JP6669795B2 - 走査型電子顕微鏡および検査装置 - Google Patents

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本発明は、大気中に配置された試料の表面の拡大画像を生成する走査型電子顕微鏡および検査装置に関するものである。
近年、試料の全体サイズは大きいが、その構成物の微細構造を非破壊状態で観察したい場合が増加している。例えば、テレビなどに使う液晶パネルの第5世代の基板は一辺が3mもあるが、その上に作られている回路はサブミクロンであり、それを観察するためには電子顕微鏡が必要となる。
しかしながら、電子顕微鏡は電子ビームを走行させて画像を生成するために真空中でしか使えない。そのため、大きな液晶パネルの基板ガラスを真空チャンバー内に入れる必要がある。もちろん世の中には3mを超える真空チャンバーは存在するが、基板の隅々まで観察しようとすれば、基板の移動スペースも必要で、チャンバーの大きさは5mを超える非常に大型のものになり、作るのも大変だが設置するのも大変になる。現在の電子顕微鏡技術を用いた検査装置は実際、以上のような大型の装置である。
このような状況を鑑みた結果、従来、生物観察に使用されてきた膜隔離方式環境SEMの技術を利用する方式が存在する。環境SEMは従来の電子顕微鏡とは異なり、試料が大気圧、あるいはそれに近い圧力下でも電子顕微鏡を動作させることが出来る。生物用の環境SEMでは、水分を含んだままの試料を観察可能であるが、観察面は大気と真空を分離するための薄膜に接していることが必要である。これは、電子ビームは空気中では容易に空気と散乱を起こすため、電子ビームがぼけて太くなりかつ減衰するため、必要な感度や分解能が得られないからである。
生物試料が薄膜と接しているため、生物試料は水中、大気圧力中にあっても、生物試料と薄膜の間には空気がないため、散乱が起こらない。従って、高い分解能と感度を両立することが出来る。
上述したように、従来の膜隔離方式のSEMでは、生物試料と隔膜との間に空気がないために、照射電子ビームおよび試料表面で生じる反射、2次電子が空気あるいは水で散乱、減衰することがなく、高い分解能と感度を両立できた。
しかしながら、空気中に普通に存在する試料(例えば大きな液晶パネルなどの試料)の場合には、隔膜と測定対象を接触した状態に保つことが出来ないため、照射電子ビームおよび反射、2次電子が試料上の空気により散乱、減衰して当該空気中に置かれた試料の表面を高分解能かつ高感度で観察する技術は存在しないという問題があった。
本発明は、前記不具合を解消し、普通に大気中に存在する試料を特別な前処理を必要としないで簡単に電子ビームを用いて光学顕微鏡を超える拡大画像観察できる装置を開示する。隔膜をもちいて電子ビームの鏡筒の大部分を高真空状態に保って安定にした上で、隔膜と試料との間の画像形成に最小限必要な空間の真空度を局所的に必要に応じて上げることで、電子ビームおよび反射電子、2次電子の散乱、減衰を防止し、使い勝手と高分解能と高感度を両立させるようにしている。
そのため、本発明は、大気中配置された試料の表面拡大画像を生成する走査型電子顕微鏡において、電子ビームを発生させて細く絞った電子ビームを出射すると共に出射した電子ビームを試料上で平面(2次元)走査させる手段、電子ビームが走行する部分を常に超高真空に真空排気した電子銃、照射電流量を変えるためのコンデンサレンズ、対物レンズ、電子ビーム走査手段、検出器から少なくとも構成される鏡筒と、鏡筒と試料との間に配置した隔膜と、大気中に配置された試料表面の画像生成対象となる一部分あるいは全部を覆って大気との分離を行う可変シールと、可変シール内の大気を真空排気する真空排気手段とを設け、鏡筒の隔膜を透過して出射された電子ビームを、可変シールで大気と分離されて真空排気手段により真空排気された試料上の画像生成対象の一部分に、あるいは試料に、照射しつつ平面走査したときに放出された2次電子、反射電子あるいは発生したX線を、鏡筒内あるいは可変シール内の真空中に取り込んで検出する前記検出器と、検出器で検出された2次電子、反射電子あるいはX線の信号をもとに画像を生成する画像生成手段とを備える。
この際、試料から放出された2次電子に、加速電圧を印加して加速した後に鏡筒内の真空中に取り込んで検出器で検出できるようにしている。
また、可変シールは、試料表面の画像生成対象となる一部分上あるいは全体上に、柔軟性材料の代表例であるシリコンゴムあるいはベローズで接触させて大気との分離を行うようにしている。
また、可変シールは、試料表面の画像生成対象となる一部分上あるいは全体上に、非接触かつ微小に浮上した浮上ヘッドを設けて大気との分離を行うようにしている。
また、可変シールで試料表面の画像生成対象となる一部分上あるいは全体上に接触の状態あるいは非接触かつ微小に浮上した状態をセンサで検出した後、あるいは距離測長器で距離を測定して接触の状態あるいは非接触かつ微小に浮上した状態に保持させた後、可変シール内を真空排気手段で排気するようにしている。
また、隔膜は、鏡筒を構成する対物レンズの電子ビームの入射側あるいは出射側あるいは対物レンズ内に設けるようにしている。
また、試料を移動、あるいは鏡筒を移動させて、試料上の異なる部分の画像を生成するようにしている。
また、鏡筒は真空封じするようにしている。
また、大気中の試料の全体を入れて覆う外周部材と可変シールで大気と分離し、可変シール内の試料表面の全体を真空排気するようにしている。
また、試料が回転し、回転する試料と可変シールとの間の距離を所定距離に浮上あるいは所定距離に保持させるようにしている。
また、取得された画像と、病原菌、ウィルスなどを含む微小生物の画像を予め登録したデータベースとを比較して微小生物の種別を抽出するようにしている。
本発明は、普通に大気中に存在する試料を特別な前処理を行うことなく、簡単に電子ビーム観察できる電子顕微鏡装置を開示し、隔膜をもちいて電子ビームの鏡筒の大部分を高真空状態に保って安定にした上で、隔膜と試料の間の空間の真空度を局所的に必要に応じて上げることで、電子ビームおよび発生した2次電子、反射電子、X線の散乱、減衰を防止し、高分解能と高感度を両立させることができる。
(1)本発明を利用すると試料全体を真空チャンバー(真空試料室)の中に入れる必要が無いので、試料の大きさに匹敵する大きな真空チャンバーが不要となり、観察対象の大きさに関わりなく、通常の大気中のどこの試料上の表面でも即座に電子顕微鏡で観察することが可能となる。可変シール12と試料15で形成される小さな部屋(可変シール室14)を真空に引いて測定を行うため、測定時には普通の電子顕微鏡と同じ真空度が実現されるため非常に高画質の電子顕微鏡画像を得ることができる。可変シール室14は非常に容量が小さいので、非常に高速に真空にすることが出来るため、直ぐに電子顕微鏡画像を見ることが出来る。可変シール室14は観察時には真空なので、この中に電子、X線検出装置を設けることでさらに感度を上げることが出来る。
(2)可変シール室14の真空度を適切に調節することで、生物試料のような濡れた試料も観察可能となる。従来の隔膜式顕微鏡では、生物と隔膜が接している場所(最表面)しか観察できなかったが、本方式では、生物のどの場所も普通の電子顕微鏡のように観察が可能である。ある程度の深さ方向の観察も可能。例えば、2つの角度の異なる画像から3次元観測を行うことが可能である。観察に必要な時間が極めて短いので、生物に損傷を与えることが少なくできる。
生物だけでなく、水や溶剤を含む材料の観察においても、材料の状態を普通に保ったまま観察が可能となる。例えば、レジスト材料などから溶剤や化学物質が観察によって飛び出し、縮んでしまう現象を防止できる。観察対象物が空気中に置かれるため、熱交換が容易である。生物や観察対象物を冷却装置を用いて瞬間的に冷却あるいはヒーターを用いて温めて観察することもできる。本発明の電子顕微鏡では大気部分と真空部分を隔膜10によって遮断しているので、従来の環境電子顕微鏡と異なり濡れた試料15から発生する水蒸気やガスが電子顕微鏡の性能維持のために超高真空を必要とする主要部分には入ってこないため、隔膜10に電子ビームコラム保護作用が有り、電子顕微鏡を常に安定な状態に保つことができる。従って電子顕微鏡の寿命が非常に長い。観察時に可変シール室14を真空に引くため、隔膜10の両端に加わる圧力差が小さくなり、隔膜10の平面度が保たれる。このため、隔膜10が局面を持つことによる不要な電子散乱を避けることができる。また、膜の寿命を延ばすことができる。
(3)浮上ヘッドを利用したタイプでは、対物レンズ11と試料15との距離を常に一定に保つことが可能であり、非常に大きな平面形状の試料15の上を電子顕微鏡を簡単に移動させて観察することが出来る。非接触なのでごみもつかない。対物レンズ11と観察対象の試料15との間の距離が自動的に正確に保たれるので、測定時に毎回オートフォーカスをかける必要がない。そのため、高速測定が出来る。鏡筒21にXYステージ等自動移動手段を設けることで、欠陥検査装置が指定した位置の電子顕微鏡像を得ることが出来,オートレビューを実現できる。
(4)封じきり型の電子顕微鏡(鏡筒21など)は大型真空ポンプが無いため、小型軽量で手で簡単に持つことが可能なので、観察対象の試料15に押し付けることによって簡単にどこでも高分解能の電子顕微鏡画像を見ることが出来る。ハンディーーータイプの顕微鏡では、例えば、医療応用が可能であり、測定したい場所に存在する病原菌やウイルスを培養する必要なく生物活動が行われているその場で特定可能であり、医療活動を加速し、迅速な対応ができる。患者を早期に助けられる。一般家庭で用いて、台所やトイレ等水回りの清潔度が目で確認できるため、安心して生活できる。冷蔵庫等に保存した食品に関しても、その表面を観察することで、微生物発生や病原菌の有無を判断できるため、より安全に食事をすることができる。逆に、有用菌であることが判明した場合は、見た目は悪いが食することが出来るので、材料を無駄に捨てることを防止でき環境に優しい。
本発明は、普通に大気中に存在する試料を手を加えることなくそのまま簡単に電子ビームを用いた走査型電子顕微鏡で観察できる装置を開示し、隔膜10をもちいて電子ビームの鏡筒21を高真空状態に保って安定にした上で、隔膜10と試料15との間に画像形成に最低限必要な局所的に真空引き可能な微小空間である可変シール室14を作り、可変シール室14の真空度を必要に応じて上げることで、電子ビームの散乱、減衰を防止し、使い勝手、高分解能と高感度を両立させることを実現した。
図1は、本発明の1実施例構成図を示す。
図1において、鏡筒21は、電子ビーム発生、電子ビーム量調節、集束後、隔膜10を透過して試料15上を2次元走査するとともに、試料15が放出した2次電子を必要に応じて加速して隔膜10を透過して当該鏡筒21内に取り込んで電子検出装置8で検出するものであって、1から11などの機能から構成されるものである。
電子銃1は、電子ビーム2を発生させて加速して放出する公知のものである。
電子ビーム2は、電子銃1から放出される電子ビームである。
ブランキング装置3は、電子ビーム2を高速に遮断したり、通過させたりするものである。
ブランキングアパチャー4は、ブランキング装置3が電子ビーム2を軸外に偏向したときに遮断するためのものである。
コンデンサレンズ5は、電子銃1から放出された電子ビーム2を集束するものである。
対物アパチャー6は、軸近傍の所定開き角内の電子ビーム2のみを試料15に照射させるための絞りである。コンデンサレンズとともに照射電流を制御する。
偏向装置7は、細く絞られた電子ビーム2を、試料15の上で平面走査するための偏向装置である。
電子検出装置8は、細く絞った電子ビーム2を試料15に照射しつつ平面走査したときに当該試料15から放出された2次電子を必要に応じて加速した当該2次電子を、あるいは当該試料15で反射した反射電子を、隔膜10から(隔膜10を透過させて)真空中に取り込んで検出するものである。電子検出装置は半導体検出装置やシンチレータなどの場合には可変シール室14の中にあっても良い。
EDX9は、X線のエネルギーを検出するもの(X線検出器)である。
隔膜10は、鏡筒21と、可変シール室14とを真空的に隔離し、電子ビーム2、電子(反射電子、2次電子)、X線などを通過させるための薄い膜である。
対物レンズ11は、電子ビーム2を細く絞って試料15上に照射するものである。
可変シール12は、試料15の所定領域を覆って接触したり、近接したりして大気と隔離するためのものである(後述する)。
近接センサ13は、可変シール12が試料15の表面に接触したり、近づいたことをあるいは距離を検出するものである。
可変シール室14は、可変シール12と試料15とによって外部の大気圧を隔離した内部の真空排気する非常に体積の小さな部屋である。
試料15は、観察対象の試料(例えば数m角の液晶パネル基板などの試料)である。
電磁弁(1)16は、隔膜10と試料15との間に形成された空間(可変シール室14)を、真空ポンプ18で真空に排気するものである。なお、可変シール室14を真空排気して所定圧力に到達するまでは、電磁弁(2)17を閉して鏡筒21の真空が低下しないように制御する。
電磁弁(2)17は、鏡筒21と、真空ポンプ18との間を開あるいは閉に制御して当該鏡筒21を真空排気する電磁弁である。
真空ポンプ18は、鏡筒21、可変シール室14を真空排気するための真空ポンプである。
次に、図1の構成の動作を説明する。
(1)図1の装置は、電子ビーム2を発生するための電子銃1、電子ビーム2をオンオフするためのブランキング装置3、ブランキングアパチャー4、発生した電子ビーム2を集束してその量を決めるためにコンデンサレンズ5と対物アパチャー6があり、鏡筒21と可変シール室14(大気の場合)を分離するための隔膜10、隔膜10を通過した電子ビーム2をスポットに絞るための対物レンズ11、電子ビーム2を走査するための電子ビーム偏向装置7、試料15の表面と隔膜10の間に出来る空間(可変シール室14)を仕切るための可変シール12、可変シール12が試料15に押し付けられていることを検出する近接センサ13あるいはスイッチ、可変シール12と試料15および隔膜10で作られる部屋(可変シール室14)の真空を作り出すための真空ポンプ18および電磁弁16,17、試料15に電子ビーム2を照射したさいに生じる電子、X線を検出するための電子検出装置8、X線検出装置(EDX9)等から成り立っている。
(2)隔膜10は、炭素単体あるいは有機材料からなるものが利用可能である。隔膜10は大気圧に耐える必要があるため、その厚みは、隔膜10のサイズによって大きく変わるが、数nmから数百nmの範囲が実用的である。また、サイズは数ミクロンから数mm位のものが使用できる。隔膜10の材料の代表例としてはダイヤモンド、DLC、グラフェン、カーボンナノチューブ、タンパク質、金属薄膜や無機材料の薄膜も利用できる。例えば、アルミやチタン、シリコンやその窒化物、SiO2、SoO,SiNあるいはセラミック材料が利用できる。もちろんこれらを複合して利用しても良い。有機材料としてはポリアミド、ポリイミド、ポリアミド-イミド、ポリエチレン、ポリピロール、コロディオン、パーロディオン(PARLODION)(登録商標)、カプトン (KAPTON)(登録商標)、フォームバー(FORMVAR)(登録商標)、ビニレック(VINYLEC)(登録商標)、ブットバール(BUTVAR) (登録商標)、ピオロフォーム(PIOLOFORM)(登録商標)で構成される群から選ばれた材料を有する。隔膜10の破損を防止するため、可変シール室14の出口あるいは隔膜10の近傍に隔膜を保護するための保護部材、あるいはシャッター等が配置されていても良い。顕微鏡を使用しないときは閉じておき、使用する際に開く。
(3)電子銃1には通常の高圧電源を必要とするタングステンやサーマルフィールドエミッターやコールドフィールドエミッター、あるいはフォトカーソード等を利用することが出来る。
図2は、本発明の説明図(その1)を示す。図2は、図1の隔膜10の構成例を示し、試料15の表面に、可変シール12が接触する部分を、シリコンゴム、柔軟シール、オーリングで形成した例をそれぞれ示す。
図2の(a)は、可変シール12の試料15への接触部分をシリコンゴムで形成した例を示す。シリコンゴムは、柔軟性があり、試料15、例えば数m角の液晶パネル基板上に柔軟性のシリコンゴム(板状)で接触して真空シールし、当該可変シール12の外側(大気圧)と、内側(真空ポンプ18で真空排気)とを真空的に隔離あるいは若干のリークがあっても内側の圧力を低下させて試料15で反射した反射電子(あるいは試料15から放出された2次電子(必要あれば加速電極を設けて加速した2次電子))が走行して隔膜10を透過して鏡筒21の真空内に到達可能な圧力(10000Pa)以下に低下できればよい(図3参照)。出来るだけ観察対象と隔膜の距離を近づけることが高画質取得には有効である。可変シール12の潰れた時の厚みを数ミクロンから数十ミクロンと出来るだけ小さくして発生した電子の散乱を防止することもできる。液晶基板を観察する際は、EBテスターで行われておるように、基板に形成された回路に種々の電圧を静的あるいは動的に加えて実際に動作させ、その時に得られる電位コントラスト画像を取得しても良い。複数の鏡筒21を利用すればより高速に画像取得を行うことが出来る。
図2の(b)は、可変シール12の試料15への接触部分を柔軟シールで形成した例を示す。この柔軟シールは、内部に空間があり、柔軟性を向上させたものであって、試料15の表面に凹凸がある場合に適する。
図2の(c)は、可変シール12の試料15への接触部分をオーリングで形成した例を示す。図示のオーリングは、試料15の表面の平面性が良好な場合に完全なシールが可能となり、可変シール12の内側の可変シール室14を真空ポンプ18で容易に真空排気することが可能となる。隔膜10が破壊しないように隔膜10と測定対象の試料15との間の最小限間隔が維持できるように例えば、隔膜10と測定対象の試料15との間には数ミクロンのスペーサーを入れておくことが望ましい。
図2の(a)から(c)に示すように、試料15の表面の状況に応じて適切な可変シール12の試料15への接触部分を選択することにより、可変シール12の内側部分を、外部の大気圧から完全に隔離、あるいはリークがあっても真空ポンプで内部を排気して所定の圧力以下にして試料15で反射した反射電子、試料15から放出された2次電子(あるいは必要あれば図示外の加速電極を設けて加速した2次電子)、X線)を、既述した図1の隔膜10を透過させて電子検出装置8(あるいはX線はEDX9)で検出することが可能となる。
図3は、本発明の説明図(その2)を示す。横軸は圧力を表し、縦軸は電子の飛行距離を示し、既述した図1,図2の可変シール12で大気圧と隔離した可変シール室14内の圧力と、電子(反射電子、2次電子)の走行距離(飛行距離)の関係例を示す。図示のように圧力に応じて電子(反射電子、2次電子)の飛行距離が変化するので、既述した図1の試料15の表面から隔膜10を通過するまでの可変シール室14内の飛行距離をこれら電子が走行できるように所定圧力以下であるときに、鏡筒21内の真空中に配置した電子検出装置8で検出・増幅し、画像を生成することが可能となる。このため、本発明は、隔膜と測定対象の距離が数mmの時は反射電子は、例えば1000Pa以下、2次電子は例えば0.01Pa以下が望ましい。2次電子の場合には、0.01Pa以下が確保できないときは、図示外の加速電極(図1の光軸上で、試料15と隔膜10との間に配置した中心に穴のある円盤状の電極に正の所定電圧を印加した加速電極あるいは隔膜10に正の電圧を印加)を設けて2次電子を加速して隔膜10を通過できるように当該加速電極の電圧を調整する必要がある。逆に隔膜10と測定対象の試料15との間の距離を数ミクロンにまで近づければ、可変シール室14の内部の真空をそれほど低く保たなくても反射、2次電子、X線信号を容易に検出することができる。画像取得のためには、試料15の表面から放出される信号(2次電子、反射電子、X線など)の他に、試料15に生じる電流(例えば吸収電流)を利用して画像を取得しても良い。
次に、図4のフローチャートの順番に従い、図1から図3の構成の動作を詳細に説明する。
図4は、本発明の動作説明フローチャートを示す。
図4において、S1は、電子ビームを発生させる。これは、既述した図1の電子銃1で電子ビーム2を発生させる。
S2は、対物アパチャーを通過する。これは、S1で発生された電子ビーム2がブランキング装置3で偏向されないときは対物アパチャー6を当該電子ビーム2が通過し、ブランキング装置3で偏向されたときは対物アパチャー6で当該電子ビーム2の通過が阻止される。
S3は、偏向する。これは、S2で対物アパチャー6を通過した電子ビーム2が、偏向装置7によって偏向される。
S4は、対物レンズで細く絞る。これは、S3で偏向装置7で偏向された電子ビーム2は、対物レンズ11で細く絞る。
S5は、隔膜を通過する。S4で細く絞られた電子ビーム2が図1の隔膜10を通過する。
S6は、可変シールのシールを開始する。これは、既述した図1の可変シール12と、試料15の表面とを近づける操作を開始する(可変シール12を下方向に移動させる、あるいは試料15を上方向に移動させる)。
S7は、スイッチONか判別する。これは、図1の近接センサ13によって、可変シール12が試料15の表面に接触(あるいは所定距離に浮動)してスイッチがON(シール状態が完了した状態)か判別する。YESの場合には、図1の可変シール12が試料15の表面へのシールが完了したと判明したので、S8に進む。NOの場合には、S7を繰り返し、可変シール12が試料15の表面にシール完了まで待機する。
S8は、真空引きする。これは、S7のYESで可変シール12のシールが完了したと判明したので、当該可変シール12の内部の空間(可変シール室14)を、真空ポンプ18で真空排気する。
S9は、電子ビームを照射する。これは、S9で図1の可変シール室14の内部が大気圧から真空に排気されたので、対物レンズ11で細く絞られた隔膜10を透過した電子ビーム2を試料15の表面に照射しつつ平面走査する。
S10は、2次電子、反射電子、更にX線を発生する。これは、S9で細く絞られた電子ビーム2が平面走査された試料15の表面から反射電子が反射し、更に、2次電子、X線が放出される。
S11は、2次電子、反射電子、X線を検出する。これは、S10で細く絞られた電子ビーム2が平面走査された試料15の表面から反射された反射電子、放出された2次電子、X線について、図1の可変シール室14内の空間(真空ポンプ18で真空排気した空間)を走行して隔膜10を透過して真空である鏡筒21内の電子検出装置8、EDX9でそれぞれ検出・増幅し、画像を生成する。この際、可変シール室14の内部の空間は、真空ポンプ18で真空排気され、反射電子の場合には図3で既述したように1000Pa以下、2次電子の場合には0.01Pa以下の場合にはほとんど減衰することなく飛行して隔膜10を通過して鏡筒21の真空中に取り込み検出することが可能となる。尚、2次電子の場合には、0.01Pa以下がえられない場合には、図3で既述したように加速電極を設けて2次電子を加速して鏡筒21の真空中に取り込み検出できるように加速電極に印加する電圧を調整すればよい。
次に、図4の動作を更に具体的に説明する。
(1)電子銃1で1KVから数十KVの電子ビーム2が発生されるとまずブランキング装置3を通過する。ブランキングを行うと電子ビーム2は対物アパチャー6の開口部とは別の方向に曲げられるため、対物アパチャー6を通過できず電子ビーム2は試料15には照射されない。ブランキング装置3を通過した電子ビーム2はコンデンサレンズ5で一旦絞られる。絞られた電子ビーム2は対物アパチャー6に照射され、その一部分が通過する。試料15が存在しない場合は、ブランキング装置3によって電子ビーム2をカットする。
(2)可変シール12に試料15が押し付けられているとセンサ13あるいはスイッチで感知すると、隔膜10と試料15と可変シール12で囲まれた領域(可変シール室14)を真空に引くため電磁弁(1)16が開き、必要な真空度に保たれる。可変シール12はシリコンゴムのような密着性の良い柔らかい材料で出来ている。押し付けた際に対物レンズ11と試料15の距離が一定になるように押し込み距離は一定になるようにしてある。真空度が所定の値になったら、ブランキングを停止する。
(3)電子ビーム2は隔膜10を通過し、対物レンズ11によってスポット状に絞られ試料15の表面を走査する。対物レンズ11と試料15が作る空間(可変シール室14)は真空状態なので、通常のSEMと同様に試料15の表面で発生した2次電子、反射電子、X線等の信号は真空中を伝播して隔膜10を透過した後、MCP等の電子検出装置8.EDX9によって検出される。
(4)電子ビーム2の走査タイミングと同期して信号を検出し並び替えることにより試料15の表面の拡大画像を得ることが出来る。この画像を利用してオートフォーカス(対物レンズ11の内側に配置した空芯のダイナミックコイルにフォーカス電流を流してオートフォーカス)を行い、より鮮明な画像が得られるように電子ビーム2の焦点距離を自動調整する。この状態で再度画像取り込みを行い、ジャストフォーカスの画像を取得する(空心コイルの代わりに静電レンズを用いても良い)。
(5)電子銃1や電子検出装置8等は動作するためには超高真空中にある必要がある。鏡筒21のほとんどの部分が常に超高真空に引かれているため、電子ビーム2の発生部分や電子検出装置8等は安定した真空中に保持され性能が保たれている。測定時に非常に狭い空間(可変シール室14)の空気(大気圧)を真空ポンプ18などで真空にすれば良いので、ほぼ瞬間に目的とする真空度(0.01から1000Pa程度(図3参照))に達成できる。この程度の真空が保てれば、照射する電子ビーム2は大きな散乱を受けることなく試料15の表面に到達するとともに、試料15の表面で発生した電子は減衰することなく、電子検出装置8にて検出できる。本発明による分解能は数nm程度を実現可能であり、試料15上の測定したい場所にぐっと可変シール12を押し付けると直ぐにその場所の電子顕微鏡画像を観察することができる。可変シール室14と観察対象の試料15とが接する部分には滑りが良くなるように、滑り部材や小型ローラを配置しても良い。
図5は、本発明の他の実施例構成図を示す。図5は、図1に比して、隔膜10の位置を対物レンズ11の下側に配置した他の実施例構成図を示す。このようにすると、対物レンズ11の空間の分だけ真空に引く体積が減少でき、測定時に隔膜10と可変シール12および試料15で形成される空間(可変シール室14)の体積を激減できる。これにより測定対象の試料15に可変シール12を接触(あるいは浮動)させてから測定可能になるまでの時間を減らすことができる。また、高真空になっている領域が試料15に近づくため、試料15の表面で発生した2次電子、反射電子あるいはX線等の信号をより収率高く検出することが出来るようになる。隔膜10と測定対象の試料15と間の距離が短いほうが良いので、隔膜10を可変シール室14の内部まで飛び出させる構造にしても良い。
図6は、本発明の他の動作説明フローチャートを示す。図6は、図5の構成の動作説明フローチャートであって、S21からS31は、既述した図4のS1からS11にそれぞれ対応するものであり、このうちS24とS25と図4のS5とS4とが逆である他は同一であるので説明を省略する。
図6においてS24は、隔膜を通過する。
S25は、対物レンズで細く絞る。これらS24、S25は、図1に比して、図5の構成図で隔膜10を対物レンズ11の下側に配置したために順番が変わったものであり、図4のS5、S4と同一である。
図7は、本発明の説明図(その3)を示す。図7は、試料15の上にシートを配置して当該シートに観察穴を設けて当該観察穴の部分に、既述した可変シール12を被せて接触させることにより、当該観察穴の部分のみを真空排気して画像を取得することが可能となる。ここで、観察穴は、図7では1個設けたが、必要に応じて観察する場所に任意の個数を設けてその箇所に順次可変シール12を位置づけて被せて接触させ、真空排気して画像を取得することが可能となる。また観察穴を設けたシートを、試料15上の観察対象の場所に移動させて当該観察穴に可変シール12を被せて接触させ、真空排気して画像を取得するようにしてもよい。これにより、可変シール12が直接に試料15に接触することなくシート(例えば柔軟なシリコンシート、テフロン(登録商標)シート)を介して試料15の表面に接触でき、試料15の表面への傷やごみを付着させる危険性をなくすことが可能となる。
尚、可変シール12を被せて試料15に接触し、可変シール12の内部を真空排気したときの圧力は、完全に真空である必要がなく、可変シール12と試料15との間のリークがあっても図3で既述したように、反射電子を検出する場合には1000Pa以下、2次電子を検出する場合には0.01Pa以下と真空排気できればよい。シートを数ミクロンと極端に薄くすることも可能で、このようにすれば、余り真空に引かなくても反射電子や2次電子を検出できるようになる。
図8は、本発明の他の実施例構成図を示す。図8は、浮上ヘッド24を設けた他の実施例構成図を示し、当該浮上ヘッド24により対物レンズ1と観察対象の試料15との距離が厳密に一定になり、かつ、試料15と非接触状態に保つための装置を開示する。尚、1から11,18は図5の1から11,18と同一であるので説明を省略する。
図8において、電磁弁(1)16、電磁弁(2)17は、隔膜10の下側と上側とをそれぞれ開、閉にしたりする電磁弁である。
加圧ポンプ23は、空気などの気体を加圧して浮上ヘッド24から試料15に向けて放出させるためのポンプである。
浮上ヘッド24は、当該浮上ヘッド24と試料15の表面との距離を所定の微小値に保持するための加圧された気体(例えば空気、窒素、酸素、水素、ヘリウム)を放出するためのものである。
センサ25は、浮上ヘッド24と試料15との間の距離が所定値に保持されたか検出するものである。
XYステージ151は、試料15をX,Y方向に距離測定手段152で測定した情報をもとに精密に移動するものである。
距離測定手段152は、レーザ干渉計などの距離を精密に測定するものである。
次に、図8の構成について詳細に説明する。
(1)図8は、LCD基板や半導体ウェハーあるいは大きな鉄鋼材料等を観察するのに適している。図8の浮上ヘッド24はエアーベアリングなどの原理を利用したものである。加圧ポンプ23からの加圧ガスを浮上ヘッド24から測定対象の試料15に向けて放出し、浮上ヘッド24と試料15との空間を非接触的に生成する。ホバークラフトのようにスカートと呼ばれるゴム製のエアクッション用側壁を用いても良いし、試料15の平面との接触部分にカーボン製多孔質材料を用いて、加圧ガスを放出することもできる。
(2)試料15はXYステージ151等によって電子ビーム2の照射位置を制御できるようになっており、XYステージ151の位置はレーザ距離測定装置などの距離測定手段152などにより監視されている。PC等から図示外のステージ制御装置に対して所望の座標を指示することで、XYステージ151は移動を行い、指定した位置に電子ビーム2が照射される。これにより、例えば、欠陥検査装置等が出力する欠陥位置データを元に,自動的に欠陥場所の画像を取得してオートレビューを掛けることが出来る。指定された試料15上位置において電子顕微鏡拡大画像を取得しそれをもとに欠陥の種類を分類する。
(3)ここでは、試料15をXYステージ151にて移動する例を示しているが、試料サイズに対して電子ビーム2の鏡筒21の方が小さい場合には、鏡筒21の方にXYおよびZ軸移動手段を設け、測定対象の試料15の所望の位置に移動し画像を取得することが望ましい。このようにすれば、画像取得装置のサイズを著しく小さくすることが可能でコストダウンやフロアーの節約に繋がる。
図9は、本発明の他の実施例構成図を示す。図9は、図8に加え、更に、浮上ヘッド24を支持板155に固定し、当該支持板155と、支持台座153の上に配置した支持支柱154と、摺動面156などで摺動可能にし、大きなサイズの試料15の表面をステップアンドリピートで画像を取得できる構成にしたものであって、1から11、18、22から25、151,152は、図8の同一番号のものと同一であるので説明を省略する。
図9において、支持台座153は、支持支柱154を支持するものである。
支持支柱154は、支持板155を摺動可能な形態で支持するものであって、摺動面156(例えばオイルレスベアリング)を有するものである。
支持板155は、浮上ヘッド24を固定するものである。
(1)以上の図9の構成にすることにより、浮上ヘッド14から加圧空気を試料15に向けて放出して近接センサ25で所定距離が保持されていることを監視しつつ当該試料15を、XYステージ151で任意の場所に移動し、電子ビームを細く絞って試料15の表面に照射しつつ平面走査し、そのときに放出された2次電子、X線、反射された反射電子を隔膜10を通過して電子検出装置8、EDX9で検出・増幅し、画像を生成することができる。浮上ヘッドに供給する空気の圧力あるいは流量を変化させることで、測定対象表面と隔膜の距離を自由に変更することが出来る。
(2)更に、支持板135の摺動面156を摺動させてXYステージ151で移動範囲を超えた場所に移動させた後、上記(1)を繰り返すことにより、長尺の試料15の任意の部分の画像を取得することが可能となる。
図10は、本発明の説明図(その4)を示す。図10は、図9の支持板135の摺動面156で摺動させて当該支持板135上に固定された浮上ヘッド24、鏡筒21などを一体として任意の場所に移動させる構成例を示す。
図10において、支持板155は、鏡筒21を3方から支える図示の板から構成され、支持支柱154上の摺動面156で任意の場所に摺動(移動)できるように構成されたものである。この摺動(移動)する際、浮上ヘッド24から噴出された気体の圧力や流量を調節することにより試料15との間の距離が所定値に保持され、近接センサ25で監視されている。図示の状態では、摺動面156は、左右方向に移動可能である。
図11は、本発明の説明図(その5)を示す。図11は、図9の支持板135の摺動面156で摺動させて当該支持板135上に固定された浮上ヘッド24、鏡筒21などを一体として任意の場所に移動させる他の構成例を示す。
図11において、支持板135上に固定された浮上ヘッド24、鏡筒21などは、図示のY方向の摺動面157、更に、その下にX方向の摺動面158を設けた(2階構造で設けた)例を示す。図示のように、Y方向、X方向の摺動面157,158を2階構造で設けたことにより、支持板135上に固定された浮上ヘッド24、鏡筒21などをY,Xの任意の場所に摺動させることが可能となる。
次に、図12のフローチャートの順番に従い、図8から図11の構成の動作を詳細に説明する。
図12は、本発明の他の動作説明フローチャートを示す。
図12において、S41は、電子ビームを発生させる。これは、既述した図8の電子銃1で電子ビーム2を発生させる。
S42は、対物アパチャーを通過する。これは、S41で発生された電子ビーム2がブランキング装置3で偏向されないときは対物アパチャー6を当該電子ビーム2が通過し、ブランキング装置3で偏向されたときは対物アパチャー6で当該電子ビーム2の通過が阻止される。
S43は、偏向する。これは、S42で対物アパチャー6を通過した電子ビーム2が、偏向装置7によって偏向される。
S44は、隔膜を通過する。これは、S43で偏向された電子ビーム2が隔膜10を通過する。
S45は、対物レンズで細く絞る。これは、S44で隔膜を通過した電子ビーム2は、対物レンズ11で細く絞る。
S46は、浮上ヘッドを浮上させる。これは、図8の浮上ヘッド24から、加圧ポンプ23で加圧された気体(例えば空気)を試料15の面上に噴射して当該浮上ヘッド24を浮上させ、センサ25で監視して試料15から所定距離に保持させる。空気圧が無いときに隔膜を破壊しないように、隔膜と測定対象物の間には数ミクロン以上のスペーサーを入れておくと良い。あるいは、空気圧とは別に測定対象表面と電子ビームコラムの距離が一定に保てるようにZ軸移動機構を電子ビームコラム側あるいは測定対象側に設けておくことが望ましい。
S47は、試料の真上か判別する。これは、S45で浮上ヘッド24を浮上させ、センサ25により試料15の真上の所定距離に浮上しているか判別する。YESの場合には、S48に進む。NOの場合には、S47を繰り返す。
S48は、真空引きする。これは、S47のYESで浮上ヘッド24が試料15の真上の所定距離に浮上していることが判明したので、図8、図9の電磁弁(2)17を閉、電磁弁(1)16を開にして隔膜10の下側の浮上ヘッド24の内側の空間を真空排気し、所定圧力(例えば既述した図3で説明したように反射電子を検出して画像を生成する場合には1000Pa以下、2次電子を検出して画像を生成する場合には0.01Pa以下に真空排気する。そして、真空排気したら、電磁弁(2)17を開き、鏡筒21を真空排気する。
尚、真空ポンプ18を別に設け、電磁弁(1)16を介して単独に浮上ヘッド24の内側を真空排気するようにしてもよい。隔膜10と観察対象の試料15との間の距離は短いほうが電子散乱を受けにくいので、浮上ヘッドの中に隔膜10を張り出して設けても良い。このようにすれば、真空をそれほど引かなくても試料15の表面で発生した2次電子、反射電子、X線を検出することが出来る。
同様に、試料表面で発生した電子は必ずしも隔膜を通過する必要はなく、観察対象と検出器の距離が短いほうが電子は散乱を受けにくいので、浮上ヘッド内部に検出器を設けても良い。比較的低真空でも動作する電子検出器としては半導体電子検出器例えばPNダイオードやアバランシェダイオード、トランジスタなどが使用できる。
S49は、電子ビームを照射する。これは、S48で図8、図9の浮上ヘッド24の内側の空間が大気圧から真空に排気されたので、対物レンズ11で細く絞られた隔膜10を透過した電子ビーム2を試料15の表面に照射しつつ平面走査する。
S50は、2次電子、反射電子、更にX線を発生する。これは、S49で細く絞られた電子ビーム2が平面走査された試料15の表面から反射電子が反射し、更に、2次電子、X線が放出される。
S51は、2次電子、反射電子、X線を検出する。これは、S50で細く絞られた電子ビーム2が平面走査された試料15の表面から反射された反射電子、放出された2次電子、X線について、図8、図9の浮上ヘッド24の内側の空間(真空ポンプ18で真空排気した空間)を走行して隔膜10を透過して真空である鏡筒21内の電子検出装置8、EDX9でそれぞれ検出・増幅し、画像を生成する。この際、浮上ヘッド24の内側の空間は、真空ポンプ18で真空排気され、反射電子の場合には図3で既述したように1000Pa以下、2次電子の場合には0.01Pa以下の場合にはほとんど減衰することなく飛行して隔膜10を通過して鏡筒21の真空中に取り込み検出することが可能となる。尚、2次電子の場合には、0.01Pa以下がえられない場合には、図3で既述したように加速電極を設けて2次電子を加速して鏡筒21の真空中に取り込み検出できるように加速電極に印加する電圧を調整すればよい。
次に、図12の動作を更に具体的に説明する。
(1)前述したのと同じように電子ビーム2が電子銃1で発生され、ブランキング装置3を通過して対物レンズ11で細く絞られた後、試料15の表面に偏向装置7により走査される。試料15に細く絞った電子ビーム2を照射する場合、浮上ヘッド24の直下に試料15があるかどうかを判断して、試料15がある場合には、浮上ヘッド24に圧縮ガスを送り込み、浮上ヘッド24を試料15の表面から所定距離に浮かすとともに、電子ビーム2が通過する場所(浮上ヘッド24の内側の空間)を真空に引く。空気圧が無いときに隔膜10を破壊しないように、隔膜10と測定対象物の試料15との間には数ミクロン以上のスペーサーを入れておくと良い。あるいは、空気圧とは別に測定対象の試料15の表面と鏡筒21の距離が一定に保てるようにZ軸移動機構を鏡筒21側あるいは測定対象の試料15側に設けておくことが望ましい。
(2)浮上ヘッド24は圧縮ガスの力によって決定される浮上ヘッド24と試料15との間のギャップ距離を正確な値に保つ。例えば5ミクロン等に保つことが出来る。このようにギャップを保った状態で電子ビーム2を試料15に走査し発生した2次電子、反射電子あるいはX線を走査タイミングに同期して検出装置(電子検出装置8、EDX9)で検出する。
(3)測定対象の試料15と対物レンズ11との距離が非接触で正確に一定に保たれているため、試料15である例えばガラス基板のどの位置に移動してもフォーカスを取り直すことなく同じように画像を取得することが出来る。非接触なので、試料15であるガラス等の表面を汚したり、傷つけたりすることもない。5ミクロンと非常に狭いギャップを実現可能なので、電子ビーム2の散乱を受けずに当該電子ビーム2を照射することが出来る。
(4)尚、真空に引く浮上ヘッド24の内側の空間に水素あるいはヘリウムガスを流しても良い。空気と比較して水素、ヘリウムガスは散乱断面積が小さいため、同じエネルギーの電子ビーム2を利用しても小さな散乱で済むため、スポットサイズを小さくすることが可能でかつ、試料15の表面で発生する信号電子の減衰も小さいため、画像の質を上げることが出来る。
図13は、本発明の他の動作説明フローチャートを示す。図13は、図8、図9の浮上ヘッド24の高さを所望の高さに自動調整する場合の動作説明フローチャートを示す。ここで、図13のS61からS65は図12のS41からS45と同一であるので説明を省略する。
図13において、S66は、高さを検出する。これは、図8、図9の浮上ヘッド24の高さを、センサ25あるいは当該浮上ヘッド24に装着した図示外のセンサで、試料15の表面との間の距離(浮上ヘッド24の高さに相当)を検出する。
S67は、所望の高さか判別する。これは、S66で検出した試料15と浮上ヘッド34との間の距離(高さ)が予め設定した所望の高か判別する。YESの場合には、S69に進む。NOの場合には、S68で自動高さ調整、例えば浮上ヘッド24から試料15に向けて噴射する気体の圧力を調整(加圧ポンプ23で調整)して自動高さ調整する。そして、S66を繰り返す。尚、圧力と高さとの関係曲線を予め実験で求めて記憶しておき、当該記憶した関係曲線をもとに概略の所望高さとなるように圧力調整する。
S69は、測定する。これは、S7のYESで所望の高さであると判明したので、既述した図12のS48からS51を実行し、画像を取得して当該画像をもとに試料15上のパターンなどの測定(測長)あるいは検査を行う。
以上のS61からS69によって、図8、図9の浮上ヘッド25を試料15の所望の高さに常時維持した状態で、試料15の画像を取得することが可能となる。
図14は、本発明の他の実施例構成図を示す。図14は、図8、図9の薄膜10を、対物レンズ11の下側に配置し、浮上ヘッド24の内側の空間の容積を小さくし、迅速かつ簡単に真空排気できるようにした構成例を示す。その他は、図8、図9と構成が同一であるので説明を省略する。
図15は、本発明の他の動作説明フローチャートを示す。図15は図14の動作説明フローチャートを示し、S71からS73、S76からS81は既述した図12のS41からS43、S46からS51と同一であるので説明を省略する。また、S74、S75は、図12のS44、S45と逆である(隔膜10を対物レンズ11の下側に配置したことにより、逆となったものである)。
図15において、S74は、対物レンズで細く絞る。
S75は、隔膜を通過する。これは、S74で対物レンズで細く絞られた電子ビーム2が隔膜10を通過する。
図16は、本発明の他の実施例構成図を示す。図16は、鏡筒21を真空封じきりした例を示す。真空封じ切りは真空管で行われているものが使用でき、ガラス容器や金属容器を用いて常時真空を実現する。
図16において、真空ポンプ81は、電磁弁82を介して可変シール室14を真空排気するものである。
電磁弁82は、可変シール室14を真空ポンプ81に接続して真空排気するための真空弁である。
スイッチ131は、可変シール12が試料15の表面に接触したことを検出する検出器である。
次に、図17のフローチャートの順番に従い、図16の構成の動作を詳細に説明する。
図17は、本発明の他の動作説明フローチャートを示す。
図17において、S91は、電子ビームを発生させる。これは、既述した図16真空封じきりの鏡筒21内の電子銃1で電子ビーム2を発生させる。
S92は、対物アパチャーを通過する。これは、S91で発生された電子ビーム2がブランキング装置3で偏向されないときは対物アパチャー6を当該電子ビーム2が通過し、ブランキング装置3で偏向されたときは対物アパチャー6で当該電子ビーム2の通過が阻止される。
S93は、偏向する。これは、S92で対物アパチャー6を通過した電子ビーム2が、偏向装置7によって偏向される。
S94は、対物レンズで細く絞る。これは、S93で偏向装置7で偏向された電子ビーム2は、対物レンズ11で細く絞る。
S95は、隔膜を通過する。S94で細く絞られた電子ビーム2が図16の真空封じきりの鏡筒21の隔膜10を通過する。
S96は、可変シールのシールを開始する。これは、既述した図16の可変シール12と、試料15の表面とを近づける操作を開始する(可変シール12を下方向に移動させる、あるいは試料15を上方向に移動させる)。
S97は、スイッチONか判別する。これは、図16のスイッチ131によって、可変シール12が試料15の表面に接触(あるいは所定距離に浮動)してスイッチがON(シール状態が完了した状態)か判別する。YESの場合には、図16の可変シール12が試料15の表面へのシールが完了したと判明したので、S98に進む。NOの場合には、S97を繰り返し、可変シール12が試料15の表面にシール完了まで待機する。
S98は、真空引きする。これは、S97のYESで可変シール12のシールが完了したと判明したので、当該可変シール12の内部の空間(可変シール室14)を、真空ポンプ81で真空排気する。
S99は、電子ビームを照射する。これは、S98で図16の可変シール室14の内部が大気圧から真空に排気されたので、対物レンズ11で細く絞られた隔膜10を透過した電子ビーム2を試料15の表面に照射しつつ平面走査する。隔膜10は出来るだけ測定対象の試料15の表面から近くなるように配置する。対物レンズ11から外に飛び出した部分に配置しても良い。この場合、隔膜10の直ぐ外に可変シール室14を設ける。但し測定対象の試料15と接触して破壊しないように、数ミクロン程度のスペーサーを可変シール室14に入れておくことが望ましい。
S100は、2次電子、反射電子、更にX線を発生する。これは、S99で細く絞られた電子ビーム2が平面走査された試料15の表面から反射電子が反射し、更に、2次電子、X線が放出される。
S101は、2次電子、反射電子、X線を検出する。これは、S100で細く絞られた電子ビーム2が平面走査された試料15の表面から反射された反射電子、放出された2次電子、X線について、図16の可変シール室14内の空間(真空ポンプ81で真空排気した空間)を走行して隔膜10を透過して真空である鏡筒21内の電子検出装置8、EDX9でそれぞれ検出・増幅し、画像を生成する。この際、可変シール室14の内部の空間は、真空ポンプ18で真空排気され、反射電子の場合には図3で既述したように1000Pa以下、2次電子の場合には0.01Pa以下の場合にはほとんど減衰することなく飛行して隔膜10を通過して鏡筒21の真空中に取り込み検出することが可能となる。尚、2次電子の場合には、0.01Pa以下がえられない場合には、図3で既述したように加速電極を設けて2次電子を加速して鏡筒21の真空中に取り込み検出できるように加速電極に印加する電圧を調整すればよい。シール室内部に電子、X線検出器を設けることも出来る。
以上のように、鏡筒21を真空封じきりにしたことにより、電子銃1および電子検出装置8などは常に真空中に存在し、外気と接触する必要が全くない。そのため、よく知られた真空管と同じようにガラス等で真空に封じ切ってしまう事ができる。封じ切りを行うためには、適当な真空度に引いた後に封じ切りを行い、その後チタンゲッターポンプ等を用いて高真空にし、かつ当該ゲッター作用により後の放出されるガスを吸着して真空を保持するように工夫しておく。必要に応じて、ゲッターポンプを内蔵し、真空度が劣化した際には再びゲッターポンピングを行って真空度を回復することが出来る。これにより、外部(大気)とやり取りが必要なのは照射電子(電子ビーム2)と試料表面で生じた電子(2次電子、反射電子)およびX線である。これらの電子,X線は隔膜10を介してやり取りが可能である。図16に示すように、電子銃1の室内に関しては従来のような大きなイオンポンプ等を持っていない、その代わり、電子銃1および電子ビーム2が通過する主要部はガラスあるいは金属ケースから出来た機密容器にて真空に保たれている。測定対象の試料15と対物レンズ11および可変シール12で作られる空間(可変シール室14)は測定時に簡易ポンプで真空(真空ポンプ81)に引かれ、必要な真空度に保持される。この状態で電子ビーム2を試料15に照射および電子、X線の検出が行われ画像が取得される。
図18は、本発明の他の実施例構成図を示す。図18は、試料15として円筒状のロール(測定試料)上の画像を取得する場合の構成図を示す。
図18の(a)は正面図を示し、図18の(b)は側面図を示す。
図18において、ロール(測定試料)210は、既述した試料15に対応するものであって、ここでは、円筒状のロールであり、当該ロール210の円筒外面に転写する微細なパターンを形成したものである。
エアーベアリング211は、円筒であって、ここでは、ロール210の外側に、間隙212の2倍だけ大きいサイズの直径を有する円筒であり、内部のロール210が回転すると、間隙212を円周状で一定に保持するように当該ロール210を移動・保持するものである。観察対象を支える周辺円筒部は部分的に穴が空いていても良い。
間隙(エアーギャップ)212は、エアーベアリング211によりローラ210が保持される間隙であって、図1から図18で説明した可変シール12と試料15(ロール210)の表面との間の微小な間隙である。
可変シール室141は、既述した可変シール12とローラ210(試料15)との間の空間である可変シール室14に対応し、真空ポンプ218で真空排気して図3で既述したように反射電子を検出する場合には1000Pa以下、2次電子を検出する場合には0.01Pa以下に真空排気する空間である。
回転軸213は、ロール210を回転させる回転軸である。
回転制御装置214は、回転軸213に取り付けて円筒状のロール210を所定速度で回転制御すると共に、図示外のエンコーダを装備して微小回転角度を精密に測定しつつ回転させるものである。
台215は、全体を保持する台である。
軸方向移動装置216は、回転軸213の方向にロール210を精密に移動させるものである。
支持部217は、回転軸213を支持するものである。
真空ポンプ218は、可変シール室141の内部を真空排気するものである。
次に、図19のフローチャートの順番に従い、図18の構成の動作を詳細に説明する。
図19において、S111は、ロールをセットする。これは、予めロール210の表面に微細なパターンを形成した当該ロール210を図18の支持部217が保持する回転軸213にセット、あるいは回転軸213が固定されたロール210を支持部217にセットする。
S112は、エアーベアリングを始動する。これは、S111でセットされたローラ210を回転させ、図18の(b)のエアーベアリング21によって当該回転するローラ210と、その外周に設けたエアーベアリング211との間隙212を、円周上でほぼ一定になるように保持させることを開始させる。そして、真空ポンプ218で可変シール室151を真空排気する。
S113は、電子ビームを発生する。これは、図18の鏡筒21内の電子銃1で電子ビーム2を発生させる。そして、細く絞った電子ビーム2を隔膜10を透過させてローラ210の表面に照射しつつローラ210の軸方向に線走査すると共に同期してローラ210を回転させる。
S114はグローバルアライメントする。これは、S113で細く絞った電子ビーム2を図18のローラ210の表面に線走査しながら当該ローラ210を連続一定回転させ、そのときに発生した2次電子、反射電子、X線を既述した鏡筒21内の電子検出装置8、EDX9で検出・増幅し、ローラ210の回転に同期してローラ210上の拡大画像を生成し、当該拡大画像として、ローラ210上に予め設けたグローバルアライメントのマークを検出し、当該マークをもとに拡大画像と、CADデータ(設計データ)との対応関係を求める(座標変換式を算出する)。
S115は、測定位置を指定する。これは、S114で拡大画像とCADデータとの座標変換式が算出できたので、CADデータ上で測定位置を指定する。
S116は、軸を回転する。
S117は、軸方向に移動する。これらS116、S117は、S115でCADデータ上で指定された測定位置に電子ビーム2が照射されるように、図18のローラ210の軸を回転角度を指定、およびローラ210の軸方向の移動距離を指定する。
S118は、電子ビームを照射する。S116およびS117で指定されたローラ210の移動距離、かつローラ210の回転角度となったときに電子ビーム2を照射し、S115で指定された測定位置を電子ビーム2で照射する。
S119は、2次電子、反射電子、X線を発生させる。これは、S118で電子ビームをローラ210の測定位置に照射したことに対応して、2次電子、反射電子、X線が放出される。
S120は、2次電子、反射電子、X線を検出する。これは、既述したように、S119で放出された2次電子、反射電子を鏡筒21内部の電子検出装置8、X線をEDX9で検出・増幅する。
S121は、画像を取得する。これは、S120で検出・増幅した信号を、ローラ210の回転角度に同期して取得して拡大画像(ローラ210の測定位置の2次電子画像、反射電子画像、X線画像)を取得する。
以上のS111からS121により、測定対象のローラ210を図18の装置にセットし、当該ローラ210を回転させてエアーベアリング211により所定間隔212に保持させた状態で、可変シール室141を真空排気した後、鏡筒21から細く絞った電子ビーム2をローラ210の測定位置に照射しつつローラ210を回転させ、発生された2次電子、反射電子、X線を検出器で検出・増幅し、ローラ210の回転角度に当該検出・増幅した信号を同期させて拡大画像を取得することが可能となる。この際、ローラ210は大気圧中に配置し、電子ビーム2を照射する部分のみをエラーベアリングで狭い間隙212に保持して内部の可変シール室141内を真空ポンプ218で真空排気することにより、良好な2次電子画像、反射電子画像、X線画像を取得することが可能となる。
更に、図18について詳細に説明する。
(1)図18の構成は、測定対象物が円柱状のロール210であることに特徴がある。円柱状なので、静圧気体軸受機構を用いることが出来る。円柱を取り囲むエアーベアリング211の表面からはガスが噴射され、測定対象の円筒(ロール210)とは精密に一定の間隔に維持される。この状態で円筒(ロール210)をぐるぐる回しながら、電子ビーム2を照射し、画像を取得する。円筒の電子ビーム2の照射位置は円筒回転機構によって正確に測定されており、その座標を用いて、円筒の任意の所望の位置に照射することが出来る。円筒回転機構には回転位置を測定するためのレーザ干渉回転角測定装置や円筒の軸方向の位置を知るためのレーザ距離測定装置が設けられている。
(2)円筒上のある測定点を指定するためには、まず、円筒上に存在するアライメントパターン(図19のS114)を測定し、その位置と測定装置座標を合わせる。一旦位置合わせが終了すると、回転装置および軸方向移動装置が出力する距離及び回転データを用いて、試料上の位置を定めることが出来る。
図20は、本発明の他の実施例構成図を示す。図18がロール210を浮上させたのに対して、当該図20は、鏡筒21あるいは当該鏡筒21の下部に設けた可変シール室141の高さ方向の位置調整(Z軸)を行い、ロール(測定試料)210の表面から所定距離だけ可変シール12を浮上させる構成図を示す。
図20において、可変シール室141は、鏡筒21と一緒に上下方向(Z軸方向)に移動可能に構成されたものであって、XYZテーブル219に搭載されたものである。尚、可変シール室141のみを上下方向に移動可能にしてもよい(Z軸方向のみ可変シール室141で移動可能にする)。
XYZテーブル219は、鏡筒21および可変シール室141を、ロール210に対してX、Y、Z方向に移動させるものであって、距離測定装置220によって精密に測定しながら移動させるものである。
距離測定装置220は、レーザ干渉計などの精密に距離(X,Y,Z方向)を測定するものである。
以上の構成を持たせることにより、ロール210を一定速度で回転させ、距離測定装置220でロール210と可変シール室141の下部との間の距離(Z軸方向距離)を測定して所望の浮上量となるように、XYZテーブル219でZ軸方向の距離を精密に調整することにより、可変シール室141の下部がロール210の表面から非接触かつ所望距離(例えば数ミクロンないし数十ミクロン)に保持することが可能となる。この状態で、真空ポンプ218で可変シール室141の内部を真空排気し、鏡筒21からの細く絞った電子ビーム2を回転するロール210の表面に走査し、そのときに発生した2次電子、反射電子、X線を鏡筒21内の既述した電子検出装置8、EDX9で検出・増幅し、ローラ210の回転に同期して当該ローラ210の表面の画像を生成することが可能となる。コラムの本数は必要に応じて複数本にしても良い。複数本にすればその分だけ検査速度を向上することが出来る。画像取得は、回転を止めて逐次的に行っても良い。特にレビュー動作の場合には高精細画像が必要なため、ステップアンドリピート方式が望ましい。
図21は、本発明の説明図(その6)を示す。図21は、試料15やローラ210の表面に可変シール室14の下部を浮上させるときのヘッド面積と、負荷との関係線分を示す。X軸はヘッド面積を表し、Y軸はそのときの負荷(荷重)を表す。図示の線分は、空気圧力5Bar、4.8sl/minの場合の例を示す。図示線分の下側が、浮上ヘッドによって浮上させることが可能な荷重を表す。
以上のように、図21の線分の下側となるように、可変シール室14と鏡筒21を含めた全体の荷重(あるいは可変シール室14のみ)が可変シール室14の下部の部分(浮上ヘッド)の面積を決めることにより、可変シール室14(更に、鏡筒21を含めて)を浮上させることが可能となる。
図22は、本発明の他の実施例構成図を示す。図22は、ハンディーー型の鏡筒21の下部に真空ヘッド142を設け、当該真空ヘッド142を試料15に押し当て、そのときに発生した2次電子、反射電子を鏡筒21内に取り込んで検出し、拡大画像を生成する構成図を示す。
図22において、鏡筒21は、既述した鏡筒21を小型化したものであって、電子銃1、電子検出装置8、対物レンズ11、隔膜10などから構成されるものである。
真空ヘッド142は、既述した可変シール室14に代わるものであって、当該真空ヘッド142を試料15の表面に押し当てた状態で図示外の小型の真空ポンプで真空排気するものである。手で測定対象表面に押し付けるので、隔膜10を破壊しないように隔膜10と測定対象物の試料15との間の最小間隔を決定できるスペーサーを設けておくことが望ましい。
PC41は、パソコンであって、プログラムに従い各種処理(例えば画像処理部、画像入力部、コラム制御部などの制御、処理)を行ったり、画像をディスプレイに表示したりなどするものである。
画像・特徴データベース42は、ウィルスなどの画像を予め検索可能な状態(特徴、キーワードを付与した状態)で登録したものである。
次に、図23のフローチャートの順番に従い図22の構成の動作を詳細に説明する。
図23は、本発明の他の動作説明フローチャートを示す。
図23において、S131は、画像を取得する。これは、図22の鏡筒21の先端に装着した真空ヘッド142を、測定しようとする試料15の部分に押し当て、必要に応じて図示外の真空ポンプで当該真空ヘッド14の内部を真空排気し、細く絞った電子ビーム2を試料15の表面に照射しつつ平面走査し、そのときに発生した2次電子、反射電子を隔膜10を通って鏡筒21の真空内に取り込み、電子検出装置8で検出・増幅し、画像を取得する。一般的には対物レンズと測定対象の距離が不安定なので、フォーカスが常に合っているとは限らない。そこで、速度の早いオートフォーカスを本発明では実装している。対物レンズと測定対象間距離をリアルタイムで測定して焦点を変更する手段を有する。具体的には測定対象と対物レンズの距離をリアルタイムに測定する距離センサを利用して対物レンズの焦点距離をリアルタイムに制御し、フォーカスを追随させる。あるいは対物レンズの強さを複数変えた状態で電子ビームを2次元走査して得られた画像を解析してジャストフォーカスのレンズ強度を見つけ、それを用いて画像を取得する方法もある。
S132は、画像特徴を抽出する。これは、S131で取り込んだ図22の試料15の表面の画像から、当該画像の特徴を抽出する(図24を用いて後述する)。
S133は、データベースと照会する。これは、S132で抽出した画像の特徴をもとに、後述する図24のデータベース42に照会する。
S134は、対象を検索する。これは、S133で照会を受けて、画像・特徴データベース42(図24)を検索し、一致、類似するものを抽出する。
S135は、対象を特定する。これは、S134で検索し、最も一致、類似したものを検索対象として特定する。
S136は、結果を表示する。
以上によって、S131で取得した画像をもとに、当該画像の特徴を抽出し、データベース42を検索して一致、最も類似するものを検索対象として特定、結果を表示することが可能となる。
次に、図22、図23について具体的に説明する。
(1)本構成は、いわゆるハンディーSEMといわれるものであって、手で持って自由に観察が出来るものを示している。大きさは、小型の懐中電灯程度、封じきりの電子銃1を用いる。電子源にはMEMSを利用して作られたフィールドエミッターやフォトエミッターを利用する。これらは数Vの低電圧動作が出来るので、手で持って利用するのに便利である。もちろん従来のW熱陰極やTFEを用いても構わない。
(2)発生した電子ビーム2は加速されて、対物レンズ11により必要とされるビームスポット径に絞られる。ここで利用される対物レンズ11としては、希土類磁石であるサマリウムコバルト磁石とかネオジウム磁石、プラセオジム磁石などを高透磁率ポールピースとともに利用できる。これらは、電気を使用しない上、発熱もしないので、ハンディーSEMには都合が良い。対物レンズ11の焦点距離を変えるためには、静電レンズや小型の電磁石レンズを組み合わせて利用することが考えられる。あるいは、加速電圧や測定対象の電位を適切な値にすることによって行われる。
(3)対物レンズ11によって絞られた電子ビーム2は偏向装置によって適切な走査が行えるようにした後に、隔膜10を通過する。隔膜10と測定対象の試料15との間には測定時にのみ真空に引くことができる真空ヘッド142がついており、必要な真空に維持する。真空ヘッドは人が測定対象物に押し付けて接触させるため、破損防止手段を有する。具体的には大気圧と真空を隔てる隔膜の大気圧側にスペーサーを設け、測定対象物と隔膜の距離が最低限の間隔が維持されるようにする。
(4)例えば、このハンディーSEMは医療現場や家庭におけるウイルス、細菌チェックに使うことができる。もちろん観察対象は生物に限ったものではなく、磁性粒子やパーティクル、土壌、等測定対象は身の回りにあるもの全てである。ここでは、形状に特徴のある1つの観察対象としてウイルス、細菌の例で示す。通常、ウイルスの存在や細菌の存在を知るためには、生物学的培養を行ってその数を増やした後でなければ、知ることは出来ない。従って、知るまでに多くの時間が掛かる。一方、本発明のハンディーSEMを用いれば、ウイルス、細菌は直接目で確認することが可能である。従って、その場でウイルスや細菌の有無を確認することができる。さらには、ウイルスや細菌の幾何学的特徴を用いて、データベース42と比較することにより、容易にウイルスや細菌の種類を分類することができる。これにより、迅速に病原菌やウイルスあるいは有用菌を特定することが可能となり、従来よりも迅速に適切な医療行為が出来るようになる。
(5)もちろん観察する前に、金、白金、オスミニウム、ルテニウム、タングステン、モリブデン、ウラン等による重金属染色、有機染色処理や特定のウイルスや菌に反応する薬剤を反応させて、特徴を浮かび上がらせる増感処理を行っても良い。
上記信号の他に、観察対象によっては電子ビーム照射によって電流が流れるものがあり、その電流を測定することで、画像化することも出来る。測定対象に針を立てて電流を検出しても良いし、測定対象を導電性の板の上に配置してその導電性板に生じる電流を測定しても良い。この電流を測定するためには微小電流増幅器を利用し、電圧信号に変換した後にコンピュータに導入し、前記信号と同様に画像処理を行い、表示を行う。あるいは分類のためのデータとして活用する。
(6)後述する図24は本発明に利用する写真のデータベース42の例である。データベース42には基本となる細菌やウイルスの電子顕微鏡写真が種別に蓄積されており、それと新たに取得した写真の近似度(一致度、類似度)を計算し、一番近いものを選択してくる。公知のデーターマイニングソフト(データマイニングエンジン43)としてはNASA Jet Propulsion Laboratories およびCalTech によって開発された「Continuously Scalable Template Matching ( コンティニュアスリー・スケーラブル・テンプレート・マッチング) 」と呼ばれるコンピュータープログラムが知られている。視覚的認識を達成する部分のデータマイニング部分は、当分野で公知であり、NASA のJet Propulsion Laboratory によって開発された「Diamond Eye( ダイヤモンド・アイ) 」として公知のコンピュータープログラムを利用できる。他にも大きさの異なった者同士をパターンマッチング出来るソフトウエアーやトポロジーベースのマッチングが出来るソフトウエアー、時間軸の関数として幾何形状を表現した関数を用いたマッチングなど色々用いることが出来る。
図24は、本発明の説明図(その7)を示す。図24は、(a)から(i)のような各種微小生物の電子顕微鏡写真をデータベース化(写真と、その当該写真の画像の特徴を抽出した情報などを一緒にして一致・類似検索しやすいようにデータベース化)したものを模式的に示す。
(a):赤痢菌の写真(画像)とその特徴
(b):O157の写真(画像)とその特徴
(c):エボラウイルスの写真(画像)とその特徴
(d):大腸菌の写真(画像)とその特徴
(e):インフルエンザウイルスの写真(画像)とその特徴
(f):ラッサウイルスの写真(画像)とその特徴
(g):コレラ菌の写真(画像)とその特徴
(h):破傷風の写真(画像)とその特徴
(i):HVウイルスの写真(画像)とその特徴
本発明の1実施例構成図である。 本発明の説明図(その1)である。 本発明の説明図(その2)である。 本発明の動作説明フローチャートである。 本発明の他の実施例構成図である。 本発明の他の動作説明フローチャートである。 本発明の説明図(その3)である。 本発明の他の実施例構成図である。 本発明の他の実施例構成図である。 本発明の説明図(その4)である。 本発明の説明図(その5)である。 本発明の他の動作説明フローチャートである。 本発明の他の動作説明フローチャートである。 本発明の他の実施例構成図である。 本発明の他の動作説明フローチャートである。 本発明の他の実施例構成図である。 本発明の他の動作説明フローチャートである。 本発明の他の実施例構成図である。 本発明の他の動作説明フローチャートである。 本発明の他の実施例構成図である。 本発明の説明図(その6)である。 本発明の他の実施例構成図である。 本発明の他の動作説明フローチャートである。 本発明の説明図(その7)である。
1:電子銃
2:電子ビーム
3:ブランキング装置
4:ブランキングアパチャー
5:コンデンサレンズ
6:対物アパチャー
7:偏向装置
8:電子検出装置
9:EDX
10:隔膜
11:対物レンズ
12:可変シール
13、25:近接センサ
131:スイッチ
14、141:可変シール室
142:真空ヘッド
15:試料
151:XYステージ
152:距離測定手段
153:支持台座
154:支持支柱
155:支持板
156、158:摺動面
16,17:電磁弁
18:真空ポンプ
21:鏡筒
210:ロール(測定試料)
211:エアーベアリング
212:間隙(エアーギャップ)
213:回転軸
214:回転制御装置
215:台
216:軸方向移動装置
217:支持部
218:真空ポンプ
220:距離測定装置
23:加圧ポンプ
24:浮上ヘッド
25:センサ(近接センサ)
41:PC
42:データベース
43:データマイニングエンジン

Claims (5)

  1. 電子銃、電子ビーム走査手段、検出器を真空封じ切りにした鏡筒と対物レンズと可変シールと画像生成手段を有し、真空封じ切りにした鏡筒で発生させた電子ビームは隔膜を通じて取り出し、鏡筒に接続した該対物レンズで細く絞って、大気中に配置された試料の表面の任意の一部分あるいは全部を覆って大気との分離を行って真空排気する、対物レンズと試料との間にあって該試料に押し付けて薄膜と該試料との間に微小空間を形成する収縮自在の可変シール、の内にある該試料の表面の走査を行い、発生した2次電子、反射電子あるいは発生したX線を検出、あるいは試料に流れる電流を検出して画像を生成する
    ことを特徴とする走査型電子顕微鏡。
  2. 前記対物レンズの電子ビームの入射側と前記試料との間であって、前記鏡筒に接続する対物レンズの電子ビームの入射側あるいは出射側あるいは該対物レンズ内に配置して、該鏡筒を真空封じ切りにする隔膜と、
    前記大気中に配置された試料の表面の画像生成対象となる任意の一部分あるいは全部を覆って大気との分離を行う、前記対物レンズの出射側の該対物レンズの先端部と該試料の表面の画像生成対象となる任意の一部分あるいは全部をシールする収縮自在の可変シールと、
    前記対物レンズの出射側の該対物レンズの先端部と該試料の表面の画像生成対象となる一部分あるいは全部とからなる可変シール内の空間、および該可変シールが接する対物レンズの電子ビームの出射側の先端部と該対物レンズの電子ビームの入射側あるいは出射側あるいは該対物レンズ内に配置した隔膜との間の空間からなる狭い空間を、測定時あるいは観察時に、目的とする真空度に真空排気する真空排気手段と
    を備えたことを特徴とする請求項1に記載の走査型電子顕微鏡。
  3. 前記対物レンズを、永久磁石を用いた対物レンズとしたことを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。
  4. 前記真空封じきりした鏡筒は、内蔵した真空ポンプが必要に応じて真空排気して真空を回復させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。
  5. 請求項1から請求項4で取得された画像と、病原菌、ウィルスなどを含む微小生物の画像を予め登録したデータベースとを比較して微小生物の種別を抽出することを特徴とする走査型電子顕微鏡を用いた検査装置。
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