施形態に係る熱処理装置100によって熱処理加工された断面視略くの字形状の切欠きを有する略矩形状のワークWから構成されることとなる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
また、例えば、本実施形態に係る熱処理装置100は、加熱コイル21と冷却水放出部23とが、熱処理加工部20の移動方向に対して隣り合って併設されているが、本発明の範囲はこれに限定されない。すなわち、熱処理装置100の通常の使用状態の方向において、例えば、加熱コイル21の上に冷却水放出部23が設置され、併設されることとしても良い。
さらに、例えば、本実施形態に係る熱処理装置100は、焼入れだけではなく、焼戻しや焼鈍しなどに適用することができる。ワークWの焼戻しを行う場合には、例えば、加熱コイル21によって適当な温度まで加熱した後、冷却水放出部23によって冷却することとすることができる。ワークWの焼鈍しを行う場合も、例えば、加熱コイル21によって適当な温度まで加熱した後、冷却水放出部23によって徐々に冷却することとすることができる。
また、本実施形態では、ワークWをテーブル11上に固定し、旋回アーム30によって熱処理加工部20を旋回移動させることで熱処理加工が行われる場合を想定して説明を行ったが、ワークWと熱処理加工部20との相対的な位置関係は、図4で説明した熱処理装置100の動作例を実現できるものであれば良く、例えば、テーブル11上のワークWを回転させながら旋回アーム30によって熱処理加工部20を旋回移動させるように熱処理装置100を稼働させても良い。
さらに、本実施形態に係る旋回アーム30は、外観が側面視で略コの字形状となるように構成されているが、旋回アーム30の形状はこれに限定されず、熱処理加工部20を安定して保持することができれば、どのような形状でも良い。
また、本実施形態に係る熱処理装置100では、ワークWとして旋回軸受の構成部材に対して熱処理加工を行う例を挙げたが、本発明はこれに限定されず、あらゆる環状のワークに対して用いることができる。
なお、本実施形態に係る熱処理装置100は、下側アーム33に運動案内装置を設置し、下側アーム33が含まれる旋回アーム30を環状のワークWに対して直径方向に移動可能としているが、例えば、上側アーム31にもその下面に運動案内装置の軌道部材としてのスプライン軸を組み込むとともに垂直アーム32に運動案内装置の移動部材としてのスプラインナットを組み込んで構成することとすることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
100,200 熱処理装置、11 テーブル、12,35 モータ、13 ベース、14,34 軸受、15 回転部、16 固定ケーシング、17 クレーン、19 クランプ機構、20熱処理加工部、21 加熱コイル、23 冷却水放出部、26 冷却装置、27 加熱コイル取付部、30 旋回アーム、31 上側アーム、32 垂直アーム、33 下側アーム、41 トランス、43 トランス支持部、55 外輪、55a 外輪転走面、56 内輪、56a 内輪転走面、57 ローラ転走路、58a 外向きローラ(ローラ)、58b 内向きローラ(ローラ)、59 旋回軸受用スペーサ、60,61 軸線、75 給油孔、C,C',L,R 旋回中心、P 回転中心線、P1,P2 旋回中心線、W ワーク。

Claims (1)

  1. 環状のワークを載置可能なテーブルと、
    前記ワークの周面を熱処理加工するための一対の熱処理加工部と、
    を備え、
    前記一対の熱処理加工部が、前記ワークの周面に沿って互いに反対方向に移動しながら当該ワークに熱処理加工を施すことで、所望の性質を有するワークを得るために用いられる熱処理装置において、
    前記一対の熱処理加工部は、前記テーブルに対して相対的に旋回移動が可能な一対の旋回アームにそれぞれ設置され、
    前記旋回アームは、
    前記熱処理加工部が保持される下側アームと、
    前記下側アーム上に略垂直に設置される垂直アームと、
    前記垂直アーム上に設置される上側アームと、
    を備えることで側面視で略コの字形状となっており
    前記一対の上側アームの旋回中心が前記一対の下側アームの旋回中心と一致するとともに、前記一対の旋回アームの旋回中心と前記テーブルの旋回中心とが一致することを特徴とする熱処理装置。
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