JP6668187B2 - 質量分析データ解析方法 - Google Patents
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Description
このKendrick Mass Plotは、マススペクトルに出現した各ピークについてKendrick Mass Defect(KMD)を求め、横軸を質量、縦軸をKMDとした座標に各ピークを表すプロットを表示するものである。KMDは、C=12としたIUPACの定義とは異なる基準(一般的にはCH2=14)を採用して計算し直した質量であるKendrick Massから、整数部分を差し引きした残りを意味する。
即ち、KMDに基づく解析法は、メチレン基(CH2)単位の繰り返し構造を持つ飽和炭化水素の元素組成解析を行うためにKendrick氏等により提案されたもので、繰り返し単位であるCH2のIUPAC質量スケールの精密質量(理論値:14.01565)をKendrick Mass(KM)=14と定義し、マススペクトルに出現した各ピークの観測精密質量(観測IUPAC質量)は、次式に従ってKMに変換される。
KM=観測IUPAC質量×14.00000/14.01565
繰り返しの単位構造はCH2に限られず、例えば試料がポリマーの場合には、モノマーを単位構造とすることができる。従って上記式は、一般的には「KM=各ピークの観測IUPAC質量×単位構造の整数質量/単位構造のIUPAC質量・・・・(1)」と表される。
計算により求められたKMに最も近い整数(the nearest integer of KM)が整数KM(Nominal Kendrick Mass:NKM)であり、Kendrick Mass Defect(KMD)はNKMとKMの差、即ちKMD=NKM−KMと定義される。
Kendrick Mass Plotとしては、横軸を観測質量(m/z),KMあるいはNKMとし縦軸をKMDとした2次元座標に、各ピークを表す点を各ピークの強度情報に応じて点の大きさや色の種類、濃さなどを与えてプロットするのが一般的である。
例えば、図7Aに示すマススペクトルに対して、適宜な繰り返しの単位構造(例えばCH2)を適用し、その単位構造の整数質量及び精密質量を与えて各ピークのKMDを求め、求めたKMDに基づいて横軸を観測質量(m/z)、縦軸をKMDとした2次元座標に各ピークをプロットすることにより、図7Bに示すKendrick Mass Plotが得られる。図7BのKendrick Mass Plotでは、各ピークの強度情報をプロット上での各点の大きさで示している。
また、同じ(A)nの繰り返し構造で異なる末端基(X’)を持つピークが同じスペクトル中に存在する場合には、それらのピークは末端基がXの場合と異なるKMDを等しく持つため、Kendrick Mass Plot上でそれらのピークは末端基がXの場合と異なる垂直位置の水平な直線上に並んでプロットされる。
一方、同じマススペクトル中に異なる繰り返し構造(B)nのピークが存在する場合、Kendrick Mass Plot上でそれらのピークは水平ではなく傾斜を持った直線上に並んでプロットされる。
図7Bに示すKendrick Mass Plotでは、KMDを求めるために与えた繰り返しの単位構造を持つピークが無かったため水平な直線に沿ったプロットは存在せず、水平から傾斜した直線それも2本の直線上に分かれてピーク群がプロットされている。図7Aのマススペクトルの各ピークとの対応をみると、図7Bにおける上の直線上のピーク群はマススペクトルにおける短い繰り返し間隔のピーク群に対応し、下の直線上のピーク群は長い繰り返し間隔のピーク群に対応している。従って、図7BのKendrick Mass Plotから、繰り返し構造が異なる2種類の物質が含まれていることがわかる。
末端結合が複数存在する場合には、例えば図8に示すマススペクトルのように、同じピークの間隔ではあるが、末端構造の分ピークがシフトして観測されるため、マススペクトルから繰り返し構造の重合度の分布を読み取ることは難しい。
また、繰り返し構造を2種類以上持つ共重合ポリマーでは、各成分の重合度の分散にもよるが、例えば図9に示すマススペクトルのように、2種類以上の間隔のピークが観測されるため、非常に多くのピークが観測される。そのため、それぞれの繰り返し構造(図9の右図の繰り返しA及び繰り返しB)の重合度の分布を読み取ることが難しい。
即ち、共重合ポリマーの場合、図10Aに示すような複雑なマススペクトルを示していても、Kendrick Mass Plotでの解析方法を採用することにより、図10Bに示すように、それぞれの繰り返し構造の重合度が同じイオンが直線上に並ぶ。これにより、各成分の重合度の情報を容易に読み取ることができる。
(1)前記被検試料を精密質量情報が取得可能な質量分析計を用いて質量分析することにより質量スペクトルデータを取得し、質量スペクトルに出現する各ピークの精密質量情報を取得する質量分析工程と、
(2)前記質量分析工程で得られた各ピークの精密質量情報に対し、前記基準化学構造A,Bのそれぞれの精密質量理論値情報及び整数質量情報に基づいてKendrick質量変換演算処理をそれぞれ行って各ピークのKendrick質量情報をそれぞれ取得し、該それぞれのKendrick質量情報の小数部分を取り出すことにより各ピークのKendrick質量誤差情報DA,DBをそれぞれ取得する第1Kendrick質量変換工程と、
(3)前記基準化学構造Bの精密質量理論値情報に対して前記基準化学構造Aの精密質量理論値情報及び整数質量情報に基づいてKendrick質量変換演算処理を行ってKendrick質量情報を取得し、得られたKendrick質量情報の小数部分を取り出すことによりKendrick質量誤差情報dAを取得し、前記基準化学構造Aの精密質量理論値情報に対して前記基準化学構造Bの精密質量理論値情報及び整数質量情報に基づいてKendrick質量変換演算処理を行ってKendrick質量情報を取得し、得られたKendrick質量情報の小数部分を取り出すことによりKendrick質量誤差情報dBを取得する第2Kendrick質量変換工程と、
(4)前記第1Kendrick質量変換工程により得られた各ピークのKendrick質量誤差情報DA,DBに対して第2Kendrick質量変換工程により得られたKendrick質量誤差情報dA,dBを用いて以下の演算を行うことにより各ピークの重合度情報nA,nBを求める重合度情報取得工程と、
nA=DB/dA、nB=DA/dB
(5) 前記重合度情報取得工程により得られた各ピークの重合度情報nA,nBに基づき、前記nAを第1軸とし前記nBを第2軸とする2次元座標に各ピークに対応するプロットを表示する表示工程と、
からなる。
(1)前記被検試料を精密質量情報が取得可能な質量分析計を用いて質量分析することにより質量スペクトルデータを取得し、質量スペクトルに出現する各ピークの精密質量情報を取得する質量分析工程と、
(2)前記質量分析工程で得られた各ピークの精密質量情報に対し、前記基準化学構造A,Bのそれぞれの精密質量理論値情報及び整数質量情報に基づいてKendrick質量変換演算処理をそれぞれ行って各ピークのKendrick質量情報をそれぞれ取得し、該それぞれのKendrick質量情報の小数部分を取り出すことにより各ピークのKendrick質量誤差情報DA,DBをそれぞれ取得する第1Kendrick質量変換工程と、
(3)前記基準化学構造Bの精密質量理論値情報に対して前記基準化学構造Aの精密質量理論値情報及び整数質量情報に基づいてKendrick質量変換演算処理を行ってKendrick質量情報を取得し、得られたKendrick質量情報の小数部分を取り出すことによりKendrick質量誤差情報dAを取得し、前記基準化学構造Aの精密質量理論値情報に対して前記基準化学構造Bの精密質量理論値情報及び整数質量情報に基づいてKendrick質量変換演算処理を行ってKendrick質量情報を取得し、得られたKendrick質量情報の小数部分を取り出すことによりKendrick質量誤差情報dBを取得する第2Kendrick質量変換工程と、
(4)前記第1Kendrick質量変換工程により得られた各ピークのKendrick質量誤差情報DA,DBに対して第2Kendrick質量変換工程により得られたKendrick質量誤差情報dA,dBを用いて以下の演算を行うことにより各ピークの重合度情報nA,nBを求める重合度情報取得工程と、
nA=DB/dA、nB=DA/dB
(5)各ピークの重合度情報nA,nBから小数部分dnA,dnBを取り出す工程と、
(6)各ピークについて取り出された小数部分dnA,dnBに基づき、dnAを第1軸としdnBを第2軸とする2次元座標に各ピークに対応するプロットを表示する表示工程と、
からなる。
また、本発明によれば、従来は解析できなかった試料も解析できるようになることから、従来の質量分析装置及び質量分析方法と比較して、解析が可能な試料の範囲を拡げることができる。
本発明の質量分析データ解析方法を実施するための質量分析装置の概略構成図(ブロック図)を、図1に示す。
図1に示す質量分析装置10は、イオン源1、質量分析部2、検出部3、処理部4、操作部5、表示部6、記憶部7を有して構成されている。
操作部5の機能は、各種のスイッチ(押しボタン等)、タッチパネル、キーボード等により実現できる。
例えば、操作部5に入力された情報(情報の確認用)、検出部3で検出した結果、処理部4における処理の条件、処理部4における処理の結果等を、表示部6に表示させることが可能である。
表示部6の機能は、各種のディスプレイにより実現できる。
即ち、イオン源1で試料をイオン化し、質量分析部2でイオンを質量電荷比に応じて分離し、分離されたイオンを検出部3で検出し、得られた検出信号を処理部4を介してデジタル信号に変換して取り込むことにより、マススペクトルデータを取得する。
なお、このステップS11では、同位体のピークを1つにまとめる、Deisotope処理を行うことによりピークの本数を減少させることが好ましい。
繰り返し構造が既知でないものについては、図3Aのように表示されたマススペクトルからオペレータが2つの繰り返し構造を推定又は特定し、それぞれの精密質量情報を入力するようにしても良いし、オペレータが推定する代わりに、処理部4で前記ピークリストにおけるピーク間隔などの情報から2つの繰り返し構造A,Bを推測し、推測した繰り返し構造A,Bの質量情報を決定するようにコンピュータプログラムを構成しても良い。
即ち、処理部4は、繰り返し構造Aの精密質量情報に基づき「各ピークの精密質量×44.00000/44.02621」の演算を行うことにより各ピークのKendrick Mass値を求め、求めたKendrick Mass値に最も近い整数値を求めることにより整数(Nominal)Kendrick Mass値を求め、Kendrick Mass値と整数(Nominal)Kendrick Mass値の差分を求めることにより各ピークの繰り返し構造AについてのKendrick Mass DefectDAを求める。
更に、処理部4は、繰り返し構造Bの精密質量情報に基づき「各ピークの精密質量×58.00000/58.04132」の演算を行うことにより各ピークのKendrick Mass値を求め、求めたKendrick Mass値に最も近い整数値を求めることにより整数(Nominal)Kendrick Mass値を求め、Kendrick Mass値と整数(Nominal)Kendrick Mass値の差分を求めることにより各ピークの繰り返し構造BについてのKendrick Mass DefectDBを求める。
このようにして各ピークについて求められたKendrick Mass Defect値DA,DBの値は、例えば図3Cに示されるように、前記ピークリストの各ピークの精密質量情報とイオン強度情報のデータに追加される形で保存される。
即ち、処理部4は、繰り返し構造Aの精密質量情報に対して、繰り返し構造Bの精密質量情報に基づくKendrick質量変換演算処理を行い、繰り返し構造Bに関する繰り返し構造AのKendrick質量誤差情報dAを取得し、前記繰り返し構造Bの精密質量情報に対して、繰り返し構造Aの精密質量情報に基づくKendrick質量変換演算処理を行い、繰り返し構造Aに関する繰り返し構造BのKendrick質量誤差情報dBを取得する。
Kendrick質量誤差情報dAの場合、処理部4は、「繰り返し構造Aの精密質量(=44.02621)×58.00000/58.04132−44」の演算を行うことにより、dA=-0.00513255を求める。
一方、Kendrick質量誤差情報dBの場合、処理部4は、「繰り返し構造Bの精密質量(=58.04132)×44.00000/44.02621−58」の演算を行うことにより、dB=0.006766424を求める
次に、ステップS15において、処理部4は、ステップS14で求めたdA、dBを用い、ステップS14で求めてピークリストに書き込まれている各ピークのKendrick質量誤差情報DA、DBに対してnA=DB/dA、nB=DA/dBの演算を行うことにより、各ピークにおける繰り返し構造Aの重合度情報nAと繰り返し構造Bの重合度情報nBを求める。このDB/dA、DA/dBなる演算により重合度の情報が得られる理由について、以下に説明する。
いま、質量スペクトルのあるピークを与えるイオンが、n1個の繰り返し構造Aと、n2個の繰り返し構造Bとから構成され(A)n1(B)n2と表されると仮定した場合、このイオンの精密質量m1は、以下のように表すことができる。
m1=(44.02621)×n1+(58.04132)×n2 ・・・(1)
この精密質量m1に対して前記第1Kendrick質量変換処理を施してKendrick質量誤差情報DA、DBを求めると、DA、DBは以下のように表される。
DA=(44/44.02621)×((44.02621)×n1+(58.04132)×n2)−N(m1) ・・・(2A)
DB=(58/58.04132)×((44.02621)×n1+(58.04132)×n2)−N(m1) ・・・(2B)
ここで、N(m1)は精密質量m1の整数質量を表す。
DAを整理すると、以下の通りとなるが、
DA=44×n1+(44/44.02621)×58.04132×n2−N(m1)
DAは小数であるのに対し、上式における「44×n1」とN(m1)は共に整数であるので、DAは「(44/44.02621)×58.04132×n2」の項の小数部分を取り出したものである。
ここで、「(44/44.02621)」の値は1に極めて近いことを考慮すると、「(44/44.02621)×58.04132×n2」の項の小数部分を取り出すのは、「(44/44.02621)×58.04132×n2」から「58×n2」を差し引く演算を行うことに相当する。
そのように考えれば、DAは以下のように書き直すことができる。
DA=(44/44.02621)×58.04132×n2−58×n2 ・・・(3A)
全く同様に、DBは以下のように書き直すことができる。
DB=(58/58.04132)×44.02621×n1−44×n1 ・・・(3B)
一方、前述のようにdA、dBは以下のように表されるから、
dA=(44.02621)×58.00000/58.04132−44
dB=(58.04132)×44.00000/44.02621−58
nB=DA/dBの演算結果は、以下の通りとなる。
nB=DA/dB
=(44/44.02621×58.04132×n2−58×n2)/(58.04132×44/44.02621−58)
=n2 ・・・(4B)
従って、nBは繰り返し構造Bの繰り返し数n2の情報を持つことになる。
全く同様に、nA=DB/dAの演算結果は、以下の通りとなる。
nA=DB/dA
=((58/58.04132)×44.02621×n1−44×n1)/(44.02621)×58/58.04132−44)
=n1 ・・・(4A)
従って、nAは繰り返し構造Aの繰り返し数n1の情報を持つことになる。
なお、上記説明では、イオンの精密質量m1を、(44.02621)×n1+(58.04132)×n2と仮定したが、実際には末端構造の質量が加わっているので、DA、DBにはその末端構造の部分に基づく数値が上乗せされ、nB、nAを求める際には、その上乗せされた数値もdB、dAで割り算することになるので、割り算結果は、純粋なn2、n1の整数情報だけでなく、末端構造の部分に基づく「ずれ」(1より小さい場合も大きい場合もある)が加わったものになる。
ただし、各ピーク毎に求めた重合度情報nB、nAは、末端構造が同一の場合には「ずれ」の値が同一で繰り返し数n2、n1の値だけが異なるので、各ピークの重合度情報nB、nA同士の差分(間隔)は、各ピークのn1,n2の違いに応じた整数となる。
また、繰り返し構造A,Bの双方を持たないピークについては、ピーク同士のnB、nAの間隔はバラバラで、整数にならない。
以上の考察から、DB/dA、DA/dBなる演算により求めた各ピークについてのnA、nBは、各ピークにおける繰り返し構造Aの重合度情報nAと繰り返し構造Bの重合度情報nBを含むことが明らかであり、処理部4での演算によって求められた各ピークについてのnA、nBの値は、図3Cに示すピークリストの各ピークのnA、nBの欄に書き込まれる。
繰り返し構造A,Bの双方を持つピーク群と、持たないピーク群が混在している場合、先に述べたように、繰り返し構造A,Bの双方を持つピーク群のプロットは間隔が1で等間隔に整列展開されるが、持たないピーク群のプロットは間隔が1にならないので、識別が可能である。
また、繰り返し構造A,Bの双方を持つピーク群であっても末端構造が異なる2つのグループがある場合には、各グループに属するピーク群のプロットは間隔が1で等間隔に整列展開されるものの、グループ毎のプロットは末端構造の違いにより縦横にシフトしたものになる。
間隔が1で等間隔の点群がある場合には、ステップS18に進む。
間隔が1で等間隔の点群がない場合には、ステップS22に進む。
このステップS17は、作成したプロットを表示部6に表示する等してユーザーがプロットを見て判断するようにしても、作成したプロットから処理部4が判断するコンピュータプログラムを構成しても、どちらも可能である。
このステップS18は、作成したプロットを表示部6に表示する等してユーザーがプロットから点群を抽出するようにしても、作成したプロットから処理部4が点群を抽出するコンピュータプログラムを構成しても、どちらも可能である。
ステップS18で抽出した点群の末端構造が判明している場合には、ステップS20に進む。
ステップS18で抽出した点群の末端構造が判明していない場合には、ステップS21に進む。
このステップS19は、例えば、末端構造が判明しているかどうか、判明している場合にはさらに判明している末端構造の名称を、操作部5からユーザーが入力するように構成することが可能である。
n1,n2の決定は、例えば以下のように行われる。前記式(4A)、(4B)に関する説明では、「イオンの精密質量m1を、(44.02621)×n1+(58.04132)×n2と仮定したが、実際には末端構造の質量が加わっているので、DA、DBにはその末端構造の部分に基づく数値が上乗せされ、nB、nAを求める際には、その上乗せされた数値もdB、dAで割り算することになるので、割り算結果は、純粋なn2、n1の整数情報だけでなく、末端構造の部分に基づく「ずれ」(1より小さい場合も大きい場合もある)が加わったものになる。」と述べた。
この「ずれ」について考察するため、質量スペクトルのあるピークを与えるイオンの構造が、末端構造Xを含めて(A)n1(B)n2(X)と表されるとし、このイオンの精密質量m1を、末端構造Xの質量mxを含めて表すと以下のようになる。
m1=(44.02621)×n1+(58.04132)×n2+mx・・・(11)
この(11)式を前提として(2A)、(2B)式と同様にDA、DBを求め、更にnB=DA/dB、nA=DB/dAを求めると、詳細は省略するが以下の通りとなる。
nB=n2+(dxA/dB) ・・・(14B)
nA=n1+(dxB/dA) ・・・(14A)
上式の(dxA/dB)、(dxB/dA)の項が、先に、末端構造の部分に基づく「ずれ」と説明した部分に相当するものである。
ここで、「dxA」は末端構造Xの精密質量mxに対して繰り返し構造Aに基づくKendrick質量変換処理を施すことにより求められるKendrick質量誤差情報であり、「dxB」は、同様に末端構造Xの精密質量mxに対して繰り返し構造Bに基づくKendrick質量変換処理を施すことにより求められるKendrick質量誤差情報である。
末端構造Xとその精密質量mxが既知の場合には、「dxA」、「dxB」は、
dxA=(58/58.04132)×mx−N(mx)
dxB=(44/44.02621)×mx−N(mx)
なる計算により求めることができ、dA、dBの値もステップS15において計算されピークリストに格納されて既知であるから、n2、n1の値が下式により求められることになる。
n2=nB−(dxA/dB) ・・・(15B)
n1=nA−(dxB/dA) ・・・(15A)
この(15A)、(15B)式に基づく繰り返し構造A,Bの繰り返し数n1,n2の計算は、例えば、抽出された各ピークすべてについて行われる。各ピークについて求められたn1,n2に基づいてnAをX軸、nBをY軸に割り当てた2次元座標に、各ピークのプロットを表示させる。例えば、各ピークのプロットは、図4の左下の図(Group1)と右下の図(Group2)における実線の円のように表示されることになる。点線で示されている抽出しただけの状態(プロット位置は(nA,nB)で決まっている)と比較すると、全体がシフトされ、n1,n2は整数となることから、各プロットは整数単位に区切られた格子点に位置することになる。
このように、末端構造の異なるグループ毎に、繰り返し構造A,Bの繰り返し数n1,n2に応じた位置に各ピークがプロットされるため、各繰り返し構造A,Bの重合度の分布を視覚により明確に把握することができる。
なお、上記例ではn1,n2の計算を抽出された各ピークすべてについて行うようにしたが、必ずしもその必要はない。例えば、特定の1つのピークについて(15A)式と(15B)式に基づきn1,n2の計算を行い、求めたn1,n2で決まる位置にそのピークのプロットを表示すると、そのプロットは、波線で示されている抽出しただけの状態(プロット位置は(nA,nB)からX,Y方向にシフトしており、そのシフト量は(15A)式と(15B)式からX方向が「−(dxB/dA)」、Y方向が「−(dxA/dB)」でそれぞれ与えられる。このシフト量は、抽出された同一グループのピークすべてに共通であるから、残りのピークについては、波線で示されている抽出しただけの状態(nA,nB)から上記共通のシフト量シフトさせてプロットを表示させれば、各ピークについて計算してプロットした場合と同じ位置にすべてのピークのプロットを表示させることができる。
等間隔の点群が残っている場合には、ステップS17に戻り、残っている等間隔の点群がX軸・Y軸の両方向で間隔が1である点群かどうか判断する。そして、間隔が1の点群であれば、先に抽出した点群とは異なる末端構造を有する点群として扱い、ステップS18で残っていた間隔が1の点群を抽出する。
等間隔の点群が残っていない場合には、分析を終了する。
このステップS21は、ユーザーがプロットを見て判断するようにしても、作成したプロットから処理部4が判断するコンピュータプログラムを構成しても、どちらも可能である。
間隔が1以外である等間隔の点群がある場合には、最初に決めた繰り返し構造が合っていないので、ステップS13に戻り、繰り返し構造を決め直す。
例えば、図5に示すプロットは、nAの間隔が1ではない点群があるので、繰り返し構造Aを違う構造に決め直す必要がある。
一方、等間隔の点群がない場合には、測定した試料に繰り返し構造が存在しないので、ステップS11に戻り、次の試料の測定に移る。
このステップS22は、ユーザーがプロットを見て判断するようにしても、作成したプロットから処理部4が判断するコンピュータプログラムを構成しても、どちらも可能である。
図12Bのようなプロットを行うと、繰り返し構造A,Bを持ち同じ末端構造を持つピークは同じ位置に集まってプロットされ、違う末端構造を持つピークは別の位置に集まってプロットされるため、末端基に応じたピークのグループ分けが可能となる。
即ち、先に説明したように、重合度情報nA,nBは、それぞれ繰り返し構造A,Bの繰り返し数n1,n2の情報に加えて、末端構造に基づく「ずれ」の情報を有する。この「ずれ」の情報は1よりも小さい場合も大きい場合もある。従って、重合度情報nA,nBから小数部分dnA,dnBを取り出すことは、n1,n2の重合度の情報を消し去って、「ずれ」の情報のみを取り出すことになる。取り出された「ずれ」の情報の小数部分dnA,dnBの値は、末端構造の種類に応じて異なるので、図12BのようにdnA,dnBを水平,垂直軸とする2次元座標に各ピークをプロットすると、同じ末端構造を持つピークは同じ位置に集まってプロットされ、違う末端構造を持つピークは別の位置に集まってプロットされるわけである。
図12Cに示すように、このように一カ所に集まってプロットされた特定のグループのピークを、例えば枠指定などにより指定することができるようにし、指定されたこのグループに属するピークを他のピークと表示形態(例えば色)を異ならせて図12Dに示すようにマススペクトルを表示するようにすれば、マススペクトルに出現したピークの中で、繰り返し構造A,Bを持ち且つ特定の末端構造を持つピークがどれかを容易に見分けることができる。
図13は、上記のようなdnA,dnBを水平,垂直軸とする2次元座標に各ピークをプロットする際の処理の流れを示すフローチャートである。ステップS10からS15までは、図2のフローチャートと同じであり、その後、ステップS30において各ピークについてdnA,dnBを求め(ステップS30)、求めたdnA,dnBに基づいてdnA,dnBを水平,垂直軸とする2次元座標に各ピークをプロットし(ステップS31)、プロット中の特定の点群を選択/抽出し(ステップS32)、選択/抽出された点群に基づき点群に該当するピークを他のピークと区別してスペクトル表示する(ステップS33)各ステップが付加されている。
Claims (3)
- 2つの異なる基準化学構造A,Bがそれぞれ繰り返される組成を持つ被検試料を解析するための質量分析データ解析方法であって、
(1)前記被検試料を精密質量情報が取得可能な質量分析計を用いて質量分析することにより質量スペクトルデータを取得し、質量スペクトルに出現する各ピークの精密質量情報を取得する質量分析工程と、
(2)前記質量分析工程で得られた各ピークの精密質量情報に対し、前記基準化学構造A,Bのそれぞれの精密質量理論値情報及び整数質量情報に基づいてKendrick質量変換演算処理をそれぞれ行って各ピークのKendrick質量情報をそれぞれ取得し、該それぞれのKendrick質量情報の小数部分を取り出すことにより各ピークのKendrick質量誤差情報DA,DBをそれぞれ取得する第1Kendrick質量変換工程と、
(3)前記基準化学構造Bの精密質量理論値情報に対して前記基準化学構造Aの精密質量理論値情報及び整数質量情報に基づいてKendrick質量変換演算処理を行ってKendrick質量情報を取得し、得られたKendrick質量情報の小数部分を取り出すことによりKendrick質量誤差情報dAを取得し、前記基準化学構造Aの精密質量理論値情報に対して前記基準化学構造Bの精密質量理論値情報及び整数質量情報に基づいてKendrick質量変換演算処理を行ってKendrick質量情報を取得し、得られたKendrick質量情報の小数部分を取り出すことによりKendrick質量誤差情報dBを取得する第2Kendrick質量変換工程と、
(4)前記第1Kendrick質量変換工程により得られた各ピークのKendrick質量誤差情報DA,DBに対して第2Kendrick質量変換工程により得られたKendrick質量誤差情報dA,dBを用いて以下の演算を行うことにより各ピークの重合度情報nA,nBを求める重合度情報取得工程と、
nA=DB/dA、nB=DA/dB
(5) 前記重合度情報取得工程により得られた各ピークの重合度情報nA,nBに基づき、前記nAを第1軸とし前記nBを第2軸とする2次元座標に各ピークに対応するプロットを表示する表示工程と、
からなることを特徴とする質量分析データ解析方法。 - 請求項1記載の質量分析データ解析方法であって、前記被検試料の末端構造が既知である場合、前記プロットから間隔がnA,nBについて1で等間隔である点群を抽出し、末端構造の精密質量情報に基づいて前記抽出された点群に該当するピークの一部又は全てについて、繰り返し構造A,Bのそれぞれの繰り返し数n1,n2を決定し、決定した繰り返し数n1,n2に基づいて抽出された点群をシフトさせてnAを第1軸、nBを第2軸に割り当てた2次元座標にプロットすることを特徴とする質量分析データ解析方法。
- 2つの異なる基準化学構造A,Bがそれぞれ繰り返される組成を持つ被検試料を解析するための質量分析データ解析方法であって、
(1)前記被検試料を精密質量情報が取得可能な質量分析計を用いて質量分析することにより質量スペクトルデータを取得し、質量スペクトルに出現する各ピークの精密質量情報を取得する質量分析工程と、
(2)前記質量分析工程で得られた各ピークの精密質量情報に対し、前記基準化学構造A,Bのそれぞれの精密質量理論値情報及び整数質量情報に基づいてKendrick質量変換演算処理をそれぞれ行って各ピークのKendrick質量情報をそれぞれ取得し、該それぞれのKendrick質量情報の小数部分を取り出すことにより各ピークのKendrick質量誤差情報DA,DBをそれぞれ取得する第1Kendrick質量変換工程と、
(3)前記基準化学構造Bの精密質量理論値情報に対して前記基準化学構造Aの精密質量理論値情報及び整数質量情報に基づいてKendrick質量変換演算処理を行ってKendrick質量情報を取得し、得られたKendrick質量情報の小数部分を取り出すことによりKendrick質量誤差情報dAを取得し、前記基準化学構造Aの精密質量理論値情報に対して前記基準化学構造Bの精密質量理論値情報及び整数質量情報に基づいてKendrick質量変換演算処理を行ってKendrick質量情報を取得し、得られたKendrick質量情報の小数部分を取り出すことによりKendrick質量誤差情報dBを取得する第2Kendrick質量変換工程と、
(4)前記第1Kendrick質量変換工程により得られた各ピークのKendrick質量誤差情報DA,DBに対して第2Kendrick質量変換工程により得られたKendrick質量誤差情報dA,dBを用いて以下の演算を行うことにより各ピークの重合度情報nA,nBを求める重合度情報取得工程と、
nA=DB/dA、nB=DA/dB
(5)各ピークの重合度情報nA,nBから小数部分dnA,dnBを取り出す工程と、
(6)各ピークについて取り出された小数部分dnA,dnBに基づき、dnAを第1軸としdnBを第2軸とする2次元座標に各ピークに対応するプロットを表示する表示工程と、
からなることを特徴とする質量分析データ解析方法。
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