JP6792835B2 - 光造形用トレイ - Google Patents
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光照射面を有するトレイ本体と、
前記トレイ本体の前記光照射面の反対側の面を覆うとともに前記光硬化性材料との接触面を有する離型層と、を備え、
前記離型層は、酸素透過性を有する第1樹脂を含む第1樹脂層を少なくとも備え、
前記第1樹脂層は、前記トレイ本体の内面に沿って形成された前記離型層の周縁部が、収容された前記光硬化性材料の液面より上方において大気中に露出することで形成された、前記第1樹脂層中に酸素を供給するための酸素供給窓を有する、光造形用トレイに関する。
本発明に係る光造形用トレイは、吊り下げ方式の光造形において流動性を有する光硬化性材料を収容するものであり、いわゆる樹脂槽である。光造形用トレイは、光照射面を有するトレイ本体と、トレイ本体の光照射面の反対側の面を覆うとともに光硬化性材料との接触面を有する離型層と、を備える。離型層は、酸素透過性を有する第1樹脂を含む第1樹脂層を少なくとも備え、第1樹脂層は、第1樹脂層中に酸素を供給するために大気中に露出する酸素供給窓を有する。
酸素は、光造形を行う間は継続して、酸素供給窓から導入されることが望ましい。そのため、光造形用トレイに光硬化性材料を収容した後は、酸素供給窓は大気中に露出し続けた状態とすることが好ましい。
光造形用トレイは、光硬化性材料を収容するトレイ本体と、トレイ本体の光硬化性材料を収容する側の面に配された離型層とを備える。
トレイ本体の形状は、光硬化性材料を収容可能である限り特に制限されない。トレイ本体は、例えば、方形や円形などの形状を有する底部と、底部の周縁から高さ方向に延びる側壁とを備えている。トレイ本体は、例えば、皿やバットなどの形状を有している。
離型層は、トレイ本体の光照射面の反対側の面、すなわち、光硬化性材料を収容する側の面を覆うように配されている。離型層は、光硬化パターンを剥離し易くするために、少なくとも光照射される領域に配されていればよいが、酸素供給窓を大気中に露出した状態となるように配する必要がある。
図1は、本発明の一実施形態に係る光造形用トレイの概略縦断面図である。光造形用トレイ1は、バット状のトレイ本体1aと、トレイ本体1aの内側に配された離型層1bとを含む。トレイ本体1aは、光源6からの光Lが照射される光照射面5aを含む外側の底面と、光照射面5aの反対側の面5bを含む内底面とを備える。光造形用トレイ1において、離型層1bは、トレイ本体1aの面5bを含む内底面およびトレイ本体1aの内側壁を覆うように配されている。光造形用トレイ1には、光硬化性材料3が収容されており、離型層1bは、光硬化性材料3との接触面9を有している。
第1樹脂層に含まれる第1樹脂は、酸素透過性を有する。第1樹脂は、第1樹脂からなる厚み25μmのフィルムについての酸素透過係数が、例えば、1×104cc/m2・24h・atm以上であることが好ましく、1×105cc/m2・24h・atm以上または1×106cc/m2・24h・atm以上であることがさらに好ましい。なお、第1樹脂層のうち、少なくとも酸素供給窓として大気中に露出する部分に含まれる第1樹脂がこのような酸素透過係数を示すことが好ましい。
なお、上記フィルムの酸素透過係数は、JIS K 7126−1(差圧法)に準拠して測定することができる。
第1樹脂層の厚みは、例えば、10μm〜5cmであり、100μm〜4cmであることが好ましい。
第2樹脂層は、酸素透過性を有する第2樹脂を含む。第2樹脂は、照射光を透過可能であることが好ましい。また、第2樹脂層を設ける場合、離型層(第2樹脂層)と光硬化性材料との界面における硬化反応を阻害する観点から、第1樹脂層内に酸素供給窓から導入された酸素を、第2樹脂層を通じて、第2樹脂層と光硬化性材料との界面付近に供給する必要がある。このような観点からは、第2樹脂としては、第1樹脂について例示したものから選択して用いることが好ましい。
第2樹脂層の厚みは、例えば、1〜1,000μmであり、10〜100μmであることが好ましい。
離型層は、必要に応じて、公知の添加剤を含むことができる。
光造形用トレイに収容される光硬化性材料は、光硬化性モノマー、光硬化性前駆体(光硬化性オリゴマー、光硬化性プレポリマーなど)を含んでおり、さらに光重合開始剤を含む場合もある。光硬化性材料は流動性を有し、通常、室温で液状である。
ジエン系モノマーとしては、例えば、イソプレン、ブタジエンなどが挙げられる。
また、光硬化性材料は、公知の添加剤を含むことができる。
(1)トレイの作製
第1樹脂としての型取り用シリコーン付加型硬化ゴム(信越化学工業(株)製、KE−1603−A/B)を攪拌し、減圧下で脱泡することにより透明で粘稠な液体を得た。得られた液体を、トレイ本体としてのアクリル樹脂製のバット(縦10cm×横10cm×深さ5cm)に入れて、中央に、板材(縦8cm×横8cm×高さ3cm)を押し込み、室温で24時間静置して硬化させることにより第1樹脂層からなる離型層を形成した。板材を取り除くことにより、図1に示すようなトレイを完成させた。第1樹脂層の厚みは1cmであり、水に対する接触角は95°であった。
なお、第1樹脂からなるフィルム(厚み25μm)を作製し、JIS K 7126−1(差圧法)に準拠して酸素透過係数を求めたところ、7×105cc/m2・24h・atmであった。
上記(1)で得られたトレイを用いて以下の評価を行った。
(a)離型層の酸素透過性
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100質量部に対して、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(BASF社製、Irgacure819)3質量部を添加し、80℃で加熱することにより均一な液状材料(光硬化性材料)を得た。
光硬化性材料を、上記(1)で得られたトレイに、離型層の上縁部(酸素供給窓)を大気中に露出させた状態で入れ、ガラス板で光硬化性材料の液面を覆った。この状態で、全体を1mmHg(≒133.3Pa)に減圧して10分間保持した。このとき、離型層から光硬化性材料中への気体の流入を目視で観察した。気体の流入が観察されたものをA、気体の流入が観察されなかったものをBとして評価した。なお、離型層の光硬化性材料との接触面の面積(S1)に対する酸素供給窓の面積(S2)の比(=S2/S1)は、0.2であった。
上記(1)で得られたトレイを、DLP(登録商標、Digital Light Processing)方式のプロジェクタ光源を利用するパターニング装置の樹脂槽として用いて、光造形を行い、離型層からの硬化物の剥離性について評価した。
より具体的には、トレイに、上記(a)で調製したものと同じ光硬化性材料を、酸素供給窓が大気中に露出した状態で収容し、パターニング装置にセットした。パターニング装置の台座(プラットフォーム)のパターン形成面を、下向きに、トレイ内の光硬化性材料に浸漬させ、パターン形成面とトレイの離型層との間に厚み150μmの液膜を形成した。この液膜に対して、トレイの下方から光源より、露光波長405nmの光を照度0.2mW/cm2で60秒間面露光し、液膜を硬化させた。得られた硬化物を台座ごと引き上げて、トレイの離型層から剥離させた。このとき、離型層から硬化物を容易に剥離できた場合をA、剥離に手間取ったり、きれいに剥離できなかったりした場合をBとして評価した。なお、S2/S1比は、0.2であった。
図4は、図3の光造形トレイに用いたトレイ本体の概略上面図である。図4に示すように、トレイ本体21aとしてのアクリル樹脂製のバット(縦10cm×横10cm×深さ5cm)の底部28を、光照射面とは反対側の面25bを囲むように内底面の外縁の4辺にそれぞれ沿って、4箇所切り抜き、孔27を形成した。バットの内底面全体を覆うように、第1樹脂層として、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(ダイキン工業(株)製、ネオフロンPFA)のフィルム(厚み12μm)を配した。次いで、このフィルム上に、実施例1で用いたものと同じ粘稠な液体を流し込み、室温で24時間静置して硬化させることにより、シリコーンゴムで形成された第2樹脂層を積層し、図2に示すようなトレイを完成させた。第2樹脂層の厚みは12μmであり、水に対する接触角は96°であった。第1樹脂からなるフィルム(厚み25μm)の酸素透過係数(JIS K 7126−1(差圧法)に準拠)は、2×104cc/m2・24h・atmであった。
実施例1で用いたものと同じトレイ本体を用い、実施例1と同様にして、第1樹脂を形成した。次に、第1樹脂層が配置されたトレイ本体の内底面全体を覆うように、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)共重合体(テフロン(登録商標)AF2400)のフィルム(厚み50μm)を第1樹脂層上に積層して、第2樹脂層を形成した。第2樹脂層の水に対する接触角は105°であった。第2樹脂からなるフィルム(厚み25μm)の酸素透過係数(JIS K 7126−1(差圧法)に準拠)は、1.8×107cc/m2・24h・atmであった。このようにして、第1樹脂層および第2樹脂層を有する離型層を備えるトレイを完成させた。得られたトレイを用いること以外は、参考例1と同様にして評価を行った。
板材を押し込むことなく、離型層を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてトレイを完成させた。比較例1のトレイでは、アクリル樹脂製のバットの内底面のみにシリコーンゴムの離型層(第1樹脂層)が配されていた。第1樹脂層の厚みは、300μmであり、水に対する接触角は90°であった。得られたトレイを用いること以外は、参考例1と同様にして評価を行った。比較例1では、離型層が大気中に露出する酸素供給窓は形成しなかった。
実施例、参考例および比較例の結果を表1に示す。実施例1は、A1であり、参考例1は、A2であり、実施例2はA3であり、比較例1はB1である。
Claims (5)
- 吊り下げ方式の光造形において流動性を有する光硬化性材料を収容する光造形用トレイであって、
光照射面を有するトレイ本体と、
前記トレイ本体の前記光照射面の反対側の面を覆うとともに前記光硬化性材料との接触面を有する離型層と、を備え、
前記離型層は、酸素透過性を有する第1樹脂を含む第1樹脂層を少なくとも備え、
前記第1樹脂層は、前記トレイ本体の内面に沿って形成された前記離型層の周縁部が、収容された前記光硬化性材料の液面より上方において大気中に露出することで形成された、前記第1樹脂層中に酸素を供給するための酸素供給窓を有する、光造形用トレイ。 - 前記離型層は、前記第1樹脂層と、前記第1樹脂層に積層され、前記光硬化性材料との前記接触面を有し、かつ酸素透過性を有する第2樹脂を含む第2樹脂層とを含み、
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層よりも前記光硬化性材料の硬化物に対して高い離型性を有する、請求項1に記載の光造形用トレイ。 - 前記第1樹脂は、前記第1樹脂からなる厚み25μmのフィルムについての酸素透過係数が1×104cc・mm/m2・24h・atm以上である、請求項1または2に記載の光造形用トレイ。
- 前記第1樹脂は、テトラフルオロエチレンユニットを含む重合体、およびシリコーンゴムからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光造形用トレイ。
- 前記光硬化性材料との前記接触面の面積に対する前記酸素供給窓の面積の比が、0.1以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光造形用トレイ。
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