JP5860833B2 - 質量分析データ処理方法及び装置 - Google Patents

質量分析データ処理方法及び装置 Download PDF

Info

Publication number
JP5860833B2
JP5860833B2 JP2013080185A JP2013080185A JP5860833B2 JP 5860833 B2 JP5860833 B2 JP 5860833B2 JP 2013080185 A JP2013080185 A JP 2013080185A JP 2013080185 A JP2013080185 A JP 2013080185A JP 5860833 B2 JP5860833 B2 JP 5860833B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
analysis
mass spectrometry
msn
mass
spectrometry data
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013080185A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013145245A (ja
Inventor
真一 山口
真一 山口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shimadzu Corp
Original Assignee
Shimadzu Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shimadzu Corp filed Critical Shimadzu Corp
Priority to JP2013080185A priority Critical patent/JP5860833B2/ja
Publication of JP2013145245A publication Critical patent/JP2013145245A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5860833B2 publication Critical patent/JP5860833B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)
  • Electron Tubes For Measurement (AREA)

Description

本発明は、MSn(nは2以上の整数)分析可能な質量分析装置で収集されたデータを処理するデータ処理方法及び装置に関する。
質量分析を用いた解析処理の手法の一つに、複数の試料について質量分析により得られた全ての結果を比較する、網羅的解析と称する手法がある。こうした解析には、一般に、判別分析、主成分分析、クラスター分析などの多変量解析が利用されている。
例えば非特許文献1には、質量分析により得られたマススペクトルデータを主成分分析するソフトウエアが開示されている。また、非特許文献2、特許文献1などには、複数のサンプルについて得られたマススペクトルデータを主成分分析し、その結果をスコアプロット及びローディングプロットで示した例が開示されている。こうした主成分分析の結果として得られるスコアプロットによれば、複数のサンプルのグループ分けの状態を容易に把握することができる。また、ローディングプロットによれば、そうしたサンプルのグループ分けに各化合物(成分)がどのように寄与しているのかを把握することができる。
ところで、最近の質量分析装置では、MS1分析結果であるMS1スペクトルデータと並行して、イオンの開裂操作を伴うMS2分析の分析結果であるMS2スペクトルデータを取得することができる装置が開発されている(例えば非特許文献3参照)。即ち、通常の質量分析(MS1分析)を実行した直後にそのMS1分析で得られたMS1スペクトルに現れているピークを所定の条件の下に選択する(例えばピーク強度の大きい順に所定個数を選択する)。そして、選択されたピークの質量電荷比をプリカーサイオンとして設定し、そのプリカーサイオンを選択した後に開裂を生じさせ、その開裂で生成された各種プロダクトイオンを質量分析することによりMS2スペクトルデータを取得する。一般に、こうしたMSnスペクトルデータは対象とする成分の構造情報を含んでおり、その成分の同定や構造解析に有用である。
上記のような網羅的解析にMSnスペクトルデータを利用すれば、より正確な或いはより精緻な解析が行えると考えられる。しかしながら、上記のような従来の網羅的解析で使用されるデータは専らMS1スペクトルデータであり、MSn分析が行われる場合であっても、MSnスペクトルデータはMS1スペクトルデータを用いた網羅的解析の後に、各成分の組成推定やデータベース検索などに供されるだけであった。
特開2009−25056号公報
「MarkerViewTMソフトウェア」、[online]、アプライドバイオシステムズジャパン株式会社、[平成21年3月11日検索]、インターネット<URL: http://www.appliedbiosystems.co.jp/website/jp/product/modelpage.jsp?MODELCD=97189> 米久保、ほか2名、「最新の飛行時間型質量分析計LCT PremierTMの特徴と食品メタボロームへの応用」、クロマトグラフィー(Chromatography)、クロマトグラフィー科学会、第27巻、第2号(2006年) 飯田、ほか3名、「LCMS-IT-TOFのプロテオーム解析への応用」、島津評論、島津評論編集部、第63巻、第1・2号、2006年9月29日発行、pp. 19-28
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、MSn分析により収集された全てのMSnスペクトルデータを網羅的解析に有効に利用し、各種化合物の同定や構造解析に適切な情報を得ることができる質量分析データ処理方法及び装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された第1発明は、MSn分析(nは2以上の整数)可能な質量分析装置で収集されたデータを処理する質量分析データ処理方法であって、
a)MS1分析により収集されたMS1スペクトルデータを解析処理するMS1解析ステップと、
b)MSn分析により収集されたMSnスペクトルデータに基づくMSn分析情報を記述した行列について多変量解析を実行するMSn解析ステップと、
c)前記MS1解析ステップによる解析処理結果と前記MSn解析ステップによる多変量解析処理結果とを同一画面上の保持時間と質量電荷比とを二軸とする二次元グラフ上に重ねて表示する表示処理ステップと、
を有することを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された第2発明は、上記第1発明に係る質量分析データ処理方法を実施する質量分析データ処理装置であり、MSn分析(nは2以上の整数)可能な質量分析装置で収集されたデータを処理する質量分析データ処理装置において、
a)MS1分析により収集されたMS1スペクトルデータを解析処理するMS1解析手段と、
b)MSn分析により収集されたMSnスペクトルデータに基づくMSn分析情報を記述した行列について多変量解析を実行するMSn解析手段と、
c)前記MS1解析手段による解析処理結果と前記MSn解析手段による多変量解析処理結果とを同一画面上の保持時間と質量電荷比とを二軸とする二次元グラフ上に重ねて表示する表示処理手段と、
を備えることを特徴としている。
MSn分析により収集されたMSnスペクトルデータは、試料に含まれる化合物の一部分(化合物の基幹構造や開裂によって基幹構造から脱離する断片など)の質量や含有量などの情報を含む。したがって、MSnスペクトルデータに基づくMSn分析情報を記述した行列について多変量解析を実行して得られる結果には、例えば、異なる化合物の基幹構造が類似している又は全く異質であるといった情報が反映されている。一方、MS1分析により収集されたMS1スペクトルデータを解析処理して得られる結果には、例えば複数の試料の間の関連性や異なる溶出時間に得られる化合物の間の関連性(クロマトグラフ質量分析装置の場合)などが反映されている。したがって、上記表示処理ステップによってなされる表示によれば、例えば、複数の試料を分析したときにその中から同じグループに属するとみなせる試料を識別するための情報とともに、そのグループに属することを特徴付ける化合物の構造の類似性などに関する情報も得ることができる。
特に、MS1解析ステップによる解析処理結果とMSn解析ステップによる多変量解析処理結果とを同一のグラフ、例えば二次元グラフ上に重ねて表示しているので、両方の結果の対応関係が一層分かり易い。
第1及び第2発明において、MSn分析情報を記述した行列は例えば、異なるプリカーサイオンに対するMSnスペクトル間の相関係数を要素とする相関係数行列とすることができる。
こうした相関係数行列を作成するために、第1発明の一態様による質量分析データ処理方法では、前記MSn解析ステップが、
収集されたMSnスペクトルデータから、複数のプリカーサイオンのそれぞれについて、それら複数のプリカーサイオンに対応したMSnスペクトルに現れるプロダクトイオン及び/又はニュートラルロスの質量電荷比におけるピーク強度データからなるデータセットを求めるデータセット取得ステップと、
異なるプリカーサイオンに対するMSnスペクトル間の相関係数を、該プリカーサイオンに対応したデータセットを用いて各MSnスペクトル間でそれぞれ計算し、求まった相関係数を要素とする相関係数行列を作成する相関係数行列作成ステップと、
を含むものとすることができる。
また、第2発明に係る質量分析データ処理装置においても同様に、前記MSn解析手段が、上記データセット取得ステップを実行するデータセット取得手段、上記相関係数行列作成ステップを実行する相関係数行列作成手段を含むようにすればよい。
上記態様による質量分析データ処理方法及び装置では、まず、複数のプリカーサイオンのそれぞれについて、それら複数のプリカーサイオンに対応したMSnスペクトルに現れるプロダクトイオン及び/又はニュートラルロスの質量電荷比におけるピーク強度データからなるデータセットを求める。当然のことながら、或るプリカーサイオンに対応したMSnスペクトルには、別のプリカーサイオンに対応したMSnスペクトルに現れるプロダクトイオン由来のピークが存在しないことがあり得る。その場合、当該プリカーサイオンに対応するデータセットにおいて、存在しないピークの質量電荷比におけるピーク強度データはゼロとする。したがって、いずれのプロダクトイオンに対応するデータセットも、データの個数は同じである。
こうして求めたデータセットを用いて、複数のプリカーサイオンの中の任意の2つのプリカーサイオンの組み合わせについて、MSnスペクトル間の相関係数をそれぞれ求め、相関係数行列を作成する。プリカーサイオンの個数がP個であれば、相関係数行列はP行P列である。相関係数行列の対角要素は1となり、その対角要素を挟んだ上下の要素は対称になる。このような相関係数行列について多変量解析を行うことにより、MSnスペクトルの相互の関係が反映された情報を得ることができる。
第1発明に係る質量分析データ処理方法及び第2発明に係る質量分析データ処理装置では例えば、前記多変量解析の手法としてネットワーク解析を用いることができる。
また第1発明に係る質量分析データ処理方法及び第2発明に係る質量分析データ処理装置では、前記多変量解析の手法として、主成分分析、判別分析、クラスター分析、又は自己組織化マップ(SOM)分析のいずれかも利用するようにしてもよい。
第1発明の一態様としての質量分析データ処理方法及び第2発明の一態様としての質量分析データ処理装置は、MSn分析可能な質量分析装置を検出器とする、液体クロマトグラフ質量分析装置やガスクロマトグラフ質量分析装置などのクロマトグラフ質量分析装置で収集されたデータを処理するものであり、質量電荷比及び保持時間が異なる全てのプリカーサイオンについて各プリカーサイオン間の相互の関係を視覚的に示す情報を作成するものである。
また第1発明に係る質量分析データ処理方法及び第2発明に係る質量分析データ処理装置では、MS1スペクトルデータを解析処理する手法として様々な手法を用いることができる。例えば、主成分分析、部分的最小二乗法(PLS)、PLS判別分析法(PLS−DA)、クラスター分析、などの多変量解析を用いることができる。また、自己組織化マップ(SOM)分析などのニューラルネットワークによる解析を用いることもできる。
さらには、多変量解析などの複雑な演算処理を実行することなく、単に、保持時間と質量電荷比とをそれぞれ軸とする二次元グラフ上にMS1分析結果を位置付けるものであってもよい。また、一方の軸に複数の試料を順に位置付け、他方の軸を質量電荷比とした二次元グラフ上にMS1分析結果を位置付けるものであってもよい。また、複数の試料、保持時間、質量電荷比をそれぞれ軸とする三次元グラフ上にMS1分析結果を位置付けるようにしてもよい。
第1発明に係る質量分析データ処理方法及び第2発明に係る質量分析データ処理装置によれば、異なるプリカーサイオンに対するMSn分析結果の類似性や相違性を分析者が把握することが容易になるので、例えば、複数の化合物を含む試料の解析や評価などを効率的に行うことができるようになる。また、異なる試料の類似性や相違性などの評価も容易に行えるようになる。
本発明に係る質量分析データ処理装置を備えるLC/MS分析システムの一実施例の概略ブロック構成図。 本実施例のLC/MS分析システムにおけるMSスペクトルデータの収集動作の説明図。 本実施例のLC/MS分析システムにおける特徴的なデータ処理の手順を示すフローチャート。 MS2スペクトルデータ行列の形式を示す図。 MS2スペクトルの相関係数行列の形式を示す図。 MS2スペクトルの隣接行列の形式を示す図。 MS2スペクトルデータ行列の具体例を示す図。 MS2スペクトルの相関係数行列の具体的を示す図。 MS2スペクトルの隣接行列の具体例を示す図。 MS2スペクトルのネットワークマップの具体例を示す図。 MS1スペクトルデータの解析結果の一例を示す図。 MS2スペクトルのネットワークマップの他の具体例を示す図。 MS1解析結果とMS2多変量解析結果との重ね合わせ表示の一例を示す図。
本発明に係る質量分析データ処理方法及び該方法が実施される質量分析データ処理装置の一形態について、その質量分析データ処理装置を備えるLC/MS分析システムを例に挙げて説明する。図1はこのLC/MS分析システムの概略ブロック構成図、図2はこのLC/MS分析システムにおけるMSnスペクトルデータの収集動作の説明図である。
図1において、分析対象である試料は液体クロマトグラフ(LC)部1に導入され、LC部1に含まれる図示しないカラムを通過する間に試料中の各種成分が時間的に分離されて順次溶出する。この溶出液が質量分析(MS)部2に導入される。
図示しないが、MS部2は例えば、エレクトロスプレイイオン源等の大気圧イオン源と、イオントラップと、飛行時間型質量分析器と、イオン検出器とを備えるイオントラップ飛行時間型質量分析装置(IT−TOFMS)である。このMS部2において、LC部1から導入された溶出液中の試料成分はイオン化され、生成されたイオンは一旦イオントラップに保持される。保持されたイオンはイオントラップにおいて一定の運動エネルギーを付与されて飛行時間型質量分析器に送り込まれ、飛行空間を飛行する間に質量電荷比に応じてイオンは分離され、イオン検出器において順に検出される。
MS部2で得られた検出信号はデータ処理部3に入力されてデジタルデータに変換され、データ処理に供される。データ処理部3は、検出データから求まる各イオンの飛行時間を質量電荷比に換算し、横軸を質量電荷比、縦軸を信号強度とするマススペクトルを作成し、さらに時間経過に従ってトータルイオンクロマトグラムやマスクロマトグラムを作成する。また、得られたマススペクトルデータに対して後述するような特徴的なデータ処理を実施する。
制御部4はLC部1、MS部2、及びデータ処理部3の動作を制御するとともに、ユーザーインターフェースとしての操作部5や表示部6を介して、分析者の操作を受け付ける一方、マススペクトル等の分析結果を出力する。なお、制御部4及びデータ処理部3の機能の大部分は、所定の制御/処理ソフトウエアを搭載したパーソナルコンピュータにより具現化することができる。
MS部2において、イオントラップは内部に保持したイオンを衝突誘起解離により開裂させる機能を有しており、これによりプロダクトイオンを生成させることができる。MS部2においてMS2(=MS/MS)分析を行う際には、まずイオントラップに各種イオンを保持した後に、それらイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンのみをプリカーサイオンとして選択的に残すようにイオントラップを駆動する。それからアルゴン等の衝突誘起解離ガスをイオントラップ内に導入し、選択したプリカーサイオンの開裂を促進させ、開裂により生成された各種プロダクトイオンをイオントラップに保持する。そして、そのプロダクトイオンにエネルギーを付与してイオントラップから一斉に放出し、飛行時間型質量分析器に導入して質量分析する。これにより、得られた検出信号に基づいて、データ処理部3では、プロダクトイオンのマススペクトル、即ち、MS2スペクトルを得ることができる。
なお、開裂により生成された各種のプロダクトイオンの中から特定の質量電荷比を持つイオンをプリカーサイオンとして選択した上で再び開裂操作を行う、又は、そうしたイオンの選択と開裂操作とを繰り返すことで、nが3以上のMSn分析を実行することもできる。理論的には開裂操作の繰り返しの段数には制限はないが、実用的には多くの場合、nの最大値は3〜6程度の範囲である。
次に、このLC/MS分析システムにおいて、自動MSn機能を利用したデータ収集動作について図2により説明する。試料がLC部1に導入された後、MS部2では、所定の時間間隔で通常の質量分析を繰り返し実施する。これによって、データ処理部3では所定の時間間隔毎に1つずつマススペクトル(MS1スペクトル)が作成される(図2(a)、(b)参照)。
データ処理部3では、1つのMS1スペクトルが得られると直ちにそのMS1スペクトルに現れているピークを検出し、所定の基準に適合したピークに対応するイオンをプリカーサイオンとして設定しMS2分析を実行する。例えば図2では、MS1スペクトルに現れているピークに対し、ピーク強度が閾値以上のものを強度順に所定個数選択してプリカーサイオンとするようにしている。図2(b)に示すように、時刻t1において取得されたMS1スペクトルでは、上記基準に適合するピークが存在しないためMS2分析は実行されない。一方、時刻t2において取得されたMS1スペクトルでは、上記基準に適合するピークが2つ存在するため、P1、P2の順にそれぞれのピークに対応する質量電荷比ma、mbをプリカーサイオンとして設定したMS2分析を直ちに実行する。その結果、質量電荷比maを持つプリカーサイオンに対するMS2スペクトル、及び、質量電荷比mbを持つプリカーサイオンに対するMS2スペクトル、の2つのMS2スペクトルが得られる。
上記のような自動MSn機能によるデータ収集を、LC部1への試料導入時点から所定時間が経過するまで(通常、試料中の全ての試料成分が溶出し終わるまで)繰り返すことにより、所定時間間隔毎のMS1スペクトルと所定の基準に適合するピークが存在した時点でのMS2スペクトルとが得られる。こうしたマススペクトルを構成するデータ、つまりMS1スペクトルデータ及びMSnスペクトルデータがデータ処理部3の記憶部に格納される。
上記のように収集されたデータに対し、データ処理部3は次のような特徴的なデータ処理を実行する。図3はこの特徴的なデータ処理の処理手順を示すフローチャートである。
まず、1つの試料について収集されたデータから全てのMS2スペクトルデータを収集する(ステップS1)。MS2スペクトルデータは、或る保持時間(溶出時間)において、或る質量電荷比を持つプリカーサイオンに対して得られたMS2スペクトルを構成するデータであり、MS2スペクトルに現れる各ピークの質量電荷比と強度値とを示すデータを含む。いまここでは、保持時間RT及び質量電荷比Mが相違するプリカーサイオンをP(n=1〜x)と記述する。
次に、収集したMS2スペクトルデータから、図4に示すように、横方向にプリカーサイオンP、縦方向にプロダクトイオンの質量電荷比m(m=1〜y)(又はニュートラルロスの質量電荷比、つまりプリカーサイオンの質量電荷比とプロダクトイオンの質量電荷比との差)をとった、データ行列を生成する(ステップS2)。ここでは、プリカーサイオンPに対応したMS2スペクトルにおいて、質量電荷比がmであるプロダクトイオンのピークの強度をInmで示す。例えば、プリカーサイオンPに対応したMS2スペクトルにおいて質量電荷比がmであるプロダクトイオンのピークの強度はI02である。但し、プロダクトイオンの質量電荷比mは、全てのプリカーサイオンに対応するMS2スペクトルに現れるプロダクトイオンの質量電荷比を書き出したものである。そのため、或るプリカーサイオンに対応するMS2スペクトルにおいてピークが存在しない質量電荷比mが数多くある。このようにピークが存在しない場合には、その質量電荷比mに対する強度Inmを0とする。ここでは、1つのプリカーサイオンPに対する(つまり1つのMS2スペクトルにおける)y個のデータ(In1、In2、In3、In4、…、Iny)をデータセットと呼ぶ。図4では、縦方向の1列に含まれるy個のピーク強度データが1つのデータセットを構成する。
理解を容易にするために、具体的な数値例を図7に示す。これは図4に示したMS2スペクトルデータ行列の一部である。例えばこの図7中で、保持時間RTが14.243333、質量電荷比Mが455.2913であるプリカーサイオンPに対応するMSスペクトルでは、質量電荷比:103.7293に強度:0.0574のピークが存在することが分かる。また、このプリカーサイオンPに対応するMS2スペクトルでは、別のプリカーサイオンPに対するMS2スペクトルでピークが存在している質量電荷比106.0751の位置に、ピークが存在しないことが分かる。
次に、全部でx個のプリカーサイオン、つまりx個のMS2スペクトルのデータセットのうちから2個を選ぶ全ての組み合わせについて、周知の演算方法によりそれぞれ相関係数Rを計算する。そして、全ての組み合わせに対する相関係数Rが求まると、これを行列要素とする図5に示すようなx行x列の相関係数行列を作成する(ステップS3)。例えばプリカーサイオンPに対応するMS2スペクトルとプリカーサイオンP対応するMS2スペクトルとの間の相関係数がR12である。相関係数行列において対角要素は自分自身への相関であるので全て「1」である。また、この対角要素に対してその上下の各行列要素は対称である。図7に一部が示されたMS2スペクトルデータ行列から相関係数行列を求めた結果を、図8に示す。
次に、上記のようにして求めた相関係数行列の情報を分かり易くグラフ化するために、まず図6に示すように、相関係数行列の対角要素である「1」を全て「0」に置き換え、この行列をネットワーク解析用の隣接行列として定義する(ステップS4)。図8に示した相関係数行列から求めた隣接行列を図9に示す。このようにして求めた隣接行列に対してネットワーク解析を実行し、ネットワークマップを作成する(ステップS5)。
ネットワーク解析はいわゆるグラフ理論に基づくものであり、隣接行列からネットワークマップを作成するには、入手容易な既存のソフトウエア(例えば"igraph"など)を用いればよい。ネットワークマップはデータ点とデータ点との関係を線で示すものであり、線が方向性を有する有向グラフである場合と線が方向性を有さない無向グラフである場合とがある。ここでは、データ点は1つのプリカーサイオン又はMS2スペクトルを意味し、2つのデータ点間の相関に方向性はないため(それ故に相関係数行列は対角要素を挟んで上下が対称である)、ネットワークマップは無向グラフである。
ネットワークマップでは、データ点の配置や線の表示の仕方に様々な変形が考えられる。例えばデータ点をそれぞれ異なる色で表示し、相関性が高いデータ点同士をできるだけ近くに配置するようなことが考えられる。図7〜図9に示した例から作成されたネットワークマップの一例を図10に示す。この例では、線が短いものほど相関性が高いことを示しており、無相関の場合には線が存在しない。但し、相関係数に閾値を設け、相関係数値がその閾値以下である場合には無相関であるとみなしてもよい。図10に示すようなネットワークマップによって、異なるMS2スペクトル間の相関関係が視覚化され、その理解が容易になる。
なお、図10の例では、データ点間を線で接続することで、それらデータ点が或る1つの相関を有するグループに属することを示していたが、そのほかに、相関を有するグループに属するデータ点の表示色を同一にする、相関を有するグループに属するデータ点の形状を同一にする、といった変形も考えられる。図12は、相関を有するグループに属するデータ点の色、形状を同一にし、且つデータ点間を線で繋ぐようにしたネットワークマップの一例である。
但し、上記のようなMS2スペクトルのネットワークマップには、MS1分析結果で所定の基準に適合しなかったピークの情報は反映されない。そこで、制御部4は従来行われているようなMS1分析結果(MSスペクトルデータ)を解析して得られた解析結果と上記のMS2スペクトルのネットワークマップとを同一画面内に配置した表示データを作成し、これを表示部6に出力して表示画面上に描画する(ステップS6)。MS1スペクトルデータの解析手法には種々のものが考えられる。
例えば、特許文献1に開示されているように、保持時間、質量電荷比、及び信号強度の3つのディメンジョンを持つMS1スペクトルデータに対し多変量解析の一手法である主成分分析を適用し、試料に含まれる各化合物に対応するローディングを算出する。そして、2つの主成分を直交する二軸とするグラフに、算出されたローディング値をプロットしたローディングプロットを作成し(例えば図11参照)、これをMS1スペクトルデータの解析結果として表示部6の画面上に表示することができる。
また、主成分分析以外の多変量解析手法、例えば部分的最小二乗法(PLS)、PLS判別分析法(PLS−DA)、クラスター分析などを用いてもよい。また、ニューラルネットワークの一手法である自己組織化マップ(SOM)分析などを用いることもできる。さらに、こうした複雑な演算処理を行うことなく、保持時間と質量電荷比とを互いに直交する二軸とする二次元グラフ上に、MS1分析により得られたデータを位置付けて表示するようにするものであってもよい。
上記ステップS6では、MS1分析結果とMS2多変量解析結果(ネットワークマップ)とを同一画面内に配置した表示を表示部6に出力するようにしていたが、両結果を同一グラフ上に位置付けて表示することで、両結果の対応関係がより明確になる。図13はこうした両結果の重ね合わせ表示の一例を示す図である。図13(a)は、保持時間と質量電荷比とを互いに直交する二軸とする二次元グラフ上に、MS1分析により得られたマススペクトル上の各ピークに対応する点(小さな点)と、MS2スペクトルデータに対するネットワーク解析により相関性を有すると判定されたクラスター毎の識別が可能であるように形状や色が分けられたプリカーサイオンに対応する点(●、○、▲など)と、をプロットしたものである。図13(b)はこのときのネットワークマップであり、このネットワークマップ上で点線で囲まれているような互いに線で繋がれた複数のプリカーサイオンが1個のクラスターである。ここでは20個のクラスターが存在し、各クラスターに含まれるプリカーサイオンの個数は様々である。
図13(a)に示したような、MS1分析結果とMS2多変量解析結果とを重ね合わせた画像を表示部6の画面上に表示させることにより、同一のクラスターに属する複数のプリカーサイオンの質量電荷比及び保持時間に関する分布が明確になる。例えば、図13(a)中の点線で囲む領域Aには、ほぼ一定の保持時間間隔毎に且つほぼ一定の質量電荷比ずつ増加するように同一クラスターのプリカーサイオンが存在していることが一目で分かる。このような情報は図13(b)に示すようなネットワークマップを見ただけでは分かりにくいが、図13(a)に示した表示であれば容易に把握でき、試料に含まれる化合物の種類や構造の推定に有用である。
また、図10に示すネットワークマップの一例では、各データ点についてプリカーサイオンに割り当てられた連続番号(P)が記載されているのみであったが、分析者がこのネットワークマップ上で所定の操作を行うことによって、より詳細で有用な情報が表示されるようにするとよい。例えば、2つのデータ点間を結ぶ線を操作部5に含まれるマウスなどのポインティングデバイスにより選択すると、選択された線の両端のデータ点のMS2スペクトルに共通するプロダクトイオンやニュートラルロスをネットワークマップ上に表示するようにするとよい。また、MS2スペクトルデータを周知のデータベース検索に供して化合物の同定を行う場合には、この同定によって判明した化合物の名称や化合物の構造(構造式など)をネットワークマップ上の各データ点の近傍などに表示するようにしてもよい。
また、複数の試料を比較する場合には、各試料についてそれぞれ同じようにMS2スペクトルのネットワークマップを作成し、このネットワークマップの各データ点の位置や集まり具合、各線の結合状態などを比較すれば、複数の試料の類似性や相違性が分かり易くなる。
また、上記実施例ではMS2スペクトルデータを用いてネットワークマップを作成する場合について説明したが、MS3スペクトルデータ、MS4スペクトルデータ等、MSnスペクトルデータに対して同様の手法でネットワークマップを作成できることは明らかである。この場合、例えばnが相違する値である複数のMSn分析でプリカーサイオンの質量電荷比が同一になった場合には、その同一のプリカーサイオンに対応してそれぞれ得られた複数のMSnスペクトル上に現れるプロダクトイオンを統合し、1つのプリカーサイオンに対応するプロダクトイオンとして取り扱ってもよい。
上記実施例は本発明をLC/MSに適用したものであるが、GC/MSに適用することもできることは明らかであり、またクロマトグラフを伴わない質量分析装置にも適用可能である。但し、試料に含まれる化合物が1つ又は少数であって、MS1スペクトルに現れるピークの数が少ない場合には、本発明を利用する意味はない。
また、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜に変更、修正、追加を行っても本願請求の範囲に包含されることは当然である。
1…LC部(液体クロマトグラフ部)
2…MS部(質量分析部)
3…データ処理部
4…制御部
5…操作部
6…表示部

Claims (8)

  1. MSn分析(nは2以上の整数)可能な質量分析装置で収集されたデータを処理する質量分析データ処理方法であって、
    a)MS1分析により収集されたMS1スペクトルデータを解析処理するMS1解析ステップと、
    b)MSn分析により収集されたMSnスペクトルデータに基づくMSn分析情報を記述し
    た行列について多変量解析を実行するMSn解析ステップと、
    c)前記MS1解析ステップによる解析処理結果と前記MSn解析ステップによる多変量解析処理結果とを同一画面上の保持時間と質量電荷比とを二軸とする二次元グラフ上に重ねて表示する表示処理ステップと、
    を有することを特徴とする質量分析データ処理方法。
  2. 請求項1に記載の質量分析データ処理方法であって、
    前記MSn解析ステップにより実行される多変量解析はネットワーク解析、主成分分析、判別分析、クラスター分析、又は自己組織化マップ(SOM)分析のいずれかであることを特徴とする質量分析データ処理方法。
  3. 請求項1に記載の質量分析データ処理方法であって、
    MSn分析可能な質量分析装置を検出器とするクロマトグラフ質量分析装置で収集されたデータを処理するものであり、質量電荷比及び保持時間が異なる全てのプリカーサイオンについて各プリカーサイオン間の相互の関係を視覚的に示す情報を作成することを特徴とする質量分析データ処理方法。
  4. 請求項1に記載の質量分析データ処理方法であって、
    前記MS1解析ステップは多変量解析を行うものであることを特徴とする質量分析データ処理方法。
  5. 請求項4に記載の質量分析データ処理方法であって、
    前記MS1解析ステップはニューラルネットワークによる多変量解析を行うものであることを特徴とする質量分析データ処理方法。
  6. 請求項1に記載の質量分析データ処理方法であって、
    前記MSn解析ステップにより実行される多変量解析はネットワーク解析であり、
    前記表示処理ステップは、前記MS1解析ステップにおいてMS1分析結果として得られた前記二次元グラフに対し、前記MSn解析ステップにおいてネットワーク解析により相関性を有すると判定されたクラスター毎の識別が可能であるように、プリカーサイオンに対応する点をプロットすることを特徴とする質量分析データ処理方法。
  7. 請求項6に記載の質量分析データ処理方法であって、
    前記プリカーサイオンに対応する点は、クラスター毎の識別が可能であるように形状あるいは色を変えてプロットすることを特徴とする質量分析データ処理方法。
  8. MSn分析(nは2以上の整数)可能な質量分析装置で収集されたデータを処理する質量分析データ処理装置において、
    a)MS1分析により収集されたMS1スペクトルデータを解析処理するMS1解析手段と、
    b)MSn分析により収集されたMSnペクトルデータに基づくMSn分析情報を記述した行列について多変量解析を実行するMSn解析手段と、
    c)前記MS1解析手段による解析処理結果と前記MSn解析手段による多変量解析処理結果とを同一画面上の保持時間と質量電荷比とを二軸とする二次元グラフ上に重ねて表示する表示処理手段と、
    を備えることを特徴とする質量分析データ処理装置。
JP2013080185A 2013-04-08 2013-04-08 質量分析データ処理方法及び装置 Active JP5860833B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013080185A JP5860833B2 (ja) 2013-04-08 2013-04-08 質量分析データ処理方法及び装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013080185A JP5860833B2 (ja) 2013-04-08 2013-04-08 質量分析データ処理方法及び装置

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011508066A Division JP5293809B2 (ja) 2009-04-07 2009-04-07 質量分析データ処理方法及び装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013145245A JP2013145245A (ja) 2013-07-25
JP5860833B2 true JP5860833B2 (ja) 2016-02-16

Family

ID=49041078

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013080185A Active JP5860833B2 (ja) 2013-04-08 2013-04-08 質量分析データ処理方法及び装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5860833B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3232189A4 (en) * 2014-12-08 2017-12-13 Shimadzu Corporation Multidimensional mass spectrometry data processing device
JP6503966B2 (ja) * 2015-08-05 2019-04-24 株式会社島津製作所 多変量解析結果表示装置
WO2021240576A1 (ja) * 2020-05-25 2021-12-02 株式会社島津製作所 クロマトグラフ質量分析データ処理方法、クロマトグラフ質量分析装置、及びクロマトグラフ質量分析データ処理用プログラム

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10293120A (ja) * 1997-04-17 1998-11-04 Hitachi Ltd 質量スペクトル表示方法,質量スペクトル表示装置,質量分析方法及び質量分析装置
JP4984617B2 (ja) * 2006-04-12 2012-07-25 株式会社島津製作所 質量分析データ解析方法
JP4983451B2 (ja) * 2007-07-18 2012-07-25 株式会社島津製作所 クロマトグラフ質量分析データ処理装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013145245A (ja) 2013-07-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5293809B2 (ja) 質量分析データ処理方法及び装置
JP6494588B2 (ja) 滞留時間の決定または確認のための窓処理質量分析データの使用
EP2728350B1 (en) Method and system for processing analysis data
JP4983451B2 (ja) クロマトグラフ質量分析データ処理装置
US10818485B2 (en) Multidimensional mass spectrometry data processing device
JP6048590B2 (ja) 包括的2次元クロマトグラフ用データ処理装置
JP6695556B2 (ja) イメージング質量分析データ処理装置及び方法
JP5327388B2 (ja) 分析データ処理方法及び装置
WO2015107690A1 (ja) タンデム質量分析データ処理装置
US20120306883A1 (en) Liquid chromatography/mass spectrometry device and analysis method using liquid chromatography/mass spectrometry device
JP5860833B2 (ja) 質量分析データ処理方法及び装置
JP6738816B2 (ja) 曲線減算を介する類似性に基づく質量分析の検出
US10147590B2 (en) Mass spectrometry data processing apparatus and mass spectrometry data processing method
JP2018040655A (ja) 質量分析用データ処理装置
JP2016170174A (ja) タンデム質量分析データ処理装置
JP7359302B2 (ja) クロマトグラフ質量分析データ処理方法、クロマトグラフ質量分析装置、及びクロマトグラフ質量分析データ処理用プログラム
JP5757357B2 (ja) 質量分析データ処理装置
JP6718694B2 (ja) マススペクトル解析装置、マススペクトル解析方法、および質量分析装置
JP2006284509A (ja) 質量分析システム
WO2021044509A1 (ja) データ解析装置及び分析装置
JP2024087261A (ja) 質量分析による化合物判定方法及び化合物判定システム
JP4839248B2 (ja) 質量分析システム

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130423

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140424

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140527

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20141224

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150324

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20150409

A912 Re-examination (zenchi) completed and case transferred to appeal board

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912

Effective date: 20150605

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20151221

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5860833

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151