JP6671193B2 - 膜付きステンレス箔およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、太陽電池、ディスプレイ、有機EL照明などの薄膜電子デバイス用フレキシブル基板に適用可能な膜付きステンレス箔に関する。
電子ペーパー、有機ELディスプレイ、有機EL照明、太陽電池などの電子デバイスでは、薄膜フレキシブル基板が求められている。従来、これらのデバイスはガラス基板上に作製されていたが、薄膜フレキシブル基板上に作製すれば、落としても割れることがなく、軽量性・柔軟性を活かした新しい用途が広がる。薄膜フレキシブル基板として検討されている樹脂フィルムは耐熱性が乏しく寸法安定性が悪い、また樹脂によってはガスバリア性が低いという課題があり、薄ガラスは割れやすいという問題がある。ステンレス箔の表面は圧延すじやスクラッチ疵などがあり、表面はガラスとは比較できないほど粗い。このためステンレス箔を被覆する膜はステンレス箔の表面をガラス基板並みに平坦化することが重要である。この平坦化膜はステンレス箔に絶縁性を付与することにもつながる。
ステンレス箔に、耐熱性、加工性、平坦性、可撓性、絶縁性に優れた無機有機ハイブリッド膜を被膜することが、特許文献1で開示されている。一般に、このような膜の材料は、スリットコート、スピンコート、ロールコートなどの手法で、ステンレス箔に塗布され、その後、乾燥、熱処理等の工程で、膜が形成される。特許文献1では、ディップコートを用いて、ステンレス箔の両面を膜で被覆している。
薄膜フレキシブル基材上にデバイスを形成する場合には、Roll to Rollプロセスを採用することにより低コストで量産することが可能になる。Roll to Rollプロセスでは、コイル状の膜付きのステンレス箔から、シート状の膜付きのステンレス箔を巻きだし、その上にデバイスを形成するための各種プロセス(例えば、フォトレジスト塗布、露光、現像、エッチング、レジスト剥離、イオン打ち込み等)を行う。また、薄膜フレキシブル基材自体の製造においても、Roll to Rollプロセスを用いることもでき、これにより薄膜フレキシブル基材のコイルを得ることが可能である。
特開2003−247078号公報 特開2011−077246号公報 特開平7−029670号公報 国際公開第2011/142089号
特許文献1は、ディップコートを用いて、耐熱性、加工性、平坦性、可撓性、絶縁性に優れた無機有機ハイブリッド膜を、ステンレス箔の両面を膜で被覆している。この場合、ステンレス箔のTD方向の端部を積極的に膜で被覆することは開示されていない。
Roll to Rollプロセスで薄膜デバイスを形成する過程では、エッチングも行われるが、エッチング液が劣化することがあった。劣化の原因の一つとして、両面被覆されたステンレス箔の端部から、エッチング液が浸透し、ステンレスがエッチング液に溶出することを、本発明者が見出した。
ステンレス箔等の金属箔の周囲を、絶縁被覆した電子デバイス用基板に関する先行事例があるが、いずれもRoll to Rollプロセスには適さないものであった。
特許文献2は、ステンレス鋼板の基体全体を、2枚のアルミニウム板で挟み込み、2枚のアルミニウム板の周縁部どうしを接合した、クラッド材を開示している。アルミニウム板の表面は、陽極酸化されて、絶縁性を有することも開示されている。しかし、このアルミニウム陽極酸化皮膜は、無機被膜であるため硬く、Roll to Rollプロセスで曲げられるとクラックが入りやすい。エッチング液は、クラックから浸入し、アルミニウムも溶かし、さらにはステンレス基体も溶かしてしまうので、それらの溶出金属によってエッチング液が劣化する。
特許文献3は、ポリイミド層によって絶縁被覆された、厚さの薄い面状発熱体金属発熱体を開示している。なお、いうまでもないが、特許文献3の被覆発熱体は、薄膜デバイス用基板とはいえないものである。
万一、特許文献3の両面をポリイミド層で被覆した発熱体を、薄膜デバイス用の基板材料として用いた場合、ポリイミドはガスバリア性が低いので、外界の湿気を素子に持ち込むことがあり、両面をポリイミド層で被覆された基板は、有機EL素子のように水分で劣化しやすい素子には適用することができない。
特許文献4は、Roll to Rollプロセスでフレキシブル半導体装置を製造する方法を開示している。より具体的には、支持基板、絶縁膜、金属箔を積層し、金属箔をエッチングでパターニングして電極(ソース電極、ドレイン電極)を形成し、その上にエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、またはポリシロキサン等を含む有機無機ハイブリッド材料等の層が形成されている([0051])。樹脂等の最上層の形成方法として、貼り合わせ法、および塗布して硬化させる方法が開示されている([0142])。なお、いうまでもないが、特許文献4の積層品は、完成した半導体装置であり、薄膜デバイス用基板とはいえないものである。
また、特許文献4の、エッチングした金属箔(電極)を一般的な樹脂で覆った基板は、樹脂の耐熱性およびガスバリア性の観点から、薄膜デバイス用基板に応用するには、不適である。有機無機ハイブリッド材料は、組成および作成条件を適切に選択すれば、薄膜デバイス用基板として利用可能性がある。しかし、一般にゾルゲル法で作製できる有機無機ハイブリッド材料の硬化処理時間は長く、これに対応できるRoll to Roll装置は非現実的な長さの炉を有しなければならず、現実的な大きさのRoll to Roll装置での対応は難しい。
上記の状況から、Roll to Rollプロセスに対応可能な薄膜デバイス向けフレキシブル基板として利用できる膜付きステンレス箔であって、特にエッチングの際にステンレス箔のTD方向の端部からステンレスが溶出することのない膜付きステンレス箔およびその製造方法が求められている。本発明は、この課題を解決すべくなされたものである。
本発明により以下が提供される。
(1)
第1の絶縁膜、
前記第1の絶縁膜の上に直接配置されたステンレス箔、及び、
前記ステンレス箔(および前記第1の絶縁膜)上に直接配置された第2の絶縁膜、
を含んでなる、膜付きステンレス箔であって、
前記膜付きステンレス箔のTD方向断面において、
前記第1の絶縁膜の端部から近位の前記ステンレス箔の端部までの距離bが0.1〜5.0mmであり、
前記ステンレス箔は上底が下底より短い略台形形状を有し、前記ステンレス箔の厚みtが10〜150μmであり、
前記台形の上底および斜辺が、前記第2の絶縁膜で完全に被覆されている、
ことを特徴とする、膜付きステンレス箔。
(2)
前記台形の斜辺から、前記第1の絶縁膜の上面の少なくとも一部へ、前記第2の絶縁膜が連続的に 被覆していることを特徴とする、(1)に記載の膜付きステンレス箔。
(3)
前記第2の絶縁膜は、前記ステンレス箔の上底の上で、膜厚2.0μm以上5.0μm以下、Raが30nm以下であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の膜付きステンレス箔。
(4)
前記膜付きステンレス箔がコイル状に巻き取られたものであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の膜付きステンレス箔。
(5)
前記第1の絶縁膜は、ポリイミドを含んでなることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の膜付きステンレス箔。
(6)
前記第2の絶縁膜は、有機溶媒中フェニルトリアルコキシシラン1モルに対して、酢酸0.1モル以上1モル以下、有機スズ0.005モル以上0.05モル以下を触媒として加え、2モル以上4モル以下の水で加水分解し、160℃以上210℃以下の温度で有機溶剤を減圧留去して得られたレジンを含んでなることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の膜付きステンレス箔。
(7)
前記第2の絶縁膜は、前記レジンを芳香族炭化水素系溶剤に溶解した平坦化膜形成塗布液を前記ステンレス箔に塗布後、熱処理プロセスでリフローおよび膜硬化させたものであることを特徴とする、(6)に記載の膜付きステンレス箔。
(8)
第1の絶縁膜を用意する工程、
ステンレス箔を前記第1の絶縁膜の上に直接配置して、TD方向断面において、前記第1の絶縁膜の端部から近位の前記ステンレス箔の端部までの距離bが0.1〜5.0mmとする工程、
前記ステンレス箔をエッチングして、TD方向断面において、前記ステンレス箔は略台形形状を有し、前記ステンレス箔の厚みtが10〜150μmとする工程、
有機溶媒中フェニルトリアルコキシシラン1モルに対して、酢酸0.1モル以上1モル以下、有機スズ0.005モル以上0.05モル以下を触媒として加え、2モル以上4モル以下の水で加水分解後、160℃以上210℃以下の温度で有機溶剤を減圧留去して得られたレジンを芳香族炭化水素系溶剤に溶解した平坦化膜形成塗布液を用意する工程、
前記塗布液を前記ステンレス箔に塗布し、熱処理プロセスでリフローおよび膜硬化して、第2の絶縁膜を得て、TD方向断面において、前記台形の上底および斜辺を前記第2の絶縁膜で完全に被覆する工程、
を含んでなる膜付きステンレス箔の製造方法。
(9)
前記台形の斜辺から、前記第1の絶縁膜の上面の少なくとも一部へ、前記第2の絶縁膜が連続的に被覆していることを特徴とする、(8)に記載の膜付きステンレス箔の製造方法。
(10)
前記第2の絶縁膜は、前記ステンレス箔の上底の上で、膜厚2.0μm以上5.0μm以下、Raが30nm以下であることを特徴とする、(8)または(9)に記載の膜付きステンレス箔の製造方法。
(11)
前記膜付きステンレス箔をコイル状に巻き取る工程をさらに含むことを特徴とする、(8)〜(10)のいずれか1項に記載の膜付きステンレス箔の製造方法。
(12)
前記第1の絶縁膜は、ポリイミドを含んでなることを特徴とする、(8)〜(11)のいずれか1項に記載の膜付きステンレス箔の製造方法。
(13)
前記熱処理プロセスは、不活性ガス雰囲気中300℃以上450℃以下の熱処理炉を通過させることを含んでなる、(8)〜(12)のいずれか1項に記載の膜付きステンレス箔の製造方法。
本発明によれば、Roll to Rollプロセスに適用可能な薄膜デバイス向けフレキシブル基板として利用できる膜付きステンレス箔が提供される。しかもその膜付きステンレス箔は、エッチングの際にステンレス箔のTD方向の端部からステンレスが溶出することがない。
本発明例の膜付きステンレス箔の模式断面図 (a)フェニルシロキサンラダーポリマーの構造模式図 理想型 (b)ラダーポリマーに分枝している欠陥部 (c)反応基で終端している欠陥部
本発明により提供される、膜付きステンレス箔は、
第1の絶縁膜、
前記第1の絶縁膜の上に直接配置されたステンレス箔、及び、
前記ステンレス箔(および前記第1の絶縁膜)上に直接配置された第2の絶縁膜、
を含んでなり、
前記膜付きステンレス箔のTD方向断面において、
前記第1の絶縁膜の端部から近位の前記ステンレス箔の端部までの距離bが0.1〜5.0mmであり、
前記ステンレス箔は上底が下底より短い略台形形状を有し、前記ステンレス箔の厚みtが10〜150μmであり、
前記台形の上底および斜辺が、前記第2の絶縁膜で完全に被覆されている、
ことを特徴とする。
本発明の膜付きステンレス箔は、Roll to Rollプロセスに適用可能な薄膜デバイス向けフレキシブル基板として利用できる。フレキシブル基材上にデバイスを形成する場合には、Roll to Rollプロセスを採用することにより低コストで量産することが可能になる。以下では、主に膜付きステンレス箔について説明するが、Roll to Rollプロセスに適用できるように、膜付きのステンレス箔をコイル状に巻き取られたものも本発明の一態様として提供される。ステンレス箔コイルとしては、幅が0.3〜1.5m程度、長さが50〜2000m程度のものが想定される。
第1の絶縁膜は、ステンレス箔の下面を被覆して、膜付きステンレス箔の絶縁性を高めるものである。第1の絶縁膜はステンレス箔を支持する役割も果たす。絶縁膜の種類はシリカ・アルミナなどの金属酸化物、リン酸アルミニウム・リン酸カルシウムなどの無機塩、ポリイミド・テフロン(登録商標)などの耐熱性樹脂等が挙げられる。また、第1の絶縁膜として、後述する第2の絶縁膜の好ましい一例である、フェニル基修飾シリカ膜を用いることもできる。
電子デバイスを作製する際のプロセス温度は、電子デバイスの種類および構成材料によって異なるが、有機ELディスプレイで求められるアモルファスシリコンあるいはLTPS(low−temperature poly silicon)のTFTを作る場合には300〜400℃程度のプロセス温度になる。従ってステンレス箔を被覆する絶縁膜も400℃まで耐えられることが望ましい。この観点から、第1の絶縁膜は、ポリイミドを含んでもよい。ポリイミドのガスバリア性の低さが、プロセスや製品の品質に影響を与える場合は、その上に積層されるステンレス箔、および第2の絶縁膜の材質、形状、厚さ等を調整することで対応可能である。
金属酸化物の膜は例えばスパッタ・蒸着・CVDなどにより成膜することができる。無機塩の膜は例えばロールコーター・スプレイなどの塗布法により成膜することができる。耐熱性樹脂の膜は例えばコンマコーター・ダイコーター・スプレイなどの塗布法により成膜することができる。
第1の絶縁膜の膜厚は1μm以上25μm以下であってもよい。1μm以上の膜厚があればエッチング液へのステンレス箔の裏面からの溶出が防止できる。また、第2の絶縁膜との組み合わせによりステンレス箔端部において十分な強度を発現することができる。第1の絶縁膜の膜厚が25μmを超える場合は、膜応力により第1の絶縁膜に大きなクラックが発生したり剥離したりすることがあるので好ましくない。また巻き取り性や、薄膜化することを考慮すると、第1の絶縁膜の膜厚は薄いことが好ましく、膜厚の上限を好ましくは15μm、さらに好ましくは10μmとしてもよい。高い絶縁性の向上が見込まれ、健全な絶縁膜が得られるより好ましい第1の絶縁膜の膜厚の範囲は2μm以上5μm以下である。なお、第1の絶縁膜の厚みは接触式のいわゆるマイクロメーターを用いて測定することが出来る。
ステンレス箔は、第1の絶縁膜の上に直接配置される。本発明で用いられるステンレス箔基材は、工業的に生産されるものであり、厚さtが10〜150μmである。更に箔の厚さtが20〜100μmの範囲にあることが好ましい。更に好ましい箔の厚さは35μ〜80μmである。箔の厚みtが150μm超であると、箔としての可撓性が望めなくなるとともに、箔の大きな特徴である軽量化のメリットを失うこととなる。しかしながら、厚みtが10μmより薄いステンレス箔基材は、ハンドリングに際していわゆる折れやシワが非常に入り易くなり、工業的なプロセスになじみにくいと共に、基板としての強度が低下して使用に際しての信頼性に問題が生じる。更に、これほど薄いステンレス箔基材は工業的な観点からはそもそも高価なものとならざるを得ない。
なお、本発明で用いられるステンレス箔基材の厚みtは接触式のいわゆるマイクロメーターを用いて測定することが出来る。
ステンレス鋼は、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系に分類される。これらのうち、オーステナイト系ステンレスとしては、SUS304、SUS316、SUS310、SUS309、SUS317、SUS321、SUS347等を用いることができる。
また、フェライト系ステンレスとしては、SUS430、SUS405、SUS410、SUS436、SUS444等を用いることができる。
また、マルテンサイト系ステンレスとしては、SUS403、SUS440、SUS420、SUS410等を用いることができる。ステンレス鋼においては、フレキシブルなもの利用する場合には、オーステナイト系またはフェライト系が好ましい。特に耐熱強度を高くしたい場合に、オーステナイト系を使用することが好ましい。SUS304、SUS316が一般的だが、特に一層高い耐熱性を求める場合には、SUS310、SUS309を用いることが好ましい。いずれのステンレスであっても300〜400℃程度のプロセス温度には十分な耐熱性を有する。
ステンレス箔は、TD方向断面において、略台形形状を有している。ステンレス箔を台形型にするためには、公知のエッチング手法を用いることができる。箔の厚さが薄いため機械加工は容易ではない。通常、エッチングでは、サイドエッチング(アンダーカット)と呼ばれる現象が生じる。ステンレス箔のTD方向の端部をエッチングし、サイドエッチングが生じることを利用して、ステンレス箔を台形型に成形することができる。サイドエッチングは、ステンレス箔の端部をテーパー状に(ステンレス箔の端部がえぐられるように)エッチングし、台形(ステンレス箔)の斜辺は完全な直線状にはならないことがあるため、略台形形状のステンレス箔であると規定した。略台形の斜辺の傾きについて、ステンレス箔の厚みtに対して、図1のaの長さが概ね0.4×tとなるが、変動することも考慮して、0.2×t〜0.6×tであってもよい。ここで、aとは、台形の上底と下底の長さの差を2で除した値である。
また図1のbの長さは、ステンレス箔の端部(台形の下底の頂点)から、近位にある第1の絶縁膜の端部までの距離であり、0.1〜5.0mmである。bが0.1mm未満であると、ステンレス箔のTD方向端部、特に、台形の斜辺、台形の下底の頂点が、絶縁膜で十分に被覆されないことがある。そのため、膜付きステンレス箔をエッチング処理したときに、ステンレス箔の溶出が生じるおそれがある。bが5.0mmを超えると、構成材料の熱膨張率、熱収縮率の差によって、第1の絶縁膜の端部(bの長さに相当する部分)で反り(カール)が生じることがある。
上記の所定の形状となるように、第1の絶縁膜を用意し、ステンレス箔を第1の絶縁膜上に配置し、その後ステンレス箔エッチングしてもよく、また、予め上記の所定の形状となるように、第1の絶縁膜およびエッチングしたステンレス箔をそれぞれ用意し、それらを積層してもよい。あるいは、ステンレス箔に第1の絶縁膜を製膜した後で、ステンレス箔をエッチングして上記の所定の形状を得てもよい。
なお、上記の台形形状、長さa、bは、膜付きステンレス箔の断面をSEM等で観察することにより、確認または測定することができる。
第2の絶縁膜は、ステンレス箔の上に直接配置されており、且つ、第2の絶縁膜は、ステンレス箔の略台形形状上の上底および斜辺を完全に被覆する。また、ステンレス箔の下部(台形の下底)は、第1の絶縁膜で被覆されている。これにより、膜付きステンレス箔をエッチング処理したときに、ステンレス箔の溶出を防ぐことができる。
第2の絶縁膜は、ステンレス箔の台形形状の斜辺から、第1の絶縁膜の上面(図1のb部)の少なくとも一部へ、連続的に被覆されていてもよい。これにより、ステンレス箔の被覆をより確実にすることができる。
ステンレス箔を被覆する第2の絶縁膜材料としては、無機・有機ハイブリッド材料が挙げられる。有機材料は耐熱性が不足である。また、有機材料で被覆した場合は、デバイス形成前の平坦化膜付きステンレス箔の洗浄・乾燥工程において、洗浄用有機溶剤で被覆した有機材料が膨潤したり、洗浄時に被覆有機材料が吸収した水分や溶剤をすべて乾燥で取り除くことが難しく残留成分がデバイスに悪影響を及ぼしたりするので不適である。無機材料はクラックが入りやすくステンレス箔表面の圧延すじや疵を被覆できるだけの厚膜に成膜することが難しい。このため、耐熱性と柔軟性を適度に兼ね備えた無機・有機ハイブリッド材料が適している。無機・有機ハイブリッド材料による絶縁膜としては有機修飾シリカ膜が代表的である。有機基を含むため、無機膜より柔軟性があり厚膜が得られやすい。有機修飾シリカ膜は主骨格がSi−Oの無機骨格で形成されているため耐熱性は主骨格を修飾している有機基の分解温度で決まる。有機基としてメチル基やフェニル基を選べば400℃程度の耐熱性を確保することができる。特にフェニル基で修飾されたシリカ膜は、フェニル基の高い疎水性により、高温高湿化(たとえば85℃85%RHの環境加速試験)においてもSi−O主骨格が加水分解を受けにくく耐湿性に優れる。このため電子デバイス用基板としては、フェニル基修飾シリカ膜で被覆したステンレス箔が好ましい。特に好ましい、フェニル基修飾シリカ膜の例については、後述する。
膜付きステンレス箔、特に第2の絶縁膜の表面粗さについて説明する。
ステンレス箔は圧延によって薄くするので、圧延方向にすじが認められる。また、元の溶融金属に含まれる介在物や、圧延ロールに巻き込まれた異物などによって、圧延方向に引き伸ばされた疵も存在する。疵の大きさは幅数十μm、長さ1〜数mm程度であることが多い。ステンレス箔の表面は、従来の電子デバイス用の基板として利用されてきたガラス基板と比較できないほど粗く、そのままでは電子デバイス用の基板に不適である。本発明では、ステンレス箔の上に第2の絶縁膜を被覆して、膜つきステンレス箔の表面粗さを低減することができる。
ステンレス箔の表面粗さは圧延すじに対して平行な方向と垂直な方向で異なり、垂直方向の方が表面粗さとしては大きい数字となる。したがって、第2の絶縁被覆によってステンレス箔の平坦性を向上させる向上させる目的では表面粗さとして最も大きい数字になる垂直方向に注目する必要がある。具体的には、触針式粗さ計により1.25mmの測定長さで表面粗さを10箇所以上、ステンレス箔コイルの圧延方向に対して垂直、すなわちコイルのTD方向(ステンレス箔の巾方向)に測定し、平均値を採用する。
ステンレス箔の上に被覆した第2の絶縁膜の表面粗さと、さらにその上に形成した有機EL素子の特性の関係を詳細に調べた結果、第2の絶縁膜表面の平坦性は素子のリーク電流を減らすうえで重要であることがわかった。膜付きステンレス箔表面の圧延と垂直方向の算術平均粗さRaが30nm以下であれば、有機EL発光素子のリーク電流を1E−4A/m以下という実用的なレベルにすることができる。素子のリーク電流は第2の絶縁膜としてのフェニル基修飾シリカ膜の上に、素子の下部電極、発光部、上部電極の順に成膜して素子を作り下部電極と上部電極の間に3Vの電圧を加えたときの電流を素子面積で割って求める。発光部は複数の層から成り全層厚は100〜150nm程度であるので、膜の表面が粗い場合は下部電極と上部電極の間の距離の短いところができてしまい、素子のリーク電流が増えることになる。膜付きステンレス箔のRa、すなわち第2の絶縁膜のRaが30nmを超える場合は、1E−4A/mを超えるリーク電流の大きい素子になるため素子としての効率が悪くなったりショートが発生したりすることがある。第2の絶縁被膜のRaの好ましい範囲は20nm以下、さらに好ましくは15nm以下で、より小さなリーク電流にすることができる。
第2の絶縁膜の表面粗さは、被覆するステンレス箔の表面粗さを反映する。ステンレス箔表面そのものの表面粗さは圧延方向と垂直な方向に測ったRaが60nm以下であることが第2の絶縁膜のRaを30nm以下にする目安となる。ただし、比較的粗いステンレス箔であっても第2の絶縁膜を厚く成膜すれば平坦化はしやすくなる傾向がある。
また、第1の絶縁膜の膜厚が1μm以下の薄い場合、第2の絶縁被膜の表面粗さが、ステンレス箔そのものの表面粗さより少し平滑になる傾向がある。その理由はステンレス箔の凹凸を第1の絶縁膜によって多少埋めることができるからである。第1の絶縁膜の膜厚が1μmを超えるようになると、第1の絶縁膜材料そのものの粗さの影響が出てくる。したがって、第1の絶縁膜が無機系皮膜の場合は結晶粒径による凹凸が生じる。耐熱性樹脂の場合にはフィラーによる凹凸や、高粘度樹脂を塗ることに伴う塗りむらなどが生じる。しかしながら、第1の絶縁膜に載ったステンレス箔のRaが60nm以下であれば、そのステンレス箔の上に配置する第2の絶縁膜のRaを30nm以下にすることができる。
第2の絶縁膜の膜厚は2μm以上5μm以下としてもよい。2μmより薄い場合は、ステンレス箔が有するそのものの凹凸を被覆しきれないことがある。5μmを超える場合は膜にクラックが入りやすくなる。成膜時のクラックが入りやすいだけでなく、第2の絶縁膜で被覆されたステンレス箔をフレキシブル基板として曲げたときにも膜にクラックが入りやすくなる。膜厚は2.5μm以上4μm以下であることが、凹凸被覆とクラック防止の観点からさらに好ましい。
第2の絶縁膜として特に好ましい、フェニル基修飾シリカ膜の例について説明する。
第2の絶縁膜は、有機溶媒中、フェニルトリアルコキシシラン1モルに対して、酢酸0.1モル以上1モル以下、有機スズ0.005モル以上0.05モル以下を触媒として加え、2〜4モルの水で加水分解後、160℃以上220℃以下の温度でフェニルトリアルコキシシランの加水分解時に用いた有機溶剤を減圧留去して得られたレジンを含んでもよい。なお、160℃以上220℃以下の温度での有機溶剤の減圧留去では、反応副生成物としての水およびアルコールも留去される。このレジンを芳香族炭化水素系溶剤に溶解し、濾過により清澄にした上で、そのレジン溶解液を、略台形形状のステンレス箔に塗布し、乾燥、硬化することにより、第2の絶縁膜が形成できる。この本発明の好ましいフェニル基修飾シリカ膜は、平坦化という観点で膜が硬化過程でリフローしてステンレス箔の表面の凹凸をならし、さらにステンレス箔の略台形形状の斜面も被覆することと、その膜がRoll to Rollプロセスで成膜できるよう2分以内の熱処理時間で硬化できることの2点を両立させることができる。
加水分解後の溶液は粘度1〜2mPa・sの透明なものであった。GPC (gel permeation chromatography) により求めたスチレン換算重量平均分子量は300であり、部分加水分解されたフェニルトリアルコキシシランの単分子あるいは2分子程度の縮合物であることを示した。減圧留去は室温から初めて突沸が起きないように徐々に温度を上げていく。オイルバスを用いてロータリーエバポレータで600mlの加水分解溶液の溶媒を減圧留去する場合、オイルバス50℃で溶媒が出なくなるまで約30分保った後、130℃にオイルバスの温度を上げて溶媒が出なくなるまで30分保つ。温度上昇と溶媒除去に伴って、固形分濃度が上がり、固形物の粘度が高くなり、曳糸性を示すようになる。160〜210℃にオイルバスの温度を上げて溶媒が出なくなるまで30分保ち、さらに15分保持して溶媒を完全に取り除くことができる。溶媒がほとんどなくなると固形物すなわち曳糸性を示していたレジンは160〜210℃において流動性がなくなってくる。この時得られるレジンは室温では半透明〜白色の固体である。レジンを芳香族炭化水素系溶剤に溶解後、GPCにより求めたスチレン換算重量平均分子量は5000〜100000であった。
このように曳糸性を示したことと、高分子量でありながら溶剤に溶解したこと、赤外線吸収スペクトルにおいて1100cm−1付近にシロキサン結合に由来するダブルピークを示したことから、当該フェニルトリエトキシシランを原料としたレジンはラダー構造に近い形をとっていると推定される。フェニルシロキサンラダーポリマー(ラダー構造のフェニル基修飾シリカ膜)の理想的な構造は図2(a)のように示される。実際のラダーポリマーは欠陥を含んでおり、図2(b)のように欠陥部のSiがそれぞれ分枝してラダーポリマーを作る場合や、図2(c)のように、シラノール基やアルコキシ基のような反応基で終わる場合がある。1箇所の欠陥部で分枝するSiとシラノール基になっているSiが混在する場合もある。分枝した箇所がラダーポリマーではなくランダム構造のフェニルシロキサンにつながっている場合もある。このような欠陥部の構造や欠陥の頻度、ラダーポリマーの分子量などによってフェニルシロキサンラダーポリマーの性質は異なってくる。図2(a)の完全ラダー構造に近いものは、直鎖のラダーポリマーなので溶剤には溶けやすく、このようなラダーポリマーを溶かした塗布液を塗って溶剤を乾燥させると、ラダーポリマーが絡まり合った乾燥膜が得られる。この乾燥膜は加熱されると絡まり合ったラダーポリマーが熱振動によって動き始め流動性(リフロー性)を示すようになる。さらに加熱の温度が高くなると一部のフェニル基が熱分解されラダーポリマーの末端部と結合して架橋により網目構造の形成が進み熱硬化することになる。図2(b)のように分枝している場合は、ラダーポリマーの分子量が大きく、かつ分枝の数が多くなるほど三次元的な網目構造が形成されるため、図2(a)に比べると溶媒に溶けにくく、加熱によるリフローも起きにくくなると考えられる。図2(c)のように欠陥部に反応基を多く含んだ直鎖のラダーポリマーは、直鎖状であるため図2(a)と同様に溶剤に溶けやすくリフロー性を示す。ラダーポリマーそのものの中に反応基が多いため図2(a)の理想構造のラダーポリマーの熱硬化のようにフェニル基が熱分解されるのを待つことなく架橋により網目構造が形成できるので短時間で熱硬化できる。本発明の好ましいフェニル基修飾シリカ膜では図2(c)の構造が得られていると推定している。
ラダーポリマーの合成には触媒が用いられる。一般にアルカリ触媒下ではアルコキシシランの1つのアルコキシ基が加水分解されると、そのアルコキシシランはさらに2つ目のアルコキシ基が加水分解されやすくなる。つまりフェニルトリアルコキシシランを例にとると、PhSi(OR)3が2分子あった場合、PhSi(OH)2ORとPhSi(OR)3となる。これに対して、酸触媒下ではより均一に加水分解反応が進みやすいため、PhSiOH(OR)2が2分子となる。また、縮合反応についてもアルカリ触媒下では加水分解の進んだ分子のみが選択的に縮合していくのに対し、酸触媒下ではすべての分子が均一に加水分解を受けるので縮合反応も均一に進んでいく。このような初期の加水分解・縮合反応の進み方の違いを反映して、アルカリ触媒で合成した場合、縮合反応物にはアルコキシ基や水酸基がほとんど残らないのに対し、本発明の好ましいフェニル基修飾シリカ膜では酸触媒を用いているため、ラダーポリマーに近い構造ではあるが欠陥部にアルコキシ基や水酸基が比較的多く残っており、反応基を多く含むため、熱処理時にこれらの反応基間で縮合反応が進み、短時間で膜硬化が可能になると考えられる。ここで膜硬化とは、熱処理後の膜の鉛筆高度が3H以上になり疵が入りにくくなることと、膜中の溶剤や水分など絶縁膜のリークの原因となりえる成分が揮発し、絶縁膜のリーク電流が1E−6A/cm以下である絶縁膜が形成されることの2つの条件を満たすことを意味する。絶縁膜のリーク電流は、ステンレス箔と、フェニル基修飾シリカ膜の膜上に形成した1cm角の上部電極の間に100Vの電圧を印加して測定する。
さらに、本発明の好ましいフェニル基修飾シリカ膜においては触媒として加えている有機スズ由来のSnにより熱処理中の縮合反応が一層促進され、300〜450℃において2分以内という連続熱処理可能な短時間での膜硬化が可能となる。これに対して、ラダーポリマー中に反応基(アルコキシ基や水酸基)を殆ど含まない場合、熱硬化するためにはフェニル基が熱分解するなどしてシラノール基を一度形成して、シラノール基同士で縮合するために熱処理時間が長いと思われる。また、本発明の好ましいフェニル基修飾シリカ膜がリフロー性を示すのは、本発明のフェニルシロキサンラダーポリマーは分枝がなく単にラダーポリマーが絡み合っているのに対し、分枝が多いラダーポリマーは流動しにくいのではないかと思われる。
また、アルカリ触媒を使って合成したポリマーは半導体素子に有害なNaなどの不純物を含むが、本発明の好ましいフェニル基修飾シリカ膜ではアルカリを全く用いないのでアルカリによる汚染の心配がない。
本発明の好ましいフェニル基含有シリカ膜の特徴をまとめると以下のようになる。本発明ではフェニル基含有のラダーポリマーに近い構造の高分子量のレジンから膜が構成されている。本発明の好ましいフェニルシロキサンラダーポリマーは図2(c)のように欠陥部は分枝せず、シラノール基やアルコキシ基で終端している。スチレン換算重量平均分子量は5000〜100000である。梯子状の長いポリマーであるため、塗布乾燥後の膜ではラダーポリマーが絡み合った構造になっている。ラダーポリマーの絡み合いで見かけ上3次元網目構造ができるため、膜としては乾燥しており粘着性もない状態なっている。レジンを合成した温度近くまで加熱されると、徐々に流動性が現れ始め、レジン合成温度を超えると絡まり合いがほどけて軟化してリフローする。前述したように本発明のポリマーは欠陥部に反応基が多く含まれるので、基板との密着性はそれらの反応基で確保しながら、全体として最も表面エネルギーが小さくなるようにラダーポリマー同士が動く。塗布乾燥直後ではステンレス箔表面の凹凸や疵を反映して膜表面にも凹凸がみられていたが、レジン合成温度を超えた温度ではリフローにより、できるだけ膜表面積が小さくなるように、すなわち平坦な状態になる。本発明の好ましいフェニル基修飾シリカ膜では分枝が少ないラダーポリマーが得られるので高い流動性を示し平滑化効果が大きい。熱処理温度が300℃を超えると、ラダーポリマー間での反応基による架橋が進み始める。このようにして、本発明の好ましいフェニル基修飾シリカ膜はステンレス箔の凹凸を被覆することができる。
第2の絶縁膜としての、フェニル基修飾シリカ膜は1ppm以上5000ppm以下のSnを含んでもよい。Snの濃度はSIMS(secondary ion mass spectrometry) 分析あるいはX線蛍光分析によって測定することができる。Snの濃度が1ppmよりも少ない時は、短時間での膜硬化ができにくいためRoll to Rollでコイルに連続成膜することが難しい場合がある。Snの濃度が5000ppmを超えるときは膜が硬くなり曲げたときにクラックが発生しやすくなる場合がある。
以下、本発明の好ましいフェニル基修飾シリカ膜を得るためのパラメータ条件について記載する。特に断りのない限り、モル数はフェニルトリアルコキシシラン1モルに対する量である。
塗布液合成時の酢酸の量はフェニルトリアルコキシシランの加水分解の進行具合に大きく影響を及ぼす。酢酸の量が0.1モルより少ない場合は、一部のフェニルトリアルコキシシランのみしか加水分解されないため、その後の重縮合反応がなかなか進行せず、低分子量のレジンとなってしまう。ラダーポリマーとしてある程度の長さがなければ、絡まり合ったポリマーが熱振動でほどけてリフロー性を発揮することにならないので不適である。1モルより多い時は、ほとんどすべてのフェニルトリアルコキシシランのすべてのアルコキシ基が加水分解されてしまうため、その後の重縮合反応が急速に進みすぎ、減圧留去前の加水分解の段階でゲル化が発生するため不適である。
有機スズはフェニルトリアルコキシシランおよびその加水分解縮合反応物や、フェニル基含有ラダーポリマーの重縮合反応を促進する触媒である。有機スズが0.005モルより少ない時は熱処理中のラダーポリマーの縮合反応促進効果が不十分で、短時間硬化ができなくなるので不適である。有機スズが0.05モルを超えると、フェニルトリアルコキシシランおよびその加水分解縮合反応物の重縮合が進みすぎ、減圧留去前の加水分解の段階でゲル化が発生するため不適である。
加水分解に用いる水の量は2モルより少ない場合、レジンに大量のアルコキシ基が残存するため、熱処理中に縮合反応(ラダーポリマー化)をしなければならなくなる。このため350〜450℃において2分の熱処理では熱処理時間が不十分で、溶剤や水分が膜に残り絶縁不良となるため不適である。水の量が4モルを超える場合は急速に加水分解が進むため、ラダー状の規則正しい構造を作るよりもランダムに網目構造ができてしまい、レジンが溶解しなくなるため塗布液が作製できず不適である。減圧留去時の温度が160℃より低い場合は、レジンの縮合反応が不十分であるため溶解後のレジンの分子量分布にバラつきができ、低分子量成分が成膜時に揮発してハジキ状の欠陥が発生するため不適である。減圧留去時の温度が210℃を超える場合は、縮合反応が進みすぎてレジンが溶解しにくくなるので不適である。減圧留去時のより好ましい温度は180℃以上200℃以下である。塗布液の粘度はレジンと溶剤の量比、すなわち固形分量で調整することができる。最適な粘度と固形分量は塗布方法に依存するが、一般的には固形分濃度が15mass%以上40mass%以下で、粘度が3mPa・s以上100mPa・s以下に調整しておくと、2〜5μmの膜厚で均一に塗ることができ、塗布液の貯蔵安定性も良好である。
本発明の好ましいフェニル基修飾シリカ膜をステンレス箔上に形成する工程について説明する。
フェニル基修飾シリカ膜の原料となるレジン溶解液をステンレス箔への塗布後、乾燥処理は20℃以上150℃以下の温度で行う。乾燥工程では塗布した膜に含まれる溶剤や水分を除去して乾燥膜とするのが目的である。減圧留去によるレジン合成温度より高い乾燥温度にすると、レジンを形成しているラダーポリマーが軟化する可能性があるため、乾燥温度はレジン合成温度より低いことが望ましい。乾燥膜中ではラダーポリマーが絡まり合って見掛け上、網目構造のようになって膜硬化しているように見えるが、熱振動で分子の運動が活発になるとラダーポリマーはほどけて流動性を示すようになる。熱処理工程は乾燥膜を形成しているラダーポリマーを溶融軟化、すなわちリフローさせて第2の絶縁膜としてのフェニル基修飾シリカ膜の表面を平坦化させることと、リフローに引き続きポリマーの架橋を進めて三次元網目構造を形成させ膜を硬化させることの2つが目的である。リフローは減圧留去によるレジン合成温度より高温域、三次元的な架橋が進んで膜が硬化し始める温度より低い温度域で発生する現象である。リフローのために特別な熱処理プロセスをとる必要はなく、熱処理を300℃以上450℃以下で行えば、熱処理温度まで昇温される過程でリフローが起き、引き続き架橋による膜硬化が進む。ステンレス箔の表面を平坦にするには、Roll to Rollプロセスにおいて水平な状態で熱処理を行うことが効果的である。膜硬化は架橋反応による網目構造形成であるので、ひとたび膜が硬化すると、再度リフローすることはない。熱処理温度が300℃より低い場合は、架橋が十分進まずシラノール基などの反応基が膜の中に残るため絶縁性が不十分となるうえ、有機デバイス作製中にシラノール基などに吸着した水分が脱離すると素子に悪影響を及ぼすので不適である。熱処理温度が450℃より高い場合は、フェニル基の熱分解による体積収縮が起き、クラックが入りやすくなるので不適である。より好ましい熱処理温度は360℃以上420℃以下である。
本発明で用いるフェニルトリアルコキシシランとしては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシランなどが挙げられる。
フェニルトリアルコキシシランを加水分解するときに用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。
有機スズとしては、ジブチルスズジアセテート、ビス(アセトキシジブチルスズ)オキサイド、ジブチルスズビスアセチルアセトナート、ジブチルスズビスマレイン酸モノブチルエステル、ジオクチルスズビスマレイン酸モノブチルエステル、ビス(ラウロキシジブチルスズ)オキサイドなどが挙げられる。
減圧留去時に留去する有機溶剤は、フェニルトリアルコキシシランを加水分解するときに用いた有機溶剤に加えてフェニルトリアルコキシシランの加水分解によって生成したアルコールも含まれる。また加水分解されたフェニルトリアルコキシシランの縮合反応に伴って生成する水が含まれることもある。
芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレンなどが挙げられる。芳香族炭化水素系溶剤に、特性に影響を与えない範囲で、他の有機溶剤を混合してもよい。
酸触媒は塩酸、硝酸、リン酸も検討したが、酢酸の時のような高分子量のラダーポリマーを作ってリフロー性を利用して平滑な膜を得ることは難しかった。この理由は弱酸である酢酸の場合と、塩酸などを用いた場合では酢酸の方がゆっくりと加水分解が進むことにより、得られるラダーポリマーの構造が異なるためと推測される。
ステンレス箔上に第2の絶縁膜としての本発明の好ましいフェニル基修飾シリカ膜を成膜するにはRoll to Rollによる連続成膜を行う。一般的な装置構成はコイルの巻きだし部、塗工部、乾燥炉、熱処理炉、コイル巻き取り部から成る。通板速度は速いほど生産性がよいが、1mpmから20mpm程度が一般的である。塗布する方法としては、マイクログラビアロール、グラビアロールなどによる塗布や、スリットコータ、スクリーン印刷などが挙げられる。ステンレス箔の両面に塗工したい場合は、ディップコートによる成膜もできる。乾燥は20℃以上150℃以下で0.5〜2分程度行う。乾燥時の炉内の雰囲気は大気でも窒素などの不活性ガス雰囲気でもよい。熱処理はフェニル基が熱分解しにくいように不活性ガスを流しながら行う。連続成膜装置の場合、基材が熱処理炉内に入るときに若干量の大気を持ち込むが、本発明のフェニル基修飾シリカ膜は1%程度の大気の混入があっても膜特性に影響はない。乾燥炉および熱処理炉内ではデバイス形成側の膜面にロールが当たらないような装置設計にする。巻き取り時には膜面に保護フィルムを貼りつけたり、疵が入らないように合紙を挿入したりしてもよい。また、乾燥と熱処理を連続して行うのではなく、乾燥膜が付いたコイルを一度巻き取って、再度熱処理のみを行ってもよい。この場合は乾燥膜作製用の設備と熱処理用の設備と2種類必要になるが、それぞれを最適の通板速度で処理できる長所がある。
次に、実施例により本発明を更に説明する。本発明がここに提示した実施例に限定されないことは言うまでもない。
実施例1
厚さ50μm、幅310mmのフェライト系ステンレス箔ロール(NSSC190, SB仕上げ)上に第1の絶縁膜としてポリイミド膜を形成した。全芳香族ポリイミド前駆体溶液をRoll to Roll方式の成膜装置を使いスリットダイヘッドでステンレス箔の中央部に幅300mmで塗布し80℃で乾燥後、350℃で焼き付けた。焼き付け後のポリイミド膜の厚さは20μmであった。エッチングレジストをステンレス箔の中央部に290mm幅で形成し、ステンレス箔の両端10mmずつ塩化第2鉄溶液を用いてエッチングした。エッチング速度は15μm/分とした。ここまでの工程で厚さ20μm幅300mmのポリイミドと厚さ50μm幅290mmのステンレス箔の積層体のロールが得られた。ポリイミドの両端5mmずつはステンレス箔が積層されていない領域となっている。
第2の絶縁膜としてフェニル基含有シリカ膜をステンレス箔の直上に形成した。第2の絶縁膜を形成するための塗布液は、以下のように作製した。エタノールで、フェニルトリエトキシシラン1モルに対して、酢酸0.2モル、ジブチルジアセテートスズ0.01モルを触媒とし、3モルの水を加えて加水分解し、190℃で有機溶剤を減圧留去した。得られたレジンを固形分濃度30%となるようにトルエンに溶解し、濾過して塗布液とした。
Roll to Roll方式の成膜装置を使い、スリットダイでロールの幅方向中央部に第2の絶縁膜形成用塗布液を幅296mmで塗布し、室温で乾燥後、400℃で焼き付けた。焼き付け後の第2の絶縁膜の厚さはステンレス箔上で3.5μmになるように塗布条件を設定した。
実施例2
ステンレス箔の厚みが10μmであることと、グラビアコータを使って第2の絶縁膜形成用塗布液を幅300mmで塗布したこと以外は、すべて実施例1と同様に実施した。
実施例3
ステンレス箔の厚みが150μmであること以外はすべて実施例1と同様に実施した。
実施例4
エッチングレジストをステンレス箔の中央部に296mm幅で形成し、ステンレス箔の両端7mmずつ塩化第2鉄溶液を用いてエッチングしたこと、グラビアコータを使って第2の絶縁膜形成用塗布液を幅300mmで塗布したこと以外は、すべて実施例1と同様に実施した。すなわち、厚さ20μm幅300mmのポリイミドと厚さ50μm幅296mmのステンレス箔の積層体のロールに、第2の絶縁膜を厚さ3.5μm、幅300mmで形成したことになる。
実施例5
エッチングレジストをステンレス箔の中央部に299.8mm幅で形成し、ステンレス箔の両端5.1mmずつ塩化第2鉄溶液を用いてエッチングしたこと、グラビアコータを使って第2の絶縁膜形成用塗布液を幅300mmで塗布したこと以外は、すべて実施例1と同様に実施した。すなわち、厚さ20μm幅300mmのポリイミドと厚さ50μm幅299.8mmのステンレス箔の積層体のロールに、第2の絶縁膜を厚さ3.5μm、幅300mmで形成したことになる。
実施例6
厚さ50μm、幅310mmのフェライト系ステンレス箔ロール(NSSC190, SB仕上げ)上に第1の絶縁膜として実施例1の手順で合成したフェニル基含有シリカ膜を形成した。フェニル基含有シリカ膜を形成するための塗布液をRoll to Roll方式の成膜装置を使いグラビアコータでステンレス箔の全面に塗布し室温で乾燥後、400℃で焼き付けた。焼き付け後のフェニル基含有シリカ膜の厚さは3μmであった。エッチングレジストをステンレス箔の中央部に299.8mm幅で形成し、ステンレス箔の両端5.1mmずつ塩化第2鉄溶液を用いてエッチングした。エッチング速度は15μm/分とした。ここまでの工程で厚さ3μm幅300mmの第1の絶縁膜(フェニル基含有シリカ膜)と厚さ50μm幅299.8mmのステンレス箔の積層体のロールが得られた。第1の絶縁膜(フェニル基含有シリカ膜)の両端0.1mmずつはステンレス箔が積層されていない領域となっている。
第2の絶縁膜としてフェニル基含有シリカ膜を形成した。Roll to Roll方式の成膜装置を使い、グラビアコータでのロール全面に塗布し、室温で乾燥後、400℃で焼き付けた。焼き付け後の第2の絶縁膜の厚さはステンレス箔上で3.5μmになるように塗布条件を設定した。
実施例7
用いたステンレス箔がオーステナイト系SUS304のMW(ミルクホワイト)仕上げであり、厚さが30μmであること以外はすべて実施例1と同様に実施した。
実施例8
第2の絶縁膜の厚さが1.5μmになるようにスリットダイの吐出圧を調節したこと以外は、実施例7とすべて同様に実施した。
比較例1
エッチングレジストをステンレス箔の中央部に288mm幅で形成し、ステンレス箔の両端11mmずつ塩化第2鉄溶液を用いてエッチングしたこと、グラビアコータを使って第2の絶縁膜形成用塗布液を幅300mmで塗布したこと以外は、すべて実施例1と同様に実施した。すなわち、厚さ20μm幅300mmのポリイミドと厚さ50μm幅288mmのステンレス箔の積層体のロールに、第2の絶縁膜を厚さ3.5μm、幅300mmで形成したことになる。
比較例2
厚さ50μm、幅300mmのフェライト系ステンレス箔ロール(NSSC190, SB仕上げ)上に第1の絶縁膜としてポリイミド膜を形成した。ステンレス箔のエッチングは行わなかった。全芳香族ポリイミド前駆体溶液をRoll to Roll方式の成膜装置を使いグラビアコータでステンレス箔の全面に塗布し80℃で乾燥後、350℃で焼き付けた。焼き付け後のポリイミド膜の厚さは20μmであった。第2の絶縁膜としてフェニル基含有シリカ膜をステンレス箔の直上に形成した。第2の絶縁膜を形成するための塗布液は、実施例1と同様の手順で作製した。Roll to Roll方式の成膜装置を使い、グラビアロールでロールの全幅に塗布し400℃で焼き付けた。焼き付け後の第2の絶縁膜の厚さはステンレス箔上で3.5μmになるように塗布条件を設定した。
比較例3
ステンレス箔の厚みが9μmであること以外はすべて実施例1と同様に実施した。
比較例4
ステンレス箔の厚みが170μmであること以外はすべて実施例1と同様に実施した。
比較例5
第2の絶縁膜としてエポキシ基およびアミノ基含有シリカ膜を形成したこと以外はすべて実施例1と同様に実施した。
第2の絶縁膜を形成するための塗布液は以下のように作製した。グリシドキシプロピルトリエトキシシラン100質量部に対して、テトラエトキシチタンを8質量部、酢酸を9質量部加えて攪拌後、テトラエトキシシランを40質量部と70質量部のエタノールを加え、30質量部の水で加水分解した。さらにアミノプロピルトリエトキシシランを150質量部加えることによりゾルを調製し、最後に300質量部の水でゾルを希釈し、エポキシ基およびアミノ基含有シリカ膜の塗布液を調製した。Roll to Roll方式の成膜装置を使い、スリットダイでロールの幅方向中央部に第2の絶縁膜形成用塗布液を幅296mmで塗布し、150℃で焼き付けた。焼き付け後の第2の絶縁膜の厚さはステンレス箔上で1.5μmになるように塗布条件を設定した。
比較例6
第2の絶縁膜としてポリジメチルシロキサンを主成分とするメチル基含有シリカ膜を形成したこと以外はすべて実施例1と同様に実施した。
第2の絶縁膜を形成するための塗布液は以下のように作製した。アセト酢酸エチル2モルとテトラエトキシチタン1モルを2モルのエタノールに分散させ、両末端カルビノール変性で平均分子量3000のポリジメチルシロキサン0.5モル加え攪拌した。2モルのエタノールと2モルの水の混合溶液を滴下し、ゾルを調製した。Roll to Roll方式の成膜装置を使い、スリットダイでロールの幅方向中央部に第2の絶縁膜形成用塗布液を幅296mmで塗布し、300℃で焼き付けた。焼き付け後の第2の絶縁膜の厚さはステンレス箔上で3.5μmになるように塗布条件を設定した。
第1と第2の絶縁膜が形成されたステンレス箔ロールの評価は以下のようにおこなった。
(ロール端部の形状)
本発明ではステンレス箔の端部をエッチングして第1の絶縁膜より幅を狭くしているので、ロールのTD方向両端部は絶縁膜のみである。ロール状に巻き取るときの張力は剛性が高いステンレス箔にかかるので、両端の第1の絶縁膜のみの部分は張力がかからないフリーな状態になる。ここに第2の絶縁膜が形成されると、第1と第2の絶縁膜の熱膨張係数差に起因する応力で第1の絶縁膜に反りや歪みが発生する。ロール状に50m巻いたときに両端の第1の絶縁膜の部分が良好な状態で巻き取れていれば問題なしと判断し表に○で記載した。
(ステンレス箔のハンドリング性)
ステンレス箔のハンドリング性は第1と第2の絶縁膜を形成後、100mm角に切断したシートの四隅をキャリアガラスに1cm角にカットした両面カプトンテープで貼り付け、剥がすという作業を行い、貼り付け前後で全面被覆されたステンレス箔に発生した折れ或いは皺の有無で判定した。目視で認められるレベルの折れ或いは皺がなければ問題なしと判断し、表に○で記載した。全面被覆されたステンレス箔はデバイスの作製もRoll to Rollプロセスで行われることを想定しているが、最終製品形態はシートになると考えられるので、シート状で問題なくハンドリングできることが重要である。
(Roll to Roll適合性)
Roll to roll適合性は世の中で一般的な総張力200N以下のroll to roll方式の成膜装置・およびエッチング装置で処理した時に、少なくとも50m以上をずれなく巻き取ることができたかどうかで判断し、巻きずれ量が10mm未満であれば問題なしと判断し、表に○で記載した。
(デバイス化プロセス適合性)
デバイス化プロセス適合性では、配線として用いられるAlやMoのエッチング液(65質量%のH3PO4, 5質量%のHNO3, 10質量%のCH3COOH、残部は水)を50℃に加熱し第1と第2の絶縁膜を形成したステンレス箔を48時間浸漬した。Roll to Rollエッチング装置を利用し、張力を緩めてエッチング槽内に浸漬しているステンレス箔の長さが0.5mとなるようにした。エッチング液の総容量は3リットルで実験を行った。エッチング液に溶出した鉄の濃度をICP発光分析で調べ10ppm未満の場合はエッチング液へのステンレス箔の溶出がないと判断し、表に○で記載した。
すべての評価項目で問題がなかった場合に、総合評価で合格と判定し、表に○で記載した。
実施例1〜8は総合評価で合格となった。実施例2,4,5は第1と第2の絶縁膜が重なっている幅が異なるが、いずれも良好なデバイス化プロセス適合性を示している。このことから、実施例5のように第1と第2の絶縁膜の重なりが0.1mmであっても高い信頼性でステンレス箔の全面被覆ができていることがわかる。
比較例1は絶縁膜2の焼き付け後、絶縁膜2の成膜面側が凹になる形状で絶縁膜1に大きな反りが発生してしまった。ステンレス箔の端から第1の絶縁膜の端までの長さが6mmあったため、第1の絶縁膜の端はステンレス箔に対して1〜3mm浮きあがった。このため、第2の絶縁膜の焼き付け後の巻き取り時に第1の絶縁膜のみの部分がぶつかり合って皺や折れが発生した。第1の絶縁膜の皺や折れが起点となってロールの巻きずれも発生した。
比較例2はステンレス箔と同じ幅で第1の絶縁膜を成膜後、反対側の面に第2の絶縁膜を塗布している。単純に両面コートを行っただけではステンレス箔の端部を被覆することはできず、エッチング液中にステンレス箔の顕著な溶出が見られた。
比較例3はキャリアガラスに貼りつける段階でステンレス箔に折れが発生し、剥がすときにはさらに折れが多く発生した。
比較例4はステンレス箔が厚いため、総張力200N以下の装置ではうまく巻き取ることができなかった。
比較例5はエッチング液にステンレス箔の溶出が認められた。実施例8と比較例5では第2の絶縁膜の膜厚は同じであるので第2の絶縁膜の膜厚が溶出と関係しているとは考えられない。比較例5の第2の絶縁膜の形成用塗布液は水系でありステンレス箔および第1の絶縁膜とのぬれ性が十分ではなかった。このため台形状にエッチングされたステンレス箔と第1の絶縁膜を連続的に被覆できず、局所的に途切れているところがあったためとステンレス箔がエッチング液に溶出したと推測される。
比較例6は第2の絶縁膜を焼き付けて巻き取ったロールを1週間保管している間に、ロールが第2の絶縁膜によって固着してしまった。第2の絶縁膜が焼き付け後にもポリジメチルシロキサンに由来する粘着性を示したことが原因と考えられる。
Figure 0006671193

Claims (13)

  1. 第1の絶縁膜、
    前記第1の絶縁膜の上に直接配置されたステンレス箔、及び、
    前記ステンレス箔および前記第1の絶縁膜上に直接配置された第2の絶縁膜、
    を含んでなる、膜付きステンレス箔であって、
    前記膜付きステンレス箔のTD方向断面において、
    前記第1の絶縁膜の端部から近位の前記ステンレス箔の端部までの距離bが0.1〜5.0mmであり、
    前記ステンレス箔は上底が下底より短い略台形形状を有し、前記ステンレス箔の厚みtが10〜150μmであり、
    前記台形の上底および斜辺が、前記第2の絶縁膜で完全に被覆されている、
    ことを特徴とする、膜付きステンレス箔。
  2. 前記台形の斜辺から、前記第1の絶縁膜の上面の少なくとも一部へ、前記第2の絶縁膜が連続的に被覆していることを特徴とする、請求項1に記載の膜付きステンレス箔。
  3. 前記第2の絶縁膜は、前記ステンレス箔の上底の上で、膜厚2.0μm以上5.0μm以下、Raが30nm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の膜付きステンレス箔。
  4. 前記膜付きステンレス箔がコイル状に巻き取られたものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜付きステンレス箔。
  5. 前記第1の絶縁膜は、ポリイミドを含んでなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜付きステンレス箔。
  6. 前記第2の絶縁膜は、有機溶媒中フェニルトリアルコキシシラン1モルに対して、酢酸0.1モル以上1モル以下、有機スズ0.005モル以上0.05モル以下を触媒として加え、2モル以上4モル以下の水で加水分解し、160℃以上210℃以下の温度で有機溶剤を減圧留去して得られたレジンを含んでなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の膜付きステンレス箔。
  7. 前記第2の絶縁膜は、前記レジンを芳香族炭化水素系溶剤に溶解した平坦化膜形成塗布液を前記ステンレス箔に塗布後、熱処理プロセスでリフローおよび膜硬化させたものであることを特徴とする、請求項6に記載の膜付きステンレス箔。
  8. テンレス箔を前記第1の絶縁膜の上に直接配置して、TD方向断面において、前記第1の絶縁膜の端部から近位の前記ステンレス箔の端部までの距離bが0.1〜5.0mmとする工程、
    前記ステンレス箔をエッチングして、TD方向断面において、前記ステンレス箔は略台形形状を有し、前記台形の高さtが10〜150μmとする工程、
    有機溶媒中フェニルトリアルコキシシラン1モルに対して、酢酸0.1モル以上1モル以下、有機スズ0.005モル以上0.05モル以下を触媒として加え、2モル以上4モル以下の水で加水分解後、160℃以上210℃以下の温度で有機溶剤を減圧留去して得られたレジンを芳香族炭化水素系溶剤に溶解した平坦化膜形成塗布液を用意する工程、
    前記塗布液を前記ステンレス箔に塗布し、熱処理プロセスでリフローおよび膜硬化して、第2の絶縁膜を得て、TD方向断面において、前記台形の上底および斜辺を前記第2の絶縁膜で完全に被覆する工程、
    を含んでなる膜付きステンレス箔の製造方法。
  9. 前記台形の斜辺から、前記第1の絶縁膜の上面の少なくとも一部へ、前記第2の絶縁膜が連続的に被覆していることを特徴とする、請求項8に記載の膜付きステンレス箔の製造方法。
  10. 前記第2の絶縁膜は、前記ステンレス箔の上底の上で、膜厚2.0μm以上5.0μm以下、Raが30nm以下であることを特徴とする、請求項8または9に記載の膜付きステンレス箔の製造方法。
  11. 前記膜付きステンレス箔をコイル状に巻き取る工程をさらに含むことを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の膜付きステンレス箔の製造方法。
  12. 前記第1の絶縁膜は、ポリイミドを含んでなることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の膜付きステンレス箔の製造方法。
  13. 前記熱処理プロセスは、不活性ガス雰囲気中300℃以上450℃以下の熱処理炉を通過させることを含んでなる、請求項8〜12のいずれか1項に記載の膜付きステンレス箔の製造方法。
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