JP6670009B1 - 光造形用トレイおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光造形において、光造形用トレイからの離型層の剥離を抑制できる。【解決手段】光造形用トレイは、光造形において流動性を有する光硬化性材料を収容する光造形用トレイである。光造形用トレイは、露光面を有するトレイ本体と、前記トレイ本体の前記露光面の反対側の面を覆い、かつ前記光硬化性材料との接触面を有する第1層と、を備える。前記第1層は、ケイ素に直接的または間接的に結合した第1反応性基を有するフッ素含有硬化性樹脂を含む組成物の硬化物で構成される。前記第1層と、前記第1層の下地層との界面およびその近傍に、前記下地層を構成する材料に由来する官能基と前記第1反応性基とが反応または相互作用した残基が存在する。【選択図】図2

Description

本発明は、光造形において光硬化性材料を収容するための光造形用トレイに関する。
3Dプリンタを始めとする三次元光造形技術において、少量の光硬化性材料を用いた成形が可能である観点から、例えば、吊り下げ方式の光造形が注目されている。
図3は、一般的な吊り下げ方式による三次元光造形のパターニング方法の工程を説明するための断面模式図である。図3に示されるように、吊り下げ方式の光造形では、まず、プラットフォーム104のパターン形成面104aを光造形用トレイ101内に収容された光硬化性材料(パターニング材料)102に浸漬する。これにより、パターン形成面104aと光造形用トレイ101のトレイ本体101cの内底面に配された離型層101dとの間に光硬化性材料102の液膜102aを形成する(工程(i))。トレイ本体101cの底部101b(具体的には、外側の底面)は、光造形用トレイ101の下方に配置された光源105に対向する露光面101aを備えている。光源105からパターン形成面104aに向かって放たれた光Lは、トレイ本体101cの底部101bおよび離型層101dを透過して液膜102aに吸収される。これにより、液膜102aが光硬化して二次元パターン102bが形成される(工程(ii))。工程(ii)の後、パターン形成面104aを上昇させて、パターン102bと、離型層101dとの間に、パターニング材料の液膜102aをさらに形成する(工程(iii))。そして、光源105から液膜102aに対して光Lを照射し、液膜102aを硬化させて別のパターン102bを形成する。これにより、二次元のパターン102bに、別のパターン102bが積層され(工程(iv))、三次元パターンが形成される。さらに、工程(iii)と工程(iv)とを複数回繰り返すと、様々な厚みを有する三次元パターンが形成される。
このように、吊り下げ方式の光造形では、トレイの内底面から光硬化パターンを剥離させプラットフォームとともに上昇させるため、トレイの内底面に離型層が形成される。光硬化パターンを損傷なく取り出す観点から、離型層にはある程度の弾性が求められるとともに、光源からの光に対する透過性が求められる。そのため、離型層には、一般に、シリコーンゴムが使用されている。また、トレイの底に可撓性の弾性分離層を配置することも検討されている(例えば、特許文献1)。
特許文献2には、光造形用トレイにおいて、酸素透過性を有する樹脂を含む樹脂層を少なくとも備える離型層を設けることが提案されている。この場合、樹脂層中に酸素を供給するために樹脂層を大気中に露出させる酸素供給窓が設けられている。酸素供給窓から供給された酸素により、離型層と光硬化性材料との界面付近における硬化反応が阻害され、これにより、得られる光硬化パターンの離型層に対する剥離性を高めている。
特開2008−137392号公報 特開2017−159621号公報
離型層を備えるトレイを用いる場合でも、光硬化パターンは、離型層に結着した状態で形成されるため、ある程度の力で離型層から剥離する必要がある。吊り下げ方式の光造形では、光硬化パターンの剥離を繰り返すたびに、離型層に剥離応力が加わり、離型層が白化するなど劣化することがある。離型層が劣化すると、離型性が低下して光硬化パターンを剥離し難くなり、さらに大きな剥離応力が離型層に加わることになる。離型層は、シリコーンゴムなどの離型性の高い材料で形成されているため、離型層の、トレイの内底面側の表面の離型性も高い。そのため、光硬化パターンを剥離する際に離型層に大きな剥離応力が加わると、離型層がトレイから剥離してしまう。
本発明の第1局面は、光造形において流動性を有する光硬化性材料を収容する光造形用トレイであって、
露光面を有するトレイ本体と、
前記トレイ本体の前記露光面の反対側の面を覆い、かつ前記光硬化性材料との接触面を有する第1層と、を備え、
前記第1層は、ケイ素に直接的または間接的に結合した第1反応性基を有するフッ素含有硬化性樹脂を含む組成物の硬化物で構成され、
前記第1層と、前記第1層の下地層との界面およびその近傍に、前記下地層を構成する材料に由来する官能基と前記第1反応性基とが反応または相互作用した残基が存在し、
前記官能基は、ケイ素に直接的または間接的に結合した第2反応性基を含み、
前記残基は、前記第1反応性基と前記第2反応性基との付加反応により形成される、光造形用トレイに関する。
本発明の第2局面は、光造形において流動性を有する光硬化性材料を収容する光造形用トレイであって、
露光面を有するトレイ本体と、
前記トレイ本体の前記露光面の反対側の面を覆い、かつ前記光硬化性材料との接触面を有する第1層と、を備え、
前記第1層は、ケイ素に直接的または間接的に結合した第1反応性基を有するフッ素含有硬化性樹脂を含む組成物の硬化物で構成され、
前記第1層と、前記第1層の下地層との界面およびその近傍に、前記下地層を構成する材料に由来する官能基と前記第1反応性基とが反応または相互作用した残基が存在し、
前記第1層は、フッ素含有シリコーンゴムで構成され、
前記下地層は、シリコーンゴムを含む、光造形用トレイに関する。
本発明の第3局面は、上記の光造形用トレイを製造する方法であって、
露光面を有するトレイ本体を準備する工程と、
前記トレイ本体の前記露光面の反対側の面を覆うように、ケイ素に直接的または間接的に結合した第1反応性基を有するフッ素含有硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化させて、前記光硬化性材料との接触面を有する第1層を形成するとともに、前記第1層の下地層を構成する材料に由来する官能基と、前記第1反応性基とを反応または相互作用させて、前記第1層を前記下地層に密着させる工程と、を含む、光造形用トレイの製造方法に関する。
本発明の第4局面は、光造形において流動性を有する光硬化性材料を収容する光造形用トレイを製造する方法であって、
露光面を有するトレイ本体を準備する工程と、
前記トレイ本体の前記露光面の反対側の面を覆うように、ケイ素に直接的または間接的に結合した第1反応性基を有するフッ素含有硬化性樹脂を含み、かつ、25℃において0.1mPa・s以上10Pa・s以下の粘度を有する硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化させて、前記光硬化性材料との接触面を有する第1層を形成するとともに、前記第1層の下地層を構成する材料に由来する官能基と、前記第1反応性基とを反応または相互作用させて、前記第1層を前記下地層に密着させる工程と、を含み、
前記塗膜形成工程の前に、前記トレイ本体の前記露光面の反対側の面を覆うように、樹脂を含む第2層を形成する工程をさらに含み、
前記第1層は、前記第2層を前記下地層として形成し、
前記塗膜形成工程の前に、フッ素含有溶剤を含む溶剤を用いて希釈することにより、前記硬化性樹脂組成物の粘度を調節する、光造形用トレイの製造方法に関する。
光造形において、光造形用トレイからの離型層の剥離を抑制できる。
本発明の一実施形態に係る光造形用トレイの概略縦断面図である。 本発明の他の実施形態に係る光造形用トレイの概略縦断面図である。 一般的な吊り下げ方式による光造形のパターニング方法の工程を説明するための断面模式図である。
[光造形用トレイ]
本発明の一局面に係る光造形用トレイは、光造形において流動性を有する光硬化性材料を収容するものである。このような光造形用トレイは、一般には、樹脂槽とも呼ばれる。上記局面に係る光造形用トレイは、露光面を有するトレイ本体と、トレイ本体の露光面の反対側の面を覆うとともに光硬化性材料との接触面を有する第1層と、を備える。第1層は、ケイ素に直接的または間接的に結合した第1反応性基を有するフッ素含有硬化性樹脂を含む組成物の硬化物で構成されている。第1層と、第1層の下地層との界面およびその近傍に、下地層を構成する材料に由来する官能基と第1反応性基とが反応または相互作用した残基が存在する。なお、残基は、下地層を構成する材料に由来する官能基と第1反応性基とが反応または相互作用した結果形成される構造または結合を意味する。
従来の光造形用トレイにおいて、光硬化性材料と接触する離型層は、シリコーンゴムなどの高い離型性を有する材料で形成されている。離型層の両面とも高い離型性を備えるため、離型層の下地層に対する密着性が低くなり易い。トレイに離型層を設ける場合でも、光硬化と光硬化パターンの剥離とを繰り返すと、光硬化パターンが離型層から剥離し難くなり、大きな剥離応力が離型層に加わることになる。また、光硬化性材料が離型層の内部まで浸透する場合がある。この場合、浸透した光硬化性材料も光硬化されて離型層上に形成される光硬化パターンと一体化した状態となる。離型層内部で浸透した光硬化性材料が硬化すると、離型層が白化し、光透過性が損なわれる。また、浸透した光硬化性材料が光硬化パターンと一体化した状態で硬化すると、光硬化パターンを離型層から剥離する際には特に大きな剥離応力が離型層に加わることになる。大きな剥離応力が離型層に繰り返し加わると、離型層が下地層から剥離する。離型層の光硬化パターンが剥離される剥離面および離型層が下地層から剥離した剥離面はいずれも平滑ではなく、光硬化性材料に照射される光が乱反射し易くなる点も白化の原因となる。離型層の剥離や白化が起こると、光造形を続けることが難しくなる。なお、従来、光造形用トレイの内底面と接着していない状態のフィルム状の離型層を用いる場合もある。この場合、光硬化パターンを剥離する際にフィルム状の離型層が撓み易く、離型層に皺が生じて、光造形の精度を確保し難い。特に、光造形トレイのサイズが大きくなるとフィルム状の離型層の皺が形成されやすくなる。
本発明の上記実施形態によれば、第1反応性基を有するフッ素含有硬化性樹脂を含む組成物の硬化物で離型層に相当する第1層を形成する。第1層と、第1層の下地層との界面およびその近傍には、ケイ素に結合した第1反応性基と下地層を構成する材料に由来する官能基とが反応または相互作用した残基が存在する。第1層と下地層とが分子レベルで反応または相互作用した状態となるため、第1層と下地層との間で高い密着性を確保することができる。従って、第1層の光硬化性材料との接触面では離型性を確保しながらも、下地層に対して高い密着性を確保することができる。また、第1層がフッ素含有硬化性樹脂を含む組成物の硬化物で構成されるため、第1層への光硬化性材料の浸透が抑制され、高い離型性を確保できる。よって、光硬化と光硬化パターンの剥離とを繰り返しても、第1層の下地層からの剥離を抑制できる。光硬化性材料の第1層への透過が抑制されることで、白化などの第1層の劣化を顕著に抑制することもできる。また、第1層と下地層との間で高い密着性を確保することができるため、第1層が撓んで皺になることも抑制され、高い精度での光造形が可能となる。
なお、市販の接着剤には、フッ素含有接着剤またはシリコーン系接着剤などもある。しかし、接着剤は、2つ以上の被着体を接着するために使用されるものである。そのため、接着剤を用いることで、高い接着性または密着性は確保できても、通常は、全く逆の特性である離型性を確保することは困難であると予想される。
上記局面に係る光造形用トレイは、例えば、図3のトレイ101に代えて用いることで、図3に示されるような工程で三次元光造形物を形成することができる。
第1層の光硬化性材料との接触面は、光造形用トレイに光硬化性材料を収容したときに、光硬化性材料と接触することになる領域である。
トレイ本体の露光面とは、トレイ本体の表面のうち光源に対向する表面において、光源から照射された光(光硬化性材料の)が直接当たり得る領域を言う。吊り下げ方式では、トレイ本体の底面側から光が照射される。そのため、トレイ本体の露光面は、通常、トレイ本体の外底面において光源から照射された光が当たり得る領域である。
第1層の下地層は、トレイ本体であってもよい。また、トレイ本体と第1層との間に第2層を配して、第2層を第1層の下地層としてもよい。
下地層を構成する材料に由来する官能基とは、少なくとも第1層を下地層上に形成する段階で下地層を構成する材料が有している官能基を言い、第1反応性基と反応または相互作用可能な基または原子を含む。上記官能基は、例えば、完成した光造形用トレイの下地層中に存在するものであってもよく、残存しないものであってもよい。例えば、完成した光造形用トレイの下地層が硬化性材料の硬化物で形成される場合、第1層は、半硬化状態または完全に硬化した状態の下地層上に形成できる。このような状態の下地層において、下地層を構成する材料(半硬化状態の硬化性材料または硬化性材料の硬化物など)が上記の官能基を有していればよい。
なお、本発明では、光造形用トレイの構成要素(トレイ本体、第1層、下地層など)は、光源から照射される光に晒される領域においては、照射される光を透過する必要がある。光造形用トレイは、少なくとも光に晒される領域において、例えば、光源から照射される光に対する光線透過率が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。なお、光源から照射される光としては、例えば、紫外光から可視光領域の光が利用される。
図1は、本発明の一実施形態に係る光造形用トレイの概略縦断面図である。図2は、本発明の他の実施形態に係る光造形用トレイの概略縦断面図である。
図1では、光造形用トレイ1は、露光面1aを底部1bに有するトレイ本体1cと、トレイ本体1cの露光面1aとは反対側の面を覆う第1層1dとを備える。この場合、第1層1dの下地層は、トレイ本体1cとなる。
図2では、光造形用トレイ11は、露光面11aを底部11bに有するトレイ本体11cと、トレイ本体11cの露光面とは反対側の面を覆う第1層11dと、トレイ本体11cと第1層11dとの間に設けられた第2層11eと、を備える。この場合、第1層11dの下地層は、第2層11eとなる。
以下、光造形用トレイの構成要素についてより詳細に説明する。
光造形用トレイは、光硬化性材料を収容するトレイ本体と、トレイ本体の内側(つまり、光硬化性材料を収容する側)の表面に配された第1層とを備える。トレイ本体と第1層との間に第2層が設けられていてもよい。
(第1層)
第1層は、トレイ本体の露光面の反対側の面、すなわち、光硬化性材料を収容する側の面を覆うように配されている。第1層は、光硬化性材料との接触面を有する。第1層は、光硬化パターンを剥離し易くするために、少なくとも露光される領域に配されていればよい。光硬化性材料に光がより均一に照射されるとともに、光硬化パターンを剥離し易い観点から、第1層は、図1または図2に示されるように、トレイ本体の内底面全体を覆うように配された状態とすることが好ましい。
第1層は、ケイ素に結合した第1反応性基を有するフッ素含有硬化性樹脂を含む組成物の硬化物で構成される。第1反応性基は、ケイ素に直接結合していてもよく、間接的に結合していてもよい。間接的に結合しているとは、第1反応性基が、連結基を介してケイ素に結合していることを言う。第1反応性基は、下地層が有する官能基の種類に応じて選択される。第1反応性基としては、例えば、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、アミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、メルカプト基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのC1−6アルコキシ基(中でも、C1−4アルコキシ基)が好ましい。エポキシ基には、グリシドキシ基、エポキシシクロアルキル基などが含まれる。フッ素含有硬化性樹脂は、一種の第1反応性基を有するものであってもよく、二種以上の第1反応性基を有するものであってもよい。また、フッ素含有硬化性樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。二種以上のフッ素含有硬化性樹脂を用いる場合、第1反応性基の種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。なお、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基を合わせて(メタ)アクリロイルオキシ基と呼ぶものとする。
連結基としては、ケイ素と反応性基とを連結できればよく、例えば、2価の炭化水素基、ジアルキルアミンに対応する2価基などが挙げられる。2価の炭化水素基としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基、アリーレン基、アレーンジアルキレン基などが挙げられる。アルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、ブチレンなどのC1-6アルキレン基(C1-4アルキレン基など)が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン、トリレン、ナフチレン基などのC6-14アリーレン基などが挙げられる。アレーンジアルキレン基としては、例えば、キシリレン基などのC6-10アレーンジC1-4アルキレン基などが挙げられる。しかし、連結基は、これらに限定されるものではない。
中でも、第1反応性基がケイ素に結合した基として、シラノール基(Si−OH)、アルコキシシリル基(Si−OR)、ビニルシリル基(Si−CH=CH)などが好ましい。Rは、アルコキシ基に対応するアルキル基である。アルコキシ基−ORとしては上記で例示のアルコキシ基が挙げられる。
光造形用トレイでは、第1反応性基と下地層の官能基との反応または相互作用により形成される残基が、第1層と下地層との界面およびその近傍に存在することになる。このような残基の存在により、第1層と下地層との間の密着性を確保することができ、第1層の剥離が抑制される。第1反応性基と下地層の官能基(または後述の第2反応性基)との反応としては、例えば、(a)エポキシ基と、アミノ基、ヒドロキシ基またはカルボキシ基との反応、(b)アミノ基と、塩素原子、酸クロライド基、エポキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、アミノ基、スルホン酸基、またはカルボキシ基との反応、(c)ビニル基のグラフト化反応、(d)(メタ)アクリロイルオキシ基と、重合性不飽和炭素炭素結合を有する官能基との重合反応、(e)イソシアネート基と、アミノ基、ヒドロキシ基、またはカルボキシ基との反応、メルカプト基と、酸アミドまたは炭素炭素二重結合を有する官能基との反応などが挙げられる。また、第1反応性基と下地層の官能基との反応としては、第1反応性基と第2反応性基との縮合反応、または第1反応性基と第2反応性基との付加反応を利用することで残基を形成してもよい。このような反応としては、(f)第1反応性基としてのアルコキシ基またはヒドロキシ基を利用した縮合反応、(g)第1反応性基としてのビニル基を利用した付加反応なども挙げられる。反応(f)について、フッ素含有硬化性樹脂がシラノール基またはアルコキシシリル基を有する場合、シラノール基同士またはアルコキシシリル基同士の縮合反応を利用して下地層の官能基と反応させることができる。また、反応(g)について、フッ素含有硬化性樹脂がビニルシリル基を有する場合、ビニルシリル基とヒドロシリル基との付加反応を利用して下地層の官能基と反応させることができる。第1反応性基と下地層の官能基との付加反応を利用する場合、第1層と下地層との密着性をさらに高めることができる。また、付加反応の場合、第1層の硬化後、第1層の表面には、第1反応性基が残存した状態となり難いため、第1層による高い離型性をさらに確保し易くなる。
フッ素含有硬化性樹脂は、ケイ素と、ケイ素に直接または間接的に結合した第1反応性基と、フッ素とを含み、光硬化性であれば、その骨格は特に制限されない。光硬化パターンを損傷なく取り出し易い観点からは、第1層を構成する硬化物が、ゴム弾性を有することが好ましい。中でも、第1層は、フッ素含有シリコーンゴムで構成することが好ましい。フッ素含有シリコーンゴムは、フッ化アルキレンユニットを含むことが好ましい。光硬化性材料の第1層への浸透を抑制しながら、適度なゴム弾性を確保する観点から、フッ素含有シリコーンゴムは、フッ化アルキレンユニットとして、少なくともパーフッ化アルキレンユニットを含むことが好ましい。フッ素含有シリコーンゴムは、パーフッ化アルキレンユニットとして、テトラフルオロエチレンユニットを含んでもよいが、適度なゴム弾性を確保し易い観点から、ヘキサフルオロプロピレンユニットを少なくとも含むことが好ましい。フッ化アルキレンユニットは、フッ素含有シリコーンゴムに、フッ化アルキレンユニットの繰り返し構造として含まれていてもよく、フッ化アルキレンオキサイドユニットの繰り返し構造として含まれていてもよく、これらの双方として含まれていてもよい。
フッ素含有硬化性樹脂としては、市販品を用いてもよく、公知の合成方法またはその組み合わせにより合成したものを用いてもよい。フッ素含有シリコーンゴムとしては、例えば、フッ化アルキレンユニットまたはフッ化アルキレンオキサイドユニットの繰り返し構造と両末端のビニルシリル基とを有する化合物、フッ化アルキレンユニットまたはフッ化アルキレンオキサイドユニットの繰り返し構造と両末端のヒドロシリル基とを有する化合物、ヒドロシリル化反応触媒、希釈剤(溶剤)などを混合することにより得られる組成物を用いてもよい。ヒドロシリル化反応触媒としては、例えば、白金系触媒(例えば、白金族金属(カーボンやアルミナなどの担体に担持されたものも含む)、白金族金属を含む錯体など)が用いられるが、これらに限定されるものではない。このようなフッ素含有シリコーンゴムの製法としては、例えば、特開2008−115277号公報の含フッ素エラストマー組成物の調製方法を参照できる。フッ化アルキレンユニットまたはフッ化アルキレンオキサイドユニットの繰り返し構造と、両末端のビニルシリル基またはヒドロシリル基とを有する化合物としては、市販品を用いてもよく、公知の合成法を用いて合成したものを用いてもよい。ビニルシリル基またはヒドロシリル基は、例えば、カップリング剤などを用いてフッ化アルキレンユニットまたはフッ化アルキレンオキサイドユニットの繰り返し構造を有する主鎖の末端に導入できるが、この場合に限定されるものではない。
第1層を形成する硬化物の23℃におけるショアA硬度は、第1層のゴム弾性を確保する観点から、例えば、80以下であり、60以下であることが好ましく、55以下または50以下であることがさらに好ましい。光硬化パターンをスムーズに剥離させ易い観点から、硬化物の23℃におけるショアA硬度は、1以上であることが好ましい。
本明細書中、硬化物のショアA硬度は、JIS K6253:2012に準拠して、市販のデュロメーター(タイプAデュロメーター)を用いて、下記の条件で測定できる。その他の条件は、JIS K6253:2012に従う。
試験温度:23℃
加圧板および押針:JIS K6253:2012に記載のタイプAの加圧板および押針
荷重:1kg
試験片(硬化物)のサイズ:縦30mm×横40mm×厚み4mm以上(具体的には、4mm)
測定位置:試験片の端から押針の先端までの距離5mm
測定時間:加圧板を試験片に接触させた後、5秒後に測定
測定点数:5点
第1層は、必要に応じて、離型層に配合されるような公知の成分を含むことができる。
第1層の厚みは、例えば、1μm以上であり、10μm以上または20μm以上としてもよい。第1層の厚みは、30μm以上が好ましく、40μm以上がさらに好ましい。第1層の厚みは、例えば、3cm以下であり、1cm以下であってもよく、1000μm以下または100μm以下であってもよい。第1層の厚みがこのような範囲である場合、光硬化性材料の浸透を抑制しながらも、第1層の適度な弾性が得られやすく、光硬化パターンを剥離し易い。よって、光硬化性材料の光硬化と第1層からの光硬化パターンの剥離とを繰り返しても第1層の離型性を確保し易い。下地層がトレイ本体である場合、第1層の厚みは、10μm以上とすることが好ましい。下地層が第2層である場合、第1層の厚みは、30μm以上または40μm以上が好ましく、1mm以下または100μm以下としてもよい。
これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
第1層の厚みは、1μm以上(または10μm以上)3cm以下、1μm以上(または10μm以上)1cm以下、1μm以上(または10μm以上)1000μm以下、1μm以上(または10μm以上)100μm以下、20μm以上(または30μm以上)3cm以下、20μm以上(または30μm以上)1cm以下、20μm以上(または30μm以上)1000μm以下、20μm以上(または30μm以上)100μm以下、40μm以上3cm以下(または1cm以下)、あるいは40μm以上1000μm以下(または100μm以下)であってもよい。
第1層の厚みは、第1層の厚み方向に平行な断面写真から求められる。断面写真において、第1層の任意の複数箇所(例えば、5箇所)について厚みを測定し、平均化することにより第1層の厚みが求められる。
特許文献2では、離型層を構成する樹脂層に酸素透過性を付与し、樹脂層が大気中に露出する酸素供給窓を設けている。特許文献2では、酸素供給窓から供給される酸素により離型層と光硬化性材料との界面付近における硬化反応が阻害されることで、光硬化パターンの離型層に対する剥離を容易にしている。それに対し、本発明の上記局面に係る光造形用トレイでは、特定の材料を第1層に用いるとともに、光硬化性材料の第1層への浸透が抑制されることで、第1層の光硬化性材料との接触面において優れた離型性を確保することができる。よって、上記局面に係る光造形用トレイでは、第1層(および第2層の双方)に上記のような酸素供給窓を設ける必要がない。
なお、酸素供給窓とは、第1層および/または第2層に酸素を供給するために、大気中に露出する部分である。つまり、酸素供給窓は、光造形用トレイに光硬化性材料を収容した後は、光硬化性材料と接触することなく大気中に露出した状態とする必要がある。そのため、本発明の上記局面に係る光造形用トレイでは、光造形を行う間、光硬化性材料を収容した後、第1層(および第2層の双方)が大気中に露出しない状態とすることが好ましい。このような観点からは、第1層(および第2層)は、いずれもトレイ本体の内底面を覆うように形成することが好ましい。トレイ本体の内側の側面が第1層と接触する部分の高さと、第1層の厚みとの差は、小さいことが好ましく、この差が、例えば、1mm以下または100μm以下であることが好ましい。なお、下地層が第2層である場合には、トレイ本体の内側の側面が第1層および第2層の各層と接触する部分の高さの合計と、第1層および第2層の厚みの合計との差が、上記の範囲であることが好ましい。
第1層において、高い離型性が得られ易い観点からは、光硬化性材料との接触面の光硬化性材料に対する接触角が高い方が好ましい。このような第1層は、一般に、水に対する接触角も高いため、本明細書では、光硬化性材料に対する接触角に代えて、水に対する接触角を用いてその離型性を表すものとする。第1層の光硬化性材料との接触面の水に対する接触角は、例えば、90°よりも大きいことが好ましく、95°以上であることがさらに好ましく、100°以上であってもよい。
(第2層)
第2層を設ける場合、第2層が第1層との下地層となる。第2層は、第1層とトレイ本体との間において、光硬化性材料に照射される光がより均一となるように、少なくとも光が透過する領域に形成されていることが好ましい。同様の観点から、図2に示すように、トレイ本体の内底面全体を覆うように第2層が配され、この第2層のトレイ本体とは反対側の表面全体を覆うように第1層が配された状態であることがさらに好ましい。
第2層は、樹脂を含む。第2層は、少なくとも第1層が形成される段階で、第1層の第1反応性基と反応または相互作用する官能基を有するような材料で構成される。少なくとも第1層が形成される段階でこのような官能基が第2層に存在することにより、第1層と第2層との間の密着性が向上する。また、第1層への光硬化性材料の浸透が抑制されることで第1層の光硬化性材料との接触面の離型性が高まるため、光硬化パターンの形成と剥離とを繰り返しても、第1層および第2層がトレイ本体から剥離することも抑制される。
官能基は、第1反応性基と反応または相互作用可能であればよく、第1反応性基の種類に応じて適宜選択される。官能基は、第1反応性基と反応する反応性基(第2反応性基)を含むことが好ましく、中でもケイ素に結合した第2反応性基を含むものが好ましい。このような場合、第1反応性基と第2反応性基との反応により、第1層と第2層との密着性をさらに高めることができる。少なくとも第1層が形成される段階で、第2層を構成する材料に含まれる上記の官能基および第2反応性基のそれぞれの種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。ケイ素に結合した第2反応性基では、第2反応性基は、ケイ素に直接結合していてもよく、連結基を介して間接的に結合していてもよい。連結基としては、第1層について例示したものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
第2反応性基としては、第1反応性基の種類に応じて、上記反応(a)〜(e)について例示した反応性基が挙げられる。反応(a)を例に挙げて説明すると、第1反応性基がエポキシ基の場合、第2反応性基は、アミノ基、ヒドロキシ基またはカルボキシ基などである。反応(b)〜(e)についても、反応(a)の場合に準じて第2反応性基が挙げられる。反応(f)において、シラノール基同士の縮合反応を利用する場合、シラノール基に含まれるヒドロキシ基が第2反応性基として挙げられる。反応(f)において、アルコキシシリル基同士の縮合反応を利用する場合、アルコキシシリル基に含まれるアルコキシ基が第2反応性基として挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、第1層について例示したものから選択される。反応(g)では、ヒドロシリル基に含まれる水素原子を第2反応性基として挙げることができる。
トレイ本体と第2層との界面およびその近傍には、必要に応じて、トレイ本体が有する官能基と第2層を構成する材料に由来する官能基(上記の官能基または第2反応性基も含む)とが反応または相互作用して残基が存在していてもよい。このような残基が形成されることで、第2層を形成する場合にも、トレイ本体と第2層および第1層との高い密着性を確保し易くなる。
第2層を構成する樹脂は、第1層が形成される段階で第2層が上記の官能基または第2反応性基を有するものであればよく、熱可塑性樹脂および/または硬化性樹脂が挙げられる。硬化性樹脂は、光硬化性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。なお、硬化性樹脂は、完成した光造形用トレイの第2層において硬化性樹脂の硬化物に変換されている。
第2層を形成する樹脂としては、ゴム状重合体、フッ素樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂などが例示できる。第2樹脂は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。光硬化性パターンを損傷なく取り出し易い観点からは、第1層に加え、第2層もゴム弾性を有することが好ましい。このような観点から、第2層は、ゴム状重合体で形成されることが好ましい。第2層は、光透過性を有する必要もあるため、ゴム状重合体としては、例えば、シリコーンゴム、ニトリルゴムなどが好ましい。第2反応性基を導入し易い観点からは、第2層がシリコーンゴムで形成されることが好ましい。また、第2層をシリコーンゴムで形成すると、フッ素含有シリコーンゴムで形成される第1層との親和性も高いため、両層間の密着性を高める上で有利である。
第2層のゴム弾性を確保する観点から、第2層を形成する材料(硬化物など)の23℃におけるショアA硬度は、例えば、90以下であり、60以下または50以下であってもよい。硬化物の23℃におけるショアA硬度の下限は特に制限されないが、例えば、1以上である。
第2層を形成する場合、光透過性を確保し易い観点から、第1層と第2層の合計厚みは、例えば、5cm以下であり、3cm以下または1cm以下であってもよい。
第1層の厚みの下地層(第2層)の厚みに対する比は、例えば、0.001〜1であり、0.001〜0.1であってもよく、0.001〜0.05または0.01〜0.05としてもよい。厚み比がこのような範囲である場合、第2層の適度な柔軟性および/または弾性などにより、光硬化パターンの第1層からの剥離が容易になる。また、第2層にシリコーンゴムなどの比較的安価な材料を用いることができるため、第1層と第2層との間の高い密着性を確保しながらも、コストを抑えることができる。
なお、第2層の厚みは、第1層の厚みの場合に準じて測定される。
上述のように、本発明の上記局面によれば、第1層に加え、第2層にも、酸素供給窓を設けなくても高い離型性を確保できる。
第2層は、必要に応じて添加剤を含んでもよい。
(トレイ本体)
トレイ本体の形状は、光硬化性材料を収容可能である限り特に制限されない。トレイ本体は、例えば、方形や円形などの形状を有する底部と、底部の周縁から高さ方向に延びる側壁とを備えている。トレイ本体は、例えば、皿やバットなどの形状を有している。
プラットフォームのパターン形成面に向かって光硬化性材料に光源から照射される光を遮らないように、トレイ本体の底部の露光面およびその近傍の領域(好ましくはプラットフォームのパターン形成面の下方に位置する領域)は光源からの光を透過可能である。トレイ本体の底部の周縁部や側壁などは特に光源からの光を透過可能である必要はないが、トレイ本体全体を、光源からの光を透過可能(例えば、透明)にしてもよい。
トレイ本体は、例えば、樹脂などの有機材料、ガラスなどの無機材料などで構成される。トレイ本体の光が照射される領域は、樹脂および/またはガラスで構成される。トレイ本体を構成する樹脂としては、照射される光を透過可能な樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ゴム状重合体(シリコーンゴム、アクリルゴムなど)などが挙げられる。トレイ本体は、これらの材料を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。トレイ本体は、必要に応じて、公知の添加剤を含んでもよい。
第1層の下地層がトレイ本体である場合、トレイ本体は、少なくとも第1層が形成される段階で、第1層の第1反応性基と反応または相互作用する官能基を有するような材料で構成される。少なくとも第1層が形成される段階でこのような官能基がトレイ本体の少なくとも第1層側の表面に存在することにより、第1層と下地層であるトレイ本体との間の密着性が向上する。また、第1層への光硬化性材料の浸透が抑制されることで第1層の光硬化性材料との接触面の離型性が高まるため、光硬化パターンの形成と剥離とを繰り返しても、第1層がトレイ本体から剥離することも抑制される。
官能基は、第1反応性基と反応または相互作用可能であればよく、第1反応性基の種類に応じて適宜選択される。官能基は、第1反応性基と反応する反応性基(第3反応性基)、例えば、ケイ素に結合した第3反応性基を含んでもよい。第3反応性基としては、第2反応性基についての記載が参照できる。
第1層および第2層に酸素供給窓が形成されないように、トレイ本体には、第1層および/または第2層が大気中に露出するような孔(または開口部)が形成されていないことが好ましい。
本発明の上記局面に係る光造形用トレイは、例えば、図3の光造形用トレイ101に代えて用いることができ、既述の手順で光造形を行うことができる。
図3では、面露光方式の場合を例に挙げたが(工程(ii)および(iv))、露光方式については特に制限されず、点露光でも、面露光でもよい。光源としては、光硬化に使用される公知の光源が使用できる。点露光方式の場合には、例えば、プロッター式、ガルバノレーザ(またはガルバノスキャナ)方式、SLA(ステレオリソグラフィー)方式などが挙げられる。面露光方式の場合には、光源としてプロジェクタを用いると簡便である。プロジェクタとしては、LCD(透過型液晶)方式、LCoS(反射型液晶)方式、およびDLP(登録商標、Digital Light Processing)方式などが例示できる。露光波長は、光硬化性材料の成分の種類などに応じて適宜選択できる。
[光硬化性材料]
光造形用トレイに収容される光硬化性材料は、光造形において使用される流動性を有する光硬化性材料であれば特に制限なく使用することができる。光硬化性材料は、例えば、光硬化性モノマー、光硬化性前駆体(光硬化性オリゴマー、光硬化性プレポリマーなど)を含んでおり、さらに光重合開始剤を含む場合もある。光硬化性材料は通常、室温(例えば、20〜35℃)で液状である。
光硬化性モノマーとしては、光照射により発生したラジカルやカチオンなどの作用により硬化または重合可能なモノマーが使用される。ラジカル重合光硬化性モノマーとしては、重合性の官能基を複数有する多官能性モノマーが好ましい。光硬化性モノマーにおける重合性官能基の個数は、例えば、2〜8個である。重合性官能基としては、ビニル基、アリル基などの重合性炭素−炭素不飽和結合を有する基、エポキシ基などが例示できる。
より具体的には、光硬化性モノマーとしては、例えば、アクリル系モノマーなどのラジカル重合性モノマー、エポキシ系モノマー、ビニル系モノマー、ジエン系モノマーなどのカチオン重合性モノマーなどが挙げられる。光硬化性モノマーは、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
アクリル系モノマーとしては、例えば、ポリオールの(メタ)アクリル酸エステルが使用される。ポリオールは、例えば、脂肪族ポリオールであってもよく、芳香環または脂肪族環を有してもよい。なお、本明細書中、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを、(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリレートと総称する。
ビニル系モノマーとしては、ポリオールポリ(ビニルエーテル)などのビニルエーテル、スチレンなどの芳香族ビニルモノマー、ビニルアルコキシシランなどが例示できる。ポリオールポリ(ビニルエーテル)を構成するポリオールとしては、アクリル系モノマーについて例示したポリオールが例示される。
ジエン系モノマーとしては、例えば、イソプレン、ブタジエンなどが挙げられる。
エポキシ系モノマーとしては、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を挙げることができる。エポキシ系モノマーは、例えば、エポキシシクロヘキサン環または2,3−エポキシプロピロキシ基を含むものであってよい。
光硬化性前駆体としては、前記例示の光重合性モノマーのオリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ジアリルフタレートプレポリマーなどが例示できる。これらは、光重合によりさらに高分子量化が可能である。ジアリルフタレートプレポリマーは、複数のジアリルフタレートユニットが連なったオリゴマーまたはポリマーである。ジアリルフタレートプレポリマーは、一種のジアリルフタレートユニットを含んでもよく、二種以上のジアリルフタレートユニットを含んでもよい。二種以上のジアリルフタレートユニットとは、例えば、アリルオキシカルボニル基の置換位置が異なる複数のジアリルフタレートユニットが挙げられる。なお、o−ジアリルフタレートユニットの連結鎖を含むオルソ型ジアリルフタレートプレポリマー、m−ジアリルフタレートユニットの連結鎖を含むイソ型ジアリルフタレートプレポリマーなどを用いてもよい。
光硬化性前駆体の重量平均分子量は、例えば、5,000〜150,000であり、10,000〜150,000または30,000〜150,000であってもよい。
本明細書中、平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン基準の平均分子量である。
非芳香族性の骨格(例えば、脂肪族骨格および/または脂環族骨格)を有する硬化性樹脂を含む光硬化性材料を用いる場合、従来のシリコーンゴム製などの離型層に浸透し易い。そのため、光硬化パターンの形成と離型層からの剥離とを繰り返すうちに、離型層の白化などの劣化が顕著になり、離型性が損なわれる。このような状態で光硬化パターンを剥離すると離型層に大きな剥離応力が加わり、離型層が光造形用トレイから剥離する。それに対し、本発明の上記局面によれば、非芳香族性の骨格を有する硬化性樹脂を含む光硬化性材料を用いる場合であっても第1層への浸透が抑制されるため、第1層の劣化を抑制でき、第1層の下地層からの剥離を抑制できる。
光重合開始剤は、光の作用により活性化して、光硬化性モノマーおよび/または前駆体の重合を開始させる。光重合開始剤としては、例えば、光の作用によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤のほか、光の作用により酸(またはカチオン)を生成するもの(具体的には、カチオン発生剤)が挙げられる。光重合開始剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。光重合開始剤は、光硬化性モノマーのタイプ、例えば、ラジカル重合性であるか、カチオン重合性であるかなどに応じて選択してもよい。ラジカル重合開始剤(ラジカル光重合開始剤)としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤などが挙げられる。
光硬化性材料は、さらに、その他の公知の硬化性樹脂などを含んでもよい。
また、光硬化性材料は、公知の添加剤を含むことができる。
[光造形用トレイの製造方法]
上記局面に係る光造形用トレイは、トレイ本体を準備する工程と、第1層の原料とする硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する工程と、塗膜を硬化させて第1層を形成し、下地層に密着させる工程と、を含む製造方法により製造できる。第2層を配する場合には、製造方法は、さらに、塗膜形成工程の前に第2層を形成する工程を含む。以下に各工程についてより具体的に説明する。
(トレイ本体の準備工程)
トレイ本体としては、市販のものを入手してもよく、トレイ本体を構成する材料を成形することにより製造してもよい。このようにしてトレイ本体が準備される。トレイ本体の材料としては、前述の樹脂および/またはガラスなどが使用される。トレイ本体が第1層の下地層となる場合には、トレイ本体を成形する際に、第1反応性基と反応または相互作用可能な官能基を有するとともに、成形後のトレイ本体の少なくとも表面(特に内側の表面)およびその近傍には官能基が残存するような材料を用いることが好ましい。
トレイ本体は、少なくとも底部の露光面およびその近傍領域が光源からの光を透過可能となるように形成される。また、酸素供給窓を形成するような孔(または開口部)をトレイ本体に形成することなく準備することが好ましい。
(第2層形成工程)
第2層は、トレイ本体の露光面の反対側の面(つまり、トレイ本体の内底面)を覆うように形成される。第2層は、トレイ本体の内底面において、少なくとも露光面上に位置する部分に形成すればよく、図2に例示されるように内底面全体を覆うように形成してもよい。また、トレイ本体の内底面全体を覆うとともに、トレイ本体の内側壁の一部を覆うように第2層を形成してもよい。
第2層は、少なくとも、樹脂を含むコーティング剤を塗布することにより形成される。コーティング剤の塗布は、コーティング剤の塗布後、必要に応じて、乾燥を行ってもよい。乾燥は、大気圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。乾燥は、必要に応じて、加熱下で行うこともできる。
例えば、樹脂として熱可塑性樹脂が用いられる場合、熱可塑性樹脂とこれを希釈する溶剤と必要に応じて添加剤などとを含むコーティング剤をトレイ本体の内底面の少なくとも一部に塗布し、乾燥することにより第2層を形成できる。
樹脂として硬化性樹脂が用いられる場合、硬化性樹脂と、硬化剤、硬化促進剤、硬化触媒および/または重合開始剤などと、必要に応じて添加剤などとを含む硬化性樹脂組成物をコーティング剤として用い、塗布により形成される塗膜を硬化させることにより第2層が形成される。硬化は、必要により、加熱下および/または光照射下で行ってもよい。
硬化性樹脂組成物は、一液硬化型および二液硬化型のいずれであってもよい。
硬化性樹脂組成物を用いる場合には、第1層を形成する際に、第1反応性基と反応する官能基を第2層が有する状態となるように、硬化状態を調節してもよい。例えば、後続の塗膜形成工程に供する際に、第2層が、例えば、半硬化状態または完全硬化状態となるように硬化状態を調節してもよい。硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、希釈用の溶剤を含んでもよい。溶剤は、硬化性樹脂組成物の構成成分の種類などに応じて選択できる。硬化性樹脂組成物を用いる場合にも、必要に応じて適当な段階で乾燥を行うことができる。
乾燥および硬化の温度および時間は、第2層を構成する樹脂の種類、所望する硬化状態、および/または溶剤の種類などに応じて、決定すればよい。
第2層を形成する際に、トレイ本体が有する官能基と第2層を構成する材料に由来する官能基とを反応または相互作用させてもよい。例えば、コーティング材を硬化、乾燥および/または加熱する際に、各官能基間の反応または相互作用が進行して、残基が形成される。このような残基を形成することで、トレイ本体と、第2層(および第1層)との密着性を高めることができる。
(塗膜形成工程)
本工程では、下地層上に、第1層の原料となる硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する。塗膜は、トレイ本体の露光面の反対側の面(つまり、トレイ本体の内底面)を覆うように形成される。塗膜は、トレイ本体の内底面において、少なくとも露光面上に位置する部分に形成すればよく、図1または図2に例示されるように内底面全体を覆うように形成してもよい。また、トレイ本体の内底面全体を覆うとともに、トレイ本体の内側壁の一部を覆うように塗膜を形成してもよい。塗膜は、トレイ本体の所定の箇所に直接形成してもよく、第2層を介して形成してもよい。
硬化性樹脂組成物は、ケイ素に結合した第1反応性基を有するフッ素含有硬化性樹脂を含むとともに、室温(例えば、20〜35℃)で液状であればよい。硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂の種類に応じて、硬化剤、硬化促進剤、硬化触媒、および/または重合開始剤などを含んでいる。硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、添加剤など離型層に使用される公知の成分などを含んでいてもよい。
硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、例えば、0.1mPa・s以上10Pa・s以下であり、0.1mPa・s以上1Pa・s以下であることが好ましく、0.1mPa・s以上500mPa・s以下であることがさらに好ましい。粘度がこのような範囲である場合、より均一な第1層を形成し易く、高い離型性を確保し易い。
硬化性樹脂組成物の粘度は、例えば、E型粘度計(東機産業社製、TVE−25)を用いて、下記の条件で測定することができる。
温度(循環水の温度):25℃
ロータ:コーンプレート(コーン角度1°34’)
サンプル量:1.0mL
ずり速度:3.83×ロータ回転数/s
回転速度:100rpm
塗膜形成の前に、溶剤を用いて希釈することにより、硬化性樹脂組成物の粘度を調節してもよい。このとき、塗膜形成に供される硬化性樹脂組成物の粘度が上記の範囲になるように、希釈することが好ましい。溶剤は、硬化性樹脂組成物の構成成分の種類などに応じて選択される。溶剤を用いて希釈することにより、より均一な第1層を形成し易くなり、高い離型性を確保し易い。
硬化性樹脂組成物は、一液硬化型および二液硬化型のいずれであってもよい。
溶剤としては、後続の密着工程において除去できるように揮発性のものが好適に用いられる。溶剤としては、通常、有機溶剤が用いられるが、構成成分の種類および/または密着工程の温度などによっては水、または水と有機溶剤との混合物を用いることもできる。有機溶剤としては、例えば、炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アミド、ニトリル、スルホンなどが挙げられる。溶剤としては、フッ素含有溶剤などのハロゲン含有溶剤を用いてもよい。ハロゲン含有溶剤は、通常、有機溶剤であり、上記例示の有機溶剤にフッ素原子などのハロゲン原子が導入されたものなどが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素、ヨウ素、および/または臭素原子が含まれる。フッ素含有硬化性樹脂との親和性が高い観点からは、フッ素含有溶剤が好ましく、フッ素原子と他のハロゲン原子(例えば、塩素原子など)とを含むハロゲン含有溶剤であってもよい。溶剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
塗膜を形成した後、必要に応じて、乾燥を行ってもよい。乾燥は、大気圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。乾燥は、必要に応じて、加熱下で行うこともできる。
(密着工程)
本工程では、塗膜形成工程で形成された塗膜(具体的には、塗膜に含まれる硬化性樹脂組成物)を硬化させて、第1層を形成するとともに、下地層を構成する材料に由来する官能基と、第1反応性基とを反応または相互作用させて、第1層を下地層に密着させる。官能基と第1反応性基との反応または相互作用は、通常、硬化反応が進行する際に並行して起こるが、この場合に限定されるものではない。例えば、必要に応じて、硬化反応後、官能基と第1反応性基との反応または相互作用が進行するように、さらに加熱および/または光照射などを行ってもよい。官能基と第1反応性基とが反応または相互作用することで、残基が、下地層と第1層との界面およびその近傍に形成される。これにより、第1層と下地層との密着性を高めることができる。
第1反応性基は、硬化反応などの間に、下地層の官能基、硬化性樹脂組成物中に含まれる反応成分などと反応する。これにより、第1層の光硬化性材料との接触面では、遊離の第1反応性基の残存量が低減され、高い離型性が確保される。中でも、ケイ素に結合した第1反応性基として、アルコキシシリル基、シラノール基、および/またはビニルシリル基(特に、ビニルシリル基)などを有するフッ素含有硬化性樹脂を用いる場合、第1層の光硬化性材料との接触面において高い離型性を確保する上で有利である。
硬化性樹脂組成物の硬化は、必要に応じて、加熱下および/または光照射下で行ってもよい。硬化の温度および時間は、硬化性樹脂組成物の組成および/または溶剤の種類などに応じて決定すればよい。
必要に応じて、本工程の適当な段階で乾燥を行ってもよい。乾燥は、大気圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。乾燥は、必要に応じて加熱下で行ってもよい。
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜5
トレイ本体としてのアクリル樹脂製のバット(内側の縦16cm×横16cm×深さ4cm)に、両末端にヒドロシリル基を有するシリコーン付加型硬化ゴム(東レダウコーニング(株)製、Sylgard184)を注ぎ、室温(25℃)で24時間静置することで硬化させて、厚み4mmの第2層を形成した。なお、シリコーン付加型硬化ゴムの硬化物について既述の手順で測定したショアA硬度は、50である。
フッ素含有シリコーン付加型硬化ゴムを第2層上に塗布し、しばらく静置した後、80℃で1晩加熱することにより硬化させて、表1に示す厚みの第1層を形成した。このようにして、第1層およびその下地層として第2層とを有する光造形用トレイを形成した。なお、上記のフッ素含有シリコーン付加型硬化ゴムの硬化物(厚み4mm)について既述の手順で測定したショアA硬度は、31である。
なお、上記のフッ素含有シリコーン付加型硬化ゴムは、次の手順で調製した。
白金触媒を溶媒(ハイドロフルオロエーテルCOCH)に溶解させた溶液(白金濃度0.5質量%)と、ヘキサフルオロプロピレンオキサイドユニットの繰り返し構造を有するとともに、両末端にビニルシリル基を有する化合物とを混合することによりA液を調製した。白金触媒としては、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を用いた。
フッ化アルキレンユニットの繰り返し構造を有するとともに、両末端にヒドロシリル基を有する化合物を溶媒(ハイドロフルオロエーテルCOCH)で希釈することによりB液を調製した。
得られたB液と上記のA液とを混合することにより、フッ素含有シリコーン付加型硬化ゴム(エラストマー組成物)を調製した。
比較例1
実施例1と同様にしてトレイ本体内に、第2層を形成した。この第2層を有するトレイを、第1層を形成することなく、光造形用トレイとして用いた。これら以外は、実施例1と同様に操作を行った。
比較例2
実施例1と同様にしてトレイ本体内に、第2層を形成した。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むフッ素系コーティング剤(住鉱潤滑剤(株)製、スミロン2250スプレーPFOAフリー)を第2層上に塗布して乾燥させることにより、厚み20μmの第1層を形成した。これら以外は、実施例1と同様に操作を行った。
<評価>
実施例および比較例で得られた光造形用トレイを用いて、以下の手順でサンプルと接触していた層(実施例および比較例2では第1層、比較例1では第2層)における離型性およびサンプルと接触していた層の下地層に対する密着性を評価した。
(1)離型性
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100質量部に対して、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(BASF社製、Irgacure819)3質量部を添加し、80℃で加熱することにより均一な液状材料(光硬化性材料)を得た。光硬化性材料を光造形用トレイに収容して光造形により外径18mmのシリンダー状サンプルを作製した。光造形は、SLA方式の3Dプリンタ(XYZプリンティング社製、Novel1.0A)を用いて、1層当たりの照射時間10秒およびz軸(高さ方向)のピッチ100μmの条件で行った。
離型性の指標として、サンプル作製後のサンプルと接触していた層の状態または白化の程度を目視で観察し、下記の基準で評価した。
A:透明のままで白化が全く見られない。
B:サンプルと接触した箇所がわずかに白くなっている。
C:サンプルと接触した箇所が顕著に白くなっている。
D:1層目の硬化物を第1層から剥離させる際に、第1層が第2層から剥離し、三次元造形ができなかった。
(2)密着性
実施例または比較例2と同様にして作製した光造形用トレイの第1層に、1マス2mm×2mmのサイズに切り込みを入れた(クロスカットした)。切り込みを入れた部分の中心付近に、約75mmの長さにカットした幅25mmの透明感圧付着テープの長さ方向の中心付近が当たるように貼り付けた。このとき、テープの中心付近の少なくとも長さ20mmの部分が平らになるように、テープを第1層の切り込みを入れた部分に指で押しつけ、擦った。テープを付着させてから5分以内に、引き剥がした。このとき、テープを貼り付けたカット部分において、剥離した部分の割合(%)を求め、下記の基準で密着性を評価した。剥離した部分の割合が少ないほど、密着性が高いことを示す。
A:剥離した部分の割合が0%である。
B:剥離した部分の割合が0%を超え50%以下である。
C:剥離した部分の割合が50%を超える。
実施例および比較例の評価結果を表1に示す。
Figure 0006670009
比較例1では、シリンダー状サンプルの高さが10cmのときに、サンプルと接触していた層に白化が見られ、高さが15cmのときには、顕著な白化が見られた。比較例2では、離型性の評価において、1層目の硬化物を第1層から剥離する際に、第1層が第2層から剥離してしまい、引き続き造形を行うことができなかった。また、比較例2では、密着性の試験において、第1層の全てが剥離した(剥離した部分の割合が100%であった)。
それに対し、実施例では、比較例に比べて離型性および密着性が大きく向上している。実施例1〜4では、高さ20cmのシリンダー状サンプルを形成しても、サンプルと接触していた第1層の白化は見られなかった。実施例5では、高さ15cmのシリンダー状サンプルを形成したときに、第1層表面のサンプルと接触していた部分がわずかに白くなっていた。また、実施例では、第1層の剥離は全く見られず、高い密着性を確保することができた。このような結果は、下地層の材料のヒドロシリル基と第1層の材料のビニルシリル基との付加反応により、第1層と下地層との密着性が大きく向上したことによるものと考えられる。
本発明の上記局面に係る光造形用トレイは、光造形において、トレイの内底面に配された第1層から硬化物を剥離し易く、繰り返し使用しても、第1層が下地層から剥離することを抑制できる。よって、3Dプリンタなどを用いる三次元光造形装置に使用される光硬化性材料を収容するためのトレイ(または樹脂槽)として有用である。
1、11、101:光造形用トレイ、1a、11a、101a:露光面、1b、11b、101b:トレイ本体の底部、1c、11c、101c:トレイ本体、1d、11d:第1層、101d:離型層、11e:第2層、102:光硬化性材料、102a:液膜、102b:二次元のパターン、104:プラットフォーム、104a:パターン形成面、105:光源、L:光

Claims (14)

  1. 光造形において流動性を有する光硬化性材料を収容する光造形用トレイであって、
    露光面を有するトレイ本体と、
    前記トレイ本体の前記露光面の反対側の面を覆い、かつ前記光硬化性材料との接触面を有する第1層と、を備え、
    前記第1層は、ケイ素に直接的または間接的に結合した第1反応性基を有するフッ素含有硬化性樹脂を含む組成物の硬化物で構成され、
    前記第1層と、前記第1層の下地層との界面およびその近傍に、前記下地層を構成する材料に由来する官能基と前記第1反応性基とが反応または相互作用した残基が存在し、
    前記官能基は、ケイ素に直接的または間接的に結合した第2反応性基を含み、
    前記残基は、前記第1反応性基と前記第2反応性基との付加反応により形成される、光造形用トレイ。
  2. 光造形において流動性を有する光硬化性材料を収容する光造形用トレイであって、
    露光面を有するトレイ本体と、
    前記トレイ本体の前記露光面の反対側の面を覆い、かつ前記光硬化性材料との接触面を有する第1層と、を備え、
    前記第1層は、ケイ素に直接的または間接的に結合した第1反応性基を有するフッ素含有硬化性樹脂を含む組成物の硬化物で構成され、
    前記第1層と、前記第1層の下地層との界面およびその近傍に、前記下地層を構成する材料に由来する官能基と前記第1反応性基とが反応または相互作用した残基が存在し、
    前記第1層は、フッ素含有シリコーンゴムで構成され、
    前記下地層は、シリコーンゴムを含む、光造形用トレイ。
  3. 前記官能基は、ケイ素に直接的または間接的に結合した第2反応性基を含む、請求項に記載の光造形用トレイ。
  4. 前記残基は、前記第1反応性基と前記第2反応性基との付加反応により形成される、請求項に記載の光造形用トレイ。
  5. 前記下地層は、前記トレイ本体、または前記トレイ本体と前記第1層との間に配された樹脂を含む第2層である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光造形用トレイ。
  6. 前記下地層は、前記第2層であり、
    前記第1層の厚みの、前記第2層の厚みに対する比は、0.001〜1である、請求項に記載の光造形用トレイ。
  7. 前記第1層の厚みは、1μm以上1000μm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の光造形用トレイ。
  8. 前記硬化物の23℃におけるショアA硬度は、60以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の光造形用トレイ。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光造形用トレイを製造する方法であって、
    露光面を有するトレイ本体を準備する工程と、
    前記トレイ本体の前記露光面の反対側の面を覆うように、ケイ素に直接的または間接的に結合した第1反応性基を有するフッ素含有硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する工程と、
    前記塗膜を硬化させて、前記光硬化性材料との接触面を有する第1層を形成するとともに、前記第1層の下地層を構成する材料に由来する官能基と、前記第1反応性基とを反応または相互作用させて、前記第1層を前記下地層に密着させる工程と、を含む、光造形用トレイの製造方法。
  10. 前記塗膜形成工程の前に、前記トレイ本体の前記露光面の反対側の面を覆うように、樹脂を含む第2層を形成する工程をさらに含み、
    前記第2層を前記下地層として前記第1層を形成する、請求項9に記載の光造形用トレイの製造方法。
  11. 前記硬化性樹脂組成物は、25℃において、0.1mPa・s以上10Pa・s以下の粘度を有する、請求項10に記載の光造形用トレイの製造方法。
  12. 前記塗膜形成工程の前に、溶剤を用いて希釈することにより、前記硬化性樹脂組成物の粘度を調節する、請求項11に記載の光造形用トレイの製造方法。
  13. 前記溶剤は、フッ素含有溶剤を含む、請求項12に記載の光造形用トレイの製造方法。
  14. 光造形において流動性を有する光硬化性材料を収容する光造形用トレイを製造する方法であって、
    露光面を有するトレイ本体を準備する工程と、
    前記トレイ本体の前記露光面の反対側の面を覆うように、ケイ素に直接的または間接的に結合した第1反応性基を有するフッ素含有硬化性樹脂を含み、かつ、25℃において0.1mPa・s以上10Pa・s以下の粘度を有する硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する工程と、
    前記塗膜を硬化させて、前記光硬化性材料との接触面を有する第1層を形成するとともに、前記第1層の下地層を構成する材料に由来する官能基と、前記第1反応性基とを反応または相互作用させて、前記第1層を前記下地層に密着させる工程と、を含み、
    前記塗膜形成工程の前に、前記トレイ本体の前記露光面の反対側の面を覆うように、樹脂を含む第2層を形成する工程をさらに含み、
    前記第1層は、前記第2層を前記下地層として形成し、
    前記塗膜形成工程の前に、フッ素含有溶剤を含む溶剤を用いて希釈することにより、前記硬化性樹脂組成物の粘度を調節する、光造形用トレイの製造方法。
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