JP2015165229A - 分析方法 - Google Patents

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隆一 荒川
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英也 川崎
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陽香 山田
将基 森田
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将基 森田
紗菜 伊藤
Sana Ito
紗菜 伊藤
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Kaoru Asahi
薫 朝日
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Abstract

【課題】界面活性剤中のEO、PO及びBOの並び方に関する情報を得ることのできる分析方法を提供する。
【解決手段】特定の式で表され、水素原子又は炭化水素基Rの質量数並びにオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x、オキシプロピレン基の数y及びオキシブチレン基の数zが既知である界面活性剤のオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基の並び方に関する情報を得る、分析方法であって、分析対象の界面活性剤を準備する工程、上記界面活性剤を分解する工程、上記分解した界面活性剤を質量分析装置により質量分析してマススペクトルデータを得る工程、を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、分析方法に関する。
近年、AO(アルキレンオキサイド、又は、オキシアルキレン基と呼ばれる)として、EO(エチレンオキサイド、又は、オキシエチレン基と呼ばれる)、PO(プロピレンオキサイド、又は、オキシプロピレン基と呼ばれる)、BO(ブチレンオキサイド、又は、オキシブチレン基と呼ばれる)をその親水基部分に含む界面活性剤に類似の構造をもつものは、いくつかの特殊な性質(たとえば低流動点、相図における小さな液晶領域、低い起泡性など)を有するため、大きな興味を引いている。
市販されている洗浄剤には、EO及び/又はPOをその親水基部分に含む界面活性剤が配合されているといわれている。
当業者が新たな洗浄剤を開発するためには、市販されている洗浄剤に含まれる界面活性剤の構造を分析し、界面活性剤の構造と特性との関係を明らかにすることにより、所望の特性を有する界面活性剤を開発するというアプローチをとることが有効と考えられる。
しかしながら、市販されている洗浄剤に含まれる界面活性剤の成分は明らかにされておらず、界面活性剤の構造と特性の関係も明らかになっていない。
界面活性剤の構造分析方法として、特許文献1に示されるような、1次元LCMS(液体クロマトグラフ及び質量分析計)を用いた分析方法が知られていた。
特開2010−96577号公報
しかしながら、1次元LCMSを用いた分析方法では、EOとPOを共に含む界面活性剤について、界面活性剤に含まれるEO及びPOの構造に関する情報を得ることは難しかった。その理由としては、炭素鎖に含まれるCHのm/zが14、EOのm/zが44、POのm/zが58であり、POのm/zとEOのm/zの差が14であるため、CHが1つ増えた場合とEOがPOに置換された場合は同じm/zの差となるために、あるシグナルと隣接するシグナルの間にm/z=14の差がある場合に、CHが一つ増えた場合とEOがPOに置換された場合との区別がマススペクトルでは判別できないということが考えられた。
また、市販されている界面活性剤の中には、EOとPOを共に含み、EOの数とPOの数が知られているもののその並び方に関する情報が無いものもあった。
並び方の例としては、炭素鎖にEOがx個、POがy個ランダム重合した界面活性剤や、下記一般式(2)
で示されるような、炭素鎖にEOがx個、POがy個ブロック重合した界面活性剤などが考えられた。
EOの数とPOの数が同じであってもその並び方が異なるとその物性(洗浄力、泡立ち等)が大きく変化することがあるため、界面活性剤中のEOとPOの並び方に関する情報を得ることは、所望の特性を有する界面活性剤を開発するために有効であると考えられた。
また、EO、POに加えてBOの存在を考慮し、EOをx個、POをy個、BOがz個含まれることが知られている界面活性剤についても、界面活性剤中のEO、PO及びBOの並び方に関する情報を得ることは、所望の特性を有する界面活性剤を開発するために有効であると考えられた。
なお、本明細書において(OCHCH)の構造をEO又はオキシエチレン基、(OCHCH(CH))の構造をPO又はオキシプロピレン基、(OCHCH(CHCH))の構造をBO又はオキシブチレン基と表示することもある。
また、(OR)の構造(RはCHCH、CHCH(CH)又はCHCH(CHCH))をAO又はオキシアルキレン基と表示することもある。
また、オキシプロピレン基の構造は、(OCHCH(CH))の構造の場合と(OCH(CH)CH)の構造の場合があり、本発明の分析方法ではこの2つの構造を区別できないがこれを代表して(OCHCH(CH))と示している。本発明の分析方法で分析する界面活性剤中のオキシプロピレン基に(OCH(CH)CH)の構造が含まれていてもよい。
また、オキシブチレン基の構造は、(OCHCH(CHCH))の構造の場合と(OCH(CHCH)CH))の構造の場合と(OCH(CH)CH(CH))の構造の場合があり、本発明の分析方法ではこの3つの構造を区別できないがこれを代表して(OCHCH(CHCH))と示している。本発明の分析方法で分析する界面活性剤中のオキシブチレン基に(OCH(CHCH)CH))の構造及び/又は(OCH(CH)CH(CH))の構造が含まれていてもよい。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、界面活性剤中のEO、PO及びBOの並び方に関する情報を得ることのできる分析方法を提供することを目的とする。
本発明の分析方法は、下記一般式(1´)で表され、Rの質量数並びにオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x、オキシプロピレン基の数y及びオキシブチレン基の数zが既知である界面活性剤のオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基の並び方に関する情報を得る、分析方法であって、
分析対象の界面活性剤を準備する工程、
上記界面活性剤を分解する工程、
上記分解した界面活性剤を質量分析装置により質量分析してマススペクトルデータを得る工程、及び、
上記マススペクトルデータにおいて、Rに由来するm/zを起点として、m/zが44増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤にはRにオキシエチレン基が結合した構造R−(OCHCHが含まれると判定し、m/zが58増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤にはRにオキシプロピレン基が結合した構造R−(OCHCH(CH))が含まれると判定し、m/zが72増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤にはRにオキシブチレン基が結合した構造R−(OCHCH(CHCH))が含まれると判定して、Rにオキシアルキレン基が1つ結合した構造R−(ORを決定する第1の構造決定工程、を行い、
さらに、上記構造R−(ORに由来するm/zを起点として、m/zが44増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤には構造R−(ORにオキシエチレン基が結合した構造R−(OR−(OCHCHが含まれると判定し、m/zが58増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤には構造R−(ORにオキシプロピレン基が結合した構造R−(OR−(OCHCH(CH))が含まれると判定し、m/zが72増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤には構造R−(ORにオキシブチレン基が結合した構造R−(OR−(OCHCH(CHCH))が含まれると判定して、構造R−(ORにオキシアルキレン基が1つ結合した構造R−(ORを決定する第2の構造決定工程を行い、以下同様の構造決定工程を繰り返すことにより、1つ前の構造決定工程で決定した構造にさらにオキシアルキレン基が1つ結合した構造を順次決定してゆき、界面活性剤のオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基の並び方に関する情報を得ることを特徴とする。
[一般式(1´)中、Rは水素原子又は炭化水素基であり、(ORx+y+zはオキシエチレン基及、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも2種のオキシアルキレン基を含むオキシアルキレン鎖であり、Rの質量数並びにオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x、オキシプロピレン基の数y及びオキシブチレン基の数zは既知であり、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基の並び方は分析前には不明である。]
本発明の分析方法では、分析対象の界面活性剤を分解して、分解された界面活性剤に由来する構造のマススペクトルデータを解析することによって、その構造を決定する。
まず、Rに由来するm/zを決定する。そして、Rの構造に由来するm/zに対してm/zが44増加したシグナル、58増加したシグナル又は72増加したシグナルが存在するか判定する。
m/zが44増加することはEOが結合したことを意味し、m/zが58増加することはPOが結合したことを意味し、m/zが72増加することはBOが結合したことを意味する。
このようにしてRに隣接した構造がEOであるかPOであるかBOであるかを判定し、Rにオキシアルキレン基が1つ結合した構造R−(ORを決定することができる。
以下、構造R−(ORに由来するm/zに対してm/zが44増加したシグナル、58増加したシグナル又は72増加したシグナルが存在するか同様に判定することによって、Rにオキシアルキレン基が2つ結合した構造R−(ORを決定することができる。このような工程によると、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の並び方に関する情報を得ることができる。
特に、オキシアルキレン鎖におけるオキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基の並び方がブロック重合体であるのか、ランダム重合体であるのかを判別することができる。
本発明の分析方法の望ましい態様では、
上記一般式(1´)において、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x、オキシプロピレン基の数y及びオキシブチレン基の数zがいずれも1以上であることが既知であり、
全ての構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナル、m/zが58増加したシグナル又はm/zが72増加したシグナルのいずれか1つしか存在しないことを確認し、
に由来するm/zを起点として、m/zが44ずつ増加したシグナルがx個連続して存在する、m/zが58ずつ増加したシグナルがy個連続して存在する、又は、m/zが72ずつ増加したシグナルがz個連続して存在することを確認し、
その先に、最初に連続して存在した種類のシグナル以外の、m/zが44ずつ増加したシグナルがx個連続して存在する、m/zが58ずつ増加したシグナルがy個連続して存在する、又は、m/zが72ずつ増加したシグナルがz個連続して存在することを確認し、
その先に、最初又はその次に連続して存在した種類のシグナル以外の、m/zが44ずつ増加したシグナルがx個連続して存在する、m/zが58ずつ増加したシグナルがy個連続して存在する、又は、m/zが72ずつ増加したシグナルがz個連続して存在することを確認し、
その他の有意なシグナルが存在しない場合に、
オキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基のブロック重合体であると判定する。
又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対してm/zが44増加したシグナルとm/zが58増加したシグナル又はm/zが72増加したシグナルのいずれか1つしか存在しないということは、界面活性剤中に含まれる化合物の種類が1通りであることを示している。そして、m/zの増加の順序を並べていき、44が連続していればそこはEOのブロック重合であり、58が連続していればそこはPOのブロック重合であり、72が連続していればそこはBOのブロック重合であるので、その並び方からオキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基のブロック重合体であると判定することができる。
この方法では、下記構造のいずれかで表されるブロック重合体であると判定することができる。
(EO)xは(OCHCH)x、(PO)yは(OCHCH(CH))y、(BO)zは(OCHCH(CHCH))zを表す。
本発明の分析方法の望ましい態様では、
上記一般式(1´)において、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x、オキシプロピレン基の数y及びオキシブチレン基の数zのうち2つが1以上であり、1つが0であることが既知であり、
全ての構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナル、m/zが58増加したシグナル又はm/zが72増加したシグナルのいずれか1つしか存在しないことを確認し、
に由来するm/zを起点として、m/zが44ずつ増加したシグナルがx個連続して存在する、m/zが58ずつ増加したシグナルがy個連続して存在する、又は、m/zが72ずつ増加したシグナルがz個連続して存在することを確認し、
その先に、最初に連続して存在した種類のシグナル以外の、m/zが44ずつ増加したシグナルがx個連続して存在する、m/zが58ずつ増加したシグナルがy個連続して存在する、又は、m/zが72ずつ増加したシグナルがz個連続して存在することを確認し、
その他の有意なシグナルが存在しない場合に、
オキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基のうちの2種からなるブロック重合体であると判定する。
上記方法は、オキシアルキレン鎖の構造がEOのブロック重合、POのブロック重合、BOのブロック重合のうちの2種からなるブロック重合体である界面活性剤の分析方法である。
この方法では、オキシアルキレン鎖の構造が下記構造のいずれかで表されるブロック重合体である界面活性剤であると判定することができる。
(EO)xは(OCHCH)x、(PO)yは(OCHCH(CH))y、(BO)zは(OCHCH(CHCH))zを表す。
本発明の分析方法の望ましい態様では、上記一般式(1´)において、オキシブチレン基の数zが0であることが既知であり、全ての構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナルとm/zが58増加したシグナルのいずれか1つしか存在しないことを確認し、
に由来するm/zを起点として、m/zが44ずつ増加したシグナルがx個存在し、その先にm/zが58ずつ増加したシグナルがy個存在し、その他の有意なシグナルが存在しない場合に、
界面活性剤の構造が下記一般式(2)で表されるブロック重合体であると判定する。
又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対してm/zが44増加したシグナルとm/zが58増加したシグナルのいずれか1つしか存在しないということは、界面活性剤中に含まれる化合物の種類が1通りであることを示している。そして、m/zの増加の順序を並べていき、44が連続していればそこはEOのブロック重合であり、58が連続していればそこはPOのブロック重合であるので、その並びが(Rのm/z)+44+44+44・・・+58+58+58・・・の順であれば、上記一般式(2)で表されるブロック重合体であると判定することができる。
本発明の分析方法の望ましい態様では、上記一般式(1´)において、オキシブチレン基の数zが0であることが既知であり、全ての構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナルとm/zが58増加したシグナルのいずれか1つしか存在しないことを確認し、
に由来するm/zを起点として、m/zが58ずつ増加したシグナルがy個存在し、その先にm/zが44ずつ増加したシグナルがx個存在し、その他の有意なシグナルが存在しない場合に、
界面活性剤の構造が下記一般式(3)で表されるブロック重合体であると判定する。
m/zの増加の順序の並びが(Rのm/z)+58+58+58・・・+44+44+44・・・の順であれば、上記一般式(3)で表されるブロック重合体であると判定することができる。
本発明の分析方法の望ましい態様では、上記一般式(1´)において、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x、オキシプロピレン基の数y及びオキシブチレン基の数zがいずれも1以上であることが既知であり、
いずれかの構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナル、m/zが58増加したシグナル、m/zが72増加したシグナルのうちの2種類以上が存在することを確認した場合に、オキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基のランダム重合体であると判定する。
又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対してm/zが44増加したシグナル、m/zが58増加したシグナル、m/zが72増加したシグナルのうちの2種類以上が存在するということは、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に対してEOが結合した構造を有する化合物と、POが結合した構造を有する化合物と、BOが結合した化合物のうちの2種類以上が存在することを示している。すなわち、界面活性剤中に含まれる化合物の種類が複数種類である。このような場合、EOとPOとBOの数は同じで並びが異なる化合物が複数種類存在することがわかるため、オキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基のランダム重合体であると判定することができる。
本発明の分析方法の望ましい態様では、上記一般式(1´)において、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x、オキシプロピレン基の数y及びオキシブチレン基の数zのうち2つが1以上であり、1つが0であることが既知であり、いずれかの構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナル、m/zが58増加したシグナル、m/zが72増加したシグナルのうちの2種類が存在することを確認した場合に、オキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基のうちの2種からなるランダム重合体であると判定する。
上記方法は、オキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基のうちの2種を含むランダム重合体である界面活性剤の分析方法である。
オキシアルキレン鎖の組み合わせは、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の組み合わせ、オキシエチレン基とオキシブチレン基の組み合わせ、オキシプロピレン基とオキシブチレン基の組み合わせのいずれかである。
本発明の分析方法の望ましい態様では、上記一般式(1´)において、オキシブチレン基の数zが0であることが既知であり、いずれかの構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナルとm/zが58増加したシグナルの両方が存在することを確認した場合に、オキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基とオキシプロピレン基のランダム重合体であると判定する。
又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対してm/zが44増加したシグナルとm/zが58増加したシグナルの両方が存在するということは、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に対してEOが結合した構造を有する化合物と、POが結合した構造を有する化合物の2通りが存在することを示している。すなわち、界面活性剤中に含まれる化合物の種類が複数種類である。このような場合、EOとPOの数は同じで並びが異なる化合物が複数種類存在することがわかるため、オキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基とオキシプロピレン基のランダム重合体であると判定することができる。
本発明の分析方法において、上記界面活性剤の分解は、質量分析装置内で物理的手法により行い、質量分析装置内で分解した界面活性剤を連続的に質量分析してマススペクトルデータを得ることが望ましい。
このような方法であると界面活性剤の分解に続けてマススペクトルデータが連続的に得られるため、一連の分析操作を簡便に行うことができる。
本発明の分析方法において、上記界面活性剤の分解は、質量分析装置外で化学的手法により行い、質量分析装置外で分解した界面活性剤を質量分析装置に導入して質量分析してマススペクトルデータを得ることが望ましい。
このような方法であるとその物性から質量分析装置に直接導入しにくい界面活性剤であっても、分解して質量分析装置に導入しやすい分子量等に変性させることで質量分析装置に導入して分析を行うことができる。
本発明の分析方法によると、界面活性剤中のEOとPOとBOの並び方に関する情報を得ることができる。
図1は、化学式(4)で示す界面活性剤のMS/MS測定結果を示すマススペクトルである。 図2は、図1に示すマススペクトルのm/zが0−500までの範囲を拡大した拡大図である。 図3は、炭素鎖にEOとPOが結合した界面活性剤のMS/MS測定結果を示すマススペクトルである。 図4は、炭素鎖にEOとPOが結合した別の界面活性剤のMS/MS測定結果を示すマススペクトルである。 図5は、炭素鎖にEOとPOが結合したさらに別の界面活性剤のMS/MS測定結果を示すマススペクトルである。 図6は、化合物(8)と化合物(9)の混合物の2次元プロットである。 図7は、構造未知の化合物を含む試料の2次元プロットである。 図8は、図7の一部を拡大した2次元プロットであり、図7で四角形で囲んだ領域を拡大して示している。 図9は、別の構造未知の化合物を含む試料の2次元プロットである。 図10は、図9の一部を拡大した2次元プロットであり、一部のプロットをライブラリーと照合した様子を示す図である。 図11は、図10の2次元プロットをさらに詳細に分析した様子を示す図である。 図12は、炭素鎖にEOとBOが結合した界面活性剤のMS/MS測定結果を示すマススペクトルである。 図13は、質量分析装置外で化学的手法により分解した界面活性剤のMS測定結果を示すマススペクトルである。
以下、本発明の分析方法について説明する。
以下の説明では、オキシアルキレン鎖にはオキシエチレン基とオキシプロピレン基が含まれており、オキシブチレン基が含まれていない場合(一般式(1´)においてz=0の場合)を例にして本発明の分析方法を説明する。
オキシアルキレン鎖にはオキシエチレン基とオキシプロピレン基が含まれており、オキシブチレン基が含まれていない場合の本発明の分析方法は、
下記一般式(1)で表され、Rの質量数、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x及びオキシプロピレン基の数yが既知である界面活性剤のオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の並び方に関する情報を得る、分析方法であって、
分析対象の界面活性剤を準備する工程、
上記界面活性剤を分解する工程、
上記分解した界面活性剤を質量分析装置により質量分析してマススペクトルデータを得る工程、及び、
上記マススペクトルデータにおいて、Rに由来するm/zを起点として、m/zが44増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤にはRにオキシエチレン基が結合した構造R−(OCHCHが含まれると判定し、m/zが58増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤にはRにオキシプロピレン基が結合した構造R−(OCHCH(CH))が含まれると判定して、Rにオキシアルキレン基が1つ結合した構造R−(ORを決定する第1の構造決定工程、を行い、
さらに、上記構造R−(ORに由来するm/zを起点として、m/zが44増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤には構造R−(ORにオキシエチレン基が結合した構造R−(OR−(OCHCHが含まれると判定し、m/zが58増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤には構造R−(ORにオキシプロピレン基が結合した構造R−(OR−(OCHCH(CH))が含まれると判定して、構造R−(ORにオキシアルキレン基が1つ結合した構造R−(ORを決定する第2の構造決定工程を行い、以下同様の構造決定工程を繰り返すことにより、1つ前の構造決定工程で決定した構造にさらにオキシアルキレン基が1つ結合した構造を順次決定してゆき、界面活性剤のオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の並び方に関する情報を得ることを特徴とする分析方法である。
[一般式(1)中、Rは水素原子又は炭化水素基であり、(ORx+yはオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基からなるオキシアルキレン鎖であり、Rの質量数、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x並びにオキシプロピレン基の数yは既知であり、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の並び方は分析前には不明である。]
はじめに、下記一般式(1)
[一般式(1)中、Rは水素原子又は炭化水素基であり、(ORx+yはオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基からなるオキシアルキレン鎖であり、Rの質量数、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x並びにオキシプロピレン基の数yは既知であり、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の並び方は分析前には不明である。]
で表され、Rの質量数、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x及びオキシプロピレン基の数yが既知である界面活性剤を準備し、分析対象とする。
この界面活性剤を分解し、分解した界面活性剤を質量分析装置により質量分析してマススペクトルデータを得る。
界面活性剤の分解の方法としては、質量分析装置内で物理的手法により行う方法と、質量分析外で化学的手法により行う方法があるが、以下の説明では界面活性剤の分解を質量分析装置内で物理的手法により行う方法の例として、MS/MS(タンデム質量分析計)を用いた方法について説明する。
MS/MSでは、質量分析装置内に2つの質量分析計を備えており、分析対象の成分を1つめの質量分析計でイオン化し、特定のイオンだけを取り出す。これを何らかの手段で開裂させ、フラグメント化されたイオンに分離する。
イオンを開裂させる手段は特に限定されるものでないが、質量分析装置内の衝突室(コリジョンセル)内でアルゴンガスに衝突させる方法等が挙げられる。
そして、フラグメント化されたイオンを2つめの質量分析計に導入しマススペクトルを測定する。この手法によると、分析対象の成分に由来する多数のフラグメントに起因するマススペクトルが得られ、そのマススペクトルのパターンから分析対象の成分の構造を推定することができる。
イオン化の方法は特に限定されるものではないが、ESI(エレクトロスプレーイオン化法)が望ましい。
はじめに、この方法の説明のために、炭素鎖(炭素数8)にEOが20個が結合した下記化学式(4)であることが分かっている界面活性剤の分析につき説明する。
この界面活性剤にはPOが含まれておらず、下記説明はEOとPOの並び方に関する情報を得るものではないので、この界面活性剤の分析は本発明の分析方法の対象外であるが、界面活性剤の構造が単純な系を用いた方が方法の説明が容易であるため、説明に用いる。
図1は、化学式(4)で示す界面活性剤のMS/MS測定結果を示すマススペクトルである。図2は、図1に示すマススペクトルのm/zが0−500までの範囲を拡大した拡大図である。
図1には、右端にm/z=1028.69のシグナルが存在する。これは、化学式(4)で示す界面活性剤の分子量1010にイオン化に際し加えられるNH の式量18を加えた値に相当する。すなわち、この右端のシグナルはフラグメント化されていない界面活性剤そのものに由来するシグナルである。
このシグナルより左側(m/zが小さい側)に観察されるシグナルは、フラグメント化された界面活性剤に由来するシグナルである。
以下、図2を用いてこれらのシグナルの帰属について説明する。
化学式(4)で示す界面活性剤をフラグメント化した場合のパターンには大きく分けて3通りあり、下記化学式(5)に示すa,b,cのどの位置で開裂したかによりパターンが分かれる。
位置aでの開裂は、炭素鎖と炭素鎖に隣接する酸素原子の間での開裂である。位置aで開裂した構造に由来するシグナルのm/zは、本発明の分析方法における一般式(1)のRに由来するシグナルのm/zであるため、このシグナルは構造決定の起点となる重要なシグナルである。
位置aで開裂した構造は、図2にフラグメントAで示され、末端が炭素−炭素2重結合となり、イオン化に際し加えられる水素イオンの式量1が加えられた構造である。
図2には、フラグメントAの化学式においてc=6であるシグナルを(A8)と示しており、このm/zは113.13である。フラグメントAの化学式においてc=6ということは炭素数は8(c=6の部分の炭素原子6つ+2重結合の炭素原子2つ)であり、化学式(4)で示す界面活性剤の炭素鎖の炭素数8と一致する。
位置bでの開裂は、EO鎖間での開裂であり、炭素鎖を有さない側のフラグメントを生成する開裂である。
位置bで開裂した構造は、図2にフラグメントBで示され、開裂した末端が炭素−炭素2重結合となり、イオン化に際し加えられる水素イオンの式量1が加えられた構造である。
フラグメントBに分類されるシグナルはEO鎖が切断された位置に応じて複数箇所に存在する。
図2には、フラグメントBの化学式においてe=1〜10であるシグナルをそれぞれ(B2)〜(B11)と示している。(B2)はその左端の炭素−炭素2重結合と酸素原子をEO1つとカウントして、EO2つ分に相当するフラグメントであり、このm/zは89.06である。(B2)〜(B11)まで、フラグメントBに分類されるシグナルのm/zは44間隔で存在しており、EOの数が1つずつ変化していることに対応している。
図2から、測定対象の界面活性剤は、EOが少なくとも11個連続でブロック重合した構造を有していると判定することができる。
位置cでの開裂は、EO鎖間での開裂であり、炭素鎖を有する側のフラグメントを生成する開裂である。
位置cで開裂した構造は、図2にフラグメントCで示され、EOを構成する炭素原子と酸素原子の間で開裂した末端が炭素−炭素2重結合となり、イオン化に際し加えられる水素イオンの式量1が加えられた構造である。フラグメントCに分類されるシグナルはEO鎖が切断された位置に応じて複数箇所に存在する。
図2には、フラグメントCの化学式においてe=0〜2であるシグナルをそれぞれ(A8+EO)、(A8+EO2)、(A8+EO3)と示している。(A8+EO)は、炭素数8の炭素鎖にEO1つ分を加えた式量に相当するフラグメントであり、このm/zは157.16である。
フラグメントCの化学式においてe=0とし、炭素鎖に結合する酸素原子と、右端の炭素−炭素2重結合とを合わせてEO1つとカウントしている。
(A8+EO2)のm/zは(A8+EO)のm/zに44を加えた201.18であり、EOの数が1つ増えたこと(e=1となったこと)に対応している。すなわち、炭素数8の炭素鎖にEO2つ分を加えた構造である。(A8+EO3)は炭素数8の炭素鎖にEO3つ分を加えた構造である。
図2から、測定対象の界面活性剤は、炭素数8の炭素鎖にEOが少なくとも3個連続でブロック重合した構造を有していると判定することができる。
図2には示していないが、(A8+EO3)のm/zにさらに44ずつ加えた(A8+EO4)、(A8+EO5)・・・に相当するシグナルも、測定精度を向上させれば検出できるものと推測される。
以上の分析結果から、炭素鎖に由来するm/z(A8)を確認し、炭素鎖に由来するm/zを起点として、m/zが44の整数倍増加したシグナルの存在(A8+EO、A8+EO2、A8+EO3)を確認できるので、炭素数8の炭素鎖にEOが少なくとも3個連続でブロック重合した構造を有していると判定することができる。また、EOが少なくとも11個連続でブロック重合した構造があることから、炭素数8の炭素鎖にEOが11個以上連続でブロック重合していることが強く示唆される。
次に、本発明の分析方法を用いて、炭素鎖にEOとPOが結合した界面活性剤の分析を行った例について説明する。
図3は、炭素鎖にEOとPOが結合した界面活性剤のMS/MS測定結果を示すマススペクトルである。
分析対象の界面活性剤は、一般式(1)で表される構造を有しており、Rの質量数が141、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数xが3、オキシプロピレン基の数yが2であることは分析前に既知である。
図3には、右端にm/z=424.36のシグナルが存在する。これは、Rの質量数が141、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数xが3、オキシプロピレン基の数yが2である界面活性剤の分子量407にイオン化に際し加えられるNH の式量18を加えた値に相当する。すなわち、この右端のシグナルはフラグメント化されていない界面活性剤そのものに由来するシグナルである。
このシグナルより左側(m/zが小さい側)に観察されるシグナルは、フラグメント化された界面活性剤に由来するシグナルである。
図3中(A10)で示すシグナルのm/zは141.16である。
炭素鎖部分のフラグメントは図2に示したフラグメントAの化学式であり、(A10)で示すシグナルは、界面活性剤の炭素鎖の炭素数が10である場合(c=8の部分の炭素原子8つ+2重結合の炭素原子2つ)に相当する。そして、化学式(1)のRに由来するシグナルである。
この(A10)を起点として、m/zが44増加したシグナル及びm/zが58増加したシグナルが存在するかを探す。図3には(A10)からm/zが58増加したm/z=199.21のシグナル(A10+PO)が存在する。このシグナルは図3にフラグメントDで示される構造においてp=0である構造に由来し、炭素鎖にPOが結合した構造、すなわち「R−(PO)」が含まれると判定される。
一方、(A10)からm/zが44増加したm/z=185付近にはシグナルが存在しない。そのため、炭素鎖にEOが結合した構造「R−(EO)」が含まれないと判定される。
ここまでが第1の構造決定工程であり、Rにオキシアルキレン基が1つ結合した構造R−(AO)はR−(PO)であると決定される。
次に、(A10+PO)を起点として、m/zが44増加したシグナル及びm/zが58増加したシグナルが存在するかを探す。図3には(A10+PO)からm/zが58増加したm/z=257.25のシグナル(A10+PO2)が存在する。一方、(A10+PO)からm/zが44増加したm/z=243付近にはシグナルが存在しない。
従って、構造R−(PO)にPOが結合した構造、すなわち「R−(PO)」が含まれると判定される。
ここまでが第2の構造決定工程であり、Rにオキシアルキレン基が2つ結合した構造R−(AO)はR−(PO)であると決定される。
分析対象とした界面活性剤に含まれるPOの数yは2であるので、「R−(PO)」にさらにPOが結合することはなく、残りのEO3つがPOに結合した構造を取っていると考えられ、最終的な構造は下記式(6)で示すように炭素鎖にPOが先に2つブロック重合し、続いてEOが3つブロック重合した構造であると判定される。
図3には、AO鎖間の開裂であり、炭素鎖を有さない側のフラグメントを生成する開裂により生成した構造に由来するシグナルも示されている。
m/z=89.06(図3中、(EO2PO0)で示すシグナル)はEO2つ分に相当するフラグメントであり、これにさらにEOが1つ結合したm/z=133.09(EO3PO0)が存在する。このことから、AO鎖にはEOが3つ連続した構造が存在していると判定できる。
そして、(EO3PO0)にPOが1つ結合したm/z=191.13(EO3PO1)、さらにもう1つ結合したm/z=249.17(EO3PO2)が存在する。
このことから、AO鎖が“−(PO)−(EO)−”の構造を有していることが確認できる。
続いて、本発明の分析方法を用いて、炭素鎖にEOとPOが結合した別の界面活性剤の分析を行った例について説明する。
図4は、炭素鎖にEOとPOが結合した別の界面活性剤のMS/MS測定結果を示すマススペクトルである。
分析対象の界面活性剤は、一般式(1)で表される構造を有しており、Rの質量数が113、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数xが3、オキシプロピレン基の数yが2であることは分析前に既知である。
図4には、右端にm/z=379.30のシグナルが存在する。これは、Rの質量数が113、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数xが3、オキシプロピレン基の数yが2である界面活性剤の分子量378にイオン化に際し加えられる水素イオンの式量1を加えた値に相当する。すなわち、この右端のシグナルはフラグメント化されていない界面活性剤そのものに由来するシグナルである。
このシグナルより左側(m/zが小さい側)に観察されるシグナルは、フラグメント化された界面活性剤に由来するシグナルである。
図4中(A8)で示すシグナルのm/zは113.13である。
炭素鎖部分のフラグメントは図2に示したフラグメントAの化学式であり、(A8)で示すシグナルは、界面活性剤の炭素鎖の炭素数が8である場合(c=6の部分の炭素原子6つ+2重結合の炭素原子2つ)に相当する。そして、化学式(1)のRに由来するシグナルである。
この(A8)を起点として、m/zが44増加したシグナル及びm/zが58増加したシグナルが存在するかを探す。図4には(A8)からm/zが44増加したm/z=157.16のシグナル(A8+EO)が存在する。このシグナルは図2及び図4にフラグメントCで示される構造においてe=0である構造と同じ構造に由来し、炭素鎖にEOが結合した構造、すなわち「R−(EO)」が含まれると判定される。
一方、(A8)からm/zが58増加したm/z=171付近にはシグナルが存在しない。そのため、炭素鎖にPOが結合した構造「R−(PO)」が含まれないと判定される。
ここまでが第1の構造決定工程であり、Rにオキシアルキレン基が1つ結合した構造R−(AO)はR−(EO)であると決定される。
次に、(A8+EO)を起点として、m/zが44増加したシグナル及びm/zが58増加したシグナルが存在するかを探す。図4には(A8+EO)からm/zが44増加したm/z=201.18のシグナル(A8+EO2)が存在する。一方、(A8+EO)からm/zが58増加したm/z=215付近にはシグナルが存在しない。
従って、構造R−(EO)にEOが結合した構造、すなわち「R−(EO)」が含まれると判定される。
ここまでが第2の構造決定工程であり、Rにオキシアルキレン基が2つ結合した構造R−(AO)はR−(EO)であると決定される。
同様に、(A8+EO2)からm/zが44増加したm/z=245.21のシグナル(A8+EO3)を確認し、第3の構造決定工程を行うことにより、Rにオキシアルキレン基が3つ結合した構造R−(AO)はR−(EO)であると決定される。
分析対象とした界面活性剤に含まれるEOの数xは3であるので、「R−(EO)」にさらにEOが結合することはなく、残りのPO2つがEOに結合した構造を取っていると考えられる。
図4では、(A8+EO3)からm/zが58増加したm/z=303.25のシグナル(A8+EO3+PO)が確認できる。
最終的な構造は下記式(7)で示すように炭素鎖にEOが先に3つブロック重合し、続いてPOが2つブロック重合した構造であると判定される。
図4には、AO鎖間の開裂であり、炭素鎖を有さない側のフラグメントを生成する開裂により生成した構造に由来するシグナルも示されており、図3と同様に(EO2PO0)、(EO3PO0)、(EO3PO1)、(EO3PO2)で示すシグナルが存在することから、AO鎖が“−(PO)−(EO)−”の構造を有していることが確認できる。
続いて、本発明の分析方法を用いて、炭素鎖にEOとPOが結合したさらに別の界面活性剤の分析を行った例について説明する。
図5は、炭素鎖にEOとPOが結合したさらに別の界面活性剤のMS/MS測定結果を示すマススペクトルである。
分析対象の界面活性剤は、一般式(1)で表される構造を有しており、Rの質量数が141、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数xが3、オキシプロピレン基の数yが2であることは分析前に既知である。ここまでの情報は図3で説明した界面活性剤と同じである。
図5には、右端にm/z=407.34のシグナルが存在する。これは、Rの質量数が141、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数xが3、オキシプロピレン基の数yが2である界面活性剤の分子量407にイオン化に際し加えられる水素イオンの式量1を加えた値にほぼ相当する。すなわち、この右端のシグナルはフラグメント化されていない界面活性剤そのものに由来するシグナルである。
このシグナルより左側(m/zが小さい側)に観察されるシグナルは、フラグメント化された界面活性剤に由来するシグナルである。
図5中(A10)で示すシグナルのm/zは141.16である。
炭素鎖部分のフラグメントは図2に示したフラグメントAの化学式であり、(A10)で示すシグナルは、界面活性剤の炭素鎖の炭素数が10である場合(c=8の部分の炭素原子8つ+2重結合の炭素原子2つ)に相当する。そして、化学式(1)のRに由来するシグナルである。
この(A10)を起点として、m/zが44増加したシグナル及びm/zが58増加したシグナルが存在するかを探す。図5には(A10)からm/zが44増加したm/z=185.19のシグナル(A10+EO)が存在する。また、(A10)からm/zが58増加したm/z=199.21のシグナル(A10+PO)も存在する。
すなわち、界面活性剤中には炭素鎖にEOが結合した構造「R−(EO)」と炭素鎖にPOが結合した構造「R−(PO)」の両方が含まれる。
ここまでが第1の構造決定工程である。
第2の構造決定工程では、(A10+EO)、(A10+PO)をそれぞれ起点として、m/zが44増加したシグナル及びm/zが58増加したシグナルが存在するかを探す。
まず、(A10+EO)を起点として、m/zが44増加したm/z=229.22のシグナル(AO+EO2)、m/zが58増加したm/z=243.23のシグナル(A10+EO+PO)が存在する。また、(A10+PO)を起点として、m/zが44増加したm/z=243.23のシグナル(A10+PO+EO)、m/zが58増加したm/z=257.25のシグナル(A10+PO2)が存在する。
ここで、m/z=243.23のシグナルについては、炭素鎖にEOとPOが1つずつ結合した構造に由来することはわかるが、(A10+EO+PO)、(A10+PO+EO)のどちらに帰属するシグナルであるのかは判別できない。両方が含まれている可能性もあるし、片方だけの可能性もある。
すなわち、界面活性剤中には炭素鎖にEOが2つ結合した構造「R−(EO)」と炭素鎖にPOが2つ結合した構造「R−(PO)」が含まれる。また、界面活性剤中には炭素鎖にEOとPOが1つずつ結合した構造として、「R−(EO)−(PO)」及び/又は「R−(PO)−(EO)」が含まれる。
ここまでが第2の構造決定工程である。
第3の構造決定工程では、第2の構造決定工程で確認した4通りの構造(m/zとしては3通り)をそれぞれ起点として、m/zが44増加したシグナル及びm/zが58増加したシグナルが存在するかを探す。POの数は2つであるので、(A10+PO2)を起点としてm/zが58増加したシグナルは存在しない。
図5には、炭素鎖にEOが3つ結合した構造に由来するm/z=273.24のシグナル(A10+EO3)、炭素鎖にEOが2つ、POが1つ結合した構造に由来するm/z=287.26のシグナル{(A10+EO2+PO)、(A10+PO+EO2)、(A10+EO+PO+EO)のいずれか又はこれらのうち複数}が示されている。その他の構造も、解析を詳細に行うことで判別できると思われる。
図5には、第4の構造決定工程で決定するm/z=331.28のシグナルも示されている。このシグナルは、炭素鎖にEOが3つ、POが1つ結合した構造(4通りのうちのいずれか又は複数)に由来する。
また、図5には、AO鎖間の開裂であり、炭素鎖を有さない側のフラグメントを生成する開裂により生成した構造に由来するシグナルも示されている。
少なくとも、m/z=89.06(EO2PO0)、m/z=103.08(EO1PO1)、m/z=117.09(EO0PO2)、m/z=133.09(EO3PO0)、m/z=147.10(EO2PO1)、m/z=161.12(EO1PO2)、m/z=191.13(EO3PO1)、m/z=205.14(EO2PO2)といったシグナルが存在しており、これらのシグナルに対応する数のEO、POを有するフラグメントが含まれる界面活性剤が存在することが確認できる。
このように、R又はまたは1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナルとm/zが58増加したシグナルの両方が存在する場合、界面活性剤のオキシアルキレン鎖の構造は、オキシエチレン基とオキシプロピレン基のランダム重合体であると判定される。
なお、一般式(1)で示される界面活性剤のオキシアルキレン鎖の構造がランダム重合体であるということは、界面活性剤が、EOとPOの並び方の順序が特定されていない複数の化合物の混合物であることを意味する。
下記一般式(2)又は(3)で表される1種の構造のみを有する界面活性剤はブロック重合体である。また、下記一般式(2)及び(3)で表される2種のブロック重合体の混合物は、ブロック重合体であり、ランダム重合体ではないとする。
これまで、図3〜図5において説明した質量分析は、単一質量数の物質が得られており、Rの質量数、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x及びオキシプロピレン基の数yが既知であることを前提にしているが、測定対象の界面活性剤に質量数が異なる複数の物質が含まれている場合は、事前に液体クロマトグラフ(LC)による分離を行い、分離後の試料を質量分析装置に導入すればよい。
液体クロマトグラフの種類は、特に限定されるものではないが、HPLC(高速液体クロマトグラフ)又はUPLC(超高速液体クロマトグラフ)が好適に使用可能である。
カラムとしては逆相クラマトグラフ用充填剤カラムが好ましく、C又はC18で修飾したカラムが特に好ましい。
また、Rの質量数、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x及びオキシプロピレン基の数yが既知でない界面活性剤を分析対象とする場合は、事前にRの質量数、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x及びオキシプロピレン基の数yを決定する工程を行う事前分析工程を行うことが望ましい。
このような事前分析工程を行い、Rの質量数、x及びyを決定した後に本願の分析方法により分析を行う方法も、本発明の分析方法の範囲に含まれる。
以下、事前分析工程について説明する。
事前分析工程は、
一般式(1)で表される構造を有する化合物を含む試料について液体クロマトグラフと質量分析計を用いてマススペクトルデータを得る工程、
上記マススペクトルデータから、縦軸にm/z、横軸に保持時間を取った2次元プロットを得る工程、
上記2次元プロットを、Rの質量数及びx、yの数がそれぞれ変化した場合の構造式に関連付けられたm/z及び保持時間が格納されているライブラリーと照合して上記試料に含まれる構造未知の化合物の構造を同定する工程により行うことが望ましい。
[一般式(1)中、Rは水素原子又は炭化水素基であり、(ORx+yは、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基からなるオキシアルキレン鎖であり、xはオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数であり、yはオキシアルキレン鎖に含まれるオキシプロピレン基の数である。]
以下、事前分析工程を行った例について説明するが、一般式(1)で表される構造を有する化合物について2次元プロットを取ると、一定の傾向が現れるので、この傾向を参考にライブラリーを作成しておく。
ライブラリーを作成する方法の例として、構造既知の化合物として下記式(8)で表される化合物(8)及び下記式(9)で表される化合物(9)を用いた例について説明する。
化合物(8)及び(9)は、それぞれEO付加モル数xの異なる化合物を複数種類含む混合物である。
図6は、化合物(8)と化合物(9)の混合物の2次元プロットである。
LC−MS測定条件は以下のとおりである(以下、LC−MS測定条件は特に記載がない限り全て下記条件である)。
液体クロマトグラフ装置:Accela(Thermo Fisher Scientific Inc.製)
質量分析計:Exactive(Thermo Fisher Scientific Inc.製)
試料濃度:アセトニトリル(ACN)に対し0.1mg/ml
液体クロマトグラフ条件
カラム:ODSカラム
温度:30℃
移動相:A)5mM酢酸アンモニウム水溶液、B)ACN/THF(体積比1:1)をグラジエント条件A%=90(0−3min)−40(15min)−20(50−55min)−90(55.1−60min)に設定
注入量:10μl
流量:0.2ml/min
質量分析条件
イオン化法:ESI正イオンモード
Spray voltage:4.50kV
Capillary temp:250℃
Capillary voltage:60.00V
Tube lens voltage:140.00V
Skimmer voltage:15.00V
図6に示す2次元プロットは、上記条件でLC−MS測定を行い得られたマススペクトルデータから、縦軸はm/z、横軸に保持時間(min)を取ることで得られる。
なお、m/zは「質量/電価数」を示す。図6に示す測定では付加イオンとしてNH が用いられており、電価数は1価である。
図6には左側(保持時間が短い側)に化合物(8)に由来するプロット群が存在し、右側(保持時間が長い側)に化合物(9)に由来するプロット群が存在している。
2次元プロットを行うと各プロットは横向きに幅を持って検出されるが、図6ではプロットの位置を見えやすくするために○で囲んでいる。また、各プロットにおける保持時間は、プロットの幅の左端(保持時間が最も短い点)をその値とする。
以下、図6の左側に示される、化合物(8)に由来するプロット群について説明する。
2次元プロットに表れる複数のプロットは、それぞれEO付加モル数の異なる化合物に対応しており、m/z≒44おきにプロットされている。これは、EOの式量(OCHCH)=44.0262に対応している。
上記式(8)においてx=5、x=10、x=20に対応するm/zを有するプロットを明示した。
EOは極性が高いため、EO付加モル数が多いと移動相との親和性が大きくなり、保持時間が短くなる。そのため、EO付加モル数が多くなるほどプロット位置が左上の方向へ向かい、EOの付加モル数の増減に対応して現れる軸として観察される。
図6に示す2次元プロットから、EO付加モル数の異なる複数種類の化合物、具体的には式(8)においてx=5〜20である化合物の構造式、m/z、保持時間の3つからなるデータが関連付けて得られる。そのため、これらのデータを関連付けて格納することにより式(8)においてx=5〜20である16種の化合物の同定に利用可能なライブラリーを作成することができる。
次に、右側に示される、化合物(9)に由来するプロット群について説明する。
化合物(9)はアルキル基の炭素数が14である点で化合物(8)と異なる(化合物(8)のアルキル基の炭素数は12である)。
アルキル基は極性が低いためアルキル基の炭素数が多いと移動相との親和性が小さくなり、保持時間が長くなる。そのためアルキル基の炭素数が多くなるほどプロット位置が右上の方へ向かう。そのため、化合物(9)に由来するプロット群は化合物(8)に由来するプロット群の右側に表れる軸として観察される。
化合物(9)に由来するプロット群においても、各プロットはそれぞれEO付加モル数の異なる化合物に対応しており、m/z≒44おきにプロットされている。
上記式(9)においてx=4、x=10、x=16に対応するm/zを有するプロットを図示した。化合物(9)に由来するプロット群においても、化合物(8)に由来するプロット群の場合と同様にEO付加モル数の増加と共にプロット位置は左上の方向へ向かい、EOの付加モル数の増減に対応して現れる軸として観察される。
図6に示す2次元プロットから、式(9)においてx=4〜16である化合物の構造式、m/z、保持時間の3つからなるデータが関連付けて得られる。そのため、これらのデータを関連付けて格納することにより式(9)においてx=4〜16である13種の化合物の同定に利用可能なライブラリーを作成することができる。
結果として、図6に示す2次元プロットからは式(8)又は式(9)に示す構造式を有する29種の化合物についてのライブラリーが得られる。
このようにして、構造既知の化合物を用いることによりライブラリーを作成することができる。
上記例で示した化合物(8)及び(9)は、上記一般式(1)において、Rに含まれるアルキル基の炭素数の合計が12又は14(Rの質量数が169又は197)、POの数yが一定(ゼロ)であり、EOの数xが変化する場合に相当する。
上記一般式(1)において、例えば、EOの数xを一定、POの数yを一定とし、Rの質量数(Rに含まれるアルキル基の炭素数)を変化させた場合には、Rの質量数が多くなるほどプロット位置が右上の方へ向かい、Rの質量数の増減に対応して現れる軸として観察される。
また、m/zについてはm/z≒14おきにプロットされており、これはCHの式量=14.0157に対応する。
一般式(1)においてEOの数xを一定、POの数yを一定とし、Rの質量数を変化させたような化合物についても構造既知の化合物を用いることによりライブラリーを作成することができる。
また、上記一般式(1)において、例えば、EOの数xを一定、Rの質量数を一定とし、POの数yを変化させた場合には、POの数yが多くなるほどプロット位置が右上の方へ向かい、POの数の増減に対応して現れる軸として観察される。
POは極性が低いためPOの数が多いと移動相との親和性が小さくなり、保持時間が長くなる。ただし、アルキル基に比べると極性が高く、アルキル基よりも繰り返し単位の式量が大きいため、POの数の増減に対応して現れる軸と、アルキル基の炭素数の増減に対応して現れる軸とは向きが異なる。
POの数yを増減させた場合、m/z≒58おきにプロットされており、これはPOの式量(OCHCH(CH))=58.0419に対応している。
一般式(1)において、EOの数xを一定、Rの質量数を一定とし、POの数yを変化させたような化合物についても構造既知の化合物を用いることによりライブラリーを作成することができる。
図7は、構造未知の化合物を含む試料の2次元プロットである。
試料に含まれる化合物の構造は2次元プロットを行った時点では未知であるが、2次元プロットからはプロットの並び方に一定の法則性が見て取れる。以下、2次元プロットから構造未知の化合物の構造を同定する手順を説明する。
図7に示す2次元プロットには、付加イオンの価数が1価であるプロットと2価であるプロットと3価であるプロットが混在しており、上段に位置するプロット群は付加イオンの価数が1価の群、中段に位置するプロット群は付加イオンの価数が2価の群、下段に位置するプロット群は付加イオンの価数が3価の群に対応する。
この現象は、同じ化合物に対して付加イオンであるNH が付加した数が異なるイオンが複数種類生成し、生成した各イオンがそれぞれ分離されて検出されることにより生じる。
化合物の構造の同定においては、1価の群に属するプロットのみを考慮すればよい。
まず、2次元プロットから1つのプロットを選択する。そして、選択したプロットのm/z及び保持時間をライブラリーに格納されたm/z及び保持時間と照合する。
以下、最初に選択するプロットとして図8において点Aで示すプロットを選択した場合を例にして手順を説明する。
図8は、図7の一部を拡大した2次元プロットであり、図7で四角形で囲んだ領域を拡大して示している。
上記推定を踏まえ、点Aで示すプロットに対応する化合物の構造を同定する。
具体的には、点Aのm/z及び保持時間をライブラリーに格納されたm/z及び保持時間と照合し、ライブラリーに格納された化合物のうち、m/z及び保持時間が一致するものの構造が点Aで示すプロットに対応する化合物の構造であると同定する。
点Aで示すプロットのm/z=1661.2166であり、保持時間=34.3minである。このm/z及び保持時間をライブラリーと照合することによって、対応する化合物は、H−(PO)28−OH(以下、化合物(10)とする)であることが分かる。
m/zの内訳を表す式は、
1661.2166≒18.0344+18.0106+58.0419×28 である。
18.0344は付加イオンのNH 、18.0106は末端のHとOHの和、58.0419はPOの、それぞれの式量である。
なお、LC−MS測定に用いた装置及び測定条件が同じであれば、m/z及び保持時間はほとんど同じになる。ライブラリーとの照合にあたりm/z及び保持時間が一致しているか異なるかの判断は、m/zの差が0.5以内、保持時間が1分以内である場合にそれぞれ一致していると判断することができる。
続いて、2次元プロットから1つのプロット(未選択のプロット)を選択する。ここでは、点Aで示すプロットの隣の左上に位置する、点AE1を選択したこととする。選択するプロットの位置は任意であるが、構造を同定したプロットの近くのプロットを選択することが望ましい。
次に、2次元プロットに軸が有るかを判定し、選択されたプロットが軸上にあるかを判定する。
軸が有るかを判定するため、点Aと点AE1を含む隣接する数個のプロットの並び方に一定の法則性があるかを検討する。
以下の例では、点Aで示すプロットの隣の左上に位置する、点AE1、点AE2、点AE3で示すプロットに着目する。
点AE1で示すプロットのm/z=1705.2428であり、保持時間=33.2minであり、点AE2で示すプロットのm/z=1749.2690であり、保持時間=32.2minであり、点AE3で示すプロットのm/z=1793.2952であり、保持時間=31.2minである。
図8を見ると分かるように、点A、点AE1、点AE2、点AE3はほぼ一直線上に並んでおり、その間隔が、保持時間≒1.0min、m/z≒44となっていることから、プロットがほぼ等間隔で並んでいるといえる。
このようにほぼ等間隔で並んでいるプロットがある場合には、2次元プロットには軸が現れていると判定する。また、選択したプロット(点AE1)が軸上にあると判定する。
なお、軸の形状は直線とは限らず、プロットがほぼ等間隔で並んで曲線を描く場合もある。
そして、同一の軸に属する点A、点AE1、点AE2、点AE3は特定の構造の繰り返し数が異なる他は同じ構造式を有する同系統の化合物に由来するプロットであると考えられる。
これらのプロットについて、m/z及び保持時間が変化する法則性と特定の構造との関係を決定する。
上述したとおり、点A、点AE1、点AE2、点AE3はほぼ一直線上に並んでおり、その間隔が、保持時間≒1.0min、m/z≒44となっている。
ここで、上述したライブラリーの作成時に2次元プロットを行った構造既知の化合物(8)及び化合物(9)に由来するプロット群において、EO付加モル数の増減に対応してm/z≒44おきにプロットが並んでいたことを踏まえると、点Aを基準として、左上にある点AE1、AE2・・・と並んでいるプロットは、EOの数の増加に対応するものと考えられる。EOの付加モル数が増えるとプロット位置が左上方向に向かうという特徴も一致している。また、既存化合物のなかでm/z≒44おきに繰り返す構造としてEO以外の構造は考えられない。
そのため、点A、点AE1、点AE2、点AE3はEO付加モル数の異なる同系統の化合物に由来するプロットであると考えられる。
続いて、m/z及び保持時間が変化する法則性と特定の構造との関係に基づき構造式を決定する。上述した検討により、点AE1は点Aに対応する化合物であるH−(PO)28−OH(化合物(10))にEOが1個付加した化合物と考えられるので、対応する化合物が、H−(EO)−(PO)28−OH(以下、化合物(11)とする)であることがわかる。
また、点AE2に対応する化合物が、H−(EO)−(PO)28−OH(以下、化合物(12)とする)であり、点AE3に対応する化合物が、H−(EO)−(PO)28−OH(以下、化合物(13)とする)であることもわかる。
このように、m/z及び保持時間が変化する法則性と特定の構造との関係に基づき構造式を決定する場合、各プロットのm/z及び保持時間をライブラリーと対比して構造を同定する方法に代えて、ライブラリーとの対比を行わずに各プロットに対応する化合物と構造の関係を同定することができる。
また、未選択のプロットとして、点Aで示すプロットの右上に位置する、点AP1を選択したとする。
以下、点AE1を選択した場合と同様にして、2次元プロットに軸が有るかを判定し、選択されたプロットである点AP1が軸上にあるかを判定する。
点Aを基準として、右上にある点AP1、AP2・・・とほぼ等間隔でプロットが並んでおり、点Aと点AP1の間のm/z≒58、点AP1と点AP2の間のm/z≒58となっている。すなわち、右上方向に軸が現れていると判定する。
この軸に存在するプロットは、式量≒58を有する構造の繰り返し数が異なる他は同じ構造式を有する同系統の化合物に由来するプロットであると考えられる。
そして、この軸は式量≒58であるPOの付加モル数の増加に対応するものと考えられる既存化合物のなかでm/z≒58おきに繰り返す構造としてPO以外の構造は考えられない。
そのため、点A、点AP1、点AP2はPO付加モル数の異なる同系統の化合物に由来するプロットであると考えられる。
上述した検討により、点AP1は点Aに対応する化合物であるH−(PO)28−OH(化合物(10))にPOが1個付加した化合物に由来するプロットと考えられるので、対応する化合物が、H−(PO)29−OH(以下、化合物(14)とする)であることがわかる。
また、点AP2に対応する化合物が、H−(PO)30−OH(以下、化合物(15)とする)であることもわかる。
なお、EOとPOを両方含む化合物(11)〜(13)における、EOとPOの並び方についてはこの事前分析工程では確定できず、事前分析工程の段階では、化合物(11)のEOの数xが1、POの数yが28であること、化合物(12)のEOの数xが2、POの数yが28であること、化合物(13)のEOの数xが3、POの数yが28であること、がわかるのみである。
次に、3つの軸を持つ2次元プロットを示す試料に含まれる化合物について事前分析工程を行った例について説明する。
図9は、別の構造未知の化合物を含む試料の2次元プロットである。
図10は、図9の一部を拡大した2次元プロットであり、一部のプロットをライブラリーと照合した様子を示す図である。
図11は、図10の2次元プロットをさらに詳細に分析した様子を示す図である。
この例では、図9に示す2次元プロットに見られる一部のプロットに対応する構造未知の化合物の構造の同定を行う場合を例に挙げて説明する。
図10は、図9に示す2次元プロットにおいて四角で囲んだ領域を拡大して示す図である。
図10には、一部のプロットをライブラリーと照合した様子を示している。
ライブラリーとしては図6に示した化合物(8)及び化合物(9)に対応するライブラリーを使用している。
左に示す丸印(白抜き)の並びが化合物(8)(H−(CH12−(OCHCH)x−OH (x=5〜20))に対応しており、EOの数の増減に対応して現れる軸(A)を示している。
右に示す丸印(塗りつぶし)の並びが化合物(9)(H−(CH14−(OCHCH)x−OH (x=4〜16))に対応しており、EOの数の増減に対応して現れる軸(a)を示している。
図10には、アルキル基に含まれる炭素数の増減に対応して現れる軸の例も示されている。
図10に示す点A5及び点a5、点A10及び点a10、点A15及び点a15は、それぞれ、アルキル基に含まれる炭素数が12個であるか14個であるか以外は同じ構造を有する化合物の組み合わせである。
点A5から点a5に引いた矢印、点A10から点a10に引いた矢印、点A15から点a15に引いた矢印はそれぞれアルキル基に含まれる炭素数の増減に対応して現れる軸の例である。
点A5及び点a5、点A10及び点a10、点A15及び点a15のm/zの差はそれぞれ(CHの式量に対応する28.0314であり、3本の軸の傾きはほぼ等しくなっている。
今回測定した試料には、式(8)及び(9)で表される化合物においてアルキル基に含まれる炭素数が13個である場合に相当するプロットが見られないことから、そのような化合物は試料中に存在しないことが推測される。
図11は、図10の2次元プロットをさらに詳細に分析した様子を示す図である。
図11には、分析の結果として判明した、(A)〜(E)及び(a)〜(d)で示す9本の軸を明示している。軸(A)及び軸(a)は図7に示す2本の軸と同じである。
軸(A)の右に位置する軸(B)は、軸(A)に属する各プロットよりもm/z≒58だけ大きいプロットにより構成される。例えば、軸(A)に属する点A7よりもm/z≒58だけ大きいプロットは点B7である。
m/z≒58は式量58であるPOの付加モル数の増加に対応している。
すなわち、軸(B)に属する各プロットに対応する化合物は、軸(A)に属する各プロットに対応する化合物(8)にPOが1個付加した化合物である。
同様に、軸(C)、軸(D)、軸(E)も、それぞれ、m/z≒58ずつ増加したプロットであるので、軸(A)に属する各プロットに対応する化合物(8)にそれぞれPOが2個、3個、4個付加した化合物である。
このような規則性が見出された場合、例えば点C7で示すプロットは点A7で示すプロットの構造式「H−(CH12−(EO)−OH(化合物(16))」にPOが2個付加した構造に対応すると考えられるため、その構造式が「H−(CH12−(EO)−(PO)−OH(化合物(17))」であることが判明する。
図11にはアルキル基の炭素数が12、EO付加モル数が7で、PO付加モル数が0〜4である化合物によって構成される軸(点A7、点B7、点C7、点D7、点E7によって構成される軸)を示している。
なお、EOとPOを両方含む化合物における、EOとPOの並び方についてはこの事前分析工程では確定できず、事前分析工程の段階では、点B7、点C7、点D7、点E7で示すプロットに対応する化合物のEOの数xが7、POの数yが1〜4であることがわかるのみである。
軸(a)と軸(b)、軸(c)、軸(d)の関係も、軸(A)と軸(B)〜(E)の関係と同様であり、軸(b)、軸(c)、軸(d)に属する各プロットに対応する化合物は、軸(a)に属する各プロットに対応する化合物(9)にそれぞれPOが1個、2個、3個付加した化合物である。
例えば、点a8、点b8、点c8、点d8はそれぞれ、アルキル基の炭素数が14、EO付加モル数が8で、PO付加モル数が0〜3である化合物に対応しており、図11にはこの4つのプロットによって構成される軸を示している。
図11には、アルキル基に含まれる炭素数の増減に対応して現れる軸の例も示されている。
図11に示す点A7とa7は、EO付加モル数が7、PO付加モル数が0で、アルキル基に含まれる炭素数がそれぞれ12、14である化合物に対応しており、この2点を結んだ線はアルキル基に含まれる炭素数の増減に対応して表わされる軸となる。
また、点B13と点b13は、EO付加モル数が13、PO付加モル数が1で、アルキル基に含まれる炭素数がそれぞれ12、14である化合物に対応しており、この2点を結んだ線もアルキル基に含まれる炭素数の増減に対応して表わされる軸となる。
上記のように解析すると、EOの数の増減に対応して現れる軸、POの数の増減に対応して現れる軸、アルキル基に含まれる炭素数の増減に対応して現れる軸の3本の軸を持つ2次元プロットを示す試料に含まれる化合物の構造を分析することができる。
なお、この事前分析工程で上記一般式(1)の界面活性剤を分析する場合、Rは直鎖アルキル基でも分岐アルキル基でもよい。炭素数及び2重結合数が同じであれば直鎖アルキル基でも分岐アルキル基であっても、m/zは同じとなる。保持時間は直鎖アルキル基と分岐アルキル基では厳密には異なるため、液体クロマトグラフの分析条件によっては明確に分離可能である。
明確に分離可能になる分析条件で測定を行った場合、アルキル基の構造の情報も含むライブラリーとの照合を行うことによって直鎖アルキル基であるか分岐アルキル基であるかを同定することができる。
また、事前分析工程において上記一般式(1)の界面活性剤を分析する場合、Rには2重結合が含まれていてもよい。
に2重結合を含むことが既知である化合物を用いたライブラリーを作成し、そのライブラリーと対照を行うことによってRの詳細な構造についても同定を行うことができる。
また、事前分析工程において上記一般式(1)の界面活性剤を分析する場合、Rは炭素及び水素のみからなる厳密な意味でのアルキル基に限定されるわけではなく、その水素の一部がハロゲン、ヒドロキシル基等で置換された構造であってもよい。
また、Rは鎖状脂肪族炭化水素基に限定されるわけではなく、芳香環を含んでもよく、環状炭化水素基を含んでもよく、エーテル結合を含む環状炭化水素基を含んでいてもよい。
事前分析工程において、2次元プロットにおいて特定の保持時間及びm/zを有するプロットとして分離され、Rの質量数、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x及びオキシプロピレン基の数yが既知となった界面活性剤は、本発明の分析方法における測定対象の界面活性剤となる。
事前分析工程ではオキシエチレン基の数x及びオキシプロピレン基の数yは決定されるものの、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の並び方は不明であるので、本発明の分析方法により分析を行うことにより、界面活性剤のオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の並び方に関する詳細な情報を得ることができる。
ここまで、オキシアルキレン鎖にはオキシエチレン基とオキシプロピレン基が含まれており、オキシブチレン基が含まれていない場合を例にして本発明の分析方法を説明したが、オキシアルキレン鎖にオキシブチレン基を含む場合であっても、同様にしてEO、PO、BOの並び方に関する情報を得ることが可能である。
具体的には、オキシアルキレン鎖にオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基の3種が含まれる場合、オキシアルキレン鎖にオキシエチレン基、オキシブチレン基の2種が含まれる場合、オキシアルキレン鎖にオキシプロピレン基、オキシブチレン基の2種が含まれる場合についても、本発明の分析方法による分析を行うことができる。
以下に、オキシアルキレン鎖にオキシエチレン基とオキシブチレン基が含まれる場合の本発明の分析方法の具体例について説明する。
図12は、炭素鎖にEOとBOが結合した界面活性剤のMS/MS測定結果を示すマススペクトルである。
分析対象の界面活性剤は、下記一般式(1´)で表される構造を有しており、Rの質量数が113、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数xが7、オキシプロピレン基の数yが0、オキシブチレン基の数zが2であることは分析前に既知である。
図12の右端にm/z=600.47のシグナルが存在する。これは、Rの質量数が113、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数xが7、オキシブチレン基の数zが2である界面活性剤の分子量582にイオン化に際し加えられるアンモニウムイオンの式量18を加えた値にほぼ相当する。さらに、その左横にm/z=583.44が存在する。これは、上記界面活性剤の分子量582にイオン化に際し加えられる水素イオンの式量1を加えた値にほぼ相当する。すなわち、この右端2本のシグナルはフラグメント化されていない界面活性剤そのものに由来するシグナルである。
これらのシグナルより左側(m/zが小さい側)に観察されるシグナルは、フラグメント化された界面活性剤に由来するシグナルである。
図12中(A8)で示すシグナルのm/zは113.13である。
炭素鎖部分のフラグメントは図12に示したフラグメントAの化学式であり、(A8)で示すシグナルは、界面活性剤の炭素鎖の炭素数が8である場合(c=6の部分の炭素原子6つ+2重結合の炭素原子2つ)に相当する。そして、化学式(1´)のRに由来するシグナルである。
この(A8)を起点として、m/zが44増加したシグナル及びm/zが72増加したシグナルが存在するかを探す。図12には(A8)からm/zが44増加したm/z=157.16のシグナル(A8+EO)が存在する。このシグナルは図2にフラグメントCで示される構造においてe=0である構造と同じ構造に由来し、炭素鎖にEOが結合した構造、すなわち「R−(EO)」が含まれると判定される。
一方、(A8)からm/zが72増加したm/z=185付近にはシグナルが存在しない。そのため、炭素鎖にBOが結合した構造「R−(BO)」が含まれないと判定される。ここまでが第1の構造決定工程である。
第2の構造決定工程では、(A8+EO)を起点として、m/zが44増加したシグナル及びm/zが72増加したシグナルが存在するかを探す。
図12には(A8+EO)からm/zが44増加したm/z=201.19のシグナル(A8+EO2)が存在する。一方、(A8+EO)からm/zが72増加したm/z=229付近にはシグナルが存在しない。
従って、構造R−(EO)にEOが結合した構造、すなわち「R−(EO)」が含まれると判定される。
ここまでが第2の構造決定工程であり、Rにオキシアルキレン基が2つ結合した構造R−(AO)はR−(EO)であると決定される。
同様に、(A8+EO2)からm/zが44増加したm/z=245.21のシグナル(A8+EO3)を確認し、第3の構造決定工程を行うことにより、Rにオキシアルキレン基が3つ結合した構造R−(AO)はR−(EO)であると決定される。
同様に、第4〜7の構造決定工程を行うことにより、Rにオキシアルキレン基が7つ結合した構造R−(AO)はR−(EO)であると決定される。
次に、m/z=421.32のシグナル(A8+EO7)を起点として、m/zが44増加したシグナル及びm/zが72増加したシグナルが存在するかを探す。
図12には(A8+EO7)からm/zが72増加したm/z=493.37のシグナル(A8+EO7+BO1)が存在する。一方、(A8+EO)からm/zが44増加したm/z=465付近にはシグナルが存在しない。
従って、Rにオキシアルキレン基が8つ結合した構造R−(AO)はR−(EO)−(BO)であると決定される。ここまでが、第8の構造決定工程である。
以上の構造決定工程から、最終的な構造は炭素鎖にEOが先に7つブロック重合し、続いてBOが2つブロック重合した構造であると判定される。
また、図12には、フラグメントEで示される構造のシグナルも示されている。
(E8)で示すシグナルのm/zは131.07である。
この(E8)で示すシグナルは、フラグメントEにおいて界面活性剤の炭素鎖の炭素数が8、オキシエチレン基数eが0、オキシブチレン基数bが0である場合に相当する。
m/z=131.07のシグナルは、フラグメントEの左端のH−(CHのm/zに右端のOHのm/zを加え、イオン化に際し加えられる水素イオンの式量1を加えたm/zに相当する。
(A8)を起点としたときと同様に、(E8)を起点として第1〜8の構造決定を行うことによっても、最終的な構造は炭素鎖にEOが先に7つブロック重合し、続いてBOが2つブロック重合した構造であると判定される。
さらに、図12には、AO鎖間の開裂であり、炭素鎖を有さない側のフラグメントを生成する開裂により生成した構造に由来するシグナルも示されている。
少なくとも、m/z=89.06(EO2BO0)、m/z=117.19(EO1BO1)、m/z=133.09(EO3BO0)、m/z=161.12(EO2BO1)、m/z=177.11(EO4BO0)、m/z=205.14(EO3BO1)、m/z=221.14(EO5BO0)、m/z=249.17(EO4BO1)、m/z=265.17(EO6BO0)、m/z=293.20(EO5BO1)、m/z=309.19(EO7BO0)、m/z=337.22(EO6BO1)、m/z=381.25(EO7BO1)といったシグナルが存在しており、これらのシグナルに対応する数のEO、BOを有するフラグメントが含まれる界面活性剤が存在することが確認できる。
ここまで、界面活性剤の分解を質量分析装置内で物理的手法により行う方法について説明したが、界面活性剤の分解は質量分析装置外で化学的手法により行ってもよい。
化学的手法による分解方法としては、文献「小西一生、油化学、22(9)、549(1973)」に記載されたように、エーテル結合開裂試薬を用いた分解方法が挙げられる。
この方法では、p−トルエンスルホン酸120g中に無水酢酸80gを滴下し、撹拌しながら120℃油浴中で30分加熱して褐色の粘稠液体を得て、これを室温まで冷やすことでエーテル結合開裂試薬を得る。
分析対象の界面活性剤の分解は、界面活性剤300mgにエーテル結合開裂試薬2gを加えて120℃油浴中で2時間環流し、室温まで冷却した後炭酸ナトリウムで中和することにより行う。これを20mlのジエチルエーテルで抽出し、抽出液は水洗した後無水硫酸ナトリウムで脱水する。
界面活性剤とエーテル結合開裂試薬の反応により、開裂したエーテル結合の部位にアセチル基がそれぞれ結合した化合物がフラグメントとして生成する。
このような化学的手法により界面活性剤をフラグメントに分解後、質量分析装置に導入して分析を行うことができる。
以下に、界面活性剤の分解を質量分析装置外で化学的手法により行った場合の具体例について説明する。
図13は、質量分析装置外で化学的手法により分解した界面活性剤のMS測定結果を示すマススペクトルである。
分析対象の界面活性剤は、上記一般式(1´)で表される構造を有しており、Rの質量数が141(Rの炭素数が10)、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数xが12、オキシプロピレン基の数yが2、オキシブチレン基の数zが0であることは分析前に既知である。
この界面活性剤を、上記に記載の化学的手法による分解方法により分解し、質量分析装置に導入して分析を行った。
質量分析条件は以下のとおりである。
質量分析計:micromass ZQ(Waters Corporation製)
試料濃度:0.1mg/ml
溶媒:メタノール/水=80/20
イオン化法:ESI正イオンモード
Capillary Voltage:3.30kV
Cone Voltage:34V
Extractor:3V
RF Lens:0.2V
Source Temperature:100℃
Desolvation Temperature:350℃
図13中(F10)で示すシグナルのm/zは223.32である。
この(F10)で示すシグナルは、フラグメントFにおいて界面活性剤の炭素鎖の炭素数が10、オキシエチレン基数eが0、オキシプロピレン基数pが0である場合に相当する。
m/z=223.32のシグナルは、フラグメントFの左端のH−(CH10のm/zに右端の酸素及びアセチル基のm/zを加え、さらにイオン化に際し加えられるナトリウムイオンの式量23を加えたm/zに相当する。
この(F10)を起点として、m/zが44増加したシグナル及びm/zが58増加したシグナルが存在するかを探す。図13には(F10)からm/zが44増加したm/z=267.32のシグナル(F10+EO)が存在する。また、(F10)からm/zが58増加したm/z=281.17のシグナル(F10+PO)も存在する。すなわち、界面活性剤中には炭素鎖にEOが結合した構造「R−(EO)」と炭素鎖にPOが結合した構造「R−(PO)」の両方が含まれる。
ここまでが第1の構造決定工程である。
第2の構造決定工程では、(F10+EO)、(F10+PO)をそれぞれ起点として、m/zが44増加したシグナル及びm/zが58増加したシグナルが存在するかを探す。
まず、(F10+EO)を起点として、m/zが44増加したm/z=311.33のシグナル(F10+EO2)、m/zが58増加したm/z=325.24のシグナル(F10+EO+PO)が存在する。また、(F10+PO)を起点として、m/zが44増加したm/z=325.24のシグナル(F10+PO+EO)、m/zが58増加したm/z=339.34のシグナル(F10+PO2)が存在する。
すなわち、界面活性剤中には炭素鎖にEOが2つ結合した構造「R−(EO)」と炭素鎖にPOが2つ結合した構造「R−(PO)」が含まれる。また、界面活性剤中には炭素鎖にEOとPOが1つずつ結合した構造として、「R−(EO)−(PO)」及び/又は「R−(PO)−(EO)」が含まれる。
ここまでが第2の構造決定工程である。
同様に、第3以降の構造決定工程を行うと、R又はまたは1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、起点となる構造にオキシプロピレン基が既に2つ含まれていない限り、m/zが44増加したシグナルとm/zが58増加したシグナルの両方が存在する。したがって、界面活性剤のオキシアルキレン鎖の構造は、オキシエチレン基とオキシプロピレン基のランダム重合体であると判定される。

Claims (10)

  1. 下記一般式(1´)で表され、Rの質量数並びにオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x、オキシプロピレン基の数y及びオキシブチレン基の数zが既知である界面活性剤のオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基の並び方に関する情報を得る、分析方法であって、
    分析対象の界面活性剤を準備する工程、
    前記界面活性剤を分解する工程、
    前記分解した界面活性剤を質量分析装置により質量分析してマススペクトルデータを得る工程、及び、
    前記マススペクトルデータにおいて、Rに由来するm/zを起点として、m/zが44増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤にはRにオキシエチレン基が結合した構造R−(OCHCHが含まれると判定し、m/zが58増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤にはRにオキシプロピレン基が結合した構造R−(OCHCH(CH))が含まれると判定し、m/zが72増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤にはRにオキシブチレン基が結合した構造R−(OCHCH(CHCH))が含まれると判定して、Rにオキシアルキレン基が1つ結合した構造R−(ORを決定する第1の構造決定工程、を行い、
    さらに、前記構造R−(ORに由来するm/zを起点として、m/zが44増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤には構造R−(ORにオキシエチレン基が結合した構造R−(OR−(OCHCHが含まれると判定し、m/zが58増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤には構造R−(ORにオキシプロピレン基が結合した構造R−(OR−(OCHCH(CH))が含まれると判定し、m/zが72増加したシグナルが存在する場合は界面活性剤には構造R−(ORにオキシブチレン基が結合した構造R−(OR−(OCHCH(CHCH))が含まれると判定して、構造R−(ORにオキシアルキレン基が1つ結合した構造R−(ORを決定する第2の構造決定工程を行い、以下同様の構造決定工程を繰り返すことにより、1つ前の構造決定工程で決定した構造にさらにオキシアルキレン基が1つ結合した構造を順次決定してゆき、界面活性剤のオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基の並び方に関する情報を得ることを特徴とする、分析方法。
    [一般式(1´)中、Rは水素原子又は炭化水素基であり、(ORx+y+zはオキシエチレン基及、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも2種のオキシアルキレン基を含むオキシアルキレン鎖であり、Rの質量数並びにオキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x、オキシプロピレン基の数y及びオキシブチレン基の数zは既知であり、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基の並び方は分析前には不明である。]
  2. 前記一般式(1´)において、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x、オキシプロピレン基の数y及びオキシブチレン基の数zがいずれも1以上であることが既知であり、
    全ての構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナル、m/zが58増加したシグナル又はm/zが72増加したシグナルのいずれか1つしか存在しないことを確認し、
    に由来するm/zを起点として、m/zが44ずつ増加したシグナルがx個連続して存在する、m/zが58ずつ増加したシグナルがy個連続して存在する、又は、m/zが72ずつ増加したシグナルがz個連続して存在することを確認し、
    その先に、最初に連続して存在した種類のシグナル以外の、m/zが44ずつ増加したシグナルがx個連続して存在する、m/zが58ずつ増加したシグナルがy個連続して存在する、又は、m/zが72ずつ増加したシグナルがz個連続して存在することを確認し、
    その先に、最初又はその次に連続して存在した種類のシグナル以外の、m/zが44ずつ増加したシグナルがx個連続して存在する、m/zが58ずつ増加したシグナルがy個連続して存在する、又は、m/zが72ずつ増加したシグナルがz個連続して存在することを確認し、
    その他の有意なシグナルが存在しない場合に、
    オキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基のブロック重合体であると判定する、請求項1に記載の分析方法。
  3. 前記一般式(1´)において、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x、オキシプロピレン基の数y及びオキシブチレン基の数zのうち2つが1以上であり、1つが0であることが既知であり、
    全ての構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナル、m/zが58増加したシグナル又はm/zが72増加したシグナルのいずれか1つしか存在しないことを確認し、
    に由来するm/zを起点として、m/zが44ずつ増加したシグナルがx個連続して存在する、m/zが58ずつ増加したシグナルがy個連続して存在する、又は、m/zが72ずつ増加したシグナルがz個連続して存在することを確認し、
    その先に、最初に連続して存在した種類のシグナル以外の、m/zが44ずつ増加したシグナルがx個連続して存在する、m/zが58ずつ増加したシグナルがy個連続して存在する、又は、m/zが72ずつ増加したシグナルがz個連続して存在することを確認し、
    その他の有意なシグナルが存在しない場合に、
    オキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基のうちの2種からなるブロック重合体であると判定する、請求項1に記載の分析方法。
  4. 前記一般式(1´)において、オキシブチレン基の数zが0であることが既知であり、
    全ての構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナルとm/zが58増加したシグナルのいずれか1つしか存在しないことを確認し、
    に由来するm/zを起点として、m/zが44ずつ増加したシグナルがx個存在し、その先にm/zが58ずつ増加したシグナルがy個存在し、その他の有意なシグナルが存在しない場合に、
    界面活性剤の構造が下記一般式(2)で表されるブロック重合体であると判定する、請求項3に記載の分析方法。
  5. 前記一般式(1´)において、オキシブチレン基の数zが0であることが既知であり、
    全ての構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナルとm/zが58増加したシグナルのいずれか1つしか存在しないことを確認し、
    に由来するm/zを起点として、m/zが58ずつ増加したシグナルがy個存在し、その先にm/zが44ずつ増加したシグナルがx個存在し、その他の有意なシグナルが存在しない場合に、
    界面活性剤の構造が下記一般式(3)で表されるブロック重合体であると判定する、請求項3に記載の分析方法。
  6. 前記一般式(1´)において、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x、オキシプロピレン基の数y及びオキシブチレン基の数zがいずれも1以上であることが既知であり、
    いずれかの構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナル、m/zが58増加したシグナル、m/zが72増加したシグナルのうちの2種類以上が存在することを確認した場合に、オキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基のランダム重合体であると判定する、請求項1に記載の分析方法。
  7. 前記一般式(1´)において、オキシアルキレン鎖に含まれるオキシエチレン基の数x、オキシプロピレン基の数y及びオキシブチレン基の数zのうち2つが1以上であり、1つが0であることが既知であり、いずれかの構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナル、m/zが58増加したシグナル、m/zが72増加したシグナルのうちの2種類が存在することを確認した場合に、オキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基のうちの2種からなるランダム重合体であると判定する、請求項1に記載の分析方法。
  8. 前記一般式(1´)において、オキシブチレン基の数zが0であることが既知であり、
    いずれかの構造決定工程において、R又は1つ前の構造決定工程で決定した構造に由来するm/zに対して、m/zが44増加したシグナルとm/zが58増加したシグナルの両方が存在することを確認した場合に、オキシアルキレン鎖の構造が、オキシエチレン基とオキシプロピレン基のランダム重合体であると判定する、請求項7に記載の分析方法。
  9. 前記界面活性剤の分解は、質量分析装置内で物理的手法により行い、質量分析装置内で分解した界面活性剤を連続的に質量分析してマススペクトルデータを得る、請求項1〜8のいずれかに記載の分析方法。
  10. 前記界面活性剤の分解は、質量分析装置外で化学的手法により行い、質量分析装置外で分解した界面活性剤を質量分析装置に導入して質量分析してマススペクトルデータを得る、請求項1〜8のいずれかに記載の分析方法。
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